放熱性基板
【課題】 3次元的に熱伝導性が良く、従来に比べて放熱性を著しく向上させることの可能な放熱性基板を提供する。
【解決手段】 基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシートの他のグラファイトシート2b,2c,2dよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシートが配置される側において、基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にあって基板骨格面11と該基板骨格面11に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aにおいて、基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっている。
【解決手段】 基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシートの他のグラファイトシート2b,2c,2dよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシートが配置される側において、基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にあって基板骨格面11と該基板骨格面11に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aにおいて、基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDやCPUなどの発熱体が搭載される放熱性基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に記載のような、熱伝導性に優れるグラファイトシートをヒートシンクに応用する試みがなされている。
【0003】
図1は特許文献1に記載のヒートシンクを示す図(断面図)である。図1において、符号91はヒートシンク、符号92はフィン部、符号93はヒートシンクベース、符号95は配線基板94上に搭載されたCPUである。ここで、フィン部92は、グラファイトシートと金属薄板とを貼り合わせたものとなっている。すなわち、特許文献1では、グラファイトシートと金属薄板を貼り合わせたものをコルゲート状に形成し、ヒートシンクベース93上に金属薄板部分で接合することによってヒートシンク91を構成する。金属薄板は、フィンの剛性を確保するとともに、ヒートシンクベース93とフィン部92を構成するグラファイトシートに熱を伝える。フィン部92は、金属薄板によって剛性が付与されるのでシート状のグラファイトでの構成が可能で、薄肉化が可能となる。グラファイトは高い熱伝導率を有するので、高い放熱性能を維持したままで、ヒートシンクの軽量化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−099878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図1のヒートシンクでは、基板の厚み方向(基板面の法線方向)Zへの熱伝導は良好なものとなるものの、基板の面方向X,Yへの熱拡散(熱伝導)が少なく、3次元的に熱伝導の良い基板とはなっていないという問題があった。
【0006】
本発明は、3次元的に熱伝導性が良く、従来に比べて放熱性を著しく向上させることの可能な放熱性基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシートが複数個配置され、前記基板骨格面上に配置された前記複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材であり、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の放熱性基板において、前記複数のグラファイトシートは、発熱体を中心として放射状に配置されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の放熱性基板において、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシートが複数個配置され、前記基板骨格面上に配置された前記複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材であり、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっているので、3次元的に熱伝導性が良く、従来に比べて放熱性を著しく向上させることの可能な放熱性基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】特許文献1に記載のヒートシンクを示す図(断面図)である。
【図2】金属材料が充填される前の基板本体の一例を示す図(斜視図)である。
【図3】本発明の放熱性基板の第1の構成例を示す図(透過斜視図)である。
【図4】図3の上下が反対となるように図示した図である。
【図5】図3、図4のグラファイトシートのうちの一部のグラファイトシートの一例を示す図である。
【図6】図4の部分平面図である。
【図7】図6のC−C線における断面図である。
【図8】グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているグラファイトシートの斜視図である。
【図9】図8の分解斜視図である。
【図10】本発明の放熱性基板の第2の構成例を示す図(透過斜視図)である。
【図11】図10のD−D線における断面図である。
【図12】比較例1の構成を示す図(透過斜視図)である。
【図13】図12の部分平面図である。
【図14】図13のC−C線における断面図である。
【図15】実施例、各比較例1、2、3、4のそれぞれにおける温度比較結果を示す図である。
【図16】実施例における温度分布を示す図である。
【図17】比較例1における温度分布を示す図である。
【図18】実施例・比較例2・比較例3における流速分布の斜透視図である。
【図19】比較例2における温度分布を示す図である。
【図20】比較例3における温度分布を示す図である。
【図21】比較例4における温度分布を示す図である。
【図22】比較例4における流速分布の斜透視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
基本的に、本発明では、放熱性の高い(高い熱拡散率を有する)基板を構成するにあたり、高い熱拡散(高い熱伝導率)を有する材料の一つであるグラファイトシートに着目した。そして、本発明では、矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体(LEDやCPUなど)が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシート(実際には、後述のように複数のグラファイトシート)を配置することによって、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)の熱伝導率を向上させるようにしている。
【0014】
さらに、本発明では、基板骨格面上に配置された複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっていることによって、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)に加えて面方向の熱拡散性をも向上させ(すなわち、基板本体に埋設されている複数のグラファイトシートの部分によって、面方向の熱拡散性を向上させ(その結果として、3次元的に熱伝導性が良いものとし))、さらに、フィン部によって、より一層効率の良い放熱を行うようにしている。
【0015】
さらに、本発明では、基板骨格面上に配置された複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているので、フィン部としての剛性(強度)を確保できるようにしている。
【0016】
本発明の構成を詳細に説明する。
【0017】
図2は、金属材料が充填される前の基板本体の一例を示す図(概略斜視図)である。図2において、10は基板本体、11は発熱体1が搭載される基板骨格面、12は基板骨格面11と辺を共有する4つの厚み方向(基板骨格面の法線方向)Zの側面であり、基板本体10は、その外形が基板骨格面11が側面12より大きな面積を有する概略立方体形状のものとなっている。なお、図2では、発熱体1が搭載される側が上面として図示されており、グラファイトシートは、実際には、図4、図7に示すように、基板骨格面11の発熱体1が搭載される側の面とは反対側の面13に接して配置されるようになっている。また、発熱体1は、例えば照明用途等のLED(発光ダイオード)や電子機器用途等のCPUなどであり、基板骨格面11(発熱体1が搭載される側の面)の上層に施されたNi/Auメッキ部分に対して、AuSn共晶はんだや熱伝導接着剤を用いて接合されるようになっている。
【0018】
図3は本発明の放熱性基板の第1の構成例を示す図(透過斜視図)である。なお、図3では、基板本体10が図2と同じ向き(発熱体1が搭載される側が上面となる向き)で図示されている。図4は図3の上下が反対となるように図示した図である。なお、図3、図4では、充填される金属材料については、説明の便宜上、図示を省略している。また、図5は図3、図4のグラファイトシート2のうちの一部のグラファイトシート2aの一例を示す図である。また、図6は図4の部分平面図、図7は図6のC−C線における断面図である。
【0019】
図3、図4の放熱性基板では、図5に示すような矩形状の面を有するグラファイトシート2の一辺21が発熱体1が搭載される基板骨格面11(正確には、基板骨格面11の面13)と接し、前記グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23が基板骨格面11の法線方向Zとなるように、グラファイトシート2が複数個配置されている。なお、図3、図4の例(第1の構成例)では、複数のグラファイトシート2は、発熱体1を中心として円形放射状に配置されている。すなわち、グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23のうち、辺21と辺22との頂点は発熱体搭載位置の近傍に配置され、辺21と辺23との頂点は発熱体搭載位置から放射状外方に位置するように配置されている。
【0020】
また、図3、図4の放熱性基板では、図6、図7に詳細に示すように、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2b,2c,2dよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において、基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にあって基板骨格面11と該基板骨格面11に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aにおいて、基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっている。
【0021】
より具体的には、複数のグラファイトシート2のうちのグラファイトシート2b,2c,2dは、基板骨格面11の法線方向Zにおける長さが例えば基板本体10の側面12の高さZ2と同じものになっており、金属材料31は、例えば、基板本体10の側面12の高さZ2まで充填されている。この場合、複数のグラファイトシート2のうちのグラファイトシート2b,2c,2dは、金属材料31すなわち基板本体10に全て埋設される。なお、金属材料31、並びに、金属材料31を含めた基板本体10の材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0022】
また、本発明において、基板骨格面11上に配置された前記複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっている。図8はグラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているグラファイトシート2aの斜視図、図9は分解斜視図である。図8、図9を参照すると、グラファイトシート2aは、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟んだものとなっている。ここで、金属材料の薄板42は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、金属材料31すなわち基板本体10に埋設される長さZ2の部分(焼結して基板本体10となる部分)を除く長さ(Z1−Z2)の部分は、アルマイト処理(酸化処理)が施され、赤外線(熱)を全反射する鏡面ではないものに加工されている。なお、他のグラファイトシート2b,2c,2dは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっていてもよいが、グラファイト単体のものでも良い。
【0023】
このような構成の放熱性基板では、矩形状の面を有するグラファイトシート2の一辺21が発熱体1が搭載される基板骨格面11(正確には、基板骨格面11の面13)と接し、前記グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23が基板骨格面11の法線方向Zとなるように、グラファイトシート2が複数個配置されているので、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)Zの熱伝導率を向上させることができる。
【0024】
さらに、上記のような構成の放熱性基板では、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2b,2c,2dよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にある直方体範囲に金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっているので、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)Zに加えて面方向X,Yの熱拡散性をも向上させ(すなわち、基板本体10に埋設されている複数のグラファイトシート2の部分によって、面方向X,Yの熱拡散性を向上させ(その結果として、3次元的に熱伝導性が良いものとし))、さらに、フィン部25によって、より一層効率の良い放熱を行うことができる。
【0025】
さらに、上記のような構成の放熱性基板では、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟んだ複合材となっているので、フィン部25としての剛性(強度)を確保することができる。
【0026】
なお、上述した第1の構成例の放熱性基板では、複数のグラファイトシート2は、発熱体1を中心として円形放射状に配置されているが、本発明はこれに限定されない。例えば第2の構成例として、複数のグラファイトシート2を一方向(例えばX方向)に沿って所定の間隔を隔てて平行に配置することも可能である。
【0027】
図10は本発明の放熱性基板の第2の構成例を示す図(透過斜視図)、図11は図10のD−D線における断面図である。なお、図10、図11において、図3、図4と同様の箇所には同じ符号を付している。図10、図11を参照すると、第2の構成例の放熱性基板では、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において、基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にあって基板骨格面11と該基板骨格面11に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aにおいて、基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっている。
【0028】
より具体的には、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eは、基板骨格面11の法線方向Zにおける長さが例えば基板本体10の側面12の高さZ2と同じものになっており、金属材料31は、例えば、基板本体10の側面12の高さZ2まで充填されている。この場合、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eは、金属材料31すなわち基板本体10に全て埋設される。なお、金属材料31、並びに、金属材料31を含めた基板本体10の材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0029】
また、第2の構成例においても、基板骨格面11上に配置された前記複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっている。
【0030】
このように、第2の構成例においても、矩形状の面を有するグラファイトシート2の一辺21が発熱体1が搭載される基板骨格面11(正確には、基板骨格面11の面13)と接し、前記グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23が基板骨格面11の法線方向Zとなるように、グラファイトシート2が複数個配置され、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にある直方体範囲に金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっており、基板骨格面11上に配置された前記複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているので、第1の構成例と同様の効果を得ることができる。
【0031】
ただし、第2の構成例では、複数のグラファイトシート2は、一方向(例えばX方向)に沿って所定の間隔を隔てて互いに平行に配置されているので、第1の構成例のように円形放射状に配置される場合と比べて、後述のように、熱拡散に偏りが生じ(面方向X,Yに均一に熱拡散が生ぜず)、また、第1の構成例のように広範囲に高速度の流れを分布させることができない。従って、最も好ましくは、第1の構成例のように、複数のグラファイトシート2が、円形放射状に配置されるのが良い。すなわち、複数のグラファイトシート2が、円形放射状に配置されることによって、熱拡散に偏りを生じさせず(面方向X,Yに均一に熱拡散が生じ)、広範囲に高速度の流れを分布させることが可能となる。なお、以下では、実施例は第1の構成例に対応するものとし、比較例4は第2の構成例に対応するものとする。
【0032】
次に、本発明の実施例(第1の構成例に対応)をより詳細に説明する。
【0033】
本発明の放熱性基板について、その大きさは面積・厚みを問わず、あらゆるサイズに適応可能である。発熱体1の例として照明用途の高出力LED(チップサイズ1mm角)に適用する放熱性基板を想定し、基板本体10が縦50mm×横50mm×厚さ5mmの板材で、フィン部25の高さ(Z1−Z2)が20mmとなるような放熱性基板を、下記のようにして作製した。
【0034】
本発明におけるグラファイトシート2については、市販されているグラファイトを適宜用いることができるが、熱拡散の向上の観点から、面方向(X,Y方向)の熱伝導率が500W/mK以上のグラファイトを用いることが望ましい。厚み方向(Z方向)の熱伝導率は特に規定しないが、10〜50W/mKが一般的な値である。本実施例では、面方向の熱伝導率が1000W/mK・厚み方向の熱伝導率が50W/mKの、厚さ200μmのグラファイトを用いた。
【0035】
グラファイトシート2aの作製工程、すなわち、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟み込む工程については、加圧加熱プレスなどの方法を用いることができる。また、グラファイトシート2a,2b,2c,2dを基板骨格面11上に立設し、金属材料(金属粉末)31を充填し、金属材料(金属粉末)31をグラファイトシート2a,2b,2c,2dと一緒に焼結させる工程については、プラズマ焼結法などの方法を用いることができる。
【0036】
より具体的に、グラファイトシート2aの作製工程、すなわち、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟み込む工程において、グラファイト41を、縦25mm×横25mm(Z1=25mm)の短冊状に切断し、図9に示すように縦横が同サイズで厚さが200μmのアルミ板42で挟みこんだ。なお、アルミ板42の表面はフィン終端(焼結されて基板本体10の一部となる部分)の縦5mm×横25mm(Z2=5mm)を残してアルマイト処理が施され、熱放射率が約0.95まで高められている。
【0037】
さらに図5に示すように、このグラファイトシート2aを20枚、円形放射状に配列させた。グラファイトシート2aが接する円の中央部は、適宜エポキシ系の接着剤を用いることが出来る。また、外周方向にいくにつれてシート間隔が広がるので、縦5mm(Z2=5mm)で横幅を25mmより狭く切断したグラファイト単体のシートを間に挿入することで、密度を高めることが出来る。本実施例においては、横22mmに切断したグラファイト単体シート2bを20枚、横19mmに切断したグラファイト単体シート2cを40枚、横15mmに切断したグラファイト単体シート2dを80枚、それぞれ用意し、4重円となるように挿入・配置した。
【0038】
焼結後の全体斜視図は図4のようになる。
【0039】
次に、上記実施例を各比較例1、2、3、4と比較する。
【0040】
図12は比較例1の構成を示す図(透過斜視図)である。また、図13は図12の部分平面図、図14は図13のC−C線における断面図である。なお、図12、図13、図14において、図3、図4、図6、図7と同様の箇所には同じ符号を付している。図12、図13、図14を参照すると、比較例1の構成では、図3、図4、図6、図7のグラファイトシート2aに対応するグラファイトシート2fは、他のグラファイトシート2b,2c,2dと同様に、基板骨格面11の法線方向Zにおける長さが例えば基板本体10の側面12の高さZ2と同じものになっている。すなわち、比較例1の構成では、実施例におけるフィン部25は存在しない。また、比較例1の構成では、図3、図4、図6、図7のグラファイトシート2aに対応するグラファイトシート2fは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材としては構成されておらず、他のグラファイトシート2b,2c,2dと同様に、グラファイト単体のものとなっている。
【0041】
より具体的に、比較例1の構成では、縦25mm×横25mmの短冊状であった実施例のグラファイトシート2aに対応するグラファイトシート2fを、縦5mm×横25mmに置き換え(アルミ板による挟みこみも廃止)、他の3種類の大きさのグラファイトシート2b,2c,2dは実施例と同一とした。すなわち、比較例1の構成では、4重円を構成する全てのグラファイトシート2f,2b,2c,2dが焼結工程によって基板本体10中に埋まるようになっている。
【0042】
比較例2は、グラファイトシートの持つ高い熱伝導率による効果を検証するため、図3、図4、図6、図7の実施例の構成において、グラファイトシート2a,2b,2c,2dに対応する部材を全てアルミ材料のものとした。
【0043】
より具体的に、比較例2の構成では、基板本体10は厚さ5mmのアルミの一枚板とし、フィン部25は厚さ600μmのアルミ薄板とした。基板本体10とフィン部25の接合部については、基板本体10に円形放射状にフィン部25の厚さ分の溝を深さ2〜3mm程度で加工し、そこへフィン部25を挿入し、打ち込みによって接合した。
【0044】
比較例3は、金属材料で熱伝導率に優れる銅との比較をするため、比較例2の構成において、フィン部25を厚さ600μmの銅板に置き換えた構成となっている。接合部については比較例2と同様に溝加工と打ち込みで構成した。
【0045】
比較例4は、円形放射状に配置したことの効果を検証するため、実施例と同じ材料を図10に示したように平行に配置した第2の構成例に対応したものである。
【0046】
より具体的に、比較例4の構成では、全体に占めるグラファイトシートの割合がほぼ同一となるように、フィン部25を構成するグラファイトシート2a(グラファイトとアルミ薄板の積層板)は縦25mm×横50mmのものを計16枚、基板本体10中に埋設されるグラファイトシート2eは縦5mm×横50mmのものを計45枚、両者合わせて計61枚用い、8mm間隔で配置した。金属材料31が充填されて成る基板本体10は縦50mm×横50mm×厚さ5mmで実施例と共通しており、3枚おきに間隔32mmでグラファイトシート2aすなわちフィン部25が立設するようになっている。
【0047】
実施例と各比較例1、2、3、4における放熱基板の放熱性能と、熱拡散の様子を可視化するため、熱流体解析を行った。以下に、実施例と各比較例1、2、3、4の検証結果を述べる。
【0048】
実施例、各比較例1、2、3、4のいずれにおいても、発熱体1は1mm角の照明用途のLEDとし、基板本体10の中央に配置して、投入電力を5Wとした。発熱体1を搭載した状態は、実施例を例にとると図3に示したとおりである。また、LEDは基板本体10の表面に施されたNi/Auメッキ部分にAuSn共晶はんだによって接合した。そして、25℃の空気中に、熱伝導が無視できる糸で、発熱体1を鉛直下向きにして宙吊りにした。
【0049】
このような共通条件下で、実施例、各比較例1、2、3、4のそれぞれについて、発熱体1の周囲空気温度に対する上昇値を比較した。図15には、実施例、各比較例1、2、3、4のそれぞれにおける温度比較結果が示されている。図15から、実施例の構成(グラファイトシート(GS)、フィンあり、放射状配置)は、比較例1、2、3、4と比べて、温度上昇が最も低く抑えられ、熱抵抗が最も低く、放熱性が最も良いことがわかる(最も効率よく放熱を行うことができることがわかる)。
【0050】
図16(a),(b)は実施例における温度分布を示す図であり、図16(a)は上面図、図16(b)は略断面図(図16(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。また、図17(a),(b)は比較例1における温度分布を示す図であり、図17(a)は上面図、図17(b)は略断面図(図17(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。図16(a),(b)と図17(a),(b)とを比較すると、基板上の温度分布の様子は同じで、絶対値だけ比較例1の方が高温側へシフトしている。これは、グラファイトとアルミの複合基板部分の構造は同一であるため、実施例と比較例1とでは、基板の熱伝導に関する差異は無く、実施例だけフィン(フィン部25)が立設していることにより、実施例では図17に示すような空気の対流が起こって冷却性能が向上したと考えられる。また、後述する比較例2〜4に比べて、比較例1は実施例と熱抵抗の差が大きいことから、実施例ではフィン(フィン部25)の冷却効果が非常に大きいことがわかる。
【0051】
また、図19(a),(b)は比較例2における温度分布を示す図であり、図19(a)は上面図、図19(b)は略断面図(図19(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。また、図20(a),(b)は比較例3における温度分布を示す図であり、図20(a)は上面図、図20(b)は略断面図(図20(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。図16(a),(b)、図19(a),(b)、図20(a),(b)を比較すると、実施例>比較例3>比較例2の順に発熱体1を中心とした等温部の面積が広いことがわかる。これは、グラファイト>銅>アルミの順に熱伝導率が高く、発熱体1から上記の順に効率よく拡散されていることを表している。なお、実施例、比較例2、比較例3とも、フィンの形状が同一であるため、図18(図18は実施例・比較例2・比較例3における流速分布の斜透視図である)に示したような対流の様相は、3者の間で大差はない。
【0052】
また、図21(a),(b),(c)は比較例4における温度分布を示す図であり、図21(a)は上面図、図21(b)は図21(a)のM−M線における略断面図、図21(c)は図21(a)のN−N線における略断面図である。図16(a),(b)と図21(a),(b),(c)を比較すると、実施例では等方的に熱が拡散しているのに対し、比較例4では熱拡散に偏りが生じている。これは、フィンの配置形状の違いによる効果を表している。なお、グラファイトシートをアルミで挟むというフィンの構成は同一であるため、各々、図16(b)、図21(b)の略断面図においては、実施例、比較例4の両者とも、フィンの隅まで一様に熱が拡散されている。
【0053】
また、図22は比較例4における流速分布の斜透視図である。図18と図22とを比較すると、フィンの形状による影響が空気の対流にも表れていることがわかる。すなわち、比較例4よりも実施例の方が広範囲に高速度の流れが分布していることから、円形放射状の配置が対流においても有利に働くことがわかる。
【0054】
なお、上述した本発明の第1の構成例、第2の構成例では、金属材料31は、例えば、基板本体10の側面12の高さZ2まで充填されているとしたが(すなわち、第1の構成例では、グラファイトシート2b,2c,2dの高さZ2まで、第2の構成例では、グラファイトシート2eの高さZ2まで充填されているとしたが)、本発明は、これに限らず、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも高く(少し高く)充填される場合、あるいは、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも低く(少し低く)充填される場合も含まれる。但し、放熱効率の点からは、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2まで充填される場合が最も望ましく、次いで、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも高く(少し高く)充填される場合が優れ、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも低く(少し低く)充填される場合は、上記2つの場合に比べて、余り好ましくない。
【0055】
なお、上述した例では、基板本体10の外形形状を正方形形状のものにしたが、本発明において、基板本体10の外形形状は、正方形形状のものに限らず、円形、楕円形、星型などの形状のものにすることも可能であり、この場合にも、放熱効率に優れた放熱性基板とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、照明装置や電子機器などの放熱に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 発熱体
2 グラファイトシート
10 基板本体
11 基板骨格面
12 側面
21 グラファイトシートの一辺
22 グラファイトシートの他辺
23 グラファイトシートの他辺
25 フィン部
31 金属材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDやCPUなどの発熱体が搭載される放熱性基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に記載のような、熱伝導性に優れるグラファイトシートをヒートシンクに応用する試みがなされている。
【0003】
図1は特許文献1に記載のヒートシンクを示す図(断面図)である。図1において、符号91はヒートシンク、符号92はフィン部、符号93はヒートシンクベース、符号95は配線基板94上に搭載されたCPUである。ここで、フィン部92は、グラファイトシートと金属薄板とを貼り合わせたものとなっている。すなわち、特許文献1では、グラファイトシートと金属薄板を貼り合わせたものをコルゲート状に形成し、ヒートシンクベース93上に金属薄板部分で接合することによってヒートシンク91を構成する。金属薄板は、フィンの剛性を確保するとともに、ヒートシンクベース93とフィン部92を構成するグラファイトシートに熱を伝える。フィン部92は、金属薄板によって剛性が付与されるのでシート状のグラファイトでの構成が可能で、薄肉化が可能となる。グラファイトは高い熱伝導率を有するので、高い放熱性能を維持したままで、ヒートシンクの軽量化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−099878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図1のヒートシンクでは、基板の厚み方向(基板面の法線方向)Zへの熱伝導は良好なものとなるものの、基板の面方向X,Yへの熱拡散(熱伝導)が少なく、3次元的に熱伝導の良い基板とはなっていないという問題があった。
【0006】
本発明は、3次元的に熱伝導性が良く、従来に比べて放熱性を著しく向上させることの可能な放熱性基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシートが複数個配置され、前記基板骨格面上に配置された前記複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材であり、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の放熱性基板において、前記複数のグラファイトシートは、発熱体を中心として放射状に配置されていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の放熱性基板において、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシートが複数個配置され、前記基板骨格面上に配置された前記複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材であり、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっているので、3次元的に熱伝導性が良く、従来に比べて放熱性を著しく向上させることの可能な放熱性基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】特許文献1に記載のヒートシンクを示す図(断面図)である。
【図2】金属材料が充填される前の基板本体の一例を示す図(斜視図)である。
【図3】本発明の放熱性基板の第1の構成例を示す図(透過斜視図)である。
【図4】図3の上下が反対となるように図示した図である。
【図5】図3、図4のグラファイトシートのうちの一部のグラファイトシートの一例を示す図である。
【図6】図4の部分平面図である。
【図7】図6のC−C線における断面図である。
【図8】グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているグラファイトシートの斜視図である。
【図9】図8の分解斜視図である。
【図10】本発明の放熱性基板の第2の構成例を示す図(透過斜視図)である。
【図11】図10のD−D線における断面図である。
【図12】比較例1の構成を示す図(透過斜視図)である。
【図13】図12の部分平面図である。
【図14】図13のC−C線における断面図である。
【図15】実施例、各比較例1、2、3、4のそれぞれにおける温度比較結果を示す図である。
【図16】実施例における温度分布を示す図である。
【図17】比較例1における温度分布を示す図である。
【図18】実施例・比較例2・比較例3における流速分布の斜透視図である。
【図19】比較例2における温度分布を示す図である。
【図20】比較例3における温度分布を示す図である。
【図21】比較例4における温度分布を示す図である。
【図22】比較例4における流速分布の斜透視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
基本的に、本発明では、放熱性の高い(高い熱拡散率を有する)基板を構成するにあたり、高い熱拡散(高い熱伝導率)を有する材料の一つであるグラファイトシートに着目した。そして、本発明では、矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体(LEDやCPUなど)が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシート(実際には、後述のように複数のグラファイトシート)を配置することによって、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)の熱伝導率を向上させるようにしている。
【0014】
さらに、本発明では、基板骨格面上に配置された複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっていることによって、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)に加えて面方向の熱拡散性をも向上させ(すなわち、基板本体に埋設されている複数のグラファイトシートの部分によって、面方向の熱拡散性を向上させ(その結果として、3次元的に熱伝導性が良いものとし))、さらに、フィン部によって、より一層効率の良い放熱を行うようにしている。
【0015】
さらに、本発明では、基板骨格面上に配置された複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているので、フィン部としての剛性(強度)を確保できるようにしている。
【0016】
本発明の構成を詳細に説明する。
【0017】
図2は、金属材料が充填される前の基板本体の一例を示す図(概略斜視図)である。図2において、10は基板本体、11は発熱体1が搭載される基板骨格面、12は基板骨格面11と辺を共有する4つの厚み方向(基板骨格面の法線方向)Zの側面であり、基板本体10は、その外形が基板骨格面11が側面12より大きな面積を有する概略立方体形状のものとなっている。なお、図2では、発熱体1が搭載される側が上面として図示されており、グラファイトシートは、実際には、図4、図7に示すように、基板骨格面11の発熱体1が搭載される側の面とは反対側の面13に接して配置されるようになっている。また、発熱体1は、例えば照明用途等のLED(発光ダイオード)や電子機器用途等のCPUなどであり、基板骨格面11(発熱体1が搭載される側の面)の上層に施されたNi/Auメッキ部分に対して、AuSn共晶はんだや熱伝導接着剤を用いて接合されるようになっている。
【0018】
図3は本発明の放熱性基板の第1の構成例を示す図(透過斜視図)である。なお、図3では、基板本体10が図2と同じ向き(発熱体1が搭載される側が上面となる向き)で図示されている。図4は図3の上下が反対となるように図示した図である。なお、図3、図4では、充填される金属材料については、説明の便宜上、図示を省略している。また、図5は図3、図4のグラファイトシート2のうちの一部のグラファイトシート2aの一例を示す図である。また、図6は図4の部分平面図、図7は図6のC−C線における断面図である。
【0019】
図3、図4の放熱性基板では、図5に示すような矩形状の面を有するグラファイトシート2の一辺21が発熱体1が搭載される基板骨格面11(正確には、基板骨格面11の面13)と接し、前記グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23が基板骨格面11の法線方向Zとなるように、グラファイトシート2が複数個配置されている。なお、図3、図4の例(第1の構成例)では、複数のグラファイトシート2は、発熱体1を中心として円形放射状に配置されている。すなわち、グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23のうち、辺21と辺22との頂点は発熱体搭載位置の近傍に配置され、辺21と辺23との頂点は発熱体搭載位置から放射状外方に位置するように配置されている。
【0020】
また、図3、図4の放熱性基板では、図6、図7に詳細に示すように、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2b,2c,2dよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において、基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にあって基板骨格面11と該基板骨格面11に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aにおいて、基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっている。
【0021】
より具体的には、複数のグラファイトシート2のうちのグラファイトシート2b,2c,2dは、基板骨格面11の法線方向Zにおける長さが例えば基板本体10の側面12の高さZ2と同じものになっており、金属材料31は、例えば、基板本体10の側面12の高さZ2まで充填されている。この場合、複数のグラファイトシート2のうちのグラファイトシート2b,2c,2dは、金属材料31すなわち基板本体10に全て埋設される。なお、金属材料31、並びに、金属材料31を含めた基板本体10の材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0022】
また、本発明において、基板骨格面11上に配置された前記複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっている。図8はグラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているグラファイトシート2aの斜視図、図9は分解斜視図である。図8、図9を参照すると、グラファイトシート2aは、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟んだものとなっている。ここで、金属材料の薄板42は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、金属材料31すなわち基板本体10に埋設される長さZ2の部分(焼結して基板本体10となる部分)を除く長さ(Z1−Z2)の部分は、アルマイト処理(酸化処理)が施され、赤外線(熱)を全反射する鏡面ではないものに加工されている。なお、他のグラファイトシート2b,2c,2dは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっていてもよいが、グラファイト単体のものでも良い。
【0023】
このような構成の放熱性基板では、矩形状の面を有するグラファイトシート2の一辺21が発熱体1が搭載される基板骨格面11(正確には、基板骨格面11の面13)と接し、前記グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23が基板骨格面11の法線方向Zとなるように、グラファイトシート2が複数個配置されているので、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)Zの熱伝導率を向上させることができる。
【0024】
さらに、上記のような構成の放熱性基板では、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2b,2c,2dよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にある直方体範囲に金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっているので、基板の厚み方向(基板骨格面の法線方向)Zに加えて面方向X,Yの熱拡散性をも向上させ(すなわち、基板本体10に埋設されている複数のグラファイトシート2の部分によって、面方向X,Yの熱拡散性を向上させ(その結果として、3次元的に熱伝導性が良いものとし))、さらに、フィン部25によって、より一層効率の良い放熱を行うことができる。
【0025】
さらに、上記のような構成の放熱性基板では、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟んだ複合材となっているので、フィン部25としての剛性(強度)を確保することができる。
【0026】
なお、上述した第1の構成例の放熱性基板では、複数のグラファイトシート2は、発熱体1を中心として円形放射状に配置されているが、本発明はこれに限定されない。例えば第2の構成例として、複数のグラファイトシート2を一方向(例えばX方向)に沿って所定の間隔を隔てて平行に配置することも可能である。
【0027】
図10は本発明の放熱性基板の第2の構成例を示す図(透過斜視図)、図11は図10のD−D線における断面図である。なお、図10、図11において、図3、図4と同様の箇所には同じ符号を付している。図10、図11を参照すると、第2の構成例の放熱性基板では、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において、基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にあって基板骨格面11と該基板骨格面11に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aにおいて、基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっている。
【0028】
より具体的には、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eは、基板骨格面11の法線方向Zにおける長さが例えば基板本体10の側面12の高さZ2と同じものになっており、金属材料31は、例えば、基板本体10の側面12の高さZ2まで充填されている。この場合、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eは、金属材料31すなわち基板本体10に全て埋設される。なお、金属材料31、並びに、金属材料31を含めた基板本体10の材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
【0029】
また、第2の構成例においても、基板骨格面11上に配置された前記複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっている。
【0030】
このように、第2の構成例においても、矩形状の面を有するグラファイトシート2の一辺21が発熱体1が搭載される基板骨格面11(正確には、基板骨格面11の面13)と接し、前記グラファイトシート2の一辺21と頂点を共有するグラファイトシートの他辺22、23が基板骨格面11の法線方向Zとなるように、グラファイトシート2が複数個配置され、基板骨格面11上に配置された複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、複数のグラファイトシート2の他のグラファイトシート2eよりも基板骨格面11の法線方向Zに長さが長くなっており、基板骨格面11上の複数のグラファイトシート2が配置される側において基板骨格面11から前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの長さZ1よりも短い距離にある直方体範囲に金属材料31が充填されて基板本体10が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシート2aの基板本体10に埋設されていない部分がフィン部25となっており、基板骨格面11上に配置された前記複数のグラファイトシート2のうちの少なくとも一部のグラファイトシート2aは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材となっているので、第1の構成例と同様の効果を得ることができる。
【0031】
ただし、第2の構成例では、複数のグラファイトシート2は、一方向(例えばX方向)に沿って所定の間隔を隔てて互いに平行に配置されているので、第1の構成例のように円形放射状に配置される場合と比べて、後述のように、熱拡散に偏りが生じ(面方向X,Yに均一に熱拡散が生ぜず)、また、第1の構成例のように広範囲に高速度の流れを分布させることができない。従って、最も好ましくは、第1の構成例のように、複数のグラファイトシート2が、円形放射状に配置されるのが良い。すなわち、複数のグラファイトシート2が、円形放射状に配置されることによって、熱拡散に偏りを生じさせず(面方向X,Yに均一に熱拡散が生じ)、広範囲に高速度の流れを分布させることが可能となる。なお、以下では、実施例は第1の構成例に対応するものとし、比較例4は第2の構成例に対応するものとする。
【0032】
次に、本発明の実施例(第1の構成例に対応)をより詳細に説明する。
【0033】
本発明の放熱性基板について、その大きさは面積・厚みを問わず、あらゆるサイズに適応可能である。発熱体1の例として照明用途の高出力LED(チップサイズ1mm角)に適用する放熱性基板を想定し、基板本体10が縦50mm×横50mm×厚さ5mmの板材で、フィン部25の高さ(Z1−Z2)が20mmとなるような放熱性基板を、下記のようにして作製した。
【0034】
本発明におけるグラファイトシート2については、市販されているグラファイトを適宜用いることができるが、熱拡散の向上の観点から、面方向(X,Y方向)の熱伝導率が500W/mK以上のグラファイトを用いることが望ましい。厚み方向(Z方向)の熱伝導率は特に規定しないが、10〜50W/mKが一般的な値である。本実施例では、面方向の熱伝導率が1000W/mK・厚み方向の熱伝導率が50W/mKの、厚さ200μmのグラファイトを用いた。
【0035】
グラファイトシート2aの作製工程、すなわち、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟み込む工程については、加圧加熱プレスなどの方法を用いることができる。また、グラファイトシート2a,2b,2c,2dを基板骨格面11上に立設し、金属材料(金属粉末)31を充填し、金属材料(金属粉末)31をグラファイトシート2a,2b,2c,2dと一緒に焼結させる工程については、プラズマ焼結法などの方法を用いることができる。
【0036】
より具体的に、グラファイトシート2aの作製工程、すなわち、グラファイト41を金属材料の薄板42で挟み込む工程において、グラファイト41を、縦25mm×横25mm(Z1=25mm)の短冊状に切断し、図9に示すように縦横が同サイズで厚さが200μmのアルミ板42で挟みこんだ。なお、アルミ板42の表面はフィン終端(焼結されて基板本体10の一部となる部分)の縦5mm×横25mm(Z2=5mm)を残してアルマイト処理が施され、熱放射率が約0.95まで高められている。
【0037】
さらに図5に示すように、このグラファイトシート2aを20枚、円形放射状に配列させた。グラファイトシート2aが接する円の中央部は、適宜エポキシ系の接着剤を用いることが出来る。また、外周方向にいくにつれてシート間隔が広がるので、縦5mm(Z2=5mm)で横幅を25mmより狭く切断したグラファイト単体のシートを間に挿入することで、密度を高めることが出来る。本実施例においては、横22mmに切断したグラファイト単体シート2bを20枚、横19mmに切断したグラファイト単体シート2cを40枚、横15mmに切断したグラファイト単体シート2dを80枚、それぞれ用意し、4重円となるように挿入・配置した。
【0038】
焼結後の全体斜視図は図4のようになる。
【0039】
次に、上記実施例を各比較例1、2、3、4と比較する。
【0040】
図12は比較例1の構成を示す図(透過斜視図)である。また、図13は図12の部分平面図、図14は図13のC−C線における断面図である。なお、図12、図13、図14において、図3、図4、図6、図7と同様の箇所には同じ符号を付している。図12、図13、図14を参照すると、比較例1の構成では、図3、図4、図6、図7のグラファイトシート2aに対応するグラファイトシート2fは、他のグラファイトシート2b,2c,2dと同様に、基板骨格面11の法線方向Zにおける長さが例えば基板本体10の側面12の高さZ2と同じものになっている。すなわち、比較例1の構成では、実施例におけるフィン部25は存在しない。また、比較例1の構成では、図3、図4、図6、図7のグラファイトシート2aに対応するグラファイトシート2fは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材としては構成されておらず、他のグラファイトシート2b,2c,2dと同様に、グラファイト単体のものとなっている。
【0041】
より具体的に、比較例1の構成では、縦25mm×横25mmの短冊状であった実施例のグラファイトシート2aに対応するグラファイトシート2fを、縦5mm×横25mmに置き換え(アルミ板による挟みこみも廃止)、他の3種類の大きさのグラファイトシート2b,2c,2dは実施例と同一とした。すなわち、比較例1の構成では、4重円を構成する全てのグラファイトシート2f,2b,2c,2dが焼結工程によって基板本体10中に埋まるようになっている。
【0042】
比較例2は、グラファイトシートの持つ高い熱伝導率による効果を検証するため、図3、図4、図6、図7の実施例の構成において、グラファイトシート2a,2b,2c,2dに対応する部材を全てアルミ材料のものとした。
【0043】
より具体的に、比較例2の構成では、基板本体10は厚さ5mmのアルミの一枚板とし、フィン部25は厚さ600μmのアルミ薄板とした。基板本体10とフィン部25の接合部については、基板本体10に円形放射状にフィン部25の厚さ分の溝を深さ2〜3mm程度で加工し、そこへフィン部25を挿入し、打ち込みによって接合した。
【0044】
比較例3は、金属材料で熱伝導率に優れる銅との比較をするため、比較例2の構成において、フィン部25を厚さ600μmの銅板に置き換えた構成となっている。接合部については比較例2と同様に溝加工と打ち込みで構成した。
【0045】
比較例4は、円形放射状に配置したことの効果を検証するため、実施例と同じ材料を図10に示したように平行に配置した第2の構成例に対応したものである。
【0046】
より具体的に、比較例4の構成では、全体に占めるグラファイトシートの割合がほぼ同一となるように、フィン部25を構成するグラファイトシート2a(グラファイトとアルミ薄板の積層板)は縦25mm×横50mmのものを計16枚、基板本体10中に埋設されるグラファイトシート2eは縦5mm×横50mmのものを計45枚、両者合わせて計61枚用い、8mm間隔で配置した。金属材料31が充填されて成る基板本体10は縦50mm×横50mm×厚さ5mmで実施例と共通しており、3枚おきに間隔32mmでグラファイトシート2aすなわちフィン部25が立設するようになっている。
【0047】
実施例と各比較例1、2、3、4における放熱基板の放熱性能と、熱拡散の様子を可視化するため、熱流体解析を行った。以下に、実施例と各比較例1、2、3、4の検証結果を述べる。
【0048】
実施例、各比較例1、2、3、4のいずれにおいても、発熱体1は1mm角の照明用途のLEDとし、基板本体10の中央に配置して、投入電力を5Wとした。発熱体1を搭載した状態は、実施例を例にとると図3に示したとおりである。また、LEDは基板本体10の表面に施されたNi/Auメッキ部分にAuSn共晶はんだによって接合した。そして、25℃の空気中に、熱伝導が無視できる糸で、発熱体1を鉛直下向きにして宙吊りにした。
【0049】
このような共通条件下で、実施例、各比較例1、2、3、4のそれぞれについて、発熱体1の周囲空気温度に対する上昇値を比較した。図15には、実施例、各比較例1、2、3、4のそれぞれにおける温度比較結果が示されている。図15から、実施例の構成(グラファイトシート(GS)、フィンあり、放射状配置)は、比較例1、2、3、4と比べて、温度上昇が最も低く抑えられ、熱抵抗が最も低く、放熱性が最も良いことがわかる(最も効率よく放熱を行うことができることがわかる)。
【0050】
図16(a),(b)は実施例における温度分布を示す図であり、図16(a)は上面図、図16(b)は略断面図(図16(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。また、図17(a),(b)は比較例1における温度分布を示す図であり、図17(a)は上面図、図17(b)は略断面図(図17(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。図16(a),(b)と図17(a),(b)とを比較すると、基板上の温度分布の様子は同じで、絶対値だけ比較例1の方が高温側へシフトしている。これは、グラファイトとアルミの複合基板部分の構造は同一であるため、実施例と比較例1とでは、基板の熱伝導に関する差異は無く、実施例だけフィン(フィン部25)が立設していることにより、実施例では図17に示すような空気の対流が起こって冷却性能が向上したと考えられる。また、後述する比較例2〜4に比べて、比較例1は実施例と熱抵抗の差が大きいことから、実施例ではフィン(フィン部25)の冷却効果が非常に大きいことがわかる。
【0051】
また、図19(a),(b)は比較例2における温度分布を示す図であり、図19(a)は上面図、図19(b)は略断面図(図19(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。また、図20(a),(b)は比較例3における温度分布を示す図であり、図20(a)は上面図、図20(b)は略断面図(図20(a)の中心付近を通る面で切断した図)である。図16(a),(b)、図19(a),(b)、図20(a),(b)を比較すると、実施例>比較例3>比較例2の順に発熱体1を中心とした等温部の面積が広いことがわかる。これは、グラファイト>銅>アルミの順に熱伝導率が高く、発熱体1から上記の順に効率よく拡散されていることを表している。なお、実施例、比較例2、比較例3とも、フィンの形状が同一であるため、図18(図18は実施例・比較例2・比較例3における流速分布の斜透視図である)に示したような対流の様相は、3者の間で大差はない。
【0052】
また、図21(a),(b),(c)は比較例4における温度分布を示す図であり、図21(a)は上面図、図21(b)は図21(a)のM−M線における略断面図、図21(c)は図21(a)のN−N線における略断面図である。図16(a),(b)と図21(a),(b),(c)を比較すると、実施例では等方的に熱が拡散しているのに対し、比較例4では熱拡散に偏りが生じている。これは、フィンの配置形状の違いによる効果を表している。なお、グラファイトシートをアルミで挟むというフィンの構成は同一であるため、各々、図16(b)、図21(b)の略断面図においては、実施例、比較例4の両者とも、フィンの隅まで一様に熱が拡散されている。
【0053】
また、図22は比較例4における流速分布の斜透視図である。図18と図22とを比較すると、フィンの形状による影響が空気の対流にも表れていることがわかる。すなわち、比較例4よりも実施例の方が広範囲に高速度の流れが分布していることから、円形放射状の配置が対流においても有利に働くことがわかる。
【0054】
なお、上述した本発明の第1の構成例、第2の構成例では、金属材料31は、例えば、基板本体10の側面12の高さZ2まで充填されているとしたが(すなわち、第1の構成例では、グラファイトシート2b,2c,2dの高さZ2まで、第2の構成例では、グラファイトシート2eの高さZ2まで充填されているとしたが)、本発明は、これに限らず、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも高く(少し高く)充填される場合、あるいは、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも低く(少し低く)充填される場合も含まれる。但し、放熱効率の点からは、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2まで充填される場合が最も望ましく、次いで、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも高く(少し高く)充填される場合が優れ、金属材料31がグラファイトシート2b,2c,2d;2eの高さZ2よりも低く(少し低く)充填される場合は、上記2つの場合に比べて、余り好ましくない。
【0055】
なお、上述した例では、基板本体10の外形形状を正方形形状のものにしたが、本発明において、基板本体10の外形形状は、正方形形状のものに限らず、円形、楕円形、星型などの形状のものにすることも可能であり、この場合にも、放熱効率に優れた放熱性基板とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、照明装置や電子機器などの放熱に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 発熱体
2 グラファイトシート
10 基板本体
11 基板骨格面
12 側面
21 グラファイトシートの一辺
22 グラファイトシートの他辺
23 グラファイトシートの他辺
25 フィン部
31 金属材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシートが複数個配置され、前記基板骨格面上に配置された前記複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材であり、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっていることを特徴とする放熱性基板。
【請求項2】
請求項1記載の放熱性基板において、前記複数のグラファイトシートは、発熱体を中心として放射状に配置されていることを特徴とする放熱性基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の放熱性基板において、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする放熱性基板。
【請求項1】
矩形状の面を有するグラファイトシートの一辺が発熱体が搭載される基板骨格面と接し、前記グラファイトシートの前記一辺と頂点を共有するグラファイトシートの他辺が基板骨格面の法線方向となるように、グラファイトシートが複数個配置され、前記基板骨格面上に配置された前記複数のグラファイトシートのうちの少なくとも一部のグラファイトシートは、グラファイトを金属材料の薄板で挟んだ複合材であり、前記複数のグラファイトシートの他のグラファイトシートよりも基板骨格面の法線方向に長さが長くなっており、前記基板骨格面上の前記複数のグラファイトシートが配置される側において、前記基板骨格面から前記少なくとも一部のグラファイトシートの長さよりも短い距離にあって前記基板骨格面と前記基板骨格面に平行な面とに挟まれた範囲に、金属材料が充填されて基板本体が形成され、前記少なくとも一部のグラファイトシートにおいて、基板本体に埋設されていない部分がフィン部となっていることを特徴とする放熱性基板。
【請求項2】
請求項1記載の放熱性基板において、前記複数のグラファイトシートは、発熱体を中心として放射状に配置されていることを特徴とする放熱性基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の放熱性基板において、金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする放熱性基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−60045(P2012−60045A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203962(P2010−203962)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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