説明

映像信号処理装置及びその制御方法及びテレビジョン信号受信装置

【課題】シャープネス処理及びスムージング処理の動作が入力映像信号の周波数成分に応じて適応的な動作を得るようにし、適切なスムージング処理を実行できるようにする。
【解決手段】シャープネスブロック120aが入力映像信号の高域周波数成分を第1のパラメータに応じて強調し、スムージングブロック120bが映像信号のプレーン領域の階調差を第2のパラメータに応じて低減する。周波数状態判定ブロック113aは入力映像信号の周波数状態を判定する。予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分がこれより高域側の周波数成分より少ない第1のケースと、多い第2のケースの判定結果を得る。補正パラメータ出力ブロック113bは前記判定結果が第2のケースの場合は、補正パラメータを生成して、第1のケースのときよりもシャープネスブロック120aのシャープネス処理を強化し、かつスムージングブロック120bのスムージング処理を強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像信号処理装置及びその制御方法及びテレビジョン信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、デジタル映像信号の記録・再生装置、及びデジタル映像信号の送信・受信装置において、デジタル映像信号の圧縮符号化・復号処理が行われる。デジタル映像信号の圧縮符号化・復号方式として、例えばMPEG (Moving Picture Experts Group)2方式が知られている。
【0003】
MPEG2方式で圧縮符号化されたデジタル映像信号を復号した場合、ブロックノイズが生じることが知られている。このブロックノイズは、画像のプレーンな領域で輝度誤差として目立つ。
【0004】
このようなノイズを低減するため、映像信号に対してスムージング処理を行う画像処理及び画像処理方法の技術がある(例えば特許文献1)。
【0005】
一方では、高域成分のシャープネス処理を行い、大画面のディスプレイにおいても画像の鮮明差を強調できる技術が開発されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−160440号公報
【特許文献2】特開2007−324764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノイズ低減のためにスムージング処理を実行している特許文献1の技術では、常に一定のスムージング効果を得るための特性の設定である。このために絵柄の内容によってはスムージング処理が有効に機能しないこともある。
【0008】
また画像の鮮鋭化を図るために、また特許文献2のように高域成分に対するシャープネス処理を実行することと、特許文献1のようにノイズ低減のためにスムージング処理を実行することは、相反する部分を持つ。従来の技術であると個々の課題に対処しているために、組み立てられた映像信号処理装置が発揮できる総合的な機能を予測できず、ノイズが強調されるような場合もある。
【0009】
そこで本発明の一面では、スムージング処理の動作が入力デジタル映像信号の周波数成分に応じて適応的な動作を得るようにし、適切なスムージング処理を実行できるようにした映像信号処理装置及びその制御方法及びテレビジョン信号受信装置を提供することを目的とする。
【0010】
またこの発明の他の面では、高域成分に対するシャープネス処理が実行された場合も、これに連動して適切なスムージング処理を実行し、総合的に画像品質向上を得ることができる映像信号処理装置及びその制御方法及びテレビジョン信号受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、基本的には、入力デジタル映像信号のプレーン領域の階調差をパラメータに応じて低減するスムージングブロックと、前記入力デジタル映像信号の周波数状態を判定するとき、第1のケースとして予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分がこれより高域側の周波数成分より少ないケース、第2のケースとして前記予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分が前記高域側の周波数成分より多いケースの判定結果を得る周波数状態判定ブロックと、前記判定結果が、前記第2のケースの場合は、前記スムージングブロックのスムージング処理を前記第1のケースのときよりも強化する補正パラメータを出力する補正パラメータ出力ブロックを有する。
【0012】
またこの発明では、前記判定結果が、前記第2のケースの場合は、前記補正パラメータにより、前記スムージングブロックの前段にあるシャープネスブロックのシャープネス処理が前記第1のケースのときよりも強化されることも可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記した解決手段により、本発明によるとスムージング処理の動作が入力デジタル映像信号の周波数成分に応じて適応的な動作をし、不要なノイズが生じにくくなる。またシャープネスブロックの追加及びその適応的な動作により、高域成分に対するシャープネス処理が実行された場合も、これに連動して適切なスムージング処理を実行し、総合的に画像品質向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る映像信号処理装置の構成説明図である。
【図2】図1の映像信号処理装置の動作及びその機能を説明するために示した各部特性を示す説明図である。
【図3】図1の周波数状態判定ブロック113aの構成例を示す図である。
【図4】図3の演算部200の構成例を示す図である。
【図5】図1の階調スムージングブロック120bの基本的な構成例を示す図である。
【図6】図5の微小変化抽出部の構成例を示す図である。
【図7】図6の回路において微小量抽出部の入出力特性の例を示す図である。
【図8】本発明が適用されたデジタルテレビジョン放送受信装置の全体ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1はこの発明の一実施の形態であり、入力端子101にデジタル輝度信号Y、入力端子102に色差信号Cb又はPb、入力端子103に色差信号Cr又はPrが入力される。
【0016】
これらの輝度信号Y,色差信号Cb/Pb,Cr/Prは、鮮鋭化・階調スムージング処理部120へ入力される。この鮮鋭化・階調スムージング処理部120は、デジタル映像信号の鮮鋭化(シャープネス)処理を行うシャープネスブロック120aと、このシャープネスブロック120aの出力をスムージング処理する階調スムージングブロック120bを含む。
【0017】
また、入力端子101の輝度信号Yについては、周波数解析・補正パラメータ生成部113に入力される。周波数解析・補正パラメータ生成部113は、入力デジタル映像信号の周波数分布に応じた補正パラメータ115を取得する。そのために周波数解析・補正パラメータ生成部113は、入力デジタル映像信号のヒストグラムから周波数分布状態を判定する周波数状態判定ブロック113a, 補正パラメータ出力ブロック113bを含む。
【0018】
補正パラメータ出力ブロック113bから出力された補正パラメータは、補正部としての加算器116、117に入力される。
【0019】
加算器116は、補正パラメータをシャープネスイニシャルパラメータに加算し、シャープネスブロック120aに与える。これによりシャープネスブロック120aの高域成分強調の程度が増減制御される。一方、加算器117は、補正パラメータをスムージングイニシャルパラメータに加算し、階調スムージングブロック120bに与える。これにより階調スムージングブロック120bでは、スムージング処理の程度が強調若しくは緩和される。
【0020】
上記のようにシャープネスブロック120aでは、入力デジタル映像信号が高周波部分の少ないものだと判断された場合にシャープネスを上げて高画質化を図る。その際、副作用として低周波部分(映像のプレーンな領域)のノイズも悪化するので、階調スムージングブロック120bでは、補正パラメータをスムージングイニシャルパラメータに対するオフセットデータとして用い、その演算結果をスムージング処理の実際のスムージングパラメータとする。よって、階調スムージングブロック120bは、実際のスムージングパラメータを用いたスムージング処理を実行する。
【0021】
鮮鋭化・階調スムージング処理部120は、出力端子121,122,123に、最終的に得られた輝度信号Y',色差信号Cb'/Pb',Cr'/Pr'を出力する。
【0022】
上記した構成をとることで、入力周波数分布に適応して、シャープネス処理を連動させためにノイズが悪化したケースがあったとしても、スムージング処理も同時に強くかける事ができる。よって最終出力に対するノイズの悪化の影響を抑制することができる。
【0023】
さらに説明を追加する。シャープネスブロック120aは、入力デジタル映像信号のヒストグラムデータを取得して入力信号の周波数分布に応じた高域強調処理を施している。
【0024】
ここで、階調スムージングブロック120bは、映像信号のプレーンな領域に対するスムージング処理を行うものであり、これが階調の劣化による縞やブロックノイズに効果がある事がわかっている。ただし効果を強調するパラメータを選択し、固定化すると全体的に画像がぼけてしまうという不具合がある。
【0025】
そこで、本発明では、上記したように周波数分布の検出結果に連動した高域強調を行った場合に、同検出結果を用いて階調スムージングパラメータをも強めになるようにオフセットする事で、高域強調且つ映像信号のプレーンな部分でのノイズの悪化を抑制するというものである。
【0026】
なお上記の説明では、輝度信号Yの系統について説明したが色差信号(Cb(Pb)/Cr(Pr))に対しても同様の処理を行ってもよいことは勿論である。
【0027】
図2は、図1に示した装置の特徴的な動作を現す特性及び動作特性説明図である。図2の特性図211、212は、周波数状態判定ブロック113aにおいて周波数解析されて判定された入力デジタル映像信号の周波数分布の例1と例2を示している。
【0028】
特性図211(例1)は、解析の結果、入力デジタル映像信号の全体の周波数帯域のほぼ1/2より低い低域側の周波数成分が少なく、これより高域側の周波数成分が多いことを示している。また特性図212(例2)は、解析の結果、入力デジタル映像信号の全体の周波数帯域のほぼ1/2より低い低域側の周波数成分が多く、これより高域側の周波数成分が少ないことを示している。
【0029】
次に、動作特性図213は、シャープネスブロック120aの動作特性を示す。縦軸はパラメータにより設定されるシャープネス強調方向であり、下方向はソフト化、上方向はシャープ化の程度を示し、横軸は周波数分布であり、左側は高域成分が多くなる方向、右側は高域成分が少なくなる方向である。さらに
動作特性図214は、階調スムージングブロック120bの動作特性を示す。縦軸はパラメータにより設定されるスムージングの程度方向であり、下方向はスムーズ化、上方向はノイジー化の程度を示し、横軸は周波数分布であり、左側は高域成分が多くなる方向、右側は高域成分が少なくなる方向である。
【0030】
動作特性図213において、特性ライン213aは、シャープネスイニシャルパラメータによる特性であり、この特性ライン213aのみが利用された場合、周波数分布に係わらずシャープネスの程度がほぼ一定に保たれる。
【0031】
動作特性図214において、特性ライン214aは、スムージングイニシャルパラメータによる特性であり、この特性ライン214aのみが利用された場合、周波数分布に係わらずスムージングの程度がほぼ一定に保たれる。
【0032】
本発明によるとシャープネスブロック120aでは、特性ライン213bによるシャープネス処理となる。また諧調スムージングブロック120bでは、特性ライン214bによるスムージング処理となる。
【0033】
即ち、シャープネスブロック120aでは、高域成分が多い信号の場合は、シャープネスデフォルトのままで、高域強調する必要はない。したがって、高域成分が多い信号が入力したときのパラメータは、シャープネスイニシャルパラメータが維持されている。しかし、高域成分が少ない信号が入力しているときは、シャープネス処理の程度を強調し、高画質化を図る(特性ライン213b参照)。この場合のパラメータは、シャープネスイニシャルパラメータに対して補正パラメータが加算され、シャープネスが強調される。
【0034】
しかしシャープネスが強調された結果、本来低域成分であるところに潜んでいたブロックノイズが悪化したり、低域成分のS/Nが悪化する傾向となる。
【0035】
そこで、諧調スムージングブロック120bでは、特性ライン214bを採用している。即ち、高域成分が多い信号の場合は、シャープネス強化処理は行っていないので、低域のノイズも悪化していないとみることができる。したがって、高域成分が多い信号が入力しているときはスムージングイニシャルパラメータが維持される。しかし、高域成分が少ない信号が入力しているときは、上記のブロックノイズの悪化、低域成分のS/Nの悪化を低減するために、スムージングイニシャルパラメータに対して補正パラメータが加算され、スムージング処理が強化される。
【0036】
ここで、特性ライン213bの変化点に対して閾値1と2が設定されている。また特性ライン214bの変化点に対しても閾値1と2が設定されている。
【0037】
これは、高周波成分の多い・少ないの状態判定の遷移点において出力映像が急峻に変化する事を防ぐため、制御データとしてのパラメータのオフセット加工には閾値1、閾値2のように複数の閾値を設け、2点以上の間で画質を緩やかに変化させるためである。
【0038】
上記したように従来のスムージング処理方法は入力映像のいろいろな条件に対してダイナミックな制御を持っておらず、どのようなシーンに対しても常に一定の効果が得られるものであった。しかし、シーンの条件によっては異なるパラメータを設定する事で、より効果的なスムージング処理を行う事ができる。
【0039】
そこで本発明では、上記したように周波数分布の検出結果に連動して画質設定を上げる機能を使った場合に、同時に階調クリエーションパラメータを強めにオフセットする事でノイズの発生を抑制する事ができる。つまり入力デジタル映像信号に対して、特に高周波が少なくシャープネスを連動させて持ち上げている時も、同時にスムージングを強くかけることでブロックノイズの発生を抑制できる。
【0040】
この発明は上記の実施例に限定されるものではない。図3は、周波数状態判定ブロック113aの構成例を示している。通過周波数帯が異なる複数の帯域フィルタ104,105,106,107,108に輝度信号Yが入力され、周波数分解される。そして各輝度信号成分は演算部200に入力され、各帯域の信号に対して重み付けが行われ、周波数状態判定データとして出力される。この周波数状態判定データが補正パラメータ出力ブロック113bに入力され、補正パラメータに変換される。
【0041】
図4には、上記演算部200の構成例を示している。周波数分解された各帯域の信号は、係数器201,202,203,204,205でそれぞれ重み付けされる。重み付けは、低域成分と高域成分の割合を比較するとき、割合が判定しやすくなる様に行われる。図の例であると、係数器201,202,203,204の出力が加算器211にて加算され、係数器205の出力が加算器212に入力され、加算器211と212の出力が比較器213で比較される構成である。ここで、係数器201,202,203,204,205における重み付け値を調整することにより、加算器211の出力と加算器212の出力の大小関係の判定基準を変更することができる。この判定基準は、設計段階において各種のデジタル映像信号が信号処理されるとき、設計者が取得する例えば統計的なデータに基づいて設定される。したがって、重み付け値を調整する調整ブロックが存在してもよく、或いは、加算器211と212に取り込まれるフィルタ出力が変更できるように切り替えブロックが設けられていてもよい。
【0042】
また加算器211と212の出力は、比較器213、減算器214に入力される。減算器214では差分値が取られる。この差分値は、周波数分布状態の変化量を示す。この変化量データは、図2で説明した閾値1と閾値2の間の補正パラメータを生成するために有効である。また比較器213から出力される状態判定データは、図2で説明した特性図1または特性図2の状態を判定している。
【0043】
状態判定データと変化量データは、補正パラメータ出力ブロック113bに入力される。補正パラメータ出力ブロック113bは、状態判定データと変化量データに基づいて、補正パラメータを出力するルックアップテーブルを有した例えばメモリあるいは演算回路で構成されている。
【0044】
シャープネスブロックは、例えば入力デジタル映像信号を高域成分と低域成分に分離し、高域成分をパラメータに応じて強調できるように構成されている。そして強調した高域成分と先に分離した低域成分とを合成するブロックである。高域成分はデジタル微分回路で抽出され、低域成分はデジタルフィルタ回路で抽出される。
【0045】
次に図5−図7を参照して、階調スムージングブロック120bの基本的な構成例及び動作例について説明する。図5において、入力輝度信号Yは、垂直方向処理部701で垂直方向の階調差をスムージング処理され、次に、水平方向処理部801で水平方向の階調差をスムージング処理される。
【0046】
垂直方向処理部701は、例えば8ライン分の遅延回路710と、微小変化抽出部711、712、713、714と、微小変化抽出部711−714の出力を丸め込む平均化部715を有する。水平方向処理部801は、例えば8画素分の遅延回路810と、微小変化抽出部811、812、813、814と、微小変化抽出部811−814の出力を丸め込む平均化部815を有する。
【0047】
垂直方向処理部701の平均化部715から出力された垂直修正データVEは、減算器716に入力される。減算器716は、中心データA0から修正データVEを減算し、垂直方向へスムーズ化された出力輝度信号Y1を得る。この輝度信号Y1は、水平方向処理部801に入力されて水平方向の修正データHEとして、減算器816に供給される。減算器816は、中心データB0から水平方向HEを減算し出力輝度信号Y2を得る。
【0048】
垂直方向処理部701において、微小変化抽出部711には、中心データA0と、この中心データA0からプラスマイナス方向へ4ライン分はなれた位置のデータA+4と、データA−4とが入力されている。微小変化抽出部712は基本的には、中心データA0とデータA+4との差、中心データA0とデータA−4と差を検出して、階調に画素間の差があるかどうかを判定し、少ない方の差分を取り出している。微小変化抽出部712には、中心データA0と、この中心データA0からプラスマイナス方向へ3ライン分はなれた位置のデータA+3と、データA−3とが入力されている。微小変化抽出部713には、中心データA0と、この中心データA0からプラスマイナス方向へ2ライン分はなれた位置のデータA+2と、データA−2とが入力されている。微小変化抽出部714には、中心データA0と、この中心データA0からプラスマイナス方向へ1ライン分はなれた位置のデータA+1と、データA−1とが入力されている。各微小変化抽出部712−714もそれぞれ基本的には、中心データA0と一方のデータとの差、中心データA0と他方のデータと差を検出して、階調に画素間の差があるかどうかを判定し、少ない方の差分を取り出している。
【0049】
各微小変化抽出部711−714の出力は、平均化部715で加算され、その平均値が先の修正データVEとして出力される。
【0050】
水平方向処理部801において、微小変化抽出部811には、中心データB0と、この中心データB0からプラスマイナス方向へ4画素分はなれた位置のデータB+4と、データB−4とが入力されている。微小変化抽出部812は基本的には、中心データB0とデータB+4との差、中心データB0とデータB−4と差を検出して、階調に画素間の差があるかどうかを判定し、少ない方の差分を取り出している。微小変化抽出部812には、中心データB0と、この中心データB0からプラスマイナス方向へ3画素分はなれた位置のデータB+3と、データB−3とが入力されている。微小変化抽出部813には、中心データB0と、この中心データB0からプラスマイナス方向へ2画素分はなれた位置のデータB+2と、データB−2とが入力されている。微小変化抽出部814には、中心データB0と、この中心データB0からプラスマイナス方向へ1画素分はなれた位置のデータB+1と、データB−1とが入力されている。各微小変化抽出部812−814もそれぞれ基本的には、中心データB0と一方のデータとの差、中心データB0と他方のデータと差を検出して、階調に画素間の差があるかどうかを判定し、少ない方の差分を取り出している。
【0051】
各各微小変化抽出部811−814の出力は、平均化部815で加算され、その平均値が先の修正データHEとして出力される。
【0052】
上記の処理は8×8画素のブロック単位で、階調の変化を検出し、階調変化があった場合は、その変化が目立たないようにスムージング処理していることに相当する。つまりブロックノイズを低減している。
【0053】
ここで微小変化抽出部にはパラメータが与えられる。図6には1つの微小変化抽出部の構成例を代表として示している。この微小変化抽出部には、中心データA0と、この中心データA0からプラスマイナス方向へI(ライン又は画素)分はなれた位置のデータA+Iと、データA−Iとが入力されている。Iは1乃至4のいずれかである。データA0とA-Iの差分は、減算器901で計算され、絶対値回路904で絶対値に変換されセレクタ907に入力される。またデータA0とA+Iの差分は、減算器902で計算され、絶対値回路905で絶対値に変換されセレクタ907に入力される。またデータA0とA+Iの差分は、減算器902で計算され、絶対値回路905で絶対値に変換されセレクタ907に入力される。セレクタ907は、いずれか小さいほうを選択し、微少量抽出部908に供給する。
【0054】
またデータA-IとA+Iの差分は、減算器903で計算され、絶対値回路906で絶対値に変換され、その絶対値は、微少量抽出部909に供給されている。データA-IとA+Iの差分は、画素のレベル変化が右肩上がりか、左方上がりか、または変化無しを示すことになる。
【0055】
上記の検出形態としては、次のようなパターンが考えられる
パターン1・・・A-I<A0、A0<A+I、A-I<A+I(右肩上がり)
パターン2・・・A-I>A0、A0>A+I、A-I>A+I(右肩下がり)
パターン3・・・A-I<A0、A0>A+I、A-I=A+I(三角形)
パターン4・・・A-I>A0、A0<A+I、A-I=A+I(逆三角形型)
微少量抽出部908,909の入力出力特性は、先の加算器110からのパラメータで制御される。微少量抽出部908,909の出力は最小値検出部911に入力されて、小さいほうが選択される。選択されたデータは符号再現部912に入力されて符号が再現され、修正データとして採用される。
【0056】
ここで微少量抽出部908、909の入力Viと出力Voの関係は、例えば図7(A)の如く初期状態が設定されている。まず入力Viの値がゼロから増加するに従いV1になるまでは出力Voが一定の割合で増加する。入力Viの値がV1からV2までは、出力Voは一定値Vout1に維持される。そして、入力Viの値がV2を超えると、出力Voは減少する方向へ変化する。
【0057】
これにより、入力Viの値がV1になるまでスムージング処理効果が次第に強化され、V1からV2まではスムージング処理効果が維持(変化せず)、V2以上になるとスムージング処理効果は弱められる。入力Viの値がV1からV2まではVoutを一定としたのは、スムージング効果が頻繁に変化するとノイズを生じやすいからである。またV2以上になるとスムージング処理効果は弱める特性としたのは、本来目的とする階調スムージング対象の絵柄と違う可能性が高いからである。
【0058】
ここで、加算器110において、イニシャルパラメータに対して、図1で説明した補正パラメータが加算されると、微少量抽出部908、909の入力Viと出力Voの関係は例えば図7(B)又は図7(C)に示すような変換特性となる。この特性であると、入力Viに対する出力Voの変化する感度が高くなることである。このために、図1に示した階調スムージング処理回路112は、フェードイン・フェードアウト時において感度が上がり、プレーン領域における階調の段差部を軽減すように動作する。
【0059】
図8は、本発明の映像信号処理装置が組み込まれたテレビジョン信号受信装置の信号処理系を概略的に示している。
【0060】
映像信号処理装置の主な構成は、信号処理部34内に組み込まれ制御部35により制御されている。デジタルテレビジョン放送受信用のアンテナ22で受信したデジタルテレビジョン放送信号は、入力端子23を介してチューナ24に供給される。このチューナ24は、入力されたデジタルテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。そして、このチューナ24から出力された信号は、デコーダ25に供給されて、例えばMPEGデコーダ41を含めて、MPEG(moving picture experts group)2デコード処理が施される。
【0061】
またチューナ24の出力は、直接セレクタ26に供給されている。この信号から映像・音声情報などが分離され、この映像・音声情報が制御部35を介して記録装置(図示せず)において記録されることも可能である。
【0062】
さらに、アナログテレビジョン放送受信用のアンテナ27で受信したアナログテレビジョン放送信号は、入力端子28を介してチューナ29に供給される。このチューナ29は、入力されたアナログテレビジョン放送信号から所望のチャンネルの信号を選局し復調している。そして、このチューナ29から出力された信号は、A/D(analog/digital)変換部30によりデジタル化された後、上記セレクタ26に出力される。
【0063】
また、アナログ信号用の入力端子31に供給されたアナログの映像及び音声信号は、A/D変換部32に供給されてデジタル化された後、上記セレクタ26に出力される。さらに、デジタル信号用の入力端子33に供給されたデジタルの映像及び音声信号は、そのまま上記セレクタ26に供給される。
【0064】
A/D変換された信号が、記録装置にて記録される場合は、セレクタ26に付随しているMPEGエンコーダ42により、所定のフォーマット例えばMPEG(moving picture experts group)2方式による圧縮処理が施された後、記録装置にて記録される。
【0065】
上記セレクタ26は、4箇所の入力デジタル映像及び音声信号から1つを選択して、信号処理部34に供給している。この信号処理部34は、入力されたデジタル映像信号に所定の信号処理を施して上記映像表示器14での映像表示に供させている。この映像表示部14としては、例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等でなるフラットパネルディスプレイが採用される。また、信号処理部34は、入力されたデジタル音声信号に所定の信号処理を施し、アナログ化してスピーカ15に出力することにより、音声再生を行なっている。
【0066】
ここで、このテレビジョン信号受信装置は、上記した各種の受信動作を含む種々の動作を制御部35によって統括的に制御されている。この制御部35は、CPU(central processing unit)等を内蔵したマイクロプロセッサであり、操作部16や操作子(図示せず)からの操作情報、または、上記リモートコントローラ17から送信された操作情報を受光部18で受けて処理することにより、その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
【0067】
この場合、制御部35は、メモリ36を使用している。このメモリ36は、主として、そのCPUが実行する制御プログラムを格納したROM(read only memory)と、該CPUに作業エリアを提供するためのRAM(random access memory)と、各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを備えている。
【0068】
なお、平行動作する複数の信号の処理系統において、同期が得られるように時間調整用のバッファが内蔵されていることは当然である。また上記した説明では、輝度信号にする処理系統を示したが、色差信号の系統、色信号の系統に階調スムージングブロックをそれぞれ設けてもよいことは勿論である。また、微小変化検出範囲として8×8画素のブロックを説明したが、これに限らず4×4画素のブロック、16×16画素のブロックなど各種変更設計してもよく、また各種のブロックの処理回路を組み合わせもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したようにこの発明は、映像信号処理装置、テレビジョン信号受信装置、記録再生装置及びセットトップボックスなどに適用されて有用である。
【符号の説明】
【0070】
113・・・周波数解析・補正パラメータ生成部、113a・・・周波数状態判定ブロック、113b・・・補正パラメータ出力ブロック、116、117・・・加算器、120・・・鮮鋭化・階調スムージング処理部、120a・・・シャープネスブロック、120b・・・階調スムージングブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デジタル映像信号のプレーン領域の階調差をパラメータに応じて低減するスムージングブロックと、
前記入力デジタル映像信号の周波数状態を判定するとき、第1のケースとして予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分がこれより高域側の周波数成分より少ないケース、第2のケースとして前記予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分が前記高域側の周波数成分より多いケースの判定結果を得る周波数状態判定ブロックと、
前記判定結果が、前記第2のケースの場合は、前記スムージングブロックのスムージング処理を前記第1のケースのときよりも強化する補正パラメータを出力する補正パラメータ出力ブロックを有することを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
前記判定結果が、前記第2のケースの場合は、前記補正パラメータにより、前記スムージングブロックの前段にあるシャープネスブロックのシャープネス処理が前記第1のケースのときよりも強化されることを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項3】
前記判定結果が、前記第1のケースの場合は、シャープネスブロックのシャープネス処理、前記スムージングブロックのスムージング処理は、イニシャルパラメータにより実行されることを特徴とする請求項2記載の映像信号処理装置。
【請求項4】
前記周波数状態判定ブロックは、予め設定された周波数を高い方と低い方へ調整可能であることを特徴とする請求項1記載の映像信号処理装置。
【請求項5】
周波数状態判定ブロックは、前記周波数状態を判定するとき、前記入力デジタル映像信号を複数の異なる周波数帯域の周波数成分を抽出し、抽出した各周波数成分に重み付けして、判定することを特徴とする請求項4記載の映像信号処理装置。
【請求項6】
入力デジタル映像信号の高域周波数成分を第1のパラメータに応じて強調するシャープネスブロックと、このシャープネスブロックからの出力デジタル映像信号のプレーン領域の階調差を第2のパラメータに応じて低減するスムージングブロックとを制御する映像信号処理装置の制御方法において、
前記入力デジタル映像信号の周波数状態を判定するとき、第1のケースとして予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分がこれより高域側の周波数成分より少ないケース、第2のケースとして前記予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分が前記高域側の周波数成分より多いケースの判定結果を出力し、
前記判定結果が、前記第2のケースの場合は、前記第1第2のパラメータに対する補正パラメータを生成して、前記第1のケースのときよりも前記シャープネスブロックのシャープネス処理を強化し、かつ前記スムージングブロックのスムージング処理も強化することを徴とする映像信号処理装置の制御方法。
【請求項7】
放送信号を受信部で受信し、受信信号をデコーダしデジタル映像信号を出力するデコーダと、前記デジタル映像信号に所定の信号処理を施す信号処理装置と、前記信号処理装置で処理された映像信号を表示する表示部と、信号処理動作を統括する制御部とを有したテレビジョン信号受信装置において、
前記信号処理装置は、
入力デジタル映像信号の高域周波数成分を第1のパラメータに応じて強調するシャープネスブロックと、
前記シャープネスブロックからの出力デジタル映像信号のプレーン領域の階調差を第2のパラメータに応じて低減するスムージングブロックと、
前記入力デジタル映像信号の周波数状態を判定するとき、第1のケースとして予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分がこれより高域側の周波数成分より少ないケース、第2のケースとして前記予め設定された周波数より低い低域側の周波数成分が前記高域側の周波数成分より多いケースの判定結果を得る周波数状態判定ブロックと、
前記判定結果が、前記第2のケースの場合は、前記第1、第2のパラメータに対する補正パラメータを生成して、前記第1のケースのときよりも前記シャープネスブロックのシャープネス処理を強化し、かつ前記スムージングブロックのスムージング処理も強化する補正パラメータ出力ブロックを含むことを特徴とするテレビジョン信号受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−199993(P2010−199993A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42704(P2009−42704)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】