説明

撮像装置

【課題】飛び領域を部分的に減光することができ、また、減光する部分以外の部分に関して影響を与えずに、無理なく撮影時のダイナミックレンジを向上させることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、測光手段により測定された輝度に基づいて、電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、判定手段により電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域を概略カバーできるように、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面に配置された減光部材と、減光部材を駆動する減光部材駆動手段と、各手段を制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カメラ等の撮像装置に関し、白飛び領域を減光することにより、撮影時のダイナミックレンジを向上させる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する技術としては、以下のものが開示されている。
例えば、特許文献1には、NDフィルタ被覆のある撮像素子と、NDフィルタ被覆のない撮像素子とを交互に配列し、被覆のない撮像素子の出力が飽和した場合は、被覆のある撮像素子のデータを採用して撮影画像を得る「撮像装置」が開示されている。
例えば、特許文献2には、偏光フィルタを、光軸上に進退かつ進出時に光軸上で予備回転させ、最適な位置を記憶し、最適な位置に回転させて撮影する「撮像装置および撮像装置の偏光フィルタ回転制御方法」が開示されている。
例えば、特許文献3には、絞り開放時の開口効率低下に伴う周辺光量落ちを、濃度可変のNDフィルタにより補正する「カメラの光量調整装置」が開示されている。
【特許文献1】特開2000−41189号公報
【特許文献2】特開2007−3970号公報
【特許文献3】特許第3461061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1は、減光部材(NDフィルタ)を用いて、撮像素子に入る光量を制限するものであるが、あらかじめ減光部材のある素子と、減光部材のない素子とを交互に配列して使い分けるため、解像度が半分となってしまい、高解像度での撮影ができないという欠点がある。
【0004】
特許文献2は、光軸上に進退可能かつ光軸上で回転可能な減光部材(偏光フィルタ)を撮影前に予備回転させて最適な位置を判定し、撮影時に最適位置に偏光フィルタを回転させる技術であり、最適な位置を判定する方法として、被写体輝度が最低になるポイントや、最高輝度と最低輝度の中間を最適値とする方法などが提示されているが、減光を必要としない部分、すなわちダイナミックレンジを超えていない部分の光量もダウンさせてしまうことになり、全体のシャッタ速度が遅くなってブレを生じたり、低輝度部分が表現できなくなったりするなどの不具合を生じる可能性がある。また、偏光フィルタの取り付け/取り外しを含めて、撮影前に手動で確認しながら回転させるという煩雑な操作が必要となる。
【0005】
特許文献3は、レンズの物理的特性値(周辺光量の低下分)を、中央部と周辺部とで濃度を変えた減光部材(NDフィルタ)にて補正し、中央部の光を周辺部の光よりも強く遮ることで、中央部の受光量を下げて周辺部との入射光を均一化するものであり、本願発明のように、「現状の露出はそのままにて、光の強い部分のみ遮り、白飛びを防止すること」を目的とするものではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、白飛び領域を部分的に減光することができ、また、減光する部分以外の部分に関して影響を与えずに、無理なく撮影時のダイナミックレンジを向上させることができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の第1の撮像装置は、被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、測光手段により測定された輝度に基づいて、電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、判定手段により電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域を概略カバーできるように、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面に配置された減光部材と、減光部材を駆動する減光部材駆動手段と、各手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の撮像装置は、被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、測光手段により測定された輝度に基づいて、電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、撮像光学系の光軸を中心として回転することで減光効果または減光位置が変わるように、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面に配置された減光部材と、判定手段により電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域の輝度が下がるように、減光部材を回転駆動する減光部材駆動手段と、各手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の撮像装置は、本発明の第1または第2の撮像装置において、減光部材駆動手段は、撮影時または撮影準備時に、減光部材を、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面に進出させることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の撮像装置は、本発明の第1から第3のいずれか1つの撮像装置において、減光部材駆動手段は、不要時に、減光部材を、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面から退出させることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の撮像装置は、本発明の第1から第4のいずれか1つの撮像装置において、減光部材として、NDフィルタ素材、偏光フィルタ素材、カラーフィルタ素材のうちのいずれかを使用することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の撮像装置は、被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、測光手段により測定された輝度に基づいて、電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、撮影範囲内の任意の領域を減光できる電気的減光素子と、判定手段により電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域を減光するように、電気的減光素子を駆動する電気的減光素子駆動手段と、各手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の撮像装置は、本発明の第6の撮像装置において、電気的減光素子駆動手段は、撮影時または撮影準備時に、電気的減光素子を、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面に進出させることを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の撮像装置は、本発明の第6または第7の撮像装置において、電気的減光素子駆動手段は、不要時に、電気的減光素子を、撮像光学系の光軸上または電気的撮像手段の前面から退出させることを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の撮像装置は、本発明の第6から第8のいずれか1つの撮像装置において、電気的減光素子として、液晶素材を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、白飛び領域を部分的に減光することが可能となり、また、減光する部分以外の部分に関して影響を与えずに、無理なく撮影時のダイナミックレンジを向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
<全体構成説明>
本発明の一実施形態である撮像装置の構成を図1に示す。
制御装置(CPU:Central Processing Unit)1は、本撮像装置のすべての動作を制御する制御機能を有しており、その内部には各種の判断(判定)や演算を行うための演算手段、時間をカウントするための時間カウント手段(タイマ)手段などを含んでいる。
【0019】
測光センサ2は、被写体の明るさを検出するためのセンサであり、制御装置1からのコントロールにより駆動され、撮影範囲内の複数のポイント(領域)における被写体の明るさに関連する信号を検知し、制御装置1に入力する。なお、本発明は、専用の測光センサ2を設けずに、撮像素子10による撮像データを用いて、複数の領域の明るさを求める構成としてもよい。
【0020】
第1レリーズSW(Switch)3は、撮影を行うためのレリーズSWの半押しによりONとなるスイッチである。第2レリーズSW(Switch)4は、上記レリーズSWの全押し(押し込み)によりONとなるスイッチである。図1では、それぞれ別々のスイッチとして記載しているが、本来は、同一のスイッチ上で上記動作を行うものである。
【0021】
フォーカス駆動装置5、シャッタ駆動装置6は、撮影のためのフォーカス駆動及びシャッタ駆動を行うためのものである。また、フォーカス駆動装置5は、撮像素子10からの撮像データ(オートフォーカスのための評価データ)を取得しながらフォーカス駆動範囲(撮影可能な最短距離〜無限遠までの)領域全域をスキャンすることで、合焦ポイントを探す役割も備えている。
【0022】
表示装置7は、撮影前のモニタリング表示、再生画像表示、事前設定などを行うためのメニュー表示などを行う液晶などの表示装置である。
【0023】
記憶装置8は、撮影済み画像データを制御装置1にて所定の保存形式に変換後、保存するための保存装置である。
【0024】
フィルタ駆動装置9は、各種フィルタなどの減光部材や液晶素材などの電気的減光素子を必要に応じて、光軸上に進退させるための駆動装置である。本発明では、光軸上に進退させるとともに光軸上に進出した時に、光軸を中心として回転できる機構としているが、光軸上への進退機構だけを持つ構成としてもよい。
減光部材や電気的減光素子の光軸内への挿入(進出)、回転方法としては、特許文献2に開示があるように、偏光フィルタ特定レンズ枠と共通の退避回動軸を中心として回動可能なフィルタ挿脱枠に保持されており、さらにフィルタ挿脱枠に対しても回転可能となっている構成などを用いればよい。
【0025】
撮像素子10は、被写体像を電気的に撮像し、制御装置1に入力するためのものであり、CCD、CMOSなどの素子である。この撮像素子10は、図示しない撮像レンズ系とともに撮像光学系を構成する。
【0026】
なお、図1に示す各装置は、必要なドライバを含むものとする。
【0027】
本発明の概念を図2に示す。本発明は、ダイナミックレンジオーバーの領域が有る場合に、部分的に減光可能な減光部材(部分NDフィルタ)を光軸上に挿入する(進出させる)ことで、その部分を減光し、ダイナミックレンジ内に納めようとするものである。また、本発明は、回転することにより、減光箇所が変わったり、減光効果が変わったりする減光部材(部分NDフィルタ、円偏光フィルタ、カラーフィルタなど)を用いて、光軸上への進退と光軸上での回転により減光効果を高める構成もある。
【0028】
次に、以上説明した構成を採る本発明の撮像装置の実施例1〜4についてそれぞれ説明する。
【実施例1】
【0029】
図3のフローチャートは、部分減光フィルタ(NDフィルタ)を用いた場合の実施例である。
半押しにより第1レリーズSW3がONされると、測光センサ2及び演算手段11により、規定の領域(撮像範囲内の複数の領域)毎の測光及び測光演算が行われ(ステップS1)、最終AE(自動露出)が決定される(ステップS2)。
【0030】
演算手段11により、測光した輝度または輝度に関する測定データが、所定の閾値である白飛び(オーバー)判定レベルよりも高いかどうか、すなわち、その測光領域が撮像素子10のダイナミックレンジを超える領域(ダイナミックレンジ外となる領域)であるか否かが判定される(ステップS3)。基本的に、モニタリング表示は常時(撮影準備時)行われているものとする。
【0031】
ダイナミックレンジオーバー領域がある場合は(ステップS3/YES)、その領域部分に適応する部分減光フィルタを選択し(ステップS4)、フィルタ駆動装置9により、その部分減光フィルタが光軸上に進出(挿入)される(ステップS5)。なお、ダイナミックレンジオーバー領域がない場合は(ステップS3/NO)、ステップS7へ進む。
【0032】
制御装置1により、進出させた部分減光フィルタに合わせて画像処理が行われ、表示装置7の表示が更新される(ステップS6)。なお、このステップS6の処理は、基本的には無くても良いが、白飛び部分以外にも減光フィルタがかかってしまうので、あらかじめテストチャートの減光フィルタ有り、無しの場合の画像を取り込むなどして、処理を決めておき、実際の減光フィルタ無しでの白飛び領域以外の部分は、減光分をカバーする処理となる。
【0033】
その後、フォーカス駆動装置5により、フォーカスレンズが駆動され、合焦位置が判定されて(ステップS7)、フォーカスレンズが合焦位置に固定される(ステップS8)。
【0034】
その後、通常の撮影動作が行われる。すなわち、全押しにより第2レリーズSW4がONされると(ステップS9/YES)、シャッタ駆動装置9により、シャッタ駆動操作が行われ(ステップS10)、記憶装置8に画像データが保存され(ステップS11)、フィルタ駆動装置9により、部分減光フィルタが退出された後(ステップS12)、撮影動作を終了する。
【0035】
なお、ステップS9において、時間カウント手段12により計測された時間があらかじめ定められた時間を過ぎても、全押しによって第2レリーズSW4がONされない場合(ステップS9/NO)、半押しにより第1レリーズSW3がONされたかを判定し(ステップS13)、第1レリーズSW3がONされない場合(ステップS13/NO)、フォーカス駆動装置5によりフォーカス戻し動作が行われ、フィルタ駆動装置9により、部分減光フィルタが退出された後(ステップS12)、撮影動作を終了する。ステップS13において、第1レリーズSW3がONされた場合は(ステップS13/YES)、ステップS1に戻り、測光が行われる。
【0036】
以上説明したように、本実施例によれば、白飛び領域を部分的に減光することが可能となり、感度変更により画質を低下させたり、特殊な撮影方法(複数枚合成)や、写真の即時性、真贋(画像加工)を変更したりすることなく、無理なく撮影時のダイナミックレンジを向上せることができる。また、全体減光の場合と違って、減光したい部分以外の部分に関して影響を与えない。
【0037】
ここで、本実施例と従来技術との比較を以下に説明する。
特許文献1と本実施例とでは、撮像素子に入る光量を、減光部材により制限しようとする思想は同じであるが、特許文献1では、あらかじめ、減光部材のある素子と、減光部材のない素子とを交互に配列して使い分けるため、解像度が半分となってしまい、高解像度での撮影ができないという欠点がある。これに対し、本実施例では、撮像素子はそのまま使用し、オーバーフローした領域に対応する光学的位置を減光部材にてカバーするため、解像度には全く影響を与えないで撮影できる。
【0038】
また、ダイナミックレンジ確保のために、高輝度時に減光部材を光軸上に進出させ、低輝度時に減光部材を光軸上から退出させるシステムは、市販の多くのカメラで実施されている公知技術であるが、この公知技術の場合は、減光の必要の無い部分、すなわち、ダイナミックレンジを超えていない部分の光量もダウンさせてしまうことになり、全体のシャッタ速度が遅くなってブレを生じたり、低輝度部分が表現できなくなったりするなどの不具合を生じる可能性があった。これに対し、本実施例では、部分的に減光素材を進退させるため、上記不具合が生じる可能性はない。
【0039】
特許文献3は、レンズの物理的特性値(周辺光量の低下分)を、中央部と周辺部で濃度を変えたNDフィルタ(減光フィルタ)にて補正し、中央部の光を周辺部よりも強く遮ることで、中央部の受光量を下げて周辺部との入射光を均一化するものである。これに対し、本実施例は、「現状の露出はそのままにて、光の強い部分のみ遮り、白飛びを防止する」という主旨であるので、特許文献3とは、課題、効果が異なる。
【実施例2】
【0040】
図4のフローチャートは、円偏光フィルタを用いた場合の実施例である。
半押しにより第1レリーズSW3がONされると、測光センサ2及び演算手段11により、規定の領域(撮像範囲内の複数の領域)毎の測光及び測光演算が行われ(ステップS21)、最終AE(自動露出)が決定される(ステップS22)。
【0041】
演算手段11により、測光した輝度または輝度に関する測定データが、所定の閾値である白飛び(オーバー)判定レベルよりも高いかどうか、すなわち、その測光領域が撮像素子10のダイナミックレンジを超える領域(ダイナミックレンジ外となる領域)であるか否かが判定される(ステップS23)。基本的に、モニタリング表示は常時(撮影準備時)行われているものとする。
【0042】
ダイナミックレンジオーバー領域がある場合は(ステップS23/YES)、フィルタ駆動装置9により、円偏光フィルタが光軸上に進出(挿入)される(ステップS24)。なお、ダイナミックレンジオーバー領域がない場合は(ステップS23/NO)、ステップS28へ進む。
【0043】
円偏光フィルタは、光量を減らす効果もあるので、ステップS24における光軸上への進出だけでも、上記白飛び部分が改善される可能性もある。
【0044】
そのため、測光センサ2によりオーバー領域について再度測光を行い(ステップS25)、演算手段11によりオーバー領域の輝度が最小になったかどうかを判定しながら(ステップS26)、フィルタ駆動装置9により円偏光フィルタを回転させる(ステップS26)。そして、オーバー領域の測光輝度が最小となるような回転角にて、回転を停止させる(ステップS26/YES)。このことは、円偏光フィルタの本来の役割であり、反射部分の反射低減効果を利用したものである。
【0045】
なお、ここでは、フィルタ挿入後の画像処理は記述していないが、進出した円偏光部分変更フィルタに合わせて画像処理を行って表示を更新してもよい。なぜならば、オーバー部分は減光されるが、ギリギリ描写されていた低輝度部分がつぶれないようにする処理を行う場合があるからであり、この部分は、あらかじめテストチャートの減光フィルタ有り、無しの場合の画像を取り込むなどして、処理を決めておき、実際の減光フィルタ無しでの白飛び領域以外の部分は、減光分をカバーする処理をおこなったり、フィルタ無しの場合の画像を利用して合成して再現したりする方法が取り得る。
【0046】
その後の動作、すなわちステップS28〜ステップS35の動作は、上記実施例1で説明した、図3のステップS7〜S14と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0047】
以上説明したように、本実施例によれば、ダイナミックレンジ向上に付随して、減光部材として円偏光フィルタを用いた場合、全体減光と同時に画像の特に光っている部分の反射を押さえ、コントラストを相対的に向上させ、総合的な画質を向上させる効果がある。また、不要な場合は自動にて光軸上から退出できることで、低輝度側の表現もおろそかになることを防止することができる。
【0048】
ここで、本実施例と従来技術との比較を以下に説明する。
特許文献2では、光軸上に進退させ、かつ、光軸上で回転可能な偏光フィルタを撮影前に予備回転させて最適な位置を判定し、撮影時に最適位置に偏光フィルタを回転させる技術である。最適位置を判定する方法として、被写体輝度が最低になるポイントや、最高輝度最低輝度の中間を最適値とする方法などが提示されているが、必要の無い部分、すなわち、ダイナミックレンジを超えていない部分の光量もダウンさせてしまうことになり、全体のシャッタ速度が遅くなりブレを生じたり、低輝度部分が表現できなくなるなどの不具合を生じたりする可能性があるし、マニュアルで取り付け取り外しを含めて、撮影前に手動にて確認しながら回転させるという煩雑な操作が必要となる。これに対し、本実施例では、回転することで部分的に減光可能な減光部材(円偏光フィルタ)を使用することで、不要な部分の光量落ちを招くことなく減光できたり、全体の輝度ではなく、撮影範囲内の一部の輝度を判断してフィルタを光軸に挿入して、撮影時に回転したりすることで、一部領域に対して最も減光効果が大きい位置に設定して撮影することができる(全体の輝度レベルは問題無くても、酷く光って表現できない部分の反射を押さえる。円偏光フィルタを使用する場合は全体光量もダウンするため、ダイナミックレンジ内に納める効果も大きい)。
【0049】
特許文献3は、レンズの物理的特性値(周辺光量の低下分)を、中央部と周辺部で濃度を変えたNDフィルタ(減光フィルタ)にて補正し、中央部の光を周辺部よりも強く遮ることで、中央部の受光量を下げて周辺部との入射光を均一化するものであり、本実施例のように、回転することで減光部分や減光効果が異なる減光部材を使用したものではないため、本実施例とは、作用、効果が異なる。
【実施例3】
【0050】
図5のフローチャートは、電気的減光素子の一例として液晶素子を用いた場合の実施例である。
半押しにより第1レリーズSW3がONされると、測光センサ2及び演算手段11により、規定の領域(撮像範囲内の複数の領域)毎の測光及び測光演算が行われ(ステップS41)、最終AE(自動露出)が決定される(ステップS42)。
【0051】
演算手段11により、測光した輝度または輝度に関する測定データが、所定の閾値である白飛び(オーバー)判定レベルよりも高いかどうか、すなわち、その測光領域が撮像素子10のダイナミックレンジを超える領域(ダイナミックレンジ外となる領域)であるか否かが判定される(ステップS43)。基本的に、モニタリング表示は常時(撮影準備時)行われているものとする。
【0052】
ダイナミックレンジオーバー領域がある場合は(ステップS43/YES)、あらかじめ光軸上に配置された液晶素子(減光用LCD)のフィルタを点灯させる(ステップS45)。この時、点灯箇所として白飛び領域に対応した領域を部分アドレス指定し(ステップS44)、その領域に対して減光効果を持たせる。なお、液晶素子としては、無彩色が望ましいが、カラー調整など別の目的が有る場合は、色付きの液晶素子でもかまわない。
【0053】
なお、この場合も、ピンポイントで白飛び領域のみ減光できる場合は、画像処理なしでOKであるが、それ以外の場合は、色調整・光量補正を行ってから、表示更新を行ってもよい。
【0054】
その後の動作、すなわちステップS46〜ステップS53の動作は、上記実施例1で説明した、図3のステップS7〜S14と同様であるので(ステップS51では、減光用LCDを消灯)、ここでの説明は省略する。
【0055】
以上説明したように、本実施例によれば、電気的減光素子として液晶を用いた場合は、よりスピーディに撮影範囲の変化に対応してリアルタイムに、減光を行うことが可能である。
液晶シャッタを実現するわけではないので、減光効果があればよく、現行の液晶素子などを低コストで利用することも可能であるし、複数枚重ね合わせたり、偏光フィルタや、NDフィルタと組み合わせたりすることも可能である。
【0056】
ここで、本実施例と従来技術との比較を以下に説明する。
液晶素子にシャッタ機能を持たせる技術は、概念として公知であるが、未だに製品としては実現されていない。本実施例との技術的な相違は、液晶素子を部分減光部材として使用し、ダイナミックレンジをオーバーする領域に合わせて、液晶素子の濃度を変更して、被写体光を減光する部分であり、被写体の輝度パターンに合わせてダイナミックに減光箇所を変更できるため、目的、作用、効果のすべてにわたって異なる。
【0057】
特許文献3は、レンズの物理的特性値(周辺光量の低下分)を、中央部と周辺部で濃度を変えたNDフィルタ(減光フィルタ)にて補正し、中央部の光を周辺部よりも強く遮ることで、中央部の受光量を下げて周辺部との入射光を均一化するものであり、部分的に減光する点では本実施例と同じであるが、特許文献3は、本実施例のように、電気的減光部材を用いて、その時々の被写体輝度パターンに応じて、部分的に減光する技術ではないため、本実施例とは、作用、効果が異なる。
【実施例4】
【0058】
光軸上に挿入するフィルタを、カラーフィルタにしてダイナミックレンジの確保+さらに別の効果をもたせても良い。例えば、白黒用カラーフィルタ(黄色+橙+赤)を白黒撮影モード時に、明るさや撮影距離に応じて、使い分ける(一番明るいときに赤、順次橙、黄色とか、遠距離時に赤、順次橙、黄色など)等して別効果を出すことや、クロス効果や、ソフト効果、カラー効果を撮影モードに対応させて出すことも可能であるし、これらと減光フィルタとの組み合わせも考えられる。
これらの効果をこれまで述べてきたような部分的適用としたり、回転して効果を替えたりする構成としてもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施例によれば、減光部材としてカラーフィルタを用いる場合は、被写体距離や明るさに応じてコントラストを上げたり、画像を引き締めたりする効果がある。
【0060】
以上、本発明の各実施例について説明したが、上記説明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、白飛び領域を減光することにより、撮影時のダイナミックレンジを向上させる撮像装置・機器(例えば電子カメラ、ビデオ機能付きの携帯機器)、システム、方法、プログラムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態である撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の概念を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例1に係る動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2に係る動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例3に係る動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 制御装置(制御手段)
2 測光センサ(測光手段)
3 第1レリーズSW
4 第2レリーズSW
5 フォーカス駆動装置
6 シャッタ駆動装置
7 表示装置
8 記憶装置
9 フィルタ駆動装置(減光部材駆動手段、電気的減光素子駆動手段)
10 撮像素子(電気的撮像手段)
11 時間カウント(タイマ)手段
12 演算手段(判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、
撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、
前記測光手段により測定された輝度に基づいて、前記電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域を概略カバーできるように、前記撮像光学系の光軸上または前記電気的撮像手段の前面に配置された減光部材と、
前記減光部材を駆動する減光部材駆動手段と、
前記各手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、
撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、
前記測光手段により測定された輝度に基づいて、前記電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、
前記撮像光学系の光軸を中心として回転することで減光効果または減光位置が変わるように、前記撮像光学系の光軸上または前記電気的撮像手段の前面に配置された減光部材と、
前記判定手段により前記電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域の輝度が下がるように、前記減光部材を回転駆動する減光部材駆動手段と、
前記各手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記減光部材駆動手段は、
撮影時または撮影準備時に、前記減光部材を、前記撮像光学系の光軸上または前記電気的撮像手段の前面に進出させることを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記減光部材駆動手段は、
不要時に、前記減光部材を、前記撮像光学系の光軸上または前記電気的撮像手段の前面から退出させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記減光部材として、NDフィルタ素材、偏光フィルタ素材、カラーフィルタ素材のうちいずれかを使用することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体像を電気的に撮像する電気的撮像手段と、
撮像範囲内の複数の領域の輝度を測定する測光手段と、
前記測光手段により測定された輝度に基づいて、前記電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になる領域を判定する判定手段と、
前記撮影範囲内の任意の領域を減光できる電気的減光素子と、
前記判定手段により前記電気的撮像手段のダイナミックレンジ外になると判定された領域を減光するように、前記電気的減光素子を駆動する電気的減光素子駆動手段と、
前記各手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記電気的減光素子駆動手段は、
撮影時または撮影準備時に、前記電気的減光素子を、前記撮像光学系の光軸上または前記電気的撮像手段の前面に進出させることを特徴とする請求項6記載の撮像装置。
【請求項8】
前記電気的減光素子駆動手段は、
不要時に、前記電気的減光素子を、前記撮像光学系の光軸上または前記電気的撮像手段の前面から退出させることを特徴とする請求項6または7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記電気的減光素子として、液晶素材を使用することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−304536(P2008−304536A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149337(P2007−149337)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】