説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】 焦点検出領域のデフォーカス量の情報を用いた露出量の演算を改善する。
【解決手段】
平均測光値と、デフォーカス量に応じた重み付けを行って得られる重み付け測光値とを用いて露出制御値の算出を行う。そして、平均測光値が重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、そうでない場合よりも、重み付け測光値に係る重みを減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ等の撮像装置及びその制御方法に関し、特に焦点検出領域におけるデフォーカス量の情報を用いて露出制御を行う撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラなどの撮像装置においては、適正な露光量の決定方法について様々な提案がなされている。例えば、焦点検出領域には撮影者が意図した被写体が存在する可能性が高いことから、焦点検出領域が適正露出となるように露光量を決定する方法が知られている。
【0003】
また、焦点検出領域が複数存在する場合、個々の焦点検出領域のデフォーカス量に基づいて、個々の焦点検出領域に対応する測光センサの測光出力を重み付けして露光量を決定することが知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、対応する複数の焦点検出領域のうち、合焦点近傍にあるものを主被写体、それ以外の領域を背景としてとらえ、主被写体に対応する測光値を背景に対応する測光値より重視した露出演算を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−174127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焦点検出領域に対応する測光センサの測光出力を重み付けして露光量を決定する方法の具体例を図4を用いて説明する。図4(a)は、撮影画面に対して配置された複数の焦点検出領域の例を、図4(b)は、撮影画面に対応する63の測光領域i(i=1〜63)の例をそれぞれ示している。図4(c)は、主被写体が暗く、背景が明るい撮影シーン(所謂逆光シーン)を示している。図4に示す例の場合、焦点検出領域12e及び12fが主被写体に対応しており、デフォーカス量が小さい(合焦に近い)ため、測光領域S(32)及びS(50)の測光値の重みが最大になる。
【0007】
ここで、暗い主被写体に大きな重みをつけるため、重み付けしない場合よりも暗い輝度を基準として露光量が決定され、暗い主被写体が明るくなるように撮影されるが、それに伴って背景も明るくなるように撮影される。
【0008】
すなわち、暗い主被写体の輝度の影響により、画面全体および背景がより明るく撮影される露出値が決定される。もし、暗い主被写体の背景にある建物や風景が十分に明るい撮影シーンでは、これら背景部分の露光量が多すぎ、階調性が失われる所謂白とびが発生する原因となる。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、焦点検出領域のデフォーカス量の情報を用いた露出量の演算を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明に係る撮像装置は、複数の焦点検出領域の各々についてデフォーカス量を検出する焦点検出手段と、複数の測光領域の各々について測光値を検出する測光手段と、測光手段で検出された測光値の平均測光値と、測光手段で検出された測光値に対してデフォーカス量が小さいほど大きな重み付けを行って得られる重み付け測光値とを用いて得られる露出制御値を用いて露出値を決定する制御手段とを有し、制御手段は、平均測光値が重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、平均測光値が重み付け測光値より所定値を超えて大きくないか、撮影時にフラッシュを発光しない場合よりも、露出制御値の算出における重み付け測光値に係る重みを減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような構成により、本発明によれば、焦点検出領域のデフォーカス量の情報を用いた露出量の演算を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の一例としての一眼レフレックスタイプのデジタルカメラの機能構成例を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係るカメラの撮影処理を説明するためのフローチャート
【図3】本発明の第1の実施形態に係る露出演算処理の詳細を説明するためのフローチャート
【図4】(a)は焦点検出領域の配置例を、(b)は測光領域の配置例を、(c)は主被写体、焦点検出領域、及び測光領域の関係例をそれぞれを示す図
【図5】本発明の第3の実施形態に係る露出演算処理の詳細を説明するためのフローチャート
【図6】本発明の実施形態に係る露出演算処理において用いる、重み付け測光値に対する重み係数Wの値と、平均測光値と重み付け測光値の差との関係を示す図
【図7】(a)は本発明の実施形態において用いるデフォーカス量と重みつけ係数との関係例を示す図、(b)は本発明の実施形態における、複数の焦点検出領域、測光領域および重みつけ係数の関係例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<第1の実施形態>
[装置の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の一例としての一眼レフレックスタイプのデジタルカメラ(以下、単にカメラという)の機能構成例を示すブロック図である。
【0015】
撮像部30は撮像素子を有し、不図示の撮像光学系により結像される被写体の光学像を電気信号に変換する。撮像素子の露光量は不図示のシャッタ、絞りにより制御される。
A/D変換部32は、撮像部30から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0016】
タイミング発生部31はメモリ制御部34及びカメラ制御部10の制御に従い、撮像部30、A/D変換部32にクロック信号や制御信号を供給する。
【0017】
画像処理部33は、A/D変換部32からのデータ或いはメモリ制御部34からのデータに対して所定の画素補間処理や色変換処理を行う。画像処理部33はさらに、カメラ制御部10がAF(オートフォーカス)処理やAE(自動露出)処理、EF(フラッシュ調光)処理に用いる情報を、撮影した画像データに所定の演算処理を適用して求める。
【0018】
画像処理部33はさらに、撮影した画像データを用いて所定の演算処理を行い、得られた演算結果に基づいてTTL方式のAWB(オートホワイトバランス)制御も行う。
メモリ制御部34は、A/D変換部32、タイミング発生部31、画像処理部33、画像表示メモリ37、表示制御部35、メモリ38、圧縮伸長部39を制御する。
【0019】
A/D変換部32の出力する画像データは、画像処理部33とメモリ制御部34の両方、或いはメモリ制御部34のみを介して、画像表示メモリ37或いはメモリ38に書き込まれる。
表示制御部35は、画像表示メモリ37に書き込まれた表示用の画像データを、液晶表示装置(LCD)等の表示部36に表示させる。
【0020】
メモリ38は撮影した所定枚数の静止画像データを格納するのに十分な記憶容量を備え、複数枚の静止画像データを連続して撮影する連写撮影を可能としている。また、メモリ38はカメラ制御部10の作業領域としても使用可能である。
【0021】
メモリ38に格納された画像データは、圧縮伸長部39によりデータ圧縮処理を受けた後に再びメモリ38に格納される。
圧縮された画像データには、IDおよび日時データ、更には、シャッタ速度や絞り値等の撮影時の撮影条件を記録した撮影情報データが添付されて、記録部41に記録される。
【0022】
圧縮伸長部39はメモリ38に格納された画像データや、記録部41に記録された画像データを読み込んでデータ圧縮処理或いは伸長処理を行い、処理を終えたデータをメモリ38に書き込む。圧縮伸長方法に特に制限はないが、例えば適応離散コサイン変換(ADCT)を用いることができる。
記録部41は半導体メモリや磁気ディスクといった記録媒体を備え、インタフェース40を介してカメラに接続される。
【0023】
カメラ制御部10はカメラ全体を制御する。カメラ制御部10は、接続インタフェース61を介してフラッシュ制御部100と、接続インタフェース71を介してレンズ制御部200とそれぞれ通信可能に接続される。
【0024】
シャッタ制御部11は、測光部13からの測光情報に基づいて絞りを制御する絞り制御部201と連携しながら、シャッタを制御する。
【0025】
焦点検出部12は、不図示の撮像レンズによって結像された被写体光学像の合焦状態(デフォーカス量)を、例えば図4(a)に示したような複数の焦点検出領域12a〜12kの各々について検出することができる。焦点検出方法には特に制限はなく、コントラスト法、位相差検出法のいずれによってもよい。
【0026】
測光部13は、不図示の撮像レンズによって結像された被写体光学像の露出状態(輝度値)を、例えば図4(b)に示したような測光領域i;i=1〜63の各々について測定することができる。
【0027】
図7(b)に、本実施形態における複数の焦点検出領域12a〜12kと、測光領域iにおける測光値S(i)と、重みつけ係数k(i)の対応を示す。また、本実施形態では、複数の焦点検出領域12a〜12のうち、焦点検出領域12e及び12fが選択されているものとする。焦点検出領域12eには測光値S(32)、焦点検出領域12fには測光値S(50)がそれぞれ対応している。
【0028】
図1に戻って、記憶装置22はEEPROMやRAMなどで構成され、カメラ制御部10が用いる設定値(特に、測光部13の測光値に基づいてカメラ制御部10が露出演算に用いる各種設定値)や、撮影ごとの測光値および露出制御値などが格納される。また、カメラ制御部10がマイクロコンピュータ等のプログラマブルデバイスであれば、カメラ制御部10が実行するプログラムも記憶する。
【0029】
測光部13は、フラッシュ制御部100と連携することによりフラッシュ調光処理を実現する。
電源スイッチ14は、カメラを電源オン又は電源オフのいずれかのモードに切り替えるためのスイッチである。
レリーズスイッチ15は、例えばシャッタボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、全押しでONとなる第2スイッチSW2を有する。第1スイッチSW1のONは撮像準備指示であり、AF処理、AE処理、AWB処理、EF処理等の動作が開始される。
【0030】
また、第2スイッチSW2のONは撮像指示であり、カメラ制御部10は一連の撮影処理を開始する。撮影処理には、以下の露光処理、現像処理、記録処理が含まれる。露光処理は、撮像部30から読み出した信号をA/D変換部32、メモリ制御部34を介してメモリ38に画像データを書き込む処理である。現像処理は、画像処理部33やメモリ制御部34での演算を用いた処理であり、記録処理は、メモリ38から画像データを読み出し、圧縮伸長部39で圧縮を行い、記録部41に画像データを書き込む処理である。
【0031】
電子ダイアル16、MENUスイッチ17、SET釦スイッチ18は、撮影モードの設定など各種の設定やメニュー表示などを指示するためのユーザインタフェースである。
フラッシュ装着検知スイッチ60はフラッシュ装置(発光装置)の装着を検知する。接続インタフェース61はカメラ制御部10とフラッシュ制御部100とを通信可能に接続する。接続インタフェース61は、カメラとフラッシュ装置との間で制御信号、状態信号、データ信号等を伝送し合うと共に、各種電圧の電流を供給する機能も備えている。
【0032】
レンズ装着検知スイッチ70はレンズユニットの装着を検知する、接続インタフェース71はカメラ制御部10とレンズ制御部200とを通信可能に接続する。
接続インタフェース71は、カメラとレンズユニットとの間で制御信号、状態信号、データ信号等を伝送し合うと共に、各種電圧の電流を供給する機能も備えている。
【0033】
電源部80はアルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNi−MH電池、Li電池等の二次電池、ACアダプター等からなる。
電源制御部81は、電源検出部、DC−DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ部等により構成されている。電源制御部81は、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行い、検出結果及びカメラ制御部10の指示に基づいてDC−DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録部41を含む各部へ供給する。
【0034】
フラッシュ制御部100は、フラッシュ装置に設けられ、発光部101、光量センサ102、充電制御部103、ズーム制御部104を制御して、AF補助光の投光機能やフラッシュ調光機能を実現する。
【0035】
レンズ制御部200はレンズユニット全体を制御する。レンズ制御部200は、動作用の定数、変数、プログラム等を記憶するメモリやレンズユニット固有の番号等の識別情報、管理情報、開放絞り値や最小絞り値、焦点距離等の機能情報、現在や過去の各設定値等を保持する不揮発メモリも備えている。
【0036】
絞り制御部201は測光部13からの測光情報に基づいて、シャッタを制御するシャッタ制御部11と連携しながら絞りを制御する。
ズーム制御部202は撮像レンズがズームレンズの場合、変倍レンズを駆動して撮像レンズの画角を制御する。焦点検出制御部203は、撮像レンズのフォーカシングレンズを駆動し、焦点状態を制御する。
【0037】
[撮影処理]
図2は本実施形態におけるカメラの撮影処理を説明するためのフローチャートである。
S101でカメラ制御部10は、レリーズスイッチ15の第1のSW1がオンであるか否かを判断する。そして、カメラ制御部10は第1のSW1がオンであると判断されるまでこのS101の動作を繰り返し、第1のSW1がオンであると判断されると、処理をS102に移行させる。
【0038】
S102で、カメラ制御部10は、焦点検出部12を駆動する。本実施形態において焦点検出部12は、位相差検出方式による焦点検出を行うための一対のラインセンサが各々の焦点検出領域について設けられた構成を有するものとする。
【0039】
本実施形態では、上述の通り、図4(a)の焦点検出領域12e及び12fのいずれかで合焦となるように焦点調節するものとしている。しかし、複数の焦点検出領域12a〜12kのうち、実際に合焦となるように焦点調節する焦点検出領域は任意の方法で選択可能である。例えば撮影者が任意の焦点検出領域を選択してもよいし、被写体距離が近い焦点検出領域を優先することを基本とした周知の自動選択方法を採用してもよい。
【0040】
S103でカメラ制御部10は、測光部13から、撮影画面内の各測光領域i(本実施形態では、i=1〜63)における被写体像の輝度信号(輝度値)S(i)を取得する。測光部13は、測光領域ごとに複数のセンサを有する場合、例えば複数のセンサの測定値の平均値を測光領域の輝度値として出力する。カメラ制御部10は、輝度値をA/D変換し、A/D変換した輝度値に基づいて、後述する露光動作に用いるシャッタスピード、絞り値を決定する露出演算処理を行う。露出演算処理の詳細については、図3を用いて後述する。
【0041】
S104でカメラ制御部10は、選択された焦点検出領域(本実施形態では、焦点検出領域12eおよび12f)で合焦となるように、撮像レンズに設けられたレンズ制御部200と通信を行うことによって撮像レンズの焦点調節を行う。そして、カメラ制御部10は、撮像レンズの合焦位置に関する情報や焦点距離に関する情報などの被写体距離に関する情報をレンズ制御部200との通信によって得る。
【0042】
S105でカメラ制御部10は、レリーズボタンの第2スイッチSW2がオンであるか否かを判断する。この判断の結果、第2スイッチSW2がオフである場合、カメラ制御部10は処理をS101に戻し、第2スイッチSW2がオンであると判断されるまで、S101〜S104までの動作を繰り返す。一方、第2スイッチSW2がオンであると判断された場合、カメラ制御部10は処理をS106に移行させる。
【0043】
S106でカメラ制御部10は、S103における露出演算処理で決定された絞り値及びシャッタスピードで撮像部30の撮像素子を露光するために、レンズ制御部200を介して絞り制御部201を制御し、またシャッタ制御部11を制御する。
【0044】
なお、シャッタの全開に同期した信号がシャッタ制御部11からカメラ制御部10を通じて接続インタフェース61に送信される。信号を受信したフラッシュ制御部100は、フラッシュの発光がカメラ制御部10から指示されている場合、指示に基づいて発光部101の発光制御を行う。
【0045】
露光期間が終了すると、タイミング発生部31の制御に従って撮像部30の撮像素子から画像信号を読み出し、A/D変換部32に供給する。A/D変換された画像信号はメモリ制御部34を介してメモリ38に画像データを書き込まれ、画像処理部33で現像処理が行われる。
【0046】
S107でカメラ制御部10は、現像処理後の画像データを記録フォーマットに応じて圧縮伸長部39でデータ圧縮し、撮像条件など様々な補助情報とともに画像ファイルの形式で記録部41に記録する。表示制御部35によって現像処理後の画像データを表示部36に表示させてもよい。
【0047】
[露出演算処理]
つづいて、前述のS103における露出演算処理の詳細について、図3のフローチャートを用いて説明する。
S201でカメラ制御部10は、測光部13から測光領域S(i);i=1〜63における被写体の輝度信号(輝度値)を取得し、A/D変換する。
【0048】
S202でカメラ制御部10は、各測光領域の測光値を用いて、撮影画面全体の平均測光値AVEを算出する。すなわち、
AVE= Σ{S(i)} /N (式1)
(本実施形態では、i=1〜63、N=63)
である。
【0049】
S203でカメラ制御部10は、焦点検出部12で得られたデフォーカス量に関する情報に応じて、各測光領域の測光値に対する重みを計算する。カメラ制御部10は、S201で得られた各測光領域の測光値S(i)と、S102で得られた各焦点検出領域のデフォーカス量defocusに基づいて、各測光領域の重み係数k(i)を決定する。重み係数k(i)は図7(a)に示すように、デフォーカス量defocusの大きさと重み係数k(i)の値との関係が予め設定されているものとする。本実施形態では、合焦付近であるとき、すなわちデフォーカス量defocusが−0.01mm〜0.01mmの場合に最大となるように重み計数k(i)が設定されている。
【0050】
なお、焦点検出領域に対応していない測光領域については、周囲の焦点検出領域に対応した測光領域の重み係数に基づいて決定すればよい。例えば、焦点検出領域に対応した測光領域との距離が近いほど焦点検出領域に対応した測光領域の重み係数に近い重み係数にすればよい。なお、本実施形態では、説明を簡単にするため、焦点検出領域に対応していない測光領域の重み係数=0として説明する。
【0051】
各測光領域の重み係数を用いて各測光領域の測光値に対して重み付け演算を行うことにより、カメラ制御部10は、露出値の決定に用いる、画像全体の測光値を算出する。S201で取得した各測光領域iの測光値をS(i)、重み係数をk(i)(i=1〜63)とすると、画像全体の重み付け測光値Edefは、以下の式2により求めることができる
Edef=Σ{S(i)×k(i)}/Σ{k(i)} (式2)
(本実施形態ではi=1〜63)
【0052】
上述の通り、本実施形態では、図4(a)の焦点検出領域12e及び12fに主被写体が存在する。焦点検出領域12e、12fに対応する測光値及び重み係数は図7(b)に示すようにそれぞれS(32)、k(32)、S(50)、k(50)である。
ここで、焦点検出領域12eのデフォーカス量が範囲−0.01mm〜0.01mmに、焦点検出領域12fのデフォーカス量が範囲0.01mm〜0.1mm、に入っていて他の焦点検出領域のデフォーカスが−0.5mm未満であるとする。この場合、図7(a)から、k(32)=8、k(50)=6、その他のk(i)=0となる。
【0053】
そして、式2より、重み付け測光値Edefは
Edef=Σ{S(i)×k(i)}/Σ{k(i)}
={S(32)×k(32)+S(50)×k(50)+0}/{k(32)+k(50)+0}
={S(32)×8+S(50)×6}/{8+6}
={S(32)×8+S(50)×6}/14
と求められる。
【0054】
S204でカメラ制御部10はフラッシュ装置の発光を行うか否かを判別を行う。
例えばカメラ制御部10は、
強制発光モードやスローシンクロモードなどのように、撮影時にフラッシュを発光させる設定がなされているかどうかを判別してもよい。この場合、撮影時にフラッシュを発光させる設定がなされている場合にはフラッシュ装置を発光させると判別し、撮影時にフラッシュを発光させる設定がなされていない場合にはフラッシュ装置を発光させないと判別する。あるいは、自動発光モードのように、測光結果に基づいてフラッシュを発光させるか否かを判別する場合には、上記の撮影画面全体の平均測光値AVEや重み付け測光値Edefに基づいて判別すればよい。
【0055】
S204でカメラ制御部10は、フラッシュ発光させると判別されれば処理をS205に、フラッシュ発光させないと判別されれば処理をS207に移行する。
S205でカメラ制御部10は、平均測光値AVEとS203で算出した重み付け測光値Edefを次の式3により比較する。
【0056】
AVE−Edef>LEVEL_N (式3)
(ここで、本実施形態では、LEVEL_N=露出1段分に相当する測光値とする)
【0057】
平均測光値AVEが重み付け測光値Edefより、所定値LEVEL_Nを超えて大きい場合(S205,YES)、カメラ制御部10は主被写体が周囲の平均的な測光値よりも暗いと判断し、処理をS206に移行させる。S206でカメラ制御部10は、主被写体への重み係数に対するさらなる係数Wを次式4により算出する。
【0058】
W=a×{AVE−Edef}+b (式4)
(ここで、係数W<1であり、a,bは定数とする)
【0059】
図6は、平均測光値AVEと重み付け測光値Edefの差と、係数Wの大きさの例を示す。本実施形態では、AVE−Edef≦LEVEL_Nの区間では係数W=1(最大)であり、AVE−Edef>LEVEL_Nの区間では、W<1であり、さらに、平均測光値AVEと重み付け測光値Edefの差が大きいほど、係数Wは小さくなる。
【0060】
図3に戻り、平均測光値AVEが重み付け測光値Edefより大きいが、差が所定値LEVEL_N以下であるか、平均測光値AVEが重み付け測光値Edef以下である場合(S205,NO)の場合、カメラ制御部10は処理をS207に遷移させる。
【0061】
S207でカメラ制御部10は、主被写体への重み係数に対する係数W=1とする。この結果、S203で算出した重みつけ係数k(i)がそのまま用いられる。
【0062】
続いてS208でカメラ制御部10は、露出制御値Bを次の式5により算出する
B={AVE×Rate(1)+Edef×Rate(2)}/{Rate(1)+Rate(2)} (式5)
(ここで、Rate(1)は定数であり、ここでは40,Rate(2)=W×Σ{k(i)}である)
【0063】
前述のとおり本実施形態では、図4(a)の焦点検出領域12eおよび12fで焦点検出する。また、先ほどの計算結果からk(32)=8、k(50)=6、重み付け測光値Edefである。
式5に、Rate(1)=40、Rate(2)=W×(8+6)を代入すると、露出制御値Bは、
B={AVE×40+Edef×W×(8+6)}/{40+W×(8+6)}
【0064】
平均測光値AVEが重み付け測光値Edefよりも所定値LEVEL_Nを超えて大きい場合であって、さらにフラッシュ発光時には、式4より
W=a×{AVE−Edef}+b
である。
【0065】
本実施形態ではW<1となるように定数a,bを設定するので、平均測光値AVEと重み付け測光値Edefの加重平均である露出制御値Bに対し、重み付け測光値Edefの重み付け割合が減り、平均測光値AVEの重み付け割合が増加する。この結果、露出制御値Bに対して主被写体の暗さが与える影響を緩和する効果がある。
【0066】
一方、平均測光値AVEが重み付け測光値Edefよりも所定値LEVEL_Nを超えて大きくない場合、またはフラッシュ非発光時には図6に示すように、W=1とする。そのため、平均測光値AVEと重み付け測光値Edefとをバランスよく加重平均して露出制御値Bを求めることができる。
【0067】
以上のように求められた露出制御値Bと、例えば予め定められたプログラム線図とから、カメラ制御部10は絞り値及びシャッタスピードを決定し、露出演算処理を終了する。
【0068】
このように、本実施形態では、平均測光値AVEが、デフォーカス量に応じた重み付け測光値Edefより所定値を超えて大きく、かつ、フラッシュ発光時には、露出制御値における重み付け測光値Edefの重みを予め定めた重みより減少させる。この結果、主被写体が暗く、背景が明るいといったシーンにおいて、背景が白とびするような露出値が決定されることを抑制することができる。なお、重み付け測光値の重みを減少させるとともに平均測光値の重みを増加させてもよいが、平均測光値と重み付け測光値とを加重平均する際の重み付け測光値の重みを減少させればよいので、重み付け測光値の重みを減少させるだけでもよい。
【0069】
フラッシュ非発光時や、平均測光値AVEが、デフォーカス量に応じた重み付け測光値Edefより所定値を超えて大きくない場合には、露出制御値における重み付け測光値Edefの重み及び平均測光値AVEの重みを変化させない(予め定めた重みとする)。そのため、デフォーカス量に基づいた適切な露出値を決定することができる。
【0070】
なお、上述の説明においては、平均測光値AVEを単純加算平均値としたが、測光センサの配置に着目してセンサをグループ化し、グループごとに重み付けした加重平均測光や、評価測光を行っても同様の効果が得られる。
また、フラッシュ非発光時などで露出制御値における重み付け測光値Edefの重み及び平均測光値AVEの重みを予め定めた重みとするのではなく、各焦点検出領域のデフォーカス量に基づいて変化させてもよい。例えば、各焦点検出領域のデフォーカス量の差が小さく、どの焦点検出領域に主被写体が存在するか判断し難い撮影シーンにおいては、露出制御値における重み付け測光値Edefの重みを小さくしてもよい。
【0071】
また、平均測光値AVEが重み付け測光値Edefより所定値LEVEL_Nを超えて大きくなるにつれて、図6に示すように係数Wを減少させているが、所定値LEVEL_Nをフラッシュ発光させるか否かの判別条件としてもよい。
例えば、平均測光値AVEが重み付け測光値Edefより所定値LEVEL_Nを超える場合にフラッシュ発光させると判別すると、重み付け測光値Edefの重みを減少させることに伴う主被写体の露出低下をフラッシュ発光で補うことができる。そのため、平均測光値AVEと重み付け測光値Edefとの差が所定値LEVEL_N付近となるシーンで複数回撮影を行う場合、所定値LEVEL_Nを超える場合と超えない場合の重み付け測光値Edefの重み変化に伴う主被写体の露出ばらつきを抑制できる。このような構成の場合、図3や図5(後述)のフローチャートにおいてフラッシュ発光判別を行うS204は省略してもよい。
また、図6に示すように係数Wを線形的に減少させるのではなく、段階的に減少させるようにしてもよい。
【0072】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態で説明した、係数Wを求める式4において、a,bは定数であったがa,bをゼロとした場合は係数W=0となる。
従って、露出制御値Bを算出する式Rate(2)=W×Σ{k(i)}もまた0となり、
B={AVE×40+Edef×0}/{40+0}=AVE
この結果、重み付け測光値Edefの重み付けはゼロになり、平均測光値AVEが露出制御値Bとなる。
【0073】
この結果、画面全体の平均測光値で露出制御することができ、主被写体の暗さの影響を受けて主被写体よりも明るい背景が白とびしてしまうことを軽減することができる。例えば、図6に示したように平均測光値AVEが重み付け測光値Edefよりも所定値LEVEL_Nを超えて大きい場合であって、さらにフラッシュ発光時には、係数W=0としてもよい。
【0074】
本実施形態と第1の実施形態とを比較すると、第1の実施形態のように係数Wを徐々に減少させる場合は、主被写体の明るさの変化に柔軟に対応した露出制御値とすることができる。一方、本実施形態のように係数Wをゼロにする場合は、主被写体の明るさに左右されない安定した露出制御値とすることができる。
【0075】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態では、カメラが風景モード、人物撮影モードを含む複数の撮影モードを有する場合において、風景モードと人物撮影モードを考慮した露出演算処理を行うことを特徴とする。露出演算処理以外については第1の実施形態と同様でよいため、重複する説明を省略する。
【0076】
本実施形態における露出演算処理の詳細について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5において、図3と同様の処理ステップについては同様の参照数字を付して説明を省略する。図5と図3との相違は、重み付け測光値をS203で求めた後、S204でフラッシュの発光判別を行うまでの間に、撮影モードの判定処理を行うことである。
【0077】
すなわち、S331においてカメラ制御部10はカメラの撮影モードが風景モードであるかどうかを、例えば電子ダイアル16の状態を判断し、風景モードが設定されている場合にはS207に処理を遷移させる。さもなくば、カメラ制御部10は、処理をS332に遷移させる。
【0078】
S332でカメラ制御部10はカメラの撮影モードが人物撮影モードであるかどうかを判断し、人物撮影モードである場合には処理をS204に遷移させる。さもなくば、カメラ制御部10は処理をS207に遷移させる。
【0079】
人物撮影モードにおいては、主被写体が人物であると考えられる。そのため、平均測光値AVEが、デフォーカス量に応じた重み付け測光値Edefより所定値を超えて大きく、かつ、フラッシュ発光時には、露出制御値Bにおける重み付け測光値Edefの重みを減少させ、平均測光値AVEの重みを増加させる。この結果、主被写体が暗く、背景が明るいといったシーンにおいて、背景が白とびするような露出値が決定されることを抑制することができる。
【0080】
一方、風景撮影モードでは、フラッシュの発光判別や、平均測光値AVEと重み付け測光値Edefとの比較を行うことなく、露出制御値Bおける重み付け測光値Edefと平均測光値AVEの重みを変化させない。すなわち、露出制御値における重み付け測光値Edefの重み及び平均測光値AVEの重みを、フラッシュ非発光時や、平均測光値AVEが重み付け測光値Edefより所定値を超えて大きくない場合と同等とする。これは、風景撮影モードでは、主被写体の明るさによらず、デフォーカス情報を生かした露出制御値Bを求めることが望ましい場合が多いと考えられるからである。
【0081】
このように、本実施形態では、露出制御値Bにおける重み付け測光値Edefの重み(平均測光値AVEの重み)を予め定めた重みから減少させるかどうかを、撮影モードを考慮して判定する。従って、第1の実施形態の効果に加え、撮影モードに適した露出制御を行うことができる。
【0082】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、上述の実施形態は適宜組み合わせて実施してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焦点検出領域の各々についてデフォーカス量を検出する焦点検出手段と、
複数の測光領域の各々について測光値を検出する測光手段と、
前記測光手段で検出された測光値の平均測光値と、前記測光手段で検出された測光値に対して前記デフォーカス量が小さいほど大きな重み付けを行って得られる重み付け測光値とを用いて得られる露出制御値を用いて露出値を決定する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きくないか、撮影時にフラッシュを発光しない場合よりも、前記露出制御値の算出における前記重み付け測光値に係る重みを減少させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、前記平均測光値と前記重み付け測光値との差が大きいほど前記露出制御値の算出における前記重み付け測光値に係る重みを減少させることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、前記平均測光値を前記露出制御値とすることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記露出制御値の算出における前記重み付け測光値に係る重みを減少させる場合、前記平均測光値に係る重みを増加させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記重み付け測光値が、前記測光手段が前記複数の測光領域の各々について検出した測光値のうち、前記焦点検出領域に対応する測光領域で検出された測光値に対して前記デフォーカス量が小さいほど大きな重み付けを行い、前記焦点検出領域に対応しない測光領域で検出された測光値に対しては0の重み付けを行って得られることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
少なくとも風景モード、人物撮影モードを含む複数の撮影モードを有し、
前記制御手段は、撮影モードが前記人物撮影モードであり、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きくないか、撮影時にフラッシュを発光しない場合よりも、前記露出制御値の算出における前記重み付け測光値に係る重みを減少させて前記平均測光値に係る重みを増加させ、
撮影モードが前記風景モードである場合は、前記露出制御値の算出における前記重み付け測光値に係る重みと前記平均測光値に係る重みを、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きくないか、撮影時にフラッシュを発光しない場合と同等にすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
複数の焦点検出領域の各々についてデフォーカス量を検出する焦点検出手段と、
複数の測光領域の各々について測光値を検出する測光手段と、
を有する撮像装置の制御方法であって、
制御手段が、前記測光手段で検出された測光値の平均測光値と、前記測光手段で検出された測光値に対して前記デフォーカス量が小さいほど大きな重み付けを行って得られる重み付け測光値とを用いて得られる露出制御値を用いて露出値を決定する制御工程を有し、
前記制御手段は前記制御工程において、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きく、かつ撮影時にフラッシュを発光する場合には、前記平均測光値が前記重み付け測光値より所定値を超えて大きくないか、撮影時にフラッシュを発光しない場合よりも、前記露出制御値の算出における前記重み付け測光値に係る重みを減少させることを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76951(P2013−76951A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218324(P2011−218324)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】