放射線画像撮影装置
【課題】筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することを、装置構成の複雑化を招くことなく実現する。
【解決手段】傷検出用の放射線画像を撮影して白色線欠陥及び黒色線欠陥を検出し、X方向又はY方向に平行で太さが細く読出方向上流側又はドライバと反対側に白色線欠陥が位置している線欠陥は断線由来と判定し(「白色線欠陥A」参照)、再撮影した傷検出用放射線画像((B)参照)で位置が移動している線欠陥は浮遊ゴミ由来と判定し(「白色線欠陥B」「黒色線欠陥A」参照)、位置変化の無い白色線欠陥は筐体の被照射面に固着しているゴミに由来する線欠陥(「白色線欠陥C」参照)、位置変化の無い黒色線欠陥は筐体の被照射面に付いた傷に由来する線欠陥(「黒色線欠陥B」参照)と判定する。
【解決手段】傷検出用の放射線画像を撮影して白色線欠陥及び黒色線欠陥を検出し、X方向又はY方向に平行で太さが細く読出方向上流側又はドライバと反対側に白色線欠陥が位置している線欠陥は断線由来と判定し(「白色線欠陥A」参照)、再撮影した傷検出用放射線画像((B)参照)で位置が移動している線欠陥は浮遊ゴミ由来と判定し(「白色線欠陥B」「黒色線欠陥A」参照)、位置変化の無い白色線欠陥は筐体の被照射面に固着しているゴミに由来する線欠陥(「白色線欠陥C」参照)、位置変化の無い黒色線欠陥は筐体の被照射面に付いた傷に由来する線欠陥(「黒色線欠陥B」参照)と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影装置に係り、特に、筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段を備えた放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線やγ線、α線等の放射線を検出し、照射放射線量の分布を表す放射線画像のデータへ直接変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)が実用化されており、このFPD等のパネル型の放射線検出器と、画像メモリを含む電子回路及び電源部を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線検出パネル(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。
【0003】
なお、上記の放射線感応層としては、例えば照射された放射線をCsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)等のシンチレータ(蛍光体層)で光に一旦変換し、シンチレータから放出された光をPD(Photodiode)等から成る光検出部によって電荷へ再変換して蓄積する構成(間接変換方式)が知られている。放射線検出パネルは可搬性に優れているので、ストレッチャーやベッドに載せたまま被撮影者を撮影できると共に、放射線検出パネルの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない被撮影者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
【0004】
ところで、放射線検出パネルの筐体の一部を構成する被照射面の傷付きに関し、特許文献1には、照射された放射線のエネルギーの一部を蓄え、可視光や熱等が加えられると蓄えたエネルギーを蛍光として放出する輝尽性蛍光体を用いた輝尽性蛍光体パネルに励起光を照射し、パネルからの反射光を検出器で検出し、検出器出力を基準値と比較することで、パネル面の傷や汚れの状態を検出する技術が開示されており、パネル面に傷等があることを検出した場合に警報信号を出力することも記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、励起光を照射した時に蓄積性蛍光体シートから発せられる輝尽発光光を集光ガイドで伝達して受光し、これを電気信号に変換して放射線画像データを生成すると共に、蓄積性蛍光体シートに照射される励起光の散乱光を受光し、これを電気信号に変換して傷検出画像データを生成し、傷検出画像データに基づいて放射線画像データに含まれる傷画素を検出し、検出した傷画素を補正して放射線画像データに対応する放射線画像を生成する構成の放射線画像読取装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、繊維強化樹脂が一方向に引き揃えられた繊維強化樹脂から成る芯材層の少なくとも片面に、樹脂含浸された無機繊維又は有機繊維の不織布から成る表面層が配置され、芯材層の板厚方向中間部分に絶縁性の高い紙等の高抵抗シート状材料が配置された繊維強化樹脂板材を放射線検出パネルのフロント板に用いることで、表面の傷付きを低減し、かつ傷が付いた場合の補修を容易にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−165641号公報
【特許文献2】特開2010−8468号公報
【特許文献1】特開2002−316377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放射線検出パネルを用いた放射線画像の撮影では、撮影時に、筐体の被照射面が被撮影者の体に接触する。このため、放射線検出パネルの筐体の被照射面に傷が付くことは、放射線画像の撮影時に被撮影者に違和感を与える可能性があるので望ましくない。また、放射線検出パネルを用いた放射線画像の撮影では、撮影に伴って被撮影者の体液が筐体の被照射面に付着することがあるので、撮影が終了する度に筐体表面の洗浄が行われる。しかし、筐体の被照射面に線状の傷が付いていた場合、筐体の被照射面に付着した被撮影者の体液が前記傷を形成している被照射面上の微小な溝内に入り込んでしまい、付着した体液を除去するために筐体表面の洗浄に多大な手間を要するという問題も生ずる。このため、放射線検出パネルの筐体の被照射面に傷が付いた場合、例えば特許文献3に記載の補修等の何らかの対策を講ずるために被照射面の傷付きを速やかに検出したいというニーズがある。
【0009】
これに対し、前述の特許文献1に記載の技術は、検出器出力を基準値と比較して傷等を検出する技術であり、筐体の被照射面に付いた傷と筐体の被照射面に付着した塵埃等とを識別することについては考慮されていない。このため、特許文献1に記載の技術では、パネル面に傷等があることが検出されて警報信号が出力された場合に、警報信号出力の要因が傷付きか否かを目視で確認する必要があり、上記ニーズを満たすものではない。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、輝尽発光光を検出して放射線画像データを生成するための構成(集光ガイドや検出部等)と別に、励起光の散乱光を検出して傷検出画像データを生成するための構成(フォトダイオード等)を設ける必要があり、構成が複雑化するという問題がある。
【0011】
また、特許文献3には、放射線検出パネルの筐体の被照射面に付いた傷を検出する構成は開示されていない。
【0012】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することを、装置構成の複雑化を招くことなく実現できる放射線画像撮影装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段と、前記画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて前記筐体の前記被照射面に付いた傷を検出する検出手段と、を含んで構成されている。
【0014】
請求項1記載の発明では、筐体の被照射面に照射された放射線が画像検出手段によって画像として検出される。ここで、筐体の被照射面に傷が付いた場合、被照射面のうち傷が付いた部分を透過して画像検出手段に照射される放射線量が変化するので、画像検出手段によって検出される画像上の前記傷に対応する部分の濃度が変化するが、筐体の被照射面に塵埃等が付着した場合にも、被照射面のうち塵埃等が付着した部分を透過して画像検出手段に照射される放射線量が変化し、画像検出手段によって検出される画像上の前記塵埃等に対応する部分の濃度も変化する。但し、被照射面に付いた傷により濃度が変化した部分は、撮影を繰り返しても画像上の位置が移動しないのに対し、被照射面に付着した塵埃等により濃度が変化した部分は、撮影を繰り返すことで、被照射面への塵埃等の付着位置が移動することに伴って画像上の位置が移動する可能性が高い。
【0015】
上記に基づき請求項1記載の発明に係る検出手段は、画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて筐体の被照射面に付いた傷を検出する。このように、複数の画像を比較して被照射面に付いた傷を検出することで、被照射面に付着した塵埃等により濃度が変化した部分を、被照射面に付いた傷として誤検出することが防止され、筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することができる。また、画像検出手段によって検出された画像を用いて筐体の被照射面に付いた傷を検出するので、傷検出のためにフォトダイオード等の光電変換素子を追加する必要も無くなり、装置構成の複雑化を招くことを回避することができる。
【0016】
なお、請求項1記載の発明において、検出手段は、例えば請求項2に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定することが好ましい。
【0017】
筐体の被照射面の傷付きは、被照射面と異物との擦れ等によって生じることが多く、被照射面に付いた傷に対応する画像部は、一般に、画像上で周囲に存在する領域と濃度差の生じている部分が線状に連続する線状の画像部となる。また、複数の画像のうちの一部の画像にのみ存在している線状の画像部は、被照射面に付着した塵埃等に起因する画像部である可能性が高い。請求項2記載の発明では、複数の画像中に各々存在している線状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定するので、被照射面に付いた傷に対応する画像部以外の画像部を、簡易な処理により、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補から除外することができる。
【0018】
なお、請求項2記載の発明において、画像検出手段によって複数の画像が検出される間に被照射面の傷付きが発生した場合、当該傷に対応する画像部は被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補から除外されることになるが、筐体の被照射面に付いた傷の検出を定期的に繰り返すように検出手段を構成すれば、上記傷に対応する画像部は、次回の傷検出において、被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定することができる。
【0019】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、検出手段は、例えば請求項3に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の延びる方向が、被照射面に沿う第1方向と非平行で、被照射面に沿いかつ第1方向と直交する第2方向とも非平行か否かを判定し、複数の画像中に各々存在しており、第1方向及び第2方向と各々非平行な線状の画像部を、筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定することが好ましい。
【0020】
画像中の対応する画像部を筐体の被照射面に付いた傷と誤検出し易い事象としては、被照射面に付着した塵埃等以外に、画像検出手段の内部配線の断線等も挙げられる。但し、画像検出手段の内部配線の断線等が発生した場合に画像上に現れる内部配線の断線等に対応する画像部は、配線の配設方向(第1方向又は第2方向)に平行な直線状の画像部となることが殆どである。請求項3記載の発明では、複数の画像中に各々存在しており、第1方向及び第2方向と各々非平行な線状の画像部を、筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定するので、画像検出手段の内部配線の断線等に起因する画像部が被照射面に付いた傷に対応する画像部と誤判定されることを防止することができる。
【0021】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、検出手段は、例えば請求項4に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中の同一位置に、線状でかつ同一形状の画像部が各々存在しているか否かを判定し、複数の画像中の同一位置に各々存在している線状でかつ同一形状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定することが好ましい。
【0022】
前述のように、被照射面に付着した塵埃等により濃度が変化した部分は、撮影を繰り返すことで、被照射面への塵埃等の付着位置が移動することに伴って画像上の位置が移動する可能性が高い。請求項4記載の発明は、これを利用し、複数の画像中の同一位置に各々存在している線状でかつ同一形状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定するので、被照射面に付着した塵埃等に起因する画像部が被照射面に付いた傷に対応する画像部と誤判定されることをより確実に防止することができる。
【0023】
また、請求項1〜請求項4の何れかに記載の発明において、検出手段は、例えば請求項5に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の濃度が、同一の画像上の周囲に存在する画像部の濃度に対し、放射線量が増加する方向へ偏倚しているか否かを判定し、複数の画像中に各々存在しており、濃度が同一の画像中の周囲の画像部に対して放射線量が増加する方向へ偏倚している線状の画像部を、筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定することが好ましい。
【0024】
筐体の被照射面の傷付きでは、傷が付いた部分の被照射面の厚みが減少し、画像検出手段に照射される放射線量が増加するので、被照射面に付いた傷に対応する画像部は、画像上の周囲に存在する画像部に対して放射線量が増加する方向へ濃度が偏倚する。一方、被照射面への塵埃等の付着では、画像検出手段に照射される放射線の一部が付着した塵埃等によって遮蔽されるので、被照射面に付着した塵埃等に対応する画像部は、画像上の周囲に存在する画像部に対して放射線量が減少する方向へ濃度が偏倚する。請求項5記載の発明は、これを利用し、複数の画像中に各々存在しており、濃度が同一の画像中の周囲の画像部に対して放射線量が増加する方向へ偏倚している線状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定するので、被照射面に付着した塵埃等に起因する画像部が被照射面に付いた傷に対応する画像部と誤判定されることをより確実に防止することができる。
【0025】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、例えば請求項6に記載したように、検出手段によって被照射面の傷付きが検出された場合に通知する通知手段が設けられていることが好ましい。これにより、検出手段によって被照射面の傷付きが検出された場合に、放射線技師等の管理者がこれを認識することができ、被照射面を構成する部品の交換や被照射面の傷付きの補修等の対策を速やかに講ずることが可能となる。
【0026】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の発明において、例えば請求項7に記載したように、筐体の被照射面には、その最上層に、検出手段によって被照射面の傷付きが検出された場合に、研磨することで検出された傷を減少させることが可能な被研磨層が設けられていることが好ましい。これにより、被照射面の傷付きが検出された場合に、被照射面を研磨することで被照射面の傷付きを補修することが可能となる。
【0027】
また、請求項7記載の発明において、例えば請求項8に記載したように、筐体の被照射面には、被研磨層の下層に、被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、特定のパターンが刻まれた警告層が設けられていることが好ましい。これにより、被照射面の被研磨層を繰り返し研磨することに伴って研磨限界に達した場合に、これを研磨作業者に直ちに認識させることができる。
【0028】
また、請求項8記載の発明において、警告層は、例えば請求項9に記載したように、被照射面のうち画像検出手段による画像検出領域外に対応する範囲が、被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、特定のパターンが刻まれているように構成することができる。これにより、警告層のうち着色されているか又は特定のパターンが刻まれた範囲が、画像検出手段による画像検出に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0029】
また、請求項6記載の発明において、検出手段及び通知手段は筐体と別に設けられていてもよいが、例えば請求項10に記載したように、検出手段及び通知手段は筐体に設けられていることが好ましい。これにより、筐体及び画像検出手段を含む放射線画像検出パネルが複数設けられている環境において、被照射面の傷付きが検出されたパネルが何れのパネルかを放射線技師等の管理者に誤りなく認識させることができる。
【0030】
また、請求項1〜請求項10の何れかに記載の発明において、画像検出手段は、例えば請求項11に記載したように、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する第1光検出手段と、を備え、発光部が第1光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されていることが好ましい。この構成では、発光部及び第1光検出手段のうちの発光部側から放射線が入射される場合と比較して、発光部のうち第1光検出手段により近い部分が主発光領域となり、第1光検出手段による受光量が増大するので、放射線画像撮影装置における放射線の検出感度を向上させることができる。
【0031】
また、請求項11記載の発明において、画像検出手段は、例えば請求項12に記載したように、発光部よりも放射線到来方向上流側に配置され、有機光電変換材料から成り発光部から放出された光を検出する第2光検出手段が更に設けられた構成であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明は、筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて筐体の被照射面に付いた傷を検出するので、筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することを、装置構成の複雑化を招くことなく実現できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態で説明した電子カセッテを一部破断して示す斜視図である。
【図2】電子カセッテの断面図である。
【図3】電子カセッテの被照射面(被研磨層を除去した状態)の平面図である。
【図4】放射線検出器の構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】シンチレータの結晶構成の一例を模式的に示す概略図である。
【図6】電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図7】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】コンソールで実行される電子カセッテ検査処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】電子カセッテで実行される傷検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】線欠陥検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】傷検出用画像の一例を示すイメージ図である。
【図12】天板の研磨作業を説明するための概略図である。
【図13】天板の交換作業を説明するための概略図である。
【図14】放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には本実施形態に係る電子カセッテ10が示されている。電子カセッテ10は、放射線Xを透過させる材料から成り、所定の厚みを有する平板状の筐体12を備えている。筐体12は、図1における上面が放射線Xが照射される被照射面14とされ、筐体12の内部には、被照射面14側から、被照射面14に照射された放射線Xを画像として検出する放射線検出器16、放射線検出器16とフレキシブルケーブル25(図2参照)を介して電気的に接続された信号処理基板18が順に設けられている。なお、放射線検出器16は、被照射面14のうち図1に破線で示す画像検出範囲14A内を透過した放射線を画像として検出する。放射線検出器16は本発明に係る画像検出手段の一例である。
【0035】
図2に示すように、電子カセッテ10の筐体12は、各々およそ箱形の形状のフロントパネル20及びバックパネル22を備え、フロントパネル20及びバックパネル22が、それぞれの開口部が対向するように配置されると共に、両者の接触している部分が接着されて構成されている。筐体12は、放射線画像の撮影時に、フロントパネル20が被写体側(放射線Xの到来側)となるように配置される。
【0036】
フロントパネル20は、筐体12の被照射面14を形成する天板24と、天板24の周囲にその全周に亘って設けられ天板24の端面を保持する保持部26と、から構成されている。天板24は、最外層(被照射面14側)から順に、被研磨層24A、天板本体24Bが順に積層されて構成されている。
【0037】
被研磨層24Aは、一般的なブラシローラーや研磨紙(サンドペーパ)等で研磨可能で、かつ放射線透過性を有する材料から構成されている。このような材料としては、繊維材及び非繊維材の何れも適用可能であるが、被研磨層24Aを非繊維材で構成すれば、被研磨層24Aを研磨しても繊維のささくれが発生しないため、より好ましい。被研磨層24Aに適用可能な非繊維材としては、例えばDLCコーティング、アルミ膜、Cu膜、エラストマー又はカーボン等が挙げられる。また、傷が付き難いという観点から、被研磨層24Aは天板本体24Bよりも硬度が高い方が好ましい。更に、放射線透過性の低下を抑制するという観点から、被研磨層24Aは天板本体24Bよりも厚みが薄い方が好ましい。
【0038】
天板本体24Bは繊維材を含む材料で形成されている。例えば天板本体24Bを構成する繊維材として好適なCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化合成樹脂)で天板本体24Bを構成した場合、放射線Xの吸収を抑えつつ強度を確保することができる。また、保持部26及びバックパネル22は例えばABS樹脂等により形成されている。
【0039】
また、天板24の被照射面14と反対側の面には、筐体12内に収容された放射線検出器16が接着固定されている。なお、詳細は後述するが、放射線検出器16は光検出器42とシンチレータ34とが接着されて成り、より詳しくは、放射線検出器16のうちの光検出器42側が天板24に接着固定されている。なお、シンチレータ34は請求項11に記載の発光部の一例であり、光検出器42は請求項11に記載の第1光検出手段の一例である。
【0040】
天板24と放射線検出器16との接着には、例えば溶剤系接着剤及び水解体型接着剤が使用される。溶剤系接着剤としては、例えばクロロプレンゴム系接着剤や、スチレン・ブタジエン共重合体接着剤、ネオプレンゴム系接着剤、有機溶剤型酢酸ビニル樹脂系接着剤、有機溶剤型アクリル樹脂系接着剤などが挙げられる。
【0041】
水解体型接着剤は、水によって接着力が低下するか、又は接着力が失われる接着剤であり、具体的には例えば水性接着剤や水により崩壊する水崩壊型接着剤が挙げられる。水性接着剤としては、例えばポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、カゼイン、膠などの水溶性高分子を主材料とするものや、各種エマルション系接着剤などが適用可能である。また、水崩壊形接着剤としては、例えば各種接着剤に水で膨潤、崩壊するカプセルを配合したものが適用可能である。
【0042】
天板24と放射線検出器16との接着に水解体型接着剤を使用する場合は、後述するように剥離用流体として水が使用されるから、天板24と放射線検出器16との界面への剥離用流体の拡散が促進されるように、天板24の接着面と放射線検出器16の接着面との少なくとも一方、好ましくは両方が親水化処理されていることが好ましい。親水化は、親水化コーティング剤を塗布し、乾燥または硬化させて行うことができる。また、スパッタリング処理による親水化も可能である。
【0043】
図3に示すように、天板本体24Bのうち、画像検出範囲14Aの外側で、かつ画像検出範囲14Aの何れか1つの角部近傍の位置には、天板本体24Bを貫通し、放射線検出器16を天板本体24Bから剥離する際に剥離用流体を注入するための剥離用流体注入孔28が設けられている。また、画像検出範囲14Aを挟んで剥離用流体注入孔28が設けられた位置の対角に相当する位置には、内部を減圧して、放射線検出器16と天板24との界面への前記剥離用流体の拡散を促進するための減圧孔30が設けられている。剥離用流体注入孔28及び減圧孔30は、天板24の最外層に設けられた被研磨層24Aによって閉塞・隠蔽されている。
【0044】
例えば放射線検出器16の天板本体24Bへの接着に有機溶媒可溶型の接着剤を用いた場合、注入孔28に注入する剥離用流体としては、例えば有機溶媒が使用可能である。一方、放射線検出器16の天板本体24Bへの接着に水解体型接着剤を用いた場合、剥離用流体としては水が使用可能である。なお、放射線検出器16と天板本体24Bとの界面への拡散を促進するために、水に界面活性剤やアルコール等を配合したものを剥離用流体として用いてもよい。また、剥離用流体としては空気も使用可能である。更に、剥離用流体注入孔28に剥離用液体として有機溶媒や水等を注入した後、空気を注入して剥離用液体の浸透領域を空気圧で拡大するようにしてもよい。
【0045】
また、天板本体24Bのうち放射線検出器16によって放射線画像が撮影される画像検出範囲14Aの外側には、天板本体24Bの研磨禁止を警告する警告部材32が設けられている。本実施形態では、警告部材32として、表面に「研磨禁止」の文字が刻まれた部材を用いている。警告部材32も被研磨層24Aによって隠蔽されており、被研磨層24Aが研磨限界まで研磨されると天板24の表面に露出し、警告部材32の表面に刻まれた文字が視認可能な状態となる。なお、警告部材32は被研磨層24Aが研磨限界まで研磨されたことを警告するためのものであるので、警告部材32の表面に刻まれた文字は「研磨禁止」以外の文字でも所定の図形パターンでもよいし、警告部材32として、被研磨層24Aと異なる色に着色された部材を用いてもよい。なお、警告部材32は請求項8,9に記載の警告層の一例である。
【0046】
また、筐体12の被照射面14のうちの画像検出範囲14A外の位置には、複数個のLEDから成り、電子カセッテ10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量の状態等の動作状態を表示するための表示部33が設けられている(図1参照)。なお、表示部33はLED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部33は被照射面14以外の部位に設けてもよい。
【0047】
次に放射線検出器16について説明する。放射線検出器16のシンチレータ34は、被撮影者の体を透過した筐体12の被照射面14に照射され、筐体12の天板及び光検出器(TFT基板)42を透過して照射された放射線Xを吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができる。
【0048】
但し、本実施形態では、例として図5に示すように、シンチレータ34を、放射線入射/光射出側(光検出器42側)に柱状結晶34Aから成る柱状結晶領域が形成され、シンチレータ34の放射線入射側と反対側に非柱状結晶34Bから成る非柱状結晶領域が形成された構成としており、シンチレータ34としてCsIを含む材料を用い、当該材料を蒸着基板75に蒸着させることで、柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成されたシンチレータ34を得ている。なお、蒸着基板75としては耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ34は、柱状結晶34Aの平均径が柱状結晶34Aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。
【0049】
上記のように、シンチレータ34を柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成された構成にすると共に、高効率の発光が得られる柱状結晶34Aから成る柱状結晶領域を光検出器42側に配置することで、シンチレータ34で発生された光は柱状結晶34A内を進行して光検出器42へ射出され、光検出器42側へ射出される光の拡散が抑制されることで、電子カセッテ10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ34の深部(非柱状結晶領域)に到達した光も、非柱状結晶34Bによって光検出器42側へ反射されることで、光検出器42に入射される光の光量(シンチレータ34で発光された光の検出効率)が向上する。
【0050】
なお、シンチレータ34の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ34の蒸着基板75側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式を満たすことが好ましい。
0.01≦(t2/t1)≦0.25
【0051】
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)と、のシンチレータ34の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となり、シンチレータ34の発光効率、シンチレータ34で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ10の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0052】
また、上記では柱状結晶領域と非柱状結晶領域が連続的に形成された構成のシンチレータ34を説明したが、例えば上記の非柱状結晶領域に代えてアルミニウム等から成る光反射層が設けられ、柱状結晶領域のみが形成された構成であってもよいし、他の構成であってもよい。
【0053】
また、放射線検出器16の光検出器42は、シンチレータ34の光射出側から射出された光を検出するものであり、図4に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等から成る光電変換部72、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)70及び蓄積容量68を備えた画素部74が、図6に示すように、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板64上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)で構成されている。
【0054】
なお、本実施形態では、シンチレータ34の放射線照射面側に光検出器(TFT基板)42が配置されているが、発光部(シンチレータ34)と光検出手段(光検出器42)とをこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する(請求項11記載の発明に相当する構成)。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出手段(光検出器42)を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出手段(光検出器42)を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出手段とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出手段(光検出器42)の受光量が増大することで、結果として放射線画像撮影装置(電子カセッテ)の感度が向上する。
【0055】
光電変換部72は、下部電極72Aと上部電極72Bとの間に、シンチレータ34から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜72Cが配置されて構成されている。なお、下部電極72Aは、シンチレータ34から放出された光を光電変換膜72Cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ34の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極72AとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極72Aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0056】
また、光電変換膜72Cはシンチレータ34から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜72Cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ34から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンから成る光電変換膜72Cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板64が合成樹脂製である場合、絶縁性基板64の耐熱性が不足する可能性がある。
【0057】
一方、光電変換膜72Cを有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜72Cによるシンチレータ34から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料から成る光電変換膜72Cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、本実施形態では、光電変換部72の光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成している。
【0058】
光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜72Cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように光検出器42が配置される表面読取方式(ISS)において、光検出器42を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0059】
光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ34から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ34の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ34の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ34から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ34の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0060】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ34の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0061】
放射線画像撮影装置に適用可能な光電変換膜72Cについて具体的に説明する。放射線画像撮影装置における電磁波吸収/光電変換部位は、電極72A,72Bと、該電極72A,72Bに挟まれた光電変換膜72Cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0062】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0063】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜72Cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0064】
また、光電変換部72は、少なくとも電極対72A,72Bと光電変換膜72Cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0065】
電子ブロッキング膜は、上部電極72Bと光電変換膜72Cとの間に設けることができ、上部電極72Bと下部電極72Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極72Bから光電変換膜72Cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜72Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜72Cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0066】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部72の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0067】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜72Cと下部電極72Aとの間に設けることができ、上部電極72Bと下部電極72Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極72Aから光電変換膜72Cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜72Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜72Cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0068】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部72の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0069】
なお、光電変換膜72Cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極72Aに移動し、電子が上部電極72Bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0070】
TFT70は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0071】
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0072】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0073】
TFT70の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部104におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0074】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT70のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT70における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT70の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0075】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜72Cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT70と、を組み合わせた構成であれば、被撮影者の体の重みが荷重として加わる光検出器42の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0076】
また、絶縁性基板64は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT70の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部72の光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0077】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0078】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて絶縁性基板64を薄型化できる。
【0079】
絶縁性基板64としてガラス基板を用いた場合、光検出器(TFT基板)42全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、本実施形態では電子カセッテ10の薄型化を考慮し、絶縁性基板64として、光透過性を有する合成樹脂から成る薄型の基板を用いている。これにより、光検出器(TFT基板)42全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、光検出器(TFT基板)42に可撓性をもたせることができる。また、光検出器(TFT基板)42に可撓性をもたせることで、電子カセッテ10の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板64をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板64による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により光検出器42を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0080】
なお、電子カセッテ10の絶縁性基板64として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ10の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料から成る基板を絶縁性基板64として用いるようにしてもよい。
【0081】
また、図6に示すように、光検出器(TFT基板)42には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT70をオンオフさせるための複数本のゲート配線76と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量68(及び光電変換部72の上部電極72Aと下部電極72Bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT70を介して読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。また図4に示すように、光検出器(TFT基板)42のうち、放射線の到来方向と反対側の端部には、TFT基板上を平坦にするための平坦化層67が形成されている。
【0082】
図6に示すように、光検出器42の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ81に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部83に接続されている。被写体を透過した放射線(被写体の画像情報を担持した放射線)が電子カセッテ10に照射されると、シンチレータ34のうち被照射面14上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部74の光電変換部72では、シンチレータ34のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部74の蓄積容量68(及び光電変換部72の上部電極72Aと下部電極72Bの間)に蓄積される。
【0083】
上記のようにして個々の画素部74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素部74のTFT70は、ゲート線ドライバ81からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部83に入力される。従って、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0084】
信号処理部83は、個々のデータ配線78毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線78を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0085】
信号処理部83には画像メモリ90が接続されており、信号処理部83のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0086】
画像メモリ90は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU92A、ROM及びRAMを含むメモリ92B、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0087】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介してコンソール80と無線通信が可能とされており、コンソール80との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0088】
また、電子カセッテ10には電源部96が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ81や信号処理部83、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92等)は電源部96と各々接続され(図示省略)、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、図示しないバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。
【0089】
図7に示すように、コンソール80はコンピュータから成り、装置全体の動作を司るCPU104、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106、各種データを一時的に記憶するRAM108、及び、各種データを記憶するHDD110を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部116及び無線通信部118が接続され、ディスプレイ110がディスプレイドライバ112を介して接続され、更に、操作パネル102が操作入力検出部114を介して接続されている。
【0090】
通信I/F部116は接続端子80A、通信ケーブル82及び放射線発生装置84の接続端子84Aを介して放射線発生装置84と接続されている。コンソール80(のCPU104)は、放射線発生装置84との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部132経由で行う。無線通信部118は電子カセッテ10の無線通信部94と無線通信を行う機能を備えており、コンソール80(のCPU104)は電子カセッテ10との間の画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部118経由で行う。また、ディスプレイドライバ112はディスプレイ110への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール80(のCPU104)はディスプレイドライバ112を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ110に表示させる。また、操作パネル102は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部114は操作パネル102に対する操作を検出し、検出結果をCPU104へ通知する。
【0091】
また、放射線発生装置84は、放射線源130と、コンソール80との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部132と、コンソール80から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。また、放射線源130は互いに異なる撮影部位に対応する複数種の位置へ移動可能とされており、特定の位置への移動がコンソール80から指示されると、図示しない移動装置により、指示された特定の位置へ移動される。
【0092】
上述した電子カセッテ10、コンソール80及び放射線発生装置84は本実施形態に係る放射線画像撮影システムを構成している。なお、本実施形態に係る放射線画像撮影システムには電子カセッテ10が複数設けられている。
【0093】
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態に係る放射線画像撮影システムでは、放射線画像撮影システムに設けられた個々の電子カセッテ10が使用可能な状態か否かを確認するために、放射線技師等に指示に応じて、図8に示す電子カセッテ検査処理がコンソール80によって定期的に(例えば毎日)行われる。なお、この電子カセッテ検査処理は、始業時や終業時の時間帯に、個々の電子カセッテ10を単位として行われる。
【0094】
すなわち、電子カセッテ検査処理では、まずステップ380において、予め設定された電子カセッテ検査用の位置へ放射線源130を移動させる。次のステップ382では、所定のメッセージをディスプレイ110に表示させる等により、放射線技師等の検査指示者に対し、予め設定された電子カセッテ検査用のカセッテ位置に電子カセッテ10を配置するよう指示する。次のステップ384では、電子カセッテ検査用のカセッテ位置への電子カセッテ10の配置が完了したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ384を繰り返す。
【0095】
検査指示者は、ステップ384の指示に従い電子カセッテ検査用のカセッテ位置に電子カセッテ10を配置した後に、配置完了を意味する情報を操作パネル102を介して入力する操作を行う。これにより、ステップ384の判定が肯定されてステップ366へ移行し、無線通信部118を介して電子カセッテ10へ所定の信号を送信することで、電子カセッテ10に対して傷検出処理の実行を指示する。これにより、電子カセッテ10のカセッテ制御部92では傷検出処理(詳細は後述)が行われる。
【0096】
またステップ388では、放射線発生装置84に対し、予め設定された電子カセッテ検査用の曝射条件(管電圧や管電流の値)を送信した後に、曝射を指示する指示信号を送信する。これにより、放射線発生装置84は、コンソール80から事前に受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線源130から放射線を射出させる。なお、本実施形態における電子カセッテ10の検査は、放射線源130と電子カセッテ10の間に被写体(放射線を吸収する物体)が存在しない状態で行われるが、電子カセッテ検査用の曝射条件は、上記状態で放射線が照射された電子カセッテ10の光検出器42の個々の画素部74の中に、出力の飽和した画素部74や出力が過小となった画素部74が生じることのないように、管電圧や管電流の値が定められている。
【0097】
また、ステップ390では、電子カセッテ10で行われた傷検出処理の結果を電子カセッテ10から受信したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ392へ移行し、放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)が電子カセッテ10から要請されたか否か判定する。ステップ392の判定も否定された場合はステップ390に戻り、何れかの判定が肯定される迄、ステップ390,392を繰り返す。放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)が電子カセッテ10から要請された場合は、ステップ392の判定が肯定されてステップ388へ戻り、放射線源130から放射線を再射出させる。
【0098】
また、傷検出処理の結果を電子カセッテ10から受信すると、ステップ390の判定が肯定されてステップ394へ移行し、電子カセッテ10から受信した傷検出処理の結果(詳細は後述)をディスプレイ110に表示し、電子カセッテ検査処理を終了する。
【0099】
続いて、コンソール80からの指示によって電子カセッテ10のカセッテ制御部92で行われる傷検出処理について、図9を参照して説明する。ステップ300では、放射線発生装置84による曝射(放射線の照射)が終了したタイミングで、光検出器42の全画素部74に蓄積されている電荷をゲート線ドライバ81及び信号処理部83によって画像信号として読み出し、読み出した画像信号を、各画素毎の濃度(放射線の照射量)を表すデジタルの画像データ(第1の傷検出用放射線画像のデータ)へ変換して画像メモリ90に記憶させる。
【0100】
なお、放射線の照射が終了したタイミングは、例えば一定時間が経過したか否かに基づいて判断することができる。また、光検出器42のうち被照射面14の一端部側に位置している画素部74の列(同一のゲート配線76に接続された画素部74の列)を放射線検出に用い、この画素部74の列から放射線検出の結果を繰り返し読み出して放射線の照射終了を検知することも可能である。また、上記の画素部74の列に代えて、後述する光検出部200のセンサ部206を放射線検出に用いるようにしてもよい。
【0101】
次のステップ302では、ステップ300で画像メモリ90に記憶させた傷検出用放射線画像のデータに基づき、傷検出用放射線画像中に存在している線欠陥を検出する線欠陥検出処理を行う。
【0102】
この線欠陥検出処理について、図10を参照して説明すると、まずステップ350では、予め設定された白欠陥画素抽出用閾値を用いて傷検出用放射線画像を二値化する。これにより、傷検出用放射線画像の全画素は白欠陥画素とそれ以外の画素に弁別される。次のステップ352では、二値化した傷検出用放射線画像上で連続する白欠陥画素から成る全ての白色線欠陥を探索する。
【0103】
単一の白色欠陥の探索は、例えば、まず傷検出用放射線画像上に存在する単一の白欠陥画素を探索し、当該探索で抽出された白欠陥画素を基準画素に設定し、基準画素の周囲に存在する白欠陥画素を探索し、該当する白欠陥画素が抽出された場合は、抽出された白欠陥画素を基準画素と同一の白色欠陥に属する画素として記憶すると共に新たな基準画素に設定することを、基準画素の周囲に存在する白欠陥画素が抽出されなくなる迄繰り返すことで実現できる。また、上記処理によって単一の白色欠陥の抽出が完了する度に、未抽出の単一の白欠陥画素を探索することを、未抽出の白欠陥画素が抽出されなくなる迄繰り返すことで、二値化した傷検出用放射線画像上に存在する白色欠陥(複数の白欠陥画素から成る欠陥部)を全て抽出することができる。
【0104】
続いて、抽出した白色欠陥に外接する面積最小の矩形領域を求め、求めた矩形領域の縦横比(矩形領域の角を挟んで隣り合う二辺の長さの比率)を求め、求めた縦横比が予め設定した閾値以上の白色欠陥(外接する面積最小の矩形領域が細長い形状の白色欠陥)を白色線欠陥と判定する一方、縦横比が閾値未満の白色欠陥(外接する面積最小の矩形領域の二辺の長さの差が小さい形状の白色欠陥)を白色線欠陥から除外することを、抽出した個々の白色欠陥に対して各々行う。これにより、傷検出用放射線画像上に存在する全ての白色線欠陥が抽出される。
【0105】
ステップ354では、ステップ352の探索によって白色線欠陥が抽出(検出)されたか否か判定する。判定が否定された場合はステップ360へ移行するが、ステップ354の判定が肯定された場合はステップ356において、ステップ352の探索で抽出された個々の白色線欠陥に対し、個々の白色線欠陥を識別するための識別情報を付加するラベリングを行う。また、次のステップ358では、抽出された白色線欠陥を構成する白欠陥画素を個々の白色線欠陥毎に記憶し、ステップ360へ移行する。
【0106】
ステップ360以降では、ステップ350〜ステップ358と同様にして黒色線欠陥の検出を行う。すなわち、まずステップ360では、予め設定された黒欠陥画素抽出用閾値を用いて傷検出用放射線画像を二値化する。これにより、傷検出用放射線画像の全画素は黒欠陥画素とそれ以外の画素に弁別される。次のステップ362では、先のステップ352と同様にして、二値化した傷検出用放射線画像上で連続する黒欠陥画素から成る全ての黒色線欠陥を探索する。
【0107】
ステップ364では、ステップ362の探索によって黒色線欠陥が抽出(検出)されたか否か判定する。判定が否定された場合は線欠陥検出処理を終了するが、ステップ364の判定が肯定された場合はステップ366において、ステップ362の探索で抽出された個々の黒色線欠陥に対し、個々の黒色線欠陥を識別するための識別情報を付加するラベリングを行う。また、次のステップ368では、抽出された黒色線欠陥を構成する黒欠陥画素を個々の黒色線欠陥毎に記憶して線欠陥検出処理を終了し、傷検出処理(図9)のステップ304へ移行する。
【0108】
なお、上記の線欠陥検出処理では、電子カセッテ10の筐体12の被照射面14を形成する天板24に付いた傷を検出することを目的として、天板24に付く傷が線状であることに基づき、外接する面積最小の矩形領域の縦横比が閾値未満の欠陥部を検出対象から除外しているが、これに限られるものではなく、複数の白欠陥画素又は複数の黒欠陥画素から成る欠陥部を全て検出するようにしてもよい。
【0109】
傷検出処理(図9)のステップ304では、上述した線欠陥検出処理(図10)によって抽出(検出)された線欠陥(白色/黒色線欠陥)の中から判定対象の線欠陥を選択する。本実施形態では、傷検出処理(図9)を前回実行した際の検出結果を表す情報が記憶部92Cに記憶されており、次のステップ306では、判定対象の線欠陥の情報を上記の情報と照合することで、判定対象の線欠陥が、傷検出処理(図9)を前回実行した際に、電子カセッテ10の筐体12の天板24に付いた傷に由来する線欠陥として検出されていたか否か判定する。この判定が肯定された場合はステップ320へ移行し、コンソール80へ通知する線欠陥の情報として判定対象の線欠陥の情報をメモリ92Bに記憶し、ステップ322へ移行する。
【0110】
また、ステップ306の判定が否定された場合はステップ308へ移行し、判定対象の線欠陥が延びる方向を演算する。ステップ308の処理は、例えば判定対象の線欠陥に外接する面積最小の矩形領域を求め、求めた矩形領域の長辺の延びる方向を判定対象の線欠陥が延びる方向として求めるようにしてもよいし、判定対象の線欠陥を構成する欠陥画素のうち、判定対象の線欠陥に外接する面積最小の矩形領域の長辺の延びる方向に沿った両端部に存在している欠陥画素を結ぶ方向を、判定対象の線欠陥が延びる方向として求めるようにしてもよい。
【0111】
次のステップ310では、ステップ308で演算した線欠陥の方向が、X方向(光検出器42に設けられたゲート配線76の延びる方向)又はY方向(光検出器42に設けられたデータ配線78の延びる方向)に平行か否か判定する。ステップ310の判定が否定された場合はステップ316へ移行し、判定対象の線欠陥を再検出対象の線欠陥に設定してステップ322へ移行する。
【0112】
また、ステップ310の判定が肯定された場合はステップ312へ移行し、判定対象の線欠陥の幅(例えば判定対象の線欠陥の延びる方向に直交する方向に沿った判定対象の線欠陥のサイズ)が予め設定されたN画素以内か否か判定する。なお、ステップ312は、判定対象の線欠陥が、光検出器42のゲート配線76又はデータ配線78が断線した場合に出現する線欠陥に相当する幅の線欠陥(細い線欠陥)か否かを判定するものであり、上記のN画素としては、光検出器42のゲート配線76又はデータ配線78に断線が発生した場合に出現する線欠陥の最大幅に相当する値が設定されている。ステップ312の判定が否定された場合はステップ316へ移行し、判定対象の線欠陥を再検出対象の線欠陥に設定してステップ322へ移行する。
【0113】
また、ステップ312の判定が肯定された場合はステップ314へ移行し、判定対象の線欠陥がX方向に平行であればゲート線ドライバ81と反対側に、判定対象の線欠陥がY方向に平行であれば読出側(信号処理部83)と反対側に白色線欠陥が位置しているか否かを判定する。例として図11(A)に「×」で示す箇所でデータ配線78の断線が発生した場合、断線箇所を挟んで読出側(信号処理部83)と反対側に存在する各画素部74から信号処理部83への画像信号の出力が途絶えることから、例えば図11(A)に「白色線欠陥A」として示すように、断線箇所を挟んで読出側(信号処理部83)と反対側にY方向と平行な白色線欠陥が生ずる。また、図示は省略するが、ゲート配線76の断線が発生した場合にも、断線箇所を挟んでゲート線ドライバ81と反対側の各画素部74のTFT70がオンしなくなり、信号処理部83への画像信号の出力が途絶えることから、断線箇所を挟んでゲート線ドライバ81と反対側にX方向と平行な白欠陥が生ずる。このため、ステップ314の判定が肯定された場合はステップ318へ移行し、判定対象の線欠陥に対し、断線由来の線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ322へ移行する。
【0114】
一方、ステップ314の判定が否定された場合、判定対象の線欠陥はゲート配線76又はデータ配線78の断線に起因する線欠陥ではないと判定できるが、線欠陥の延びる方向がX方向又はY方向に平行でかつ幅も細いため、天板24に付いた傷に起因する線欠陥とも考え難い。このため本実施形態では、ステップ314の判定が否定された場合は何ら処理を行うことなくステップ322へ移行する。但し、ステップ314の判定が否定される線欠陥が生ずる原因としては、信号処理部83の一部回路の不調等も考えられるので、警報出力等の処理を行うようにしてもよい。
【0115】
ステップ322では、ステップ302の線欠陥検出処理で抽出(検出)された全ての線欠陥を判定対象として選択したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ304に戻り、ステップ322の判定が肯定される迄ステップ304〜ステップ322を繰り返す。線欠陥検出処理によって抽出(検出)された全ての線欠陥に対してステップ304〜ステップ322の処理を行うと、ステップ322の判定が肯定されてステップ324へ移行し、ステップ302の線欠陥検出処理で抽出(検出)された線欠陥の中に、先のステップ316で再検出対象に設定した線欠陥が存在しているか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ344へ移行する。
【0116】
一方、ステップ324の判定が肯定された場合はステップ326へ移行し、コンソール80に対して放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)を要請した後に、前述のステップ300と同様に、放射線発生装置84による再曝射(放射線の再照射)が終了したタイミングで、光検出器42の全画素部74に蓄積されている電荷をゲート線ドライバ81及び信号処理部83によって画像信号として読み出し、読み出した画像信号を、各画素毎の濃度(放射線の照射量)を表すデジタルの画像データ(第2の傷検出用放射線画像のデータ)へ変換して画像メモリ90に記憶させる。ステップ328では、ステップ326で得られた第2の傷検出用放射線画像に対して前述のステップ302と同様に線欠陥検出処理を行う。
【0117】
次のステップ330では、ステップ328の線欠陥検出処理によって抽出(検出)された線欠陥のうち、先に再検出対象に設定した線欠陥に対応すると推定される線欠陥(再検出対象に設定した線欠陥に対し、同一又は近傍の位置に存在しており、線欠陥を構成する欠陥画素の数も同一又は近似している線欠陥)を判定対象の線欠陥として選択する。ステップ332では、ステップ330で選択した判定対象の線欠陥の画像上の位置が、再検出対象に設定した元の線欠陥の画像上の位置から変化しているか否か判定する。
【0118】
例えば図11(A),(B)に示す「白色線欠陥B」や「黒色線欠陥A」のように、判定対象の線欠陥の画像上の位置が、第1の傷検出用放射線画像と第2の傷検出用放射線画像とで相違していた場合、判定対象の線欠陥は、電子カセッテ10の筐体12の被照射面14上に滞留している浮遊ゴミに起因する可能性が高いと判断できる。このため、ステップ332の判定が肯定された場合はステップ336へ移行し、判定対象の線欠陥に対して浮遊ゴミ由来の線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ342へ移行する。
【0119】
また、ステップ332の判定が否定された場合はステップ334へ移行し、判定対象の線欠陥が黒色線欠陥か否か判定する。電子カセッテ10の筐体12の被照射面14のうち傷が付いた部分では天板24の厚みが減少し、シンチレータ34に照射される放射線量が増加することで、被照射面14に付いた傷に対応する線欠陥は黒色となる。一方、電子カセッテ10の筐体12の被照射面14のうちゴミが付着した部分では、シンチレータ34に照射される放射線の一部がゴミによって遮蔽されることで、被照射面14に付着したゴミに対応する線欠陥は白色となる。
【0120】
このため、ステップ334の判定が否定された場合、判定対象の線欠陥は、例えば図11(A),(B)に示す「白色線欠陥C」のように、被照射面14に固着したゴミに起因する線欠陥と判断できるので、ステップ338へ移行し、判定対象の線欠陥に対して固着ゴミ由来の線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ342へ移行する。一方、ステップ334の判定が肯定された場合、判定対象の線欠陥は、例えば図11(A),(B)に示す「黒色線欠陥B」のように、被照射面14に付いた傷に起因する線欠陥と判断できるので、ステップ340へ移行し、判定対象の線欠陥に対して被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ342へ移行する。
【0121】
ステップ342では、再検出対象に設定した全ての線欠陥を判定対象として選択したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ330に戻り、ステップ342の判定が肯定される迄ステップ330〜ステップ342を繰り返す。これにより、再検出対象に設定した全ての線欠陥に対してステップ330〜ステップ342が各々行われ、再検出対象に設定した個々の線欠陥が浮遊ゴミ、固着ゴミ、被照射面14に付いた傷の何れに由来する線欠陥かが各々判定される。
【0122】
そして、ステップ342の判定が肯定されるとステップ344へ移行し、傷検出処理による検出結果をコンソール80へ送信すると共に、傷検出処理による検出結果に応じて表示部33の表示を切り替える表示制御を行い、傷検出処理を終了する。なお、被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合は電子カセッテ10のメインテナンスが必要であるので、表示部33の表示は、少なくとも被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合に、表示部33のランプを点灯又は点滅させることによって成されるが、ゲート配線76又はデータ配線78の断線もメインテナンスが必要であるので、ゲート配線76又はデータ配線78の断線に由来する線欠陥が検出された場合にも、表示部33のランプを点灯又は点滅させることが好ましい。また、傷由来の線欠陥と断線由来の線欠陥を表示部33の異なるランプに対応させ、各線欠陥の検出の有無に応じて対応するランプの点灯又は点滅を独立して切り替えることがより望ましい。
【0123】
また、被照射面14に付いた傷に塵埃等が入り込んでしまった場合、対応する線欠陥は黒色から白色へ変化するため、固着ゴミ由来の線欠陥と誤検出される可能性がある。固着ゴミ由来の線欠陥が検出された場合にも、被照射面14から固着ゴミを除去するメンテナンスを行うために表示部33の表示を切り替えて報知することが望ましいが、上記の誤検出も考慮し、表示部33の表示を警報のレベルがより高い表示に切り替え、検出された線欠陥が固着ゴミ由来か、被照射面14に付いた傷に塵埃等が入り込んでしまったことに起因するのかを検査指示者に確認させるようにすることがより望ましい。
【0124】
上記処理により、コンソール80のディスプレイ110には、図11(A),(B)に示すような線欠陥の検出結果が表示され、例えば被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合に、電子カセッテ10のメインテナンスが必要であることを放射線技師等の検査指示者が認識することができる。また、被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合に表示部33の表示が切り替わることで、電子カセッテ10が複数設けられている場合にも、放射線技師等の検査指示者がメインテナンス対象の電子カセッテ10を誤り無く認識することができる。
【0125】
被照射面14に傷が付いた場合、当初は、傷150が付いた天板24の外側表面の研磨が行われる。研磨の方法は特に限定されないが、例えば図12(A)に示すように、天板24の外側表面に研磨剤を含有するスラリー液152を吹き付けながら、回転させたブラシロール154を天板24の外側表面に押圧し、天板24(被研磨層24A)の外側表面をブラシ研磨する方法が好適である。この研磨は、天板24の外側表面のうち傷150が付いている箇所だけ研磨してもよいが、天板24をできるだけ平坦にするために、天板24の外側表面全体を研磨することが好ましい。また上記の研磨は、図12(B)に示すように、傷150が少なくとも視覚的に確認できなくなった時点で終了される。これにより、天板24を交換することなく天板24に付いた傷150を修復することができ、天板24の交換頻度を低減することができる。
【0126】
また、天板24の被研磨層24Aの研磨を繰り返すと、被研磨層24Aが研磨限界に達して天板本体24Bの表面が外部に露出するが、これに伴い、図3に示すように警告部材32が露出して視認可能となることで、被研磨層24Aが研磨限界に達したことが研磨作業者へ警告される。これにより、被研磨層24Aが研磨限界に達したことを認識した研磨作業者によって研磨作業が中止されることで、天板本体24Bまで研磨されることが防止される。そして、この場合は天板24の交換作業が行われる。
【0127】
天板24の交換作業は、まず図13(A)及び(B)に示すように、筐体12から保持部26及びバックパネル22が取り外される。これにより、放射線検出器16が接着された状態の天板24が保持部26と分離され、天板24の端部が露出する。次に、図13(B)の矢印Aに示すように、天板24の剥離用流体注入孔28に剥離用流体が注入されると共に、同図の矢印Bに示すように、減圧孔30の内部が減圧される。これにより、剥離用流体注入孔28に注入された剥離用流体は、天板24と放射線検出器16との界面を、対角に位置する減圧孔30に向かって拡散する。剥離用流体が減圧孔30まで拡散することで、図13(C)に示すように、天板24が放射線検出器16から剥離される。
【0128】
この後、天板24が剥離した放射線検出器16に新しい天板24に接着固定し、保持部26及びバックパネル22を取り付けることで再度電子カセッテ10を組み立てる作業が行われる。これにより、天板24の交換作業が完了する。
【0129】
なお、上記ではシンチレータ34から射出された光を単一の光検出器42(請求項11に記載の第1光検出手段)で検出する態様を説明したが、これに限られるものではない。例として図14には、光検出器42に加えて、シンチレータ34から射出された光を検出する光検出部200が、光検出器42を挟んでシンチレータ34の反対側に設けられた構成を示している。光検出部200は請求項11に記載の第2光検出手段の一例であり、配線がパターニングされた配線層202、絶縁層204が順に形成され、その上層に、シンチレータ34から射出され光検出器42を透過した光を検出するセンサ部206が複数形成され、更に当該センサ部206の上層に保護層が形成されて構成されている。なお、光検出部200の厚みは例えば0.05mm程度である。
【0130】
センサ部206は、上部電極210A及び下部電極210Bを備え、上部電極210Aと下部電極210Bとの間に、シンチレータ34からの光を吸収して電荷を発生する光電変換膜210Cが配置されて構成されている。センサ部206(光電変換膜210C)としては、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードを適用することも可能であるが、本実施形態では、光電変換部72の光電変換膜72Cと同様に、光電変換膜210Cを有機光電変換材料で構成している。これにより、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで光電変換膜210Cを形成させることが可能となり、絶縁性基板64として、光透過性を有する合成樹脂製で薄型の基板を用いることが可能となる。
【0131】
センサ部206による放射線量の検出結果は、電極210A,210Bと接続された図示しない信号処理部を介して読み出され、例えば電子カセッテ10への放射線の照射開始/終了タイミングの検知や、電子カセッテ10への放射線照射量の積算値の検知等に用いられる。なお、放射線画像の検出(撮影)は光検出器42によって行われるので、光検出部200のセンサ部206は、光検出器42の画素部74よりも配置ピッチが大きく(配置密度が低く)されており、単一のセンサ部206の受光領域は、光検出器42の画素部74の数個〜数百個分のサイズでよい。
【0132】
また、上記ではコンソール80で実行される電子カセッテ検査処理において、電子カセッテ10から放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)が要請された場合に、単に放射線源130から放射線を再射出させる処理を行う態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)にあたり、電子カセッテ10の被照射面14の清掃を検査指示者へ要請するメッセージをディスプレイ110に表示させる等により、電子カセッテ10の被照射面14を検査指示者によって清掃させ、被照射面14の清掃が完了した後に、放射線源130から放射線を再射出させる処理を行うようにしてもよい。上記の清掃に伴い、被照射面14上に滞留している浮遊ゴミが移動或いは除去されることで、浮遊ゴミに由来する線欠陥をより確実に検出することができる。
【0133】
また、上記では放射線源130と電子カセッテ10の間に被写体が存在しない状態で撮影された放射線画像(傷検出用放射線画像)を用いて傷検出処理を行う態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被写体を撮影した診断用の放射線画像を用いて傷検出処理を行うようにしてもよい。具体的には、例えば十枚〜数十枚程度の診断用の放射線画像から濃度を画素毎に平均化した平均化画像を用いて傷検出を行うようにすれば、個々の放射線画像における被写体(例えば撮影部位等)の相違が均されるので、被照射面14に傷が付いてから実際に傷が検出される迄の期間が多少長くなる可能性はあるものの、被照射面14に付いた傷を検出することは可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 電子カセッテ
12 筐体
14 被照射面
16 放射線検出器
24 天板
24A 被研磨層
32 警告部材
33 表示部
34 シンチレータ
42 光検出器
80 コンソール
92 カセッテ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影装置に係り、特に、筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段を備えた放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線やγ線、α線等の放射線を検出し、照射放射線量の分布を表す放射線画像のデータへ直接変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)が実用化されており、このFPD等のパネル型の放射線検出器と、画像メモリを含む電子回路及び電源部を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線検出パネル(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。
【0003】
なお、上記の放射線感応層としては、例えば照射された放射線をCsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)等のシンチレータ(蛍光体層)で光に一旦変換し、シンチレータから放出された光をPD(Photodiode)等から成る光検出部によって電荷へ再変換して蓄積する構成(間接変換方式)が知られている。放射線検出パネルは可搬性に優れているので、ストレッチャーやベッドに載せたまま被撮影者を撮影できると共に、放射線検出パネルの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない被撮影者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
【0004】
ところで、放射線検出パネルの筐体の一部を構成する被照射面の傷付きに関し、特許文献1には、照射された放射線のエネルギーの一部を蓄え、可視光や熱等が加えられると蓄えたエネルギーを蛍光として放出する輝尽性蛍光体を用いた輝尽性蛍光体パネルに励起光を照射し、パネルからの反射光を検出器で検出し、検出器出力を基準値と比較することで、パネル面の傷や汚れの状態を検出する技術が開示されており、パネル面に傷等があることを検出した場合に警報信号を出力することも記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、励起光を照射した時に蓄積性蛍光体シートから発せられる輝尽発光光を集光ガイドで伝達して受光し、これを電気信号に変換して放射線画像データを生成すると共に、蓄積性蛍光体シートに照射される励起光の散乱光を受光し、これを電気信号に変換して傷検出画像データを生成し、傷検出画像データに基づいて放射線画像データに含まれる傷画素を検出し、検出した傷画素を補正して放射線画像データに対応する放射線画像を生成する構成の放射線画像読取装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、繊維強化樹脂が一方向に引き揃えられた繊維強化樹脂から成る芯材層の少なくとも片面に、樹脂含浸された無機繊維又は有機繊維の不織布から成る表面層が配置され、芯材層の板厚方向中間部分に絶縁性の高い紙等の高抵抗シート状材料が配置された繊維強化樹脂板材を放射線検出パネルのフロント板に用いることで、表面の傷付きを低減し、かつ傷が付いた場合の補修を容易にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−165641号公報
【特許文献2】特開2010−8468号公報
【特許文献1】特開2002−316377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放射線検出パネルを用いた放射線画像の撮影では、撮影時に、筐体の被照射面が被撮影者の体に接触する。このため、放射線検出パネルの筐体の被照射面に傷が付くことは、放射線画像の撮影時に被撮影者に違和感を与える可能性があるので望ましくない。また、放射線検出パネルを用いた放射線画像の撮影では、撮影に伴って被撮影者の体液が筐体の被照射面に付着することがあるので、撮影が終了する度に筐体表面の洗浄が行われる。しかし、筐体の被照射面に線状の傷が付いていた場合、筐体の被照射面に付着した被撮影者の体液が前記傷を形成している被照射面上の微小な溝内に入り込んでしまい、付着した体液を除去するために筐体表面の洗浄に多大な手間を要するという問題も生ずる。このため、放射線検出パネルの筐体の被照射面に傷が付いた場合、例えば特許文献3に記載の補修等の何らかの対策を講ずるために被照射面の傷付きを速やかに検出したいというニーズがある。
【0009】
これに対し、前述の特許文献1に記載の技術は、検出器出力を基準値と比較して傷等を検出する技術であり、筐体の被照射面に付いた傷と筐体の被照射面に付着した塵埃等とを識別することについては考慮されていない。このため、特許文献1に記載の技術では、パネル面に傷等があることが検出されて警報信号が出力された場合に、警報信号出力の要因が傷付きか否かを目視で確認する必要があり、上記ニーズを満たすものではない。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術は、輝尽発光光を検出して放射線画像データを生成するための構成(集光ガイドや検出部等)と別に、励起光の散乱光を検出して傷検出画像データを生成するための構成(フォトダイオード等)を設ける必要があり、構成が複雑化するという問題がある。
【0011】
また、特許文献3には、放射線検出パネルの筐体の被照射面に付いた傷を検出する構成は開示されていない。
【0012】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することを、装置構成の複雑化を招くことなく実現できる放射線画像撮影装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段と、前記画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて前記筐体の前記被照射面に付いた傷を検出する検出手段と、を含んで構成されている。
【0014】
請求項1記載の発明では、筐体の被照射面に照射された放射線が画像検出手段によって画像として検出される。ここで、筐体の被照射面に傷が付いた場合、被照射面のうち傷が付いた部分を透過して画像検出手段に照射される放射線量が変化するので、画像検出手段によって検出される画像上の前記傷に対応する部分の濃度が変化するが、筐体の被照射面に塵埃等が付着した場合にも、被照射面のうち塵埃等が付着した部分を透過して画像検出手段に照射される放射線量が変化し、画像検出手段によって検出される画像上の前記塵埃等に対応する部分の濃度も変化する。但し、被照射面に付いた傷により濃度が変化した部分は、撮影を繰り返しても画像上の位置が移動しないのに対し、被照射面に付着した塵埃等により濃度が変化した部分は、撮影を繰り返すことで、被照射面への塵埃等の付着位置が移動することに伴って画像上の位置が移動する可能性が高い。
【0015】
上記に基づき請求項1記載の発明に係る検出手段は、画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて筐体の被照射面に付いた傷を検出する。このように、複数の画像を比較して被照射面に付いた傷を検出することで、被照射面に付着した塵埃等により濃度が変化した部分を、被照射面に付いた傷として誤検出することが防止され、筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することができる。また、画像検出手段によって検出された画像を用いて筐体の被照射面に付いた傷を検出するので、傷検出のためにフォトダイオード等の光電変換素子を追加する必要も無くなり、装置構成の複雑化を招くことを回避することができる。
【0016】
なお、請求項1記載の発明において、検出手段は、例えば請求項2に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定することが好ましい。
【0017】
筐体の被照射面の傷付きは、被照射面と異物との擦れ等によって生じることが多く、被照射面に付いた傷に対応する画像部は、一般に、画像上で周囲に存在する領域と濃度差の生じている部分が線状に連続する線状の画像部となる。また、複数の画像のうちの一部の画像にのみ存在している線状の画像部は、被照射面に付着した塵埃等に起因する画像部である可能性が高い。請求項2記載の発明では、複数の画像中に各々存在している線状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定するので、被照射面に付いた傷に対応する画像部以外の画像部を、簡易な処理により、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補から除外することができる。
【0018】
なお、請求項2記載の発明において、画像検出手段によって複数の画像が検出される間に被照射面の傷付きが発生した場合、当該傷に対応する画像部は被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補から除外されることになるが、筐体の被照射面に付いた傷の検出を定期的に繰り返すように検出手段を構成すれば、上記傷に対応する画像部は、次回の傷検出において、被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定することができる。
【0019】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、検出手段は、例えば請求項3に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の延びる方向が、被照射面に沿う第1方向と非平行で、被照射面に沿いかつ第1方向と直交する第2方向とも非平行か否かを判定し、複数の画像中に各々存在しており、第1方向及び第2方向と各々非平行な線状の画像部を、筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定することが好ましい。
【0020】
画像中の対応する画像部を筐体の被照射面に付いた傷と誤検出し易い事象としては、被照射面に付着した塵埃等以外に、画像検出手段の内部配線の断線等も挙げられる。但し、画像検出手段の内部配線の断線等が発生した場合に画像上に現れる内部配線の断線等に対応する画像部は、配線の配設方向(第1方向又は第2方向)に平行な直線状の画像部となることが殆どである。請求項3記載の発明では、複数の画像中に各々存在しており、第1方向及び第2方向と各々非平行な線状の画像部を、筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定するので、画像検出手段の内部配線の断線等に起因する画像部が被照射面に付いた傷に対応する画像部と誤判定されることを防止することができる。
【0021】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、検出手段は、例えば請求項4に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中の同一位置に、線状でかつ同一形状の画像部が各々存在しているか否かを判定し、複数の画像中の同一位置に各々存在している線状でかつ同一形状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定することが好ましい。
【0022】
前述のように、被照射面に付着した塵埃等により濃度が変化した部分は、撮影を繰り返すことで、被照射面への塵埃等の付着位置が移動することに伴って画像上の位置が移動する可能性が高い。請求項4記載の発明は、これを利用し、複数の画像中の同一位置に各々存在している線状でかつ同一形状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定するので、被照射面に付着した塵埃等に起因する画像部が被照射面に付いた傷に対応する画像部と誤判定されることをより確実に防止することができる。
【0023】
また、請求項1〜請求項4の何れかに記載の発明において、検出手段は、例えば請求項5に記載したように、画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の濃度が、同一の画像上の周囲に存在する画像部の濃度に対し、放射線量が増加する方向へ偏倚しているか否かを判定し、複数の画像中に各々存在しており、濃度が同一の画像中の周囲の画像部に対して放射線量が増加する方向へ偏倚している線状の画像部を、筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定することが好ましい。
【0024】
筐体の被照射面の傷付きでは、傷が付いた部分の被照射面の厚みが減少し、画像検出手段に照射される放射線量が増加するので、被照射面に付いた傷に対応する画像部は、画像上の周囲に存在する画像部に対して放射線量が増加する方向へ濃度が偏倚する。一方、被照射面への塵埃等の付着では、画像検出手段に照射される放射線の一部が付着した塵埃等によって遮蔽されるので、被照射面に付着した塵埃等に対応する画像部は、画像上の周囲に存在する画像部に対して放射線量が減少する方向へ濃度が偏倚する。請求項5記載の発明は、これを利用し、複数の画像中に各々存在しており、濃度が同一の画像中の周囲の画像部に対して放射線量が増加する方向へ偏倚している線状の画像部を、筐体の被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定するので、被照射面に付着した塵埃等に起因する画像部が被照射面に付いた傷に対応する画像部と誤判定されることをより確実に防止することができる。
【0025】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、例えば請求項6に記載したように、検出手段によって被照射面の傷付きが検出された場合に通知する通知手段が設けられていることが好ましい。これにより、検出手段によって被照射面の傷付きが検出された場合に、放射線技師等の管理者がこれを認識することができ、被照射面を構成する部品の交換や被照射面の傷付きの補修等の対策を速やかに講ずることが可能となる。
【0026】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の発明において、例えば請求項7に記載したように、筐体の被照射面には、その最上層に、検出手段によって被照射面の傷付きが検出された場合に、研磨することで検出された傷を減少させることが可能な被研磨層が設けられていることが好ましい。これにより、被照射面の傷付きが検出された場合に、被照射面を研磨することで被照射面の傷付きを補修することが可能となる。
【0027】
また、請求項7記載の発明において、例えば請求項8に記載したように、筐体の被照射面には、被研磨層の下層に、被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、特定のパターンが刻まれた警告層が設けられていることが好ましい。これにより、被照射面の被研磨層を繰り返し研磨することに伴って研磨限界に達した場合に、これを研磨作業者に直ちに認識させることができる。
【0028】
また、請求項8記載の発明において、警告層は、例えば請求項9に記載したように、被照射面のうち画像検出手段による画像検出領域外に対応する範囲が、被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、特定のパターンが刻まれているように構成することができる。これにより、警告層のうち着色されているか又は特定のパターンが刻まれた範囲が、画像検出手段による画像検出に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0029】
また、請求項6記載の発明において、検出手段及び通知手段は筐体と別に設けられていてもよいが、例えば請求項10に記載したように、検出手段及び通知手段は筐体に設けられていることが好ましい。これにより、筐体及び画像検出手段を含む放射線画像検出パネルが複数設けられている環境において、被照射面の傷付きが検出されたパネルが何れのパネルかを放射線技師等の管理者に誤りなく認識させることができる。
【0030】
また、請求項1〜請求項10の何れかに記載の発明において、画像検出手段は、例えば請求項11に記載したように、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する第1光検出手段と、を備え、発光部が第1光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されていることが好ましい。この構成では、発光部及び第1光検出手段のうちの発光部側から放射線が入射される場合と比較して、発光部のうち第1光検出手段により近い部分が主発光領域となり、第1光検出手段による受光量が増大するので、放射線画像撮影装置における放射線の検出感度を向上させることができる。
【0031】
また、請求項11記載の発明において、画像検出手段は、例えば請求項12に記載したように、発光部よりも放射線到来方向上流側に配置され、有機光電変換材料から成り発光部から放出された光を検出する第2光検出手段が更に設けられた構成であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように本発明は、筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて筐体の被照射面に付いた傷を検出するので、筐体の被照射面に付着した塵埃等の影響を排除して被照射面に付いた傷を正確に検出することを、装置構成の複雑化を招くことなく実現できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態で説明した電子カセッテを一部破断して示す斜視図である。
【図2】電子カセッテの断面図である。
【図3】電子カセッテの被照射面(被研磨層を除去した状態)の平面図である。
【図4】放射線検出器の構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】シンチレータの結晶構成の一例を模式的に示す概略図である。
【図6】電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図7】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】コンソールで実行される電子カセッテ検査処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】電子カセッテで実行される傷検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】線欠陥検出処理の内容を示すフローチャートである。
【図11】傷検出用画像の一例を示すイメージ図である。
【図12】天板の研磨作業を説明するための概略図である。
【図13】天板の交換作業を説明するための概略図である。
【図14】放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には本実施形態に係る電子カセッテ10が示されている。電子カセッテ10は、放射線Xを透過させる材料から成り、所定の厚みを有する平板状の筐体12を備えている。筐体12は、図1における上面が放射線Xが照射される被照射面14とされ、筐体12の内部には、被照射面14側から、被照射面14に照射された放射線Xを画像として検出する放射線検出器16、放射線検出器16とフレキシブルケーブル25(図2参照)を介して電気的に接続された信号処理基板18が順に設けられている。なお、放射線検出器16は、被照射面14のうち図1に破線で示す画像検出範囲14A内を透過した放射線を画像として検出する。放射線検出器16は本発明に係る画像検出手段の一例である。
【0035】
図2に示すように、電子カセッテ10の筐体12は、各々およそ箱形の形状のフロントパネル20及びバックパネル22を備え、フロントパネル20及びバックパネル22が、それぞれの開口部が対向するように配置されると共に、両者の接触している部分が接着されて構成されている。筐体12は、放射線画像の撮影時に、フロントパネル20が被写体側(放射線Xの到来側)となるように配置される。
【0036】
フロントパネル20は、筐体12の被照射面14を形成する天板24と、天板24の周囲にその全周に亘って設けられ天板24の端面を保持する保持部26と、から構成されている。天板24は、最外層(被照射面14側)から順に、被研磨層24A、天板本体24Bが順に積層されて構成されている。
【0037】
被研磨層24Aは、一般的なブラシローラーや研磨紙(サンドペーパ)等で研磨可能で、かつ放射線透過性を有する材料から構成されている。このような材料としては、繊維材及び非繊維材の何れも適用可能であるが、被研磨層24Aを非繊維材で構成すれば、被研磨層24Aを研磨しても繊維のささくれが発生しないため、より好ましい。被研磨層24Aに適用可能な非繊維材としては、例えばDLCコーティング、アルミ膜、Cu膜、エラストマー又はカーボン等が挙げられる。また、傷が付き難いという観点から、被研磨層24Aは天板本体24Bよりも硬度が高い方が好ましい。更に、放射線透過性の低下を抑制するという観点から、被研磨層24Aは天板本体24Bよりも厚みが薄い方が好ましい。
【0038】
天板本体24Bは繊維材を含む材料で形成されている。例えば天板本体24Bを構成する繊維材として好適なCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化合成樹脂)で天板本体24Bを構成した場合、放射線Xの吸収を抑えつつ強度を確保することができる。また、保持部26及びバックパネル22は例えばABS樹脂等により形成されている。
【0039】
また、天板24の被照射面14と反対側の面には、筐体12内に収容された放射線検出器16が接着固定されている。なお、詳細は後述するが、放射線検出器16は光検出器42とシンチレータ34とが接着されて成り、より詳しくは、放射線検出器16のうちの光検出器42側が天板24に接着固定されている。なお、シンチレータ34は請求項11に記載の発光部の一例であり、光検出器42は請求項11に記載の第1光検出手段の一例である。
【0040】
天板24と放射線検出器16との接着には、例えば溶剤系接着剤及び水解体型接着剤が使用される。溶剤系接着剤としては、例えばクロロプレンゴム系接着剤や、スチレン・ブタジエン共重合体接着剤、ネオプレンゴム系接着剤、有機溶剤型酢酸ビニル樹脂系接着剤、有機溶剤型アクリル樹脂系接着剤などが挙げられる。
【0041】
水解体型接着剤は、水によって接着力が低下するか、又は接着力が失われる接着剤であり、具体的には例えば水性接着剤や水により崩壊する水崩壊型接着剤が挙げられる。水性接着剤としては、例えばポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、カゼイン、膠などの水溶性高分子を主材料とするものや、各種エマルション系接着剤などが適用可能である。また、水崩壊形接着剤としては、例えば各種接着剤に水で膨潤、崩壊するカプセルを配合したものが適用可能である。
【0042】
天板24と放射線検出器16との接着に水解体型接着剤を使用する場合は、後述するように剥離用流体として水が使用されるから、天板24と放射線検出器16との界面への剥離用流体の拡散が促進されるように、天板24の接着面と放射線検出器16の接着面との少なくとも一方、好ましくは両方が親水化処理されていることが好ましい。親水化は、親水化コーティング剤を塗布し、乾燥または硬化させて行うことができる。また、スパッタリング処理による親水化も可能である。
【0043】
図3に示すように、天板本体24Bのうち、画像検出範囲14Aの外側で、かつ画像検出範囲14Aの何れか1つの角部近傍の位置には、天板本体24Bを貫通し、放射線検出器16を天板本体24Bから剥離する際に剥離用流体を注入するための剥離用流体注入孔28が設けられている。また、画像検出範囲14Aを挟んで剥離用流体注入孔28が設けられた位置の対角に相当する位置には、内部を減圧して、放射線検出器16と天板24との界面への前記剥離用流体の拡散を促進するための減圧孔30が設けられている。剥離用流体注入孔28及び減圧孔30は、天板24の最外層に設けられた被研磨層24Aによって閉塞・隠蔽されている。
【0044】
例えば放射線検出器16の天板本体24Bへの接着に有機溶媒可溶型の接着剤を用いた場合、注入孔28に注入する剥離用流体としては、例えば有機溶媒が使用可能である。一方、放射線検出器16の天板本体24Bへの接着に水解体型接着剤を用いた場合、剥離用流体としては水が使用可能である。なお、放射線検出器16と天板本体24Bとの界面への拡散を促進するために、水に界面活性剤やアルコール等を配合したものを剥離用流体として用いてもよい。また、剥離用流体としては空気も使用可能である。更に、剥離用流体注入孔28に剥離用液体として有機溶媒や水等を注入した後、空気を注入して剥離用液体の浸透領域を空気圧で拡大するようにしてもよい。
【0045】
また、天板本体24Bのうち放射線検出器16によって放射線画像が撮影される画像検出範囲14Aの外側には、天板本体24Bの研磨禁止を警告する警告部材32が設けられている。本実施形態では、警告部材32として、表面に「研磨禁止」の文字が刻まれた部材を用いている。警告部材32も被研磨層24Aによって隠蔽されており、被研磨層24Aが研磨限界まで研磨されると天板24の表面に露出し、警告部材32の表面に刻まれた文字が視認可能な状態となる。なお、警告部材32は被研磨層24Aが研磨限界まで研磨されたことを警告するためのものであるので、警告部材32の表面に刻まれた文字は「研磨禁止」以外の文字でも所定の図形パターンでもよいし、警告部材32として、被研磨層24Aと異なる色に着色された部材を用いてもよい。なお、警告部材32は請求項8,9に記載の警告層の一例である。
【0046】
また、筐体12の被照射面14のうちの画像検出範囲14A外の位置には、複数個のLEDから成り、電子カセッテ10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量の状態等の動作状態を表示するための表示部33が設けられている(図1参照)。なお、表示部33はLED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部33は被照射面14以外の部位に設けてもよい。
【0047】
次に放射線検出器16について説明する。放射線検出器16のシンチレータ34は、被撮影者の体を透過した筐体12の被照射面14に照射され、筐体12の天板及び光検出器(TFT基板)42を透過して照射された放射線Xを吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができる。
【0048】
但し、本実施形態では、例として図5に示すように、シンチレータ34を、放射線入射/光射出側(光検出器42側)に柱状結晶34Aから成る柱状結晶領域が形成され、シンチレータ34の放射線入射側と反対側に非柱状結晶34Bから成る非柱状結晶領域が形成された構成としており、シンチレータ34としてCsIを含む材料を用い、当該材料を蒸着基板75に蒸着させることで、柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成されたシンチレータ34を得ている。なお、蒸着基板75としては耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ34は、柱状結晶34Aの平均径が柱状結晶34Aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。
【0049】
上記のように、シンチレータ34を柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成された構成にすると共に、高効率の発光が得られる柱状結晶34Aから成る柱状結晶領域を光検出器42側に配置することで、シンチレータ34で発生された光は柱状結晶34A内を進行して光検出器42へ射出され、光検出器42側へ射出される光の拡散が抑制されることで、電子カセッテ10によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ34の深部(非柱状結晶領域)に到達した光も、非柱状結晶34Bによって光検出器42側へ反射されることで、光検出器42に入射される光の光量(シンチレータ34で発光された光の検出効率)が向上する。
【0050】
なお、シンチレータ34の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ34の蒸着基板75側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式を満たすことが好ましい。
0.01≦(t2/t1)≦0.25
【0051】
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)と、のシンチレータ34の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となり、シンチレータ34の発光効率、シンチレータ34で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ10の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0052】
また、上記では柱状結晶領域と非柱状結晶領域が連続的に形成された構成のシンチレータ34を説明したが、例えば上記の非柱状結晶領域に代えてアルミニウム等から成る光反射層が設けられ、柱状結晶領域のみが形成された構成であってもよいし、他の構成であってもよい。
【0053】
また、放射線検出器16の光検出器42は、シンチレータ34の光射出側から射出された光を検出するものであり、図4に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等から成る光電変換部72、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)70及び蓄積容量68を備えた画素部74が、図6に示すように、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板64上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)で構成されている。
【0054】
なお、本実施形態では、シンチレータ34の放射線照射面側に光検出器(TFT基板)42が配置されているが、発光部(シンチレータ34)と光検出手段(光検出器42)とをこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する(請求項11記載の発明に相当する構成)。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出手段(光検出器42)を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出手段(光検出器42)を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出手段とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出手段(光検出器42)の受光量が増大することで、結果として放射線画像撮影装置(電子カセッテ)の感度が向上する。
【0055】
光電変換部72は、下部電極72Aと上部電極72Bとの間に、シンチレータ34から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜72Cが配置されて構成されている。なお、下部電極72Aは、シンチレータ34から放出された光を光電変換膜72Cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ34の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極72AとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極72Aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0056】
また、光電変換膜72Cはシンチレータ34から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜72Cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ34から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンから成る光電変換膜72Cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板64が合成樹脂製である場合、絶縁性基板64の耐熱性が不足する可能性がある。
【0057】
一方、光電変換膜72Cを有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜72Cによるシンチレータ34から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料から成る光電変換膜72Cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、本実施形態では、光電変換部72の光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成している。
【0058】
光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜72Cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように光検出器42が配置される表面読取方式(ISS)において、光検出器42を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜72Cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0059】
光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ34から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ34の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ34の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ34から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ34の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0060】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ34の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0061】
放射線画像撮影装置に適用可能な光電変換膜72Cについて具体的に説明する。放射線画像撮影装置における電磁波吸収/光電変換部位は、電極72A,72Bと、該電極72A,72Bに挟まれた光電変換膜72Cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0062】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0063】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜72Cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0064】
また、光電変換部72は、少なくとも電極対72A,72Bと光電変換膜72Cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0065】
電子ブロッキング膜は、上部電極72Bと光電変換膜72Cとの間に設けることができ、上部電極72Bと下部電極72Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極72Bから光電変換膜72Cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜72Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜72Cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0066】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部72の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0067】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜72Cと下部電極72Aとの間に設けることができ、上部電極72Bと下部電極72Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極72Aから光電変換膜72Cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜72Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜72Cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0068】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部72の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0069】
なお、光電変換膜72Cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極72Aに移動し、電子が上部電極72Bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0070】
TFT70は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0071】
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0072】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0073】
TFT70の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部104におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0074】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT70のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT70における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT70の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0075】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜72Cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT70と、を組み合わせた構成であれば、被撮影者の体の重みが荷重として加わる光検出器42の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0076】
また、絶縁性基板64は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT70の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部72の光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0077】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0078】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて絶縁性基板64を薄型化できる。
【0079】
絶縁性基板64としてガラス基板を用いた場合、光検出器(TFT基板)42全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、本実施形態では電子カセッテ10の薄型化を考慮し、絶縁性基板64として、光透過性を有する合成樹脂から成る薄型の基板を用いている。これにより、光検出器(TFT基板)42全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、光検出器(TFT基板)42に可撓性をもたせることができる。また、光検出器(TFT基板)42に可撓性をもたせることで、電子カセッテ10の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ10に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板64をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板64による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により光検出器42を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0080】
なお、電子カセッテ10の絶縁性基板64として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ10の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料から成る基板を絶縁性基板64として用いるようにしてもよい。
【0081】
また、図6に示すように、光検出器(TFT基板)42には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT70をオンオフさせるための複数本のゲート配線76と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量68(及び光電変換部72の上部電極72Aと下部電極72Bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT70を介して読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。また図4に示すように、光検出器(TFT基板)42のうち、放射線の到来方向と反対側の端部には、TFT基板上を平坦にするための平坦化層67が形成されている。
【0082】
図6に示すように、光検出器42の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ81に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部83に接続されている。被写体を透過した放射線(被写体の画像情報を担持した放射線)が電子カセッテ10に照射されると、シンチレータ34のうち被照射面14上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部74の光電変換部72では、シンチレータ34のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部74の蓄積容量68(及び光電変換部72の上部電極72Aと下部電極72Bの間)に蓄積される。
【0083】
上記のようにして個々の画素部74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素部74のTFT70は、ゲート線ドライバ81からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部83に入力される。従って、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0084】
信号処理部83は、個々のデータ配線78毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線78を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0085】
信号処理部83には画像メモリ90が接続されており、信号処理部83のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0086】
画像メモリ90は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU92A、ROM及びRAMを含むメモリ92B、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0087】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介してコンソール80と無線通信が可能とされており、コンソール80との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0088】
また、電子カセッテ10には電源部96が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ81や信号処理部83、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92等)は電源部96と各々接続され(図示省略)、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、図示しないバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。
【0089】
図7に示すように、コンソール80はコンピュータから成り、装置全体の動作を司るCPU104、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106、各種データを一時的に記憶するRAM108、及び、各種データを記憶するHDD110を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部116及び無線通信部118が接続され、ディスプレイ110がディスプレイドライバ112を介して接続され、更に、操作パネル102が操作入力検出部114を介して接続されている。
【0090】
通信I/F部116は接続端子80A、通信ケーブル82及び放射線発生装置84の接続端子84Aを介して放射線発生装置84と接続されている。コンソール80(のCPU104)は、放射線発生装置84との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部132経由で行う。無線通信部118は電子カセッテ10の無線通信部94と無線通信を行う機能を備えており、コンソール80(のCPU104)は電子カセッテ10との間の画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部118経由で行う。また、ディスプレイドライバ112はディスプレイ110への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール80(のCPU104)はディスプレイドライバ112を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ110に表示させる。また、操作パネル102は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部114は操作パネル102に対する操作を検出し、検出結果をCPU104へ通知する。
【0091】
また、放射線発生装置84は、放射線源130と、コンソール80との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部132と、コンソール80から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。また、放射線源130は互いに異なる撮影部位に対応する複数種の位置へ移動可能とされており、特定の位置への移動がコンソール80から指示されると、図示しない移動装置により、指示された特定の位置へ移動される。
【0092】
上述した電子カセッテ10、コンソール80及び放射線発生装置84は本実施形態に係る放射線画像撮影システムを構成している。なお、本実施形態に係る放射線画像撮影システムには電子カセッテ10が複数設けられている。
【0093】
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態に係る放射線画像撮影システムでは、放射線画像撮影システムに設けられた個々の電子カセッテ10が使用可能な状態か否かを確認するために、放射線技師等に指示に応じて、図8に示す電子カセッテ検査処理がコンソール80によって定期的に(例えば毎日)行われる。なお、この電子カセッテ検査処理は、始業時や終業時の時間帯に、個々の電子カセッテ10を単位として行われる。
【0094】
すなわち、電子カセッテ検査処理では、まずステップ380において、予め設定された電子カセッテ検査用の位置へ放射線源130を移動させる。次のステップ382では、所定のメッセージをディスプレイ110に表示させる等により、放射線技師等の検査指示者に対し、予め設定された電子カセッテ検査用のカセッテ位置に電子カセッテ10を配置するよう指示する。次のステップ384では、電子カセッテ検査用のカセッテ位置への電子カセッテ10の配置が完了したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ384を繰り返す。
【0095】
検査指示者は、ステップ384の指示に従い電子カセッテ検査用のカセッテ位置に電子カセッテ10を配置した後に、配置完了を意味する情報を操作パネル102を介して入力する操作を行う。これにより、ステップ384の判定が肯定されてステップ366へ移行し、無線通信部118を介して電子カセッテ10へ所定の信号を送信することで、電子カセッテ10に対して傷検出処理の実行を指示する。これにより、電子カセッテ10のカセッテ制御部92では傷検出処理(詳細は後述)が行われる。
【0096】
またステップ388では、放射線発生装置84に対し、予め設定された電子カセッテ検査用の曝射条件(管電圧や管電流の値)を送信した後に、曝射を指示する指示信号を送信する。これにより、放射線発生装置84は、コンソール80から事前に受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流で放射線源130から放射線を射出させる。なお、本実施形態における電子カセッテ10の検査は、放射線源130と電子カセッテ10の間に被写体(放射線を吸収する物体)が存在しない状態で行われるが、電子カセッテ検査用の曝射条件は、上記状態で放射線が照射された電子カセッテ10の光検出器42の個々の画素部74の中に、出力の飽和した画素部74や出力が過小となった画素部74が生じることのないように、管電圧や管電流の値が定められている。
【0097】
また、ステップ390では、電子カセッテ10で行われた傷検出処理の結果を電子カセッテ10から受信したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ392へ移行し、放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)が電子カセッテ10から要請されたか否か判定する。ステップ392の判定も否定された場合はステップ390に戻り、何れかの判定が肯定される迄、ステップ390,392を繰り返す。放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)が電子カセッテ10から要請された場合は、ステップ392の判定が肯定されてステップ388へ戻り、放射線源130から放射線を再射出させる。
【0098】
また、傷検出処理の結果を電子カセッテ10から受信すると、ステップ390の判定が肯定されてステップ394へ移行し、電子カセッテ10から受信した傷検出処理の結果(詳細は後述)をディスプレイ110に表示し、電子カセッテ検査処理を終了する。
【0099】
続いて、コンソール80からの指示によって電子カセッテ10のカセッテ制御部92で行われる傷検出処理について、図9を参照して説明する。ステップ300では、放射線発生装置84による曝射(放射線の照射)が終了したタイミングで、光検出器42の全画素部74に蓄積されている電荷をゲート線ドライバ81及び信号処理部83によって画像信号として読み出し、読み出した画像信号を、各画素毎の濃度(放射線の照射量)を表すデジタルの画像データ(第1の傷検出用放射線画像のデータ)へ変換して画像メモリ90に記憶させる。
【0100】
なお、放射線の照射が終了したタイミングは、例えば一定時間が経過したか否かに基づいて判断することができる。また、光検出器42のうち被照射面14の一端部側に位置している画素部74の列(同一のゲート配線76に接続された画素部74の列)を放射線検出に用い、この画素部74の列から放射線検出の結果を繰り返し読み出して放射線の照射終了を検知することも可能である。また、上記の画素部74の列に代えて、後述する光検出部200のセンサ部206を放射線検出に用いるようにしてもよい。
【0101】
次のステップ302では、ステップ300で画像メモリ90に記憶させた傷検出用放射線画像のデータに基づき、傷検出用放射線画像中に存在している線欠陥を検出する線欠陥検出処理を行う。
【0102】
この線欠陥検出処理について、図10を参照して説明すると、まずステップ350では、予め設定された白欠陥画素抽出用閾値を用いて傷検出用放射線画像を二値化する。これにより、傷検出用放射線画像の全画素は白欠陥画素とそれ以外の画素に弁別される。次のステップ352では、二値化した傷検出用放射線画像上で連続する白欠陥画素から成る全ての白色線欠陥を探索する。
【0103】
単一の白色欠陥の探索は、例えば、まず傷検出用放射線画像上に存在する単一の白欠陥画素を探索し、当該探索で抽出された白欠陥画素を基準画素に設定し、基準画素の周囲に存在する白欠陥画素を探索し、該当する白欠陥画素が抽出された場合は、抽出された白欠陥画素を基準画素と同一の白色欠陥に属する画素として記憶すると共に新たな基準画素に設定することを、基準画素の周囲に存在する白欠陥画素が抽出されなくなる迄繰り返すことで実現できる。また、上記処理によって単一の白色欠陥の抽出が完了する度に、未抽出の単一の白欠陥画素を探索することを、未抽出の白欠陥画素が抽出されなくなる迄繰り返すことで、二値化した傷検出用放射線画像上に存在する白色欠陥(複数の白欠陥画素から成る欠陥部)を全て抽出することができる。
【0104】
続いて、抽出した白色欠陥に外接する面積最小の矩形領域を求め、求めた矩形領域の縦横比(矩形領域の角を挟んで隣り合う二辺の長さの比率)を求め、求めた縦横比が予め設定した閾値以上の白色欠陥(外接する面積最小の矩形領域が細長い形状の白色欠陥)を白色線欠陥と判定する一方、縦横比が閾値未満の白色欠陥(外接する面積最小の矩形領域の二辺の長さの差が小さい形状の白色欠陥)を白色線欠陥から除外することを、抽出した個々の白色欠陥に対して各々行う。これにより、傷検出用放射線画像上に存在する全ての白色線欠陥が抽出される。
【0105】
ステップ354では、ステップ352の探索によって白色線欠陥が抽出(検出)されたか否か判定する。判定が否定された場合はステップ360へ移行するが、ステップ354の判定が肯定された場合はステップ356において、ステップ352の探索で抽出された個々の白色線欠陥に対し、個々の白色線欠陥を識別するための識別情報を付加するラベリングを行う。また、次のステップ358では、抽出された白色線欠陥を構成する白欠陥画素を個々の白色線欠陥毎に記憶し、ステップ360へ移行する。
【0106】
ステップ360以降では、ステップ350〜ステップ358と同様にして黒色線欠陥の検出を行う。すなわち、まずステップ360では、予め設定された黒欠陥画素抽出用閾値を用いて傷検出用放射線画像を二値化する。これにより、傷検出用放射線画像の全画素は黒欠陥画素とそれ以外の画素に弁別される。次のステップ362では、先のステップ352と同様にして、二値化した傷検出用放射線画像上で連続する黒欠陥画素から成る全ての黒色線欠陥を探索する。
【0107】
ステップ364では、ステップ362の探索によって黒色線欠陥が抽出(検出)されたか否か判定する。判定が否定された場合は線欠陥検出処理を終了するが、ステップ364の判定が肯定された場合はステップ366において、ステップ362の探索で抽出された個々の黒色線欠陥に対し、個々の黒色線欠陥を識別するための識別情報を付加するラベリングを行う。また、次のステップ368では、抽出された黒色線欠陥を構成する黒欠陥画素を個々の黒色線欠陥毎に記憶して線欠陥検出処理を終了し、傷検出処理(図9)のステップ304へ移行する。
【0108】
なお、上記の線欠陥検出処理では、電子カセッテ10の筐体12の被照射面14を形成する天板24に付いた傷を検出することを目的として、天板24に付く傷が線状であることに基づき、外接する面積最小の矩形領域の縦横比が閾値未満の欠陥部を検出対象から除外しているが、これに限られるものではなく、複数の白欠陥画素又は複数の黒欠陥画素から成る欠陥部を全て検出するようにしてもよい。
【0109】
傷検出処理(図9)のステップ304では、上述した線欠陥検出処理(図10)によって抽出(検出)された線欠陥(白色/黒色線欠陥)の中から判定対象の線欠陥を選択する。本実施形態では、傷検出処理(図9)を前回実行した際の検出結果を表す情報が記憶部92Cに記憶されており、次のステップ306では、判定対象の線欠陥の情報を上記の情報と照合することで、判定対象の線欠陥が、傷検出処理(図9)を前回実行した際に、電子カセッテ10の筐体12の天板24に付いた傷に由来する線欠陥として検出されていたか否か判定する。この判定が肯定された場合はステップ320へ移行し、コンソール80へ通知する線欠陥の情報として判定対象の線欠陥の情報をメモリ92Bに記憶し、ステップ322へ移行する。
【0110】
また、ステップ306の判定が否定された場合はステップ308へ移行し、判定対象の線欠陥が延びる方向を演算する。ステップ308の処理は、例えば判定対象の線欠陥に外接する面積最小の矩形領域を求め、求めた矩形領域の長辺の延びる方向を判定対象の線欠陥が延びる方向として求めるようにしてもよいし、判定対象の線欠陥を構成する欠陥画素のうち、判定対象の線欠陥に外接する面積最小の矩形領域の長辺の延びる方向に沿った両端部に存在している欠陥画素を結ぶ方向を、判定対象の線欠陥が延びる方向として求めるようにしてもよい。
【0111】
次のステップ310では、ステップ308で演算した線欠陥の方向が、X方向(光検出器42に設けられたゲート配線76の延びる方向)又はY方向(光検出器42に設けられたデータ配線78の延びる方向)に平行か否か判定する。ステップ310の判定が否定された場合はステップ316へ移行し、判定対象の線欠陥を再検出対象の線欠陥に設定してステップ322へ移行する。
【0112】
また、ステップ310の判定が肯定された場合はステップ312へ移行し、判定対象の線欠陥の幅(例えば判定対象の線欠陥の延びる方向に直交する方向に沿った判定対象の線欠陥のサイズ)が予め設定されたN画素以内か否か判定する。なお、ステップ312は、判定対象の線欠陥が、光検出器42のゲート配線76又はデータ配線78が断線した場合に出現する線欠陥に相当する幅の線欠陥(細い線欠陥)か否かを判定するものであり、上記のN画素としては、光検出器42のゲート配線76又はデータ配線78に断線が発生した場合に出現する線欠陥の最大幅に相当する値が設定されている。ステップ312の判定が否定された場合はステップ316へ移行し、判定対象の線欠陥を再検出対象の線欠陥に設定してステップ322へ移行する。
【0113】
また、ステップ312の判定が肯定された場合はステップ314へ移行し、判定対象の線欠陥がX方向に平行であればゲート線ドライバ81と反対側に、判定対象の線欠陥がY方向に平行であれば読出側(信号処理部83)と反対側に白色線欠陥が位置しているか否かを判定する。例として図11(A)に「×」で示す箇所でデータ配線78の断線が発生した場合、断線箇所を挟んで読出側(信号処理部83)と反対側に存在する各画素部74から信号処理部83への画像信号の出力が途絶えることから、例えば図11(A)に「白色線欠陥A」として示すように、断線箇所を挟んで読出側(信号処理部83)と反対側にY方向と平行な白色線欠陥が生ずる。また、図示は省略するが、ゲート配線76の断線が発生した場合にも、断線箇所を挟んでゲート線ドライバ81と反対側の各画素部74のTFT70がオンしなくなり、信号処理部83への画像信号の出力が途絶えることから、断線箇所を挟んでゲート線ドライバ81と反対側にX方向と平行な白欠陥が生ずる。このため、ステップ314の判定が肯定された場合はステップ318へ移行し、判定対象の線欠陥に対し、断線由来の線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ322へ移行する。
【0114】
一方、ステップ314の判定が否定された場合、判定対象の線欠陥はゲート配線76又はデータ配線78の断線に起因する線欠陥ではないと判定できるが、線欠陥の延びる方向がX方向又はY方向に平行でかつ幅も細いため、天板24に付いた傷に起因する線欠陥とも考え難い。このため本実施形態では、ステップ314の判定が否定された場合は何ら処理を行うことなくステップ322へ移行する。但し、ステップ314の判定が否定される線欠陥が生ずる原因としては、信号処理部83の一部回路の不調等も考えられるので、警報出力等の処理を行うようにしてもよい。
【0115】
ステップ322では、ステップ302の線欠陥検出処理で抽出(検出)された全ての線欠陥を判定対象として選択したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ304に戻り、ステップ322の判定が肯定される迄ステップ304〜ステップ322を繰り返す。線欠陥検出処理によって抽出(検出)された全ての線欠陥に対してステップ304〜ステップ322の処理を行うと、ステップ322の判定が肯定されてステップ324へ移行し、ステップ302の線欠陥検出処理で抽出(検出)された線欠陥の中に、先のステップ316で再検出対象に設定した線欠陥が存在しているか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ344へ移行する。
【0116】
一方、ステップ324の判定が肯定された場合はステップ326へ移行し、コンソール80に対して放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)を要請した後に、前述のステップ300と同様に、放射線発生装置84による再曝射(放射線の再照射)が終了したタイミングで、光検出器42の全画素部74に蓄積されている電荷をゲート線ドライバ81及び信号処理部83によって画像信号として読み出し、読み出した画像信号を、各画素毎の濃度(放射線の照射量)を表すデジタルの画像データ(第2の傷検出用放射線画像のデータ)へ変換して画像メモリ90に記憶させる。ステップ328では、ステップ326で得られた第2の傷検出用放射線画像に対して前述のステップ302と同様に線欠陥検出処理を行う。
【0117】
次のステップ330では、ステップ328の線欠陥検出処理によって抽出(検出)された線欠陥のうち、先に再検出対象に設定した線欠陥に対応すると推定される線欠陥(再検出対象に設定した線欠陥に対し、同一又は近傍の位置に存在しており、線欠陥を構成する欠陥画素の数も同一又は近似している線欠陥)を判定対象の線欠陥として選択する。ステップ332では、ステップ330で選択した判定対象の線欠陥の画像上の位置が、再検出対象に設定した元の線欠陥の画像上の位置から変化しているか否か判定する。
【0118】
例えば図11(A),(B)に示す「白色線欠陥B」や「黒色線欠陥A」のように、判定対象の線欠陥の画像上の位置が、第1の傷検出用放射線画像と第2の傷検出用放射線画像とで相違していた場合、判定対象の線欠陥は、電子カセッテ10の筐体12の被照射面14上に滞留している浮遊ゴミに起因する可能性が高いと判断できる。このため、ステップ332の判定が肯定された場合はステップ336へ移行し、判定対象の線欠陥に対して浮遊ゴミ由来の線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ342へ移行する。
【0119】
また、ステップ332の判定が否定された場合はステップ334へ移行し、判定対象の線欠陥が黒色線欠陥か否か判定する。電子カセッテ10の筐体12の被照射面14のうち傷が付いた部分では天板24の厚みが減少し、シンチレータ34に照射される放射線量が増加することで、被照射面14に付いた傷に対応する線欠陥は黒色となる。一方、電子カセッテ10の筐体12の被照射面14のうちゴミが付着した部分では、シンチレータ34に照射される放射線の一部がゴミによって遮蔽されることで、被照射面14に付着したゴミに対応する線欠陥は白色となる。
【0120】
このため、ステップ334の判定が否定された場合、判定対象の線欠陥は、例えば図11(A),(B)に示す「白色線欠陥C」のように、被照射面14に固着したゴミに起因する線欠陥と判断できるので、ステップ338へ移行し、判定対象の線欠陥に対して固着ゴミ由来の線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ342へ移行する。一方、ステップ334の判定が肯定された場合、判定対象の線欠陥は、例えば図11(A),(B)に示す「黒色線欠陥B」のように、被照射面14に付いた傷に起因する線欠陥と判断できるので、ステップ340へ移行し、判定対象の線欠陥に対して被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥であることを表す情報を設定・記憶してステップ342へ移行する。
【0121】
ステップ342では、再検出対象に設定した全ての線欠陥を判定対象として選択したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ330に戻り、ステップ342の判定が肯定される迄ステップ330〜ステップ342を繰り返す。これにより、再検出対象に設定した全ての線欠陥に対してステップ330〜ステップ342が各々行われ、再検出対象に設定した個々の線欠陥が浮遊ゴミ、固着ゴミ、被照射面14に付いた傷の何れに由来する線欠陥かが各々判定される。
【0122】
そして、ステップ342の判定が肯定されるとステップ344へ移行し、傷検出処理による検出結果をコンソール80へ送信すると共に、傷検出処理による検出結果に応じて表示部33の表示を切り替える表示制御を行い、傷検出処理を終了する。なお、被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合は電子カセッテ10のメインテナンスが必要であるので、表示部33の表示は、少なくとも被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合に、表示部33のランプを点灯又は点滅させることによって成されるが、ゲート配線76又はデータ配線78の断線もメインテナンスが必要であるので、ゲート配線76又はデータ配線78の断線に由来する線欠陥が検出された場合にも、表示部33のランプを点灯又は点滅させることが好ましい。また、傷由来の線欠陥と断線由来の線欠陥を表示部33の異なるランプに対応させ、各線欠陥の検出の有無に応じて対応するランプの点灯又は点滅を独立して切り替えることがより望ましい。
【0123】
また、被照射面14に付いた傷に塵埃等が入り込んでしまった場合、対応する線欠陥は黒色から白色へ変化するため、固着ゴミ由来の線欠陥と誤検出される可能性がある。固着ゴミ由来の線欠陥が検出された場合にも、被照射面14から固着ゴミを除去するメンテナンスを行うために表示部33の表示を切り替えて報知することが望ましいが、上記の誤検出も考慮し、表示部33の表示を警報のレベルがより高い表示に切り替え、検出された線欠陥が固着ゴミ由来か、被照射面14に付いた傷に塵埃等が入り込んでしまったことに起因するのかを検査指示者に確認させるようにすることがより望ましい。
【0124】
上記処理により、コンソール80のディスプレイ110には、図11(A),(B)に示すような線欠陥の検出結果が表示され、例えば被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合に、電子カセッテ10のメインテナンスが必要であることを放射線技師等の検査指示者が認識することができる。また、被照射面14に付いた傷に由来する線欠陥が検出された場合に表示部33の表示が切り替わることで、電子カセッテ10が複数設けられている場合にも、放射線技師等の検査指示者がメインテナンス対象の電子カセッテ10を誤り無く認識することができる。
【0125】
被照射面14に傷が付いた場合、当初は、傷150が付いた天板24の外側表面の研磨が行われる。研磨の方法は特に限定されないが、例えば図12(A)に示すように、天板24の外側表面に研磨剤を含有するスラリー液152を吹き付けながら、回転させたブラシロール154を天板24の外側表面に押圧し、天板24(被研磨層24A)の外側表面をブラシ研磨する方法が好適である。この研磨は、天板24の外側表面のうち傷150が付いている箇所だけ研磨してもよいが、天板24をできるだけ平坦にするために、天板24の外側表面全体を研磨することが好ましい。また上記の研磨は、図12(B)に示すように、傷150が少なくとも視覚的に確認できなくなった時点で終了される。これにより、天板24を交換することなく天板24に付いた傷150を修復することができ、天板24の交換頻度を低減することができる。
【0126】
また、天板24の被研磨層24Aの研磨を繰り返すと、被研磨層24Aが研磨限界に達して天板本体24Bの表面が外部に露出するが、これに伴い、図3に示すように警告部材32が露出して視認可能となることで、被研磨層24Aが研磨限界に達したことが研磨作業者へ警告される。これにより、被研磨層24Aが研磨限界に達したことを認識した研磨作業者によって研磨作業が中止されることで、天板本体24Bまで研磨されることが防止される。そして、この場合は天板24の交換作業が行われる。
【0127】
天板24の交換作業は、まず図13(A)及び(B)に示すように、筐体12から保持部26及びバックパネル22が取り外される。これにより、放射線検出器16が接着された状態の天板24が保持部26と分離され、天板24の端部が露出する。次に、図13(B)の矢印Aに示すように、天板24の剥離用流体注入孔28に剥離用流体が注入されると共に、同図の矢印Bに示すように、減圧孔30の内部が減圧される。これにより、剥離用流体注入孔28に注入された剥離用流体は、天板24と放射線検出器16との界面を、対角に位置する減圧孔30に向かって拡散する。剥離用流体が減圧孔30まで拡散することで、図13(C)に示すように、天板24が放射線検出器16から剥離される。
【0128】
この後、天板24が剥離した放射線検出器16に新しい天板24に接着固定し、保持部26及びバックパネル22を取り付けることで再度電子カセッテ10を組み立てる作業が行われる。これにより、天板24の交換作業が完了する。
【0129】
なお、上記ではシンチレータ34から射出された光を単一の光検出器42(請求項11に記載の第1光検出手段)で検出する態様を説明したが、これに限られるものではない。例として図14には、光検出器42に加えて、シンチレータ34から射出された光を検出する光検出部200が、光検出器42を挟んでシンチレータ34の反対側に設けられた構成を示している。光検出部200は請求項11に記載の第2光検出手段の一例であり、配線がパターニングされた配線層202、絶縁層204が順に形成され、その上層に、シンチレータ34から射出され光検出器42を透過した光を検出するセンサ部206が複数形成され、更に当該センサ部206の上層に保護層が形成されて構成されている。なお、光検出部200の厚みは例えば0.05mm程度である。
【0130】
センサ部206は、上部電極210A及び下部電極210Bを備え、上部電極210Aと下部電極210Bとの間に、シンチレータ34からの光を吸収して電荷を発生する光電変換膜210Cが配置されて構成されている。センサ部206(光電変換膜210C)としては、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードを適用することも可能であるが、本実施形態では、光電変換部72の光電変換膜72Cと同様に、光電変換膜210Cを有機光電変換材料で構成している。これにより、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで光電変換膜210Cを形成させることが可能となり、絶縁性基板64として、光透過性を有する合成樹脂製で薄型の基板を用いることが可能となる。
【0131】
センサ部206による放射線量の検出結果は、電極210A,210Bと接続された図示しない信号処理部を介して読み出され、例えば電子カセッテ10への放射線の照射開始/終了タイミングの検知や、電子カセッテ10への放射線照射量の積算値の検知等に用いられる。なお、放射線画像の検出(撮影)は光検出器42によって行われるので、光検出部200のセンサ部206は、光検出器42の画素部74よりも配置ピッチが大きく(配置密度が低く)されており、単一のセンサ部206の受光領域は、光検出器42の画素部74の数個〜数百個分のサイズでよい。
【0132】
また、上記ではコンソール80で実行される電子カセッテ検査処理において、電子カセッテ10から放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)が要請された場合に、単に放射線源130から放射線を再射出させる処理を行う態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、放射線画像の再撮影(放射線の再曝射)にあたり、電子カセッテ10の被照射面14の清掃を検査指示者へ要請するメッセージをディスプレイ110に表示させる等により、電子カセッテ10の被照射面14を検査指示者によって清掃させ、被照射面14の清掃が完了した後に、放射線源130から放射線を再射出させる処理を行うようにしてもよい。上記の清掃に伴い、被照射面14上に滞留している浮遊ゴミが移動或いは除去されることで、浮遊ゴミに由来する線欠陥をより確実に検出することができる。
【0133】
また、上記では放射線源130と電子カセッテ10の間に被写体が存在しない状態で撮影された放射線画像(傷検出用放射線画像)を用いて傷検出処理を行う態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被写体を撮影した診断用の放射線画像を用いて傷検出処理を行うようにしてもよい。具体的には、例えば十枚〜数十枚程度の診断用の放射線画像から濃度を画素毎に平均化した平均化画像を用いて傷検出を行うようにすれば、個々の放射線画像における被写体(例えば撮影部位等)の相違が均されるので、被照射面14に傷が付いてから実際に傷が検出される迄の期間が多少長くなる可能性はあるものの、被照射面14に付いた傷を検出することは可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 電子カセッテ
12 筐体
14 被照射面
16 放射線検出器
24 天板
24A 被研磨層
32 警告部材
33 表示部
34 シンチレータ
42 光検出器
80 コンソール
92 カセッテ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段と、
前記画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて前記筐体の前記被照射面に付いた傷を検出する検出手段と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定する請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の延びる方向が、前記被照射面に沿う第1方向と非平行で、前記被照射面に沿いかつ前記第1方向と直交する第2方向とも非平行か否かを判定し、前記複数の画像中に各々存在しており、前記第1方向及び前記第2方向と各々非平行な線状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定する請求項1又は請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中の同一位置に、線状でかつ同一形状の画像部が各々存在しているか否かを判定し、前記複数の画像中の同一位置に各々存在している線状でかつ同一形状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の濃度が、同一の画像上の周囲に存在する画像部の濃度に対し、放射線量が増加する方向へ偏倚しているか否かを判定し、前記複数の画像中に各々存在しており、濃度が同一の画像中の周囲の画像部に対して放射線量が増加する方向へ偏倚している線状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記検出手段によって前記被照射面の傷付きが検出された場合に通知する通知手段を更に備えた請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記筐体の前記被照射面には、その最上層に、前記検出手段によって前記被照射面の傷付きが検出された場合に、研磨することで検出された傷を減少させることが可能な被研磨層が設けられている請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記筐体の前記被照射面には、前記被研磨層の下層に、前記被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、特定のパターンが刻まれた警告層が設けられている請求項7記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記警告層は、前記被照射面のうち前記画像検出手段による画像検出領域外に対応する範囲が、前記被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、前記特定のパターンが刻まれている請求項8記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記検出手段及び前記通知手段は前記筐体に設けられている請求項6記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記画像検出手段は、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する第1光検出手段と、を備え、前記発光部が前記第1光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されている請求項1〜請求項10の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記画像検出手段は、前記発光部よりも放射線到来方向上流側に配置され、有機光電変換材料から成り前記発光部から放出された光を検出する第2光検出手段を更に備えている請求項11記載の放射線画像撮影装置。
【請求項1】
筐体の被照射面に照射された放射線を画像として検出する画像検出手段と、
前記画像検出手段によって検出された複数の画像を比較し、比較結果に基づいて前記筐体の前記被照射面に付いた傷を検出する検出手段と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部の候補と判定する請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の延びる方向が、前記被照射面に沿う第1方向と非平行で、前記被照射面に沿いかつ前記第1方向と直交する第2方向とも非平行か否かを判定し、前記複数の画像中に各々存在しており、前記第1方向及び前記第2方向と各々非平行な線状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定する請求項1又は請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中の同一位置に、線状でかつ同一形状の画像部が各々存在しているか否かを判定し、前記複数の画像中の同一位置に各々存在している線状でかつ同一形状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記画像検出手段によって検出された複数の画像中に各々存在している線状の画像部の濃度が、同一の画像上の周囲に存在する画像部の濃度に対し、放射線量が増加する方向へ偏倚しているか否かを判定し、前記複数の画像中に各々存在しており、濃度が同一の画像中の周囲の画像部に対して放射線量が増加する方向へ偏倚している線状の画像部を、前記筐体の前記被照射面に付いた傷に対応する画像部と判定する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記検出手段によって前記被照射面の傷付きが検出された場合に通知する通知手段を更に備えた請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記筐体の前記被照射面には、その最上層に、前記検出手段によって前記被照射面の傷付きが検出された場合に、研磨することで検出された傷を減少させることが可能な被研磨層が設けられている請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記筐体の前記被照射面には、前記被研磨層の下層に、前記被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、特定のパターンが刻まれた警告層が設けられている請求項7記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記警告層は、前記被照射面のうち前記画像検出手段による画像検出領域外に対応する範囲が、前記被研磨層と異なる色に着色されているか、又は、前記特定のパターンが刻まれている請求項8記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記検出手段及び前記通知手段は前記筐体に設けられている請求項6記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記画像検出手段は、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する第1光検出手段と、を備え、前記発光部が前記第1光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されている請求項1〜請求項10の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記画像検出手段は、前記発光部よりも放射線到来方向上流側に配置され、有機光電変換材料から成り前記発光部から放出された光を検出する第2光検出手段を更に備えている請求項11記載の放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−108078(P2012−108078A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258973(P2010−258973)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]