説明

放射線硬化性相変化ゲルインクを用いる導電性構造体の作製のためのシステム及び方法

【課題】導電性構造体の作製に適した方法、導電性インクのアニーリングに必要とされる高温に耐えることができる熱安定性のモールド及びダムを用いる導電性構造体の作製に適した方法、導電性構造体をデジタルに作製する方法を提供する。
【解決手段】基材200に、紫外硬化性ゲル化剤相変化マーキング材料を印刷することによって形成される充填可能チャネル204のパターン202を印刷し、印刷された基材200を導電性インク中に浸漬して充填されたチャネル206を得、ブロック208において導電性インクをアニールし、ブロック210において紫外硬化性相変化マーキング材料が除去される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子回路の組み立てに用いる方法としては、サブトラクティブ法(箔のエッチング)又はアディティブ法(導電性インクのフレキソ印刷)が挙げられる。エッチングプロセスは一般に、所望のパターン状に基材表面の選択された領域をブロックするエッチマスクを準備し、基材をエッチングして、マスクされていない材料を除去し、表面からマスキング材料を除去することを含む。箔エッチング方式の無線識別タグの例を図1に示す。箔のエッチングは、材料の大部分が廃棄されるため、無駄が多く、環境的に不利益をもたらす。
【0002】
フレキソ印刷プロセスは費用がかかることがあり、ラインの見当合わせ及びパターンの均一性に関して問題がある。図2は、非特許文献1に示された印刷されたRFIDアンテナの表面プロファイルであり、その印刷の不規則性が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第20070120910号
【特許文献2】米国特許出願公開第20070123606号
【特許文献3】米国特許第7,259,275号
【特許文献4】米国特許出願公開第20060189113号
【特許文献5】米国特許出願公開第20070212562号
【特許文献6】米国特許出願公開第20080218540号
【特許文献7】米国特許第7,279,587号
【特許文献8】米国特許出願公開第2007120925号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sangoi著 「Printing Radio Frequency Identification Tag Antennas Using Inks Containing Silver Dispersions」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性構造体の作製に適した方法、導電性インクのアニーリングに必要とされる高温に耐えることができる熱安定性のモールド及びダムを用いる導電性構造体の作製に適した方法、導電性構造体をデジタルに作製する方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基材上に導電性構造体を作製する方法は、基材の表面上に、充填可能チャネルのパターン状に放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を印刷し、放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を硬化し、充填可能チャネル内に導電性材料を堆積させ、導電性材料をアニールし、随意に、放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を除去するステップを含む。
【0007】
基材上に導電性構造体を作製するためのシステムは、基材の表面上に、充填可能チャネルを作り出すパターン状に放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を印刷するための放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料源と、放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を硬化するための硬化装置と、充填可能チャネル内に導電性材料を堆積するための導電性材料源と、導電性材料をアニールするための熱源と、随意に、放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を除去するための装置とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】箔エッチング方式の無線識別タグを示す。
【図2】印刷された無線識別アンテナの表面計測イメージである。
【図3】本発明のシステムの実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明の方法の実施形態を示す流れ図である。
【図5A】デジタル・ダムが絶縁層として機能する本発明の方法の実施形態を示す。
【図5B】デジタル・ダムが絶縁層として機能する本発明の方法の実施形態を示す。
【図5C】デジタル・ダムが絶縁層として機能する本発明の方法の実施形態を示す。
【図5D】デジタル・ダムが絶縁層として機能する本発明の方法の実施形態を示す。
【図6】基材上に固体黒色インクをパターン状に噴射することにより作製された固体インクダムの顕微鏡写真である。
【図7】基材上に固体黒色の印刷されたダムパターンを噴射し、導電性インクをダム内に分注し、導電性インクをアニールすることによって作製されたデバイスの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
所望のパターンを有するデジタル・ダムを作製するために用いられる相変化インク・マーキング材料として提供される放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を用いた、導電性構造体を作製するためのシステム及び方法。次いで、ダムを、導電性材料で充填し、アニールして、厚い導電性金属構造部、電子回路、及び無線識別(RFID)タグを含めた電子デバイスを形成する。利点としては、これまで必要とされてきた厚膜として導電性インクを印刷することが回避されること、及びエッチングプロセスに伴う無駄及び環境問題が避けられることが挙げられる。放射線硬化性相変化ゲルインク・マーキング材料は広い基材許容範囲を有し、このことが、相変化インクのデジタル・ダム・パターンをその後のアニーリングプロセスに耐えることができるいかなる基材上にも印刷することを可能にする。このシステム及び方法は、導電性構造体のワンパス(one pass)での作製をもたらす。
【0010】
放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料は、随意の着色料、放射線硬化性モノマー、プレポリマー、及び/又はオリゴマー、光開始剤パッケージ、反応性ワックス、ゲル化剤、及び随意の顔料又は他の機能性粒子から構成される。放射線硬化性相変化マーキング材料の流動学的特性は、高温(85℃)でのロバストな噴射及び室温での機械的安定度(105乃至106センチポアズ)を達成するように調節することができる。粘度が105から106センチポアズに増大することは、デジタル・ダム・パターン化された構造体をビルドアップすることを可能にする。硬化前、構造体は練り歯磨に似た粘稠度を有するものとすることができ、接触によって変化させることができる。硬化後、構造体は極めて堅牢である。室温における放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料のゲル的性質が印刷された小滴の拡がり及び移動を防ぎ、デジタル・ダム・パターン化された構造体を容易にビルドアップすることを可能にする。この材料の放射線硬化性の性質により、印刷された物体を、例えば紫外線、熱又は電子線照射に対する曝露のようないずれかの適当な方法で、製作プロセスのいずれかの時点において硬化させることが可能であり、その結果、高度の機械的強度を有する堅牢なパターン化構造部が得られる。1回より多くの印刷パスが用いられる場合には、所望であれば、デジタル・ダムを形成するために用いられる個別の各印刷パスの完了後に、放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を硬化させることができる。あるいは、全ての印刷パスの完了時にインクを硬化させることができる。
【0011】
本方法は、放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料をワンパス又は多数回の逐次的なパスで印刷して、選択されたパターンを有するデジタル・ダムを形成することを含む。ダムパターンのテンプレートを、x軸及びy軸に沿って印刷するためにプログラムされたコンピュータソフトウエア及び印字ヘッドを用いて、1回又はそれ以上のプリントパスで作製することができる。充填可能チャネル(又はデジタル・ダム)のパターンは、1回から5回までの印刷パス、又は1回の印刷パスを用いて作成することができる。マイクロサイズからマクロサイズまでのスケールで、単純なパターンから複雑な幾何学形状までを含むことができる事実上あらゆる設計のパターンを作成することができる。本明細書の放射線硬化性相変化ゲルのインクジェット用マーキング材料及び方法は、更に有利には、計測された量のインク材料を時間的にも空間的にも正確な位置に送達する固有の能力を有する非接触式のアディティブ法(サブストラクティブとは対照的に)を提供する。
【0012】
相変化インク・マーキング材料は、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル、カプロラクトンアクリレート、アクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチルを含むアクリレート及びメタクリレート・モノマーのような放射線硬化性モノマー化合物を含む、いずれかの適切な硬化性モノマー又はオリゴマーを含むことができる。多官能性アクリレート及びメタクリレート・モノマー及びオリゴマーは、反応希釈剤として、及び、硬化した像の架橋密度を高め、それにより硬化した像の靭性を強化することができる材料として含めることができる。硬化した物体の可塑性又は弾性を調節するために、異なるモノマー及びオリゴマーを添加することもできる。例として、担体重量の1乃至80パーセントの、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,2−エチレングリコール、ジメタクリル酸1,2−エチレングリコール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸1,12−ドデカノール、ジメタクリル酸1,12−ドデカノール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ジアクリル酸プロポキシ化ネオペンチルグリコール、ジアクリル酸ヘキサンジオール、ジアクリル酸トリプロピレングリコール、ジアクリル酸ジプロピレングリコール、アミン修飾アクリル酸ポリエーテル、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、トリアクリル酸グリセロールプロポキシレート、ペンタアクリル酸ジペンタエリスリトール、ヘキサアクリル酸ジペンタエリスリトール、エトキシ化テトラアクリル酸ペンタエリスリトール494(登録商標)が挙げられる。
【0013】
相変化インク・マーキング材料は、例えば紫外光のような放射線に曝露されたとき硬化性モノマーとして挙動する化合物のように、液体中に溶解した場合に比較的狭い温度幅にわたって粘度が比較的急上昇するという点でゲル様の挙動を示すことができる少なくとも1つの化合物を含む。そのような液体硬化性モノマーの一例は、ジアクリル酸プロポキシ化ネオペンチルグリコールである。
【0014】
本明細書におけるいくつかの化合物は、少なくとも30℃、少なくとも10℃、又は少なくとも5℃の温度範囲にわたって、少なくとも103センチポアズ、少なくとも105センチポアズ、又は少なくとも106センチポアズ、粘度変化する。
【0015】
実施形態は、第一の温度で半固体ゲルを形成することができる。この化合物が相変化インクに配合される場合には、この温度は、インクが噴射される特定の温度より低い。半固体ゲル相は、1つ又はそれ以上の固体ゲル化剤分子と液体溶媒とを含む動的平衡として存在する物理ゲルである。半固体ゲル相は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族非結合性相互作用、イオン又は配位結合、ロンドン分散力のような非共有結合的相互作用によって互いに保持された分子成分が動的にネットワーク化された集合体であり、温度、機械撹拌のような物理的な力、又はpH、イオン強度のような化学的な力によって刺激されると、巨視的レベルで液体から半固体状態へと可逆的に転移することができる。ゲル化剤分子を含む溶液は、温度が溶液のゲル化点の上又は下に変化するときに、半固体ゲルと液体状態との間の熱可逆的転移を示す。この半固体ゲルと液相との間の転移の可逆的サイクルは、溶液調合物中で多数回繰り返すことができる。
【0016】
インク展色剤は、いずれかの適切な光開始剤を含むことができ、光開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンジルケトン類、モノマー性ヒドロキシケトン類、ポリマー性ヒドロキシケトン類、α−アルコキシベンジルケトン類、α−アミノケトン類、アシルホスフィンオキシド類、メタロセン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類(benzil ketals)、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン類、Irgacure(登録商標)及びDarocur(登録商標)として販売されているアシルホスフィン光開始剤、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モリホリニル(morphorlinyl))フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モリホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド及び他のアシルホスフィン類、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モリホリニル)−1−プロパノン及び1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル2−ジメチルアミノ1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン、チタノセン類、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタールが挙げられる。
【0017】
相変化インクは、アミン相乗剤を含むことができ、これは、水素原子を光開始剤に供与し、それにより重合を開始するラジカル種を形成することができ、かつ、フリーラジカル重合を阻害する溶存酸素を消費し、それにより重合の速度を上昇させることもできる、共開始剤であり、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルベンゾエートが挙げられる。
【0018】
本明細書中に開示のインクのための開始剤は、例えば、200乃至560ナノメートルといった、いずれかの所望の又は有効な波長の放射線を吸収することができる。
随意に、光開始剤は、インク組成物の重量の0.5乃至15パーセントで相変化インク中に存在することができる。
【0019】
いずれかの適切な反応性ワックスを用いることができ、これには、他の成分と混和性であって、硬化性モノマーと重合してポリマーを形成する硬化性ワックス構成成分が含まれる。アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド及びオキセタンを含む硬化性基で官能基化されたワックスのようなワックスを配合することで、インクが噴射温度から冷えるにつれてインク粘度の上昇が促進される。これらのワックスは、カルボン酸又はヒドロキシルのような変換可能な官能基を有するワックスの反応によって合成することができる。
【0020】
ヒドロキシル末端ポリエチレンワックスは、平均鎖長nが16乃至50の構造CH3−(CH2n−CH2OHを有する炭素鎖と、同様の平均鎖長の直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物を含む。例としては、それぞれがおよそ375、460、550及び700g/molに等しいMnを有する、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550及びUNILIN(登録商標)700が挙げられる。2,2−ジアルキル−1−エタノールとして特徴付けられるゲルベアルコールもまた適切な化合物であり、16乃至36個の炭素を含むもの、次式
【化1】

の異性体、並びに不飽和及び環状基を含むことができる他の分岐鎖異性体を含むC−36ダイマージオール混合物であるPRIPOL(登録商標)2033が挙げられる。これらのアルコールを、UV硬化性部分を有するカルボン酸と反応させて、反応性エステルを形成する。例としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0021】
硬化性基で官能基化することができるカルボン酸末端ポリエチレンワックスは、鎖長nの混合物であり平均鎖長が16乃至50の構造CH3−(CH2n−COOHを有する炭素鎖と、同様の平均鎖長の直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物を含む。例としては、Mnがそれぞれ、およそ390、475、565及び720g/molに等しい、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550及びUNICID(登録商標)700が挙げられる。他の適切なワックスは、構造CH3−(CH2n−COOHを有し、例えば、ヘキサデカン酸又はパルミチン酸、ヘプタデカン酸又はマルガリン酸若しくはダツリン酸(daturic acid)、オクタデカン酸又はステアリン酸、エイコサン酸又はアラキジン酸、ドコサン酸又はベヘン酸、テトラコサン酸又はリグノセリン酸、ヘキサコサン酸又はセロチン酸、ヘプタコサン酸又はカルボセリン酸、オクタコサン酸又はモンタン酸、トリアコンタン酸又はメリッシン酸、ドトリアコンタン酸又はラッセロイル(lacceroic)酸、トリトリアコンタン酸又はセロメリッシン酸若しくはプシリン酸(psyllic acid)、テトラトリアコンタン酸又はゲダ酸、ペンタトリアコンタン酸又はセロプラスチン酸、及び、16乃至36個の炭素を含むものを含めて、2,2−ジアルキルエタン酸として特徴付けられるゲルベ酸、次式
【化2】

のPRIPOL(登録商標)1009である。
【0022】
カルボン酸を、UV硬化性部分を有するアルコールと反応させて、反応性エステルを形成することができ、このアルコールは、2−アリルオキシエタノール
【化3】

SR495B(登録商標)
【化4】

CD572(登録商標)(R=H、n=10)及びSR604(R=Me、n=4)を含む。
【0023】
随意の硬化性ワックスは、インクの重量の1乃至25%でインクに含まれる。
硬化性モノマー又はプレポリマーと硬化性ワックスとを合わせて、インクの重量の50%乃至80%を形成することができる。
【0024】
特許文献1に記載されている次式のゲル化剤のような、いずれかの適切なゲル化剤を用いることができる。
【化5】

式中、R1
(i)1乃至12炭素原子を有するアルキレン基(アルキレン基は二価の脂肪族基又はアルキル基として定義され、直鎖及び分岐鎖、飽和及び不飽和、環状及び非環状、並びに置換及び非置換アルキレン基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素のようなヘテロ原子がアルキレン基の中に存在することができる)、
(ii)5乃至14炭素原子を有するアリーレン基(アリーレン基は二価の芳香族基又はアリール基として定義され、置換及び非置換アリーレン基を含み、ヘテロ原子がアリーレン基の中に存在することができる)、
(iii)6乃至32炭素原子を有するアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、二価のアリールアルキル基として定義され、置換及び非置換アリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、並びに環状又は非環状であることができ、ヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のどちらにも存在することができる)、又は
(iv)6乃至32炭素原子を有するアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は二価のアルキルアリール基として定義され、置換及び非置換アルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、並びに環状又は非環状であることができ、ヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアリール又はアルキル部分のどちらにも存在することができ)であって、置換されたアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、及びアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、ウレア基であることができ、二又はそれ以上の置換基が一緒になって環を形成することができ、
【0025】
2及びR2’は、それぞれ他方と独立して、
(i)1乃至54炭素原子を有し、ヘテロ原子が中に存在することができるアルキレン基、
(ii)5乃至14炭素原子を有し、ヘテロ原子が中に存在することができるアリーレン基、
(iii)6乃至32炭素原子を有し、ヘテロ原子がアリール部分又はアルキル部分のいずれの中にも存在することができる、アリールアルキレン基、又は
(iv)6乃至32炭素原子を有し、ヘテロ原子がアリール部分又はアルキル部分のどちらにも存在することができるアルキルアリーレン基であって、置換されたアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、及びアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナト基、ウレタン基、ウレア基であることができ、二又はそれ以上の置換基が一緒になって環を形成することができ、
【0026】
3及びR3’は、それぞれ他方と独立して、
(a)光開始基、例えば、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される次式の基
【化6】

、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される次式の基
【化7】

、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される次式の基
【化8】

、N,N−ジメチルエタノールアミン又はN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される次式の基
【化9】

、又は
(b)以下の基、すなわち
(i)2乃至100炭素原子を有するアルキル基(直鎖及び分岐鎖、飽和及び不飽和、環状及び非環状、並びに置換及び非置換アルキル基を含み、ヘテロ原子がアルキル基の中に存在することができる)、
(ii)5乃至100炭素原子を有するアリール基(置換及び非置換アリール基を含み、ヘテロ原子がアリール基の中に存在することができる)、例えばフェニル、
(iii)6乃至100炭素原子を有するアリールアルキル基(置換及び非置換アリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、及び環状又は非環状であることができ、ヘテロ原子がアリールアルキル基のアリール部分又はアルキル部分のどちらにも存在することができる)、例えばベンジル、又は
(iv)6乃至100炭素原子を有するアルキルアリール基(置換及び非置換アルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、及び環状又は非環状であることができ、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアリール部分又はアルキル部分のどちらにも存在することができる)、例えばトリルであって、置換されたアルキル、アリールアルキル、及びアルキルアリール基上の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、カルボン酸エステル基、カルボン酸基、ウレタン基、ウレア基であることができ、二又はそれ以上の置換基が一緒になって環を形成することができる基、
のうちのいずれかであり、但し、R3及びR3’のうちの少なくとも一つは光開始基であり、
【0027】
X及びX’は、それぞれ他方と独立して、酸素原子又は式−NR4−の基であり、R4は、
(i)水素原子、
(ii)1乃至100炭素原子を有し、直鎖及び分岐鎖、飽和及び不飽和、環状及び非環状、並びに置換及び非置換アルキル基を含み、ヘテロ原子がその中に存在することができる、アルキル基、
(iii)5乃至100炭素原子を有し、置換及び非置換アリール基を含み、ヘテロ原子がその中に存在することができる、アリール基、
(iv)6乃至100炭素原子を有し、置換及び非置換アリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、及び環状又は非環状であることができ、ヘテロ原子がアリールアルキル基のアリール部分又はアルキル部分のどちらにも存在することができる、アリールアルキル基、又は
(v)6乃至100炭素原子を有し、置換及び非置換アルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、及び環状又は非環状であることができ、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアリール部分又はアルキル部分のどちらにも存在することができるアルキルアリール基であり、置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル、及びアルキルアリール基上の置換基は、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、ウレア基であることができ、二以上の置換基が一緒になって環を形成することができる。
【0028】
2及びR2’は同一であってもよく又は異なっていてもよい。一つの実施形態において、R3及びR3’は互いに同一であり、別の実施形態において、R3及びR3’は互いに異なる。
【0029】
一つの実施形態において、R2及びR2’は、それぞれ式−C3456+a−の基であり、かつ不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基であって、aは0乃至12の整数であり、式
【化10】

の異性体を含む。
【0030】
一つの実施形態において、R1はエチレン(−CH2CH2−)基である。
【0031】
一つの実施形態において、R3及びR3’は、いずれも
【化11】

である。
【0032】
一つの実施形態において、化合物は、
次式
【化12】

の化合物であり、式中、−C3456+a−は、不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基を表し、aは整数0乃至12であり、式
【化13】

の異性体を含む。
【0033】
更なる例としては、
【化14】

が挙げられ、式中、−C3456+a−は、不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基を表し、aは0乃至12の整数であり、かつmは整数であり、mが2の場合を含み、式
【化15】

の異性体を含み、
【0034】

【化16】

の化合物が挙げられ、式中、−C3456+a−は不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基を表し、aは0乃至12の整数であり、かつnは整数であり、nが2または5の場合を含み、式
【化17】

の異性体を含み、
【0035】

【化18】

の化合物が挙げられ、式中、−C3456+a−は不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基を表し、aは0乃至12の整数であり、かつpは整数であり、pが2又は3の場合を含み、式
【化19】

の異性体を含み、
【0036】

【化20】

の化合物が挙げられ、式中、−C3456+a−は不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基を表し、aは0乃至12の整数であり、かつqは2又は3のような整数であり、式
【化21】

の異性体を含み、又は、
【0037】

【化22】

の化合物が挙げられ、式中、−C3456+a−は不飽和及び環状基を含むことができる分岐鎖アルキレン基を示し、aは0乃至12であり、かつrは2又は3のような整数であり、式
【化23】


【化24】

の異性体を含む。
【0038】
本明細書中のゲル化剤は、特許文献2に開示される材料を含むことができ、これは、式
【化25】

の化合物を含み、式中、R1及びR1’は、それぞれ、他に独立して、少なくとも1つのエチレン不飽和を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン不飽和を有するアリールアルキル基、又は少なくとも1つのエチレン不飽和を有するアルキルアリール基であり、R2、R2’、及びR3は、それぞれ、他に独立して、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、又はアルキルアリーレン基であり、かつnは繰り返しアミド単位の数を示す整数である。
【0039】
本明細書中に開示されるようなゲル化剤化合物は、特許文献3に記載の方法のような、いずれかの所望の方法で作製することができ、特許文献3は、
【化26】

の化合物を作製するプロセスを記載し、このプロセスは、
(a)式
HOOC−R2−COOH
の二酸を

【化27】

のジアミンと、溶媒の非存在下で反応混合物から水を除去しながら反応させて、酸末端オリゴアミド中間体を得、(b)酸末端オリゴアミド中間体を、式
1−OH
のモノアルコールと、カップリング剤及び触媒の存在下で反応させて、生成物を得ることを含む。
【0040】
随意に、着色剤が、放射線硬化性相変化ゲルインク・マーキング材料中に、任意の所望の量、例えばマーキング材料の重量の0.5乃至75%で含まれる。
染料、顔料、又はその組み合わせを含む、いずれかの適切な着色剤を用いることができる。着色剤としての例として、展色剤中に分散又は溶解することができるいかなる染料又は顔料を挙げることもできる。
【0041】
本明細書における放射線硬化性相変化ゲルインクは、酸化から像を保護するために、及びインク作製プロセスの加熱工程の間の酸化からインク成分を保護するために、抗酸化剤を含むことができる。抗酸化安定剤としては、インク担体の0.01乃至20重量パーセントで存在する、NAUGARD(登録商標)524、NAUGARD(登録商標)635、NAUGARD(登録商標)A、NAUGARD(登録商標)I−403、及びNAUGARD(登録商標)959、IRGANOX(登録商標)1010及びIRGASTAB(登録商標)UV10、GENORAD16並びにGENORAD40を挙げることができる。
【0042】
放射線硬化性相変化ゲルインクは、消泡剤、スリップ剤及び均展剤、顔料分散剤、界面活性剤、及び更なるモノマー又はポリマー材料を含む、添加剤を含むことができる。
【0043】
「硬化性」とは、フリーラジカル経路を含む、及び/又は、重合が放射線感応性光開始剤の使用を通して光開始される、重合を経て硬化することができる材料のことをいう。「放射線硬化性」は、開始剤の存在又は非存在下で光及び熱源を含む放射線源に曝露すると硬化する、全ての形態のことを指す。放射線硬化経路は、200−400nmの波長を有する紫外光又は稀には可視光を用いた、随意に光開始剤及び/又は増感剤の存在下での硬化、電子ビーム照射を用いた、随意に光開始剤の非存在下での硬化、熱硬化を用いた、高温熱開始剤(これは噴射温度において大部分が不活性であり得る)の存在又は非存在下での硬化を含む。
硬化は、インク像を、いずれかの所望の又は効果的な波長、例えば、200ナノメートル乃至480ナノメートルにて0.2乃至30秒間、化学線に曝露することによって行うことができる。
【0044】
「粘度」とは複素粘性率を指し、これは、試料に定常せん断ひずみ又は小振幅の正弦波変形を受けさせることができる機械的レオメータによって得られる典型的な測定値である。このタイプの機器においては、せん断ひずみがオペレータによってモータに適用され、試料の変形(トルク)がトランスデューサによって測定される。そのような計器の例は、Rheometric Fluid Rheometer RFS3又はARES機械式分光計(mechanical spectrometer)である。あるいは、せん断応力を与えて得られたひずみを測定する制御された応力計器を用いることができる。そのような計器の例は大部分の現在のレオメータであり、主な製造者は、Anton Parr GmbH、Bohlin Instruments、ATS Rheosystems及びTA Instrumentsである。そのようなレオメータは、例えば毛細管粘度計のような一過性の測定ではなく、種々のプレート回転周波数ωにおける粘度の周期的測定値を与える。往復運動プレート式レオメータは、応力又は変位に対する同位相(in phase)及び位相ずれ(out of phase)の両方の流体の応答を測定することが可能である。複素粘性率η*は、η*=η’−iη”として定義され、式中、η’=G”/ω、η”=G’/ωであり、iは√−1であり、ここで、G’は貯蔵弾性率であり、かつG”は損失弾性率である。あるいは、毛管粘度又はずり粘度の一過性の測定値のみを計測することができる、Brookfield Engineering Laboratories又はCannon Instrument Companyにより製造されている粘度計のような粘度計を用いることができる。
【0045】
インク組成物は、一般に噴射温度(50℃乃至120℃)において2センチポアズ又は30センチポアズまでの溶融粘度を有する。
【0046】
インクは、40乃至110℃の低温で噴射される。そのような低い噴射温度においては、噴射されたインクとインクが噴射される基材との温度の違いの従来的な使用は、インクにおける迅速な相変化(即ち、液体から固体)を達成するためには有効でないことがある。従って、ゲル化剤は、基材上に噴射されたインクにおける迅速な粘度の増大を達成するために用いることができる。噴射されたインク小滴は、インクが液体状態からゲル状態(又は半固体状態)へと著しく粘度変化する相変化転移の作用を通じて、そのインクのインク噴射温度よりも低い温度に維持された受容基材上の位置に固定されることができる。
【0047】
インクがゲル状態を形成する温度は、インクの噴射温度を下回るいずれの温度とすることもでき、例えば、インクの噴射温度よりも5℃又はそれよりもっと低い温度とすることができる。ゲル状態は、少なくとも25℃又は高くとも100℃の温度で形成することができる。インク粘度の迅速かつ大幅な増大は、インクが液体状態である噴射温度からインクがゲル状態であるゲル温度まで冷却することで生じる。粘度の増大は、一実施形態において、少なくとも、粘度における102.5倍の増大である。
【0048】
紫外線硬化性相変化マーキング材料は、例えば、インク成分を一緒に混合し、その後80℃乃至120℃まで加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌し、その後インクを周囲温度(20℃乃至25℃)まで冷却することができる方法のような、いずれかの適切な方法により作製することができる。インクは、周囲温度においてゲルである。
【0049】
基材に紫外線硬化性相変化インク・マーキング材料を印刷し、硬化させてデジタル・ダムのパターンを得た後、ダムを導電性材料で充填し、導電性材料を基材上でアニールして電子素子構造体を形成する。随意に、デジタル・ダムが除去される。
【0050】
上にある導電性インクの別の層のアニールを可能にするために、デジタル・ダムの一部を保持することが所望されることがある。この場合、デジタル・ダムの区域は絶縁体として作用し、下にある導電性トレースとの短絡を作り出すことなく導電性オーバーパスを形成することを可能とする。これは、RFIDタグのためのキャパシタ層を作成するために特に有用である。放射線硬化性相変化ゲルインクは、絶縁層を作るために導電性インクの流れを「形づくる」ように働くことができる地形的な「山」及び「谷」を備えるように印刷することができる。図5Aから5Bは、デジタル・ダムが絶縁層として働く実施形態を示す一連のプレートを示す。図5Aにおいて、チャネルは、紫外線硬化性ゲル相変化インクダム(上のプレート)を所望のパターンで堆積し、その後、硬化させる(下のプレート)によって作成される。次に、図5Bの上のプレート及び下のプレートでそれぞれ、紫外線硬化性ゲル相変化インクダムによって作られたダムの中に導電性インクを堆積させ、アニールする。それに続く紫外線硬化性相変化ゲルインクの単層(又は複数の層)を図5Cの上のプレートに示されるように堆積させて、導電性インクを所望の通り流すための、ホール又はビアを有するダム・オーバーレイ、及び輪郭付けされたウェルを作成する。次いで、ダム・オーバーレイの紫外硬化性相変化ゲルインクを、図5Cの下のプレートに示されるように硬化する。次いで、導電性インクが図5D(上のプレート)で堆積され、図5D(下のプレート)でアニールされ、このプロセスを更なる回路を作成するために所望に応じて繰り返すことができる。
【0051】
導電性材料は、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及び鉛、ナノ粒子インク材料を含むいずれかの適切な物質を含むことができ、例えば、ナノ粒子組成物は、例えば15マイクロΩcm未満、例えば10マイクロΩcm、又は5マイクロΩcm未満の低いバルク抵抗を示す金属を含む。ナノ粒子インク材料に用いられる金属の限定されない例としては、遷移金属並びに典型金属、例えば、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、及び鉛が挙げられる。導電性材料は、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、銅、コバルト、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、若しくは鉛を含むナノ粒子インク、又は特許文献4に開示の金属ナノ粒子組成物を含むことができる。導電性材料は、例えば特許文献5に記載のような、コアシェル構造を有する金属ナノ粒子を含むことができる。
【0052】
図1は、導電性構造体をその上に有する基材102を作成するためのシステム100を示す。インクジェット・プリンタのような紫外硬化性相変化マーキング材料源104が、充填可能チャネル又はダムのパターンを基材102上に印刷するために設けられる。
【0053】
普通紙、罫線ノート紙、ボンド紙、シリカコート紙、光沢コート紙、透明材料、布地、織物製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属のような無機基材、ガラス、及び木、並びに、自立式の物体のための除去可能な支持体の場合にはワックス又は塩のような溶融可能又は可溶性の基材を含めて、いずれかの適切な基材を用いることができる。
【0054】
デジタル・ダムをパターン形成するために、立体プリンタ(solid object printer)のような三次元物体を作製するのに適したシステムを含むいずれかの所望の印刷システムを用いることができる。プリンタは、熱インクジェット・プリンタ、圧電インクジェット・プリンタ、超音波インクジェット・プリンタ、熱転写プリンタ、グラビア・プリンタ、静電複写印刷法、特に圧電インクジェット印刷装置を含むことができる。
【0055】
実施形態において、特許文献6に記載のプリンタが用いられる。ここに記載のインクジェット印刷装置は、少なくともインクジェット印字ヘッドと、インクジェット印字トヘッドからそこに向けてインクが噴射される印刷領域面とを含み、インクジェット印字ヘッドと印刷領域面との間の高さの距離を調節することができる。ここで、インクジェット印字ヘッドは、インクジェット印字ヘッドが通常の高さの印刷のための第一の位置から第一の高さ距離よりも大きい第二の高さ距離まで移動することができるように、印刷領域面に対する間隔が調節可能である。第二の高さ距離は固定されたものではなく、所与の印刷のために必要に応じて変更することができる。さらに、第二の高さ距離はそれ自体を、必要に応じて印刷の間に変化させることができる。像がインクジェット印字ヘッドによってビルドアップされるにつれて、第一の位置から第二の位置へと高さ距離を調節すること、そしてその後、像がビルドアップされ続けるにつれて、インクジェット印字ヘッドを第二の位置から、印刷領域面からの間隔がさらになお増大した第三の位置へと調節し、物体のビルドアップが完了するまで必要に応じて以下同様にすることが望ましい場合がある。
【0056】
本明細書におけるシステム及び方法は、チャネル内に導電性インクの厚い導電性ラインを作製するためのデジタル・ダムを作成するための、紫外硬化性相変化マーキング材料の使用を含む。実施形態において、プリンタ104は、x、y、z可動基材ステージを含む。三次元印刷において、印字ヘッド又はターゲットステージは、x、y、及びzの三次元で可動であり、任意の所望の大きさ及び構成のパターンの作製が可能となる。チャネルパターンをビルドアップする際に、インクの連続層を堆積させて、パターンが所望の印刷高さ及び幾何学的形状を有するようにすることによってチャネルを作製するために、多重パスの印字ヘッドを用いることができる。
【0057】
紫外硬化性相変化マーキング材料を印刷して、1乃至50マイクロメートルのチャネル深さを有する充填可能チャネルのパターンを形成する。充填可能チャネルのパターンは、1乃至5の印刷パスを用いて作成される。
1つ又は複数のインクジェット印字ヘッドのコンピュータ制御を利用して、所望の印刷高さ及び全体としての幾何学的形状を有するパターンを得るように、適切な量及び/又は層のインクを所望のパターンで堆積させる。
【0058】
印刷された基材をUV硬化性の光に曝露することによって印刷された基材を硬化するために、硬化装置106が使用される。いずれかの適切な硬化装置、例えば、「D」電球を使用するUV Fusion Light Hammer 6紫外灯システムを装備したUV Fusion LC−6Bベンチトップコンベヤを用いることができる。
【0059】
チャネルは、パターン形成された基材を導電性材料中に浸漬するか又は導電性材料を印刷することによる方法といった、いずれかの適切な方法を用いて導電性材料で充填される。導電性インクは、単一印刷パス又は多重印刷パスを用いて導電性インクを印刷することにより堆積される。図3において、導電性インク源108は、充填可能チャネル内に導電性材料を堆積させる。導電性インク源は、プリンタ又はドクターブレード若しくはワイパーといったチャネル内に導電性材料を堆積させるのに適したいずれかの他の装置を含むことができる。導電性インクはまた、分離した印刷操作で堆積させることもでき、又は流し塗機を用いるようなアナログ・プロセスによって堆積させることもできる。
【0060】
パターン形成された導電性構造体116を有する基材を作成するために堆積された導電性インクをアニールするために、アニーリング装置110を使用することができる。ホットプレート又はオーブンのようないずれかの適切なアニーリング装置を用いることができる。
【0061】
紫外硬化性相変化マーキング材料は、いずれかの適切な装置又は方法により除去することができる。例えば、オーブン112を用いて、作製された基材116から紫外硬化性相変化マーキング材料を焼き切ることができ、又は洗浄ステーション114を用いて、導電性マーキング材料に対して不活性な溶媒洗浄を用いて紫外硬化性相変化マーキング材料を洗い流すことができる。
【0062】
図4は本発明の方法を示す流れ図であり、基材200に、紫外硬化性ゲル化剤相変化マーキング材料を印刷することによって形成される充填可能チャネル204のパターン202を印刷し、印刷された基材200を導電性インク中に浸漬して充填されたチャネル206を得、ブロック208において導電性インクをアニールし、ブロック210において紫外硬化性相変化マーキング材料が除去される。
【実施例1】
【0063】
市販の固体インクを用いた対照実験として、固体インクダムを、112℃及び24kHzにて噴射するPhaser(登録商標)8400固体インクプリンタを用いて、Xerox Durapaper(登録商標)用紙上に固体黒色インク(Phaser(登録商標)8860黒色インク)をパターン状に噴射することにより作製した。図6は、印刷されたダムの顕微鏡写真である。銅ナノ粒子インクを、マイクロピペットを用いて単一パスでダム内に分注した。銅ナノ粒子インクをホットプレート(Super−Nuova Digital hotplate)上で150℃で15分間アニールして、Omega880手持ち式デジタル・マルチメータを用いて測定して10オームの抵抗を有する導電構造体を得た。図7は、アニールされたインクの顕微鏡写真である。
【実施例2】
【0064】
青色(シアン)の紫外硬化性相変化ゲル化剤インクAを、7.5重量パーセントの特許文献7の実施例VIIIに記載の硬化性アミドゲル化剤、5重量パーセントの特許文献8に記載のように作製されたUnilin 350(登録商標)アクリレートワックス、5重量パーセントの五官能性アクリレートモノマー(SR399LV(登録商標)ペンタアクリル酸ジペンタエリスリトール)、52.8重量パーセントの二官能性アクリレートモノマー(ジアクリル酸プロポキシ化ネオペンチルグリコールSR9003(登録商標))、3重量パーセントのIRGACURE(登録商標)379光開始剤、1重量パーセントのIRGACURE(登録商標)819光開始剤、3.5重量パーセントのIRGACURE(登録商標)127光開始剤、2重量パーセントのDAROCUR(登録商標)ITX光開始剤、0.2重量パーセントのUV安定剤(IRGASTAB(登録商標)UV10)、及び20重量パーセントのシアン顔料分散体(15重量パーセントのシアン顔料/SR9003(登録商標)を含む分散体)を含むよう作製する。成分の全てを一緒に90℃で1時間撹拌する。
【0065】
紫外硬化性シアンゲル化剤インクAを、改造されたPhaser(登録商標)8400プリンタのドラムにテープで止めた(taped)Xerox Durapaper(登録商標)上に温度85℃及び噴射周波数24kHzにてパターン状に噴射することによりUV硬化性インクダムを作製する。7パス後の最終的なダムの厚さは、おおよそ70マイクロメーターである。Durapaper(登録商標)をドラムから取り外し、印刷されたダムを、600W水銀D電球を備えたFusions UV Lighthammer(登録商標)に10fpmのコンベヤベルト速度で通すことにより硬化させる。次に、可溶性銀前駆体インク(Inktec(登録商標)IJP−010)を、マイクロピペットを用いてダムに付与する。毛管作用により、インクはダムのチャネル内に引き込まれる。過剰のインクを拭き取り、インクが入ったダムを120℃で15分間加熱してインクをアニールし、連続的な導電性トレースを形成する。Keithley236電源測定ユニット・デジタル・マルチメータに接続されたC4S4点プローブ・ヘッド(Cascade Microtech Inc.製)を装着したCPS抵抗試験器具(Resistivity Test Fixture)を用いて測定した導電性領域の計測シート抵抗は、32.3オーム/sqである。
【実施例3】
【0066】
透明な紫外硬化性相変化ゲル化剤インク組成物Bを、以下のように本明細書の開示に従って作製する。紫外硬化性相変化ゲル化剤インクを、7.5重量パーセントの特許文献7の実施例VIIIに記載の硬化性アミドゲル化剤、5重量パーセントの特許文献8に記載のように作製されたUnilin350(登録商標)アクリレートワックス、5重量パーセントの五官能性アクリレートモノマー(SR399LV(登録商標)ペンタアクリル酸ジペンタエリスリトール)、77.8重量パーセントの二官能性アクリレートモノマー(ジアクリル酸プロポキシ化ネオペンチルグリコールSR9003(登録商標))、1重量パーセントのIRGACURE(登録商標)819光開始剤、3.5重量パーセントのIRGACURE(登録商標)127光開始剤、及び0.2重量パーセントUV安定剤(IRGASTAB(登録商標)UV10)を含むよう作製する。成分の全てを一緒に90℃で1時間撹拌する。
【0067】
紫外硬化性透明ゲルインクBを、改造されたPhaser(登録商標)8400プリンタのドラムにテープで止めたXerox Durapaper(登録商標)上に温度85℃及び噴射周波数24kHzにてパターン状に噴射することにより紫外硬化性インクダムを作製する。7パス後の最終的なダムの厚さは、おおよそ70マイクロメーターである。Durapaper(登録商標)をドラムから取り外し、印刷されたダムを、600W水銀D電球を備えたFusions UV Lighthammer(登録商標)に10fpmのコンベアベルト速度で通すことによって硬化させる。次に、可溶性銀前駆体インク(Inktec(登録商標)IJP−010)を、マイクロピペットを用いてダムに付与する。毛管作用により、インクはダムのチャネル内に引き込まれる。過剰なインクを拭き取り、インクが入ったダムを120℃で15分間加熱してインクをアニールし、連続的な導電性トレースを形成する。Keithley 236電源測定ユニット・デジタル・マルチメータに接続されたC4S4点プローブ・ヘッド(Cascade Microtech Inc.)を装着したCPS抵抗試験器具を用いて測定した導電性領域の計測シート抵抗は、30.1オーム/sqである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電性構造体を作製する方法であって、
基材の表面上に、充填可能チャネルのパターン状に放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を印刷し、
前記放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を硬化し、
前記充填可能チャネル内に導電性材料を堆積させ、
前記導電性材料をアニールし、
随意に、前記放射線硬化性相変化ゲルマーキング材料を除去する
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記導電性構造体が、無線識別タグを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記紫外硬化性相変化マーキング材料が、随意の着色剤、並びに放射線硬化性モノマー又はプレポリマー、光開始剤、反応性ワックス及びゲル化剤を含む相変化インク展色剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基材上に導電性構造体を作製するシステムであって、
基材の表面上に、硬化性相変化ゲルマーキング材料を充填可能チャネルを作り出すパターン状に印刷するための硬化性相変化ゲルマーキング材料源と、
前記硬化性相変化ゲルマスキング材料を硬化するための硬化装置と、
前記充填可能チャネル内に導電性材料を堆積するための導電性材料源と、
前記導電性材料をアニールするための熱源と、
随意に、前記硬化性相変化ゲルマーキング材料を除去するための装置と
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
前記硬化性相変化ゲルマーキング材料が、電子線放射線硬化性マーキング材料、熱硬化性マーキング材料、又は紫外硬化性相変化ゲル化剤インクを含むことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記導電性構造部が、無線識別タグを含むことを特徴とする、請求項4のシステム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−9743(P2011−9743A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136835(P2010−136835)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】