説明

断熱性風呂敷及び手提げ袋と、これらの製造に適する不織布積層体並びにその製造方法

【課題】保冷・保温機能を付加した風呂敷や手提げ袋等の持ち運び用被包材における使い勝手の向上と製造コストの低減を目的とする。
【解決手段】所定幅の不織布ロール1と、これよりも狭い幅のアルミ蒸着フィルムロール2とを、互いの幅方向中心が一致する様に配置し、素材3,4を繰り出し、接着剤滴下装置5から、溶融した接着剤6を縞状に垂らしつつ冷却ローラー組7の間に挟み込んで接着する。製造された不織布積層体8は、両端から所定幅Bに渡って不織布シート3のみとなり、中央にアルミ蒸着フィルム4が接着されたもので、両端を一対の角とする様に正方形に打ち抜けば、断熱性風呂敷20を製造でき、カットシート31に切断し、アルミ蒸着フィルム4の幅中心で二つ折りにして両端をヒートシールで接合し、不織布のみの部分に持ち手穴32を打ち抜けば、断熱性手提げ袋30を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層シート及びその製造方法並びに、当該シートを用いて製造される風呂敷や手提げ袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品を購入して持ち帰る際の鮮度等の低下を防止するために、ポリエステルフィルムにアルミニウム粉末を蒸着したシート素材と、発泡ポリエチレンのシート素材とをラミネート加工により一体にした複合素材を方形及び類似形の所要平面積に裁断した風呂敷の提案(特許文献1)や、アルミ蒸着面に保護プラスチックフィルムを被覆したアルミ蒸着プラスチックフィルムのフィルム面と不織布とを張り合わせた断熱ラミネートシート材によりアルミ蒸着面を外面又は内面とした手提げ袋の提案(特許文献2)がなされている。
【特許文献1】登録実用新第3029787号公報
【特許文献2】特開平10−258882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の保冷・保温機能を備えた風呂敷は、通常の風呂敷の様に隅を縛って持ち手を形成することが困難で使い勝手が悪いという問題がある。特許文献2の手提げ袋は全体に柔軟性がないことから食品等の収納性が悪く、また、別途取り付ける持ち手が必要など、製造コストも上昇するという問題がある。
【0004】
そこで、本願は、保冷・保温機能を付加した風呂敷や手提げ袋等の持ち運び用被包材における使い勝手の向上と製造コストの低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明の断熱性風呂敷は、不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体で形成され、以下の構成を有することを特徴とする。
(1−1)前記不織布積層体は、不織布シートに対してアルミ蒸着フィルムが縞状に塗布された接着剤を介して部分的に接着されたものであること。
(1−2)前記縞状に塗布された接着剤の線が風呂敷の隣会う辺間を結ぶ様に形成されていること。
(1−3)前記アルミ蒸着フィルムは、風呂敷の一対の対角の方向に伸びる帯状に前記不織布シートに接着されており、他の一対の対角から中心へ向かって所定範囲の三角形部分には接着されていないこと。
【0006】
本発明の断熱性風呂敷は、アルミ蒸着フィルムが接着されずに不織布シートのままの三角形部分が一対の対角として形成されているので、この部分を縛ることで、重箱などを包んだときに、一般的な風呂敷を用いるのと同様に緊縛並びに持ち手の形成をなすことができる。即ち、前記所定範囲とは、風呂敷として物を包んで縛るのに必要な程度の範囲をいう。また、不織布シートとアルミ蒸着フィルムは、一方向に縞状に伸びる接着剤で接着されており、全面接着ではないから、不織布シートの柔軟性を保持しており、空気層も形成し得るものとなっている。
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の断熱性手提げ袋は、不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体で形成され、以下の構成を有することを特徴とする。
(2−1)前記不織布積層体を二つ折りにして底を形成し、左右側面を熱融着させて袋体とすると共に、上部に該不織布積層体の一部を打ち抜いた持ち手穴が形成されていること。
(2−2)前記不織布積層体は、不織布シートに対してアルミ蒸着フィルムが縞状に塗布された接着剤を介して部分的に接着されたものであること。
(2−3)前記縞状に塗布された接着剤の線が手提げ袋の水平方向に形成されていること。
(2−4)前記アルミ蒸着フィルムは、手提げ袋の上部から少なくとも前記持ち手穴よりも下方所定範囲を除く底面側部分にだけ接着されていること。
【0008】
本発明の断熱性手提げ袋は、アルミ蒸着フィルムが接着されずに不織布シートのままの持ち手部分が、打ち抜き加工によって一体に形成されているので、物品を収納して手に持つときに、不織布のみからなる手提げ袋と同様の手触りを感じさせる。また、不織布シートとアルミ蒸着フィルムは、一方向に縞状に伸びる接着剤で接着されており、全面接着ではないから、不織布シートの柔軟性を保持しており、空気層も形成し得るものとなっている。さらに、この縞の方向が水平方向であるから、収納した物によって押し拡げられ難く、ヒートシールをする際のシール位置も気にすることなく決定することができる。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の不織布積層体は、不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体であって、以下の構成を有することを特徴とする。
(3−1)縞状に塗布された接着剤を介して不織布シートとアルミ蒸着フィルムとが部分的に接着されたロール状のものであること。
(3−2)前記アルミ蒸着フィルムは、前記不織布シートよりも幅が狭く、かつ、不織布シートの幅方向両端を所定幅に渡って露出させた状態となる様に、前記不織布シートの中央に合わせて接着されていること。
【0010】
本発明の不織布積層体は、幅方向の両端にはアルミ蒸着フィルムが接着されていない部分を備えている。従って、両端を一対の角とする様に正方形に打ち抜けば、本発明の断熱性風呂敷を容易に製造することができる。また、所定長さに切断し、アルミ蒸着フィルムの幅中心で二つ折りにして両端をヒートシールで接合し、不織布のみの部分に持ち手穴を打ち抜けば、本発明の断熱性手提げ袋を容易に製造することができる。
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明の不織布積層体の製造方法は、不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体の製造方法であって、以下の構成を有することを特徴とする。
(4−1)所定幅を有する不織布ロールと、該不織布ロールよりも狭い幅のアルミ蒸着フィルムロールとを用意すること。
(4−2)前記不織布ロールと前記アルミ蒸着フィルムロールとを互いの幅方向中心が一致する様に配置し、それぞれから素材を繰り出すこと。
(4−3)前記それぞれから繰り出された素材間に、縞状に接着剤を垂らしつつ、接着用のローラー組の間に挟み込むこと。
(4−4)前記接着用のローラー組から繰り出される積層体を巻き取ってロール状とすること。
【0012】
本発明の不織布積層体の製造方法によれば、両端を所定範囲に渡って不織布シートのみとし、中央部分にのみアルミ蒸着フィルムが接着された不織布積層体を連続的に製造することができ、本発明の断熱性風呂敷や断熱性手提げ袋を製造するための不織布積層体を安価に製造することができる。
【0013】
なお、本発明の不織布積層体としては、1000mm幅前後の積層体ロールを製造する場合であれば、不織布シートの幅:アルミ蒸着フィルムの幅=10:5〜10:7の関係になる様にすれば、断熱性風呂敷や断熱性手提げ袋を製造するのにちょうどよいものとなる。また、アルミ蒸着フィルムとしては、2軸延伸フィルムにアルミ蒸着を施したものを用いると縦横の伸びがアンバランスとならず、被包材の機能としてより好ましいものといえる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保冷・保温機能を付加した風呂敷や手提げ袋等の持ち運び用被包材として使い勝手のよいものを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態として、まず、不織布積層体の製造方法を、図1を参照しながら説明する。実施形態としての不織布積層体の製造方法では、まず、所定幅を有する不織布ロール1と、不織布ロール1よりも狭い幅のアルミ蒸着フィルムロール2とを用意する。そして、不織布ロール1とアルミ蒸着フィルムロール2とを互いの幅方向中心が一致する様に配置し、それぞれから素材3,4を繰り出す。こうして各ロール1,2から繰り出された素材3,4間に、接着剤滴下装置5から、溶融した接着剤6を縞状に垂らしつつ冷却ローラー組7の間に挟み込んで接着する。そして、冷却ローラー組7から繰り出される積層体8を巻き取って積層体ロール9とする。
【0016】
こうして製造された不織布積層体8は、図2に示す様に、両端から所定幅Bに渡って不織布シート3のみとなり、中央にアルミ蒸着フィルム4が接着されたものとなる。また、この不織布積層体8においては、長手方向に縞状に接着線10が形成され、不織布シート3とアルミ蒸着フィルム4の重なっている範囲の全部は接着されてはいない。よって、接着線10同士の間には、通気性のある不織布シート3を介して侵入する空気を受け入れることができる。
【0017】
また、この不織布積層体8から、図3に示す様に、積層体の両端を一対の角とする様に正方形に打ち抜けば、断熱性風呂敷20を製造することができる。同様に、図4に示す様に、不織布積層体8を所定長さのカットシート31に切断し(A)、このカットシート31をアルミ蒸着フィルム4の幅中心で二つ折りにして両端をヒートシールで接合し(B)、不織布のみの部分に持ち手穴32を打ち抜けば(C)、断熱性手提げ袋30を製造することができる(D)。
【実施例】
【0018】
次に、実施例を説明する。実施例として、片面にグラビア印刷を施したポリプロピレン不織布(スパンボンド、25g/m、幅1000mm)に対して、アルミ蒸着フィルム(30μmの2軸延伸ポリエチレンフィルムの片面にアルミ蒸着、幅500mm)を、ポリプロピレン不織布の非印刷面に対してアルミ蒸着面が重なり、かつ、アルミ蒸着フィルムがポリプロピレン不織布の幅中央に位置する様にスジ状ポリエチレンラミネート共押出法で貼り合わせて図2に例示した様な構成の不織布積層体を製造し、図3に示す様に正方形に打ち抜いて断熱性風呂敷を製造した。
【0019】
一方、比較例として、アルミ蒸着フィルムを積層しないポリプロピレン不織布(スパンボンド、25g/m、幅1000mm)そのものを正方形に打ち抜いた不織布風呂敷を製造した。
【0020】
そして、これら実施例及び比較例の風呂敷を用いて、紙コップ(低発泡ポリスチレン製、直径95mm×深さ65mmに八分目(100cc)の氷水を入れたものを包んだ場合の水温変化を計測した。なお、実験に当たり、この氷水入りの紙コップを、180mm×260mm×130mm×のポリプロピレン製のカゴの中央に置き、各風呂敷で包んだ。また、水温は、デジタル温度計(熱電対Kタイプ;(株)佐藤計量器製作所製の商品番号「SK−110」)で計測した(比較例A、実施例B)。また、もう一つの比較例として、風呂敷で包まないままの紙コップ内の氷水の温度変化もブランクとして計測した。その結果を、表1及び図5に示す。
【0021】
【表1】

計測日時・・・平成19年 7月12日(木) 13時より
計測場所・・・出願人会社の会議室内
計測開始時の室温・・・28.5℃
計測開始時の湿度・・・80.0%
【0022】
実験結果から、ブランク及び比較例に比べて、実施例は断熱効果の差が確認できた。また、この実施例の風呂敷は、包装するに当たり、中央にカゴを置き、まず、アルミ蒸着フィルムが積層されている方の角を持ち上げて折り、その後、アルミ蒸着フィルムの積層されていない角を持ち上げて結んだところ、比較例の風呂敷と変わらない使用感であった。従って、実施例では、本発明の目的である使い勝手のよい断熱性風呂敷が製造できたといえる。また、その製造方法は、上述の実施形態の通りであり、低コストで実施できた。
【0023】
以上、発明の実施形態並びに実施例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、不織布シートの幅を1200mm、アルミ蒸着フィルムの幅を700mmとしたり、持ち手穴32だけでなく不織布のみの部分のヒートシール部をも切断してレジ袋の様な形状の手提げ袋とするなど、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態としての不織布積層体の製造方法を説明する模式図である。
【図2】実施形態としての不織布積層体の平面図である。
【図3】実施形態としての断熱製風呂敷の製造方法を示す説明図である。
【図4】実施形態としての断熱製手提げ袋の製造方法を示す説明図である。
【図5】実施例及び比較例における温度変化のグラフである。
【0025】
1・・・不織布ロール
2・・・アルミ蒸着フィルムロール
3・・・不織布シート
4・・・アルミ蒸着フィルム
5・・・接着剤滴下装置
6・・・接着剤
7・・・冷却ローラー組
8・・・不織布積層体
9・・・積層体ロール
10・・・接着線
20・・・断熱性風呂敷
30・・・断熱性手提げ袋
31・・・カットシート
32・・・持ち手穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体で形成され、以下の構成を有することを特徴とする断熱性風呂敷。
(1−1)前記不織布積層体は、不織布シートに対してアルミ蒸着フィルムが縞状に塗布された接着剤を介して部分的に接着されたものであること。
(1−2)前記縞状に塗布された接着剤の線が風呂敷の隣会う辺間を結ぶ様に形成されていること。
(1−3)前記アルミ蒸着フィルムは、風呂敷の一対の対角の方向に伸びる帯状に前記不織布シートに接着されており、他の一対の対角から中心へ向かって所定範囲の三角形部分には接着されていないこと。
【請求項2】
不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体で形成され、以下の構成を有することを特徴とする断熱性手提げ袋。
(2−1)前記不織布積層体を二つ折りにして底を形成し、左右側面を熱融着させて袋体とすると共に、上部に該不織布積層体の一部を打ち抜いた持ち手穴が形成されていること。
(2−2)前記不織布積層体は、不織布シートに対してアルミ蒸着フィルムが縞状に塗布された接着剤を介して部分的に接着されたものであること。
(2−3)前記縞状に塗布された接着剤の線が手提げ袋の水平方向に形成されていること。
(2−4)前記アルミ蒸着フィルムは、手提げ袋の上部から少なくとも前記持ち手穴よりも下方所定範囲を除く底面側部分にだけ接着されていること。
【請求項3】
不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体であって、以下の構成を有することを特徴とする不織布積層体。
(3−1)縞状に塗布された接着剤を介して不織布シートとアルミ蒸着フィルムとが部分的に接着されたロール状のものであること。
(3−2)前記アルミ蒸着フィルムは、前記不織布シートよりも幅が狭く、かつ、不織布シートの幅方向両端を所定幅に渡って露出させた状態となる様に、前記不織布シートの中央に合わせて接着されていること。
【請求項4】
不織布シートにアルミ蒸着フィルムを接着した不織布積層体の製造方法であって、以下の構成を有することを特徴とする不織布積層体の製造方法。
(4−1)所定幅を有する不織布ロールと、該不織布ロールよりも狭い幅のアルミ蒸着フィルムロールとを用意すること。
(4−2)前記不織布ロールと前記アルミ蒸着フィルムロールとを互いの幅方向中心が一致する様に配置し、それぞれから素材を繰り出すこと。
(4−3)前記それぞれから繰り出された素材間に、縞状に接着剤を垂らしつつ、接着用のローラー組の間に挟み込むこと。
(4−4)前記接着用のローラー組から繰り出される積層体を巻き取ってロール状とすること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29465(P2009−29465A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195412(P2007−195412)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(503049726)株式会社オオバ (3)
【Fターム(参考)】