断熱パネルの接続構造
【課題】 断熱パネルの接続部分の防水性を確保するためにゴンドラや足場での作業をなくして安全で容易に断熱パネルを施工することができる断熱パネルの接続構造を提供する。
【解決手段】 二枚の金属外皮1、2の間に断熱材3を充填して形成される断熱パネルAの接続構造に関する。断熱パネルAの側端部に目地片4を側方に突出させる。隣接する断熱パネルA、Aをその目地片4を対向させて配設すると共に対向する目地片4、4により目地5を形成する。目地5内に防水部材6を設けると共に目地5に防水部材6よりも屋外側空間に連通する開口部を設ける。目地5より屋内側に樋部材7を配設すると共に目地片4と樋部材7との間に気密部材8を設ける。防水部材6と樋部材7の間を屋外側空間の気圧と等しい等圧空間9として形成する。
【解決手段】 二枚の金属外皮1、2の間に断熱材3を充填して形成される断熱パネルAの接続構造に関する。断熱パネルAの側端部に目地片4を側方に突出させる。隣接する断熱パネルA、Aをその目地片4を対向させて配設すると共に対向する目地片4、4により目地5を形成する。目地5内に防水部材6を設けると共に目地5に防水部材6よりも屋外側空間に連通する開口部を設ける。目地5より屋内側に樋部材7を配設すると共に目地片4と樋部材7との間に気密部材8を設ける。防水部材6と樋部材7の間を屋外側空間の気圧と等しい等圧空間9として形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁などの壁を断熱パネルで形成する際に用いられる断熱パネルの接続構造に関するものであり、特に、高層ビルや足場を組めない場所など、屋外側から外壁の施工が行ないにくい施工現場で好適に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二枚の金属外皮の間に断熱材を充填して断熱パネルを形成し、複数枚の断熱パネルを縦横に並設することにより外壁を形成することが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。このような断熱パネルの両方の側端部には断面略L字状の目地片が突設されており、複数枚の断熱パネルを横方向に並設すると、隣り合う断熱パネルの目地片の間が縦方向の目地として形成されるものである。また、この目地には隣り合う断熱パネルの接続部分(目地部分)における防水性を確保するために、コーキング剤が目地の全長に亘って充填されている。
【特許文献1】特開2000−96806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のようにコーキング剤により隣り合う断熱パネルの接続部分における防水性を確保する場合、コーキング剤を目地に完全に隙間なく充填しなければならず、このために、コーキング剤は建物の屋外側となる場所から目地に充填する作業が必要となる。従って、高層ビルではゴンドラを使用して、また低層ビルであっても足場を組んで作業しなければならず、いずれの場合でも高所における作業であって危険を伴うものであり、また、隣り合う建物の間に狭小スペースしか確保できない場合では、作業が行ないにくいという問題があった。しかも、コーキング剤を目地に完全に隙間なく充填することは難しく、さらには、経年劣化によりコーキング剤に亀裂や破損が生じることもあるために、隣り合う断熱パネルの接続部分の防水性が損なわれるという問題があった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、断熱パネルの接続部分の防水性を確保するためにゴンドラや足場での作業をなくして安全で容易に断熱パネルを施工することができる断熱パネルの接続構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の断熱パネルの接続構造は、二枚の金属外皮1、2の間に断熱材3を充填して形成される断熱パネルAの接続構造において、断熱パネルAの側端部に目地片4を側方に突出させ、隣接する断熱パネルA、Aをその目地片4を対向させて配設すると共に対向する目地片4、4により目地5を形成し、目地5内に防水部材6を設けると共に目地5に防水部材6よりも屋外側空間に連通する開口部10を設け、目地5より屋内側に樋部材7を配設すると共に目地片4と樋部材7との間に気密部材8を設け、防水部材6と樋部材7の間を屋外側空間の気圧と等しい等圧空間9として形成して成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明にあっては、気密部材8にスリット12を形成し、目地片4をスリット12に差し込むことにより断熱パネルAの目地片4に気密部材8を取り付けることができる。
【0007】
また、本発明にあっては、防水部材6に被差し込み凹部13を形成し、目地片4を被差し込み凹部13を差し込むことにより断熱パネルAの目地片4に防水部材6を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、防水部材6と樋部材7の間を防水部材6よりも屋外側空間の気圧と等しい等圧空間9として形成するので、防水部材6の屋外側空間と屋内側空間との間で気圧差が生じないようにすることができ、当該気圧差に起因して雨水が目地5内を屋内側に進入するのを防止することができるものである。従って、防水部材6と目地片4との間に多少隙間があったり、経年劣化により防水部材6に亀裂や破損が生じることがあっても、等圧空間9により上記気圧差が生じないために断熱パネルA、Aの接続部分の防水性を低下しにくくすることができるものであり、この結果、従来のようにコーキング剤を屋外側から目地に隙間なく完全に充填する作業が必要が無くなって、断熱パネルの接続部分の防水性を確保するためにゴンドラや足場での作業をなくして屋内側から安全で容易に断熱パネルを施工することができるものである。
【0009】
また、気密部材8に形成したスリット12に目地片4を差し込んで断熱パネルAの目地片4に気密部材8を取り付けることにより、気密部材8を断熱パネルAの目地片4に位置決めして保持した状態で断熱パネルAを施工することができ、断熱パネルAの施工をより容易に行うことができるものである。
【0010】
また、防水部材6に形成した被差し込み凹部13に目地片4を差し込んで断熱パネルAの目地片4に防水部材6を取り付けることにより、防水部材6を断熱パネルAの目地片4に位置決めして保持した状態で断熱パネルAを施工することができ、断熱パネルAの施工をより容易に行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
本発明で用いる断熱パネルAは、二枚の金属外皮1、2の間に断熱材3を充填して形成されるものである。金属外皮1、2は一方が断熱パネルAの表面側(屋外側)を、他方が断熱パネルAの裏面側(屋内側)を構成するものであり、例えば、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、チタン板などの金属板で厚み0.2〜1mmのものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、断熱材3としては、例えば、フェノールフォームやウレタンフォームなどの樹脂発泡体やグラスウールやロックウールなどの無機繊維体などで、密度20〜200kg/m3のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
図2(a)〜(c)に示すように、表面側の金属外皮1は、金属外皮1の中央部の略全体を構成する平面部1aと、金属外皮1の上端部に位置する折り返し部20と、金属外皮1の下端部に位置する被覆部23と、金属外皮1の両側端部に位置する目地片4などを備えて形成されている。
【0014】
折り返し部20は断面略逆U字状で、金属外皮1の横方向(水平方向)の略全長に亘って設けられており、金属外皮1の裏面側に折り返し屈曲されて断面略逆U字状に形成されている。折り返し部20の端部には凹部底面片21が設けられている。凹部底面片21は折り返し部20の横方向の略全長に亘って外方(平面部1aと反対側)に向かって突設されている。また、凹部底面片21の先端には差し込み片22が設けられている。差し込み片22は凹部底面片21の横方向の略全長に亘って下方に向かって突設されている。
【0015】
被覆部23は金属外皮1の横方向の略全長に亘って設けられており、金属外皮1の裏面側に折り返し屈曲されて断面略逆U字状に形成されている。被覆部23の端部には傾斜片24が設けられている。傾斜片24は被覆部23の横方向の略全長に亘って斜め外方(平面部分1aと反対側)に向かって上り傾斜して形成されている。また、傾斜片24の先端には凹曲部25が設けられている。凹曲部25は断面略逆L字状に形成されており、傾斜片24の横方向の略全長に亘って上方に突出するように設けられている。また、凹曲片25の先端には断面略L字状の凸部覆い片26が突設されている。凸部覆い片26は凹曲片25の横方向の略全長に亘って下方に向かって突設されている。また、凸部覆い片26の先端には差し込み片27が設けられている。差し込み片27は凸部覆い片26の横方向の略全長に亘って上方に向かって突設されている。
【0016】
目地片4は箱折加工などにより形成されるものであって、金属外皮1の折り返し部20の基部から被覆部23の下端に至るまで、すなわち、金属外皮1の上端部を除く縦方向(鉛直方向)の略全長に亘って形成されている。また、目地片4は、平面部1aと略面一に延設される延設部32と、延設部32の先端から金属外皮1の裏面側に略垂直に屈曲形成される挟持片33と、挟持片33の先端から外方に向かって平面部1aと略平行に突設された支持片34とを備えて断面略Z字状に形成されている。
【0017】
平面部1aと折り返し部20の基部との間には第一凹段部35と第二凹段部36が形成されている。第一凹段部35と第二凹段部36は金属外皮1の上部の横方向の全長に亘って形成されており、第一凹段部35及び第二凹段部36のいずれもが両側端部の目地片4、4の表面にまで形成されている。
【0018】
図2(d)で示すように、裏面側の金属外皮2は、金属外皮2の中央部の略全体を構成する平面部2aと、金属外皮2の上端部に位置する折り返し部87と、金属外皮2の下端部に位置する凸部覆い片30などを備えて形成されている。
【0019】
折り返し部87は断面略逆U字状で、金属外皮2の横方向(水平方向)の略全長に亘って設けられており、金属外皮2の裏面側に折り返し屈曲されて断面略逆U字状に形成されている。折り返し部87の端部には凹部底面片28が設けられている。凹部底面片28は折り返し部87の横方向の略全長に亘って外方(平面部2aと反対側)に向かって突設されている。また、凹部底面片28の先端には差し込み片29が設けられている。差し込み片29は凹部底面片28の横方向の略全長に亘って下方に向かって突設されている。
【0020】
凸部覆い片30は金属外皮2の横方向の略全長に亘って突設されており、断面略L字状で平面部2aの下端から下方に向かって突出するように形成されている。また、凸部覆い片30の先端には差し込み片31が設けられている。差し込み片31は凸部覆い片30の横方向の略全長に亘って上方に向かって突設されている。さらに、裏面側の金属外皮2の平面部2aと凸部覆い片30に境界部分には横方向の全長に亘って下部凹段部40が形成されている。
【0021】
そして、図3、4及び図5(a)(b)に示すように、金属外皮1、2をその裏面同士が対向するようにして配置すると共に金属外皮1、2の間に断熱材3と炭酸カルシウム等で形成される耐火材37、39とを介装して充填し、金属外皮1、2に断熱材3及び耐火材37、39を接着するなどして一体化することにより、本発明で使用する断熱パネルAを形成することができる。
【0022】
ここで、断熱材3は金属外皮1、2の平面部1a、2aの間の略全体に亘って充填される。また、耐火材37、39は断熱材3の上側と下側において断熱パネルAの上部と下部に充填されている。上側の耐火材37は第二凹段部36の上側において金属外皮1、2の間に配置されている。従って、金属外皮1、2の折り返し部20、87の内側の空間及び金属外皮1、2の第二凹段部36よりも上側部分の空間に上側の耐火材37が充填されており、また、差し込み片22、29が上側の耐火材37に差し込まれ、さらに上側の耐火材37の上面は凹部底面片21、28で覆われている。そして、対向配置された折り返し部20と折り返し部87の間の空間が凹部底面片21、28を底面とする嵌合凹部38として形成されるものである。この嵌合凹部38の底面にはパッキン76が全長に亘って設けられている。
【0023】
また、下側の耐火材39は下部凹段部40の下側において金属外皮1、2の間に配置されている。従って、金属外皮1の被覆部23の内側の空間及び金属外皮1、2の下部凹段部40よりも下側部分の空間に下側の耐火材39が充填されており、また、差し込み片27、31が下側の耐火材39に差し込まれ、さらに下側の耐火材39の表裏面及び下面は凸部覆い片26、30で覆われている。そして、対向配置された凸部覆い片26と凸部覆い片30及びその間に充填された下側の耐火材39により嵌合凸部41が形成されるものである。また、目地片4は断熱材3や耐火材37、39よりも外側方に向かって突出するものである。
【0024】
本発明で用いる防水部材(ガスケット)6は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム弾性体等の成形品で長尺なものであって、図6に示すように、平板状の第一防水片42と、第一防水片42の基部側端部に後方に向かって略垂直に突設されて固定片43と、固定片43の後端に設けた断面略コ字状の取付部44と、取付部44に第一防水片42と略平行になるように突設した第二防水片45とを設けて形成されている。そして、断面略コ字状の取付部44の内側空間が差し込み凹部13として形成されている。尚、本発明では図6に示すもの及びこれと鏡面対象のものとを使用する。
【0025】
本発明で用いる樋部材7は、金属外皮1、2と同様の金属材料で形成されるものであって、図7に示すように、連結片7aとその両端に突設された一対の側片7b、7bとにより、前面が開口する断面略コ字状で断熱パネルAと縦方向の寸法と同程度の長尺に形成されている。
【0026】
本発明で用いる気密部材(パッキン)8は防水部材6と同様のゴム弾性体等の成形品であって、上部気密部材46と側部気密部材47とで構成されている。
【0027】
上部気密部材46は、図8〜10に示すように、下部閉塞部48と、下部閉塞部48の上面に形成された中間閉塞部49と、中間閉塞部49の上面に形成された上部閉塞部50とから構成されている。下部閉塞部48は、基部気密部51に外側気密部52と内側気密部53とを前側に突出するように一体に形成したものであって、外側気密部52と内側気密部53の間にはスリット12が設けられている。また、外側気密部52の上面は前方に向かって下り傾斜する傾斜面79として形成されている。中間閉塞部49は平面視で略L字状であって、基部気密部52の上面と外側気密部53の上面とに亘って形成されている。上部閉塞部50は平面視で略L字状であって、中間閉塞部49の上面に形成されている。また、上部閉塞部50の上部は前方に突出する断面略くさび状の第一係止部54として形成されており、第一係止部54の上面は前方に向かって下り傾斜する傾斜面55として形成されている。また、上部閉塞部50の前端上部は前方に突出する第二係止部56として形成されている。
【0028】
側部気密部材47は、図11に示すように、縦方向に長尺な角棒状に形成されている。
【0029】
そして、本発明の断熱パネルA、Aの接続構造は次のようにして形成することができる。まず、図12に示すように、断熱パネルAの両側の目地片4の上端角部を切除して角部切欠部57を形成すると共に両側の目地片4の第二凹段部36の一部及びその直下部分の支持片34を切除して支持片切欠部58を形成する。
【0030】
次に、断熱パネルAの両側部に気密パッキン8を縦方向の略全長に亘って取り付ける。気密パッキン8のうち側部気密部材47は支持片切欠部58の直下から目地片4の下端に至るまでに配設されており、図13に示すように、目地片4の挟持片33と断熱パネル4の側端部に露出した断熱部材3及び下側の耐火材39との間に差し込んで保持されることにより、挟持片33の裏面(断熱部材3側の面)と延設片32の裏面(屋内側の面)と断熱部材3及び下側の耐火材39の露出面とに弾性的に密着して取り付けられている。
【0031】
気密部材8のうち上部気密部材46は側部気密部材47よりも上側において断熱パネルAの両側端部に取り付けられる。すなわち、断熱パネルAの目地片4に裏面側(屋内側)から上部気密部材46を近づけて、第二係止部56を目地片4の延設片32の上端に係止すると共に第一係止部54を目地片4の挟持片33の上端と支持片34の上端とに亘って係止し、支持片切欠部58の部分において挟持片33を上部気密部材46のスリット12に差し込むことにより、内側気密部53を挟持片33と断熱パネル4の側端部に露出した断熱部材3及び耐火材37との間に差し込むと共に外側気密部52を支持片切欠部58に通して配置する。ここで、断熱パネルAの一方の側端部に取り付けられる上部気密部材46と他方の側端部に取り付けられる上部気密部材46とは鏡面対象に形成されたのものである。このようにして図12に示すように、目地片4に上部気密部材46を取り付けることによって、内側気密部53の前面を延設片32の裏面に弾性的に密着させる。また、内側気密部53の上面と基部気密部51の上面とを目地片4における第二凹段部36の裏面(下面)に弾性的に密着させる。また、中間閉塞部49の前面を第一凹段部35と第二凹段部36との間において延設片32の裏面と挟持片33の裏面と支持片34の裏面に弾性的に密着させると共に中間閉塞部49の上面を第一凹段部35の裏面(下面)に弾性的に密着させる。さらに、上部閉塞部50の前面を第一凹段部35の上側において延設片32の裏面と挟持片33の裏面と支持片34の裏面に弾性的に密着させる。
【0032】
次に、断熱パネルAの両側部に防水部材6を縦方向の略全長に亘って取り付ける。すなわち、防水部材6の取付部44の差し込み凹部13を目地片4の支持片34に被挿すると共に防水部材6の固定片43を挟持片33の表面に密着し、固定片43の表面から挟持片33にまでビス等の固定具59を打ち込む。このようにして複数個の固定具59で防水部材6を第二凹段部36から目地片4の下端に至るまで取り付ける。尚、上部気密部材46の部分では固定片43と取付部44及び第二防水片45を切除して第一防水片42が外側気密部52の前側(屋外側)に位置するようにする。
【0033】
また、表面側の金属外皮1の折り返し部20の側端部には、雨水の流れ込み防止用のパッキン62を取り付ける。このパッキン62は折り返し部20の上面を覆うように断面略U字状に形成されていると共にパッキン62の下部には第一凹段部35の前後方向の寸法とほぼ同じ厚みの膨出部63が突設されている。
【0034】
また、嵌合凹部38よりも下側で第一凹段部35よりも上側の位置において、断熱パネルAにその厚み方向(前後方向)で貫通する挿入孔を設け、この挿入孔にボルトなどの固定具65を挿入する。この時、固定具65は表面側の金属外皮1の方から差し込んで、固定具65の頭部が金属外皮1の表面(屋外側)に位置し、固定具65の先端部が裏面側の金属外皮2の後方に突出するようにする。
【0035】
次に、断熱パネルAの一方の側端部に樋部材7を取り付ける。この場合、樋部材7の一方の側片7bを目地片4の挟持片33と断熱部材3及び耐火材37、39との間に挿入し、その側片7bの前端を断熱パネルAに取り付けた側部気密部材47の後面(屋内側の面)に密着させると共にその側片7bの上部内側面と連結片7aの上部前面とを断熱パネルAに取り付けた上部気密部材46の外側面(断熱部材3側の面)と上部気密部材46の後面(屋内側の面)に密着させる。この後、断熱パネルAの裏面と樋部材7の裏面とに亘ってバックアップ材60を配置し、バックアップ材60の取着片60aを断熱パネルAの裏面の側端部にビス等の固定具で固定すると共にバックアップ材60の本体部60bを樋部材7の連結片7aの裏面にビス等の固定具で固定することによって、断熱パネルAの一方の側端部の略全長に亘って樋部材7をバックアップ材60により取り付ける。バックアップ材60は断面略コ字状の本体部60bとその両端に突設される取着片60aとで断面略ハット状に形成されており、本体部60bの内側空間にはセラミックファイバーなどの耐火材60cが充填されている。
【0036】
この後、クレーン等を用いることにより、防水部材6、樋部材7、気密部材8を取り付けた断熱パネルAを建物の柱等の構造材66の屋外側に吊り上げて所望の取り付け位置に配置する。この時、断熱パネルAは嵌合凹部38を上向きに、嵌合凸部41を下向きにして配置される。図14に示すように、上記の構造材66の両側面には断面略L字状の固定金具67が設けられており、固定金具67の固定片68が構造材66の側面に突出している。また、固定片68には厚み方向(前後方向)に貫通する固定孔69が設けられている。次に、吊り上げた断熱パネルAを建物の構造材66の屋内側からロープ等により引き寄せ、構造材66の屋外側面にバックアップ材60を介して樋部材7の連結片7aを位置させる。次に、この断熱パネルAに挿着しておいた固定具65の後端を固定孔69に屋外側から差し込むと共に固定片68の屋内側に突出した固定具65の先端にナット等の螺合具70を螺合する。このようにして一枚の断熱パネルAを構造材66の屋外側に取り付ける。
【0037】
次に、上記のようにして取り付けた断熱パネルAの横に別の断熱パネルAを配置して両断熱パネルA、Aを接続する場合について説明する。まず、構造材66に取り付けた断熱パネルAとは別の断熱パネルAを構造材66の屋外側に吊り上げて、図15に示すように、構造材66に取り付けた上記の断熱パネルAの側方に配置する。この時、この別の断熱パネルAにも上記と同様にして防水部材6、樋部材7、気密部材8、固定具65などが取り付けられている。また、構造材66に取り付けた断熱パネルAの樋部材7を設けた方の側端部に、別の断熱パネルAの樋部材7を設けていない方の側端部を近づけるようにする。次に、吊り上げた上記断熱パネルAを構造材66の屋内側から引き寄せる。このようにすると、構造材66の屋外側に配置した樋部材7の断熱パネルAに取り付けられていない方の側片7bを、引き寄せた別の断熱パネルAの目地片4の挟持片33と断熱部材3及び耐火材37、39との間に挿入し、その側片7bの前端を引き寄せた別の断熱パネルAの側部気密部材47の後面(屋内側の面)に密着させると共にその側片7bの上部内側面と連結片7aの上部前面とを別の断熱パネルAの上部気密部材46の外側面(断熱部材3側の面)と上部気密部材46の後面(屋内側の面)に密着させる。次に、この別の断熱パネルAに挿着しておいた固定具65の後端を上記とは別のもう一方の固定金具67の固定片68の固定孔69に屋外側から差し込むと共に固定片68の屋内側に突出した固定具65の後端にナット等の螺合具70を螺合する。こうして図1に示すように、もう一枚の断熱パネルAを構造材66の屋外側に取り付ける。
【0038】
上記のように横方向に隣接させた断熱パネルA、Aでは、目地片4の挟持片33、33同士が横方向に対向配置されるものであり、これにより、挟持片33、33の間で支持片34、34よりも前側(屋外側)の空間が目地5として形成されるものである。また、断熱パネルA、Aに設けた防水部材6、6は目地5内に配設されるが、各防水部材6、6の第一防水片42、42の先端同士が目地5内において前後方向(屋内外方向)に重なり合うと共に、各防水部材6、6の第二防水片45、45の先端同士が支持片34の後側で前後方向に重なり合うようにして配置される。この時、第一防水片42、42は第二防水片45、45よりも前側に配置される。また、図16に示すように、横方向に隣接させた断熱パネルA、Aに設けた上部気密部材46、46の外側気密部52、52同士が樋部材7内で横方向に隣接して密着することになる。尚、図16においては、第一防水片42は図示省略している。
【0039】
次に、構造材66に取り付けた断熱パネルAの上に別の断熱パネルAを配置して両断熱パネルA、Aを接続する場合について説明する。まず、構造材66に取り付けた断熱パネルAとは別の断熱パネルAを構造材66の屋外側に吊り上げて、構造材66に取り付けた上記の断熱パネルAの上方に配置する。この時、この別の断熱パネルAにも上記と同様にして防水部材6、樋部材7、気密部材8、固定具65などが取り付けられている。次に、吊り上げた断熱パネルAを徐々に下ろしながら構造材66の屋内側からロープ等により引き寄せ、構造材66に取り付けた断熱パネルAの嵌合凹部38に、吊り上げた断熱パネルAの下端の嵌合凸部41を上側から嵌合する。この時、上側の断熱パネルAの被覆部23が下側の断熱パネルAの第一凹段部35よりも上側部分の屋外側を覆うことになり、これにより、下側の断熱パネルAを構造材66に固定する固定具65を上側の断熱パネルAの被覆部23で覆い隠すことができる。また、上側の断熱パネルAの被覆部23の下端と、下側の断熱パネルAの第二凹段部36との間には間隙が形成されて横目地71となる。次に、上側に配置した別の断熱パネルAを上記と同様にして構造材66に取り付ける。すなわち、構造材66の屋外側面にバックアップ材60を介して断熱パネルAに設けた樋部材7の連結片7aを位置させ、断熱パネルAに挿着しておいた固定具65の後端を固定孔69に屋外側から差し込むと共に固定片68の屋内側に突出した固定具65の後端にナット等の螺合具70を螺合する。また、上下に隣接する樋部材7、7の端部同士を隙間なく接続する。このようにして図17に示すように、縦方向に隣接して断熱パネルA、Aを接続して取り付けることができる。
【0040】
上記のようにして複数枚の断熱パネルA、A…を横方向及び縦方向に並べて接続していくことにより、建物の壁(外壁)を形成することができるが、この壁には縦方向に長い目地5と横目地71とが交差するように形成され、また、図18に示すように、この交差部分において上側の断熱パネルAに取り付けた防水部材6の第一防水片42の下端と、下側の断熱パネルAに取り付けた防水部材6の第一防水片42の上端との間に隙間ができて開口部(通気孔)10が形成されることになる。すなわち、開口部10は縦方向においては第一凹段部35と第二凹段部36の間に形成され、横方向においては支持片34の屋外側に形成されるものである。また、防水部材6の第一防水片42よりも屋内側の目地5内の空間及び樋部材7の連結片7aよりも屋外側の空間は、気密部材8により樋部材7よりも屋内側の空間に対して密閉されて通気性がないように形成されている。従って、開口部10とそれよりも上側の上部気密部材46との間において、防水部材6の第一防水片42よりも屋内側の目地5内の空間及び樋部材7の連結片7aよりも屋外側の空間は、上記開口部10により防水部材6の第一防水片42よりも屋外側の空間に開放され、図19に示すように、開口部10を通じて目地5内に外気が導入されるものであり、これにより、第一防水片42よりも屋外側の空間の気圧と等しい等圧空間9として形成することができる。そして、等圧空間9により、防水部材6の第一防水片42の屋外側の空間と屋内側の空間との間で気圧差が生じないようにすることができ、気圧差に起因して雨水が目地5内を屋内側に進入するのを防止することができるものである。また、上記のように断熱パネルAを構造材66に屋内側から取り付けることができ、足場での作業をなくして安全で容易に断熱パネルを施工することができるものである。
【0041】
雨水が目地5を屋内側に向かって移動させるエネルギーとしては、重力、表面張力、毛細管現象、運動エネルギー、気流及び気圧差の6つがある。
【0042】
目地5に屋内側に向かって下り傾斜する経路があると、重力のエネルギーにより雨水が屋内側に進入しやすくなるが、本発明では上部気密部材46の外側気密部52の上面を屋外側に向かって傾斜する傾斜面79として形成しているので、開口部10から目地5内に進入した雨水が自重により屋内側に向かって移動するのを防止することができる。
【0043】
また、雨水が断熱パネルAの金属外皮1に付着すると、雨水の表面張力により雨水が金属外皮1の表面を伝わって目地5に進入しやすくなるが、本発明では目地5内に防水部材6を設けると共に上部気密部材46の外側気密部52の上面を屋外側に向かって傾斜する傾斜面79として形成しているので、雨水が目地5内に進入しにくく、また、進入したとしても雨水が表面張力により屋内側に向かって移動するのを防止することができる。
【0044】
また、目地5の幅寸法が狭いと毛細管現象が起こり、重力に逆らって目地5に雨水が進入する恐れがあるが、本発明では毛細管現象が生じない程度の幅寸法(例えば、20mm)に目地5を形成しているので、雨水が目地5内に進入しにくく、また、進入したとしても雨水が表面張力により屋内側に向かって移動するのを防止することができる。
【0045】
また、風速等によって雨水が断熱パネルAの方に向かう運動エネルギーを持つと、雨水が目地5に進入する恐れがあるが、本発明では防水部材6の第一防水片42と第二防水片45により目地5に雨水が進入するのを防止することができる。
【0046】
また、目地5が建物の屋内に通じていると、風を伴った降雨時に目地5を通る気流が生じ、ある流速以上の気流では雨水が横飛びして建物の屋内側に進入する恐れがあるが、本発明では気密部材8により目地5と建物の屋内側空間とが通じないように閉塞していると共に防水部材6の第一防水片42と第二防水片45を設けているので、目地5に雨水が進入するのを防止することができる。
【0047】
また、目地5内に雨水が進入した場合、建物の屋内側の空間と屋外側の空間に気圧差が生じると、圧力により雨水が屋内側に移動するが、本発明では開口部10を設け、ここから目地5内及び樋部材7の屋外側空間に外気を自然に導入して等圧空間9を形成しているので、目地5から屋内側に雨水が進入するのを防止することができる。
【0048】
そして、本発明では、樋部材7にまで雨水が到達しても、その雨水を上部気密部材46の傾斜面55、79に沿って屋外側へと流すことができ、目地5及び開口部10を通じて壁の屋外に排水することができるものである。
【0049】
尚、本発明においては、等圧空間9と防水部材6よりも屋外側の空間とが50Pa(5kgf/m2)以下の圧力差であれば等圧とみなすことができ、これ以上の圧力差が生じないように、建物の高さ、最大風圧、目地5の幅寸法、嵌合凹部38と嵌合凸部41との嵌合深さなどに応じて、開口部10の開口面積を設定することができる。
【0050】
上記のように複数枚の断熱パネルA、A…を用いて壁を形成する場合、一部の断熱パネルAをサッシBに置き換えて窓などを形成することがあるが、このような場合でも本発明の断熱パネルAの接続構造を用いることができる。サッシBは枠部73とその内側にはめられた窓部材(図示省略)から構成されており、枠部73の上端には上面が開口するサッシ嵌合凹部74が横方向の全長に亘って形成されている。また、枠部73の下面には嵌合突起75が横方向の全長に亘って形成されていると共に嵌合突起75よりも屋外側には嵌合突起75より下方に突出するサッシ被覆部86が枠部73の下面の横方向の全長に亘って形成されている。さらに、枠部73の両方の側面には断熱パネルAの目地片4と同様の目地片4が縦方向の全長に亘って突設されている。
【0051】
そして、このサッシBには上記と同様の防水部材6、樋部材7、気密部材8を取り付けた状態で、上記断熱パネルAと同様にして屋内側から施工されるものである。ここで、図20に示すように、サッシBは枠部73の上部に装着したボルト等の固定具65及びこれに螺合されるナット等の螺合具70により胴縁等の構造材66に取り付けられる。また、サッシBとその上側の断熱パネルAとは、サッシBのサッシ嵌合凹部74に断熱パネルAの嵌合凸部41を嵌合することにより接続されると共に、サッシBとその下側の断熱パネルAとは、サッシBの嵌合突起75を断熱パネルAの嵌合凹部38に嵌合することにより接続される。この時、サッシ嵌合凹部74の底面と嵌合凸部41の下面との間及び嵌合突起75の下端と嵌合凹部38の底面との間にはパッキン76が設けられている。さらに、図21に示すように、横方向に隣接させた断熱パネルAとサッシBでは、断熱パネルA、Aを横方向に隣接させた場合と同様に目地5が形成されると共に防水部材6、6が目地5内に配置される。また、目地5内は開口部10により開放されると共に、横方向に隣接させた断熱パネルAとサッシBに設けた上部気密部材46、46の外側気密部52、52同士が樋部材7内で横方向に隣接して密着するものであり、これにより、開口部10とそれよりも上側の上部気密部材46との間において、防水部材6の第一防水片42よりも屋内側の目地5内の空間及び樋部材7の連結片7aよりも屋外側の空間は、上記開口部10により防水部材6の第一防水片42よりも屋外側の空間に開放され、開口部10を通じて目地5内に外気が導入されるものであり、これにより、第一防水片42よりも屋外側の空間の気圧と等しい等圧空間9として形成することができる。この結果、防水部材6の第一防水片42の屋外側の空間と屋内側の空間との間で気圧差が生じないようにすることができ、気圧差に起因して雨水が目地5内を屋内側に進入するのを防止することができるものである。
【0052】
尚、上記では、断熱パネルAが厚くて(50mm程度)、樋部材7と構造材66との間隔が広くなるためにハット状のバックアップ材60を用いて断熱パネルAと樋部材7とを連結しているが、断熱パネルAが薄い場合(35mm程度)などでは、樋部材7と構造材66との間にほとんど隙間が開かない。そこで、この場合は、図22に示すように、断熱パネルAと樋部材7とを板状の固定板77で連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の断熱パネルの金属外皮を示し、(a)(b)(d)は断面図、(c)は平面図である。
【図3】同上の断熱パネルを示す断面図である。
【図4】同上の断熱パネルを示す斜視図である。
【図5】同上の断熱パネルを示し、(a)(b)は一部の斜視図である。
【図6】同上の防水部材を示す一部の斜視図である。
【図7】同上の樋部材を示す一部の斜視図である。
【図8】同上の上部気密部材を示し、(a)(b)は斜視図である。
【図9】同上の上部気密部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】同上の上部気密部材を示し、(a)は図9(a)におけるA−A断面図、(b)は図9(a)におけるB−B断面図、(c)は図9(a)におけるC−C断面図、(d)は図9(a)におけるD−D断面図である。
【図11】同上の側部気密部材を示す一部の斜視図である。
【図12】同上の断熱パネルに上部気密部材と樋部材とを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図13】同上の施工途中を示す断面図である。
【図14】同上の施工途中を示す断面図である。
【図15】同上の施工途中を示す断面図である。
【図16】同上の横方向に並ぶ断熱パネルの接続状態を示す断面図である。
【図17】同上の縦方向に並ぶ断熱パネルの接続状態を示す断面図である。
【図18】同上の正面図である。
【図19】同上の断面図である。
【図20】同上のサッシを取り付けた状態を示す断面図である。
【図21】同上のサッシを取り付けた状態を示す断面図である。
【図22】同上の樋部材の他の取付方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 金属外皮
2 金属外皮
3 断熱材
4 目地片
5 目地
6 防水部材
7 樋部材
8 気密部材
9 等圧空間
12 スリット
13 被差し込み凹部
A 断熱パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁などの壁を断熱パネルで形成する際に用いられる断熱パネルの接続構造に関するものであり、特に、高層ビルや足場を組めない場所など、屋外側から外壁の施工が行ないにくい施工現場で好適に用いるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二枚の金属外皮の間に断熱材を充填して断熱パネルを形成し、複数枚の断熱パネルを縦横に並設することにより外壁を形成することが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。このような断熱パネルの両方の側端部には断面略L字状の目地片が突設されており、複数枚の断熱パネルを横方向に並設すると、隣り合う断熱パネルの目地片の間が縦方向の目地として形成されるものである。また、この目地には隣り合う断熱パネルの接続部分(目地部分)における防水性を確保するために、コーキング剤が目地の全長に亘って充填されている。
【特許文献1】特開2000−96806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のようにコーキング剤により隣り合う断熱パネルの接続部分における防水性を確保する場合、コーキング剤を目地に完全に隙間なく充填しなければならず、このために、コーキング剤は建物の屋外側となる場所から目地に充填する作業が必要となる。従って、高層ビルではゴンドラを使用して、また低層ビルであっても足場を組んで作業しなければならず、いずれの場合でも高所における作業であって危険を伴うものであり、また、隣り合う建物の間に狭小スペースしか確保できない場合では、作業が行ないにくいという問題があった。しかも、コーキング剤を目地に完全に隙間なく充填することは難しく、さらには、経年劣化によりコーキング剤に亀裂や破損が生じることもあるために、隣り合う断熱パネルの接続部分の防水性が損なわれるという問題があった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、断熱パネルの接続部分の防水性を確保するためにゴンドラや足場での作業をなくして安全で容易に断熱パネルを施工することができる断熱パネルの接続構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の断熱パネルの接続構造は、二枚の金属外皮1、2の間に断熱材3を充填して形成される断熱パネルAの接続構造において、断熱パネルAの側端部に目地片4を側方に突出させ、隣接する断熱パネルA、Aをその目地片4を対向させて配設すると共に対向する目地片4、4により目地5を形成し、目地5内に防水部材6を設けると共に目地5に防水部材6よりも屋外側空間に連通する開口部10を設け、目地5より屋内側に樋部材7を配設すると共に目地片4と樋部材7との間に気密部材8を設け、防水部材6と樋部材7の間を屋外側空間の気圧と等しい等圧空間9として形成して成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明にあっては、気密部材8にスリット12を形成し、目地片4をスリット12に差し込むことにより断熱パネルAの目地片4に気密部材8を取り付けることができる。
【0007】
また、本発明にあっては、防水部材6に被差し込み凹部13を形成し、目地片4を被差し込み凹部13を差し込むことにより断熱パネルAの目地片4に防水部材6を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にあっては、防水部材6と樋部材7の間を防水部材6よりも屋外側空間の気圧と等しい等圧空間9として形成するので、防水部材6の屋外側空間と屋内側空間との間で気圧差が生じないようにすることができ、当該気圧差に起因して雨水が目地5内を屋内側に進入するのを防止することができるものである。従って、防水部材6と目地片4との間に多少隙間があったり、経年劣化により防水部材6に亀裂や破損が生じることがあっても、等圧空間9により上記気圧差が生じないために断熱パネルA、Aの接続部分の防水性を低下しにくくすることができるものであり、この結果、従来のようにコーキング剤を屋外側から目地に隙間なく完全に充填する作業が必要が無くなって、断熱パネルの接続部分の防水性を確保するためにゴンドラや足場での作業をなくして屋内側から安全で容易に断熱パネルを施工することができるものである。
【0009】
また、気密部材8に形成したスリット12に目地片4を差し込んで断熱パネルAの目地片4に気密部材8を取り付けることにより、気密部材8を断熱パネルAの目地片4に位置決めして保持した状態で断熱パネルAを施工することができ、断熱パネルAの施工をより容易に行うことができるものである。
【0010】
また、防水部材6に形成した被差し込み凹部13に目地片4を差し込んで断熱パネルAの目地片4に防水部材6を取り付けることにより、防水部材6を断熱パネルAの目地片4に位置決めして保持した状態で断熱パネルAを施工することができ、断熱パネルAの施工をより容易に行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
本発明で用いる断熱パネルAは、二枚の金属外皮1、2の間に断熱材3を充填して形成されるものである。金属外皮1、2は一方が断熱パネルAの表面側(屋外側)を、他方が断熱パネルAの裏面側(屋内側)を構成するものであり、例えば、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、チタン板などの金属板で厚み0.2〜1mmのものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、断熱材3としては、例えば、フェノールフォームやウレタンフォームなどの樹脂発泡体やグラスウールやロックウールなどの無機繊維体などで、密度20〜200kg/m3のものを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
図2(a)〜(c)に示すように、表面側の金属外皮1は、金属外皮1の中央部の略全体を構成する平面部1aと、金属外皮1の上端部に位置する折り返し部20と、金属外皮1の下端部に位置する被覆部23と、金属外皮1の両側端部に位置する目地片4などを備えて形成されている。
【0014】
折り返し部20は断面略逆U字状で、金属外皮1の横方向(水平方向)の略全長に亘って設けられており、金属外皮1の裏面側に折り返し屈曲されて断面略逆U字状に形成されている。折り返し部20の端部には凹部底面片21が設けられている。凹部底面片21は折り返し部20の横方向の略全長に亘って外方(平面部1aと反対側)に向かって突設されている。また、凹部底面片21の先端には差し込み片22が設けられている。差し込み片22は凹部底面片21の横方向の略全長に亘って下方に向かって突設されている。
【0015】
被覆部23は金属外皮1の横方向の略全長に亘って設けられており、金属外皮1の裏面側に折り返し屈曲されて断面略逆U字状に形成されている。被覆部23の端部には傾斜片24が設けられている。傾斜片24は被覆部23の横方向の略全長に亘って斜め外方(平面部分1aと反対側)に向かって上り傾斜して形成されている。また、傾斜片24の先端には凹曲部25が設けられている。凹曲部25は断面略逆L字状に形成されており、傾斜片24の横方向の略全長に亘って上方に突出するように設けられている。また、凹曲片25の先端には断面略L字状の凸部覆い片26が突設されている。凸部覆い片26は凹曲片25の横方向の略全長に亘って下方に向かって突設されている。また、凸部覆い片26の先端には差し込み片27が設けられている。差し込み片27は凸部覆い片26の横方向の略全長に亘って上方に向かって突設されている。
【0016】
目地片4は箱折加工などにより形成されるものであって、金属外皮1の折り返し部20の基部から被覆部23の下端に至るまで、すなわち、金属外皮1の上端部を除く縦方向(鉛直方向)の略全長に亘って形成されている。また、目地片4は、平面部1aと略面一に延設される延設部32と、延設部32の先端から金属外皮1の裏面側に略垂直に屈曲形成される挟持片33と、挟持片33の先端から外方に向かって平面部1aと略平行に突設された支持片34とを備えて断面略Z字状に形成されている。
【0017】
平面部1aと折り返し部20の基部との間には第一凹段部35と第二凹段部36が形成されている。第一凹段部35と第二凹段部36は金属外皮1の上部の横方向の全長に亘って形成されており、第一凹段部35及び第二凹段部36のいずれもが両側端部の目地片4、4の表面にまで形成されている。
【0018】
図2(d)で示すように、裏面側の金属外皮2は、金属外皮2の中央部の略全体を構成する平面部2aと、金属外皮2の上端部に位置する折り返し部87と、金属外皮2の下端部に位置する凸部覆い片30などを備えて形成されている。
【0019】
折り返し部87は断面略逆U字状で、金属外皮2の横方向(水平方向)の略全長に亘って設けられており、金属外皮2の裏面側に折り返し屈曲されて断面略逆U字状に形成されている。折り返し部87の端部には凹部底面片28が設けられている。凹部底面片28は折り返し部87の横方向の略全長に亘って外方(平面部2aと反対側)に向かって突設されている。また、凹部底面片28の先端には差し込み片29が設けられている。差し込み片29は凹部底面片28の横方向の略全長に亘って下方に向かって突設されている。
【0020】
凸部覆い片30は金属外皮2の横方向の略全長に亘って突設されており、断面略L字状で平面部2aの下端から下方に向かって突出するように形成されている。また、凸部覆い片30の先端には差し込み片31が設けられている。差し込み片31は凸部覆い片30の横方向の略全長に亘って上方に向かって突設されている。さらに、裏面側の金属外皮2の平面部2aと凸部覆い片30に境界部分には横方向の全長に亘って下部凹段部40が形成されている。
【0021】
そして、図3、4及び図5(a)(b)に示すように、金属外皮1、2をその裏面同士が対向するようにして配置すると共に金属外皮1、2の間に断熱材3と炭酸カルシウム等で形成される耐火材37、39とを介装して充填し、金属外皮1、2に断熱材3及び耐火材37、39を接着するなどして一体化することにより、本発明で使用する断熱パネルAを形成することができる。
【0022】
ここで、断熱材3は金属外皮1、2の平面部1a、2aの間の略全体に亘って充填される。また、耐火材37、39は断熱材3の上側と下側において断熱パネルAの上部と下部に充填されている。上側の耐火材37は第二凹段部36の上側において金属外皮1、2の間に配置されている。従って、金属外皮1、2の折り返し部20、87の内側の空間及び金属外皮1、2の第二凹段部36よりも上側部分の空間に上側の耐火材37が充填されており、また、差し込み片22、29が上側の耐火材37に差し込まれ、さらに上側の耐火材37の上面は凹部底面片21、28で覆われている。そして、対向配置された折り返し部20と折り返し部87の間の空間が凹部底面片21、28を底面とする嵌合凹部38として形成されるものである。この嵌合凹部38の底面にはパッキン76が全長に亘って設けられている。
【0023】
また、下側の耐火材39は下部凹段部40の下側において金属外皮1、2の間に配置されている。従って、金属外皮1の被覆部23の内側の空間及び金属外皮1、2の下部凹段部40よりも下側部分の空間に下側の耐火材39が充填されており、また、差し込み片27、31が下側の耐火材39に差し込まれ、さらに下側の耐火材39の表裏面及び下面は凸部覆い片26、30で覆われている。そして、対向配置された凸部覆い片26と凸部覆い片30及びその間に充填された下側の耐火材39により嵌合凸部41が形成されるものである。また、目地片4は断熱材3や耐火材37、39よりも外側方に向かって突出するものである。
【0024】
本発明で用いる防水部材(ガスケット)6は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム弾性体等の成形品で長尺なものであって、図6に示すように、平板状の第一防水片42と、第一防水片42の基部側端部に後方に向かって略垂直に突設されて固定片43と、固定片43の後端に設けた断面略コ字状の取付部44と、取付部44に第一防水片42と略平行になるように突設した第二防水片45とを設けて形成されている。そして、断面略コ字状の取付部44の内側空間が差し込み凹部13として形成されている。尚、本発明では図6に示すもの及びこれと鏡面対象のものとを使用する。
【0025】
本発明で用いる樋部材7は、金属外皮1、2と同様の金属材料で形成されるものであって、図7に示すように、連結片7aとその両端に突設された一対の側片7b、7bとにより、前面が開口する断面略コ字状で断熱パネルAと縦方向の寸法と同程度の長尺に形成されている。
【0026】
本発明で用いる気密部材(パッキン)8は防水部材6と同様のゴム弾性体等の成形品であって、上部気密部材46と側部気密部材47とで構成されている。
【0027】
上部気密部材46は、図8〜10に示すように、下部閉塞部48と、下部閉塞部48の上面に形成された中間閉塞部49と、中間閉塞部49の上面に形成された上部閉塞部50とから構成されている。下部閉塞部48は、基部気密部51に外側気密部52と内側気密部53とを前側に突出するように一体に形成したものであって、外側気密部52と内側気密部53の間にはスリット12が設けられている。また、外側気密部52の上面は前方に向かって下り傾斜する傾斜面79として形成されている。中間閉塞部49は平面視で略L字状であって、基部気密部52の上面と外側気密部53の上面とに亘って形成されている。上部閉塞部50は平面視で略L字状であって、中間閉塞部49の上面に形成されている。また、上部閉塞部50の上部は前方に突出する断面略くさび状の第一係止部54として形成されており、第一係止部54の上面は前方に向かって下り傾斜する傾斜面55として形成されている。また、上部閉塞部50の前端上部は前方に突出する第二係止部56として形成されている。
【0028】
側部気密部材47は、図11に示すように、縦方向に長尺な角棒状に形成されている。
【0029】
そして、本発明の断熱パネルA、Aの接続構造は次のようにして形成することができる。まず、図12に示すように、断熱パネルAの両側の目地片4の上端角部を切除して角部切欠部57を形成すると共に両側の目地片4の第二凹段部36の一部及びその直下部分の支持片34を切除して支持片切欠部58を形成する。
【0030】
次に、断熱パネルAの両側部に気密パッキン8を縦方向の略全長に亘って取り付ける。気密パッキン8のうち側部気密部材47は支持片切欠部58の直下から目地片4の下端に至るまでに配設されており、図13に示すように、目地片4の挟持片33と断熱パネル4の側端部に露出した断熱部材3及び下側の耐火材39との間に差し込んで保持されることにより、挟持片33の裏面(断熱部材3側の面)と延設片32の裏面(屋内側の面)と断熱部材3及び下側の耐火材39の露出面とに弾性的に密着して取り付けられている。
【0031】
気密部材8のうち上部気密部材46は側部気密部材47よりも上側において断熱パネルAの両側端部に取り付けられる。すなわち、断熱パネルAの目地片4に裏面側(屋内側)から上部気密部材46を近づけて、第二係止部56を目地片4の延設片32の上端に係止すると共に第一係止部54を目地片4の挟持片33の上端と支持片34の上端とに亘って係止し、支持片切欠部58の部分において挟持片33を上部気密部材46のスリット12に差し込むことにより、内側気密部53を挟持片33と断熱パネル4の側端部に露出した断熱部材3及び耐火材37との間に差し込むと共に外側気密部52を支持片切欠部58に通して配置する。ここで、断熱パネルAの一方の側端部に取り付けられる上部気密部材46と他方の側端部に取り付けられる上部気密部材46とは鏡面対象に形成されたのものである。このようにして図12に示すように、目地片4に上部気密部材46を取り付けることによって、内側気密部53の前面を延設片32の裏面に弾性的に密着させる。また、内側気密部53の上面と基部気密部51の上面とを目地片4における第二凹段部36の裏面(下面)に弾性的に密着させる。また、中間閉塞部49の前面を第一凹段部35と第二凹段部36との間において延設片32の裏面と挟持片33の裏面と支持片34の裏面に弾性的に密着させると共に中間閉塞部49の上面を第一凹段部35の裏面(下面)に弾性的に密着させる。さらに、上部閉塞部50の前面を第一凹段部35の上側において延設片32の裏面と挟持片33の裏面と支持片34の裏面に弾性的に密着させる。
【0032】
次に、断熱パネルAの両側部に防水部材6を縦方向の略全長に亘って取り付ける。すなわち、防水部材6の取付部44の差し込み凹部13を目地片4の支持片34に被挿すると共に防水部材6の固定片43を挟持片33の表面に密着し、固定片43の表面から挟持片33にまでビス等の固定具59を打ち込む。このようにして複数個の固定具59で防水部材6を第二凹段部36から目地片4の下端に至るまで取り付ける。尚、上部気密部材46の部分では固定片43と取付部44及び第二防水片45を切除して第一防水片42が外側気密部52の前側(屋外側)に位置するようにする。
【0033】
また、表面側の金属外皮1の折り返し部20の側端部には、雨水の流れ込み防止用のパッキン62を取り付ける。このパッキン62は折り返し部20の上面を覆うように断面略U字状に形成されていると共にパッキン62の下部には第一凹段部35の前後方向の寸法とほぼ同じ厚みの膨出部63が突設されている。
【0034】
また、嵌合凹部38よりも下側で第一凹段部35よりも上側の位置において、断熱パネルAにその厚み方向(前後方向)で貫通する挿入孔を設け、この挿入孔にボルトなどの固定具65を挿入する。この時、固定具65は表面側の金属外皮1の方から差し込んで、固定具65の頭部が金属外皮1の表面(屋外側)に位置し、固定具65の先端部が裏面側の金属外皮2の後方に突出するようにする。
【0035】
次に、断熱パネルAの一方の側端部に樋部材7を取り付ける。この場合、樋部材7の一方の側片7bを目地片4の挟持片33と断熱部材3及び耐火材37、39との間に挿入し、その側片7bの前端を断熱パネルAに取り付けた側部気密部材47の後面(屋内側の面)に密着させると共にその側片7bの上部内側面と連結片7aの上部前面とを断熱パネルAに取り付けた上部気密部材46の外側面(断熱部材3側の面)と上部気密部材46の後面(屋内側の面)に密着させる。この後、断熱パネルAの裏面と樋部材7の裏面とに亘ってバックアップ材60を配置し、バックアップ材60の取着片60aを断熱パネルAの裏面の側端部にビス等の固定具で固定すると共にバックアップ材60の本体部60bを樋部材7の連結片7aの裏面にビス等の固定具で固定することによって、断熱パネルAの一方の側端部の略全長に亘って樋部材7をバックアップ材60により取り付ける。バックアップ材60は断面略コ字状の本体部60bとその両端に突設される取着片60aとで断面略ハット状に形成されており、本体部60bの内側空間にはセラミックファイバーなどの耐火材60cが充填されている。
【0036】
この後、クレーン等を用いることにより、防水部材6、樋部材7、気密部材8を取り付けた断熱パネルAを建物の柱等の構造材66の屋外側に吊り上げて所望の取り付け位置に配置する。この時、断熱パネルAは嵌合凹部38を上向きに、嵌合凸部41を下向きにして配置される。図14に示すように、上記の構造材66の両側面には断面略L字状の固定金具67が設けられており、固定金具67の固定片68が構造材66の側面に突出している。また、固定片68には厚み方向(前後方向)に貫通する固定孔69が設けられている。次に、吊り上げた断熱パネルAを建物の構造材66の屋内側からロープ等により引き寄せ、構造材66の屋外側面にバックアップ材60を介して樋部材7の連結片7aを位置させる。次に、この断熱パネルAに挿着しておいた固定具65の後端を固定孔69に屋外側から差し込むと共に固定片68の屋内側に突出した固定具65の先端にナット等の螺合具70を螺合する。このようにして一枚の断熱パネルAを構造材66の屋外側に取り付ける。
【0037】
次に、上記のようにして取り付けた断熱パネルAの横に別の断熱パネルAを配置して両断熱パネルA、Aを接続する場合について説明する。まず、構造材66に取り付けた断熱パネルAとは別の断熱パネルAを構造材66の屋外側に吊り上げて、図15に示すように、構造材66に取り付けた上記の断熱パネルAの側方に配置する。この時、この別の断熱パネルAにも上記と同様にして防水部材6、樋部材7、気密部材8、固定具65などが取り付けられている。また、構造材66に取り付けた断熱パネルAの樋部材7を設けた方の側端部に、別の断熱パネルAの樋部材7を設けていない方の側端部を近づけるようにする。次に、吊り上げた上記断熱パネルAを構造材66の屋内側から引き寄せる。このようにすると、構造材66の屋外側に配置した樋部材7の断熱パネルAに取り付けられていない方の側片7bを、引き寄せた別の断熱パネルAの目地片4の挟持片33と断熱部材3及び耐火材37、39との間に挿入し、その側片7bの前端を引き寄せた別の断熱パネルAの側部気密部材47の後面(屋内側の面)に密着させると共にその側片7bの上部内側面と連結片7aの上部前面とを別の断熱パネルAの上部気密部材46の外側面(断熱部材3側の面)と上部気密部材46の後面(屋内側の面)に密着させる。次に、この別の断熱パネルAに挿着しておいた固定具65の後端を上記とは別のもう一方の固定金具67の固定片68の固定孔69に屋外側から差し込むと共に固定片68の屋内側に突出した固定具65の後端にナット等の螺合具70を螺合する。こうして図1に示すように、もう一枚の断熱パネルAを構造材66の屋外側に取り付ける。
【0038】
上記のように横方向に隣接させた断熱パネルA、Aでは、目地片4の挟持片33、33同士が横方向に対向配置されるものであり、これにより、挟持片33、33の間で支持片34、34よりも前側(屋外側)の空間が目地5として形成されるものである。また、断熱パネルA、Aに設けた防水部材6、6は目地5内に配設されるが、各防水部材6、6の第一防水片42、42の先端同士が目地5内において前後方向(屋内外方向)に重なり合うと共に、各防水部材6、6の第二防水片45、45の先端同士が支持片34の後側で前後方向に重なり合うようにして配置される。この時、第一防水片42、42は第二防水片45、45よりも前側に配置される。また、図16に示すように、横方向に隣接させた断熱パネルA、Aに設けた上部気密部材46、46の外側気密部52、52同士が樋部材7内で横方向に隣接して密着することになる。尚、図16においては、第一防水片42は図示省略している。
【0039】
次に、構造材66に取り付けた断熱パネルAの上に別の断熱パネルAを配置して両断熱パネルA、Aを接続する場合について説明する。まず、構造材66に取り付けた断熱パネルAとは別の断熱パネルAを構造材66の屋外側に吊り上げて、構造材66に取り付けた上記の断熱パネルAの上方に配置する。この時、この別の断熱パネルAにも上記と同様にして防水部材6、樋部材7、気密部材8、固定具65などが取り付けられている。次に、吊り上げた断熱パネルAを徐々に下ろしながら構造材66の屋内側からロープ等により引き寄せ、構造材66に取り付けた断熱パネルAの嵌合凹部38に、吊り上げた断熱パネルAの下端の嵌合凸部41を上側から嵌合する。この時、上側の断熱パネルAの被覆部23が下側の断熱パネルAの第一凹段部35よりも上側部分の屋外側を覆うことになり、これにより、下側の断熱パネルAを構造材66に固定する固定具65を上側の断熱パネルAの被覆部23で覆い隠すことができる。また、上側の断熱パネルAの被覆部23の下端と、下側の断熱パネルAの第二凹段部36との間には間隙が形成されて横目地71となる。次に、上側に配置した別の断熱パネルAを上記と同様にして構造材66に取り付ける。すなわち、構造材66の屋外側面にバックアップ材60を介して断熱パネルAに設けた樋部材7の連結片7aを位置させ、断熱パネルAに挿着しておいた固定具65の後端を固定孔69に屋外側から差し込むと共に固定片68の屋内側に突出した固定具65の後端にナット等の螺合具70を螺合する。また、上下に隣接する樋部材7、7の端部同士を隙間なく接続する。このようにして図17に示すように、縦方向に隣接して断熱パネルA、Aを接続して取り付けることができる。
【0040】
上記のようにして複数枚の断熱パネルA、A…を横方向及び縦方向に並べて接続していくことにより、建物の壁(外壁)を形成することができるが、この壁には縦方向に長い目地5と横目地71とが交差するように形成され、また、図18に示すように、この交差部分において上側の断熱パネルAに取り付けた防水部材6の第一防水片42の下端と、下側の断熱パネルAに取り付けた防水部材6の第一防水片42の上端との間に隙間ができて開口部(通気孔)10が形成されることになる。すなわち、開口部10は縦方向においては第一凹段部35と第二凹段部36の間に形成され、横方向においては支持片34の屋外側に形成されるものである。また、防水部材6の第一防水片42よりも屋内側の目地5内の空間及び樋部材7の連結片7aよりも屋外側の空間は、気密部材8により樋部材7よりも屋内側の空間に対して密閉されて通気性がないように形成されている。従って、開口部10とそれよりも上側の上部気密部材46との間において、防水部材6の第一防水片42よりも屋内側の目地5内の空間及び樋部材7の連結片7aよりも屋外側の空間は、上記開口部10により防水部材6の第一防水片42よりも屋外側の空間に開放され、図19に示すように、開口部10を通じて目地5内に外気が導入されるものであり、これにより、第一防水片42よりも屋外側の空間の気圧と等しい等圧空間9として形成することができる。そして、等圧空間9により、防水部材6の第一防水片42の屋外側の空間と屋内側の空間との間で気圧差が生じないようにすることができ、気圧差に起因して雨水が目地5内を屋内側に進入するのを防止することができるものである。また、上記のように断熱パネルAを構造材66に屋内側から取り付けることができ、足場での作業をなくして安全で容易に断熱パネルを施工することができるものである。
【0041】
雨水が目地5を屋内側に向かって移動させるエネルギーとしては、重力、表面張力、毛細管現象、運動エネルギー、気流及び気圧差の6つがある。
【0042】
目地5に屋内側に向かって下り傾斜する経路があると、重力のエネルギーにより雨水が屋内側に進入しやすくなるが、本発明では上部気密部材46の外側気密部52の上面を屋外側に向かって傾斜する傾斜面79として形成しているので、開口部10から目地5内に進入した雨水が自重により屋内側に向かって移動するのを防止することができる。
【0043】
また、雨水が断熱パネルAの金属外皮1に付着すると、雨水の表面張力により雨水が金属外皮1の表面を伝わって目地5に進入しやすくなるが、本発明では目地5内に防水部材6を設けると共に上部気密部材46の外側気密部52の上面を屋外側に向かって傾斜する傾斜面79として形成しているので、雨水が目地5内に進入しにくく、また、進入したとしても雨水が表面張力により屋内側に向かって移動するのを防止することができる。
【0044】
また、目地5の幅寸法が狭いと毛細管現象が起こり、重力に逆らって目地5に雨水が進入する恐れがあるが、本発明では毛細管現象が生じない程度の幅寸法(例えば、20mm)に目地5を形成しているので、雨水が目地5内に進入しにくく、また、進入したとしても雨水が表面張力により屋内側に向かって移動するのを防止することができる。
【0045】
また、風速等によって雨水が断熱パネルAの方に向かう運動エネルギーを持つと、雨水が目地5に進入する恐れがあるが、本発明では防水部材6の第一防水片42と第二防水片45により目地5に雨水が進入するのを防止することができる。
【0046】
また、目地5が建物の屋内に通じていると、風を伴った降雨時に目地5を通る気流が生じ、ある流速以上の気流では雨水が横飛びして建物の屋内側に進入する恐れがあるが、本発明では気密部材8により目地5と建物の屋内側空間とが通じないように閉塞していると共に防水部材6の第一防水片42と第二防水片45を設けているので、目地5に雨水が進入するのを防止することができる。
【0047】
また、目地5内に雨水が進入した場合、建物の屋内側の空間と屋外側の空間に気圧差が生じると、圧力により雨水が屋内側に移動するが、本発明では開口部10を設け、ここから目地5内及び樋部材7の屋外側空間に外気を自然に導入して等圧空間9を形成しているので、目地5から屋内側に雨水が進入するのを防止することができる。
【0048】
そして、本発明では、樋部材7にまで雨水が到達しても、その雨水を上部気密部材46の傾斜面55、79に沿って屋外側へと流すことができ、目地5及び開口部10を通じて壁の屋外に排水することができるものである。
【0049】
尚、本発明においては、等圧空間9と防水部材6よりも屋外側の空間とが50Pa(5kgf/m2)以下の圧力差であれば等圧とみなすことができ、これ以上の圧力差が生じないように、建物の高さ、最大風圧、目地5の幅寸法、嵌合凹部38と嵌合凸部41との嵌合深さなどに応じて、開口部10の開口面積を設定することができる。
【0050】
上記のように複数枚の断熱パネルA、A…を用いて壁を形成する場合、一部の断熱パネルAをサッシBに置き換えて窓などを形成することがあるが、このような場合でも本発明の断熱パネルAの接続構造を用いることができる。サッシBは枠部73とその内側にはめられた窓部材(図示省略)から構成されており、枠部73の上端には上面が開口するサッシ嵌合凹部74が横方向の全長に亘って形成されている。また、枠部73の下面には嵌合突起75が横方向の全長に亘って形成されていると共に嵌合突起75よりも屋外側には嵌合突起75より下方に突出するサッシ被覆部86が枠部73の下面の横方向の全長に亘って形成されている。さらに、枠部73の両方の側面には断熱パネルAの目地片4と同様の目地片4が縦方向の全長に亘って突設されている。
【0051】
そして、このサッシBには上記と同様の防水部材6、樋部材7、気密部材8を取り付けた状態で、上記断熱パネルAと同様にして屋内側から施工されるものである。ここで、図20に示すように、サッシBは枠部73の上部に装着したボルト等の固定具65及びこれに螺合されるナット等の螺合具70により胴縁等の構造材66に取り付けられる。また、サッシBとその上側の断熱パネルAとは、サッシBのサッシ嵌合凹部74に断熱パネルAの嵌合凸部41を嵌合することにより接続されると共に、サッシBとその下側の断熱パネルAとは、サッシBの嵌合突起75を断熱パネルAの嵌合凹部38に嵌合することにより接続される。この時、サッシ嵌合凹部74の底面と嵌合凸部41の下面との間及び嵌合突起75の下端と嵌合凹部38の底面との間にはパッキン76が設けられている。さらに、図21に示すように、横方向に隣接させた断熱パネルAとサッシBでは、断熱パネルA、Aを横方向に隣接させた場合と同様に目地5が形成されると共に防水部材6、6が目地5内に配置される。また、目地5内は開口部10により開放されると共に、横方向に隣接させた断熱パネルAとサッシBに設けた上部気密部材46、46の外側気密部52、52同士が樋部材7内で横方向に隣接して密着するものであり、これにより、開口部10とそれよりも上側の上部気密部材46との間において、防水部材6の第一防水片42よりも屋内側の目地5内の空間及び樋部材7の連結片7aよりも屋外側の空間は、上記開口部10により防水部材6の第一防水片42よりも屋外側の空間に開放され、開口部10を通じて目地5内に外気が導入されるものであり、これにより、第一防水片42よりも屋外側の空間の気圧と等しい等圧空間9として形成することができる。この結果、防水部材6の第一防水片42の屋外側の空間と屋内側の空間との間で気圧差が生じないようにすることができ、気圧差に起因して雨水が目地5内を屋内側に進入するのを防止することができるものである。
【0052】
尚、上記では、断熱パネルAが厚くて(50mm程度)、樋部材7と構造材66との間隔が広くなるためにハット状のバックアップ材60を用いて断熱パネルAと樋部材7とを連結しているが、断熱パネルAが薄い場合(35mm程度)などでは、樋部材7と構造材66との間にほとんど隙間が開かない。そこで、この場合は、図22に示すように、断熱パネルAと樋部材7とを板状の固定板77で連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の断熱パネルの金属外皮を示し、(a)(b)(d)は断面図、(c)は平面図である。
【図3】同上の断熱パネルを示す断面図である。
【図4】同上の断熱パネルを示す斜視図である。
【図5】同上の断熱パネルを示し、(a)(b)は一部の斜視図である。
【図6】同上の防水部材を示す一部の斜視図である。
【図7】同上の樋部材を示す一部の斜視図である。
【図8】同上の上部気密部材を示し、(a)(b)は斜視図である。
【図9】同上の上部気密部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】同上の上部気密部材を示し、(a)は図9(a)におけるA−A断面図、(b)は図9(a)におけるB−B断面図、(c)は図9(a)におけるC−C断面図、(d)は図9(a)におけるD−D断面図である。
【図11】同上の側部気密部材を示す一部の斜視図である。
【図12】同上の断熱パネルに上部気密部材と樋部材とを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図13】同上の施工途中を示す断面図である。
【図14】同上の施工途中を示す断面図である。
【図15】同上の施工途中を示す断面図である。
【図16】同上の横方向に並ぶ断熱パネルの接続状態を示す断面図である。
【図17】同上の縦方向に並ぶ断熱パネルの接続状態を示す断面図である。
【図18】同上の正面図である。
【図19】同上の断面図である。
【図20】同上のサッシを取り付けた状態を示す断面図である。
【図21】同上のサッシを取り付けた状態を示す断面図である。
【図22】同上の樋部材の他の取付方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 金属外皮
2 金属外皮
3 断熱材
4 目地片
5 目地
6 防水部材
7 樋部材
8 気密部材
9 等圧空間
12 スリット
13 被差し込み凹部
A 断熱パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の金属外皮の間に断熱材を充填して形成される断熱パネルの接続構造において、断熱パネルの側端部に目地片を側方に突出させ、隣接する断熱パネルをその目地片を対向させて配設すると共に対向する目地片により目地を形成し、目地内に防水部材を設けると共に目地に防水部材よりも屋外側空間に連通する開口部を設け、目地より屋内側に樋部材を配設すると共に目地片と樋部材との間に気密部材を設け、防水部材と樋部材の間を屋外側空間の気圧と等しい等圧空間として形成して成ることを特徴とする断熱パネルの接続構造。
【請求項2】
気密部材にスリットを形成し、目地片をスリットに差し込むことにより断熱パネルの目地片に気密部材を取り付けて成ることを特徴とする請求項1に記載の断熱パネルの接続構造。
【請求項3】
防水部材に被差し込み凹部を形成し、目地片を被差し込み凹部に差し込むことにより断熱パネルの目地片に防水部材を取り付けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱パネルの接続構造。
【請求項1】
二枚の金属外皮の間に断熱材を充填して形成される断熱パネルの接続構造において、断熱パネルの側端部に目地片を側方に突出させ、隣接する断熱パネルをその目地片を対向させて配設すると共に対向する目地片により目地を形成し、目地内に防水部材を設けると共に目地に防水部材よりも屋外側空間に連通する開口部を設け、目地より屋内側に樋部材を配設すると共に目地片と樋部材との間に気密部材を設け、防水部材と樋部材の間を屋外側空間の気圧と等しい等圧空間として形成して成ることを特徴とする断熱パネルの接続構造。
【請求項2】
気密部材にスリットを形成し、目地片をスリットに差し込むことにより断熱パネルの目地片に気密部材を取り付けて成ることを特徴とする請求項1に記載の断熱パネルの接続構造。
【請求項3】
防水部材に被差し込み凹部を形成し、目地片を被差し込み凹部に差し込むことにより断熱パネルの目地片に防水部材を取り付けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱パネルの接続構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−188897(P2006−188897A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1834(P2005−1834)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000207436)日鉄鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000207436)日鉄鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
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