撮像装置及び撮像装置の制御方法
【課題】IRカットフィルタが脱着できる撮像装置にて、IRカットフィルタを抜いたときの赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制できるようにする。
【解決手段】有効画素部とOB部とを備えた撮像素子と、撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断するIRカットフィルタとを有し、OBクランプ領域からの出力を用いて撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するOBクランプ回路と、IRカットフィルタの脱着に応じてOB部におけるOBクランプ領域を設定するクランプ領域制御回路とを有し、IRカットフィルタが抜かれている場合には、通常時と比較して有効画素部から離れた位置にOBクランプ領域を設定する。
【解決手段】有効画素部とOB部とを備えた撮像素子と、撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断するIRカットフィルタとを有し、OBクランプ領域からの出力を用いて撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するOBクランプ回路と、IRカットフィルタの脱着に応じてOB部におけるOBクランプ領域を設定するクランプ領域制御回路とを有し、IRカットフィルタが抜かれている場合には、通常時と比較して有効画素部から離れた位置にOBクランプ領域を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置の制御方法に関し、OB(Optical Black、オプティカルブラック)クランプの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD、CMOS等の固体撮像素子を用いたディジタルカメラやディジタルビデオカメラ等の撮像装置では、撮像素子にOB(Optical Black)画素と呼ばれるアルミニウム膜によって遮光された複数の画素を備えたOB部を有している。撮像装置は、このOB部の出力レベルを黒レベルの基準として用いることが多い。ここで、OB部の出力レベルを用いた黒レベル調整には以下のような問題があった。
【0003】
OB部内のOB画素は遮光膜により遮光されているが、強烈な光があたった場合には光漏れによりわずかであるが光電変換が行われてしまい、OB部で電荷が発生することがある。また、隣接する有効画素からのブルーミングによりOB部に電荷が漏れ出してしまうこともある。その状態でのOB部の出力レベルを用いて黒レベルを調整すると、結果として有効画素の黒レベルが間違った値となってしまうという現象が発生する。
【0004】
このようなOB部への光漏れやブルーミングに対する対策としては様々な提案がなされている。例えば特許文献1において提案されている撮像装置においては、OB部の出力レベルを検出して、その検出結果に応じて黒レベルを算出するOBクランプ領域を変化させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来例では演算処理が複雑になり、回路の増加や制御の複雑化を招くといった問題がある。また、OB部への光漏れは、強烈な光によって発生するものに限られない。赤外光は、通常光と比較して漏れこみやすい特性がある。撮像装置は、通常、レンズと撮像素子との間に赤外光を吸収するIRカットフィルタと呼ばれる光学ローパスフィルタ(LPF)を有しており、撮像素子への入射光における赤外成分はカットされる。ここで、低照度撮影(高感度撮影)時に感度を稼ぐためにIRカットフィルタを意図的に抜くことで高感度化を実現する赤外モードをもった撮像装置では、赤外モードでの動作時に赤外光によるOB部への光漏れがより顕著になるという現象が起こる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、例えばIRカットフィルタが脱着できる撮像装置にて、IRカットフィルタを抜いたときの赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像装置は、被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタと、前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域からの出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ手段と、前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部における前記クランプ領域を設定する制御手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置の制御方法は、被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタとを備える撮像装置の制御方法であって、前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域の出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ工程と、前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域を設定する制御工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複雑な制御を必要とすることなく、赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制でき、漏れこみ量の増加によるクランプ不具合が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態における撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】水平OBクランプ回路の構成例及び動作例を示す図である。
【図3】IRカットフィルタの有無に応じた分光感度特性を示す図である。
【図4】OB部への光漏れにより生じるOBクランプ不具合を説明するための図である。
【図5】OB部への光漏れを説明するための図である。
【図6】本実施形態における動作モードに応じたOBクランプ領域を示す図である。
【図7】第1の実施形態でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態における撮像装置の構成例を示す図である。
【図9】OB部への光漏れの漏れこみ量と光線角度の関係を示す概念図である。
【図10】第2の実施形態におけるOBクランプ領域制御を示す図である。
【図11】第2の実施形態でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、撮像素子において、被写体からの光を受光する有効画素が配置されている領域を、有効画素部と称す。また、撮像素子において、被写体からの光が遮光膜により遮光されるオプティカルブラック画素(OB画素)が配置されている領域を、オプティカルブラック部(OB部)と称す。さらに、OB部内にて、出力レベルが黒レベルの調整に用いられるOB画素範囲を、オプティカルブラッククランプ領域(OBクランプ領域)と称す。つまり、本発明の実施形態における撮像装置は、撮像素子のOB部に設定するOBクランプ領域内のOB画素からの出力レベルを用いて黒レベルを決定する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、撮像装置における一般的な水平OBクランプ回路の構成及び動作の概略を、図2を参照して説明する。図2(A)において、クランプ回路202は、SUM回路203、アナログ−ディジタル変換器(ADC)204、クランプイネーブルスイッチ205、平均化処理回路206、及びディジタル−アナログ変換器(DAC)207を有する。
【0013】
撮像素子201から出力された信号は、ADC204でディジタル信号に変換され、信号処理回路208に供給されるとともに、クランプイネーブルスイッチ205を介して平均化処理回路206に供給される。クランプイネーブルスイッチ205は、制御信号CLP_ENにより開閉制御され、制御信号CLP_ENがハイレベル(HI)の期間において閉じられる。
【0014】
図2(B)にタイミングチャートを示すように、水平同期信号HDに同期して、センサ出力としてOB部の出力(212)及び有効画素部の出力(213)が出力される。制御信号CLP_ENは、OB部の出力(212)がセンサ出力として出力されているときにハイレベルとなる(活性化される)信号である。なお、図2(B)において、VDは垂直同期信号である。
【0015】
制御信号CLP_ENがハイレベルである(活性化されている)間、ディジタル信号に変換された撮像素子201からの出力がディジタルフィルタの平均化処理回路206に入力され、黒レベルが演算される。この黒レベル信号をDAC207でアナログ信号に変換し、SUM回路203で有効画素部の出力値をOB部(OBクランプ領域)の出力の平均値でクランプする。以上が一般的な水平OBクランプである。
【0016】
図1は、第1の実施形態における撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図1において、IR(赤外)カットフィルタ103は、入射光における赤外成分をカット(遮断)する、言い換えれば入射光において赤外成分より短波長の成分を通過させる光学フィルタである。本実施形態における撮像装置は、このIRカットフィルタ103を脱着することで、低照度撮影(高感度撮影)を実現する赤外モードを有する。
【0017】
また、撮像素子104は、それぞれ複数の画素を備えた有効画素部及びOB部を有する。OBクランプ回路105は、黒レベルを決定しOBクランプを行う。OBクランプ回路105は、例えば前述した図2と同様に構成される。信号処理回路106は、撮像して得られる信号に各種の信号処理演算を施す。マイコン107は、撮像装置内の各部を制御する。赤外モード切り替え信号108は、撮影に係る動作状態(撮影モード)を赤外モードに切り替えるための信号である。
【0018】
フィルタ脱着回路109は、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間にIRカットフィルタ103を脱着するための回路である。クランプ領域制御回路110Aは、オプティカルブラック部におけるOBクランプ領域を設定するように制御する。クランプ領域制御回路110Aは、例えば制御信号CLP_ENをハイレベルに活性化する期間(パルス幅)を制御することで、任意にOBクランプ領域を設定可能となっている。レンズドライバ111は、マイコン107から供給されるF値、ズーム、フォーカス等の制御に係る制御信号に応じて、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)の制御を行う。
【0019】
図1に示す撮像装置において、撮像レンズ101に入射した光線は、絞り102を通過後、IRカットフィルタ103で赤外成分がカットされた状態で撮像素子104に結像する。撮像素子104からの出力信号は、OBクランプ回路105で決定した黒レベルでクランプ処理された後に、信号処理回路106で信号処理演算される。
【0020】
ここで、通常時の撮影では撮像装置の色再現性の向上のために赤外成分をカットする必要があるので、通常時はIRカットフィルタ103がレンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間に装着されている。図3(a)は撮像素子の一般的な分光感度特性を示している。図3(a)において、横軸が波長を示しており、波長の短い方から順に301がB(青)画素、302がG(緑)画素、303AがR(赤)画素の分光感度特性を示す。図3(a)に示されるように、可視光成分の波長限界304(例えば波長が780nm)を超える赤外波長領域にも分光感度が存在する。
【0021】
図3(b)はIRカットフィルタ103を通した後の分光感度特性を示しており、301がB(青)画素、302がG(緑)画素、303BがR(赤)画素の分光感度特性を示す。図3(b)に示されるように、可視光成分の波長限界304を超える波長成分がカットされることで、撮像装置の色再現性を向上させている。すなわち、通常時において、撮像装置は図3(b)の状態、IRカットフィルタ103をレンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間に装着した状態で動作している。それに対して、低照度撮影時に感度を稼ぐ赤外モードでは、IRカットフィルタ103を外し、可視光(波長が380nm〜780nm)以外のエネルギー成分を足し合わせることにより高感度化を実現する。
【0022】
次に、OB部への光漏れによるOBクランプ不具合と光漏れのメカニズムについて説明する。
図4は、OB部の近くに強い光源402があり、OBクランプ領域401に光漏れが発生してクランプ誤動作が発生した状態を示す概略図である。OBクランプ領域401において光漏れが発生すると、黒レベルとするOBクランプの平均レベルが正常値よりも高い値となってしまう。その結果、OBクランプの平均レベルを正常値より高い値としたラインにおいては、有効画素部が沈んだ画(403)となってしまう。
【0023】
図5は、OB部への光漏れを説明するための図である。図5において、OB部505では、OB遮光配線503からなる遮光膜により入射光が遮断されるため、入射光が画素501に到達しない。これに対し有効画素部506には、OB遮光配線503からなる遮光膜が設けられていないため、入射光が画素501に到達する。ところがOB部505と有効画素部506との境界付近において、斜めからの入射光502はシリコン裏面504で反射されOB部505の画素501へ漏れこむことがある。ここで、シリコンは赤外線の吸収係数が小さいため、赤外光ほどシリコン裏面504に到達しやすく裏面反射によるOB部への漏れこみが多くなる。つまり、IRカットフィルタ103を抜いた状態である赤外モードでの動作時は、通常時と比較してOB部への斜め入射光の漏れこみ量が多くなる。
【0024】
第1の実施形態における撮像装置の赤外モードでの動作について説明する。
ユーザが低照度撮影のために撮像装置の動作モードとして赤外モードを指定する操作を行うと、その操作に応じて出力された赤外モード切り替え信号108がマイコン107及びフィルタ脱着回路109に供給される。フィルタ脱着回路109は、赤外モード切り替え信号108を受信すると、IRカットフィルタ103が光線上から外れるように、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間に装着されているIRカットフィルタ103を抜く。また、マイコン107は、赤外モード切り替え信号108を受信すると、動作モードを赤外モードに切り替えることをクランプ領域制御回路110Aに通知する。
【0025】
クランプ領域制御回路110Aは、動作モードを赤外モードに切り替える通知を受けると、フィルタ脱着回路109によりIRカットフィルタ103が抜かれることと同期して、赤外モードに応じたOBクランプ領域を設定する。例えば、クランプ領域制御回路110Aは、図6に示すように赤外モード時には、制御信号CLP_ENをハイレベルに活性化する期間(パルス幅)が通常時より短くなるように変更する。このように、通常時におけるOBクランプ領域の幅と比較して赤外モード時のOBクランプ領域の幅を狭めるようにクランプ領域制御回路110Aが設定を変更することで、OBクランプ領域の端部を有効画素部から離すことができる。これにより、OBクランプ領域と有効画素部との距離が大きくなるように変更し、赤外光によるOB部への光漏れによる影響を抑制しOBクランプの不具合を回避する。
【0026】
なお、クランプ領域制御回路110Aは、赤外モードから通常の動作状態に切り替える通知を受けた場合には、OBクランプ領域の幅を広げるように制御信号CLP_ENをハイレベルにする期間(パルス幅)を変更し、通常時のOBクランプ領域に変更する。
【0027】
ここで、OBクランプ領域の幅を狭めることでクランプ性能が劣化することが考えられるが、低照度撮影のための赤外モード時においては、白黒又は緑一色の画像にすることが一般的である。したがって、OBクランプにおける黒レベルのずれ(黒ずれ)は、通常時の撮影と比較して求められる精度が緩和するため、本実施形態における制御は有効である。また、赤外モード時に短くする幅601は、例えば予めIRカットフィルタ103を外した状態でOB部への光漏れにおける漏れこみ量を測定しておき、漏れこみが発生しない値を設定すれば良い。
【0028】
図7は、第1の実施形態における撮像装置でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。ステップS1001において処理を開始すると、ステップS1002にて、クランプ領域制御回路110Aは、撮像装置の動作モードが赤外モードであるか否かを判定する。これにより、クランプ領域制御回路110Aは、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間にIRカットフィルタが装着されているか否かの検出を行う。
【0029】
ステップS1002において撮像装置の動作モードが赤外モードであると判定した場合には、ステップS1003にて、クランプ領域制御回路110Aは、赤外モードに応じたOBクランプ領域を設定する。具体的には、クランプ領域制御回路110Aは、OBクランプ領域の幅を通常時より狭め、有効画素部から離れた位置にOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS1005にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0030】
一方、ステップS1002において撮像装置の動作モードが赤外モードでないと判定した場合には、ステップS1004にて、クランプ領域制御回路110Aは、通常時のOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS1005にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0031】
第1の実施形態によれば、IRカットフィルタ103が脱着される赤外モード時には、通常時と比較してOBクランプ領域と有効画素部との距離を大きくするようにクランプ領域制御回路110AがOBクランプ領域を設定する。これにより、複雑な制御を行うことなく、赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制でき、クランプ不具合(クランプ誤動作)の発生を防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態における撮像装置の構成例を示すブロック図である。図8において、図1に示したブロック等と同一の機能を有するブロック等には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図8において、クランプ領域制御回路110Bは、例えば制御信号CLP_ENをハイレベルにする期間(パルス幅)を制御することで任意にOBクランプ領域を設定可能となっている。第2の実施形態における撮像装置は、動作モードを赤外モードに切り替える通知信号に加え、F値、ズーム、フォーカス等の制御に係るレンズドライバ111への制御信号がクランプ領域制御回路110Bに入力される点が第1の実施形態と相違する。それ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0033】
図9は、OB部への光漏れの漏れこみ量と光線角度の関係を示す概念図である。図9において、図5に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図9は、図5に示した図において入射光507を加えたものである。OB部への光漏れの漏れこみ量は、入射光502より入射光507の方が大きい。また、一般にレンズの絞り系F値が大きいほど直線光になる特性を持つ。そこで、第2の実施形態における撮像装置では、撮像装置の動作モードが赤外モードであるか否かに加え、さらに赤外モードである場合にはF値の値に応じてOBクランプ領域を設定するように制御する。
【0034】
例えば第2の実施形態では、クランプ領域制御回路110Bは、撮像装置の動作モードが赤外モードである場合に、F値とOBクランプ領域の有効画素部から離す距離とが、図10に示す実線901で表される関係となるようにOBクランプ領域を制御(設定)する。図10は、第2の実施形態におけるOBクランプ領域制御の一例を示しており、縦軸の有効画素部からの距離は図6に示した幅601に対応するものである。図10に示したように、F値が小さいほど平行光となりOB部への光漏れの漏れこみ量が大きいため、有効画素部から離す距離も大きくする。
【0035】
図10に示した例では、F値に対して有効画素部からの距離を線形に変化させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、F値と有効画素部からの距離との関係が非線形でF値の増加に対して単調に減少するようにしても良いし、F値に応じて有効画素部からの距離をステップ状に変化させるようにしても良い。また、光量の入射角度はF値以外にも焦点距離にも依存するためパラメータに焦点距離を加えても良い。
【0036】
図11は、第2の実施形態における撮像装置でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。ステップS2001において処理を開始すると、ステップS2002にて、クランプ領域制御回路110Bは、撮像装置の動作モードが赤外モードであるか否かを判定する。これにより、クランプ領域制御回路110Bは、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間にIRカットフィルタが装着されているか否かの検出を行う。
【0037】
ステップS2002において撮像装置の動作モードが赤外モードであると判定した場合には、ステップS2003にて、クランプ領域制御回路110Bは、F値を検出する。続いて、ステップS2005にて、クランプ領域制御回路110Bは、赤外モード及びF値に応じたOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS2006にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0038】
一方、ステップS2002において撮像装置の動作モードが赤外モードでないと判定した場合には、ステップS2004にて、クランプ領域制御回路110Bは、通常時のOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS2006にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0039】
第2の実施形態によれば、IRカットフィルタ103が脱着される赤外モード時には、通常時と比較してOBクランプ領域と有効画素部との距離を大きくするようにクランプ領域制御回路110BがOBクランプ領域を変更する。このとき、クランプ領域制御回路110Bは、F値の検出を行い、検出したF値に応じてOBクランプ領域を設定する。これにより、赤外成分によるOB部への光漏れに加え、F値依存による漏れこみ量を考慮したOBクランプ領域の設定が可能となり、赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制し、クランプ不具合(クランプ誤動作)の発生を防止することができる。
【0040】
なお、前述した実施形態では、OBクランプを水平OBクランプで行う撮像装置を一例として説明したが、垂直OBクランプを用いた撮像装置でも同様の制御が可能である。
【0041】
(本発明の他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0042】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
101…撮像レンズ、102…絞り、103…IRカットフィルタ、104…撮像素子、105…OBクランプ回路、107…マイコン、109…フィルタ脱着回路、110A・110B…クランプ領域制御回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置の制御方法に関し、OB(Optical Black、オプティカルブラック)クランプの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD、CMOS等の固体撮像素子を用いたディジタルカメラやディジタルビデオカメラ等の撮像装置では、撮像素子にOB(Optical Black)画素と呼ばれるアルミニウム膜によって遮光された複数の画素を備えたOB部を有している。撮像装置は、このOB部の出力レベルを黒レベルの基準として用いることが多い。ここで、OB部の出力レベルを用いた黒レベル調整には以下のような問題があった。
【0003】
OB部内のOB画素は遮光膜により遮光されているが、強烈な光があたった場合には光漏れによりわずかであるが光電変換が行われてしまい、OB部で電荷が発生することがある。また、隣接する有効画素からのブルーミングによりOB部に電荷が漏れ出してしまうこともある。その状態でのOB部の出力レベルを用いて黒レベルを調整すると、結果として有効画素の黒レベルが間違った値となってしまうという現象が発生する。
【0004】
このようなOB部への光漏れやブルーミングに対する対策としては様々な提案がなされている。例えば特許文献1において提案されている撮像装置においては、OB部の出力レベルを検出して、その検出結果に応じて黒レベルを算出するOBクランプ領域を変化させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−158830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来例では演算処理が複雑になり、回路の増加や制御の複雑化を招くといった問題がある。また、OB部への光漏れは、強烈な光によって発生するものに限られない。赤外光は、通常光と比較して漏れこみやすい特性がある。撮像装置は、通常、レンズと撮像素子との間に赤外光を吸収するIRカットフィルタと呼ばれる光学ローパスフィルタ(LPF)を有しており、撮像素子への入射光における赤外成分はカットされる。ここで、低照度撮影(高感度撮影)時に感度を稼ぐためにIRカットフィルタを意図的に抜くことで高感度化を実現する赤外モードをもった撮像装置では、赤外モードでの動作時に赤外光によるOB部への光漏れがより顕著になるという現象が起こる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、例えばIRカットフィルタが脱着できる撮像装置にて、IRカットフィルタを抜いたときの赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮像装置は、被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタと、前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域からの出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ手段と、前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部における前記クランプ領域を設定する制御手段と、を有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置の制御方法は、被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタとを備える撮像装置の制御方法であって、前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域の出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ工程と、前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域を設定する制御工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複雑な制御を必要とすることなく、赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制でき、漏れこみ量の増加によるクランプ不具合が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態における撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】水平OBクランプ回路の構成例及び動作例を示す図である。
【図3】IRカットフィルタの有無に応じた分光感度特性を示す図である。
【図4】OB部への光漏れにより生じるOBクランプ不具合を説明するための図である。
【図5】OB部への光漏れを説明するための図である。
【図6】本実施形態における動作モードに応じたOBクランプ領域を示す図である。
【図7】第1の実施形態でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態における撮像装置の構成例を示す図である。
【図9】OB部への光漏れの漏れこみ量と光線角度の関係を示す概念図である。
【図10】第2の実施形態におけるOBクランプ領域制御を示す図である。
【図11】第2の実施形態でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、撮像素子において、被写体からの光を受光する有効画素が配置されている領域を、有効画素部と称す。また、撮像素子において、被写体からの光が遮光膜により遮光されるオプティカルブラック画素(OB画素)が配置されている領域を、オプティカルブラック部(OB部)と称す。さらに、OB部内にて、出力レベルが黒レベルの調整に用いられるOB画素範囲を、オプティカルブラッククランプ領域(OBクランプ領域)と称す。つまり、本発明の実施形態における撮像装置は、撮像素子のOB部に設定するOBクランプ領域内のOB画素からの出力レベルを用いて黒レベルを決定する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
まず、撮像装置における一般的な水平OBクランプ回路の構成及び動作の概略を、図2を参照して説明する。図2(A)において、クランプ回路202は、SUM回路203、アナログ−ディジタル変換器(ADC)204、クランプイネーブルスイッチ205、平均化処理回路206、及びディジタル−アナログ変換器(DAC)207を有する。
【0013】
撮像素子201から出力された信号は、ADC204でディジタル信号に変換され、信号処理回路208に供給されるとともに、クランプイネーブルスイッチ205を介して平均化処理回路206に供給される。クランプイネーブルスイッチ205は、制御信号CLP_ENにより開閉制御され、制御信号CLP_ENがハイレベル(HI)の期間において閉じられる。
【0014】
図2(B)にタイミングチャートを示すように、水平同期信号HDに同期して、センサ出力としてOB部の出力(212)及び有効画素部の出力(213)が出力される。制御信号CLP_ENは、OB部の出力(212)がセンサ出力として出力されているときにハイレベルとなる(活性化される)信号である。なお、図2(B)において、VDは垂直同期信号である。
【0015】
制御信号CLP_ENがハイレベルである(活性化されている)間、ディジタル信号に変換された撮像素子201からの出力がディジタルフィルタの平均化処理回路206に入力され、黒レベルが演算される。この黒レベル信号をDAC207でアナログ信号に変換し、SUM回路203で有効画素部の出力値をOB部(OBクランプ領域)の出力の平均値でクランプする。以上が一般的な水平OBクランプである。
【0016】
図1は、第1の実施形態における撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図1において、IR(赤外)カットフィルタ103は、入射光における赤外成分をカット(遮断)する、言い換えれば入射光において赤外成分より短波長の成分を通過させる光学フィルタである。本実施形態における撮像装置は、このIRカットフィルタ103を脱着することで、低照度撮影(高感度撮影)を実現する赤外モードを有する。
【0017】
また、撮像素子104は、それぞれ複数の画素を備えた有効画素部及びOB部を有する。OBクランプ回路105は、黒レベルを決定しOBクランプを行う。OBクランプ回路105は、例えば前述した図2と同様に構成される。信号処理回路106は、撮像して得られる信号に各種の信号処理演算を施す。マイコン107は、撮像装置内の各部を制御する。赤外モード切り替え信号108は、撮影に係る動作状態(撮影モード)を赤外モードに切り替えるための信号である。
【0018】
フィルタ脱着回路109は、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間にIRカットフィルタ103を脱着するための回路である。クランプ領域制御回路110Aは、オプティカルブラック部におけるOBクランプ領域を設定するように制御する。クランプ領域制御回路110Aは、例えば制御信号CLP_ENをハイレベルに活性化する期間(パルス幅)を制御することで、任意にOBクランプ領域を設定可能となっている。レンズドライバ111は、マイコン107から供給されるF値、ズーム、フォーカス等の制御に係る制御信号に応じて、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)の制御を行う。
【0019】
図1に示す撮像装置において、撮像レンズ101に入射した光線は、絞り102を通過後、IRカットフィルタ103で赤外成分がカットされた状態で撮像素子104に結像する。撮像素子104からの出力信号は、OBクランプ回路105で決定した黒レベルでクランプ処理された後に、信号処理回路106で信号処理演算される。
【0020】
ここで、通常時の撮影では撮像装置の色再現性の向上のために赤外成分をカットする必要があるので、通常時はIRカットフィルタ103がレンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間に装着されている。図3(a)は撮像素子の一般的な分光感度特性を示している。図3(a)において、横軸が波長を示しており、波長の短い方から順に301がB(青)画素、302がG(緑)画素、303AがR(赤)画素の分光感度特性を示す。図3(a)に示されるように、可視光成分の波長限界304(例えば波長が780nm)を超える赤外波長領域にも分光感度が存在する。
【0021】
図3(b)はIRカットフィルタ103を通した後の分光感度特性を示しており、301がB(青)画素、302がG(緑)画素、303BがR(赤)画素の分光感度特性を示す。図3(b)に示されるように、可視光成分の波長限界304を超える波長成分がカットされることで、撮像装置の色再現性を向上させている。すなわち、通常時において、撮像装置は図3(b)の状態、IRカットフィルタ103をレンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間に装着した状態で動作している。それに対して、低照度撮影時に感度を稼ぐ赤外モードでは、IRカットフィルタ103を外し、可視光(波長が380nm〜780nm)以外のエネルギー成分を足し合わせることにより高感度化を実現する。
【0022】
次に、OB部への光漏れによるOBクランプ不具合と光漏れのメカニズムについて説明する。
図4は、OB部の近くに強い光源402があり、OBクランプ領域401に光漏れが発生してクランプ誤動作が発生した状態を示す概略図である。OBクランプ領域401において光漏れが発生すると、黒レベルとするOBクランプの平均レベルが正常値よりも高い値となってしまう。その結果、OBクランプの平均レベルを正常値より高い値としたラインにおいては、有効画素部が沈んだ画(403)となってしまう。
【0023】
図5は、OB部への光漏れを説明するための図である。図5において、OB部505では、OB遮光配線503からなる遮光膜により入射光が遮断されるため、入射光が画素501に到達しない。これに対し有効画素部506には、OB遮光配線503からなる遮光膜が設けられていないため、入射光が画素501に到達する。ところがOB部505と有効画素部506との境界付近において、斜めからの入射光502はシリコン裏面504で反射されOB部505の画素501へ漏れこむことがある。ここで、シリコンは赤外線の吸収係数が小さいため、赤外光ほどシリコン裏面504に到達しやすく裏面反射によるOB部への漏れこみが多くなる。つまり、IRカットフィルタ103を抜いた状態である赤外モードでの動作時は、通常時と比較してOB部への斜め入射光の漏れこみ量が多くなる。
【0024】
第1の実施形態における撮像装置の赤外モードでの動作について説明する。
ユーザが低照度撮影のために撮像装置の動作モードとして赤外モードを指定する操作を行うと、その操作に応じて出力された赤外モード切り替え信号108がマイコン107及びフィルタ脱着回路109に供給される。フィルタ脱着回路109は、赤外モード切り替え信号108を受信すると、IRカットフィルタ103が光線上から外れるように、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間に装着されているIRカットフィルタ103を抜く。また、マイコン107は、赤外モード切り替え信号108を受信すると、動作モードを赤外モードに切り替えることをクランプ領域制御回路110Aに通知する。
【0025】
クランプ領域制御回路110Aは、動作モードを赤外モードに切り替える通知を受けると、フィルタ脱着回路109によりIRカットフィルタ103が抜かれることと同期して、赤外モードに応じたOBクランプ領域を設定する。例えば、クランプ領域制御回路110Aは、図6に示すように赤外モード時には、制御信号CLP_ENをハイレベルに活性化する期間(パルス幅)が通常時より短くなるように変更する。このように、通常時におけるOBクランプ領域の幅と比較して赤外モード時のOBクランプ領域の幅を狭めるようにクランプ領域制御回路110Aが設定を変更することで、OBクランプ領域の端部を有効画素部から離すことができる。これにより、OBクランプ領域と有効画素部との距離が大きくなるように変更し、赤外光によるOB部への光漏れによる影響を抑制しOBクランプの不具合を回避する。
【0026】
なお、クランプ領域制御回路110Aは、赤外モードから通常の動作状態に切り替える通知を受けた場合には、OBクランプ領域の幅を広げるように制御信号CLP_ENをハイレベルにする期間(パルス幅)を変更し、通常時のOBクランプ領域に変更する。
【0027】
ここで、OBクランプ領域の幅を狭めることでクランプ性能が劣化することが考えられるが、低照度撮影のための赤外モード時においては、白黒又は緑一色の画像にすることが一般的である。したがって、OBクランプにおける黒レベルのずれ(黒ずれ)は、通常時の撮影と比較して求められる精度が緩和するため、本実施形態における制御は有効である。また、赤外モード時に短くする幅601は、例えば予めIRカットフィルタ103を外した状態でOB部への光漏れにおける漏れこみ量を測定しておき、漏れこみが発生しない値を設定すれば良い。
【0028】
図7は、第1の実施形態における撮像装置でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。ステップS1001において処理を開始すると、ステップS1002にて、クランプ領域制御回路110Aは、撮像装置の動作モードが赤外モードであるか否かを判定する。これにより、クランプ領域制御回路110Aは、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間にIRカットフィルタが装着されているか否かの検出を行う。
【0029】
ステップS1002において撮像装置の動作モードが赤外モードであると判定した場合には、ステップS1003にて、クランプ領域制御回路110Aは、赤外モードに応じたOBクランプ領域を設定する。具体的には、クランプ領域制御回路110Aは、OBクランプ領域の幅を通常時より狭め、有効画素部から離れた位置にOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS1005にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0030】
一方、ステップS1002において撮像装置の動作モードが赤外モードでないと判定した場合には、ステップS1004にて、クランプ領域制御回路110Aは、通常時のOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS1005にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0031】
第1の実施形態によれば、IRカットフィルタ103が脱着される赤外モード時には、通常時と比較してOBクランプ領域と有効画素部との距離を大きくするようにクランプ領域制御回路110AがOBクランプ領域を設定する。これにより、複雑な制御を行うことなく、赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制でき、クランプ不具合(クランプ誤動作)の発生を防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態における撮像装置の構成例を示すブロック図である。図8において、図1に示したブロック等と同一の機能を有するブロック等には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図8において、クランプ領域制御回路110Bは、例えば制御信号CLP_ENをハイレベルにする期間(パルス幅)を制御することで任意にOBクランプ領域を設定可能となっている。第2の実施形態における撮像装置は、動作モードを赤外モードに切り替える通知信号に加え、F値、ズーム、フォーカス等の制御に係るレンズドライバ111への制御信号がクランプ領域制御回路110Bに入力される点が第1の実施形態と相違する。それ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0033】
図9は、OB部への光漏れの漏れこみ量と光線角度の関係を示す概念図である。図9において、図5に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図9は、図5に示した図において入射光507を加えたものである。OB部への光漏れの漏れこみ量は、入射光502より入射光507の方が大きい。また、一般にレンズの絞り系F値が大きいほど直線光になる特性を持つ。そこで、第2の実施形態における撮像装置では、撮像装置の動作モードが赤外モードであるか否かに加え、さらに赤外モードである場合にはF値の値に応じてOBクランプ領域を設定するように制御する。
【0034】
例えば第2の実施形態では、クランプ領域制御回路110Bは、撮像装置の動作モードが赤外モードである場合に、F値とOBクランプ領域の有効画素部から離す距離とが、図10に示す実線901で表される関係となるようにOBクランプ領域を制御(設定)する。図10は、第2の実施形態におけるOBクランプ領域制御の一例を示しており、縦軸の有効画素部からの距離は図6に示した幅601に対応するものである。図10に示したように、F値が小さいほど平行光となりOB部への光漏れの漏れこみ量が大きいため、有効画素部から離す距離も大きくする。
【0035】
図10に示した例では、F値に対して有効画素部からの距離を線形に変化させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、F値と有効画素部からの距離との関係が非線形でF値の増加に対して単調に減少するようにしても良いし、F値に応じて有効画素部からの距離をステップ状に変化させるようにしても良い。また、光量の入射角度はF値以外にも焦点距離にも依存するためパラメータに焦点距離を加えても良い。
【0036】
図11は、第2の実施形態における撮像装置でのOBクランプ領域制御処理の一例を示すフローチャートである。ステップS2001において処理を開始すると、ステップS2002にて、クランプ領域制御回路110Bは、撮像装置の動作モードが赤外モードであるか否かを判定する。これにより、クランプ領域制御回路110Bは、レンズ部(撮像レンズ101及び絞り102)と撮像素子104との間にIRカットフィルタが装着されているか否かの検出を行う。
【0037】
ステップS2002において撮像装置の動作モードが赤外モードであると判定した場合には、ステップS2003にて、クランプ領域制御回路110Bは、F値を検出する。続いて、ステップS2005にて、クランプ領域制御回路110Bは、赤外モード及びF値に応じたOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS2006にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0038】
一方、ステップS2002において撮像装置の動作モードが赤外モードでないと判定した場合には、ステップS2004にて、クランプ領域制御回路110Bは、通常時のOBクランプ領域を設定する。そして、ステップS2006にて、撮像装置はOBクランプ処理を実行する。
【0039】
第2の実施形態によれば、IRカットフィルタ103が脱着される赤外モード時には、通常時と比較してOBクランプ領域と有効画素部との距離を大きくするようにクランプ領域制御回路110BがOBクランプ領域を変更する。このとき、クランプ領域制御回路110Bは、F値の検出を行い、検出したF値に応じてOBクランプ領域を設定する。これにより、赤外成分によるOB部への光漏れに加え、F値依存による漏れこみ量を考慮したOBクランプ領域の設定が可能となり、赤外成分によるOB部への光漏れによる影響を抑制し、クランプ不具合(クランプ誤動作)の発生を防止することができる。
【0040】
なお、前述した実施形態では、OBクランプを水平OBクランプで行う撮像装置を一例として説明したが、垂直OBクランプを用いた撮像装置でも同様の制御が可能である。
【0041】
(本発明の他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0042】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
101…撮像レンズ、102…絞り、103…IRカットフィルタ、104…撮像素子、105…OBクランプ回路、107…マイコン、109…フィルタ脱着回路、110A・110B…クランプ領域制御回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、
前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタと、
前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域からの出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ手段と、
前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部における前記クランプ領域を設定する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、前記光学フィルタが装着されている場合と比較して前記有効画素部から離れた位置に前記クランプ領域を設定することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、絞り値及び焦点距離の少なくとも一方に応じて前記クランプ領域の位置を変更することを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、前記光学フィルタが装着されている場合と比較して前記クランプ領域の幅を狭くすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記クランプ領域に対応する期間に活性化される制御信号を前記クランプ手段に出力し、
前記クランプ手段は、前記制御信号が活性化されている期間の前記撮像素子からの出力を用いて前記黒レベルを決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、前記光学フィルタが装着されている場合と比較して前記制御信号が活性化される期間を短くすることを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学フィルタを脱着する脱着手段を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタとを備える撮像装置の制御方法であって、
前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域の出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ工程と、
前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域を設定する制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項1】
被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、
前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタと、
前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域からの出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ手段と、
前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部における前記クランプ領域を設定する制御手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、前記光学フィルタが装着されている場合と比較して前記有効画素部から離れた位置に前記クランプ領域を設定することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、絞り値及び焦点距離の少なくとも一方に応じて前記クランプ領域の位置を変更することを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、前記光学フィルタが装着されている場合と比較して前記クランプ領域の幅を狭くすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記クランプ領域に対応する期間に活性化される制御信号を前記クランプ手段に出力し、
前記クランプ手段は、前記制御信号が活性化されている期間の前記撮像素子からの出力を用いて前記黒レベルを決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記光学フィルタが抜かれている場合に、前記光学フィルタが装着されている場合と比較して前記制御信号が活性化される期間を短くすることを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学フィルタを脱着する脱着手段を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
被写体からの光を受光する複数の画素からなる有効画素部と、遮光された複数のオプティカルブラック画素からなるオプティカルブラック部とを備えた撮像素子と、前記撮像素子に入射される光の赤外成分を遮断する光学フィルタとを備える撮像装置の制御方法であって、
前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域の出力を用いて前記撮像素子の出力に係る黒レベルを決定するクランプ工程と、
前記光学フィルタの脱着に応じて前記オプティカルブラック部におけるクランプ領域を設定する制御工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−50024(P2012−50024A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192771(P2010−192771)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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