説明

新規チオフェン化合物、及びそれを原料とするカフェオフランまたはその類縁体の製造方法

【課題】カフェオフランの効率的な製造に有用な中間体として、新規チオフェン化合物を提供する。当該新規チオフェン化合物を中間原料とするカフェオフランまたはその類縁体の製造方法を提供する。
【解決手段】下式(1)の新規チオフェン化合物:


〔式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは水素原子またはアルコール保護基、Rは水素原子、−COR基または−C(OH)R基(なおここで、R及びRは低級アルキル基。)。但し、R及びRが水素原子のとき、Rは水素原子、メチル基、またはn−プロピル基のいずれでもない。〕のうち、下式(2)のチオフェン化合物を、遷移金属触媒の存在下、還元および環化して示されるカフェオフランまたはその類縁体(3a)を製造する:


(式中、Rは水素原子または低級アルキル基、Rは低級アルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規チオフェン化合物に関する。また本発明は、当該新規チオフェン化合物を中間原料とするカフェオフランまたはその類縁体(以下、これらを「カフェオフラン類」と総称する)の製造方法に関する。本発明の新規チオフェン化合物は、香気成分物質であるカフェオフラン類の合成中間体として有用である。さらに本発明は、それ自体が香気性を有しており香気成分物質として有効に利用できる新規チオフェン化合物(以下、これを上記チオフェン化合物と区別するために「香気性チオフェン化合物」とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
カフェオフラン(化合物名:2,3−ジヒドロ−6−メチルチエノ[2,3−c]フラン)は、コーヒー中に存在する特徴的な香気成分物質として1963年、M.Stollらにより単離された化合物である(非特許文献1)。その構造決定は、G.Buchiらによって行われ、下式に示される構造を有することが明らかにされ、カフェオフランと命名された(非特許文献2)
【0003】
【化1】

【0004】
従来のカフェオフランの合成法は、G.Buchiらによる方法(非特許文献2)、E.Brennaらによる方法(非特許文献3及び4)、D.Rewickiらの方法(非特許文献5)が知られているが、いずれも効率的なものとは言い難い。具体的には、G.Buchiらの方法は、4,5−ジヒドロチオフェン−3(2H)−オンを原料として用いて3ステップでカフェオフランを合成する方法であるが、第一ステップのクライゼン反応の収率が低いという問題の他、第二ステップのグリニャール反応で2種類の生成物が出来るなどの難点がある。E.Brennaらの方法では、原料から10ステップもの多数の工程を必要とする。D.Rewickiらの方法では、トータルの収率が12%であるものの、原料物質となる3,4−ジブロモフランの入手が困難である。このように従来の合成方法はいずれも効率的とは言えず、工業的に量産する方法としては問題点がある。
【非特許文献1】Helv.Chim.Acta,50,628,(1967)
【非特許文献2】J.Org.Chem., 36,199,(1971)
【非特許文献3】J.Chem.Research(S),74,(1998)
【非特許文献4】J.Chem.Research(M),551,(1998)
【非特許文献5】Liebigs Ann.Chem.,625,(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記カフェオフランの合成に関する従来の問題を解決することを目的になされたものである。具体的には、本発明は、カフェオフランまたはその類縁体(カフェオフラン類)の効率的な合成方法を提供することを目的とする。また本発明は、当該カフェオフラン類を効率的に合成するための原料または合成中間体として有効に利用できる、新規なチオフェン化合物を提供することを目的とする。さらに本発明は、当該チオフェン化合物を原料または合成中間体として用いて製造される、香気成分物質として有用な新規な香気性チオフェン化合物、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上述した如き課題に鑑みて、短い工程で効率的に、香気成分物質として有用なカフェオフラン類を製造する方法を開発するために鋭意研究を重ねていたところ、あるチオフェン化合物を遷移金属触媒を用いて水素雰囲気下で反応することによって、還元と同時に環化が生じ、1ステップで、2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン骨格を有するカフェオフラン類が製造できることを見出した。そして本発明者は、上記チオフェン化合物が、入手が容易な原料から短工程で製造できる新規化合物であり、これを原料または合成中間体として、上記新規な反応を用いることによって、本発明の目的であるカフェオフラン類を効率よく製造することができることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記項1に示す新規チオフェン化合物である。
項1. 一般式(1)で示されるチオフェン化合物:
【0008】
【化2】

【0009】
〔式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは水素原子またはアルコール保護基、Rは水素原子、−COR基または−C(OH)R基である(なお、ここで、R及びRはいずれも炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)。但し、R及びRが水素原子のとき、Rは水素原子、メチル基、またはn−プロピル基のいずれでもない。〕。
【0010】
また本発明は、下記項2〜4に示す、上記新規チオフェン化合物を用いたカフェオフランまたはその類縁体の製造方法である:
項2.一般式(2)で示されるチオフェン化合物を、遷移金属触媒の存在下、水素雰囲気下で、還元および環化する工程を有する、一般式(3a)で示されるカフェオフランまたはその類縁体を製造する方法:
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
項3.遷移金属触媒がロジウム触媒である、項2に記載の製造方法。
【0013】
項4.下式で示される工程A〜D:
工程A:化合物(4)の水酸基を保護して化合物(5)を取得する工程
工程B:上記化合物(5)をアシル化して化合物(6)を取得する工程
工程C:上記化合物(6)を脱保護して化合物(7)を取得する工程、及び
工程D:上記化合物(2)を、遷移金属触媒の存在下、水素雰囲気下で、還元および環化する工程
を含む、一般式(3a)で示されるカフェオフランまたはその類縁体の製造方法:
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R2’はアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)。
【0016】
また本発明は、項5に掲げる新規カフェフラン類縁体を提供するものである:
項5.4-メチル-6-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン、4-エチル-6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン、または4-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン。
【0017】
さらに、本発明者は、上記の項1に記載する新規チオフェン化合物を原料とすることによって、香気性を有する新規なチオフェン化合物が製造できることを確認した。かかる知見に基づいて、さらに本発明は、下記項6及び7に示す、香気成分物質として有用な新規チオフェン化合物(香気性チオフェン化合物)、及びその製造方法を提供する:
項6.下記一般式(7)で示されるチオフェン化合物:
【0018】
【化5】

【0019】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)。
項7.下式に示される化合物(8)を環化する工程を有する、項6に記載するチオフェン化合物(7)の製造方法:
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)。
【0022】
前述するカフェオフラン及びその類縁体(3a)、並びに上記項6記載の新規チオフェン化合物(7)は香気性を有しており、香気成分物質として有用である。従って、本発明は、下記項8及び9に示すように、香気成分物質であるカフェオフランまたはその類縁体及び上記新規チオフェン化合物(7)の用途に関する:
項8.一般式(3)で示されるカフェオフラン若しくはその類縁体:
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R4’は水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)、
及び項6記載のチオフェン化合物(7)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、10−2〜10ppbの割合で含むことを特徴とする香料組成物。
項9.一般式(3)で示されるカフェオフラン若しくはその類縁体:
【0025】
【化8】

【0026】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R4’は水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)、
及び項6記載のチオフェン化合物(7)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、10−3〜10ppbの割合で含むことを特徴とする飲食品。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、新規チオフェン化合物、並びに当該新規チオフェン化合物を中間原料とするカフェオフランまたはその類縁体の製造方法が提供できる。本発明の新規チオフェン化合物は、香気成分物質であるカフェオフラン類の合成中間体として有用である。さらに本発明によれば、それ自体が香気性を有しており香気成分物質として有効に利用できる新規チオフェン化合物(香気性チオフェン化合物)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(1)新規チオフェン化合物
本発明は、下記一般式(1)で示されるチオフェン化合物に関する。
【0029】
【化9】

【0030】
ここで、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を表す。低級アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基などの炭素数1乃至4の低級アルキル基を例示することができる。好ましくは、水素原子、またはメチル基若しくはエチル基といった炭素数1または2の低級アルキル基である。
【0031】
は水素原子またはアルコール保護基を表す。アルコール保護基としては、アルコールの水酸基を保護するために当業界で使用される公知のものを広く用いることができる。制限はされないが、具体的には、テトラヒドロフラニル基(THF基)、テトラヒドロピラニル基(THP基)、メトキシメチル基(MOM基)、t-ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)、アセチル基、エトキシメチル基(EOM基)、ベンジルオキシメチル基(BOM基) 等を例示することができる。好ましくはテトラヒドロピラニル基(THP基)、メトキシメチル基(MOM基) である。
【0032】
は水素原子、−CORで表される基、または−C(OH)Rで表される基である。ここでR及びRは、いずれも炭素数1乃至4の低級アルキル基を表す。低級アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基などの炭素数1乃至4の低級アルキル基を例示することができる。好ましくは、メチル基またはエチル基といった炭素数1または2の低級アルキル基である。
【0033】
本発明が提供するチオフェン化合物(1)は、大きく分けて下記の3群〔チオフェン化合物(A)〜(C)〕に分類することができる。
【0034】
(i)チオフェン化合物(A)
【0035】
【化10】

【0036】
(式中、R2’はアルコール保護基を示す。)
かかるチオフェン化合物(A)は、上記一般式(1)において、R及びRがいずれも水素原子である場合のチオフェン化合物に相当する。ここでアルコール保護基としては、前述するものをいずれも挙げることができる。好ましくはテトラヒドロピラニル基(THP基)であり、かかるアルコール保護基を有するチオフェン化合物(A)としては、実施例1(1)に記載する2-(3-チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(化合物(b))を挙げることができる。
【0037】
チオフェン化合物(A)は、チオフェン-3-メタノールの水酸基を、定法に従ってアルコール保護基で保護することによって容易に合成することができる(工程A)。
【0038】
【化11】

【0039】
(式中、R2’はアルコール保護基を示す。)
具体的には、実施例1に示すように、チオフェン-3-メタノールをアルコール保護剤と反応させることによって実施することができる。なお、反応条件は特に制限されず、例えば、使用するアルコール保護剤に応じたpH条件で実施することができる。具体的には、アルコール保護剤として後述するテトラヒドロフランを用いる場合は中性条件、また3,4-ジヒドロ-2H-ピランを用いる場合は酸性条件を、好適に使用することができる。
【0040】
アルコール保護剤としては、結合するアルコール保護基に応じて、テトラヒドロフラン(THF基の場合)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(THP基の場合)、クロロメチルメチルエーテル(MOM基の場合)、t-ブチルジメチルシリルクロライド(TBDMS基の場合)、無水酢酸(アセチル基の場合)、クロロメチルエチルエーテル(EOM基の場合)、クロロメチルベンジルエーテル(BOM基の場合)を挙げることができる。好ましくは3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、またはクロロメチルメチルエーテルである。
【0041】
かかる反応は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル、トルエン、アセトニトリル、ピリジン等、使用するアルコール保護剤の種類に応じた溶媒を使用して、通常−10℃〜80℃の条件で行うことができる。
【0042】
なお、この反応は、必要に応じて(例えば、反応を酸性条件下で行う場合)、硫酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸またはピリジウムなどの酸性触媒を添加し、酸性触媒下で行うことができる。
【0043】
(ii)チオフェン化合物(B)
【0044】
【化12】

【0045】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは水素原子またはアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
かかるチオフェン化合物(B)は、上記一般式(1)において、Rが−CORである場合のチオフェン化合物に相当する。低級アルキル基は、RまたはRのいずれも、好ましくはメチル基またはエチル基といった炭素数1または2の低級アルキル基である。またアルコール保護基としては、前述するものをいずれも挙げることができるが、好ましくはテトラヒドロピラニル基(THP基)である。
【0046】
チオフェン化合物(B)に含まれる化合物としては、具体的に、実施例1〜3に記載するように、Rが水素原子であって、Rがアルコール保護基、Rがメチル基またはエチル基等の炭素数1または2の低級アルキル基である、1-{3-[(テトラヒドロ-2H-2-ピラニルオキシ)メチル]-2-チエニル}-1-エタノン(化合物(c))または、1-{3-[(テトラヒドロ-2H-2-ピラニルオキシ)メチル]-2-チエニル}-1-プロパノン(化合物(f))、並びにRが水素原子であって、Rが水素原子、Rがメチル基またはエチル基等の炭素数1または2の低級アルキル基である、1-[3-(ヒドロキシメチル)-2-チエニル]-1-エタノン(化合物(d))または、1-[3-(ヒドロキシメチル)-2-チエニル]-1-プロパノン(化合物(g))を挙げることができる。また実施例6、9および10に記載する、Rがメチル基やエチル基等の炭素数1または2の低級アルキル基、Rがアルコール保護基、Rがメチル基やエチル基等の炭素数1または2の低級アルキル基である、1-{3-[(テトラヒドロ-2H-2-ピラニルオキシ)エチル]-2-チエニル}-1-プロパノン(化合物(D))、1-{3-[(テトラヒドロ-2H-2-ピラニルオキシ)プロピル]-2-チエニル}-1-エタノン(化合物(U))、および1-{3-[(テトラヒドロ-2H-2-ピラニルオキシ)プロピル]-2-チエニル}-1-プロパノン(化合物(X))を挙げることができる。 上記のRが水素原子であって、Rがアルコール保護基であるチオフェン化合物(B-1)(化合物(c)、(f))は、実施例1〜3に示すように、前述するチオフェン化合物(A)を定法に従ってアシル化することによって合成することができる(工程B)。
【0047】
【化13】

【0048】
(式中、R2’はアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
この反応は、具体的には、実施例1〜3の工程Bに示すように、チオフェン化合物(A)に、アルキル金属試薬を反応させた後に、アシル化試薬を反応させることによって実施することができる。かかる反応は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはトルエン等、結合させるアシル基の種類に応じた溶媒を使用して、通常−100℃〜20℃の条件で行われる。
【0049】
ここでアルキル金属試薬としては、制限されないが、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、及びt-ブチルリチウムを挙げることができる。好ましくはn-ブチルリチウムである。アルキル金属試薬の使用割合は、特に制限されないが、チオフェン化合物(A)1molに対して、通常1〜1.5mol、好ましくは1〜1.1molを挙げることができる。
【0050】
またアシル化試薬としては、制限されないが、無水酢酸、無水プロピオン酸、アセチルクロライド及びプロピオニルクロライドを挙げることができる。好ましくは無水酢酸、無水プロピオン酸である。アシル化試薬の使用割合は、特に制限されないが、チオフェン化合物(A)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは1〜1.2molを挙げることができる。
【0051】
上記のR及びRがいずれも水素原子であるチオフェン化合物(B-2)(化合物(d)、(g))は、実施例1及び3に示すように、上記で得られるチオフェン化合物(B-1)(Rがアルコール保護基である)のアルコール保護基を、定法に従って脱保護することによって合成することができる(工程C)。
【0052】
【化14】

【0053】
(式中、R2’はアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
具体的には、実施例1及び3の工程Cに示すように、チオフェン化合物(B-1)を、 有機金属試薬と反応することによって、または酸性触媒の存在下、アルコールと反応することによって実施することができる。かかる反応は、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、プロパノール、またはトルエン等の溶媒を使用して、通常−30℃〜80℃の条件で行われる。
【0054】
ここで有機金属試薬としては、制限されないが、ジメチルアルミニウムクロライド、またはジエチルアルミニウムクロライドなどを挙げることができる。好ましくはジメチルアルミニウムクロライドである。有機金属試薬の使用割合は、特に制限されないが、チオフェン化合物(B−1)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは2〜2.5molを挙げることができる。
【0055】
また酸性触媒としては硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムなどを例示することができる。さらにアルコールとしてはエタノール、メタノールを例示することができる。
【0056】
また本発明が対象とするチオフェン化合物(B)には、R及びRのいずれもがメチル基等の炭素数1乃至4の低級アルキル基であって、Rが水素原子であるチオフェン化合物(B−3)が含まれる。具体的には、実施例4(2)に記載する、1-[3-(1-ヒドロキシエチル))-2-チエニル]-1-エタノン(化合物(j))、実施例6(4)に記載する、1-[3-(1-ヒドロキシエチル))-2-チエニル]-1-プロパノン(化合物(E))、実施例9(2)に記載する、1-[3-(1-ヒドロキシプロピル))-2-チエニル]-1-エタノン(化合物(V))、および実施例10(2)に記載する、1-[3-(1-ヒドロキシプロピル))-2-チエニル]-1-プロパノン(化合物(Y))を例示することができる。 かかるチオフェン化合物(B-3)(例えば、実施例4に記載する化合物(j))は、例えば実施例1〜3に示すように、チオフェン−3−メタノールを、工程A(水酸基の保護)、工程B(アシル化)及び工程C(脱保護)に供して、2−アシルチオフェン−3−メタノール〔1-[2-(ヒドロキシメチル)-2-チエニル]-1-アルカノン〕(例えば、化合物(c)または(g))を調製し、次いで得られた2−アシルチオフェン−3−メタノールを、下式で示すように、酸化して(工程(i))、得られたアルデヒド化合物(2-アシル-3-チオフェンカルボアルデヒド:化合物(i))をアルキル化する(工程(ii))ことによって合成することができる。
【0057】
【化15】

【0058】
(式中、R及びRは、同一または異なって、炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
工程(i)は、具体的には、実施例4(1)に示すように、例えば2−アシルチオフェン−3−メタノール(例えば、化合物(d))を、二酸化マンガンや酸化マグネシウムなどの酸化金属の存在下、 酸化することによって実施することができる。その他、酸化反応は、ジメチルスルホキシド中で塩化オキザリル、ジシクロヘキシルカルボジイミド、酸無水物、または塩素などを反応させる方法、並びにジメチルスルフィドとN−クロロスクシイミドを反応させる方法によっても実施することが出来る。かかる反応は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル、またはジメチルスルホキシド等の溶媒を使用して、通常−30℃〜100℃の条件で行われる。
【0059】
また工程(ii)は、実施例4(2)に示すように、上記で工程(i)で得られたアルデヒド化合物を、有機金属試薬と反応することによって実施することができる。かかる反応は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エーテル、またはトルエン等の溶媒を使用して、通常−30℃〜100℃の条件で行われる。なお、ここで有機金属試薬としては、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド等を使用することができる。
【0060】
さらに上記チオフェン化合物(B-3)の水酸基を、定法に従ってアルコール保護剤で保護することによって、R及びRのいずれもがメチル基等の炭素数1乃至4の低級アルキル基であって、R2’がアルコール保護基である、チオフェン化合物(B-4)を合成することができる。
【0061】
【化16】

【0062】
(式中、R及びRは、同一または異なって、炭素数1乃至4の低級アルキル基、R2’はアルコール保護基を示す。)
(iii)チオフェン化合物(C)
【0063】
【化17】

【0064】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは水素原子またはアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
かかるチオフェン化合物(C)は、上記一般式(1)において、Rが−C(OH)Rである場合のチオフェン化合物に相当する。低級アルキル基は、RまたはRのいずれも、好ましくはメチル基またはエチル基といった炭素数1または2の低級アルキル基である。またアルコール保護基としては、前述するものをいずれも挙げることができるが、好ましくはテトラヒドロピラニル基(THP基)である。
【0065】
チオフェン化合物(C)に含まれる好適な化合物としては、具体的に、実施例5に記載する、R及びRがいずれも水素原子であって、Rがメチル基またはエチル基等の炭素数1または2の低級アルキル基である、1-(3-ヒドロキシメチル-2-チエニル)-1-エタノール(化合物(l))または、1-{(3-ヒドロキシメチル)-2-チエニル}-1-プロパノール(化合物(n))を挙げることができる。 上記のRが水素原子であって、Rは水素原子またはアルコール保護基、Rが低級アルキル基であるチオフェン化合物(C-1)は、実施例5に示すように、前述するチオフェン化合物(B-1)または(B-2)を定法に従って還元することによって合成することができる(工程(iii))。
【0066】
【化18】

【0067】
(式中、Rは水素原子またはアルコール保護基、R及びRは同一の炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
またRが低級アルキル基であって、Rが水素原子またはアルコール保護基、Rが低級アルキル基であるチオフェン化合物(C-2)は、実施例5の方法に準じて、前述するチオフェン化合物(B-3)を定法に従って還元することによって合成することができる(工程(iii))。
【0068】
【化19】

【0069】
(式中、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは水素原子またはアルコール保護基、R及びRは同一の炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
これらの還元反応は、制限されないが、実施例5に示すように、チオフェン化合物(B)(チオフェン化合物(B-1)、(B-2)または(B-3))を、例えば水素化アルミニウムリチウムや水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素化合物と反応することによって実施することができる。かかる反応は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル、またはトルエン等の溶媒を使用して、通常−20℃〜50℃の条件で行うことができる。
【0070】
上記各チオフェン化合物の製造方法において、各反応終了後の後処理操作は、特に制限するものではないが、例えば反応終了後、得られた反応液を減圧濃縮し、次いでシリカゲルを利用したクロマトグラフィー(例えばシリカゲル分集薄層クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)、蒸留、再結晶等の任意の精製操作に供することもできる。
【0071】
斯くして得られるチオフェン化合物(1)は、後述するように、香気成分物質として有用なカフェオフランまたはその類縁体を効率よく製造するための原料または合成中間体として有効に利用することができる。
【0072】
(2)カフェオフランまたはその類縁体の製造方法
(2-1) 本発明は、一般式(3a)で示されるカフェオフランまたはその類縁体(以下、カフェオフラン類ともいう)の新規な製造法を提供する。
【0073】
【化20】

【0074】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
ここでRまたはRで示される低級アルキル基としては、同一または異なって、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基などの炭素数1乃至4の低級アルキル基を例示することができる。好ましくは、メチル基またはエチル基といった炭素数1または2の低級アルキル基である。カフェオフラン〔化学名:6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン〕は、上記一般式(3)において、Rが水素原子、Rがメチル基である、2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン骨格を有する化合物(2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン化合物)である。かかるカフェオフランの類縁体として、好ましくは、一般式(3)において、Rが水素原子、Rがエチル基であるエチルカフェオフラン〔化学名:6-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン〕(化合物(h)):RとRのいずれもがメチル基であるジメチルカフェオフラン〔化学名:4,6-ジメチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン〕(化合物(k)):Rがメチル基、Rがエチル基である4-メチル-6-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(F)):Rがエチル基、Rがメチル基である4-エチル-6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(W)):RとRがいずれもエチル基である4,6-ジエチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(Z))を挙げることができる。
【0075】
かかるカフェオフラン類(3)は、一般式(2)で示されるチオフェン化合物を還元及び環化することによって合成することができる(工程D)。当該チオフェン化合物(2)は、前述するチオフェン化合物(B-2)または(B-3)に相当するものである。
【0076】
【化21】

【0077】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
具体的には、カフェオフラン類(3a)は、前述するチオフェン化合物(2)[(B-2)または(B-3)]を、水素雰囲気下、遷移金属触媒を用いて反応することによって合成することができる。
【0078】
遷移金属触媒としては、制限はされないが、例えばロジウム触媒、 パラジウム触媒を挙げることができる。好ましくはロジウム触媒であり、より好ましくはトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロライドである。遷移金属触媒の使用量も特に制限されないが、チオフェン化合物(2)1molに対して、通常0.001〜0.5mol、好ましくは0.01〜0.1molの割合で用いることができる。
【0079】
水素雰囲気としては、特に制限はされないが、好ましくはガス圧力が0.1Mpa〜5Mpaの範囲にある水素ガス雰囲気下、より好ましくはガス圧力が0.5Mpa〜2Mpaにある水素ガス雰囲気下を例示することができる。
【0080】
反応条件に特別な限定はないが、通常、反応容器に上記遷移金属触媒及び溶媒を加え、チオフェン化合物(2)を溶媒に溶解して加えて、50〜150℃程度、好ましくは80℃〜120℃の温度下で、0.5〜48時間、好ましくは2〜24時間程度加熱攪拌することにより行われる。
【0081】
ここで反応に用いる溶媒としては、制限されないが、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンなどベンゼン系溶媒、または塩化メチレンなどの塩素系溶媒を挙げることができる。
【0082】
上記の反応終了後、必要に応じて、得られた反応液を減圧濃縮し、次いでシリカゲルを利用したクロマトグラフィー(例えばシリカゲル分集薄層クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)、蒸留、再結晶等の任意の精製操作に供してもよく、斯くして本発明の目的化合物であるカフェオフラン類(3a)を得ることができる。なお、本発明の方法で使用する遷移金属触媒は、公知の方法により回収して、再利用することができる。
【0083】
上記カフェオフラン類の製造に際して、原料として使用されるチオフェン化合物(2)は、前述するチオフェン化合物(B-2)または(B-3)の製造方法に従って、調製することができる。
【0084】
本発明のカフェオフラン類(3a)の製造方法には、下式で示される方法が含まれる。
【0085】
【化22】

【0086】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R2’はアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)。
【0087】
当該方法は、下記の工程A〜Dによって実施することができる。
【0088】
工程A:化学式(4)で示される化合物〔チオフェン-3-メタノール(Rが水素原子の場合)または3-(1-ヒドロキシアルキル)チオフェン(Rが低級アルキル基の場合)〕の水酸基を保護する工程である。かかる工程は、具体的には、当該化合物(4)〔チオフェン-3-メタノール、3-(1-ヒドロキシアルキル)チオフェン〕を酸性触媒の存在下、もしくは中性または塩基性条件下で、アルコール保護剤と反応することによって実施することができる。アルコール保護剤としては、結合させるアルコール保護基に応じて、テトラヒドロフラン、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、クロロメチルメチルエーテル、t-ブチルジメチルシリルクロライド、無水酢酸、クロロメチルエチルエーテル、クロロメチルベンジルエーテルを挙げることができる。好ましくは3,4-ジヒドロ-2H-ピランである。
【0089】
かかる反応は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル、トルエン、アセトニトリルまたはピリジン等、使用するアルコール保護剤の種類に応じた溶媒を使用して、通常−10℃〜80℃の条件で行うことができる。なお、この反応は、必要に応じて、硫酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸、ピリジウムなどの酸性触媒を添加し、酸性触媒の存在下で行うことができる。斯くして、化学式(5)で示される化合物を得ることができる。
【0090】
工程B:上記工程Aで得られる化合物(5)〔例えば、アルコール保護剤として3,4-ジヒドロ-2H-ピランを使用した場合、2-(3-チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(Rが水素原子の場合)または2-(1-アルキル-1-(3-チエニル)メチルオキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(Rが低級アルキル基の場合)〕をアシル化する工程である。
【0091】
かかる工程は、具体的には、化合物(5)に、アルキル金属試薬を反応させた後に、アシル化試薬を反応させることによって実施することができる。かかる反応は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはトルエン等の溶媒を使用して、通常−100℃〜20℃の条件で行うことができる。
【0092】
ここでアルキル金属試薬としては、制限されないが、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムを挙げることができる。好ましくはn-ブチルリチウムである。アルキル金属試薬の使用割合は、特に制限されないが、化合物(5)1molに対して、通常1〜1.5mol、好ましくは1〜1.1molを挙げることができる。
【0093】
またアシル化試薬としては、制限されないが、無水酢酸、無水プロピオン酸、アセチルクロライド、プロピオニルクロライドを挙げることができる。好ましくは無水酢酸、無水プロピオン酸である。アシル化試薬の使用割合は、特に制限されないが、化合物(5)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは1〜1.2molを挙げることができる。斯くして、化学式(6)で示される化合物を得ることができる。
【0094】
工程C:工程Bで得られる化合物(6)のアルコール保護基を脱離(脱保護)する工程である。
【0095】
かかる工程は、具体的には、化合物(6)を、有機金属試薬と反応することによって、または酸性触媒の存在下、 アルコールと反応することによって実施することができる。かかる反応は、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、プロパノールまたはトルエン等の溶媒を使用して、通常−30℃〜80℃の条件で行うことができる。
【0096】
ここで有機金属試薬としては、制限されないが、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどを挙げることができる。好ましくはジメチルアルミニウムクロライドである。有機金属試薬の使用割合は、特に制限されないが、化合物(6)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは2〜2.5molを挙げることができる。また酸性触媒としては硫酸、塩酸、(±)-カンファースルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホナートなどを例示することができる。さらにアルコールとしてはエタノール、メタノールなどを例示することができる。斯くして、化学式(2)で示される化合物を得ることができる。
【0097】
工程D:工程Cで得られる化合物(2)を還元および環化する工程である。かかる工程は、化合物(2)を、水素雰囲気下、遷移金属触媒を用いて反応することによって実施することができる。具体的な方法、遷移金属触媒の種類やその割合などについては前述の通りである。
【0098】
斯くして、カフェオフラン類は、化合物(4)〔チオフェン-3-メタノール(Rが水素原子の場合)または3-(1-ヒドロキシアルキル)チオフェン(Rが低級アルキル基の場合)〕を出発原料として効率よく合成することができる。従って、かかる方法によれば、カフェオフラン類を短工程で、工業的に量産することが可能である。
【0099】
斯くして得られるカフェオフラン類(3a)(2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン化合物)は、化合物の種類に応じて固有の香気を有しており、香気成分物質として有用である。例えば、カフェオフランは、0.000005重量%の希釈水溶液とした場合、焙煎したナッツ様香気、または野菜様のグリーン香、またはカラメル様の甘い香りを奏する。またエチルカフェオフランは、0.000005重量%の希釈水溶液とした場合、甘味のあるロースト感のある香りを奏し、またジメチルカフェオフランは、0.000005重量%の希釈水溶液とした場合、青みのある生豆様の香り、または野菜のグリーン香、またはみずみずしさのある香りを奏する。
【0100】
またカフェオフラン類(3a)として、Rがメチル基、Rがエチル基である4-メチル-6-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(F))(実施例6):Rがエチル基、Rがメチル基である4-エチル-6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(W))(実施例9)は、いずれも文献新規な化合物であり、化合物(F)はナッツ様の香り、化合物(W)はスパイシーな香りを有している。また、RとRがいずれもエチル基である4,6-ジエチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(Z))(実施例10)は乾いたナッツ様の香りを有している。
【0101】
(2-2) また本発明は、一般式(3b)で示されるカフェオフランの類縁体(以下、カフェオフラン類(3b)ともいう)の製造法を提供する。
【0102】
【化23】

【0103】
(式中、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
かかるカフェオフランの類縁体(3b)として、好ましくは、一般式(3b)において、Rがメチル基である4-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(L)):Rがエチル基である4-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(T))を挙げることができる。なお、後者の4-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フランは文献新規な化合物である。
【0104】
かかるカフェオフラン類(3b)は、下式(9)で示される化合物を還元及び環化することによって合成することができる(工程J)。
【0105】
【化24】

【0106】
(式中、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
具体的には、カフェオフラン類(3b)は、化合物(9)を水素雰囲気下、遷移金属触媒を用いて反応することによって合成することができる。遷移金属触媒としては、制限はされないが、例えばロジウム触媒、 パラジウム触媒を挙げることができる。好ましくはロジウム触媒であり、より好ましくはトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロライドである。遷移金属触媒の使用量も特に制限されないが、化合物(9)1molに対して、通常0.001〜0.5mol、好ましくは0.01〜0.1molの割合で用いることができる。
【0107】
水素雰囲気としては、特に制限はされないが、好ましくはガス圧力が0.1Mpa〜5Mpaの範囲にある水素ガス雰囲気下、より好ましくはガス圧力が0.5Mpa〜2Mpaにある水素ガス雰囲気下を例示することができる。
【0108】
反応条件に特別な限定はないが、通常、反応容器に上記遷移金属触媒及び溶媒を加え、化合物(9)を溶媒に溶解して加えて、50〜150℃程度、好ましくは80℃〜120℃の温度下で、0.5〜48時間、好ましくは2〜24時間程度加熱攪拌することにより行われる。ここで反応に用いる溶媒としては、制限されないが、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンなどベンゼン系溶媒、または塩化メチレンなどの塩素系溶媒を挙げることができる。
【0109】
上記の反応終了後、必要に応じて、得られた反応液を減圧濃縮し、次いでシリカゲルを利用したクロマトグラフィー(例えばシリカゲル分集薄層クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)、蒸留、再結晶等の任意の精製操作に供してもよく、斯くして本発明の目的化合物であるカフェオフラン類(3b)を得ることができる。なお、本発明の方法で使用する遷移金属触媒は、公知の方法により回収して、再利用することができる。
【0110】
本発明のカフェオフラン類(3b)の製造方法には、下式で示される方法が含まれる。
【0111】
【化25】

【0112】
(式中、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基、R2’はアルコール保護基を示す。)。
【0113】
当該方法は、前述する工程Aに続いて工程E〜Jを行うことによって実施することができる。
【0114】
工程E:工程Aで得られる化合物(5)〔例えば、アルコール保護剤として3,4-ジヒドロ-2H-ピランを使用した場合、2-(1-アルキル-1-(3-チエニル)メチルオキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン〕をヒドロキシメチル化する工程である。
【0115】
かかる工程は、具体的には、化合物(5)に、アルキル金属試薬を反応させた後に、アルデヒド類を反応させることによって実施することができる。かかる反応は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはトルエン等の溶媒を使用して、通常−100℃〜50℃の条件で行うことができる。
【0116】
ここでアルキル金属試薬としては、制限されないが、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムを挙げることができる。好ましくはn-ブチルリチウムである。アルキル金属試薬の使用割合は、特に制限されないが、化合物(5)1molに対して、通常1〜1.5mol、好ましくは1〜1.1molを挙げることができる。
【0117】
またアルデヒド類としては、制限されないが、例えばパラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドジメチルアセタールを挙げることができる。好ましくはパラホルムアルデヒドである。アルデヒド類の使用割合は、特に制限されないが、化合物(5)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは1〜1.2molを挙げることができる。斯くして、化学式(10)で示される化合物を得ることができる。
【0118】
工程F:上記工程Eで得られる化合物(10)をアセチル化する工程である。
【0119】
かかる工程は、具体的には、化合物(10)に、アルキル金属試薬を反応させた後に、アセチル化試薬を反応させることによって実施することができる。かかる反応は、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはトルエン等の溶媒を使用して、通常−100℃〜20℃の条件で行うことができる。ここでアルキル金属試薬としては、前述のものを例示することができる。またアセチル化試薬としては、無水酢酸を挙げることができる。アセチル化試薬の使用割合は、特に制限されないが、化合物(10)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは1〜1.2molを挙げることができる。斯くして、化学式(11)で示される化合物を得ることができる。
【0120】
工程G:工程Fで得られる化合物(11)のアルコール保護基を脱離(脱保護)する工程である。
【0121】
かかる工程は、具体的には、化合物(11)を、有機金属試薬と反応することによって、または酸性触媒の存在下、 アルコールと反応することによって実施することができる。かかる反応は、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、プロパノールまたはトルエン等の溶媒を使用して、通常−30℃〜80℃の条件で行うことができる。ここで有機金属試薬としては、制限されないが、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどを挙げることができる。好ましくはジメチルアルミニウムクロライドである。有機金属試薬の使用割合は、特に制限されないが、化合物(11)1molに対して、通常1〜3mol、好ましくは2〜2.5molを挙げることができる。また酸性触媒としては硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、ピリジニウムなどを例示することができる。さらにアルコールとしてはエタノール、メタノールなどを例示することができる。斯くして、化学式(12)で示される化合物を得ることができる。
【0122】
工程H:工程Gで得られる化合物(12)の水酸基を酸化する工程である。かかる工程
は、化合物(12)を、酸化試薬と反応することによって行うことができる。かかる反応は、特に制限されないが例えば、ジメチルスルホキシドと塩化オキザリル、酸化マグネシウム、酸化クロム、クロロクロム酸ピリジニウム、二クロム酸ピリジニウムなどを使用して、通常−30〜50℃の条件で行うことができる。斯くして、化学式(13)で示される化合物を得ることができる。
【0123】
工程I:工程Hで得られる化合物(13)のアセチル基を脱保護する工程である。かかる工程は、具体的には、化合物(13)を、酸性もしくは塩基性条件下で加水分解することによって、または塩基性触媒の存在下、 アルコールと反応することによって実施することができる。かかる反応は、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、プロパノールまたはトルエン等の溶媒を使用して、通常−30℃〜80℃の条件で行うことができる。斯くして、化学式(9)で示される化合物を得ることができる。
【0124】
工程J:工程Iで得られる化合物(9)を還元および環化する工程である。かかる工程は、化合物(9)を、水素雰囲気下、遷移金属触媒を用いて反応することによって実施することができる。具体的な方法、遷移金属触媒の種類やその割合などについては前述の通りである。
【0125】
斯くして、カフェオフラン類(3b)は、3-(1-ヒドロキシアルキル)-チオフェンを出発原料として効率よく合成することができる。従って、かかる方法によれば、カフェオフラン類(3b)を短工程で、工業的に量産することが可能である。
【0126】
斯くして得られるカフェオフラン類(3b)(2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン化合物)は、カフェオフラン類(3)と同様に化合物の種類に応じて固有の香気を有しており、香気成分物質として有用である。例えば、カフェオフラン類(3b)として、Rがメチル基である4-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(L))(実施例7)はローストしたゴマ様の香りを、Rがエチル基である4-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(T))(実施例8)は調理したポテト様の香りを有している。
【0127】
このようにカフェオフラン類〔(3a)、(3b)〕(以下、これらを総称してカフェオフラン類(3)という)は香料の成分として有用であるため、本発明はかかるカフェオフラン類(3)を香料の主成分として含む香料組成物を提供するものである。
【0128】
当該香料組成物に配合されるカフェオフラン類(3)の割合は、使用するカフェオフラン類(3)の種類や目的によって異なるが、例えば、香料組成物100重量%中に10−9〜10−1重量%(10−2〜106ppb)、好ましくは10-5〜10-2重量%(102〜105ppb)の割合を例示することができる。
【0129】
具体的には、カフェオフラン及びエチルカフェオフランはともにロースト感の香気を有することから、これらを含む香料組成物は、ゴマ、コーヒー、ココア、チョコレート、メープル、キャラメル、茶、ナッツ類、バニラ、ビーフなどミート系、バターミルク、クリーム、チーズ、グレープ・ラズベリー・ブラックカーラント等のフルーツ香料として有用である。さらに、ジメチルカフェオフランは青臭さや野菜のグリーンな香りを有するため、ジメチルカフェオフランを含む香料組成物は、青豆、キーウィ、メロン、スイカ、アップル、バナナなどのグリーン系の果物;トマト、キャベツ、キュウリなどの野菜類;または茶の香料として有用である。
【0130】
さらに本発明は、かかる香料組成物を含む飲食品に関する。かかる飲食品に配合するカフェオフラン類(3)の割合は、使用するカフェオフラン類(3)の種類や飲食品の種類によって異なるが、飲食品組成物100重量%中に、10−12〜10−4重量%(10−3〜109ppb)、好ましくは10-6〜10-1重量%(1〜105ppb)の割合を例示することができる。
【0131】
カフェオフラン類(3)を香料成分として含むことのできる飲食品としては、制限はされないが、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料(果汁入りを含む)、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、スポーツ飲料、粉末飲料等の飲料類;リキュールなどのアルコール飲料;コーヒー飲料、紅茶飲料等の茶飲料類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、リンゴジャム、プレザーブ等のジャム類;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾等の水産練り製品;チーズ等の酪農製品類を挙げることができる。
【0132】
(3)香気性チオフェン化合物及びその製造方法
さらに本発明は、下記一般式(7)で示されるチオフェン化合物(香気性チオフェン化合物)を提供する。
【0133】
【化26】

【0134】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)。
【0135】
当該チオフェン化合物は、それ自体が香気性を有しているため、香料の成分(香料成分物質)として有効に利用することができる。ここでRまたはRで示される低級アルキル基としては、同一または異なって、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びt-ブチル基などの炭素数1乃至4の低級アルキル基を例示することができる。好ましくは、メチル基またはエチル基といった炭素数1または2の低級アルキル基である。
【0136】
好ましい香気性チオフェン化合物は、Rが水素原子で、Rがメチル基の6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランである。
【0137】
当該香気性チオフェン化合物は、下式に示すように、化合物(2)を還元して、次いで得られた化合物(8)を環化することによって製造することができる:
【0138】
【化27】

【0139】
(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは及びRは同一の炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)。
【0140】
還元反応は、具体的には実施例5(1)に示すように、化合物(2)を、例えば水素化アルミニウムリチウムや水素化ホウ素ナトリウムなどの金属水素化合物と反応することによって実施することができる。かかる反応はメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル、またはトルエンなどの溶媒を使用して、通常−20〜50℃の条件で行うことができる。
【0141】
斯くして得られる化合物(8)の環化反応は、具体的には実施例5(2)に示すように、例えばアルキル金属試薬(例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムまたはt-ブチルリチウムなど)の存在下で、p-トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライドまたはトリフルオロメタンスルホニルクロライド等の試薬と反応することによって実施することができる。かかる反応は、ジクロロメタン、THF、トルエン等の溶媒を使用して、通常−30℃〜60℃の条件で行うことができる。
【0142】
上記の反応終了後、必要に応じて、得られた反応液を減圧濃縮し、次いでシリカゲルを利用したクロマトグラフィー(例えばシリカゲル分集薄層クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等)、蒸留、再結晶等の任意の精製操作に供してもよく、斯くして本発明の目的化合物である香気性チオフェン化合物(7)を得ることができる。
斯くして、香気性チオフェン化合物(7)は、化合物(2)を原料として効率よく合成することができ、その合成収率は、反応条件を調整することによって、30%程度またはその以上とすることができる。従って、かかる方法によれば、香気性チオフェン化合物(7)を短工程で、工業的に量産することが可能である。
【0143】
斯くして得られる香気性チオフェン化合物(7)は、化合物の種類に応じて固有の香気を有しており、香気成分物質として有用である。例えば、香気性チオフェン化合物(7)の一種である6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランは、0.0035重量%の希釈水溶液とした場合、フルーティーな甘さ、またはグリーン香、またはコーヒー的アロマを奏する。
【0144】
このように香気性チオフェン化合物(7)は香料の成分として有用であるため、本発明は、かかる香気性チオフェン化合物(7)を香料の主成分として含む香料組成物を提供するものである。
【0145】
当該香料組成物に含まれる香気性チオフェン化合物(7)の割合は、使用する香気性チオフェン化合物(7)の種類や目的によって異なるが、香料組成物100重量%中に、10−9〜10−1重量%(10−2〜106ppb)、好ましくは10-5〜10-2重量%(102〜105ppb)の割合を例示することができる。
【0146】
具体的には、6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランは、フルーティーな甘さ、グリーン香、コーヒー的アロマなどの香りを有するため、6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランを含む香料組成物はコーヒーまたはココアの香料、またはメロンやスイカの香料として有用である。
【0147】
さらに本発明は、かかる香料組成物を含む飲食品に関する。かかる飲食品に配合する香気性チオフェン化合物(7)の割合は、使用する香気性チオフェン化合物(7)の種類や飲食品の種類によって異なるが、飲食品組成物100重量%中に、10−12〜10−3重量%(10−5〜104ppb)、好ましくは10-8〜10-4重量%(10-1〜103ppb)の割合を例示することができる。
【0148】
香気性チオフェン化合物(7)を香料成分として含むことのできる飲食品としては、カフェオフラン類(3)と同様に前述のものを例示することができる。
【実施例】
【0149】
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0150】
実施例1 カフェオフランの合成(方法1)
下式に従って、チオフェン−3−メタノール(化合物(a))からカフェオフラン(化合物(e))を製造した。式中、THPはテトラヒドロピラニル基を意味する。
【0151】
【化28】

【0152】
(1)工程A:チオフェン−3−メタノールの水酸基の保護
2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))の合成
チオフェン−3−メタノール(化合物(a))4.56g(40mmol)に、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン3.36g(40mmol)、及びジクロロメタン溶液80mlを添加し、次いでピリジニウム p-トルエンスルホン酸0.25g(1mmol)を加えた。この混合液を室温で30分間攪拌した後、溶液を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製して、無色の油状物質として、チオフェン−3−メタノールの水酸基が保護された、2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b),7.92g, 収率100%)を得た。2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピランの物性を下記に示す。
【0153】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm):7.30(dd, J=3.2, 4.8 Hz, 1H), 7.25(dd, J=3.2, 1.2 Hz, 1H), 7.09(dd, J=1.2, 4.8 Hz, 1H), 4.77(d, J=12.4 Hz, 2H), 4.70(t, J=4 Hz, 1H), 4.54(d, J=12.4 Hz, 2H), 3.91(m, 1H), 1.88-1.51(m, 6H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 139.25, 127.35, 125.74, 122.67, 97.43, 66.99, 62.02, 30.44, 25.42, 19.25;
MS(m/e) 198(M+);
IR(neat) nmax 2945, 2872, 2247, 1466, 1454, 1440, 1120, 1030, 908, 736 cm-1
【0154】
(2)工程B:アシル化
1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(c))の合成
上記で得られた2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))0.792 g(4 mmol)をテトラヒドロフラン(THF)溶液80 mlに溶解した。これに、アルゴン雰囲気下、−78℃冷却条件下で、n−ブチルリチウム2.5ml(1.6Mヘキサン溶液、4mmol)を滴下した。30分後、該溶液に無水酢酸0.408g(4mmol)を加えて30分間攪拌したのち、室温に戻して更に30分間攪拌を続けた。次いで、該溶液を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)することにより、無色油状物質として、1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(c)、0.653g、収率68%)を得た。1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノンの物性を下記に示す。
【0155】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm): 7.47(d, J=5.2 Hz, 1H), 7.34(d, J=5.2 Hz, 1H), 5.07(d, J=15.2 Hz, 2H), 4.91(d, J=15.2 Hz, 2H), 4.74(t, J=4 Hz, 1H), 3.89(m, 1H), 3.54(m, 1H), 2.52(s, 3H), 1.90-1.52(m, 6H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 190.68, 147.40, 129.99, 129.53, 98.52, 65.29, 62.21, 30.50, 29.17, 25.23, 22.88, 19.41;
MS(m/e) 240(M+);
IR(neat) nmax 2943, 2870, 2249, 1660 1525, 1415, 1122,1068, 910, 731 cm-1
【0156】
(3)工程C:脱保護
1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(d))の合成
工程Bで調製した1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(c)、1.44g(6mmol))をジクロロメタンに溶解し、この溶液60mlに、−25℃で攪拌下、ジメチルアルミニウムクロライドの1Mヘキサン溶液12ml(12mmol)を滴下した。滴下終了後、該溶液を室温に戻しさらに1時間攪拌を行った。次いで、該溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を終了し、セライトろ過を行った。分離した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、無色油状物質として1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(d)、0.767g、収率82%)を得た。1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノンの物性を下記に示す。
【0157】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm):7.49(d, J=4.8 Hz, 1H), 7.13(d, J=4.8 Hz, 1H), 4.74(d, J=5.6 Hz, 2H), 4.24(t, J=5.6 Hz, OH, 1H), 2.58(s, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 192.43, 149.98, 136.57, 130.91, 130.51, 59.98, 29.09;
MS(m/e) 156(M+);
IR(neat) nmax 3441, 2253, 1651, 1518, 1413, 1263, 1032, 908, 733 cm-1
【0158】
(4)工程D:還元を伴う環化反応
カフェオフラン(化合物(e))の合成
上記工程Cで調製した化合物(d)(312mg(2mmol))をベンゼン溶液10mlに溶解し、次いでこれに92mg(0.1mmol)のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロライドを加えた。該溶液を1Mpaの水素雰囲気下、100℃で24時間加熱しながら攪拌を行った。該溶液を濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ペンタン:エーテル=100:1)、無色油状物質として6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン142mg(カフェオフラン、化合物(e)、収率51%)を得た。6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランを下記に示す。
【0159】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm):6.98(t, J=1.6 Hz, 1H), 3.62(t, J=7.2 Hz, 2H), 2.87(dt, J=1.6 7.2 Hz, 2H), 2.20(s, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 140.22, 131.61, 128.27, 122.11, 41.99, 26.70, 12.53;
MS(m/e) 140(M);
IR(neat) nmax 2982, 2916, 1631, 1577, 1433, 1265, 1103, 920, 733cm-1
【0160】
実施例2 カフェオフランの合成(方法2)
下式に従って、チオフェン−3−メタノール(化合物(a))からカフェオフラン(化合物(e))を製造した。
【0161】
【化29】

【0162】
(1)工程A:チオフェン−3−メタノールの水酸基の保護
2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))の合成
実施例1に記載する工程Aに従って、チオフェン−3−メタノール(化合物(a))から2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))を合成した。
【0163】
(2)工程B:アシル化
1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(c))の合成
実施例1に記載する工程Bに従って、2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))から1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(c))を合成した。
【0164】
(3)工程C’:脱保護
1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(d))の合成
上記で調製した1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−エタノン((化合物(c)、2.4g、10mmol)をメタノールに溶解し、攪拌しながら、室温で(±)-カンファースルホン酸を加えた。15分間攪拌した後、1.38g(10mmol)の炭酸カリウムを加えて反応を終了した。反応溶液をろ過した後、ろ液を減圧下に留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することにより、無色油状物質として1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(d)、1.38g、収率88%)を得た。1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノンを下記に示す。
【0165】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm):7.49(d, J=4.8 Hz, 1H), 7.13(d, J=4.8 Hz, 1H), 4.74(d, J=5.6 Hz, 2H), 4.24(t, J=5.6 Hz, OH, 1H), 2.58(s, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 192.43, 149.98, 136.57, 130.91, 130.51, 59.98, 29.09;
MS(m/e) 156(M+);
IR(neat) nmax 3441, 2253, 1651, 1518, 1413, 1263, 1032, 908, 733 cm-1
【0166】
(4)工程D:環化を伴う還元反応
カフェオフラン(化合物(e))の合成
上記工程C’で調製した化合物(d)を、実施例1に記載する工程Dの方法に従って還元及び環化反応を行い、無色油状物質として6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン142mg(カフェオフラン、化合物(e)、収率51%)を得た。6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(カフェオフラン)の物性を下記に示す。
【0167】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm):6.98(t, J=1.6 Hz, 1H), 3.62(t, J=7.2 Hz, 2H), 2.87(dt, J=1.6 7.2 Hz, 2H), 2.20(s, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 140.22, 131.61, 128.27, 122.11, 41.99, 26.70, 12.53;
MS(m/e) 140(M);
IR(neat) nmax 2982, 2916, 1631, 1577, 1433, 1265, 1103, 920, 733cm-1
【0168】
実施例3 6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下式に従って、チオフェン−3−メタノール(化合物(a))から6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(h))を製造した。
【0169】
【化30】

【0170】
(1)工程A:チオフェン−3−メタノールの水酸基の保護
2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))の合成
実施例1の工程Aに従って、チオフェン−3−メタノール(化合物(a))4.56g(40mmol)から2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))を製造した。
【0171】
(2)工程B:アシル化
1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(f))の合成
上記で調製した2−(3−チエニルメチルオキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(b))0.792 g(4 mmol)を用いて、実施例2の工程Bに従って、1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(f)、0.686g、収率65%)を得た。1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−プロパノンの物性を下記に示す。
【0172】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm): 7.45(d, J=4.8 Hz, 1H), 7.36(d, J=4.8 Hz, 1H), 5.10(d, J=14.8 Hz, 2H), 4.95(d, J=15.2 Hz, 2H), 4.74(t, J=4 Hz, 1H), 3.92(m, 1H), 3.537(m, 1H), 2.89(q, J=7.2 Hz, 2H), 1.91-1.53(m, 6H), 1.21(t, J=7.2 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 193.91, 147.41, 129.46, 129.29, 121.71, 98.51, 65.46, 62.22, 34.62, 30.48, 25.37, 19.42, 8.28;
MS(m/e) 254(M+);
IR(neat) nmax 2943, 2874, 2251, 1662, 1525, 1417, 1203, 1122, 1068, 1035, 910, 733 cm-1
【0173】
(3)工程C:脱保護
1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(g))の合成
工程Bで調製した1−{3−[(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)メチル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(f)、1.44g(6mmol))を、ジクロロメタンに溶解し、この溶液60mlに、−25℃で攪拌下、ジメチルアルミニウムクロライドの1Mヘキサン溶液12ml(12mmol)を滴下した。滴下終了後、該溶液を室温に戻しさらに1時間攪拌を行った。次いで、該溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を終了し、セライトろ過を行った。分離した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、無色油状物質として1−[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(g)、0.595g、収率88%)を得た。この物性を下記に示す。
【0174】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm) 7.45(d, J=4.8 Hz, 1H), 7.10(d, J=4.8 Hz, 1H), 4.72(d, J=7.6 Hz, 2H), 4.26(t, J=7.6 Hz, OH, 1H), 2.92(q, J=7.2 Hz, 2H), 1.21(t, J=7.2 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 195.40, 149.80, 137.25, 130.55, 130.39, 60.01, 34.71, 8.43;
MS(m/e) 170(M+);
IR(neat) nmax 3410, 2254, 1653, 1518, 1413, 1217, 1028, 908, 734 cm-1
【0175】
(4)工程D:環化を伴う還元反応
6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(h))の合成
上記工程Cで調製した化合物(g)を、実施例1に記載する工程Dの方法に従って還元及び環化反応を行い、無色油状物質として6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(h)、収率54%)を得た。この物性を下記に示す。
【0176】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm) 6.980(t, J=1.6 Hz, 1H), 3.61(t, J=7.2 Hz, 2H), 2.86(dt, J=1.6 7.2 Hz, 2H), 2.58(q, J=7.6 Hz, 2H), 1.22(t, J=7.6 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 145.30, 131.44, 126.56, 120.98, 41.76, 25.26, 20.17, 11.40;
MS(m/e) 154(M+);
IR(neat) nmax 2972, 2935, 2849, 1627, 1573, 1460, 1265, 1109, 949, 754 cm-1
【0177】
実施例4 4,6−ジメチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下式に従って、1-[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン〔2−アセチル−チオフェン−3−メタノール(化合物(d))〕から4,6ジメチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(k))を製造した。なお、1-[3−(ヒドロキシメチル)ー2−チエニル]−1−エタノン(化合物(d))は、実施例1(3)または実施例2(3)で調製することができる。
【0178】
【化31】

【0179】
(1)2−アセチル−3−チオフェンカルボアルデヒド(化合物(i))の合成
1.106g(7mmol)の1-[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン〔2−アセチル−チオフェン−3−メタノール(化合物(d))〕を含むジクロロメタン溶液100mlに酸化マグネシウム(IV)69.5gを加えて20分間室温で激しく攪拌を行った。該溶液をろ過して得たろ液を減圧下に濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製を行うことによって(ペンタン:エーテル=2:1)、淡黄色の油状物質として2−アセチル−3−チオフェンカルボアルデヒド1.066g(化合物(i)、収率99%)を得た。この化合物の物性を下記に示す。
【0180】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm);10.56(s, 1H), 7.64(d, J=5.2 Hz, 1H), 7.46(d, J=5.2 Hz, 1H), 2.65(s, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 187.20, 184.60, 129.60, 129.54, 128.54, 124.20, 29.69;
MS(m/e) 154(M+);
IR(neat) nmax 3099, 3086, 1672, 1514, 1423, 1242, 1014, 839, 756 cm-1
【0181】
(2)1−[3−(1−ヒドロキシエチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(j))の合成
上記で得られた2−アセチル−3−チオフェンカルボアルデヒド(化合物(i))0.462g(3mmol)を含むTHF溶液30mlに、−78℃に冷却下、メチルマグネシウムブロマイドの1MTHF溶液3ml(3mmol)を滴下した。該溶液を室温に戻し更に30分間攪拌した。30mlのエーテルを加えた後、該溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することによって(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)0.286gの1−[3−(1−ヒドロキシエチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(j)、収率56%)を無色油状物質として得た。この化合物の物性を下記に示す。
【0182】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm);7.49(d, J=5.2 Hz, 1H), 7.18(d, J=5.2 Hz, 1H), 5.15(m, J=6.4 Hz, 1H), 4.65(d, J=6.4 Hz, OH, 1H), 2.59(s, 3H), 1.52(d, J=6.4 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 192.51, 154.51, 136.64, 130.90, 129.06, 65.25, 29.40, 22.38;
MS(m/e) 170(M+);
IR(neat) nmax 3427, 2982, 2251, 1649, 1514, 1410, 1244, 1113, 910, 734 cm-1
【0183】
(3)環化を伴う還元反応
4,6−ジメチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(k))の合成
上記(2)で調製した1−[3−(1−ヒドロキシエチル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(j))を、実施例1に記載する工程Dの方法に従って還元及び環化反応を行い、無色油状物質として4,6−ジメチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(k)、収率58%)を得た。この化合物の物性を下記に示す;
1H NMR (CDCl3, 400MHz, d ppm) 3.58(t, J=7.2 Hz, 2H), 2.76(t, J=7.2 Hz, 2H), 2.15(s, 6H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 140.53, 138.16, 126.64, 117.47, 42.05, 25.51, 12.71, 12.61;
MS(m/e) 154(M+);
IR(neat) nmax 2918, 2878, 2247, 1660, 1558, 1435, 1217, 1113, 1074, 908, 733 cm-1
【0184】
実施例5 (A)6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下記式に従って6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランを合成した。
【0185】
【化32】

【0186】
(1)還元反応
1-[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン〔2−アセチル−チオフェン−3−メタノール(化合物(d))〕0.624g(4mmol)のTHF溶液20ml中に水素化リチウムアルミニム0.152g(4mmol)を0℃攪拌下に滴下した。更に10分間攪拌後当該溶液に酢酸エチルを滴下して反応を終了した後、セライトろ過を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)、1−{3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル}−1−エタノール0.62g(化合物(l)、収率98%)を無色油状物として得た。この化合物の物性を下記に示す。
【0187】
1H NMR (CDCl3, 400MHz, δppm) 7.15(d, J=4.8 Hz, 1H), 6.96(d, J=4.8 Hz, 1H), 5.20(q, J=6.4 Hz, 1H), 4.67(d, J=8.4 Hz, 1H), 4.61(d, J=8.4 Hz, 1H), 3.34(w, OH, 1H), 2.88(w, OH, 1H), 1.61(d, J=6.4 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, δppm) 145.80, 132.23, 128.83, 122.96, 63.48, 57.68, 24.06;
MS(m/e) 158(M+);
IR(neat) nmax 3339, 2974, 1437, 1068, 995, 910, 734 cm-1
【0188】
(2)環化反応
0.316gの1−{3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル}−1−エタノール(化合物(l),2mmol)を含むTHF溶液20ml中に、アルゴン気流下、0℃でn-ブチルリチウム1.25ml(1.6M in hexane, 2mmol)を滴下した。5分後、該溶液に0.38gのp-トルエンスルホニルクロライド(2mmol)を加えたのち、室温に戻して1時間攪拌した。該溶液を再び0℃に冷却してn-ブチルリチウム1.25ml(1.6M in hexane, 2mmol)を滴下した。滴下後、溶液を室温で18時間攪拌した。該溶液を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ペンタン:エーテル=100:1)、0.089gの6−メチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(m),収率32%)を無色油状物として得た。この化合物の物性を下記に示す。
1H NMR (CDCl3, 400MHz, δppm) 7.28(d, J=5.2 Hz, 1H), 6.78(d, J=5.2 Hz, 1H), 5.40(m, J=4, 2.8, 6 Hz, 1H), 5.02(dd, J=4, 7.2 Hz, 1H), 4.92(dd, J=2.8, 7.2 Hz, 1H), 1.50(d, J=6 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100MHz, δppm) 143.28, 142.96, 129.68, 119.18, 77.77, 70.01, 22.91;
MS(m/e) 140(M+);
IR(neat) nmax 2976, 2864, 2247, 1655, 1446, 1342, 1224, 1095, 1059, 976, 910, 839, 731cm-1
【0189】
(B)6−エチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
出発原料として1-[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−エタノン〔2−アセチル−チオフェン−3−メタノール(化合物(d))〕に代えて、実施例3(3)で得られる1-[3−(ヒドロキシメチル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(g))を用いて、上記方法に従って(1)還元反応及び(2)環化反応を行うことによって、下記式に示すように、6−エチル−4,6−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(o))を調製することができる。
【0190】
【化33】

【0191】
実施例6 4−メチル−6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下式に従って、チオフェン−3−カルボアルデヒド(化合物(A))から4−メチル−6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(E))を製造した。式中、THPはテトラドロピラニル基を意味する。
【0192】
【化34】

【0193】
(1)工程0:グリニァール反応
3−(1−ヒドロキシエチル)チオフェン(化合物(B))の合成
5.0g(44.58mmol)のチオフェン−3−カルボアルデヒド(化合物(A))を含むTHF溶液150mlに0℃に冷却下、メチルマグネシウムブロマイドの3MTHF溶液16.35ml(49.04mmol)を滴下した。該溶液を室温に戻し更に2時間攪拌した。30mlのジエチルエーテルを加えた後、該溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製を行うことによって(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)、無色油状物質として3−(1−ヒドロキシエチル)チオフェン5.30g(化合物(B)、収率99%)を得た。この化合物の物性を下記に示す。
【0194】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.29(dd, J=4.8, 2.8 Hz, 1H), 7.18(d, J=2.8 Hz, 1H),7.09(d, J=4.8 Hz, 1H), 4.95(q, J=6.2 Hz, 1H), 1.96(brd, 1H), 1.51(d, J=6.2 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 147.41, 126.24, 125.74, 120.26, 66.62, 24.55。
【0195】
(2)工程A:3−(1−ヒドロキシエチル)チオフェンの水酸基の保護
2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(C))の合成
上記で得られた3−(1−ヒドロキシエチル)チオフェン(化合物(B))6.3g(49.15mmol)に、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン50ml、p-トルエンスルホン酸0.3g(1.2mmol)を加えた。この混合液を室温で30分間攪拌した後、100mlのジエチルエーテルを加えた後、該溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を留去した。溶液を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製して、無色の油状物質として、3−(1−ヒドロキシエチル)チオフェンの水酸基が保護された、2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(C),9.5g, 収率91%)を得た。2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピランの物性を下記に示す。
【0196】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.27(dd, J=4.8, 2.8 Hz, 1H), 7.14(d, J=2.8 Hz, 1H),7.05(d, J=4.8 Hz, 1H), 4.95(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.44(m, 1H), 3.92(m, 1H), 3.48(m, 1H), 1.85(m, 1H), 1.64(m, 1H), 1.49(d, J=6.9 Hz, 3H), 1.56-1.44(m, 4H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 144.88, 126.02, 125.99, 121.58, 96.09, 69.27, 62.75, 30.89, 25.60, 23.57, 19.89;
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.25(dd, J=4.9, 2.8 Hz, 1H), 7.21(d, J=2.8 Hz, 1H),7.11(d, J=2.8 Hz, 1H), 4.92(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.85(t, J=3.4 Hz, 1H), 3.78(m, 1H), 3.44(m, 1H), 1.85(m, 1H), 1.73(m, 1H), 1.63(m, 1H), 1.56-1.44(m, 3H), 1.46 (d, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 145.65, 126.46, 125.51, 120.49, 96.09, 69.36, 62.25, 30.99, 25.60, 20.92, 19.47。
【0197】
(3)工程B:アシル化
1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(D))の合成
工程Aで得られた2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(C))4.0 g(18.84 mmol)をテトラヒドロフラン(THF)溶液300 mlに溶解した。これに、アルゴン雰囲気下、−78℃冷却条件下で、sec−ブチルリチウム17.28ml(1.2Mヘキサン溶液、20.73mmol)を滴下した。一時間後、該溶液にプロピオン酸無水物3.06g(23.55mmol)を加えて30分間攪拌したのち、室温に戻して更に1時間攪拌を続けた。次いで、該溶液を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)することにより、無色油状物質として、1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(D)、2.1g、収率43%)を得た。1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−プロパノンの物性を下記に示す。
【0198】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.40(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.25(d, J=6.2 Hz, 1H), 5.69(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.40(dd, J=4.7, 2.8 Hz, 1H), 3.91(m, 1H), 3.46(m, 1H), 2.87(q, J=7.6 Hz, 2H), 1.87-1.42(m, 6H), 1.45(d, J=6.9 Hz, 3H), 1.18(t, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 193.94, 153.11, 135.31, 129.78, 128.40, 96.81, 69.42, 62.62, 30.91, 25.53, 22.94, 19.77, 14.28, 8.39;
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.38(d, J=4.8 Hz, 1H), 7.25(d, J=6.2 Hz, 1H), 5.60(q, J=6.2 Hz, 1H), 4.75(dd, J=4.7, 2.8 Hz, 1H), 3.63(m, 1H), 3.32(m, 1H), 2.87(q, J=7.6 Hz, 2H), 1.87-1.42(m, 6H), 1.39(d, J=6.2 Hz, 3H), 1.24(t, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 194.01, 153.59, 133.40, 129.42, 129.10, 97.83, 70.55, 62.87, 31.17, 25.46, 21.96, 19.98, 14.21, 8.44。
【0199】
(4)工程C:脱保護
1−[3−(1−ヒドロキシエチル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(E))の合成
工程Bで調製した1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(D)、2.1g(7.83mmol))をメタノールに溶解し、この溶液150mlに、攪拌しながら、室温で(±)-カンファースルホン酸を加えた。15分間攪拌した後、1.08g(7.83mmol)の炭酸ナトリウムを加えて反応を終了した。反応溶液をろ過した後、ろ液を減圧下で留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、無色油状物質として1−[3−(1−ヒドロキシエチル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(E)、1.27g、収率88%)を得た。1−[3−(1−ヒドロキシエチル)−2−チエニル]−1−プロパノンの物性を下記に示す。
【0200】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm);7.49(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.19(d, J=5.5 Hz, 1H), 5.14(m, 1H), 2.82(q, J=6.9 Hz, 2H), 1.53(d, J=6.2 Hz, 3H), 1.24(t, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 193.61, 154.21, 134.60, 130.16, 129.16, 65.21, 30.40, 22.30, 21.18。
【0201】
(5)工程D:環化を伴う還元反応
4−メチル−6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(F))の合成
上記工程Cで調製した化合物(E)(1.27g(6.90mmol))をトルエン溶液20mlに溶解し、次いでこれに92mg(0.16mmol)のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロライドを加えた。該溶液を1Mpaの水素雰囲気下、100℃で24時間加熱しながら攪拌を行った。該溶液を濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ペンタン:ジエチルエーテル=100:1)、無色油状物質として4−メチル−6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン670mg(化合物(F)、収率58%)を得た。4−メチル−6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの物性を下記に示す。
【0202】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):3.57(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.74(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.53(q, J=7.6 Hz, 2H), 2.15(s, 3H), 1.19(t, J=7.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 143.56, 140.48, 126.81, 120.92, 42.04, 25.23, 20.96, 12.75, 12.01。
【0203】
実施例7 4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下記式に従って4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランを合成した。
【0204】
【化35】

【0205】
(1)工程F:ヒドロキシメチル化
1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−メタノール(化合物(G))の合成
2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン500mg(2.36mmol)のTHF溶液40mlに対し、−78℃攪拌下でsec-ブチルリチウム2.93ml(1.2Mヘキサン溶液、3.52mmol) を滴下した。一時間後、該溶液にパラホルムアルデヒド225mg(7.04mmol)を加えて30分間攪拌したのち、室温に戻して更に1時間攪拌を続けた。次いで、該溶液を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち溶媒を減圧下に留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)することにより、無色油状物質として、1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−メタノール301mg(収率53%、化合物(G))を得た。1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−メタノールの物性を下記に示す。
【0206】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.20(d, J=4.8Hz, 1H), 7.00(d, J=4.8Hz, 1H), 4.93(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.76(d, J=13.2 Hz, 1H), 4.75(d, J=13.2 Hz, 1H), 4.44(m, 1H), 3.92(m, 1H), 3.48(m, 1H),1.83-1.49(m, 6H), 1.46(d, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 155.28, 129.69, 125.28, 123.68, 97.33, 64.43, 62.82, 62.39, 30.83, 25.79, 23.67, 19.41
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.22(d, J=4.8Hz, 1H), 6.99(d, J=4.8Hz, 1H), 4.95(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.79(d, J=13.2 Hz, 1H), 4.81(d, J=13.2 Hz, 1H), 4.40(m, 1H), 3.90(m, 1H), 3.43(m, 1H),1.83-1.49(m, 6H), 1.40(d, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 155.01, 129.99, 124.96, 123.03, 98.01, 64.68, 62.79, 62.55, 30.32, 25.50, 23.63, 19.87。
【0207】
(2)工程G:アセチル化
3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−テニル アセテート(化合物(H))の合成
工程Fで調製した1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−チエニル}−1−メタノール500mg(2.06mmol)のピリジン6.0mlに対し、無水酢酸263mg(2.58mmol)を加えた。室温で2時間攪拌後、ジエチルエーテル20mlを加え、さらに当該溶液に飽和硫酸水素カリウム水溶液を加えた。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)、3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−テニル アセテート0.62g(化合物(H)、収率98%)を無色油状物として得た。この化合物の物性を下記に示す。
【0208】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.21(d, J=4.8Hz, 1H), 7.01(d, J=4.8Hz, 1H), 5.34(d, J=13.2 Hz, 1H), 5.23(d, J=13.2 Hz, 1H), 4.95(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.40(m, 1H), 3.89(m, 1H), 3.40(m, 1H), 2.87(s, 3H), 1.83-1.49(m, 6H), 1.46(d, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 174.56, 143.41, 128.67, 123.29, 122.52, 97.33, 64.63, 62.82, 61.78, 31.97, 25.11, 24.69, 21.32, 19.76
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.23(d, J=4.8Hz, 1H), 6.98(d, J=4.8Hz, 1H), 5.33(d, J=13.2 Hz, 1H), 5.20(d, J=13.2 Hz, 1H), 4.91(q, J=6.9 Hz, 1H), 4.37(m, 1H), 3.86(m, 1H), 3.44(m, 1H), 2.84(s, 3H), 1.83-1.49(m, 6H), 1.41(d, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 174.22, 142.99, 128.48, 123.78, 122.46, 97.31, 64.78, 62.77, 61.65, 32.10, 24.96, 24.73, 21.46, 19.78。
【0209】
(3)工程H:THP基の脱保護
1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノール(化合物(I))の合成
工程Gで調製した3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−テニル アセテート(化合物(H)、498mg(1.75mmol))をメタノールに溶解し、この溶液40mlに、攪拌しながら、室温で(±)-カンファースルホン酸を加えた。15分間攪拌した後、当該溶液を減圧下に留去し、得られた残渣に対し、ジエチルエーテル20mlを加え、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え抽出を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)、1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノール250mg(収率71%、化合物(I))を調整した。1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノール物性を下記に示す。
【0210】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm);7.26(d, J=4.8 Hz, 1H), 7.08(d, J=4.8 Hz, 1H), 5.36(d, J=13.6 Hz, 1H), 5.21(d, J=13.6 Hz, 1H), 5.11(q, J=6.2 Hz, 1H), 2.41(brd, 1H), 2.06(s, 3H), 1.50(d, J=6.2 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 100MHz, d ppm) 171.02, 145.57, 132.35, 126.13, 126.07, 64.30, 58.40, 24.11, 21.09。
【0211】
(4)工程I:水酸基の酸化
1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノン(化合物(J))の合成
1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノール(化合物(I)、250mg(1.25mmol))のジクロロメタン溶液15mlに対し、ピリジン1.18g(14.98mmol)、酸化クロム(VI)0.748g(7.49mmol)を加え15分攪拌した後、工程Hで調製した1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノールを加え10分攪拌した。当該溶液をろ過後、希塩酸で中和し、ジクロロメタンで抽出を行った。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノン225mg(収率91%、化合物(J))を調整した。1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノンの物性を下記に示す。
【0212】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.38(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.21(d, J=5.5 Hz, 1H), 5.60(s, 2H), 2.51(s, 3H), 2.13(s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 193.74, 170.33, 148.20, 136.40, 128.78, 123.98, 62.01, 29.47, 20.87。
【0213】
(5)工程J:アセチル基の脱保護
1−[2−(ヒドロキシメチル)−3−チエニル]−1−エタノン(化合物(K))の合成
工程Iで調製した1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−エタノン
735mg(3.71mmol)のメタノール溶液35mlに対し、2N-水酸化ナトリウム水溶液3.5mlを加え15分攪拌した。当該溶液に対しジエチルエーテル100mlを加えさらに希塩酸で中和し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)1−[2−(ヒドロキシメチル)−3−チエニル]−1−エタノン470mg (化合物(K)、 収率81%)を得た。1−[2−(ヒドロキシメチル)−3−チエニル]−1−エタノンの物性を下記に示す。
【0214】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.42(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.17(d, J=5.5 Hz, 1H), 4.83(s, 2H), 2.56(s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 195.68, 153.00, 137.09, 129.54, 123.26, 59.10, 29.42。
【0215】
(6)工程K:環化を伴う還元反応
4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(L))の合成
上記工程Jで調製した化合物(K)(580mg(3.71mmol))をトルエン溶液20mlに溶解し、次いでこれに343mg(0.371mmol)のトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロライドを加えた。該溶液を1Mpaの水素雰囲気下、100℃で32時間加熱しながら攪拌を行った。該溶液を濃縮し得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより(ペンタン:ジエチルエーテル=100:1)、無色油状物質として4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン236mg(化合物(L)、収率44%)を得た。4−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランを下記に示す。
【0216】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):6.88(s, 1H), 3.63(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.79(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.19(s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 142.89, 129.84, 128.55, 126.75, 42.17, 25.09, 12.82。
【0217】
実施例8 4−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下式に従って、チオフェン−3−カルボアルデヒド(化合物(A))〕から4−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(T))を製造した。
【0218】
【化36】

【0219】
(1)3−(1−ヒドロキシプロピル)チオフェン(化合物(M))の合成
実施例6の工程Aに従って、チオフェン−3−カルボアルデヒド(化合物(A))10.0g(89.17mmol)から3−(1−ヒドロキシプロピル)チオフェン(化合物(M))12.45g(収率98%)を製造した。3−(1−ヒドロキシプロピル)チオフェンの物性を下記に示す。
【0220】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.29(dd, J=4.8, 2.8 Hz, 1H), 7.17(d, J=2.8 Hz, 1H),7.06(d, J=4.8 Hz, 1H), 4.68(t, J=6.2 Hz, 1H), 1.92(brd, 1H), 1.80(qd, J=7.6, 6.2 Hz, 2H), 0.92(t, J=6.2 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 146.22, 126.11, 125.77, 120.84, 72.11, 31.34, 10.11。
【0221】
(2)2−(3−チエニルプロピル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))の合成
実施例6の工程Bに従って、3−(1−ヒドロキシプロピル)チオフェン(化合物(M))10.0g(89.17mmol)から2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))17.89g(収率90%)を製造した。2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピランの物性を下記に示す。
【0222】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):(7.27(dd, J=4.8, 2.8 Hz), 7.25(dd, J=5.5, 3.4
Hz), 1H), (7.18(d, J=3.4 Hz), 7.13(d, J=1.7 Hz), 1H), (7.08(d, J=4.8 Hz), 7.03(d, J=4.8 Hz), 1H), (4.81(t, J=3.7 Hz), 4.69(t, J=7.0 Hz), 1H), 4.65(t, J=6.2 Hz), 4.44(t, J=3.7 Hz), 1H), (3.93(m), 3.65(m), 1H), (3.49(m), 3.35(m), 1H), 1.91-1.44(m, 8H), (0.91(t, J=7.6 Hz), 0.84(t, J=7.6 Hz), 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) (144.46, 143.65), (126.49, 126.18), (125.86, 125.25), (123.00, 121.00), (97.72, 95.26), (75.92, 74.49), (62.43, 62.19), (30.84, 30.82), (30.42, 28.76), (25.65, 25.56), (19.68, 19.43), (10.54, 9.65) 。
【0223】
(3)1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−メタノール(化合物(O))の合成
実施例7の工程Fに従って、7.70g(18.84mmol)の2−(3−チエニルエチル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))から1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−メタノール(化合物(O))3.99g(収率46%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0224】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):(7.22(d, J=4.8 Hz),7.20(d, J=4.8 Hz), 1H), (7.03(d, J=4.8 Hz), 7.00(d, J=4.8 Hz), 1H), 4.96(m, 1H), 4.74(m, 1H), 4.72(m, 1H), 4.40(m, 1H), 3.90(m, 1H), 3.45(m, 1H), 1.87-1.47(m, 6H), 0.98(m, 2H), (0.89(t, J=6.9 Hz), 0.84(t, J=6.9 Hz), 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) (155.28, 155.02), (129.69, 129.44), (125.28, 125.01), (123.68, 123.55), (97.33, 96.98), (64.43, 64.39), (62.82, 62.55), (62.39, 62.11), (30.83, 30.57), (25.79, 25.66), (23.67, 23.60), (19.41, 19.02), (10.23, 10.09)。
【0225】
(4)1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−ヒドロキシメチルアセテート(化合物(P))の合成
実施例7の工程Gに従って、3.99g(16.60mmol)の1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−メタノール(化合物(O))から3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−2−テニル アセテート(化合物(P))4.55g(収率97%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0226】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.40(d, J=5.5 Hz), 7.37(d, J=5.5 Hz), 1H), 7.25(d, J=6.2 Hz), 7.22(d, J=6.2 Hz), 1H), 5.69(m, 1H), 4.75(m, 1H), 4.56(m, 1H), 4.23(m, 1H), 3.91(m, 1H), 3.46(m, 1H), (2.87(s), 2.85(s), 3H), 1.87-1.42(m, 6H), 1.45(m, 2H), 1.18(t, J=6.9 Hz), 1.16(t, J=6.9 Hz), 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 193.94, 153.11, 135.31, 129.78, 128.40, 96.81, 69.42, 62.62, 59.33, 30.91, 25.53, 22.94, 19.77, 14.28, 8.39。
【0227】
(5)1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−プロパノール(化合物(Q))の合成
実施例7の工程Hに従って、4.55g(16.11mmol)の3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)エチル]−3−テニル アセテート(化合物(P))から1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−プロパノール(化合物(Q))2.66g(収率77%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0228】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.26(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.03(d, J=5.5 Hz, 1H), 5.34(d, J=13.1 Hz, 1H), 5.20(q, J=13.1 Hz, 1H), 4.80(t, J=6.2 Hz 1H), 2.05(s, 3H), 1.87-1.73(m, 2H), 0.90(t, J=7.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 170.98, 144.46, 132.93, 126.30, 126.08, 69.81, 58.41, 30.99, 21.08, 10.33。
【0229】
(6)1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−プロパノン(化合物(R))の合成
実施例7の工程Iに従って、2.66g(12.41mmol)の1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−プロパノール(化合物(Q))から1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−プロパノン(化合物(R))2.30g(収率87%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0230】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.38(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.21(d, J=5.5 Hz, 1H), 5.60(s, 2H), 2.51(s, 3H), 2.26(q, J=6.9 Hz, 2H), 1.09(t, J=6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 193.63, 168.63, 149.21, 135.22, 126.50, 123.20, 61.78, 28.40, 20.45, 14.69。
【0231】
(7)1−[2−(ヒドロキシメチル)−3−チエニル]−1−プロパノン(化合物(S))の合成
実施例7の工程Jに従って、2.30g(10.84mmol)の1−{2−[1−アセトキシメチル]−3−チエニル}−1−プロパノン(化合物(R))から1−[2−(ヒドロキシメチル)−3−チエニル]−1−プロパノン(化合物(S))1.60g(収率87%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0232】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.41(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.18(d, J=5.5 Hz, 1H), 4.83(s, 2H), 2.56(q, J=7.6 Hz, 2H), 1.19(t, J=7.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 196.60, 153.21, 137.33, 129.80, 123.39, 59.12, 29.42, 12.46。
【0233】
(8)4−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(T))の合成
実施例7の工程Kに従って、1.60g(9.40mmol)の1−[2−(ヒドロキシメチル)−3−チエニル]−1−プロパノン(化合物(S))から4−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(T))0.44g(収率30%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0234】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):6.89(s, 1H), 3.62(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.81(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.50(q, J=7.6 Hz, 2H), 1.18(t, J=7.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 144.70, 129.30, 128.81, 127.02, 42.19, 25.09, 12.86, 12.31。
【0235】
実施例9 4−エチル−6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下式に従って、2−(3−チエニルプロピル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))から4−エチル−6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(W))を製造した。なお2−(3−チエニルプロピル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))は実施例6の工程A,Bによって調整される。
【0236】
【化37】

【0237】
(1)1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(U))の合成
実施例6の工程Cに従って、5.00g(22.09mmol)の2−(3−チエニルプロピル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))から1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(U))2.77g(収率47%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0238】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):(7.41(d, J=5.5 Hz), 7.39(d, J=4.8 Hz), 1H), 7.26(m, 1H), 5.93(m, 1H), 4.72(m, 1H), 3.91(m, 1H), 3.48(m, 1H), (2.88(s), 2.86(s), 3H), 1.89-1.41(m, 6H), 1.13(m, 2H), (0.94(t, J=6.9 Hz) 0.90(t, J=6.9 Hz), 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) (195.36, 194.96), (156.54, 151.11), (135.31, 131.46), (130.79, 129.40), (129.26, 128.05), (97.80, 96.03), (70.69, 68.89), (62.99, 62.37), (30.75, 30.10), (25.57, 25.01), (23.58, 20.91), (20.11, 19.60), (14.32, 14.09), (8.41, 8.26)。
【0239】
(2)1−[3−(1−ヒドロキシプロピル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(V))の合成
実施例1の工程Dに従って、2.77g(10.32mmol)の1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−エタノン(化合物(U))から1−[3−(1−ヒドロキシプロピル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(V))1.58g(収率83%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0240】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):7.48(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.14(d, J=5.5 Hz, 1H),4.86(dd, J=7.6, 2.1 Hz, 1H), 2.58(s, 3H), 1.85-1.73(m, 2H), 0.96(t, J=7.8 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 192.71, 154.00, 135.78, 131.04, 130.08, 71.52, 29.96, 29.70, 10.74。
【0241】
(3)4−エチル−6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(W))の合成
実施例1の工程Eに従って、1.58g(8.57mmol)の1−[3−(1−ヒドロキシプロピル)−2−チエニル]−1−エタノン(化合物(V))から4−エチル−6−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(W))1.08g(収率75%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0242】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):3.58(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.80(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.52(q, J=7.6 Hz, 2H), 2.15(s, 3H), 1.18(t, J=7.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 145.99, 138.07, 125.75, 122.07, 42.17, 25.83, 21.04, 12.85, 12.26。
【0243】
実施例10 4,6−ジエチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フランの合成
下式に従って、2−(3−チエニルプロピル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))から4、6−ジエチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(Z))を製造した。
【0244】
【化38】

【0245】
(1)1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(X))の合成
実施例6の工程Cに従って、5.00g(22.09mmol)の2−(3−チエニルプロピル−1−オキシ)テトラヒドロ−2H−ピラン(化合物(N))から1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(X))2.95g(収率49%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0246】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):(7.41(d, J=5.5 Hz), 7.39(d, J=4.8 Hz), 1H), 7.26(m,1H), 5.67(m, 1H), (4.72(dd, J=4.7, 2.8 Hz), 4.42(dd, J=4.7, 2.8 Hz), 1H), (3.91(m), 3.67(m), 1H), (3.48(m), 3.31(m), 1H), 2.86(m, 3H), 1.89-1.41(m, 10H), (1.23(t, J=6.9 Hz), 1.19(t, J=6.9 Hz), 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) (194.01, 193.94), (153.59, 153.11), (135.31, 133.40), (129.78, 129.42), (129.10, 128.40), (97.83, 96.81), (70.55, 69.42), (62.87, 62.62), (31.17, 30.91), (25.53, 25.46), (22.94, 21.96), (19.98, 19.77), (14.29, 14.26), (10.43, 10.30), (8.44, 8.39)。
【0247】
(2)1−[3−(1−ヒドロキシプロピル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(Y))の合成
実施例6の工程Dに従って、2.95g(10.45mmol)の1−{3−[1−(テトラヒドロ−2H−2−ピラニルオキシ)プロピル]−2−チエニル}−1−プロパノン(化合物(X))から1−[3−(1−ヒドロキシプロピル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(Y))1.63g(収率79%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0248】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm);7.50(d, J=5.5 Hz, 1H), 7.20(d, J=5.5 Hz, 1H), 5.16(m, 1H), 2.82(q, J=6.9 Hz, 2H), 1.79(m, 2H), 0.96(t, J=6.9 Hz, 3H);13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 193.86, 155.00, 134.16, 131.53, 129.99, 67.61, 30.62, 22.35, 21.06, 11.74。
【0249】
(3)4、6−ジエチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(Z))の合成
実施例6の工程Eに従って、1.63g(8.22mmol)の1−[3−(1−ヒドロキシプロピル)−2−チエニル]−1−プロパノン(化合物(Y))から4。6−ジエチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン(化合物(Z))1.38g(収率92%)を製造した。この化合物の物性を下記に示す。
【0250】
1H NMR (CDCl3, 600MHz, d ppm):3.58(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.80(t, J=6.9 Hz, 2H), 2.54(q, J=7.6 Hz, 2H), 2.53(q, J=7.6 Hz, 2H), 1.19(t, J=7.6 Hz, 3H), 1.18(t, J=7.6 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 150MHz, d ppm) 145.78, 143.31, 125.78, 120.98, 42.02, 25.42, 21.04, 20.96, 12.25, 11.95。
【0251】
実施例11
下記組成のコーヒー香料組成物に、カフェオフラン1ppm添加してコーヒー香料を調整した。
成分名 重量部
バニリン 1
シクロテン 5
マルトール 5
ジアセチル 1
5−メチルフルフラール 1
フルフリルアルコール 10
フルフリルメルカプタン(10%sol) 2
フラネオール 5
コーヒーエキス 250
エタノール 320
水 400
合 計 1000。
【0252】
実施例12
コーヒー豆を蒸留して得られたコーヒー香料100重量部に対して、カフェオフラン10ppmを加えた。これをL値23のミディアムローストした焙煎コーヒー豆より得たコーヒー抽出物100重量部に対して0.1重量部添加したところ、より香ばしい香りのコーヒーとなった。
【0253】
実施例13
L値23のミディアムローストした焙煎コーヒー豆より得たコーヒー抽出液100重量部に対して6−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[2,3c]フラン10ppmを加えたところ、より甘味のあるロースト感のコーヒーとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるチオフェン化合物:
【化1】

〔式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは水素原子またはアルコール保護基、Rは水素原子、−COR基または−C(OH)R基である(なお、こで、R及びRはいずれも炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)。但し、R及びRが水素原子のとき、Rは水素原子、メチル基、またはn−プロピル基のいずれでもない。〕。
【請求項2】
一般式(2)で示されるチオフェン化合物を、遷移金属触媒の存在下、還元および環化する工程を有する、一般式(3a)で示されるカフェオフランまたはその類縁体の製造方法:
【化2】

(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)
【請求項3】
遷移金属触媒がロジウム触媒である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
下式で示される工程A〜D:
工程A:化合物(4)の水酸基を保護する工程
工程B:工程Aで得られる化合物(5)をアシル化する工程
工程C:工程Bで得られる化合物(6)を脱保護する工程、及び
工程D:工程Cで得られる化合物(2)を、遷移金属触媒の存在下で、還元および環化する工程
を含む、一般式(3a)で示されるカフェオフランまたはその類縁体の製造方法:
【化3】

(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R2’はアルコール保護基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す。)。
【請求項5】
4-メチル-6-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン、4-エチル-6-メチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フラン、および4-エチル-2,3-ジヒドロチエノ[2,3c]フランから選択されるカフェオフラン類縁体。
【請求項6】
下記一般式(7)で示されるチオフェン化合物:
【化4】

(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)。
【請求項7】
下式に示される化合物(8)を環化する工程を有する、請求項6に記載するチオフェン化合物(7)の製造方法:
【化5】

(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、Rは炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)。
【請求項8】
一般式(3)で示されるカフェオフラン若しくはその類縁体:
【化6】

(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R4’は水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)、
及び請求項6記載のチオフェン化合物(7)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、10−2〜10ppbの割合で含むことを特徴とする香料組成物。
【請求項9】
一般式(3)で示されるカフェオフラン若しくはその類縁体:
【化7】

(式中、Rは水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基、R4’は水素原子または炭素数1乃至4の低級アルキル基を示す)、
及び請求項6記載のチオフェン化合物(7)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を、10−3〜10ppbの割合で含むことを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2006−265234(P2006−265234A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45391(P2006−45391)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】