説明

故障応答機能を備えた、パワー半導体スイッチを駆動するための回路装置、並びにそれに付属する方法。

【課題】2次側から1次側への故障応答をより簡単で且つ集積可能な手段を用いて可能とする、ブリッジ装置内のパワー半導体スイッチ用の回路装置、並びにそれに付属する方法を紹介する。
【解決手段】回路装置が1次側(20)と2次側(30)の間に故障ステータス伝送のためのダイオード(60)を有する。故障のない稼動時、2次側はダイオードのカソードに「ハイ」レベル(Vd)を印加し、故障のある稼動時には「ロー」レベル(Gd)を印加する。2次側から1次側への故障ステータスは、2次側が、開かれているBOTスイッチ(52)又は高抵抗の抵抗(70)を介してほぼグラウンド・基準電位上にあるためにダイオードを通じて電流の流れが行なわれることにより認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリッジ回路内に配設されているパワースイッチを駆動(コントロール)するための好ましくは集積(インテグレーテッド)された回路装置、並びにそれに付属する方法に関する。パワースイッチのこの種のブリッジ装置は、ハーフブリッジ回路、又はH(2相)ブリッジ回路、又は3相ブリッジ回路として知られていて、この際、単相ハーフブリッジがこの種のパワー電子回路の基礎構成要素を示すことになる。ハーフブリッジ回路内には、2つのパワースイッチ、即ち第1の所謂TOPスイッチと第2の所謂BOTスイッチが直列回路として配設されている。この種のハーフブリッジは、通常、直流中間回路に対する接続部を有する。センタータップは典型的には負荷と接続されている。
【背景技術】
【0002】
パワースイッチを1つのパワー半導体素子として構成する場合、又は、パワースイッチを平行に又は直列に接続されている複数のパワー半導体素子として構成する場合、パワースイッチを駆動するためには駆動回路が必要不可欠である。これらの駆動回路は、従来技術において、複数の部分回路或いは機能ブロックから構成されている。上位の制御部からくる駆動信号は、第1部分回路、即ち1次側で評価され、他のコンポーネントを介して、ドライバー回路、即ち2次側に供給され、そして最終的には各々のパワースイッチの制御入力部に供給される。比較的高い中間回路電圧、例えば50Vよりも大きな中間回路電圧を有するハーフブリッジ装置では、制御信号を評価するための1次側が電位的に/直流電気的に2次側から分離されていて、その理由は、パワースイッチ、即ちハーフブリッジの少なくともTOPスイッチが、稼動時には一定の電位上にはなく、それにより電圧的な絶縁が不可避であるためである。従来技術においてこの分離は、例えば、トランスフォーマ、オプトカプラ、或いは光導波路を用いて行われる。この直流電気的な分離は少なくともTOPスイッチに適用されるが、出力が比較的高い場合には、スイッチング時のグラウンド電位の起こり得るスリップに基づき、BOTスイッチのためにも実施される。
【0003】
外部の直流電気的な分離を排除した、600V又は1200Vに至るまでの電圧クラスのパワースイッチ用の集積回路装置も知られている。これらのモノリシック集積回路において従来技術では所謂レベルシフタが少なくともTOPスイッチのために使用される。それによりこれらの電子構成要素及び絶縁技術は1次側から2次側への電位差を克服する。
【0004】
パワースイッチを駆動するためのモノリシック集積回路装置に関する上述の構成において、TOPスイッチの2次側のための少なくとも最も簡単なコンフィギュレーションでは1次側への故障応答のための可能性が提供されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎を成す課題は、2次側から1次側への故障応答をより簡単で且つ集積可能(組込可能)な手段を用いて可能とする、ブリッジ装置内のパワー半導体スイッチ用の好ましくはモノリシック集積された回路装置、並びにそれに付属する方法を紹介することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、本発明に従い、請求項1並びに請求項4に記載した措置により解決される。有利な構成形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の思想は、1次側の部分(1次側)と各々の2次側の部分(2次側)とから成るブリッジトポロジーにおいてパワー半導体スイッチを駆動するための周知の回路装置から出発している。このブリッジ回路は、第1スイッチ、即ちTOPスイッチと、第2スイッチ、即ちBOTスイッチとから構成される。これらのスイッチは従来技術により直流中間回路と接続されている。TOPスイッチとBOTスイッチとの間の中間引出部(センタータップ)はブリッジ回路の交流出力部を形成する。駆動のための回路装置は、その1次側において、少なくとも1つの信号処理部と、電位を伴わずに少なくとも1つの2次側を駆動するための少なくとも1つのレベルシフタとを有する。この2次側の方は、少なくとも1つの信号処理部と、各々のスイッチのための少なくとも1つのドライバーステージとを有する。
【0008】
本発明は、パワー半導体スイッチを駆動するための好ましくはモノリシック集積された回路装置を紹介し、この際、1次側と少なくとも1つの2次側との間には、2次側から1次側に故障ステータス伝送するためのダイオードが配設されている。この際、ダイオードのアノード側の端子(ターミナル)は1次側に配設されていて、カソード側の端子はドライバー回路の2次側に配設されている。更にこの回路装置は1次側において故障ステータス認識のためのフィルタリング部と電流検知部とを有し、2次側において故障ステータス実装のための回路を有する。これらの両方の回路部分はダイオードと接続されている。
【0009】
上記の種類の回路装置内で2次側から1次側に故障伝送するための付属の方法は、1次側において、電流検知機能、並びに好ましくは電圧調整機能を有し、この電圧調整機能は、1次側の稼動電圧と同じ又はそれよりも小さい定義された電圧をダイオードに印加する。
【0010】
故障のない稼動時、TOPスイッチに付設された2次側の故障ステータス実装部はダイオードのカソードに「ハイ」レベルを設定し、故障のある稼動時にこの故障ステータス実装部は「ロー」レベルを有する。2次側が1次側に対して高い正のオフセット電圧を有する(TOPスイッチが開いている)のであれば、電流の流れは行なわれ得ない(ダイオードは遮断されている)。TOPスイッチが閉じていて、BOTスイッチが開いている場合、或いは、BOTスイッチと平行の高抵抗の抵抗により、2次側の回路は故障ステータス実装のためにグラウンド・基準電位に引き込まされる。この場合、実装された2次側の故障ステータスが1次側により、電流の流れが導通するダイオードによって可能であることにより認識される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に図1及び図2の実施例に基づき本発明の思想を更に詳細に説明する。
【0012】
図1は従来技術によるブリッジトポロジーとしてパワー半導体スイッチを駆動するための回路装置を示している。図面の簡素化のために1つのハーフブリッジだけが描かれている。他のブリッジトポロジーはそれに対応する。
【0013】
このブリッジトポロジーにおける回路装置内でIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)のようなパワー半導体素子(50、52)を駆動する場合、一方では例えばマイクロコントローラ(10)の形式の上位の制御部(10)及び回路装置の1次側(20)と、他方では回路装置の2次側(30、32)及びパワー半導体素子(50、52)との間の電圧差に基づき、電位分離が必要不可欠である。従来技術に応じ、電離分離の様々な可能性が知られていて、例えば、トランスフォーマ(40、42)、オプトカプラ、光導波路、又は対応的な耐電圧(絶縁耐力)を有する電子構成要素である。
【0014】
1次側と2次側がモノリシック集積の場合、1次側から2次側に制御信号を伝達するためには、多くの場合、レベルシフタが使用される。これらの構成要素を用い、スイッチオン(ターンオン)・スイッチオフ(ターンオフ)信号が1次側(低電圧側)から2次側(高電圧側)へと伝達され得る。パワー電子システムの障害のない稼動にとって本質的なことは、例えば、TOPスイッチ及びBOTスイッチの具体的なスイッチング状態又は種々の故障状態に関する、2次側における稼動状態の認識である。
【0015】
2次側から1次側への信号伝達に対応するこの種のステータス応答要求は、トランスフォーマ、双方向性オプトカプラ、又は双方向性光導波路を用いたハイブリッド式の解決策において可能である。モノリシック集積の解決策では、好ましくはpMOS高電圧トランジスタを使用した相補的なレベルシフタが知られている。これらの全ての解決策の短所は、追加的な信号パスが追加的なコスト及び/又は追加的な技術手間をもって実現されなくてはならないということである。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明に従って構成された、ブリッジトポロジーにおいてパワー半導体スイッチ(50、52)を駆動するためのモノリシック集積された回路装置(100)を示している。ここでは1次側(20)と2次側(30)との間にダイオードが配設されている。この際、このダイオードは、1次側と2次側との間の最大電位差に対応する耐電圧を有する。このダイオードのアノードは、1次側により、局所的な稼動電圧と同じ又はそれよりも小さい電圧で付勢される。
【0017】
BOTスイッチに付設されている2次側(32)は電離分離を伴うことなく1次側(20)と接続されている。本発明に従う回路装置の構成及びそれに付属する方法では、1次側(20)の回路部分により、どの程度で電流がダイオード(60)を通じて流れるかが監視される。2次側(30)が1次側(20)に対して高い正のオフセット電圧を有するのであれば、ダイオード(60)を通じる持続的な電流の流れは行なわれ得ない。従って通常稼動時には、TOPスイッチ(50)のスイッチオン段階中、ステータス信号が2次側(30)から1次側(20)へと伝達されることはない。同じことが、2次側(30)が高いオフセット電位に留まっている故障状態にも当てはまる。駆動モードにおいてTOPスイッチ(50)が「オフ」でありBOTスイッチ(52)が「オン」である場合がそうであるが、しかし1次側(20)と2次側(30)がほぼ同じ基準電位上にあれば、ダイオード(60)を通じて電流が流れる。この状態は、通常稼動時、周期的に進行される。
【0018】
例えばブートストラップ・ダイオードを介して2次側の固有のエネルギー供給を伴う、集積されたシステム又はハイブリッド式のシステムにおいて、この稼動状態はむしろ必然的に必要であり、従って使用され得る。ここではダイオード(60)のカソード側の端子(ターミナル)における電位が決定的である。この端子が2次側(30)の稼動電圧(Vd)上に位置すると、アノード側の端子における電圧制御のディメンショニングの結果、静的な電流の流れは発生しない。この状態は2次側(30)の故障のない機能を合図し、例えば正しくスイッチオフされたTOPスイッチ(50)である。他方、2次側に配設されているゲートドライバーが、TOPスイッチ(50)がスイッチオンされている段階中に故障を認識すると、このステータスは局所的に記憶され、ダイオード(60)の2次側の端子がグラウンド・基準電位(Gd)に置かれる。BOTスイッチ(52)の次に続くスイッチオン段階の経過時には電流がダイオード(60)を通じて流れ、2次側(30)の認識された故障ステータスを、好ましくは後続する電圧調整部(24)を有する電流検知回路(22)として形成されている1次側(20)の故障検知部へと合図する。
【0019】
2次側の故障記憶器のリセットは次のTOPスイッチオンパルスを介して行なわれ、その理由は、システムが故障を無視する或いは除去されたものと見なす場合にだけそのパルスが生成されるためである。1次側(20)の電圧調整部は、確実な信号伝送に対して一時的に負のオフセット電圧の結果としてダイオード(60)の過渡的な再充電電流と導通電流との間のSN比を最適化するために用いられる。
【0020】
最も簡単な場合、ダイオード(60)のアノードは、直接的に1次側の稼動電圧の電位上に位置する。流れる電流の検知は、抵抗・電圧降下、電流部分の分断(デカップリング)、又は別の周知の原理を介して行なわれ得る。重要なことは、2次側(30)と1次側(20)との間のダイオードの結合キャパシタンスの結果として発生する過渡的な再充電電流の、レベルシフタに対応して適合されたフィルタリングである。
【0021】
追加的に、十分に長く存在している電流評価の可能性を可能とする駆動マスタに対し、1次側の故障検知のアクティブな監視段階のウインドー処理(時間・相・制御)が行なわれる。回路装置の構造上の単純化、並びにアクティブにスイッチングされている高電圧構成要素の廃止は、頑丈な実装を可能にしてくれる。それに対し、読出し段階が時間的に制限されているということが短所であると分かっている。従って本方法は完全に汎用的なものではなく、TOPスイッチ(50)のスイッチオフ段階中にだけ故障・リターン伝達にとって適している。また他方では極めて僅かなコスト手間によりシステム内への応答機能が集積可能である。
【0022】
提案された方式は、全般的に、ブリッジ回路のスイッチング状態の周期的な進行時に適用可能である。2次側(30)の稼動電圧監視の例としての適用事例において、容量的なブロッキングのディメンショニングを用い、電圧が稼動電圧閾値を下回った後にまだ次のスイッチング段階に至るまで十分な値を維持することが保証されなくてはならない。前記の回路装置及びそれに付属の方法により、局所的に中間記憶されている故障ステータスが2次側から1次側へと伝達され、TOPスイッチ(50)の新たなスイッチオンが故障時には従って回避される。
【0023】
両方のスイッチがスイッチオフされているスイッチング状態では基準電位が定義されてなく浮遊状態にあり、それにより確実なリターン伝送は行なわれ得ない。そのようなケースにおいても故障伝達を保証するために、BOTスイッチが高抵抗でブリッジされることにより、高抵抗の抵抗(70)を用い、ブリッジ回路の交流タップがグラウンド・基準電位と高抵抗で接続されている。抵抗のディメンショニングにより、通常の稼動時には横断電流が顧慮されなくてはならない。この電流は一方では最小であるべきで、他方では、全ブリッジ出力部の結合キャパシタンスを放電するために十分であるできである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術による回路装置を示す図である。
【図2】本発明に従って構成された回路装置を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10 上位の制御部
20 1次側
22 電流検知回路
24 電圧調整部
30、32 2次側
40、42 トランスフォーマ
50、52 パワー半導体素子
60 ダイオード
100 回路装置(モノリシック集積)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側の部分(1次側、20)と、ブリッジ回路のTOPスイッチ(50)及びBOTスイッチ(52)のための各々の2次側の部分(2次側、30)とから成るブリッジトポロジーにおいてパワー半導体スイッチ(50、52)を駆動するための好ましくはモノリシック集積された回路装置(100)において、1次側(20)が、少なくとも1つの信号処理部と、電位を伴わずに少なくとも1つの2次側(30)を駆動するための少なくとも1つのレベルシフタ(44)とを有し、この2次側(30)が、少なくとも1つの信号処理部と、各々のスイッチのための少なくとも1つのドライバーステージとを有し、1次側(20)と少なくとも1つの2次側(30)との間には、2次側(30)から1次側(20)に故障ステータス伝送するためのダイオード(60)が配設されていて、そのアノード側の端子が1次側(20)に配設されていて、そのカソード側の端子がドライバー回路の2次側(30)に配設されていて、このダイオード(60)が、1次側(20)において故障ステータス認識のためのフィルタリング部と電流検知部と接続されていて、2次側(30)において故障ステータス実装のための回路と接続されていることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
ブリッジ回路の中間引出部、及びそれにより故障ステータス実装のための回路も、高抵抗の抵抗(70)を介して全回路装置のグラウンド・基準電位と接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
ダイオード(60)が、1次側(20)と2次側(30)との間の最大電位差に対応する耐電圧を有することを特徴とする、請求項1に記載の回路装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回路装置内で2次側(30)から1次側(20)に故障伝送するための方法において、1次側(20)により、1次側(20)の稼動電圧と同じ又はそれよりも小さい定義された電圧がダイオード(60)のアノードに印加され、TOPスイッチ(50)に付設された2次側(30)の故障のない稼動時には故障ステータス実装回路を用いてダイオード(60)のカソードが「ハイ」レベル(Vd)を有し、故障のある稼動時には故障ステータス実装回路を用いて「ロー」レベル(Gd)を有し、それにより、TOPスイッチ(50)が閉じている場合、2次側(30)から1次側(20)への故障ステータスが、2次側(30)の「ロー」レベルが、開かれているBOTスイッチ(52)又は高抵抗の抵抗(70)を介してほぼグラウンド・基準電位上にあるためにダイオード(60)を通じて電流の流れが行なわれるので認識されることを特徴とする方法。
【請求項5】
ダイオード(60)を介した電流の流れが、フィルタリング及び時間・相・制御の後に、抵抗電圧降下の検知を用い、電流の流れ又は電流部分の分断の結果として評価されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−333458(P2006−333458A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127544(P2006−127544)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(592221975)ゼミクロン エレクトローニク ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (97)
【Fターム(参考)】