新規の使用および方法
生物学的に活性なタンパク質それのみを哺乳動物に投与した際に誘発された免疫反応と比較して、哺乳動物に投与する際に、免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少される医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む新規の分子の使用が提供される。また、ポリペプチドを、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分にカップリングすることを含む、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発される免疫反応を減少させるか、または除去する方法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性なタンパク質の免疫原性を減少させる方法および使用に関する。特に、本発明は、医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質部分と、アルブミン結合性部位とを含む分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血清アルブミン
血清アルブミンは、哺乳動物の血清中の最も豊富なタンパク質であり(ヒトにおいて、40g/1;約0.7mM)、その機能の1つは、脂質やビリルビンのような分子に結合することである(Peters T,Advances in Protein Chemistry 37:161,1985)。血清アルブミンの半減期は、動物の大きさに正比例し、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)は、19日間の半減期を有し、ウサギ血清アルブミンは、約5日間の半減期を有する(McCurdy TR等,J Lab Clin Med 143:115,2004)。ヒト血清アルブミンは、体内に広く分布しており、特に、主として浸透圧モル濃度の維持に関与する腸および血液の区画に分布している。構造的に、アルブミンは、3つの相同ドメインを含み、総計584または585個のアミノ酸からなる単鎖タンパク質である(Dugaiczyk L等,Proc Natl Acad Sci USA 79:71(1982))。アルブミンは、17個のジスルフィド架橋、および、1個の反応性チオール、Cys34を含むが、Nと結合した、および、Oと結合した炭水化物成分を有しない(Peters,1985,上記;Nicholson JP等,Br J Anaesth 85:599(2000))。糖鎖付加の欠如が、アルブミンの組換え発現を簡単にしている。アルブミンは、この特性と、三次元構造が既知であることによって(He XMおよびCarter DC,Nature 358:209(1992))、組換え融合タンパク質に使用する魅力的な候補である。このような融合タンパク質は、一般的に、単一のポリペプチド鎖中で、治療用タンパク質(これは、タンパク質そのものを投与すると体から迅速に排除されると予想される)と、血漿タンパク質(これは、自然な遅いクリアランスを示す)とが組み合わされたものである(Sheffield WP,Curr Drug Targets Cardiovacs Haematol Disord 1:1(2001))。このような融合タンパク質は、必要な注射の回数を減らし、かつ、インビボで治療用タンパク質がより高レベルであるという点で、臨床上の利点を提供する可能性がある。
【0003】
HSAとの融合または結合により、インビボでのタンパク質の半減期が長くなる
血清アルブミンは、あらゆる酵素的または免疫学的な機能を欠いているため、生物活性ポリペプチドにカップリングされると望ましくない副作用を示さないと予想される。その上、HSAは、多数の天然の分子、同様に治療的な分子の内因性の輸送および送達に関与する天然のキャリアーである(Sellers EMおよびKoch−Weser MD,Albumin Structure,Function and Uses,Rosenoer VM等編(Pergamon,Oxford,p159(1977))。血清アルブミンに直接的に、または、インビボで血清アルブミンに結合が可能と予想されるペプチドもしくはタンパク質に、タンパク質を共有結合でカップリングさせる方策が数種報告されている。後者のアプローチの例は、例えば、EP486525およびUS6267964、WO01/45746、ならびに、Dennis等,J Biol Chem 277:35035〜43(2002)で説明されている。最初の2つの文献は、具体的には、その他のタンパク質の半減期を高めるための、連鎖球菌のタンパク質G(SpG)から誘導されたアルブミン結合性ペプチドまたはタンパク質の使用を説明している。この考え方は、バクテリア由来のアルブミン結合性ペプチド/タンパク質を、血液中で迅速に排除されることが示されている治療上興味深いペプチド/タンパク質に融合させることである。このようにして生成した融合タンパク質は、インビボで血清アルブミンに結合し、そして、それらのより長い半減期による利点のために、この融合した治療上興味深いペプチド/タンパク質の正味の半減期が増加する。WO01/45746およびDennis等は同じ概念に関するが、そこで著者らは、血清アルブミンに結合させるために、比較的短いペプチドを利用している。このようなペプチドは、ファージ提示法によるペプチドライブラリーから選択されている。Dennis等は、初期の研究で、連鎖球菌のタンパク質Gのアルブミン結合性ドメインのヒト1型補体受容体への組換え融合体に対する免疫反応の強化を見出したことを述べている。また、米国特許出願第2004/0001827号(Dennis)は、腫瘍を標的にするための生物活性化合物と結合させた血清アルブミンに結合する、ファージ提示法によって再度同定されたペプチドリガンドを含むコンストラクトの使用も開示している。このようなコンストラクトは、改善された薬物動態学的および薬力学的な特性を有すると言われているが、その文書において、上記コンストラクトの免疫原性が、結合させていない生物活性化合物と比較して減少するという開示も示唆もない。さらなる血清アルブミン結合性の結合体分子が望ましいという示唆はない。
【0004】
その代わりとして、問題の治療上興味深いペプチド/タンパク質はまた、血清アルブミンに直接融合させることもでき、これは、上述した通りであり、さらに、Yeh等(Proc Natl Acad Sci USA 89:1904(1992))、および、Sung等(J Interferon Cytokine Res 23:25(2003))によって説明されている。Yeh等は、CD4の2つの細胞外Ig様ドメイン(V1およびV2)のHSAへの結合を説明している。HSA−CD4結合体はCD4の保持された生物活性を有するが、実験ウサギモデルで、半減期がCD4単独と比較して140倍増加したことが報告されている。溶解性CD4単独では、0.25±0.1時間の排出半減期を有するが、それに対して、HSA−CD4の排出半減期は、34±4時間であると報告されている。また、Sung等(上記)によって概説されているように、インターフェロンβ(IFN−β)がHSAへ結合する際の排出半減期の延長も観察された。ここで、霊長類においてIFN−β−HSA複合体を評価し、IFN−βの半減期が、単独の場合は8時間であったが、HSAに結合された場合は36〜40時間に増加することが報告されている。
【0005】
連鎖球菌のタンパク質Gのアルブミン結合性ドメイン
連鎖球菌のタンパク質G(SpG)は、連鎖球菌属のある特定の株の表面に存在する二官能性の受容体であり、IgGと血清アルブミンの両方に結合することができる(Bjoerck L等,Mol Immunol 24:1113(1987))。その構造は、数種の構造的かつ機能的に異なるドメインの高度な繰り返しである(Guss B等,EMBO J 5:1567(1986))。より正確には、SpGは、1つのIg結合性モチーフと、3つの血清アルブミン結合性モチーフとを含む(Olsson A等,Eur J Biochem 168:319(1987))。
【0006】
アルブミン結合性タンパク質BBは、連鎖球菌のタンパク質Gから誘導されたものであり、これは、214個のアミノ酸残基を有し、さらに、SpGのアルブミン結合性モチーフの約2.5を含む(Nygren P−Å等,J Mol Recognit 1:69(1988))。これまでに、BBは、強力なワクチンを作製するという目的で、ペプチド免疫原のための融合パートナーとしての高い適正を与える数種の特性を有することが示されている。例えば、BBは、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のマラリア抗原Pf155/RESA(M3)(Sjoelander A等,J Immunol Meth 201:115(1997))から、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)(長い)Gタンパク質フラグメント(G2Na)に至る繰り返し構造と融合させている(Power UF等,Virol 230:155(1997))。BB−M3とBB−G2Naはいずれも、数種の動物モデルにおいて、両方の免疫原融合成分に対して、強力かつ長期にわたる抗体反応を開始させることができる。ウサギにおいて、BB−M3は、免疫刺激複合体(iscom)に共有結合した後に抗体の高いタイターを誘導し(Sjoelander A等,Immunometh 2:79(1993))、マウスにおいて(上記のSjoelander等,1997)、および、ヨザル(Aotus monkeys)において(Berzins K等,Vaccine Res 4:121(1995))免疫原性である。観察された作用は、有力なアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント(FCA)の存在下で観察された。その上、BB−G2Naは、マウスとヒトの両方において、検出可能な防御性の抗体反応を誘導した(上記のPower等,1997,Power UF等,J Infect Dis 184:1456(2001))。BB−M3に一致して、この作用は、強力なアジュバント(この場合マンニトール、および、リン酸アルミニウム)の存在下で観察された。
【0007】
A3、ABD3または単にABD(「アルブミン結合性ドメイン」)と命名された、SpGの血清アルブミン結合性モチーフのうち1つの構造が決定されている(Kraulis PJ等,FEBS Lett 378:190(1996))。この研究により、驚くべきことに、構造がブドウ球菌のタンパク質AのIg結合性ドメインに類似した3−へリックスバンドルドメインが解明された。SpGドメインABDは、46個のアミノ酸に相当する。
【0008】
SpGのアルブミン結合性部位は、Goetsch等によって説明されているようにして、厳密にエピトープマッピングされている(Clin Diagn Lab Immunol 10:125(2003))。
【0009】
その他のアルブミン−結合性ドメイン
アルブミン結合性タンパク質は、その他の細菌に見出される。例えば、天然に存在するアルブミン結合性タンパク質としては、グラム陽性細菌由来の所定の表面タンパク質、例えば連鎖球菌のMタンパク質(例えば、M1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49およびタンパク質H)、連鎖球菌のタンパク質G、MAGおよびZAG、ならびに、ファインゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)(以前は、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus))の所定の株由来のPPLおよびPABが挙げられる。Navarre WWおよびSchneewind Oによるグラム陽性表面タンパク質の総論(Microbiol Mol Biol Rev 63:174〜229(1999))、および、そこに記載された参考文献を参照。これらのタンパク質のうちのいくつかによるアルブミン結合性の特徴が、例えばJohansson MU等(J Biol Chem 277:8114〜8120(2002));Linhult等(Prot Sci 11:206〜213(2002)、および、Lejon S.等 J.Biol.Chem.279,41,2004,42924〜42928)によってさらに解明されている。
【0010】
免疫原性の臨床上の意義
最も生物学的に活性なタンパク質(程度の差はあるが問題の種のタンパク質と同一なタンパク質など)は、かなりの割合の被験体において、投与すると抗体反応を誘導する。免疫原性に寄与する主要な因子は、外来のエピトープ、例えば新規のイディオトープ、異なるIgアロタイプまたは非自己配列、不純物の存在、および、タンパク質凝集体の存在である。ほとんどの場合において、このようにして誘導された抗体は、生物学的または臨床的な作用を有さない。臨床的な作用が観察される場合、最も一般的なことは、生物製剤の有効性の損失である。
【0011】
しかしながら、より重篤な有害反応を示すケースが報告されている。このような場合において、タンパク質製剤に対して発生した抗体は、内因性タンパク質と交叉反応する。このような例として、エリスロポイエチンがある。エリスロポイエチンをヒトに投与すると、免疫反応が誘導され、それにより患者は赤芽球癆を発症する(Casadevall N等,New Eng J Med 346:469(2002))。生成した特異抗体は高い親和性を有しており、その他の形態のエリスロポイエチン、例えばEprex(R)、Epogen(R)、および、NeoRecormon(R)と交叉反応することも示され、すなわちこれは、その反応性は、エリスロポイエチン活性部位のコンフォメーションに対して向けられる可能性が最も高いことを示す。その他の例は、トロンボポイエチンであり、これをヒトに投与すると中和抗体が生産される。この抗体は内因性トロンボポイエチンの活性を阻害し、それにより自己免疫性血小板減少症が発症する(Koren E等,Curr Pharm Biotech 3:349(2002))。
【0012】
生物製剤の臨床用途は免疫反応を惹起することが多いことを考えれば、免疫原性は、全ての生物製剤学的な製品の開発の際に扱うべき危険因子である。上述のエリスロポイエチンとトロンボポイエチンの他にも、数種のその他の生物製剤も、患者において免疫反応を誘導することが報告されている。例えば、毛様体神経栄養因子(CNTF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、成長ホルモン(GH)、インスリン、および、インターフェロンβ(IFN−β)である。なぜ上記のタンパク質が、治療した患者において抗体を生産することが観察されるかの理由は、生成物に応じて様々である。より正確には、インスリンの免疫原性における主要な因子は、アジュバントとして作用するタンパク質不純物が存在することのようであり、それに対して、IFN−βの場合、主要な因子は、細菌の宿主細胞中でタンパク質が生産される場合の糖鎖付加の欠如、および低い溶解性による集合体の存在と考えられていた(Karpusas M等,Cell Mol Life Sci 54:1203(1998))。組換えヒトGHが出現する前は、ヒト死体からのGHを用いて、子供のGH欠乏症を治療した。主としてタンパク質不純物が高含量であったことにより、この子供達の45%が、この最初の産物の発生に対する抗体を生産した(Raben MS,Recent Prog Horm Res 15:71(1959))。組換えGHの場合、E.コリ(E.coli)における生産を可能にする特別なメチオニン残基を含む組換えGHを患者に投与したところ、抗体が8.5%に減少する現象が起こった(Okada Y等,Endocrinol Jpn 34:621(1987))。ホモ結合型のGH欠失突然変異体を有する双子を、上記治療用タンパク質で処理したところ、1組の双子しか組換えGHに対する抗体を生産しなかったことから判断すれば、GHの免疫原性は、自己タンパク質に対する同一性のパーセントまたは免疫寛容の欠如より複雑である(Hauffa BP等,Acta Endocrinol 121:609(1989))。CNTFは運動ニューロンの生存を強化すると考えられていることから、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹った患者を治療するための組換えヒトCNTFを生産した。遺憾ながら、これらの患者の90%より多くが、処理の2週間後に、抗CNTF抗体陽性であることが試験された。治療用タンパク質の臨床的な作用は、1995年のALS CNTF研究グループの報告(Clin Neuropharmacol 18:515(1995))により示されたように、特異抗体によって著しく阻まれる。トランケーションされたC末端を含み、ペグ化された第二のCNTF生産は、現在のところ、開発中である。
【0013】
その上、治療用抗体分子の免疫原性は、多くの病気の治療におけるそれらの広範かつ繰り返しの適用を著しく限定する重要な問題である。
【0014】
免疫原性を減少させる異なる方策
それゆえに、タンパク質の免疫原性を減少させる技術が必要である。実際には、タンパク質製剤は、天然に存在するタンパク質に比べてアミノ酸配列が改変されているか、または、被験体にとって異種のアミノ酸配列で全て構成されることがますます一般的になりつつあるため、このような技術の重要性は高まっている。免疫原性を防ぐ重要な方法の1つは、混入したアジュバントを含まない、可溶性の凝集していない天然型のタンパク質が生成されるように、生物製剤学的なタンパク質の生産、精製および配合を最適化することによる方法である。精製および配合を改善することによる、ヒト成長ホルモン(Moore WV等,J Clin Endocrin Meth 51:691(1980))、および、インターフェロン−α2a(Hochuli E,J Inter Cyto Res 17:15(1997))のようなタンパク質の免疫原性の減少に関する数々の報告がある。
【0015】
免疫原性を改変するその他の方法は、問題のタンパク質の実際の配列または構造に対して向けられており、これはしばしば、「脱免疫化(deimmunization)法」と称される。このような方策の例は、エピトープの中和、遺伝子シャッフリング、化学修飾および免疫寛容である。エピトープの中和は、インシリコおよび/またはインビトロでの方法を用いた優勢のTおよび/またはB細胞エピトープの合理的な同定、それに続いて、優勢なエピトープが除去され、願わくば減少した免疫原性が得られるような強調表示された配列のデザイン変更を含む(Stickler MM等,J Immunother 6:654(2000);米国特許出願公開番号2003/0166877)。脱免疫化および遺伝子シャッフリングのその他の例は、抗体分子のヒト化である(Kuus−Reichel K等,Clin Diagn Lab Immunol 1:365(1994))。その免疫原性は、マウス抗体から、キメラ抗体、完全ヒト抗体に至るまで落ちることが報告されている。DNA遺伝子シャッフリングを用いたヒトタンパク質の進化は、遺伝子の秩序だったキメラを生成するための相同性依存性のDNAフラグメント組換えを含む。遺伝子シャッフリングは、免疫原性が減少し、かつ生物活性が保持されたタンパク質を探すのに有用であり得る(Pavlinkova G等,Int.J Cancer 94:717(2001))。
【0016】
タンパク質の抗原性(既存の抗体に結合すること)、および、免疫原性(新しい免疫反応を誘導する能力)を改変するその他の方法は、タンパク質を化学修飾することである。化学修飾は、共有結合したポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)(Molineux G,Pharmacother 23:3(2003))、および、デキストラン(Kobayashi K等,J Agric Food Chem 49:823(2001))を用いて、または、無水コハク酸を用いた正電荷の中和を行うことによって達成することができる。PEGは、非毒性で高い可溶性を有する分子であり、これは、それらに共有結合したタンパク質のインビボでの半減期を増加させること、および、このようなタンパク質の免疫原性を減少させることが示されている(Molineux G,上記)。PEGアプローチは、一般的にタンパク質の「ペグ化」と称される。
【0017】
免疫寛容の誘導は、治療分子に化学的な付加がなされないため、免疫反応を防ぐためのペグ化よりも許容できる手段を提供する。同じ製薬でも、例えばより優れた患者のコンプライアンスを保証するものが投与される。このアプローチは、例えば、血友病Aに罹った患者に第VIII因子を投与することに関して試されてきた。血友病Aを治療するために第VIII因子を使用する際の合併症の1つは、治療用タンパク質に対する阻害抗体の生成であり、これは、全ての患者の約三分の一で観察される(Scharrer I,Haemophilia 5:253(1999))。免疫反応を限定しようとする努力において追求される1つの方策として、数ヶ月から数年の期間投与されると予想される免疫抑制剤を併用した多い用量の第VIII因子の毎日の注射がある。
【0018】
現在の免疫原性を減少させる方策の欠点
免疫原性を減少させる異なるアプローチの欠点がいくつかある。1つには、薬物の有効性に必須の活性部位を妨害することなく、共有結合によるPEG分子のタンパク質への付着を達成することが難しい。これを回避することが、ペグ化における主要な課題である。ペグ化した生成物の品質には大きなばらつきがあり、さらに、以下のような多数の因子が、このばらつきの一端を担っていることが示されている:PEGとタンパク質との間のリンカーの存在または非存在;PEG、リンカーおよびタンパク質の間の結合の性質および安定性;得られたペグ化したタンパク質の表面電荷へPEGが付着することの影響;カップリング条件;均一な生成物を提供するための必要条件;および、活性化されたポリマーの関連する毒性。その上、生物活性の保存に関して優れた結果を達成するために、プロトタイプの方法の著しい改変、さらには生物学的な最適化プロセスの著しい改変が、必要とされてきた。あらゆる活性の減少は、治療用量を増加させることによって対処してきたが、それにより再びこれら分子に対する免疫反応の危険が増加する。ペグ化アプローチのその他の欠点は、ペグ化した治療剤は、1ヶ月あたり患者1人あたり推定でUSD1000まで治療費を増加させることである。治療用タンパク質分子の薬理学的および免疫学的な特性の改善に関して、PEG以外にポリマーでは、ほとんど成功していない(Burnham NL,Am J Hosp Pharm 51:210(1994))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、治療用抗体分子の免疫原性は、ヒト化アプローチを用いて対処されてきた。ヒト化は、いくつかのマウス抗体、例えばいくつかの乳ガンの治療に承認されているハーセプチン(Herceptin(R))ではよく作用している。その他の場合において、ヒト化抗体、例えばリウマチ様関節炎の治療に用いられるキャンパス(Campath(R))−1Hは、それでもなお、治療された患者の60%において免疫反応を誘導する。加えて、動物実験からのデータによれば、齧歯類は、同じ種および系統由来の抗体に、明らかに寛容ではないことが示され(Cobbold SP等,Meth Enzym 127:19(1990))、さらに、完全ヒト抗体は、その他のあらゆる抗体と同様に抗イディオタイプ抗体を誘発する可能性を有すると考えられる。
【0020】
その上、「脱免疫化」アプローチ、例えばTおよびB細胞エピトープの標的化された除去は、一般に思われているほど些細ではない。インシリコでのエピトープ予想に利用可能なアルゴリズムは、信頼できない場合がある。B細胞エピトープを予想する場合、このようなエピトープは、かなりの程度、立体配座のエピトープであるため、アルゴリズムを用いて予想することは極めて難しい。一方で、T細胞エピトープは、直鎖状であるが、これは、現存するインシリコツールがより信頼できることを意味する。遺憾ながら、ほとんどのアルゴリズムは、主要組織適合複合体(MHC)クラスI関連ペプチドを同定するのには適しているが、MHCクラスII関連ペプチドを同定するのには適していない。後者は、ヘルパーT細胞の活性化により関連しているため、これは、抗体反応の減少を探す場合、欠点である。その上、MHC分子の多数の多型が、イムノインフォマティクスを用いて、あらゆる所定のタンパク質抗原のT細胞エピトープの大半を予測することを難しくしている。イムノインフォマティクスによって同定されたエピトープは、例えばインビトロでのヒトT細胞刺激分析での実証研究によって常に検証すべきであることを念頭に置くことが重要である。その理由の1つは、免疫原性ペプチド(すなわちT細胞エピトープ)のMHCクラスII分子への結合は、そのペプチドに対する特異性を有する所定のT細胞抗原受容体による認識を確認するには十分ではないことである。T細胞エピトープとB細胞エピトープの両方を同定するのに必要な研究は、時間がかかり、同様に、実験的に難しい。
【0021】
異なる治療剤(例えば上記で例示された第VIII因子)に対する耐性の誘導に関与する主要な不利益は、免疫抑制剤を用いた長期治療の作用(例えば免疫系を抑制した後の感染への感受性や、上記抑制剤の潜在的毒作用)、および、付随する高いコストである。小児患者における第VIII因子に対する免疫寛容の誘導の費用は、ほぼ1百万USドル
と推定されている。
【0022】
生物製剤および生物活性を有するその他のタンパク質の免疫原性を減少させる方策があるにもかかわらず、これらの方策のなかで、免疫原性の減少または除去が要求される全ての状況においてそれ自身有用であることが証明されたものはない。従って、この問題への補足的なアプローチの必要性が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、この必要性を、哺乳動物の被験体にタンパク質を投与した際の、タンパク質の免疫原性に関連する問題を回避するための新しい方法を提供することによって満たすことである。
【0024】
本発明の関連する目的は、投与された生物製剤またはタンパク質薬に対する抗体の生成を減少させるか、または、理想的には完全に回避することである。
【0025】
本発明のその他の目的は、新規の目的のために、哺乳動物の血液において豊富な血清アルブミンを利用することである。
【0026】
これらの目的、および本明細書での開示より当業者には当然であるその他の目的を考慮して、本発明は、その様々な観点で、免疫原性の問題を解決するための従来既知の方法に、驚くべき別法を提供する。
【0027】
従って、一形態において、本発明は、生物学的に活性なタンパク質そのものを哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、哺乳動物に投与する際に免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少される医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子(「本発明の分子」)の使用を提供する。
【0028】
その他の形態において、本発明は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発された免疫反応を減少させるか、または除去する方法を提供し、本方法は、該ポリペプチドを哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分にカップリングさせて分子を形成し、該哺乳動物に該分子(「本発明の分子」)を投与することを含む。
【0029】
さらにその他の観点において、本発明は、非ヒトまたはヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する方法における良法を提供し、ここにおいて、本良法は、生物学的に活性なタンパク質から誘導される少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子(「本発明の分子」)を投与することを含み、それによって、該分子は、生物学的に活性なタンパク質それのみからなる化合物と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、減少した免疫反応を惹起する。
【0030】
本発明のその他の形態において、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子(「本発明の分子」)が提供され、本分子は、哺乳動物に投与する際に、該生物学的に活性なタンパク質それのみを該哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、減少した免疫反応を惹起する。
【0031】
本発明はまた、このような分子と、製薬上許容できるキャリアーとを含む組成物、および、医薬品の製造におけるこのような分子の使用を提供する。
【0032】
本発明の様々な形態を基礎として、驚くべきことに、本発明者等により、生物学的に活性なタンパク質を血清アルブミンへの親和性を有する成分に共有結合でカップリングすることによって、生物学的に活性なタンパク質に対する免疫反応を実質的に減少させるか、または、さらに除去することが実行可能であることが示された。このようにして得られた分子を哺乳動物に投与することによって誘発された免疫反応は、共有結合でそれらにカップリングされたアルブミン結合性成分を有しない生物学的に活性なタンパク質を投与することによって誘発された免疫反応と比較して、顕著に減少する。実際に、これは、生物学的に活性なタンパク質またはペプチドをアルブミン結合性成分にカップリングする従来技術で示される唯一の免疫学的な作用は、アジュバントの存在下で(発明の背景を参照)アルブミン結合性タンパク質BBにカップリングされた免疫原に対する抗体の生成の増加であるということを特に考慮すると、驚くべき観察である。
【0033】
本発明の一実施形態において、上記の減少した、または除去された免疫反応は、体液性免疫反応である。この実施形態において減少した、または、除去された体液性免疫反応は、例えば抗体(特にIgGアイソタイプ)の生産であり得る。
【0034】
いかなる特定の理論に縛られることは望まないが、分子を被験体哺乳動物に投与した後、体内で分子と血清アルブミンとが結合することによって、被験体の免疫系は、上記分子への免疫反応が生じないように分子を無視するようになると考えられている。アルブミンの結合の平衡は、分子とアルブミンとの複合体の方に極端にシフトする可能性が高い。
【0035】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、タンパク質またはペプチドが可能であり、例えばポリペプチド、または、オリゴペプチドである。
【0036】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、血清アルブミンと相互作用する望ましい能力を有する天然に存在するポリペプチドであり得る。また、このような天然に存在するポリペプチドのフラグメントまたは誘導体も、アルブミン結合性成分として用いることができ、ただし、当然ながら、このようなフラグメントまたは誘導体において、アルブミンと結合する能力は、少なくとも部分的に保持される。アルブミン結合活性を有する天然に存在するポリペプチドの非限定的な例としては、グラム陽性細菌由来の所定の表面タンパク質、例えば連鎖球菌のMタンパク質(例えばM1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49、および、タンパク質H)、連鎖球菌のタンパク質G、MAGおよびZAG、ならびに、ファインゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)(以前は、ペプトストレプトコッカス・マグヌス)の所定の株由来のPPL、および、PABが挙げられる。Navarre WWおよびSchneewind Oによるグラム陽性表面タンパク質の総論(Microbiol Mol Biol Rev 63:174〜229(1999))、および、そこに記載された参考文献を参照。さらに、これらのタンパク質のうち数種によるアルブミン結合性の特徴が、例えばJohansson MU等(J Biol Chem 277:8114〜8120(2002));Linhult等(Prot Sci 11:206〜213(2002)、および、Lejon S.等 J.Biol.Chem.279,41,2004,42924〜42928)によって解明されている。これらのおよびその他のタンパク質のどのドメインがアルブミン結合に関与しているか、に関する上記出版物などからの知見を用いて、本発明に従って用いることができる分子においてアルブミン結合性成分として使用するための、列挙されたタンパク質のいずれかの適切なフラグメントまたは誘導体を見出すことは、当業者の通常の能力の範囲内である。例えば、タンパク質PABは、GAモジュールとして知られている53個のアミノ酸残基のアルブミン結合性ドメインを含み、このドメインは、連鎖球菌のABDと高い配列相同性を有しており、上記のLejon等で詳細に考察されている。特に、この論文では、モジュールとヒト血清アルブミンとの結合に重要なアミノ酸残基の同定が開示されている。熟練者であれば、血清アルブミン結合性成分をアルブミンに結合させる適切な残基、または、上記成分のアルブミン結合特性を強化させる適切な残基を有する血清アルブミン結合性成分を生産することができる。
【0037】
具体的には、上記のLejon等は、ヒト血清アルブミンとGAモジュールとの境界面の疎水性コアは、ヒト血清アルブミンからの残基Phe−228、Ala−229、Ala−322、Val−325、Phe−326およびMet−329、ならびに、GAからの残基Phe−27、Ala−31、Leu−44およびIle−48という配列であることを見出した。熟練者であれば、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、この相互作用の表面(例えば境界面の疎水性コア)に寄与する、または、周囲の水素結合の相互作用に寄与する代替アミノ酸残基を含む血清アルブミン結合性成分を提供することが可能である。このような血清アルブミンへの親和性が保持または強化された変異体は、上記のLejon等で見出される複合体に関する情報に基づき構築することもでき、さらに、ヘリックス2および3、および、へリックス2の前後のループの代替の表面残基を含む。結合に直接関与する残基を置換することによって結晶化した複合体の結合表面を改変することに加えて、間接的な構造的な作用または静電気による操舵力によって、血清アルブミンに関する強化された結合親和性を得る手段として(Low等,J.Mol.Biol.260:359〜368,1996;SchreiberおよびFersht,Struct.Biol.3:427〜431,1996)、または、血清アルブミンのその他の部分との同時の相互作用を導入する手段として、代替アミノ酸が置換されてもよい。当然のことながら、この相互作用は、状況によって水素結合、フンデルワールス相互作用または静電結合の性質によるものであり得る。これらの改変アプローチのいずれか、または、その両方によって生じた全ての配列変異体は、上記のKraulis等で説明されている血清アルブミン結合性ドメインの直接的に関連する変異体とみなされ、本願の実施例で用いられる。
【0038】
ヒト血清とアルブミンとの結合境界面で脂肪酸との複合体が形成される可能性が、上記のLejon等によって考察されている。本発明の適用は、脂肪酸の存在下または非存在下での結合が強化されるように改変されていてもよい。
【0039】
従って、上記および背景の章で述べられたように、アルブミン結合能を有する天然に存在するポリペプチドの1つは、連鎖球菌のタンパク質G、SpGである。それゆえに、無傷のSpG、もしくはあらゆるアルブミン結合性ドメイン、または、それらのフラグメントもしくは誘導体は、本発明に従って用いられる分子においてアルブミン結合性成分として用いることもできる。このようなアルブミン結合能を有するドメインの一例は、SpGドメインABDである(従来技術では、46個のアミノ酸のドメインもABD3またはA3として言及されている。例えば上記のKraulis PJ等を参照)。当然ながら、アルブミン結合能が保持されたそれらの変異体またはフラグメントもまた、有用であり得る。例えば、適切な変異体またはフラグメントのアルブミンへの好ましい結合親和性は、以下に示した通りであり得る。
【0040】
その他の限定されない代替物として、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約40個のアミノ酸残基(例えば、約10〜約20個のアミノ酸残基)を有するアルブミン結合性ペプチドであり得る。このようなペプチドは、例えば、WO01/45746、および、Dennis等,J Biol Chem 277:35035〜43(2002)で、生物学的に活性なタンパク質の半減期を長くする用途で説明されている。具体的には、アミノ酸配列DICLPRWGCLWを含むペプチド、および/または、アミノ酸配列DLCLRDWGCLWを含むペプチド、および/または、アミノ酸配列DICLARWGCLWを含むペプチド、または、それらの配列のアルブミン結合性の誘導体が、本発明に係るアルブミン結合性成分として有用であり得る。有用なアルブミン結合性ペプチドの具体的な例は、上記のDennis等の表II、IIIおよびIV、および、WO01/45746の12〜13頁に見出され、これらの章は、参照により本発明の開示に加入させる。
【0041】
あるいは、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、哺乳動物の血清アルブミンへの親和性を有する有機性の非タンパク質様の化合物でもよい。この成分は、好ましくは、生物学的に活性なタンパク質成分に共有結合した、このような有機化合物のラジカルである。血清アルブミンへの親和性を有する化合物は当業界既知であり、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばイブプロフェン、および、カルプロフェン;ジクロフェナク;サリチル酸;ワルファリン;プロポフォール;ならびに、ハロタンからなる群より選択してもよい。
【0042】
分子と、それが投与される哺乳動物の血清アルブミンとの効率的な結合を得るために、上記分子は、相互作用のKDが、≦10-6M、例えば≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、≦10-12M、≦10-13M、または、≦10-14Mになるようなアルブミンに関する結合親和性を有すると予想される。しかしながら、所定の環境において、本発明に従って用いられる分子が、体内で解離し、その目的とする機能を実行できるように、アルブミンの結合が過度に堅くならないことが望ましい場合がある。本発明におけるアルブミンと分子との間の相互作用のような、生体特異的な相互作用のKDは、例えば、当業者既知の表面プラズモン共鳴を用いて測定してもよく、例えばビアコア(Biacore(R))の機器を用いて測定してもよい。
【0043】
本発明の分子のアルブミン結合性成分、従って本発明の分子そのものは、所定の哺乳動物由来の血清アルブミンへの親和性を有する。適切には、被験体の血清中でアルブミン結合性成分とアルブミンとの結合が最適になるように、本分子が投与される被験体は同じ哺乳動物種に属する。好ましくは、アルブミン結合性成分は、所定の哺乳動物の血清アルブミンへの結合が強化されるように適合させる。例えば、哺乳動物がサルの場合、アルブミン結合性成分は、強化されたサル血清アルブミンへの親和性を有していてもよい。同様に、ヒト被験体の場合、アルブミン結合性成分は、本発明の分子のヒト血清アルブミンへの親和性が強化されるように改変されていてもよい。
【0044】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分の親和性は、治療しようとする哺乳動物に適するように改変されていてもよい。どのような時でも、アルブミンに結合していない本発明の分子が少量存在する場合がある。薬物動態学的な用語では、結合していない分子の経時的総暴露量は、濃度曲線下面積(AUC)として表現することもできる。薬物動態学分野の当業者には当然であるが、所定の種におけるこのAUC値は、アルブミンへの親和性と、アルブミンの半減期の両方に依存すると予想される。特に、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分の親和性、すなわち本発明の分子の親和性は、哺乳動物(例えばヒト)で使用する場合、血清アルブミンの半減期が大きくなるにつれて上記親和性も大きくなるように調整してもよい。従って、アルブミンの循環時間がより長い種(例えばヒト個体)において、より高い親和性が必要とされる場合がある。例えば、血清アルブミンに結合することができる成分のヒト血清アルブミンへの親和性は、その成分を変異させることによって増加させてもよい。現在のマウスにおける実験により、AUCは、免疫反応を回避するために最小化されるべきであるという仮説が確認されている;親和性が低すぎる突然変異体は、免疫反応に対する保護を得られなかった。従って、アルブミンの循環時間がより長い種(例えばヒト個体)では、より高い親和性が必要とされる場合がある。それゆえに、ヒト血清アルブミンへの親和性は、好ましくは、上述のようなアルブミン結合性成分を変異させることによって増加させることができる。
【0045】
しかしながら、同一のアルブミン結合性成分が、異なる哺乳動物種由来の血清アルブミンに結合することが可能である。従って、例えば、SpGおよびそのフラグメントは、少なくともマウス、ラットおよびヒト由来の血清アルブミンに結合することができる。本発明の一実施形態において、本発明に係る免疫反応の減少または除去は、本分子をヒトに投与する際に達成される。その他の実施形態において、この作用は、その他の非ヒト哺乳動物への投与に関連して活用される。
【0046】
また、減少した免疫反応を惹起する分子は、生物学的に活性なタンパク質成分も含む。生物学的に活性なタンパク質成分は、所定の目的で、例えば治療、予防または診断目的で哺乳動物に投与することが望まれるあらゆるタンパク質が可能である。従って、用語「生物学的に活性なタンパク質」は、それが投与される哺乳動物において有用な生物活性を示すあらゆるタンパク質もしくはポリペプチド、または、タンパク質もしくはポリペプチドのフラグメントを含み、一般的に、本明細書で用いられるタンパク質という用語は、ポリペプチド、ならびに、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントを包含する。生物学的に活性なタンパク質成分は、本分子が投与される哺乳動物にとって内因性のタンパク質から誘導されてもよいが、異種タンパク質または改変されたタンパク質が都合がよい場合もある。生物学的に活性なタンパク質成分は、可溶性分子でもよいし、または、受容体に結合してもよい。このような活性の非限定的な例を以下で考察する。
【0047】
生物学的に活性なタンパク質の活性は、問題の哺乳動物の体内で、所定の標的分子と相互作用する能力に属していてもよい。適切には、この標的分子は、哺乳動物の血清アルブミンではない。標的分子、例えば細胞の表面に存在する受容体および他のタンパク質を認識し結合するか、または、細胞の様々な区画のいずれかの内で標的分子を認識し結合するか、または、細胞外の体液に存在する標的分子を認識し結合する生物学的に活性なタンパク質の例がいくつかある。
【0048】
このような生物学的に活性なタンパク質は、例えば、腫瘍細胞または癌細胞の表面に選択的に存在する標的分子への結合において有用なことが示されている。多数の癌標的または腫瘍標的は、これらの標的への親和性を有する多くの抗体、抗体フラグメントおよびその他の結合分子を有すると説明されている。このような標的の例としては、HER2(乳ガンの所定の形態に関与)、CD4、CD20、CD22およびCD74(いずれも、様々な異なるリンパ腫に関与)、ならびに、CEAおよびEpCAM(充実性腫瘍の所定の形態に存在)が挙げられる。本発明に係る生物学的に活性なタンパク質は、例えば、標的分子としてHER2、CD4、CD20、CD22、CD74、CEAまたはEpCAMと相互作用する能力を有するタンパク質であり得る。
【0049】
さらなる標的分子としては、毒素が挙げられる。例えば、ヘビ毒は適切な標的の可能性があり、本発明の方法は、さらなる免疫反応を刺激しないで毒素を中和する生物学的に活性な成分を送達するために用いられる。
【0050】
また、本発明に従って用いられる分子の生物学的に活性なタンパク質成分は、細胞に結合していない分子、および/または、癌と関係がない分子とも相互作用する可能性がある。従って、生物学的に活性なタンパク質は、例えば、酵素をブロックする能力、例えば血液凝固カスケードに関与する酵素をブロックする能力、または、エラスターゼをブロックする能力を有するタンパク質であり得る。あるいは、生物学的に活性なタンパク質は、ホルモンまたはサイトカイン受容体をブロックする能力を有していてもよい。
【0051】
上記で概説したように、生物学的に活性なタンパク質は、所定の標的分子と相互作用する能力を有するタンパク質からなる群より選択されてもよい。このようなタンパク質の非限定的な例としては、抗体、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ブドウ球菌のタンパク質A、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、フィブロネクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、リポカリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、トランスフェリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、および、レクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体が挙げられる。これらの分子の多くの天然に存在する形態は、新規の特性、例えば天然に存在する形態が結合しない標的分子への結合親和性を新たに作るという観点で、タンパク質工学技術、例えば部位特異的な、またはランダム化したアプローチでの突然変異および変更で処理されてきた。上記で列挙したタンパク質のこのような変異体または誘導体はいずれも、本発明に係る方法または使用で、そのまま生物学的に活性なタンパク質成分として用いてもよい。また、このような分子のフラグメントはいずれも、天然に存在する形態か、または、加工されたそれらの変異体かに関わらず、全長タンパク質の活性がフラグメントに実質的に保持されている限り定義に包含される。
【0052】
さらなる適切な生物学的に活性なタンパク質としては、成長ホルモン(GH)、特にヒト成長ホルモン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インスリン、インターフェロンベータ(IFN−β)、第VIII因子、エリスロポイエチン、GL1P、および、トロンボポイエチンが挙げられる。
【0053】
それゆえに、生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質A、または、そのフラグメントもしくは誘導体であり得る。例えば、IgG結合性Bドメインまたはそれから誘導されたZタンパク質(Nilsson等(1987),Prot Eng 1,107〜133、および、米国特許第5143844号を参照)が、生物学的に活性なタンパク質成分として有用であり得る。基本構造または骨格としてZタンパク質に基づき、改変された結合親和性を有する変異体は、コンビナトリアルアプローチでのランダム変異誘発によって製作されたライブラリーから選択されている。このようなタンパク質は、幾つかの報告で特性決定されており、アフィボディ(Affibody(R))分子という名称で商品化されている。代表的な出版物としては、米国特許第6534628号、Nord K等,Prot Eng 8:601〜608(1995)、および、Nord K等,Nat Biotech 15:772〜777(1997)が挙げられる。このようなブドウ球菌のタンパク質Aから誘導されたタンパク質Zの変異体が、本発明に係る生物学的に活性なタンパク質成分として有用である。
【0054】
あるいは、または、加えて、生物学的に活性なタンパク質は、所定の標的分子に結合すること以外の有用な生物学的な活性を示す可能性もある。例えば、これらは、酵素活性またはホルモン活性を示す可能性もある。
【0055】
当然ながら、上記で例示された活性はいずれも、治療、予防または診断的な作用を有していてもよい。従って、当然ながら、生物学的に活性なタンパク質の活性は、場合によっては、薬剤活性として説明されることもある。
【0056】
上記の、本発明の実施に際し投与される分子の少なくとも2つの成分は、投与の際に免疫反応が減少するか、または、免疫反応を示さない分子を提供するために、共有結合でカップリングされた2種の異なる分子種から誘導されると説明されている。しかしながら、i)生物学的に有用な活性、および、ii)アルブミン結合能力の2種の機能が、同一の分子種に共存していてもよい、ということも考慮される。本発明で特許請求されたこのような分子の使用もまた本発明の範囲内である。この状態を説明する分子の例は、第一の部位(生物学的に有用な活性が存在する部位)と、第二の部位(アルブミン結合性部位)とを含むタンパク質である。言い換えれば、本分子は、生物学的に有用な活性を有し、生物学的に活性なタンパク質に相当する第一の部位と、哺乳動物の血清アルブミンに結合する能力を仲介する第二の部位とを含むタンパク質からなる。従って、生物学的に有用な活性は、生物学的に活性なタンパク質成分に関して上記で考察された活性のいずれかであり得る。2つの部位は、空間的に分離しており、例えば、タンパク質の異なる面に存在している可能性もある。このようなタンパク質の具体例は、連鎖球菌のタンパク質G由来のアルブミン−結合性ドメインで構成されたものであり、これは分子の表面上のその他の位置に追加の結合部位を備えている。アルブミン−結合性ドメインは、この追加の部位に、例えば上記で考察された標的のいずれか一つと相互作用する能力を有していてもよい。この追加の結合部位は、タンパク質にアミノ酸突然変異の部位特異的な導入またはランダム導入(例えばアミノ酸残基の付加、欠失または置換)によって提供することができる。得られたタンパク質は、全ての観点において類似しているが、ただしアルブミン結合機能が存在しないタンパク質の免疫原性と比較して、減少した免疫原性、または、除去された免疫原性を示すと予想される。
【0057】
本発明のさらなる形態によれば、コンストラクトZTaq4:1−ABD、ABD−Zher2:4、ABD−(Zher2:4)2、ABD−(Zher2:4)3、ABD−(Zher2:4)4、(ZAβ3)2、ABD−、および、(ZAβ3)2が提供される。
【0058】
本発明のさらなる形態によれば、上述したように生物学的に活性なタンパク質そのものを哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、哺乳動物に投与する際に免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少される医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分と、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分とを含む分子、および、生物学的に活性なタンパク質が結合する、または、それ以外の方法で相互作用する標的分子またはその一部または類似体を含む組成物が提供される。好ましくは、標的分子は、生物学的に活性なタンパク質成分に結合している。
【0059】
以下、本発明に従って行われた実験を開示することによって、かつ添付の図1〜25を参照して、本発明を説明する。本実施例は、本発明の範囲を限定するものとは解釈されない。
【0060】
図1は、実施例1で説明されているように、His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0061】
図2は、実施例1で説明されているように、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。実験34日目の血漿のタイターを示すパネルには標準曲線が含まれる。
【0062】
図3は、実施例1で説明されているように、ABDまたはHis6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿から精製されたIgGに関するELISA滴定曲線を示す。
【0063】
図4は、実施例1で説明されているように、ストレプトキナーゼでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ストレプトキナーゼが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0064】
図5は、His6−ZTaq4:5でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム1に従ってHis6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0065】
図6は、His6−ZTaq4:5でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム2に従ってHis6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0066】
図7は、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム1に従ってZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0067】
図8は、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム2に従ってZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0068】
図9は、ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム1(パネルA)、または、スキーム2(パネルB)に従ってABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0069】
図10は、実施例3で説明されているように、His6−ZTaq4:5−でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0070】
図11は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−Zher2:4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目および14日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0071】
図12は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zher2:4)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0072】
図13は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zher2:4)3が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0073】
図14は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zher2:4)4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0074】
図15は、実施例4で説明されているように、(Zαβ:3)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0075】
図16は、実施例4で説明されているように、ABD−(Zαβ:3)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0076】
図17は、実施例4で説明されている阻害ELISA実験の結果を示す。
【0077】
図18は、実施例5で説明されているように、His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0078】
図19は、実施例5で説明されているように、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0079】
図20は、実施例5で説明されているように、His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0080】
図21は、実施例5で説明されたように、ZTaq4:1−ABD、次にHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0081】
図22は、実施例5で説明されているように、ZTaq4:1−ABD、次にZTaq4:1−ABDとHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0082】
図23は、実施例5で説明されているように、ZTaq4:1、次にZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0083】
図24は、実施例6で説明されているように、(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0084】
図25は、実施例6で説明されているように、ABD(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0085】
図26は、本発明に係る様々なコンストラクトの配列を示す表である。
【0086】
図27Aは、実施例5の設定の要約である;図27Bは、実施例5で得られた結果を説明している。
【0087】
実施例1
様々な分子を投与した後のマウスにおける体液性免疫反応
研究される分子
この実施例において、本発明の概念を、様々な分子を投与した際のマウスにおける抗体反応の比較によって研究した。投与された分子は以下の通りである:
His6−ZTaq4:1−ブドウ球菌のタンパク質AのBドメインから誘導されたタンパク質Zの変異体である。このZ変異体は、それをコードするDNA配列の発現による組換えDNA技術を用いて生産され、同時に、既知の分子生物学的手法に従ってヘキサヒスチジルタグを有する。Z変異体のZTaq4:1は、そのTaq DNAポリメラーゼへの親和性に基づき予め選択された。ZTaq4:1分子の説明(そのアミノ酸配列やそれらの選択手法など)は、Gunneriusson E等,Protein Eng 12:10,873〜878(1999)(例えばこの記事の図1を参照)に示されている。比較のために使用された。
【0088】
ZTaq4:1−ABD−Z変異体のZTaq4:1と、連鎖球菌のタンパク質GのG148株の46個のアミノ酸のアルブミン結合性ドメイン(ABD)(Kraulis PJ等,FEBS Lett 378:190(1996)))との融合タンパク質である。この融合タンパク質は、既知の分子生物学的手法に従ってそれに対応するDNA配列の発現によって製造された。本発明を説明するために使用された。
【0089】
ストレプトキナーゼ−強い抗体反応を誘導することがわかっている市販の細菌の酵素である。シグマ(Sigma)から購入し(カタログ番号S−8026,ロット092K1515)、ポジティブコントロールとして使用した。
【0090】
材料および方法
マウスおよび投与計画:雌NMRIマウス(マウス20匹、予備としてプラス2匹)をこの実験で用いた。到着時の体重は20gであった。免疫化実験の開始時点で、これらのマウスは、8〜12週齢であった。スウェーデン農漁食糧省(Swedish Ministry of Agriculture,Food and Fisheries)からのガイドラインに従って、これらのマウスを維持し、エサを与えた。エサと水は、適宜与えた。免疫化実験のために、マウスを5つのグループに分けた(各グループは4匹の動物を含む)。表1に示される本分子20μgを、0.9%NaCl(0.1ml)で各マウスに皮下投与した。
【表1】
【0091】
試験分子の溶液を−20℃で凍結保存し、注射の前に融解させた。実験の0、3、6、9、12および21日目に繰り返し注射した。150μlの血液サンプルを、実験の0(処理前血漿)、7、14および21日目に、マウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の34日目にマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。血液をK+EDTA試験管に回収し、サンプリング後1時間放置した。その後、サンプルを、血漿を分離するために6000rpmで6分間遠心分離した。解析まで、貯蔵のために血漿を−20℃で凍結した。
【0092】
特異的ELISAによる血漿サンプルの解析:上記の分子のいずれか1種を投与されたマウスからの血漿の解析のために、ELISAプレート(コースター(Costar),番号9018)を、コーティング緩衝液(15mMのNa2HCO3、35mMのNaHCO3、pH9.6)で最終濃度1μg/mlに希釈したそれに対応する分子でコーティングした。ウェルあたり100μlのコーティング溶液を添加し、プレートを4℃で1〜3晩インキュベートした。次に、プレートを手動で3回、脱イオン水で洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA;シグマ製,カタログ番号A−2153)、または、2%ドライミルク(センパーAB(Semper AB),ストックホルム,スウェーデン)のいずれかを含むPBS(2.68mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、137mMのNaCl、8.1mMのNa2HPO4、pH7.4)を200μl/ウェルで用いて、1〜2時間ブロックした。次に、ブロッキング溶液を除去し、血漿100μlを各ウェルに添加し、ブロッキング溶液で1:100に希釈し、続いて連続倍数希釈した。2時間インキュベートした後に、プレートを手動で3回、PBS−T(0.05%Tween20を含むPBS;アクロス・オーガニクス(Acros Organics)製のTween20,カタログ番号233362500)で洗浄した。その後、100μlの二次抗体、ブロッキング溶液で1:2000に希釈したHRP結合ヤギ抗マウスIgG(サザン・バイオテック(Southern Biotech),番号1031−05)を、各ウェルに添加した。プレートを1時間インキュベートした。3つの工程(ブロッキング、血漿サンプルの添加、二次抗体の添加)を振盪機で行い、最後の工程は暗所で行った。プレートを手動で5回PBS−Tで洗浄した。その後、基質溶液100μl(イムノピュア(ImmunoPure(R))TMB;ピアース(Pierce),カタログ番号34021)を、各ウェルに添加し、その後プレートを暗所でインキュベートした。15分後に、ストップ溶液(2MのH2SO4;VWR,カタログ番号14374−1)100μlの添加によって発色を止めた。プレートを、ELISA分光光度計(ベーシック・サンライズ(Basic Sunrise),テカン(Tecan))で、450nmで読んだ。
【0093】
さらに、210μg/mlの抗His6−ZTaq4:1IgGを含むこれまでに得られたマウス血漿のプールを含む標準も含めた。連続倍数希釈液にこのプールを用いた。His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートにおける検出限界は、約5ng/mlであった。
【0094】
血漿サンプル中のIgGの総含量の解析:サンプル中のIgGの総量を決定するために、定量ELISA解析を、マウスIgGのELISA定量キット(ベチル(Bethyl),カタログ番号E90−131)を製造元の説明書に従って用いて行った。簡単に言えば、ELISAプレートを、製造元によって提供された抗マウスIgGでコーティングした。調査しようとする血漿と標準血漿を、連続倍数希釈液(2000ng/mlより開始)に添加した。検出抗体をブロッキング緩衝液で1:100000に希釈した(抗マウスIgG、HRP結合体;製造元によって提供)。ELISA解析を、上述のイムノピュア(R)TMBを用いて展開した。
【0095】
IgGの精製:ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスから得られた34日目の血漿のプールから、IgGを精製した。ブドウ球菌のタンパク質Aから誘導されたIgG特異的な親和性リガンドを有するHiTrapカラムにローディングする前に、このプールをPBS−Tで12.5倍に希釈した。カラムをPBS−Tで予め平衡化させた。吸光度がゼロに達するまでカラムを洗浄し、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.2Mグリシン、1mMのEGTA、pH2.8)を用いて溶出させた。中和するために、濃度50mMのトリス塩基、および、体積1/10の10×PBSを添加した。
【0096】
データ解析:ELISA値を、テカン製のマジェラン(Magellan)・ソフトウェアを用いて得た。この値を解析のためにマイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)にエクスポートした。IgG濃度を、Xlfit.3プログラム(www.idbs.com)を用いて標準曲線と比較することによって計算した。値/曲線は、抗His6−ZTaq4:1IgGの標準プールを用いて得て、特異的IgGと総IgGそれぞれの決定にはベチルの標準血漿を用いた。
【0097】
結果
His6−ZTaq4:1:マウス番号1〜4に、His6−ZTaq4:1を注射した。免疫化の前(処理前血漿)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、方法の章で説明されている通りに、His6−ZTaq4:1特異抗体の存在に関して解析した。ELISAプレートを1%BSAでブロックした。処理前血漿中に、注射された分子に対する抗体は存在していなかった。4匹のマウスは全て、注射されたタンパク質に対する中程度の抗体反応が生じることによって反応した。特異抗体のタイターが処理中徐々に上昇し、34日目で最高のタイターを示した。図1は、個々の血漿サンプルの、450nmでのOD値に対してプロットされた滴定曲線を示す。
【0098】
IgGの総濃度を、ベチルのELISAを用いて決定し、His6−ZTaq4:1に特異的なIgGの濃度を、上述の標準プールを用いて決定した。表2に結果を示す。34日間の処理中に、特異抗体の濃度は、50〜500倍に増加した。IgGの総濃度を考慮すると、特異抗体は、IgGの総量の約1〜4%を構成していた。
【表2】
【0099】
ZTaq4:1−ABD:マウス番号5〜8に、ZTaq4:1−ABDを注射した。免疫化の前(処理前血漿、データ示さず)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、方法の章で説明されている通りに、ZTaq4:1−ABDに特異抗体の存在に関して解析した。ELISAプレートを1%BSAでブロックした。図2は、450nmでのOD値に対してプロットされた個々の血漿サンプルから得られた結果を示す。要約すると、注射されたZTaq4:1−ABDに対して特異抗体は検出されなかった。
【0100】
マウス血清アルブミンがELISAウェルにコーティングされたタンパク質のABD成分と相互作用することによって、マウス抗体のZTaq4:1−ABD分子への特異的結合を立体的に妨害する危険を試験した。第一のアプローチにおいて、His6−ZTaq4:1でコーティングすることによってABDを遮蔽した。34日目の血漿を試験し、その結果は、マウス抗体とHis6−ZTaq4:1との特異的な相互作用は示さなかった(データ示さず)。その他のアプローチは、血漿からアルブミンを除去するためである。そのために、総IgGを、「材料および方法」の章で説明されている通りに、HiTrapカラムを用いてマウス番号5〜8からの34日目の血漿のプールから精製した。IgG分画をABDまたはHis6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで試験し、その結果を、図3に示す。要約すると、マウス抗体と、His6−ZTaq4:1またはABDでコーティングされた表面との結合を検出することができなかった。
【0101】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表3に結果を示す。
【表3】
【0102】
ストレプトキナーゼ:マウス番号17〜20に、ストレプトキナーゼ(血液凝固を予防する細菌の酵素であり、強い抗体反応を誘導することがわかっている)を注射した。注射の前(処理前血漿、示さず)に、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、方法の章で説明されている通りに、ストレプトキナーゼに特異抗体の存在に関して解析した。ELISAプレートを2%ドライミルクでブロックした。図4は、450nmでのOD値に対してプロットされた個々の血漿サンプルから得られた結果を示す。図4で示されるように、ストレプトキナーゼは、治療期間中に増加する抗体反応を誘導した。34日目に、4匹のマウス全てにおいてストレプトキナーゼに特異抗体の高いタイターを検出した。
【0103】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表4に結果を示す。全てのケースにおいて(ただし1つのケースを除く)、IgG総濃度は、死亡時の採血において、処理前血漿よりも顕著に高く、これは、免疫系の正常な成熟、および/または、進行中の免疫反応を示す。
【表4】
【0104】
終点のタイター:その他のタンパク質に関する適切な標準は欠如していたため、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿においてのみ、投与された分子に特異抗体の濃度を決定した。この理由のために、終点のタイターを、注射された異なるタンパク質での比較に用いた。終点のタイターは、OD値がバックグラウンドの2倍に等しい希釈度と定義された(このバックグラウンドは、同じマウスからの処理前血漿で得られたOD値である)。表5は、各マウスの終点のタイターを示す。結果を要約すると、ストレプトキナーゼで免疫化後の終点のタイターは、異なるZ変異体を用いて得られたタイターよりも顕著に高かった。特に本発明に関連性を有するのは、ZTaq4:1−ABDで免疫化した後の抗体のタイターが、検出不可能であったことである。
【表5】
【0105】
考察
動物モデルにおける特異的なB細胞活性化の開始と抗体生成の際の様々な分子の投与の作用を研究するために、NMRIマウスに、様々な分子を皮下注射した。正常な治療サイクルを模擬実験するために、マウスに十分な用量(アジュバントなし)を6回の注射で投与した(3日間のインターバル、21日目にブースター注射)。治療された動物からの血漿を、注射された分子に特異性を有するIgGアイソタイプの抗体の存在について解析した。加えて、処理前血漿、および、死亡時の採血の日(34日目)における、全ての動物のIgGの総含量のレベルを決定した。
【0106】
上記の「結果」の章で示されるように、His6−ZTaq4:1は、研究された動物において特異的なIgG応答を誘導した。抗体反応は、少量から中程度であり(34日目で5〜37μg/ml)、21日目のブースター注射の後に最も顕著に増加した(2〜20倍の増加)。この応答は、34日目でピークを示した。
【0107】
重要なことには、ZTaq4:1−ABDが注射された動物からの血漿は、ELISAによって決定したところ、注射された分子への特異的結合をまったく示さなかった。この結果は、His6−ZTaq4:1、すなわちABDの代わりにHis6に融合した同じZ配列を解析した際に観察された特異的なIgGのタイターとは極めて対照的であった。解析された5つのタイムポイントは全て、標的に特異的なマウスIgG抗体に関して陰性であった。ELISAにおける検出限界(LOD)は約5ng/mlであった。
【0108】
この研究において、ストレプトキナーゼ(強い免疫原とみなされている細菌のタンパク質)がポジティブコントロールとして用いられた。予想通りに、ストレプトキナーゼが注射された動物で高い特異的なIgG応答が観察された。
【0109】
すなわち、注射されたタンパク質は、それらの特異的なIgG応答を誘発する能力により以下のようにランク付けできる:ストレプトキナーゼ>>His6−ZTaq4:1>>ZTaq4:1−ABD。最も興味深く、関連する結果は、ABDのZTaq4:1への融合により、特異的なIgG応答が検出できなかった。
【0110】
実施例2
様々な分子を様々な頻度で投与した後のマウスにおける体液性免疫反応
研究された分子
この実施例において、本発明の概念を、様々な分子を投与した際のマウスにおける抗体反応の比較によって再度研究した。投与された分子は以下の通りである:
His6−ZTaq4:5−ブドウ球菌のタンパク質AのBドメインから誘導されたタンパク質Zの変異体である。ZTaq4:5変異体は、それをコードするDNA配列の発現による組換えDNA技術を用いて生産され、同時に、既知の分子生物学的手法に従ってヘキサヒスチジルタグを有する。ZTaq4:5は、その選択およびアミノ酸配列を含めて上記のGunneriusson E等で説明されており、そこでこれは、ZTaqS1-1と示されている。比較のために使用された。
ZTaq4:1−ABD−実施例1で説明されている通り。本発明を説明するために使用された。
ABD−連鎖球菌のタンパク質GのG148株のアルブミン結合性ドメイン(ABD)である(参考文献として上記を参照)。既知の分子生物学的手法に従って、それに対応するDNA配列の発現によって製造された。比較のために使用された。
【0111】
材料および方法
マウスおよび投与計画:雌NMRIマウス(マウス40匹,予備としてさらに2匹)をこの実験で用いた。到着時の体重は20gであった。免疫化実験の開始時点で、これらのマウスは、8〜12週齢であった。スウェーデン農漁食糧省からのガイドラインに従って、これらのマウスを維持し、エサを与えた。エサと水は、適宜与えた。免疫化実験のために、表6に従ってマウスを7つのグループに分けた。表6に示される分子20μgを、0.9%NaCl(0.1ml)で各マウスに皮下投与した。
【表6】
【0112】
試験分子の溶液を−20℃で凍結保存し、注射の前に融解させた。実験の0、7および21日目に、グループ1〜3のマウスに皮下注射した(スキーム1,低い頻度)。実験の0、1および21日目に、グループ4〜6のマウスに皮下注射した(スキーム2、高い頻度)。血液サンプル(150μl)を、実験の0(処理前血漿)、7、14および21日目に、マウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の34日目にマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。血液をK+EDTA試験管に回収し、サンプリング後1時間放置した。その後、サンプルを、血漿を分離するために6000rpmで6分間遠心分離した。解析まで、貯蔵のために血漿を−20℃で凍結した。
【0113】
特異的ELISAによる血漿サンプルの解析:上記の分子のいずれか1種を投与されたマウスからの血漿の解析のために、ELISAプレート(コースター,番号9018)を、コーティング緩衝液(15mMのNa2HCO3,35mMのNaHCO3,pH9.6)で最終濃度1μg/mlに希釈したそれに対応する分子でコーティングした。ウェルあたり100μlのコーティング溶液を添加し、プレートを4℃で1〜3晩インキュベートした。次に、プレートを手動で3回、脱イオン水で洗浄し、0.5%カゼイン(シグマ,カタログ番号C−8654)を含むブロッキング緩衝液(200μl/ウェル;PBS(2.68mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、137mMのNaCl、8.1mMのNa2HPO4,pH7.4)で1〜2時間ブロックした。次に、ブロッキング緩衝液を除去し、血漿100μlを各ウェルに添加し、ブロッキング溶液で1:100に希釈し、続いて連続倍数希釈した。さらに、210μg/mlの抗His6−ZTaq4:1IgGを含むこれまでに得られたマウス血漿のプールを含む標準も含めた。連続倍数希釈液にこのプールを用いた。His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートにおける検出限界は、約5ng/mlであった。
【0114】
2時間インキュベートした後に、プレートを手動で3回PBS−T(0.05%Tween20を含むPBS)で洗浄した。その後、ブロッキング緩衝液で1:2000に希釈した二次抗体、HRP結合ヤギ抗マウスIgG(サザン・バイオテック,番号1031−05)100μlを、各ウェルに添加した。プレートを1時間インキュベートした。全ての工程を振盪機で行い、最後の工程を暗所で行った。プレートを手動で5回PBS−Tで洗浄した。その後、基質溶液(イムノピュア(R)TMB;ピアース,カタログ番号34021)100μlを各ウェルに添加し、その後プレートを暗所でインキュベートした。15分後に、ストップ溶液(2MのH2SO4;VWR,カタログ番号14374−1)100μlの添加によって発色を止めた。プレートを、ELISA分光光度計(ベーシック・サンライズ、テカン)で、450nmでマジェラン・ソフトウェアを用いて読んだ。
【0115】
血漿サンプル中のIgGの総含量の解析:サンプル中のIgGの総量を決定するために、定量ELISA解析を、マウスIgGのELISA定量キット(ベチル,カタログ番号E90−131)を製造元の説明書に従って用いて行った。簡単に言えば、ELISAプレートを、製造元によって提供された抗マウスIgG(1μg/ml)でコーティングした。調査しようとする血漿と標準血漿を連続倍数希釈して添加した。標準血漿を、2000ng/mlから希釈した。検出抗体(抗マウスIgG、HRP結合体;製造元によって供給)をブロッキング緩衝液で1:100000に希釈して用いた。ELISA解析を、上述のイムノピュア(R)TMBを用いて展開した。
【0116】
データ解析:ELISA値を、テカン製のマジェラン・ソフトウェアを用いて得た。この値を解析のためにマイクロソフトエクセルにエクスポートした。IgG濃度を、Xlfit.3プログラム(www.idbs.com)を用いて標準曲線と比較することによって計算した。値/曲線は、抗His6−ZTaq4:1IgGの標準プールを用いて得て、特異的IgGと総IgGそれぞれの決定にはベチルの標準血漿を用いた。
【0117】
結果
His6−ZTaq4:5:8匹のマウス(番号53〜60)に、His6−ZTaq4:5を20μg/マウスで注射し、ここで注射はスキーム1に従った(上記参照)。注射の前(処理前血漿)、注射の期間(7、14、21日目)、および、注射の後に(34日目)得られた血漿サンプルを、上述の通りにHis6−ZTaq4:5特異抗体の存在に関して解析した。その結果を、図5に示す。処理前血漿(データ示さず)、または、7日目にHis6−ZTaq4:5特異抗体は存在しなかった(図5)。14および21日目までに陽性の血漿の数が増加した。34日目に、全ての血漿サンプルに、His6−ZTaq4:5特異抗体が含まれていたが、そのレベルは個々のマウス間で顕著に差が生じた。
【0118】
4匹のマウス(番号82〜85)に、スキーム2に従ってHis6−ZTaq4:5を注射した(上記参照)。注射の前(処理前血漿)、注射の期間(7、14、21日目)、および、注射の後に(34日目)得られた血漿サンプルを、上述の通りにHis6−ZTaq4:5特異抗体の存在に関して解析した。その結果を、図6に示す。処理前血漿にHis6−ZTaq4:5特異抗体は、存在しなかった(データ示さず)。7日目からすでにいくつかの(だだし全てではない)血漿サンプルで、His6−ZTaq4:5に対する抗体が低いレベルで見出された。スキーム1と同様に14および21日目には陽性の血漿サンプルの数およびタイターは増加しなかった。34日目に、1つを除く全ての血漿サンプルが、21日目のレベルと比較して高いレベルのHis6−ZTaq4:5特異抗体を示した。
【0119】
特異的なIgGの濃度を、抗His6−ZTaq4:1IgGの標準プールを用いて決定した(方法の章を参照)。このプールは、210μg/mlのHis6−ZTaq4:1特異抗体を含むことが予め示されていた。XLfitプログラムと片側の用量反応の式を用いて濃度を計算した。両方のサンプルと標準をそれぞれ個々に試験した(それゆえに方法標準偏差は未知である)。加えて、計算のために選択された数式もまた値に影響を与え、偏差は、式に応じて計算されなかった。従って、以下の表に示された濃度は、絶対値ではなく相対値とみなされると予想される。表7は、個々のマウスからの血漿中のHis6−ZTaq4:5特異抗体の濃度を示す。上記の滴定解析で示されるように、34日目の特異的なIgGの濃度は、両方のグループにおいて、個々のマウス間で顕著な差が生じた。スキーム1のグループにおける濃度は見たところ高いようであるが、スチューデントのT検定(TTEST関数,マイクロソフトエクセル)で試験したところ、統計学的に有意ではなかった。
【0120】
また、IgGの総濃度も、上述の通りに定量ELISAを用いて、His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの34日目の血漿サンプルで決定された。表7に結果を示す(カラム7)。
【表7】
【0121】
ZTaq4:1−ABD:8匹のマウス(番号61〜68)に、スキーム1を用いてZTaq4:1−ABDを注射した。注射の前に(処理前血漿、データ示さず)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、上述の通りにZTaq4:1−ABD特異抗体の存在に関して解析した。図7に、その結果を示す。図7から明らかなように、ZTaq4:1−ABDに対して特異的IgGは、誘導されなかった。
【0122】
解析されたサンプルに、マウス血清アルブミン(MSA)が高レベルで存在する。ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISA表面に結合する可能性があるMSAの問題を回避するために、血漿サンプルも、His6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで滴定した(データ示さず)。解析は再び陰性であり、これは、ZTaq4:1−ABD分子は、非免疫原性であるという観察を追認するものである。
【0123】
4匹のマウス(番号86〜89)に、スキーム2に従ってZTaq4:1−ABDを注射した。注射の前に(処理前血漿、データ示さず)、および、7、14、21日、および34日間後に得られた血漿サンプルを、上述の通りにZTaq4:1−ABD特異抗体の存在に関して解析した。その結果を、図8に示す。再度、IgG応答は測定できなかった。
【0124】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表8に結果を示す。
【表8】
【0125】
ABD:8匹のマウス(番号69〜76)に、スキーム1に従ってABDを注射した。注射の前に(処理前血漿)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿を、上述の通りにABDに特異抗体の存在に関して解析した。34日目の血漿においてのみ、極めて少量のABD分子に対する抗体が検出された(図9A)。処理前血漿と7、14および21日目からの血漿は陰性であった(データ示さず)。
【0126】
4匹のマウス(番号90〜93)に、スキーム2に従ってABDを注射した。注射の前に(処理前血漿)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿を、上述の通りにABDに特異抗体の存在に関して解析した。抗体反応は測定できなかった(図9Bは、34日目のサンプルに関する結果を示す)。
【0127】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表9に結果を示す。
【表9】
【0128】
考察
実施例1の結果によれば、ZTaq4:1−ABDは、マウスにおいて特異的IgG応答を誘導することができなかった。同様に、融合パートナーなしのABDそのものの投与は、あらゆる測定可能な特異的IgG応答を惹起しなかった。これらのグループにおける動物に、実施例1の場合と同量のタンパク質を投与した。低い頻度の注射でも高い頻度の注射でも、検出可能なIgG応答は生じなかった。Zタンパク質およびその誘導体はT依存性抗原であると考えられるため、それらは、IgGアイソタイプの特異抗体を優勢に生成すると予想される。それゆえに、これらの結果からIgG抗体が形成されないことが示されたため、ZTaq4:1−ABD融合タンパク質に応答して、その他のいずれのアイソタイプの抗体も形成されないことを示す。
【0129】
実施例3
アルブミン結合性成分と共に提供されたZ変異体の多量体を投与した後のマウスにおける体液性免疫反応
研究される分子
実施例1および2と同様に、本発明の概念を、様々な分子を投与した際のマウスにおける抗体反応の比較によって再度研究した。投与された分子は以下の通りである:
His6−ZTaq4:5−実施例2で説明されている通り。比較のために使用された。
【0130】
ABD−Zher2:4−連鎖球菌のタンパク質GのG148株のアルブミン結合性ドメイン(ABD)(上記参照)と、Z変異体のZher2:4との融合タンパク質である。Zher2:4をZの変異体のコンビナトリアルライブラリーから選択し、特徴付けた。選択手法において、癌抗原HER2(また、文献では、neu、HER2/neuまたはc−erbB−2とも説明されている)に対応する精製タンパク質を、標的分子として用いた。Zher2:4は、約50nMのKD値でHER2と相互作用することがわかった。標準的な一文字表記によるZher2:4のアミノ酸配列は、以下の通りである:
VDNKFNKELR QAYWEIQALP NLNWTQSRAF IRSLYDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
【0131】
この融合タンパク質は、既知の分子生物学的手法に従って、ABD成分をコードするDNA配列と共に、それに対応するDNA配列の発現によって製造された。ABD−Zher2:4融合タンパク質を用いて本発明を説明する。
【0132】
ABD−(Zher2:4)2−Zher2:4配列情報の追加の知見と共に、既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体のZher2:4の二量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0133】
ABD−(Zher2:4)3−Zher2:4配列情報の追加の知見と共に、既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体のZher2:4の三量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0134】
ABD−(Zher2:4)4−Zher2:4配列情報の追加の知見と共に、既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体のZher2:4の四量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0135】
材料および方法
マウスおよび投与計画:雌NMRIマウス(マウス30匹,予備としてさらに2匹)をこの実験で用いた。到着時の体重は20gであった。免疫化実験の開始時点で、これらのマウスは、8〜12週齢であった。スウェーデン農漁食糧省からのガイドラインに従って、これらのマウスを維持し、エサを与えた。エサと水は、適宜与えた。免疫化実験のために、マウスを表10に従って5つのグループに分けた。表10に示された分子20μgを、0.1mlの0.9%NaClで各マウスに皮下投与した。
【表10】
【0136】
試験分子の溶液を−20℃で凍結保存し、注射の前に融解させた。グループ1のマウスに、実験の0、3、6、9、12および63日目に皮下注射を行なった(スキーム1)。実験の0(処理前血漿)、7、14、21、34、49および63日目に、血液サンプル150μlを、グループ1のマウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の73日目に、これらのマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。
【0137】
グループ2〜5のマウスに、実験の0、3、6、9、12および21日目に皮下注射を行った(スキーム2)。実験の0(処理前血漿)、7、14および21日目に、血液サンプル150μlを、グループ2〜5のマウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の34日目に、これらのマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。血液をK+EDTA試験管に回収し、サンプリング後1時間放置した。その後、サンプルを、血漿を分離するために6000rpmで6分間遠心分離した。解析まで、貯蔵のために血漿を−20℃で凍結した。
【0138】
特異的ELISAによる血漿サンプルの解析:一般的に、全てのインキュベート工程に、ウェルあたり体積100μlを用いた(ただしブロッキングには200μlを用いた)。ELISAプレート(コースター,番号9018)を、コーティングのために1〜3日間、ブロッキングと血漿のために1〜2時間、二次抗体のために1時間、および、基質溶液のために15分間インキュベートした。インキュベーションは、振盪機で、室温で行われた(ただし、コーティングは、4℃でインキュベートされた)。特に他の指定がない限り、全ての工程の間に、ウェルあたり4×350μlの洗浄緩衝液(PBS−T、実施例1を参照)で、ELISA Skan洗浄機300(スカトロン(Skatron))を用いて洗浄を行った。プレートを、テカン製のELISAリーダーで、マジェランv3.11ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。コーティング以外の全ての希釈にブロッキング緩衝液を用い、コーティングには、その代わりにコーティング緩衝液(15mMのNa2HCO3、35mMのNaHCO3,pH9.6)を用いた。
【0139】
ELISAプレートを、5μg/mlの濃度に希釈したHis6−ZTaq4:5、または、ABD−(Zher2:4)2でコーティングした。コーティング後に、プレートを、PBS+0.5%カゼイン(0.5%カゼイン(シグマ,カタログ番号C−8654)を含むPBS(2.68mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、137mMのNaCl、8.1mMのNa2HPO4,pH7.4))でブロックした。ブロッキングを除去し、血漿を添加し、1:100から連続3倍希釈した。His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿は、His6−ZTaq4:5でコーティングされたELISAプレートで解析し、それに対して、4種の異なるZher2:4コンストラクトが注射されたマウスからの血漿は、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した。また、これまで得られたマウス抗体のプールを含む標準も含めた。1:2000に希釈したZTaq4:5とZher2:4−HRP結合ヤギ抗マウスIgG(サザン・バイオテック,カタログ番号1031−05)に対して向けられたIgGを含むプールを、第二の試薬として用い、イムノピュア(R)TMB基質溶液(ピアース,カタログ番号34021)を用いて反応を展開した。このインキュベートを暗所で行った。ストップ溶液(2MのH2SO4;VWR,カタログ番号14374−1)の添加によって15分後に発色を止めた。
【0140】
結果
免疫化の前(処理前血漿)に、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、「材料および方法」の章で説明されている通りに特異抗体の存在に関して解析した。あらゆる処理前血漿において、注射された分子に特異抗体は、存在しなかった(データ示さず)。図10〜14に示される図表は、450nmでのOD値に対してプロットされた個々の血漿サンプルの滴定曲線を示す。
【0141】
His6−ZTaq4:5:その結果を、図10に示す。His6−ZTaq4:5が注射されたマウスは、高い抗体反応を示した。この応答は時間依存性であり、21日目にピークを示しているようであった。His6−ZTaq4:5を用いた前の実験(実施例2)は、一般的に、34日目でピークを示した。この実験において34日目のOD値がそれより低い理由は、これらの動物は21日目にブースター注射を受けていないことによる可能性が高かった。
【0142】
ABD−Zher2:4:図11に結果を示す。ABD−Zher2:4が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目および14日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0143】
ABD−(Zher2:4)2:その結果を、図12に示す。ABD−(Zher2:4)2が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0144】
ABD−(Zher2:4)3:その結果を、図13に示す。ABD−(Zher2:4)3が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0145】
ABD−(Zher2:4)4:その結果を、図14に示す。ABD−(Zher2:4)4が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0146】
また、4種の異なるABD−(Zher2:4)nコンストラクトの特異的IgM応答を惹起する能力も試験した。このような応答は検出されなかった(データ示さず)。
【0147】
考察
この実験の結果より、アルブミン結合性成分を提供することにより、生物学的に活性なタンパク質に対する免疫反応を減少させるか、または除去するという実施例1および2からの発見が確認された。重要なことには、この作用は、よりいっそう大きいサイズのタンパク質でも有効であることが示された。Zher2:4の四量体は、230個より多いアミノ酸残基を含むが、それにもかかわらず、そのサイズでも、マウスに投与した際に実質的な抗体反応を惹起しない。
【0148】
実施例4
さらなる生物学的に活性な分子の二量体で試験される免疫反応の減少
研究される分子
この研究の目的もまた、免疫化の後に生産された抗体が、特異的なアフィボディ(R)分子と、それらの標的タンパク質との結合を阻害することができるかどうかを評価することである。これまでの免疫反応における減少の観察は、生物学的に活性なタンパク質がアルブミン結合性ドメインにカップリングされている場合、2種のその他のアフィボディ(R)分子:(ZAβ3)2、および、ABD−(ZAβ3)2を用いて確認された。
【0149】
(ZAβ3)2−ブドウ球菌のタンパク質AのBドメインから誘導されたタンパク質Zの変異体の二量体である。ZAβ3変異体は、既知の分子生物学的手法に従って、それをコードするDNA配列の発現による組換えDNA技術を用いて生産された。比較のために使用された。
【0150】
ABD−(ZAβ3)2−既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体ZAβ3の二量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0151】
His6−ZTaq4:11−実施例1で説明されているhis−タグを有するタンパク質Zの変異体である。比較のために使用された。
【0152】
His6−ZTaq4:5−実施例2で説明されているhis−タグを有するタンパク質Zの変異体である。比較のために使用された。
【0153】
材料および方法
マウスに、2種の異なる二量体アフィボディ(R)分子、(ZAβ3)2、および、ABD−(ZAβ3)2を注射した。マウスからの血漿を、処理スキームの際に、および、ブースターの後に4回、以前と同様にして得て、アフィボディ(R)に特異的IgGの存在に関して解析した。その結果によれば、(ZAβ3)2が注射されたマウスは強いIgG応答を起こしたことが示された。抗体産生は約14日目に始まり、34日目でピークを示した。死亡時の採血における特異的IgGの平均濃度は、278μg/ml(ZAβ3)2であった。ABD−(ZAβ3)2で処理したマウスからの血漿中に特異抗体は検出されなかった。
【0154】
両方のマウスのグループからの、0日目および34日目の血漿中のIgGの総濃度を決定した。両方のグループにおいて、総IgGの濃度は、34日までに約2倍に増加した。
【0155】
抗(ZAβ3)2−抗体が、アフィボディ(R)分子と標的タンパク質との相互作用を中和することができるかどうかを試験するために、阻害−ELISAを設定した。その結果によれば、(ZAβ3)2に特異的なIgGは、(ZAβ3)2とβ−アミロイド40との相互作用を中和しなかったことが示された。
【0156】
マウスおよび投与計画
マウスを、スキームに従って(表11)、(ZAβ3)2、および、(ZAβ3)2−ABDで処理した。表12に、注射および採血スキームを示す。採血の22日後にグループ1中のマウス5が病気になり、実験からはずした。
【0157】
【表11】
【0158】
【表12】
【0159】
マウス血漿からのIgGの精製
(ZAβ3)2で免疫化されたマウスからプールした34日目(マウス番号5については21日目)の血漿から、総IgGを精製した。血漿プール2400μlをPBS−Tで5倍に希釈し(総量12ml)、その後、PBS−Tで予め平衡化させたZwt結合High−Trapカラム(L0091−98)にローディングした。カラムを吸光度がゼロに達するまで洗浄し、結合したIgGを、酸性溶出緩衝液(0.2Mグリシン,1mMのEGTA,pH2.8)を用いて溶出させた。中和するために、1Mトリス塩基を、最終濃度50mMまで添加した。溶出体積の1/10量の10×PBS(2.68mMのKCl,1.47mMのKH2PO4,137mM,NaCl,8.1mMのNa2HPO4,pH7.4,PBS−Tween(PBS−T),0.05%Tweenを含む1×PBS)を加えることによって、緩衝能力を回復させた。
【0160】
ELISA−プレート(96ウェル,平底の高い結合性のコースター番号9018)を、コーティング緩衝液で最終濃度2μg/mlに希釈した適切なアフィボディ(R)分子でコーティングした。ウェルあたり100μlのコーティング溶液を添加し、プレートを4℃で1〜3晩インキュベートした。次に、プレートを手動で脱イオン水で4回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1〜2時間ブロックした(0.5%カゼイン(シグマ),1×PBS中;200μl/ウェル)。ブロッキング緩衝液を除去し、血清100μlを、連続希釈して各ウェルに添加した。1時間インキュベートした後に、プレートを、自動ELISA−洗浄機または手動で、PBS−Tで4回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1:2000に希釈した第二工程の抗体であるHRP結合ヤギ抗マウスIgG100μlを各ウェルに添加した。その後プレートを1時間インキュベートした。プレートを4回PBS−Tで洗浄し、基質溶液100μl(イムノピュア(R)TMB)を各ウェルに添加し、続いて暗所でインキュベートした。ストップ溶液(2MのH2SO4)100μlの添加によって15分後に発色を止めた。プレートを、ELISAリーダーで、マジェラン・ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。
【0161】
マウス抗ZAβ3に特異的なIgGのELISA
プレートを、コーティング緩衝液中2μg/mlの(ZAβ3)2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、上述の通りにプレートをブロックした。(ZAβ3)2、または、ADB−(ZAβ3)2で免疫化したマウスからの血漿を連続3倍希釈(1/100から開始)で添加した。インキュベート後に、上述の通りにプレートを処理した。アフィボディ(R)に特異的なIgGの濃度を測定するために、標準血漿プールのシェーレ8プール(Scheele 8pool)を用いた。この血清プール中の抗ZIgGの濃度が、His6−ZTaq4:1でコーティングしたプレートで97μg/mlと決定された。シェーレ8プールにおける抗His6−ZTaq4:5、および、抗(ZAβ3)2IgGの濃度が、それぞれ291および97μg/mlと決定された(L0242−14/16)。ポジティブコントロールとして、本発明者らは、標準曲線の屈曲点に近いOD値を与えると予想されるマウス番号117からの血漿(シェーレ7;73日目,1:10,000の希釈で)を用いた。ネガティブコントロールは、ブロッキング緩衝液であった。検出限界は、3ng/mlであった。
【0162】
総IgG ELISA
両方のマウスグループからの0日目および34日目(マウス番号5については21日目)からの血漿をIgG総量に関して解析した。この分析において、ELISAプレートを、ヤギ抗マウスIgG−Fc抗体の(Fab)2フラグメント(サザン・バイオテック,番号1031−05 0.5μg/ml)でコーティングした。連続3倍希釈(それぞれ1:10000および100ng/mlから開始)の血漿または標準(マウスIgG)を、コーティングされたウェルに添加した。ヤギ抗マウスIgG−fab抗体のHRP結合(Fab)2フラグメント(0.2μg/ml)を用いて反応を展開した。基質溶液(イムノピュア(R)TMBピアース番号34021)を添加し、暗所で10分インキュベートした後に発色をストップ溶液の添加によって止めた。
【0163】
阻害ELISA解析
プレートを、コーティング緩衝液中2μg/mlの(ZAβ3)2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、上述の通りにプレートをブロックした。精製した抗(ZAβ3)2のIgGを連続3倍希釈(1μg/mlから開始)で添加した。1時間インキュベートした後に、ビオチン化したタンパク質β−アミロイド40を洗浄しないでウェルに添加した。β−アミロイド40バイオサイト(BioSite)A2275−74Dの最終濃度は、10μg/mlであった。さらに1時間インキュベートした後にプレートを洗浄し、解析する反応に応じて、ヤギ−抗マウスIgG HRP(Dako P0397,1/2000希釈)、または、ストレプトアビジン−HRP(1/5000希釈)のいずれかを添加した。最終的なインキュベートの後に、プレートを洗浄し、上述の通りに展開した。
【0164】
データ解析
ELISAリーダーソフトウェアとして、マジェラン(テカン)を用いた。その結果をデータ解析と発表のためにエクセルにエクスポートした。濃度決定のために、XLfitプログラム、式「用量反応−片側」、方程式205を用いた。毎日の加工したデータと測定タイプ(すなわちIgG、濃度など)を、エクセルファイルで示した。
【0165】
結果
アフィボディ(R)に特異的なIgG ELISAグループ1
6匹の(ZAβ3)2が注射されたマウスからの血漿を(ZAβ3)2でコーティングしたプレートで滴定した。全てのマウスが14日目までに応答したが、マウス5は極めて低い応答を示した。34日目に、最高の抗アフィボディ(R)−IgGレベルが観察された(図15)。34日目の特異的IgGの平均濃度は、278μg/mlであった(表13)。マウス番号5はあまりよく応答せず、死亡時の採血サンプルは21日目のものであった。0日目(すなわち投与前)からの血清サンプルでは、特異的IgG応答は、検出できなかった(データ示さず)。
【0166】
【表13】
【0167】
アフィボディ(R)に特異的なIgG ELISAグループ2
6匹のADB−(ZAβ3)2が注射されたマウスからの血漿を、(ZAβ3)2でコーティングしたプレートで滴定した。どの採血サンプルでも特異的IgG濃度は検出できなかった。(図16)。
【0168】
総IgGのELISA
マウス0日目および34日目(マウス番号5については21日目)両方のグループからの血漿を、(ZAβ:3)2でコーティングされたプレートで滴定した。表15で示されるように、総IgGの量は、両方のグループにおいて34日の期間までに増加した。しかしながら、0日目のレベルが驚くほど低いことを考慮すると、この増加は、マウスの生存中の特定の期間にわたる正常な増加を反映している可能性がある。ビヒクルマウスからの血漿は、適切なコントロールであったと思われる。
【0169】
【表14】
【0170】
阻害ELISA:標的タンパク質
アフィボディ(R)に特異的なIgG抗体が、標的タンパク質とアフィボディ(R)分子との相互作用を中和/阻害する可能性を、阻害ELISAで調査した。ELISAプレートを、上述の通りに(ZAβ3)2でコーティングした。グループ1の34日目からの血漿のプールから精製された総IgGを添加した。IgG抗体を3倍希釈(1μg/mlから)で添加した。この抗体を、コーティングされたアフィボディ(R)分子に1時間結合させ、その後、標的タンパク質β−アミロイド40を最終濃度10μg/mlまで添加した。この反応を、ストレプトアビジン−HRPを用いて展開し、(ZAβ3)2と標的タンパク質との相互作用を可視化した(青いライン)。IgG抗体とコーティングされたアフィボディ(R)分子との相互作用を、抗マウスIgG HRPで可視化した(図17)。具体的には、図17は、阻害ELISAの結果を示す。β−アミロイド40の存在または非存在下での、精製した(ZAβ3)2に特異的なマウス抗体のコーティングされた(ZAβ3)2への結合である。精製したIgGおよび標的タンパク質を、ストレプトアビジンHRPで展開した(◆)。精製したIgGおよび標的タンパク質を、抗マウスIgG HRPで展開した(■)。精製したIgGを、抗マウスIgG HRPで展開した(▲)。この実験を2回繰り返したところ、同じ結果が得られた。
【0171】
コントロールとして、滴定したIgG抗体を、標的タンパク質をまったく加えないでコーティングされたアフィボディ(R)分子と反応させた。図17はまた、抗マウスIgG HRPを用いたIgG−検出に関して、標的タンパク質が存在する場合と存在しない場合とで、OD値がほとんど同一であることを示す。これらの結果から、(ZAβ3)2に特異的なIgG抗体は、(ZAβ3)2とβ−アミロイド40との相互作用を阻害しないことが示される。
【0172】
実施例5
追加のマウス系統において試験された免疫反応の減少
実施例4で示されるように、本発明者らはこれまで、ZTaq4:1−ABDではなくHis6−ZTaq4:1が、非近交系のNMRIマウスで抗体反応を誘導することを観察してきた。この研究において、追加の非近交系のマウス系統(CD1)を試験し、その結果によれば、CD1マウスは、ZTaq4:1−ABDではなくHis6−ZTaq4:1を投与した場合、NM
RIマウスと同様に、特異的IgGを生産することによって応答することが示された。従って、ABDと融合したアフィボディ(R)分子(ZTaq4:1)の注射の際に観察された免疫不応答は、マウスにおける一般的な現象のようである。
【0173】
ABDで誘導された不応答の性質を、NMRIマウスでさらに解析した。マウスの4つのグループに、10回のアフィボディ(R)注射を行い、ここで5回目の注射の後に注射される分子を変えた(処理スキーム2に従って)。その結果によれば、ZTaq4:1−ABDに感作されたマウスは、抗原をHis6−ZTaq4:1にスイッチ切り替えた後に、アフィボディ特異的IgGを生産したことが示された(グループ4)。抗体産生は、His6−ZTaq4:1に切り替えた後、約14日目(これは、通常、実験未使用のマウスが抗体を生産するのに必要な日数である)に始まった。また、ZTaq4:1−ABD、および、His6−ZTaq4:1の混合物が投与される前にZTaq4:1−ABDに感作されたマウス(グループ5)も、アフィボディ(R)分子に対する特異的IgGの生産を開始した。グループ5において観察された特異的な応答は、グループ4で観察された応答よりも小さかったが、これは、グループ5は、注射されたHis6−ZTaq4:1の用量がグループ4と比較して半分しか投与されていないことによる可能性が高い。グループ6におけるマウスは、ZTaq4:1−ABDを投与する前にHis6−ZTaq4:1に感作され、この処理により、抗原の切り替え後に、タイターは時間と共に減少したものの継続的なアフィボディ(R)特異的IgGの生産が起こった。
【0174】
このシェーレ9実験は、主として:1)第二の非近交系のマウス系統(CD1)は、NMRIマウス(BT1−PAR07、BT11−PAR03)と同じようにABDと融合した、および、融合していないアフィボディ(R)分子を投与すると応答するかどうか、および、2)ZTaq4:1−ABD、それに続いてHis6−ZTaq4:1が注射された場合、マウスは、アフィボディ(R)特異的IgG応答を生成するかどうか、という2つの理由で行なわれた。後者の質問の答えによって、我々は、観察されたABDと融合したアフィボディ(R)分子に対する不応答は、能動的な抑制プロセスなのか、または受動的な抑制プロセスなのかを明確にすることができた。表16に、各動物グループにおいて用いられた分子を列挙し、表17および18に、2つの処理スキームを示した。図27Aに、この実験の設定を説明した。
【0175】
【表15】
【0176】
【表16】
【0177】
【表17】
【0178】
材料および方法
アフィボディ(R)ELISA
96ウェル、平底の、高い結合性のコースターELISAプレートを、コーティング緩衝液(10×コーティング緩衝液,150mMのNa2CO3,350mMのNaHCO3,pH9.6)で最終濃度5μg/mlに希釈したHis6−ZTaq4:1でコーティングした。ウェルあたりコーティング溶液100μlを添加し、プレートを4℃で1〜4晩インキュベートした。次に、プレートを手動で脱イオン水で4回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1〜2時間ブロックした(200μl/ウェル)。ブロッキング緩衝液を除去し、血漿100μlを各ウェルに添加し、ブロッキング緩衝液で1:100から連続3倍希釈した。アフィボディ(R)に特異的なIgGの濃度を測定するために、標準血漿プールのシェーレ6Bプールを用いた。この血漿プール中の抗His6−ZTaq4:1IgGの濃度は、120μg/mlと決定された。ポジティブコントロールとして、本発明者らは、標準曲線の屈曲点に近いOD値を与えると予想される、シェーレ7実験73日目のマウス番号118からの血漿を1:9200の希釈度で用いた。ネガティブコントロールはブロッキング緩衝液であった。
【0179】
2時間インキュベートした後に、プレートをPBS−T(リン酸緩衝生理食塩水(10×PBS),2.68mMのKCl,1.47mMのKH2PO4,137mMNaCl,8.1mMのNa2HPO4,pH7.4;PBS−Tween(PBS−T),0.05%Tweenを含む1×PBS)で4回洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS−Tween(PBS−T),0.05%Tweenを含む1×PBS)で1:2000に希釈した第二工程の抗体であるHRP結合ヤギ抗マウスIgG(100μl)を各ウェルに添加した。その後プレートを1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tで4回洗浄し、基質溶液(イムノピュア(R)1MB)100μlを、各ウェルに添加した。プレートを暗所でインキュベートし、15分後に、ストップ溶液(2MのH2SO4)100μlの添加によって発色を止めた。プレートを、ELISAリーダーで、マジェラン・ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。
【0180】
総IgGのELISA
血漿中の総IgGを決定するために、定量ELISAを行った。
アフィボディ(R)ELISAの手順と同じ手法を用いたが、以下の点で異なる:
ELISAプレートを、濃度0.5μg/mlのアフィニピュア(AffiniPure)(Fab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgGジャクソン(Jackson)115−006−008(Fcγ−フラグメント特異的)でコーティングした。第一および第二工程の希釈をPBS−T(カゼイン非含有)で行い、血漿の連続希釈は、1:10.000で開始した。標準IgGは、クロムピュア(ChromPure)マウスIgGジャクソン015−000−003(分子全体)であり、連続希釈は、100ng/mlから開始した。第二工程の抗体として、1:2000に希釈したペルオキシダーゼ標識アフィニピュアF(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(F(ab’)2−フラグメント特異的)ジャクソン115−036−006を用いた。
【0181】
データ解析
ELISAリーダーソフトウェアとして、マジェラン(テカン)を用いた。その結果を、データ解析と発表のためにエクセルにエクスポートした。濃度決定のために、XLfitプログラム、式「用量反応−片側」、方程式205を用いた。
【0182】
結果
処理スキーム1
グループ1および2は、CD1マウスで構成された。これら動物に、処理スキーム1に従って、His6−ZTaq4:1(グループ1)、または、ZTaq4:1−ABD(グループ2)のいずれかを注射した(表17)。His6−ZTaq4:1を特異的に認識するIgG抗体の検出のために、免疫化の前、その最中およびその後に得られた血液サンプルを、His6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで解析した。
【0183】
グループ1
予想通りに、His6−ZTaq4:1を注射した5匹のマウスは、IgG抗体を生産した。5匹のマウスは全て14日目までに応答し、34日目に最大限の抗アフィボディ(R)−IgG応答を示した(図18)。0日目(投与前)からの血漿中のサンプルにおいて、免疫反応は観察できなかった(データ示さず)。表19は、XLfitプログラムで計算された特異的IgG、および、総IgGの濃度を示す。34日目の特異的IgGの平均濃度は、85μg/mlであった。
【表18】
【0184】
グループ2
グループ2は、ZTaq4:1−ABDが注射された5匹のCD1マウスで構成された。図19に示す通りである。0日目(データ示さず)またはその他のあらゆるサンプリング日からの血漿中のサンプル中にも、特異抗体は検出できなかった。表20に、IgGの総濃度を示す。
【表19】
【0185】
処理スキーム2
グループ3〜6は、10回の注射を受けたNMRIマウスで構成された。グループ3は、全ての注射時にHis6−ZTaq4:1が投与されたが、その他のグループは、最初の5回の注射の後に抗原を切り替える注射スキームで処理された(処理スキーム2,表3.3)。免疫化の前、その最中およびその後に得られた血液サンプルを、His6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで、His6−ZTaq4:1IgG−に対して向けられた抗体に関して解析した。グループ3〜6のいずれの処理前血漿サンプルにも抗体反応性は見出されなかった(データ示さず)。
【0186】
グループ3
グループ3に、処理スキーム2に従ってHis6−ZTaq4:1を注射した(表18)。14日目から特異抗体産生を観察することができた。特異的IgGの濃度は長期にわたり増加し、死亡時の採血で最大値に到達した(図20)。表21に、これらのデータと総IgGの濃度を要約する。45日目での特異的IgGの平均濃度は、71μg/mlであった。
【表20】
【0187】
グループ4
グループ4には、最初の3週間は、ZTaq4:1−ABDの5回の注射が行われ、次に、His6−ZTaq4:1の5回のさらなる注射が行われた。これら動物は、最初の抗原のZTaq4:1−ABDには反応しなかったが、35日目からずっとHis6−ZTaq4:1に特異抗体を生じた。35日目は、注射されるアフィボディ(R)分子を切り替えてから14日目に相当する(図21)。表22に、これらのデータおよび総IgGの濃度を要約する。総IgG濃度は正常であった(ただし異常に高いタイターを有していたマウス159を除く)。45日目(死亡時の採血、および、切り替え後24日目)の特異的IgGの平均濃度は、4μg/mlであった。
【表21】
【0188】
グループ5
グループ5には、最初の3週間は、ZTaq4:1−ABDの5回の注射が投与され、続いて、ZTaq4:1−ABDとHis6−ZTaq4:1との混合物(10μg/タンパク質)の5回の追加の注射が投与された。最初の抗原(すなわちZTaq4:1−ABD)を注射した際の動物では、検出可能な免疫反応は存在しなかった。His6−ZTaq4:1の注射に切り替えた後に、35日目から低いレベルの特異的抗体を検出することができた(図22)。表23に、これらのデータと総IgGの濃度を要約する。45日目の特異的IgGの平均濃度は、0.8μg/mlであった。この反応は、グループ4よりも弱く、これは、より低い用量のHis6−ZTaq4:1による可能性が最も高い。
【表22】
【0189】
グループ6
グループ6には、最初の3週間は、5回のHis6−ZTaq4:1の注射が投与され、続いて、ZTaq4:1−ABDの5回の注射が投与された。その結果を図23で説明した。動物の免疫系は、正常な抗体反応速度論に従って、すなわち以前にHis6−ZTaq4:1の注射で観察されたのと同様に応答した。特異的IgG応答は、28日目で最大限に達し、抗原の切り替え後しばらくして減少した。表24に、これらのデータと総IgGの濃度を要約する。28日目の特異的IgGの平均濃度は62μg/mlであり、45日目における死亡時の採血では42μg/mlであった。
【表23】
【0190】
結果を図27Bで説明した。
【0191】
考察
この研究には2つ主な目的があり、より正確に言えば、a)追加の非近交系のマウスの系統におけるHis6−ZTaq4:1、および、ZTaq4:1−ABDの免疫原性を調査すること、および、b)ABDに融合したアフィボディ(R)分子の観察された不応答は、動物の免疫系の能動的な抑制に起因するものなのか、または、動物の免疫系の単に受動的な無視に起因するものなのかを決定すること、である。
【0192】
その結果によれば、非近交系のCD1マウスは、以前に研究したNMRIマウスと同様に、ZTaq4:1−ABDではなくHis6−ZTaq4:1を認識し、そして、それに結合する特
異抗体を生産することによって応答したことが示された。従って、ABDで誘導された不応答は、NMRI系にのみ関連する応答パターンではなく、一般的な現象のようである。
【0193】
上述したように、ABDが介在する不応答が能動的なプロセスなのか、または受動的なプロセスなのかを決定するために、グループ3〜6のマウスに、ABDに融合した、および、融合していないZTaq4:1の異なる組み合わせを注射した。グループ4および5のマウスに、5回のZTaq4:1−ABDを主に不応答を誘導する目的で注射し、それに続いて、5回のHis6−ZTaq4:1(グループ4)、または、His6−ZTaq4:1とZTaq4:1−ABDとの混合物(グループ5)を注射した。両方のグループは、His6−ZTaq4:1特異的IgG応答を生産することによって応答し、これは、ABDに融合したアフィボディ(R)分子を用いた注射は、免疫系によるタンパク質の能動的な抑制(すなわちアネルギー)を起こさないことを示唆している。この研究結果により、ABDに融合したアフィボディ(R)分子は、血清アルブミンに結合することによって能動的に抑制されるのではなくて、血清アルブミンに結合することによってマウスの免疫系に無視されることが強く示される。最初にHis6−ZTaq4:1が投与されたマウスは、ZTaq4:1−ABDに切り替えた後、レベルはわずかに減少したもののアフィボディ(R)特異的IgGを生産し続けた。
【0194】
実施例6
ラットにおける慢性的に投与された生物学的に活性な分子の免疫原性
この研究において、長期間にわたり異なるアフィボディ(R)分子が注射されたラットで生じた免疫反応を解析した。この報告は、免疫化してから96日間までのデータを網羅する。用いられた分子は、実施例4で述べた通りの(ZAβ3)2、および、ABD−(ZAβ3)2であった。この研究の目的は、1)ラットにおいて特異的な免疫反応を誘導する(ZAβ3)2の能力を解析すること、および、2)ABD−(ZAβ3)2が、ABDを有しないアフィボディ(R)分子より低い免疫反応を示すかどうかを調査すること、である。免疫化スキームの前に、免疫化スキームの最中に9回、および、最後の注射の後に得られた血液サンプルを、反応性に関して解析した。(ZAβ3)2でコーティングされたプレートで、結果によれば、(ZAβ3)2の投与により、IgG応答が起こり、個体間で大きなばらつきがあったが長期にわたり増加したことが示された。それに対して、ABDに融合した(ZAβ3)2分子が注射された全てのラットからの血清中に特異的IgGは検出不可能であったか、または、極めてわずかであった。加えて、ラットにおいて副作用はみられなかった。
【0195】
方法
一般的なELISA方法
一般的に、全てのインキュベート工程に、体積100μl/ウェルを用いた(ただし、ブロッキングには体積200μlを用いた)。プレートを、コーティングのために1日、ブロッキングおよび血漿のために1〜2時間、第二工程の抗体のために1時間、および、基質溶液のために10分間インキュベートした。インキュベーションを室温で行った(ただし、コーティングには、4℃でインキュベートした)。全ての工程の間に、特に他の指定がない限り、ELISA Skan洗浄機300を用いて、洗浄緩衝液(PBS−T)4×350μl/ウェルを用いて洗浄を行った。プレートを、テカン製のELISAリーダーで、マジェラン・ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。全ての希釈にPBS−T緩衝液を用いた(ただし、コーティングには、その代わりにコーティング緩衝液を用いた)。
【0196】
ラット抗(ZAβ3)2に特異的なIgG ELISA
プレートを、コーティング緩衝液中2μg/mlの(ZAβ3)2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、上述の通りにプレートをブロックした。(ZAβ3)2、または、ABD−(ZAβ3)2が注射されたウサギからの血清を連続3倍希釈(1/
10から開始)で添加した。インキュベート後に、プレートを洗浄し、1:6000に希釈したHRP結合ヤギ抗ラットIgG、サザン・バイオテクノロジー(Southern Biotechnology)3050−05を添加した。最終的なインキュベートの後に、プレートを洗浄し、上述の通りに展開した。
【0197】
データ解析
ELISAリーダーソフトウェアとして、マジェラン2(テカン)を用いた。データ解析と発表のために、その結果をエクセルにエクスポートした。濃度決定のために、Xlfit3.0プログラム、式「用量反応−片側」、方程式205を用いた。毎日の加工したデータ、および、測定のタイプ(すなわちIgG、濃度など)を、エクセルファイルで示した。
【0198】
結果
処理および注射スキーム
2つのラットのグループ(1グループあたり10匹)に、同じ用量のアフィボディ(R)分子(200μg/ml)をほぼ28日間毎日注射した。注射スキームの前(0日目)、スケジュールに従って注射スキームの最中、および、最後の注射から2週間後(死亡時の採血)に、血清を採取した。
【0199】
【表24】
【0200】
【表25】
【0201】
(ZAβ3)2およびABD−(ZAβ3)2の注射
個々のラットからの血清サンプルを、連続3倍希釈で、(ZAβ3)2でコーティングされたELISAプレート上で滴定し、方法の章で説明されている通りに、特異抗体の存在に関して解析した。
【0202】
滴定曲線,(ZAβ3)2
図24で示されるように、(ZAβ3)2が注射されたグループ1のラットからの血清は、免疫化から最初の2週間は、応答を示さないか、または、低い応答しか示さなかった。14日後に、抗体のタイターが徐々に増加し、広い範囲で応答を示した。96日後に、全てのラットが応答した(ただし、それでも応答の規模は個々の動物間で差があった)。
【0203】
滴定曲線,ABD−(ZAβ3)2
図25で示されるように、ABD−(ZAβ3)2が注射されたグループ2のラットの血清は、(ZAβ3)2でコーティングしたプレートで試験した場合、注射スキームの最初の96日間は、一貫して抗体反応を示さないか、または、低い抗体反応しか示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図2】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図3】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿から精製されたIgGに関するELISA滴定曲線を示す。
【図4】ストレプトキナーゼが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図5】His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図6】His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図7】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図8】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図9】スキーム1(パネルA)、または、スキーム2(パネルB)に従って、ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図10】His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図11】ABD−Zher2:4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図12】ABD−(Zher2:4)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図13】ABD−(Zher2:4)3が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図14】ABD−(Zher2:4)4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図15】(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図16】ABD−(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図17】実施例4で説明されている阻害ELISA実験の結果を示す。
【図18】His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図19】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図20】His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図21】ZTaq4:1−ABD、次にHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図22】ZTaq4:1−ABD、次にZTaq4:1−ABDとHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図23】ZTaq4:1、次にZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図24】(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図25】ABD(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図26】本発明に係る様々なコンストラクトの配列を示す表である。
【図27】Aは、実施例5の設定の要約であり、Bは、実施例5で得られた結果を説明している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的に活性なタンパク質の免疫原性を減少させる方法および使用に関する。特に、本発明は、医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質部分と、アルブミン結合性部位とを含む分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血清アルブミン
血清アルブミンは、哺乳動物の血清中の最も豊富なタンパク質であり(ヒトにおいて、40g/1;約0.7mM)、その機能の1つは、脂質やビリルビンのような分子に結合することである(Peters T,Advances in Protein Chemistry 37:161,1985)。血清アルブミンの半減期は、動物の大きさに正比例し、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)は、19日間の半減期を有し、ウサギ血清アルブミンは、約5日間の半減期を有する(McCurdy TR等,J Lab Clin Med 143:115,2004)。ヒト血清アルブミンは、体内に広く分布しており、特に、主として浸透圧モル濃度の維持に関与する腸および血液の区画に分布している。構造的に、アルブミンは、3つの相同ドメインを含み、総計584または585個のアミノ酸からなる単鎖タンパク質である(Dugaiczyk L等,Proc Natl Acad Sci USA 79:71(1982))。アルブミンは、17個のジスルフィド架橋、および、1個の反応性チオール、Cys34を含むが、Nと結合した、および、Oと結合した炭水化物成分を有しない(Peters,1985,上記;Nicholson JP等,Br J Anaesth 85:599(2000))。糖鎖付加の欠如が、アルブミンの組換え発現を簡単にしている。アルブミンは、この特性と、三次元構造が既知であることによって(He XMおよびCarter DC,Nature 358:209(1992))、組換え融合タンパク質に使用する魅力的な候補である。このような融合タンパク質は、一般的に、単一のポリペプチド鎖中で、治療用タンパク質(これは、タンパク質そのものを投与すると体から迅速に排除されると予想される)と、血漿タンパク質(これは、自然な遅いクリアランスを示す)とが組み合わされたものである(Sheffield WP,Curr Drug Targets Cardiovacs Haematol Disord 1:1(2001))。このような融合タンパク質は、必要な注射の回数を減らし、かつ、インビボで治療用タンパク質がより高レベルであるという点で、臨床上の利点を提供する可能性がある。
【0003】
HSAとの融合または結合により、インビボでのタンパク質の半減期が長くなる
血清アルブミンは、あらゆる酵素的または免疫学的な機能を欠いているため、生物活性ポリペプチドにカップリングされると望ましくない副作用を示さないと予想される。その上、HSAは、多数の天然の分子、同様に治療的な分子の内因性の輸送および送達に関与する天然のキャリアーである(Sellers EMおよびKoch−Weser MD,Albumin Structure,Function and Uses,Rosenoer VM等編(Pergamon,Oxford,p159(1977))。血清アルブミンに直接的に、または、インビボで血清アルブミンに結合が可能と予想されるペプチドもしくはタンパク質に、タンパク質を共有結合でカップリングさせる方策が数種報告されている。後者のアプローチの例は、例えば、EP486525およびUS6267964、WO01/45746、ならびに、Dennis等,J Biol Chem 277:35035〜43(2002)で説明されている。最初の2つの文献は、具体的には、その他のタンパク質の半減期を高めるための、連鎖球菌のタンパク質G(SpG)から誘導されたアルブミン結合性ペプチドまたはタンパク質の使用を説明している。この考え方は、バクテリア由来のアルブミン結合性ペプチド/タンパク質を、血液中で迅速に排除されることが示されている治療上興味深いペプチド/タンパク質に融合させることである。このようにして生成した融合タンパク質は、インビボで血清アルブミンに結合し、そして、それらのより長い半減期による利点のために、この融合した治療上興味深いペプチド/タンパク質の正味の半減期が増加する。WO01/45746およびDennis等は同じ概念に関するが、そこで著者らは、血清アルブミンに結合させるために、比較的短いペプチドを利用している。このようなペプチドは、ファージ提示法によるペプチドライブラリーから選択されている。Dennis等は、初期の研究で、連鎖球菌のタンパク質Gのアルブミン結合性ドメインのヒト1型補体受容体への組換え融合体に対する免疫反応の強化を見出したことを述べている。また、米国特許出願第2004/0001827号(Dennis)は、腫瘍を標的にするための生物活性化合物と結合させた血清アルブミンに結合する、ファージ提示法によって再度同定されたペプチドリガンドを含むコンストラクトの使用も開示している。このようなコンストラクトは、改善された薬物動態学的および薬力学的な特性を有すると言われているが、その文書において、上記コンストラクトの免疫原性が、結合させていない生物活性化合物と比較して減少するという開示も示唆もない。さらなる血清アルブミン結合性の結合体分子が望ましいという示唆はない。
【0004】
その代わりとして、問題の治療上興味深いペプチド/タンパク質はまた、血清アルブミンに直接融合させることもでき、これは、上述した通りであり、さらに、Yeh等(Proc Natl Acad Sci USA 89:1904(1992))、および、Sung等(J Interferon Cytokine Res 23:25(2003))によって説明されている。Yeh等は、CD4の2つの細胞外Ig様ドメイン(V1およびV2)のHSAへの結合を説明している。HSA−CD4結合体はCD4の保持された生物活性を有するが、実験ウサギモデルで、半減期がCD4単独と比較して140倍増加したことが報告されている。溶解性CD4単独では、0.25±0.1時間の排出半減期を有するが、それに対して、HSA−CD4の排出半減期は、34±4時間であると報告されている。また、Sung等(上記)によって概説されているように、インターフェロンβ(IFN−β)がHSAへ結合する際の排出半減期の延長も観察された。ここで、霊長類においてIFN−β−HSA複合体を評価し、IFN−βの半減期が、単独の場合は8時間であったが、HSAに結合された場合は36〜40時間に増加することが報告されている。
【0005】
連鎖球菌のタンパク質Gのアルブミン結合性ドメイン
連鎖球菌のタンパク質G(SpG)は、連鎖球菌属のある特定の株の表面に存在する二官能性の受容体であり、IgGと血清アルブミンの両方に結合することができる(Bjoerck L等,Mol Immunol 24:1113(1987))。その構造は、数種の構造的かつ機能的に異なるドメインの高度な繰り返しである(Guss B等,EMBO J 5:1567(1986))。より正確には、SpGは、1つのIg結合性モチーフと、3つの血清アルブミン結合性モチーフとを含む(Olsson A等,Eur J Biochem 168:319(1987))。
【0006】
アルブミン結合性タンパク質BBは、連鎖球菌のタンパク質Gから誘導されたものであり、これは、214個のアミノ酸残基を有し、さらに、SpGのアルブミン結合性モチーフの約2.5を含む(Nygren P−Å等,J Mol Recognit 1:69(1988))。これまでに、BBは、強力なワクチンを作製するという目的で、ペプチド免疫原のための融合パートナーとしての高い適正を与える数種の特性を有することが示されている。例えば、BBは、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のマラリア抗原Pf155/RESA(M3)(Sjoelander A等,J Immunol Meth 201:115(1997))から、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)(長い)Gタンパク質フラグメント(G2Na)に至る繰り返し構造と融合させている(Power UF等,Virol 230:155(1997))。BB−M3とBB−G2Naはいずれも、数種の動物モデルにおいて、両方の免疫原融合成分に対して、強力かつ長期にわたる抗体反応を開始させることができる。ウサギにおいて、BB−M3は、免疫刺激複合体(iscom)に共有結合した後に抗体の高いタイターを誘導し(Sjoelander A等,Immunometh 2:79(1993))、マウスにおいて(上記のSjoelander等,1997)、および、ヨザル(Aotus monkeys)において(Berzins K等,Vaccine Res 4:121(1995))免疫原性である。観察された作用は、有力なアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント(FCA)の存在下で観察された。その上、BB−G2Naは、マウスとヒトの両方において、検出可能な防御性の抗体反応を誘導した(上記のPower等,1997,Power UF等,J Infect Dis 184:1456(2001))。BB−M3に一致して、この作用は、強力なアジュバント(この場合マンニトール、および、リン酸アルミニウム)の存在下で観察された。
【0007】
A3、ABD3または単にABD(「アルブミン結合性ドメイン」)と命名された、SpGの血清アルブミン結合性モチーフのうち1つの構造が決定されている(Kraulis PJ等,FEBS Lett 378:190(1996))。この研究により、驚くべきことに、構造がブドウ球菌のタンパク質AのIg結合性ドメインに類似した3−へリックスバンドルドメインが解明された。SpGドメインABDは、46個のアミノ酸に相当する。
【0008】
SpGのアルブミン結合性部位は、Goetsch等によって説明されているようにして、厳密にエピトープマッピングされている(Clin Diagn Lab Immunol 10:125(2003))。
【0009】
その他のアルブミン−結合性ドメイン
アルブミン結合性タンパク質は、その他の細菌に見出される。例えば、天然に存在するアルブミン結合性タンパク質としては、グラム陽性細菌由来の所定の表面タンパク質、例えば連鎖球菌のMタンパク質(例えば、M1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49およびタンパク質H)、連鎖球菌のタンパク質G、MAGおよびZAG、ならびに、ファインゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)(以前は、ペプトストレプトコッカス・マグヌス(Peptostreptococcus magnus))の所定の株由来のPPLおよびPABが挙げられる。Navarre WWおよびSchneewind Oによるグラム陽性表面タンパク質の総論(Microbiol Mol Biol Rev 63:174〜229(1999))、および、そこに記載された参考文献を参照。これらのタンパク質のうちのいくつかによるアルブミン結合性の特徴が、例えばJohansson MU等(J Biol Chem 277:8114〜8120(2002));Linhult等(Prot Sci 11:206〜213(2002)、および、Lejon S.等 J.Biol.Chem.279,41,2004,42924〜42928)によってさらに解明されている。
【0010】
免疫原性の臨床上の意義
最も生物学的に活性なタンパク質(程度の差はあるが問題の種のタンパク質と同一なタンパク質など)は、かなりの割合の被験体において、投与すると抗体反応を誘導する。免疫原性に寄与する主要な因子は、外来のエピトープ、例えば新規のイディオトープ、異なるIgアロタイプまたは非自己配列、不純物の存在、および、タンパク質凝集体の存在である。ほとんどの場合において、このようにして誘導された抗体は、生物学的または臨床的な作用を有さない。臨床的な作用が観察される場合、最も一般的なことは、生物製剤の有効性の損失である。
【0011】
しかしながら、より重篤な有害反応を示すケースが報告されている。このような場合において、タンパク質製剤に対して発生した抗体は、内因性タンパク質と交叉反応する。このような例として、エリスロポイエチンがある。エリスロポイエチンをヒトに投与すると、免疫反応が誘導され、それにより患者は赤芽球癆を発症する(Casadevall N等,New Eng J Med 346:469(2002))。生成した特異抗体は高い親和性を有しており、その他の形態のエリスロポイエチン、例えばEprex(R)、Epogen(R)、および、NeoRecormon(R)と交叉反応することも示され、すなわちこれは、その反応性は、エリスロポイエチン活性部位のコンフォメーションに対して向けられる可能性が最も高いことを示す。その他の例は、トロンボポイエチンであり、これをヒトに投与すると中和抗体が生産される。この抗体は内因性トロンボポイエチンの活性を阻害し、それにより自己免疫性血小板減少症が発症する(Koren E等,Curr Pharm Biotech 3:349(2002))。
【0012】
生物製剤の臨床用途は免疫反応を惹起することが多いことを考えれば、免疫原性は、全ての生物製剤学的な製品の開発の際に扱うべき危険因子である。上述のエリスロポイエチンとトロンボポイエチンの他にも、数種のその他の生物製剤も、患者において免疫反応を誘導することが報告されている。例えば、毛様体神経栄養因子(CNTF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、成長ホルモン(GH)、インスリン、および、インターフェロンβ(IFN−β)である。なぜ上記のタンパク質が、治療した患者において抗体を生産することが観察されるかの理由は、生成物に応じて様々である。より正確には、インスリンの免疫原性における主要な因子は、アジュバントとして作用するタンパク質不純物が存在することのようであり、それに対して、IFN−βの場合、主要な因子は、細菌の宿主細胞中でタンパク質が生産される場合の糖鎖付加の欠如、および低い溶解性による集合体の存在と考えられていた(Karpusas M等,Cell Mol Life Sci 54:1203(1998))。組換えヒトGHが出現する前は、ヒト死体からのGHを用いて、子供のGH欠乏症を治療した。主としてタンパク質不純物が高含量であったことにより、この子供達の45%が、この最初の産物の発生に対する抗体を生産した(Raben MS,Recent Prog Horm Res 15:71(1959))。組換えGHの場合、E.コリ(E.coli)における生産を可能にする特別なメチオニン残基を含む組換えGHを患者に投与したところ、抗体が8.5%に減少する現象が起こった(Okada Y等,Endocrinol Jpn 34:621(1987))。ホモ結合型のGH欠失突然変異体を有する双子を、上記治療用タンパク質で処理したところ、1組の双子しか組換えGHに対する抗体を生産しなかったことから判断すれば、GHの免疫原性は、自己タンパク質に対する同一性のパーセントまたは免疫寛容の欠如より複雑である(Hauffa BP等,Acta Endocrinol 121:609(1989))。CNTFは運動ニューロンの生存を強化すると考えられていることから、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹った患者を治療するための組換えヒトCNTFを生産した。遺憾ながら、これらの患者の90%より多くが、処理の2週間後に、抗CNTF抗体陽性であることが試験された。治療用タンパク質の臨床的な作用は、1995年のALS CNTF研究グループの報告(Clin Neuropharmacol 18:515(1995))により示されたように、特異抗体によって著しく阻まれる。トランケーションされたC末端を含み、ペグ化された第二のCNTF生産は、現在のところ、開発中である。
【0013】
その上、治療用抗体分子の免疫原性は、多くの病気の治療におけるそれらの広範かつ繰り返しの適用を著しく限定する重要な問題である。
【0014】
免疫原性を減少させる異なる方策
それゆえに、タンパク質の免疫原性を減少させる技術が必要である。実際には、タンパク質製剤は、天然に存在するタンパク質に比べてアミノ酸配列が改変されているか、または、被験体にとって異種のアミノ酸配列で全て構成されることがますます一般的になりつつあるため、このような技術の重要性は高まっている。免疫原性を防ぐ重要な方法の1つは、混入したアジュバントを含まない、可溶性の凝集していない天然型のタンパク質が生成されるように、生物製剤学的なタンパク質の生産、精製および配合を最適化することによる方法である。精製および配合を改善することによる、ヒト成長ホルモン(Moore WV等,J Clin Endocrin Meth 51:691(1980))、および、インターフェロン−α2a(Hochuli E,J Inter Cyto Res 17:15(1997))のようなタンパク質の免疫原性の減少に関する数々の報告がある。
【0015】
免疫原性を改変するその他の方法は、問題のタンパク質の実際の配列または構造に対して向けられており、これはしばしば、「脱免疫化(deimmunization)法」と称される。このような方策の例は、エピトープの中和、遺伝子シャッフリング、化学修飾および免疫寛容である。エピトープの中和は、インシリコおよび/またはインビトロでの方法を用いた優勢のTおよび/またはB細胞エピトープの合理的な同定、それに続いて、優勢なエピトープが除去され、願わくば減少した免疫原性が得られるような強調表示された配列のデザイン変更を含む(Stickler MM等,J Immunother 6:654(2000);米国特許出願公開番号2003/0166877)。脱免疫化および遺伝子シャッフリングのその他の例は、抗体分子のヒト化である(Kuus−Reichel K等,Clin Diagn Lab Immunol 1:365(1994))。その免疫原性は、マウス抗体から、キメラ抗体、完全ヒト抗体に至るまで落ちることが報告されている。DNA遺伝子シャッフリングを用いたヒトタンパク質の進化は、遺伝子の秩序だったキメラを生成するための相同性依存性のDNAフラグメント組換えを含む。遺伝子シャッフリングは、免疫原性が減少し、かつ生物活性が保持されたタンパク質を探すのに有用であり得る(Pavlinkova G等,Int.J Cancer 94:717(2001))。
【0016】
タンパク質の抗原性(既存の抗体に結合すること)、および、免疫原性(新しい免疫反応を誘導する能力)を改変するその他の方法は、タンパク質を化学修飾することである。化学修飾は、共有結合したポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)(Molineux G,Pharmacother 23:3(2003))、および、デキストラン(Kobayashi K等,J Agric Food Chem 49:823(2001))を用いて、または、無水コハク酸を用いた正電荷の中和を行うことによって達成することができる。PEGは、非毒性で高い可溶性を有する分子であり、これは、それらに共有結合したタンパク質のインビボでの半減期を増加させること、および、このようなタンパク質の免疫原性を減少させることが示されている(Molineux G,上記)。PEGアプローチは、一般的にタンパク質の「ペグ化」と称される。
【0017】
免疫寛容の誘導は、治療分子に化学的な付加がなされないため、免疫反応を防ぐためのペグ化よりも許容できる手段を提供する。同じ製薬でも、例えばより優れた患者のコンプライアンスを保証するものが投与される。このアプローチは、例えば、血友病Aに罹った患者に第VIII因子を投与することに関して試されてきた。血友病Aを治療するために第VIII因子を使用する際の合併症の1つは、治療用タンパク質に対する阻害抗体の生成であり、これは、全ての患者の約三分の一で観察される(Scharrer I,Haemophilia 5:253(1999))。免疫反応を限定しようとする努力において追求される1つの方策として、数ヶ月から数年の期間投与されると予想される免疫抑制剤を併用した多い用量の第VIII因子の毎日の注射がある。
【0018】
現在の免疫原性を減少させる方策の欠点
免疫原性を減少させる異なるアプローチの欠点がいくつかある。1つには、薬物の有効性に必須の活性部位を妨害することなく、共有結合によるPEG分子のタンパク質への付着を達成することが難しい。これを回避することが、ペグ化における主要な課題である。ペグ化した生成物の品質には大きなばらつきがあり、さらに、以下のような多数の因子が、このばらつきの一端を担っていることが示されている:PEGとタンパク質との間のリンカーの存在または非存在;PEG、リンカーおよびタンパク質の間の結合の性質および安定性;得られたペグ化したタンパク質の表面電荷へPEGが付着することの影響;カップリング条件;均一な生成物を提供するための必要条件;および、活性化されたポリマーの関連する毒性。その上、生物活性の保存に関して優れた結果を達成するために、プロトタイプの方法の著しい改変、さらには生物学的な最適化プロセスの著しい改変が、必要とされてきた。あらゆる活性の減少は、治療用量を増加させることによって対処してきたが、それにより再びこれら分子に対する免疫反応の危険が増加する。ペグ化アプローチのその他の欠点は、ペグ化した治療剤は、1ヶ月あたり患者1人あたり推定でUSD1000まで治療費を増加させることである。治療用タンパク質分子の薬理学的および免疫学的な特性の改善に関して、PEG以外にポリマーでは、ほとんど成功していない(Burnham NL,Am J Hosp Pharm 51:210(1994))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、治療用抗体分子の免疫原性は、ヒト化アプローチを用いて対処されてきた。ヒト化は、いくつかのマウス抗体、例えばいくつかの乳ガンの治療に承認されているハーセプチン(Herceptin(R))ではよく作用している。その他の場合において、ヒト化抗体、例えばリウマチ様関節炎の治療に用いられるキャンパス(Campath(R))−1Hは、それでもなお、治療された患者の60%において免疫反応を誘導する。加えて、動物実験からのデータによれば、齧歯類は、同じ種および系統由来の抗体に、明らかに寛容ではないことが示され(Cobbold SP等,Meth Enzym 127:19(1990))、さらに、完全ヒト抗体は、その他のあらゆる抗体と同様に抗イディオタイプ抗体を誘発する可能性を有すると考えられる。
【0020】
その上、「脱免疫化」アプローチ、例えばTおよびB細胞エピトープの標的化された除去は、一般に思われているほど些細ではない。インシリコでのエピトープ予想に利用可能なアルゴリズムは、信頼できない場合がある。B細胞エピトープを予想する場合、このようなエピトープは、かなりの程度、立体配座のエピトープであるため、アルゴリズムを用いて予想することは極めて難しい。一方で、T細胞エピトープは、直鎖状であるが、これは、現存するインシリコツールがより信頼できることを意味する。遺憾ながら、ほとんどのアルゴリズムは、主要組織適合複合体(MHC)クラスI関連ペプチドを同定するのには適しているが、MHCクラスII関連ペプチドを同定するのには適していない。後者は、ヘルパーT細胞の活性化により関連しているため、これは、抗体反応の減少を探す場合、欠点である。その上、MHC分子の多数の多型が、イムノインフォマティクスを用いて、あらゆる所定のタンパク質抗原のT細胞エピトープの大半を予測することを難しくしている。イムノインフォマティクスによって同定されたエピトープは、例えばインビトロでのヒトT細胞刺激分析での実証研究によって常に検証すべきであることを念頭に置くことが重要である。その理由の1つは、免疫原性ペプチド(すなわちT細胞エピトープ)のMHCクラスII分子への結合は、そのペプチドに対する特異性を有する所定のT細胞抗原受容体による認識を確認するには十分ではないことである。T細胞エピトープとB細胞エピトープの両方を同定するのに必要な研究は、時間がかかり、同様に、実験的に難しい。
【0021】
異なる治療剤(例えば上記で例示された第VIII因子)に対する耐性の誘導に関与する主要な不利益は、免疫抑制剤を用いた長期治療の作用(例えば免疫系を抑制した後の感染への感受性や、上記抑制剤の潜在的毒作用)、および、付随する高いコストである。小児患者における第VIII因子に対する免疫寛容の誘導の費用は、ほぼ1百万USドル
と推定されている。
【0022】
生物製剤および生物活性を有するその他のタンパク質の免疫原性を減少させる方策があるにもかかわらず、これらの方策のなかで、免疫原性の減少または除去が要求される全ての状況においてそれ自身有用であることが証明されたものはない。従って、この問題への補足的なアプローチの必要性が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、この必要性を、哺乳動物の被験体にタンパク質を投与した際の、タンパク質の免疫原性に関連する問題を回避するための新しい方法を提供することによって満たすことである。
【0024】
本発明の関連する目的は、投与された生物製剤またはタンパク質薬に対する抗体の生成を減少させるか、または、理想的には完全に回避することである。
【0025】
本発明のその他の目的は、新規の目的のために、哺乳動物の血液において豊富な血清アルブミンを利用することである。
【0026】
これらの目的、および本明細書での開示より当業者には当然であるその他の目的を考慮して、本発明は、その様々な観点で、免疫原性の問題を解決するための従来既知の方法に、驚くべき別法を提供する。
【0027】
従って、一形態において、本発明は、生物学的に活性なタンパク質そのものを哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、哺乳動物に投与する際に免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少される医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子(「本発明の分子」)の使用を提供する。
【0028】
その他の形態において、本発明は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発された免疫反応を減少させるか、または除去する方法を提供し、本方法は、該ポリペプチドを哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分にカップリングさせて分子を形成し、該哺乳動物に該分子(「本発明の分子」)を投与することを含む。
【0029】
さらにその他の観点において、本発明は、非ヒトまたはヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する方法における良法を提供し、ここにおいて、本良法は、生物学的に活性なタンパク質から誘導される少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子(「本発明の分子」)を投与することを含み、それによって、該分子は、生物学的に活性なタンパク質それのみからなる化合物と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、減少した免疫反応を惹起する。
【0030】
本発明のその他の形態において、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子(「本発明の分子」)が提供され、本分子は、哺乳動物に投与する際に、該生物学的に活性なタンパク質それのみを該哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、減少した免疫反応を惹起する。
【0031】
本発明はまた、このような分子と、製薬上許容できるキャリアーとを含む組成物、および、医薬品の製造におけるこのような分子の使用を提供する。
【0032】
本発明の様々な形態を基礎として、驚くべきことに、本発明者等により、生物学的に活性なタンパク質を血清アルブミンへの親和性を有する成分に共有結合でカップリングすることによって、生物学的に活性なタンパク質に対する免疫反応を実質的に減少させるか、または、さらに除去することが実行可能であることが示された。このようにして得られた分子を哺乳動物に投与することによって誘発された免疫反応は、共有結合でそれらにカップリングされたアルブミン結合性成分を有しない生物学的に活性なタンパク質を投与することによって誘発された免疫反応と比較して、顕著に減少する。実際に、これは、生物学的に活性なタンパク質またはペプチドをアルブミン結合性成分にカップリングする従来技術で示される唯一の免疫学的な作用は、アジュバントの存在下で(発明の背景を参照)アルブミン結合性タンパク質BBにカップリングされた免疫原に対する抗体の生成の増加であるということを特に考慮すると、驚くべき観察である。
【0033】
本発明の一実施形態において、上記の減少した、または除去された免疫反応は、体液性免疫反応である。この実施形態において減少した、または、除去された体液性免疫反応は、例えば抗体(特にIgGアイソタイプ)の生産であり得る。
【0034】
いかなる特定の理論に縛られることは望まないが、分子を被験体哺乳動物に投与した後、体内で分子と血清アルブミンとが結合することによって、被験体の免疫系は、上記分子への免疫反応が生じないように分子を無視するようになると考えられている。アルブミンの結合の平衡は、分子とアルブミンとの複合体の方に極端にシフトする可能性が高い。
【0035】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、タンパク質またはペプチドが可能であり、例えばポリペプチド、または、オリゴペプチドである。
【0036】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、血清アルブミンと相互作用する望ましい能力を有する天然に存在するポリペプチドであり得る。また、このような天然に存在するポリペプチドのフラグメントまたは誘導体も、アルブミン結合性成分として用いることができ、ただし、当然ながら、このようなフラグメントまたは誘導体において、アルブミンと結合する能力は、少なくとも部分的に保持される。アルブミン結合活性を有する天然に存在するポリペプチドの非限定的な例としては、グラム陽性細菌由来の所定の表面タンパク質、例えば連鎖球菌のMタンパク質(例えばM1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49、および、タンパク質H)、連鎖球菌のタンパク質G、MAGおよびZAG、ならびに、ファインゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)(以前は、ペプトストレプトコッカス・マグヌス)の所定の株由来のPPL、および、PABが挙げられる。Navarre WWおよびSchneewind Oによるグラム陽性表面タンパク質の総論(Microbiol Mol Biol Rev 63:174〜229(1999))、および、そこに記載された参考文献を参照。さらに、これらのタンパク質のうち数種によるアルブミン結合性の特徴が、例えばJohansson MU等(J Biol Chem 277:8114〜8120(2002));Linhult等(Prot Sci 11:206〜213(2002)、および、Lejon S.等 J.Biol.Chem.279,41,2004,42924〜42928)によって解明されている。これらのおよびその他のタンパク質のどのドメインがアルブミン結合に関与しているか、に関する上記出版物などからの知見を用いて、本発明に従って用いることができる分子においてアルブミン結合性成分として使用するための、列挙されたタンパク質のいずれかの適切なフラグメントまたは誘導体を見出すことは、当業者の通常の能力の範囲内である。例えば、タンパク質PABは、GAモジュールとして知られている53個のアミノ酸残基のアルブミン結合性ドメインを含み、このドメインは、連鎖球菌のABDと高い配列相同性を有しており、上記のLejon等で詳細に考察されている。特に、この論文では、モジュールとヒト血清アルブミンとの結合に重要なアミノ酸残基の同定が開示されている。熟練者であれば、血清アルブミン結合性成分をアルブミンに結合させる適切な残基、または、上記成分のアルブミン結合特性を強化させる適切な残基を有する血清アルブミン結合性成分を生産することができる。
【0037】
具体的には、上記のLejon等は、ヒト血清アルブミンとGAモジュールとの境界面の疎水性コアは、ヒト血清アルブミンからの残基Phe−228、Ala−229、Ala−322、Val−325、Phe−326およびMet−329、ならびに、GAからの残基Phe−27、Ala−31、Leu−44およびIle−48という配列であることを見出した。熟練者であれば、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、この相互作用の表面(例えば境界面の疎水性コア)に寄与する、または、周囲の水素結合の相互作用に寄与する代替アミノ酸残基を含む血清アルブミン結合性成分を提供することが可能である。このような血清アルブミンへの親和性が保持または強化された変異体は、上記のLejon等で見出される複合体に関する情報に基づき構築することもでき、さらに、ヘリックス2および3、および、へリックス2の前後のループの代替の表面残基を含む。結合に直接関与する残基を置換することによって結晶化した複合体の結合表面を改変することに加えて、間接的な構造的な作用または静電気による操舵力によって、血清アルブミンに関する強化された結合親和性を得る手段として(Low等,J.Mol.Biol.260:359〜368,1996;SchreiberおよびFersht,Struct.Biol.3:427〜431,1996)、または、血清アルブミンのその他の部分との同時の相互作用を導入する手段として、代替アミノ酸が置換されてもよい。当然のことながら、この相互作用は、状況によって水素結合、フンデルワールス相互作用または静電結合の性質によるものであり得る。これらの改変アプローチのいずれか、または、その両方によって生じた全ての配列変異体は、上記のKraulis等で説明されている血清アルブミン結合性ドメインの直接的に関連する変異体とみなされ、本願の実施例で用いられる。
【0038】
ヒト血清とアルブミンとの結合境界面で脂肪酸との複合体が形成される可能性が、上記のLejon等によって考察されている。本発明の適用は、脂肪酸の存在下または非存在下での結合が強化されるように改変されていてもよい。
【0039】
従って、上記および背景の章で述べられたように、アルブミン結合能を有する天然に存在するポリペプチドの1つは、連鎖球菌のタンパク質G、SpGである。それゆえに、無傷のSpG、もしくはあらゆるアルブミン結合性ドメイン、または、それらのフラグメントもしくは誘導体は、本発明に従って用いられる分子においてアルブミン結合性成分として用いることもできる。このようなアルブミン結合能を有するドメインの一例は、SpGドメインABDである(従来技術では、46個のアミノ酸のドメインもABD3またはA3として言及されている。例えば上記のKraulis PJ等を参照)。当然ながら、アルブミン結合能が保持されたそれらの変異体またはフラグメントもまた、有用であり得る。例えば、適切な変異体またはフラグメントのアルブミンへの好ましい結合親和性は、以下に示した通りであり得る。
【0040】
その他の限定されない代替物として、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約40個のアミノ酸残基(例えば、約10〜約20個のアミノ酸残基)を有するアルブミン結合性ペプチドであり得る。このようなペプチドは、例えば、WO01/45746、および、Dennis等,J Biol Chem 277:35035〜43(2002)で、生物学的に活性なタンパク質の半減期を長くする用途で説明されている。具体的には、アミノ酸配列DICLPRWGCLWを含むペプチド、および/または、アミノ酸配列DLCLRDWGCLWを含むペプチド、および/または、アミノ酸配列DICLARWGCLWを含むペプチド、または、それらの配列のアルブミン結合性の誘導体が、本発明に係るアルブミン結合性成分として有用であり得る。有用なアルブミン結合性ペプチドの具体的な例は、上記のDennis等の表II、IIIおよびIV、および、WO01/45746の12〜13頁に見出され、これらの章は、参照により本発明の開示に加入させる。
【0041】
あるいは、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、哺乳動物の血清アルブミンへの親和性を有する有機性の非タンパク質様の化合物でもよい。この成分は、好ましくは、生物学的に活性なタンパク質成分に共有結合した、このような有機化合物のラジカルである。血清アルブミンへの親和性を有する化合物は当業界既知であり、例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばイブプロフェン、および、カルプロフェン;ジクロフェナク;サリチル酸;ワルファリン;プロポフォール;ならびに、ハロタンからなる群より選択してもよい。
【0042】
分子と、それが投与される哺乳動物の血清アルブミンとの効率的な結合を得るために、上記分子は、相互作用のKDが、≦10-6M、例えば≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、≦10-12M、≦10-13M、または、≦10-14Mになるようなアルブミンに関する結合親和性を有すると予想される。しかしながら、所定の環境において、本発明に従って用いられる分子が、体内で解離し、その目的とする機能を実行できるように、アルブミンの結合が過度に堅くならないことが望ましい場合がある。本発明におけるアルブミンと分子との間の相互作用のような、生体特異的な相互作用のKDは、例えば、当業者既知の表面プラズモン共鳴を用いて測定してもよく、例えばビアコア(Biacore(R))の機器を用いて測定してもよい。
【0043】
本発明の分子のアルブミン結合性成分、従って本発明の分子そのものは、所定の哺乳動物由来の血清アルブミンへの親和性を有する。適切には、被験体の血清中でアルブミン結合性成分とアルブミンとの結合が最適になるように、本分子が投与される被験体は同じ哺乳動物種に属する。好ましくは、アルブミン結合性成分は、所定の哺乳動物の血清アルブミンへの結合が強化されるように適合させる。例えば、哺乳動物がサルの場合、アルブミン結合性成分は、強化されたサル血清アルブミンへの親和性を有していてもよい。同様に、ヒト被験体の場合、アルブミン結合性成分は、本発明の分子のヒト血清アルブミンへの親和性が強化されるように改変されていてもよい。
【0044】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分の親和性は、治療しようとする哺乳動物に適するように改変されていてもよい。どのような時でも、アルブミンに結合していない本発明の分子が少量存在する場合がある。薬物動態学的な用語では、結合していない分子の経時的総暴露量は、濃度曲線下面積(AUC)として表現することもできる。薬物動態学分野の当業者には当然であるが、所定の種におけるこのAUC値は、アルブミンへの親和性と、アルブミンの半減期の両方に依存すると予想される。特に、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分の親和性、すなわち本発明の分子の親和性は、哺乳動物(例えばヒト)で使用する場合、血清アルブミンの半減期が大きくなるにつれて上記親和性も大きくなるように調整してもよい。従って、アルブミンの循環時間がより長い種(例えばヒト個体)において、より高い親和性が必要とされる場合がある。例えば、血清アルブミンに結合することができる成分のヒト血清アルブミンへの親和性は、その成分を変異させることによって増加させてもよい。現在のマウスにおける実験により、AUCは、免疫反応を回避するために最小化されるべきであるという仮説が確認されている;親和性が低すぎる突然変異体は、免疫反応に対する保護を得られなかった。従って、アルブミンの循環時間がより長い種(例えばヒト個体)では、より高い親和性が必要とされる場合がある。それゆえに、ヒト血清アルブミンへの親和性は、好ましくは、上述のようなアルブミン結合性成分を変異させることによって増加させることができる。
【0045】
しかしながら、同一のアルブミン結合性成分が、異なる哺乳動物種由来の血清アルブミンに結合することが可能である。従って、例えば、SpGおよびそのフラグメントは、少なくともマウス、ラットおよびヒト由来の血清アルブミンに結合することができる。本発明の一実施形態において、本発明に係る免疫反応の減少または除去は、本分子をヒトに投与する際に達成される。その他の実施形態において、この作用は、その他の非ヒト哺乳動物への投与に関連して活用される。
【0046】
また、減少した免疫反応を惹起する分子は、生物学的に活性なタンパク質成分も含む。生物学的に活性なタンパク質成分は、所定の目的で、例えば治療、予防または診断目的で哺乳動物に投与することが望まれるあらゆるタンパク質が可能である。従って、用語「生物学的に活性なタンパク質」は、それが投与される哺乳動物において有用な生物活性を示すあらゆるタンパク質もしくはポリペプチド、または、タンパク質もしくはポリペプチドのフラグメントを含み、一般的に、本明細書で用いられるタンパク質という用語は、ポリペプチド、ならびに、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントを包含する。生物学的に活性なタンパク質成分は、本分子が投与される哺乳動物にとって内因性のタンパク質から誘導されてもよいが、異種タンパク質または改変されたタンパク質が都合がよい場合もある。生物学的に活性なタンパク質成分は、可溶性分子でもよいし、または、受容体に結合してもよい。このような活性の非限定的な例を以下で考察する。
【0047】
生物学的に活性なタンパク質の活性は、問題の哺乳動物の体内で、所定の標的分子と相互作用する能力に属していてもよい。適切には、この標的分子は、哺乳動物の血清アルブミンではない。標的分子、例えば細胞の表面に存在する受容体および他のタンパク質を認識し結合するか、または、細胞の様々な区画のいずれかの内で標的分子を認識し結合するか、または、細胞外の体液に存在する標的分子を認識し結合する生物学的に活性なタンパク質の例がいくつかある。
【0048】
このような生物学的に活性なタンパク質は、例えば、腫瘍細胞または癌細胞の表面に選択的に存在する標的分子への結合において有用なことが示されている。多数の癌標的または腫瘍標的は、これらの標的への親和性を有する多くの抗体、抗体フラグメントおよびその他の結合分子を有すると説明されている。このような標的の例としては、HER2(乳ガンの所定の形態に関与)、CD4、CD20、CD22およびCD74(いずれも、様々な異なるリンパ腫に関与)、ならびに、CEAおよびEpCAM(充実性腫瘍の所定の形態に存在)が挙げられる。本発明に係る生物学的に活性なタンパク質は、例えば、標的分子としてHER2、CD4、CD20、CD22、CD74、CEAまたはEpCAMと相互作用する能力を有するタンパク質であり得る。
【0049】
さらなる標的分子としては、毒素が挙げられる。例えば、ヘビ毒は適切な標的の可能性があり、本発明の方法は、さらなる免疫反応を刺激しないで毒素を中和する生物学的に活性な成分を送達するために用いられる。
【0050】
また、本発明に従って用いられる分子の生物学的に活性なタンパク質成分は、細胞に結合していない分子、および/または、癌と関係がない分子とも相互作用する可能性がある。従って、生物学的に活性なタンパク質は、例えば、酵素をブロックする能力、例えば血液凝固カスケードに関与する酵素をブロックする能力、または、エラスターゼをブロックする能力を有するタンパク質であり得る。あるいは、生物学的に活性なタンパク質は、ホルモンまたはサイトカイン受容体をブロックする能力を有していてもよい。
【0051】
上記で概説したように、生物学的に活性なタンパク質は、所定の標的分子と相互作用する能力を有するタンパク質からなる群より選択されてもよい。このようなタンパク質の非限定的な例としては、抗体、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ブドウ球菌のタンパク質A、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、フィブロネクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、リポカリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、トランスフェリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、および、レクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体が挙げられる。これらの分子の多くの天然に存在する形態は、新規の特性、例えば天然に存在する形態が結合しない標的分子への結合親和性を新たに作るという観点で、タンパク質工学技術、例えば部位特異的な、またはランダム化したアプローチでの突然変異および変更で処理されてきた。上記で列挙したタンパク質のこのような変異体または誘導体はいずれも、本発明に係る方法または使用で、そのまま生物学的に活性なタンパク質成分として用いてもよい。また、このような分子のフラグメントはいずれも、天然に存在する形態か、または、加工されたそれらの変異体かに関わらず、全長タンパク質の活性がフラグメントに実質的に保持されている限り定義に包含される。
【0052】
さらなる適切な生物学的に活性なタンパク質としては、成長ホルモン(GH)、特にヒト成長ホルモン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インスリン、インターフェロンベータ(IFN−β)、第VIII因子、エリスロポイエチン、GL1P、および、トロンボポイエチンが挙げられる。
【0053】
それゆえに、生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質A、または、そのフラグメントもしくは誘導体であり得る。例えば、IgG結合性Bドメインまたはそれから誘導されたZタンパク質(Nilsson等(1987),Prot Eng 1,107〜133、および、米国特許第5143844号を参照)が、生物学的に活性なタンパク質成分として有用であり得る。基本構造または骨格としてZタンパク質に基づき、改変された結合親和性を有する変異体は、コンビナトリアルアプローチでのランダム変異誘発によって製作されたライブラリーから選択されている。このようなタンパク質は、幾つかの報告で特性決定されており、アフィボディ(Affibody(R))分子という名称で商品化されている。代表的な出版物としては、米国特許第6534628号、Nord K等,Prot Eng 8:601〜608(1995)、および、Nord K等,Nat Biotech 15:772〜777(1997)が挙げられる。このようなブドウ球菌のタンパク質Aから誘導されたタンパク質Zの変異体が、本発明に係る生物学的に活性なタンパク質成分として有用である。
【0054】
あるいは、または、加えて、生物学的に活性なタンパク質は、所定の標的分子に結合すること以外の有用な生物学的な活性を示す可能性もある。例えば、これらは、酵素活性またはホルモン活性を示す可能性もある。
【0055】
当然ながら、上記で例示された活性はいずれも、治療、予防または診断的な作用を有していてもよい。従って、当然ながら、生物学的に活性なタンパク質の活性は、場合によっては、薬剤活性として説明されることもある。
【0056】
上記の、本発明の実施に際し投与される分子の少なくとも2つの成分は、投与の際に免疫反応が減少するか、または、免疫反応を示さない分子を提供するために、共有結合でカップリングされた2種の異なる分子種から誘導されると説明されている。しかしながら、i)生物学的に有用な活性、および、ii)アルブミン結合能力の2種の機能が、同一の分子種に共存していてもよい、ということも考慮される。本発明で特許請求されたこのような分子の使用もまた本発明の範囲内である。この状態を説明する分子の例は、第一の部位(生物学的に有用な活性が存在する部位)と、第二の部位(アルブミン結合性部位)とを含むタンパク質である。言い換えれば、本分子は、生物学的に有用な活性を有し、生物学的に活性なタンパク質に相当する第一の部位と、哺乳動物の血清アルブミンに結合する能力を仲介する第二の部位とを含むタンパク質からなる。従って、生物学的に有用な活性は、生物学的に活性なタンパク質成分に関して上記で考察された活性のいずれかであり得る。2つの部位は、空間的に分離しており、例えば、タンパク質の異なる面に存在している可能性もある。このようなタンパク質の具体例は、連鎖球菌のタンパク質G由来のアルブミン−結合性ドメインで構成されたものであり、これは分子の表面上のその他の位置に追加の結合部位を備えている。アルブミン−結合性ドメインは、この追加の部位に、例えば上記で考察された標的のいずれか一つと相互作用する能力を有していてもよい。この追加の結合部位は、タンパク質にアミノ酸突然変異の部位特異的な導入またはランダム導入(例えばアミノ酸残基の付加、欠失または置換)によって提供することができる。得られたタンパク質は、全ての観点において類似しているが、ただしアルブミン結合機能が存在しないタンパク質の免疫原性と比較して、減少した免疫原性、または、除去された免疫原性を示すと予想される。
【0057】
本発明のさらなる形態によれば、コンストラクトZTaq4:1−ABD、ABD−Zher2:4、ABD−(Zher2:4)2、ABD−(Zher2:4)3、ABD−(Zher2:4)4、(ZAβ3)2、ABD−、および、(ZAβ3)2が提供される。
【0058】
本発明のさらなる形態によれば、上述したように生物学的に活性なタンパク質そのものを哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、哺乳動物に投与する際に免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少される医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分と、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分とを含む分子、および、生物学的に活性なタンパク質が結合する、または、それ以外の方法で相互作用する標的分子またはその一部または類似体を含む組成物が提供される。好ましくは、標的分子は、生物学的に活性なタンパク質成分に結合している。
【0059】
以下、本発明に従って行われた実験を開示することによって、かつ添付の図1〜25を参照して、本発明を説明する。本実施例は、本発明の範囲を限定するものとは解釈されない。
【0060】
図1は、実施例1で説明されているように、His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0061】
図2は、実施例1で説明されているように、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。実験34日目の血漿のタイターを示すパネルには標準曲線が含まれる。
【0062】
図3は、実施例1で説明されているように、ABDまたはHis6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿から精製されたIgGに関するELISA滴定曲線を示す。
【0063】
図4は、実施例1で説明されているように、ストレプトキナーゼでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ストレプトキナーゼが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0064】
図5は、His6−ZTaq4:5でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム1に従ってHis6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0065】
図6は、His6−ZTaq4:5でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム2に従ってHis6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0066】
図7は、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム1に従ってZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0067】
図8は、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム2に従ってZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0068】
図9は、ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、実施例2で説明されているスキーム1(パネルA)、または、スキーム2(パネルB)に従ってABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0069】
図10は、実施例3で説明されているように、His6−ZTaq4:5−でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0070】
図11は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−Zher2:4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目および14日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0071】
図12は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zher2:4)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0072】
図13は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zher2:4)3が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0073】
図14は、実施例3で説明されているように、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zher2:4)4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものである。
【0074】
図15は、実施例4で説明されているように、(Zαβ:3)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0075】
図16は、実施例4で説明されているように、ABD−(Zαβ:3)2でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ABD−(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0076】
図17は、実施例4で説明されている阻害ELISA実験の結果を示す。
【0077】
図18は、実施例5で説明されているように、His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0078】
図19は、実施例5で説明されているように、ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0079】
図20は、実施例5で説明されているように、His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートで解析した場合の、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0080】
図21は、実施例5で説明されたように、ZTaq4:1−ABD、次にHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0081】
図22は、実施例5で説明されているように、ZTaq4:1−ABD、次にZTaq4:1−ABDとHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0082】
図23は、実施例5で説明されているように、ZTaq4:1、次にZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0083】
図24は、実施例6で説明されているように、(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0084】
図25は、実施例6で説明されているように、ABD(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【0085】
図26は、本発明に係る様々なコンストラクトの配列を示す表である。
【0086】
図27Aは、実施例5の設定の要約である;図27Bは、実施例5で得られた結果を説明している。
【0087】
実施例1
様々な分子を投与した後のマウスにおける体液性免疫反応
研究される分子
この実施例において、本発明の概念を、様々な分子を投与した際のマウスにおける抗体反応の比較によって研究した。投与された分子は以下の通りである:
His6−ZTaq4:1−ブドウ球菌のタンパク質AのBドメインから誘導されたタンパク質Zの変異体である。このZ変異体は、それをコードするDNA配列の発現による組換えDNA技術を用いて生産され、同時に、既知の分子生物学的手法に従ってヘキサヒスチジルタグを有する。Z変異体のZTaq4:1は、そのTaq DNAポリメラーゼへの親和性に基づき予め選択された。ZTaq4:1分子の説明(そのアミノ酸配列やそれらの選択手法など)は、Gunneriusson E等,Protein Eng 12:10,873〜878(1999)(例えばこの記事の図1を参照)に示されている。比較のために使用された。
【0088】
ZTaq4:1−ABD−Z変異体のZTaq4:1と、連鎖球菌のタンパク質GのG148株の46個のアミノ酸のアルブミン結合性ドメイン(ABD)(Kraulis PJ等,FEBS Lett 378:190(1996)))との融合タンパク質である。この融合タンパク質は、既知の分子生物学的手法に従ってそれに対応するDNA配列の発現によって製造された。本発明を説明するために使用された。
【0089】
ストレプトキナーゼ−強い抗体反応を誘導することがわかっている市販の細菌の酵素である。シグマ(Sigma)から購入し(カタログ番号S−8026,ロット092K1515)、ポジティブコントロールとして使用した。
【0090】
材料および方法
マウスおよび投与計画:雌NMRIマウス(マウス20匹、予備としてプラス2匹)をこの実験で用いた。到着時の体重は20gであった。免疫化実験の開始時点で、これらのマウスは、8〜12週齢であった。スウェーデン農漁食糧省(Swedish Ministry of Agriculture,Food and Fisheries)からのガイドラインに従って、これらのマウスを維持し、エサを与えた。エサと水は、適宜与えた。免疫化実験のために、マウスを5つのグループに分けた(各グループは4匹の動物を含む)。表1に示される本分子20μgを、0.9%NaCl(0.1ml)で各マウスに皮下投与した。
【表1】
【0091】
試験分子の溶液を−20℃で凍結保存し、注射の前に融解させた。実験の0、3、6、9、12および21日目に繰り返し注射した。150μlの血液サンプルを、実験の0(処理前血漿)、7、14および21日目に、マウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の34日目にマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。血液をK+EDTA試験管に回収し、サンプリング後1時間放置した。その後、サンプルを、血漿を分離するために6000rpmで6分間遠心分離した。解析まで、貯蔵のために血漿を−20℃で凍結した。
【0092】
特異的ELISAによる血漿サンプルの解析:上記の分子のいずれか1種を投与されたマウスからの血漿の解析のために、ELISAプレート(コースター(Costar),番号9018)を、コーティング緩衝液(15mMのNa2HCO3、35mMのNaHCO3、pH9.6)で最終濃度1μg/mlに希釈したそれに対応する分子でコーティングした。ウェルあたり100μlのコーティング溶液を添加し、プレートを4℃で1〜3晩インキュベートした。次に、プレートを手動で3回、脱イオン水で洗浄し、1%ウシ血清アルブミン(BSA;シグマ製,カタログ番号A−2153)、または、2%ドライミルク(センパーAB(Semper AB),ストックホルム,スウェーデン)のいずれかを含むPBS(2.68mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、137mMのNaCl、8.1mMのNa2HPO4、pH7.4)を200μl/ウェルで用いて、1〜2時間ブロックした。次に、ブロッキング溶液を除去し、血漿100μlを各ウェルに添加し、ブロッキング溶液で1:100に希釈し、続いて連続倍数希釈した。2時間インキュベートした後に、プレートを手動で3回、PBS−T(0.05%Tween20を含むPBS;アクロス・オーガニクス(Acros Organics)製のTween20,カタログ番号233362500)で洗浄した。その後、100μlの二次抗体、ブロッキング溶液で1:2000に希釈したHRP結合ヤギ抗マウスIgG(サザン・バイオテック(Southern Biotech),番号1031−05)を、各ウェルに添加した。プレートを1時間インキュベートした。3つの工程(ブロッキング、血漿サンプルの添加、二次抗体の添加)を振盪機で行い、最後の工程は暗所で行った。プレートを手動で5回PBS−Tで洗浄した。その後、基質溶液100μl(イムノピュア(ImmunoPure(R))TMB;ピアース(Pierce),カタログ番号34021)を、各ウェルに添加し、その後プレートを暗所でインキュベートした。15分後に、ストップ溶液(2MのH2SO4;VWR,カタログ番号14374−1)100μlの添加によって発色を止めた。プレートを、ELISA分光光度計(ベーシック・サンライズ(Basic Sunrise),テカン(Tecan))で、450nmで読んだ。
【0093】
さらに、210μg/mlの抗His6−ZTaq4:1IgGを含むこれまでに得られたマウス血漿のプールを含む標準も含めた。連続倍数希釈液にこのプールを用いた。His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートにおける検出限界は、約5ng/mlであった。
【0094】
血漿サンプル中のIgGの総含量の解析:サンプル中のIgGの総量を決定するために、定量ELISA解析を、マウスIgGのELISA定量キット(ベチル(Bethyl),カタログ番号E90−131)を製造元の説明書に従って用いて行った。簡単に言えば、ELISAプレートを、製造元によって提供された抗マウスIgGでコーティングした。調査しようとする血漿と標準血漿を、連続倍数希釈液(2000ng/mlより開始)に添加した。検出抗体をブロッキング緩衝液で1:100000に希釈した(抗マウスIgG、HRP結合体;製造元によって提供)。ELISA解析を、上述のイムノピュア(R)TMBを用いて展開した。
【0095】
IgGの精製:ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスから得られた34日目の血漿のプールから、IgGを精製した。ブドウ球菌のタンパク質Aから誘導されたIgG特異的な親和性リガンドを有するHiTrapカラムにローディングする前に、このプールをPBS−Tで12.5倍に希釈した。カラムをPBS−Tで予め平衡化させた。吸光度がゼロに達するまでカラムを洗浄し、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.2Mグリシン、1mMのEGTA、pH2.8)を用いて溶出させた。中和するために、濃度50mMのトリス塩基、および、体積1/10の10×PBSを添加した。
【0096】
データ解析:ELISA値を、テカン製のマジェラン(Magellan)・ソフトウェアを用いて得た。この値を解析のためにマイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)にエクスポートした。IgG濃度を、Xlfit.3プログラム(www.idbs.com)を用いて標準曲線と比較することによって計算した。値/曲線は、抗His6−ZTaq4:1IgGの標準プールを用いて得て、特異的IgGと総IgGそれぞれの決定にはベチルの標準血漿を用いた。
【0097】
結果
His6−ZTaq4:1:マウス番号1〜4に、His6−ZTaq4:1を注射した。免疫化の前(処理前血漿)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、方法の章で説明されている通りに、His6−ZTaq4:1特異抗体の存在に関して解析した。ELISAプレートを1%BSAでブロックした。処理前血漿中に、注射された分子に対する抗体は存在していなかった。4匹のマウスは全て、注射されたタンパク質に対する中程度の抗体反応が生じることによって反応した。特異抗体のタイターが処理中徐々に上昇し、34日目で最高のタイターを示した。図1は、個々の血漿サンプルの、450nmでのOD値に対してプロットされた滴定曲線を示す。
【0098】
IgGの総濃度を、ベチルのELISAを用いて決定し、His6−ZTaq4:1に特異的なIgGの濃度を、上述の標準プールを用いて決定した。表2に結果を示す。34日間の処理中に、特異抗体の濃度は、50〜500倍に増加した。IgGの総濃度を考慮すると、特異抗体は、IgGの総量の約1〜4%を構成していた。
【表2】
【0099】
ZTaq4:1−ABD:マウス番号5〜8に、ZTaq4:1−ABDを注射した。免疫化の前(処理前血漿、データ示さず)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、方法の章で説明されている通りに、ZTaq4:1−ABDに特異抗体の存在に関して解析した。ELISAプレートを1%BSAでブロックした。図2は、450nmでのOD値に対してプロットされた個々の血漿サンプルから得られた結果を示す。要約すると、注射されたZTaq4:1−ABDに対して特異抗体は検出されなかった。
【0100】
マウス血清アルブミンがELISAウェルにコーティングされたタンパク質のABD成分と相互作用することによって、マウス抗体のZTaq4:1−ABD分子への特異的結合を立体的に妨害する危険を試験した。第一のアプローチにおいて、His6−ZTaq4:1でコーティングすることによってABDを遮蔽した。34日目の血漿を試験し、その結果は、マウス抗体とHis6−ZTaq4:1との特異的な相互作用は示さなかった(データ示さず)。その他のアプローチは、血漿からアルブミンを除去するためである。そのために、総IgGを、「材料および方法」の章で説明されている通りに、HiTrapカラムを用いてマウス番号5〜8からの34日目の血漿のプールから精製した。IgG分画をABDまたはHis6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで試験し、その結果を、図3に示す。要約すると、マウス抗体と、His6−ZTaq4:1またはABDでコーティングされた表面との結合を検出することができなかった。
【0101】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表3に結果を示す。
【表3】
【0102】
ストレプトキナーゼ:マウス番号17〜20に、ストレプトキナーゼ(血液凝固を予防する細菌の酵素であり、強い抗体反応を誘導することがわかっている)を注射した。注射の前(処理前血漿、示さず)に、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、方法の章で説明されている通りに、ストレプトキナーゼに特異抗体の存在に関して解析した。ELISAプレートを2%ドライミルクでブロックした。図4は、450nmでのOD値に対してプロットされた個々の血漿サンプルから得られた結果を示す。図4で示されるように、ストレプトキナーゼは、治療期間中に増加する抗体反応を誘導した。34日目に、4匹のマウス全てにおいてストレプトキナーゼに特異抗体の高いタイターを検出した。
【0103】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表4に結果を示す。全てのケースにおいて(ただし1つのケースを除く)、IgG総濃度は、死亡時の採血において、処理前血漿よりも顕著に高く、これは、免疫系の正常な成熟、および/または、進行中の免疫反応を示す。
【表4】
【0104】
終点のタイター:その他のタンパク質に関する適切な標準は欠如していたため、His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿においてのみ、投与された分子に特異抗体の濃度を決定した。この理由のために、終点のタイターを、注射された異なるタンパク質での比較に用いた。終点のタイターは、OD値がバックグラウンドの2倍に等しい希釈度と定義された(このバックグラウンドは、同じマウスからの処理前血漿で得られたOD値である)。表5は、各マウスの終点のタイターを示す。結果を要約すると、ストレプトキナーゼで免疫化後の終点のタイターは、異なるZ変異体を用いて得られたタイターよりも顕著に高かった。特に本発明に関連性を有するのは、ZTaq4:1−ABDで免疫化した後の抗体のタイターが、検出不可能であったことである。
【表5】
【0105】
考察
動物モデルにおける特異的なB細胞活性化の開始と抗体生成の際の様々な分子の投与の作用を研究するために、NMRIマウスに、様々な分子を皮下注射した。正常な治療サイクルを模擬実験するために、マウスに十分な用量(アジュバントなし)を6回の注射で投与した(3日間のインターバル、21日目にブースター注射)。治療された動物からの血漿を、注射された分子に特異性を有するIgGアイソタイプの抗体の存在について解析した。加えて、処理前血漿、および、死亡時の採血の日(34日目)における、全ての動物のIgGの総含量のレベルを決定した。
【0106】
上記の「結果」の章で示されるように、His6−ZTaq4:1は、研究された動物において特異的なIgG応答を誘導した。抗体反応は、少量から中程度であり(34日目で5〜37μg/ml)、21日目のブースター注射の後に最も顕著に増加した(2〜20倍の増加)。この応答は、34日目でピークを示した。
【0107】
重要なことには、ZTaq4:1−ABDが注射された動物からの血漿は、ELISAによって決定したところ、注射された分子への特異的結合をまったく示さなかった。この結果は、His6−ZTaq4:1、すなわちABDの代わりにHis6に融合した同じZ配列を解析した際に観察された特異的なIgGのタイターとは極めて対照的であった。解析された5つのタイムポイントは全て、標的に特異的なマウスIgG抗体に関して陰性であった。ELISAにおける検出限界(LOD)は約5ng/mlであった。
【0108】
この研究において、ストレプトキナーゼ(強い免疫原とみなされている細菌のタンパク質)がポジティブコントロールとして用いられた。予想通りに、ストレプトキナーゼが注射された動物で高い特異的なIgG応答が観察された。
【0109】
すなわち、注射されたタンパク質は、それらの特異的なIgG応答を誘発する能力により以下のようにランク付けできる:ストレプトキナーゼ>>His6−ZTaq4:1>>ZTaq4:1−ABD。最も興味深く、関連する結果は、ABDのZTaq4:1への融合により、特異的なIgG応答が検出できなかった。
【0110】
実施例2
様々な分子を様々な頻度で投与した後のマウスにおける体液性免疫反応
研究された分子
この実施例において、本発明の概念を、様々な分子を投与した際のマウスにおける抗体反応の比較によって再度研究した。投与された分子は以下の通りである:
His6−ZTaq4:5−ブドウ球菌のタンパク質AのBドメインから誘導されたタンパク質Zの変異体である。ZTaq4:5変異体は、それをコードするDNA配列の発現による組換えDNA技術を用いて生産され、同時に、既知の分子生物学的手法に従ってヘキサヒスチジルタグを有する。ZTaq4:5は、その選択およびアミノ酸配列を含めて上記のGunneriusson E等で説明されており、そこでこれは、ZTaqS1-1と示されている。比較のために使用された。
ZTaq4:1−ABD−実施例1で説明されている通り。本発明を説明するために使用された。
ABD−連鎖球菌のタンパク質GのG148株のアルブミン結合性ドメイン(ABD)である(参考文献として上記を参照)。既知の分子生物学的手法に従って、それに対応するDNA配列の発現によって製造された。比較のために使用された。
【0111】
材料および方法
マウスおよび投与計画:雌NMRIマウス(マウス40匹,予備としてさらに2匹)をこの実験で用いた。到着時の体重は20gであった。免疫化実験の開始時点で、これらのマウスは、8〜12週齢であった。スウェーデン農漁食糧省からのガイドラインに従って、これらのマウスを維持し、エサを与えた。エサと水は、適宜与えた。免疫化実験のために、表6に従ってマウスを7つのグループに分けた。表6に示される分子20μgを、0.9%NaCl(0.1ml)で各マウスに皮下投与した。
【表6】
【0112】
試験分子の溶液を−20℃で凍結保存し、注射の前に融解させた。実験の0、7および21日目に、グループ1〜3のマウスに皮下注射した(スキーム1,低い頻度)。実験の0、1および21日目に、グループ4〜6のマウスに皮下注射した(スキーム2、高い頻度)。血液サンプル(150μl)を、実験の0(処理前血漿)、7、14および21日目に、マウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の34日目にマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。血液をK+EDTA試験管に回収し、サンプリング後1時間放置した。その後、サンプルを、血漿を分離するために6000rpmで6分間遠心分離した。解析まで、貯蔵のために血漿を−20℃で凍結した。
【0113】
特異的ELISAによる血漿サンプルの解析:上記の分子のいずれか1種を投与されたマウスからの血漿の解析のために、ELISAプレート(コースター,番号9018)を、コーティング緩衝液(15mMのNa2HCO3,35mMのNaHCO3,pH9.6)で最終濃度1μg/mlに希釈したそれに対応する分子でコーティングした。ウェルあたり100μlのコーティング溶液を添加し、プレートを4℃で1〜3晩インキュベートした。次に、プレートを手動で3回、脱イオン水で洗浄し、0.5%カゼイン(シグマ,カタログ番号C−8654)を含むブロッキング緩衝液(200μl/ウェル;PBS(2.68mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、137mMのNaCl、8.1mMのNa2HPO4,pH7.4)で1〜2時間ブロックした。次に、ブロッキング緩衝液を除去し、血漿100μlを各ウェルに添加し、ブロッキング溶液で1:100に希釈し、続いて連続倍数希釈した。さらに、210μg/mlの抗His6−ZTaq4:1IgGを含むこれまでに得られたマウス血漿のプールを含む標準も含めた。連続倍数希釈液にこのプールを用いた。His6−ZTaq4:1でコーティングされたELISAプレートにおける検出限界は、約5ng/mlであった。
【0114】
2時間インキュベートした後に、プレートを手動で3回PBS−T(0.05%Tween20を含むPBS)で洗浄した。その後、ブロッキング緩衝液で1:2000に希釈した二次抗体、HRP結合ヤギ抗マウスIgG(サザン・バイオテック,番号1031−05)100μlを、各ウェルに添加した。プレートを1時間インキュベートした。全ての工程を振盪機で行い、最後の工程を暗所で行った。プレートを手動で5回PBS−Tで洗浄した。その後、基質溶液(イムノピュア(R)TMB;ピアース,カタログ番号34021)100μlを各ウェルに添加し、その後プレートを暗所でインキュベートした。15分後に、ストップ溶液(2MのH2SO4;VWR,カタログ番号14374−1)100μlの添加によって発色を止めた。プレートを、ELISA分光光度計(ベーシック・サンライズ、テカン)で、450nmでマジェラン・ソフトウェアを用いて読んだ。
【0115】
血漿サンプル中のIgGの総含量の解析:サンプル中のIgGの総量を決定するために、定量ELISA解析を、マウスIgGのELISA定量キット(ベチル,カタログ番号E90−131)を製造元の説明書に従って用いて行った。簡単に言えば、ELISAプレートを、製造元によって提供された抗マウスIgG(1μg/ml)でコーティングした。調査しようとする血漿と標準血漿を連続倍数希釈して添加した。標準血漿を、2000ng/mlから希釈した。検出抗体(抗マウスIgG、HRP結合体;製造元によって供給)をブロッキング緩衝液で1:100000に希釈して用いた。ELISA解析を、上述のイムノピュア(R)TMBを用いて展開した。
【0116】
データ解析:ELISA値を、テカン製のマジェラン・ソフトウェアを用いて得た。この値を解析のためにマイクロソフトエクセルにエクスポートした。IgG濃度を、Xlfit.3プログラム(www.idbs.com)を用いて標準曲線と比較することによって計算した。値/曲線は、抗His6−ZTaq4:1IgGの標準プールを用いて得て、特異的IgGと総IgGそれぞれの決定にはベチルの標準血漿を用いた。
【0117】
結果
His6−ZTaq4:5:8匹のマウス(番号53〜60)に、His6−ZTaq4:5を20μg/マウスで注射し、ここで注射はスキーム1に従った(上記参照)。注射の前(処理前血漿)、注射の期間(7、14、21日目)、および、注射の後に(34日目)得られた血漿サンプルを、上述の通りにHis6−ZTaq4:5特異抗体の存在に関して解析した。その結果を、図5に示す。処理前血漿(データ示さず)、または、7日目にHis6−ZTaq4:5特異抗体は存在しなかった(図5)。14および21日目までに陽性の血漿の数が増加した。34日目に、全ての血漿サンプルに、His6−ZTaq4:5特異抗体が含まれていたが、そのレベルは個々のマウス間で顕著に差が生じた。
【0118】
4匹のマウス(番号82〜85)に、スキーム2に従ってHis6−ZTaq4:5を注射した(上記参照)。注射の前(処理前血漿)、注射の期間(7、14、21日目)、および、注射の後に(34日目)得られた血漿サンプルを、上述の通りにHis6−ZTaq4:5特異抗体の存在に関して解析した。その結果を、図6に示す。処理前血漿にHis6−ZTaq4:5特異抗体は、存在しなかった(データ示さず)。7日目からすでにいくつかの(だだし全てではない)血漿サンプルで、His6−ZTaq4:5に対する抗体が低いレベルで見出された。スキーム1と同様に14および21日目には陽性の血漿サンプルの数およびタイターは増加しなかった。34日目に、1つを除く全ての血漿サンプルが、21日目のレベルと比較して高いレベルのHis6−ZTaq4:5特異抗体を示した。
【0119】
特異的なIgGの濃度を、抗His6−ZTaq4:1IgGの標準プールを用いて決定した(方法の章を参照)。このプールは、210μg/mlのHis6−ZTaq4:1特異抗体を含むことが予め示されていた。XLfitプログラムと片側の用量反応の式を用いて濃度を計算した。両方のサンプルと標準をそれぞれ個々に試験した(それゆえに方法標準偏差は未知である)。加えて、計算のために選択された数式もまた値に影響を与え、偏差は、式に応じて計算されなかった。従って、以下の表に示された濃度は、絶対値ではなく相対値とみなされると予想される。表7は、個々のマウスからの血漿中のHis6−ZTaq4:5特異抗体の濃度を示す。上記の滴定解析で示されるように、34日目の特異的なIgGの濃度は、両方のグループにおいて、個々のマウス間で顕著な差が生じた。スキーム1のグループにおける濃度は見たところ高いようであるが、スチューデントのT検定(TTEST関数,マイクロソフトエクセル)で試験したところ、統計学的に有意ではなかった。
【0120】
また、IgGの総濃度も、上述の通りに定量ELISAを用いて、His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの34日目の血漿サンプルで決定された。表7に結果を示す(カラム7)。
【表7】
【0121】
ZTaq4:1−ABD:8匹のマウス(番号61〜68)に、スキーム1を用いてZTaq4:1−ABDを注射した。注射の前に(処理前血漿、データ示さず)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、上述の通りにZTaq4:1−ABD特異抗体の存在に関して解析した。図7に、その結果を示す。図7から明らかなように、ZTaq4:1−ABDに対して特異的IgGは、誘導されなかった。
【0122】
解析されたサンプルに、マウス血清アルブミン(MSA)が高レベルで存在する。ZTaq4:1−ABDでコーティングされたELISA表面に結合する可能性があるMSAの問題を回避するために、血漿サンプルも、His6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで滴定した(データ示さず)。解析は再び陰性であり、これは、ZTaq4:1−ABD分子は、非免疫原性であるという観察を追認するものである。
【0123】
4匹のマウス(番号86〜89)に、スキーム2に従ってZTaq4:1−ABDを注射した。注射の前に(処理前血漿、データ示さず)、および、7、14、21日、および34日間後に得られた血漿サンプルを、上述の通りにZTaq4:1−ABD特異抗体の存在に関して解析した。その結果を、図8に示す。再度、IgG応答は測定できなかった。
【0124】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表8に結果を示す。
【表8】
【0125】
ABD:8匹のマウス(番号69〜76)に、スキーム1に従ってABDを注射した。注射の前に(処理前血漿)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿を、上述の通りにABDに特異抗体の存在に関して解析した。34日目の血漿においてのみ、極めて少量のABD分子に対する抗体が検出された(図9A)。処理前血漿と7、14および21日目からの血漿は陰性であった(データ示さず)。
【0126】
4匹のマウス(番号90〜93)に、スキーム2に従ってABDを注射した。注射の前に(処理前血漿)、および、7、14、21および34日後に得られた血漿を、上述の通りにABDに特異抗体の存在に関して解析した。抗体反応は測定できなかった(図9Bは、34日目のサンプルに関する結果を示す)。
【0127】
IgGの総濃度を、上述のようにしてベチルのELISAを用いて決定し、表9に結果を示す。
【表9】
【0128】
考察
実施例1の結果によれば、ZTaq4:1−ABDは、マウスにおいて特異的IgG応答を誘導することができなかった。同様に、融合パートナーなしのABDそのものの投与は、あらゆる測定可能な特異的IgG応答を惹起しなかった。これらのグループにおける動物に、実施例1の場合と同量のタンパク質を投与した。低い頻度の注射でも高い頻度の注射でも、検出可能なIgG応答は生じなかった。Zタンパク質およびその誘導体はT依存性抗原であると考えられるため、それらは、IgGアイソタイプの特異抗体を優勢に生成すると予想される。それゆえに、これらの結果からIgG抗体が形成されないことが示されたため、ZTaq4:1−ABD融合タンパク質に応答して、その他のいずれのアイソタイプの抗体も形成されないことを示す。
【0129】
実施例3
アルブミン結合性成分と共に提供されたZ変異体の多量体を投与した後のマウスにおける体液性免疫反応
研究される分子
実施例1および2と同様に、本発明の概念を、様々な分子を投与した際のマウスにおける抗体反応の比較によって再度研究した。投与された分子は以下の通りである:
His6−ZTaq4:5−実施例2で説明されている通り。比較のために使用された。
【0130】
ABD−Zher2:4−連鎖球菌のタンパク質GのG148株のアルブミン結合性ドメイン(ABD)(上記参照)と、Z変異体のZher2:4との融合タンパク質である。Zher2:4をZの変異体のコンビナトリアルライブラリーから選択し、特徴付けた。選択手法において、癌抗原HER2(また、文献では、neu、HER2/neuまたはc−erbB−2とも説明されている)に対応する精製タンパク質を、標的分子として用いた。Zher2:4は、約50nMのKD値でHER2と相互作用することがわかった。標準的な一文字表記によるZher2:4のアミノ酸配列は、以下の通りである:
VDNKFNKELR QAYWEIQALP NLNWTQSRAF IRSLYDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK
【0131】
この融合タンパク質は、既知の分子生物学的手法に従って、ABD成分をコードするDNA配列と共に、それに対応するDNA配列の発現によって製造された。ABD−Zher2:4融合タンパク質を用いて本発明を説明する。
【0132】
ABD−(Zher2:4)2−Zher2:4配列情報の追加の知見と共に、既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体のZher2:4の二量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0133】
ABD−(Zher2:4)3−Zher2:4配列情報の追加の知見と共に、既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体のZher2:4の三量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0134】
ABD−(Zher2:4)4−Zher2:4配列情報の追加の知見と共に、既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体のZher2:4の四量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0135】
材料および方法
マウスおよび投与計画:雌NMRIマウス(マウス30匹,予備としてさらに2匹)をこの実験で用いた。到着時の体重は20gであった。免疫化実験の開始時点で、これらのマウスは、8〜12週齢であった。スウェーデン農漁食糧省からのガイドラインに従って、これらのマウスを維持し、エサを与えた。エサと水は、適宜与えた。免疫化実験のために、マウスを表10に従って5つのグループに分けた。表10に示された分子20μgを、0.1mlの0.9%NaClで各マウスに皮下投与した。
【表10】
【0136】
試験分子の溶液を−20℃で凍結保存し、注射の前に融解させた。グループ1のマウスに、実験の0、3、6、9、12および63日目に皮下注射を行なった(スキーム1)。実験の0(処理前血漿)、7、14、21、34、49および63日目に、血液サンプル150μlを、グループ1のマウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の73日目に、これらのマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。
【0137】
グループ2〜5のマウスに、実験の0、3、6、9、12および21日目に皮下注射を行った(スキーム2)。実験の0(処理前血漿)、7、14および21日目に、血液サンプル150μlを、グループ2〜5のマウスの眼窩静脈叢から採取した。実験の34日目に、これらのマウスを殺し、最大限の量の血液を得た。血液をK+EDTA試験管に回収し、サンプリング後1時間放置した。その後、サンプルを、血漿を分離するために6000rpmで6分間遠心分離した。解析まで、貯蔵のために血漿を−20℃で凍結した。
【0138】
特異的ELISAによる血漿サンプルの解析:一般的に、全てのインキュベート工程に、ウェルあたり体積100μlを用いた(ただしブロッキングには200μlを用いた)。ELISAプレート(コースター,番号9018)を、コーティングのために1〜3日間、ブロッキングと血漿のために1〜2時間、二次抗体のために1時間、および、基質溶液のために15分間インキュベートした。インキュベーションは、振盪機で、室温で行われた(ただし、コーティングは、4℃でインキュベートされた)。特に他の指定がない限り、全ての工程の間に、ウェルあたり4×350μlの洗浄緩衝液(PBS−T、実施例1を参照)で、ELISA Skan洗浄機300(スカトロン(Skatron))を用いて洗浄を行った。プレートを、テカン製のELISAリーダーで、マジェランv3.11ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。コーティング以外の全ての希釈にブロッキング緩衝液を用い、コーティングには、その代わりにコーティング緩衝液(15mMのNa2HCO3、35mMのNaHCO3,pH9.6)を用いた。
【0139】
ELISAプレートを、5μg/mlの濃度に希釈したHis6−ZTaq4:5、または、ABD−(Zher2:4)2でコーティングした。コーティング後に、プレートを、PBS+0.5%カゼイン(0.5%カゼイン(シグマ,カタログ番号C−8654)を含むPBS(2.68mMのKCl、1.47mMのKH2PO4、137mMのNaCl、8.1mMのNa2HPO4,pH7.4))でブロックした。ブロッキングを除去し、血漿を添加し、1:100から連続3倍希釈した。His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿は、His6−ZTaq4:5でコーティングされたELISAプレートで解析し、それに対して、4種の異なるZher2:4コンストラクトが注射されたマウスからの血漿は、ABD−(Zher2:4)2でコーティングされたELISAプレートで解析した。また、これまで得られたマウス抗体のプールを含む標準も含めた。1:2000に希釈したZTaq4:5とZher2:4−HRP結合ヤギ抗マウスIgG(サザン・バイオテック,カタログ番号1031−05)に対して向けられたIgGを含むプールを、第二の試薬として用い、イムノピュア(R)TMB基質溶液(ピアース,カタログ番号34021)を用いて反応を展開した。このインキュベートを暗所で行った。ストップ溶液(2MのH2SO4;VWR,カタログ番号14374−1)の添加によって15分後に発色を止めた。
【0140】
結果
免疫化の前(処理前血漿)に、および、7、14、21および34日後に得られた血漿サンプルを、「材料および方法」の章で説明されている通りに特異抗体の存在に関して解析した。あらゆる処理前血漿において、注射された分子に特異抗体は、存在しなかった(データ示さず)。図10〜14に示される図表は、450nmでのOD値に対してプロットされた個々の血漿サンプルの滴定曲線を示す。
【0141】
His6−ZTaq4:5:その結果を、図10に示す。His6−ZTaq4:5が注射されたマウスは、高い抗体反応を示した。この応答は時間依存性であり、21日目にピークを示しているようであった。His6−ZTaq4:5を用いた前の実験(実施例2)は、一般的に、34日目でピークを示した。この実験において34日目のOD値がそれより低い理由は、これらの動物は21日目にブースター注射を受けていないことによる可能性が高かった。
【0142】
ABD−Zher2:4:図11に結果を示す。ABD−Zher2:4が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目および14日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0143】
ABD−(Zher2:4)2:その結果を、図12に示す。ABD−(Zher2:4)2が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0144】
ABD−(Zher2:4)3:その結果を、図13に示す。ABD−(Zher2:4)3が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0145】
ABD−(Zher2:4)4:その結果を、図14に示す。ABD−(Zher2:4)4が注射されたマウスは、特異的IgG応答を示さなかった。7日目からの血漿の図表でみられるピークは、ELISAプレート洗浄機の問題に起因するものであるため、血漿中の抗体含量を正確に示していない。
【0146】
また、4種の異なるABD−(Zher2:4)nコンストラクトの特異的IgM応答を惹起する能力も試験した。このような応答は検出されなかった(データ示さず)。
【0147】
考察
この実験の結果より、アルブミン結合性成分を提供することにより、生物学的に活性なタンパク質に対する免疫反応を減少させるか、または除去するという実施例1および2からの発見が確認された。重要なことには、この作用は、よりいっそう大きいサイズのタンパク質でも有効であることが示された。Zher2:4の四量体は、230個より多いアミノ酸残基を含むが、それにもかかわらず、そのサイズでも、マウスに投与した際に実質的な抗体反応を惹起しない。
【0148】
実施例4
さらなる生物学的に活性な分子の二量体で試験される免疫反応の減少
研究される分子
この研究の目的もまた、免疫化の後に生産された抗体が、特異的なアフィボディ(R)分子と、それらの標的タンパク質との結合を阻害することができるかどうかを評価することである。これまでの免疫反応における減少の観察は、生物学的に活性なタンパク質がアルブミン結合性ドメインにカップリングされている場合、2種のその他のアフィボディ(R)分子:(ZAβ3)2、および、ABD−(ZAβ3)2を用いて確認された。
【0149】
(ZAβ3)2−ブドウ球菌のタンパク質AのBドメインから誘導されたタンパク質Zの変異体の二量体である。ZAβ3変異体は、既知の分子生物学的手法に従って、それをコードするDNA配列の発現による組換えDNA技術を用いて生産された。比較のために使用された。
【0150】
ABD−(ZAβ3)2−既知の分子生物学的手法に従って製造された、アルブミン結合性ドメイン(ABD)と、Z変異体ZAβ3の二量体との融合タンパク質である。本発明を説明するために使用された。
【0151】
His6−ZTaq4:11−実施例1で説明されているhis−タグを有するタンパク質Zの変異体である。比較のために使用された。
【0152】
His6−ZTaq4:5−実施例2で説明されているhis−タグを有するタンパク質Zの変異体である。比較のために使用された。
【0153】
材料および方法
マウスに、2種の異なる二量体アフィボディ(R)分子、(ZAβ3)2、および、ABD−(ZAβ3)2を注射した。マウスからの血漿を、処理スキームの際に、および、ブースターの後に4回、以前と同様にして得て、アフィボディ(R)に特異的IgGの存在に関して解析した。その結果によれば、(ZAβ3)2が注射されたマウスは強いIgG応答を起こしたことが示された。抗体産生は約14日目に始まり、34日目でピークを示した。死亡時の採血における特異的IgGの平均濃度は、278μg/ml(ZAβ3)2であった。ABD−(ZAβ3)2で処理したマウスからの血漿中に特異抗体は検出されなかった。
【0154】
両方のマウスのグループからの、0日目および34日目の血漿中のIgGの総濃度を決定した。両方のグループにおいて、総IgGの濃度は、34日までに約2倍に増加した。
【0155】
抗(ZAβ3)2−抗体が、アフィボディ(R)分子と標的タンパク質との相互作用を中和することができるかどうかを試験するために、阻害−ELISAを設定した。その結果によれば、(ZAβ3)2に特異的なIgGは、(ZAβ3)2とβ−アミロイド40との相互作用を中和しなかったことが示された。
【0156】
マウスおよび投与計画
マウスを、スキームに従って(表11)、(ZAβ3)2、および、(ZAβ3)2−ABDで処理した。表12に、注射および採血スキームを示す。採血の22日後にグループ1中のマウス5が病気になり、実験からはずした。
【0157】
【表11】
【0158】
【表12】
【0159】
マウス血漿からのIgGの精製
(ZAβ3)2で免疫化されたマウスからプールした34日目(マウス番号5については21日目)の血漿から、総IgGを精製した。血漿プール2400μlをPBS−Tで5倍に希釈し(総量12ml)、その後、PBS−Tで予め平衡化させたZwt結合High−Trapカラム(L0091−98)にローディングした。カラムを吸光度がゼロに達するまで洗浄し、結合したIgGを、酸性溶出緩衝液(0.2Mグリシン,1mMのEGTA,pH2.8)を用いて溶出させた。中和するために、1Mトリス塩基を、最終濃度50mMまで添加した。溶出体積の1/10量の10×PBS(2.68mMのKCl,1.47mMのKH2PO4,137mM,NaCl,8.1mMのNa2HPO4,pH7.4,PBS−Tween(PBS−T),0.05%Tweenを含む1×PBS)を加えることによって、緩衝能力を回復させた。
【0160】
ELISA−プレート(96ウェル,平底の高い結合性のコースター番号9018)を、コーティング緩衝液で最終濃度2μg/mlに希釈した適切なアフィボディ(R)分子でコーティングした。ウェルあたり100μlのコーティング溶液を添加し、プレートを4℃で1〜3晩インキュベートした。次に、プレートを手動で脱イオン水で4回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1〜2時間ブロックした(0.5%カゼイン(シグマ),1×PBS中;200μl/ウェル)。ブロッキング緩衝液を除去し、血清100μlを、連続希釈して各ウェルに添加した。1時間インキュベートした後に、プレートを、自動ELISA−洗浄機または手動で、PBS−Tで4回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1:2000に希釈した第二工程の抗体であるHRP結合ヤギ抗マウスIgG100μlを各ウェルに添加した。その後プレートを1時間インキュベートした。プレートを4回PBS−Tで洗浄し、基質溶液100μl(イムノピュア(R)TMB)を各ウェルに添加し、続いて暗所でインキュベートした。ストップ溶液(2MのH2SO4)100μlの添加によって15分後に発色を止めた。プレートを、ELISAリーダーで、マジェラン・ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。
【0161】
マウス抗ZAβ3に特異的なIgGのELISA
プレートを、コーティング緩衝液中2μg/mlの(ZAβ3)2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、上述の通りにプレートをブロックした。(ZAβ3)2、または、ADB−(ZAβ3)2で免疫化したマウスからの血漿を連続3倍希釈(1/100から開始)で添加した。インキュベート後に、上述の通りにプレートを処理した。アフィボディ(R)に特異的なIgGの濃度を測定するために、標準血漿プールのシェーレ8プール(Scheele 8pool)を用いた。この血清プール中の抗ZIgGの濃度が、His6−ZTaq4:1でコーティングしたプレートで97μg/mlと決定された。シェーレ8プールにおける抗His6−ZTaq4:5、および、抗(ZAβ3)2IgGの濃度が、それぞれ291および97μg/mlと決定された(L0242−14/16)。ポジティブコントロールとして、本発明者らは、標準曲線の屈曲点に近いOD値を与えると予想されるマウス番号117からの血漿(シェーレ7;73日目,1:10,000の希釈で)を用いた。ネガティブコントロールは、ブロッキング緩衝液であった。検出限界は、3ng/mlであった。
【0162】
総IgG ELISA
両方のマウスグループからの0日目および34日目(マウス番号5については21日目)からの血漿をIgG総量に関して解析した。この分析において、ELISAプレートを、ヤギ抗マウスIgG−Fc抗体の(Fab)2フラグメント(サザン・バイオテック,番号1031−05 0.5μg/ml)でコーティングした。連続3倍希釈(それぞれ1:10000および100ng/mlから開始)の血漿または標準(マウスIgG)を、コーティングされたウェルに添加した。ヤギ抗マウスIgG−fab抗体のHRP結合(Fab)2フラグメント(0.2μg/ml)を用いて反応を展開した。基質溶液(イムノピュア(R)TMBピアース番号34021)を添加し、暗所で10分インキュベートした後に発色をストップ溶液の添加によって止めた。
【0163】
阻害ELISA解析
プレートを、コーティング緩衝液中2μg/mlの(ZAβ3)2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、上述の通りにプレートをブロックした。精製した抗(ZAβ3)2のIgGを連続3倍希釈(1μg/mlから開始)で添加した。1時間インキュベートした後に、ビオチン化したタンパク質β−アミロイド40を洗浄しないでウェルに添加した。β−アミロイド40バイオサイト(BioSite)A2275−74Dの最終濃度は、10μg/mlであった。さらに1時間インキュベートした後にプレートを洗浄し、解析する反応に応じて、ヤギ−抗マウスIgG HRP(Dako P0397,1/2000希釈)、または、ストレプトアビジン−HRP(1/5000希釈)のいずれかを添加した。最終的なインキュベートの後に、プレートを洗浄し、上述の通りに展開した。
【0164】
データ解析
ELISAリーダーソフトウェアとして、マジェラン(テカン)を用いた。その結果をデータ解析と発表のためにエクセルにエクスポートした。濃度決定のために、XLfitプログラム、式「用量反応−片側」、方程式205を用いた。毎日の加工したデータと測定タイプ(すなわちIgG、濃度など)を、エクセルファイルで示した。
【0165】
結果
アフィボディ(R)に特異的なIgG ELISAグループ1
6匹の(ZAβ3)2が注射されたマウスからの血漿を(ZAβ3)2でコーティングしたプレートで滴定した。全てのマウスが14日目までに応答したが、マウス5は極めて低い応答を示した。34日目に、最高の抗アフィボディ(R)−IgGレベルが観察された(図15)。34日目の特異的IgGの平均濃度は、278μg/mlであった(表13)。マウス番号5はあまりよく応答せず、死亡時の採血サンプルは21日目のものであった。0日目(すなわち投与前)からの血清サンプルでは、特異的IgG応答は、検出できなかった(データ示さず)。
【0166】
【表13】
【0167】
アフィボディ(R)に特異的なIgG ELISAグループ2
6匹のADB−(ZAβ3)2が注射されたマウスからの血漿を、(ZAβ3)2でコーティングしたプレートで滴定した。どの採血サンプルでも特異的IgG濃度は検出できなかった。(図16)。
【0168】
総IgGのELISA
マウス0日目および34日目(マウス番号5については21日目)両方のグループからの血漿を、(ZAβ:3)2でコーティングされたプレートで滴定した。表15で示されるように、総IgGの量は、両方のグループにおいて34日の期間までに増加した。しかしながら、0日目のレベルが驚くほど低いことを考慮すると、この増加は、マウスの生存中の特定の期間にわたる正常な増加を反映している可能性がある。ビヒクルマウスからの血漿は、適切なコントロールであったと思われる。
【0169】
【表14】
【0170】
阻害ELISA:標的タンパク質
アフィボディ(R)に特異的なIgG抗体が、標的タンパク質とアフィボディ(R)分子との相互作用を中和/阻害する可能性を、阻害ELISAで調査した。ELISAプレートを、上述の通りに(ZAβ3)2でコーティングした。グループ1の34日目からの血漿のプールから精製された総IgGを添加した。IgG抗体を3倍希釈(1μg/mlから)で添加した。この抗体を、コーティングされたアフィボディ(R)分子に1時間結合させ、その後、標的タンパク質β−アミロイド40を最終濃度10μg/mlまで添加した。この反応を、ストレプトアビジン−HRPを用いて展開し、(ZAβ3)2と標的タンパク質との相互作用を可視化した(青いライン)。IgG抗体とコーティングされたアフィボディ(R)分子との相互作用を、抗マウスIgG HRPで可視化した(図17)。具体的には、図17は、阻害ELISAの結果を示す。β−アミロイド40の存在または非存在下での、精製した(ZAβ3)2に特異的なマウス抗体のコーティングされた(ZAβ3)2への結合である。精製したIgGおよび標的タンパク質を、ストレプトアビジンHRPで展開した(◆)。精製したIgGおよび標的タンパク質を、抗マウスIgG HRPで展開した(■)。精製したIgGを、抗マウスIgG HRPで展開した(▲)。この実験を2回繰り返したところ、同じ結果が得られた。
【0171】
コントロールとして、滴定したIgG抗体を、標的タンパク質をまったく加えないでコーティングされたアフィボディ(R)分子と反応させた。図17はまた、抗マウスIgG HRPを用いたIgG−検出に関して、標的タンパク質が存在する場合と存在しない場合とで、OD値がほとんど同一であることを示す。これらの結果から、(ZAβ3)2に特異的なIgG抗体は、(ZAβ3)2とβ−アミロイド40との相互作用を阻害しないことが示される。
【0172】
実施例5
追加のマウス系統において試験された免疫反応の減少
実施例4で示されるように、本発明者らはこれまで、ZTaq4:1−ABDではなくHis6−ZTaq4:1が、非近交系のNMRIマウスで抗体反応を誘導することを観察してきた。この研究において、追加の非近交系のマウス系統(CD1)を試験し、その結果によれば、CD1マウスは、ZTaq4:1−ABDではなくHis6−ZTaq4:1を投与した場合、NM
RIマウスと同様に、特異的IgGを生産することによって応答することが示された。従って、ABDと融合したアフィボディ(R)分子(ZTaq4:1)の注射の際に観察された免疫不応答は、マウスにおける一般的な現象のようである。
【0173】
ABDで誘導された不応答の性質を、NMRIマウスでさらに解析した。マウスの4つのグループに、10回のアフィボディ(R)注射を行い、ここで5回目の注射の後に注射される分子を変えた(処理スキーム2に従って)。その結果によれば、ZTaq4:1−ABDに感作されたマウスは、抗原をHis6−ZTaq4:1にスイッチ切り替えた後に、アフィボディ特異的IgGを生産したことが示された(グループ4)。抗体産生は、His6−ZTaq4:1に切り替えた後、約14日目(これは、通常、実験未使用のマウスが抗体を生産するのに必要な日数である)に始まった。また、ZTaq4:1−ABD、および、His6−ZTaq4:1の混合物が投与される前にZTaq4:1−ABDに感作されたマウス(グループ5)も、アフィボディ(R)分子に対する特異的IgGの生産を開始した。グループ5において観察された特異的な応答は、グループ4で観察された応答よりも小さかったが、これは、グループ5は、注射されたHis6−ZTaq4:1の用量がグループ4と比較して半分しか投与されていないことによる可能性が高い。グループ6におけるマウスは、ZTaq4:1−ABDを投与する前にHis6−ZTaq4:1に感作され、この処理により、抗原の切り替え後に、タイターは時間と共に減少したものの継続的なアフィボディ(R)特異的IgGの生産が起こった。
【0174】
このシェーレ9実験は、主として:1)第二の非近交系のマウス系統(CD1)は、NMRIマウス(BT1−PAR07、BT11−PAR03)と同じようにABDと融合した、および、融合していないアフィボディ(R)分子を投与すると応答するかどうか、および、2)ZTaq4:1−ABD、それに続いてHis6−ZTaq4:1が注射された場合、マウスは、アフィボディ(R)特異的IgG応答を生成するかどうか、という2つの理由で行なわれた。後者の質問の答えによって、我々は、観察されたABDと融合したアフィボディ(R)分子に対する不応答は、能動的な抑制プロセスなのか、または受動的な抑制プロセスなのかを明確にすることができた。表16に、各動物グループにおいて用いられた分子を列挙し、表17および18に、2つの処理スキームを示した。図27Aに、この実験の設定を説明した。
【0175】
【表15】
【0176】
【表16】
【0177】
【表17】
【0178】
材料および方法
アフィボディ(R)ELISA
96ウェル、平底の、高い結合性のコースターELISAプレートを、コーティング緩衝液(10×コーティング緩衝液,150mMのNa2CO3,350mMのNaHCO3,pH9.6)で最終濃度5μg/mlに希釈したHis6−ZTaq4:1でコーティングした。ウェルあたりコーティング溶液100μlを添加し、プレートを4℃で1〜4晩インキュベートした。次に、プレートを手動で脱イオン水で4回洗浄し、ブロッキング緩衝液で1〜2時間ブロックした(200μl/ウェル)。ブロッキング緩衝液を除去し、血漿100μlを各ウェルに添加し、ブロッキング緩衝液で1:100から連続3倍希釈した。アフィボディ(R)に特異的なIgGの濃度を測定するために、標準血漿プールのシェーレ6Bプールを用いた。この血漿プール中の抗His6−ZTaq4:1IgGの濃度は、120μg/mlと決定された。ポジティブコントロールとして、本発明者らは、標準曲線の屈曲点に近いOD値を与えると予想される、シェーレ7実験73日目のマウス番号118からの血漿を1:9200の希釈度で用いた。ネガティブコントロールはブロッキング緩衝液であった。
【0179】
2時間インキュベートした後に、プレートをPBS−T(リン酸緩衝生理食塩水(10×PBS),2.68mMのKCl,1.47mMのKH2PO4,137mMNaCl,8.1mMのNa2HPO4,pH7.4;PBS−Tween(PBS−T),0.05%Tweenを含む1×PBS)で4回洗浄し、ブロッキング緩衝液(PBS−Tween(PBS−T),0.05%Tweenを含む1×PBS)で1:2000に希釈した第二工程の抗体であるHRP結合ヤギ抗マウスIgG(100μl)を各ウェルに添加した。その後プレートを1時間インキュベートした。プレートをPBS−Tで4回洗浄し、基質溶液(イムノピュア(R)1MB)100μlを、各ウェルに添加した。プレートを暗所でインキュベートし、15分後に、ストップ溶液(2MのH2SO4)100μlの添加によって発色を止めた。プレートを、ELISAリーダーで、マジェラン・ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。
【0180】
総IgGのELISA
血漿中の総IgGを決定するために、定量ELISAを行った。
アフィボディ(R)ELISAの手順と同じ手法を用いたが、以下の点で異なる:
ELISAプレートを、濃度0.5μg/mlのアフィニピュア(AffiniPure)(Fab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgGジャクソン(Jackson)115−006−008(Fcγ−フラグメント特異的)でコーティングした。第一および第二工程の希釈をPBS−T(カゼイン非含有)で行い、血漿の連続希釈は、1:10.000で開始した。標準IgGは、クロムピュア(ChromPure)マウスIgGジャクソン015−000−003(分子全体)であり、連続希釈は、100ng/mlから開始した。第二工程の抗体として、1:2000に希釈したペルオキシダーゼ標識アフィニピュアF(ab’)2フラグメントヤギ抗マウスIgG(F(ab’)2−フラグメント特異的)ジャクソン115−036−006を用いた。
【0181】
データ解析
ELISAリーダーソフトウェアとして、マジェラン(テカン)を用いた。その結果を、データ解析と発表のためにエクセルにエクスポートした。濃度決定のために、XLfitプログラム、式「用量反応−片側」、方程式205を用いた。
【0182】
結果
処理スキーム1
グループ1および2は、CD1マウスで構成された。これら動物に、処理スキーム1に従って、His6−ZTaq4:1(グループ1)、または、ZTaq4:1−ABD(グループ2)のいずれかを注射した(表17)。His6−ZTaq4:1を特異的に認識するIgG抗体の検出のために、免疫化の前、その最中およびその後に得られた血液サンプルを、His6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで解析した。
【0183】
グループ1
予想通りに、His6−ZTaq4:1を注射した5匹のマウスは、IgG抗体を生産した。5匹のマウスは全て14日目までに応答し、34日目に最大限の抗アフィボディ(R)−IgG応答を示した(図18)。0日目(投与前)からの血漿中のサンプルにおいて、免疫反応は観察できなかった(データ示さず)。表19は、XLfitプログラムで計算された特異的IgG、および、総IgGの濃度を示す。34日目の特異的IgGの平均濃度は、85μg/mlであった。
【表18】
【0184】
グループ2
グループ2は、ZTaq4:1−ABDが注射された5匹のCD1マウスで構成された。図19に示す通りである。0日目(データ示さず)またはその他のあらゆるサンプリング日からの血漿中のサンプル中にも、特異抗体は検出できなかった。表20に、IgGの総濃度を示す。
【表19】
【0185】
処理スキーム2
グループ3〜6は、10回の注射を受けたNMRIマウスで構成された。グループ3は、全ての注射時にHis6−ZTaq4:1が投与されたが、その他のグループは、最初の5回の注射の後に抗原を切り替える注射スキームで処理された(処理スキーム2,表3.3)。免疫化の前、その最中およびその後に得られた血液サンプルを、His6−ZTaq4:1でコーティングされたプレートで、His6−ZTaq4:1IgG−に対して向けられた抗体に関して解析した。グループ3〜6のいずれの処理前血漿サンプルにも抗体反応性は見出されなかった(データ示さず)。
【0186】
グループ3
グループ3に、処理スキーム2に従ってHis6−ZTaq4:1を注射した(表18)。14日目から特異抗体産生を観察することができた。特異的IgGの濃度は長期にわたり増加し、死亡時の採血で最大値に到達した(図20)。表21に、これらのデータと総IgGの濃度を要約する。45日目での特異的IgGの平均濃度は、71μg/mlであった。
【表20】
【0187】
グループ4
グループ4には、最初の3週間は、ZTaq4:1−ABDの5回の注射が行われ、次に、His6−ZTaq4:1の5回のさらなる注射が行われた。これら動物は、最初の抗原のZTaq4:1−ABDには反応しなかったが、35日目からずっとHis6−ZTaq4:1に特異抗体を生じた。35日目は、注射されるアフィボディ(R)分子を切り替えてから14日目に相当する(図21)。表22に、これらのデータおよび総IgGの濃度を要約する。総IgG濃度は正常であった(ただし異常に高いタイターを有していたマウス159を除く)。45日目(死亡時の採血、および、切り替え後24日目)の特異的IgGの平均濃度は、4μg/mlであった。
【表21】
【0188】
グループ5
グループ5には、最初の3週間は、ZTaq4:1−ABDの5回の注射が投与され、続いて、ZTaq4:1−ABDとHis6−ZTaq4:1との混合物(10μg/タンパク質)の5回の追加の注射が投与された。最初の抗原(すなわちZTaq4:1−ABD)を注射した際の動物では、検出可能な免疫反応は存在しなかった。His6−ZTaq4:1の注射に切り替えた後に、35日目から低いレベルの特異的抗体を検出することができた(図22)。表23に、これらのデータと総IgGの濃度を要約する。45日目の特異的IgGの平均濃度は、0.8μg/mlであった。この反応は、グループ4よりも弱く、これは、より低い用量のHis6−ZTaq4:1による可能性が最も高い。
【表22】
【0189】
グループ6
グループ6には、最初の3週間は、5回のHis6−ZTaq4:1の注射が投与され、続いて、ZTaq4:1−ABDの5回の注射が投与された。その結果を図23で説明した。動物の免疫系は、正常な抗体反応速度論に従って、すなわち以前にHis6−ZTaq4:1の注射で観察されたのと同様に応答した。特異的IgG応答は、28日目で最大限に達し、抗原の切り替え後しばらくして減少した。表24に、これらのデータと総IgGの濃度を要約する。28日目の特異的IgGの平均濃度は62μg/mlであり、45日目における死亡時の採血では42μg/mlであった。
【表23】
【0190】
結果を図27Bで説明した。
【0191】
考察
この研究には2つ主な目的があり、より正確に言えば、a)追加の非近交系のマウスの系統におけるHis6−ZTaq4:1、および、ZTaq4:1−ABDの免疫原性を調査すること、および、b)ABDに融合したアフィボディ(R)分子の観察された不応答は、動物の免疫系の能動的な抑制に起因するものなのか、または、動物の免疫系の単に受動的な無視に起因するものなのかを決定すること、である。
【0192】
その結果によれば、非近交系のCD1マウスは、以前に研究したNMRIマウスと同様に、ZTaq4:1−ABDではなくHis6−ZTaq4:1を認識し、そして、それに結合する特
異抗体を生産することによって応答したことが示された。従って、ABDで誘導された不応答は、NMRI系にのみ関連する応答パターンではなく、一般的な現象のようである。
【0193】
上述したように、ABDが介在する不応答が能動的なプロセスなのか、または受動的なプロセスなのかを決定するために、グループ3〜6のマウスに、ABDに融合した、および、融合していないZTaq4:1の異なる組み合わせを注射した。グループ4および5のマウスに、5回のZTaq4:1−ABDを主に不応答を誘導する目的で注射し、それに続いて、5回のHis6−ZTaq4:1(グループ4)、または、His6−ZTaq4:1とZTaq4:1−ABDとの混合物(グループ5)を注射した。両方のグループは、His6−ZTaq4:1特異的IgG応答を生産することによって応答し、これは、ABDに融合したアフィボディ(R)分子を用いた注射は、免疫系によるタンパク質の能動的な抑制(すなわちアネルギー)を起こさないことを示唆している。この研究結果により、ABDに融合したアフィボディ(R)分子は、血清アルブミンに結合することによって能動的に抑制されるのではなくて、血清アルブミンに結合することによってマウスの免疫系に無視されることが強く示される。最初にHis6−ZTaq4:1が投与されたマウスは、ZTaq4:1−ABDに切り替えた後、レベルはわずかに減少したもののアフィボディ(R)特異的IgGを生産し続けた。
【0194】
実施例6
ラットにおける慢性的に投与された生物学的に活性な分子の免疫原性
この研究において、長期間にわたり異なるアフィボディ(R)分子が注射されたラットで生じた免疫反応を解析した。この報告は、免疫化してから96日間までのデータを網羅する。用いられた分子は、実施例4で述べた通りの(ZAβ3)2、および、ABD−(ZAβ3)2であった。この研究の目的は、1)ラットにおいて特異的な免疫反応を誘導する(ZAβ3)2の能力を解析すること、および、2)ABD−(ZAβ3)2が、ABDを有しないアフィボディ(R)分子より低い免疫反応を示すかどうかを調査すること、である。免疫化スキームの前に、免疫化スキームの最中に9回、および、最後の注射の後に得られた血液サンプルを、反応性に関して解析した。(ZAβ3)2でコーティングされたプレートで、結果によれば、(ZAβ3)2の投与により、IgG応答が起こり、個体間で大きなばらつきがあったが長期にわたり増加したことが示された。それに対して、ABDに融合した(ZAβ3)2分子が注射された全てのラットからの血清中に特異的IgGは検出不可能であったか、または、極めてわずかであった。加えて、ラットにおいて副作用はみられなかった。
【0195】
方法
一般的なELISA方法
一般的に、全てのインキュベート工程に、体積100μl/ウェルを用いた(ただし、ブロッキングには体積200μlを用いた)。プレートを、コーティングのために1日、ブロッキングおよび血漿のために1〜2時間、第二工程の抗体のために1時間、および、基質溶液のために10分間インキュベートした。インキュベーションを室温で行った(ただし、コーティングには、4℃でインキュベートした)。全ての工程の間に、特に他の指定がない限り、ELISA Skan洗浄機300を用いて、洗浄緩衝液(PBS−T)4×350μl/ウェルを用いて洗浄を行った。プレートを、テカン製のELISAリーダーで、マジェラン・ソフトウェアを用いて450nmで読んだ。全ての希釈にPBS−T緩衝液を用いた(ただし、コーティングには、その代わりにコーティング緩衝液を用いた)。
【0196】
ラット抗(ZAβ3)2に特異的なIgG ELISA
プレートを、コーティング緩衝液中2μg/mlの(ZAβ3)2でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、上述の通りにプレートをブロックした。(ZAβ3)2、または、ABD−(ZAβ3)2が注射されたウサギからの血清を連続3倍希釈(1/
10から開始)で添加した。インキュベート後に、プレートを洗浄し、1:6000に希釈したHRP結合ヤギ抗ラットIgG、サザン・バイオテクノロジー(Southern Biotechnology)3050−05を添加した。最終的なインキュベートの後に、プレートを洗浄し、上述の通りに展開した。
【0197】
データ解析
ELISAリーダーソフトウェアとして、マジェラン2(テカン)を用いた。データ解析と発表のために、その結果をエクセルにエクスポートした。濃度決定のために、Xlfit3.0プログラム、式「用量反応−片側」、方程式205を用いた。毎日の加工したデータ、および、測定のタイプ(すなわちIgG、濃度など)を、エクセルファイルで示した。
【0198】
結果
処理および注射スキーム
2つのラットのグループ(1グループあたり10匹)に、同じ用量のアフィボディ(R)分子(200μg/ml)をほぼ28日間毎日注射した。注射スキームの前(0日目)、スケジュールに従って注射スキームの最中、および、最後の注射から2週間後(死亡時の採血)に、血清を採取した。
【0199】
【表24】
【0200】
【表25】
【0201】
(ZAβ3)2およびABD−(ZAβ3)2の注射
個々のラットからの血清サンプルを、連続3倍希釈で、(ZAβ3)2でコーティングされたELISAプレート上で滴定し、方法の章で説明されている通りに、特異抗体の存在に関して解析した。
【0202】
滴定曲線,(ZAβ3)2
図24で示されるように、(ZAβ3)2が注射されたグループ1のラットからの血清は、免疫化から最初の2週間は、応答を示さないか、または、低い応答しか示さなかった。14日後に、抗体のタイターが徐々に増加し、広い範囲で応答を示した。96日後に、全てのラットが応答した(ただし、それでも応答の規模は個々の動物間で差があった)。
【0203】
滴定曲線,ABD−(ZAβ3)2
図25で示されるように、ABD−(ZAβ3)2が注射されたグループ2のラットの血清は、(ZAβ3)2でコーティングしたプレートで試験した場合、注射スキームの最初の96日間は、一貫して抗体反応を示さないか、または、低い抗体反応しか示さなかった。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図2】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図3】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿から精製されたIgGに関するELISA滴定曲線を示す。
【図4】ストレプトキナーゼが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図5】His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図6】His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図7】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図8】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図9】スキーム1(パネルA)、または、スキーム2(パネルB)に従って、ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図10】His6−ZTaq4:5が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図11】ABD−Zher2:4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図12】ABD−(Zher2:4)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図13】ABD−(Zher2:4)3が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図14】ABD−(Zher2:4)4が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図15】(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図16】ABD−(Zαβ:3)2が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図17】実施例4で説明されている阻害ELISA実験の結果を示す。
【図18】His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図19】ZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図20】His6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図21】ZTaq4:1−ABD、次にHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図22】ZTaq4:1−ABD、次にZTaq4:1−ABDとHis6−ZTaq4:1が注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図23】ZTaq4:1、次にZTaq4:1−ABDが注射されたマウスからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図24】(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図25】ABD(ZAβ3)2が注射されたラットからの血漿に関するELISA滴定曲線を示す。
【図26】本発明に係る様々なコンストラクトの配列を示す表である。
【図27】Aは、実施例5の設定の要約であり、Bは、実施例5で得られた結果を説明している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物に投与する際に、生物学的に活性なタンパク質それのみを哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少する医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子の使用。
【請求項2】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、タンパク質およびポリペプチドから選択される化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、天然に存在するポリペプチド、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
天然に存在するポリペプチドは、連鎖球菌のMタンパク質のM1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49、および、タンパク質H;連鎖球菌のタンパク質G、MAG、および、ZAG;ならびに、ファインゴルディア・マグナ由来のPPLおよびPABから選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質G、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質GのABDドメイン、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約214個のアミノ酸残基を含むアルブミン結合性ポリペプチドである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
アルブミン結合性ポリペプチドは、約5〜約46個のアミノ酸残基を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
アルブミン結合性ペプチドは、約10〜約20個のアミノ酸残基を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
アルブミン結合性ペプチドは、DICLPRWGCLW、DLCLRDWGCLW、および、DICLARWGCLWから選択されるアミノ酸配列、ならびに、それらのアルブミン結合性誘導体を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、そのヒト血清アルブミンとの結合を強化するように調整される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの残基Phe−228、Ala−229、Ala−322、Val−325、Phe−326、および、Met−329のうち少なくとも1つ、そして、好ましくはその全部と相互作用することができる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの329位にあるメチオニン残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIB中のへリックス7との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIA中の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのヘリックス2と3との間の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、非タンパク質様有機化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
非タンパク質様有機化合物は、アルブミン結合性非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);ジクロフェナク;サリチル酸;ワルファリン;プロポフォール;および、ハロタンから選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
アルブミン結合性NSAIDは、イブプロフェン、または、カルプロフェンである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
分子は、生物学的に有用な活性を有する第一の部位、および、分子の哺乳動物の血清アルブミンへの結合に介在する第二の部位を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
第一の部位は、生物学的に活性なタンパク質由来である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
分子は、相互作用のKDが、10-6M未満またはそれに等しくなるような血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
分子は、10-7M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
分子は、10-8M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
分子は、10-9M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
分子は、10-10M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
分子は、10-11M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
分子は、10-12M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
分子は、10-13M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項30】
分子は、10-14M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項31】
哺乳動物はヒトである、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
哺乳動物は非ヒト哺乳動物である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
免疫反応は、体液性免疫反応である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、血清アルブミン以外の標的分子と相互作用する能力を含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、標的分子の活性をブロックする能力を含む、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
標的分子は、細胞の表面に存在する、請求項34または35に記載の使用。
【請求項37】
細胞は、癌細胞または前癌細胞である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
細胞の表面に存在する標的分子は、HER2、CD4、CD20、CD22、CD74、CEA、および、EpCAMから選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
標的分子は酵素である、請求項34または35に記載の使用。
【請求項40】
標的分子は、ホルモン受容体、および、サイトカイン受容体から選択される、請求項34または35に記載の使用。
【請求項41】
標的分子は毒素である、請求項34または35に記載の使用。
【請求項42】
毒素はヘビ毒である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
生物学的に活性なタンパク質は、抗体、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ブドウ球菌のタンパク質A、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、フィブロネクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、リポカリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、トランスフェリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ならびに、レクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体から選択される、請求項1〜42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質A、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体である、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質AのBドメイン、または、そのタンパク質Z誘導体、または、その改変された結合親和性を有する変異体を含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、酵素活性を含む、請求項1〜45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、ホルモン活性を含む、請求項1〜46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、薬剤活性を含む、請求項1〜47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
生物学的に活性なタンパク質は、成長ホルモン、毛様体神経栄養因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インスリン、インターフェロンβ、第VIII因子、エリスロポイエチン、GL1P、および、トロンボポイエチンから選択される、請求項1〜48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発される免疫反応を減少させるか、または除去する方法であって、該タンパク質、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体を、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分にカップリングさせ、結合体を形成すること、および、該結合体を該哺乳動物に投与することを含む上記方法。
【請求項51】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発される免疫反応を減少させるか、または除去する方法であって、該タンパク質、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子を形成すること、および、該分子を該哺乳動物に投与することを含む上記方法。
【請求項52】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分または分子は、請求項1〜32のいずれか一項で定義または記載された通りである、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
生物学的に活性なタンパク質は、請求項1〜50のいずれか一項で定義または記載された通りである請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
生物学的に活性なタンパク質の非ヒトまたはヒト哺乳動物への改善された投与方法であって、該生物学的に活性なタンパク質から誘導される少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子を投与することを含み、それによって、該分子は、該生物学的に活性なタンパク質それのみからなる化合物と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、減少した免疫反応を惹起する、上記方法。
【請求項55】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、請求項1〜32のいずれか一項で定義または記載されている、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
生物学的に活性なタンパク質、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体は、請求項1〜50のいずれか一項で定義または記載された通りである、請求項55または56に記載の方法。
【請求項57】
生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子であって、該哺乳動物に投与する際に、該生物学的に活性なタンパク質それのみを該哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、免疫反応が惹起されないか、または、免疫反応が減少される、上記分子。
【請求項58】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、タンパク質およびポリペプチドから選択される化合物を含む、請求項57に記載の分子。
【請求項59】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、天然に存在するポリペプチド、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項58に記載の分子。
【請求項60】
天然に存在するポリペプチドは、連鎖球菌のMタンパク質のM1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49、および、タンパク質H;連鎖球菌のタンパク質G、MAG、および、ZAG;ならびに、ファインゴルディア・マグナ由来のPPLおよびPABから選択される、請求項59に記載の分子。
【請求項61】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質G、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項60に記載の分子。
【請求項62】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質GのABDドメイン、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項61に記載の分子。
【請求項63】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約214個のアミノ酸残基を含むアルブミン結合性ポリペプチドである、請求項59〜62のいずれか一項に記載の分子。
【請求項64】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約46個のアミノ酸残基を含むアルブミン結合性ポリペプチドである請求項63に記載の分子。
【請求項65】
アルブミン結合性ポリペプチドは、約10〜約20個のアミノ酸残基を含む、請求項64に記載の分子。
【請求項66】
アルブミン結合性ポリペプチドは、DICLPRWGCLW、DLCLRDWGCLW、および、DICLARWGCLWから選択されるアミノ酸配列、および、それらの配列のアルブミン結合性誘導体を含む、請求項65に記載の分子。
【請求項67】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、非タンパク質様有機化合物である、請求項66に記載の分子。
【請求項68】
非タンパク質様有機化合物は、アルブミン結合性非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);ジクロフェナク;サリチル酸;ワルファリン;プロポフォール;および、ハロタンから選択される、請求項67に記載の分子。
【請求項69】
アルブミン結合性NSAIDは、イブプロフェン、または、カルプロフェンである、請求項68に記載の分子。
【請求項70】
分子は、生物学的に有用な活性を有する第一の部位、および、分子の哺乳動物の血清アルブミンへの結合に介在する第二の部位を有する、請求項58〜69のいずれか一項に記載の分子。
【請求項71】
第一の部位は、生物学的に活性なタンパク質由来である、請求項70に記載の分子。
【請求項72】
分子は、相互作用のKDが、10-6M未満またはそれに等しくなるような血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項58〜71のいずれか一項に記載の分子。
【請求項73】
分子は、10-7M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項74】
分子は、10-8M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項75】
分子は、10-9M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項76】
分子は、10-10M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項77】
分子は、10-11M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項78】
分子は、10-12M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項79】
分子は、10-13M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項80】
分子は、10-14M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項81】
哺乳動物はヒトである、請求項57〜80のいずれか一項に記載の分子。
【請求項82】
哺乳動物は非ヒト哺乳動物である、請求項57〜80のいずれか一項に記載の分子。
【請求項83】
免疫反応は、体液性免疫反応である、請求項57〜82のいずれか一項に記載の分子。
【請求項84】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、血清アルブミン以外の標的分子と相互作用する能力を含む、請求項57〜83のいずれか一項に記載の分子。
【請求項85】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、標的分子の活性をブロックする能力を含む、請求項84に記載の分子。
【請求項86】
標的分子は、細胞の表面上に存在する、請求項84または85に記載の分子。
【請求項87】
細胞は、癌細胞または前癌細胞である、請求項86に記載の分子。
【請求項88】
細胞の表面に存在する標的分子は、HER2、CD4、CD20、CD22、CD74、CEA、および、EpCAMから選択される、請求項87に記載の分子。
【請求項89】
標的分子は、HER2またはその類似体であり、ここにおいて、生物学的に活性なタンパク質のアミノ酸配列は、VDNKFNKELR QAYWEIQALP NLNWTQSRAF IRSLYDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK、または、そのHER2結合性類似体である、請求項88に記載の分子。
【請求項90】
標的分子は酵素である、請求項85〜86のいずれか一項に記載の分子。
【請求項91】
標的分子は、ホルモン受容体、および、サイトカイン受容体から選択される、請求項85〜86のいずれか一項に記載の分子。
【請求項92】
生物学的に活性なタンパク質は、抗体、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ブドウ球菌のタンパク質A、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、フィブロネクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、リポカリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、トランスフェリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ならびに、レクチン、ならびに、そのフラグメントおよび誘導体から選択される、請求項57〜91のいずれか一項に記載の分子。
【請求項93】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質A、または、そのフラグメントもしくは誘導体である、請求項92に記載の分子。
【請求項94】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質AのBドメイン、または、そのタンパク質Z誘導体、または、その改変された結合親和性を有する変異体を含む、請求項92または93に記載の分子
【請求項95】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、酵素活性を含む、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項96】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、ホルモン活性を含む、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項97】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、薬剤活性を含む、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項98】
生物学的に活性なタンパク質は、成長ホルモン、毛様体神経栄養因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インスリン、インターフェロンβ、第VIII因子、エリスロポイエチン、GL1P、および、トロンボポイエチンから選択される、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項99】
ZTaq4:1−ABD、ABD−Zher2:4、ABD−(Zher2:4)2、ABD−(Zher2:4)3、ABD−(Zher2:4)4、(ZAβ3)2、ABD−および(ZAβ3)2から選択される分子。
【請求項100】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの残基Phe−228、Ala−229、Ala−322、Val−325、Phe−326、および、Met−329のうち少なくとも1つ、そして、好ましくはその全部と相互作用することができる、請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子。
【請求項101】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの329位においてメチオニン残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜100のいずれか一項に記載の分子。
【請求項102】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIBにおいてへリックス7との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜101のいずれか一項に記載の分子。
【請求項103】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIA中の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜102のいずれか一項に記載の分子。
【請求項104】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのヘリックス2と3との間の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜103のいずれか一項に記載の分子。
【請求項105】
請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子、および、製薬上許容できるキャリアーを含む組成物。
【請求項106】
医薬品の製造における、請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子の使用。
【請求項107】
請求項84〜99のいずれか一項に記載の分子と、その標的分子とを含む複合体。
【請求項108】
請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子をコードする核酸。
【請求項1】
哺乳動物に投与する際に、生物学的に活性なタンパク質それのみを哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、免疫反応が減少する医薬品を製造するための、生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子の使用。
【請求項2】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、タンパク質およびポリペプチドから選択される化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、天然に存在するポリペプチド、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
天然に存在するポリペプチドは、連鎖球菌のMタンパク質のM1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49、および、タンパク質H;連鎖球菌のタンパク質G、MAG、および、ZAG;ならびに、ファインゴルディア・マグナ由来のPPLおよびPABから選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質G、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質GのABDドメイン、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約214個のアミノ酸残基を含むアルブミン結合性ポリペプチドである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
アルブミン結合性ポリペプチドは、約5〜約46個のアミノ酸残基を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
アルブミン結合性ペプチドは、約10〜約20個のアミノ酸残基を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
アルブミン結合性ペプチドは、DICLPRWGCLW、DLCLRDWGCLW、および、DICLARWGCLWから選択されるアミノ酸配列、ならびに、それらのアルブミン結合性誘導体を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、そのヒト血清アルブミンとの結合を強化するように調整される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの残基Phe−228、Ala−229、Ala−322、Val−325、Phe−326、および、Met−329のうち少なくとも1つ、そして、好ましくはその全部と相互作用することができる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの329位にあるメチオニン残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIB中のへリックス7との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIA中の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのヘリックス2と3との間の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、非タンパク質様有機化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
非タンパク質様有機化合物は、アルブミン結合性非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);ジクロフェナク;サリチル酸;ワルファリン;プロポフォール;および、ハロタンから選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
アルブミン結合性NSAIDは、イブプロフェン、または、カルプロフェンである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
分子は、生物学的に有用な活性を有する第一の部位、および、分子の哺乳動物の血清アルブミンへの結合に介在する第二の部位を有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
第一の部位は、生物学的に活性なタンパク質由来である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
分子は、相互作用のKDが、10-6M未満またはそれに等しくなるような血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
分子は、10-7M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
分子は、10-8M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
分子は、10-9M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
分子は、10-10M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
分子は、10-11M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項28】
分子は、10-12M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項29】
分子は、10-13M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項30】
分子は、10-14M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項22に記載の使用。
【請求項31】
哺乳動物はヒトである、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
哺乳動物は非ヒト哺乳動物である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
免疫反応は、体液性免疫反応である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、血清アルブミン以外の標的分子と相互作用する能力を含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、標的分子の活性をブロックする能力を含む、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
標的分子は、細胞の表面に存在する、請求項34または35に記載の使用。
【請求項37】
細胞は、癌細胞または前癌細胞である、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
細胞の表面に存在する標的分子は、HER2、CD4、CD20、CD22、CD74、CEA、および、EpCAMから選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
標的分子は酵素である、請求項34または35に記載の使用。
【請求項40】
標的分子は、ホルモン受容体、および、サイトカイン受容体から選択される、請求項34または35に記載の使用。
【請求項41】
標的分子は毒素である、請求項34または35に記載の使用。
【請求項42】
毒素はヘビ毒である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
生物学的に活性なタンパク質は、抗体、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ブドウ球菌のタンパク質A、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、フィブロネクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、リポカリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、トランスフェリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ならびに、レクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体から選択される、請求項1〜42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質A、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体である、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質AのBドメイン、または、そのタンパク質Z誘導体、または、その改変された結合親和性を有する変異体を含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、酵素活性を含む、請求項1〜45のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、ホルモン活性を含む、請求項1〜46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、薬剤活性を含む、請求項1〜47のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
生物学的に活性なタンパク質は、成長ホルモン、毛様体神経栄養因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インスリン、インターフェロンβ、第VIII因子、エリスロポイエチン、GL1P、および、トロンボポイエチンから選択される、請求項1〜48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発される免疫反応を減少させるか、または除去する方法であって、該タンパク質、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体を、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分にカップリングさせ、結合体を形成すること、および、該結合体を該哺乳動物に投与することを含む上記方法。
【請求項51】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物に生物学的に活性なタンパク質を投与する際に誘発される免疫反応を減少させるか、または除去する方法であって、該タンパク質、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子を形成すること、および、該分子を該哺乳動物に投与することを含む上記方法。
【請求項52】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分または分子は、請求項1〜32のいずれか一項で定義または記載された通りである、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
生物学的に活性なタンパク質は、請求項1〜50のいずれか一項で定義または記載された通りである請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
生物学的に活性なタンパク質の非ヒトまたはヒト哺乳動物への改善された投与方法であって、該生物学的に活性なタンパク質から誘導される少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子を投与することを含み、それによって、該分子は、該生物学的に活性なタンパク質それのみからなる化合物と比較して、免疫反応を惹起しないか、または、減少した免疫反応を惹起する、上記方法。
【請求項55】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、請求項1〜32のいずれか一項で定義または記載されている、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
生物学的に活性なタンパク質、または、その生物学的に活性なフラグメントもしくは誘導体は、請求項1〜50のいずれか一項で定義または記載された通りである、請求項55または56に記載の方法。
【請求項57】
生物学的に活性なタンパク質である少なくとも1つの成分、および、哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる少なくとも1つの成分を含む分子であって、該哺乳動物に投与する際に、該生物学的に活性なタンパク質それのみを該哺乳動物に投与した際に誘発される免疫反応と比較して、免疫反応が惹起されないか、または、免疫反応が減少される、上記分子。
【請求項58】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、タンパク質およびポリペプチドから選択される化合物を含む、請求項57に記載の分子。
【請求項59】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、天然に存在するポリペプチド、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項58に記載の分子。
【請求項60】
天然に存在するポリペプチドは、連鎖球菌のMタンパク質のM1/Emm1、M3/Emm3、M12/Emm12、EmmL55/Emm55、Emm49/EmmL49、および、タンパク質H;連鎖球菌のタンパク質G、MAG、および、ZAG;ならびに、ファインゴルディア・マグナ由来のPPLおよびPABから選択される、請求項59に記載の分子。
【請求項61】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質G、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項60に記載の分子。
【請求項62】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、連鎖球菌のタンパク質GのABDドメイン、または、そのアルブミン結合性フラグメントもしくは誘導体である、請求項61に記載の分子。
【請求項63】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約214個のアミノ酸残基を含むアルブミン結合性ポリペプチドである、請求項59〜62のいずれか一項に記載の分子。
【請求項64】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、約5〜約46個のアミノ酸残基を含むアルブミン結合性ポリペプチドである請求項63に記載の分子。
【請求項65】
アルブミン結合性ポリペプチドは、約10〜約20個のアミノ酸残基を含む、請求項64に記載の分子。
【請求項66】
アルブミン結合性ポリペプチドは、DICLPRWGCLW、DLCLRDWGCLW、および、DICLARWGCLWから選択されるアミノ酸配列、および、それらの配列のアルブミン結合性誘導体を含む、請求項65に記載の分子。
【請求項67】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、非タンパク質様有機化合物である、請求項66に記載の分子。
【請求項68】
非タンパク質様有機化合物は、アルブミン結合性非ステロイド系抗炎症薬(NSAID);ジクロフェナク;サリチル酸;ワルファリン;プロポフォール;および、ハロタンから選択される、請求項67に記載の分子。
【請求項69】
アルブミン結合性NSAIDは、イブプロフェン、または、カルプロフェンである、請求項68に記載の分子。
【請求項70】
分子は、生物学的に有用な活性を有する第一の部位、および、分子の哺乳動物の血清アルブミンへの結合に介在する第二の部位を有する、請求項58〜69のいずれか一項に記載の分子。
【請求項71】
第一の部位は、生物学的に活性なタンパク質由来である、請求項70に記載の分子。
【請求項72】
分子は、相互作用のKDが、10-6M未満またはそれに等しくなるような血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項58〜71のいずれか一項に記載の分子。
【請求項73】
分子は、10-7M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項74】
分子は、10-8M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項75】
分子は、10-9M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項76】
分子は、10-10M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項77】
分子は、10-11M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項78】
分子は、10-12M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項79】
分子は、10-13M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項80】
分子は、10-14M未満またはそれに等しい血清アルブミンに関する結合親和性を有する、請求項72に記載の分子。
【請求項81】
哺乳動物はヒトである、請求項57〜80のいずれか一項に記載の分子。
【請求項82】
哺乳動物は非ヒト哺乳動物である、請求項57〜80のいずれか一項に記載の分子。
【請求項83】
免疫反応は、体液性免疫反応である、請求項57〜82のいずれか一項に記載の分子。
【請求項84】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、血清アルブミン以外の標的分子と相互作用する能力を含む、請求項57〜83のいずれか一項に記載の分子。
【請求項85】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、標的分子の活性をブロックする能力を含む、請求項84に記載の分子。
【請求項86】
標的分子は、細胞の表面上に存在する、請求項84または85に記載の分子。
【請求項87】
細胞は、癌細胞または前癌細胞である、請求項86に記載の分子。
【請求項88】
細胞の表面に存在する標的分子は、HER2、CD4、CD20、CD22、CD74、CEA、および、EpCAMから選択される、請求項87に記載の分子。
【請求項89】
標的分子は、HER2またはその類似体であり、ここにおいて、生物学的に活性なタンパク質のアミノ酸配列は、VDNKFNKELR QAYWEIQALP NLNWTQSRAF IRSLYDDPSQ SANLLAEAKK LNDAQAPK、または、そのHER2結合性類似体である、請求項88に記載の分子。
【請求項90】
標的分子は酵素である、請求項85〜86のいずれか一項に記載の分子。
【請求項91】
標的分子は、ホルモン受容体、および、サイトカイン受容体から選択される、請求項85〜86のいずれか一項に記載の分子。
【請求項92】
生物学的に活性なタンパク質は、抗体、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ブドウ球菌のタンパク質A、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、フィブロネクチン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、リポカリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、トランスフェリン、ならびにそのフラグメントおよび誘導体、ならびに、レクチン、ならびに、そのフラグメントおよび誘導体から選択される、請求項57〜91のいずれか一項に記載の分子。
【請求項93】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質A、または、そのフラグメントもしくは誘導体である、請求項92に記載の分子。
【請求項94】
生物学的に活性なタンパク質は、ブドウ球菌のタンパク質AのBドメイン、または、そのタンパク質Z誘導体、または、その改変された結合親和性を有する変異体を含む、請求項92または93に記載の分子
【請求項95】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、酵素活性を含む、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項96】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、ホルモン活性を含む、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項97】
生物学的に活性なタンパク質の生物活性は、薬剤活性を含む、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項98】
生物学的に活性なタンパク質は、成長ホルモン、毛様体神経栄養因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インスリン、インターフェロンβ、第VIII因子、エリスロポイエチン、GL1P、および、トロンボポイエチンから選択される、請求項57〜92のいずれか一項に記載の分子。
【請求項99】
ZTaq4:1−ABD、ABD−Zher2:4、ABD−(Zher2:4)2、ABD−(Zher2:4)3、ABD−(Zher2:4)4、(ZAβ3)2、ABD−および(ZAβ3)2から選択される分子。
【請求項100】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの残基Phe−228、Ala−229、Ala−322、Val−325、Phe−326、および、Met−329のうち少なくとも1つ、そして、好ましくはその全部と相互作用することができる、請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子。
【請求項101】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンの329位においてメチオニン残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜100のいずれか一項に記載の分子。
【請求項102】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIBにおいてへリックス7との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜101のいずれか一項に記載の分子。
【請求項103】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのドメインIIA中の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜102のいずれか一項に記載の分子。
【請求項104】
哺乳動物の血清アルブミンに結合することができる成分は、分子のアルブミンへの結合が強化されるように、ヒト血清アルブミンのヘリックス2と3との間の残基との相互作用を形成するアミノ酸残基を含む、請求項57〜103のいずれか一項に記載の分子。
【請求項105】
請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子、および、製薬上許容できるキャリアーを含む組成物。
【請求項106】
医薬品の製造における、請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子の使用。
【請求項107】
請求項84〜99のいずれか一項に記載の分子と、その標的分子とを含む複合体。
【請求項108】
請求項57〜99のいずれか一項に記載の分子をコードする核酸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
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【図21】
【図22】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2007−531788(P2007−531788A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506830(P2007−506830)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001321
【国際公開番号】WO2005/097202
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(307015286)アフィボディ・アーベー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001321
【国際公開番号】WO2005/097202
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(307015286)アフィボディ・アーベー (9)
【Fターム(参考)】
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