説明

放熱印刷回路基板及びその製造方法

【課題】放熱印刷回路基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】放熱印刷回路基板の製造方法は、(a)絶縁層211に銅箔212が積層された銅張積層板21を用意する段階と、(b)前記銅箔の表面に炭素ナノチューブを主成分とするペーストでコーティング層22を形成する段階と、(c)前記コーティング層22の一部及び前記銅箔212の一部を除去して回路パターン26を形成する段階と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷回路基板の内部熱を効果的に放熱できる放熱印刷回路基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子製品の薄型化及び機能化のために、印刷回路基板にはさらに多数の受動素子、及び、高密度の多層のパッケージが実装されており、このような趨勢は今後も引き続き発展する見込みである。
【0003】
基本的に印刷回路基板は、印刷回路の原板に電気配線の回路設計に応じて各種電子部品を連結したり、部品を支持したりする役割を果たしている。しかし、実装される受動部品及びパッケージングの数が増加するほど部品の電力消耗が多くなり、熱が激しく発生して、この問題は製品の信頼性の側面、消費者の製品選択の優先性の側面において重要な判断基準になっている。
【0004】
このようなことから、高機能化から発生される熱を効果的に放熱及び放出することができる機能性の高い印刷回路基板が求められるようになった。
【0005】
放熱印刷回路基板は、基板内部に挿入された放熱金属の一部を空気中に露出させることにより、基板の温度を低めたり高密度に実装されている部分から発生された熱を他の部分に広めて熱放散し印刷回路基板の温度を全体的に低める役割をする機能性基板である。
【0006】
放熱印刷回路基板に用いられる放熱金属としては、ステンレス、アルミニウム、銅などがある。アルミニウムは銅に比べて熱伝導度はよくないが、価格的な利点があるため、広く用いられている。しかし、銅とは異なって、酸性及び塩基性の溶液両方とも反応するので、既存工程及び装備を用いるには製造工程上に問題があった。結果的には、アルミニウムを放熱金属として用いるためには、アルミニウム金属専用のエッチング、酸洗及びデスミア溶液、及び装備が必要であった。
【0007】
また、既存の放熱印刷回路基板の構造によれば、熱が発生する部分と放熱金属板とを接続する際に、プリプレグ、電気伝導性接着剤、及び、絶縁性樹脂などを用いて接合或いは結合している。しかし、このような接合方法に用いられた材料の基本構成は、ポリマー(polymer)成分であったため、放熱金属板に熱を効果的に伝達することは困難であった。例えば、エポキシの熱伝導率は0.17〜0.23W/mkである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした従来技術の問題点に鑑み、本発明は、既存アルミニウムの使用を代替しながらも放熱効果が優れた放熱印刷回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、(a)絶縁層に銅箔が積層されている銅張積層板を用意する段階と、(b)前記銅箔の表面に炭素ナノチューブを主成分とするペーストでコーティング層を形成する段階と、(c)前記コーティング層の一部及び前記銅箔の一部を除去して回路パターンを形成する段階と、を含む放熱印刷回路基板の製造方法が提供される。
【0010】
前記(b)段階と前記(c)段階との間に、(b1)前記コーティング層を乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0011】
また、前記(b1)段階と(c)段階との間に、(b2)前記銅張積層板と前記コーティング層とを穿孔して貫通孔を形成する段階と、(b3)前記貫通孔の内部にメッキ層を形成する段階と、をさらに含み、また、前記(c)段階は、前記メッキ層を一部除去する段階をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、(d)第1銅箔に炭素ナノチューブを主成分とするペーストで第1コーティング層を形成する段階と、(e)前記第1コーティング層の表面に炭素ナノチューブを主成分とするバンプを形成する段階と、(f)前記バンプに貫通されるように絶縁層を積層し、前記絶縁層に第2銅箔を積層する段階と、(g)前記第1銅箔の一部、前記第1コーティング層の一部、及び前記第2銅箔の一部を除去して回路パターンを形成する段階と、を含む放熱印刷回路基板の製造方法が提供される。
【0013】
前記(d)段階と前記(e)段階との間に、(d1)前記第1コーティング層を乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0014】
また、前記第2銅箔には、炭素ナノチューブを主成分とする第2コーティング層が形成されており、前記(f)段階は、第2コーティング層が前記絶縁層を向くように前記第2銅箔を前記絶縁層に積層し、前記(g)段階は、前記第2コーティング層を一部除去する段階をさらに行って、前記回路パターンを形成することができる。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、絶縁層に回路パターンが交互に積層された多層の放熱印刷回路基板において、前記回路パターンは、銅箔パターンと、前記銅箔パターンの表面に積層された炭素ナノチューブとを主成分とするコーティング層を備えることを特徴とする放熱印刷回路基板が提供される。
【0016】
前記絶縁層には炭素ナノチューブを含んだバンプが貫通されて、重なり方向に隣り合う回路パターンと接続することができる。
【発明の効果】
【0017】
前記の課題を解決するために、炭素ナノチューブを主成分とするコーティング層を含んで回路パターンを形成することにより、印刷回路基板の内部熱を効果的に外部に放熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付された図面に基づいて本発明に係る放熱印刷回路基板及びその製造方法の実施例をより詳しく説明し、添付図面を参照して説明するに当たって、図面符号にかかわらず同一かつ対応する構成要素は同一の参照番号を付し、これに対する重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例に係る放熱印刷回路基板の製造方法のフローチャートであり、図2は本発明の第1実施例に係る放熱印刷回路基板の製造工程図である。図2を参照すると、放熱印刷回路基板20、銅張積層板21、絶縁層211、銅箔212、コーティング層22、メッキ層23、貫通孔24、ドライフィルム25、回路パターン26が示されている。
【0020】
段階S11で、図2の(a)に示すように、絶縁層211の両面にそれぞれ銅箔212が積層された銅張積層板を用意する。絶縁層211としてはプリプレグ(prepreg)が一般的に使用される。銅張積層板21は一般的に使用される電気材料である。
【0021】
段階S12で、図2の(b)に示すように、銅箔の表面に炭素ナノチューブを主成分とするペーストでコーティング層を形成する。
【0022】
本段階は、炭素ナノチューブを主成分とするペーストを用いて各銅箔212表面にコーティング層22を形成する段階である。
【0023】
炭素ナノチューブをペーストにしてコーティング層22を形成すれば、熱伝導効果が優れる。炭素ナノチューブをペーストに製造する方法は多様である。ペーストに用いられる炭素ナノチューブは、単一壁(single wall)、多重壁(multi wall)の炭素ナノチューブを全て使用可能である。
【0024】
炭素ナノチューブペーストの製造方法としては、銀(Ag)ペースト完成品に炭素ナノチューブを適切に分散させる方法がある。
【0025】
他の炭素ナノチューブペーストの製造方法は、銀(Ag)、バインダ、炭素ナノチューブを適切に混合することで、製造可能である。
【0026】
以上の炭素ナノチューブペーストを製造する工程及び製品は、従来技術より充分に製造することができ、また市販のものから得ることができるため、これに対する詳細な説明は省略する。
【0027】
段階S12でのコーティング層22は、前述した炭素ナノチューブペーストをスピンコーティング処理して形成する。スピン(spin)コーティングは同一厚みに大型コーティング層を形成するのに適している。
【0028】
一方、コーティング層22は乾燥する段階をさらに行うことができる。乾燥は約150℃〜300℃の間で行われるのがよい。
【0029】
段階S13は、コーティング層の一部及び前記銅箔の一部を除去して回路パターンを形成する段階を含む放熱印刷回路基板の製造方法である。
【0030】
段階S13の前に、コーティング層22と銅張積層板21とを穿孔して貫通孔24を形成することができる。このような貫通孔24は、内部にメッキ層23を形成することで、上下の回路パターンを接続させるビアの役割をすることができる。このような貫通孔24は機械的なドリリングで形成することができ、メッキ層23は無電解メッキ法によりシード層を形成した後に、シード層の上面に電解メッキ法を用いて形成することができる。このような貫通孔24のメッキ工程を経ると、図2の(c)のような形態になる。
【0031】
以後、図2の(d)のように、ドライフィルム25をメッキ層23の表面に積層し、回路パターン26が形成される部分を考慮して、ドライフィルム25を露光及び現像工程を経て除去する。
【0032】
ドライフィルム25が除去された後、露出されたメッキ層23をエッチング液で処理すれば、金属(通常銅)からなったメッキ層23が除去され、コーティング層22の内部にエッチング液が浸透してその下部の銅箔212が除去される。結果的に、図2の(e)のように、回路パターン26が形成された放熱印刷回路基板20を作製することができる。
【0033】
このような放熱印刷回路基板20には、図2の(e)のように、回路パターン26の一部として炭素ナノチューブを主成分とするコーティング層22が塗布されている。炭素ナノチューブは、熱伝導率が6000W/mkであって、放熱材料として優れる。結果的に、炭素ナノチューブを主成分とするコーティング層22が回路パターン26の一部を形成することにより、放熱効果が顕著になる。
【0034】
図3は、本発明の第2実施例に係る放熱印刷回路基板製造のフローチャートであり、図4は、本発明の第2実施例に係る放熱印刷回路基板の製造工程図である。図4を参照すると、第1銅箔41、第2銅箔42、第1コーティング層43、第2コーティング層44、バンプ45、絶縁層46、回路パターン47が示されている。
【0035】
段階S31で、図4の(a)及び(b)に示すように、第1銅箔41に炭素ナノチューブを主成分とするペーストで第1コーティング層43を形成する。炭素ナノチューブを主成分とするペーストの製造方法は、前述した第1実施例で説明したので、詳しい説明は省略する。第1コーティング層43は乾燥段階をさらに行うことができる。
【0036】
一方、図4の(a’)及び(b’)に示すように、第1銅箔41に第1コーティング層43を積層する方法と同じく、第2銅箔42に第2コーティング層44を形成することができる。
【0037】
段階S32で、図4の(c)に示すように、第1コーティング層の表面に炭素ナノチューブを主成分とするバンプを形成する。段階S31の工程から、第1銅箔41の表面には第1コーティング層43が積層されている。このような第1コーティング層43に炭素ナノチューブを主成分とするペーストでバンプ45を形成することができる。バンプ45は硬化工程を経て後追工程で絶縁層46を貫通する程度の硬度を維持する。バンプ45を形成する際に上部を尖り状或いは尖鋭な棘状にすれば、後追工程で絶縁層46を積層するのに適する。バンプ45は第1コーティング層43にだけ形成し、第2コーティング層44には形成しない。
【0038】
段階S33で、図4の(d)に示すように、バンプ45に貫通されるように絶縁層46を積層し、絶縁層46に第2銅箔を積層する。このとき、バンプ45が形成されている側の方向に絶縁層46を積層する。絶縁層46はバンプ45より硬度が低い方がよい。そこで、ガラス纎維が少なく含まれたレジンを主成分とすることがよい。また、絶縁層46は半硬化状態である方がよい。絶縁層46には第2銅箔42を積層する。このとき、本実施例のように、第2銅箔42に第2コーティング層44が積層されている場合、第2コーティング層44をバンプ45の側の方向にして第2銅箔42を積層することがよい。このように積層すれば、バンプ45、第1コーティング層43、及び、第2コーティング層44が同じ炭素ナノチューブ材質からなり、直接的に連結される。
【0039】
一方、本実施例では、第2銅箔42に炭素ナノチューブを主成分とする第2コーティング層44を形成したが、第2コーティング層44が積層されていない第2銅箔42を絶縁層46の上面に積層することもできる。
【0040】
段階S34で、第1銅箔の一部、第1コーティング層の一部、及び、前記第2銅箔の一部を除去して回路パターンを形成する。第2銅箔42に第2コーティング層44が積層されている場合には、第2コーティング層44の一部も除去される。
【0041】
図4の(d)に示すように、第1銅箔41と第2銅箔42との表面にそれぞれドライフィルム(図示せず)を積層する。回路パターン47が形成される位置を考慮してドライフィルムの一部を露光及び現像工程を経て除去する。ドライフィルムを除去した後、露出された第1銅箔41及び第2銅箔42をエッチング液で除去する。第1銅箔41及び第2銅箔42の一部が除去されて露出する第1コーティング層43及び第2コーティング層44も除去して、図4の(e)に示すような放熱印刷回路基板40を完成する。放熱印刷回路基板40の回路パターン47は、熱伝導率に優れたカーボンナノチューブを一部含んでいるので放熱効果が顕著になる。
【0042】
図5は、本発明の第3実施例に係る多層放熱印刷回路基板の断面図である。図5を参照すると、放熱印刷回路基板50、バンプ55、絶縁層56、回路パターン57、銅箔パターン57a、コーティング層57bが示されている。
【0043】
本実施例の放熱印刷回路基板50は、回路パターン57と絶縁層56とが交互に積層された多層基板である。隣り合った回路パターン57を連結するためにバンプ55が絶縁層56を貫通して形成されている。バンプ55は炭素ナノチューブを主成分とするので熱伝導性に優れる。
【0044】
また、回路パターン57は、銅箔パターン57aにコーティング層57bが積層された形態である。コーティング層57bも炭素ナノチューブペーストをスピンコーティングして硬化した形態である。
【0045】
このような、炭素ナノチューブペーストの製法については、前述の第1実施例で説明した通りである。
【0046】
このように、本実施例の放熱印刷回路基板50は、回路パターン57の一部として炭素ナノチューブを主成分とするコーティング層57bを含んでいるので、熱伝導性に優れる。
【0047】
前記では本発明の好ましい実施例について説明したが、当該技術分野での通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想及び領域から脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更することができることを理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施例に係る放熱印刷回路基板の製造方法のフローチャートである。
【図2】本発明の第1実施例に係る放熱印刷回路基板の製造工程図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る放熱印刷回路基板の製造フローチャートである。
【図4】本発明の第2実施例に係る放熱印刷回路基板の製造工程図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る多層の放熱印刷回路基板の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
20 放熱印刷回路基板
21 銅張積層板
211 絶縁層
212 銅箔
22 コーティング層
23 メッキ層
24 貫通孔
25 ドライフィルム
26 回路パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)絶縁層に銅箔が積層された銅張積層板を用意する段階と、
(b)前記銅箔の表面に炭素ナノチューブを主成分とするペーストでコーティング層を形成する段階と、
(c)前記コーティング層の一部及び前記銅箔の一部を除去して回路パターンを形成する段階と、
を含む放熱印刷回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記(b)段階と前記(c)段階との間に、
(b1)前記コーティング層を乾燥する段階をさらに含む請求項1に記載の放熱印刷回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記(b1)段階と(c)段階との間に、
(b2)前記銅張積層板と前記コーティング層とを穿孔して貫通孔を形成する段階と、
(b3)前記貫通孔の内部にメッキ層を形成する段階と、をさらに含み、
前記(c)段階は、
前記メッキ層を一部除去する段階をさらに含む請求項2に記載の放熱印刷回路基板の製造方法。
【請求項4】
(d)第1銅箔に炭素ナノチューブを主成分とするペーストで第1コーティング層を形成する段階と、
(e)前記第1コーティング層の表面に炭素ナノチューブを主成分とするバンプを形成する段階と、
(f)前記バンプに貫通されるように絶縁層を積層し、前記絶縁層に第2銅箔を積層する段階と、
(g)前記第1銅箔の一部、前記第1コーティング層の一部、及び、前記第2銅箔の一部を除去して回路パターンを形成する段階と、
を含む放熱印刷回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記(d)段階と前記(e)段階との間に、
(d1)前記第1コーティング層を乾燥する段階をさらに含む請求項4に記載の放熱印刷回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記第2銅箔には炭素ナノチューブを主成分とする第2コーティング層が形成されており、
前記(f)段階は、第2コーティング層が前記絶縁層を向くように前記第2銅箔を前記絶縁層に積層し、
前記(g)段階は、前記第2コーティング層を一部除去する段階をさらに行って、前記回路パターンを形成することを特徴とする請求項4に記載の放熱印刷回路基板の製造方法。
【請求項7】
絶縁層に回路パターンが交互に積層された多層の放熱印刷回路基板において、
前記回路パターンが、銅箔パターンと、前記銅箔パターンの表面に積層された炭素ナノチューブを主成分とするコーティング層と、を備えることを特徴とする放熱印刷回路基板。
【請求項8】
前記絶縁層に炭素ナノチューブを含むバンプが貫通されて、隣り合った回路パターンを接続させることを特徴とする請求項7に記載の放熱印刷回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−16795(P2009−16795A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95412(P2008−95412)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】