説明

支持板剥離装置

【課題】 支持板を剥離した後に半導体ウェハに付着した接着剤を、ドライ状況下において、半導体ウェハを破損させることなく除去することが可能な支持板剥離装置を提供する。
【解決手段】デマウンタ10は、ピールローラ204、第1の加圧部材208、第2の加圧部材212、ステッピングモータ222、ボールネジ226、第1の弾性部材(238、240)、および第2の弾性部材(234、236)を備える。第1の弾性部材(238、240)は、ステッピングモータ222およびボールネジ226から第2の加圧部材212に作用する下向きの力を第1の加圧部材208に伝達するように構成される。第2の弾性部材第2の弾性部材(234、236)は、キャップボルト244が第1の加圧部材208を吊り下げているときに圧縮された状態になるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウェハに接着剤を介して貼り付けられた支持板を剥離するとともに、半導体ウェハから接着剤を取り除くように構成された支持板剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化および小型化に伴って、半導体ウェハの薄型化の要請が高まっている。通常、半導体ウェハを薄型化する際には、薄型化加工される半導体ウェハに対してサポートガラス等の支持板を、UV硬化型接着剤等によって貼り合せ、半導体ウェハにおける張り合わせ面とは反対側の面を研磨する手法が用いられている。そして、このような手法において、薄型化加工された半導体ウェハには支持板が張り合わされていることから、薄型化加工された半導体ウェハがその後に搬送および加工される際に、強度の低下に起因する割れや反り等の不具合の発生が防止されるとされていた。
【0003】
ところが、半導体ウェハに貼り付けられた支持板および用いられた接着剤はダイシング工程に移行する前に取り除く必要がある。このため、従来、半導体ウェハから支持板および接着剤を除去する技術について様々な開発が為されている。そのような従来技術の中には、溶剤を用いて支持板を半導体ウェハから剥離するとともに、洗浄液およびプラズマを用いて接着剤を半導体ウェハから除去するように構成されるものがある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−3748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1の技術では、洗浄液を用いて半導体ウェハから接着剤を除去し、さらにその後にプラズマによるドライ処理を行っているが、支持板剥離装置の構成の簡素化や支持板剥離装置における処理の高速化を考慮すると、完全にドライ状況下において接着剤の除去処理を行うことが好ましいと言える。
【0006】
また、ドライ状況下において物理的に接着剤を除去する際には、半導体ウェハに対して物理的力を作用させることによって半導体ウェハを破損させてしまうような不具合の発生を完全に防止することが重要であると言える。
【0007】
この発明の目的は、支持板を剥離した後に半導体ウェハに付着した接着剤を、ドライ状況下において、半導体ウェハを破損させることなく除去することが可能な支持板剥離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る支持板剥離装置は、半導体ウェハに接着剤を介して貼り付けられた支持板を剥離するとともに、半導体ウェハから接着剤を取り除くように構成される。この支持板剥離装置は、少なくとも、剥離用ローラ、第1の加圧部材、第2の加圧部材、昇降駆動機構、第1の弾性部材、および第2の弾性部材を備える。
【0009】
剥離用ローラは、剥離用テープが張架されるように構成されるとともに、支持板が剥離された後の半導体ウェハに対向するように配置される。また、この剥離用ローラは、剥離用テープを半導体ウェハに押し当てつつ半導体ウェハから接着剤を剥離するように構成される。剥離用ローラの配置位置の例として、半導体ウェハを吸着支持するステージチャックの上方が挙げられる。
【0010】
第1の加圧部材は、剥離用ローラを軸支するように構成され、かつ、半導体ウェハの上方において昇降可能に配置される。第2の加圧部材は、第1の加圧部材の上方において第1の加圧部材と所定の間隔を設けて昇降可能に配置される。第2の加圧部材は、第1の加圧部材を吊り下げ支持するように構成された支持部を備える。
【0011】
昇降駆動機構は、第2の加圧部材に対して昇降するための駆動力を供給する。昇降駆動機構の代表例として、モータおよびこれに接続されたボールネジからなる機構が挙げられる。その他の例としてはシリンダ機構が挙げられる。
【0012】
第1の弾性部材は、昇降駆動機構から第2の加圧部材に作用する下向きの力を第1の加圧部材に伝達するように構成される。この第1の弾性部材は、第1の加圧部材と第2の加圧部材との間に介在するように配置される。
【0013】
第2の弾性部材は、第2の加圧部材の支持部と第1の加圧部材との間に介在するように配置される。この第2の弾性部材は、支持部が第1の加圧部材を吊り下げているときに圧縮された状態になるように配置される。
【0014】
上述の構成においては、第2の加圧部材が降下して剥離用ローラが半導体ウェハに当接した後に、支持部が第1の加圧部材から離間し始めるときにおいて、支持部と第1の加圧部材との間で圧縮されていた第2の弾性部材が伸長しつつ上向きの弾性力を第1の加圧部材に対して作用させる。
【0015】
このため、剥離用ローラが半導体ウェハに当接した直後には、剥離用ローラおよび第1の加圧部材の重量から第2の弾性部材の弾性力を減じた分の力が半導体ウェハに作用することになる。よって、剥離用ローラが半導体ウェハに当接した直後に、剥離用ローラおよび第1の加圧部材の重量が急激に半導体ウェハに作用することが防止され、その結果、剥離用ローラを介して半導体ウェハを加圧する際に半導体ウェハが破損するという不都合が起こりにくくなる。また、昇降駆動機構から第2の加圧部材に作用する下向きの力が、剛体ではなく弾性部材を介して第1の加圧部材に伝達するため、半導体ウェハを急減に強い力で加圧してしまうことが防止される。
【0016】
上述の構成において、第1の加圧部材が、第2の加圧部材の支持部によって吊り下げられる位置に、第2の弾性部材を収容可能な凹部を備えることが好ましい。その理由は、このような凹部を設けることにより、支持部が第1の加圧部材を吊り下げているときに、第2の弾性部材が凹部内に退避可能になり、第1の加圧部材と第2の加圧部材の支持部とが第2の弾性部材を介さずに直接接触することが可能となるからである。その結果、支持部が第1の加圧部材を吊り下げているときに、第1の加圧部材および第2の加圧部材を一体的に移動させ易くなる。
【0017】
また、上述の構成において、第1の弾性部材は、支持部が第1の加圧部材を吊り下げているときに、第1の加圧部材または第2の加圧部材の少なくともいずれかとの間に間隙を設けて配置されることが好ましい。その理由は、剥離用ローラが半導体ウェハに当接した直後において、第2の加圧部材を降下させても、第1の弾性部材を介して第1の加圧部材に押し下げ力が作用しなくなるからである。その結果、剥離用ローラが半導体ウェハに当接した直後に、急激に強い力が半導体ウェハに加えられることが防止される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、支持板を剥離した後に半導体ウェハに付着した接着剤を、ドライ状況下において、半導体ウェハを破損させることなく除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るデマウンタの概略を示す図である。
【図2】デマウンタにおけるアライメント部の概略を示す図である。
【図3】デマウンタにおけるピールユニットの概略を示す部である。
【図4】デマウンタにおけるレーザ照射ユニットの概略を示す図である。
【図5】デマウンタにおける剥離ユニットの概略を示す図である。
【図6】ピールユニットにおける接着剤除去処理を示す図である。
【図7】ピールユニットの加圧機構を示す図である。
【図8】ピールユニットの加圧機構を示す図である。
【図9】ピールユニットの構成の他の一例を示す図である。
【図10】ピールユニットにおける吸着アーム部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を用いて、本発明の実施形態に係るデマウンタ10の概略構成を説明する。デマウンタ10は、ウェハサポートシステムにおいて、マウンタにてウェハに貼り合わせたサポートガラスを取り除くとともに、貼り合わせに用いた接着剤(例えば、紫外線硬化型接着剤)をウェハから取り除くように構成される。
【0021】
デマウンタ10は、アライメント部12、ステージチャック14、ピールユニット20、レーザ照射ユニット16、サポートガラス剥離ユニット18、および制御部50を備える。
【0022】
アライメント部12は、図2に示すように、デマウンタ10に導入されたウェハの配置角度および中心位置を調整可能に構成される。なお、通常、この実施形態に係るデマウンタ10には、下面側にダイシングテープおよびダイシングフレームが取り付けられ、かつ、上面側に接着剤およびサポートガラスが取り付けられた状態のウェハが導入される。
【0023】
アライメント部12は、本体のセンターシャフト130を中心に回転可能に設けられたアライナパーム132を備えている。アライナパーム132には、位置決め部材126、位置決め部材128、およびレバー124が設けられる。レバー124は、ハンドル122に接続されており、かつ、レバー124とハンドル122との間に回転軸が配置されている。このため、オペレータがハンドル122を手前に引くことにより、レバー124がウェハを位置決め部材126、128に押しつけ、ウェハのセンタリングが行われる。
【0024】
さらに、アライメント部12は、アライメント部12の本体に対するアライナパーム132の回転をロックするためのロック機構134を備える。ロック機構134は、本体に対してアライナパーム132が所定角度(例えば、45度)回転するたびに、アライナパーム132の位置をロック可能に構成されている。ロック機構134は、オペレータがハンドル122を引くことにより、アライメント部12の本体に対するアライナパーム132のロック状態が解除される。よって、オペレータがハンドル122を持ってアライナパームを回転させることが可能となり、例えば、オペレータは、ウェハがピールユニット20に供給される前にウェハのノッチの位置を所望角度(例えば、45度)だけ傾けて配置するといったノッチ位置の角度調整を行うことが可能になっている。
【0025】
ステージチャック14は、アライメント部12の近傍に配置されており、上面においてウェハおよびダイシングフレームを吸着支持するように構成される。ステージチャック14は、図1において矢印302で示す方向にスライド往復移動可能に構成されている。具体的には、ステージチャック14は、図示しないLMガイドに沿ってピールユニット20の処理位置およびレーザ照射ユニット16の処理位置の間を往復移動するように構成されている。
【0026】
ピールユニット20は、図1および図3に示すように、スライドベース214がLMガイド218および220に沿ってスライドすることにより、矢印300で示す方向に往復移動可能に構成されている。ピールユニット20は、吸着アーム部202およびピールローラ204を備えている。吸着アーム部202は、メカシリンダを介して昇降可能に構成される。また、吸着アーム部202は、アライメント部12およびステージチャック14上のウェハを吸着可能に構成されており、アライメント部12およびステージチャック14の間でウェハを双方向に搬送する機能を備えている。
【0027】
ピールローラ204には、図3に示すように、ウェハに付着した接着剤を剥離するための剥離用テープ206が張架される。剥離用テープ206は供給ロール(図示省略)から送り出されてピールローラ204を含む複数のローラを経由して巻取ロール(図示省略)に巻き取られるように配置されている。この実施形態では、剥離用テープ206としてポリエステル製テープを用いているが、これに限定されるものではない。ピールローラ204は、ステージチャック14上のウェハの接着剤を除去する際に用いられるものであり、その詳細については後述する。
【0028】
レーザ照射ユニット16は、図4に示すように、レーザ光照射装置160およびレーザフード162を備えている。レーザ光照射装置160は、レーザ照射ユニット16の処理位置に搬送されたウェハの全面に対してレーザ光を走査しつつ照射可能に構成されている。レーザ光照射装置160は、インジウムガリウムヒ素等のレーザダイオードの光を、ファイバを通過させて増幅した後に、ウェハに照射するように構成される。ただし、レーザ光照射装置160の構成はこれに限定されるものでなく、一般にレーザマーカとして用いられる通常のレーザ光照射装置を用いることが可能である。レーザ光照射装置160がウェハに対してレーザ光を照射することにより、サポートガラスに塗布された熱発泡型樹脂が発砲し、その結果、サポートガラスがウェハから剥離する。
【0029】
レーザフード162は、第1のフード部材164および第2のフード部材166を備えている。第1のフード部材164は、レーザ照射ユニット16の処理位置の上方の所定位置にて固定される。
【0030】
一方で、第2のフード部材166は、昇降可能に支持されている。第2のフード部材166は、レーザ照射ユニット16の非処理時においては最上位置に配置されている。レーザ照射ユニット16の処理時には、第2のフード部材166は最下位置まで降下する。第2のフード部材166が最下位置まで降下すると、第2のフード部材166によってダイシングフレームの全体が押さえつけられるとともに、ウェハ上方のレーザ照射空間が閉塞されてレーザ光が外部に漏れないようになる。
【0031】
剥離ユニット18は、リフト装置182、アジャスト装置186、およびガラスカセット184を備える。リフト装置182は、図1に示すように、レーザ照射ユニット16およびガラスカセット184の間において揺動可能な剥離アーム183を備える。
【0032】
また、リフト装置182は、図5(A)に示すように、レーザ照射ユニット16によってレーザ光が照射されウェハから剥離したサポートガラスを剥離アーム183によって持ち上げる。リフト装置182は、ガラスを持ち上げた後に剥離アーム183を回動させ、ガラスカセット184の上方の空間まで搬送する。
【0033】
アジャスト装置186は、図5(B)に示すように、ガラスカセット184の上方の空間にて、剥離アーム183に保持されたサポートガラスを、真空吸着パッド185を介して受け取るように構成される。アジャスト装置186は、剥離アーム183から受け取ったサポートガラスを、水平を保つように調整しつつ、ガラスカセットの所定位置に載置する。なお、カセット184に積載されたサポートガラスは、リサイクルコータに移され、リサイクルコータにて洗浄された後に熱発泡型樹脂を塗布され、その後に再びマウンタにて利用される。
【0034】
制御部50は、上述したステージチャック14、ピールユニット20、レーザ照射ユニット16、および剥離ユニット18等の各ユニットの動作を統括的に制御するように構成される。
【0035】
続いて、図6(A)および図6(B)を用いて、ピールユニット20において、ステージチャック14上のウェハの接着剤を除去する手法を説明する。レーザ照射ユニット16にてサポートガラスが取り除かれたウェハは、その後、ステージチャック14によって再びピールユニット20に搬送され、そこで上面に残留した接着剤が取り除かれる。
【0036】
まず、図6(A)に示すように、ウェハがピールユニット20の処理位置に配置されると、ピールローラ204が降下し、ウェハの上面端部に接触する。その後、ピールユニット20はピールローラ204を介してウェハを加圧しつつ、ピールローラ204がウェハ上面を転がるようにしてウェハの上面の全面に残留した接着剤を剥離させて回収する。
【0037】
ピールローラ204は、図6(B)に示すように、ウェハを加圧しつつ、ウェハ上面を転がるようにしてウェハ上面における反対側の端部まで到達する。その間、ピールローラ204に張架された剥離用テープ206の接着面が順次的にウェハ上面に貼り付けられ、接着剤がウェハ上面から剥離用テープ206の接着面に移っていく。ウェハ上面に貼り付いた剥離用テープ206は、水平面と垂直面とが連続するように配置されたピールブロック210に沿って略垂直に持ち上げられてウェハ上面から剥離する。その後、剥離用テープ206における接着剤を吸着した箇所は、図示しない巻取りロールに回収される。なお、剥離用テープ206を持ち上げる際にウェハも共に持ち上げられてしまうことを防止するために、ピールブロック210における水平面と垂直面とのアールを0.2mm程度の極少サイズに抑えることによって、剥離用テープ206とウェハとが分離し易くなるようにしている。
【0038】
なお、上面の接着剤が取り除かれたウェハは、吸着アーム部202によってアライメント部12に戻されて、デマウンタ10の外部へ搬出される。このとき、ウェハをステージチャック14から持ち上げる際には、剥離帯電した静電気が放電してウェハを破損させることがないように、吸着アーム部202によってゆっくりとウェハを持ち上げることが重要である。また、同時にイオナイザによって帯電を中和するイオンを発生させたり、ステージチャック14の孔からエアを逆流させてウェハを剥離させ易くしたりすることも効果的である。
【0039】
続いて、図7(A)、図7(B)、および図8を用いて、ピールローラ204によってウェハを好適に加圧するための機構を説明する。図7(A)は、図3のB−B断面図であり、図7(B)は、図3のA−A断面図であり、図8は、図7(A)のC−C断面図である。
【0040】
ピールユニット20は、昇降ベース216、第1の加圧部材208、および第2の加圧部材212を備える。昇降ベース216は、スライドベース214に水平プレート215を介して接続される。また、昇降ベース216は、LMガイド228を介して第2の加圧部材212に接続されるとともに(図7(B)参照。)、LMガイド230およびLMガイド232を介して第1の加圧部材208に接続される(図8参照。)。
【0041】
第1の加圧部材208は、ピールローラ204を含む複数のローラを支持するように構成される。第2の加圧部材212は、第1の加圧部材208を吊り下げるように支持するとともに第1の加圧部材208に対して弾性部材を介して下向きの力を加えるように構成される。
【0042】
より具体的には、第2の加圧部材212にはボールネジ216のナット部が固着される。ボールネジ216のネジ軸は鉛直方向に配置されており、その上端部がカップリング224を介してステッピングローラ222に接続されている。
【0043】
第1の加圧部材208と第2の加圧部材212とは、2本のセットピース242およびキャップボルト244によって接続されている。ピールローラ204がウェハまたはステージチャック14から離間した状態では、第1の加圧部材208が、第2の加圧部材212と所定の間隔を設けて、キャップボルト244によって吊り下げられるようになっている。なお、この実施形態では、キャップボルト244の頭部が本発明の支持部に対応する。
【0044】
2本のキャップボルト244の下端部と第1の加圧部材208との間には、コイルスプリング234およびコイルスプリング236が圧縮した状態で配置されている。ここでは、コイルスプリング234およびコイルスプリング236は、本発明の第2の弾性部材に対応する。
【0045】
第1の加圧部材208が第2の加圧部材212によって吊り下げられている状態では、コイルスプリング234およびコイルスプリング236は、2本のキャップボルト244の頭部(または、キャップボルト244に付けられたワッシャ)と第1の加圧部材208との間で圧縮されている。
【0046】
一方で、ピールローラ204がウェハまたはステージチャック14に当接した状態になると、第1の加圧部材208と第2の加圧部材212との間隔が縮まるとともにキャップボルト244と第1の加圧部材208とが離間し始めるが、この際にコイルスプリング234およびコイルスプリング236が伸長し始める。
【0047】
さらに、第1の加圧部材208と第2の加圧部材212との間には、コイルスプリング238およびコイルスプリング240が介在するように配置される。コイルスプリング238およびコイルスプリング240は、第1の加圧部材208が第2の加圧部材212によって吊り下げられている状態において、第2の加圧部材212との間に間隙が形成されるように配置されている。第1の加圧部材208と第2の加圧部材212との間隔が縮まると、コイルスプリング238およびコイルスプリング240は、第1の加圧部材208と第2の加圧部材212との間で圧縮されつつ、第2の加圧部材212から第1の加圧部材208に力を伝達されるようになる。ここでは、コイルスプリング238およびコイルスプリング240が、本発明の第1の弾性部材に対応する。
【0048】
上述の構成において、ピールローラ204によってウェハを加圧する際には、ステッピングモータ222を回転させ、ボールネジ226のネジ軸に沿って第2の加圧部材を降下させる。第2の加圧部材が、ピールローラ204とウェハとの間隔に相当する距離だけ降下するとピールローラ204がウェハに当接するようになる。
【0049】
第2の加圧部材がさらに降下すると、キャップボルト244と第1の加圧部材208とが離間し始めるため、第1の加圧部材208に対してキャップボルト244から上向きの力が作用しなくなり、吊り下げ状態が解除される。
【0050】
このとき、圧縮されていたコイルスプリング234およびコイルスプリング236が伸長し始め、第1の加圧部材208に対して上向きの力を作用させる。この結果、上述の吊り下げ状態が解除された後においても、ピールローラ204および第1の加圧部材208の全体の重量が突然にウェハに作用することなくなる。
【0051】
この実施形態では、ピールローラ204とウェハとが当接した際に、ピールローラ204および第1の加圧部材208の全体の重量の10分の1程度の力がウェハに作用するように、コイルスプリング234およびコイルスプリング236の長さおよびバネ定数が設定される。ただし、コイルスプリング234およびコイルスプリング236の構成や配置はこれに限定されるものでなく、要求される仕様に応じて適宜変更することが可能である。
【0052】
第2の加圧部材がさらに降下すると、コイルスプリング234およびコイルスプリング236が元の長さに復元し、第1の加圧部材208に対して上向きの力を作用させなくなる。さらに、第1の加圧部材208と第2の加圧部材212との間隔が縮まっていくと、第2の加圧部材212に加えられた下向きの力が、コイルスプリング238およびコイルスプリング240を介して、第1の加圧部材208に伝達し始め、ピールローラ204がウェハをさらに加圧するようになる。
【0053】
このように、ピールユニット20では、ピールローラ204とウェハとが当接した際において、ピールローラ204からウェハに係る圧力を極力小さく抑えることが可能となるため、ウェハに対して急に大きな圧力が作用することが防止され、その結果、ウェハの破損等が発生しにくくなる。
【0054】
その一方で、第2の加圧部材212の位置を降下させると、コイルスプリング238およびコイルスプリング240を介して、第2の加圧部材212から第1の加圧部材208に対して十分な力を作用させることが可能となるため、ピールローラ204からウェハに対する加圧力が不足するという不都合も発生しない。また、この際にも、第2の加圧部材212と第1の加圧部材208との間にコイルスプリング238およびコイルスプリング240が介在しているため、第2の加圧部材212から第1の加圧部材208に対して急激に強い力が作用しにくい。
【0055】
なお、使用する剥離用テープ206の仕様やデマウンタ10の使用状況に応じて、図9(A)および図9(B)に示すように、ピールローラ204の周囲に、カートリッジヒータ250、温度センサ252、および断熱板254等を配置すると良い。
【0056】
最後に、デマウンタ10においては、ウェハまたはダイシングフレームのサイズが変更される場合であっても、吸着アーム部202によって適正に搬送することが可能である。吸着アーム部202は、図10に示すように、チャックベース278に対して4本のチャックアーム272が揺動可能に設けられている。中心線に対して右側のチャックアーム272はギアベースを介して左側のチャックアーム273に接続されているため、右側のチャックアーム272が揺動すると、それに伴って左側のチャックアーム272が反対方向に揺動するように構成されている。
【0057】
さらに、チャックベース278には、オペレータの操作によって揺動するレバーアーム276が設けられる。レバーアーム276の把持側とは反対側の端部にはリンクアーム274の一端部が軸支されており、このリンクアーム274の他端側が図中左下側のチャックアーム272に軸支されている。また、レバーアーム276の把持側にもリンクアーム274の一端部が軸支されており、このリンクアーム274の他端側が図中右上側のチャックアーム272に軸支されている。
【0058】
このため、オペレータがレバーアーム276を操作することによって、4本のチャックアーム272が互いに左右対称的で、かつ、前後対称的(図10中において上下対称的)に揺動する。この結果、ウェハまたはダイシングフレームをチャックする箇所を変えることが可能となり、複数サイズのウェハおよびダイシングフレームに対応することが可能となっている。
【0059】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10−デマウンタ
12−アライメント部
14−ステージチャック
16−レーザ照射ユニット
18−剥離ユニット
20−ピールユニット
204−ピールローラ
206−剥離用テープ
208−第1の加圧部材
210−ピールブロック
212−第2の加圧部材
216−昇降ベース
234、236、238、240−コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハに接着剤を介して貼り付けられた支持板を剥離するとともに、半導体ウェハから接着剤を取り除くように構成された支持板剥離装置であって、
剥離用テープが張架されるように構成されるとともに、支持板が剥離された後の半導体ウェハに対向するように配置された剥離用ローラであって、前記剥離用テープを前記半導体ウェハに押し当てつつ前記半導体ウェハから接着剤を剥離するように構成されたる剥離用ローラと、
前記剥離用ローラを軸支するように構成され、かつ、前記半導体ウェハの上方において昇降可能に配置された第1の加圧部材と、
前記第1の加圧部材の上方において前記第1の加圧部材と所定の間隔を設けて昇降可能に配置された第2の加圧部材であって、前記第1の加圧部材を吊り下げ支持するように構成された支持部を備えた第2の加圧部材と、
前記第2の加圧部材に対して昇降するための駆動力を供給する昇降駆動機構と、
前記昇降駆動機構から前記第2の加圧部材に作用する下向きの力を前記第1の加圧部材に伝達するための第1の弾性部材であって、前記第1の加圧部材と前記第2の加圧部材との間に介在するように配置された第1の弾性部材と、
前記第2の加圧部材の前記支持部と前記第1の加圧部材との間に介在するように配置された第2の弾性部材であって、前記支持部が前記第1の加圧部材を吊り下げているときに圧縮された状態になるように配置された第2の弾性部材と、
を備えた支持板剥離装置。
【請求項2】
前記第1の加圧部材は、前記支持部によって吊り下げられる位置に、前記第2の弾性部材を収容可能な凹部を備えた請求項1に記載の支持板剥離装置。
【請求項3】
前記第1の弾性部材は、前記支持部が前記第1の加圧部材を吊り下げているときに、前記第1の加圧部材または前記第2の加圧部材の少なくともいずれかとの間に間隙を設けて配置される請求項1または2に記載の支持板剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−94736(P2012−94736A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241746(P2010−241746)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】