説明

新規芳香化合物、合成法及び該化合物の使用

【課題】新規芳香剤の提供。
【解決手段】一般式(I)の化合物。二重結合の有無を点線で図示する。式(I)中、XがCHO、CHOH、CHOC(O)R又はCH(OR)基を示し、Rが直鎖状又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル又はアルケニル鎖である。本発明はまた、前記化合物、特に5,7−ジメチル−オクタ−1,6−ジエンのヒドロホルミル化によって調製される6,8−ジメチル−ノン−7−エナール(1)の合成方法に関する。本発明は更に、式(I)の化合物を含む組成物に関する。その芳香特性ゆえに、前記化合物は香料、特に化粧品、家庭用品において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香料に使用される新規な芳香化合物に関する。特に本発明は新規アルデヒド類、それに対応するアルコール類及びエーテル類、それらの合成方法、並びに香料としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本願明細書において「香料」の用語は、通常の語義のみならず、生成物の匂いが重要である他の分野における香料を指す場合にも用いる。一般的な意味での香料組成物には、例えば芳香ベース、香料コンセントレート、オーデコロン、化粧水、芳香剤などの製品、顔及び身体用クリーム、タルカムパウダー、ヘアオイル、シャンプー、ヘアローション、バスソルト及びオイル、シャワー及びバスゲル、化粧用石鹸、制汗剤及びボディデオドラント、シェービングローション及びクリーム、石鹸、クリーム、歯みがき、マウスウォッシュ、ポマードなどの局所用組成物、また、柔軟剤、洗剤、洗濯粉、消臭スプレーなどの清掃用品などが含まれる。
【0003】
アルデヒド類は香料に使用される主な臭気分子群の1つである。この群においては、炭素原子数8〜12個のアルデヒド類が重要な役割を果たしている。まずこれらのアルデヒド類としては、花の香りを持つテルペンアルデヒド類が挙げられる。また、脂肪酸から生成される直鎖アルデヒド類は柑橘系の果実に典型的な爽やかな香りを有し、これらの直鎖アルデヒド類も含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのタイプの香りを併せ持つアルデヒド類は今のところ存在しない。現在、新規芳香剤を開発してノートの範囲を広げることに対するニーズが存在し、それを用いれば、組成物やオプション中に添加することでそのようなノート付与が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は広義には、一般式(I)で示された新規化合物に関する。
【化1】

式中、XはCHO、CHOH、CHOC(O)R又はCH(OR)基であり、Rは直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5個のアルキル又はアルケニル鎖であり、点線で表した結合は存在するか又は存在しない。
【0006】
式(I)の化合物は、1つの異性体若しくは複数の異性体の混合物の形であってもよく、特に1つの鏡像異性体、複数の鏡像異性体の混合物、ラセミ混合物、又は1つのジアステレオ異性体若しくは複数のジアステレオ異性体の混合物であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
具体的には、本発明は点線で表される結合が存在し、Xが−CHO基である式(I)の化合物に関し、この新規アルデヒドは下記の化学式(1)の6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)である。本発明はまた、化合物(1)の合成方法と、コリアンダー葉のアクセントを有し、爽やかなオレンジピールとハーブの香りを特長とする芳香剤としての化合物(1)の使用に関する。
【化2】

【0008】
化合物(1)の鏡像異性体の全てが本発明の対象となるが、そのうち特に好ましい化合物は6(R),8−ジメチルノン−7−エナール(1)である。
【0009】
本発明では、化学式(1)の化合物は5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエンのヒドロホルミル化により調製され、以下の反応式で表わされる。
【化3】

【0010】
ヒドロホルミル化は公知の化学反応である。当業者であれば、アルデヒド官能基を不飽和分子に導入する触媒を適宜選択でき、また当業者であれば触媒又は触媒系を選択し、反応条件を決定することができる。
【0011】
例えば本発明の工程では、ビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジ(μ−メトキシ)ジロジウム(I)(A)、及びジファニルホスフィノ−1,8−ジメチル−9,9−キサンテン(キサントホス)(B)の触媒系を使用しており、これらはClaudia Foca,Humberto J.V.Barros,Eduardo N.dos Santos,Elena V.Gusevskaya and J.C.Bayon,New Journal of Chemistry(2003),27(3),533−539.に記載されている。この触媒系は、それらの合成と利用が容易であることから好適である。このシステムでは一酸化炭素と水素の存在下で高活性の複合体[RhH(ジホスフィン)CO]を形成し、この複合体は存在するアルケンと反応する。他のジホスフィン類もまたジホスフィン−ロジウム複合体の形成に使用でき、例えば、Immaculada del Rio,Wim G.J.de Lange,Piet W.N.M.van Leeuwen and Carmen Claver,Journal of the Chemical Society,Dalton Transactions(2001),(8),1293−1300、又はMontserrat Dieguez,Mariette M.Pereira,Anna M.Masdeu−Bulto,Carmen Claver and J.Charles Bayon,Journal of Molecular Catalysis A:Cemical(1999),143−(1−3),111−112に記載されている。
【0012】
当然ながら、ロジウム触媒[Rh(OMe)(COD)](A)を[Rh(acac)(CO)]又は[Rh(OAc)(COD)]などの触媒に置換してもよく、それらは例えばPiet W.N.M.van Leeuwen and Carmen Claver(editors) in ”Rhodium Catalysed Hydroformylation”,Catalysis by Metal Complexes,Vol.22,luwer Academic Puvlishers,Dordrecht,The Netherlands,(2000),ISBN0−7923−6551−8に記載されている。
【0013】
本発明の工程の一実施態様では、ヒドロホルミル化触媒としてビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジ(μ−メトキシ)ジロジウム(I)(A)とジファニルホスフィノ−1,8−ジメチル−9,9−キサンテン(キサントホス)(B)の触媒系を使用する。次いで開始材料のアルケンに対して1×10−3〜1×10−4当量、望ましくは2×10−4〜 5×10−4当量の触媒を用いてこの反応を実施できる。
【0014】
本実施態様では、完全に脱気した5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエンを窒素環境下でオートクレーブ内に充填し、反応を実施する。また触媒(A)及び共触媒(B)も窒素環境下で添加する。この反応は、アルケンに対して1×10−3〜1×10−4当量、好ましくは2×10−4 〜5×10−4当量の触媒を用いて実施できる。次に、オートクレーブを閉じ、一酸化炭素と水素の等モル混合物で数回パージする。オートクレーブの内圧を約5×10〜8×10HPaに、 好ましくは3×10〜6×10HPaに調節し、更に反応溶媒を約60〜120℃、好ましくは100℃に加熱する。物質変換をガスクロマトグラフィーでモニターし、生成物を約12時間後に回収し、直ちに蒸留し、6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)を得る。
【0015】
本発明は、他の新規化合物の6,8−ジメチルノン−7−アナール(1’)、すなわち式(I)の化合物において、式中、点線で表される結合が存在せず、Xが−CHO基である化合物、並びにその合成方法及び芳香剤としての使用に関する。
【化4】

【0016】
本発明はまた、化合物(1)及び(1’)の非環式若しくは環式アセタール類、すなわち式(I)の化合物において、式中、XがCH(OR)基であり、Rが直鎖状又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル基若しくはアルケニル鎖であり、点線で示される結合が存在するか又は存在しない化合物、並びにその合成方法及び芳香剤としての使用に関する。
【0017】
本発明はまた、各々(1)及び(1’)に由来する不飽和アルコール(2)及び飽和アルコール(2’)、すなわち式(I)の化合物において、式中、Xが−CHOH基であり、点線で示される結合が存在する(2)か又は存在しない(2’)化合物、並びにその合成方法及び芳香剤としての使用に関する。
【化5】

本発明のアルコール(2)及び(2’)は、当業者に公知の条件下で式(1)の化合物を還元することにより容易に調製できる。本発明の具体的な実施態様では、不飽和アルコール(2)は例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などの還元剤により(1)のアルデヒド官能基を選択的に還元して調製し、飽和アルコール(2’)はパラジウム/チャコールのような触媒存在下で、水素で化合物(1)のアルデヒド官能基や二重結合を還元して合成する。
【0018】
本発明の飽和アルデヒド(1’)は、例えばコリーズ試薬(CrO/ピリジン/塩酸)などの当業者に公知の方法に従って(2’)の酸化により調製できる。
【0019】
本発明はまた、アルコール類(2)及び(2’)にそれぞれ由来するエステル類(3)及び(3’)、すなわち式(I)の化合物において、式中、Xが−CHOC(O)R基であり、Rが直鎖状又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル又はアルケニル鎖であり、点線で示された結合が存在する(3)か、又は存在しない(3’)化合物に関する。特に、6,8−ジメチルノン−7−エノール(2)と6,8−ジメチルノン−7−アノール(2’)の、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル、イソブル酸エステル、ペンタン酸エステル、2−メチルブチル酸エステル、3−メチルブチル酸エステル、へキサン酸エステル、2−メチルペンタン酸エステル、3−メチルペンタン酸エステル、4−メチルペンタン酸エステル、2,2−ジメチルブチル酸エステル、2,3−ジメチルブチル酸エステル、3,3−ジメチルブチル酸エステル、2−ブテン酸エステル、2−メチル−2−ブテン酸エステル又は3−へキサン酸エステルに関する。
【化6】

【0020】
本発明はまた、これらのエステル類の合成方法及び芳香剤としての使用に関する。
【0021】
本発明のエステル類(3)と(3’)はそれぞれ(2)と(2’)から調製され、特に当業者に公知の条件に従って、適切な直鎖又は分岐状の炭素数1〜5の酸又はアシル塩化物をエステル化することによって調製される。
【0022】
本発明の化合物の合成に関する反応式を以下に示すが、この例に限定されるものではない。
【化7】

Rは直鎖状又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル鎖である。上記で詳細に説明したように、これらの芳香特性ゆえに式(I)の化合物には香料として非常に多様な用途が存在し、限定されないが特に化粧品や清掃製品などへの用途が挙げられる。
【0023】
本発明は更に、本発明の式(I)の化合物の少なくとも1つをそれ単独で、又は必要とする効果に合わせて当業者に公知の他の芳香性化合物の1つ以上と混合して、芳香剤、匂いマスキング剤又は匂い中和剤として使用することに関する。添加する芳香剤は、式(I)の化合物若しくは当業者に公知である他の芳香剤である。
【0024】
本発明は更に、ベース製品と有効量の1つ以上の本発明の式(I)の化合物とを組み合わせた組成物に関する。
【0025】
それは、それ自体芳香性を有する組成物であるか、又は臭気のマスキング又は臭気の中和に使用される芳香剤を含んでなる組成物であってもよい。
【0026】
ベース製品は、想定される組成物や想定される使用に応じて当業者が容易に決定でき、例えば通常の成分としては1つ以上の溶媒又は1つ以上の賦形剤が公知である。
【0027】
組成物中に添加される本発明の式(I)の化合物の有効量は、組成物の種類や求める香りの効果、並びに存在しうる他の芳香性化合物や非芳香性化合物の種類に応じて変化し、当業者であれば容易に決定できる。該有効量は0.1〜99重量%、好適には0.1〜50重量%、より好適には0.1〜30重量%の非常に幅広い範囲で変化させうることが公知である。
【0028】
本発明の式(I)の化合物はそのまま使用してもよく、又は不活性担体若しくは最終組成物における他の活性成分を含みうる担体中、又は担体上に付与して使用してもよい。多種類の担体が使用可能であり、例えば極性溶媒、オイル、脂肪、微粉末固体、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゴム、樹脂及びかような組成物として公知の他の担体などが挙げられる。
【0029】
以上より本発明はまた、上記の用途、特に香料、シャンプー又は石鹸などの化粧品、又は洗濯用柔軟剤又は洗濯用洗剤などの清掃用品への用途に使用する、芳香性組成物又は芳香性製品の調製における、式(I)の化合物の使用に関する。
【0030】
本発明は、具体的には、香料組成物、特に香料ベース又は香料コンセントレート、オーデコロン、化粧水又は芳香剤であって、少なくとも1つの式(I)の化合物若しくは少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物を含んでなる香料組成物に関する。
【0031】
本発明はまた、具体的には、少なくとも1つの式(I)の化合物を含んでなるか、又は少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物を含んでなる、化粧用組成物、特に顔用又は身体用クリーム、タルカムパウダー、ヘアオイル又はボディオイル、シャンプー、ヘアローション、バスソープ、バスオイル、シャワーゲル、バスゲル、化粧用石鹸、制汗剤、ボディデオドラント、シェービングローション又はクリーム、シェービングソープ、クリーム、歯みがき、うがい薬又はポマードに関する。
【0032】
更に本発明は、少なくとも1つの式(I)の化合物又は少なくとも1つの式(I)の化合物を含む少なくとも1つの組成物を用いる、保護的若しくは非保護的な美容処置又はケア方法に関する。
【0033】
本発明はまた、清掃用品、特に柔軟材、洗剤、洗濯粉、消臭スプレーであって、少なくとも1つの式(I)の化合物、若しくは少なくとも1つの式(I)の化合物を含む組成物を含んでなる清掃用品に関する。
【0034】
下記の実施例では、新規芳香性化合物、それらの合成方法、並びにそれらの利点及び使用について更に示す。これらの実施例は例示を目的としてのみ示すものであり、本発明を限定するものと解釈すべきでない。
【実施例1】
【0035】
<6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)の合成>
脱気した5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン138.0g(1.00mol)を、ガラス容器を設置したオートクレーブ内に窒素環境下で充填した。ビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジ(μ−メトキシ)ジロジウム(I)(A) 232mg(0.48mmol)と、ジフェニルホスフィノ−1,8−ジメチル−9,9−キサンテン(B) 836mg(1.44mmol)を添加した。オートクレーブを閉じ、一酸化炭素と水素の等モル混合物でオートクレーブ内を3回パージした。内圧を3×10HPaに調整した。徐々に100℃に加熱し、反応が発熱性であることを考慮しながら、バルク温度が120℃を超えないようにした。反応溶媒をこの条件下で12時間加熱し続けた。室温まで冷却し、生成物を蒸留装置内へ移した。5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン(41.6g、沸点:35℃/60HPa)を回収した後、6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)(沸点:48℃/3.5HPa) 88.2g(0.48mol)を得た。収率は48%であった。赤外線、NMR及び質量スペクトルの分析の結果、アルデヒド(1)の構造と一致していた。
【実施例2】
【0036】
<6,8−ジメチルノン−7−エノール(2)の合成>
6,8−ジメチルノン−7−エナール(1) 18g(0.11mol)と、エタノール96.0gを、温度計を設置した500mlの丸底フラスコに充填した。5℃に冷却し、フラスコ内のバルク温度が10℃を超えないように2.0gの水素化ホウ素ナトリウムを少量ずつ添加した。この混合物を室温で16時間撹拌した。5℃に冷却し、バルク温度が10℃を超えないようにしながら、過剰量の還元剤を除去するために20.0g(1.36mol)のアセトンを滴下して添加した。バルク温度が10℃を超えないようにしながら、反応溶媒を20gの10%塩酸で酸性化した。また、40gの水を添加し、次いで70gのトルエンを激しく撹拌しながら添加した。層分離させ、有機溶媒層を50gのNaHCO飽和水溶液で1回洗浄し、更に50gの水で2回洗浄した。有機溶媒層を乾燥、濾過し、減圧下でトルエンを蒸発させた。蒸留後、13.4g(0.08mol)の(沸点:105℃/10トル)物質を得た。収率は72.7%であった。赤外線、NMR及び質量スペクトルの分析の結果、期待したアルコールの構造と一致していた。
【実施例3】
【0037】
<6,8−ジメチルノン−7−エノールアセテート>
6,8−ジメチルノン−7−エノール(2) 13g(76mmol)と、トリエチルアミン 10.8g(107mmol)と、t−ブチルメチルエーテル(MTBE)200mlを、温度計と滴下漏斗を設置した500mlの丸底フラスコに充填した。5℃に冷却し、バルク温度が10℃を超えないようにしながら、20mlのMTBE中に希釈した8.4g(107mmol)の塩化アセチルを添加した。混合物を室温で14時間撹拌した。5℃に冷却し、100mlの10%塩酸溶液を添加し中和した。層分離し、有機溶媒層を100mlのNaHCO飽和水溶液で1回洗浄し、次いで生理食塩水で洗洗浄し、中和した。有機溶媒層を乾燥、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させた。減圧下で蒸留し、酢酸エステル(沸点:58℃/0.4トル)を精製した。収率は76%であった。
【実施例4】
【0038】
<6,8−ジメチルノン−7−エノールプロピオン酸クロリド>
プロピオン酸クロリドを用い、実施例3に従って反応を実施して得た。収率は71%(沸点:70℃/0.6トル)であった。
【実施例5】
【0039】
<純粋化合物(1)の嗅覚評価>
第一段階として、純粋化合物(1)の芳香特性をパネル評価した。パネラーを複数名の専門家で構成し、化合物を定量的に評価させた。化合物(1)は、コリアンダー葉をアクセントにした爽やかなオレンジピールとハーブの香りであると判定された。アルデヒド(1)をプロピレングリコール中に1%に希釈すると、そのフルーティな香りが優勢となり、メロンノートとして認識できる。
【実施例6】
【0040】
<化合物(1)の2種類の組成における官能評価>
続いて、2つの芳香組成物を調製し、化合物(1)の嗅覚インパクトを試験した。これらの芳香組成物はシャンプー、シャワーゲル、クリームタイプなどの局所的な化粧用製品に使用可能である。
【0041】
各場合において、化合物(1)を含む組成物のt、t+48h、t+168hにおけるトップ、ミドル、及びベースノートの嗅覚インパクトを評価し(試験2)、一方該化合物を含まない組成物の場合(試験1)を比較例とした。
【0042】
<組成物1>
【表1】

1. ジプロピレングリコール中10%
2. 4−4−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
3. 由来、V.Mane Fils、フランス
4. 3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド、由来:Givaudan社、スイス
5. (シクロヘキシルオキシ)酢酸、2−プロペニルエステル、由来:Symrise社、ドイツ
6. 1,1,2,3,3,8−ヘキサメチル−1,2,3,5,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキサシクロペンタ[b]ナフタレン、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
7. ジメチルシクロヘクス−3−エンカルバルデヒド、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
8. 酢酸、2−(tert−ブチル)シクロへキシルエステル、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
9. プロピオン酸、3a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−4,7−メタノイデン−5−イル エステル、由来:Givaudan社、スイス
10. ジプロピレングリコール中1%
11. メチル2−オクチノエート、由来:Givaudan社、スイス
12. ジプロピレングリコール中1%
【0043】
<組成物2>
【表2】

1. 3−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
2. 由来:V.Mane Fils、フランス
3. 1,1,2,3,3,8−ヘキサメチル−1,2,3,5,7,8−ヘキサヒドロ−6−オキサシクロペンタ[b]ナフタレン、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
4. [3−オキソ−2−((E)−ペンチル)シクロペンチル]酢酸、メチル エステル、由来:Firmenich社、スイス
5. 3−(ベンゾ[1,3]ジオキソ−5−イル)−2−メチルプロピオンアルデヒド、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
6. シクロヘキシルオキシアセチック酸、アリルエステル、由来:Symrise社、ドイツ
7. 1−(2,3,8,8−テトラメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフト−2−イル)エタノン、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
8. 3−(4−(tert−ブチル)フェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド、由来:Givaudan社、スイス
9. 4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)シクロヘクス−3−エンカルボアルデヒド、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
10. (E)−3−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘクス−3−エニル)ブト−3−エン−2−オン、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
11. 酢酸、2,2,2−トリクロロ−1−フェニルエチルエステル、由来:Symrise社、ドイツ
12. 酢酸、4−(tert−ブチル)シクロへキシル エステル、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
13. 2,6,10−トリメチルウンデク−9−エナール、由来:Givaudan社、スイス
14. ジプロピレングリコール中10%
15. ジプロピレングリコール中1%
16. 1−(2,6,6−トリメチル−1,3−シクロヘキサジエン−1−イル)−2−ブテン−1−オン、由来:Firmenich社、スイス
17. 2,6−ジメチルヘプト−5−エナール、由来:Givaudan社、スイス
18. 2,4−ジメチルシクロヘクス−3−エンカルバルデヒド、由来:International Flavors and Fragrances社、アメリカ
【0044】
組成物1中の6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)の存在により、その香りがリンゴの香りから甘く新鮮で非常に心地のよい天然のグリーンメロンの香りへと大きく変化した。
【0045】
6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)は、フルーティーなノート、特にグリーンメロンの香りに寄与しており、組成物2では海辺の香りに寄与していた。また、強いトップノートを付与するものであった。
【0046】
時間経過とともに香りの強さは直線的に失われるが、芳香特性に大きな変化は見られなかった。
【0047】
これら評価の結果は、本発明の化合物(1)が優れた芳香特性を発揮することを疑いもなく示すものであり、その特徴を、香料への用途、特に化粧品、洗浄用製品、その他一般的なあらゆる芳香組成物あるいは、匂いのマスキングや中和が望まれる組成物への用途に利用することが考えられる。
【実施例7】
【0048】
<純粋化合物及び組成物における化合物(2)の嗅覚評価>
実施例5での評価と同様に評価審査員が実施した結果、純粋化合物(2)は「素朴、花の香り、ベルガモット、シナモンの香り」という嗅覚評価であった。
【0049】
次いで、化合物(2)の合成ベルガモット組成物における嗅覚効果(試験2)と、化合物を含まない組成(試験1)とで試験を行った。
【表3】

【0050】
試験実施の結果、6,8−ジ−メチルノン−7−エナールの存在によりベルガモットの香りが増強され、製品に強力な印象を与えることが示された。この効果は蒸発の2時間後に更に強くなり、ベルガモットの香りはミドルノートまで持続した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物。
【化1】

(式中、XはCHO、CHOH、CHOC(O)R又はCH(OR)基であり、Rは直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5個のアルキル又はアルケニル鎖であり、点線で表した結合は存在するか又は存在しない。)
【請求項2】
鏡像異性的に純粋な形であって特にR体鏡像異性体若しくはS体鏡像異性体の形であるか、又は鏡像異性体の混合物の形であって特にラセミ体混合物の形である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
6,8−ジメチルノン−7−エナール(1)である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化2】

【請求項4】
6(R),8−ジメチルノン−7−エナールである、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項5】
6,8−ジメチルノン−7−アナール(1’)である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化3】

【請求項6】
6,8−ジメチルノン−7−エノール(2)である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化4】

【請求項7】
6,8−ジメチルノン−7−アノール(2’)である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化5】

【請求項8】
請求項1で定義する式(I)で表され、Xが−CH(OR)基であり、Rが直鎖又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル又はアルケニル鎖であり(−CH(OR)基は環状でも非環状でもよい)、点線で表される結合が存在するか又は存在しない、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項9】
請求項1で定義する式(I)で表され、Xが−CHOC(O)R基であり、Rが直鎖又は分岐状の炭素数1〜5のアルキル又はアルケニル鎖であり、点線で表される結合が存在するか(3)又は存在しない(3’)、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【化6】

【請求項10】
請求項6及び請求項7で定義するアルコール類(2)及び(2’)に由来するエステルであって、特に6,8−ジメチルノン−7−エノール(2)と6,8−ジメチルノン−7−アノール(2’)の、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル、イソブル酸エステル、ペンタン酸エステル、2−メチルブチル酸エステル、3−メチルブチル酸エステル、へキサン酸エステル、2−メチルペンタン酸エステル、3−メチルペンタン酸エステル、4−メチルペンタン酸エステル、2,2−ジメチルブチル酸エステル、2,3−ジメチルブチル酸エステル、3,3−ジメチルブチル酸エステル、2−ブテン酸エステル、2−メチル−2−ブテン酸エステル又は3−へキサン酸エステルである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエンのヒドロホルミル化を含む、式(1)の化合物
【化7】

の調製方法。
【請求項12】
ビス(η−1,5−シクロオクタジエン)ジ(μ−メトキシ)ジロジウム(I)とジフェニルホスフィノ−1,8−ジメチル−9,9−キサンテン(キサントホス)をヒドロホルミル化の際の触媒として用いる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1から請求項10のいずれか1項で定義する少なくとも1つの式(I)の化合物を、1つの異性体若しくは複数の異性体混合物の形、特に鏡像異性体若しくは鏡像異性体の混合物、ラセミ体混合物、又はジアステレオ異性体若しくはジアステレオ異性体の混合物の形で含む組成物。
【請求項14】
不活性担体又は他の活性成分を含みうる担体、特に極性溶媒、オイル、脂肪、微粉化固体、シクロデキストリン、マルトデキストリン、ゴム又は樹脂から選択される担体に、1つ以上の前記式(I)の化合物が添加されている、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
香料組成物、特に香料ベース若しくは香料コンセントレート、オーデコロン、化粧水又は芳香剤であって、請求項1から請求項10のいずれか1項で定義した化合物を少なくとも1つ含むか、又は請求項13若しくは請求項14のいずれか1項記載の組成物を含む、香料組成物。
【請求項16】
化粧用組成物、特に顔用又は身体用クリーム、タルカムパウダー、ヘアオイル又はボディオイル、シャンプー、ヘアローション、バスソープ、バスオイル、シャワーゲル、バスゲル、化粧用石鹸、制汗剤、ボディデオドラント、シェービングローション又はクリーム、シェービングソープ、クリーム、歯みがき、うがい薬又はポマードであって、請求項1から請求項10のいずれか1項で定義した化合物を少なくとも1つ含むか、又は請求項13若しくは請求項14のいずれか1項記載の組成物を含む、化粧用組成物。
【請求項17】
清掃用品、特に柔軟材、洗剤、洗濯粉、消臭スプレーであって、請求項1から請求項10のいずれか1項で定義した化合物を少なくとも1つ含むか、又は請求項13若しくは請求項14のいずれか1項記載の組成物を含む、清掃用品。
【請求項18】
請求項1から請求項10のいずれか1項で定義した化合物の少なくとも1つ、又は請求項13若しくは請求項14のいずれか1項記載の組成物の、芳香剤、匂いマスキング剤又は匂い中和剤としての使用。
【請求項19】
1つ以上の前記化合物又は前記組成物を、他の芳香剤と組み合わせて使用する、請求項18記載の使用。

【公表番号】特表2008−527023(P2008−527023A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551698(P2007−551698)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000080
【国際公開番号】WO2006/077305
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(507038674)
【Fターム(参考)】