説明

教示データの修正システム

【課題】加工ワークの形状が変化する場合に簡易に教示データの修正が行える教示データの修正システムの提供。
【解決手段】教示点を修正する教示データの修正システムにおいて、第一の加工ワーク13を加工するための教示点に関するパラメータを記憶する記憶手段と、第一の加工ワークとは形状の異なる第二の加工ワーク14に関する画像と教示点の画像とを重ね合わせて表示をするとともに、ポインティング手段で表示画面中の位置を指定できる表示手段と、ポインティング手段で教示点に関するパラメータが変更された際に、ポインティング手段で示される表示画面中の位置と変更前の教示点の位置とに基づいて、変更後の変更教示点に関するパラメータを算出する算出手段と、記憶されたパラメータを、変更後の変更教示点に関するパラメータにより更新する更新手段と、更新後の変更教示点と第二の加工ワークに関する画像とを重ね合わせて表示させる制御手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの教示データの修正に用いられる教示データの修正システムに関し、特に、熟練者でない者が教示データを容易に修正でき、修正したプログラミング内容を視覚的に把握できる教示データの修正システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のロボット、例えば加工ワークのバリ取り用ロボットを動作させる場合、該ロボットを動作させる動作プログラム(以下、「教示プログラム」と称する)を作成する必要がある。この教示プログラムを作成する方法として、例えば実際のバリ取り加工ラインにおいて、実機としてのロボットを用いて行うオンライン方式と、コンピュータによるシミュレーションを用いて実際のライン外で行うオフライン方式とが存在している。
【0003】
このうち、コンピュータによるシミュレーション方式の場合、ロボットモデルを含む作業環境の三次元モデル及びワークの三次元モデルを作成して表示画面に表示し、その表示画面上において、作業のポイントとなるティーチポイント(教示点とも称する)を設定すると共に、各ティーチポイントの通過順序などを定めて動作プログラムを作成する。
このようなシミュレーション方式の場合には、バリ取り加工ラインを停止させる必要がなく、しかも、ほぼ実際の作業環境にあった動作の設定が容易に可能となる利点がある。
【0004】
ところで、産業用ロボットの制御を行うためのプログラム言語としては、コンパイラタイプやインタプリタタイプ等がある。いずれのタイプのロボット言語の場合も、作業者であるユーザは、これらの言語が表示された画面を参照してプログラム言語の編集を行う。すなわち、ロボットの行う作業内容をロボット言語によるプログラムリストとして表示しているので、実際の作業内容を把握するのが難しいという問題点があり、プログラムに関する特別な知識と経験が要求される。
従来ではこのような課題に対し、特許文献1に示されるように、ユーザとのインタフェース機能を備えた産業用ロボットの教示のために使用されるプログラムの表示、作成や編集を簡易に視覚的に行う技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−152733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術においては以下に示す課題がある。
特許文献1によれば、加工関連対象物の工作機械に対するハンドリング作業をロボットに実行させる作業プログラムをオフラインで作成するとともに、特許文献1の図4に示されるように加工プログラムを視覚的に表示する。
一方、ラインに流れる加工ワークは種類や形状が単一のものもあれば異なるものもあり、加工ワークが変更される度に、プログラムの修正をパソコン上で逐次行って教示データの修正をするには時間と手間がかかるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、ラインに流れる加工ワークの形状等が変化する場合においても、熟練者でない作業員でも簡易に教示データの修正が行える教示データの修正システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の教示データの修正システムは、加工ワークを加工するために用いられる産業用ロボットの教示データに含まれる教示点を修正する教示データの修正システムにおいて、第一の加工ワークを加工するための前記教示点に関するパラメータを記憶する記憶手段と、前記第一の加工ワークとは形状の異なる第二の加工ワークに関する画像と前記教示点の画像とを重ね合わせて視覚的に表示をするとともに、ポインティング手段によってその表示画面中の位置を指定できる表示手段と、前記ポインティング手段によって前記教示点に関するパラメータが変更された際に、前記ポインティング手段によって示される前記表示画面中の位置と変更前の前記教示点の位置とに基づいて、変更後の変更教示点に関するパラメータを算出する算出手段と、前記記憶手段に記憶された前記パラメータを、前記変更後の変更教示点に関するパラメータにより更新する更新手段と、前記更新手段により更新された前記変更教示点と前記第二の加工ワークに関する画像とを重ね合わせて前記表示手段に表示させる制御手段と、を具備することを特徴とする。
また、前記パラメータの変更に際し、(1)変更後の前記パラメータを数値入力することを指定する領域と、(2)前記パラメータを二次元座標で示される画像に分けて視覚的に行う領域と、を前記表示手段に表示させ、各領域のいずれかを選択することによって前記パラメータの変更を行うことが好ましい。
また、前記パラメータの変更に際し、さらに(3)ツール座標系またはベース座標系を選択可能な領域を前記表示手段に表示させるとともに、前記算出手段は、選択された前記ツール座標系または前記ベース座標系に基づいて、前記変更後の変更教示点に関するパラメータを算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ラインに流れる加工ワークの形状等が、第一の加工ワークから第二の加工ワークへと変更される場合においても、熟練者でない作業員でも簡易に教示データの修正が行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】加工ワーク10を示す斜視図である。
【図2】加工ワーク10の教示データの修正システムの外観図である。
【図3】教示データの修正システムのブロック図である。
【図4】加工ワーク10に伴う教示点の変更を示す図である。
【図5】ディスプレイ23に表示される教示データの修正画面例である。
【図6】教示データの一部を修正する際のフローである。
【図7】教示データの一部を修正する際のフローである。
【図8】教示データの一部を修正する際のフローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明を加工ワークのバリ取りに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、同一符号は同一もしくは相当部材を表わしており、重複する説明については適宜省略する場合がある。
【0012】
図1は加工ワーク10を示す斜視図であり、図2は加工ワーク10の教示データの修正システムの外観図であり、図3は教示データの修正システムのブロック図であり、図4は加工ワーク10に伴う教示点の変更を示す図であり、図5はディスプレイ23に表示される教示データの修正画面例であり、図6、図7、図8は教示データの一部を修正する際のフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、加工ワーク10は例えば自動車に用いられるホイールなどの部品である。
通常、これらの部品は鋳造などによって目的の形状となるが、その端縁にはバリが発生することがある。そして、これら部品は目的の形状に鋳造された後は、バリ取り装置によって該端縁のバリが取り除かれる。
【0014】
なお、本実施形態においては、加工ワークとしての自動車用部品におけるバリ取りを例にして説明するが、加工ワークの種類や処理方法はこれに限定されない。
例えば加工ワークとして航空機用途など他の機械部品でもよいし、処理方法としてはバリ取りでなく溶接などでもよい。
すなわち、本発明は、部品を加工するロボットの教示データを修正する様々な教示データの修正装置に適用が可能である。
【0015】
また、説明の便宜上、図1に示すように加工ワーク10の各方向をそれぞれX、YおよびZ方向とする。
加工ワーク10の各面の端は端縁11となっており、所定の形状に鋳造された後にはこの端縁11にバリが存在する場合がある。
また、図1において示される点線は、後述する加工刃212の移動軌跡12(教示点の集合)であって端縁11の外周をなぞっており、後述するロボットによりバリ取りが行われる箇所を示すものである。
【0016】
次に図2に示すように、本実施形態のバリ取りシステム2は、産業用ロボットで構成されるバリ取り装置21、バリ取り装置21を制御する制御装置22、および作業データを表示するディスプレイ23を含んで構成されている。
バリ取り装置21は、例えば多関節形ロボットであり、アーム先端部のハンド211に、加工ワーク10の端縁11のバリ取りを行うための加工刃212が取り付けられている。
ハンド211は、X、Y、Zおよびこれらの回転方向(それぞれ、Xθ、Yθ、Zθと称する)を加えた6軸方向の位置制御が可能であり、後述する制御装置22と制御ライン213を介して接続されることにより、その位置・角度が制御される。
また、バリ取り装置21は、図3に示すように、ロボット制御部210と該ロボット制御部210に接続されて、ロボットの動作が記述されたロボットプログラムを格納するプログラム記憶部214を備えている。
【0017】
制御装置22は、バリ取り装置21の加工順序やハンド211の位置等を制御する装置であり、典型的には所定の演算能力を備えたCPU(中央演算装置)221が搭載されるコンピュータが用いられる。
また、制御装置22は、加工ラインに流れる加工ワーク10の種類、形状などのデータを格納する記憶部222を備えている。
より具体的には、加工ワーク10の多数種類の基本形状に関するデータ、各基本形状に対応する教示点に関するデータ、並びに各教示点の通過順序や移動速度などを定めた動作プログラムに関するデータが記憶されている。
【0018】
基本形状に関するデータとしては、例えば円柱、立方体、直方体などの形状と、加工ワークの配置の仕方などがある。
なお、加工ワーク10の種類・形状については適宜更新が可能であり、作業者は新たな形状の加工ワーク10がラインナップに加わる度に記憶部222のデータを更新する。
更新にあたっては、ネットワークを介して所定のプログラムをCPU221に演算させて自動更新してもよいし、作業者が手作業により新たなデータを追加して更新してもよい。
【0019】
ディスプレイ23は、CRT、液晶表示パネル、プラズマディスプレイなどが使用でき、バスライン227により制御装置22と接続される。
ディスプレイ23は、表示部231と、後述するタッチパネル解析部232と含み、表示部231には、後述する教示データの修正画面等が表示される。
なお、ディスプレイ23はタッチパネル式であるが、作業者の指で直接接触するタイプでもよいし、ペンなどのポインティング手段によって導電フィルムを貼ったタッチパネルの表示面に接触することにより表示部231での位置(座標)を指示できるものでもよい。
【0020】
図3は教示データの修正システムのブロック図であり、図3を用いてバリ取り装置21の加工刃212と加工ワーク10との位置関係を表示部231に表示する。
より具体的には、バリ取り装置21は、ロボットの動作を制御するロボット制御部210と、ロボットの動作を記述したロボットプログラム(このロボットプログラムは「教示データ」を含む)が格納されたプログラム記憶部214を備えている。
【0021】
また、制御装置22のCPU221は、ロボットプログラム受信部223、ロボットプログラム解析部224、表示データ生成部225および位置データベース修正部226を備えている。
制御装置22の記憶部222は位置データベースを有し、ハンド211の上記した6軸に関する位置データを記憶している。
なお、ロボットプログラム解析部224と位置データベース修正部226は、この記憶部222と接続されている。
【0022】
まず、ロボット制御部210は、プログラム記憶部214から読み出したロボットプログラムを、制御装置22のロボットプログラム受信部223に送信する。ロボットプログラムを受信した後、制御装置22のロボットプログラム解析手段224は、記憶部222に格納されたハンド211の位置データを参照しながら三次元(XYZ)におけるハンド211の位置を解析し、この解析に基づく表示データ(教示データに基づいた画像であり、この表示データの態様については後に詳述する)を表示データ生成部225へ送信する。
【0023】
そして表示データ生成部225は、ディスプレイ23の表示部231へ表示データを送信して該表示データをディスプレイ23で表示させる。
一方、表示部231はタッチパネル式となっており、例えば作業者は画面に表示された教示データの修正をペンやマウス等の入力手段を用いて行う。
このとき、入力手段によるタッチパネル上の修正内容は、タッチパネル解析部232で解析され、解析された修正内容は位置データベース修正部226へ送信される。
【0024】
そして、修正内容を受信した位置データベース修正部226は、記憶部222の位置データを更新するとともに、更新した位置データを表示データ生成部225へ送信する。
更新した位置データを受信した表示データ生成部225は、この更新した位置データを表示部231に表示させる。
【0025】
次に、図4を参照しながら、ロボットへの教示データの修正を行う例について説明する。
上述したように、ラインに流れる加工ワークは種類や形状が単一のものもあれば異なるものもある。例えば、図4(a)および(b)に示すように、ロットの変更等で、第一の加工ワーク13からサイズなどの形状の異なる第二の加工ワーク14へと変更されたとする。
【0026】
すると、第一の加工ワーク13の端縁に対するバリ取りを行う際の加工刃212に関する教示点(制御装置22が管理する加工刃212の三次元上の位置)をそのままにしたのでは、図4(b)に示すように第二の加工ワーク14の端縁と加工刃212とはαだけ離間してしまい、バリ取り加工を行うことが出来ない。
従って、図4(c)に示すように、加工ワークの形状の変更に伴い、教示データに含まれる教示点の変更を適切に行わなければならない。
【0027】
以下、図5、図6、図7、図8を参照にして、制御装置22の制御によって教示データの一部に含まれる教示点を修正する際の処理を説明する。
図4において説明したように、加工ワークの形状の変更に伴い、作業者はタッチパネルにペン等を接触させて教示データに含まれる教示点の変更を行う。
すなわち、図5(a)に示すように、制御装置22のロボットプログラム解析部224で解析されたロボットの移動軌跡データをディスプレイ23の表示部231にする。同図においては、ロボットの加工刃212は教示点1から教示点5へと順次移動する軌跡となっており、この軌跡は変更前の第一の加工ワーク13の端縁11と一致している。
【0028】
続いて、図5(b)に示すように、制御装置22は、図示しない通信手段等によって変更後の第二の加工ワーク14の画像を取り込み、背景データとして移動軌跡データと任意の点を基準として重ね合わせる。
なお、本実施形態においては、教示点1を基準として第二の加工ワーク14と移動軌跡データとを重ね合わせており、本例においては教示点3と教示点4を変更すればよいことになっている。
【0029】
次に、図5(c)に示すように、変更したい教示点3をまず選択すると、変更画面が表示部231に表示されるため、変更したい内容(ツール座標系またはベース座標系を基準としたパラメータ等)をタッチパネルによる入力操作で指定する。ここで、図5(c)において、表示画面上の領域(α)はツール座標系とベース座標系とを切り替える際に用いられる。具体的には、ユーザが領域(α)における「ベース」を指等でタッチした場合、以降の作業はベース座標系を基準とした補正値を入力する操作となり、同じく領域(α)中の「ツール」を指等でタッチした場合、以降の作業はツール座標系を基準とした補正値を入力する操作となる。
また、表示画面上の領域(β)は、テンキー(画面上に表示される二次元的なものを含む)などの入力手段を用いた数値入力を行って、ツール座標系もしくはベース座標系を基準とした補正値を入力する際に用いられる。すなわち、ユーザが指等によって領域(β)をタッチした際、以降の作業は上記入力手段を介した数値がパラメータの補正値として入力される。
表示画面上の領域(γ)は、タッチ操作によるパラメータの補正値が入力される際に用いられ、二次元座標で示される画像(後述するXY、ZX、ZYの3面図)に基づいて視覚的にパラメータの補正値入力を行うものである。例えばツール座標系を基準とした補正をタッチ操作により行いたい場合、まず領域(α)で「ツール」を選択した後に領域γをタッチする。その後、XY、ZX、ZYの3面図上の各領域にツール先端点(P)及びツール座標系の+Z軸上の任意の点(T)の2点を有する修正用の操作画面を用い、タッチ操作によりツール座標系を基準としたパラメータ(x、y、z等)の補正値入力が行われる。
一方、ベース座標系を基準とした補正をタッチ操作により行いたい場合、まず領域(α)で「ベース」を選択した後に領域(γ)をタッチする。その後、WP、PR、RWで示される平面の各領域にツール先端点(P)及びツール座標系の+Z軸上の任意の点(T)の2点を有する修正用の操作画面を用い、タッチ操作によりベース座標系を基準としたパラメータ(w、p、r等)の補正値入力が行われる。
【0030】
例えば(P)点は補正画面上の3つの各円の原点をそれぞれ補正原点とし、(T)点は+Z軸上の点を補正原点とすれば、図5(c)においてZY平面の黒丸が上記ツール先端点(P)となり、白丸がツール座標系の+Z軸上の任意の点(T)となる。
なお、具体的なパラメータの変更処理については、図6〜図8を用いて後述する。
【0031】
そして図5(d)に示すように、教示点3がタッチパネルを介した入力操作により変更された場合、変更後の位置は表示部231上で視覚的に表示されるため、変更されたパラメータの確認が容易にできる。
また、図5(e)に示すように、教示点3と同様に教示点4についてもパラメータを変更した後、制御装置22は変更した教示プログラムに記述された加工刃212のパラメータを記憶部222に保存するとともに、ロボット制御部210に送信する。
変更した教示プログラムを受信したロボット制御部210は、この変更した教示プログラムに基づいて、新たな第二の加工ワーク14の端縁におけるバリ取り加工を行うこととなる。
【0032】
次に、図5(c)に示した教示点の変更を行う具体的な処理の流れについて、図6〜図8を用いて説明する。
まず、タッチパネルへの入力があった場合(ステップS101でYes)、座標系の切り替え選択であるかを判定する(ステップS102)。具体的には、ステップS102〜ステップS115までにおいて、上述した領域(α)内にユーザの指等が接触したか否か、さらには領域(α)のうちタッチされた箇所が「ツール」又は「ベース」のいずれであったかが判断される。以下の説明においては、「ツール」が選択されたとして補正値(x、y、z、xθ、yθ、zθ)入力の説明を行うが、「ベース」が選択された際の補正値(w、p、r、wθ、pθ、rθ)についても同様である。
なお、タッチパネルへの入力がなかった場合(ステップS101でNo)には、ふたたびステップ101へ戻り、所定の時間間隔毎にこの判定を繰り返す。
【0033】
そして、座標系の切り替え選択である場合(ステップS102でYes)、ステップS103で現在はベース座標系なのか、ツール座標系なのかを判定し、ベース座標系の補正が選択された場合(ステップS103でYes)にはステップS104に進む。
一方、座標系の切り替え選択でない場合(ステップS102でNo)、後述するステップS116へ進む。
なお、ベース座標系とは、ロボットのアームの位置を元にした座標系であり、ツール座標系とは、ツールの向いている方向を元にした座標系である。
一方、ステップS103でツール座標系の補正が選択された場合(ステップS103でNo)には、ステップS105へ進む。
【0034】
ステップS104においては、補正データがすべてゼロか否かが判断され、補正データがすべてゼロであれば(Yes)、ツール座標系の補正モードに切り替える。
一方、補正データがすべてゼロでなければ(No)、ステップS107でベース座標系のデータがクリアされ、座標系をツール座標系に切り替え可能であれば(ステップS108でYes)、ベース座標系の補正データをクリアして(ステップS109)、ステップS106にてツール座標系の補正モードに切り替えてステップS116へ進む。
座標系をツール座標系に切り替えることを結局しない場合(ステップS108でNo)、ベース座標系の補正モードとしてステップS116へ進む(ステップS110)。
【0035】
また、ステップ103で現在の座標系がツール座標系の補正モードである場合(ステップS103でNo)、ステップS105においてツール座標系の補正データがすべてゼロか否かを判定し、すべてゼロの場合(Yes)にはステップS114にてベース座標系の補正モードに切り替える。
一方、ステップS105で補正データがすべてゼロではない場合(No)、ステップS111でツール座標系のデータがクリアされ、座標系をベース座標系に切り替え可能であれば(ステップS112でYes)、ツール座標系の補正データをクリアして(ステップS113)、ステップS114にてベース座標系の補正モードに切り替えてステップS116へ進む。
座標系をモード座標系に切り替えることを結局しない場合(ステップS112でNo)、ツール座標系の補正モードとしてステップS116へ進む(ステップS115)。
【0036】
次に、ステップS116〜ステップS121までにおいて、ユーザの指等が領域(β)に接触したか否かが判断され、領域(β)がタッチされた場合にはテンキーによる数値入力が行われる。
なお、ステップS102乃至ステップS115までにおいて、ベース座標系を用いるかツール座標系を用いるかは任意に選択可能であるが、制御装置22とバリ取り装置21とはベース座標系で通信しているので、例えば作業者がツール座標系を用いてパラメータの変更を行った場合には、このパラメータは、自動的にベース座標系に変換されて、制御装置22とバリ取り装置21とでデータのやりとりが行われることになる。
【0037】
ステップS116では、まず領域(β)がタッチされたか否かが判断され、当該領域(β)がタッチされた場合(Yes)、ステップS117ではタッチした位置から補正値を入力する対象(x、y、z、xθ、yθ、zθのいずれであるか)を特定する。
【0038】
例えば、ステップS117で、ユーザがタッチした箇所が領域(β)における「x」の位置であった場合、続いてテンキー画面が表示され(ステップS118)、この表示画面に表示されたテンキーを用いて上記「x」に関するパラメータ(この場合はxの補正値)が入力される(ステップS119)。
入力されたパラメータにキャンセルがあれば(ステップS120でYes)、パラメータをこの時点では更新せずにステップS122へ進み、入力されたパラメータにキャンセルがなければ(ステップS120でNo)、上記「x」に関するパラメータを更新してステップS122へ進む。なお、このステップS116〜ステップS121では、上記「x」以外にその他の箇所(y、z、xθ、yθ、xθ)がタッチされた場合についても同様にパラメータ(補正値)が適宜更新される。
【0039】
一方、ステップS116で領域(β)がタッチされていないと判断された場合には、以下のステップS122〜ステップS125において、領域(γ)がタッチされたか否かが判定され、タッチされていた場合にはツール先端点(P)におけるパラメータ(x、y、z)の変更処理が行われる。
すなわち、ステップS122では、領域(γ)がタッチされるとともに、上記点(P)のパラメータの修正を行うと判定された場合、まずステップS123では領域(γ)内のタッチがなされた位置に基づいて、XYZのどのパラメータを変更するのかが判定される。例えば図5(c)に示されるXY平面の任意の点がタッチされた場合には、パラメータのうちxとyに関する補正値の入力であると判定される。
そして、ステップS124において現在のタッチ位置(上記の例で言えばXY平面上の任意の点)から変更されるパラメータの具体的な値(左記の例ではxとyに関する補正値)を算出する。
【0040】
続いてステップS125において、算出したXYZ軸上におけるパラメータ(補正値)の値を用いて更新処理を行ってS126へと進む。
一方、ステップS122において、領域(γ)がタッチされたものの点(P)におけるパラメータの変更処理が選択されなかった場合には、続いてS126に進む。
【0041】
以下のステップS126〜ステップS129は、領域(γ)がタッチされるとともにツール座標系の+Z軸上の任意の点(T)のパラメータの変更が選択された場合のフローである。
まずステップS126においては、Xθ、YθおよびZθに関する姿勢の修正を行うか否かが選択され、選択されない場合(No)にはステップS130へと進む。
一方、上記修正が選択された場合(Yes)には、上記点(P)の修正と同様に、画面上のタッチした位置からXθ、YθおよびZθのどの成分に関するパラメータの修正なのかが判定され(ステップS127)、続いて現在のタッチ位置に基づいてこの変更パラメータを算出する(ステップS128)。
そして、算出した変更パラメータに基づいて、Xθ、YθおよびZθのパラメータを更新して(ステップS129)、ステップS130へと進む。
なお、ツール先端点(P)及びツール座標系の+Z軸上の任意の点(T)が同一平面上で重なっていて選択しにくい場合、これら点の位置を変更する前に、点(P)、点(T)のどちらを修正するかをタッチパネル上で予め選択できるようにしておくとよい。
例えば、図5(c)に示されたXY平面における円の中心をタッチすると、上記点(P)点に関するパラメータの変更となり、それ以外の円の内部をタッチすると、上記(T)点に関するパラメータの変更となるようにしてもよい。
【0042】
ステップS130では、それ以外にパラメータの更新があるか否かを判定し、なければステップS136へ進む一方で、他のパラメータの更新がある場合にはステップS131へ進む。
ステップS131では、ツール座標系においてパラメータ更新があるか否かを判定し、パラメータ更新がある場合(Yes)には、S132において、ツール座標系の補正パラメータからベース座標系の補正パラメータへパラメータの値を変換してステップS133へ進む。
一方、ツール座標系のパラメータ更新がない場合(No)にはステップS133へ進む。
【0043】
そして、ステップS133では、変更される各パラメータの値が、予め設定されている制限値を超えているかが判定され、該制限値を超えない場合(No)にはステップS135へ進む一方で、該制限値を超えている場合(Yes)には、この変更されるパラメータの値を制限値以内となるように修正を行ってステップS135へ進む。
【0044】
このように、制限値を設定する意図は、ロボットの急な姿勢変化による衝突等を防止するためであり、1回の補正量について制限をかけるようにするものである。
なお、この制限値は各補正軸に対し、任意に変更可能である。
そして、ステップS135では、ベース座標系のパラメータを、以上で確定した変更されるパラメータに更新する。続いて、ステップS136では、変更されたパラメータ値に基づいて更新後の教示点を表示部231に表示させて更新処理を終了させる。
【0045】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて様々な変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、産業用ロボットの教示データの修正に用いられる教示データの修正システムに適用することができ、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0047】
1〜5 教示点
10 加工ワーク
11 端縁
12 移動軌跡
13 第一の加工ワーク
14 第二の加工ワーク
21 バリ取り装置
22 制御装置
23 ディスプレイ
210 ロボット制御部
211 ハンド
212 加工刃
213 制御ライン
214 プログラム記憶部
221 CPU
222 記憶部
223 ロボットプログラム受信部
224 ロボットプログラム解析部
225 表示データ生成部
226 位置データベース修正部
227 バスライン
231 表示部
232 タッチパネル解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工ワークを加工するために用いられる産業用ロボットの教示データに含まれる教示点を修正する教示データの修正システムにおいて、
第一の加工ワークを加工するための教示点に関するパラメータを記憶する記憶手段と、
前記第一の加工ワークとは形状の異なる第二の加工ワークに関する画像と前記教示点の画像とを重ね合わせて視覚的に表示をするとともに、ポインティング手段によってその表示画面中の位置を指定できる表示手段と、
前記ポインティング手段によって前記教示点に関するパラメータが変更された際に、前記ポインティング手段によって示される前記表示画面中の位置と変更前の前記教示点の位置とに基づいて、変更後の変更教示点に関するパラメータを算出する算出手段と、
前記記憶手段に記憶された前記パラメータを、前記変更後の変更教示点に関するパラメータにより更新する更新手段と、
前記更新手段により更新された前記変更教示点と前記第二の加工ワークに関する画像とを重ね合わせて前記表示手段に表示させる制御手段と、
を具備することを特徴とする教示データの修正システム。
【請求項2】
前記パラメータの変更に際し、(1)変更後の前記パラメータを数値入力することを指定する領域と、(2)前記パラメータを二次元座標で示される画像に分けて視覚的に行う領域と、を前記表示手段に表示させ、各領域のいずれかを選択することによって前記パラメータの変更を行うことを特徴とする請求項1に記載の教示データの修正システム。
【請求項3】
前記パラメータの変更に際し、さらに(3)ツール座標系またはベース座標系を選択可能な領域を前記表示手段に表示させるとともに、
前記算出手段は、選択された前記ツール座標系または前記ベース座標系に基づいて、前記変更後の変更教示点に関するパラメータを算出することを特徴とする請求項2に記載の教示データの修正システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−22546(P2012−22546A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160294(P2010−160294)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(510195641)ユタカ電機株式会社 (1)
【Fターム(参考)】