説明

撮像装置

【課題】撮像装置のミラー保持機構において、メインミラーが被写体光束をピント板へ向けて反射する正規の位置へ静止するまでには、メインミラー保持枠がバウンドするバウンド動作の収束を待たなければならない。そのために割り当てられる収束時間は、単位時間当たりの撮影枚数の向上に対して障害となっていた。
【解決手段】上記課題を解決するために、撮像装置は、ファインダ光学系へ被写体像を導光する第1状態と撮像面へ被写体像を導光する第2状態との間で回動するメインミラー部と、メインミラー部が第1状態のときに被写体像を結像するピント板と、ピント板に結像する被写体像を測光するAEセンサと、AEセンサの出力に基づいてメインミラー部の第2状態から第1状態への回動が完了したことを検出する検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフカメラ代表されるレンズ交換式の撮像装置の多くには、被写体像を結像するピント板を介して被写体像の測光を行うAEセンサが設けられている。また、ピント板へ被写体光束を導く機構として、メインミラーが被写体光束に対して斜設される斜設状態と被写体光束から退避する退避状態を取り得るミラー保持機構が知られている。被写体光束は、斜設状態のときにピント板へ導かれ、退避状態のときに撮像面へ導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−15039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミラー保持機構の斜設状態と退避状態の間における回動動作は、撮影動作に同期して繰り返し実行される。退避状態から斜設状態へ回動する場合、メインミラーが被写体光束をピント板へ向けて反射する正規の位置へ静止するまでには、メインミラー保持枠が回動を受け止める偏心ピンでバウンドするバウンド動作の収束を待たなければならない。バウンド動作の収束に要する時間はカメラの個体差、姿勢、環境温度等にも左右されるので、これまでは、バウンド動作が確実に収束する比較的長い時間を割り当てて、その後にAEセンサによる測光を再開していた。しかし、この割り当て時間が、単位時間当たりの撮影枚数の向上に対して障害となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の撮像装置における一つの態様においては、ファインダ光学系へ被写体像を導光する第1状態と撮像面へ被写体像を導光する第2状態との間で回動するメインミラー部と、メインミラー部が第1状態のときに被写体像を結像するピント板と、ピント板に結像する被写体像を測光するAEセンサと、AEセンサの出力に基づいてメインミラー部の第2状態から第1状態への回動が完了したことを検出する検出部とを備える。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一眼レフカメラの要部断面図である。
【図2】メインミラーのバウンド動作が収束するまでの様子を示す図である。
【図3】メインミラーが斜設状態と同位置にある場合の、被写体光束とピント板での結像の様子とを示す図である。
【図4】メインミラーが斜設状態からバウンドした場合の、被写体光束とピント板での結像の様子とを示す図である。
【図5】ファインダから観察される被写体像、焦点検出領域およびAEセンサの検出対象領域を示す図である。
【図6】サブミラーのバウンド動作に伴って、反射される被写体光束が変化する様子を示す図である。
【図7】ミラーダウン動作から次コマ撮像処理に至るシーケンスを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、一眼レフカメラ10の要部断面図である。一眼レフカメラ10は、レンズユニット20とカメラユニット30が組み合わされて撮像装置として機能する。
【0010】
レンズユニット20は、光軸11に沿って配列されたレンズ群21を備える。レンズ群21は、入射される被写体光束をカメラユニット30へ導く。レンズ群21には、フォーカスレンズ、ズームレンズ等が含まれ、焦点調整、画角調整の指示に応じて光軸方向に移動できるように構成されている。レンズユニット20は、カメラユニット30との接続部にレンズマウント22を備え、カメラユニット30が備えるカメラマウント54と係合して、カメラユニット30と一体化する。
【0011】
カメラユニット30は、レンズユニット20から入射される被写体光束を反射するメインミラー31と、メインミラー31で反射された被写体光束が結像するピント板35を備える。メインミラー31は、メインミラー保持枠32に保持されてメインミラー回転軸33周りに回動して、光軸11を中心とする被写体光束中に斜設される斜設状態と、被写体光束から退避する退避状態を取り得る。
【0012】
ピント板35側へ被写体像を導く場合は、メインミラー31は被写体光束中に斜設される。このとき、メインミラー保持枠32の裏面がメインミラー偏心ピン34と当接して、メインミラー31の斜設角度が規定される。メインミラー偏心ピン34は、回転することでメインミラー保持枠32と当接する箇所を調整することができ、メインミラー31の斜設角度を精確に設定できる。また、ピント板35は、撮像素子48の受光面と共役の位置に配置されている。ピント板35で結像した被写体像は、ペンタプリズム36で正立像に変換され、接眼光学系37を介してユーザに観察される。
【0013】
ペンタプリズム36の射出面上方にはAEセンサ39が配置されており、AEセンサ39の受光面には、ピント板35に結像した被写体像が、ペンタプリズム36および測光光学系38を介して二次結像される。AEセンサ39は、被写体像の照度分布を検出するセンサであり、二次元配列された光電変換素子により構成される。具体的には、ピント板35に結像する被写体像のぼけ量を検出できる程度の画素を有する固体撮像素子が用いられる。
【0014】
ピント板35とペンタプリズム36の間には、液晶素子から構成されるファインダ表示部40が配置されている。ファインダ表示部40は、格子線、焦点調節領域等を表示することができ、ユーザはこれらを、接眼光学系37を介して、ピント板35に結像する被写体像に重ねて観察することができる。
【0015】
斜設状態におけるメインミラー31の光軸11の近傍領域は、ハーフミラーとして形成されており、入射される被写体光束の一部が透過する。透過した被写体光束は、メインミラー31と連動して回動するサブミラー保持枠42に保持されたサブミラー41で反射されて、AF光学系45へ導かれる。AF光学系45を通過した被写体光束は、AFセンサ46へ入射される。
【0016】
なお、サブミラー保持枠42は、メインミラー保持枠32に設けられるサブミラー回転軸43周りに回動する。そして、斜設状態においては、サブミラー保持枠42の裏面がサブミラー偏心ピン44と当接して、サブミラー41の斜設角度が規定される。サブミラー偏心ピン44は、回転することでサブミラー保持枠42と当接する箇所を調整することができ、サブミラー41の斜設角度を精確に設定できる。
【0017】
AFセンサ46は、例えば、受光した被写体光束から位相差信号を出力する複数の光電変換素子列である。具体的には、被写体像の特定の領域に対応して設けられる複数の焦点調整領域のそれぞれにおいて、合焦状態、前ピン状態、後ピン状態を検出でき、前ピン状態、後ピン状態の場合には、合焦状態からのずれ量も検出することができるように構成されている。なお、サブミラー41は、メインミラー31が被写体光束から退避する場合は、メインミラー31に連動して被写体光束から退避する。
【0018】
斜設されたメインミラー31の後方には、光軸11に沿って、フォーカルプレーンシャッタ47、撮像素子48が配列されている。フォーカルプレーンシャッタ47は、撮像素子48へ被写体光束を導くときに開放状態を取り、その他のときに遮蔽状態を取る。そして、撮像素子48は、例えばCMOSセンサなどの光電変換素子であり、受光面で結像した被写体像を電気信号に変換する。
【0019】
撮像素子48で光電変換された電気信号は、メイン基板49に搭載されたDSPである画像処理部50で画像データに処理される。メイン基板49には、画像処理部50の他に、カメラユニット30のシステムを統合的に制御するMPUであるカメラシステム制御部51が搭載されている。カメラシステム制御部51は、カメラシーケンスを管理すると共に、各構成要素の入出力処理等を行う。例えば、AEセンサ39から出力される被写体像の照度分布から露出値を演算し、AFセンサ46から出力される位相差信号から合焦制御を行う。
【0020】
カメラユニット30の背面には液晶モニタ等による背面表示部52が配設されており、画像処理部50で処理された被写体画像が表示される。背面表示部52は、撮影後の静止画像に限らず、各種メニュー情報、撮影情報等を表示する。また、カメラユニット30には、着脱可能な二次電池53が収容され、カメラユニット30に限らず、レンズユニット20にも電力を供給する。
【0021】
次に、メインミラー31の退避状態から斜設状態への回動について説明する。図2は、メインミラー31が待避状態から斜設状態へ回動したときに、メインミラー31のバウンド動作が収束するまでの様子を示す図である。上述のように、メインミラー保持枠32の裏面がメインミラー偏心ピン34と当接して、メインミラー31が静止する状態が斜設状態である。しかし、メインミラー31を保持するメインミラー保持枠32の回動動作は高速で行われるので、メインミラー保持枠32の裏面はメインミラー偏心ピン34に対して衝突することになる。すると、メインミラー保持枠32は、衝突後にバウンドして、再びメインミラー偏心ピン34から離間する。メインミラー保持枠32は、メインミラー偏心ピン34の方向へ付勢バネにより付勢されているので、付勢バネの付勢力と釣り合った後に、再びメインミラー偏心ピン34の方向へ向かう。メインミラー保持枠32は、このようなバウンド動作を繰り返して収束してゆき、やがてメインミラー偏心ピン34と当接した状態で静止する。図2は、この様子を示すものであり、横軸に時間を、縦軸にメインミラー保持枠32のメインミラー偏心ピン34に対する変位を表す。図からもわかるように、メインミラー保持枠32は、バウンドするたびに変位量が小さくなり、例えば20msec程度の時間で静止する。バウンド動作が収束して静止するまでの時間は、カメラユニット30の個体差、姿勢、周辺環境の温度等によって変化する。
【0022】
一眼レフカメラ10が次の撮影動作を行うには、被写体像がピント板35に正しく結像されてはじめてAEセンサ39による測光動作を開始することができるので、メインミラー31が静止するまで待つ必要がある。したがって、単位時間当たりの撮影枚数を向上させるには、測光動作をいち早く再開することが肝要である。そこで、本実施形態においては、AEセンサ39を用いてメインミラー31の静止をいち早く検出する。以下に具体的に説明する。
【0023】
図3は、メインミラー31が斜設状態と同位置にある場合の、被写体光束とピント板35での結像の様子とを示す図である。特に、図3(a)は、ピント板35をペンタプリズム36側から観察した様子を模式的に表した図であり、図3(b)は、光軸11に沿って入射する被写体光束が、メインミラー31に反射されてピント板35へ到達する様子を複数の光線で模式的に表した図である。図3(a)と図3(b)は、それぞれに示されるピント板35の中心線が一致するように、対応させて表されている。
【0024】
図3(b)に示すように、被写体光束のうち光軸11に対して上方から順に光線110、120、130、140、150とする。光線130は光軸11上の光線である。光線110は、メインミラー31のうちメインミラー回転軸33に近い位置で反射され、ピント板35のうち図で示すz軸+側の位置に到達する。光線130は、メインミラー31の中心で反射され、ピント板35の中心へ到達する。光線150は、メインミラー31のうちメインミラー回転軸33から遠い位置で反射され、ピント板35のうち図で示すz軸−側の位置に到達する。光線120は、光線110と光線130の中間を示し、光線140は、光線130と光線150の中間を示す。
【0025】
図3(a)で示す複数の円は、図3(b)で示す各々の光線がメインミラー31で反射されピント板35に到達した場合の結像の様子を模式的に表す結像円である。なおここでは、光線110から150は、各々x軸方向に7本の光線から成るものとする。例えば、光線110に対応する結像円は、結像円111から結像円117までx軸に沿って示される7つの円であり、光線130に対応する結像円は、結像円131から結像円137までx軸に沿って示される7つの円であり、光線150に対応する結像円は、結像円151から結像円157までx軸に沿って示される7つの円である。
【0026】
結像円の直径は、小さいほどピントが合っている状態を表す。図3(a)は、レンズユニット20により被写体像全体に対して理想的に焦点調整および絞り調整されて、ピント板35に結像する被写体像の全面が合焦状態にある場合を示す。つまり、図3(a)に示される結像円は、それぞれ同じ大きさでありかつ最小の円である。
【0027】
図4は、図3に対応させて、メインミラー31が斜設状態からバウンドした場合の、被写体光束とピント板35での結像の様子とを示す図である。特に、図4(a)は、ピント板35をペンタプリズム36側から観察した様子を模式的に表した図であり、図4(b)は、光軸11に沿って入射する被写体光束が、メインミラー31に反射されてピント板35へ到達する様子を複数の光線で模式的に表した図である。図4(a)と図4(b)は、それぞれに示されるピント板35の中心線が一致するように、対応させて表されている。
【0028】
図4(b)で示すように、メインミラー31がバウンドして斜設状態と同位置よりも少しピント板35側へ回動した位置にある場合、光線110から光線140は、図3(b)の位置よりもz軸−側でメインミラー31に反射され、ピント板35に到達する。一方、光線150については、回動したメインミラー31の端より外側に位置するので、メインミラー31に反射されることがなく、したがってピント板35に到達できない。図示するように、光線140と光線150の間に位置する光線160が、メインミラー31で反射される限界となる。
【0029】
図4(b)のように反射された各々の光線は、図4(a)で示すようにピント板35で結像する。ピント板35に到達するまでの光線110の光路長は、メインミラー31が斜設状態と同位置にある場合の光路長よりも短くなる。すなわち、本来ピントが合う位置よりも結像面が前に存在する状態に相当するので、ピント板35上での像は光路長が短くなった分だけぼけることになる。したがって、光線110に対応する、x軸方向に沿って配列する結像円111から結像円117の各々の結像円は、メインミラー31が斜設状態と同位置にある場合の結像円よりも大きく示される。
【0030】
メインミラー31は、メインミラー回転軸33を中心に回動するので、メインミラー31で反射される各々の光線は、メインミラー回転軸33から遠ざかるほどピント板35に到達するまでの光路長が短くなる。すなわち、ピント板35上でのぼけ量が大きくなる。したがって、図4(a)で示される結像円において、z軸−側の結像円ほど半径が大きくなる。例えば、光線130に対応する、x軸方向に沿って配列する結像円131から結像円137の各々の結像円の直径は、光線110に対応する、x軸方向に沿って配列する結像円111から結像円117の各々の結像円の直径よりも大きい。なお、x軸方向に沿って一列に配列される結像円については、メインミラー回転軸33がx軸方向である限り同じ距離だけ光路長が短くなるので、それぞれの直径は同一である。
【0031】
メインミラー31が回動することにより、光線160がメインミラー31で反射される限界となるので、光線150を含む被写体光束の一部はピント板35に到達しないことになり、ピント板35上の被写体像は、その分だけ欠けることになる。つまり、光線160に対応する直線170が被写体像の境界となり、直線170よりz軸−側には被写体像が現れなくなる。この直線170は、メインミラー31が斜設状態から離れて変位が大きくなるほど矢印171方向へ移動し、ピント板35に結像する被写体像の領域が小さくなる。なお、図4(a)の直線170近傍の結像円は、ぼけの周辺部が直線170でカットされたD形状として表している。
【0032】
上述のように、メインミラー31のバウンド動作は、図3(a)と図4(a)に表されるように、ピント板35に結像される被写体像のぼけ量の変化と、z軸方向の結像領域の変化として現れる。本実施形態においては、バウンド動作が収束しメインミラー31が斜設状態に静止したことを、AEセンサ39の出力を用いてこれらの変化を監視することにより検出する。
【0033】
具体的には、例えば1msecごとにカメラシステム制御部51がAEセンサ39の出力を画像データとして取り込み、前後するフレーム間で比較をして、被写体像のぼけ量の変化、z軸方向の結像領域の変化を判断する。いずれの変化を監視するか、あるいは、いずれの変化も監視するかは、フレームレート、撮影モード、AEセンサの画素数等に応じて適宜設定される。例えば、前後するフレーム間でぼけ量の変化がなく、または、結像領域に変化がなければ、カメラシステム制御部51は、バウンド動作は収束しメインミラー31は斜設状態で静止したと判断する。
【0034】
または、AEセンサ39の被写体像の蓄積時間を少し長めの例えば3msec程度に設定し、この出力を繰り返し画像データとして取り込む。そして、1フレームごとの取得画像に、x軸方向の像の流れ、ぼけの重畳が認められるか否かを判断する。このとき、1フレーム内にx軸方向の像の流れ、ぼけの重畳が認められなくなれば、カメラシステム制御部51は、バウンド動作は収束しメインミラー31は斜設状態で静止したと判断する。
【0035】
このように、メインミラー31のバウンド動作の収束、回動動作の完了をほぼリアルタイムに検出できれば、直ちに次の撮影動作の測光動作を開始することができる。したがって、単位時間当たりの撮影枚数向上に大きく寄与する。
【0036】
上記の説明においては、レンズユニット20により被写体像全体に対して理想的に焦点調整および絞り調整されて、ピント板35に結像する被写体像の全面が合焦状態にある場合を想定した。しかし、実際の撮影においては、被写体像の一部にピントが合うように焦点調整および絞り設定がなされ、斜設状態においても、他の領域はそもそもぼけた状態でピント板35に結像することが多い。すると、ぼけた状態を基準としてさらにぼけるぼけ量の変化を監視することになり、正確な検出が行えない場合がある。そこで、より正確に回動動作の完了を検出すべく、被写体像のうちオートフォーカスにより焦点検出を行ってピントを合わせをした特定の部分領域を検出の対象とする。以下に具体的に説明する。
【0037】
図5は、ファインダから観察される被写体像、焦点検出領域71およびAEセンサ39の検出対象領域72を示す図である。焦点検出領域71は2次元的に複数設けられており、ユーザの設定により、または、カメラシステム制御部51がシーンを判別して特定の一つの焦点検出領域71が選択されて、その領域でオートフォーカスが行われる。カメラシステム制御部51がシーンを判別する場合、例えば近点優先、顔検出優先等のアルゴリズムにより一つの焦点検出領域71が選択される。AEセンサ39の検出対象領域72は、各々の焦点検出領域71を取り囲むように設定されている。焦点検出領域71が密に配置されているときは、検出対象領域72は互いに重なる領域があっても良い。なお、焦点検出領域71は、適宜ファインダ表示部40に表示されるが、検出対象領域72は表示されなくても良い。
【0038】
メインミラー31が退避状態から斜設状態へ回動する場合、その退避状態において撮影動作を行っている。その撮影動作においては、オートフォーカスモードが実行されるAFモードが選択されている場合、一つの焦点検出領域71が選択されて、その領域でピントを合わせが行われている。すると、この選択された焦点検出領域71の近傍における被写体像は、レンズユニット20により合焦状態に調整されていることが期待できる。そして、メインミラー31が斜設状態に回動したとき、この領域における被写体像は、ピント板35上に合焦状態で結像することが期待できる。
【0039】
したがって、バウンド動作の収束を検出するときは、この選択された焦点検出領域71を含む検出対象領域72に絞ってAEセンサ39の出力を監視すれば良い。カメラシステム制御部51は、AEセンサ39の出力をピント板35の全体領域で取り込み、後に画像処理でその検出対象領域72を切り出して監視、判断する。または、カメラシステム制御部51は、AEセンサ39がその検出対象領域72のみを出力するように、間引き読み出しを行って監視、判断しても良い。後者の場合は、AEセンサ39の一部の出力をのみを取り込めばよいので、フレームレートを上げることが期待できる。
【0040】
AEセンサ39による測光動作は、被写体像の輝度等を検出することにより最適なシャッタ速度、絞り値、ISO感度の露出値をカメラシステム制御部51が決定する。例えば、絞り値とISO感度がユーザの指定により固定されていると、カメラシステム制御部51は、測光動作により、最適な絞り値を決定する。このような、カメラシステム制御部51による最適な露出値の決定は、ユーザによりAEモードが設定されているときに実行される。したがって、ユーザによりAEモードが設定されているときには、撮影動作に測光動作を伴うので上述のようにメインミラー31の回動動作の完了を検出し、AEモードが設定されていないときには、測光動作は不要なので回動動作完了の検出を行わないように設定しても良い。
【0041】
図1を用いて説明したように、サブミラー41も、メインミラー31と同様に、AFセンサ46へ導光する斜設状態と、被写体光束から退避する退避状態を取り得る。また、サブミラー41が退避状態から斜設状態に回動するとき、サブミラー保持枠42の裏面がサブミラー偏心ピン44と衝突して、バウンド動作が生じる。図6は、サブミラー41のバウンド動作に伴って、反射される被写体光束が変化する様子を示す図である。AFセンサ46に結像される被写体像についても、AEセンサ39が観察するピント板35の被写体像と同等の関係を見出すことができる。すなわち、サブミラー41の回動動作の完了を、AFセンサ46に結像される被写体像のぼけ量の変化と結像領域の変化を観察して検出することができる。
【0042】
ただし、AFセンサ46の構造がAEセンサ39の構造と異なる場合は、その構造に合わせた検出を要する。例えば、AFセンサ46が、複数の焦点検出領域71に応じた位相差を出力する位相差検出センサである場合、被写体像のぼけ量の変化は位相差の変化として検出される。
【0043】
このように、サブミラー41のバウンド動作の収束、回動動作の完了をほぼリアルタイムに検出できれば、直ちに次の撮影動作の焦点調整動作を開始することができる。したがって、単位時間当たりの撮影枚数向上に大きく寄与する。なお、焦点調整動作は、ユーザによりオートフォーカスが行われるAFモードが設定されているときに実行される。したがって、ユーザによりAFモードが設定されているときには、撮影動作に焦点調整動作を伴うので上述のようにサブミラー41の回動動作の完了を検出し、AFモードが設定されていないときには、焦点調整動作は不要なので回動動作完了の検出を行わないように設定しても良い。
【0044】
次に、メインミラー31およびサブミラー41の、退避状態から斜設状態へのミラーダウン動作の開始から、次の撮影が指示され撮像処理を開始するまでのシーケンスについて説明する。図7は、ミラーダウン動作から次コマ撮像処理に至るシーケンスを示すフロー図である。
【0045】
ミラーダウン動作が開始されると、メインミラー31およびサブミラー41は退避状態から斜設状態への回動を開始する。ステップS101では、カメラシステム制御部51は、メインミラー31の回動開始に同期してAEセンサ39の出力を画像データとして取り込む。そして、ステップS102では、取り込んだ画像データを解析して、メインミラー31の回動が完了したか否かを判断する。完了していれば、ステップS103に進み、カメラシステム制御部51は次の撮影動作の一環として直ちに測光動作を開始してステップS104へ進む。つまり、サブミラー41の回動完了を待つことなく測光動作を開始する。メインミラー31の回動が完了していなければ、そのままステップS104へ進む。
【0046】
ステップS104では、カメラシステム制御部51は、AFセンサ46の出力を取り込む。そして、ステップS105では、取り込んだAFセンサ46の出力を解析して、サブミラー41の回動が完了したか否かを判断する。完了していなければ、ステップS106へ進み、既に測光動作が完了しているかを確認する。測光動作が完了していなければステップS101へ戻り、完了していればステップS104へ戻る。
【0047】
ステップS105でサブミラー41の回動が完了したと判断されれば、ステップS107に進み、カメラシステム制御部51は次の撮影動作の一環として直ちに焦点調整動作を開始する。そして、焦点調整動作が完了すれば再びメインミラー31およびサブミラー41を退避状態へ回動して、撮像素子48等による次の撮像処理へ移行する。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0049】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0050】
10 一眼レフカメラ、11 光軸、20 レンズユニット、21 レンズ群、22 レンズマウント、30 カメラユニット、31 メインミラー、32 メインミラー保持枠、33 メインミラー回転軸、34 メインミラー偏心ピン、35 ピント板、36 ペンタプリズム、37 接眼光学系、38 測光光学系、39 AEセンサ、40 ファインダ表示部、41 サブミラー、42 サブミラー保持枠、43 サブミラー回転軸、44 サブミラー偏心ピン、45 AF光学系、46 AFセンサ、47 フォーカルプレーンシャッタ、48 撮像素子、49 メイン基板、50 画像処理部、51 カメラシステム制御部、52 背面表示部、53 二次電池、54 カメラマウント、110、120、130、140、150、160 光線、111、117、131、137、151、157 結像円、170 直線、171 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファインダ光学系へ被写体像を導光する第1状態と撮像面へ被写体像を導光する第2状態との間で回動するメインミラー部と、
前記メインミラー部が前記第1状態のときに被写体像を結像するピント板と、
前記ピント板に結像する被写体像を測光するAEセンサと、
前記AEセンサの出力に基づいて前記メインミラー部の前記第2状態から前記第1状態への回動が完了したことを検出する検出部と
を備える撮像装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記AEセンサが出力する前記被写体像の所定方向の動きを判断して前記回動の完了を検出する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記AEセンサが出力する前記被写体像のぼけ量の変化を判断して前記回動の完了を検出する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記被写体像の全体領域に対して焦点検出を行った領域を含む部分領域の出力に基づいて前記回動の完了を検出する請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記AEセンサは、前記検出部により前記回動の完了を検出するときは、前記部分領域に対応する領域のみを出力する請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記AEセンサの出力に基づいて露出値が自動的に決定されるAEモードが設定されているときに前記回動の完了を検出する請求項1から5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記メインミラー部に連動して、前記メインミラー部が前記第1状態のときに前記被写体像の少なくとも一部をAF光学系へ導光する第3状態と、前記メインミラー部が前記第2状態のときに前記被写体像を撮像面へ導光する第4状態との間で回動するサブミラー部と、
前記サブミラー部が前記第3状態のときに前記被写体像の少なくとも一部の合焦状態を検出するAFセンサと
を備え、
前記検出部は、前記AFセンサの出力に基づいて前記サブミラー部の前記第4状態から前記第3状態への回動が完了したことを検出する請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記AFセンサの出力に基づいてオートフォーカスが行われるAFモードが設定されているときに前記回動の完了を検出する請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記検出部が、前記メインミラー部の前記第2状態から前記第1状態への回動が完了したことを検出したら、前記サブミラー部の前記第4状態から前記第3状態への回動が完了したことを検出する前であっても、前記AEセンサによる前記被写体像の測光を開始する請求項7または8に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112878(P2011−112878A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269309(P2009−269309)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】