説明

昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法

【課題】監視マスターファイル情報を登録するための煩雑な入力作業を省略できると共に、誤登録や登録漏れを防止する効果が高い昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法を提供すること。
【解決手段】顧客建物1に設置された昇降機11の稼働状態を監視する監視端末12が公衆通信回線網3を介して遠隔監視センター4に接続されていると共に、この遠隔監視センター4が、監視端末12の管理情報として登録される監視マスターファイル情報10を保有する遠隔監視システムにおいて、遠隔監視センター4が監視マスターファイル作成手段42を備えている。この監視マスターファイル作成手段42は、顧客建物1と昇降機11を特定する情報を含む保全契約情報8を保全情報システム5から抽出すると共に、可能であれば通信回線の回線番号情報9を通信回線管理システム6から抽出し、これらの情報に基づいて監視マスターファイル情報10を自動生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客建物に設置された昇降機の稼働状態を監視する監視端末が通信回線を介して遠隔監視センターに接続されている遠隔監視システムにおいて、監視端末の管理情報が登録される監視マスターファイルの管理方法に係り、特に、遠隔監視センターが監視マスターファイル上に保有する管理情報の作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顧客建物に設置された昇降機の保全を行う保全会社は、顧客と締結された保全契約の内容に基づいて、その昇降機の点検作業を定期的に実施する。また、昇降機に接続された監視端末による常時監視を行うために、この監視端末と通信回線を介して接続される遠隔監視センターには監視マスターファイルが備えられており、この監視マスターファイルにて監視端末の固有の管理情報(監視マスターファイル情報)が登録される。そして、遠隔監視サービスの開始時に、遠隔監視センターが監視マスターファイル情報に基づき、公衆通信回線を介して監視端末に初期設定情報を書き込み、これによって監視端末が昇降機の稼働状態を常時監視するようになるため、昇降機に異常が発生すると、監視端末から遠隔監視センターに速やかに異常通報がなされるようになっている。
【0003】
このように昇降機の遠隔監視システムにおいては、遠隔監視サービスが開始される前に監視端末の管理情報を作成しておく必要がある。具体的には、監視端末と接続される公衆通信回線の回線番号や、監視端末の種類、監視端末が実施する監視項目などが、監視マスターファイル情報として正確に登録されていなければならない。また、顧客建物内に複数の監視端末が配備されている場合、監視端末を特定する識別番号の登録も必須である。
【0004】
従来の遠隔監視システムでは、通常、遠隔監視サービスを顧客に提供する担当者(サービス提供担当者)が、前記保全契約の情報等に基づいて入力内容を判断しながら監視マスターファイル情報を手作業で登録していた。そのため、遠隔監視対象の規模が増大するのに伴い、登録作業(入力作業)の手間が煩雑化して誤登録が発生しやすくなっており、遠隔監視サービスを開始する段階で監視マスターファイル情報の登録漏れが判明する場合もあった。
【0005】
このような昇降機の遠隔監視システムにおける監視マスターファイルの管理方法としては、入力済みの監視マスターファイル情報の書換え可否状況を記憶しておき、不用意な操作によって監視マスターファイル情報の書換えが行われないようにし、かつ、必要時には監視マスターファイル情報の書換えが行えるようにするという技術が従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−150607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来技術は、監視マスターファイル情報の不用意な書換えを防止するという点では有効であるが、登録作業(入力作業)の省力化に寄与するわけではないので、入力時に懸念される監視マスターファイル情報の誤登録を防止する効果は期待できなかった。また、かかる従来技術においても監視マスターファイル情報の登録はサービス提供担当者が行うべき一業務と位置付けられているため、うっかりミスによる監視マスターファイル情報の登録漏れを防止する効果も期待できなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、監視マスターファイル情報を登録するための煩雑な入力作業を省略できると共に、誤登録や登録漏れを防止する効果が高い昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、顧客建物に設置された昇降機の稼働状態を監視する監視端末が通信回線を介して遠隔監視センターに接続されていると共に、前記遠隔監視センターが前記監視端末の管理情報として登録される監視マスターファイル情報を保有する昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法において、前記遠隔監視センターが監視マスターファイル作成手段を備えており、この監視マスターファイル作成手段が、前記顧客建物および前記昇降機を特定する情報を含む保全契約情報を取得し、少なくとも前記保全契約情報に基づいて前記監視マスターファイル情報を生成するようにした。
【0010】
このように遠隔監視センターに備えられた監視マスターファイル作成手段は、顧客と締結された保全契約の情報を取得し、この保全契約情報等に基づいて、監視端末に関するほぼ完全な、あるいは暫定的な監視マスターファイル情報を自動生成することが可能である。それゆえ、監視マスターファイル情報を手作業で登録するという煩雑な入力作業を省略することが可能となり、誤登録や登録漏れも防止しやすくなる。
【0011】
上記の監視マスターファイル管理方法の一態様として、監視マスターファイル作成手段が、保全契約情報を保有する保全情報システムから通信回線を介して該保全契約情報を取得すると共に、回線番号情報を保有する通信回線管理システムから通信回線を介して該回線番号情報を取得するようにしてあると、監視端末に関するほぼ完全な監視マスターファイル情報を自動生成できるため、監視マスターファイル情報を手作業で登録する入力作業を省略できる。それゆえ、業務効率が大幅に向上して誤登録や登録漏れも発生しにくくなる。
【0012】
また、上記の監視マスターファイル管理方法の他の態様として、回線番号情報を保有する通信回線管理システムで監視端末と接続される回線番号情報が未定の状態のとき、監視マスターファイル作成手段が、保全契約情報を保有する保全情報システムから通信回線を介して該保全契約情報を取得することによって、前記監視端末の種類と台数および必要通信回線数に関する管理情報を生成すると共に、該管理情報をサービス提供担当者に通知するようにしてあると、このサービス提供担当者に対して、遠隔監視サービス提供開始前までに準備手配しておくべき管理情報(暫定的な監視マスターファイル情報)を迅速かつ確実に伝達することができる。それゆえ、監視端末や通信回線に関する準備作業が効率良く的確に行える。
【0013】
また、上記の監視マスターファイル管理方法のさらに他の態様として、回線番号情報を保有する通信回線管理システムで監視端末と接続される回線番号情報が未定の状態のとき、監視マスターファイル作成手段が、保全契約情報を保有する保全情報システムから通信回線を介して該保全契約情報を取得することによって、前記監視端末の種類と台数および必要通信回線数に関する管理情報を生成すると共に、該管理情報を物品の手配を行うシステムに通知するようにしてあると、遠隔監視サービス提供開始前までに準備しておくべき物品を迅速かつ確実に手配できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の昇降機遠隔監視システムにおける監視マスターファイル管理方法によれば、遠隔監視センターに備えられた監視マスターファイル作成手段が、顧客と締結された保全契約の情報を取得し、この保全契約情報等に基づいて、監視端末に関するほぼ完全な、あるいは暫定的な監視マスターファイル情報を自動生成できるようになっている。そのため、監視マスターファイル情報を手作業で登録するという煩雑な入力作業が省略可能となって業務効率化を促進できると共に、誤登録や登録漏れが防止しやすくなるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態例に係る昇降機遠隔監視システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の各ファイルに格納されている情報内容を示す説明図である。
【図3】該実施形態例で監視マスターファイル情報を自動作成する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態例について図面を参照しつつ説明する。まず、図1を参照して本実施形態例に係る昇降機遠隔監視システムの全体構成について説明する。
【0017】
この遠隔監視システムにおいて、各顧客建物1に設置されている昇降機11の稼働状態は、その昇降機11に接続されている監視端末12によって常時監視されている。各顧客建物1から地理的に離れた場所にある遠隔監視センター4は、公衆通信回線網3を介して各監視端末12とデータの送受信が可能であり、これら監視端末12を介して各顧客建物1の昇降機11は遠隔監視されている。なお、図1に示すように、1台の監視端末12が監視する昇降機11の台数は1台とは限らず、1台の監視端末12が複数台の昇降機11を監視する場合もある。
【0018】
遠隔監視センター4は監視マスターファイル41を保有している。また、本実施形態例においては、各監視端末12の個別の管理情報として監視マスターファイル41に登録される監視マスターファイル情報10(図2参照)を自動作成するために、コンピュータシステムからなる監視マスターファイル作成手段42が遠隔監視センター4に備えられている。一方、保全情報システム5は保全契約情報ファイル51を保有しており、この保全契約情報ファイル51に保全契約情報8(図2参照)が格納されている。また、通信回線管理システム6は通信回線番号情報ファイル61を保有しており、この通信回線番号情報ファイル61に通信回線番号情報9(図2参照)が格納されている。これらの遠隔監視センター4と保全情報システム5と通信回線管理システム6は、社内通信回線網7を介して相互にデータの送受信が可能となっている。
【0019】
次に、図2を参照しながら、上記の各ファイル51、61および41にそれぞれ格納されている保全契約情報8、通信回線番号情報9および監視マスターファイル情報10の内容について具体的に説明する。
【0020】
保全契約情報8は昇降機を保全するための情報であり、顧客建物1に昇降機11が設置されて保全契約が締結された時点で作成される。この保全契約情報8には、顧客建物1を特定する顧客識別番号、顧客建物1内に設置されている昇降機11の台数、昇降機11を特定する製造番号、昇降機11の機種情報、遠隔監視契約の有無に関する情報が含まれている。
【0021】
通信回線番号情報9は通信回線番号を管理するための情報であり、遠隔監視契約に基づき通信会社への公衆通信回線の手配が完了した後に作成される。この通信回線番号情報9には、顧客建物1を特定する顧客識別番号、同一顧客にて使用する公衆通信回線の回線数および回線番号に関する情報が含まれている。
【0022】
監視マスターファイル情報10は監視端末に関する管理情報であり、遠隔監視契約に基づき昇降機11に監視端末12が接続されて遠隔監視サービスの提供が開始される前までに作成される。この監視マスターファイル情報10には、顧客建物1を特定する顧客識別番号、監視端末12に接続する公衆通信回線の回線番号、監視端末12を特定する監視端末識別番号、監視端末12の種別を示す監視端末種類、監視端末12の監視対象となる昇降機11の製造番号に関する情報が含まれている。なお、前記監視端末識別番号は、採番される度に作成される通し番号である。また、前記監視端末種類は、監視端末12が接続される昇降機11の機種情報と、1台の監視端末12で監視可能な昇降機11の台数情報とに基づいて判定される。
【0023】
昇降機11を監視する監視端末12の個別の管理情報である監視マスターファイル情報10は、この昇降機11に対する遠隔監視サービスの提供が開始される前までに、監視マスターファイル41に登録しておく必要がある。従来は、遠隔監視サービスを顧客に提供する担当者(サービス提供担当者)が、保全契約情報ファイル51や通信回線番号情報ファイル61を参照し、保全契約情報8や通信回線番号情報9等に基づいて入力内容を判断しながら監視マスターファイル情報10を手作業で登録していた。しかるに本実施形態例では、遠隔監視センター4に備えられた監視マスターファイル作成手段42が、保全契約情報8および通信回線番号情報9に基づく変換処理を行うことによって監視マスターファイル情報10を自動的に作成できるようになっている。以下、図3のフローチャートを参照しながら、監視マスターファイル情報10を自動作成する際の手順について説明する。
【0024】
未登録の監視マスターファイル情報10を自動作成するための処理を開始するにあたって、監視マスターファイル作成手段42は、まず、社内通信回線網7を介して保全契約情報ファイル51から該当する保全契約情報8を抽出し、遠隔監視契約の有無を確認する。そして、遠隔監視契約有りの情報が取得されたなら、この保全契約情報8内の顧客識別番号と合致するように、監視マスターファイル情報10の顧客識別番号を生成したうえで、この監視マスターファイル情報10の自動作成処理を開始し、図3のステップS1へと進む。
【0025】
ステップS1において、監視マスターファイル作成手段42は、抽出した保全契約情報8から昇降機の機種情報を取得し、この機種情報に基づいて接続可能な監視端末を判定する。具体的には、昇降機の機種毎に接続可能な監視端末の種類候補や、監視端末と昇降機の接続パターンや、1台の監視端末で監視可能な昇降機の台数等に関する情報が予めテーブル化されており、このテーブルが遠隔監視センター4に保有されているので、監視マスターファイル作成手段42は該テーブルを参照して昇降機の機種に応じた監視端末の種類を絞り込む。
【0026】
次なるステップS2において、監視マスターファイル作成手段42は、監視端末と昇降機の接続パターンが「1:1」であるか、それとも「1:n」(nは2以上の自然数)であるかを判定する。この判定は前記テーブルを参照して実行され、「1:n」の場合はステップS3−1へ進み、「1:1」の場合はステップS3−2へ進む。なお、接続パターン(監視端末:昇降機)が「1:1」とは、1台の監視端末が1台の昇降機だけに接続されるという意味であり、接続パターンが「1:n」とは、1台の監視端末がn台(2台以上)の昇降機に接続されるという意味である。
【0027】
接続パターンが「1:1」でステップS3−2へ進んだ場合、監視マスターファイル作成手段42は、保全契約情報8内で遠隔監視契約有りの昇降機の台数を監視端末の必要台数として決定し、ステップS6へ進んで監視端末の種類も決定する。
【0028】
他方、接続パターンが「1:n」でステップS3−1へ進んだ場合、監視マスターファイル作成手段42は、保全契約情報8内の遠隔監視契約有りの昇降機台数情報を取得してからステップS4へ進み、このステップS4において、1台の監視端末で監視可能な昇降機の台数nを保全契約情報8内の遠隔監視契約有りの昇降機台数bと比較する。そして、ステップS4で昇降機台数n≧昇降機台数bの場合はステップS5−1へ進み、昇降機台数n<昇降機台数bの場合はステップS5−2へ進む。すなわち、保全契約情報8内の遠隔監視契約有りの昇降機の台数bが1台の監視端末で監視可能な昇降機の台数nよりも多くない場合は、監視端末の必要台数を1台と決定(ステップS5−1)した後、ステップS6へ進んでその監視端末の種類も決定する。これに対して、保全契約情報8内の遠隔監視契約有りの昇降機の台数bが1台の監視端末で監視可能な昇降機の台数nよりも多い場合は、昇降機台数b/nの値の小数点以下切り上げ整数値を算出し、この整数値を監視端末の必要台数として決定(ステップS5−2)した後、ステップS6へ進んで監視端末の種類も決定する。
【0029】
こうして監視端末の必要台数と種類が決定されると、監視マスターファイル作成手段42は、監視端末の必要台数分の識別番号を採番(ステップS7)した後、これら監視端末の接続に必要な通信回線数を決定する(ステップS8)。その際、監視マスターファイル作成手段42は、監視端末の必要台数を1つの公衆通信回線に共用接続可能な監視端末の台数m(mは自然数)で割り算し、その算出値の小数点以下切り上げ整数値を必要通信回線数として決定する。なお、通信品質を確保するという観点から、1つの公衆通信回線に共用接続可能な監視端末の台数mは予め定められている。また、後述するように、ステップS8で決定された必要通信回線数を実際に手配済みの通信回線番号情報9と照合することによって、各監視端末に接続される通信回線の回線番号を特定することが可能となる。
【0030】
次なるステップS9において、監視マスターファイル作成手段42は、社内通信回線網7を介して通信回線番号情報ファイル61から該当する顧客識別番号の通信回線番号情報9を抽出し、回線番号の情報を取得する。さらに監視マスターファイル作成手段42は、次なるステップS10において、取得した回線番号情報の各回線番号に対し、ステップS7で採番された監視端末識別番号を割り当てて、監視端末と回線番号の組み合わせを決定する。具体的には、取得した回線番号情報に基づき、ステップS8で決定された必要通信回線数分の回線番号の各々に対して、1回線に共用接続可能な監視端末台数分を上限として監視端末識別番号を割り当てる。
【0031】
これにより監視マスターファイル情報10の自動生成処理が終了するが、必要台数の監視端末のすべてに公衆通信回線を割り当てることができない場合、つまり、回線数が不足している場合には通信回線の手配をサービス提供担当者へ通知する。
【0032】
なお、監視マスターファイル情報10における各監視端末識別番号に対応する監視端末種類は、ステップS1で取得した昇降機の機種情報や、昇降機の機種毎に接続可能な監視端末の種類候補に関する情報がテーブル化されている前記テーブルに基づいて選定される。また、監視マスターファイル情報10における製造番号は、ステップS1で取得した昇降機の機種情報に対応する製造番号を保全契約情報8から取得することによって生成される。
【0033】
このように監視マスターファイル作成手段42は、下記(1)〜(3)の各情報によって監視マスターファイル情報10を自動生成することができる。
【0034】
(1)保全契約情報ファイル51から抽出された遠隔監視契約有りの保全契約情報8の顧客識別番号。
【0035】
(2)前記顧客識別番号に対応する昇降機の機種情報ならびに通信回線番号情報ファイル61に格納されている通信回線番号情報9に基づき、昇降機の機種毎に接続可能な監視端末の種類候補や、監視端末と昇降機の接続パターンや、1台の監視端末で監視可能な昇降機の台数等に関する情報をテーブル化してなる前記テーブルを参照することによって、監視端末の必要台数および必要な通信回線数を算出したうえで変換処理される、回線番号と監視端末識別番号および監視端末種類との組み合わせ。
【0036】
(3)前記(1)における保全契約情報8から取得される昇降機の機種情報に対応する製造番号。
【0037】
以上説明したように、本実施形態例においては、遠隔監視センター4に備えられた監視マスターファイル作成手段42が、社内通信回線網7を介して既存の保全契約情報8や通信回線番号情報9を抽出して取得できると共に、これらの情報に基づく変換処理を行うことによって、監視端末12に関する監視マスターファイル情報10を自動生成できるようになっているため、監視マスターファイル情報10を手作業で登録するという煩雑な入力作業を省略できる。それゆえ、業務効率が大幅に向上して、誤登録や登録漏れも発生しにくくなる。
【0038】
次に、通信回線管理システム6において監視端末と接続される回線番号情報9が未定の状態で、この監視端末の暫定的な監視マスターファイル情報10Aを自動生成する場合の一態様について説明する。
【0039】
すなわち、昇降機を遠隔監視する契約が顧客と締結されても、保全契約情報8が作成されてから実際に遠隔監視サービスの提供が開始されるまでの準備期間があり、通常は、この準備期間中に必要な監視端末の手配や通信会社への公衆通信回線番号の手配を行う。そこで、保全契約情報8が作成された時点で、監視マスターファイル作成手段42は、まず、図3のフローチャートにおけるステップS8までの処理を実行する。つまり、監視マスターファイル作成手段42は、保全契約情報8から抽出された遠隔監視契約有りの昇降機を対象として、その機種情報や設置台数に基づき監視端末の必要台数と種類を決定すると共に、監視端末識別番号を採番して必要な通信回線数を決定する。これにより、回線番号の情報が未定な暫定的な監視マスターファイル情報10Aを自動生成できる。この暫定的な監視マスターファイル情報10Aには、手配すべき監視端末の種類および台数や通信回線数が含まれているため、監視マスターファイル作成手段42は該監視マスターファイル情報10Aをサービス提供担当者に通知する。
【0040】
そして、サービス提供担当者によって必要な公衆通信回線の手配が完了し、通信回線番号情報ファイル61に通信回線番号情報9が登録された後に、監視マスターファイル作成手段42は、通信回線番号情報9を抽出して回線番号の情報を取得(前記ステップS9での処理)し、さらに監視端末と回線番号との組み合わせを決定(前記ステップS10での処理)して、昇降機の遠隔監視に実際に適用される監視マスターファイル情報10を生成する。
【0041】
このように回線番号の情報が未定の状態であっても、監視マスターファイル作成手段42が暫定的な監視マスターファイル情報10Aを自動生成してサービス提供担当者に通知するようにしてあれば、昇降機を遠隔監視する契約が顧客と締結されてから実際に遠隔監視サービスの提供が開始されるまでの間に準備手配しておくべき管理情報(監視端末の種類および台数や通信回線数)が、サービス提供担当者に迅速かつ確実に伝達されることになる。それゆえ、監視端末や通信回線に関する準備作業を効率良く的確に行える。
【0042】
次に、通信回線管理システム6において監視端末と接続される回線番号の情報が未定の状態で、この監視端末の暫定的な監視マスターファイル情報10Aを自動生成する場合の他の態様について説明する。
【0043】
この態様では、監視マスターファイル作成手段42が図3のフローチャートにおけるステップS8までの処理を実行して、暫定的な監視マスターファイル情報10Aを自動生成した後、手配すべき監視端末の種類および台数や通信回線数に関する管理情報を、社内通信回線網7を介して物品の手配を行うシステムに通知する。そのため、物品の手配を行うシステムでは、該管理情報に基づいて、遠隔監視サービスの提供開始前までに準備しておくべき物品を迅速かつ確実に手配することができる。つまり、サービス提供担当者にとって、監視マスターファイル情報の作成作業だけでなく物品を手配する作業も不要となるため、大幅な業務効率化が図れる。
【符号の説明】
【0044】
1 顧客建物
3 公衆通信回線網
4 遠隔監視センター
5 保全情報システム
6 通信回線管理システム
7 社内通信回線網
8 保全契約情報
9 通信回線番号情報
10 監視マスターファイル情報
11 昇降機
12 監視端末
41 監視マスターファイル
42 監視マスターファイル作成手段
51 保全契約情報ファイル
61 通信回線番号情報ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客建物に設置された昇降機の稼働状態を監視する監視端末が通信回線を介して遠隔監視センターに接続されていると共に、前記遠隔監視センターが前記監視端末の管理情報として登録される監視マスターファイル情報を保有する昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法において、
前記遠隔監視センターが監視マスターファイル作成手段を備えており、この監視マスターファイル作成手段が、前記顧客建物および前記昇降機を特定する情報を含む保全契約情報を取得し、少なくとも前記保全契約情報に基づいて前記監視マスターファイル情報を生成するようにしたことを特徴とする昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記監視マスターファイル作成手段が、前記保全契約情報を保有する保全情報システムから通信回線を介して該保全契約情報を取得すると共に、回線番号情報を保有する通信回線管理システムから通信回線を介して該回線番号情報を取得するようにしたことを特徴とする昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法。
【請求項3】
請求項1の記載において、回線番号情報を保有する通信回線管理システムで前記監視端末と接続される回線番号情報が未定の状態のとき、前記監視マスターファイル作成手段が、前記保全契約情報を保有する保全情報システムから通信回線を介して該保全契約情報を取得することによって、前記監視端末の種類と台数および必要通信回線数に関する管理情報を生成すると共に、該管理情報をサービス提供担当者に通知するようにしたことを特徴とする昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法。
【請求項4】
請求項1の記載において、回線番号情報を保有する通信回線管理システムで前記監視端末と接続される回線番号情報が未定の状態のとき、前記監視マスターファイル作成手段が、前記保全契約情報を保有する保全情報システムから通信回線を介して該保全契約情報を取得することによって、前記監視端末の種類と台数および必要通信回線数に関する管理情報を生成すると共に、該管理情報を物品の手配を行うシステムに通知するようにしたことを特徴とする昇降機遠隔監視システムの監視マスターファイル管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−121720(P2012−121720A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275816(P2010−275816)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】