説明

断熱管及び超電導ケーブル

【課題】断熱性能に優れる断熱管、及びこの断熱管を備える超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】断熱管1は、内管21と外管22との間に断熱材4と線状体のスペーサ3とが内蔵され、このスペーサ3の横断面形状は、複数の辺32で囲まれる略多角形で、隣り合う辺32同士が接合されて外側に突出する複数の頂点31を有している。そして、隣り合う上記頂点31同士をつなぐ全ての辺32は、当該頂点31同士を結ぶ仮想直線33よりも内側に位置する。スペーサ3と断熱管1の他の構成部材との接触面積を低減することで、内管21の内側への熱侵入量又は内管21の内側からの熱放射量の増加を抑制することができ、断熱管1の断熱性能を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱管及びこの断熱管を備える超電導ケーブルに関するものである。特に、断熱性能に優れる断熱管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱管の代表的な構成として、内管と外管とからなる二重構造管で、その内管と外管との間に断熱材を内蔵し、両管の間を真空引きしたものが挙げられる。更に、両管の間にスペーサを内蔵し、内管と外管との間隔を保持している。具体的には、内管の外周に積層断熱材を配置し、その上にスペーサを設けて内管と外管との間隔を保持した構成が挙げられる。
【0003】
スペーサの形態として、複数の円筒体を所定間隔で平行に並べて帯状体で一体化したものが特許文献1に開示されている。また、別のスペーサの形態として、紐状のスペーサが特許文献2に開示されている。この例では、スペーサを断熱材の長手方向に沿って配置し、かつ周方向に複数設けており、このスペーサを位置決めするために、断熱材にスペーサの断面形状に応じた溝を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11‐007844号公報
【特許文献2】特開平10‐288293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、断熱管の屈曲や自重により内外管が非同心状に偏在した場合、内管と外管との間隔を保持しているスペーサの形状が変形することがある。特に、内管が外管側に偏って位置することで、内管と外管との間隔が狭くなり、スペーサが二重構造管の押圧によって変形することがある。
【0006】
特許文献1のスペーサの形態では、スペーサの円筒体の横断面形状が円状なので、通常、スペーサと外管、及びスペーサと断熱材の接触箇所では、断熱管の長手方向に沿って線接触している。しかし、スペーサが二重構造管に押圧されると、その押圧箇所が平坦な広い面積になり易く、スペーサと外管、及びスペーサと断熱材の接触箇所では、断熱管の長手方向に沿って幅広な面接触となる。各接触箇所において、両者の接触面積が広いと、内管の内側への熱侵入量又は内管の内側からの熱放射量が増加する。
【0007】
一方、特許文献2のスペーサの形態では、スペーサと外管の接触面積をできるだけ小さくするように、スペーサの横断面形状は、菱形やしずく形など角を設け、その角で外管と接触するようにしている。しかし、この場合、スペーサの角で外管と接触するようにスペーサを設置する必要があり、スペーサが二重構造管に押圧されて、スペーサの長手方向の中心軸に対してその所定の設置位置から少しでも回転してずれてしまうと、スペーサと外管の接触箇所では、その長手方向に沿って幅広な面接触となる。また、特許文献2では、スペーサの位置決めのために、断熱材にスペーサの断面形状に応じた溝を形成しているが、スペーサと断熱材の接触面積の低減化については考慮していない。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、断熱性能に優れる断熱管を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、上記断熱管を備える超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、スペーサの断面形状に工夫を施し、スペーサと他の構成部材(内外管や断熱材等)との接触面積を低減することで上記目的を達成する。
【0011】
本発明の断熱管は、内管と外管との間に断熱材と線状体のスペーサとが内蔵され、このスペーサの横断面形状は、複数の辺で囲まれる略多角形で、隣り合う辺同士が接合されて外側に突出する複数の頂点を有している。そして、隣り合う上記頂点同士をつなぐ全ての辺は、当該頂点同士を結ぶ仮想直線よりも内側に位置する。
【0012】
上記構成によれば、スペーサと断熱管の他の構成部材との接触箇所を、スペーサの頂点とすることで、両者の接触を断熱管の長手方向に沿って実質的に線接触とすることができる。そして、スペーサが二重構造管に押圧されて、その押圧箇所が平坦な面接触になったとしても、本発明の断熱管に備えるスペーサは、隣り合う頂点同士をつなぐ辺がその頂点同士を結ぶ仮想直線よりも内側に位置するので、二重構造管の押圧による接触面積の増加を出来るだけ小さくすることができる。また、スペーサが、その長手方向の中心軸に対して回転してずれても、スペーサと上記他の構成部材とが、頂点以外で接触するのを防ぐことができる。つまり、頂点同士をつなぐ面が上記他の構成部材と幅広な面接触することを防げる。よって、本発明の断熱管は、スペーサと上記他の構成部材との接触面積の増加を抑制することができるので、内管の内側への熱侵入量又は内管の内側からの熱放射量の増加を抑制することができ、断熱管の断熱性能を向上することができる。
【0013】
本発明の一形態として、上記頂点の個数が3〜5個である形態が挙げられる。
【0014】
内外管の間におけるスペーサの配置方向(回転方向)に関わらず、スペーサと内外管又は断熱材との接触をスペーサの頂点で行うために、頂点の個数は3個以上とする。一方、頂点の個数は少ない程、スペーサと断熱管の他の構成部材との接触箇所を少なくできるので、内管の内側への熱侵入量又は内管の内側からの熱放射量の増加を抑制することができる。他方、頂点の個数が多くなると、スペーサの横断面形状が円状に近づくことになり、スペーサが二重構造管に押圧されると、スペーサと上記他の構成部材との接触は、断熱管の長手方向に沿って幅広な面接触となり易くなる。よって、頂点の個数は5個以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の一形態として、上記頂点における内角が鋭角である形態が挙げられる。
【0016】
頂点における内角は大きくなると、スペーサの横断面形状が円状に近づくことになり、スペーサが二重構造管に押圧されると、スペーサと断熱管の他の構成部材との接触は、断熱管の長手方向に沿って幅広な面接触となり易くなる。よって、頂点における内角が鋭角であることで、スペーサが二重構造管に押圧されても、その押圧による接触面積の増加を出来るだけ小さくすることができる。頂点における内角は小さすぎると、スペーサが内外管の間で押圧された際、頂点近傍で屈曲して上記他の構成部材との接触面積が増加する上、内管と外管との間隔を保持することが難しくなるので、この内角は20°〜80°であることが好ましい。更に好ましくは、30°〜40°である。
【0017】
上記内角の定義として、頂点を挟んだ二辺が直線か曲線かによって以下とする。
(1)二辺が直線である場合、頂点における内角はその両辺のなす角度とする。
(2)二辺が曲線である場合、頂点における内角は各曲線の次に述べる接線同士のなす角度とする。曲線に対する接線のうち、その接点における法線が、スペーサの重心と頂点とを結ぶ線分の中点を通る接線である。
(3)一方が直線、もう一方が曲線の場合、頂点における内角は直線と、曲線の上記接線のなす角度とする。
【0018】
本発明の一形態として、上記横断面形状は、長手方向の中心軸に対して回転対称である形態が挙げられる。
【0019】
スペーサの横断面形状が回転対称であると、スペーサの回転方向を規定して配置する必要がなく、スペーサの配置が行い易い。
【0020】
上記本発明の断熱管は、超電導ケーブルの構成部材に好適に利用することができる。即ち、本発明の超電導ケーブルとして、上記本発明の断熱管と、超電導導体を有し、上記断熱管の内部に収納されるケーブルコアとを備えるものが挙げられる。
【0021】
上記本発明の断熱管を超電導ケーブルに利用すると、本発明の断熱管は高い断熱性能を有することができるので、内管の内側に流す冷媒の温度維持に必要なエネルギーの省力化が期待できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の断熱管は、スペーサの断面形状に工夫を施し、スペーサと断熱管の他の構成部材との接触面積を低減することで、内管の内側への熱侵入量又は内管の内側からの熱放射量の増加を抑制することができ、断熱管の断熱性能を向上することができる。
【0023】
また、本発明の断熱管を備える超電導ケーブルは、断熱管の断熱性能が向上され、冷媒の温度維持に必要なエネルギーの省力化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る断熱管を示し、(A)は部分縦断面図、(B)は横断面図、(C)はスペーサの部分拡大図である。
【図2】実施形態の断熱管に用いるスペーサの変形例の横断面形状を示し、(A)は略四角形、(B)は星形である。
【図3】図1の断熱管を備える超電導ケーブルの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明についての実施形態を図面に基づいて説明する。図面において同一符号は同一部材を示す。
【0026】
<実施形態1>
本発明の断熱管1について、図1に基づいて説明する。この断熱管1は、内管21と外管22とからなる二重構造管2と、内管21の外周に巻回配置させた断熱材4と、内管21と外管22との間隔を保持するためのスペーサ3と、その両管21、22との間に形成される真空層5とを備える。以下、断熱管1の各構成をより詳細に説明する。
【0027】
[断熱管]
(二重構造管)
二重構造管2は、内管21と外管22とからなり、屈曲しやすいように長手方向に蛇腹又はらせん形状をしたステンレス製のコルゲート管である。内管21内には、通常流体が流れる。この流体の温度は、流体の種類や使用用途によって異なり、極低温から高温まで幅広い温度が用いられる。流体は、例えば、液体窒素、液体酸素、液化天然ガス、蒸気、湯等が挙げられる。
【0028】
二重構造管2の材質は、ステンレス以外にも、可撓性のあるアルミニウム等の金属が利用できる。
【0029】
二重構造管2の形状は、コルゲート管以外にも、屈曲の必要がない場合や断熱管の使用距離が短い場合、直線区間用に表面に凹凸がないストレート管が利用できる。
【0030】
二重構造管2を構成する内外管21、22の各々の厚さは、内管21の内側に流体が流れることで二重構造管2がその周方向に膨張しようとする圧力と、二重構造管2を屈曲することでその長手方向にかかる張力に耐えることができる厚さとする。
【0031】
(断熱材)
内管21の外周でスペーサ3の内側には、断熱性能をより高めるために断熱材4を巻回配置する。断熱材4を配置することで、内管21内の流体温度が断熱管1の外気温よりも低い場合は外部からの輻射熱の侵入を防ぎ、流体温度が断熱管1の外気温よりも高い場合は流体からの輻射熱の放散を防ぐことができる。断熱材4として、帯状の樹脂フィルムの一面又は両面にアルミニウムを蒸着した帯状材と合成繊維からなるメッシュ構造材とを積層した積層材、代表的にはスーパーインシュレーション(商品名)が挙げられる。この断熱材4は、内管21の外側を全周にわたって巻回することで、内管21の内側への輻射熱の侵入又は内管21の内側からの輻射熱の放散を防ぐ。断熱材4の配置する位置は、内管21と外管22との間であればどこでもよい。内管21の外周に断熱材4を配置して、その上に後述するスペーサ3を配置してもよいし、逆に内管21の外周にスペーサ3を配置して、その上に断熱材4を配置してもよい。断熱材4の設置方法として、らせん状に巻回する以外にも、内管21の外周面の全面を覆うように縦添えしてもよい。
【0032】
(スペーサ)
上記内管21と外管22との間隔を保持するためにスペーサ3を設置する。このスペーサ3は、その横断面形状が略多角形の線状体である。この横断面形状は、図1(C)に示すように、複数の辺32で囲まれる略多角形で、隣り合う辺32同士が接合されて外側に突出する複数の頂点31を有している。そして、隣り合う頂点31同士をつなぐ全ての辺32は、当該頂点31同士を結ぶ仮想直線33よりも内側に位置する。
【0033】
図1(C)に示すスペーサ3の横断面形状は、3個の頂点31を有し、隣り合う頂点31同士をつなぐ辺32は、上記仮想直線33よりも内側に凹んだ曲線である。この曲線(辺32)は、三辺全て同じ曲率半径3.0mmで同じ長さ2.69mmの円弧状の曲線である。仮想直線33と辺32との最大距離は0.30mmである。そして、この頂点31における内角θは、36°である。頂点31を挟んだ二辺32は曲線であるので、上記内角θは各曲線の次に述べる接線同士のなす角度としている。曲線に対する接線のうち、その接点における法線が、スペーサ3の重心と頂点31とを結ぶ線分の中点を通る接線である。
【0034】
この3個の頂点31において、スペーサ3と外管22、スペーサ3と断熱材4との接触を行い、内管21と外管22との間隔を保持している。頂点31の個数が3個であることで、スペーサ3と断熱管1の他の構成部材との接触箇所を極小化でき、スペーサ3が二重構造管2に押圧されても、両管21、22の間隔を保持することができる。そして、横断面形状が簡易なので、スペーサ3の加工が行い易く、構成材料の削減もできる。また、辺32が全て同じ曲率半径で同じ長さなので、スペーサ3の回転方向を規定して配置する必要がなく、スペーサ3の配置が行い易い。
【0035】
上記頂点31の個数は、内外管21、22の間におけるスペーサ3の配置方向(回転方向)に関わらず、スペーサ3と外管22、スペーサ3と断熱材4との接触をスペーサ3の頂点31で行うために、3個以上とする。一方、頂点31の個数は少ない程、スペーサ3と上記他の構成部材との接触箇所を少なくできるので好ましい。他方、頂点31の個数が多くなると、スペーサ3の横断面形状が円状に近づくことになり、スペーサ3が二重構造管2に押圧されると、スペーサ3と上記他の構成部材との接触は、断熱管1の長手方向に沿って幅広な面接触となり易くなる。よって、頂点31の個数は5個以下であることが好ましい。
【0036】
隣り合う上記頂点31同士をつなぐ全ての辺32は、当該頂点31同士を結ぶ仮想直線33よりも内側にあれば、曲線でも直線でも構わない。また、複数の直線や曲線を組み合わせて頂点31同士をつないだ辺としても構わない。例えば、隣り合う頂点31同士をつなぐ辺32が3つの直線からなる〔型の3辺からなってもよい。スペーサ3が二重構造管2に押圧されることによって、スペーサ3が変形したり、その長手方向の中心軸に対して回転したとしても、スペーサ3の頂点31近傍以外の箇所において、スペーサ3と上記他の構成部材とが接触しないだけ十分に仮想直線33よりも内側に凹む形状が好ましい。仮想直線33と辺32との最大距離は、好ましくは、0.20mm〜0.40mmである。
【0037】
頂点31における内角θは、小さすぎると、スペーサ3が内外管21、22の間で押圧された際、頂点31近傍で屈曲して上記他の構成部材との接触面積が増加する上、内管21と外管22との間隔を保持することが難しくなるので、この内角θは好ましくは20°〜80°、更に好ましくは30°〜40°である。
【0038】
スペーサ3の変形例として、図2に示すような横断面形状のものが挙げられる。例えば、図2(A)に示すスペーサ3は略四角形状の横断面形状を有する。頂点31が4個あり、隣り合う頂点31同士をつなぐ辺32は、全て円弧状の曲線であり、かつ当該頂点31同士を結ぶ仮想直線33よりも内側に位置している。また、図2(B)に示すスペーサ3は星形の横断面形状を有する。頂点31が5個あり、隣り合う頂点31同士をつなぐ辺32は全て直線でV型に配される2辺からなり、これら2辺は当該頂点31同士を結ぶ仮想直線33よりも内側に位置している。
【0039】
これらの異なる横断面形状のスペーサ3は、押し出し加工すれば、ダイス孔形状を変えるだけで任意のものが作製できる。また、図1、図2に示すスペーサ3の横断面形状はいずれも、スペーサ3の長手方向の中心軸に対して回転対称であることで、スペーサ3の回転方向を規定して配置する必要がなく、スペーサ3の配置が行い易い。
【0040】
スペーサ3の材質は、低熱伝導性のものがよく、ポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、ガラス繊維、GFRP等が利用できる。
【0041】
上記スペーサ3は、内管21と外管22との間隔を保持できればよく、その設置方法は、例えば、断熱管1の長手方向に沿って配置し、かつ周方向に複数設けてもよいし、1本もしくは複数本のスペーサ3をらせん状に巻回してもよい。
【0042】
(真空層)
上記スペーサ3で保たれた内管21と外管22との間を真空引きし、真空層5を形成する。この真空層5の真空度は、高ければ高い程断熱性能がより高くなる。なお、図1に示す二重構造管2は、左端部を開放させた状態で図示しているが、実際には、真空引き後密閉される。
【0043】
[作用効果]
本発明の断熱管1によれば、スペーサ3と内外管21、22又は断熱材4との接触箇所を、スペーサ3の頂点31とすることで、両者の接触箇所を断熱管1の長手方向に沿って実質的に線接触とすることができる。そして、スペーサ3が二重構造管2に押圧されて、その押圧箇所が平坦な面接触になったとしても、本発明の断熱管1は、隣り合う頂点31同士をつなぐ辺32がその頂点31同士を結ぶ仮想直線33よりも内側に位置するので、その押圧による接触面積の増加を出来るだけ小さくすることができる。また、スペーサ3が、その長手方向の中心軸に対して回転してずれても、スペーサ3と断熱管1の他の構成部材とが、頂点31以外で接触するのを防ぐことができる。つまり、頂点31同士をつなぐ辺32で上記他の構成部材と幅広に面接触することを防げる。よって、スペーサ3と上記他の構成部材との接触面積の増加を抑制することができるので、内管21の内側への熱侵入量又は内管21の内側からの熱放射量の増加を抑制することができ、断熱管1の断熱性能を向上することができる。
【0044】
<実施形態2>
次に、本発明断熱管1を備える超電導ケーブル10の概略構成を図3に基づいて説明する。この超電導ケーブル10は、三心のケーブルコア11を図1の断熱管1の内部に収納した構成である。以下、超電導ケーブル10の各構成を詳細に説明する。
【0045】
[超電導ケーブル]
(ケーブルコア)
ケーブルコア11は、代表的には、中心から順にフォーマ12、超電導導体層13、電気絶縁層14、外部超電導層15、保護層16を備える。これらの各層のうち、超電導導体層13と外部超電導層15に超電導体が用いられる。
【0046】
フォーマ12は、金属線を撚り合わせた中実のものや、金属パイプを用いた中空のものが利用される。中空のフォーマ12を用いた場合、その内部を冷媒の流路にすることができる。超電導導体層13は、酸化物超電導体を備えるテープ状線材、例えば、Bi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)を単層又は多層に螺旋状に巻回した構成が挙げられる。その他、RE123系薄膜線材(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gd等)も超電導導体層13に利用できる。電気絶縁層14は、クラフト紙等の絶縁紙テープや、クラフト紙とプラスチックとを複合した半合成絶縁テープ、例えば、住友電気工業株式会社製PPLP(登録商標)といったテープ状の絶縁性材料を巻回した構成が挙げられる。外部超電導層15は、超電導導体層13と同じ超電導線材をらせん状に巻回した構成である。外部超電導層15は、例えば、交流送電の場合は磁気遮蔽層、直流送電の場合は帰路導体に利用される。保護層16は、クラフト紙等を巻回した構成が挙げられる。そして、外管22の上には、ポリ塩化ビニル等による防食層18が形成されている。
【0047】
(冷媒流路)
断熱管1の内部と各ケーブルコア11との間には、冷媒流路17が形成される。この冷媒流路17に、超電導体を冷却する冷媒(例えば、液体窒素)が流れる。
【0048】
上記冷媒は、外部からの侵入熱等によって温度上昇し、超電導導体層13や外部超電導層15の超電導状態に影響を及ぼす。しかし、本発明断熱管1を用いることにより、スペーサと外管や断熱材等の他の構成部材との接触面積を低減することができ、内管の内側への外部からの熱侵入量の増加を抑制することができる。
【0049】
[作用効果]
本発明の断熱管1を備える超電導ケーブル10は、断熱管1の断熱性能が向上され、冷媒の温度維持に必要なエネルギーの省力化が期待できる。
【0050】
<試算例>
外接円の直径が同じで、横断面形状が異なるスペーサを用いて、スペーサと外管との接触箇所での接触面積を演算した。具体的試算条件を以下に示す。
【0051】
[試算例1]
二重構造管
材質:ステンレス
形状:コルゲート管
寸法:内管外径123mm、内径113mm
外管外径137mm、内径127mm
長さ1000mm
スペーサ
材質:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
形状:横断面形状が略三角形状の線状体(図1(b),(c)参照)
頂点3点:R0.5mmで丸める
頂点同士をつなぐ辺:曲率半径3.0mmの曲線
頂点における内角:36°
断面積:1.44mm2
寸法:外接円直径3mm、長さ8000mm
配置:内管の外周にらせん状に巻回
[比較例]
スペーサの横断面形状が円状である点を除き、試算例1と同様の形態とする。このスペーサの横断面形状は直径が3mm、断面積7.0686mm2の円状である。
【0052】
[結果]
スペーサが二重構造管の自重により押圧されたとき、スペーサと外管との接触箇所において、二重構造管の周方向の接触長さを計算すると、試算例1では0.5mm、比較例では3.4mmであった。また、そのときのスペーサの断面積を計算すると、試算例1では1.4445mm2、比較例では7.0875mm2であった。
【0053】
試算例1は比較例に比べて上記接触長さが短いのは、本発明の断熱管は、隣り合う頂点同士をつなぐ辺がその頂点同士を結ぶ仮想直線よりも内側に位置するので、スペーサが二重構造管の自重によって押圧されても、その押圧箇所が幅広い平坦な面積にはなっていないからであると考えられる。
【0054】
本発明の断熱管を用いた試算例1は比較例に比べて、スペーサと外管との周方向の接触長さが約1/7となるため、外部からの熱侵入量の増加を抑制することができる。また、試算例1は比較例に比べて、スペーサの断面積が約1/5となるため、スペーサの構成材料を削減でき、かつ伝熱による侵入熱の増加を抑制することが期待できる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明断熱管は、断熱管内に流通される流体の温度に幅広く対応できる流体輸送管等として利用することができる。本発明断熱管を備える超電導ケーブルは、送電線路の構成部材として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 断熱管
2 二重構造管
21 内管 22 外管
3 スペーサ
31 頂点 32 辺 33 仮想線
4 断熱材
5 真空層
10 超電導ケーブル
11 ケーブルコア 12 フォーマ
13 超電導導体層 14 電気絶縁層 15 外部超電導層 16 保護層
17 冷媒流路 18 防食層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管との間に断熱材と線状体のスペーサとが内蔵された断熱管であって、
前記スペーサの横断面形状は、複数の辺で囲まれる略多角形で、隣り合う辺同士が接合されて外側に突出する複数の頂点を有し、
隣り合う前記頂点同士をつなぐ全ての辺は、当該頂点同士を結ぶ仮想直線よりも内側に位置することを特徴とする断熱管。
【請求項2】
前記頂点の個数が3〜5個であることを特徴とする請求項1に記載の断熱管。
【請求項3】
前記頂点における内角が鋭角であることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱管。
【請求項4】
前記横断面形状は、長手方向の中心軸に対して回転対称であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱管。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱管と、
超電導導体を有し、前記断熱管の内部に収納されるケーブルコアとを備えることを特徴とする超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−226621(P2011−226621A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99275(P2010−99275)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】