説明

擬似乱数出力装置、送信装置及び探知機

【課題】他の装置との間で類似することが少ない擬似乱数列を出力し得る擬似乱数出力装置を提供する。
【解決手段】船舶に搭載される擬似乱数出力装置20は、GPS受信機21と、擬似乱数発生部22と、を備える。GPS受信機21は、GPS衛星から測位信号を受信し、自船の位置等のデータを取得する。擬似乱数発生部22は、GPS受信機21が出力する緯度及び経度の情報を加工したものをシードとして用いることにより、擬似乱数を発生させる。擬似乱数発生部22から得られた擬似乱数は、船舶に搭載されるレーダ装置1において、レーダアンテナ14からパルス信号を送信する時間間隔を決定するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、移動体に備えられる擬似乱数出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、間欠的に送信される信号を用いて各種の処理を行う装置において、信号の送信間隔を適宜変更することにより、自機の信号と他の装置の信号が相互に干渉することを防止する構成が知られている。
【0003】
この種の装置は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1の車両遠隔施解錠制御装置は、車両側装置と、ユーザが持ち歩く携帯キーと、で構成される。車両側装置は、所定の間欠送信間隔に従って、リクエスト信号を間欠的に送信している。携帯キーがその信号を受信すると、携帯キーが予め持っているキーコードを変調し、応答信号として車両に返信する。車両側装置は、その応答信号を復調して得られるキーコードと、予め登録されているキーコードとを比較し、一致した場合にドアが開錠する。
【0004】
特許文献1の構成において、前記車両側装置は、乱数発生器として機能し得るCPUを備える。そして、上記の間欠送信間隔は、固定値である基本間隔と乱数値である変動間隔の和で決定される。結果として、リクエスト信号の間欠送信間隔は、1回の送信毎に異なる乱数値となる。また、特許文献1には、前記間欠送信間隔は、基本間隔と、車両毎に異なる固有値(車台番号)に基づく特定値間隔と、の和で決定されても良い旨が開示されている。特許文献1は、この構成により、自車のリクエスト信号と他車のリクエスト信号との相互干渉を未然に回避できるとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−113608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1が開示する構成は以下の点で改善の余地が残されていた。即ち、CPUが生成する乱数列は実際的には擬似乱数列となるが、そのバラツキが良好であるとは限らない。従って、自機と他の装置とが連動するように間欠送信間隔が変動することもあり、この場合は信号の干渉が長時間にわたって発生するおそれがある。また、各装置に固有の値を用いて特定値間隔を計算して間欠送信間隔を決定する場合は、得られる特定値間隔が装置間で近い値となってしまう場合も考えられ、この場合も、信号が一度干渉してしまうとそれから抜け出すのに時間が掛かってしまう。
【0007】
従って、信号の送受信を頻繁に行う装置(例えば、レーダ装置等)においては、装置同士で送信周期が揃わないように送信間隔を決定できる構成が特に求められていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、他の装置との間で類似することが少ない擬似乱数列を出力し得る擬似乱数出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の擬似乱数出力装置が得られる。即ち、擬似乱数出力装置は、GNSS(全地球的航法衛星システム)受信機と、擬似乱数発生部と、を備える。前記GNSS受信機は、移動体に搭載され、GNSS衛星から測位信号を受信して、その測位信号に基づくデータを出力する。前記擬似乱数発生部は、前記GNSS受信機が出力したデータ又はそれに基づくデータをシードとして用いて、擬似乱数を発生させる。
【0011】
これにより、移動体の独自の情報に基づいたシードを得ることができるので、バラツキの良い擬似乱数を得ることができる。
【0012】
前記の擬似乱数出力装置においては、前記擬似乱数発生部は、前記GNSS受信機が出力したデータから、前記移動体の緯度及び経度のうち少なくとも一方のデータ又はそれに基づくデータを前記シードとして用いることが好ましい。
【0013】
これにより、移動体の位置に応じて様々なシードを得ることができるので、バラツキの良い擬似乱数を得ることができる。
【0014】
前記の擬似乱数出力装置においては、前記擬似乱数発生部は、所定のタイミングで前記シードを再設定することが好ましい。
【0015】
これにより、擬似乱数発生部のシードが適宜変化することになるので、バラツキのより良好な擬似乱数を得ることができる。また、生成する擬似乱数列が他の移動体の擬似乱数列と仮に類似した場合でも、シードが変更されることによって、擬似乱数列同士が類似する状況から早期に脱することができる。
【0016】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の送信装置が提供される。即ち、この送信装置は、前記の擬似乱数出力装置と、送信部と、を備える。前記送信部は、前記擬似乱数出力装置が出力した擬似乱数に基づいて定められる送信間隔で、電波信号又は超音波信号を間欠的に送信する。
【0017】
これにより、移動体の独自の情報に基づいたシード値で擬似乱数が生成され、この擬似乱数に基づいて信号の送信間隔が決まるため、他の移動体の信号の送信間隔と異なるタイミングで電波信号又は超音波信号を送信することができる。
【0018】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の探知機が提供される。即ち、この探知機は、前記の送信装置と、表示部と、を備える。前記表示部は、前記送信部によって送信された電波信号又は超音波信号の反射波を分析した結果を表示する。
【0019】
これにより、移動体と他の移動体の送信信号を異なるタイミングで送信させることができるため、干渉によって表示部の表示が乱れるのを画像処理によって防止することができる。
【0020】
前記の探知機においては、移動体が船舶であることが好ましい。
【0021】
これにより、探知機を搭載した他船が自船の近傍に存在しても、自船と他船との間の送信信号の干渉を防止して、精度の良い探知を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る擬似乱数出力装置を備えるレーダ装置の機能ブロック図。
【図2】擬似乱数発生部の具体的な回路図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本実施形態に係る擬似乱数出力装置20を備えるレーダ装置1の機能ブロック図である。図2は擬似乱数発生部22の具体的な回路図である。
【0024】
本実施形態のレーダ装置(探知機)1は、いわゆるパルスレーダとして構成され、移動体としての船舶に搭載されている。このレーダ装置1は、送信部としてのレーダアンテナ14からパルス状の電波を送信するとともに、当該レーダアンテナ14で受信されたエコー信号を利用して、自船の周囲の物標(例えば陸地、海上の他船等)の位置及び形状を表示することができる。
【0025】
図1に示すように、レーダ装置1は、擬似乱数出力装置20と、レーダ制御部15と、表示部12と、操作部13と、前記レーダアンテナ14と、を備える。表示部12及び操作部13は、船舶の操舵室に設置される。一方、レーダアンテナ14は、船舶上において見通しが良く海面から高い適宜の位置に設置される。レーダアンテナ14は図示しないモータによって駆動され、所定の速度で回転する。
【0026】
表示部12は例えば液晶ディスプレイとして構成されており、自船の周辺の状況をいわゆるレーダ画像として表示することができる。なお、表示部12には、上記レーダ画像のほか、例えば、自船の現在位置を示す情報(緯度及び経度)を表示することができる。
【0027】
操作部13は、複数のキー、スイッチ等からなる図略の操作具を備えている。ユーザは、操作部13を適宜操作することによって、例えばレーダレンジの変更等の所望の指示を行うことができる。
【0028】
図1に示すように、擬似乱数出力装置20は擬似乱数発生部22を備え、この擬似乱数発生部22はレーダ制御部15に電気的に接続されている。レーダ制御部15は、擬似乱数出力装置20が出力した擬似乱数を利用して、レーダアンテナ14からパルス状の電波を送信する時間間隔を随時変更する構成となっている。これら擬似乱数出力装置20、レーダ制御部15、及びレーダアンテナ14により、電波信号を間欠的に送信可能な電波送信装置(送信装置)5が構成されている。
【0029】
レーダ制御部15は表示部12及び操作部13と電気的に接続されており、レーダ制御部15がレーダアンテナ14から電波を送受信することで得られた結果を、表示部12にレーダ画像として表示することができる。また、操作部13で行われた操作に応じて、レーダ制御部15の動作が適宜制御されるようになっている。
【0030】
擬似乱数出力装置20は、GNSS受信機としてのGPS(全地球測位システム)受信機21と、擬似乱数発生部22と、を備える。
【0031】
GPS受信機21は、GPS衛星からの測位信号を受信する測位信号受信部31と、受信した信号の増幅及びA/D変換を行うRF部32と、測位演算を行うベースバンド処理部33と、を備えている。
【0032】
測位信号受信部31は、GPS衛星から送信された測位信号を受信するための図示しないGPSアンテナを備える。そして測位信号受信部31は、前記GPSアンテナで受信された測位信号を公知の方法で復調することにより、GPS衛星の位置情報等が含まれた航法メッセージを得ることができる。
【0033】
測位信号受信部31は、前記GPSアンテナのほか、増幅器及びバンドパスフィルタ等を備えている。この測位信号受信部31は、GPSアンテナが受信した微弱な信号を増幅して、RF部32へ出力できるように構成されている。
【0034】
RF部32は、図示しない増幅器、バンドパスフィルタ、ミキサ、及びA/Dコンバータ等を備えている。このRF部32は、測位信号受信部31から入力された測位信号を増幅するとともにデジタル信号に変換して、ベースバンド処理部33へ出力することができる。
【0035】
ベースバンド処理部33は、図示しない相関器、CPU、ROM、及びRAM等を備えている。このベースバンド処理部33は、公知の擬似雑音符号で変調されている前記測位信号を、相関器を用いてコード相関法により復調する。これにより、GPS衛星が送信する航法メッセージを取得するとともに、その受信時刻を図略の内部時計に基づいて得ることができる。なお、前記相関器は複数備えられており、複数のGPS衛星からの信号を分離して処理することができる。
【0036】
前記航法メッセージには、各衛星の正確な位置を示す軌道データ(エフェメリスデータ)が含まれている。また、GPS衛星には極めて正確な時計が搭載されており、当該GPS衛星が送信する航法メッセージには電波の送信時刻が含められる。ベースバンド処理部33のCPUは、電波の送信時刻と受信時刻との時間差に光速を乗じることで、GPS衛星と自船との間の距離を求める。
【0037】
なお、こうして得られた距離は、GPS受信機21が備える内部時計の誤差を含んでいる。従って、以下の説明では、上記の計算で得られた距離を、誤差を含む擬似的な距離という意味で「擬似距離」と称することがある。
【0038】
ベースバンド処理部33のCPUは、4つ以上のGPS衛星について擬似距離をそれぞれ求めた上で、公知の連立方程式に従って測位計算を行う。これにより、GPS受信機21の内部時計とGPS衛星の時計とのズレ、自船の緯度、経度及び高度の4つの未知数を取得することができる。
【0039】
このようにして求められた情報(緯度、経度、高度等)は、レーダ制御部15へ出力される。レーダ制御部15は、入力された情報に基づいて、自船の緯度、経度等の情報を表示部12に表示する。また、ベースバンド処理部33で求められた情報のうち少なくとも一部の情報は、擬似乱数発生部22へ出力される。
【0040】
次に、図2を用いて、GPS受信機21からのデータに基づいて擬似乱数を発生させる構成を説明する。図2は、擬似乱数発生部22の具体的な一例を示す回路図である。
【0041】
本実施形態において擬似乱数発生部22は、図2に示すような線形帰還シフトレジスタからなるM系列擬似乱数発生器として構成されている。この擬似乱数発生部22は、周期が28−1のM系列擬似乱数を巡回して発生するものであり、遅延型のフリップフロップ71〜78と、XOR回路79と、を備えている。なお、XOR回路79に代えてNXOR回路を用いても良い。
【0042】
フリップフロップ71〜78は、8ビットのシフトレジスタを構成するものである。それぞれのフリップフロップ71〜78は、データ入力端子と、クロック入力端子と、データ出力端子と、を備えている。フリップフロップ71〜78のクロック入力端子には、クロック入力端子70からのクロック信号が入力されるようになっている。
【0043】
そして、8段目、6段目、5段目及び4段目のフリップフロップ78,76,75,74の出力が順次XOR回路79によりXORされ、その結果が擬似乱数出力端子80から出力されるとともに、1段目のフリップフロップ71にフィードバックされる構成となっている。
【0044】
以上の構成で、8つのフリップフロップ71〜78からなるシフトレジスタには、所定の初期値(シード)を事前に設定しておく。なお、このシードの決定方法の詳細については後述する。その後、クロック入力端子70にクロックを与える毎に、各段のフリップフロップ71〜78の状態が遷移し、28−1の巡回周期で、8ビットが取りうるすべてのビットパターン(ただし、全ビットが0の場合を除く。)が現れる。以上により、周期が28−1の擬似乱数(1〜256)を、擬似乱数出力端子80から得ることができる。
【0045】
そして、本実施形態では、このM系列擬似乱数のシードとして、GPS受信機21から得られる自船の緯度及び経度に関する情報を用いる。以下、その具体的方法を説明する。
【0046】
本実施形態において、前記GPS受信機21が出力する緯度情報及び経度情報は、度情報、分情報及び秒情報からなる。分情報及び秒情報は60進数で表されるので、0から60未満の値をとり得る。本実施形態では、緯度情報及び経度情報からそれぞれの秒情報を取り出して適宜加工した値を、擬似乱数発生部22のシードとして決定する。
【0047】
具体例としては、まず、緯度の秒の値を16で除して、その剰余値(0から15までの整数値)を4桁の2進数表記で表し、上位の桁からそれぞれA,B,C,Dとする。同様に、経度の秒の値を16で除して、その剰余値(0から15までの整数値)を4桁の2進数表記で表し、上位の桁からそれぞれE,F,G,Hとする。そして、これらの値A〜Hを、M系列乱数発生器のフリップフロップ71〜78に初期値として設定する。
【0048】
なお、本実施形態では、上記のようにして得られたA,B,C,D,E,F,G,Hの値が1段目のフリップフロップ71から順に設定されるのではなく、例えばD,H,E,C,G,A,F,B等と並べ替えた上で、それぞれのフリップフロップ71〜78に設定される。即ち、1段目のフリップフロップ71にはD、2段目のフリップフロップ72にはH、・・・というように設定される。これにより、例えば緯度が全く同じで経度が僅かに異なる船同士でも、それぞれの擬似乱数発生部22で設定されるシード値が大きく異なることになるので、発生する擬似乱数列が船同士で類似することを防止することができる。
【0049】
なお、図2に示すようなM系列乱数発生器は、その特性により、全てのフリップフロップ71〜78の内部状態が0になると以降の出力が全て0になり、乱数を生成できなくなってしまう。これを防止するには、シードの基となるA〜Hの値が全て0だった場合には、そのうち何れか又は全ての値を強制的に1に設定するようにすれば良い。或いは、全ての段のフリップフロップ71〜78の内部状態が0になったことを検出するトラップ回路を設け、当該トラップ回路の検出に応じてシードを再設定するように構成してもよい。
【0050】
以上により、GPS受信機21が出力した緯度、経度に関するデータの一部から計算した値をシードとして用いて、擬似乱数を発生させることができる。
【0051】
なお、このシード値は、随時再設定されており、この再設定を行うタイミングとしては、例えば、GPS受信機21が出力するデータを所定の時間間隔毎に(例えば数十秒毎に)取得して再設定する方法が考えられる。他にも、GPS受信機21が出力するデータが変化するのに応じて随時再設定する方法も考えられ、この場合は、船舶が移動していればシード値も刻々と変化することになる。更に、レーダアンテナ14が所定の回数を回転する毎に、GPS受信機21が出力するデータを取得して再設定する方法も考えられ、この場合は、船舶に固有のタイミングで再設定を行うこととなるので、他船と再設定のタイミングが同期しにくい点で有利である。
【0052】
また、図2では8ビットの擬似乱数発生部22の構成を示したが、これは一例であり、フリップフロップを例えば12段又は16段備えるようにしても良いことは勿論である。この場合、シード値としては、緯度及び経度の秒情報だけではなく分情報、度情報を用いる等して12ビット又は16ビットの値を適宜作成し、擬似乱数発生部に与えるようにすれば良い。なお、一般的には、シフトレジスタのビット数が大きい方が、周期の長い擬似乱数列を生成できるので好ましい。
【0053】
次に、レーダ制御部15について説明する。レーダ制御部15は、図1に示すように、カウント部81と、信号発生部82と、送受信切替部83と、変換増幅部84と、信号処理部85と、を主要な構成として備えている。
【0054】
カウント部81は分周カウンタであり、例えばカウンタICとして構成されている。このカウント部81は、一定の時間間隔で供給されるクロックパルスが所定の個数(以下、このパルス数を分周値と称する)だけ計数される毎に、1個のパルスを発生する。従って、カウント部81が出力するパルスの時間間隔は、前記分周値とクロックパルスの周波数とにより決定される。このパルスは、レーダアンテナ14からの信号送信のトリガとして用いられる。
【0055】
カウント部81に設定される分周値は任意に変更できるように構成されており、これにより、レーダアンテナ14からの信号送信間隔を適宜変更することができる。また、カウント部81は前記擬似乱数発生部22と電気的に接続されており、当該擬似乱数発生部22から擬似乱数データを得ることができる。
【0056】
カウント部81が出力する信号送信間隔は、予め定められた一定値とされる基準間隔と、所定の範囲で変動する変動間隔と、によって定められる。ここで、変動間隔は、前記擬似乱数発生部22が出力した擬似乱数に基づいて、適宜の数式に従って計算される。ただし、レーダアンテナ14からの信号送信間隔が極端に変動することを防止するために、前記変動間隔は、その取り得る最大値が例えば基準間隔の10%程度となるように計算される。
【0057】
そして、カウント部81は、前記基準間隔に前記変動間隔を加算又は減算した値でパルスを発生させるように設定される。具体的には、基準間隔に相当するクロックパルスの個数に対し、変動間隔に相当するクロックパルスの個数を加算又は減算した値が、前記カウント部81の分周値として設定されることになる。
【0058】
また、このカウント部81の分周値の設定は、レーダアンテナ14から信号が1回送信される毎に行われる。従って、レーダアンテナ14から電波が送信される時間間隔は、1回毎に異なった値となる。
【0059】
信号発生部82は、マグネトロン、半導体、クライストロン等からなる図略の送信管を備えている。信号発生部82は、カウント部81からのパルス信号をトリガとして、送信管から強力なマイクロ波を発生させる。このマイクロ波は適宜の導波路を経由してレーダアンテナ14まで送られ、レーダアンテナ14から発射される。
【0060】
送受信切替部83は、例えばサーキュレータにより構成されている。この送受信切替部83は、信号発生部82からの高エネルギーの送信パルスが受信側(即ち、変換増幅部84及び信号処理部85)に加わらないように、また、エコー信号の受信時には当該エコー信号が全て受信側に入力されるように、信号の経路を適宜切り替えることができる。
【0061】
変換増幅部84は、高周波増幅器、ミキサ及び中間周波増幅器等を備えている。この変換増幅部84は、レーダアンテナ14が受信した微弱な高周波信号を、処理に適した強度及び周波数に変換できるように構成されている。
【0062】
信号処理部85は、検波器と、A/Dコンバータと、を主要な構成として備えている。信号処理部85は、変換増幅部84から入力された信号を検波した上でデジタル信号に変換する。また、信号処理部85にはカウント部81からのパルス信号が入力されており、レーダアンテナ14がマイクロ波を送信したタイミングと、反射波を受信したタイミングとの時間差から、物標までの距離を取得する。そして信号処理部85は、得られた距離と、電波発射時のレーダアンテナ14の向きと、に基づいてレーダ画像を生成し、表示部12に出力する。
【0063】
なお、このとき、GPS受信機21から出力された緯度及び経度を表す数値がレーダ画像に合成され、合成後の画像が表示部12に出力される。従って、ユーザは自船の位置(緯度及び経度)を表示部12によって確認することができる。
【0064】
このように構成されたレーダ装置1は、擬似乱数出力装置20が出力する良好なバラツキの擬似乱数に基づいて電波の送信間隔を決定するので、自船と他船でレーダ装置が送信する電波同士が干渉することを良好に抑制できる。この結果、表示部12に表示されるレーダ画像が干渉で乱れることを防止できる。また、船舶の位置が異なれば、擬似乱数出力装置20に設定されるシード値も原則として異なるように設定されるから、出力される擬似乱数列が船舶同士で類似することが少なくなり、この意味でも干渉を良好に防止できる。また、万一他船との間で干渉に陥ったとしても、自船が若干移動すれば擬似乱数発生部22のシード値が変更されることになるので、殆どの場合、干渉状態を直ちに脱することができる。
【0065】
以上に示すように、本実施形態の擬似乱数出力装置20は、GPS受信機21と、擬似乱数発生部22と、を備える。GPS受信機21は船舶に搭載されており、GPS受信機21から測位信号を受信して、その測位信号に基づくデータを出力する。擬似乱数発生部22は、GPS受信機21が出力した自船の緯度及び経度の情報に基づくデータをシードとして用いて、擬似乱数を発生させる。
【0066】
これにより、自船の独自の情報(具体的には、自船の位置)に基づいたシードを得ることができるので、バラツキの良い擬似乱数を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態の擬似乱数出力装置20においては、擬似乱数発生部22は、自船の緯度及び経度に基づくデータをシードとして用いている。
【0068】
これにより、自船の位置に応じて様々なシードを得ることができるので、バラツキの良い擬似乱数を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態の擬似乱数出力装置20において、擬似乱数発生部22は、GPS受信機21から入力される自船の緯度及び経度のデータが変化するタイミングでシードを再設定するように構成されている。
【0070】
これにより、自船が移動するのに応じて擬似乱数発生部22のシードが変化することになるので、よりバラツキの良好な擬似乱数を得ることができる。また、仮に自船と他船とで発生する擬似乱数列が類似した場合でも、自船が移動すれば自船側のシードが変更されるので、擬似乱数列同士が類似する状況から早期に脱することができる。
【0071】
また、本実施形態の電波送信装置5は、レーダアンテナ14を備える。このレーダアンテナ14は、擬似乱数出力装置20が出力した擬似乱数に基づいて定められる送信間隔で、電波信号を間欠的に送信する。
【0072】
これにより、信号の送信間隔のバラツキが良好となるので、他船の電波送信装置との間で発生する干渉のタイミングを変化させることができる。
【0073】
また、本実施形態のレーダ装置1は、前記電波送信装置5と、表示部12と、を備える。表示部12は、レーダアンテナ14によって送信された電波信号の反射波を分析した結果をレーダ画像として表示する。
【0074】
これにより、自船と他船との間の送信信号の干渉を異なるタイミングで発生させることができるため、干渉によって表示部12の表示が乱れるのを画像処理によって防止することができる。
【0075】
また、本実施形態のレーダ装置1は船舶用レーダ装置として構成されており、前記GPS受信機21は船舶に搭載されている。
【0076】
これにより、レーダ装置を搭載した他船が自船の近傍(探知範囲内)に存在した場合でも、自船と他船との間の送信信号の干渉を防止して、精度の良い探知を実現できる。
【0077】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0078】
上記実施形態のGPS受信機21を用いることに代えて、他のGNSS、例えばGALILEO、GLONASS等を用いて測位計算を行うGNSS受信機を用いることができる。また、複数のGNSSを併用して緯度及び経度の情報を得ることもできる。
【0079】
GPS受信機21が出力する緯度及び経度の情報は、上記した方法のほか、任意の方法でシードとして利用することができる。例えば、GPS受信機21が発生する緯度及び経度の情報に小数点以下の端数が含まれている場合、当該端数を用いて計算した値をシード値とすることができる。この場合、緯度及び経度の情報から秒の情報を取り出して加工する上記実施形態と比較して、より近接した船同士でも異なったシード値を生成できる余地がある。あるいは、並べ替え、計算等の加工を特に行わずに、経度及び緯度の数値をそのままシード値として設定することもできる。
【0080】
緯度及び経度の情報を擬似乱数発生部22のシードに用いることに代えて、例えば前述の擬似距離を用いたり、コード位相を用いたりすることができる。なお、コード位相とは、それぞれのGPS衛星から受信した擬似雑音符号の位相を意味し、ベースバンド処理部33が前記相関器でコード相関を行うことで取得することができる。擬似距離及びコード位相は、各船舶の独自の値(情報)であるとともに、それぞれのGPS衛星に対して異なる値となる。従って、これらの情報を擬似乱数発生部22のシード値として利用することにより、バラツキのより良好な擬似乱数列を得ることが期待できる。また、上記した緯度及び経度、擬似距離並びにコード位相のうち複数の情報を組み合わせて適宜計算した値をシードに用いることもできる。
【0081】
擬似乱数発生部22としてM系列擬似乱数生成器を用いることに代えて、他の擬似乱数生成器、例えばメルセンヌツイスタ等を用いることができる。
【0082】
上記実施形態では、間欠的に送信される電波の送信間隔を擬似乱数に基づいて変えているが、これに代えて、信号発生部82において送信周波数を擬似乱数に基づいて変化させることで干渉の防止を実現することもできる。
【0083】
上記実施形態の表示部12及び操作部13を、例えばプロッタ装置と兼用のものとして構成することができる。この場合、GPS受信機21から得られた自船の緯度及び経度の情報に基づいて、自船周囲の海岸線等のデータを表示部12に描画することができる。
【0084】
上記実施形態の擬似乱数出力装置20及びレーダ装置1は、船舶以外の移動体(例えば車両、航空機)に搭載して使用することもできる。
【0085】
上記実施形態の擬似乱数出力装置20は、レーダ装置1以外の送信装置及び探知機にも適用することができる。例えば、送信部としての超音波振動子から超音波信号を間欠的に送信して探知を行うソナー(魚群探知機を含む)において、超音波送信装置が送信する超音波信号の送信間隔を決定するために、上記と同様の構成の擬似乱数出力装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 レーダ装置(探知機)
5 電波送信装置(送信装置)
12 表示部
14 レーダアンテナ(送信部)
20 擬似乱数出力装置
21 GPS受信機(GNSS受信機)
22 擬似乱数発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、GNSS衛星から測位信号を受信して、その測位信号に基づくデータを出力するGNSS受信機と、
前記GNSS受信機が出力したデータ又はそれに基づくデータをシードとして用いて、擬似乱数を発生させる擬似乱数発生部と、
を備えることを特徴とする擬似乱数出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の擬似乱数出力装置であって、
前記擬似乱数発生部は、前記GNSS受信機が出力したデータから、前記移動体の緯度及び経度のうち少なくとも一方のデータ又はそれに基づくデータを前記シードとして用いることを特徴とする擬似乱数出力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の擬似乱数出力装置であって、
前記擬似乱数発生部は、所定のタイミングで前記シードを再設定することを特徴とする擬似乱数出力装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の擬似乱数出力装置と、
前記擬似乱数出力装置が出力した擬似乱数に基づいて定められる送信間隔で、電波信号又は超音波信号を間欠的に送信する送信部と、
を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の送信装置と、
前記送信部によって送信された電波信号又は超音波信号の反射波を分析した結果を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする探知機。
【請求項6】
請求項5に記載の探知機であって、
前記移動体は船舶であることを特徴とする探知機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−13950(P2011−13950A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157770(P2009−157770)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】