説明

新規CCケモカインアンタゴニスト

新規のCCケモカイン結合タンパク質をクリイロコイタマダニの唾液から単離する。本発明に従い調製される化合物は、抗炎症及び免疫調節化合物として、また、CCケモカイン関連疾病の処置又は予防に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCケモカインの新規アンタゴニスト、特にCCL5及びCCL11のアンタゴニストに関し、更にはそれらの使用、特に抗炎症性又は免疫調節性化合物としての使用と、CCケモカイン関連疾病の処置又は予防における使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは小型の分泌性、炎症促進性タンパク質であり、血液から損傷部位への白血球の指向性遊走を媒介する。ケモカインファミリーは、このファミリーのタンパク質を特徴づける保存システインの位置に応じて、C、CC、CXC、CX3Cケモカインに構造上類別することができ、これらは一連の膜受容体に結合する(Baggiolini M. 等 (1997))。これらの膜受容体(何れも七重螺旋状G−タンパク質共役受容体)によって、ケモカインが標的細胞に生理活性を発揮することが可能となる。かかる細胞はその状態及び/又は種類に応じて、特定の受容体の組み合わせを発現し得るからである。ケモカインの生理効果は、併起的な相互作用が複雑に統合された系の結果として生ずる。かかる受容体はリガンド特異性が重複する場合が多いため、単一の受容体が異なるケモカインに結合し得る。同様に、単一のケモカインが異なる受容体に結合し得る。
【0003】
構造活性相関研究によれば、ケモカインは、受容体との主な相互作用部位を2箇所(即ち、可動性アミノ末端領域と、第2システインに続く高次構造的に剛性のループ)有することが示されている。ケモカインはそのループ領域によって受容体にドッキングするものと考えられ、この接触によって、受容体の活性化を生じさせるアミノ末端領域の結合が起こり易くなるものと考えられる。
【0004】
通常、ケモカインは損傷部位で産生され、白血球の遊走及び活性化をひき起し、炎症、免疫、恒常性維持、造血、及び脈管形成の過程において基本的な役割を演じる。従って、これらの分子は、かかる過程に関連する疾患に治療介入する上で、好ましい対象候補であると考えられる。ケモカイン又はそれらの受容体を阻害することによって、白血球の成熟、動員、及び活性化、並びに脈管形成又は動脈硬化に関係する他の病理学的過程を低減することができる(Baggiolini M.(2001))。
【0005】
突然変異を阻害するケモカイン、抗体、及びペプチドと、受容体をブロックする小分子阻害薬とに加えて、効果的なケモカインアンタゴニストの探索は、ヒト又は哺乳動物の宿主と接触するとその宿主に影響を及ぼす強力な免疫調節活性を示す、一連のウイルスや他の生物体にも拡大されている。
【0006】
サイトカイン、ケモカイン、及びそれらの受容体のウイルスによる模倣は、治療薬開発における免疫調節の方策を示している。最近では、吸血性節足動物(蚊、ブユ、及びダニなど)が発現する免疫調節因子が再検討されている(Gillespie, RD等(2001))。
【0007】
具体的には、ダニの唾液腺は、特に抗炎症、抗血液凝固、及び抗免疫活性を有する生理活性分子の複雑な混合物を産生する。その中には、ヒスタミンを調節し、免疫グロブリンに結合し、或いは別の補体カスケード又は他のプロテアーゼを阻害する生理活性タンパク質が含まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
大量の文献があるにもかかわらず、様々なダニの組織及び/又は種から作製されたライブラリーのランダム配列決定及びディファレンシャルスクリーニングによって同定されたcDNA配列を列挙しているのは、僅かな論文のみに過ぎない。しかし、これら配列の大部分は生化学的又は機能的な特性決定がなされておらず、基本的な細胞機能に関与する既知のタンパク質(例えば、過去にダニ唾液腺において酵素活性又は抗体反応誘発に関する特性決定がなされたもの)との配列類似性のみに基づいて、多くの注釈が書き入れられている。特に、CXCケモカイン結合タンパク質として作用し、CXCケモカインアンタゴニストとして機能するダニタンパク質については、何ら示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)の唾液に含まれるEvasin−4という新規なタンパク質が、CCケモカインに結合してそれらの活性を阻害することが見出された。Evasin−4はクリイロコイタマダニのcDNAライブラリーからクローン化され、哺乳類細胞で発現された。このタンパク質、並びにその誘導体、断片、又は模倣剤は、例えば、哺乳類生物のCCケモカインのアンタゴニストとして、或いは、ワクチン接種用の標的やダニ及びダニ媒介病原体の駆除用の標的として、治療に用いることができる。
【0010】
即ち、本発明の第1の態様は、evasin−4又はその断片若しくは類似体のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに関する。好ましい本発明のポリペプチドは、CCケモカインに結合し、その生理活性を阻害することが好ましい。かかるポリペプチドの具体例としては、evasin−4又はその断片が挙げられる。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記定義のポリペプチドをコード化する核酸分子に関する。かかる核酸には、それらから単離されたオリゴヌクレオチドと、前記分子を含有するベクター、特に発現ベクターも含まれる。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記定義のポリペプチドに選択的に結合する抗体に存する。
【0013】
本発明の第4の態様は、上記定義のポリペプチドを発現する宿主細胞及びトランスジェニック非ヒト動物、並びに、かかる細胞及びトランスジェニック非ヒト動物を作製する方法に関する。
【0014】
本発明の第5の態様は、通常は組み換え技術を用いて、上記定義のポリペプチドを調製する方法である。
【0015】
本発明の第6の態様は、上記定義のポリペプチド又は核酸分子と、医薬的に許容し得る担体又はビヒクルとを含んでなる医薬(ワクチン又は免疫原を含む)組成物である。
【0016】
本発明の第7の態様は、上記定義のポリペプチド又は核酸分子の薬剤としての使用、特に、哺乳類の免疫又は炎症性応答を調節するための薬剤の調製における使用、並びに、対応する処置のための方法に関する。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ケモカイン活性を調節するための新規組成物及び方法を提供する。より具体的には、本発明は、CCケモカイン結合特性を有し、ケモカイン作用の阻害に使用できる新規タンパク質を開示する。実施例は、ダニ唾液に由来するこのタンパク質が、組み換え形態として発現及び精製可能であるとともに、CCケモカインに有効に結合することにより、その作用(例えば、CCケモカインによって誘導される細胞の特異的走化性応答)を阻害し得ることを示している。
【0019】
即ち、本発明の第1の態様は、evasin−4ポリペプチド、即ち、evasin−4のアミノ酸配列、或いはその断片又は類似体のアミノ酸配列を含んでなる任意のポリペプチドに存する。本発明のポリペプチドはCCケモカイン、特にCCL5(別名RANTES)及びCCL-11(別名エオタキシン:eotaxin)に結合し、前記ケモカインの活性を阻害することが好ましい。具体的な本発明のポリペプチドは:
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
c)a)、b)、c)又はd)のタンパク質をコード化する核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸分子であって、CCケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子によりコード化されるタンパク質;
d)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であり、CCケモカインに結合するタンパク質;
e)a)、b)、c)又はd)のタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;及び
f)a)、b)、c)、d)、又はe)のタンパク質の断片を含んでなるタンパク質であって、前記の断片又はタンパク質が免疫調節活性を有するタンパク質;
からなる群より選択される。
【0020】
好ましい実施形態によれば、このタンパク質は:
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
c)a)又はb)のタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合し、前記ケモカインの活性を阻害する断片を含んでなるタンパク質;
d)a)又はb)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質;
からなる群より選択される。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、上記定義のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されており、CCケモカインに結合して当該ケモカインの活性を阻害する変異体に関する。
【0022】
本発明のポリペプチドは、成熟形であってもよい。成熟形は、1又は2以上の翻訳後修飾(グリコシル化、リン酸化、シグナルペプチド除去のためのエンド/エクソペプチダーゼによる修飾等)によって、或いは、配列コード化異種配列(検出及び/又は精製を改善するタグ又はドメイン等)のインフレーム付加によって得られる。例えば、evasin−4は、哺乳類及び昆虫の双方の細胞株において、組み換えヒスチジンタグ化タンパク質として、完全形及び成熟形で発現させることが可能である。
【0023】
本発明のポリペプチド又はその対応する核酸は、組み換え又は合成のポリペプチド及び核酸等、単離型(例えば、その天然における環境下にない状態)であってもよい。
【0024】
実施例は、evasin−4ポリペプチドがCCケモカイン、特にCCL5(別名RANTES)及びCCL11(別名エオタキシン)に結合すること、それらの活性を阻害(例えば低減)するために使用し得ることを示している。この特性決定は、放射能標識CCケモカインの使用を伴う生化学アッセイを利用して行なった。かかる活性ゆえに、本発明のevasin−4ポリペプチドは、以下に論ずるような広範な治療的有用性を有する。
【0025】
本発明との関係において、ポリペプチドの断片とは、前記ポリペプチド配列の少なくとも5、6、7、8、9又は10の連続したアミノ酸残基を含んでなる任意の断片を指す。具体的な本発明の断片は、本明細書に開示されるevasin−4タンパク質の15、20、25、又はそれ以上のアミノ酸残基を含んでなる。好ましい断片は、全長タンパク質の生理活性のうち少なくとも1つ(例えば免疫原性又は免疫調節活性)を保持する。
【0026】
これに関して、本発明との関係において「免疫調節活性」とは、インビトロ又はインビボで検出される任意の活性であって、免疫反応に正又は負の何れかの影響を及ぼす活性を意味する。かかる活性の例としては、免疫活性、免疫抑制活性、抗炎症活性、前/抗アポプトーシス活性、又は抗腫瘍活性が挙げられる。
【0027】
或いは、断片は、哺乳動物に投与した場合に免疫活性を付与するものとして特定することも可能である。これらの断片は必要に応じて、(例えばダニ又はダニ媒介病原体に対する)免疫反応を亢進するために、適切な抗原特性、免疫原特性を有するべきである。かかる機能配列を候補ワクチン抗原として同定する方法や、更にはアジュバントと一緒に投与し、及び/又は、担体に架橋する方法に関して、文献には多くの例が示されている(Mulenga A.他(2000年)、国際公開第01/80881号、国際公開第03/030931号、国際公開第01/87270号)。Evasin−4において同定された特定の抗原又は抗原群は、動物における外寄生生物の感染又は疾患の予防又は低減に使用することができる。動物がその外寄生生物に自然暴露されることによって、その外寄生生物に対する動物の免疫が増強される(国際公開第95/22603号)。最後に、この断片は、スクリーニング又は診断用途において、完全タンパク質に対する抗体を産生するために使用することもできる。
【0028】
上記定義のevasin−4の特性について、本明細書ではこの配列の組み換え変異体を用いて例示したが、かかる特性は活性変異体でも維持され、更には増強される場合もある。この種の分子としては、前記配列の1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されてなる、天然又は合成の類似体が挙げられる。但し、後述の実施例に記載の手段によって測定した場合に、本発明の特徴となる生理活性と同じ生理活性を、同等か又はより高いレベルで示すことを条件とする。
【0029】
特に「活性」という語は、かかる代替となる化合物において、Evasin−4のCCケモカイン結合及び免疫調節特性が維持され、更には増強されることを意味する。
【0030】
活性変異体分子の作製は、部位特異的突然変異誘発法、コード化DNA配列のレベルでのコンビナトリアル法(例えばDNAシャフリング、ファージディスプレイ/選択等)、又はコンピューター支援設計試験、或いは他の適切な周知の手法のうち、任意の手法を用いて行なうことができる。これによって、実質的に対応する突然変異型又は短縮型のペプチド又はポリペプチドの有限群が得られる。当業者であればこれらの代替分子を、従来技術や後述の実施例における教示に基づいて、定型的な手法で取得及び試験することができる。
【0031】
本発明によれば、これらの活性変異体における好ましい変化は、通常「保存的」又は「安全な」置換として知られる、重要でない残基における置換である。保存的アミノ酸置換は、その分子の構造及び生物学的機能が保存される程度に、十分に類似した化学的性質を有するアミノ酸による置換である。当然ながら、上記定義の配列は、その機能が変更されない限りにおいて、アミノ酸の挿入及び欠失を有していてもよい。具体的には、かかる挿入又は欠失が数個(例えば10個未満、好ましくは3個未満)のアミノ酸しか伴わず、また、タンパク質又はペプチドの機能的高次構造にとって特に重要なアミノ酸を除去又は置換しない場合である。
【0032】
天然のタンパク質の配列及び/又は構造に関する統計的及び物理化学的な検討に基づいて保存的アミノ酸置換の選択を可能とするモデルが、文献には多数示されている(Rogov SI.及びNekrasov AN.(2001))。タンパク質設計実験によれば、アミノ酸の特定のサブセットを用いて、折り畳み式の活性タンパク質を生成することができること、更にはこれが、タンパク質構造内により容易に収容可能であり、且つ、機能的及び構造的なEvasin−4のホモログ及びパラログの検出に使用可能な、アミノ酸「同義」置換の分類に有用であることが示されている(Murphy LR.等(2000))。置換用の同義アミノ酸基、並びに、より好ましい同義アミノ酸基は、表Iに定義されるものである。
【0033】
但し、Evasin−4配列との関係においては、特定の残基がとりわけ重要である。例えば、evasin−4には、有意な相同性を示す既知のタンパク質が存在しない。更なるevasin−4の特徴は、7個の潜在的なN結合グリコシル化部位と、9個のシステイン残基である。これらの残基は、正確な折り畳み及び/又は活性に重要である可能性があるので、代替のポリペプチドにおいても対応する位置に保存されることが好ましい。或いは、欠失又は置換されたシステイン又はグリコシル化部位を、タンパク質内の異なる位置に再建してもよい。
【0034】
或いは、哺乳動物に投与した場合に上記CCケモカイン結合タンパク質の免疫原性を低減するような配列変更から、Evasin−4の活性変異体を得ることもできる。この目的や、治療用タンパク質の安全且つ効果的な投与を可能にする他の機能最適化のために設計及び導入し得る配列変更の例は、特に非ヒト、非哺乳動物、又は非天然のタンパク質の場合について、文献に多数記載されている(Schellekens H.(2002))。これらの分子を得るための技術的アプローチの例としては、定方向進化(Vasserot AP.等(2003))、合理的設計(Marshall SA(2003))、バイオインフォマティクス(Gendel SM.(2002))、CD4+T細胞エピトープの同定及び中和(国際公開第03/104263号、第03/006047号、第02/98454号、第98/52976号、第01/40281号)、他のタンパク質配列との融合(国際公開第02/79415号、第94/11028号)、他の化合物との結合(国際公開第96/40792号)等が挙げられる。
【0035】
活性evasin−4由来配列は、evasin−4の天然類似体又はオルソログであってもよい。これらは、特に他のダニ種、具体的にはマダニ(Ixodidae)科、より具体的にはクリイロコイタマダニが属するRhipicephalinae亜科に属するもの、更にはマダニ亜科(例えばマダニ(Ixodes scapularis)及びタネガタマダニ(Ixodes ricinus))やAmblyomminae亜科(例えばAmblyomma variegatum及びAmblyomma americanum)等の他の亜科から単離することができる。或いは、ヒト及びマウス等の哺乳動物でも、オルソログを同定することができる。
【0036】
吸血性節足動物のゲノム及びトランスクリプトームについて入手可能な情報は限られており、その大部分はリボソーム及びミトコンドリアの配列に関連するもので、その保存に基づく系統発生関係の決定のために研究されたものである(Murrell A.等(2001))。ダニのゲノムデータは部分的且つ暫定的な形式でしか入手できない(Ullmann AJ.等(2002))が、マダニ類から抽出したゲノムDNAを用いれば、CCケモカイン結合タンパク質をコード化するダニ遺伝子について、更なる分析を行なうことが可能である。かかるゲノムDNAは、特定の方法及び条件を適用することにより(Hill CA.及びGutierrez, JA.(2003))、具体的には、既に実証されているように、唾液腺タンパク質における重要な多型の存在を検出するための方法及び条件を適用することにより(Wang H.等(1999))、抽出することができる。これらの生物におけるゲノム及びタンパク質の配列は、その生理学及び生物学的理解にとって重要であり、宿主と寄生生物と寄生生物媒介病原体との関係に本発明のタンパク質が果たす役割を理解する上で、有用な情報を提供する(Valenzuela JG.(2002b))。
【0037】
本発明においてEvasin−4と相同のタンパク質について記載した、CCケモカイン結合活性の生化学及び生理学的な特徴決定は、ダニ及びダニ媒介病原体の研究のために近年改良された任意の技術を適用することによって行なうことができる。かかる技術としては、2次元ゲル電気泳動(Madden RD.等(2004))やRNA干渉(Aljamali MN.等(2003))等が挙げられる。また、更なる検討によって、これらのタンパク質上におけるCCケモカイン認識部位及びCCケモカイン拮抗作用機序のマッピングや、関連する翻訳後修飾の同定を行なうことも可能である。
【0038】
本発明の別の態様は、異種ドメインと作動式に連結された上記定義のEvasin−4ポリペプチドを含んでなる融合タンパク質である。異種ドメインとしては、例えば、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部(Fc部)、多量体化ドメイン、搬出シグナル、及びタグ配列(アフィニティーによる精製を補助するもの、即ち、HAタグ、ヒスチジンタグ、GST、FLAAGペプチド、又はMBPなど)の中から選択し得る1又は2以上のアミノ酸配列が挙げられる。
【0039】
融合タンパク質との関係において、「作動式に連結した」という表現は、Evasin−4ポリペプチドと付加アミノ酸の配列とが、ペプチド結合により直接、或いはスペーサー残基(例えばリンカー)を介して結合していることを示す。このようにすれば、融合タンパク質をコード化する核酸分子を宿主細胞で直接発現させることにより、組み換え法での融合タンパク質の産生が可能となる(これについては後に論じる)。また、必要であれば、産生/精製過程の最後に、又はインビボで、融合タンパク質に含まれる余分なアミノ酸配列を、例えば適切なエンドペプチダーゼ/エキソペプチダーゼによって除去することもできる(これについても後に論じる)。この異種部分を作動式に連結させる部位は、Evasin−4ポリペプチドのN末端部でもC末端部でもよい。
【0040】
かかる部分及び/又はリンカーの設計、並びに融合タンパク質の作製、精製、検出、熟成、及び使用の方法及び方策については、文献において広く論じられている(Nilsson J.等の論文(1997)「Application of chimeric genes and hybrid proteins」、Methods Enzymol. Vol.326-328, Academic Press, 2000)。一般に、異種配列は、元のタンパク質の治療活性(例えばCCケモカイン結合)を実質的に損なうことなく、更なる特性を付与することを意図している。かかる更なる特性の例としては、精製手順の容易化、体液中での半減期の延長、結合部分の付与、細胞内タンパク質分解消化作用による成熟化、組み換え産生時の安定性、又は細胞外局在化が挙げられる。最後の特徴は、上記定義に含まれる特定の融合又はキメラタンパク質群を規定する上で、とりわけ重要である。かかる特徴によれば、ポリペプチドを容易に分離及び精製できる空間であって、CCケモカインが通常活性な状態である空間に、ポリペプチドを局在化させることが可能となるからである。
【0041】
Evasin−4ポリペプチドに融合されるこれらの配列のうち、1又は2以上の配列の選択は、上記タンパク質の組み換えタンパク質としての具体的な用途及び/又は精製プロトコルに応じて異なる。例えば、実施例ではEvasin−4の活性を試験するために、Evasin−4の検出及び精製を共に容易にするヒスチジンタグ配列を含有する融合タンパク質を用いた。これらの配列は、以下の3種類の基本的な異種配列群から選択することができる。
【0042】
かかる配列の第1の群は、シグナルペプチド及び搬出シグナル等の組み換えDNA技術を用いたタンパク質の分泌及び精製を補助する配列(Rapoport TA.等(1996))、或いは、アフィニティーによる精製を補助するタグ配列(HAタグ、ヒスチジンタグ、GST、FLAG、又はMBP)からなる群である。
【0043】
異種配列の第2の群は、タンパク質の安定性及び生理活性の向上を可能とする配列に代表されるものである。
【0044】
タンパク質の半減期の延長を可能にする方策の典型例としては、ヒト血清アルブミンとの融合や、循環ヒト血清アルブミンとの結合を可能にするペプチド及び他の修飾配列(例えばミリストイル化による)との融合が挙げられる(Chuang VT.等(2002)、Graslund T.等(1997)、国際公開第01/77137号)。或いは、この付加的な配列によって、脳内など特定部位への局在化のための標的化を補助することもできる(国際公開第03/32913号)。
【0045】
被験体に投与した場合の組み換えタンパク質の安定性を向上させる別の方法は、他のタンパク質から分離された、二量体、三量体等の形成を可能にするドメインを融合することによって、そのタンパク質の多量体を作製することである。本発明のポリペプチドの多量体化を可能にするタンパク質配列の例としては、hCG(国際公開第97/30161号)、コラーゲンX(国際公開第04/33486号)、C4BP(国際公開第04/20639号)、Erbタンパク質(国際公開第98/02540号)、又はコイルドコイルペプチド(国際公開第01/00814号)等のタンパク質から分離されたドメインが挙げられる。
【0046】
かかる融合タンパク質のよく知られた例としては、ヒト免疫グロブリンタンパク質の定常/Fc部に代表されるものが挙げられる。これは、ヒト免疫グロブリンによく見られる二量体化を可能にするものである。治療に役立つタンパク質及び免疫グロブリン断片を含んでなる融合タンパク質を作製するための方策が、文献には種々開示されている(国際公開第91/08298号、第96/08570、第93/22332号、第04/085478、第01/03737号、第02/66514号)。例えば、成熟Evasin−4をコード化する核酸配列のクローン化は、その5’末端に元のEvasin−4シグナル配列(又は任意の他の適切なシグナル/搬出配列)をコード化する核酸配列が融合され、その3’末端にヒト免疫グロブリンλ重鎖IgG1(国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)受託番号CAA75302、区分246−477)をコード化する核酸配列が融合された発現ベクターにより行なうことができる。得られたベクターを用いてCHO又はHEK293宿主細胞株を形質転換した上で、N末端にEvasin−4、C末端にIgG1配列を有する組み換え融合タンパク質を安定的に発現し、分泌するクローンを選択すればよい。このクローンはその後、産生の大規模化や、培養液からの組み換え融合タンパク質の精製に用いることができる。或いは、ヒト免疫グロブリンλ重鎖IgG1の定常部及びEvasin−4をコード化する核酸の位置を逆にしてもよく、得られるタンパク質を、Evasin−4の元のシグナル配列又は任意の他の適切なシグナル/搬出配列を用いて発現させ、分泌させることもできる。この技術を用いて、あるEvasin−4−Fc融合タンパク質と、別の異なるFc系融合タンパク質(例えば別のCCケモカインアンタゴニスト)とを発現する、2種類の異なるコンストラクトを同一の宿主細胞中で共発現させれば、ヘテロ二量体を産生することもできる(国際公開第00/18932号)。
【0047】
異種配列の更なる群は、Evasin−4が示す機能的活性に相乗作用を与え、又はこれを増幅し得る、更なる機能的活性を加える配列に代表されるものである。これらの配列は、膜結合タンパク質(例えばCCケモカイン受容体)の細胞外ドメインから分離され、或いは分泌タンパク質中に存在するものと推測されるが、CCケモカインアンタゴニストと同様に活性である可能性があり、一般に免疫調節活性を有するはずである。
【0048】
上記のように、これら融合タンパク質に含まれる更なる配列は、必要であれば、例えば産生又は精製過程の終りに、又はインビボで、例えば適切なエンドペプチダーゼ/エキソペプチダーゼによって除去してもよい。例えば、所望のタンパク質を異種配列からインビボ又はインビトロで酵素分離するのに使用可能なエンドペプチダーゼ(カスパーゼなど)の認識部位を、組み換えタンパク質に含まれるリンカー配列によって提示してもよい。或いは、発現されるタンパク質配列が開始メチオニンを有しない場合(例えばその配列が、シグナルペプチドのないタンパク質の成熟配列のみをコード化する場合)、本発明のタンパク質を宿主細胞内で、開始メチオニンを用いて正確に発現させることができる。その後、この更なるアミノ酸を、得られた組み換えタンパク質中に保持しておいてもよく、文献に開示の方法に従って、メチオニンアミノペプチダーゼ等のエキソペプチダーゼで除去してもよい(Van Valkenburgh HA.及びKahn RA.(2002)、Ben-Bassat A(1991))。
【0049】
本発明のポリペプチドの更なる変異体又は類似体は、ペプチド模倣体(別名ペプチドミメティクス)の形態で得られる。これは、ペプチド又はポリペプチドの性質が、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティ、及び/又はペプチド骨格のレベルで化学修飾されたものである。これらの変更は、精製、効能、及び/又は薬物動態の特徴が改善されたアンタゴニストを提供することを意図している。例えば、被験体への注入後にペプチドがペプチダーゼ開裂の影響を受け易いという問題がある場合、特に敏感なペプチド結合を非開裂性ペプチド模倣体で置換することにより、治療薬としてより安定な、ひいてはより有用なペプチドを提供することができる。同様に、L−アミノ酸残基の置換は、タンパク質分解に対するペプチドの感受性を低減し、最終的にはペプチドよりも他の有機化合物に類似したものにする標準的な方法である。また、アミノ末端保護基、例えばt−ブチルオキシカルボニル、アセチル、テイル(theyl)、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、及び2,4−ジニトロフェニル等も有用である。更に、効能の増強、活性の長期化、精製の容易化、及び/又は半減期の延長を可能にする他の修飾が、本技術分野では多数知られている(国際公開第02/10195号、Villain M.他(2001))。ペプチド模倣体に含まれるアミノ酸誘導体用の好ましい代替「同義」基としては、表IIに規定するものが挙げられる。「アミノ酸誘導体」とは、遺伝的にコード化される20種の天然アミノ酸の何れとも異なるアミノ酸又はアミノ酸様化学物質を意味する。具体的には、このアミノ酸誘導体は、置換又は非置換のアルキル部分(直鎖状、分枝鎖状、又は環状の何れでもよい)を有していてもよく、また、1又は2以上のヘテロ原子を有していてもよい。アミノ酸誘導体は新規に作製したものでもよく、また、商業的供給源から調達したものでもよい(Calbiochem-Novabiochem AG, Switzerland、Bachem, USA)。ペプチド模倣体(並びに非ペプチド模倣体)の合成及び開発の手法は、本技術分野では周知である(Hruby VJ.及びBalse PM.(2000)、Golebiowski A.等(2001))。タンパク質の構造及び機能を探索及び/又は改良するべく、インビボ及びインビトロ双方の翻訳系を用いてタンパク質に非天然のアミノ酸を導入するための方法論についても、文献に種々開示されている(Dougherty DA.(2000))。
【0050】
下記で考察するように、本発明のポリペプチドは、組み換え技術及び化学合成技術を含む、本技術分野で周知の任意の手順によって調製することができる。
【0051】
本発明の更なる態様は、上記定義のポリペプチドをコード化する核酸分子、即ち、evasin−4、或いはその断片又は類似体のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに存する。具体的な本発明の核酸分子は:
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
c)a)又はb)の核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸分子であって、CCケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
d)a)、b)、又はc)の核酸分子によってコード化されるタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であるタンパク質であって、CCケモカインと結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
e)a)、b)、c)、又はd)の核酸分子によってコード化されるタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;及び
f)a)、b)、c)、d)、又はe)の核酸分子の縮退変異体;
からなる群より選択される。
【0052】
特に、この核酸分子は:
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
c)a)又はb)のタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;
d)a)又はb)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質;
e)a)又はb)のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されるとともに、CCケモカインに結合する変異体;及び
f)a)、b)、c)、d)、又はe)のタンパク質と、前記タンパク質に作動式に連結された1又は2以上のアミノ酸配列とを含んでなる融合タンパク質であって、前記アミノ酸配列が、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、搬出シグナル、及びタグ配列から選択される融合タンパク質;
からなる群より選択されるタンパク質をコード化する。
【0053】
本発明との関連において「縮退変異体」とは、遺伝子コードの縮退に起因する核酸配列であって、基準となる核酸と同じアミノ酸配列をコード化する全ての核酸配列を指す。
【0054】
更に、「核酸分子」という語は、種々の種類の核酸を包含する。例としては、制限されるものではないが、デオキシリボ核酸(例えばDNA、cDNA、gDNA、合成DNA等)、リボ核酸(例えばRNA、mRNA等)、及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる。好ましい実施形態によれば、核酸分子は、二重鎖DNA分子等のDNA分子、通常はcDNAである。
【0055】
主要な態様が、実施例に開示されたEvasin−4のDNA及びタンパク質の配列を対象とする場合、具体的な実施形態としては、一連のEvasin−4関連配列が挙げられる。例としては、中程度にストリンジェントな条件下(5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の予洗浄液、及び50℃、5×SSC、一晩のハイブリダイゼーション条件)において、evasin−4をコード化するDNA配列とハイブリダイズする能力があり、且つCCケモカイン結合タンパク質をコード化する、DNA又はRNA配列等が挙げられる。
【0056】
例えば、本発明は、evasin−4を発現するクリイロコイタマダニのcDNAの配列(配列番号3)、及び、関連するオープンリーディングフレーム(ORF、配列番号4)を提供する。
【0057】
他の好ましい実施形態によれば、evasin−4配列は、evasin−4と少なくとも約70%、好ましくは80%、最も好ましくは90%のアミノ酸配列が同一のタンパク質をコード化するDNA分子である。この値は任意の専用プログラム、例えばFASTA(Pearson WR.(2000))によって計算することができる。断片又は部分配列の場合には、断片内に存在するevasin−4部分に関して、その値を計算する。
【0058】
別の好ましい実施形態として、上記定義の核酸分子の配列の断片を含んでなる、或いはかかる配列の一領域と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドがある。かかるオリゴヌクレオチドは通常、そのヌクレオチド長が5個から100個の間であり、例えば、ヌクレオチド長が少なくとも約20個のオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド長が少なくとも約30個のオリゴヌクレオチド、及び、ヌクレオチド長が少なくとも約50個のオリゴヌクレオチドからなる群より選択し得る。これらのオリゴヌクレオチドは、evasin−4コード化転写物中の非コーディング/コーディング配列及びサンプル中の関連配列の(例えばPCR又はサザンブロット法による)検出に、或いはevasin−4の組み換え変異体の作製及びサブクローン化に使用することができる。
【0059】
更なる態様では、上記定義の核酸分子を、クローニングベクター又は発現ベクターに含入させてもよい。これに関連して、本発明の特定の実施形態は、上記定義の核酸分子と作動式に結合したプロモーター、特に、組織特異的、構成的プロモーター、又は調節性(例えば誘発性)プロモーターを含んでなる発現ベクターに存する。このベクターは、更なる任意の調節エレメント、例えばターミネーター、エンハンサー、複製起点、選択マーカー等を含んでいてもよい。このベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、ウイルスベクター、ファージ、人工染色体等の何れであってもよい。
【0060】
特定の実施形態によれば、このベクターは、
a)本発明のDNA、及び
b)発現カセット
を含んでなるものでもよい。ここで、上記DNA(a)は、配列(b)に含まれる組織特異的、構成的、又は誘発性プロモーターと作動式に連結される。
【0061】
任意により、コーディング核酸(即ち配列(a))が開始メチオニンのコドンを含有しない場合(例えばその配列が、タンパク質の成熟配列のみを(シグナルペプチド抜きで)コード化する場合)、そのベクター又は発現カセットが、開始メチオニンを適切に発現し得るよう、かかる配列の5’にクローン化されたATG配列を含有していてもよい。その後、この更なるアミノ酸は、得られた組み換えタンパク質内に残存させておいてもよく、文献に開示の方法に従ってメチオニンアミノペプチダーゼ等の酵素を用いて除去してもよい(Van Valkenburgh HA.及びKahn RA.(2002)、Ben-Bassat A.(1991))。
【0062】
このベクターによれば、実験又は治療の何れの理由でも、組織培養の条件下のみならずインビボでも、本発明のタンパク質の発現が可能となる。例えば、本発明のタンパク質を過剰発現する細胞を動物モデルにトランスフェクトして(例えば封入して)、そのタンパク質の常時投与の生理学的効果を確認してから、最終的にその細胞をヒトに適用することが可能となる。或いは、レトロウイルス媒介遺伝子移入のために、或いは動物におけるベクター又は単離DNAコーディング配列の導入及び発現を内因性プロモーターの制御下で可能にする任意の他の技術のために、このベクターを使用することができる。この手法によれば、本発明のタンパク質が構成的に、又は調節下で(例えば特定の細胞内で、及び/又は、特定の化合物による誘導に引き続いて)発現されるトランスジェニック非ヒト動物の産生が可能となる。同様の手法は、他の非哺乳動物のケモカイン結合タンパク質にも応用され、様々な発生的及び病理学的効果を示してきた(Jensen KK.等(2003))。
【0063】
本発明の別の態様は、上記に示したクローニング又は発現ベクターにより形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞である。これらのベクターは、本発明のポリペプチドの調製過程で使用することができる。この点に関して、本発明の一態様は、上述のevasin−4ポリペプチドの調製方法であって、上記定義の組み換え細胞を、発現を許容又は促進する条件下で培養する工程と、上記定義のevasin−4ポリペプチドを回収する工程とを含んでなる方法である。更なる処理を考慮した場合、ベクターがこのポリペプチドを細胞外空間分泌タンパク質として発現すれば、タンパク質の培養細胞からの回収及び精製がより容易になる。
【0064】
ベクターや原核又は真核の宿主細胞を用いた組み換えタンパク質のクローン化及び産生について教示する著書や概説は多数存在する。例としては、Oxford University Pressにより出版されたシリーズ「A Practical Approach」の幾つかの巻(「DNA Cloning 2: Expression Systems」(1995)、「DNA Cloning 4: Mammalian Systems」(1996)、「Protein Expression」(1999)、「Protein Purification Techniques」(2001))が挙げられる。具体的に、これらの例は、クリイロコイタマダニcDNAライブラリーのスクリーニングによってevasin−4をコード化するDNA配列が同定された後、対応する組み換えタンパク質を得るためにORFを適合させ、修飾し、更には発現ベクターに挿入する方法を示している。
【0065】
一般に、これらのベクターはエピソーム型ベクターでも、非相同/相同組込み型ベクターでもよい。これらは任意の適切な手段(形質転換、トランスフェクション、結合、プロトプラスト融合、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿法、直接マイクロインジェクション等)によって、適切な宿主細胞内に導入し、宿主細胞を形質転換することができる。具体的なプラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクターを選択する上で重要な因子としては、ベクター含有受容細胞をベクター非含有受容細胞から識別・選択する際の容易さ、特定の宿主におけるベクターの所望のコピー数、及び、様々な種の宿主細胞間でベクターを「往復させる(shuttle)」能力を所望するか否か等が挙げられる。これらのベクターは、本発明の分離タンパク質又はそれらを含んでなる融合タンパク質が、原核又は真核の宿主細胞内で、適切な転写開始/停止調節配列の制御下において発現することを許容するものである必要がある。かかる調節配列としては、前記細胞内で構成的に活性であるか、誘導可能であるものが選択される。次いで、かかる細胞群内で実質的に濃縮された細胞株を分離することにより、(HEK293及びTN5細胞株を用いた実施例で示すように)安定な細胞株を得ることができる。
【0066】
真核生物の宿主細胞(例えば酵母、昆虫、又は哺乳動物の細胞)の場合、その宿主の性質に応じて、様々な転写及び翻訳調節配列を使用することができる。かかる配列は、高レベル発現性の特定の遺伝子に関連する調節シグナルを有する、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サルウイルス等のウイルス源から得られたものでもよい。例としては、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等が挙げられる。遺伝子の発現を調節できるように、抑制及び活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択してもよい。導入されたDNAによって安定的に形質転換される細胞は、発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1又は2以上のマーカーの導入によっても選択することができる。また、このマーカーによって、栄養要求性宿主に対する光合成能の付与や、殺生物剤(例えば抗生物質や、銅等の重金属)に対する抵抗性等の付与も可能である。選択マーカー遺伝子は、発現するDNA遺伝子に直接連結してもよく、コトランスフェクションによって同一の細胞内に導入してもよい。また、本発明のタンパク質の最適合成に、更なる要素が必要な場合もある。
【0067】
組み換え産生用の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。特に好適な原核細胞としては、組み換えによるバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌(枯草菌(Bacillus subtillis)や大腸菌(E. coli)など)が挙げられる。真核生物の宿主細胞、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)の細胞等の哺乳動物の細胞は、適切な折り畳みや適切な部位でのグリコシル化等、タンパク質分子に対する翻訳後修飾を可能にするという点で好ましい。別の真核生物の宿主細胞としては、酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母細胞が挙げられる。酵母細胞によっても、グリコシル化等の翻訳後ペプチド修飾を行なうことができる。強力なプロモーター配列と高コピー数のプラスミドとを用いた、酵母内で所望のタンパク質の産生に利用可能な数々の組み換えDNAの方策が存在する。酵母は、クローン化された哺乳動物遺伝子産物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチド(即ちプレペプチド)を分泌する。
【0068】
組み換えポリペプチドを長期間、高収量で産生するには、安定した発現が好ましい。例えば、関心のあるポリペプチドを安定的に発現する細胞株を、ウイルスの複製起点及び/又は内因性発現エレメントを含有し得る発現ベクターと、同一又は別のベクター上の選択マーカー遺伝子とを用いて形質転換すればよい。ベクターの導入後、選択培地に切り替える前に、細胞を富化培地中で1〜2日間成長させてもよい。選択マーカーの目的は、選択に対する抵抗性を付与することであり、その存在によって、導入された配列を首尾よく発現させる細胞の成長及び回収が可能になる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンを、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖させればよい。その後、かかる細胞群において実質的に濃縮された細胞株を分離すれば、安定な細胞株を得ることができる。
【0069】
本発明の組み換えポリペプチドの高収量生産の特に好ましい方法としては、米国特許第4,889,803号に記載のように、メトトレキセートのレベルの連続的増加を用いた、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損CHO細胞中でのDHFR増幅による方法が挙げられる。得られるポリペプチドはグリコシル化形態であってもよい。
【0070】
発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は本技術分野で公知であり、例えば米国基準菌株保有機構(ATTC)から多数の不死化細胞株が入手可能である。例としては、これらに限定されるものではないが、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)、Hela、幼児ハムスターの腎臓(BHK)、サルの腎臓(COS)、C127、3T3、HEK293、ボーズ(Bowes)黒色腫及びヒト肝細胞性癌腫(例えばHep G2)細胞、並びに幾つかの他の細胞株が挙げられる。バキュロウイルス系では、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系用の材料が、特にInvitrogenからキットの形態で市販されている。
【0071】
或いは、本発明のポリペプチドは、人工合成によって調製することもできる。これに関して、化学合成技術の例としては、固相合成と液相合成とが挙げられる。固相合成としては、例えば、合成対象となるペプチドのカルボキシ末端に当たるアミノ酸を有機溶媒に不溶性の保持体に結合させるとともに、2つの反応(即ち、アミノ基を有するとともに、適切な保護基で保護された側鎖官能基を有するアミノ酸を、カルボキシ末端からアミノ末端へと1つずつ順に縮合させる反応、並びに、樹脂に結合しているアミノ酸や、ペプチドのアミノ基の保護基に結合しているアミノ酸を遊離させる反応)を交互に反復することにより、ペプチド鎖を伸長させる方法が挙げられる。固相合成法は、使用する保護基の種類に応じて、tBoc法とFmoc法とに大別される。一般に使用される保護基として、アミノ基についてはtBoc(t−ブトキシカルボニル)、Cl−Z(2−クロロベンジルオキシカルボニル)、Br−Z(2−ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4′−ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)、及びCl2−Bzl(2,6−ジクロロベンジル)が、グアニジノ基についてはNO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル)が、水酸基についてはtBu(t−ブチル)が挙げられる。所望のポリペプチドの合成後、これを脱保護反応に供し、固体保持体から分離する。かかるペプチド切断反応は、Boc法の場合はフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸、またFmoc法の場合はTFAを用いて行なうことができる。evasin−4と同等のサイズの完全合成タンパク質が、文献に開示されている(Brown A.等(1996))。
【0072】
本発明のポリペプチドは、所望の使用及び/又は製法によって、他の好ましい代替形態として生産し、処方し、投与し、又は一般的に使用することができる。本発明のタンパク質に対して、例えば実施例に示すグリコシル化等の翻訳後修飾を行なってもよい。
【0073】
一般に、本発明のタンパク質は、活性な画分、前駆体、塩、誘導体、抱合体、又は複合体の形態で得ることができる。
【0074】
上述したように、「活性な」又は「生物学的に活性な」という語は、かかる代替化合物がevasin−4のCCケモカイン結合特性及び/又は免疫調節特性を維持し、更には強化し得ることを意味する。
【0075】
「画分」という語は、化合物自体のポリペプチド鎖の任意の断片を単独で、或いは関連分子や前記化合物に結合する残基(例えば糖又はリン酸の残基)との組み合わせで指す。かかる分子は、合成時及び/又は更なる加工段階において、一次配列を通常は変更しない他の修飾、例えばインビトロでのペプチドの化学的誘導体化(アセチル化又はカルボキシル化)によって、またタンパク質の翻訳後修飾、例えばリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン、又はホスホトレオニン残基の導入)によって、或いは(グリコシル化に影響を及ぼす酵素、例えば哺乳動物のグリコシル化酵素又は脱グリコシル化酵素に、ペプチドを曝すことによる)グリコシル化の結果として得られたものでもよい。特に、ダニの唾液において特徴付けられたevasin−4は、グリコシル化されたものであった。この修飾は、適切な修飾用酵素を用いてインビボで行なってもよく、組み換え産生用の適切な宿主細胞を選択することによってインビトロで行なってもよい。
【0076】
「前駆体」とは、細胞又は身体への投与前又は投与後の代謝的及び酵素的プロセシングによって、本発明の化合物に変換され得る化合物である。
【0077】
本明細書において「塩」という語は、本発明のペプチド、ポリペプチド、又はそれらの類似体のカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、本技術分野で公知の手段で形成することができ、例としては、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄(III)、又は亜鉛の塩等の無機塩と、トリエタノールアミン、アルギニン又はリシン、ピペリジン、プロカイン等のアミン等の有機塩基により形成される塩とが挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸や硫酸等の鉱酸による塩と、酢酸やシュウ酸等の有機酸による塩とが挙げられる。かかる塩は何れも、本発明のペプチド及びポリペプチド又はそれらの類似体と実質上同様の活性を有することが望まれる。
【0078】
本明細書で用いられる「誘導体」という語は、そのアミノ酸部分の側鎖に存在する官能基、或いはアミノ末端基やカルボキシ末端基に存在する官能基から、周知の方法により調製し得る誘導体を指す。かかる誘導体としては、例えばカルボキシル基のエステル又は脂肪族アミドと、遊離アミノ基のN−アシル誘導体又は遊離水酸基のO−アシル誘導体とが挙げられ、例えばアルカノイル又はアロイル基等のアシル基によって形成される。
【0079】
本発明のタンパク質は、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性薬、及び薬物送達物質の中から選択される分子を含んでなる活性な抱合体又は複合体の形態であってもよい。有用な抱合体又は複合体は、本技術分野で公知の分子及び方法を用いて、様々な理由において作製することができる。かかる理由としては、例えば、CCケモカインや他のタンパク質(放射性又は蛍光標識、ビオチン)との相互作用、治療効果(細胞毒性薬)の検出を可能にする、或いは、薬物送達効果の点からポリエチレングリコール及び他の天然又は合成ポリマー等の薬品を改良する等が挙げられる(Harris JM.及びChess RB.(2003)、Greenwald RB.等(2003)、Pillai O.及びPanchagnula R.(2001))。これに関して、本発明は、本明細書に開示するように、化学的に修飾されたポリペプチド及びタンパク質、即ちポリマーと連結されたポリペプチド又はタンパク質を意図している。このポリマーは通常、抱合体が生理的環境等の水性環境中で沈殿しないように、水溶性である。好適なポリマーの例としては、単一の反応性基(例えばアシル化用の活性エステルや、アルキル化用のアルデヒド)を有するように修飾されたものが挙げられる。これによって、重合度を制御することができる。反応性アルデヒドの例としては、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、又はモノ−(C1〜C10)アルコキシ、又はそれらのアリールオキシ誘導体が挙げられる(例えば、米国特許第5,252,714号参照)。このポリマーは分枝していてもよく、非分枝でもよい。更に、ポリマー混合物を用いて抱合体を作製することもできる。治療に使用される抱合体は、医薬的に許容し得る水溶性ポリマー部分を含んでなるものでもよい。好適な水溶性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−PEG、モノ−(C1〜C10)アルコキシ−PEG、アリールオキシ−PEG、ポリ−(N−ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス−スクシンイミジルカーボナートPEG、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、又は他の炭水化物系ポリマーが挙げられる。好適なPEGの分子量としては、約600から約60,000の間、例えば5,000、12,000、20,000、及び25,000等が挙げられる。また、抱合体は、かかる水溶性ポリマーの混合物を含んでなるものでもよい。例として、本発明のevasin−4ポリペプチド又は変異体を、PEGにより修飾することができる。これは「PEG化」として知られる手法である。PEG化は、本技術分野で公知のPEG化反応によって行なうことができる(例えば欧州特許第0 154 316号参照)。例えば、PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行なうことができる。別の手法として、活性化PEGの縮合、即ち、PEGの末端水酸基又はアミノ基を活性化リンカーで置換することによって、抱合体を形成することもできる(例えば、米国特許第5,382,657号参照)。PEGは直鎖状でも分枝鎖状でもよい。これによってタンパク質の安定化、半減期の延長、或いは生理活性の向上を達成し得る。
【0080】
これらのevasin−4由来化合物の作製は、内部又は末端に位置する適切な残基の部位特異的修飾に続いて行なうこともできる。ポリマー結合には、かかる結合を受容し易い側鎖(即ち、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、ヒスチジン等の、官能基を有するアミノ酸側鎖)を有する残基を用いることができる。或いは、ポリマーが結合される側鎖を有する別のアミノ酸で、これらの部位の残基を置換してもよい。
【0081】
例えば、直接のPEG化を可能にするべく、組み換えDNA技術により、或いは酵素の働きにより、追加のシステインを成熟タンパク質配列のN又はC末端に付加してもよい。或いは、グリコシル化部位に相当する残基の置換によって、システインをタンパク質中に導入することもできる。
【0082】
別の態様によれば、本発明は、本発明のタンパク質と選択的に結合する抗体に関する。
【0083】
本明細書で用いられる「抗体」という語は、以下で更に説明するように、モノクローナル及びポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、二重特異性又は多重特異性抗体、並びに単鎖抗体(scFv)又はドメイン抗体等の抗体断片を包含する。
【0084】
本発明との関連において「選択的」結合という語は、抗体が標的のポリペプチド又はエピトープに対して優先的に、即ち、他の何れの抗原又はエピトープとの何れの結合よりも高い親和力で、結合することを指す。換言すれば、標的ポリペプチドとの結合は、他の抗原との非特異的結合と区別することが可能である。本発明に係る抗体は、標的ポリペプチド又はエピトープに対して106-1以上、好ましくは107-1以上、より好ましくは108-1以上、最も好ましくは109-1以上の結合親和力(Ka)を示すことが好ましい。抗体の結合親和力は、当業者であれば、例えばスキャッチャード分析(Scatchard G.(1949))によって容易に求めることができる。
【0085】
本発明の抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、或いは実質的に同じ抗原特異性を有するそれらの断片又は誘導体であってもよい。
【0086】
齧歯類、霊長類、及びウマ類を含む様々な種からポリクローナル抗体を調製する方法は、例えばVaitukaitis等(1971)に報告されている。ポリクローナル抗体は、例えば、免疫剤(及び所望によりアジュバント)を哺乳動物に1回又は複数回注入することにより、産生することができる。通常、免疫剤及び/又はアジュバントは、複数回の皮下又は腹膜内注射により哺乳動物に注入される。免疫剤としては、前述した配列番号5、6、17、18のポリペプチド又は変異体、或いはそれらの融合タンパク質が挙げられる。その免疫剤を、免疫されるその哺乳動物において免疫原性があることが知られているタンパク質と結合させることが有用な場合もある。かかる免疫原性タンパク質の例としては、これらに限定されるものではないが、スカシ貝(keyhole limpet)ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのチログロブリン、及びダイズトリプシン阻害薬が挙げられる。使用し得るアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバントやMPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコラート)が挙げられる。注射を繰り返し行なってもよい。血液サンプルを回収し、免疫グロブリン又は血清を分離する。
【0087】
或いは、抗体はモノクローナル抗体であってもよい。本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という語は、実質上均一な抗体集団(即ち、集団を構成する個々の抗体が、自然発生し得る少量の変異体を除いて同一である集団)から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は極めて特異性が高く、単一の抗原部位を対象とする。その修飾語である「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の性質を指すものであって、何れか特定の方法によって抗体を産生する必要があるものと解釈すべきではない。
【0088】
モノクローナル抗体を産生する方法は、例えばKohler等(Nature 256(1975)495)に開示されている。これは引用により本明細書内に組み込まれる。
【0089】
ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を、一般には免疫剤(この免疫剤は通常、先に述べた配列番号5、6のポリペプチド又は変異体、或いはそれらの融合タンパク質を含むことになる)で免疫化して、この免疫剤と特異的に結合するであろう抗体を産生するか、又は産生し得るリンパ球を引き出す。或いは、このリンパ球をインビトロで免疫化してもよい。一般に、ヒト起源の細胞が望ましい場合は、末梢血のリンパ球(「PBL」)を使用し、非ヒト哺乳動物源が望ましい場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞を使用する。次いで、ポリエチレングリコール等の適切な融合剤を用い、リンパ球を不死化細胞株と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(Goding(1986))。不死化細胞株は、一般的には形質転換された哺乳動物細胞、特に齧歯類、ウシ、及びヒト起源の骨髄腫細胞である。通常はラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。このハイブリドーマ細胞を適切な培地中で培養すればよいが、かかる培地は、融合されていない不死化細胞の成長又は生存を阻害する1又は2以上の物質を含有することが好ましい。例えば、親細胞が酵素、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培地は通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有する培地(「HAT培地」)であり、これらの物質がHGPRT欠損細胞の成長を妨げることになる。好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの発現を支え、且つHAT培地等の培地に対して感受性を有するものである。より好ましい不死化細胞株はネズミの骨髄腫株であり、例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Center、及び、バージニア州マナサスのAmerican Type Culture Collectionから得ることができる。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒト異型骨髄腫の細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体産生用に報告されている。
【0090】
次いで、ハイブリドーマ細胞が培養されている培地に、免疫化するペプチドに対するモノクローナル抗体が存在するかどうかをアッセイすればよい。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によって、或いはラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)等のインビトロ結合アッセイによって定量することが好ましい。かかる技術やアッセイは、本技術分野では公知である。
【0091】
所望のハイブリドーマ細胞が同定されたら、そのクローンを限界希釈法によりサブクローン化し、標準的な方法により成長させる(Goding、上記)。この目的に適した培地としては、例えばダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)及びRPMI−1640培地が挙げられる。或いは、ハイブリドーマ細胞をインビボで、哺乳動物の腹水で成長させてもよい。
【0092】
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィー等の通常の免疫グロブリン精製手順によって、培地又は腹水から分離又は精製することができる。
【0093】
また、組み換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載の方法によって、モノクローナル抗体を作製することもできる。本発明のモノクローナル抗体をコード化するDNAは、通常の手順を用いて(例えば、ネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコード化する遺伝子と特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に分離し、配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好適な供給源となる。分離後のDNAを発現ベクターに導入してもよい。次いでこの発現ベクターを、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は通常は免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫等の宿主細胞にトランスフェクトさせ、組み換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成物を得る。
【0094】
また、「モノクローナル抗体」は、Clackson等(1991)に記載の技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから分離することもできる。
【0095】
これら抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体を調製するための方法は、本技術分野では周知である。例えば、一つの方法としては、免疫グロブリンの軽鎖と修飾重鎖の組み換え発現を伴うものが挙げられる。この重鎖は一般にFc領域内の任意の点で切断され、これにより重鎖の架橋が防止される。或いは、架橋を防ぐために関連したシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換するか、又は欠失させる。
【0096】
インビトロ法も一価抗体の調製に適している。抗体の断片、特にFab断片を産生するための抗体の消化は、本技術分野で周知の定型的な技術を用いて達成することができる。
【0097】
また、例えばWard等(1989)に開示のように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって抗体を作製してもよい。
【0098】
更に、本発明の抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体を含んでいてもよい。非ヒト(例えばネズミ)抗体のヒト化形態としては、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は非ヒト免疫グロブリンから得られる最小の配列を含有するそれらの断片(Fv、Fab、Fab′、F(ab′)2、又は抗体の他の抗原結合サブ配列)が挙げられる。ヒト化抗体としては、受容体の相補性決定領域(CDR)由来の残基を、望ましい特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギ等の非ヒトの種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換したヒト免疫グロブリン(受容抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒトの残基によって置換される。
【0099】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、本技術分野では周知である。ヒト化は、基本的にはWinter及び共同研究者の方法(Jones等、Nature, 321:522-525 (1986))に則って、齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより行なうことができる。従って、かかる「ヒト化」抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、無傷のヒト可変ドメインは実質的に全く、非ヒトの種由来の対応する配列による置換を受けていない。
【0100】
また、ヒト抗体は、本技術分野で公知の様々な技術を用いて作製することもできる。例としては、ファージディスプレイライブラリーが挙げられる(Hoogenboom及びWinter(1991))。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されているトランスジェニック動物(例えばマウス)に、ヒト免疫グロブリン座を導入することによって作製することができる。抗原暴露に伴いヒト抗体の産生が観察され、それは遺伝子の再配列、作製、及び抗体レパトアを含め、あらゆる点でヒトに見られるものに極めて類似している。この手法は、例えば米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号に記載されている。
【0101】
また、本発明は、異種部分と連結された抗体を含んでなる免疫抱合体に関する。異種部分としては、細胞毒性薬、標識、薬物、又は他の治療薬が挙げられ、これらは共有結合か否かによらず、直接又はカップリング剤やリンカー等の使用により連結される。細胞毒性薬としては、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、或いは放射性同位元素(即ち放射性抱合体)が挙げられる。
【0102】
使用可能な酵素的に活性な毒素及びそれらの断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性の活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害薬、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害薬、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、及びトリコセセンス(tricothecenes)が挙げられる。放射性抱合抗体の産生には様々な放射性核種が利用できる。例としては212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが挙げられる。
【0103】
別の実施形態によれば、この抗体を「受容体」(ストレプタビジン等)と結合させて、腫瘍プレターゲティングに利用してもよい。この場合、抗体−受容体抱合体を患者に投与し、続いて除去薬(clearing agent)を用いて非結合抱合体を循環から除去し、次いで細胞毒性薬(例えば放射性ヌクレオチド)に結合した「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0104】
更に、本発明の抗体又は抗体断片を、本技術分野で方法の手法や本明細書に記載の方法を用いてPEG化することもできる。また、本明細書に開示の抗体を、イムノリポソームとして製剤してもよい。循環時間の改善されたリポソームが、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0105】
また、本発明は、無傷の抗体の一部分、好ましくは無傷の抗体の抗原結合領域又は可変部を含んでなる「抗体断片」に関する。抗体断片の例としては、Fab、Fab′、F(ab′)2、及びFv断片;ダイアボディー;線状抗体;単鎖抗体分子;モノボディー;ダイアボディー;ラクダ化(camelized)モノボディー;抗体断片から形成されるドメイン抗体及び多重特異的抗体が挙げられる。
【0106】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、非共有結合により強固に結合した1個の重鎖及び1個の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置により、各可変ドメインの3個のCDRが相互に作用して、VH−VL二量体表面の抗原結合部位を規定することになる。これら6個のCDRが全体として、抗体に抗原結合特異性を付与することになる。但し、単一の可変ドメイン(即ち、抗原特異的な3個のCDRのみを含んでなるFvの半分)であっても、抗原を認識し、結合する能力を有するが、全結合部位と比べて親和性は低い。
【0107】
また、Fab断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab断片がFab′断片と異なる点は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が追加されている点であり、かかる残基には抗体ヒンジ領域由来の1又は2以上のシステインが含まれる。本明細書においてFab′−SHとは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab′の呼称である。F(ab′)2抗体断片は元来、その間にヒンジシステインを有するFab′断片対として産生された。その他の抗体断片の化学的結合も知られている。脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は何れも、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、明確に区別される2つの型(κ及びλと呼ばれる)の何れかに分類される。
【0108】
「単鎖抗体分子」は、抗体のVH及びVLドメインを含んでなり、それらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在する抗体断片である。Fvポリペプチドは更に、単鎖抗体分子が抗原結合に望ましい構造を形成し得るよう、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを有することが好ましい。
【0109】
「ダイアボディー」という語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体断片を指す。この断片は、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を、同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内に含んでなる。同一鎖上にあるこれら2つのドメインが対合しないよう、十分に短いリンカーを使用することによって、これらのドメインを別の鎖の相補ドメインと強制的に対合させ、2つの抗原結合部位を生じさせる。ダイアボディーについては、例えば欧州特許第404,097号、国際公開第93/11161号に、より詳しく記載されている。
【0110】
本明細書で用いられる「モノボディー」という語は、重鎖可変ドメインを有し、軽鎖可変ドメインのない抗原結合分子を意味する。モノボディーは、軽鎖の不在下でも抗原と結合することができ、通常はCDRH1、CDRH2、及びCDRH3と名付けられた3個のCDR領域を有する。重鎖IgGモノボディーは、ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖抗原結合分子を有する。重鎖可変ドメインは、1又は2以上のCDR領域、好ましくはCDRH3領域を含んでなる。
【0111】
「ラクダ化モノボディー」は、ラクダ科の動物から得られるモノボディー又はその抗原結合部分を指す。ラクダ科に含まれる動物は、2つの蹄と革状の足底とを有する脚を有する。ラクダ科の動物としては、ラクダ類、ラマ類、及びアルパカ類が挙げられる。ラクダ類(ヒトコブラクダ(Camelus dromedaries)及びフタコブラクダ(Camelus bactrianus))の血清由来のIgG様物質を分析すると、しばしば可変軽鎖ドメインの欠落が見られることが報告されている。これは、VHドメイン(3つのCDRループ)単独でも、十分な抗体特異性及び親和性が得られることを示唆している。
【0112】
本発明には単一ドメイン抗体も含まれる。単一ドメイン抗体(別名ドメイン抗体又はdAbs)は、ヒト抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)の何れかの可変部に対応する抗体の最小の機能的結合単位である。ドメイン抗体は分子量約13kDa、即ち完全抗体の十分の一未満の大きさである。通常の抗体とは対照的に、ドメイン抗体は、細菌、酵母、及び哺乳動物の細胞系でも十分に発現する。更に、ドメイン抗体の多くは安定性が高く、広範な医薬品の調合条件及び製造工程に従わせるための凍結乾燥又は熱変性等の過酷な条件に曝された後でも、活性を保持する。
【0113】
本発明のタンパク質は、程度の差こそあれ、精製した形態で提供してもよい。
【0114】
具体的に、本発明の天然、合成、又は組み換えアンタゴニストの精製は、この目的のために知られている方法の何れか(即ち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動等を伴う任意の従来法)によって行なうことができる。本発明のタンパク質の精製に優先的に使用し得る更なる精製手順としては、標的タンパク質に結合するモノクローナル抗体又は親和性基を用いたアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。かかるモノクローナル抗体又は親和性基は、カラム内のゲルマトリックス上に形成、固定化される。タンパク質を含有する不純調製物をカラムに通過させる。タンパク質はヘパリンによって、或いは特異的抗体によってカラムと結合するのに対し、不純物はそのまま通過する。洗浄後、pH又はイオン強度を変えることによって、タンパク質をゲルから溶出させる。或いは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)を用いてもよい。溶離は、タンパク質精製用に一般に使用される水−アセトニトリル系溶媒を用いて行なうことができる。本発明のタンパク質の精製済み調製物とは、本明細書で用いる場合、上記タンパク質が(乾燥重量で)少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%の調製物を意味する。
【0115】
本発明の別の態様は、上記定義のevasin−4ポリペプチドを(タンパク質の形態で、或いは上述した他の形態で)活性成分として含んでなるとともに、適切な希釈剤又は担体を含んでなる医薬組成物である。
【0116】
本発明の別の態様は、上記定義のevasin−4ポリペプチドをコード化する核酸分子、或いは対応するベクター又は組み換え宿主細胞と、適切な希釈剤又は担体とを含んでなる医薬組成物である。
【0117】
本発明の更なる態様は、対象における免疫反応の調節用薬剤の製造における、上記定義のevasin−4ポリペプチド、或いはそれをコード化する核酸の使用に関する。
【0118】
これらの組成物は薬剤、特に哺乳動物における免疫又は炎症性応答を調節するための薬剤、より具体的には抗炎症性化合物として使用することができる。
【0119】
一般的に、CCケモカインが多数のヒト及び獣医学の疾病に関与していることを考慮すると、本発明のCCケモカイン結合タンパク質は、CCケモカインのアンタゴニストとして、動物におけるCCケモカイン関連疾病の治療及び予防に使用することができる。CCケモカイン関連疾病の非網羅的なリストには、炎症性疾患、自己免疫疾患、免疫病、感染症、アレルギー性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、胃腸疾患、神経系疾患、敗血症、移植による拒絶反応に関連する疾患、又は線維性症候群が含まれる。これら疾患の例としては、限定されるものではないが、関節炎、慢性関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎、乾癬、慢性関節リウマチ、再狭窄、敗血症、変形性関節症、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、強皮症、多発性筋炎、糸状体腎炎、線維症、アレルギー性又は過敏性症候群、皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、線維腫、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、敗血性ショック、ウイルス感染、癌、子宮内膜症、移植、移植片対宿主病(GVHD)、心臓及び腎臓再潅流傷害、及びアテローム性動脈硬化症が挙げられる。
【0120】
本発明のタンパク質又は特異的断片は、哺乳動物における免疫又は炎症性応答を調節するための医薬組成物、例えば抗炎症性組成物の製造において、活性成分として使用することができる。或いは、本発明のタンパク質又は特異的断片は、寄生生物、ウイルス、又は細菌に対する哺乳動物の予防接種用の医薬組成物の製造において、活性成分として使用することができる。かかる医薬組成物を調製するための工程は、evasin−4を医薬的に許容し得る希釈剤又は担体と混合するステップを含んでなる。
【0121】
本発明のタンパク質を活性成分として含有する医薬組成物を用いれば、インビボでCCケモカインを結合させ、対応する細胞表面の受容体とCCケモカインとの結合を遮断し、その結果として抗炎症効果等の潜在的な治療効果を生じさせることが可能となる。また、本発明のタンパク質を活性成分として含有する医薬組成物を用いれば、ウイルス、細菌、又は寄生生物に存在するCCケモカイン類似体を結合することにより、これらのウイルス、細菌、又は寄生生物が細胞内に侵入するのを阻止することもできる。ウイルス、細菌、又は寄生生物に対する哺乳動物の予防接種用の医薬組成物は、活性成分として本発明のタンパク質の断片を含んでいてもよい。上に示した組成物は、更に追加の免疫抑制剤又は抗炎症性物質を含んでいてもよい。
【0122】
医薬組成物は、活性成分としての本発明のタンパク質に加えて、医薬的に許容し得る適切な希釈剤、担体、生物学的適合性ビヒクル、並びに動物への投与に適した添加剤(例えば生理的塩類溶液)を含んでいてもよい。また、最終的には、活性化合物の医薬的に使用可能な調製剤への加工を容易にする補助剤(ビヒクル、安定剤、又はアジュバント等)を含んでいてもよい。医薬組成物の製剤は、投与方式の要請を満たす任意の許容し得る方法で処方し得る。例えば、薬物送達用の生体適合材料及び他のポリマーの使用、並びに特定の投与方式を有効にする様々な方法及びモデルが、文献に開示されている(Luo B.及びPreswich GD.(2001)、Cleland JL.等(2001))。
【0123】
「医薬的に許容し得る」とは、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、且つ、投与される宿主にとって有毒でない任意の担体を包含する意味である。例えば、非経口投与の場合、塩類溶液、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンガー液等のビヒクルに活性成分を溶解させた注射用の単位剤形に処方することができる。また、担体は、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、及び石油、動物、植物、又は合成起源の油を含めた様々な油(落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油)から選択することもできる。
【0124】
当業者であれば、所望の活性成分の血中濃度を達成するために、容認される何れの投与方式を使用及び決定してもよい。例えば投与は、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹膜内、鼻腔内、経皮的、直腸、経口、又は頬内経路等の様々な非経口経路によって行なうことができる。また、本発明の医薬組成物は、ポリペプチドを所定の速度で長時間投与するために、蓄積注射、浸透流ポンプ等の持続又は制御放出剤形で投与してもよいが、正確な用量での単回投与に適した単位剤形で投与することが好ましい。
【0125】
非経口投与は、ボーラス投与で行なってもよく、時間をかけて徐放灌流により行なってもよい。非経口投与用の製剤としては、滅菌した水性又は非水性溶液、懸濁液、及び乳化液が挙げられる。これらは本技術分野で周知の補助剤又はビヒクルを含有していてもよく、また、定型的な方法に従って調製することができる。加えて、活性化合物の懸濁液を適切な油性注射用懸濁液として投与することもできる。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油類、例えばゴマ油や、合成脂肪酸エステル類、例えばゴマ油の合成脂肪酸エステルや、合成脂肪酸エステル類、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド類が挙げられる。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストラン)を含有していてもよい。また、懸濁液は任意により、安定剤を含有していてもよい。医薬組成物には注射による投与に適した溶液が含まれ、かかる溶液は約0.01から99.99パーセント、好ましくは約20から75パーセントの活性化合物を、ビヒクルと共に含有する。
【0126】
当然ながら、投与される用量は、受容者の年齢、性別、健康状態、及び体重、併用治療を行なう場合はその種類、治療の頻度、更には所望する効果の性質に依存することになる。その用量は(当業者であれば理解し、決定し得るように)個々の対象に合わせて決定される。各治療に必要な総用量は、多回投与により投与してもよく、単回投与により投与してもよい。本発明の医薬組成物は単独で投与してもよいが、対象となる病状(又は対象となる病状に関連する他の症状)に対する他の治療薬と組み合わせて投与してもよい。活性成分の1日投与量は通常、1日当たり体重1キログラム当たり0.01から100ミリグラムの範囲である。普通は1日当たり1キログラム当たり1から40ミリグラムを分割量又は持続放出形態で投与するのが、所望の結果を得る上で効果的である。二回目以降の投与における用量は、同一個体に投与された最初又は以前の用量と比べて、同一でもよく、少なくてもよく、多くてもよい。
【0127】
本発明の別の態様は、本発明のDNAによってコード化されるタンパク質の薬剤としての使用、具体的には哺乳動物の免疫又は炎症性応答の調節用の組成物の調製における使用である。
【0128】
本発明の更なる態様は、動物を吸血性の外寄生生物に対して免疫化する方法、又は免疫又は炎症性応答の調節が必要な動物においてかかる調節を行なう方法であって、前記動物に本発明のタンパク質を、免疫反応を調節するのに十分な期間及び条件の下で投与することを含んでなる方法である。
【0129】
本発明の別の態様は、CCケモカイン関連疾患を治療又は予防する方法であって、本発明の化合物の有効量の投与を含んでなる方法である。
【0130】
「有効量」とは、その疾患の経過及び重症度に影響を及ぼし、かかる病状の縮小又は寛解をもたらすのに十分な活性成分量を意味する。有効量は、投与経路及び患者の状態に応じて異なる。
【0131】
「CCケモカイン関連疾患」という表現は、過剰又は非制御のCCケモカインの産生に起因し、大量の単核細胞/マクロファージ/好中球/T細胞浸潤を伴う疾患であって、evasin−4の投与によって有益な効果が得られ得る任意の疾患を指す。かかる慢性、急性、又は遺伝性疾患の非網羅的なリストは上に示されている。
【0132】
本発明のCCケモカインアンタゴニスト及び関連する試薬の治療用途は、哺乳動物の細胞、組織、及びモデルを利用したインビボ又はインビトロアッセイによって(安全性、薬物動態、及び有効性の見地から)評価し得る。アッセイ法の非限定的なリストには、カルシウム動員、脱顆粒、炎症促進性サイトカインの上方調節、プロテアーゼの上方調節、インビボ又はインビトロでの細胞動員の阻害が含まれる。
【0133】
本発明の更なる態様は、本発明のCCケモカイン結合タンパク質に関連して開示された化合物の何れかを含有する試験キットである。例えば、CCケモカイン又は類似体、或いはCCケモカイン結合タンパク質又は受容体、或いはCCケモカインとCCケモカイン結合タンパク質との相互作用、或いは上記相互作用のアンタゴニスト又はアゴニストを検出するためのキットであって、検出用試薬と、本発明のCCケモカイン結合タンパク質に由来する
a)核酸分子(例えばDNA)、
b)オリゴヌクレオチド、
c)ポリペプチド、及び
d)抗体
からなる群より選択される化合物とを少なくとも含んでなるキットである。
【0134】
これらのキットは、インビトロ又はインビボに適用可能な方法において使用することができる。この場合、サンプルを上記化合物の何れかと接触させる。かかる化合物は標識してもよく、固体支持体に固定化してもよい。
【0135】
本発明について、特定の実施形態を参照しながら説明したが、本説明の内容には、当業者が特許請求の範囲の意味及び目的を越えることなく実施可能な、あらゆる修正及び置換が含まれる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、これらは何ら本発明を限定するものと解してはならない。実施例では以下に指定される図を参照する。
【0137】
実施例1:CCケモカイン結合活性に関するクリイロコイタマダニcDNAライブラリーのスクリーニング及びevasin−4のクローニング
【0138】
材料及び方法
a.クリイロコイタマダニ cDNAライブラリーの構築及びevasin−3を発現する制御プラスミドの構築
【0139】
100匹の成虫のダニ(クリイロコイタマダニ)から唾液腺を採取し、直ちに氷冷RNAlater(商標)溶液(Ambion)に入れ、使用するまで保存した。TRIzol(商標)法(Invitrogen)を用い、メーカーの説明書に従って全RNAを抽出した。SMART cDNAライブラリー構築キット(Clontech)を用いて、ファージミドベクターλTripIEX2中でcDNAライブラリーを構築した。このcDNAを、ベクターとの連結反応に先立って、ChromaSpin 400カラム(Clontech)により、メーカーの説明書に従ってサイズ分画した。ライブラリー中のクローン化cDNA挿入断片のサイズは約0.6kbから1.5kbの範囲であり、挿入断片の頻度は約80%であった。
【0140】
pTripIEX2中のクリイロコイタマダニ唾液腺cDNAライブラリー由来のcDNA挿入断片を制限酵素SfiIで切除し、哺乳動物細胞発現ベクターpEXP−lib(Clontech)中にサブクローン化した。pEXP−libベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の主要な極初期プロモーター/エンハンサーとそれに続くマルチクローニング部位、脳心筋ウイルス(ECMV)のリボソームエントリー部位(IRES)、ピューロマイシン耐性をコード化する遺伝子(ピューロマイシン−N−アセチルトランスフェラーゼ)、及びウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルを含んでなる発現カセットを含有する。このマルチクローニング部位は、2つの別個のSfi I部位(インターパリンドローム配列が異なるSfi IA及びSfi IB)を含有する。これによって、pTripIEX2ベクターからpEXPIIへのcDNA挿入断片の定方向サブクローン化が可能となる。
【0141】
制御タンパク質evasin−3(配列番号1)をコード化するcDNA(配列番号2)を、上述のpEXP−libにクローニングして、pEXP−lib evasin−3を形成し、このタンパク質を発現させた。
【0142】
b.cDNAライブラリースクリーニング
【0143】
ヒト胎児腎臓細胞293(HEK293細胞、ATCCカタログ番号CRC−1573)を、DMEM−F12 Nut Mix、熱不活性化10%ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリン−スプレプトマイシンの溶液中に維持した。トランスフェクションの24時間前に、細胞を96ウェルフォーマットの細胞培養プレートに、約50%のコンフルーエンスとなるように蒔種した。
【0144】
pEXP−lib中のクリイロコイタマダニ唾液腺cDNAライブラリーを、約270のcDNAクローンを含有する100のプールに分画した。これらのプールの小スケール培養物(5ml)からプラスミドミニプレップDNAを単離し、GenePorter2トランスフェクションキット(Gene Therapy Systems)を使用して、メーカーのプロトコルに従ってHEK293細胞にトランスフェクトさせた。evasin−3をコード化するcDNAを含有するpEXP−libプラスミドを、同様にHEK293にトランスフェクトさせた。
【0145】
トランスフェクションから3日後に、トランスフェクトされたHEK293細胞からの培地を収穫した。条件培地を遠心分離して細胞デブリを除去し、上清を架橋アッセイに使用した。
【0146】
架橋実験のために、20μlの条件培地サンプルを96ウェルプレート(Costar)に移した。放射線標識したCCケモカイン(125I−CCL5/RANTES又は125I−CCL11/エオタキシンの何れか)を加えて、最終濃度を0.23nMとし、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。二重に調製した陽性対照(evasin−3)含有サンプルの20μlのアリコットに、125I−CXCL8/IL−8を加えた。3μlのBS3架橋試薬(25mM)を各サンプルに(但し、複製evasin−3上清の方のみに)加え、攪拌しながら更に1時間培養した。この時間の後、10×サンプルバッファー(10%SDS、5mM EDTA、20%グリセロール、0.2%(w/w)ブロモフェノールブルー、1MのDTTを含有する125mMトリス塩基(pH6.8))5μlを各ウェルに加えて架橋反応を停止した。次いで、これらのサンプルを5分間煮沸し、10%Bis−Tris SDS−ポリアクリルアミドゲル(Invitrogen NuPAGE、カタログ番号NP0301BOX)を用いて電気泳動した。電気泳動後、ゲルをサランラップ(商標)で密閉し、K型ストレージホスホイメージングスクリーン(storage phosphoimaging screen)(Biorad)に3〜16時間暴露した。イメージングスクリーンの走査は、Biorad Personal FX phosphoimagerを用いて100μmの分解能で行なった。
【0147】
結果
ダニクリイロコイタマダニの唾液が、IgG及びサイトカイン産生の抑制(Matsumoto K.等(2003))又はT細胞の増殖(Ferreira BR.及びSilva JS.(1998))等の免疫調節活性を有することは示されているが、CC又はCXCケモカインに対する特異的な活性については知られていない。しかし、他のダニ種の唾液ではケモカイン結合活性が検出されている(Hajnicka等(2005))。
【0148】
クリイロコイタマダニのCCケモカイン結合活性をDNA/タンパク質配列レベルで検出するために、クリイロコイタマダニの唾液腺からcDNAライブラリーを作製した。このライブラリーからのcDNAのプールを用いて、HEK293にトランスフェクトさせた。
【0149】
この系で、HEK293細胞は分泌タンパク質をコード化するcDNAを発現し、培地中に分泌する。この上清を、放射線標識CCケモカイン(125I−CCL5/RANTES又は125I−CCL11/エオタキシン)への結合を見る架橋アッセイによって直接、試験することができる。放射線標識CCケモカイン/CCケモカイン結合タンパク質に架橋試薬を加えると、これら二つの分子が共有結合で連結され、タンパク質複合体が安定化する。得られた複合体は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)及びそれに続くオートラジオグラフィーによって可視化される、本来のケモカインの分子量から複合体の分子量へのバンドシフトとして同定することができる。この架橋法は極めて感度が高く、ナノグラムの量のタンパク質を検出可能である(図2)。
【0150】
陽性対照として、CXCL8に特異的に結合することが知られているevasin−3をトランスフェクトされたHEK細胞由来の条件培地を並行して試験した。陰性対照として、偽トランスフェクトHEK293細胞からの条件培地を用いた。架橋アッセイで陽性シグナルを生じさせたcDNAプールを、CCケモカイン結合活性の原因である単一のトランスフェクトされたcDNAが同定できるようになるまで、スクリーニング及び逆重畳の周回に供した。得られたcDNAをevasin−4と名付けた(図1)。
【0151】
evasin−4の全長cDNA(配列番号3、図1)は、127のアミノ酸からなるタンパク質(配列番号5)をコード化するオープンリーディングフレーム(ORF;配列番号4)を有する。このタンパク質配列はシグナルペプチド配列(アミノ酸1〜17)を有し、これが切断されて、110のアミノ酸からなる成熟タンパク質(配列番号6)が生じるものと予測される。Evasin−4と有意な同一性を示す他の公知のタンパク質は存在しなかった。evasin−4の更なる特徴は、7つの潜在的N結合グリコシル化部位及び9つのシステイン残基である。
【0152】
実施例2:トランスフェクトされたHEK293 EBNA細胞の培養上清からの切断型6HISタグ化evasin−4(Δ6evasin−4)の精製
【0153】
材料及び方法
a.Gateway商標クローニング法を用いた、6つのヒスチジンからなる(6His)タグをN末端に有するΔ6evasin−4 cDNAの、発現ベクターpDEST8及びpEAK12dへのサブクローニング
【0154】
evasin−4の全長アミノ酸配列は、予測によれば、17のアミノ酸からなるシグナルペプチドを有し、理論上はこれが切断されて、110のアミノ酸からなる成熟タンパク質を生じる。生化学的特性決定用に組み換えevasin−4を作製するために、一連のPCR反応によってcDNAコンストラクトを構成した。このPCRでは、uPAのシグナルペプチド(配列番号7)を、5つのアミノ酸からなる可動性リンカー配列(GSPNS)に融合し、更に、第2の可動性リンカー(GSPNS)及びカスパーゼ8切断部位(LETD)によって、全長evasin−4のアミノ酸24〜127をコード化する配列から分離された、6ヒスチジンタグ配列を続けた。5アミノ酸リンカー配列及び6HISタグの最初の3つのヒスチジンをコード化する配列を3’末端に有するUPAのシグナルペプチドを作製するために、PCR反応(PCR1)に供した。この反応液は、2μl(50ng)のプラスミドpEAK12d−PAC_upa−SP−hIL18BP−6His(図4)、3μlのdNTPs(5mM)、10μlの10×Pfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、各々1.5μlの遺伝子特異的プライマー(10μM)spUPA−PCR1F(配列番号12)及びspUPA−GSPNSR(配列番号13)、並びに0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含有し、最終量を50μlとした。増幅条件としては、初回変性工程を94℃で4分間;94℃で30秒、48℃で30秒、及び68℃で1分間を9サイクル;94℃で30秒、52℃で30秒、及び68℃で1分間を20サイクル;68℃で10分間を1サイクル、更に4℃の保持サイクルを実施した。得られたPCR産物を1×TAEバッファー(Invitrogen)中1.5%アガロースゲルで可視化し、増幅産物をQIAquick PCR精製キット(QIAGEN)を用いて精製した。このPCR産物(産物1、配列番号8)を30μlのEBバッファー(10mMトリス−HCl、pH8.5)で溶出した。
【0155】
PCR2では、リンカー配列SPNS及びカスパーゼ8切断部位配列LETDを5’末端に有する成熟evasin−4コード化配列(アミノ酸24〜127をコード化)を、PCR反応混合液中で作製した。かかるPCR反応混合液は、50μl中に、2μlのpEXP−Lib−Evasin−4(図5)(50ng)、3μlのdNTP(5mM)、10μlの10×Pfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、各1.5μlの遺伝子特異的プライマー(10μM)SPNS−LEDT−Evasin−4F(配列番号14)及びEvasin−4PCR1R(配列番号15)、並びに0.5μlのPlatinum PfxDNAポリメラーゼ (Invitrogen)を含有する。増幅条件は、PCR1について上述した条件と同様とした。得られたPCR産物(産物2、配列番号9) を1×TAEバッファー(Invitrogen)中1.5%アガロースゲルで可視化し、増幅産物を、QIAquickPCR精製キット(QIAGEN)を用い、メーカーの説明書に従って、50μlEBバッファーで溶出して精製した。
【0156】
PCR3では、5’の6HISタグ配列をPCR産物2の5’末端に付加することにより、5アミノ酸リンカー及びカスパーゼ8切断部位配列が6HISタグ配列により5’末端に結合したevasin−4(アミノ酸24〜127)をコード化するcDNAを生成した。反応混合物は、最終量50μl中に、10μlの産物2、3μlのdNTP(5mM)、10μlの10×Pfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、各1.5μlの遺伝子特異的プライマー(10μM)6H−GSPNS−Evasin−4F(配列番号16)及びEvasin−4PCR1R(配列番号15)、並びに0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含有する。PCR3増幅条件としては、初回変性工程を94℃で4分間;94℃で30秒、48℃で30秒、及び68℃で1分間を9サイクル;94℃で30秒、52℃で30秒、及び68℃で1分間を20サイクル;68℃で10分間を1サイクル、及び4℃の保持サイクルを実施した。得られたPCR産物(産物3、配列番号10)を1×TAEバッファー(Invitrogen)中1.5%アガロースゲルで可視化し、QIAquick PCR精製キット(QIAGEN)を用いて上述のように精製し、30μlのEBバッファー(10mMトリス−HCl、pH8.5)で溶出した。
【0157】
PCR4では、PCR1及びPCR3からのPCR産物をアニールし、増幅することにより、5’末端にGateway attB1配列、インフレームuPAシグナルペプチド、リンカー、6HISタグ、リンカー、及びカスパーゼ8切断部位が結合し、3’末端に停止コドンとGateway attB2配列が結合したevasin−4(アミノ酸24〜127)コード化配列を作製した(図3)。反応混合物(最終量50μl中)は、9μlのPCR産物1、3μlのPCR産物3、3μlのdNTP(5mM)、10μlの10×Pfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、各1.5μlのGatewayコンバージョンプライマー(10μM)evasin4PCR2F(配列番号17)及びevasin4PCR2R(配列番号18)、並びに0.5μlのPlatinum PfxDNA ポリメラーゼを含有する。PCR4反応の条件としては:94℃で4分間;94℃で30秒、48℃で30秒、及び68℃で1分間を9サイクル;94℃で30秒、52℃で30秒、及び68℃で1分を20サイクル、68℃で10分間を1サイクル、及び、4℃の保持サイクルを実施した。得られたPCR産物(PCR産物4、配列番号11)を、メーカーの説明書に従って、1×TAEバッファー(Invitrogen)中1.5% アガロースゲルで可視化し、予測分子質量に相当する泳動距離のバンドをQIAquickゲル抽出キット(QIAGEN)を用いてゲルから精製し、50μlのEBバッファーで溶出した。
【0158】
Gatewayクローニング法の第2段階は、Gateway修飾PCR産物のGatewayエントリーベクターpDONR221へのサブクローン化を伴う。5μlの精製PCR4産物を、1.5μlのpDONR221ベクター(0.1μg/μl)、2μlのBPバッファー、及び1.5μlのBPクロナーゼ(BP clonase)酵素混合物(Invitrogen)と混合し、最終体積を10μlとして、室温で1時間インキュベートした。1μl(2μg/μl)のプロテイナーゼKを加えて反応を停止し、37℃で更に10分間インキュベートした。この反応物のアリコート(1μl)を用いて、以下の手順で電気穿孔することにより、大腸菌(E.Coli)DH10B細胞に形質転換した。即ち、DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の20μlアリコートを氷上で解凍し、BP反応混合物1μlを加えた。この混合物を冷却した0.1cm電気穿孔キュベットに移し、BioRad Gene-Pulser(商標)を用いてメーカーのプロトコルに従って細胞に電気穿孔した。電気穿孔後直ちに、予め室温としたSOC培地(1ml)を加えた。この混合物を15mlスナップキャップ管に移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベートした。次いでこの形質転換混合物のアリコート(10μl及び100μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するL−ブイヨン(LB)プレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。
【0159】
得られたカナマイシン耐性コロニー6つの培養物5mlから、Qiaprep Turbo 9600ロボットシステム(Qiagen)を用いて、プラスミドミニプレップ(mini-prep)DNAを調製した。BigDye Terminator system(Applied Biosystemsカタログ番号4336919)を用い、メーカーの説明書に従って、プラスミドDNA(200〜500ng)を、21M13及びM13RevプライマーとともにDNAシークエンシングに供した。配列決定反応物を、Montage SEQ 96 クリーンアッププレート(Milliporeカタログ番号LSKS09624)を用いて精製し、次いでApplied Biosystems 3700 DNAシークエンサーで分析した。
【0160】
次いで、適切な配列(pDONR221−spUPA−6H−Evasin−4、図6)を含有する1つのクローンから得られたプラスミド溶出液(1.5μl又は約100ng)を用いて、1.5μlのpDEST8ベクター又は1.5μlのpEAK12dベクター(0.1μg/μl)、2μlのLRバッファー、及び1.5μlのLRクロナーゼ(LR clonase:Invitrogen)を含有する最終体積10μlの組み換え反応物を調製した。混合物を室温で1時間インキュベートした。プロテイナーゼK(2μg)を加えて反応を停止し、37℃で更に10分間インキュベートした。各反応物のアリコート(1μl)を用いて、以下の手順で電気穿孔を行なうことにより、大腸菌DH10B細胞に形質転換した。即ち、DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコート20μlを氷上で解凍し、LR反応混合物1μlを加えた。混合物を冷却した0.1cm電気穿孔キュベットに移し、BioRad Gene-Pulser(商標)を用いて、メーカーが推奨するプロトコルに従って細胞に電気穿孔した。電気穿孔後直ちに、予め室温まで温めたSOC培地(1ml)を加えた。混合物を15mlスナップキャップ管に移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベートした。次いで、この形質転換混合物のアリコート(10μl及び100μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を含有するL−ブイヨン(LB)プレート上に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。
【0161】
各形質転換物から3コロニーを50μlの滅菌水に懸濁させた。次いで、25μlのアリコットをPCR増幅に供した。50μlの反応混合物に、2μlのdNTP(5mM)、5μlの10×AmpliTaqポリメラーゼバッファー(15mMMgSO4含有)、各2.5μlのベクター特異的プライマー(10μM)(pEAK12dベクターについてはpEAK12F(配列番号21)及びpEAK12R(配列番号22)、pDEST8ベクターについてはpDEST8F(配列番号23)及びpDEST8R(配列番号24))、並びに0.5μlのAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含有させた。PCR反応としては、96℃で2分間の初回変性工程;94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒を35サイクル実施した。得られたPCR産物を1×TAEバッファー(Invitrogen)中1.5%アガロースゲルで可視化し、各コンストラクトについて適切なサイズの挿入物を含有するコロニーを選択し、DNA精製に供した。プラスミドミニプレップDNAは、5μlの懸濁コロニーQiaprep Bio Robot 8000(Qiagen)を接種した5mlの終夜培養物から調製した。pEAK12dベクター(図7)のプラスミドDNA(200〜500ng)は、pEAK12F(配列番号21)及びpEAK12Rプライマー(配列番号22)を用いたDNAシークエンス決定に供した。pDEST8ベクター(図8)のプラスミドDNA(200〜500ng)は、上述のように、pDEST8F(配列番号23)及びpDEST8Rプライマー(配列番号24)を用いたDNAシークエンス決定に供した。
【0162】
プラスミドマキシプレップ(maxi-prep)DNAは、配列確認済pEAK12d_Evasin−4−HISクローンの培養物500mlから、Qiagen Plasmid MEGA キット(QIAGEN)を用いて、メーカーの説明書に従って調製した。プラスミドDNAを滅菌水(又は10mMトリスHCl、pH8.5)に濃度1μg/μlとなるよう再懸濁し、−20℃で保存した。プラスミドミニプレップDNAは、配列確認済pDEST8__Evasin−4−HISクローンの培養物5mlから、Qiaprep Turbo 9600 roboticシステム(Qiagen)を用いて、上述のように調製した。
【0163】
c.HEK293細胞で発現された組み換えΔ6evasin−4の精製
【0164】
pEAK12d−spUPA−6His−Evasin−4(図7)によるトランスフェクションの6日後に、HEK293−EBNA細胞から細胞培養上清(500ml)を収穫し、2倍量の50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5、0.6MのNaCl及び8.7%(体積/体積)のグリセロール含有)で希釈した。サンプルを0.22μmの膜フィルターで濾過した後、次いで、Akta Purifier システム(Amersham)により、Ni2+イオンを充填した5mlの金属キレートアフィニティーカラムHiTrap Chelating(Amersham)に、100mM Ni(II)SO4(Fluka番号72280)溶液を用いて、4℃で2ml/分でローディングした。このカラムを、0.6M NaCl、8.7%グリセロール(Fulkaカタログ番号49781)、及び20mMイミダゾール(Fulka番号56749)を含有する5カラム体積(CV)の50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)で、5ml/分で洗浄することにより、非特異的に結合した物質を除去した。0.6M NaCl、8.7%グリセロール、及び400mMイミダゾール(Fulkaカタログ番号56749)を含有する2CVの50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)により、カラムを5.0ml/分で5mlの各画分中に溶出した。溶出タンパク質ピークを、5リットルの50mM重炭酸アンモニウム(pH8.0)で16時間透析して脱塩し、Freeze-dryer mobile 12EL(Virtis)を用いて凍結乾燥し、−20℃で保存した。
【0165】
d.組み換えΔ6evasin−4のウエスタンブロット及びSDS−PAGE分析
【0166】
ウエスタンブロット分析については、カラム溶出液を4×サンプルバッファー(ブロモフェノールブルーを、125mMトリスHCl(pH6.8。20%グリセロール、10%SDS、5mM EDTA、及び100mM DTT含有)と混合)で1:3に希釈し、95℃で5分間煮沸した。サンプル及びHisタグ化分子量標準(カタログ番号:LC5606;Invitrogen)を、MESバッファー中10%Bis−Trisゲル流路により、200Vで35分間電気泳動した。電気泳動したタンパク質に、トランスファーバッファー(39mMグリシン、48mMトリス塩基、及び20%メタノール。pH8.3)中で290mAの定電流をかけ、室温で1時間かけて、0.45μmニトロセルロース膜(カタログ番号:LC2001;Invitrogen)にエレクトロトランスファーした。この膜を、ロッカープラットホーム上で、20mlブロッキング溶液(0.1%Tween20及び5%粉乳含有PBS)中、室温で1時間インキュベートしてブロックした。次いでこの膜を、一次抗ヒスチジンタグ抗体を含有する溶液(0.1%Tween20及び2.5%粉乳含有PBSで1:1000に希釈)15ml中で振盪しながら室温で2時間インキュベートした。使用した一次抗体は、HisプローブH−15(sc-803、Santa Cruz Biotechnology)又はHisプローブG−18(sc-804、Santa Cruz Biotechnology)である。この膜を洗浄バッファー(PBS中0.1%Tween20)で洗い流し、洗浄バッファーを3回交換して洗浄(各10分間)した。次いでこの膜を、HRP結合二次抗体(0.1%Tween20、2.5%粉乳含有PBSで1:3000に希釈)中で振盪しながら室温で2時間インキュベートした。この膜を上述と同様にして再洗浄した。最後にこの膜をブロット乾燥し、抗体の染色をECL(商標)Western Blotting Detection Reagentsキット(カタログ番号;RPN2106:Amersham Pharmacia)を用いて、メーカーの説明書に従って可視化した。
【0167】
SDS−PAGE分析については、100mM DTTを含有する2×サンプルバッファー(Invitrogen)でカラム溶出液を1:1に希釈し、5分間煮沸した。サンプル及び分子量標準(Benchmark Protein Ladder;Invitrogen)を、MESバッファー中10%Bis−Trisゲル流路を用いて、200Vで35分間電気泳動した。電気泳動後のタンパク質を、Simply Blue SafeStain(Invitrogen)を用いて、メーカーの説明書に従って染色し、ゲルを蒸留水で5分間3回洗い流し、室温で1時間染色し、1時間水洗した。
【0168】
結果
組み換えΔ6evasin−4を作製するために、予測される成熟タンパク質配列のアミノ酸24〜127を、ORFの5’末端に6Hisタグ配列を有するとともに、予測される天然evasin−4のシグナルペプチド配列に換えて、ウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子(uPA)のシグナルペプチド配列(図3)をインフレームに導入した状態で、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d又は昆虫細胞発現ベクター(pDEST8)にサブクローン化した。組み換えΔ6evasin−4は、pEAK12d-spUPA-6His-Evasin−4(図7)でトランスフェクトされたHEK293EBNA細胞培養上清から、Ni2+-アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。精製タンパク質を分離したSDS-PAGEゲルをクマシー・ブルー染色したところ、Δ6evasin−4が発現され、種々の翻訳後修飾形態の混合物として精製されたことが示された。この翻訳後修飾は、昆虫細胞で発現された別のダニタンパク質に見られたように、おそらくはグリコシル化によるものと思われる(Alarcon-Chaidez FJ et al., 2003)。実際に、このタンパク質はスメアなバンドとして現われ、HEK293で発現された組み換えタンパク質の場合、平均分子量は約30〜40Kdであった(図9)。HEK293からの種々の精製工程において存在する組み換えΔ6evasin−4を、ウエスタンブロット分析し、更にクマシー・ブルー染色した。精製された成熟タンパク質のN末端を配列決定したところ、配列GSPNSHHHがN末端を形成することが確認された。
【0169】
実施例3:インビトロ及びインビボにおける組み換えΔ6evasin−4のCCケモカインに対する阻害活性の特性決定
【0170】
材料及び方法
a.受容体結合アッセイ
【0171】
平衡競合受容体結合アッセイ(equilibrium competition receptor binding assay)を用いて、ケモカイン/ケモカイン受容体相互作用に対する組み換えΔ6evasin−4の阻害特性を求めた。結合実験は、ヒトCCR1又はCCR5(CHO/CCR1又はCHO/CCR5)を安定的に発現するCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)トランスフェクタントから調製した膜を用いて行なった。HEK293細胞から精製した組み換えΔ6evasin−4を、0.1mg/mlで、50mMトリス/HCl(pH7.5)バッファー(1mM CaCl2、5mM MgCl2 及び0.5%BSA含有)に懸濁させ、96ウェルプレート(F96 certified maxisort immunoplate, NUNC)中で、11段階の4倍希釈液を調製した。1×PBS中に50mg/mlで4℃で保存したWheatgermシンチレーション近接アッセイビーズ(Amersham)を上記培地で10mg/mlに希釈し、膜を同じ培地で80μg/mgに希釈した。2μg/ウェルのCHO/CCR1又はCCR5膜、250μg/ウェルのビーズ、0.1nMの[125I]−RANTES(Amershamカタログ番号:IM249)、及び25μlの組み換えΔ6evasin−4の段階希釈液を、96ウェルの透明な平底プレート(Corning)の各ウェルに、最終量が100μlとなるように加え、組み換えタンパク質の最終濃度範囲を350μMから0.08pMの範囲とした。次いで、混合物を振盪しながら室温で3時間インキュベートし、β−シンチレーションカウンター(Wallac)を用いて放射能活性を計数した。結果及び図10参照。
【0172】
b.表面プラズモン共鳴(SPR)による結合分析
【0173】
表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、組み換えΔ6evasin−4によるケモカイン結合の親和力及び動態を直接測定した。Δ6evasin−4をpH4の10mM酢酸ナトリウムバッファー(Biacore)中に50μg/mlとなるように懸濁させ、Biacore アミンカップリングキット(Biacore)による標準的なアミン結合化学によって、CM4チップ(Biacore)上に直接固定化し、Biacore3000 systemを用いて800応答単位(RU)のレベルとした。タンパク質の不在下で化学カップリング反応を行なう対照として、ブランク細胞を調製した。実験は25℃、30μl/分で、HBS−Pランニングバッファー(0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、及び0.005%界面活性剤P20)(Biacore)を用いて行なった。何れの結合実験でも、ケモカインはランニングバッファー中に0.1μg/mlで懸濁させ、0.22μmフィルターを通して濾過した。3分間の注入時間に続いて、注入後の解離時間を2.5分間とした。チップを50mMグリシンバッファー(pH2.5)で30秒間再生させた。何れの実験でも、ケモカインをランダムな順序で三重に注入した。
【0174】
分析に当たっては、ランニングバッファバッファー単独に由来するセンソグラムに加えて、ブランク細胞由来のセンソグラムを結合から減算し、系のノイズを除去した。結果及び図11参照。
【0175】
c.インビボでのケモカイン媒介性白血球動員の阻害
【0176】
C57Bl6マウスに、ビヒクル(saline)又はevasin−4を、1及び10μg/マウスで皮下(s.c.)に投与した。その45分後、100ngのCC11/エオタキシンを、マウスの胸膜腔内に投与した。24時間後にマウスを屠殺し、浸潤白血球の総数をNeubauerチャンバーを用いて計数した。染色サイトスピンスライド上で鑑別計数(Differential counts)を行なった。各実験群の動物は3〜4頭とした。結果及び図12を参照。
【0177】
結果
Δ6evasin−4のケモカイン結合特性を、受容体結合アッセイ及び表面プラズモン共鳴により検討した。
【0178】
受容体結合アッセイが示すところによれば、哺乳類細胞(HEK293細胞)で発現されたΔ6evasin−4は、ヨウ素化RANTESのCCR1及びCCR5への結合を阻害する能力を有し、そのIC50値はそれぞれ7及び3nMであった(図10A及びB)。
【0179】
SPR分析によれば、Δ6evasin−4は、ケモカインファミリーの幾つかのメンバーへの結合能を有することが示された(図11AからL)。
【0180】
更に、Δ6evasin−4の阻害活性は、エオタキシン/CCL11を胸膜腔内へ1及び10μg/マウスの用量で投与することにより誘導される白血球動員を、Δ6evasin−4が阻害する能力を有することからも確かめられた(図12)。動員される細胞の総数が減少した(図12A)のに加えて、各種の細胞型を列挙したところ、好酸球数には有意な減少が見られた(図12B)が、動員単核細胞数の減少はより小さかった(図12C)。
【0181】
実施例4:evasin−4の全長成熟アミノ酸配列のN末端に6HISタグを有する発現コンストラクトの、HEK293/EBNA細胞での発現のための生成
【0182】
プラスミドpDONR221-spUPA-6H-Evasin−4(図6)に部位特異的突然変異を誘発し、全長evasin−4配列のアミノ酸18〜23(WLSTKC)をコード化する配列を再建した。PCR反応は、(最終量50μl中)2μl(20ng)のプラスミドpDONR221−spUPA−6His−Evasin−4、1μlのdNTP混合液、5μlの10×反応バッファー、各2μlの遺伝子特異的プライマー(62.5μM)6His−WLSTKC−Evasin−4F及び6His−WLSTKC−Evasin−4R(配列番号26及び27)、及び1μlのPfu Ultra HF DNAポリメラーゼを含有する反応液を用いて4重に、メーカーの説明書に従って行なった。PCR反応としては、95℃で30秒の初回変性工程の後;95℃で30秒、55℃で1分間及び68℃で4分間を18サイクル;68℃で7分間を1サイクル、及び4℃の保持サイクルを実施した。
【0183】
部位特異的突然変異誘発法の第2段階は、新規合成した突然変異含有DNA(挿入体)を選択するため、PCR産物を(メチル化及び半メチル化DNAに特異的な)Dpn1エンドヌクレアーゼで処理し、親のメチル化プラスミドDNAを消化することを含む。The PCR産物を、メーカーの説明書に従って、1μlのDpn1制限酵素(10U/μl)と共に、37℃で1時間インキュベートした。
【0184】
Dpn1消化反応のアリコット(1μl)を用いて、熱ショックにより、以下の手順で大腸菌XL-10 blue細胞を形質転換した。即ち、XL-1 blueコンピテント細胞(Stratagene)の50μlアリコットを氷上で解凍し、1μlのDpn1反応混合物を加えた。混合物を氷上で30分間インキュベートし、細胞に42℃で45秒の熱ショックを加えた。続いて、細胞を氷浴に2分間移した。その後、NZY培地(0.5ml)(42℃に予熱)を加えた。混合物を15mlのスナップキャップチューブに移し、攪拌(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベートした。続いて、形質転換混合物のアリコット(250μl)をLブロス(LB)プレート(アンピシリン(100μg/ml)含有)に接種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0185】
得られたコロニーのうち60から5mlの培養物を取得し、Qiaprep Turbo 9600ロボットシステム(Qiagen)を用いてプラスミドミニプレップDNAを調製した。プラスミドDNA(200〜500ng)を、21M13及びM13Revプライマーと共に、BigDyeTerminatorシステム(Applied Biosystemsカタログ番号4336919)により、メーカーの説明書に従ってDNA配列決定に供した。配列決定用の反応液を、Montage SEQ 96クリーンアッププレート(Milliporeカタログ番号LSKS09624)を用いて精製した後、Applied Biosystems 3700 DNAシークエンサーを用いて分析した。
【0186】
適切な挿入配列(pDONR221−spUPA−Evasin−4FL、図14)を含有する1のプラスミドの突然変異ORF(図13)を、組み換え反応液中のpEAK12d又はpDESTに移送した。前記反応液は、1.5μl又は約100ngのプラスミド溶出液、1.5μlのpDEST8ベクター又はpEAK12dベクターの何れか(0.1μg/μl)、2μlのLRバッファー、及び1.5μlのLRクロナーゼ(Invitrogen)を含有し、最終量は10μlであった。反応混合物を室温で1時間インキュベートした後、プロテイナーゼK(2μg)を加えて反応を停止し、37℃で更に10分間インキュベートした。各反応液のアリコット(1μl)を用いて、電気穿孔法により、以下の手順で大腸菌DH10B細胞に形質転換した。即ち、DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)の20μlのアリコットを氷上で解凍し、1μlのLR反応混合液を加えた。混合物を冷蔵の0.1cm電気穿孔法キュベットに移送し、BioRad Gene-Pulser(商標)を用いて、メーカーの推奨するプロトコルに従って細胞に電気穿孔した。電気穿孔法の直後に、予め室温としたSOC培地(1ml)を加えた。混合物を15mlのスナップキャップチューブに移し、振盪(220rpm)しながら37℃で1時間インキュベートした。続いて、形質転換混合物のアリコット(10μl及び100μl)をLブロス(LB)プレート(アンピシリン(100μg/ml)含有)に蒔種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0187】
各形質転換当たり5つのコロニーをコロニーPCRで分析した。コロニーを50μlの滅菌水に懸濁させ、25μlのアリコットをPCRに供する。PCR液は(最終量50μl中)2μlのdNTP(5mM)、5μlの10×AmpliTaqポリメラーゼバッファー(15mM MgSO4含有)、各2.5μlのベクター特異的プライマー(10μM)(pEAK12dベクター用にpEAK12F及びpEAK12R、及び、pDEST8ベクター用にpDEST8F及びpDEST8R)、及び、0.5μlのAmpliTaq DNA ポリメラーゼ(Invitrogen)を含有する。PCR反応としては、96℃で2分間の初回変性工程の後;94℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒を35サイクル実施した。得られたPCR産物を1×TAEバッファー(Invitrogen)中1.5%アガロースゲルで可視化し、適切な挿入物を含有する1つのコロニーを選択してDNA精製に供した。各ベクターにサブクローン化された懸濁コロニー5μlを接種した培養物5mlから、Qiaprep Bio Robot 8000(Qiagen)を用いてプラスミドミニプレップDNAを調製し、−20℃で保存した。
【0188】
種々の(サブ)クローニング工程に使用したプライマー配列を表IIIに挙げる。
【0189】
結果
組み換えevasin−4FLを作製するために、プラスミドpDONR221−spUPA−6H−Evasin−4(図6)に対して部位特異的突然変異を誘発し、全長evasin−4配列のアミノ酸18〜23(WLSTKC)をコード化する配列を再建した(図14)。得られたcDNA配列は、5’末端から順に、5アミノ酸の可動性リンカー配列(GSPNS)に融合したuPAのシグナルペプチド配列、続いて6ヒスチジンタグ配列、第2の可動性リンカー(GSPNS)、カスパーゼ8切断部位(LETD)配列、続いてevasin−4のアミノ酸18〜127をコード化するcDNA配列(配列番号25)を含有していた。その後、このcDNA配列を、哺乳類細胞発現ベクターpEAK12d(図15)、又は、昆虫細胞発現ベクターpDEST8(図16)に、Gatewayクローニングシステムを用いて、組み換えによりサブクローン化した。
【0190】
結論
従って、evasin−4はCCケモカイン結合特性を有する新規のタンパク質であり、ケモカインの作用を阻害する能力を有すると結論付けられる。このタンパク質は、抗炎症化合物としてヒト用の医薬に有用に適用できるほか、(ダニ媒介性感染物質を含む)ダニの寄生作用に関連する医学及び獣医学的適応にも使用できる。本発明のタンパク質に基づく分子であって、かかるタンパク質の機能と干渉する分子は、ダニの生活環を中断し、外寄生生物やその病原体を抑制し、或いはダニの疾患原因生物を伝播する能力を低下させる可能性がある。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】evasin−4 cDNA配列のヌクレオチド配列。オープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳を含む。SIGNALJ アルゴリズムで予測したシグナル配列(アミノ酸1〜17)に下線を付す。予測されるポリアデニル化部位を囲み線で示す。成熟タンパク質に存在するシステイン残基を強調表示する。潜在的なN結合グリコシル化部位を太字で記す。
【図2】(A)SDS−PAGEゲルのオートラジオグラフ。125I標識CCケモカイン CCL11/エオタキシンを、組み換えevasin−4でトランスフェクトされたHEK293細胞の培養上清と、クロスリンカーBS3を用いて架橋させることにより形成された複合体を示す。レーン1、125I−CCL11/エオタキシンに架橋されたウイルス性CCケモカイン結合タンパク質(p35)(陽性対照);レーン2、BS3の不在下で125I−エオタキシンとインキュベートしたウイルス性CCケモカイン結合タンパク質(p35);レーン3、125I−CXCL8/IL-8と架橋されたevasin−3トランスフェクタントからのHEK293細胞培養上清(陽性対照);レーン4、125I−CCL11/エオタキシン及びBS3と架橋された非トランスフェクトHEK293細胞培養上清(陰性対照);レーン5及び6、CCL11/エオタキシン及びBS3とインキュベートされた陰性プールからのHEK293細胞培養上清;レーン7、125I−CCL11/エオタキシン及びBS3とインキュベートされたプール10.7からのHEK293細胞培養上清。(B)SDS−PAGEゲルのオートラジオグラフ。125I標識CCケモカインCCL5/RANTESを、組み換えevasin−4でトランスフェクトされたHEK293細胞の培養上清と、クロスリンカーBS3を用いて架橋させることにより形成された複合体を示す。レーン1、125I−CCL5/RANTESに架橋されたウイルス性CCケモカイン結合タンパク質(p35)(陽性対照);レーン2、BS3の不在下で125I−RANTESとインキュベートしたウイルス性CCケモカイン結合タンパク質(p35);レーン3、125I−CXCL8/IL−8と架橋されたevasin−3トランスフェクタントからのHEK293細胞培養上清(陽性対照);レーン4、125I−CCL5/RANTES及びBS3と架橋された非トランスフェクトHEK293細胞培養上清(陰性対照);レーン5及び6、CCL5/RANTES及びBS3とインキュベートされた陰性プールからのHEK293細胞培養上清;レーン7、125I−CCL5/RANTES及びBS3とインキュベートされたプール10.7からのHEK293細胞培養上清。
【図3】5’末端にuPAシグナルペプチド配列(アミノ酸1〜20)、5アミノ酸リンカー配列(GSPNS)及び6ヒスチジンタグが隣接し、3’末端に停止コドンが隣接する、evasin−4ORF(Δ6evasin−4)のアミノ酸24〜127をコード化するGatewayクローニングシステム適合cDNAのヌクレオチド配列及び翻訳。矢印はcDNAに用いたPCRプライマーの位置及び方向を示す(プライマー配列は表IIIに挙げる)。開始及び停止コドンは太字で示す。予測されるシグナルペプチド配列は斜字体で示す。
【図4】ウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子(UPA)のシグナルペプチド配列を増幅するためのテンプレートとして用いたpEAK12d−PAC_upa−SP−hIL18BP−6His−V1ベクターのマップである。
【図5】evasin−4のcDNAを増幅するためのテンプレートとして用いたpEXP−Lib−Evasin−4ベクターのマップである。
【図6】pDONR221−spUPA−6His−Evasin−4(Gatewayエントリーベクター)のマップである。
【図7】ヒト胎児腎臓(HEK293/EBNA)細胞におけるΔ6evasin−4の産生のためのGateway発現ベクターである、pEAK12d−spUPA−6His−Evasin−4のマップである。
【図8】TN5(昆虫)細胞におけるΔ6evasin−4の発現のためのGateway発現ベクターである、pDEST8−spUPA−6His−Evasin−4のマップである。
【図9】A)Ni2+親和性クロマトグラフィーを用いてHEK293細胞から精製したΔ6evasin−4を示す、クマシー・ブルー染色10%SDSポリアクリルアミド(SDS−PAGE)ゲルである。レーン1、分子量マーカー;レーン2及び3、Ni2+親和性カラムからの溶出後の組み換えΔ6evasin−4画分。B)SDS−PAGEゲルからニトロセルロース膜へのトランスファー後のウエスタンブロット分析。マウス抗6His抗体を第1抗体として、ウサギ抗マウス抗体を第2抗体として用い、化学発光により検出した。
【図10】平衡的競合結合アッセイにおける、CCL5/RANTESのCCR5(A)及びCCR1(B)への結合の、Δ6evasin−4による阻害。IC50値は、CCR5については3nM、CCR1については7nMであった。
【図11A】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL26/エオタキシン−3。
【図11B】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。E66A−CCL5/RANTES。
【図11C】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL7/MCP−3。
【図11D】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CXCL9/MIG。
【図11E】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL18/PARC。
【図11F】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL1/I−309。
【図11G】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL3/MIP−1α。
【図11H】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。マウスCCL3/MIP−1α。
【図11I】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL22/MDC。
【図11J】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CXCL11/I−TAC。
【図11K】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。CCL16/HCC−4。
【図11L】CM4チップに固定化されたΔ6evasin−4に結合したケモカインの表面プラズモン共鳴(SPR)分析。Δ6evasin−4への結合が観察されなかったケモカインについて得られた重畳センソグラム:CCL4/MIP−1β、CCL2/MCP−1、CCL13/MCP−4、XCL1/リンフォタクチン、CCL17/TARC、CCL21/SLC、CCL15/HCC−2、CXCL12/SDF1α,、CXCL8/IL8、CXCL1/Gro−α及びCX3CL1/フラクタルカイン。
【図12A−B】インビボでの細胞動員阻害。CCL11/エオタキシン投与の45分間前にΔ6evasin−4をマウス胸膜腔内に投与。24時間後に細胞動員を測定。A、動員された細胞の総数;B、動員された好酸球の数。CCL11/エオタキシンによる動員数を黒色バーで示し、1又は10μgのΔ6evasin−4による阻害をハッチ付バーで示す。
【図12C】インビボでの細胞動員阻害。CCL11/エオタキシン投与の45分間前にΔ6evasin−4をマウス胸膜腔内に投与。24時間後に細胞動員を測定。C、動員された単核細胞の数。CCL11/エオタキシンによる動員数を黒色バーで示し、1又は10μgのΔ6evasin−4による阻害をハッチ付バーで示す。
【図13】5’末端にuPAシグナルペプチド配列(アミノ酸1〜20)、5アミノ酸リンカー配列(GSPNS)、6ヒスチジンタグ、第2の5アミノ酸リンカー配列、及びカスパーゼ8切断部位配列(LETD)が隣接し、3’末端に停止コドンが隣接する、evasin−4ORF(FL evasin−4)のアミノ酸18〜127をコード化する、Gatewayクローニングシステム適合cDNAのヌクレオチド配列及び翻訳。矢印は、cDNAの作成に使用したPCRプライマーの位置及び方向を示す(プライマー配列は表IIIに挙げる)。開始及び停止コドンを太字で示す。予測されるシグナルペプチド配列を斜字体で示す。
【図14】Gatewayエントリーベクターである、pDONR221−spUPA−6His−Evasin−4FLベクターのマップである。
【図15】ヒト胎児腎臓細胞(HEK293/EBNA細胞)における発現用のGateway発現ベクターである、pEAK12d−spUPA−6His−Evasin−4FLのマップである。
【図16】TN5(昆虫)細胞における発現用のGateway発現ベクターである、pDEST8−spUPA−6His−Evasin−4FLのマップである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質;
c)a)、b)、c)又はd)のタンパク質をコード化する核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸分子であって、CCケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子によりコード化されるタンパク質;
d)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であり、CCケモカインに結合するタンパク質;
e)a)、b)、c)又はd)のタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;及び
f)a)、b)、c)、d)、又はe)のタンパク質の断片を含んでなるタンパク質であって、前記の断片又はタンパク質が免疫調節活性を有するタンパク質
からなる群より選択されるポリペプチド。
【請求項2】
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
c)a)又はb)のタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;
d)a)又はb)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質;
からなる群より選択される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されてなるとともに、CCケモカインに結合する、タンパク質の活性変異体。
【請求項4】
前記アミノ酸の付加、欠失、又は置換によって、哺乳類投与時における前記ポリペプチドの免疫原性が低減されてなる、請求項3のタンパク質の活性変異体。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のタンパク質と、前記タンパク質に作動式に連結された、1又は2以上のアミノ酸配列とを含んでなる融合タンパク質であって、前記アミノ酸配列が、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、ヘテロ二量体タンパク質ホルモン、シグナルペプチド、搬出シグナル、及びタグ配列から選択される融合タンパク質。
【請求項6】
前記ポリペプチドが翻訳後修飾されることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記タンパク質がグリコシル化されることを特徴とする、請求項6記載のタンパク質。
【請求項8】
前記タンパク質が、活性画分、前駆体、塩、誘導体、抱合体、複合体の形態であり、又はPEG化されてなることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のタンパク質。
【請求項9】
請求項1から7の何れか一項に記載のポリペプチドをコード化する核酸分子。
【請求項10】
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
c)a)又はb)の核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸分子であって、CCケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
d)a)、b)、又はc)の核酸分子によってコード化されるタンパク質とアミノ酸配列が少なくとも約70%同一であるタンパク質であって、CCケモカインと結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
e)a)、b)、c)、又はd)の核酸分子によってコード化されるタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;及び
f)a)、b)、c)、d)、又はe)の核酸分子の縮退変異体
からなる群より選択される、請求項9記載の核酸分子。
【請求項11】
前記核酸分子が、
a)配列番号5により特定されるevasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
b)配列番号6により特定される成熟evasin−4のアミノ酸配列を有するタンパク質;
c)a)又はb)のタンパク質の断片であって、CCケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;
d)a)又はb)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質;
e)a)又はb)のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されるとともに、CCケモカインに結合する変異体;及び
f)a)、b)、c)、d)、又はe)のタンパク質と、前記タンパク質に作動式に連結された1又は2以上のアミノ酸配列とを含んでなる融合タンパク質であって、前記アミノ酸配列が、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常領域、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、搬出シグナル、及びタグ配列から選択される、融合タンパク質
からなる群より選択されるタンパク質をコード化する、請求項10記載の核酸分子。
【請求項12】
前記CCケモカインがCCL5及びCCL11から選択されることを特徴とする、請求項9から11の何れか一項に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記分子がDNA分子、特にcDNA分子である、請求項9から12の何れか一項に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記分子が配列番号3のDNA配列を含んでなる、或いは前記DNA配列である、請求項9記載の核酸分子。
【請求項15】
前記分子が配列番号4のDNA配列を含んでなる、或いは前記DNA配列である、請求項9記載の核酸分子。
【請求項16】
請求項10又は請求項11に記載の核酸の断片を含んでなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも約20ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチド、及び、少なくとも約50ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドからなる群より選択される、オリゴヌクレオチド。
【請求項17】
請求項9から15の何れか一項に記載の核酸分子を含んでなるクローニング又は発現ベクター。
【請求項18】
前記核酸分子に作動式に連結されたプロモーター、特に組織特異的、構成的又は誘導性プロモーターを更に含んでなる、請求項17記載の発現ベクター。
【請求項19】
請求項17又は請求項18に記載の発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項20】
請求項1から7の何れか一項に記載のタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞。
【請求項21】
ポリペプチドを調製する方法であって、請求項19又は請求項20に記載の宿主細胞を、発現を許容又は促進する条件下で培養することを含んでなる方法。
【請求項22】
前記タンパク質を精製することを更に含んでなる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質をヒト投与用に製剤することを更に含んでなる、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
CCケモカイン結合タンパク質を発現するトランスジェニック非ヒト動物であって、前記動物の細胞が、請求項9から15の何れか一項に記載の単離又は組み換え核酸分子、或いは、請求項17又は請求項18に記載の発現ベクターを含有することを特徴とする動物。
【請求項25】
請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
【請求項26】
モノクローナル抗体である、請求項25記載の抗体。
【請求項27】
キメラ、ヒト化、又はヒト抗体、或いは、Fab、F(ab)2、scFv、又はドメイン抗体等の抗体断片である、請求項25又は請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド、或いは、請求項10から19の何れか一項に記載の核酸、或いは、請求項20又は請求項21に記載の細胞と、医薬的に許容し得る希釈剤又は担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項29】
薬剤に使用される、請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド、又は、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
哺乳類における免疫又は炎症性応答の調節に使用される、請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド、又は、請求項28記載の組成物。
【請求項31】
動物のCCケモカイン関連疾患の処置又は予防に使用される、請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド、又は、請求項28記載の組成物。
【請求項32】
請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチドの使用であって、哺乳類の免疫又は炎症性応答の調節用の医薬組成物の製造における活性成分としての使用。
【請求項33】
前記の免疫又は炎症性応答が、CCL5又はCCL11によって生じることを特徴とする、請求項32記載の使用。
【請求項34】
前記の免疫又は炎症性疾患が、自己免疫疾患、感染、アレルギー性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、胃腸疾患、神経系疾患、敗血症、移植拒絶反応関連疾患、又は線維症であることを特徴とする、請求項32又は請求項33に記載の使用。
【請求項35】
請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチドの使用であって、寄生生物、ウイルス、又は細菌に対する哺乳類のワクチン接種用の医薬組成物の調製における使用。
【請求項36】
請求項9から15の何れか一項に記載の核酸分子によってコード化されるタンパク質の薬剤としての使用。
【請求項37】
請求項9記載の核酸分子の使用であって、哺乳類の免疫又は炎症性応答の調節用組成物の調製における使用。
【請求項38】
吸血性外部寄生生物に対して動物を免疫化する方法であって、請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチドを前記動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項39】
免疫又は炎症性応答の調節が必要な動物において前記調節を行なう方法であって、治療的に有効な量の請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチドを前記動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項40】
CCケモカイン関連疾病の処置又は予防のための方法であって、請求項1から7の何れか一項に記載の有効量のポリペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含んでなる方法。
【請求項41】
CCケモカイン又は類似体、CCケモカイン結合タンパク質又は受容体、CCケモカインとCCケモカイン結合タンパク質との相互作用、或いは前記相互作用のアンタゴニスト又はアゴニストを検出するためのキットであって、
検出用試薬と、少なくとも:
a)請求項9記載の核酸分子;
b)請求項16記載のオリゴヌクレオチド;
c)請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド;及び
d)請求項25から27の何れか一項に記載の抗体;
からなる群より選択される化合物とを含んでなるキット。
【請求項42】
インビトロ(in vitro)又はインビボ(in vivo)において、CCケモカイン又は類似体、CCケモカイン結合タンパク質又は受容体、CCケモカインとCCケモカイン結合タンパク質との相互作用、或いは前記相互作用のアンタゴニスト又はアゴニストを検出する方法であって:
a)請求項9記載の核酸分子;
b)請求項16記載のオリゴヌクレオチド;
c)請求項1から8の何れか一項に記載のポリペプチド;及び
d)請求項25から27の何れか一項に記載の抗体;
からなる群より選択される化合物に、サンプルを接触させることを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図11J】
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【図11K】
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【図11L】
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【図12A−B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−526535(P2009−526535A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554686(P2008−554686)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001361
【国際公開番号】WO2007/093432
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507348713)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (29)
【Fターム(参考)】