説明

暖房便座およびそれを用いたトイレ装置

【課題】省エネルギーでかつ快適に使用できる便座暖房を実現する。
【解決手段】上枠体24と下枠体27とで構成され、内部に空洞部28を有する便座22と、空洞部28に設けたランプヒーター30と、このランプヒーター30に対向して下枠体27側に設けた輻射反射板29と、ランプヒーター30に対向して下枠体27側に設けた輻射反射板29とを備え、前記ランプヒーター30のフィラメント34に発光部54と非発光部55を設けた構成とすることにより、短時間で着座部25を使用温度に均一に加熱するので、非常に省エネルギーで快適に使用しうる暖房便座を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輻射エネルギーを利用することにより短時間で便座を加熱することができる暖房便座およびそれを用いたトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の暖房便座では、図11に示すような暖房便座が考案されている。これは、内部の空洞部1に便座2の馬蹄形状に沿って設けたランプヒーター3からの輻射熱を着座部4にすばやく伝えて使用者が着座する面である採暖面をすばやく昇温させるという構成であった(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−210230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、実際の暖房便座は着座部4が三次元的な曲面形状をしており、便座の各部においてランプヒーター3と着座部4間の距離が異なる場合が多く、着座部4での輻射熱量が異なるため着座部4の温度分布に差が生じていた。
【0004】
上記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、便座の温度分布を均一にして快適に使用しうる暖房便座およびそれを用いたトイレ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の暖房便座は、上枠体と下枠体とで構成し、内部に空洞部を有する便座と、前記空洞部に設けた輻射型発熱体と、前記輻射型発熱体に対向して前記下枠体側に設けた輻射反射板とを備え、前記輻射型発熱体は石英ガラス管と前記石英ガラス管内部に封入されたフィラメントを有するランプヒーターであって、前記フィラメントに発光部と非発光部を設けた構成としたものである。
【0006】
これによって輻射型発熱体から発せられた輻射エネルギーを上枠体に供給することによって上枠体を極めて短時間で加熱するとともに発光部と非発光部を設けることによって上枠体での部分的な熱の集中を避け、上枠体の温度を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の暖房便座は、輻射エネルギーによって便座を使用開始までに極短時間で暖房でき、かつ均一に上枠体を加熱することができるので長期間快適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、暖房便座を上枠体と下枠体とで構成し、内部に空洞部を有する便座と、前記空洞部に設けた輻射型発熱体と、前記輻射型発熱体に対向して前記下枠体側に設けた輻射反射板とを備え、前記輻射型発熱体は石英ガラス管と前記石英ガラス管内部に封入されたフィラメントを有するランプヒーターであって、前記フィラメントに発光部と非発光部を設けた構成とすることにより、輻射型発熱体から発せられた輻射エネルギーを上枠体に供給することによって上枠体を極めて短時間で加熱できるとともに、発光部と非発光部によって上枠体での部分的な熱の集中を軽減し、上枠体の温度分布を均一にすることができる。
【0009】
第2の発明は、特に第1の発明の暖房便座において、輻射型発熱体と上枠体の上部に形成される着座部との距離に応じて発光部と非発光部の長さを変化させた構成とすることに
より、輻射型発熱体から上枠体までの距離が前記上枠体の場所によって変化しても上枠体での輻射熱の分布を均一化して上枠体の温度分布を均一化することができる。
【0010】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の暖房便座において、着座部の断面長さに応じてフィラメントの発光部と非発光部の長さを変化させた構成とすることにより、場所によって着座部の断面長さが変化しても着座部での輻射熱の分布を均一化して着座部の温度分布を均一化することができる。
【0011】
第4の発明は、特に第1から第3の発明のいずれか1つの発明の暖房便座において、フィラメントの発光部間の距離を輻射型発熱体と着座部の距離の略2倍以下とした構成とすることにより、着座部における発光部の直上部分と非発光部の直上部分での輻射熱を均一化することができ、着座部の温度分布を均一化することができる。
【0012】
第5の発明は、特に第1から第4の発明のいずれか1つの発明の暖房便座において、金属からなる着座部と、前記着座部の内面に設けた輻射吸収層とを有する構成とすることにより、金属製の便座において着座部での輻射熱の分布を均一化して着座部の温度分布を均一化することができる。
【0013】
第6の発明は、特に第1から第4の発明のいずれか1つの発明の暖房便座において、輻射透過性を有する材料からなる着座部と、前記着座部の外表面に設けた輻射吸収層とを有する構成とすることにより、輻射透過性の便座において着座部での輻射熱の分布を均一化して着座部の温度分布を均一化することができる。
【0014】
第7の発明は、特に請求項1〜6のいずれか1項記載の暖房便座を利用するトイレ装置であり、着座部をすばやく暖めるので、消費電力を大幅に削減するとともに、着座部を均一に加熱するので長期間快適に使用できるトイレ装置を得ることができる。
【0015】
本発明の目的は、第1の発明から第7の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における暖房便座の便座の要部を断面した概略構成図で、図2は同暖房便座を搭載したトイレ装置の斜視図で、図3は同暖房便座の便座の着座部を取り外して示した平面図で、図4は同暖房便座の分解斜視図、図5は同暖房便座の着座部の要部断面図である。
【0017】
図1から図5において、用便後の肛門およびビデを洗う温水洗浄機能付きの暖房便座は、トイレ装置の便器20の後端部に横長の本体21が取り付けられており、この本体21内には温水洗浄機能の一部が内装され、かつ便器20上に載せられた輪状の便座22および便蓋23が回動自在に設けられている。また、本体21の袖部にはトイレ室の人体の有無を検知する人体検知センサー26が内蔵されている。
【0018】
便座22は、図1に示すように合成樹脂製の下枠体27の上部に少なくともアルミニウムで形成された着座部25を含む上枠体24をシール材を介して固定結合して形成し、その内部には水滴等の浸入を阻止できる防滴シールされた空洞部28を有する構造となっている。なお、着座部25はアルミニウムに限ったものではなく、鉄、ステンレスや軽量金属であるマグネシウムなども利用可能であるが、着座部25を均一に加熱するという観点
からは、熱伝導率の高いアルミニウムが好適である。
【0019】
空洞部28の内部には、トイレ装置を使用する使用者が腰掛ける便座22の着座部25に対向して、アルミ板を鏡面仕上げした輻射反射板29(反射体)と、着座部25の両側において複数の輻射型発熱体である2本のランプヒーター30とが設けられている。輻射反射板29は、図1に示すように、その内外端部の全周に上方への折り曲げ部29aを有しており、その折り曲げ部29aによりランプヒーター30からの輻射エネルギーが偏向されるので、ランプヒーター30から離れている着座部25の外周縁部および内周縁部の輻射密度を上げるように作用し、着座部25への輻射熱分布の均一化を図っている。
【0020】
なお、輻射反射板29は、軽量にするためにアルミ板にしたが、ステンレス板やメッキ鋼板などを用いてもよい。ランプヒーター30の近傍には、ランプヒーター30と電気的に直列接続されたサーモスタット31が設けられ、万一の不安全事態に対して便座22の着座部25の温度過昇を防止するよう作用する。
【0021】
図5に、便座22を構成するアルミニウム製の着座部25の一部を拡大断面で示した。図5において、便座22の空洞部28側、すなわちランプヒーター30の輻射エネルギーが照射される内側表面はその輻射エネルギーをよく吸収しやすい黒色塗装した輻射吸収層40を形成し、外側すなわち着座する側は、防食効果のあるアルマイト層39およびその上に好みの外観効果のために塗装した表面層である表面化粧層41が形成してある。
【0022】
なお、アルマイト層39および塗装した表面化粧層41は、必ずしも両方を設ける必要はなく、アルマイト層39または塗装した表面化粧層41のどちらか一つだけでも、相当の耐薬品性等の防食効果と光沢や色合い等のデザイン性を付加することができる。ただし、アルマイト層39および塗装した表面化粧層41の両方を有することで、より高い防食効果とたとえば除菌材入りの塗料を用いることで除菌効果も付加することができる。
【0023】
また、輻射吸収層40の色について、各種色について確認した結果、黒色が最も吸熱効率が良く、着座部25の昇温速度を速くすることができるという結果が得られた。なお、最高速度にこだわらず、実用になればよいという観点であれば、灰色や赤色、青色などでも、昇温はできる。黒色についても、必ずしも塗装に限る必要は無く、印刷、転写、染色などの表面処理でもよい。
【0024】
プレコート鋼板も有用である。また、アルミの場合ベーマイト処理なども実用になる。また、図5の着座部25の外側表面に施した表面化粧層41は防食効果だけでなくアルミなどの金属便座であっても見た感じ冷たい感じを払拭でき、たとえば、真珠のようなパール塗装等によって、やわらかいイメージや高級なイメージを演出することができる。
【0025】
また、塗装の顔料中にアルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を含ませることにより、塗装面での熱伝導が阻害されること無く、均一に着座部の加熱が可能である。
【0026】
便座22の着座部25に金属しかもアルミニウムのプレス(絞り)加工品を用いたことにより、熱伝導率が約200W・mKと樹脂の約0.1〜1W・mKに較べて桁違いに高いため、ランプヒーター30の輻射エネルギーを受け輻射吸収層40が昇温されると同時に、すばやく着座部25の外側表面つまり表面化粧層41まで熱伝達することができる。
【0027】
しかも、熱伝導率の高いアルミニウムであるため、温度分布をより均一にする均熱効果が得られる。また、アルミニウムのプレス(絞り)加工により加工硬化により板厚を薄くしても必要な強度を確保することができる。たとえば、樹脂の場合は強度の面から3mm程度の肉厚が必要なのに対し、アルミ板の絞り加工品であれば半分の1.5mm以下で十
分である。薄くすればするほど、熱容量を少なくできるため、昇温に要する熱量および時間を少なくすることができる。実験の結果、強度と昇温時間の面から、アルミニウムの板厚は0.8〜1.2mmが好ましいという結論を得た。
【0028】
また便座22を構成する下枠体27には、その内面に輻射反射板29が取り付けられ、その輻射反射板29にランプヒーター30およびランプヒーター30と直列接続したサーモスタット31が取り付けられている。また、ランプヒーター30は、板バネ材で形成したランプヒーター固定具36により輻射反射板29に固定され、輻射反射板29は樹脂製の下枠体27のボス37にビスで固定されている。
【0029】
下枠体27の上部にはアルミ製の着座部25が取り付けられ、そのアルミの着座部25の温度を検知するために着座部25の内側表面に便座温度検知手段であるサーミスタ43が取り付けられている。また便座22は、その回動軸44に電極45が形成され、本体21の軸受け部(図示せず)とともに便座位置検知手段46を構成し、便座22が起立状態にあるか、着座して使用できる便器20上に略水平の使用位置にあるかを検出するようになっている。
【0030】
本体21には、室温検知手段としての室温サーミスタ47の検知信号を取り込んでランプヒーター30の温度制御を行い、かつ便座22のランプヒーター30に通電することにより昇温を開始した時点からの経過時間をカウントするタイマー部48を有するマイクロコンピュータを主体とする制御部49が設けられている。そして、制御部49は人の入室を検知する人体検知センサー26や着座検知手段38と便座位置検知手段46の信号を取り込んでランプヒーター30への通電の開始と停止の制御と、サーミスタ43、室温サーミスタ47からの信号を取り込んで採暖面である着座部25の温度が適温である所定の温度になるようランプヒーター30の温度制御が行えるようになっている。
【0031】
サーモスタット31は、図6に示すように、バイメタル50がランプヒーター30の輻射エネルギーを受光するように空洞部28内に露出させた構成である。また、バイメタル50の受光表面には輻射吸収材51として耐熱性の黒色塗料を塗布している。そして、サーモスタット31は輻射吸収材51により輻射型発熱体からバイメタル50に向けて輻射された熱を効率よく吸収し、より速やかにバイメタルの温度を上げるように構成している。また、サーモスタット31は、ランプヒーター30とバイメタル50との間の距離bより、ランプヒーター30の中心と便座22の上枠体24の内表面との間の距離aが大きくなるように設定されている。
【0032】
ランプヒーター30は、ガラス管33の内部にタングステンからなるフィラメント34の要所をサポート34bで支持して、ガラス管33の略中央に配置し、窒素とアルゴンなどの不活性ガス35に微量のハロゲンガスを封入して構成されており、フィラメント34の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント34の消耗を防止するよう作用している。
【0033】
この作用により熱容量の非常に小さいフィラメント34を熱源とすることができ、輻射エネルギーの極めて急峻な立ち上がりを行わせることができる。つまり、ランプヒーター30は、使用者がトイレ室に入室し、衣服を下ろし、お尻を便座22の着座部25に着座するまでの極めて短時間で便座22の着座部25を適温まで高速に昇温させることができる輻射型発熱体である。
【0034】
なお、ランプヒーター30は、要求される特性の度合いにより必ずしもハロゲンランプヒーターである必要はない。また、ガラス管33は3500nm以上の波長はほとんど吸収してしまうので、輻射エネルギーで効果的に着座面25を加熱するために、発光波長の
分光分布のピークが少なくとも3500nm以下であるランプヒーターを用いている。これを実現するために、ランプヒーター30のフィラメント34の色温度が800K以上となるように設定している。
【0035】
図7に石英ガラス管の光の透過率と、フィラメント34の分光密度指数の概略図を示す。左側縦軸に透過率、右側縦軸に分光密度指数、横軸は波長を示している。本実施の形態で用いる石英ガラス管の厚みは約1mmであり、その透過率を破線Aで示している。フィラメント34の色温度が2050Kの分光密度をB、1500KをC、800KをDに各曲線のピーク値を1として示している。ここに示すように、石英ガラス管は波長が約200nm〜3500nmである波長帯で80〜90%以上の光透過率をもつ。
【0036】
例えば、Dの色温度800Kの場合、3500nmをピーク波長とした発光分布を示し、それ以上の色温度、例えばB、Cに示す色温度であれば透過率が十分である波長帯にフィラメント34の分光密度帯が含まれるので、フィラメント34から発した輻射エネルギーが効率よく石英ガラス管を透過することになり、便座22を効率よく加熱することができる。
【0037】
一方、色温度が800K(図示せず)以下の場合は分光分布のピーク波長は3500nm以上となり、この領域では石英ガラス管の透過率が急激に減少するため、フィラメントから発した輻射エネルギーの多くは石英ガラス管に吸収されることになり、便座22を効率よく加熱することができない。
【0038】
実際の便座22は着座部25が三次元的な形状をしており、便座の各部においてランプヒーター30と着座部25間の距離が部位によって異なる場合が多い。ランプヒーター30からの輻射強度は距離の二乗に反比例するので距離が長くなれば輻射強度が弱くなり、結果的に着座部25の温度が低くなる。
【0039】
そこで、着座部25の全体の温度の均一化を図るために、図8に示すようにフィラメント34に発光部54と非発光部55を交互に連続して設け、ランプヒーター30と着座部25の距離aに応じて、例えば距離aが長くなるにしたがい発光部54の長さcを長く、非発光部55の長さdを短く、逆に距離aが短くなるにしたがい発光部54の長さcを短く、非発光部55の長さdを長くして変化させている。
【0040】
また、着座部25は各部においてその断面長さが異なる(すなわち、ランプヒーターの単位長さに対して加熱すべき面積が異なる)場合にも、ランプヒーター30と着座部25の距離aに応じて発光部54の長さcと非発光部55の長さdを、上記した形態と同様に変化させることで着座部25の温度の均一化を測ることができる。さらにフィラメント34の発光部間の距離eを輻射型発熱体と着座部の距離の略2倍以下とした構成としている。
【0041】
上記実施の形態において、使用者がトイレに入室した場合、人体検知センサー26が入室を検知し、その信号が制御部49に送られる。このとき、便座位置検知手段46の信号により便座22が略水平の使用位置にあるのを確認すると、制御部49はランプヒーター30に通電を開始する。この初期通電により投入エネルギーは瞬時に輻射エネルギーに変換され、フィラメント34からガラス管33および輻射反射板29を経て便座22の着座部25の方向に放射される。
【0042】
さらに、ランプヒーター30の輻射エネルギーは輻射吸収層40および着座部25を昇温する。このように本実施の形態においては、使用者がトイレに入室すると、ランプヒーター30に通電し、便座22の着座部25の採暖面をほぼ瞬時に加温することができ、か
つ制御部49の故障などによる万一の不安全事態に対しても、ランプヒーター30の輻射エネルギーをバイメタル50が受光する高速応答のサーモスタット31によりランプヒーター30の通電を遮断できるので、従来一般的に使用されている暖房便座のように常時通電保温して放熱ロスが大きいものと違って、放熱ロスがほとんどなく極めて省エネ型でかつ安全な暖房便座を実現する。
【0043】
なお、図3および図4で示したヒンジカバー53の部分は、従来から一般的に使用されている樹脂の暖房便座(図示せず)の場合は着座部25と一体に成形されている。上記実施の形態においては、図3および図4で示す着座部25は金属(アルミ材)でヒンジカバー54はプロピレン樹脂で成形してある。なぜならば、ランプヒーター30で加熱する箇所を必要最小限にして、加熱すべき熱容量を小さくすることにより、より少ない電力でさらに速く瞬間的に着座部25を昇温することができるようになり、さらに省電力にできる。このように便座22の上側の部材を熱伝導率の異なる複数の部材で構成することで、暖める必要がない部分に余分に熱を奪われることを抑制でき、熱のロスを少なくすることができる。
【0044】
以上のように、便座22の上側構成部材である着座部25およびヒンジカバー54と下枠体27で構成され、内部に空洞部28を有する便座22と、空洞部28に設けた輻射型発熱体29と、その輻射型発熱体29に対向して下枠体27側に設けた反射体28とを備え、少なくとも上枠体24の着座部25は金属(アルミ材)からなり、上枠体24の着座部25内面に輻射吸収層40を設けた構成により、より少ない電力でさらに速く瞬間的に着座部25を昇温することができる省エネの瞬間暖房便座を実現することができる。
【0045】
また、制御部49は、通電開始時のサーミスタ43および室温サーミスタ47の信号をもとに、両者の温度差やそれぞれの温度から演算を行い、あらかじめ設定・記憶されている初期通電の通電制限時間の最適値を選択し、タイマー部48でカウントしている経過時間が通電制限時間に到達すると通電量を低減または零にし、その後サーミスタ43の信号をもとに便座22の着座部25が適温になるよう通電量を制御する。
【0046】
これにより、サーミスタ43は実際に使用者が触れる着座部25付近の温度を検知し、制御部49は精度良く適温まで昇温・維持するので、便座22の使用が快適であり、さらにサーミスタ43および室温サーミスタ47の信号をもとに負荷量に合わせて輻射エネルギーの投入量を制御するので、より精度良く安全に適温まで加熱することができる。
【0047】
また、初期通電時間制御を優先的に行うことで通電制限時間後は通電量を低減し昇温速度を減ずるので、たとえ便座温度検知手段の応答速度が遅くても安全に便座を加温することができ、また安価な便座温度検知手段を使用することもできる。通常、一般的なヒーターでは、印加電圧を低減させて温度を制御するものが多いが、ランプヒーター30はフィラメント34の発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメント34の消耗を防止しているため、ガラス管の温度が200℃以下になるとハロゲンサイクルが不調となる。従って、ランプヒーター30で着座部25を適温にするためには、ハロゲンサイクルが有効な出力範囲で通電サイクルを変化させて行う。
【0048】
一方、便座22が起立状態にあったり、男子使用者がトイレ室に入室後小用のために便座22を起立状態に立てた時は、便座位置検知手段46の信号をもとに制御部49がランプヒーター30への通電を停止するか、通電量を絞る。これにより、無駄に便座22を加温することを低減でき、さらに省エネを図ることができるとともに、通電状態で、かつフィラメント34の張力方向である長さ方向に重力がかかって断線に至る寿命を短くすることを防止できる。
【0049】
次に、使用者が排便のために着座すると、着座検知手段38の信号によりランプヒーター30への通電量を零または便座温度が過昇しないところまで、通電量を変化させて制御する。これにより、使用中に便座温度が過昇することなく、火傷等が生じる心配なく安全に使用できる。
【0050】
特に、暖房便座はランプヒーターを内蔵した便座に直接皮膚を接触させて着座するため、安全に対しては十分な配慮が必要である。通常の使用状態では、上述のように安全に快適に使用できるが、万一何らかの原因でマイコン(図示せず)等、制御部49に不具合が生じ、ランプヒーター30への通電が継続して行われた場合などにも安全に動作することが必要である。
【0051】
サーモスタットは通常、バイメタルが金属製のキャップに内包されている構成のものが使用される。この構成ではまずキャップが加熱され、バイメタルの加熱はキャップからの輻射によって行われるため、バイメタルが所定の温度に達するまで時間を要するので、短時間で便座22の温度が変化するような場合には回路の遮断に遅れが生じる場合があった。
【0052】
本実施の形態では、それを解決するために、サーモスタット31はバイメタル50を露出し、バイメタル50の表面に輻射吸収材51として耐熱性の黒色塗料を塗布している。従って、バイメタル50がランプヒーター30の輻射エネルギーを直接受光するので、ランプヒーター30からの輻射エネルギーで直接、バイメタル50が加熱されるのに加えて、バイメタル50表面に輻射吸収材51として耐熱性の黒色塗料を施しているので、ランプヒーター30からバイメタル50へ到達する輻射熱の殆どがバイメタル50に吸収され便座22の温度の急激な変動にも迅速に追従するので、温度過昇の際にはランプヒーター30の通電を遮断することができる。
【0053】
また、サーモスタット31はバイメタル50がランプヒーター30の輻射エネルギーを受光するようにキャップ52は透明ガラスにしてある。なお、透明ガラスのキャップ52を設けたことにより、サーモスタット31の内部に水滴やほこりが侵入しない防滴あるいは防水タイプにすることができ、万が一、空洞部28が浸水した場合でもサーモスタット31の通電部への浸水を防止でき、電気絶縁を維持できるため感電を防止することができる。
【0054】
さらに、サーモスタット31はランプヒーター30とサーモスタット31間の距離bよりランプヒーター30と便座22表面間の距離aが大きくなるような位置に設定している。これにより、便座22表面温度の上昇より早く、バイメタル50の温度を上昇させるので、異常時に便座22表面温度が過昇して火傷等の危険な状態にならないうちにランプヒーター30の通電回路を遮断することができ安全にできる。
【0055】
また本実施の形態では、図4に示すように前側のランプヒーター30および後ろ側のランプヒーター30bは便座22の前後に配置して2本設置し、各々のランプヒーター30、30bに対向してサーモスタット31、31b、32、32bを設け、各々のサーモスタットは電気的に直列に接続している。
【0056】
なお、サーモスタット31、31bは、やや低い温度で遮断作動する復帰型、サーモスタット32、32bは復帰型のサーモスタット31、31bより高い温度で遮断作動する非復帰型にすることによって、より高い多重安全性および長期間、安全かつ快適に使用することができる。
【0057】
すなわち、初期通電時間の第一段階は制御部49のタイマー49およびサーミスタ43による温度コントロール、第二段階はサーモスタット31のオフによるランプヒーター30の通電回路の遮断(ただし、温度低下により回路は復帰)、第三段階は非復帰型のサーモスタット32(または温度ヒューズ)によるランプヒーター30の通電回路の遮断(回路の復帰は不能)と、多段階の安全機能を設定することにより長期間、安全かつ快適に使用することができる。また、復帰型のサーモスタット31を設けることにより通常使用時に非復帰型サーモスタット32が作動して便座の暖房機能が使用できなくなる危険性も回避できる。
【0058】
また、ランプヒーター30、30bは複数本に分割しているので、図11に示す従来の輪状の便座2において、輪状の1本のランプヒーター4を便座2の空洞部28の略全体に配置したことにより、便座2の撓みとランプヒーター4の設置誤差等により直接、ランプヒーター30、30bに応力がかかる問題が解消され、便座22の撓み等によるランプヒーター30、30bの破損の危険を解消することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、便座の各部においてランプヒーター30と着座部25間の距離aが異なったり、着座部25の各部においてその断面長さが異なった場合に、発光部54の長さcと非発光部55の長さdを変化させ、さらにフィラメント34の発光部間の距離eを輻射型発熱体と着座部の距離の略2倍以下とすることによって着座部25の温度の均一化を図ることができる。例えば、発光部の54中央から発せられる輻射エネルギーを考えると、2a=eの場合、発光部54の直上Xでの輻射エネルギー強度は、1/a、非発光部55直上Yでの輻射エネルギー強度は2/(√2a)=1/aとなり、非発光部55直上においても、輻射エネルギー強度が大幅に低下することがないので、着座部25の温度を均一に保つことができる。フィラメント34の発光部間の距離eをランプヒーター30と着座部25の距離の略2倍以上となると非発光部55直上の輻射エネルギー強度が低下するため着座部25の温度の均一性が悪くなる。
【0060】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2における暖房便座におけるランプヒーター30を含む便座の要部縦断面図である、本実施の形態は、実施の形態1の発明と基本的な構成は同じで、異なるのは上枠体を輻射透過性の材料からから構成したものである。
【0061】
図9において、着座部25は輻射透過性材料たとえば透明ポリプロピレン樹脂を用いた成形体である上枠体56の外表面にフィルム材である表面化粧層57を設け、この上枠体56と表面化粧層57の間にカーボンブラックなどの黒色顔料を主体とする輻射吸収剤を多量に含有する輻射吸収層58を形成している。
【0062】
上枠体56は透明ポリプロピレン樹脂を平均厚み2.5mmにて成形することにより、輻射エネルギー透過率を70%以上に設定すると同時に、その剛性から便座の構造矩体として機能している。また、形成されている輻射吸収層58と表面化粧層57の合計厚みは0.2mm程度であり、透明ポリプロピレン樹脂の厚みに対して薄いので、これら両層は輻射透過性の上枠体24を透過した輻射エネルギーを吸収し、熱容量が非常に小さいので瞬時に昇温すると同時に、可視光を遮蔽し着座部25表面を極めて短時間で加熱することができる。
【0063】
上記構成では上枠体56を透明ポリプロピレン樹脂で形成しているが、これに限ったものではなく、透明のPET樹脂、PE樹脂、PC樹脂なども使用可能である。また、表面化粧層57と輻射吸収層58もフィルム材、印刷、塗装等の組み合わせで構成することもできる。
【0064】
図10は図9の構成で2a=eとした場合について、着座部25の横断面方向の温度分布を示したものである。温度は着座部25断面の全体を等間隔に9ポイント(各ポイント間は約10mm)測定し、測定場所5)がランプヒーター30の直上に対応する。発光部54直上に対応する曲線(A)に対し非発光部55直上に対応する曲線(B)もほぼ同様の温度レベルと温度分布を示しており、非発光部55直上においても、輻射エネルギー強度が大幅に低下することがなく、着座部25の全体の温度を均一に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明の暖房便座は、輻射型発熱体からの輻射エネルギーで効率的に着座部を加熱して速やかにかつ均一に着座部を加熱することができるので、使用者が着座する機器の暖房技術として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1における暖房便座の便座の要部を断面した概略構成図
【図2】同暖房便座を便器に搭載したトイレ装置の斜視図
【図3】暖房便座の着座部を取り外した平面図
【図4】暖房便座の要部分解斜視図
【図5】同暖房便座の着座部断面図
【図6】同暖房便座のサーモスタットを含む要部断面図
【図7】同暖房便座のランプヒーターの温度特性概略図
【図8】同暖房便座のランプヒーターを含む要部縦断面図
【図9】同実施の形態2における暖房便座ランプヒーターを含む要部縦断面図
【図10】同実施の形態2における暖房便座の特性図
【図11】従来の暖房便座の要部の断面図
【符号の説明】
【0067】
22 便座
24 上枠体
25 着座部
27 下枠体
28 空洞部
29 輻射反射板
30 ランプヒーター(輻射型発熱体)
31 サーモスタット
32 サーモスタット
33 石英ガラス管
34 フィラメント
39 アルマイト層
40 輻射吸収層
54 発光部
55 非発光部
58 輻射吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠体と下枠体とで構成し、内部に空洞部を有する便座と、前記空洞部に設けた輻射型発熱体と、前記輻射型発熱体に対向して前記下枠体側に設けた輻射反射板とを備え、前記輻射型発熱体は石英ガラス管と前記石英ガラス管内部に封入されたフィラメントを有するランプヒーターであって、前記フィラメントに発光部と非発光部を設けた暖房便座。
【請求項2】
輻射型発熱体と上枠体の上部に形成される着座部までの距離に応じて発光部と非発光部の長さを変化させた請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
着座部の断面長さに応じてフィラメントの発光部と非発光部の長さを変化させた請求項1または2記載の暖房便座。
【請求項4】
フィラメントの発光部間の距離を、輻射型発熱体と着座部の距離の略2倍以下とした請求項1から3のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項5】
金属からなる着座部と、前記着座部の内面に設けた輻射吸収層とを有する請求項1から4のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項6】
輻射透過性を有する材料からなる上枠体と、前記上枠体の外表面に設けた輻射吸収層とを有する請求項1から4のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項7】
請求項1から7のいずれか1項記載の暖房便座を備えたトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−117549(P2007−117549A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316097(P2005−316097)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】