説明

放射線画像検出装置

【課題】FPD全体に同時に発生するシステムノイズがある場合でも、照射の開始を正確に検出する。
【解決手段】
検出用素子部41は、第1検出用素子44と第2検出用素子46からなり、撮像領域に設けられている。第1検出用素子44は、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積し、第2検出用素子46は、可視光を遮蔽する遮蔽部材を有しており、フォトダイオード48に対して、シンチレータによってX線から変換された可視光が入射しないようになっており、暗電荷のみを蓄積する。第1及び第2の各検出素子44、46の電圧Vx、Vrはオペアンプ43に入力される。オペアンプ43は、電圧Vx、Vrの差分を増幅して出力する。制御部は、オペアンプ43からの出力電圧Voutに基づいて照射が開始されたことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を透過した放射線の照射を受けて放射線画像を検出する放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、画像診断を行うために、放射線、例えば、X線を利用したX線撮影システムが知られている。X線撮影システムは、X線を発生するX線源と、X線源が発生し被写体を透過したX線の照射を受けて、X線画像を検出するX線画像検出装置とからなる。X線画像検出装置としては、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素が配列されたTFT(Thin film transistor)アクティブマトリクス基板を用いて、信号電荷を画素毎に蓄積することで、被写体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力するFPD(flat panel detector)を利用したものが実用化されている。
【0003】
X線画像検出装置には、立位姿勢の被検者(被写体)を撮影するための立位撮影台や臥位姿勢の被検者(被写体)を撮影するための臥位撮影台にFPDが内蔵された据え置き型のものの他、持ち運びが可能なカセッテタイプの筐体にFPDが内蔵された可搬型のX線画像検出装置(以下「電子カセッテ」ともいう)も開発されている。電子カセッテは、据え置き型では撮影しにくい部位の撮影に用いられる他、移動式のX線源と一緒に出先まで運び、撮影室までの移動が困難な被検者を、病室の寝台に寝かせた状態で撮影するために用いられる。また、電子カセッテの中には、フイルムカセッテやIP(イメージングプレート)カセッテに用いられる撮影台に取り付けて使用可能なものも知られている。
【0004】
こうしたX線画像検出装置は、X線源に接続された照射スイッチの押下によってX線源の照射が開始されるタイミングと同期して、信号電荷の蓄積動作を開始する同期制御が行われる。X線画像検出装置を制御するコンソールなどの制御装置は、X線源が照射を開始するタイミングとX線画像検出装置が信号電荷の蓄積動作を開始するタイミングとを同期させるために、X線源の照射が開始されたときに、照射スイッチが発生する照射開始信号を受信し、これを同期信号としてX線画像検出装置に対して出力する。X線画像検出装置は、電荷の蓄積動作を開始する前に、照射の有無に関わらず画素に蓄積される暗電荷をリセットするリセット動作を周期的に行っており、同期信号を受信すると、リセット動作から信号電荷の蓄積動作へ移行して撮影を開始する。
【0005】
しかし、メーカが異なるX線画像検出装置とX線源で撮影システムを構成する場合には、X線画像検出装置やその制御装置に標準で装備されている同期制御用のインタフェース(ケーブルやコネクタの規格、同期信号の形式など)が、X線源のインタフェースと適合しない場合もある。このため、同期信号を用いずにX線画像検出装置で照射の開始を検出してX線源との同期を取る技術が提案されている(特許文献1〜特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1に記載のX線画像検出装置では、照射の開始を検出する前から、所定のフレームレートで画像の読み出し動作を周期的に行い、連続する2フレームの画像の画素値の差分を調べて、差分が閾値以上であるか否かを判定して、照射の開始を検出している。照射が開始されるとX線の入射により画素値が上昇するので、2フレーム間の画素値の差分に基づいて照射の開始を検出することができる。
【0007】
特許文献2に記載のX線画像検出装置は、FPD内において、X線源から照射されたX線が被写体を透過することなく入射する領域(いわゆる素抜け領域)に照射の開始を検出するための照射検出用素子を配置し、照射検出用素子の出力の立ち上がりを判定して、照射の開始を検出している。
【0008】
特許文献3に記載のX線画像検出装置は、X線の照射が無い場合でもFPDの画素から出力される暗電流を想定した閾値を予め設定し、画素から出力される信号電荷と閾値とを比較して、信号電荷が閾値を超えたか否かを判定することにより、照射の開始を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−126072号公報
【特許文献2】特表2002−543684号公報
【特許文献3】特開2008−507796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜3の検出方法では、FPD内の画素や信号線などFPD全体に同時に発生するシステムノイズがある場合には、誤検出のおそれがあり、照射の開始を正確に検出できないという問題があった。
【0011】
特許文献1の照射検出方法は、取得タイミングに時間差がある2フレーム間の画素値の差分によって照射の開始を検出する方法であるため、例えば、1フレーム目にはシステムノイズが無く、2フレーム目にのみにシステムノイズが発生するという場合が起こり得る。このような場合には、システムノイズに起因して画素値が増加したときに、照射開始と検出してしまうおそれがある。
【0012】
特許文献2の照射検出方法は、素抜け領域に配置された照射検出用素子の出力の立ち上がりを判定する方法であるため、システムノイズが生じると、その立ち上がりを照射開始と検出してしまうおそれがある。
【0013】
特許文献3の照射検出方法は、暗電流を想定した閾値と画素が出力する信号電荷とを比較して照射の開始を検出するため、想定した閾値を超えるシステムノイズが生じたときに、照射開始と検出してしまうおそれがある。
【0014】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、目的は、放射線源との同期信号によらずに照射の開始を検出する機能を備えた放射線画像検出装置において、FPD全体に同時に発生するシステムノイズがある場合でも、照射の開始を正確に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の放射線画像検出装置は、放射線源から照射され被写体を透過した放射線を撮像して、被写体の放射線画像を検出するための撮像手段であり、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素が二次元に配列された前記放射線の撮像領域を有する撮像手段と、前記画素を駆動する第1駆動手段であり、前記画素において前記放射線源の照射の有無に関わらず発生する暗電荷を、リセットするリセット動作と、前記画素に前記信号電荷を蓄積させる蓄積動作と、前記画素から前記信号電荷を読み出す読み出し動作の3つの動作を行わせるための第1駆動手段と、前記放射線源による照射の開始を検出する照射検出手段であり、前記画素と同様に前記信号電荷を蓄積する第1検出用素子と、前記第1検出用素子の近傍に配置され、前記暗電荷のみを蓄積する第2検出用素子とからなる少なくとも1組の検出用素子を有する検出用素子部と、前記第1検出用素子と第2検出用素子を駆動して、それぞれの蓄積電荷を同時に読み出すための第2駆動手段とを有し、前記第1検出用素子と第2検出用素子から同時に読み出される蓄積電荷量の差に基づいて、前記照射の開始を検出する照射検出手段と、前記照射検出手段によって前記照射の開始が検出されたときに、前記画素が前記リセット動作から前記蓄積動作へ移行するように前記第1駆動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0016】
前記照射検出手段は、前記第1検出用素子と第2検出用素子のそれぞれが出力するアナログ信号の差を出力する差動増幅器を有し、差動増幅器が出力する前記アナログ信号の差に基づいて照射の開始を検出することが好ましい。
【0017】
前記第1検出用素子及び第2検出用素子は、前記撮像領域内に配置されていることが好ましい。
【0018】
前記第1検出用素子と前記画素は、構造が同一であり、前記第2検出用素子は、放射線又は可視光を遮蔽する遮蔽部材を有しており、前記遮蔽部材を有する点を除いて前記第1検出用素子及び前記画素と構造が同一であることが好ましい。
【0019】
前記撮像手段は、前記放射線を可視光に変換するシンチレータを有する間接変換型でもよい。この場合には、前記画素、前記第1及び第2の各検出用素子は、基板上に形成され可視光を電気信号に変換する光電変換素子で構成され、前記シンチレータは、前記光電変換素子の配列面の全面と対向するように配置される。
【0020】
撮像手段が間接変換型の場合には、前記光電変換素子は、例えば、光電変換層である半導体層が、前記基板側に配置される下部電極と、前記シンチレータ側に配置される上部電極とによって挟まれる層構造で構成される。この場合、例えば、前記第1検出用素子と前記画素は、前記上部電極が透明な前記光電変換素子で構成され、前記第2検出用素子は、前記上部電極が不透明な前記光電変換素子で構成され、不透明な前記上部電極が、前記シンチレータから前記半導体層へ向かう可視光を遮蔽するための前記遮蔽部材として機能する。
【0021】
前記検出用素子部は、前記撮像領域内に複数個配置されていてもよい。その場合、各検出用素子部は、前記撮像領域内の異なる位置に分散して配置されていることが好ましい。前記検出用素子部は、前記第1検出用素子と第2検出用素子を複数組有していてもよい。1つの前記検出用素子部の大きさは、1つの前記画素の大きさとほぼ同じにしてもよい。前記検出用素子部は、前記放射線源から被写体に照射される照射量の測定に用いてもよい。
【0022】
前記照射検出手段は、前記蓄積電荷量の差に基づいて、前記照射の停止を検出してもよい。この場合、前記制御手段は、停止が検出された場合には、蓄積動作から読み出し動作へ移行させる。また、放射線画像検出装置は可搬型の電子カセッテでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画素と同様にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する第1検出用素子と、第1検出用素子の近傍に配置され、暗電荷のみを蓄積する第2検出用素子とからなる少なくとも1組の検出用素子を有する検出用素子部を用い、第1検出用素子と第2検出用素子から同時に読み出される蓄積電荷量の差に基づいて、照射の開始を検出するから、FPD全体に同時に発生するシステムノイズがある場合でも、照射の開始を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】FPDの説明図である。
【図3】照射検出部の回路図である。
【図4】撮影時のFPDの動作を示すタイミングチャートである。
【図5】撮像パネルの画素部分の構成を示す断面図である。
【図6】撮像パネルの画素部分の構成を示す平面図である。
【図7】撮像パネルの第1素子部分の構成を示す断面図である。
【図8】撮像パネルの第2素子部分の構成を示す断面図である。
【図9】撮像パネルの第1素子部分の構成を示す平面図である。
【図10】撮像パネルの第2素子部分の構成を示す平面図である。
【図11】撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図12】比較例の照射検出部の回路図である。
【図13】検出動作の詳細を示すタイミングチャートである。
【図14】図13とは異なるケースのタイミングチャートである。
【図15】図14とは異なるケースのタイミングチャートである。
【図16】検出用素子部が複数個あるFPDの説明図である。
【図17】検出用素子部が複数個ある場合の動作を示すタイミングチャートである。
【図18】図17とは別の例のタイミングチャートである。
【図19】複数組の第1素子及び第2素子からなる検出用素子部の説明図である。
【図20】1つの検出用素子部の大きさが1つの画素と同じFPDの説明図である。
【図21】照射量測定を行う場合の構成を示すブロック図である。
【図22】線量管理を行う場合の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1において、X線撮影システム10は、被写体Hを載置する天板11を有する撮影台と、被写体Hに向けてX線焦点12aからX線を照射するX線源12と、被写体Hを透過したX線の照射を受けて、被写体HのX線画像を検出する電子カセッテ13(放射線画像検出装置)とを備える。X線源12は、X線を発生するX線管とX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)とからなる。
【0026】
また、X線撮影システム10は、高電圧発生部14、X線源制御部15、コンソール16、モニタ17を備えている。X線源制御部15には、コンソール16や図示しない操作パネルなどから、管電圧、管電流、照射時間といった撮影条件が入力される。X線源制御部15は、入力された撮影条件を高電圧発生部14に送る。また、X線源制御部15には、照射開始信号を入力する照射スイッチ18が接続されており、X線源制御部15は、照射スイッチ18から入力された照射開始信号を、高電圧発生部14を通じてX線管12に与える。
【0027】
高電圧発生部14は、X線源制御部15から入力された撮影条件に応じた管電圧や管電流を発生し、発生した管電圧や管電流をX線源12に与える。X線源12は、照射開始信号を受けると、与えられた管電圧や管電流に応じたX線の照射を開始し、照射時間が経過した時点で照射を停止する。
【0028】
コンソール16は、電子カセッテ13を制御する制御装置である。コンソール16に対しては、照射スイッチ18からの照射開始信号は入力されない。コンソール16は、通信部19を介して電子カセッテ13に対して制御信号を送信し、電子カセッテ13が検出したX線画像のデータを受信する。モニタ17は、コンソール16が受信したX線画像を表示する他、コンソール16を操作するための操作画面の表示を行う。
【0029】
電子カセッテ13は、偏平な略直方体形状の筐体内に、X線画像を検出するFPD21と、FPD21が出力するX線画像のデータを一時的に記憶するメモリ22と、コンソール16との間でメモリ22内のデータや制御信号の通信を行う通信部23とが内蔵されている。通信部23は、例えば、電波や赤外線などの光によって無線通信を行う無線通信部であり、電子カセッテ13は、FPD21などの各部に給電を行うバッテリ(図示せず)を内蔵したワイヤレスタイプである。もちろん、通信部23は、ケーブルを通じて通信を行う有線通信部であってもよいし、バッテリの代わりに商用電源から電源ケーブルを通じて給電を受けるものでもよい。
【0030】
図2において、FPD21は、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素24が配列された撮像領域26が撮像パネル(撮像手段)61(図5参照)と、画素24を駆動して信号電荷の読み出しを制御する第1ゲートドライバ27と、画素24から読み出された信号電荷をデジタルデータに変換して出力する信号処理回路28と、FPD21の各部を制御する制御部29を備えている。複数の画素24は、画素ピッチpで二次元にn行(x方向)×m列(y方向)のマトリクスに配列されている。1つの画素24の大きさは、例えば、約150μmである。
【0031】
FPD21は、X線を可視光に変換するシンチレータ84(図5参照)を有し、シンチレータ84によって変換された可視光を画素24で光電変換する間接変換型である。シンチレータ84は、画素24が配列された配列面の全面と対向するように撮像領域26の上方に配置されている。
【0032】
画素24は、可視光の入射によって電荷を発生する光電変換素子であるフォトダイオード31と、フォトダイオード31が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)と、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)32とを備える。TFT32は、ゲート電極63(図5参照)が走査線33に接続され、ソース電極66(図5参照)が信号線34に接続され、ドレイン電極69(図5参照)がフォトダイオード31に接続される。走査線33と信号線34は格子状に配線されており、走査線33は、撮像領域26内の画素24の行数分(n行分)、信号線34は画素24の列数分(m列分)それぞれ配線されている。走査線33は第1ゲートドライバ27に接続され、信号線34は信号処理回路28に接続される。
【0033】
第1ゲートドライバ27は、X線の入射の有無に関わらず画素24に発生する暗電荷を、リセットするリセット動作と、X線の入射量に応じた信号電荷を画素24に蓄積する蓄積動作と、画素24から信号電荷を読み出す読み出し動作の3つの動作を行わせる駆動手段である。
【0034】
第1ゲートドライバ27がTFT32をオフ状態にしている間、FPD21は、画素24に信号電荷を蓄積する蓄積動作を行う。読み出し動作では、第1ゲートドライバ27が、TFT32を駆動する駆動用パルスであるゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、走査線33を1行ずつ順に活性化し、1本の走査線33に接続されたTFT32を1行分ずつオン状態とする。画素24のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT32がオン状態になると信号線34に読み出されて、信号処理回路28に入力される。
【0035】
信号処理回路28は、積分アンプ36、マルチプレクサ(MUX)37、及びA/D変換器38を備える。積分アンプ36は、各信号線34に対して個別に接続される。積分アンプ36は、オペアンプとオペアンプの入出力端子間に接続されたキャパシタとからなり、信号線34はオペアンプの一方の入力端子に接続される。もう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。積分アンプ36は、信号線34から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Dmに変換して出力する。すべての積分アンプ36の出力端子には、共通にMUX37が接続される。MUX37の出力側には、A/D変換器38が接続される。
【0036】
MUX37は、パラレルに接続される複数の積分アンプ36から順に1つの積分アンプ36を選択し、選択した積分アンプ36から出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器38に入力する。A/D変換器38は、入力された電圧信号D1〜Dmをデジタルデータに変換して、メモリ22に出力する。こうして被写体HのX線画像を表す画像データが検出される。
【0037】
また、積分アンプ36には、積分した電荷をリセットするリセットスイッチ36aが設けられている。リセットスイッチ36aは、制御部29から出力されるリセットパルス(リセット信号)RST1によってオンする。画素24に発生する暗電荷のリセット動作は、リセットスイッチ36aにより次のように行われる。第1ゲートドライバ27は、走査線33に対してゲートパルスG1〜Gnを順に発生して画素24のTFT32を1行ずつオン状態にする。TFT32がオン状態になっている間、画素24に蓄積された暗電荷が信号線34を通じて積分アンプ36に流れる。制御部29は、各ゲートパルスG1〜Gnと同期して、リセットパルスRST1を出力し、積分アンプ36とフォトダイオード31をリセットする。こうしたリセット動作がX線の照射が開始されるまでの間、周期的に繰り返される。
【0038】
また、FPD21には、X線源12の照射状態、具体的には、X線源12によるX線の照射が開始されたこと(照射開始)及び照射が停止されたこと(照射停止)を検出する照射検出部(照射検出手段)が設けられている。照射検出部は、撮像領域26内に設けられた検出用素子部41と、検出用素子部41を駆動する第2ゲートドライバ42と、検出用素子部41からの信号が入力されるオペアンプ43と、オペアンプ43からの出力信号に基づいて、X線の照射開始及び照射停止を判定する制御部29とからなる。
【0039】
検出用素子部41は、第1検出用素子(以下、第1素子と呼ぶ)44と第2検出用素子(以下、第2素子と呼ぶ)46の1組の検出用素子からなる。第1素子44は、画素24と同様にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する素子であり、第2素子46は、X線の入射の有無に関わらず発生する暗電荷のみを蓄積する素子である。第1素子44と第2素子46は、隣接して配置されている。第1素子44と第2素子46のサイズ(撮像領域26内において占有する面積)と配列ピッチpは、画素24と同じであり、第1素子44と第2素子46は、撮像領域26内において、画素24の一部を置換した形態で配置されている。
【0040】
検出用素子部41は、画素24として機能しないので、メモリ22に出力されるX線画像データにおいて、検出用素子部41の位置に対応するデータは欠落する。データの欠落部分は、隣接画素の画素値に基づいて補間されるが、データの欠落部分は目立たない位置にあることが好ましい。検出用素子部41は、被写体Hに向けて照射されたX線が入射する領域内にあればよいので、撮像領域26の中心領域を避けて外周付近に配置される。
【0041】
図3に示すように、第1素子44と第2素子46は、画素24と同様に、それぞれフォトダイオード47、48と、キャパシタ50と、TFT49とから構成されている。フォトダイオード48は、シンチレータ84が発生する可視光を遮蔽する遮蔽膜を有しており、第2素子46は、遮蔽膜によって入射する可視光を遮蔽することによって暗電荷のみを蓄積する。
【0042】
第2ゲートドライバ42は、走査線54によって、第1素子44及び第2素子46のそれぞれのTFT49のゲート電極63(図7、8参照)に接続されている。第2ゲートドライバ42は、走査線54を通じて第1素子44及び第2素子46に対して駆動用のゲートパルスXGを与えて、第1素子44及び第2素子46のTFT49を同時にオン状態にする。
【0043】
第1素子44及び第2素子46の各TFT49のドレイン電極69(図7、8参照)は、それぞれフォトダイオード47、48に接続されており、ソース電極66(図7、8参照)は、それぞれ出力線51、52に接続されている。
【0044】
第1素子44と第2素子46のキャパシタ50には、フォトダイオード47、48が発生する電荷Cx、Crが蓄積される。TFT49がオン状態にされると、出力線51、52を通じて、第1素子44及び第2素子46の蓄積電荷Cx、Crに対応する電圧Vx、Vrがオペアンプ43の2つの入力端子に出力される。電圧Vxは、第1素子44の蓄積電荷Cxに応じて発生する電圧信号であり、X線の入射量に応じた電圧値を示す。電圧Vrは、第2素子46の蓄積電荷Crに応じて発生する電圧信号であり、第2素子46が蓄積する暗電荷に応じた電圧値を示す。暗電荷は、第1素子44においても発生するので、電圧Vxにも、暗電荷に応じた電圧値が含まれる。
【0045】
オペアンプ43は、入力された2つの電圧Vx、Vrの差分を増幅して、増幅した差分値を、アナログ信号である出力電圧Voutとして出力端子から出力する差動増幅器である。出力電圧Voutは、第1素子44と第2素子46の蓄積電荷量の差を表す。
【0046】
オペアンプ43の出力端子は、制御部29に接続されている。制御部29は、出力電圧Voutに基づいて照射の開始及び停止を検出する。また、出力線51、52には、オペアンプ43の入力端子の手前に、第1素子44及び第2素子46の蓄積電荷をリセットするリセットスイッチ53が接続されている。制御部29は、リセットスイッチ53にリセットパルス(リセット信号)RST2を入力してリセットスイッチ53をオンする。リセットスイッチ53がオンされると、第1素子44及び第2素子46の蓄積電荷Cx、Crがグランド(GND)に放出される。
【0047】
図4のタイミングチャートに示すように、照射検出部によってX線の照射の開始が検出されるまでの間、第1ゲートドライバ27は、リセット動作を行う。リセット動作の間、第1ゲートドライバ27は、各走査線33に順にゲートパルスG1〜Gnを出力し、画素24のTFT32をオン状態にする。TFT32がオン状態にされると、積分アンプ36は、画素24から読み出された暗電荷を積分し、出力端子には、読み出した暗電荷に応じた電圧信号D1〜Dmが発生する。リセット動作の間は、MUX37は、積分アンプ36を選択しないので、積分アンプ36の出力端子に発生する電圧信号D1〜Dmは、MUX37から出力されない。
【0048】
制御部29は、各ゲートパルスG1〜Gnのそれぞれの立ち下がりとリセットパルスRST1の立ち下がりが一致するようにリセットパルスRST1を発生し、画素24のキャパシタと積分アンプ36のキャパシタ36aの暗電荷をリセットする。画素24の全ライン分の読み出し時間に相当する時間T1が経過すると、撮像領域26内の全画素24がリセットされる。こうしたリセット動作が周期的に繰り返される。
【0049】
リセット動作が行われている間、照射検出部は、X線源12によるX線の照射の開始を検出する検出動作を行う。照射開始の検出動作において、第2ゲートドライバ42は、時間T2の間隔でゲートパルスXGを発生してTFT49をオン状態にする。TFT49がオン状態にされると、蓄積電荷Cx、Crに応じた電圧Vx、Vrがオペアンプ43に入力される。制御部29は、オペアンプ43に電圧Vx、Vrが読み出される毎に、オペアンプ43の出力電圧Voutを読み出す。出力電圧Voutを読み出した後、制御部29は、ゲートパルスXGの立ち下がりとリセットパルスRST2の立ち下がりが一致するようにリセットパルスRST2を発生し、第1素子44と第2素子46の蓄積電荷Cx、Crをリセットする。
【0050】
X線の照射が開始されない間は、第1素子44にもX線の入射量に応じた信号電荷は発生しないので、蓄積電荷Cx、Crは、どちらもリセットパルスRST2の出力間隔(T2)の間に蓄積された暗電荷を表す。そのため、リセット動作の期間中は、電圧Vx、Vrは同じ値であるので、オペアンプ43の出力電圧Voutは「0」である。
【0051】
時点t01において、X線源12によるX線の照射が開始されると、第1素子44にはX線の入射量に応じた信号電荷が発生する。蓄積電荷Cxには、暗電荷に信号電荷が加算されるので、X線の照射が開始されると、開始前と比べて、蓄積電荷Cxが増加する。TFT49がオン状態にされたときに、その蓄積電荷Cxに応じた電圧Vxがオペアンプ43に入力される。一方、第2素子46のフォトダイオード48は遮蔽されているので、X線がFPD21に入射しても信号電荷は発生しない。そのため、X線の照射が開始される前後において、蓄積電荷Crとそれに応じた電圧Vrは変化しない。
【0052】
電圧Vxが増加すると電圧Vrとの間に差が生じるので、オペアンプ43の出力電圧Voutは上昇する。制御部29は、ゲートパルスXGの発生タイミングと同期して、オペアンプ43の出力電圧Voutを読み出し、出力電圧Voutが「0」から上昇したかを監視する。そして、電圧Voutが上昇した場合に、X線の照射開始を検出する。制御部29は、X線の照射開始を検出すると、第1ゲートドライバ27に制御信号を送り、ゲートパルスG1〜Gnの出力を停止させる。これにより、全画素24のTFT32がオフ状態となり、画素24がリセット動作から蓄積動作へ移行する。
【0053】
蓄積動作においては、X線の入射量に応じて画素24に信号電荷が蓄積される。制御部29は、照射開始を検出した後は、照射停止の検出動作を行う。蓄積動作が行われている間も、第2ゲートドライバ42は、時間T2の間隔でゲートパルスXGを発生し、第1素子44及び第2素子46のTFT49を周期的にオン状態にして、第1素子44及び第2素子46の電圧Vx、Vrが周期的にオペアンプ43に入力される。制御部29は、電圧Vx、Vrが入力される毎にオペアンプ43の出力電圧Voutを読み出し、出力電圧Voutが「0」に下降したか否かを監視して、照射の停止を検出する検出動作を行う。制御部29は、出力電圧Voutを読み出した後、リセットパルスRST2を発生して蓄積電荷Cx、Crをリセットする。
【0054】
X線の照射が停止すると、第1素子44における信号電荷の発生が停止し、蓄積電荷Cxの上昇が停止する。本例において、X線の照射が停止した直後のゲートパルスXGの発生によって読み出される電圧Vxに対応する蓄積電荷Cxの蓄積期間は、X線の照射期間と一部オーバラップしているので、蓄積電荷CxにはX線の照射が停止される前に発生した信号電荷が含まれている。このため、照射停止後、第1素子44及び第2素子46から1回目にオペアンプ43に出力される電圧Vx、Vrには差があるので、オペアンプ43の出力電圧Voutも「0」にはならない。
【0055】
これに対して、次のゲートパルスXGによって読み出される蓄積電荷Cxの蓄積期間は、X線の照射期間とオーバラップしていないので、照射停止後、第1素子44及び第2素子46から2回目に読み出される電圧Vx、Vrの差は「0」になり、オペアンプ43の出力電圧Voutも「0」になる。制御部29は、出力電圧Voutが「0」になった時点t02において、照射停止を検出する。
【0056】
制御部29によって照射停止が検出されると、制御部29は、第1ゲートドライバ27を通じて画素24を蓄積動作から読み出し動作に移行させる。読み出し動作において、第1ゲートドライバ27は、ゲートパルスG1〜Gnを順次発生し、画素24に蓄積された信号電荷は、1行ずつ信号線34を通じて信号処理部28に読み出される。
【0057】
読み出し動作に移行すると、第2ゲートドライバ42からのゲートパルスXGの出力と、制御部29からのリセットパルスRST2の出力が停止する。これにより、再びリセット動作が開始されるまでの間、照射の開始及び停止を検出する照射検出動作が停止される。
【0058】
図5及び図6に示すように、FPD21の撮像パネル61において、ガラス基板62上にフォトダイオード31とTFT32が形成されて画素24が形成される。図5に示す断面は、図6に示す平面図のA−A線で示す断面である。ガラス基板62上には、まず、ゲート電極63とブリッジ配線64が形成される。ブリッジ配線64は、信号線34、出力線51、52に対して直交して配置され、信号線34、出力線51、52のいずれかとTFT32のソース電極66とのコンタクトを得るための配線である。画素24の構成を示す図5においては、ブリッジ配線64は、コンタクトホール65を介して信号線34と接続されている。
【0059】
ゲート電極63とブリッジ配線64の上には、ゲート絶縁層67が形成される。ゲート電極63の上方において、ゲート絶縁層67の上層に半導体活性層68が形成される。ゲート絶縁層67の上層には、半導体活性層68の一部とオーバラップするように、TFT32のソース電極66とドレイン電極69が形成される。ソース電極66とドレイン電極69の上層には、保護膜71が形成される。
【0060】
保護膜71の上層には、信号線34、出力線51、52が形成され、これらと同層に、ドレイン電極69とフォトダイオード31の下部電極72を接続するための接続線73と、ブリッジ配線74(図6参照)と、接続線75が形成される。ブリッジ配線74は、ゲート電極63と、走査線33、47のいずれかとのコンタクトを得るための配線であり、画素24の平面構成を示す図6においては、コンタクトホール74aを介して、ゲート電極63と走査線33が接続されている。接続線75は、ソース電極66とブリッジ配線64を接続する。
【0061】
保護膜71の上層には、層間絶縁膜76が形成され、その上層にフォトダイオード31が形成される。フォトダイオード31は、下部電極72と上部電極77によって、半導体層を挟み込んだものであり、半導体層78は、下層から順に、P型半導体層78a、I層(真性半導体層)78b、N型半導体層78cが形成されたPIN型フォトダイオードである。フォトダイオード31の上部電極77は、可視光を透過する透明電極で形成される。
【0062】
フォトダイオード31の下部電極72と、TFT32のドレイン電極69と、層間絶縁膜76によってキャパシタが構成される。上部電極77の上方には、絶縁膜81が形成され、絶縁膜81を介して、各フォトダイオード31の上部電極77にバイアス電圧を印加するための共通配線82が形成される。
【0063】
フォトダイオード31が形成された後、その上方には保護層83を挟んでシンチレータ84が形成される。シンチレータ84は、ヨウ化セシウム(CSI)やガドリニウムオキシサルファイド(GOS)などからなる蛍光体であり、X線を可視光に変換する。シンチレータ84は、画素24が配列された撮像領域26の全面を覆う大きさを持っている。画素24のフォトダイオード31は、上部電極77が透明なので、シンチレータ84が発光する可視光が半導体層78に入射する。
【0064】
図7〜図10に示すように、検出用素子部41を構成する第1素子44及び第2素子46も、画素24とほぼ同様の構成である。同一部分には同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0065】
図7及び図9に示す第1素子44は、層構造が画素24と同一であり、相違点は、TFT49のゲート電極63が、走査線33の代わりに、コンタクトホール74bを介して走査線54と接続されている点と、TFT49のソース電極66が、信号線34の代わりに、コンタクトホール65を介して出力線51と接続されている点である。第1素子44のフォトダイオード47の上部電極77も、画素24と同様に透明である。
【0066】
図8及び図10に示す第2素子46についても、フォトダイオード48の上部電極86を除いて、画素24及び第1素子44と層構造は同一である。第1素子44との相違点は、TFT49のソース電極66が、出力線51の代わりに、コンタクトホール65を介して出力線52と接続されている点である。上部電極86は、可視光を透過しない不透明材料が使用されており、フォトダイオード48の半導体層78には、シンチレータ84からの可視光は入射しない。そのため、第2素子46は、暗電荷のみ出力する。
【0067】
このように、画素24と、第1素子44及び第2素子46は、ほぼ同一の構造をしているので、画素24の製造工程において、第1素子44及び第2素子46を同時に形成できるため製造効率がよい。また、第2素子46において、上部電極86と可視光を遮蔽する遮蔽部材とを兼用しているため、遮蔽部材を別に追加する場合と比べて、部品点数の増加もなく、製造効率もよい。
【0068】
以下、上記構成による作用について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。電子カセッテ13で被写体Hの撮影を行う場合、電子カセッテ13の位置と被写体Hの撮影部位のポジショニングを行う。X線源制御部15に対して、管電流、管電圧及び照射時間などの撮影条件を設定する。そして、電子カセッテ13を起動して、リセット動作を開始させる(ステップ(S)101)。図4に示すように、リセット動作では、第1ゲートドライバ27が走査線33を通じてゲートパルスG1〜Gnを順次出力して、画素24のTFT32を1ライン毎に駆動し、その駆動タイミングに合わせて制御部29がリセットパルスRST1を出力する。これにより、画素24に蓄積される暗電荷がリセットされる。
【0069】
また、リセット動作が開始されると、照射検出部も作動して、照射開始の検出動作が開始される(S102)。照射開始の検出動作では、第2ゲートドライバ42が走査線54を通じてゲートパルスXGを第1素子44及び第2素子46のTFT49に出力して、第1素子44及び第2素子46が出力する電圧Vx、Vrを読み出す。制御部29は、オペアンプ43の出力電圧Voutの上昇を監視する。照射開始を検出するまでの間、照射開始の検出動作を継続する(S102でN)。
【0070】
照射スイッチ18が押下されると、X線源12が撮影条件に応じた管電流及び管電圧でX線の照射が開始される。照射が開始されると、電圧Vxが上昇し、電圧Vrとの間に差が生じるため、オペアンプ43の出力電圧Voutが上昇する。制御部29は、出力電圧Voutの立ち上がりを検知して、照射開始を検出する(S102でY)。
【0071】
制御部29は、照射開始を検出すると、画素24のリセット動作を停止して(S103)、蓄積動作を開始させる(S104)。蓄積動作では、画素24にX線が入射し、それに応じた信号電荷が蓄積される。蓄積動作が開始された後、制御部29は、照射停止の検出動作を開始する(S105)。X線照射期間においては、時間T2の間隔で発生するリセットパルスRST2の間、第1素子44が出力する電圧Vxは増加する。照射停止の検出動作において、制御部29は、オペアンプ43の出力電圧Voutが「0」に下降するのを監視する。
【0072】
撮影条件で設定された照射時間が経過して、X線源12の照射が停止すると、第1素子44へのX線の入射も停止する。制御部29は、オペアンプ43の出力電圧Voutが「0」になったときに、照射停止を検出する(S105でY)。制御部29は、照射停止が検出されると、蓄積動作を停止して(S106)、読み出し動作(S107)を開始する。読み出し動作では、画素24の蓄積電荷が信号線34を通じて積分アンプ36に読み出される。MUX37を介して読み出された電圧信号D1〜Dmは、A/D変換器38でデジタルな画像データに変換され、画像データがメモリ22に書き込まれる。画素24の全ライン分の読み出しが終了すると(S108)、メモリ22に書き込まれた画像データは、通信部23によってコンソール16に送信される。
【0073】
読み出し動作が開始されると、照射停止の検出動作も停止される。次の撮影がある場合には(S109でY)、再びリセット動作が開始される。次の撮影が無い場合には(S109でN)、電子カセッテ13の電源を落として撮影を終了する。
【0074】
本発明のように、第1素子44と第2素子46の1組の素子からなる検出用素子部41を用い、第1素子44が出力する電圧Vxと、第2素子46が出力する暗電荷に対応する電圧Vrとの差に基づいて、照射検出動作を行うと、図12に示す比較例の照射検出部と比べて、FPD21に発生するシステムノイズがある場合でも、照射検出を正確に行うことができる。以下、その理由について、図13〜図15を参照しながらより詳細に説明する。
【0075】
図12に示す比較例の照射検出部は、第2素子46を設けずに、オペアンプ43に電圧値が固定された基準電圧Vrfを入力し、第1素子44が出力する電圧Vxと、基準電圧Vrfとの差に基づいて照射検出を行う点で、図3に示す本発明の照射検出部と相違する。基準電圧Vrfは、第1素子44が発生する暗電荷を想定して設定された固定値の基準電圧である。その他の点については本発明と同様である。
【0076】
図13に示すように、FPD21にシステムノイズが発生すると、FPD21の第1素子44及び第2素子46の蓄積電荷Cx、Cr、電圧Vx、Vrに対してシステムノイズが重畳される。システムノイズは、TFTの暗電流に起因するドリフト性ノイズ、ゲートドライバなどの駆動回路に大きな電流が流れたときの大電流変動や筐体に振動や衝撃が加わった場合のキャパシタの静電容量の変動などに起因するノイズなどからなり、これらは同相に発生するノイズが多い。システムノイズは、急峻に立ち上がる高周波ノイズや、比較的緩やかに変動する低周波ノイズとして、また、両者が混合された形態で現れる。
【0077】
図13に示すケースでは、X線の照射開始のタイミングと、リセットパルスRST2が発生するタイミングがほぼ一致しており、第1素子44が信号電荷を蓄積する、次のリセットパルスRST2までの蓄積期間が最大になっているケースである。第1素子44が信号電荷を蓄積する蓄積期間が長い場合には、第1素子44の信号電荷の蓄積量が多くなるため、オペアンプ43に出力される電圧Vxも比較的大きな値となる。
【0078】
そのため、図13(A)に示す本発明における出力電圧Voutに相当する、電圧Vxと電圧Vrの差Wも、図13(B)に示す比較例における出力電圧Voutに相当する、電圧Vxと基準電圧Vrfとの差Wも比較的大きな値となる。出力電圧Voutが大きければ、比較例の場合でも、基準電圧Vrfを上回る電圧Vrを得ることができる。また、システムノイズが発生した場合でも、S/N比が大きくなるので、比較的安定した検出が可能となる。図13に示すケースでは、本発明及び比較例のどちらの場合でも、X線の照射開始後、1回目の出力電圧Voutを読み出した時点t1において、照射開始を検出している。
【0079】
また、図13に示すケースでは、X線の照射が停止するタイミングと、リセットパルスRST2が発生するタイミングもほぼ一致しており、X線の照射停止とほぼ同時に第1素子44における信号電荷の発生は停止される。このため、本発明と比較例のどちらも、1回目の出力電圧Voutは「0」になり、その出力電圧Voutを読み出す時点t2において、照射停止が検出されている。
【0080】
一方、図14及び図15に示すケースは、X線の照射開始及び照射停止のタイミングと、リセットパルスRST2が発生するタイミングが一致しないケースである。X線の照射開始のタイミングと、リセットパルスRST2が発生するタイミングが一致しないと、第1素子44が信号電荷を蓄積する、次のリセットパルスRST2までの蓄積期間が短くなる。蓄積期間が短いと、出力電圧Voutに相当する、電圧Vxと基準電圧Vrfの差Wが小さくなり、S/N比が低下する。S/N比が低下すると、検出が不安定になる他、システムノイズが重畳することによって誤検出が発生する可能性も大きくなる。また、基準電圧Vrfの設定値が高すぎると、信号電荷が発生しているにも関わらず、基準電圧Vrf以下の小さな電圧Vxしか発生せず、検出が不能になるといった事態も生じる。
【0081】
図14のケースでは、X線の照射が開始された時点における第1素子44の電圧Vxが、図13のケースと比べて小さい。しかも、X線の照射開始後、1回目のゲートパルスXGが出力された直後に低周波と高周波が混合したシステムノイズが発生しており、その影響により、図13のケースと比べると、第1素子44の電圧Vxの上昇が遅れている。このため、図14(B)に示す比較例では、電圧Vxが基準電圧Vrfを超えるまでに時間が掛かっており、時点t4において照射開始を検出している。
【0082】
また、比較例において、X線の照射停止は、図14(A)に示す本発明と同様の時点t6において検出されているものの、X線の照射が停止された後、1回目のゲートパルスXGが出力された時点t5において、電圧Vxが小さいため、小刻みに出力電圧Voutが立ち上がり、出力電圧Voutが不安定になっている。出力電圧Voutが不安定だと誤検出が生じるおそれもある。
【0083】
これに対して、図14(A)に示す本発明においては、電圧Vxが小さくても、電圧Vrとの差を出力電圧Voutとしているため、ゲートパルスXGが出力された直後に電圧Voutは立ち上がり、時点t4よりも早い時点t3において照射開始を検出している。また、本発明の場合には、第1素子44と第2素子46の差を出力することで、両者に発生する同相のシステムノイズが相殺されるので、システムノイズによる影響もない。また、X線の照射が停止された直後も、比較例のように出力電圧Voutが不安定になることもない。
【0084】
図15に示すケースでは、電圧Vxが小さいため、図15(B)に示す比較例では、X線の照射開始直後の時点t7において、電圧Vxは立ち上がっているものの、基準電圧Vrfを超えないため、照射開始を検出できず、次のゲートパルスXGが出力される時点t8で照射開始を検出している。これに対して、図15(A)に示す本発明では、電圧Vxが小さくても、時点t7において、照射開始を検出している。図15に示すケースでは、照射停止の検出については、本発明も比較例も同じ時点t8において検出している。
【0085】
このように、本発明は、固定値である基準電圧Vrfを基準として照射を検出する比較例と比較して、電圧Vrが小さかったり、システムノイズがある場合でも、正確でかつ安定した検出を行うことができる。
【0086】
また、暗電荷はTFTの特性によって変化し、TFTの特性は、FPD21の周囲の温度や駆動時間の長短による温度変動による影響を受けやすい。そのため、固定値の基準電圧Vrfで照射を検出する場合には、暗電荷の変動に追従することができないため、誤検出のおそれが高い。これに対して、本発明は、暗電荷に対応する電圧Vrと、電圧Vxの差をとるため、暗電荷の変動分を吸収することが可能となり、正確な照射検出ができる。
【0087】
また、アナログ信号である、オペアンプ43の出力電圧Voutに基づいて照射検出を行うため、A/D変換後のデータに基づいて照射検出を行う場合と比べて、照射検出を短時間で行うことができる。具体的には、照射が開始されてから照射開始を検出するまでの時間が短時間で済む。このため、照射開始後、蓄積動作へ移行するまでの時間が短くなるため、信号電荷の蓄積に寄与しない無駄な被曝を低減することができる。また、照射が停止されてから照射停止を検出するまでの時間も短時間で済むため、照射停止後の余分な蓄積動作時間を短くすることができる。蓄積動作を行っている間も暗電流は発生するので、蓄積動作時間が長いと、暗電流に起因するノイズ(いわゆるオフセットノイズ)が増加して画質が低下する。余分な蓄積動作時間を短くすることで、暗電流が画質に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0088】
なお、本例において、第1素子44と第2素子46を隣接して配置する例で説明したが、第1素子44と第2素子46は、近傍位置に配置されていればよい。第2素子46は、第1素子44の蓄積電荷Cxに含まれる、システムノイズに起因する暗電荷を取り除き、第1素子44が蓄積した信号電荷に対応する出力Voutに基づいて照射検出を行うためのものである。システムノイズは、撮像領域26の全域に同時に発生するノイズであり、撮像領域26の全域において、波形や大きさに大きな変化はないと考えられるが、第2素子46と第1素子44との間隔が大きすぎると、両方に発生するシステムノイズ間に、波形や大きさの点で違いが生じることも考えられるので、同程度のシステムノイズが発生すると考えられる近傍位置に配置されることが好ましい。
【0089】
近傍位置の具体的な範囲としては、1つの画素の大きさが、約50μm〜約200μmである場合には、数画素〜数百画素程度の間隔の範囲であり、より好ましくは、数画素〜数十画素程度であることが好ましい。もちろん、本例のように隣接していることが最も好ましい。隣接していれば、第1素子44と第2素子46の両方に蓄積される暗電荷はほぼ等しいと考えられるからである。
【0090】
[第2実施形態]
図16に示すFPD91は、撮像領域26内に、複数個の検出用素子部41を設けたものである。検出用素子部41が複数個ある点を除いて、第1実施形態のFPD21と同様である。FPD91において、複数個の検出用素子部41は、撮像領域26の外周付近ばかりでなく、撮像領域26の中心領域など、撮像領域26内の全域に分散して配置されている。FPD91では、検出用素子部41の数に応じて、第1素子44及び第2素子46を駆動するための走査線54や、電圧Vx、Vrを読み出すための出力線51、52が追加されている。第2ゲートドライバ42は、各走査線54に対して、ゲートパルスXG1〜XG3を出力して、複数個の検出用素子部41を選択的に駆動する。
【0091】
図17に示すように、制御部29は、各検出用素子部41のいずれかの電圧Vx、Vrを読み出したときのオペアンプ43の出力電圧Voutが上昇したときに、照射開始を検出する。そして、照射停止の検出動作は、順次出力されるゲートパルスXG1〜XG3によって、複数個の検出用素子部41の電圧Vx、Vrを順次読み出し、すべての検出用素子部41の電圧Vx、Vrに対応するオペアンプ43の出力電圧Voutが「0」になったときに、照射停止を検出する。
【0092】
また、照射停止の検出動作については、図18に示すように、照射開始を検出した後、ゲートパルスXG1〜XG3の出力を順次出力から同時出力に切り替えて、複数個の検出用素子部41の電圧Vx、Vrを、同時に読み出してもよい。同時読み出しを行った場合には、FPD91のように、複数個の検出用素子部41で出力線51、52及びオペアンプ43が共用されている場合には、複数個の検出用素子部41の電圧Vx、Vrを加算した電圧がオペアンプ43に入力される。こうしても、X線の照射が停止された場合には、すべての検出用素子部41の第1素子44への信号電荷の蓄積はなくなり、暗電荷に対応する電圧Vxが出力されるので、出力電圧Voutが「0」になるのを監視すればよい。図18のように複数個の検出用素子部41の同時読み出しを行って、照射停止を検出することで、図17の例と比べて、照射停止後、照射停止の検出タイミングまでの時間を短くすることができる。
【0093】
撮影部位によっては、撮像領域26の全域を使わずに、撮像領域26の一部を使う場合もある。例えば、肘や膝を撮影する場合には、撮影部位の大きさが撮像領域26に比べて小さいので、X線の照射野は、その範囲に設定すれば足りる。しかし、FPD21のように撮像領域26の外周付近にのみ検出用素子部41が設けられていると、検出用素子部41にX線を照射するために、撮影部位に対して広い領域をX線の照射野として設定しなければならない。このようにX線の照射野を撮影に必要な範囲以上に広げることは、無駄な被曝を生じさせるおそれがあるため、好ましくない。
【0094】
FPD91のように、撮像領域26の全域に渡って検出用素子部41を分散して配置しておけば、撮像領域26内において、照射野の大きさや位置が変わっても、いずれかの検出用素子部41が照射野内に入る可能性が高いので、照射野を撮影に必要な範囲以上に広げる必要がなく、無駄な被曝が低減される。電子カセッテ13は、据え置き型のX線画像検出装置と比べて、肘や膝の撮影など、撮像領域26の一部を使用する撮影に用いられることが多い。そのため、撮像領域26内において、複数個の検出用素子部41を分散配置する構成は、電子カセッテ13に特に有効である。
【0095】
また、複数の検出用素子部41を分散配置する構成は、散乱X線除去用のグリッド板を使用してX線撮影を行った場合にも有効である。散乱X線除去用のグリッド板は、周知のように、鉛などのX線を遮蔽する遮蔽材料とアルミニウムなどのX線を透過する透過材料の2種類の材料を縞状に交互に配置して形成したものであり、X線が被写体Hを透過することによって生じる散乱X線を除去する。撮影時には、グリッド板は、被写体HとFPDの間に配置される。
【0096】
グリッド板を使用した場合には、透過材料を透過したX線のみがFPDの撮像領域26に入射するので、撮像領域26内においては、遮蔽材料によってX線が遮蔽されることによって、X線が入射しないあるいはX線のエネルギーが減少する遮蔽領域が生じる。検出用素子部41が1つだけの場合には、その検出用素子部41が、遮蔽領域にあると、その検出用素子部41が機能しないため、照射検出を行えないという事態も起こりうる。撮像領域26内において複数の検出用素子部41を分散配置しておけば、すべての検出用素子部41が遮蔽領域に位置する可能性は低いので、そうした事態を回避することができる。
【0097】
また、X線の吸収率が低い軟部組織とX線の吸収率が高い骨部というように体内のX線吸収率は部位によって異なる。そのため、例えば、骨部が多い部分を撮影する場合には、撮像領域26内において、骨部によって、グリッド板の場合と同様に遮蔽領域が生じる場合も考えられる。複数の検出用素子部41を撮像領域26内に分散配置する構成は、このような場合にも有効である。
【0098】
第1実施形態のFPD21においては、画素の欠落は少ない方がよいという理由から、検出用素子部41を撮像領域26の外周付近に配置する構成としたが、照射野を必要以上に広げずに被曝を低減するという観点や、グリッド板を使用した撮影等による遮蔽領域の発生による不都合を回避するという観点を考慮すると、本実施形態のFPD91のように、複数の検出用素子部41を撮像領域26の全域に渡って分散配置することが好ましい。複数の検出用素子部41を分散配置した場合でも、検出用素子部41によって欠落する画素については、第1実施形態で述べたとおり、周辺の画素24の画素値を用いて補間処理が施されるので、補間処理により、画素の欠落が画質に与える影響を低減することが可能である。
【0099】
このように、複数の検出用素子部41を分散配置する構成は、撮影部位、グリッド板の有無といった使用条件の変動がある場合でも安定した照射検出を可能にする。この構成は、FPDが置かれる使用環境の温度が一因となって発生するシステムノイズがある場合でも正確かつ安定した照射検出を可能にする検出用素子部41の構成(第1素子44と第2素子46の組)と相俟って、FPDが実際に使用される環境や条件の変動に対する高い耐性力を持つ照射検出機能の実現に寄与する。
【0100】
また、図5〜図10で説明したように、画素24と、第1素子44及び第2素子46をほぼ同一の構造にする構成は、FPD91のように、検出用素子部41の数が増えるほど効果が大きい。また、同一構造であると、検出用素子部41の位置を変えたり、数を増やすなどの設計変更の場合でも、走査線や出力線の数や位置の変更など、比較的小変更で対応が可能である。
【0101】
[第3実施形態]
図19に示すFPD96のように、1つの検出用素子部97を、複数組(本例では2組)の第1素子44、第2素子46で構成してもよい。複数組の第1素子44、第2素子46で構成すれば、1つの組が、故障や、第2実施形態で述べた遮蔽領域に位置しているなどの理由により機能しない場合でも、残りの組が機能して照射検出を行うことができるので、安全性が高い。
【0102】
[第4実施形態]
図20に示すFPD101のように、1つの検出用素子部97の大きさを、1つの画素24の大きさとほぼ同じ、具体的には、撮像領域26内において1つの検出用素子部97が占有する面積と1つの画素24が占有する面積をほぼ同じにしてもよい。検出用素子部97は、第1素子44、第2素子46と同様に機能する、第1素子103、第2素子104の1組の検出用素子からなる。検出用素子部97は、画像データにおいては欠落部分になるので、その数は少ない方がよい。1つの検出用素子部97の大きさを、画素24と同じ大きさにすることで、2画素分の大きさを持つ上記実施形態のFPDと比較して、画像データの欠落部分を少なくすることができる。
【0103】
なお、上記第1〜第4の各実施形態ではいずれも、1つの検出用素子部41を、同数の第1素子44と第2素子46の組(1つずつあるいは2つずつの組)で構成しているが、例えば、1つの第2素子46と2つの第1素子44で1つの検出用素子部41を構成するというように、1つの第2素子46と複数の第1素子44で1つの検出用素子部41を構成してもよい。この場合には、1つの検出用素子部41において、1つの第2素子46が複数の第1素子44で共用される。具体的には、複数の第1素子44のそれぞれの電圧Vxがオペアンプ43に読み出される際に、共用される1つの第2素子46の電圧Vrがオペアンプ43に読み出される。そして、各第1素子44の電圧Vxと、1つの第2素子46の電圧Vrとの差分が出力電圧Voutとして読み出される。こうした構成によれば、分散配置した複数の第1素子44に対して、1つの第2素子46を配置すれば済むので、それぞれに第2素子46を設ける場合と比べて、第2素子46の数を減らすことができ、画像データの欠落部分を少なくすることができる。
【0104】
[第5実施形態]
上記実施形態では、検出用素子部を用いて照射検出を行う例で説明したが、検出用素子部を用いて被写体Hに照射される照射量の測定を行ってもよい。照射量を測定することで、例えば、自動露出制御を行うことができる。この場合には、図21に示すように、制御部29に照射量演算部106と判定部107を設ける。照射量演算部106は、ゲートパルスXGが出力される毎に読み出されるオペアンプ43からの出力電圧Voutを積算して、照射量を測定する。判定部107は、撮影前に設定された露出値を記憶しており、測定した照射量と設定された露出値を比較して、照射量が露出値に達したか否かを判定する。制御部29は、判定部107によって照射量が露出値に達したと判定された場合には、第1ゲートドライバ27にゲートパルスG1〜Gnを出力させて、蓄積動作から読み出し動作へ移行させる。これにより、X線源12の照射時間に関わらず、適正な露出値のX線画像が得られる。
【0105】
このような自動露出制御を行う場合には、図16に示すFPD91のように、撮像領域26内に複数個の検出用素子部41を配置し、各検出用素子部41の中から露出制御に使用する検出用素子部41を、撮影部位によって選択できるようにしておくとよい。なぜならば、自動露出制御する場合には、撮影部位によって、照射量を測定する領域が異なるからである。
【0106】
また、検出用素子部41を、照射検出や自動露出制御以外に、例えば、X線の線量管理に用いてもよい。近年、病院などの医療施設において、どの患者に対していつどの程度の線量を照射したかといった被曝履歴を管理することが求められている。線量は、管電流と照射時間の積(いわゆるmAs値)によって求められる。撮影においては、照射時間を含む撮影条件が設定されるので、その場合には、おおよその線量は把握できるものの、実際の撮影では、自動露出制御が行われる場合など、撮影条件で設定される照射時間と、実際の照射時間が相違する場合が多く、実際に照射された線量を正確に把握することは難しかった。
【0107】
検出用素子部41を用いれば、照射開始と照射停止を正確に検出できるので、その検出信号に基づいて撮影に使用された正確な線量を把握することができる。例えば、図22に示すように、電子カセッテ13が照射開始と照射停止を検出したときに、通信部23を通じて、リアルタイムでコンソール16に対して検出信号を送る。コンソール16は、通信部19を通じてCPU16aが照射開始の検出信号を受信すると、CPU16aはタイマ16bを作動させる。そして、照射停止の検出信号を受信したときにタイマ16bを止めて、照射時間を測定する。
【0108】
上述したとおり、検出用素子部41は、第1素子44と第2素子46からなるので、正確な照射検出が可能であり、また、オペアンプ43のアナログ信号の出力電圧Voutに基づいて照射の検出が行われるため、照射開始及び照射停止と、それらの検出タイミングまでの時間差も少ない。そのため、タイマ16bによって測定された照射時間は、実際の照射時間に非常に近い値となる。CPU16aは、測定された照射時間に管電流を掛けて線量を求めて、その線量データを被写体Hである患者の名前や日付などと関連付けてHDDやメモリなどのデータストレージ16cに格納する。このように検出用素子部41を用いることで、照射時間を正確に測定することができるので、正確な線量管理も可能となる。
【0109】
上記実施形態では、検出用素子部41を撮像領域26に配置した例で説明したが、撮像領域26の周辺など、撮像領域26外のX線が入射する領域に配置されていてもよい。しかし、上述したとおり、撮像領域26外に配置すると、検出用素子部41にX線が入射するように、撮影に必要な範囲以上にX線の照射野を大きく取らなければならないので、無駄な被曝を低減する観点からは、上記実施形態で示したとおり、検出用素子部41は撮像領域26内に配置されていることが好ましい。
【0110】
上記実施形態では、照射開始と照射停止の両方を検出する例で説明したが、照射停止の検出を行わず、照射開始だけを検出してもよい。自動露出制御を行う場合のように、照射が停止されたか否かに関わらず、蓄積動作から読み出し動作へ移行する場合もあるからである。
【0111】
上記実施形態では、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテを例に説明したが、据え置き型のX線画像検出装置に本発明を適用してもよい。
【0112】
上記実施形態では、FPDとして間接変換型を例に説明したが、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレンなど)を用いた直接変換型のFPDに本発明を適用してもよい。この場合には、第2素子46の遮蔽部材としては、X線を遮蔽する鉛などの材料が使用される。遮蔽用の鉛は、変換層の上面において、第2素子46の対応する位置に配置される。
【0113】
また、上記各実施形態を組み合わせてもよい。また、上記各実施形態では、放射線としてX線を例に説明したが、本発明は、γ線など、X線以外の放射線を使用するものでもよい。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0114】
10 X線撮影システム
13 電子カセッテ(放射線画像検出装置)
21、91、96、101 FPD
24 画素
26 撮像領域
27 第1ゲートドライバ(第1駆動手段)
29 制御部(制御手段)
31、47、48 フォトダイオード
32、49 TFT
41 検出用素子部
42 第2ゲートドライバ(第2駆動手段)
43 オペアンプ
44 第1素子(第1検出用素子)
46 第2素子(第2検出用素子)
53 リセットスイッチ
61 撮像パネル(撮像手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を撮像して、被写体の放射線画像を検出するための撮像手段であり、前記放射線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素が二次元に配列された前記放射線の撮像領域を有する撮像手段と、
前記画素を駆動する第1駆動手段であり、前記画素において前記放射線源の照射の有無に関わらず発生する暗電荷を、リセットするリセット動作と、前記画素に前記信号電荷を蓄積させる蓄積動作と、前記画素から前記信号電荷を読み出す読み出し動作の3つの動作を行わせるための第1駆動手段と、
前記放射線源による照射の開始を検出する照射検出手段であり、
前記画素と同様に前記信号電荷を蓄積する第1検出用素子と、前記第1検出用素子の近傍に配置され、前記暗電荷のみを蓄積する第2検出用素子とからなる少なくとも1組の検出用素子を有する検出用素子部と、
前記第1検出用素子と第2検出用素子を駆動して、それぞれの蓄積電荷を同時に読み出すための第2駆動手段とを有し、
前記第1検出用素子と第2検出用素子から同時に読み出される蓄積電荷量の差に基づいて、前記照射の開始を検出する照射検出手段と、
前記照射検出手段によって前記照射の開始が検出されたときに、前記画素が前記リセット動作から前記蓄積動作へ移行するように前記第1駆動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記照射検出手段は、前記第1検出用素子と第2検出用素子のそれぞれが出力するアナログ信号の差を出力する差動増幅器を有し、差動増幅器が出力する前記アナログ信号の差に基づいて照射の開始を検出することを特徴とする請求項1記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
前記第1検出用素子及び第2検出用素子は、前記撮像領域内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記第1検出用素子と前記画素は、構造が同一であり、
前記第2検出用素子は、放射線又は可視光を遮蔽する遮蔽部材を有しており、前記遮蔽部材を有する点を除いて前記第1検出用素子及び前記画素と構造が同一であることを特徴とする請求項3記載の放射線画像検出装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記放射線を可視光に変換するシンチレータを有しており、前記画素、前記第1及び第2の各検出用素子は、基板上に形成され可視光を電気信号に変換する光電変換素子で構成されており、
前記シンチレータは、前記光電変換素子の配列面の全面と対向するように配置されていることを特徴とする請求項4記載の放射線画像検出装置。
【請求項6】
前記光電変換素子は、光電変換層である半導体層が、前記基板側に配置される下部電極と、前記シンチレータ側に配置される上部電極とによって挟まれる層構造を有しており、
前記第1検出用素子と前記画素は、前記上部電極が透明な前記光電変換素子で構成されており、前記第2検出用素子は、前記上部電極が不透明な前記光電変換素子で構成されており、不透明な前記上部電極が、前記シンチレータから前記半導体層へ向かう可視光を遮蔽するための前記遮蔽部材として機能することを特徴とする請求項5記載の放射線画像検出装置。
【請求項7】
前記検出用素子部は、前記撮像領域内に複数個配置されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項8】
前記検出用素子部は、前記撮像領域内の異なる位置に分散して配置されていることを特徴とする請求項7記載の放射線画像検出装置。
【請求項9】
前記検出用素子部は、前記第1検出用素子と第2検出用素子を複数組有することを特徴とする請求項3〜8いずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項10】
1つの前記検出用素子部の大きさは、1つの前記画素の大きさとほぼ同じであることを特徴とする請求項3〜9のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項11】
前記検出用素子部は、前記放射線源から被写体に照射される照射量の測定にも用いられることを特徴とする請求項3〜10のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項12】
前記照射検出手段は、前記蓄積電荷量の差に基づいて、前記照射の停止を検出し、前記制御手段は、停止が検出された場合には、蓄積動作から読み出し動作へ移行させることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。
【請求項13】
前記撮像手段、前記第1駆動手段、前記第2駆動手段、前記照射検出手段、及び前記制御手段が可搬型の筐体に収容された電子カセッテであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−45044(P2012−45044A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187211(P2010−187211)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】