説明

散布位置制御装置

【課題】GPS受信機で測定された緯度・経度データだけで散布位置を演算すると測定遅れや特殊車輌の移動速度によっては散布位置の誤差が大きくなる。
【解決手段】この改善策として、不連続的に伝達されるGPS受信機からの緯度・経度データに補正をかけ、正確な位置情報とするために、移動体が進行する方位データと速度データにGPS受信機からの信号不通経過時間を積算した演算結果によって移動体が位置する緯度・経度(現在地)とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般道路を移動する移動設備機械制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地の道路において路面凍結防止剤を散布する作業は特殊車輌を用いて一般道路を移動し、目的散布場所に到着したのを確認したうえで搭乗作業者が手動操作により散布開始スイッチや散布停止スイッチの開閉を行なうなどで実現してきた。寒冷地での道路路面の温度は場所によっても異なり、路面凍結による交通事故を防止するのがこの路面凍結防止剤を散布する目的である。凍結する場所はある程度決まっており、必要な場所に適切な量の路面凍結防止剤を散布することができれば最小量の路面凍結防止剤ですむ。このため、いかに細かく路面凍結防止剤の散布を制御するかによって路面凍結防止剤の消費量が減り、無駄な費用を抑制することも可能となってくる。
【0003】
このため、人工衛星を利用した地球規模での位置情報を計測するGPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機を利用して測定された緯度・経度データを利用して散布位置を演算することが考えられたが、GPS受信機の測定遅れが大きく散布位置の誤差が大きくなるため、うまく利用できないという欠点があった。
【0004】
さらに、路面凍結防止剤を散布する作業は特殊車輌を使用して移動しながら散布する場合においての移動速度は運転者と道路条件によって異なり、20km/毎時程度の低速で散布する場合は安定して散布できるが、一般国道のように60km/毎時程度になると誤差が大きくバラツキが大きくなりうまく使用できないという欠点があった。
【0005】
この改善策として、不連続的に伝達されるGPS受信機からの緯度・経度データに補正をかけ、正確な位置情報とするために、移動体が進行する方位データと速度データにGPS受信機からの信号不通経過時間を積算した演算結果によって移動体が位置する緯度・経度(現在地)とした。
【特許文献1】特開2004-9027公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述したような搭乗作業者が手動操作により実施してきた操作を自動化したもので、GPS受信機で測定された緯度・経度データだけで散布位置を演算すると測定遅れや特殊車輌の移動速度によっては散布位置の誤差が大きくなるため、散布位置データを大きくとり、無駄な路面凍結防止剤を散布せざるをえなかったが、本装置を利用すれば最小量の路面凍結防止剤ですむ装置を提供することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1による発明によれば、人工衛星を利用して地球規模での位置情報を計測するGPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機を利用した移動型薬剤自動散布装置において、該GPS受信機が受信した位置情報から該移動型薬剤自動散布装置が位置する緯度・経度情報と前記移動型薬剤自動散布装置が移動する方位・速度情報によって正確な位置情報に演算し、予め設定しておいた薬剤を散布する位置のデータを四角形の4頂点位置情報として比較し、薬剤を道路上に自動的に散布することを特徴とする。
【0008】
すなわち、不連続的に伝達されるGPS受信機からの緯度・経度データに補正をかけ、正確な位置情報とするために、移動体が進行する方位データから東西方向成分を取り出す第1のSIN(正弦)演算器と、移動体が進行する速度データを乗算する第1の乗算器と、移動体が位置する緯度データを補正するための第1のCOS(余弦)演算器と、第1のCOS(余弦)演算器によって演算された補正係数に経度1分当たりの距離データ係数を乗算する第2の乗算器と、第2の乗算器の演算結果である経度単位データで前記第1の乗算器の演算結果を除算する第1の除算器と、第1の除算器の演算結果に演算経過時間を乗算する第3の乗算器と、第3の乗算器の演算結果に移動体が位置する経度データを加算する第1の加算器によって加算されたデータを経度(現在地)とし、移動体が進行する方位データから南北方向成分を取り出す第2のCOS(余弦)演算器と、移動体が進行する速度データを乗算する第4の乗算器と、第4の乗算器の演算結果を移動体が現在位置する緯度1分当たりの距離データ係数を除算する第2の除算器と、第2の除算器の演算結果に演算経過時間を乗算する第5の乗算器と、第5の乗算器の演算結果に移動体が位置する緯度データを加算する第2の加算器によって加算されたデータを緯度(現在地)とし、予め設定しておいた薬剤を散布する場所のデータを四角形の4頂点位置情報のパラメータとして南西から時計周りにP1、P2、P3、P4とし、現在位置情報データから演算することによって与えられた散布位置内にあるかどうかの判定演算を実施し、演算結果である出力散布結果出力信号を電気信号として増幅する第1の出力信号変換器と、第1の出力信号変換器の出力信号を薬剤散布機械に供給し、薬剤を道路上に自動的に散布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、無駄な路面凍結防止剤を散布することなく最小量の路面凍結防止剤ですむ格別な装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1図は本発明の一実施例の概要構成を示すものであり、この動作の理解を容易にするための散布位置道路図を示したものが第2図であり、散布位置の計算を容易にするためのゾーン計算方法について示したものが第3図であり、緯度データおよび、経度データの補正結果によるタイミングチャートについて説明したものが第4図であり、緯度データおよび、経度データの補正手段について演算ブロックについて説明したものが第5図であり、前記散布位置パラメータP1,P2,P3,P4の中に前記補正演算を実施した緯度データおよび、経度データが入っているか評価するための演算ブロックについて説明したものが第6図である。
【実施例1】
【0011】
第1図において1はGPS受信機であり、人工衛星を利用して地球規模での位置情報を計測するGPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機である。
2はプロトコルコンバータであり、GPS受信機1から緯度・経度・方位・速度情報を取り出す回路である。
3はプロトコルコンバータ2から出力される経度情報データである。
4はプロトコルコンバータ2から出力される緯度情報データである。
5はプロトコルコンバータ2から出力される方位情報データである。
6はプロトコルコンバータ2から出力される速度情報データである。
7は前記散布位置パラメータP1,P2,P3,P4から構成される散布位置情報データである。
8は前記経度情報データ3、緯度情報データ4、方位情報データ5、速度情報データ、および散布位置情報データ7をもとに演算する演算ユニットである。
9は演算ユニット8の演算結果である出力散布結果出力信号を電気信号として増幅する出力信号変換器である。
10は出力信号変換器9の出力信号を薬剤散布機械に供給し、薬剤を道路上に自動的に散布する散布位置制御装置である。
【0012】
つぎに道路に路面凍結防止剤を散布する場合の道路図を、図2を用いて詳細説明する。
図2は道路地図を簡単に表したもので、紙面上部が北向きとなり、上下方向は緯度となり、左右方向は経度となる。本道路地図の太線部分は路面凍結防止剤を散布する場所であり、細線部分は散布しないことを表している。
前記の薬剤を散布する道路(図の太線部分)を囲む四角形のデータを4頂点位置情報のパラメータとして南西から時計周りにP1,P2,P3,P4とし、各点の緯度および経度を地図から読み取ることによって予め設定することが可能である。
【0013】
つぎに現在位置情報の緯度・経度データが図2で設定したP1,P2,P3,P4の情報で作成される四角のゾーンの中に有るか無いかについての判定演算方法について図3を用いて説明する。
いまこの図3でX軸は経度(東西方向)で、Y軸(南北方向)であるが、前記P1,P2,P3,P4を結んで形成される四角形は通常は一般的な長方形であるが、特に拘ることなく任意な四角形でも設定できることを説明する。
前記P1,P2,P3,P4の各点の座標をそれぞれ(X1,Y1),(X2,Y2),(X3,Y3),(X4,Y4)とし、現在位置情報の緯度・経度データからの座標を(X,Y)とする。
現在位置(X,Y)のX軸(東西方向)およびY軸(南北方向)の延長線と長方形P1,P2,P3,P4の延長線との交点をQ1,Q2,Q3,Q4とし、各座標はQ1(X,Y14),Q2(X,Y23),Q3(X12,Y),Q4(X23,Y)とすれば、
(数1)
【0014】
Y14=(Y4−Y1)(X−X1)/(X4−X1)+Y1
Y23=(Y3−Y2)(X−X2)/(X3−X2)+Y2
X12=(X2−X1)(Y−Y1)/(Y2−Y1)+X1
X23=(X3−X4)(Y−Y4)/(Y3−Y4)+X4
【0015】
Y14 < Y < Y23 でなおかつX12 < X < X23
を満足する現在位置情報の緯度・経度データからの座標(X,Y)であれば四角形P1,P2,P3,P4の内部にあることが判明できる。

【0016】
図4は実際の散布信号を横軸である時間軸に沿って出力されるタイミングチャートをあらわしたもので、速度補正を取り入れることによって時間遅れなく出力されることをあらわしている。
図5は速度補正の演算ブロック内部をあらわしている。
図6は現在位置情報の緯度・経度データからの座標(X,Y)であれば四角形P1,P2,P3,P4の内部にあることを判断するための演算ブロック内部の演算要素をあらわしたものである
【0017】
このようにGPS受信機で測定された緯度・経度データだけで散布位置を演算すると測定遅れや特殊車輌の移動速度によっては散布位置の誤差が大きかったが、本装置を利用すれば最小量の路面凍結防止剤ですむ装置を提供することが可能である。
【0018】
図2の実施例は、道路地図を簡単に表したもので、紙面上部が北向きとなり、上下方向は緯度となり、左右方向は経度となる。本道路地図の太線部分は路面凍結防止剤を散布する場所であり、細線部分は散布しないことを表している。
前記の薬剤を散布する道路(図の太線部分)を囲む四角形のデータを4頂点位置情報のパラメータとして南西から時計周りにP1,P2,P3,P4とし、各点の緯度および経度を地図から読み取ることによって予め設定することが可能である。

【産業上の利用可能性】
【0019】
本装置の技術を応用すれば、移動体がある特定の範囲の位置に存在しているかを監視する装置や、移動体が特定位置に到着したかどうかを監視する装置に応用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における一実施例を示す全体ブロック図
【図2】本発明における一実施例を示す道路地図
【図3】本発明における散布ゾーン計算方法図
【図4】本発明における散布タイミングチャート
【図5】本発明における速度補正演算ブロック図
【図6】本発明における散布ゾーン内部判断演算ブロック図
【符号の説明】
【0021】
1 GPS受信機
2 プロトコルコンバータ
3 経度情報データ
4 緯度情報データ
5 方位情報データ
6 速度情報データ
7 散布位置情報データ
8 演算ユニット
9 出力信号変換器
10 薬剤散布機械


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星を利用して地球規模での位置情報を計測するGPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信機を利用した移動型薬剤自動散布装置において、該GPS受信機が受信した位置情報から該移動型薬剤自動散布装置が位置する緯度・経度情報と前記移動型薬剤自動散布装置が移動する方位・速度情報によって正確な位置情報に演算し、予め設定しておいた薬剤を散布する位置のデータを四角形の4頂点位置情報として比較し、薬剤を道路上に自動的に散布することを特徴とする散布位置制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−24347(P2009−24347A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186378(P2007−186378)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】