説明

文書を処理する装置

【課題】流体攻撃に抗するような検知手段を備えた文書処理装置を提供する。
【解決手段】文書処理装置は、光源と、光検出器と、光学要素とを含む文書収納カセットを備える。光源、光検出器および光学要素は、装置の動作中に、光学要素に入る光の第1の部分が、光学要素を通過し、プッシャ・プレートの反射部によって、検出器の方に反射されるように配列される。反射部によって検出器の方に反射される光の量は、カセット内のプッシャ・プレートの位置に依存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、文書プロセッサ内の光学検知手段に関し、詳細には、流体攻撃に抗するように設計された検知手段に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、2004年12月14日に出願された米国仮特許出願第60/635,758号に対する優先権を主張する。その出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
自動販売機およびゲーム産業で使用されるような文書識別器アセンブリは、通常、処理される媒体の物理的存在を検出するか、または、機械内での可動要素の遷移状態を検出する検知手段を含む。有効で、かつ、広く使用されているタイプの検知手段は、光源と光受信器とを含んでもよい光学検知手段である。こうしたセンサは、通常、動く部品を持たず、適切に機能するために、検知される対象物との物理的な接触を必要としない。
【0004】
自動販売機などの無人支払いシステムのために使用される文書識別器は、おそらく、機械自体に対する違法行為または破壊行為の結果として、種々の液体による攻撃を受けることがある。別の危険因子源は、これらのデバイスが戸外に据付けられるときに起こる場合がある凝縮状態から生じる。
【0005】
光学検知デバイスは、光経路を制御し、また、検出するための反射表面に依存し、その反射表面上に液体またはフィルムの凝縮体が存在すると、光経路を遮り、検知デバイスを役に立たなくさせる。この問題に対する知られている1つの解決策は、光学表面にバリア・コーティングを塗布することを含む。光学表面に対して、たとえば、高品質ミラー・メッキを塗布することは、センサの有効性を維持する場合がある。しかし、ミラー・メッキを塗布するプロセスは、比較的費用がかかり、品質制御問題が起こる機会を伴い、機械の動作を混乱させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/635,758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、文書プロセッサ(たとえば、紙幣識別器)用の光学センサ機構を述べる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、文書処理装置は、光源と、光検出器と、光学要素を含む光学センサを備える。光学センサは、装置の動作中に、光学要素に入る、光源からの少なくとも光の第1の部分が、光学要素内の経路に沿って進んで、全反射によって、検出器の方に向け直されるようになっており、全反射は、光学要素が浸潤しているときに維持される。
【0009】
種々の実施態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含んでもよい。たとえば、装置は、文書識別器部と、文書識別器部に結合された文書収納カセット内に文書を移動させる搬送システムとを含んでもよい。識別器部は、光源および光検出器を収容してもよい。光学要素は、装置の動作中に、文書がカセット内に押し込まれる場合、文書が、検出器の方に向けられる光を、光学要素から少なくとも部分的に遮断するように配置される。光学要素は、たとえば、文書が識別器部から文書収納カセットまで通過するようになっているスロットに隣接して配置されてもよい。
【0010】
識別器部は、光検出器からの信号を処理して、カセットに関する文書の位置を決定するようになっているマイクロコントローラを含んでもよい。たとえば、マイクロコントローラは、検出器からの信号に基づいて、文書が、カセット内への収納のために、カセット内に押し込まれているかどうかを判定してもよい。マイクロコントローラはまた、検出器からの信号に基づいて、文書が、完全に通過してカセット内に入ったかどうかを判定してもよい。
【0011】
光学要素は、種々の方法で実施されてもよい。たとえば、光学要素は、プリズム光パイプ構造または滑らかに湾曲する3次元トロイド光パイプ構造を備えてもよい。
【0012】
光学センサ機構は、バリア・コーティングに関連するコストを追加することなく、液体侵入が、機械の機能を脅かす状況において、文書プロセッサの機能を改善してもよい。
【0013】
同じ光学センサ機構は、付加的な機能を提供してもよい。たとえば、ある実施態様によれば、文書収納カセット内のプッシャ・プレートは、反射部を含む。光学センサの光学要素は、光学要素に入る光の一部分が、光学要素を通過し、反射部によって検出器の方に反射されるようになっていてもよい。反射部によって検出器の方に反射される光の量は、カセット内のプッシャ・プレートの位置に依存するため、検出器によって検出される光の量は、カセットの状態を決定するのに使用することができる。たとえば、特定の実施態様では、反射部は、カセットが満杯でないときに、検出器の方に反射して戻る光の量と比較して、カセットが装填されるときに、検出器の方により少ない量の光を反射して戻してもよい。識別器部内のマイクロコントローラは、検出器からの信号に基づいてカセット内のプッシャ・プレートの位置を決定するようになっていてもよい。マイクロコントローラはまた、検出器からの信号を使用して、カセットが満杯であるかどうか、カセットの内容物が取り除かれたかどうか、または、カセットが存在するかどうか(たとえば、カセットが、識別器部にまだ取り付けられているかどうか)を判定するようになっていてもよい。
【0014】
1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の詳細な説明、添付図面、および特許請求の範囲に述べられる。本発明の他の特徴および利点は、説明および図面から、ならびに、特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】銀行紙幣識別器などの文書プロセッサを示す図である。
【図2】カセット・フレームおよびプリズム光パイプのロケーションを示す図である。
【図3】カセットの分解図である。
【図4】センサ機構の相対配置を示す図である。
【図5a】ポリカーボネート/空気界面についての、臨界角の角度幾何形状を示す図である。
【図5b】ポリカーボネート/水界面についての、臨界角の角度幾何形状を示す図である。
【図6】小面のあるプリズム実施形態を示す図である。
【図7】小面のあるプリズム実施形態における全反射光経路を示す図である。
【図8】小面のあるプリズム実施形態の寸法略図の例を示す図である。
【図9】滑らかに湾曲する表面を有する光パイプを示す図である。
【図10】フラグ位置と信号強度との関係を示すグラフである。
【図11】小面のあるプリズム実施形態において小面を通るリセット光経路を示す図である。
【図12】小面のあるプリズム実施形態において別の小面を通るリセット光経路を示す図である。
【図13】小面のあるプリズム実施形態において光経路の重ね合わせを示す図である。
【図14】光パイプのトロイド形状を示す、図9の設計の代替の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、自動販売機で一般に使用される銀行紙幣識別器などの文書識別器の例を示す。検証された銀行紙幣は、カセット20と呼ばれるマガジンまたはホルダ内に収納される。銀行紙幣識別器は、銀行紙幣が、そこを通って機械内に挿入されるスロット22を含む。銀行紙幣識別器部は、通路を通って銀行紙幣を搬送するときに必要とされるローラ・ボールを支えるゴム・ベルトを駆動するモータを含んでもよい。検証器部は、銀行紙幣の額面金額ならびに銀行紙幣が本物であるかどうかを判定するために、種々の、光学センサ、電子センサ、または他のセンサを含んでもよい。プッシャ・プレートを使用して、カセット内に銀行紙幣を積重ねる技法は、当技術分野でよく知られており、本明細書ではさらには説明されないであろう。
【0017】
図1の文書識別器は、文書がカセット20内に押し込まれるときに、文書の進行を検出するセンサを含んでもよい。図2は、光学センサ62およびカセット20のフレーム24に関する光学センサ62のロケーションの例を示す。以下で開示され、また、図2に示されるセンサは、複数の機能を有する。1つの機能は、銀行紙幣などの文書が、最初に、カセット20に入る時、および、銀行紙幣が、完全に通過してカセット内に入る時を検出することである。別の機能は、識別器からのカセット20の取り外し、同様に、カセット20からの文書の取り外しを検出することである。
【0018】
図3は、カセット20の特定の実施態様の分解図を示す。カセット・フレーム24以外に、銀行紙幣識別器は、カセット収納エリアの本体内に銀行紙幣を移動させるために、上述したように、モータによって駆動されるローラ・ボールおよびクリップ・システム26を収容する。文書識別器は、カセット・フレーム24の背面カバー32に取り付けられたばね30の動作によって付勢されるプッシャ・プレート28を含む。プッシャ・プレート28の底部縁34は、反射箔などの反射表面をコーティングされた突出部またはフラグ36を含む。フラグ36は、カセット20の背面カバー32内の嵌合チャネル40内に摺動する。フラグ36の機能は、以下で説明される。
【0019】
文書識別器はまた、プリズム光パイプ・センサ機構を含む。図3および図4に示すように、プリズム光パイプ・センサ機構は、プリズム光パイプ42、発光ダイオード(LED)などの光源44、および光検出器46を含む。センサ機構は、文書識別器が、銀行紙幣がカセット20に入るときに銀行紙幣の背面を検出することを可能にする。動作中に、光源44からの光は、カセット20に取り付けられたプリズム光パイプ42を通して検出器46へ送られてもよい。光が、識別器の銀行紙幣経路を通過するとき、銀行紙幣がカセット内の積重ねエリアに搬送される間に、光が遮られる。銀行紙幣が、完全に通過して積重ねエリアに入ると、光は、再び、遮られない状態になる。銀行紙幣が光を遮断している間、光学受信器/検出器40は、小さな光信号を検出する。検出される光信号の変化を使用して、カセット20に押し込まれる銀行紙幣の存在が指示され、また、銀行紙幣が、完全に通過してカセットに入ったことが指示されることができる。これは、以下でさらに説明されるであろう。
【0020】
信号検出は、検出器46を通して起こってもよく、検出器46は、抵抗器に結合されたフォトトランジスタであってよく、抵抗器は、生成された光電流を電圧に変換し、電圧は、次に、アナログ−デジタル変換器によって測定される。検証器部内に配置されたマイクロコントローラは、光検出器46からの出力信号を処理し、可能性のある状態を区別して、銀行紙幣がカセットに押し込まれる時、および、銀行紙幣が完全に通過してカセットに入る時が決定される。
【0021】
先に述べたように、光経路が、浸潤した反射表面に当たる場合、液体侵入は、信号を妨害する場合がある。水または他の液体は、反射器表面の特性を改質するため、光は、意図しない方向に向け直される。結果として、光学信号は、その強度を失う。
【0022】
この問題に対処するために、本光学センサ機構は、全反射(TIR)として知られる光学現象を利用する。この現象は、光が、1つの媒体を通って進み、スネルの法則によって与えられるTIRのための臨界角より大きな角度で別の媒体を有する境界に当たるときに起こる。臨界角より小さい角度で入射する光は、媒体の外側に屈折するが、臨界角より大きい角度で入射する光は、実質的に完全に内部に反射し、光信号の完全性を維持する。スネルの法則によれば、この臨界角は、2つの隣接する媒体の屈折率の比のアーク・サイン(arc)(sin)に等しい。本開示によれば、プリズム光パイプ42は、全反射が、水などの液体が存在しても起こるように設計される。
【0023】
特定の実施態様によれば、プリズム光パイプ42は、プラスチック、たとえば、ポリカーボネートを使用した、射出成形プロセスによって作られる。関連する屈折率(n)は、以下の通りである。
空気 n=1.003
ポリカーボネート n=1.55
水 n=1.33
したがって、反射臨界角、および、光経路が、全反射することになる角度は、ポリカーボネート光パイプについて、乾燥状態と湿潤状態との間で変わる。図5aは、空気に隣接するときの、乾燥状態におけるポリカーボネート光パイプについての40.3°の臨界角を示す。入射光線αは、臨界角より大きな角度で入射する場合、内部にα’で反射する。しかし、ポリカーボネートと水との間で臨界角は59.1°である。図5bは、59.1°の臨界角より小さい角度で、水とポリカーボネートの界面に当たり、屈折して出て行く入射光線β、ならびに、臨界角より大きな角度で媒体に当たり、γ’として内部反射される光線γを示す。そのため、光は、その入射角度に応じて、内部反射されるか、または、屈折して出て行くであろう。
【0024】
プリズム光パイプ42の表面は、浸潤していても、TIRが依然として発生するように構成され、センサ・システムが、液体攻撃を受けにくくさせる。特に、プリズム光パイプ42の形状は、湿潤状態と乾燥状態の両方について、内部反射が維持されるように、光源44から任意の角度で入る光ビームが、設計によって、臨界角より大きな角度で入射するようなものとなっている。光パイプの表面に入射する光線の実質的に全てが、内部反射する場合、屈折に対して失われる光線はほとんど無く、光信号が保存される(preserve)。
【0025】
種々の形状が、所与の用途において、液体に対する耐性を提供することができる。2つの特定の実施形態が、開示されるが、他の幾何形状は、本発明の範囲内にある。
【0026】
第1の実施形態は、TIRを達成するために選択された角度を有する小面のあるプリズムを使用する。
【0027】
第2の実施形態は、中央ウェブ平面を有するトロイド光パイプを利用する。
図6は、小面のあるプリズム48光パイプ42の例の拡大図を示す。この例は、5つの小面を含むが、他の実施態様が、可能であり、本発明の範囲内にある。この小面のあるプリズム48構造は、プリズムが水の中に水没しても、全反射を可能にするように設計される。たとえば、図は、1つの可能のある実施態様を示し、内部角度は、主光学ビームの各セグメントに対して22.5°である。光ビームは、光源44から小面のあるプリズム48まで進み、内部反射される。小面のあるプリズム48を出る光学信号は、受信器46によって検出される。小面は、図7で、小面1、2、3、および4と表示される。到来する光が入射する各小面1、2、および3の部分は、この実施形態では、56、58、および60と表示される。小面1の1つの部分56は、TIRに維持される光経路の反射に関わる。小面2の全長58および小面1の別の部分60は、以下で説明される、別の可能性のあるセンサ機能に関わる。
【0028】
図8は、特定の寸法を有する小面のある実施形態48の例を示す。実施形態は、22.5°の内部角度、7.4mmの全体高さ、および3.3mmの厚さを含む。
【0029】
図9は、トロイド形状および滑らかに湾曲する表面を有する第2の実施形態のプリズム光パイプを示す。図3および図4も参照されたい。トロイド光パイプ50は、透明なプラスチック、たとえば、ポリカーボネートからなってもよい。LED光源44から放出される光は、トロイド光パイプ50に入り、トロイド光パイプの湾曲部の周りで反射し、受信器46によって検出される。光は、トロイド・システム内で多数の反射を受けるが、反射角度は、媒体の臨界角より大きいままであることになる。この機構は、デバイス効率全体も高く保ちながら、ほぼ100%の効率を実施する場合がある。トロイド光パイプ50が、水の中に水没する場合でも、全反射が起こるため、この性能は、液体汚染によって実質的に影響を受けない。
【0030】
光学センサ機構はまた、リセット関連機能を実施するのに使用されることができる。上述される実施形態は共に、液体の存在下で、漏洩の無いシステム内でTIRを維持するように設計される構造を有するが、一部の光が、他の目的のために、システムから外へ意図的に漏出されてもよい。意図的な光漏出のための1つのこうした目的は、リセット機能を実施することを可能にすることである。2つの可能性のある特定のリセット機能が、本明細書で開示されるが、他のこうした実施態様は、本発明の範囲内にある。第1に、光学センサ機構は、カセット20が空であることを指示するために、プッシャ・プレート28の「ホーム位置」を検出するのに使用されてもよい。第2に、光学センサ機構は、カセット20自体が取り外された時を検出してもよい。これらは共に、先に説明した実施形態において、文書識別器のリセット機能の役をしてもよい。
【0031】
例の実施形態の両方について、プリズム光パイプ42(たとえば、小面のあるプリズム48またはトロイド光パイプ50)とフラグ36との間の相互作用は、リセット機能を可能にする。通常動作時に、カセットが存在すると、センサは、信号の基線レベルを検出する。これに加えて、リセット機能を使用すると、センサは、反射表面を有するフラグ36からの反射の結果としての補助信号を検出する。以下で説明する図10は、フラグ位置に関するこの信号の変動の例を示す。
【0032】
カセット20が満杯になると、文書識別器部内のモータが働かなくなるため、文書識別器はサービスを停止する。その状態で、文書識別器は、検出器46上の信号状態を測定し、基線として記憶する。カセット20が空になると、カセットが文書識別器から取り外されなくても、プッシャ・プレート28は、そのホーム位置に戻り(すなわち、フラグ36は、カセットの前面に出来る限り近くに押し付けられ)、フラグ36に取り付けられた反射箔38は、プリズムを横切る検出光学信号を基線から増加させる。カセットが、半分を超えて満たされている(すなわち、フラグ36が、プリズム光パイプから遠ざかる)と、意図的に漏出された光は、フラグから遠くなり、光が、わずかな量さえも、または、さらに全く、反射箔38上に入射せず、反射して検出器46に戻らないようになる。この状態が、再び変わり(たとえば、カセット20が空になり)、意図的に漏出された光が、フラグ36に近くなると、より多くの光が、反射箔38上に入射することになり、増加した累積信号が、検出器46の方に反射して戻される。検出器は、その後、既に存在するTIR経路と、フラグ36から反射される経路の加算効果の結果として増加した信号を検出する。文書識別器は、信号が、収納された基線から変化した(階段状信号)ことを検出し、動作を再開する。センサは、こうして、カセットからの文書の取り外しを検出するのに使用することができる。
【0033】
リセット機能のうちの別の機能によれば、カセット20自体が、文書識別器から取り外されるときに、同じ効果が起こる。カセットが、上述したようにちょうど空になるのではなく、取り外される場合、光源44から発生する光信号は、検出器46によって検出されないであろう。その信号変化も検出されるであろう。こうして、センサは、カセットの存在または非存在を検出するのに使用することができる。上記関連動作は、ひとまとめに「リセット機能」と呼ばれてもよい。
【0034】
図10は、検出器が、リセット動作の結果として検知する基線および加算値のグラフの例を示す。基線レベルは、プリズム光パイプに関するフラグ位置の関数として測定される可変レベルであるとして示される。このグラフの垂直軸の測定単位は、ミリボルトである。
【0035】
特に、検出器46上の信号は、光がプリズム光パイプ42内に入る結果として、カセット20が存在するときに基線レベルを有する。フラグ36が移動し(たとえば、カセット内の銀行紙幣の数が変わるため、プッシャ・プレート28、したがって、フラグの位置が変わる)、光が、フラグに当たり、反射して検出器46に戻るときに起こる基線レベルに付加される可変成分も存在する。文書識別器は、カセットの存在または非存在を評価するために、信号強度および変動を試験する。
【0036】
文書識別器は、検出器46としてフォトトランジスタを利用してもよく、負荷抵抗器が、光源44か検出器46のいずれかに連結されてもよい。センサ・コンポーネントの配置構成に基づいて、2つのオプション間の信号形状が反転される。負荷抵抗器が検出器に結合されるとき、検出器によって出力される信号は、より多くの光が受け取られるとより小さく、ホーム位置においてフラグ36によって光が増加するとより小さくなる。負荷抵抗器が光源46に結合されるとき、信号は、光が増加すると増加する。
【0037】
デジタル信号の変化は、リセット状態をトリガーするための好ましい基準であるが、アナログ的な方法で信号の振幅を定量化すること、および、フラグ/プッシャ・プレートの可変位置を推論し、カセットの装填の程度を推論することが可能である。この設計の変形は、文書識別器内で、いろいろな目的で使用されてもよい。
【0038】
今述べたリセット検知機能は、先に開示したプリズム光パイプの実施形態のそれぞれにおいて、異なる構造的手段によって実施される。
【0039】
小面のあるプリズム実施形態48では、光源44からの出力ビームのいくつかの部分は、小面の少なくとも1つの部分(たとえば、小面1上の56、または、小面2上の58)を通してフラグ36に向けられ、フラグから戻って、同じか、または、別の小面を通過する。これは、TIR状態に維持された光経路から分離した、意図的な漏洩である。ビームの他の部分は、TIR状態に維持され、小面から小面へプリズムの周りで反射し、光源44から検出器46に入る。プリズム・システムのほぼ全効率が望まれる場合、ビームをコリメーションし、漏洩が、他の小面を通って起こることを防止するために、レンズを設けることができる。
【0040】
上述した図6および図7は、TIRを維持することになる、光源44から検出器46までの光経路を示す。図11および図12は、リセット機能の一部として検出器46への代替の経路において使用される光源44からの光の分岐部分を示す。小面1の部分56に入る光の部分は、依然として全反射されるビームである。しかし、光源44から来て、小面2上の部分58に入射する光の部分は、フラグ36の方へ屈折し、その後、フラグによって反射され、再度、小面2を通過し、検出器46への2つの経路のうちの一方をとる。光源44から小面1の部分60に進む光の部分は、小面3を通過してプッシャ・プレート28に達し、反射して戻るように小面3を通過し、検出器46に対する大きなリセット信号を提供する。図11は、小面2上の部分58を通過する経路を示し、図12は、小面1上の部分60を通過する経路を示す。図7、11、および12に示す経路の全ては、図13で一緒に重ね合わせて示され、TIR光経路とリセット関連光経路の両方が示される。
【0041】
カセット20内での銀行紙幣の積重ねが空になると、プッシャ・プレート28(およびフラグ)は、小面のあるプリズム48に非常に接近し、したがって、検出器46は、フラグ36によって反射された多量の光を検知する。カセットが銀行紙幣を装填されるにつれて、プッシャ・プレート28は、小面のあるプリズム48から遠くに押しやられ、少量の光が、フラグ36から反射され、プリズムの可能性のあるリセット経路を通って戻る。カセットが、銀行紙幣を装填され続けると、益々少ない光が、フラグから反射し、ついには、カセット20が満杯になると、光がほとんど反射されない。検出器46は、カセット20が満杯であり、かつ、空にされる準備ができたことを指示する、信号強度のこの変化を検出する。カセット20が空になると、プッシャ・プレート28は、小面のあるプリズム48に近い「ホーム」位置に戻り、再度、より多くの光を検出器46に反射する。フラグ・ロケーションの変動は、図7、11、および12には示されないが、プリズム光パイプ42に対するフラグの配置構成および全体の接近した状態を、見ることができ、フラグ36と小面のあるプリズム48との距離は、銀行紙幣がカセット20を装填する程度によることが理解されるべきである。
【0042】
図14は、図9に示され、先に説明されたトロイド光パイプ実施形態50の断面図である。トロイド表面が、3次元で湾曲していることを示す以外に、ウェブ52が示される。トロイド光パイプ50から支持部品まで広がるウェブ52は、斜め線で示される。トロイド光パイプ実施形態50では、光ビームの一部は、光源44からウェブ52を通ってフラグ36まで水平に進み、反射されて検出器46に戻る。ウェブ52は、トロイド光パイプ50の平面内に配置され、実質的に、光源44と検出器46の光学軸上にある。ウェブの厚さを調整することによって、TIRを可能にするシステムから意図的に漏洩した光の量は、以下で述べるように、可変にすることができる。
【0043】
図9は、保持クリップ54を両側に持つ、支持部品に取り付けられたトロイド光パイプ50を示す。トロイド光パイプ50は、支持部品に関して偏心している。ある機構では、光パイプを、光源44と検出器46の両方と整列させるために、こうした非対称が必要とされる場合がある。反射箔38を有するフラグ36は、カセット20が銀行紙幣で装填される程度に応じて、トロイド光パイプ50の縁から可変距離にある。薄いウェブ52は、リセット機能のためのシステムからの光漏洩を可能にするプロセスを容易にする。ウェブ52は、透明なプラスチック、たとえば、ポリカーボネートからなってもよく、射出成形プロセスを使用して形成されることができる。ウェブ構造を含むことによって、少量の光漏洩が、意図的に作られてもよい。上述したように、反射箔38などの反射表面(図4および図9を参照されたい)は、プッシャ・プレート28の底部縁34上でフラグ38に取り付けられる。カセットの存在だけが、上述したように、文書識別器内で基線信号を生成するが、この反射箔38の表面からの補助反射は、付加的な信号を生じ、カセット20の装填状態を検出することを可能にする。トロイド光パイプ50に対してフラグ36が接近した状態が信号強度に影響を与えるため、移動プレートの位置が検知される。少数の文書を持つカセットは、フラグ36とトロイド光パイプ50とを接近させ、強い信号が生成される。より満杯状態のカセットについてのより遠い位置は、弱い信号を生じる。トロイド実施形態におけるウェブ機能は、小面のあるプリズム実施形態48において、部分58および60を通して、代替の光ビーム経路を使用して達成されるものに類似するが、より大きな変動性が実現される。
【0044】
さらに、プリズムによって内部反射される光とフラグ36によって反射される量の割合を調整することが望ましい場合がある。これは、都合のよいことには、ウェブ52の厚さを調整することによって達成されてもよい。より厚いウェブは、より多くの光がフラグに達することを可能にする。より薄いウェブは、より多くの光が、内部反射し、より少ない光が、意図的に漏洩するようにさせる。ウェブ52が存在しない極端な場合、光の約100%が、内部反射し、リセット機能が利用されない場合がある。ウェブ52の厚さと内部光反射量との比は、トロイド光パイプ50の表面湿気によって影響を受けない。
【0045】
プッシャ・プレート28および反射箔38を有するそのフラグ36が、トロイド光パイプ50から比較的遠くにある(たとえば、カセット20が満杯である)と、検出器46によって検出される基線信号は、カセットの存在を指示する。実質的に、検出器46において受け取られた光ビームだけが、TIRによってトロイド光パイプ50内で内部反射した光である。
【0046】
対照的に、プッシャ・プレート28および反射箔38を有するそのフラグ36が、トロイド光パイプ50に比較的近いと、ウェブ52を通して漏洩した光は、フラグ36によって反射され、付加的な光が検出器46によって検出されることになり、それにより、リセット機能が可能になる。付加的な光は、トロイド光パイプに対してフラグが非常に接近している結果として、フラグ36から反射して、プッシャ・プレート28の面に入る。
【0047】
先の説明に基づいて、多様な形状および材料が、文書処理デバイス内のさまざまな一連の光学検知タスクに対処するのに使用されてもよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態が述べられた。それでも、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行ってもよいことが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0049】
1,2,3,4 小面、20 カセット、22 スロット、24 フレーム、28 プッシャ・プレート、30 ばね、32 背面カバー、34 底部縁、36 フラグ、38 反射箔、40 嵌合チャネル、42 プリズム光パイプ、44 光源、46 検出器、48 プリズム実施形態、50 トロイド光パイプ、52 ウェブ、56,58,60 部分、62 光学センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書を処理する装置であって、
光源および光検出器を収容する文書の受容部と、
反射部を有するプッシャ・プレートおよび光学要素を含む文書収納カセットとを備え、
前記光源、前記光検出器、および前記光学要素は、動作中に、前記光学要素に入る前記光の第1の部分が、前記光学要素を通過し、前記プッシャ・プレートの前記反射部によって前記検出器の方に反射されるように配列され、前記反射部によって前記検出器の方に反射される光の量は、前記カセット内の前記プッシャ・プレートの位置に依存する、装置。
【請求項2】
動作中に、前記受容部から前記カセット内に押し込まれる前記文書は、前記検出器に対して、前記光学要素からの光を少なくとも部分的に遮断するようになっている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光学要素は、前記文書が前記受容部から前記カセットまで通過するようになっているスロットに隣接して配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記反射部は、前記プッシャ・プレートの縁に隣接する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記反射部は、反射箔を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記受容部は、前記検出器からの少なくとも1つの信号を処理して、前記カセットに関する前記文書の位置を判定するようになっているマイクロコントローラを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記マイクロコントローラは、前記検出器からの前記信号に基づいて、前記文書が、前記カセット内への収納のために、前記カセット内に押し込まれているかどうかを判定するようになっている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記マイクロコントローラは、前記検出器からの前記信号に基づいて、前記文書が、完全に通過して前記カセット内に入ったかどうかを判定するようになっている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記マイクロコントローラは、前記検出器からの前記信号に基づいて、前記カセット内の前記プッシャ・プレートの位置を判定するようになっている、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記マイクロコントローラは、前記検出器からの前記信号を使用して、前記カセットが満杯かどうかを判定するようになっている、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記反射部は、動作中に、前記カセットが満杯でないときに、前記検出器の方に反射し
て戻る光の量と比較して、前記カセットが装填されるときに、前記検出器の方により少ない量の光を反射して戻すようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記マイクロコントローラは、前記検出器からの前記信号を使用して、前記カセットの有無を判定するようになっている、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記光学要素に入る前記光源からの光の第2の部分が、前記光検出器への完全内部反射によって向きを変えられるように、前記光学素子内の経路に沿って進行し、前記完全内部反射は、前記光学素子が濡れているときに維持され、前記光学素子は、少なくとも4つの小面を備える小面付きプリズム構造、または、滑らかに湾曲する3次元トロイド光パイプ構造のうちのいずれかである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記小面付きプリズム構造または前記3次元トロイド光パイプ構造は、ポリカーボネートからなる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記光学要素は、複数の小面を含む小面付きプリズム構造を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記光学要素は、前記光源からの光を、完全内部反射によって前記光検出器の方に向け直すために、少なくとも4つの小面を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記受動光学要素は、滑らかに湾曲する3次元トロイド光パイプ構造を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記光学要素は、ウェブ構造であって、装置の動作中に、光の第2の部分が、ウェブ構造を介して前記光学要素を通して漏洩するようになっている、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記ウェブ構造は、ポリカーボネートからなる、請求項18に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−246146(P2012−246146A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195050(P2012−195050)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2007−546826(P2007−546826)の分割
【原出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(506258187)エムイーアイ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】