説明

教師データ作成方法、並びに、画像分類方法および画像分類装置

【課題】基板上の欠陥を分類する分類器の学習に使用される教師データの作成において、教師データに利用される欠陥画像のカテゴリの決定を高速かつ適切に行う。
【解決手段】カテゴリが未決定の対象欠陥画像7から一の種類の特徴量Uおよび2つのカテゴリ81,82の典型的な欠陥を示す典型画像811,812,821から当該一の種類の特徴量Tx11、Tx12、Tx21が取得される。次に、特徴量Uと特徴量Tx11、Tx12、Tx21との3つの特徴量差が求められ、特徴量差が最も小さい典型画像811が属するカテゴリ81に1票が投票される。同様の処理が特徴量の残りの種類についても行われ、カテゴリ81,82のうち得票数が多いカテゴリ81が対象欠陥画像7が属するカテゴリとして決定される。このように、特徴量の種類毎に特徴量差を求めて投票を行うことにより、対象欠陥画像のカテゴリの決定が高速かつ適切に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分類器の学習に使用される教師データを作成する教師データ作成方法、並びに、教師データの作成を伴う画像分類方法および画像分類装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、ガラス基板、プリント基板等の製造では、異物や傷、エッチング不良等の欠陥を検査するために光学顕微鏡や走査電子顕微鏡等を用いて外観検査が行われる。従来より、このような検査工程において検出された欠陥に対して、さらに詳細な解析を行うことによりその欠陥の発生原因を特定し、欠陥に対する対策が行われてきた。
【0003】
近年では、基板上のパターンの複雑化および微細化に伴い、検出される欠陥の種類および数量が増加する傾向にあり、検査工程で検出された欠陥を自動的に分類する自動分類が提案されている。自動分類により欠陥の解析を迅速かつ効率的に行うことが実現され、発生頻度の高い欠陥の種類に注目して優先的に対策を施すことが可能となる。
【0004】
自動分類では、欠陥を分類する際にニューラルネットワークや決定木、判別分析等を利用した分類器が用いられる。分類器に自動分類を行わせるには、欠陥画像およびそのカテゴリ(すなわち、欠陥画像の種類)を示す信号を含む教師データを用意して分類器を学習させる必要がある。特許文献1では、オペレータがモニタに表示された教示用欠陥画像を観察し、欠陥のカテゴリの一覧表から該当するものを教示用欠陥画像に付与することにより教師データの作成が行われる。
【特許文献1】特開2000−57349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動分類の性能は、分類器を学習させる教師データの質に大きく依存する。質が高い教師データを用意するには、操作者による大量かつ正確な教示作業が求められ、多大な労力が必要となる。特許文献1では、教示用欠陥画像に対するカテゴリの付与をオペレータが行う必要があり、教師データの作成を迅速に行うことができない。なお、操作者による教示作業では、操作者の曖昧な判断によるカテゴリの付与により、誤ったカテゴリが付与された欠陥画像を含む教師データが作成されて自動分類の性能が低下するおそれもある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、教師データに利用される欠陥画像のカテゴリの決定を高速に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板上の欠陥を示す欠陥画像を分類する分類器の学習に使用される教師データを作成する教師データ作成方法であって、前記分類器により欠陥画像が分類される複数のカテゴリのそれぞれにおいて、予め典型的な欠陥を示す少なくとも1つの典型画像が指定されており、前記教師データ作成方法が、a)未分類の欠陥画像である対象欠陥画像から一の種類の特徴量を取得する工程と、b)全ての典型画像の前記一の種類の特徴量と前記対象欠陥画像の前記一の種類の特徴量との差である複数の特徴量差を求める工程と、c)前記複数の特徴量差のうち最も値の小さいものに対応する典型画像が属するカテゴリに投票を行う工程と、d)前記対象欠陥画像の特徴量の各種類について前記a)ないしc)工程を行う工程と、e)前記複数のカテゴリのうち得票数が最も多いカテゴリを前記対象欠陥画像が属するカテゴリとして決定する工程とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の教師データ作成方法であって、f)前記e)工程において決定されたカテゴリの典型画像に前記対象欠陥画像を加える工程をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の教師データ作成方法であって、前記e)工程において、得票数が最も多いカテゴリと得票数が2番目に多いカテゴリとの得票数の差が所定値以下である場合に、前記対象欠陥画像が未分類のままとされる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、基板上の欠陥を示す欠陥画像を分類する画像分類方法であって、請求項1ないし3のいずれかに記載の教師データ作成方法により作成された教師データを用いて分類器を学習させる工程と、前記分類器により欠陥画像を前記複数のカテゴリのいずれかに分類する工程とを備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、基板上の欠陥を示す欠陥画像を分類する画像分類装置であって、欠陥画像を分類する分類器の学習に使用される教師データを作成する教師データ作成部と、欠陥画像を分類する分類器とを備え、前記分類器により欠陥画像が分類される複数のカテゴリのそれぞれにおいて、予め典型的な欠陥を示す少なくとも1つの典型画像が指定されており、前記教師データ作成部が、a)未分類の欠陥画像である対象欠陥画像から一の種類の特徴量を取得する工程と、b)全ての典型画像の前記一の種類の特徴量と前記対象欠陥画像の前記一の種類の特徴量との差である複数の特徴量差を求める工程と、c)前記複数の特徴量差のうち最も値の小さいものに対応する典型画像が属するカテゴリに投票を行う工程と、d)前記対象欠陥画像の特徴量の各種類について前記a)ないしc)工程を行う工程と、e)前記複数のカテゴリのうち得票数が最も多いカテゴリを前記対象欠陥画像が属するカテゴリとして決定する工程とを実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、典型画像と対象欠陥画像との種類毎の特徴量の差を互いに関連させることなく複数種類の特徴量に関する相違を求め、さらにカテゴリへの投票を利用することにより、教師データに利用される欠陥画像のカテゴリの決定を高速かつ適切に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明では、未分類の対象欠陥画像をより適切なカテゴリに分類することが可能とされ、請求項3の発明では、教師データの質の低下が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一の実施の形態に係る画像分類装置1の概略構成を示す図であり、画像分類装置1により半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)上の欠陥を示す欠陥画像の分類が行われる。画像分類装置1は基板9上の検査対象領域を撮像する撮像装置2、撮像装置2からの画像データに基づいて欠陥検査を行って欠陥が検出された場合に欠陥が属すべきカテゴリへと欠陥を自動分類する検査・分類装置4、並びに、画像分類装置1の全体動作を制御するとともに検査・分類装置4にて欠陥の分類に利用される分類器421を生成するホストコンピュータ5を有する。基板9上に存在する欠陥の種類は、例えば、欠け、突起、断線、ショート、異物であり、これらが欠陥のカテゴリとされる。また、撮像装置2は基板9の製造ラインに組み込まれ、画像分類装置1はいわゆるインライン型のシステムとなっている。
【0015】
撮像装置2は、基板9上の検査対象領域を撮像して画像データを取得する撮像部21、基板9を保持するステージ22、および、撮像部21に対してステージ22を相対的に移動するステージ駆動部23を有し、撮像部21は、照明光を出射する照明部211、基板9に照明光を導くとともに基板9からの光が入射する光学系212、および、光学系212により結像された基板9の像を電気信号に変換する撮像デバイス213を有する。ステージ駆動部23はボールねじ、ガイドレール、モータ等により構成され、ホストコンピュータ5がステージ駆動部23および撮像部21を制御することにより、基板9上の検査対象領域が撮像される。
【0016】
検査・分類装置4は、検査対象領域の画像データを処理しつつ欠陥を検出する欠陥検出部41、および、欠陥画像を分類する欠陥自動分類部42を有する。欠陥検出部41は検査対象領域の画像データを高速に処理する専用の電気的回路を有し、撮像された画像と欠陥が存在しない参照画像との比較や画像処理により検査対象領域の欠陥検査を行う。欠陥自動分類部42は各種演算処理を行うCPUや各種情報を記憶するメモリ等により構成され、ニューラルネットワーク、決定木、判別分析等を利用する分類器421を用いて欠陥の分類(すなわち、欠陥画像の分類)を実行する。
【0017】
図2は画像分類装置1による欠陥画像の分類の流れを示す図である。まず、図1に示す撮像装置2が基板9を撮像することにより検査・分類装置4の欠陥検出部41が画像データを取得する(ステップS11)。次に、欠陥検出部41が検査対象領域の欠陥検査を行い、欠陥が検出されると(ステップS12)、欠陥部分の画像(すなわち、欠陥画像)のデータが欠陥自動分類部42へと送信される。欠陥自動分類部42は欠陥画像の複数種類の特徴量を算出し(ステップS13)、欠陥画像の特徴量が欠陥自動分類部42の分類器421に入力されて分類結果が出力される。すなわち、分類器421により欠陥画像が複数のカテゴリのいずれかに分類される(ステップS14)。画像分類装置1では、欠陥検出部41にて欠陥が検出される毎に特徴量の算出がリアルタイムにて行われ、多数の欠陥画像の自動分類が高速に行われる。
【0018】
次に、ホストコンピュータ5による分類器の学習について説明する。図3はホストコンピュータ5の構成を示す図である。ホストコンピュータ5は各種演算処理を行うCPU51、基本プログラムを記憶するROM52および各種情報を記憶するRAM53をバスラインに接続した一般的なコンピュータシステムの構成となっている。バスラインにはさらに、情報記憶を行う固定ディスク54、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ55、操作者からの入力を受け付けるキーボード56aおよびマウス56b(以下、「入力部56」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置57、並びに、画像分類装置1の他の構成との間で信号を送受信する通信部58が、適宜、インターフェイス(I/F)を介する等して接続される。
【0019】
ホストコンピュータ5には、事前に読取装置57を介して記録媒体8からプログラム80が読み出されて固定ディスク54に記憶され、さらに、プログラム80はRAM53にコピーされるとともにCPU51によりRAM53内のプログラムに従って演算処理が実行される。
【0020】
図4はホストコンピュータ5のCPU51、ROM52、RAM53、固定ディスク54等により実現される分類器を学習させるための機能構成を示すブロック図であり、検査・分類装置4も示している。ホストコンピュータ5は分類器の学習に使用される教師データを作成する教師データ作成部61および教師データを用いて分類器を学習させる学習部62を有する。なお、これらの機能は専用の電気回路により構築されてもよく、部分的に専用の電気回路が利用されてもよい。
【0021】
教師データは欠陥画像のデータ、欠陥画像の特徴量および欠陥のカテゴリを示す情報である教示信号を含み、欠陥画像の特徴量として、例えば、欠陥の面積、明度平均、周囲長、扁平度、欠陥を楕円に近似した場合の長軸の傾き等が採用される。学習部62では、教師データから読み出された欠陥画像の特徴量がホストコンピュータ5内の分類器(図示省略)に入力され、分類器の出力が欠陥のカテゴリを示す教示信号と同じとなるように学習が行われ、学習結果、すなわち、学習後の分類器421(正確には、分類器421の構造や変数の値を示す情報)が欠陥自動分類部42へと転送される。
【0022】
図5はホストコンピュータ5の教師データ作成部61の機能構成を示すブロック図であり、ディスプレイ55、入力部56および学習部62も示している。教師データ作成部61は、欠陥画像のデータおよび欠陥画像に関する各種情報を記憶する記憶部611、欠陥画像の特徴量を算出する特徴量算出部612、および、欠陥画像が属すべきカテゴリを決定するカテゴリ決定部613を有する。
【0023】
記憶部611は、予め準備された多数の欠陥画像を記憶し、これらの欠陥画像の一部は後述するように操作者により各カテゴリに属する典型的な欠陥を示す欠陥画像(以下、「典型画像」という。)に指定されている。なお、欠陥画像は図1に示す撮像装置2および欠陥検出部41を利用して取得されてもよいし、別途用意されてもよい。カテゴリ決定部613は、未分類の欠陥画像(以下、「未教示画像」という。)のカテゴリを典型画像に基づいて自動的に決定し、特徴量算出部612は、典型画像および未教示画像の全種類の特徴量を算出する。
【0024】
図6は記憶部611内に記憶されている情報の構造の一部を示す図である。記憶部611では、図5に示す特徴量算出部612にて算出される欠陥画像の特徴量がその種類と共に欠陥画像のデータに関連付けられて記憶される。また、欠陥画像に対してカテゴリが決定されると当該カテゴリを示すカテゴリ番号が欠陥画像のデータに関連付けられたカテゴリ変数に記憶され、欠陥画像が典型画像に指定されると欠陥画像のデータに関連付けられた典型画像識別変数に1が記憶される。なお、初期状態ではカテゴリ変数および典型画像識別変数には0が記憶されている。
【0025】
図7および図8はホストコンピュータ5により教師データが作成されて分類器を学習させる流れを示す図である。まず、多数の欠陥画像のデータが図5に示す教師データ作成部61の記憶部611に準備され、特徴量算出部612により全ての欠陥画像の全種類の特徴量が算出される(ステップS21)。算出された特徴量は記憶部611に記憶される。次に、欠陥画像のデータに従って欠陥画像がディスプレイ上55に表示され、操作者が各カテゴリにおいて少なくとも1つの典型画像を指定し、典型画像のカテゴリを示す教示信号が入力部56を介して教師データ作成部61に入力される(ステップS22)。これにより、典型画像に指定された欠陥画像のデータの図6に示すカテゴリ変数にカテゴリ番号が記憶されるとともに典型画像識別変数に1が記憶される。
【0026】
典型画像が指定されると、図5に示すカテゴリ決定部613が、1つの未教示画像を対象欠陥画像として決定し(ステップS23)、記憶部611から当該対象欠陥画像の全種類の特徴量および全ての典型画像の全種類の特徴量を取得する。さらに、対象欠陥画像および全ての典型画像の特徴量の一の種類が選択される(以下、選択された種類の特徴量を「選択特徴量」という。)(ステップS24)。
【0027】
そして、全ての典型画像の選択特徴量と対象欠陥画像の選択特徴量との差である複数の特徴量差が求められ(各特徴量差は1つの典型画像の選択特徴量と対象欠陥画像の選択特徴量との差である。)(ステップS25)、複数の特徴量差のうち最も値の小さいものが特定されてこれに対応する典型画像が属するカテゴリに1票が投票される(ステップS26)。すなわち、カテゴリ決定部613では、予めカテゴリ毎に投票用の変数が割り当てられており当該変数に1が加算される。なお、変数は初期化の際に0とされている。
【0028】
図9はカテゴリへの投票の具体例を説明する図であり、特徴量を座標値とする特徴量空間における複数の典型画像の位置および対象欠陥画像の位置を例示している。図9では説明の便宜上、特徴量の種類の数およびカテゴリの数をそれぞれ2としているが、実際には、特徴量空間は多数の特徴量の種類により定められ、多数のカテゴリが設定される。また、図9における左側のカテゴリ81に2つの典型画像811,812が指定され、右側のカテゴリ82に1つの典型画像821が指定されているものとする。
【0029】
図9において横軸上の特徴量が選択特徴量として選択されると(ステップS24)、対象欠陥画像7の特徴量Uとカテゴリ81の典型画像811の特徴量Tx11との特徴量差である絶対値|U−Tx11|、特徴量Uとカテゴリ81の典型画像812の特徴量Tx12との特徴量差である絶対値|U−Tx12|、および、特徴量Uとカテゴリ82の典型画像821の特徴量Tx21との特徴量差である絶対値|U−Tx21|が求められる(ステップS25)。これらの特徴量差のうち|U−Tx11|が最も小さいため、典型画像811が属するカテゴリ81に1票が投票される(ステップS26)。
【0030】
1回の投票が完了すると、次に、選択特徴量の種類が変更され(ステップS27,S24)、全ての典型画像の選択特徴量と対象欠陥画像の選択特徴量との複数の特徴量差が求められ、最も小さい特徴量差に対応する典型画像のカテゴリに1票が投票される(ステップS25,S26)。図9の場合、縦軸が示す特徴量が選択特徴量として選択され(ステップS24)、縦軸上の対象欠陥画像7の特徴量Uとカテゴリ81の典型画像811,812の特徴量Ty11,Ty12、および、カテゴリ82の典型画像821の特徴量Ty21との特徴量差である絶対値|U−Ty11|、|U−Ty12|、|U−Ty21|が求められ、これらのうち最も小さい|U−Ty12|に対応する典型画像812が属するカテゴリ81に1票が投票される。以上の投票の結果、図10に示すようにカテゴリ81の得票数が2となり、カテゴリ82の得票数が0となる。
【0031】
特徴量の種類の数がpである特徴量空間にq個のカテゴリが設定されている場合、カテゴリへの投票では、まず、対象欠陥画像の特徴量ベクトルU=(U、U、…、U)の一の種類の特徴量U(kは1〜pの任意の整数)とカテゴリCの典型画像jの特徴量ベクトルTij=(Tij1、Tij2、…、Tijp)の一の種類の特徴量Tijkとの特徴量差である絶対値|U−Tijk|が計算される。ただし、iは1〜qの任意の整数であり、jはカテゴリCに含まれる典型画像の総数をrとして1〜rの任意の整数である。そして、複数の特徴量差のうち最も小さい特徴量差に対応する典型画像のカテゴリに1票が投票される(ステップS24〜S26)。
【0032】
さらに、対象欠陥画像の特徴量の全種類について投票が行われたか否かが確認され(ステップS27)、投票が行われていない特徴量の種類が存在する場合には、当該種類についてステップS24〜S26が行われる。特徴量の全種類について投票が行われると、カテゴリ毎の得票数を示す投票結果(1つのカテゴリが最大p票を獲得する。)が得られる。
【0033】
投票結果が取得されると、次に、カテゴリ決定部613(図5参照)では投票結果に基づいて対象欠陥画像のカテゴリを決定するか否かが判定される(図8:ステップS31)。得票数が最も多いカテゴリと2番目に多いカテゴリとの得票数の差が所定値、例えば、総投票数の10%より大きい場合には、複数のカテゴリのうち得票数が最も多いカテゴリが対象欠陥画像が属するカテゴリとして決定される(ステップS32)。これにより、図6に示すように記憶部611の対象欠陥画像に割り当てられたカテゴリ変数に得票数の最も多いカテゴリを示すカテゴリ番号が記憶される。以下、上記処理により未教示画像のうちカテゴリが決定されたものを「教示済画像」という。なお、決定されたカテゴリは操作者により確認された上で最終的に確定されることが好ましい。
【0034】
一方、得票数が最も多いカテゴリと得票数が2番目に多いカテゴリとの得票数の差が所定値以下である場合、対象欠陥画像のカテゴリの決定は行われない(すなわち、対象欠陥画像は未分類のままとされる。)。得票数が最も多いカテゴリが2以上存在する場合も対象欠陥画像は未分類のままとされる。
【0035】
その後、画像分類装置1では、投票処理が行われていない未教示画像が存在するか否かが確認され(ステップS33)、存在する場合には、図5に示す教師データ作成部61により、次の対象欠陥画像の決定(ステップS23)および既述のステップS24〜S27,S31が実行されて次の対象欠陥画像に対してカテゴリの決定が適宜行われる(ステップS32)。
【0036】
全ての未教示画像について投票処理が行われると、教師データ作成部61の記憶部611内に保存される典型画像のデータおよび教示済画像のデータ、並びに、これらの特徴量およびカテゴリの情報が教師データとして学習部62に転送され、学習部62にて教師データを用いて分類器の学習が行われる(ステップS34)。すなわち、分類器(図4参照)を構成する変数の値が決定されたり、構造が決定されて分類器が生成される。
【0037】
以上、画像分類装置1の構成および動作について説明したが、画像分類装置1では、未教示画像である対象欠陥画像のカテゴリの決定の際に、典型画像と対象欠陥画像との種類毎の特徴量の差を互いに関連させることなく複数種類の特徴量に関する相違を求めることにより、仮に当該相違が特徴量空間における典型画像の位置と対象欠陥画像の位置とを結ぶユークリッド距離(全種類の特徴量差を2乗したものの和の平方根)として求められる場合に比べて計算が簡素化される。これにより、未教示画像の分類(すなわち、属するカテゴリの決定)が高速に行われる。また、特徴量の各種類についてカテゴリへの投票を行うことにより、投票が行われなかったカテゴリにはその種類の特徴量の影響が全く及ばず、特徴量の種類毎に独立して計算が行われることとなるため、ユークリッド距離を求めてカテゴリが決定される場合に比べて、特徴量の種類毎の数値範囲のばらつきや特定の種類の特徴量の影響を防止するために全種類の特徴量差のそれぞれを正規化する処理や、分散分析(いわゆる、ANOVA(analysis of variance))等による不必要な特徴量の種類を排除する処理が不要となる。これにより、未教示画像の分類を高速かつ適切に行うことが実現される。
【0038】
画像分類装置1では、操作者により複数のカテゴリのそれぞれにおいて予め指定された典型画像に基づいて未教示画像のカテゴリの決定(すなわち、未教示画像の分類)が自動的に行われることから、操作者による教師データ作成作業の負担が軽減される。
【0039】
さらに、未教示画像である対象欠陥画像のカテゴリを決定するか否かが判定される際に、得票数が最も多いカテゴリと2番目に多いカテゴリとの得票数の差が所定値以下であると対象欠陥画像が未分類のままとされてこの対象欠陥画像が教師データとして利用されないため、教師データの質の低下が防止される。また、画像分類装置1では、操作者が欠陥画像にカテゴリを付与する場合に比べて、誤ったカテゴリに属する欠陥画像の存在が低減されることから、各カテゴリにおいて複数の教示済画像が典型画像を中心としてばらつきの少ない状態で分布し、これにより、分類器の学習を早く終了させることができる。
【0040】
図11は画像分類装置1による未教示画像のカテゴリを決定する他の動作の流れの一部を示す図である。図11に示す動作では、未教示画像である対象欠陥画像に対してカテゴリが決定された後、操作者により当該対象欠陥画像を典型画像に追加するか否かが確認される。カテゴリの決定における他の処理は図7および図8に示す流れと同様である。
【0041】
図11に示すステップS32において対象欠陥画像のカテゴリが決定されると(すなわち、対象欠陥画像が教示済画像とされると)、図5に示す記憶部611から教示済画像のデータおよびそのカテゴリを示すカテゴリ番号が読み出されてディスプレイ55上に表示される。そして、決定されたカテゴリの典型画像に教示済画像を加えるか否かが操作者により判断され(ステップS41)、加える指示が入力部56を介して操作者により行われた場合には、教示済画像に割り当てられた典型画像識別変数(図6参照)に1が記憶される(ステップS42)。その後、他の未教示画像のカテゴリの決定処理へと移行する(ステップS33)。
【0042】
なお、教示済画像が典型画像に追加されない場合は典型画像識別変数は0のままとされる。また、既述のように、ステップS31において得票数が最も多いカテゴリと得票数が2番目に多いカテゴリの得票数との差が所定値以下である場合に、対象欠陥画像が未分類のままとされ、ステップS41,S42は行われない。
【0043】
画像分類装置1では、教示済画像(のうち適切なもの)が典型画像に加えられることにより、他の未教示画像をより適切なカテゴリに分類することが可能とされる。また、一旦カテゴリが決定されなかった未教示画像に対して、他の教示済画像が典型画像に加えられた後に再度カテゴリの決定処理が行われてよく、さらに、カテゴリの決定処理は、カテゴリが決定可能な欠陥画像がなくなる、すなわち、全てが教示済画像とされたり、最終的に未分類のままとされる未教示画像が残るまで繰り返し行われてもよい。教示済画像を典型画像に加えることなく全ての未教示画像のカテゴリの決定(または未分類の維持の決定)を行った後、教示済画像を典型画像に加えて未教示画像として残っているものに対してカテゴリの決定が再度行われてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、教師データに利用される多数の欠陥画像の特徴量が検査・分類装置4にて算出され、ホストコンピュータ5が検査・分類装置4から特徴量を取得してもよい。
【0045】
上記実施の形態では、予めカテゴリ決定部613が記憶部611から全種類の特徴量を取得しておき、ステップS24において選択特徴量が選択されるが、投票毎に記憶部611から選択特徴量のみが取得されてもよい。さらに、演算対象となる特徴量の種類が選択された段階で、典型画像や対象欠陥画像の選択特徴量が演算により求められてもよい。このように、カテゴリ決定部613では、特徴量の一の種類における投票毎に典型画像および対象欠陥画像から選択特徴量を取得する動作と同等であれば、特徴量の算出や準備はどのように行われてもよい。
【0046】
さらに、教師データからは欠陥画像のデータが省略されてもよく、この場合、欠陥画像を特定する変数が教師データに設けられる。また、教師データから特徴量が省略され、学習部62において教師データの欠陥画像のデータに基づいて特徴量が求められてもよい。
【0047】
上記実施の形態では、半導体基板に代えてガラス基板、プリント配線基板あるいは基板の露光に使用するマスク基板等の検査が行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】画像分類装置の構成を示す図である。
【図2】欠陥画像の分類の流れを示す図である。
【図3】ホストコンピュータの構成を示す図である。
【図4】ホストコンピュータの機能構成を示す図である。
【図5】教師データ作成部の機能構成を示す図である。
【図6】教師データ作成部の記憶部内に記憶される情報の構造を示す図である。
【図7】教師データを作成して分類器を学習させる流れを示す図である。
【図8】教師データを作成して分類器を学習させる流れを示す図である。
【図9】特徴量空間における典型画像の位置および対象欠陥画像の位置を例示する図である。
【図10】カテゴリへの投票の結果を示す図である。
【図11】対象欠陥画像のカテゴリを決定する他の動作の流れの一部を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 画像分類装置
7 対象欠陥画像
9 基板
61 教師データ作成部
81,82 (欠陥画像の)カテゴリ
421 分類器
811,812,821 典型画像
S11〜S14,S21〜S27,S31〜S34,S41,S42 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の欠陥を示す欠陥画像を分類する分類器の学習に使用される教師データを作成する教師データ作成方法であって、
前記分類器により欠陥画像が分類される複数のカテゴリのそれぞれにおいて、予め典型的な欠陥を示す少なくとも1つの典型画像が指定されており、
前記教師データ作成方法が、
a)未分類の欠陥画像である対象欠陥画像から一の種類の特徴量を取得する工程と、
b)全ての典型画像の前記一の種類の特徴量と前記対象欠陥画像の前記一の種類の特徴量との差である複数の特徴量差を求める工程と、
c)前記複数の特徴量差のうち最も値の小さいものに対応する典型画像が属するカテゴリに投票を行う工程と、
d)前記対象欠陥画像の特徴量の各種類について前記a)ないしc)工程を行う工程と、
e)前記複数のカテゴリのうち得票数が最も多いカテゴリを前記対象欠陥画像が属するカテゴリとして決定する工程と、
を備えることを特徴とする教師データ作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の教師データ作成方法であって、
f)前記e)工程において決定されたカテゴリの典型画像に前記対象欠陥画像を加える工程をさらに備えることを特徴とする教師データ作成方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の教師データ作成方法であって、
前記e)工程において、得票数が最も多いカテゴリと得票数が2番目に多いカテゴリとの得票数の差が所定値以下である場合に、前記対象欠陥画像が未分類のままとされることを特徴とする教師データ作成方法。
【請求項4】
基板上の欠陥を示す欠陥画像を分類する画像分類方法であって、
請求項1ないし3のいずれかに記載の教師データ作成方法により作成された教師データを用いて分類器を学習させる工程と、
前記分類器により欠陥画像を前記複数のカテゴリのいずれかに分類する工程と、
を備えることを特徴とする画像分類方法。
【請求項5】
基板上の欠陥を示す欠陥画像を分類する画像分類装置であって、
欠陥画像を分類する分類器の学習に使用される教師データを作成する教師データ作成部と、
欠陥画像を分類する分類器と、
を備え、
前記分類器により欠陥画像が分類される複数のカテゴリのそれぞれにおいて、予め典型的な欠陥を示す少なくとも1つの典型画像が指定されており、
前記教師データ作成部が、
a)未分類の欠陥画像である対象欠陥画像から一の種類の特徴量を取得する工程と、
b)全ての典型画像の前記一の種類の特徴量と前記対象欠陥画像の前記一の種類の特徴量との差である複数の特徴量差を求める工程と、
c)前記複数の特徴量差のうち最も値の小さいものに対応する典型画像が属するカテゴリに投票を行う工程と、
d)前記対象欠陥画像の特徴量の各種類について前記a)ないしc)工程を行う工程と、
e)前記複数のカテゴリのうち得票数が最も多いカテゴリを前記対象欠陥画像が属するカテゴリとして決定する工程と、
を実行することを特徴とする画像分類装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−71826(P2010−71826A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240146(P2008−240146)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】