説明

放電灯点灯装置

【課題】 DC/DCコンバータに備えられるトランスに放電灯起動用の巻き線を設けることなく、また逓倍電圧整流回路を簡素化することにより小型化を図ると共にコストを抑制した放電灯点灯装置を得る。
【解決手段】 トランスT1を有するDC/DCコンバータとトランスT2を有するDC/DCコンバータとを並列接続し、各DC/DCコンバータのトランスT1,T2の動作位相をずらしながら、それぞれのDutyを変化させて出力電圧を制御する制御部4と、トランスT1,T2の出力電圧の電位差を用いて放電灯22の起動に使用する高電圧を発生するダイオード7〜9及びコンデンサ10〜12から成る逓倍電圧整流回路とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、DC/DCコンバータを備えて放電灯を点灯させる放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電灯を点灯させる場合には、先ず放電灯の電極間に高電圧を印加して電極間の絶縁破壊(ブレークダウン)を起こす必要がある。電極間の絶縁破壊には、コンデンサに蓄えた電荷をイグニッション(以下、IGNと記載する)用トランスの1次巻き線に急激に放電し、このときIGN用トランスの2次巻き線に発生するインパルス状の高電圧を用いている。
コンデンサからIGN用トランスの1次巻き線へ放電する電圧を高く設定すると、IGN用トランスの1次/2次の巻き数比を小さく構成することができる。即ち、IGN用トランスの1次巻き線に印加する電圧を高くすると、2次巻き線の巻き数を少なくすることが可能になるので太い線材を使用して抵抗を下げ、IGN用トランスを小型化することが可能になる。このことから放電灯点灯装置には、IGN用トランスへ高電圧を印加する回路が備えられる。
【0003】
従来の放電灯点灯装置は、交流電源の電圧を昇圧する昇圧トランスを備え、この昇圧トランスの2次側に構成した複数のダイオードなどから成る倍電圧整流回路によって直流高電圧を発生させている。この直流高電圧によりコンデンサを充電し、コンデンサに蓄えた電荷を用いて放電灯を起動させている(例えば、特許文献1参照)。
また、点灯回路から出力される直流電圧を例えばサイダック等のスイッチング素子によって断続させてトランスの1次側巻き線へ印加し、2次側巻き線から昇圧された交流電圧を出力させ、この交流電圧を倍電圧整流回路に供給して高電圧を発生させ、この高電圧を用いてコンデンサを充電して上記のものと同様にコンデンサから放電された電荷をIGN用トランスへ供給して放電灯の点灯を起動させるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、トランスを有する直流昇圧回路と直流−交流変換回路と始動用パルス発生回路とを備え、直流−交流変換回路の動作に同期させて、始動用パルス発生回路が自ら備えるコンデンサから高電圧のパルス電圧を出力して放電灯を起動させるものがある。直流昇圧回路のトランスの2次側には、放電灯を起動させる高電圧発生に用いる巻き線が備えられ、始動用パルス回路はこの巻き線から供給される電力をコンデンサに蓄積させる。コンデンサの端子電圧が所定値に達すると、始動用パルス回路に備えられた自己降伏型スイッチ素子が降伏する。このとき発生したパルス電圧を、直流−交流変換回路を成すブリッジ回路から出力されているパルス電圧に重畳し、この電圧を放電灯へ印加して点灯を始動している(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
上記の始動用パルス発生回路に備えられる自己降伏型スイッチ素子は、1000V程度の電圧が印加されるとブレークダウンして導通状態になる例えばエアギャップを有するものである。即ち、この始動用パルス発生回路は1000V以上の電圧を用いてコンデンサを充電するものである。1000V程度の高電圧を倍電圧整流回路によって発生させようとすると、500V以上の高電圧を入力するか、あるいは入力が300V程度ならば倍電圧整流回路を3倍以上の逓倍回路として構成して発生させることになる。1000V程度の高電圧を発生させる場合には、回路を高耐圧化して構成する、あるいは逓倍電圧を発生する回路を多数の部品によって構成することになるため、上記のように直流昇圧回路と直流−交流変換回路と始動用パルス発生回路とを用いて高電圧を得ている。現実的には、3倍の逓倍電圧を発生させて高電圧を得ることが望ましい。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−196594号公報(第2,3頁、第2図)
【特許文献2】特開平9−69393号公報(第4,5頁、図1)
【特許文献3】特開平7−142182号公報(第3,4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の放電灯点灯装置は以上のように構成されているので、比較的周波数の低い交流電圧を出力する直流−交流変換回路(DC/ACインバータ)の出力側に逓倍電圧整流回路を配置していることから、放電灯を起動させるIGN回路のコンデンサの充電時間が長くなり、逓倍電圧整流回路には容量の大きなコンデンサが必要になる。また回路を構成する部品数が多くなり小型化が難しいという課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、DC/DCコンバータに備えられるトランスに放電灯起動用の巻き線を設けることなく、また逓倍電圧整流回路を簡素化することにより小型化を図ると共にコストを抑制することができる放電灯点灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る放電灯点灯装置は、電源電圧を昇圧するトランスを有し並列接続した複数のDC/DCコンバータと、各DC/DCコンバータのトランスの動作位相をずらすように制御する制御手段と、各トランスの出力電圧の電位差を用いて放電灯の起動に使用する高電圧を発生する逓倍電圧整流回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、複数のDC/DCコンバータの各トランスの動作を制御して出力電圧の位相をずらす制御手段と、各トランスの出力電圧の電位差を用いて放電灯の起動に使用する高電圧を発生する逓倍電圧整流回路とを備えたので、小型化を図ると共にコストを抑制することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による放電灯点灯装置を示す回路図である。トランスT1の1次側巻き線の一端及びトランスT2の1次側巻き線の一端は、直流電力を供給する電源1の正電極に接続されている。トランスT1の1次側巻き線の他端には、電源1の負電極との接続をON/OFFするスイッチング素子2が接続されている。トランスT2の1次側巻き線の他端には、電源1の負電極との接続をON/OFFするスイッチング素子3が接続されている。制御部(制御手段)4は、スイッチング素子2,3の制御信号入力端子等に接続され、例えばスイッチング素子2,3としてFETを用いた場合には、それぞれのゲート端子に接続されている。
【0012】
トランスT1の2次側巻き線の一端には、ダイオード5のアノード、ダイオード7のアノード、及びコンデンサ10の一端が接続されている。トランスT2の2次側巻き線の一端には、ダイオード6のアノードとコンデンサ11の一端が接続されている。コンデンサ11の他端は、ダイオード7のカソードに接続されている。また、ダイオード7のカソードにはダイオード8のアノードが接続され、ダイオード8のカソードにはダイオード9のアノードが接続されている。即ち、ダイオード7〜9は直列接続されている。コンデンサ10の他端はダイオード8とダイオード9の接続点に接続されている。
ダイオード5のカソードは、ダイオード6のカソードに接続され、さらにコンデンサ12の一端、コンデンサ13の一端、トランジスタ14,16に接続されている。この接続点は接地されている。トランスT1の2次側巻き線の他端には、トランスT2の2次側巻き線の他端が接続され、さらにコンデンサ13の他端、トランジスタ15,17が接続されている。
【0013】
前述のように接続されたスイッチング素子2、制御部4、トランスT1、ダイオード5、及びコンデンサ13によって、電源1の直流電圧を昇圧するDC/DCコンバータが構成される。また、スイッチング素子3、制御部4、トランスT2、ダイオード6、及びコンデンサ13によって上記のものと同様なDC/DCコンバータが構成され、図1に示した放電灯点灯装置は、並列接続された二つのDC/DCコンバータを備えている。これらの二つのDC/DCコンバータの出力は、コンデンサ13の両端電圧として一つにまとめられ、後述するDC/ACインバータへ供給される。
また、ダイオード7〜9、及びコンデンサ10〜12により逓倍電圧整流回路が構成される。この逓倍電圧整流回路は、二つのDC/DCコンバータと組み合わせることによりDC/DCコンバータ出力電圧の2倍の電圧を発生させて後述するIGN回路に供給する。
【0014】
トランジスタ14とトランジスタ15は直列接続され、トランジスタ16とトランジスタ17は直列接続される。トランジスタ14〜17によってH型ブリッジ回路が構成され、トランジスタ14〜17として例えばnチャネルFETを用いた場合、トランジスタ14のソースとトランジスタ15のドレインが接続され、またトランジスタ16のソースとトランジスタ17のドレインが接続されている。トランジスタ14のドレインとトランジスタ16のドレインが接続され、トランジスタ15のソースとトランジスタ17のソースが接続されている。また、このように構成した場合トランジスタ14,16のドレインは、前述のようにダイオード5,6のカソード、コンデンサ12,13の各一端に接続され、トランジスタ15,17のソースは、トランスT1,T2の2次側巻き線の他端、コンデンサ13の他端に接続されている。
【0015】
トランジスタ14とトランジスタ15の接続点には、放電灯22の一方の電極が接続される。トランジスタ16とトランジスタ17の接続点には、コンデンサ20の一端とIGN用トランスT3の1次巻き線端子が接続されている。トランジスタ14〜17のON/OFF動作は、制御部18によって制御され、上記のようにトランジスタ14〜17としてnチャネルFETを用いた場合は、各トランジスタ14〜17のゲートに制御部18が接続され、各々のゲート電圧が制御される。H型ブリッジ回路として接続されたトランジスタ14〜17及び制御部18により、放電灯22へ交流電圧を供給するDC/ACインバータが構成される。
【0016】
IGN用トランスT3の2次巻き線端子には放電灯22の他方の電極が接続される。ダイオード9のカソードには抵抗19の一端が接続され、抵抗19の他端は、コンデンサ20の他端及びGAPスイッチ21の一方の端子が接続されている。GAPスイッチ21は、高電圧を両端子に印加すると導通状態になる開閉スイッチで、例えば800V程度の高電圧が印加されるとブレークダウンを起こして導通状態となる放電ギャップを有するものである。IGN用トランスT3は、1次巻き線と2次巻き線の一部を共通化したオートトランスで、1次巻き線と2次巻き線の共通端子にはGAPスイッチ21の他方の端子が接続されている。このように接続されたIGN用トランスT3、抵抗19、コンデンサ20、及びGAPスイッチ21により放電灯22を起動させるIGN回路が構成される。
また制御部4は、放電灯22の点灯に用いるDC/DCコンバータの出力電圧を検出するように、例えばコンデンサ13の両端電圧を検出するように接続され、例えばコンデンサ13とトランジスタ15,17との接続点に接続されている。
【0017】
次に動作について説明する。
放電灯22を起動させるときには、制御部18がトランジスタ14,17をON状態、トランジスタ15,16をOFF状態となるように制御する。この状態で制御部4がスイッチング素子2,3の動作を制御して、トランスT1,T2の2次側巻き線に高電圧を発生させ、この高電圧をダイオード5,6及びコンデンサ13によって例えば直流400Vの電圧として、上記のようにON状態のトランジスタ14,17を介して放電灯22へ印加する。なお、コンデンサ13の両端電圧は、DC/DCコンバータの出力電圧である。また、このDC/DCコンバータの出力電圧は、起動後の放電灯22を点灯させる点灯電圧である。
【0018】
前述のようにダイオード7〜9やコンデンサ10〜12からなる逓倍電圧整流回路を用いてトランスT1及びトランスT2の2次側巻き線に発生したパルス電圧を昇圧して直流の高電圧を生成し、抵抗19を介してコンデンサ20へ印加する。コンデンサ20が充電され、当該コンデンサ20の両端電圧が所定の高電圧になってGAPスイッチ21が閉じると、コンデンサ20に蓄積された電力がIGN用トランスT3の1次コイルへ供給される。このときIGN用トランスT3の2次コイルに発生するパルス電圧を、上記のコンデンサ13から放電灯22へ印加している点灯電圧に重畳して、放電灯22の電極間の放電を開始させる。放電灯22が起動すると制御部18は、トランジスタ14,17とトランジスタ15,16とを交互にON/OFFさせ、DC/DCコンバータから放電灯22へ流れる電流の方向を切り替え、放電灯22へ交流電圧を供給して放電点灯を安定させて定常点灯を行わせる。実施の形態1による放電点灯装置は、概ねこのように動作して放電灯22を点灯させる。
【0019】
この発明の実施の形態1による放電点灯装置は、上記の動作の中で放電灯22を起動させる動作に特徴がある。ここでは制御部18の制御によって定常点灯を行っているときの動作説明を省略する。
トランスT1とトランスT2はフライバック型の動作を行うもので、例えばトランスT1はスイッチング素子2がON状態のとき電源1から1次側巻き線に供給される電力を蓄え、スイッチング素子2がOFFしたとき、蓄えた電力を2次側巻き線から出力する。トランスT2は、スイッチング素子3のON/OFFにより同様に出力動作を行う。
図2は、実施の形態1による放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。この図は、トランスT1とトランスT2の2次側巻き線から出力される電圧波形を示したタイミングチャートである。図中上段に「duty50%未満」として示した波形は、スイッチング素子2,3のON/OFFのデューティ比(以下ONデューティ比と記載する)が50%未満で、ON状態がOFF状態よりも短い場合の出力波形である。図中中段に「duty50%」として示した波形は、スイッチング素子2,3のONデューティ比が50%、即ちON状態とOFF状態の期間が等しい場合の波形である。図中下段に「duty50%以上」として示した波形は、スイッチング素子2,3のONデューティ比が50%以上で、ON状態がOFF状態よりも長い場合の出力波形である。
【0020】
スイッチング素子2とスイッチング素子3は、制御部4によって交互にON/OFFするように制御される。トランスT1とトランスT2の1次側巻き線は、電源1に対して並列に接続されており、交互にON/OFFするスイッチング素子2,3によって各1次側巻き線には交互に電流が流れる。
トランスT1を例示して説明するとフライバック型の動作では、スイッチング素子2がOFFしているとき、例えば高電圧に昇圧された電圧Eが出力される。スイッチング素子2がONしているときは、トランスT1の1次側巻き線の巻き数をN1、2次側巻き線の巻き数をN2とし、また電源1から入力している電圧をVINとした場合、e=VIN・N2/N1として求められる電圧eがトランスT1から出力される。トランスT1及びトランスT2は、図2に示したように非対称なパルス電圧、例えば正の電圧Eと負の電圧eとを交互に出力する。
【0021】
GAPスイッチ20をON状態とするとき1000V以上の高電圧電源が必要になることから、図1に示したダイオード7〜9及びコンデンサ10〜12からなる逓倍電圧整流回路は、二つのトランスT1,T2の出力電圧の電位差、即ちトランスT1,T2の出力電圧を重ね合わせたときのPeak to Peak電圧を用いて高電圧を発生させている。後述するように二つのトランスT1,T2の出力電圧の電位差が大きい場合には、容易に高電圧を発生させることができ、この高電圧によりIGN回路を成すコンデンサ20の充電を迅速に行うことが可能になる。また、一つのトランスの出力電圧を用いた場合に比べて逓倍電圧整流回路を少ない数のダイオードやコンデンサで構成することが可能になる。
【0022】
例えば、図2の中段に「duty50%」として示した波形のように位相が180°ずれているトランスT1の出力電圧とトランスT2の出力電圧とを重ね合わせると、Peak to Peakの電圧値はE+eとなる。このように二つのトランスを用いる場合、図2の上段に「duty50%未満」として示した波形のように、例えばスイッチング素子2の各ON状態がOFF状態に比べて短く、トランスT1に蓄積される電力が十分でない場合には、スイッチング素子2がOFF状態の間にトランスT1から出力されるパルス電圧は、電圧Eを短期間維持した後、例えばGNDレベルに下降して電圧の出力が無い状態が生じる。このようにトランスT1,T2が電圧Eを短期間出力した後、出力電圧が無くなると、例えば逓倍電圧整流回路を構成するコンデンサ11へ十分に電荷を蓄積することが難しくなり、逓倍電圧整流回路を正常動作させることができなくなる。
【0023】
逓倍電圧整流回路を正常動作させるためには、図2の中段に示した「duty50%」の波形ように、トランスT1とトランスT2からON状態とOFF状態の期間が等しいパルス電圧を出力させ、常にこれらの出力電圧を重ね合わせたときE+eの電圧が得られるようにスイッチング素子2,3の動作を制御することが好ましく、もしくは図2の下段に示した「duty50%以上」の波形のように、各トランスT1,T2の電圧出力が無くならないように動作させる。即ち、トランスT1,T2からそれぞれ出力されているハイサイドの出力電圧Eとローサイドの出力電圧eが重なるように各トランスT1,T2を動作させる。
【0024】
制御部4は、上記のようにスイッチング素子2のON/OFFのタイミングとスイッチング素子3のON/OFFのタイミングが180°ずれるように動作させ、またONデューティ比が50%もしくは50%以上となるようにして、逓倍電圧整流回路にトランスT1の出力電圧とトランスT2の出力電圧の電位差、即ち電圧E+eが入力されるように、スイッチング素子2とスイッチング素子3とを動作させる。好ましくは、ONデューティ比を50%として長い時間電圧E+eが維持されるように動作させる。
このように制御部4は、トランスT1,T2から逓倍電圧整流回路へ大きな電位差をできるだけ長い時間供給するようにトランスT1,T2、さらにはトランスT1あるいはトランスT2を備えた各DC/DCコンバータを動作させ、可能な限り多くの電力を逓倍電圧整流回路へ供給する。
【0025】
トランスT1から出力される電圧をダイオード7を介してコンデンサ11の一端に印加し、またコンデンサ11の他端にトランスT2から出力される電圧を印加してコンデンサ11を充電し、その両端にE+eの電圧を発生させる。ダイオード8のアノードにはコンデンサ11により電圧E+eが印加され、ダイオード8を介して充電されるコンデンサ10の両端には電圧2E+2eが生じる。この電圧2E+2eを入力しているダイオード9のカソードにはコンデンサ12の一端が接続されており、コンデンサ12の両端電圧は2E+2eとなる。コンデンサ12とコンデンサ13は直列に接続されており、コンデンサ12とコンデンサ13の直列コンデンサの両端には3E+2eの電位差が生じ、例えば1200V程度の高電圧が生じる。
【0026】
コンデンサ20の一端には、ダイオード9とコンデンサ12の接続点から電流が供給される。この電流によってコンデンサ20が充電され、最高電圧充電時には上記の電圧3E+2eまで両端電圧が高められる。このようにコンデンサ20が充電され、その両端が800V以上の所定の高電圧になるとGAPスイッチ21が閉じ、IGNトランスT3の1次コイルにコンデンサ20の放電電流が流れ、IGNトランスT3の2次コイルに高電圧のパルス電圧が生じる。このパルス電圧を放電灯22に印加して点灯を開始させる。
【0027】
放電灯22を起動させる場合には、コンデンサ13とコンデンサ20を共に充電して、それぞれの両端を所定の高電圧にする必要がある。放電灯22を定常点灯させる場合にはブレークダウンする前に予め400V程度の電圧を放電灯22へ印加すればよく、コンデンサ13はこの定常点灯に必要な電圧、即ち点灯電圧を両端電圧として維持するようにトランスT1,T2から電力供給を受ける。
一般的にはコンデンサ13の両端電圧が所定の値に達すると、この電圧を一定に保つようにトランスT1,T2のONデューティ比を調整している。このようにONデューティ比を変化させて電流を調整すると、図2を用いて説明したONデューティ比が50%未満となる状態が生じ、逓倍電圧整流回路の動作に不具合が生じる。
【0028】
コンデンサ13とコンデンサ20とを充電して放電灯22を起動させるとき、先にコンデンサ13の両端電圧が例えば400V程度の高電圧に達する。これに応じてトランスT1,T2のONデューティ比を減少させる制御を行うと、コンデンサ20に十分な充電が行えず、コンデンサ20の両端電圧が例えば800V程度の高電圧まで達しないという不具合が生じ、GAPスイッチ21を閉じることができなくなる。
【0029】
実施の形態1による放電灯点灯装置は、制御部4がトランスT1,T2のONデューティ比を50%あるいは50%以上に固定しておき、出力動作を行う期間と休む期間を設けて間欠動作させている。このようにトランスT1,T2のONデューティ比を例えば50%一定に保って間欠動作を行うことにより、DC/DCコンバータ及び逓倍電圧整流回路を有効に動作させてコンデンサ13の両端電圧を所定の値に維持し、またコンデンサ20を充電する。即ち、ONデューティ比を小さくすることにより両端電圧が点灯電圧に達したコンデンサ13へ供給する充電電流を抑制するのではなく、一定の大きさの充電電流を供給することと、供給を停止することを繰り返すことによって、コンデンサ13の両端電圧を点灯電圧に保つ。また、この動作においてONデューティ比は常に一定であることから、例えばE+e等の所定の電圧が逓倍電圧整流回路に入力され、逓倍電圧整流回路は正常に高電圧を発生してコンデンサ20の充電を有効に行うことができる。
【0030】
図3は、実施の形態1による放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。この図は、トランスT1とトランスT2の出力電圧を示したタイミングチャートである。図示したように、制御部4はトランスT1とトランスT2とを同時期に動作させ、また休止させる。制御部4は、前述のようにコンデンサ13の両端電圧を検出するように接続されており、コンデンサ13の両端電圧が、例えば400Vに達するまでスイッチング素子2,3を制御して、トランスT1、T2からそれぞれ位相のずれた矩形波の電圧を出力させる。
なお、DC/DCコンバータのハイサイド出力点となるコンデンサ13の一端は接地されていることから、制御部4が検出するコンデンサ13の電圧は、GNDレベルからみた場合マイナスの値となり、上記の「400V」は−400Vとなる。以下の説明ではコンデンサ13の両端電圧をGNDレベルからみた絶対値ではなくコンデンサ13の両端の電位差として説明する。
【0031】
制御部4は、検出している電位差が400Vに達するとスイッチング素子2,3のON/OFF動作を停止させ、トランスT1,T2の出力動作を停止させる。検出している電位差が所定の値よりも小さくなったとき、即ち400V未満になったときスイッチング素子2,3を動作させ、トランスT1,T2から電圧を出力させる。このように制御部4は、トランスT1を備えたDC/DCコンバータとトランスT2を備えたDC/DCコンバータとを間欠動作させる。また、これらのDC/DCコンバータは共にコンデンサ13によって出力電圧を保持するように構成されていることから、制御部4は二つのDC/DCコンバータの間欠動作が同期するように制御する。この動作においてトランスT1,T2のONデューティ比は、常に例えば50%一定であることから、逓倍電圧整流回路には一定の高電圧が入力され、また逓倍電圧整流回路から出力される電圧も一定の高電圧を維持し、IGN回路のコンデンサ20は効率よく充電される。
【0032】
一般に定常点灯状態の放電灯22へ供給する交流電圧、即ちDC/ACインバータから出力される交流電圧は、周波数が数百Hz程度であるが、トランスT1,T2の出力電圧の周波数、即ちDC/DCコンバータの動作周波数は上記の交流電圧の周波数に比べてはるかに高く、このトランスT1,T2の出力電圧を用いると短時間でコンデンサに電荷を蓄積することができる。トランスT1,T2の出力電圧を用いて逓倍電圧整流回路を動作させると、当該回路を構成するコンデンサ10〜12の容量を小さく設定しても十分な値の高電圧を発生させることが可能になり、外形寸法の小さいコンデンサを用いて当該逓倍電圧整流回路を小型化することができる。
また、電源1からみて並列接続され交互に動作するトランスT1,T2の出力電圧を用いてDC/DCコンバータの出力電圧や逓倍電圧整流回路の出力電圧を発生させているので、トランスT1,T2からリップルの少ない電圧を発生させることができ、また回路動作に伴って発生するノイズを抑制することができる。
【0033】
以上のように実施の形態1によれば、二つのトランスT1,T2の出力電圧の電位差を入力して放電灯22の起動に用いる高電圧を発生するように逓倍電圧整流回路を構成したので、部品点数を少なく抑えることができ、コストを抑制すると共に小型化を図ることができるという効果がある。
また、制御部4が、スイッチング素子2,3のONデューティを一定としてトランスT1,T2を動作させ、DC/DCコンバータの出力電圧を保持するコンデンサ13が点灯電圧に達するとトランスT1,T2の動作を停止させ、点灯電圧より低くなったときトランスT1,Tを動作させてコンデンサ13へ電圧を印加するようにしたので、逓倍電圧整流回路には所定の電位差が入力され正常な高電圧を発生させることができ、IGN回路のコンデンサ20の充電を有効に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施の形態1による放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】実施の形態1による放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。
【図3】実施の形態1による放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 電源、2,3 スイッチング素子、4 制御部(制御手段)、5〜9 ダイオード、10〜13 コンデンサ、14〜17 トランジスタ、18 制御部、19 抵抗、20 コンデンサ、21 GAPスイッチ、22 放電灯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を昇圧するトランスを有し並列接続した複数のDC/DCコンバータと、
前記各DC/DCコンバータのトランスの動作を制御する制御手段と、
前記各トランスの出力電圧の電位差を用いて放電灯の起動に使用する高電圧を発生する逓倍電圧整流回路とを備え、前記制御手段は、前記各DC/DCコンバータのトランスの動作位相をずらすように制御することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
制御手段は、逓倍電圧整流回路へ入力される電位差が大きくなるように各DC/DCコンバータのトランスの動作位相とデューティを調整することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
制御手段は、DC/DCコンバータの出力電圧を放電灯の点灯電圧に保持するコンデンサの両端電圧が前記点灯電圧に達しているときトランスの電圧出力を停止させ、前記コンデンサの両端電圧が前記点灯電圧より小さくなると前記トランスから電圧を出力させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
逓倍電圧整流回路は、各トランスの放電灯の点灯電圧を発生する2次側巻き線から電圧を入力することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−196304(P2006−196304A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6503(P2005−6503)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】