説明

新規ビニルエーテル共重合体

【課題】水又は水に対する液浸媒体に対して高い撥水性を有し、現像液によって容易に剥離し、かつフォトレジスト層とのミキシングを起こさない保護膜を形成するための液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料の提供。
【解決手段】少なくとも下記一般式(1)


で表されるビニルエーテル系構成単位と、 下記一般式(2):


で表されるマレイミド系構成単位を有するビニルエーテル共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式ビニルエーテル類及びマレイミド類を構成単位として含む新規ビニルエーテル共重合体及びその製造方法に関する。本発明のビニルエーテル共重合体は、高い撥水性を有し、且つアルカリ溶液に可溶な樹脂膜を与えることができ、特に液浸レジスト用保護膜形成用材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造のために用いられるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴い、より微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であるが、現在ではフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザー光(波長248nm)によるリソグラフィーが主流になりつつあり、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー光(波長193nm)による線幅100nm以下のリソグラフィーも実用化されている。更には、フッ素ダイマー(F2)エキシマレーザー光(波長157nm)、極紫外線(EUV)、X線、電子線等を用いたリソグラフィー技術が開発段階にある。
【0003】
また、最近になって、ArFエキシマレーザーによる露光技術を延命する手段として、液浸リソグラフィーが提案されている。これは、露光時にウェハー上に形成されたフォトレジスト膜と露光装置のレンズとの間に水又は水を主成分とする液浸媒体を含浸させるプロセスであるが、この場合、フォトレジスト膜が液浸媒体と接触することから、フォトレジスト層中の光酸発生剤等の成分が液浸媒体に溶出し、又は、液浸媒体がフォトレジスト層中に吸収されてしまうことで、感度の低下や解像性の変動をまねくという問題があった。また、含浸させた液浸流体がレジスト層上に残留してしまうことでドライ露光にはみられない液浸リソグラフィー特有のパターン欠陥が生じる問題があった。
【0004】
上記液浸リソグラフィーに関するこれらの問題を解決するために、フォトレジスト膜を液浸媒体から保護する目的で、フォトレジスト膜上層に保護膜を形成する方法が提案されている(特許文献1、非特許文献1)。
この保護膜は、使用する露光波長に対して十分な透明性を確保し、フォトレジスト層とインターミキシングをおこすことなく安定に保護膜を形成することができ、たとえば水又は水を主成分とする液浸媒体に対して十分な耐性を有し、かつ、該液浸媒体に対して高い撥水性を有し、また、剥離剤又は現像液によって容易に剥離できることが要求される。
【特許文献1】国際公開2004/074937号パンフレット
【非特許文献1】日経マイクロデバイス04年4月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を克服するためになされたものであって、水又は水に対する液浸媒体に対して高い撥水性を有し、現像液によって容易に剥離し、かつフォトレジスト層とのミキシングを起こさない保護膜を形成するための液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、少なくとも下記一般式(1)で表されるビニルエーテル系構成単位と下記一般式(2)で表されるマレイミド系構成単位でなる共重合体を含む保護膜形成材料を使用したレジスト保護膜が、水又は水を主成分とする液浸媒体に対する撥水性を有し、かつアルカリ現像液によって容易に剥離できることを知見し、本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも下記一般式(1)
【化1】

【0008】
(式中、Yはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキル基を示し、Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜15の単環式、縮合多環式又は架橋多環式の脂環基を示し、nは0又は1を示す)で表されるビニルエーテル系構成単位と、
下記一般式(2):
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R13及びR14は各々独立して水素原子、炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、又はハロゲン原子を示す)で表されるマレイミド系構成単位を有するビニルエーテル共重合体及びその製造方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、上記ビニルエーテル共重合体を含むことを特徴とする液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料、及び該材料をフォトレジスト膜上に塗布、乾燥することによって形成された液浸リソグラフィー用レジスト保護膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の新規ビニルエーテル共重合体を含む液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料によって形成したレジスト上層膜は、レジスト層が水又は水を主成分とする液浸媒体に犯されることを防ぎ、かつアルカリ現像液によって容易に剥離できる。従って、今後更に微細化が進行されていくと予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の新規ビニルエーテル共重合体は、少なくとも下記一般式(1)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Yはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキル基を示し、Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜15の単環式、縮合多環式又は架橋多環式の脂環基を示し、nは0又は1を示す)で表されるビニルエーテル系構成単位と、
下記一般式(2):
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R13及びR14は各々独立して水素原子、炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、又はハロゲン原子を示す)で表されるマレイミド系構成単位を有する。
【0018】
一般式(1)中、Yで示されるアルキレン基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状アルキレン基が好ましく、更に炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基が好ましく、特にメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましい。アルキレンオキシ基としては、C2−C4アルキレンオキシ基が好ましく、特にエチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基が好ましい。アルキレンオキシアルキル基としては、C2−C4アルキレンオキシ−C2−C4アルキル基が好ましく、エチレンオキシエチル基、エチレンオキシプロピル基、プロピレンオキシエチル基、プロピレンオキシプロピル基等が挙げられる。
【0019】
Zで示される脂環基としては、炭素数6〜15の縮合多環式又は架橋多環式の脂環基が好ましく、具体的にはトリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ペンタシクロペンタデカニル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらの脂環基には、炭素数1〜6のアルキル基、フッ素原子、全部又は一部がフッ素化された炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基、アセタール保護されたヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、ニトリル基等の1〜5個が置換していてもよい。これらの脂環基上の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0020】
一般式(1)で表される構造単位のうち、更に下記式で表される構造単位が特に好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
一般式(2)中、R13及びR14で示される炭素数1〜5の鎖状又は環状の炭化水素基としては、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基等が挙げられる。完全又は部分的にフッ素化された炭素数1〜5の鎖状又は環状の炭化水素基としては、フッ素化された炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基、フッ素化された炭素数3〜5のシクロアルキル基が挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。これらのR13及びR14のうち、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素化された炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子が特に好ましい。
【0023】
また、一般式(2)で表される構造単位のうち、更に下記式で表される構造単位が特に好ましい。
【0024】
【化6】

【0025】
また、本発明の共重合体は、液浸リソグラフィーに使用する保護膜としての性能を調節するために上記一般式(1)及び(2)以外の構成単位を含む共重合体であってもよい。
【0026】
上記一般式(1)及び(2)以外の構成単位としては、重合性不飽和二重結合を有する単量体から得られる構成単位であれば特に限定されないが、たとえば、アルケニルエーテル誘導体(単量体1)、(メタ)アクリル酸誘導体(単量体2)、ジカルボン酸誘導体(単量体3)、N−置換マレイミド誘導体(単量体4)、スチレン誘導体(単量体5)などの単量体と共重合することによって得られる構成単位が挙げられる。
【0027】
単量体1としては置換基を有していてもよい鎖状アルキルビニルエーテルが挙げられ、その具体例としては、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、エチルトリフルオロビニルエーテル等が挙げられる。単量体2としては(メタ)アクリレートが挙げられ、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、ノルボルナラクトン(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。単量体3としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の無水物又はそのエステルが挙げられ、その具体例としては、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。単量体4の具体例としては、N−ヒドロキシマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−アダマンチルマレイミド等が挙げられる。単量体5の具体例としては、スチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、t−ブトキシカルボニロキシスチレン、トリメチルシリルオキシスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0028】
これらの単量体のうち、単量体3(ジカルボン酸誘導体)、更にジカルボン酸の無水物が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0029】
本発明の共重合体の前記構成単位の組成は、液浸リソグラフィーに使用する保護膜としての性能を損なわない範囲で選択することができる。例えば前記構成単位(一般式(1))は、通常20〜80モル%、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは40〜60モル%である。また、前記構成単位(一般式(2))は、通常20〜80モル%、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは40〜60モル%である。また、単量体1〜単量体5は、通常0〜60モル%、好ましくは0〜50モル%、より好ましくは0〜20モル%である。このうち、単量体3を0〜20モル%含むものが特に好ましい。
【0030】
本発明の共重合体を液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料に使用する場合は、重量平均分子量が2,000〜100,000、好ましくは4,000〜50,000であることが望ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト膜とのミキシングが生じやすく、また、水などの液浸媒体に対する耐性が落ちる。また、重量平均分子量が大きすぎると、後述する有機溶剤に対する溶解性が落ち、成膜性に問題が生じる。また、上記樹脂の多分散度(Mw/Mn)は通常1〜5である。
【0031】
本発明のビニルエーテル共重合体は、一般式(1)及び一般式(2)に対応するビニルエーテル系単量体及びマレイミド系単量体をラジカル重合させることで得ることができる。また、重合に使用するビニルエーテル系単量体及びマレイミド系単量体はそれぞれ1種又は2種以上の単量体を使用することができる。
【0032】
上記ビニルエーテル系単量体は、下記一般式(3)で示される。
【0033】
【化7】

【0034】
(式中、Y及びZは前記と同じ)
【0035】
更に好ましいビニルエーテル系単量体としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0036】
【化8】

【0037】
また、上記マレイミド系単量体は、下記一般式(4)で示される。
【0038】
【化9】

【0039】
(式中、R13、R14は前記と同じ)
【0040】
更に好ましいマレイミド系単量体としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0041】
【化10】

【0042】
本発明の共重合体は、一般的なラジカル重合で合成できる。使用する重合開始剤は、通常のラジカル発生剤であれば特に制限されないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾイソブチレート、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物を単独もしくは混合して用いることができる。
【0043】
重合溶媒は、モノマーとポリマーを溶解できれば特に制限されないが、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;γブチロラクトン等のラクトン類などが挙げられ、これらを単独もしくは混合して用いることができる。
【0044】
重合方法はラジカル重合が可能な方法であれば特に制限されないが、全てのモノマー、開始剤、連鎖移動剤を重合溶媒に溶解して重合温度に加熱する、いわゆる一括重合法や、モノマー、開始剤、連鎖移動剤の一部もしくは全てを重合温度に加熱した重合系内に滴下するいわゆる滴下重合法などによって達成できる。
【0045】
重合温度は使用する重合溶媒の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって選択されるが、一般的には60〜100℃、好ましくは70〜90℃の範囲が選択される。重合時間は1〜24時間、好ましくは2〜20時間で行われる。
【0046】
重合後、貧溶媒単独、若しくは貧溶媒と良溶媒の混合溶媒による再沈殿と必要に応じて洗浄を行い、重合体を精製する。この操作により、未反応モノマー、オリゴマー、重合開始剤及びその残査物等の不要物を除去する。貧溶媒としては、ポリマーが溶解しにくい溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類などが選択できる。良溶媒としては、モノマー、オリゴマー、重合開始剤及びその残査物が溶解しやすい溶媒であれば特に制限されないが、重合溶媒と同一であれば製造工程の管理上好ましい。
【0047】
精製後のポリマーには精製に用いた溶媒が含まれているので、減圧乾燥したあとに液浸リソグラフィー用保護膜形成用溶媒に溶解するか、又は該溶媒や重合溶媒などの良溶媒に溶解したあと必要に応じて該溶媒を投入した後もしくは供給しながらその他の溶媒を減圧下で留去させるなどの方法で仕上げる。
【0048】
本発明の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料の主成分である一般式(1)及び一般式(2)で表される構成単位を有する共重合体は、単独、又は2種以上含ませてもよく、また、それらの共重合体の固形分濃度は、フォトレジスト層上に塗膜できる濃度であればよく、具体的には0.1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%である。
【0049】
また該保護膜形成用材料を構成する有機溶剤は、上記共重合体を容易に溶解させ、かつ、フォトレジスト膜上に塗膜乾燥する際にレジストを溶解させることなく、リソグラフィーの性能を劣化させることがないものが使用可能である。このような有機溶剤としては、炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素、又は部分的にフッ素化された炭素数5〜20の鎖状又は環状の炭化水素が好適に使用される。
【0050】
上記炭化水素又はフッ化炭化水素の具体例としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2−メチル−ブタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等が挙げられ、これらは単独、又は2種以上の混合溶媒として使用できる。
【0051】
また、塗布性を調整するために上記溶媒以外の有機溶剤を含ませることができる。上記溶媒以外の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらの配合割合は溶媒成分中の30重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。これらの溶剤が多すぎると、フォトレジスト上層に該保護膜形成用材料を塗布する際に、フォトレジスト層を溶解させる等の不具合を生じ、パターン形状を劣化させてしまう。
【0052】
更に、本発明の保護膜形成用材料には、塗膜性の向上などの目的で界面活性剤などの添加剤を適宜、含有させることができる。当該添加剤としては、例えば、BM−1000(BMケミー社製)、サーフロンS−112、同S−141(以上、旭硝子(株)社製)等が挙げられる。
【0053】
また、本発明の保護膜形成用材料は、金属等の不純物が少ないほど好ましく、これにより半導体素子製造における歩留まりを改善させることができる。従って、金属等の不純物は、100ppm以下、特に10ppm以下が好ましい。
【0054】
本発明の保護膜は、フォトレジスト上層に上記保護膜形成用材料を塗布、乾燥することによって得ることができる。塗布、乾燥する方法は、生産性の観点からウェハーを回転させて塗布、乾燥させるスピンコート法が好ましい。また、該保護膜の膜厚は、半導体素子製造に好適な膜厚であれば特に限定されないが、好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜200nmである。膜厚が薄すぎると、水などの液浸媒体からレジストを保護しきれず、レジスト層中の光酸発生剤などが溶出してしまい、パターン形状が劣化する。また、保護膜の透過率の観点から、膜厚が厚すぎると感度が大幅に低下し、生産性が落ちる。
【0055】
該保護膜を形成させるための乾燥温度は特に限定されないが、例えば70℃〜150℃、好ましくは80℃〜140℃の温度条件で、20〜120秒間、好ましくは20〜90秒間施すことによって形成される。
【0056】
本発明の保護膜は撥水性が高い。すなわち、本発明の保護膜の純水に対する接触角は、60°以上、特に65°以上が好ましい。
【0057】
本発明の保護膜は、アルカリ現像液によって容易に剥離することができる。使用できるアルカリ現像液は、フォトレジスト膜を溶解させない現像液であれば特に限定されないが、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が好適に使用される。例えば2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液による本発明の保護膜の溶解速度は25nm/sec以上、特に50nm/sec以上が好ましい。保護膜は、具体的には、浸漬処理等によって剥離することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0059】
実施例1
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド共重合体の合成
【0060】
【化11】

【0061】
攪拌子を備え付けた100mLのナス型フラスコに、トリシクロデカニルビニルエーテル(以下TCDVE)10.02g、テトラヒドロフラン(以下THF)31.39g、マレイミド(以下MI)5.45g、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(以下MAIB)1.82g投入し、冷却管を取り付けて80℃に加熱されたオイルバスに浸漬させ、6時間熟成させた。得られた重合液を195gのヘキサンに投入し、樹脂を析出させたのち、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。その後、樹脂を1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、13.53gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0062】
実施例2
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド/無水マレイン酸共重合体の合成
【0063】
【化12】

【0064】
攪拌子を備え付けた100mLのナス型フラスコに、TCDVE10.08g、THF31.55g、MI4.35g、無水マレイン酸(以下MAH)1.11g、MAIB1.81g投入し、冷却管を取り付けて80℃に加熱されたオイルバスに浸漬させ、6時間熟成させた。得られた重合液を175gのヘキサンに投入し、樹脂を析出させたのち、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。その後、樹脂を1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、13.39gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0065】
実施例3
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド/無水マレイン酸共重合体の合成
TCDVEを10g、MIを3.81g、MAHを1.65g、THFを31.41g、MAIBを1.81g、ヘキサンを177gに変更した以外は実施例2と同様に行い、13.23gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0066】
実施例4
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド共重合体の合成
攪拌子を備え付けた500mLビーカーにTCDVE30.01g、MI16.34g、THF70.56g、MAIB5.43g投入、攪拌して完全に溶解させた。これを滴下液1とする。攪拌子を備え付けた200mLの三口フラスコにTHFを25.52g投入し、冷却管を取り付け、80℃に加熱されたオイルバスに浸漬した。THFが還流し始めたところで、滴下液1を2時間かけて投入したのち、更に3時間熟成させた。得られた重合液を425gのヘキサンに投入して樹脂を析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。得られた樹脂を再度同量のヘキサンに投入、攪拌、濾過を行って得られたウェットケーキを1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、36.65gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0067】
実施例5
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド/無水マレイン酸共重合体の合成
攪拌子を備え付けた500mLビーカーにTCDVE30.00g、MI13.07g、THF74.60g、MAH3.28g、MAIB5.43g投入、攪拌して完全に溶解させた。これを滴下液1とする。攪拌子を備え付けた200mLの三口フラスコにTHFを23.58g投入し、冷却管を取り付け、80℃に加熱されたオイルバスに浸漬した。THFが還流し始めたところで、滴下液1を2時間かけて投入したのち、更に3時間熟成させた。得られた重合液を418gのヘキサンに投入して樹脂を析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。得られた樹脂を再度同量のヘキサンに投入、攪拌、濾過を行って得られたウェットケーキを1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、37.91gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0068】
実施例6
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド共重合体の合成
攪拌子を備え付けた200mLビーカーにMI16.34g、THF52.10g、MAIB5.45g投入、攪拌して完全に溶解させた。これを滴下液1とする。攪拌子を備え付けた200mLの三口フラスコにTCDVEを29.97g、THFを17.32g投入し、冷却管を取り付け、80℃に加熱されたオイルバスに浸漬した。THFが還流し始めたところで、滴下液1を2時間かけて投入したのち、更に3時間熟成させた。得られた重合液を353gのヘキサンに投入して樹脂を析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。得られた樹脂を再度同量のヘキサンに投入、攪拌、濾過を行って得られたウェットケーキを1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、46.57gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0069】
実施例7
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド共重合体の合成
攪拌子を備え付けた200mLビーカーにMI12.69g、THF40.49g、MAIB4.21g、メルカプトエタノール0.72gを投入、攪拌して完全に溶解させた。これを滴下液1とする。攪拌子を備え付けた200mLの三口フラスコにTCDVEを23.30g、THFを13.53g投入し、冷却管を取り付け、80℃に加熱されたオイルバスに浸漬した。THFが還流し始めたところで、滴下液1を2時間かけて投入したのち、更に3時間熟成させた。得られた重合液を273gのヘキサンに投入して樹脂を析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。得られたウェットケーキを1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、34.31gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0070】
実施例8
トリシクロデカニルビニルエーテル/マレイミド共重合体の合成
攪拌子を備え付けた200mLビーカーにMI16.32g、THF52.14g、MAIB5.43g、ペンタエリスリトールテトラ(メルカプトアセタート)1.42gを投入、攪拌して完全に溶解させた。これを滴下液1とする。攪拌子を備え付けた200mLの三口フラスコにTCDVEを30.00g、THFを17.51g投入し、冷却管を取り付け、80℃に加熱されたオイルバスに浸漬した。THFが還流し始めたところで、滴下液1を2時間かけて投入したのち、更に3時間熟成させた。得られた重合液を357gのヘキサンに投入して樹脂を析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。得られたウェットケーキを1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、45.08gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0071】
実施例9
テトラシクロドデカニルビニルエーテル/マレイミド共重合体の合成
【0072】
【化13】

【0073】
攪拌子を備え付けた20mLのナス型フラスコに、テトラシクロドデカニルビニルエーテル(以下DMONVE)2.99g、THF8.99g、MI1.43g、MAIB0.47g投入し、冷却管を取り付けて70℃に加熱されたオイルバスに浸漬させ、6時間熟成させた。得られた重合液を42gのヘキサンに投入し、樹脂を析出させたのち、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。その後、樹脂を1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、2.7gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0074】
比較例1
トリシクロデカニルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の合成
【0075】
【化14】

【0076】
攪拌子を備え付けた100mLのナス型フラスコに、TCDVE10.01g、THF31.59g、MAH5.50g、MAIB1.81g投入し、冷却管を取り付けて80℃に加熱されたオイルバスに浸漬させ、6時間熟成させた。得られた重合液を156gのメタノールに投入し、樹脂を析出させたのち、保留粒子1ミクロンのろ紙を用いて樹脂を濾別した。その後、樹脂を1torr、60℃で12時間減圧乾燥し、11.73gの樹脂を得た。13C−NMRの積分比から算出した平均組成及びGPC分析(ポリスチレン換算)による重量分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成材料の評価を次に示す方法で行った。
(1)撥水性の評価
実施例1で得られた樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、25重量%の濃度になるよう調整した。得られた調整液をシリコンウェハー上にスピンコートした後、90℃で60秒間ベークして、膜厚1μMの薄膜を作製した。本塗布膜に3μLの純水を着滴し、接触角を測定した。接触角測定は協和界面科学(株)製接触角測定装置(FAMAS)を使用した。また、実施例2〜10及び比較例1で得られた樹脂も同様な方法で接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0079】
(2)アルカリ現像液可溶性の評価
実施例1で得られた樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、25重量%の濃度になるよう調整した。得られた調整液をシリコンウェハー上にスピンコートした後、90℃で60秒間ベークして、膜厚1μMの薄膜を作製した。現像液として、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウムを使用し、薄膜のアルカリ溶解速度を測定した。溶解速度測定はリソテックジャパン(株)レジスト現像アナライザーRDA−812を使用した。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
本発明のビニルエーテル共重合体は、高い撥水性を有しかつアルカリ現像液に可溶であるため、液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成材料として有用であり、今後更に微細化が進むと予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)
【化1】

(式中、Yはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキル基を示し、Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜15の単環式、縮合多環式又は架橋多環式の脂環基を示し、nは0又は1を示す)で表されるビニルエーテル系構成単位と、
下記一般式(2):
【化2】

(式中、R13及びR14は各々独立して水素原子、炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、又はハロゲン原子を示す)で表されるマレイミド系構成単位を有するビニルエーテル共重合体。
【請求項2】
構成単位である前記一般式(1)が、少なくとも1種又は2種以上の下記式から選ばれるものである請求項1に記載のビニルエーテル共重合体。
【化3】

【請求項3】
構成単位である前記一般式(2)が、少なくとも1種又は2種以上の下記式から選ばれるものである請求項1又は2のいずれかに記載のビニルエーテル共重合体。
【化4】

【請求項4】
更にジカルボン酸無水物に由来する構成単位を有するものである請求項1〜3のいずれか1項記載のビニルエーテル共重合体。
【請求項5】
少なくとも下記一般式(3)
【化5】

(式中、Yはアルキレン基、アルキレンオキシ基又はアルキレンオキシアルキル基を示し、Zは置換基を有していてもよい炭素数6〜15の単環式、縮合多環式又は架橋多環式の脂環基を示し、nは0又は1を示す)で表されるビニルエーテル系単量体と、
下記一般式(4)
【化6】

(式中、R13及びR14は各々独立して水素原子、炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、完全若しくは部分的にフッ素化された炭素数1〜5の鎖状若しくは環状の炭化水素基、又はハロゲン原子を示す)で表されるマレイミド系単量体をラジカル重合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビニルエーテル共重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の共重合体を含むことを特徴とする液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料。
【請求項7】
請求項6に記載の液浸リソグラフィー用レジスト保護膜形成用材料を、フォトレジスト膜上に塗布、乾燥することによって形成された液浸リソグラフィー用レジスト保護膜。

【公開番号】特開2008−303315(P2008−303315A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152618(P2007−152618)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】