説明

易剥離性粘着シートおよび易剥離性粘着テープ

【課題】剥離が容易な易剥離性粘着シートおよび易剥離性粘着テープを提供する。
【解決手段】側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する粘着シートであって、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなり、基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなり、該粘着剤層は、側鎖結晶性ポリマーを含有し、かつ該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下し、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる易剥離性粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易剥離性を有する粘着シートおよび粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子(LED)やフラットパネルディスプレイ(FPD)等の製造工程において、ガラス、プラスチック等からなる基板の固定に粘着シートや粘着テープを用いれば、基板を効率よく加工することができてよいと考えられる。
【0003】
しかし、前記基板は、大型化および薄型化の傾向にあり、強度が低下している。そのため、粘着シートや粘着テープの粘着面が一般的なアクリル系粘着剤からなる場合には、これらを加工後の基板から剥離する際に、該基板に過度の力がかかり、基板を破損するという問題がある。この問題は、粘着シートや粘着テープとともに高温に曝された基板から粘着シートや粘着テープを剥離する場合に顕著である。
【0004】
一方、本出願人は、粘着力を熱により可逆的に制御できる粘着テープとして、先に特許文献1に記載のような粘着テープを開発した。該粘着テープは、粘着剤層が側鎖結晶性ポリマーを含有しており、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度にまで冷却処理をすると、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する。したがって、特許文献1に記載されている粘着テープを用いれば、粘着テープ剥離時に粘着力を低下させることができるので、基板への負荷を小さくすることができる。
しかし、特許文献1に記載されている粘着テープを用いても、加工後の基板から剥離する際に、基板を破損することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−251923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、剥離が容易な易剥離性粘着シートおよび易剥離性粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する粘着シートであって、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着シート。
(2)前記反応性ポリシロキサン化合物が、下記一般式(I)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物である前記(1)記載の易剥離性粘着シート。
【化1】

[式中、R1はアルキル基を示す。R2は基:CH2=CHCOOR3−またはCH2=C(CH3)COOR3−(式中、R3はアルキレン基を示す。)を示す。nは5〜200の整数を示す。]
(3)前記反応性フッ素化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である前記(1)または(2)記載の易剥離性粘着シート。
【化2】

[式中、R4は基:CH2=CHCOOR5−またはCH2=C(CH3)COOR5−(式中、R5はアルキレン基を示す。)を示す。]
(4)貼着した被着体を、100〜220℃の温度に曝した後、前記融点未満の温度で取り外す前記(1)〜(3)のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
(5)基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けており、該粘着剤層は、側鎖結晶性ポリマーを含有し、かつ該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下し、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着テープ。
なお、本発明における前記「シート」は、シート状のみに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限りにおいて、シート状ないしフィルム状をも含む概念である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす側鎖結晶性ポリマーを含有するので、粘着力を熱により可逆的に制御することができる。したがって、被着体から剥離する際には、粘着シートまたは粘着テープの温度を所定温度にすれば、粘着力を低下させることができる。
【0009】
しかも、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種をモノマーの1つとする共重合体からなるので、側鎖結晶性ポリマーによる粘着力の低下に加えて、ポリシロキサン化合物やフッ素化合物に起因する離型性も加わる。したがって、本発明によれば、粘着力を十分に低下させることができるので、被着体から容易に剥離することができるという効果がある。また、側鎖結晶性ポリマーの相変化を利用するものであるため、繰り返し使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<易剥離性粘着シート>
本発明にかかる易剥離性粘着シート(以下、「粘着シート」と言うことがある。)は、側鎖結晶性ポリマーを含有する。該側鎖結晶性ポリマーは、融点未満の温度で結晶化しかつ融点以上の温度で流動性を示すポリマーである。すなわち、側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こすポリマーである。
【0011】
前記粘着シートは、前記融点未満の温度で側鎖結晶性ポリマーが結晶化した際に粘着力が低下する割合で側鎖結晶性ポリマーを含有する。つまり、前記粘着シートは、側鎖結晶性ポリマーを主成分として含有する。これにより、被着体から粘着シートを剥離する際には、粘着シートを側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却すれば、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する。また、粘着シートを側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に加熱すれば、側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって粘着力が回復するので、繰り返し使用することができる。
【0012】
前記融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態となる温度を意味し、示差熱走査熱量計(DSC)により10℃/分の測定条件で測定して得られる値である。前記融点としては0℃以上、好ましくは10〜60℃であるのがよい。前記融点を所定の値とするには、側鎖結晶性ポリマーの組成等を変えることによって任意に行うことができる。
【0013】
前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。したがって、粘着シートを側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却すれば、側鎖結晶性ポリマーによる粘着力の低下に加えて、ポリシロキサン化合物やフッ素化合物に起因する離型性も加わるので、粘着力を十分に低下させることができ、被着体から容易に剥離することができる。
【0014】
特に、本発明の粘着シートは、貼着した被着体を100〜220℃の温度に曝した後、前記融点未満の温度で取り外す粘着シートとして使用するのが好ましい。すなわち、粘着シートは、その用途によっては、被着体を貼着した状態で100〜220℃の温度に曝されることがある。このような高い温度に粘着シートを曝すと、粘着シートが柔軟になって被着体表面に存在する凹凸形状によく追従するようになる。その結果、雰囲気温度が下がった際に、いわゆるアンカー効果が発現し、粘着シートの粘着力が初期粘着力よりも高くなる。それゆえ、粘着シートが一般的なアクリル系粘着剤からなる場合には、剥離不良を生じることが多い。
【0015】
本発明の粘着シートは、100〜220℃の温度に曝されることで粘着力が初期粘着力より高くなったとしても、前記融点未満の温度にまで冷却すれば、前記した理由から粘着力が十分に低下するので、被着体を簡単に取り外すことができる。前記被着体としては、特に限定されないが、LEDやFPD等における大型化および薄型化されたガラス、プラスチック等からなる基板が好適である。
【0016】
ここで、前記反応性ポリシロキサン化合物とは、反応性を示す官能基を有し、かつ主鎖にシロキサン結合を有するポリシロキサン化合物のことを意味する。反応性ポリシロキサン化合物は、室温(23℃)でワックス状でもよいが、効率よく重合させる上で、室温で流動性を示すオイル状、すなわちシリコーンオイルが好ましい。
【0017】
前記反応性を示す官能基としては、例えばビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基;エポキシ基(グリシジル基およびエポキシシクロアルキル基を含む)、メルカプト基、カルビノール基、カルボキシル基、シラノール基、フェノール基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。
【0018】
これらの官能基は、主鎖が有する側鎖に導入してもよく、主鎖の両末端または片末端に導入してもよい。すなわち、反応性ポリシロキサン化合物は、導入される官能基の結合位置によって、いわゆる側鎖型、両末端型、片末端型および側鎖両末端型の4種類が挙げられ、特に、優れた離型性が得られる上で片末端型、すなわち片末端反応性ポリシロキサン化合物が好ましい。
【0019】
片末端反応性ポリシロキサン化合物の具体例としては、前記一般式(I)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物等が挙げられる。前記一般式(I)中、R1はアルキル基を示し、該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基が挙げられる。
【0020】
また、前記一般式(I)中、R2は基:CH2=CHCOOR3−またはCH2=C(CH3)COOR3−(式中、R3はアルキレン基を示す。)を示し、前記アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝したアルキレン基等が挙げられる。前記一般式(I)中、nは5〜200の整数を示す。
【0021】
前記一般式(I)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物の具体例としては、下記一般式(Ia)で表される化合物等が挙げられる。
【化3】

[式中、R1,R3,nは、前記と同じである。]
【0022】
変性ポリジメチルシロキサン化合物は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも信越化学工業(株)製の片末端反応性シリコーンオイル「X−22−2404」、「X−24−8201」、「X−22−174DX」、「X−22−2426」等が挙げられる。
【0023】
一方、前記反応性フッ素化合物とは、反応性を示す官能基を有するフッ素化合物のことを意味する。前記反応性を示す官能基としては、前記反応性ポリシロキサン化合物で例示したのと同じ官能基が挙げられる。
【0024】
前記反応性フッ素化合物の具体例としては、前記一般式(II)で表される化合物等が挙げられる。前記一般式(II)中、R4は基:CH2=CHCOOR5−またはCH2=C(CH3)COOR5−(式中、R5はアルキレン基を示す。)を示し、前記アルキレン基としては、前記一般式(I)で例示したのと同じアルキレン基が挙げられる。
【0025】
また、前記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、下記式(IIa),(IIb)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】

【0026】
反応性フッ素化合物は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート3F」、「ビスコート3FM」、「ビスコート4F」、「ビスコート8F」、「ビスコート8FM」、共栄社化学(株)製の「ライトエステルM−3F」等が挙げられる。
【0027】
側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとしては、例えば炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、極性モノマー等が挙げられる。
【0028】
前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
側鎖結晶性ポリマーの組成としては、前記反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとを、重量比で1:99〜20:80、好ましくは1:99〜10:90の割合で重合させた共重合体がよい。
【0030】
また、前記反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種を1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部と、前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート10〜99重量部、好ましくは20〜99重量部と、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート0〜60重量部と、前記極性モノマー0〜10重量部と、を重合させた共重合体が好ましい。特に、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの割合を多くすると、易剥離性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0031】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。例えば溶液重合法を採用する場合には、前記で例示したモノマーを溶剤に混合し、40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌することによって前記モノマーを重合させることができる。
【0032】
前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は100,000以上、好ましくは300,000〜900,000であるのがよい。前記重量平均分子量があまり小さいと、被着体から粘着シートを剥離する際に粘着シートが被着体上に残る、いわゆる糊残りが多くなるおそれがある。また、前記重量平均分子量があまり大きいと、側鎖結晶性ポリマーを融点未満の温度にしても結晶化し難くなるので、粘着力が低下し難くなる。前記重量平均分子量は、側鎖結晶性ポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0033】
前記粘着シートの厚さとしては、15〜400μmであるのが好ましく、120〜150μmであるのがより好ましい。粘着シートの厚さがあまり薄いと、粘着力が低下し、加工時に被着体を固定し難くなるので好ましくない。また、粘着シートの厚さがあまり大きいと、粘着シートの厚さにバラツキを生じるおそれがあるので好ましくない。
【0034】
粘着シートの両面には、離型処理を施したフィルム、すなわち離型フィルムを設けるのが好ましい。前記離型フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等からなるフィルム表面に、シリコーン等の離型剤を塗布したものが挙げられる。粘着シートの両面に離型フィルムを設けるには、例えば側鎖結晶性ポリマーを溶剤に加えた塗布液を、離型フィルム上に塗布して乾燥させて粘着シートを得、この粘着シートの表面に離型フィルムを配置すればよい。
【0035】
前記塗布液には、例えば架橋剤、タッキファイヤー、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を添加することができる。前記塗布は、一般的にナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター等により行うことができる。また、塗工厚みや塗布液の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーター等により行うこともできる。なお、粘着シートは、前記塗布の他、例えば押し出し成形やカレンダー加工によってシート状に成形することもできる。
【0036】
<易剥離性粘着テープ>
本発明にかかる易剥離性粘着テープ(以下、「粘着テープ」と言うことがある。)は、基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなる。該粘着剤層は、側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する。そして、前記側鎖結晶性ポリマーは、前記した粘着シートと同様に、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。したがって、本発明の粘着テープは、前記した本発明の粘着シートと同様の効果を奏するとともに、基材フィルムを含む分、粘着シートよりも剛性が高く、取り扱い性に優れるという効果を奏する。
【0037】
前記基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0038】
前記基材フィルムは、単層体または複層体からなるものであってもよく、厚さは、通常、25〜250μm程度である。基材フィルムの表面には、粘着剤層に対する密着性を向上させるため、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等の表面処理を施すことができる。
【0039】
基材フィルムの片面に粘着剤層を設けるには、前記した側鎖結晶性ポリマーを溶剤に加えた塗布液を、基材フィルムの片面に塗布して乾燥させればよい。粘着剤層の厚さはとしては、5〜60μmであるのが好ましく、10〜60μmであるのがより好ましく、10〜40μmであるのがさらに好ましい。
【0040】
一方、前記粘着テープは、基材フィルムの他面にも粘着剤層を設けて両面粘着テープの形態で使用することもできる。他面の粘着剤層としては、特に限定されるものではなく、例えば片面の粘着剤層と同様に、前記側鎖結晶性ポリマーを含有する粘着剤層を用いることもできる。この場合、片面の粘着剤層と他面の粘着剤層とは、その組成や厚さが互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。その他の構成は、前記した粘着シートと同様である。
【0041】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
【0042】
合成例に使用した反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物は、次の通りである。
・反応性ポリシロキサン化合物:前記一般式(Ia)で表される信越化学工業(株)製の「X−22−174DX」を用いた。
・反応性フッ素化合物(A):前記式(IIa)で表される大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート3F」を用いた。
・反応性フッ素化合物(B):前記式(IIb)で表される大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート3FM」を用いた。
【0043】
(合成例1)
ベヘニルアクリレート(日油社製)を50部、メチルアクリレート(日本触媒社製)を40部、反応性ポリシロキサン化合物を5部、アクリル酸を5部およびパーブチルND(日油社製)を0.3部の割合で、それぞれ酢酸エチル230部に加えて混合し、55℃で4時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体である側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は650,000、融点は56℃であった。
【0044】
(合成例2)
ベヘニルアクリレート(日油社製)を45部、メチルアクリレート(日本触媒社製)を45部、反応性フッ素化合物(A)を5部、アクリル酸を5部およびパーブチルND(日油社製)を0.3部の割合で、それぞれ酢酸エチル230部に加えて混合し、55℃で4時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体である側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は630,000、融点は55℃であった。
【0045】
(合成例3)
反応性フッ素化合物(A)5部に代えて、反応性フッ素化合物(B)を5部にした以外は、前記合成例2と同様にしてモノマーを重合させた。得られた共重合体である側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は610,000、融点は55℃であった。
【0046】
(比較合成例1)
ベヘニルアクリレート(日油社製)を45部、メチルアクリレート(日本触媒社製)を50部、アクリル酸を5部およびパーブチルND(日油社製)を0.3部の割合で、それぞれ酢酸エチル230部に加えて混合し、55℃で4時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体である側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は640,000、融点は56℃であった。
【0047】
前記合成例1〜3および比較合成例1の各共重合体を表1に示す。なお、前記重量平均分子量は、共重合体をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。前記融点は、DSCを用いて10℃/分の測定条件で測定した値である。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例1〜3および比較例1]
<粘着テープの作製>
まず、前記合成例で得られた各共重合体を、酢酸エチルを用いて固形分が30%になるよう調整して各共重合体溶液を得た。ついで、前記共重合体溶液100部に対して固形分換算で多官能アジリジン系架橋剤(日本触媒社製の「PZ−33」)を0.8部添加して得た粘着剤溶液を、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布して乾燥させ、厚さ40μmの粘着剤層が形成された粘着テープを得た。
【0050】
<評価>
得られた粘着テープについて、180°剥離強度を評価した。評価方法を以下に示すとともに、その結果を表2に示す。
【0051】
(180°剥離強度)
得られた粘着テープについて、80℃および23℃の各雰囲気温度におけるガラス基板に対する180°剥離強度をJIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、以下の条件で粘着テープをガラス基板に貼着した後、ロードセルを用いて300mm/分の速度で180°剥離した(n=2)。
【0052】
(80℃)
80℃の雰囲気温度で粘着テープをガラス基板に貼着して20分間静置した後、180°剥離した。
(23℃)
80℃の雰囲気温度で粘着テープをガラス基板に貼着し、雰囲気温度を180℃に上げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、雰囲気温度を23℃に下げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、180°剥離した。
【0053】
また、各雰囲気温度における破壊状態を目視にて評価した。表2中、「界面破壊」は、粘着剤層とガラス基板との間で剥離したことを示す。「スティックスリップ」は、粘着テープをガラス基板から剥離する際に、断続的に剥離が進行したことを示す。スティックスリップが発生すると、被着体にかかる負荷が局所的に大きくなるため、被着体を破損しやすい。
【0054】
前記ガラス基板としては、厚さ0.7mm、250mm×140mmの形状を有する日本電気硝子社製の無アルカリガラス「AO−10G」を24時間かけてアルカリ洗浄したものを用いた。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から明らかなように、実施例1〜3は、80℃の180°剥離強度において、比較例1よりも高い値を示しており、被着体の固定力に優れているのがわかる。また、実施例1〜3は、側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度である23℃の180°剥離強度において、比較例1よりも粘着力が低下しているとともに、破壊状態にも優れているのがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する粘着シートであって、
前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着シート。
【請求項2】
前記反応性ポリシロキサン化合物が、下記一般式(I)で表される変性ポリジメチルシロキサン化合物である請求項1記載の易剥離性粘着シート。
【化5】

[式中、R1はアルキル基を示す。R2は基:CH2=CHCOOR3−またはCH2=C(CH3)COOR3−(式中、R3はアルキレン基を示す。)を示す。nは5〜200の整数を示す。]
【請求項3】
前記反応性フッ素化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1または2記載の易剥離性粘着シート。
【化6】

[式中、R4は基:CH2=CHCOOR5−またはCH2=C(CH3)COOR5−(式中、R5はアルキレン基を示す。)を示す。]
【請求項4】
貼着した被着体を、100〜220℃の温度に曝した後、前記融点未満の温度で取り外す請求項1〜3のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
【請求項5】
基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなり、
該粘着剤層は、側鎖結晶性ポリマーを含有し、かつ該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下し、
前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性ポリシロキサン化合物および反応性フッ素化合物から選ばれる少なくとも1種と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着テープ。

【公開番号】特開2011−219617(P2011−219617A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90092(P2010−90092)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】