説明

新規前駆体

本発明は、式(I):
【化1】


の化合物に関する(式中、XはCN、COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはカルボキシル保護基、またはニトロを表し;R1、R2、R3、R4、R5は互いに独立して、水素、C1−C6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;Yは水素、C1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル、C7−C13アルカリール、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;ここで上記式(I)中の立体化学的に非特定の二重結合は、E,E;E,Z;Z,EまたはZ,Z配置のいずれかを表す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテコール−O−メチル−トランスフェラーゼ(COMT)の非常に強力な、長期間作用性末梢抑制剤(peripheral inhibitor)の合成用アミドオキシム・ビルディングブロック(構成要素:building block)の新規前駆体及び、前記前駆体の製造方法に関する。
【0002】
COMT阻害剤は、パーキンソン病に悩む患者のL−DOPA/末梢アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)阻害剤治療に対する添加物として使用されている。COMT阻害剤の使用は、L−DOPAの3−O−メチル−L−DOPA(3−OMD)への代謝的O−メチル化を減少させるその能力に基づく。かくして、L−DOPAは代謝分解から守られ、その平均血漿濃度は上昇し、その生物利用性が上昇する。トルカポン(Tolcapone)及びエンタカポン(Entacapone)などの周知のCOMT阻害剤は肝臓障害、in−vivo半減期が短いということ、また不都合な中枢神経系への副作用などの欠点を示す。
【0003】
ニトロカテコール誘導体をベースとする強力な新規末梢COMT阻害剤は、本明細書中、その全体が参照として含まれる国際公開第2007/013830号に記載された。同出願に記載されているように、トリフルオロメチル化アミドオキシム・ビルディングブロックを使用して得られた前記誘導体の非−カテコール置換体は、その化合物に毒性作用が無いことを確定している。ニトロカテコール誘導体をベースとするそのようなCOMT阻害剤の一例を以下に示す:
【化1】

【0004】
上記のことを考慮して、本発明の目的はニトロカテコール誘導体をベースとするCOMT阻害剤のより効率的な合成を可能とする新規方法及び対応する前駆体を提供することである。
【0005】
本目的は、意外にも効率的で且つ多目的な経路及びトリフルオロメチル化アミドオキシム・ビルディングブロックに対する新規前駆体の発見により達成された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/013830号
【発明の概要】
【0007】
一側面において、本発明は、以下の一般式(I):
【化2】

(式中、XはCN、COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはC1−C6アルキル、またはニトロを表し;R1、R2、R3、R4、R5は互いに独立して、水素、C1−C6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;Yは水素、C1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル、C7−C13アルカリール、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;ここで上記式(I)中の立体化学的に非特定の二重結合は、E,E;E,Z;Z,EまたはZ,Z配置のいずれかを表す)の新規前駆体を使用する合成経路に関する。
【0008】
本発明の好ましい態様では、上記式(I)において、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRは水素、C1−C6アルキル、C1−C6ハロアルキル、C6−C12アリール、C7−C13アラルキルまたはC7−C13アルカリール(alkaryl)を表し;R1〜R3は水素を表し、R4及びR5はメチル基を表す。
【0009】
本発明のより好ましい態様では、上記式(I)において、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRはメチル、トリフルオロメチル、ジフェニルメチル、エチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、フェニルまたはベンジルを表し;及びR1〜R3は水素を表し、R4及びR5はメチル基を表す。
【0010】
本発明の最も好ましい態様では、上記式(I)において、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRはエチルを表し;R1〜R3は水素を表し、R4及びR5はメチル基を表す。
本発明はまた、一般式(I)の化合物を製造する二つの方法にも関する。
一般式(I)の化合物を製造するための第一の方法は、式(II):
【化3】

(式中、X及びYは式(I)の定義の通りである)の化合物と、式(III):
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は式(I)の定義通りであり、R6はC1−C6アルキルであり;及びZ-は好適な対イオン、たとえばCl-またはPOCl2-を表し、ここで上記式(III)の立体化学的に非特定の二重結合は、E,E;E,Z;Z,EまたはZ,Z配置を表す)の化合物との間の反応を含む。
【0011】
好ましくは上記式(II)において、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRは水素、C1−C6アルキル、C1−C6ハロアルキル、C3−C7シクロアルキル、C6−C12アリール、C7−C13アラルキルまたはC7−C13アルカリールを表す。
【0012】
より好ましくは上記式(II)において、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRはメチル、トリフルオロメチル、ジフェニルメチル、エチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、フェニルまたはベンジルを表す。
【0013】
最も好ましくは、上記式(II)において、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRはエチルを表す。
【0014】
好ましくは上記式(III)において、R1〜R3は水素原子を表し、R4及びR5はメチル基を表し、R6はn−ブチル基を表す。
【0015】
あるいは本発明の第一の方法は、式(III)の化合物(ここでR1〜R3は水素原子を表し、R4及びR5はメチル基を表し、R6はブチル基を表す)と、式(II)の化合物(ここでXはCNまたはCOORであり、ここでRはメチル、トリフルオロメチル、ジフェニルメチル、エチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、フェニルまたはベンジルであり、ここでYはトリフルオロメチルである)を使用する。
【0016】
本発明の第一の方法のより好ましい態様では、式(III)の化合物(ここでR1〜R3は水素原子を表し、R4及びR5はメチル基を表し、R6はブチル基を表す)と、式(II)の化合物(ここでXはCNまたはCOORであり、ここでRはエチルであり、Yはトリフルオロメチルである)を使用する。
【0017】
式(II)と(III)の化合物との間の反応は、好ましくは塩基の存在下で起きる。本発明に従った好適な塩基は、非−求核性塩基(non−nucleophilic base)、たとえばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、N,N−ジメチルピペリジン、N−メチル−ピロリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンであるか、水素化ナトリウムを使用する。
【0018】
好ましくは、本反応は、DCMなどの有機溶媒の存在下で起きる。
【0019】
式(III)のインモニウム(immonium)イオンは、有機溶媒中、N,N−ジメチルホルムアミドと活性化剤、たとえば塩化オキサリル、塩化チオニルまたはオキシ塩化リンとの反応、続いて0℃〜10℃、好ましくは5℃の温度で、場合により置換された1−ビニルオキシアルカン、たとえばn−ブチル−ビニルエーテルを添加するビルスマイヤー−ハック反応で製造することができる。好適な対イオンZ-は当業界で公知であり、Cl-またはPOCl2-が挙げられる。式(II)の化合物は、好ましくは−20℃〜20℃、好ましくは−5℃〜3℃の間の温度で溶液に添加して、N−4−カルボキシ−6,6,6−トリフルオロ−5−ヒドロキシヘキサ−2,4−ジエニリデン)−N−メチルメタンアミニウムクロリド誘導体を形成する。次いで式(I)の化合物は、HCl、H2SO4またはH3PO4などの鉱酸水溶液でクエンチすることにより製造した。好ましい態様では、酸はHClである。好ましくは、クエンチ段階は、0℃〜20℃の温度、より好ましくは5℃〜10℃、最も好ましくは8℃で実施した。
【0020】
本反応で使用される有機溶媒は、好ましくはビルスマイヤー試薬に対して不活性でなければならない。好適な溶媒は、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン若しくはクロロベンゼン類またはその混合物から選択することができる。
【0021】
上記方法では、立体化学は反応の経過中で平衡であるので、遊離体(educt)及び中間体の立体化学はそれほど重要ではない。式(I)の得られた化合物の立体化学は、置換基R1及びX並びにR2及びR3がそれぞれトランス位置であるようなものが好ましい。しかしながら、シス位置をもつ化合物並びに混合物(即ち、E,E−、E,Z−、Z,E−及びZ,Z−異性体の混合物)も許容可能である。
【0022】
式(I)の化合物を製造するための第二の方法は、上記式(II)(式中、XはCN:COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基:CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはC1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキルまたはC7−C13アルカリール:またはニトロを表し;Yは水素、C1−C6アルキル、C1−C6ハロアルキル、たとえばトリフルオロメチル、C3−C7シクロアルキル、C7−C13アルカリール、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表す)の化合物と、式(IV)の化合物:
【化5】

(式中、R1は水素を表し、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して、水素、C1−C6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表す)の化合物との反応を含む。
【0023】
本発明の第二の方法では、好ましくは式(II)において、Yはトリフルオロメチルを表し、XはCNまたはCOORを表し、ここでRは水素、C1−C6アルキル、C1−C6ハロアルキル、C6−C12アリール、C7−C13アラルキルまたはC7−C13アルカリールを表す。
【0024】
本発明の第二の方法ではより好ましくは、上記式(II)において、Yはトリフルオロメチルを表し、XはCNまたはCOORを表し、ここでRはメチル、トリフルオロメチル、ジフェニルメチル、エチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、フェニルまたはベンジルを表す。
【0025】
本発明の第二の方法では最も好ましくは、上記式(II)において、Yはトリフロロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRはエチルを表す。
【0026】
好ましくは本発明において、上記式(IV)において、R1〜R3は水素原子であり、R4及びR5はメチル基である。
【0027】
別の好ましい態様では、一般式(I)の化合物を製造するための第二の方法では、式(IV)の化合物(式中、R1〜R3は水素原子であり、R4及びR5はメチル基である)と、式(II)の化合物(式中、XはCNまたはCOORであり、ここでRはメチル、トリフルオロメチル、ジフェニルメチル、エチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、フェニルまたはベンジルであり;ここでYはトリフルオロメチルである)を使用する。
【0028】
別のより好ましい態様では、一般式(I)の化合物を製造するための第二の方法では、式(IV)の化合物(式中、R1〜R3は水素原子であり、R4及びR5はメチル基である)と、式(II)の化合物(式中、XはCNまたはCOORであり、ここでRはエチルであり、Yはトリフルオロメチルである)を使用する。
【0029】
式(II)と(IV)との間の反応は好ましくは、活性化剤の存在下で実施する。例示的な活性化剤としては、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水メチルスルホン酸、無水フェニルスルホン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、または酸クロリドが挙げられる。本発明の好ましい態様では、活性化剤は無水酢酸である。この活性化剤に加えて、非求核性塩基、たとえばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、N,N−ジメチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデク−7−エンまたは水素化ナトリウムを式(I)の化合物の製造で使用することができる。好ましくは、この反応は塩基の非存在下で実施する。この反応は好ましくは、0℃〜100℃の間の温度、好ましくは周囲温度で実施する。
【0030】
式(II)と(IV)の化合物との間の反応は、対応する中間体エノールアセテートのin−situ形成で起きるかもしれない。
【0031】
本発明はさらに、式(V):
【化6】

(式中、XはCN、COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基、たとえばC1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル及びC7−C13アルカリール;CONR’2を表し、ここでR’は水素、C1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル若しくはC7−C13アルカリール;またはニトロを表し;R1、R2及びR3は互いに独立して、水素、C1−C6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;Yは水素、C1−C6アルキル、ハロゲン、C3−C7シクロアルキル、C7−C13アルカリール、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表す)の化合物を製造するための方法に関し、上記定義の式(I)の化合物を環化反応に供することを含む、前記方法に関する。
【0032】
本発明の環化方法の好ましい態様では、式(I)の化合物(式中、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRは水素、C1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル、C1−C6ハロアルキル、C6−C12アリール、C7−C13アラルキルまたはC7−C13アルカリールを表し;R1〜R3は水素を表し、R4及びR5はメチル基を表す)を使用する。
【0033】
本発明のこの環化方法のより好ましい態様では、式(I)の化合物(式中、Yはトリフルオロメチルを表し、XはCNまたはCOORを表し、ここでRはメチル、トリフルオロメチル、ジフェニルメチル、エチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、フェニルまたはベンジルを表し;R1〜R3は水素を表し、R4及びR5はメチル基を表す)を使用する。
【0034】
本発明のこの環化方法の最も好ましい態様では、式(I)の化合物(式中、Yはトリフルオロメチルを表し、且つXはCNまたはCOORを表し、ここでRはエチルを表し;R1〜R3は水素を表し、R4及びR5はメチル基を表す)を使用する。
【0035】
式(I)の化合物の環化は、アンモニア源、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール若しくはブタノール中のアンモニア溶液、酢酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、または気体状で直接導入するアンモニアの存在下で実施する。化合物(V)の製造は好ましくは、プロトン性媒体、好ましくはアルコール性媒体、最も好ましくはメタノールまたは水中で、60〜70℃の間の温度で実施する。
【0036】
別の態様では、本反応は水の非存在下、たとえば乾燥溶媒及び気体アンモニアを使用することによって実施する。
【0037】
式(I)の化合物の環化によりピリジン誘導体が生成し、これは式(VI):
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びYは式(V)の定義通りであり、Wはアミドオキシム部分(C(=N−OH)−NH2)を表す)の化合物に転換することができる。そのようなアミドオキシム保持化合物は、オキサジアゾリル型COMT阻害剤の合成では重要な中間体である。従って、本発明は前駆体(式中、WはCN、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはC1−C6アルキルまたはCOORを表し、ここでRは式(I)の定義通りである)を経て式(VI)(式中、Wはアミドオキシム部分を表す)の利用可能な化合物も製造する。
【0038】
好ましくは式(VI)においてYはCF3であり、WはCONH2及びアミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)から選択される。
【0039】
オキサジアゾール型COMT阻害剤がピリジン−N−オキシド構造部材を含む場合、これらは特に有効である。従って、式(VI)の化合物は、式(VII):
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びYは式(I)の定義通りであり、VはCN、アミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)、ニトロ、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはC1−C6アルキル、またはCOORを表し、ここでRは式(I)の定義通りである)の化合物の重要な前駆体でもある。
【0040】
好ましくは式(VII)において、YはCF3であり、VはCN、CONH2、アミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)及びCOORから選択され、ここでRは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、フェニル、ベンジル、4−ニトロベンジル、4−ブロモベンジル、4−メトキシベンジル、ジフェニルメチル及びトリクロロエチルから選択される。
【0041】
以下の例は本発明を例示する。
【実施例1】
【0042】
エチル5−(ジメチルアミノ)−2−(2,2,2−トリフルオロアセチル)−ペンタ−2,4−ジエノエートの製造
【0043】
N,N−ジメチルホルムアミド51.60g(0.706mol)をメカニカルスターラー、温度計、滴下漏斗及びN2入口を備えた5L三つ口丸底フラスコ中、DCM2Lに溶解した。この透明な溶液をN2雰囲気下で0℃に冷却し、塩化オキサリル(89.7g,61.7ml,0.707mol)を30分かけて滴下添加した。添加している間、白色沈殿が形成した。この反応混合物を放置して室温まで温め、2時間攪拌した。これを再び0℃に冷却し、1−(ビニルオキシ)ブタン(141.20g,182ml)を、内部温度を5℃未満に保持しながら滴下添加した。添加には45分を要した。次いで冷却浴を外し、反応物をN2下で2時間攪拌した。この薄黄色均質溶液を−5℃に再冷却し、エチルトリフルオロ−アセトアセテート(99.97g,0.543mol)を迅速に添加し、続いて温度を3℃未満に保持しながらトリエチルアミン(157g,217ml,1.557mol)を添加した。冷却浴を外し、赤い非均質反応混合物を5分間攪拌し、その後750mlの1NのHClを8℃未満で添加した。得られた二相混合物を分離し;水性相をDCM100mlで抽出した。混和した有機相を水300〜300mlで2回洗浄し、MgSO4で乾燥した。濾過後、溶媒を真空除去し、トルエン200mlと共に再び蒸発させた。得られた赤色可動性油状物(oil)は、一晩静置すると結晶化した。粗結晶を石油エーテル100mlですりつぶし、濾過し、石油エーテル洗浄し、風乾した。
収率:80.60g。橙色結晶(56%),融点:70℃。
【実施例2】
【0044】
エチル5−(ジメチルアミノ)−2−(2,2,2−トリフルオロアセチル)ペンタ−2,4−ジエノエートの製造
【0045】
20mlナシ型フラスコにはエチル4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタノエート(3.00g,16.29mol)があり、3−(ジメチルアミノ)アクリルアルデヒド(2.63g,26.6mmol)を無水酢酸(5.8ml)中に入れると、茶色溶液が得られた。この反応混合物を10分間攪拌した。TLCから反応が完了したことが判明した。この反応混合物をDCMに溶解した。有機相を1NのHCl溶液、水で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。濾過及び蒸発後、得られた濃赤色油状物を石油エーテル(petrolether)とジエチルエーテルとの混合物から結晶化した。
収率:3.56g(86%),融点:70℃。
【実施例3】
【0046】
5−(ジメチルアミノ)−2−(2,2,2−トリフルオロアセチル)ペンタ−2,4−ジエンニトリルの製造
【0047】
マグネチックスターラー、温度計、滴下漏斗及びN2入口を備えた500ml三つ口丸底フラスコ中、N,N−ジメチルホルムアミド8.88g(121.6mmol)をDCM350mlに溶解した。透明な溶液をN2雰囲気下で0℃に冷却し、塩化オキサリル(10.6ml,15.43g,121.6mmol)を30分かけて滴下添加した。添加している間、白色沈殿が形成した。この反応混合物を放置して室温まで温め、2時間攪拌した。これを再び0℃に冷却し、1−(ビニルオキシ)ブタン(24.32g,31.4ml)を、内部温度を5℃未満に保持しながら滴下添加した。添加には30分を要した。次いで冷却浴を外し、反応物をN2下で2時間攪拌した。この薄黄色均質溶液を−5℃に再冷却し、4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタンニトリル(12.82g,93.57mol)を迅速に添加し、続いて温度を3℃未満に保持しながらトリエチルアミン(30.7g,42ml,304mmol)を添加した。冷却浴を外し、赤い反応混合物を5分間攪拌し、その後1NのHCl300mlを8℃未満で添加した。得られた二相混合物を分離し;水性相をDCM50mlで抽出した。混和した有機相を水100mlで2回洗浄し、MgSO4で乾燥した。濾過後、溶媒を真空除去し、トルエン200mlと共に再び蒸発させた。得られた橙色粗生成物をジエチルーエーテルですりつぶし、濾過し、石油エーテル洗浄し、風乾した。
収率:10.39g。黄色結晶(51%),融点:165℃。
【実施例4】
【0048】
5−(ジメチルアミノ)−2−(2,2,2−トリフルオロアセチル)ペンタ−2,4−ジエンニトリルの製造
【0049】
無水酢酸(7.78ml,82mmol)中の3−(ジメチルアミノ)アクリルアルデヒド(3.54g,35.7mmol)を、20mlナシ型フラスコ中の4,4,4−トリフルオロ−3−オキソブタンニトリル(3.00g,21.89mmol)に添加すると、茶色溶液が得られた。次いでこの反応混合物を10分間攪拌した。TLCから反応が完了したことが判明した。この暗色溶液をDCMに溶解した。有機相を1NのHCl溶液、水で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥した。濾過及び蒸発後、得られた濃茶色結晶をジエチルエーテルから濾過し、熱イソプロパノール(約35ml)から再結晶化した。
収率:2.25g(47%),融点:165℃。
【実施例5】
【0050】
エチル2−(トリフルオロメチル)ニコチネートの製造
【0051】
マグネチックスターラーと還流コンデンサとを備えた1L一つ口丸底フラスコ中で、エチル5−(ジメチルアミノ)−2−(2,2,2−トリフルオロアセチル)ペンタ−2,4−ジエノエート(80.50g,303.8mmol)をメタノール(700ml)と25%水性アンモニア溶液(240ml)との混合物中に溶解した。この反応混合物を70℃に20分間加熱した。その後、これを室温に冷却し、真空下で蒸発させることによりメタノールを除去した。残渣を水(200ml)で希釈し、ジエチルエーテル(2×300ml)で抽出した。有機相を塩水(200ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過した。溶媒を真空下で蒸発させると、赤色油状物65.0gが得られた。この粗な生成物は次の段階に用いるのに十分に純粋であった。
【0052】
しかしながら、エステルの純度を改善するために、MgSO4で乾燥した後、濾過を短いシリカゲルプラグで実施し、次いで濾液を蒸発させると、薄黄色可動性油状物59.9g(90%)が得られた。
【実施例6】
【0053】
2−(トリフルオロメチル)ニコチノニトリルの製造
【0054】
マグネチックスターラーと還流コンデンサとを備えた500ml一つ口丸底フラスコ中で、(ジメチルアミノ)−2−(2,2,2−トリフルオロアセチル)ペンタ−2,4−ジエンニトリル(13.063g,59.92mmol)をメタノール(250ml)と25%水性アンモニア溶液(23ml)との混合物中に懸濁させた。この反応混合物を60℃に3.5時間加熱した。その後、これを室温に冷却し、メタノールを真空下で除去した。残渣を水(100ml)で希釈し、ジエチルエーテル(100ml)で抽出した。有機相をMgSO4で乾燥し、濾過した。溶媒を真空下で蒸発させると、赤色油状物10.15gが得られた。この粗生成物は全くさらなる精製無く使用することができた。しかしながら、純度を改善するために、赤色油状物をDCMでクロマトグラフにかけ、均質画分を蓄え、蒸発させると、無色可動性油状物6.7g(65%)が残った。
【実施例7】
【0055】
3−シアノ−2−(トリフルオロメチル)ピリジン1−オキシドの製造
【0056】
マグネチックスターラー、温度計、滴下漏斗とN2入口とを備えた500mLの三つ口丸底フラスコ中で、2−(トリフルオロメチル)ニコチノニトリル9.95g(0.058mol)をDCM(300ml)に溶解した。UHP(54.38g,0.578mol,5.5当量)を上記橙色溶液に一度に添加した。反応物を0℃に冷却し、TFAA(115.4g,0.550mol,77.6ml,9.5当量)を、内部温度を5℃未満に保持しながら滴下添加した。TFFA約20mlを添加後、反応混合物は脱色し始めた。この間、反応はやや発熱性であった。全添加時間は約20分であった。冷却浴を外し、反応物をN2雰囲気下で16時間攪拌した。次いで白色沈殿物(未反応UHP)を無色反応混合物から濾別した。この反応混合物を少量のDCMで洗浄した。母液を外部氷浴により冷却し、内部温度を25℃未満に保持しながらNa225溶液を注意深く添加してクエンチした。この反応混合物をさらに30分間攪拌した。別の沈殿物(CF3−(CO)NH−(CO−NH2)の形成が観察され、これを濾別し、フィルターケーキを少量のDCMで洗浄した。二相を分離した。水性相をDCM50mlで抽出した。混和した有機相を水100mlで二回洗浄し、MgSO4で乾燥した。濾過後、混合物を真空下で蒸発させると、黄色油状物が得られた。この粗生成物を一晩、冷凍庫中で静置しても結晶化しなかった。これをカラムに添加し、DCM:MeOH=95:5で溶離した。収率:5.5g(61%)。
【実施例8】
【0057】
(Z)−3−(N’−ヒドロキシカルバムイミドイル)−2−(トリフルオロメチル)ピリジン1−オキシドの製造
【0058】
3−シアノ−2−(トリフルオロメチル)ピリジン1−オキシド(5.797g,30.835mmol)を500mlの一つ口丸底フラスコ中の96%EtOH(174ml)に溶解した。この溶液を50%水性NH2OH溶液(47ml,25当量)で処理した。この反応物を室温で5時間攪拌した。次いで混合物を蒸発乾涸させた。粗結晶をIPA約30ml中で沸騰させた。この混合物を氷浴により冷却し、濾過し、少量のIPAで洗浄した。生成物をP25で真空下、乾燥した。収率:5.52g(81%),融点:230℃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物(式中、XはCN、COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはカルボキシル保護基、またはニトロを表し;R1、R2、R3、R4、R5は互いに独立して、水素、C1−C6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;Yは水素、C1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル、C7−C13アルカリール、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、置換アリールまたは置換ヘテロアリール基を表し;ここで前記式(I)中の立体化学的に非特定の二重結合は、E,E;E,Z;Z,EまたはZ,Z配置のいずれかを表す)。
【請求項2】
置換基R1及びX並びにR2及びR3がそれぞれトランス位置である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが水素、C1−C6アルキル、C3−C7シクロアルキル、またはC7−C13アルカリールである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Rが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、フェニル、ベンジル、4−ニトロベンジル、4−ブロモベンジル、4−メトキシベンジル、ジフェニルメチル、またはトリクロロエチルである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Yがトリフルオロメチルである、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)の化合物の製造方法であって、一般式(II):
【化2】

(式中、X及びYは請求項1〜5のいずれかで定義される)の化合物と式(III):
【化3】

(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は式(I)の定義通りであり、R6はC1−C6アルキルであり;及びZ-は好適な対イオン、たとえばCl-またはPOCl2-を表し;ここで前記式(III)の立体化学的に非特定の二重結合は、E,E;E,Z;Z,EまたはZ,Z配置を表す)の化合物との反応を含む、前記方法。
【請求項7】
前記反応を塩基の存在下で実施する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記塩基がトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、N,N−ジメチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデク−7−エンまたは水素化ナトリウムから選択される、前記方法。
【請求項9】
前記反応を溶媒の存在下で実施する、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンまたはクロロベンゼンから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)の化合物の製造方法であって、式(II):
【化4】

(式中、X及びYは請求項1〜5のいずれかに定義通りである)の化合物と、式(IV):
【化5】

(式中、R1は水素であり、R2、R3、R4及びR5は式(I)に関する定義通りであり、ここで前記式(IV)の立体化学的に非特定の二重結合はEまたはZ配置のいずれかを表す)の化合物との反応を含む、前記方法。
【請求項12】
前記反応を活性化剤の存在下で実施する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性化剤が、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水メチルスルホン酸、無水フェニルスルホン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、または酸クロリドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
塩基を使用する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、N,N−ジメチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデク−7−エンまたは水素化ナトリウムから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(V):
【化6】

(式中、R1、R2、R3、X及びYは請求項1〜5に定義の通りである)の化合物の製造方法であって、アンモニア供給源の存在下、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物の環化を含む、前記方法。
【請求項17】
前記アンモニア供給源が、アンモニア水溶液、非水性アンモニア溶液、酢酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウムまたはアンモニアガスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記環化を非水性条件下で実施する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
式(VI):
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びYは請求項1〜5の定義通りであり、Wはアミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)、CN、COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはC1−C6アルキル、またはニトロを表す)の化合物。
【請求項20】
YがCF3であり、WがCONH2及びアミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
式(VII):
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びYは請求項1〜5の定義通りであり、Vはアミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)、CN、COORを表し、ここでRは水素またはカルボキシル保護基、CONR’2を表し、ここでR’は水素若しくはC1−C6アルキル、またはニトロを表す)の化合物。
【請求項22】
請求項21に記載の化合物であって、YがCF3であり、VがCN、CONH2、アミドオキシム残基(C(=N−OH)−NH2)及びCOORから選択され、ここでRは水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、フェニル、ベンジル、4−ニトロベンジル、4−ブロモベンジル、4−メトキシベンジル、ジフェニルメチル及びトリクロロエチルから選択される、前記化合物。
【請求項23】
COMT阻害剤またはその前駆体の製造における請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項24】
COMT阻害剤またはその前駆体の製造における請求項19または20に記載の式(VI)の化合物の使用。
【請求項25】
COMT阻害剤またはその前駆体の製造における請求項21または22に記載の式(VII)の化合物の使用。

【公表番号】特表2011−500796(P2011−500796A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530950(P2010−530950)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/PT2008/000042
【国際公開番号】WO2009/054742
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(596095518)バイアル−ポルテラ アンド シーエー,エス.エー. (25)
【Fターム(参考)】