説明

月経過多、月経困難症又は子宮内膜症の治療

雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症に対処する方法であり、プロキネチシンレセプターに対するプロキネチシン1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤を該個体に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、治療方法、特に月経過多、月経困難症および子宮内膜症の治療方法に関する。
【0002】
月経過多は月経排出の過剰である。月経困難症は痛みを伴う月経を意味する。子宮内膜症は子宮外着床および子宮内膜の成長であって、したがって、子宮内膜の異常な細胞成長と考慮されうる。
月経過多、月経困難症および子宮内膜症は、特に西側諸国の多くの女性に多く、著しい健康問題を現す。英国の34〜49歳の20人に少なくとも1人の女性が、月経問題のために一般開業医にかかっているであろう。これらの女性は全ての婦人科外来患者の10の1以上を占めており、医薬処方単独では年間7百万を上回るNHSを占めている。毎年行われる少なくとも70,000の子宮切除術の70%に異常な膣出血が認められると言われている。
現時点では、月経過多に用いられる治療にはトラネキサム酸又はメフェナム酸を含む。重症例では治療が子宮切除術(膣または腹部)となるが、これは深刻な罹患率およびいくらかの死亡のリスクを伴う重大な手術である。月経過多の治療については、Stirrat (1999) The Lancet 353, 2175-2176を参照のこと。更なる代替治療の開発が望まれる。
【0003】
血管新生は、周期的な組織再生および子宮内膜成長と、月経過多および子宮内膜症を含む子宮内膜性疾患の発達において非常に重要である。子宮内膜性血管新生の制御の際の主な役割は、遺伝子のVEGFファミリーおよびそのレセプターを含む多くの因子と線維芽細胞成長因子について明らかにされてきた(Smith (2001) Trends Endocrinol. Metab. 12[4]: 147-51)。しかしながら、子宮内膜の血管新生のメカニズムは完全に解明されないままである。
プロキネチシン、内分泌腺由来血管内皮成長因子(EG-VEGF)としても知られるプロキネチシン1(PK1)と、Bv8としても知られるプロキネチシン2(PK2)は60%の配列同一性を有する2つの近年同定された血管形成因子である(LeCouterら (2001) Nature 412: 877-884;Liら (2001) Mol. Pharmacol. 59: 692-698;およびLeCouterら (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 2685-2690)。PK1 mRNA発現は、ステロイド産生腺、すなわち卵巣、精巣および副腎および胃腸管、神経系、膀胱および前立腺を含む他の組織を含む様々な組織において示されている(LeCouterら (2001);Liら (2001))。PK2発現は同類の分布を示すが、通常その発現は弱く、精巣および末梢血白血球で最も強い発現を示す(Liら(2001);LeCouterら (2403))。RNAによる分析又はノーザンハイブリダイゼーションによると、ヒト子宮でのPK1発現とPK2発現のレベルは低いが、PK1の発現はより大きいことが示された(Liら (2001))。
【0004】
プロキネチシンは、2つの非常に相同なGタンパク質結合レセプター、プロキネチシンレセプター1(PKR1)、およびプロキネチシンレセプター2(PKR2)のリガンドであり、その活性化によってカルシウム流通、ホスホイノシチド代謝回転の刺激およびMAPキナーゼシグナル伝達経路の活性化が起こる。プロキネチシンレセプターの発現は、精巣、皮膚および中枢神経系を含む多くの組織において同定された(Linら (2002) J Biol. Chem. 277[22]: 19276-280;Sogaら (2002) Biochimica et Biophysica Acta 1579: 173-179)。
PK1およびPK2の機能を検討する初期の研究により、それらが器官特異的な方法で内皮細胞増殖および化学走性を引き起こすことによって血管形成を促進することが示された(LeCouterら (2001); LeCouteら (2003))。加えて、それらが酸素圧低下に応答して分泌され、視交差上核のサーカディアンリズムの伝達に関与するという所見がある(LeCouterら (2001);Chengら (2002) Nature 417: 405-410)。
WO02/00711 (Genentech, Inc.)には、PK1(EG-VEGFと称する)が記載されており、その生物学的役割が考察されている。WO02/00711は、EG-VEGF又はそのアゴニスト又はそのアンタゴニストは、癌(例えば子宮癌および子宮内膜上皮癌)を含む多くの疾患症状を治療する際に有効であると述べている。他の子宮症状(例えば月経過多、月経困難症又は子宮内膜症)を治療するためにEG-VEGFのアンタゴニストを用いることは開示も提案もされていない。
【0005】
我々は、月経周期中の子宮のプロキネチシンおよびプロキネチシンレセプターの発現を検討して、他の段階と比較して子宮内膜の分泌期の間にPK1の発現レベルがより高いことを示した。また、PK1発現は同様に月経期において上昇する。プロキネチシンレセプターPKR1およびPKR2はともに、周期の他の段階と比較して、周期の月経期に発現が増加した。また、免疫組織化学によると、子宮内膜の腺性上皮細胞、間質性細胞、血管内皮細胞と、子宮筋層の内皮細胞および平滑筋細胞にPK1が局在化していた。これらの所見はプロキネチシンレセプターに対するPK1の効果を低下させるかまたは予防し、月経過多、月経困難症および子宮内膜症に対処する可能性を示唆している。
【0006】
本発明の第一の態様では、雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症に対処する方法であり、プロキネチシンレセプター(PKR)に対するプロキネチシン1(PK1)の効果を減退させる少なくとも一の作用剤を該個体に投与することを含む方法を提供する。
前記方法は、月経過多、月経困難症又は子宮内膜症(の症状を緩和するためすなわち緩和剤使用)に用いてもよい、又は症状の重症度を低下させるために用いてもよい、又は症状を治療するために用いてもよい、または、症状を予防するために予防的に用いてもよい。したがって、疾患又は症状「に対処する」には、疾患又は症状を治療する、減退させる又は予防する、あるいは、疾患又は症状の兆候を緩和するという意味が含まれる。
ゆえに、本発明は、雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症を治療する、減退させる、予防する、あるいは雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症の兆候を緩和する方法であり、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤を該個体に投与することを含む方法を含む。
【0007】
本発明の第二の態様では、雌性個体の月経過多、月経困難症または子宮内膜症に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤の使用を提供する。
ゆえに、本発明は、雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症を治療する、減退させる、予防する、あるいは雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症の兆候を緩和するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤の使用を含む。
PK1には、ヒトプロキネチシン1遺伝子(PROK1)およびその天然に生じる変異体の遺伝子産物が含まれる。ヒトPK1のcDNAおよびアミノ酸配列は、Genbank委託番号NM_032414およびNP_115790に明らかである。また、PK1はLeCouterら (2001)およびWO 02/00711に記載されている。
PK1はPKR1およびPKR2両方のリガンドとして示されている(Masudaら(2002) Biochemical and Biophysical Research Communications 293: 396402;Sogaら (2002);Linら (2002))。したがって、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤には、PKR1に対するPK1の効果を減退させる作用剤とPKR2に対するPK1の効果を減退させる作用剤が含まれる。
【0008】
PKR1には、ヒトプロキネチシンレセプター1遺伝子(PKR1)およびその天然に生じる変異体の遺伝子産物が含まれる。ヒトPKR1のcDNAおよびアミノ酸配列は、Genbank委託番号AF506287およびAAM48127に明らかである。
PKR2には、ヒトプロキネチシンレセプター2遺伝子(PKR2)およびその天然に生じる変異体の遺伝子産物が含まれる。ヒトPKR2のcDNAおよびアミノ酸配列は、Genbank委託番号AF506288およびAAM48128に明らかである。
月経過多、月経困難症および/または子宮内膜症をともに持つ可能性があり、本発明の方法および使用を用いて同一患者の複数の症状に対処しうる。あるいは、前記方法および使用を用いて、月経過多、月経困難症および子宮内膜症の何れかを別々に対処することもできる。
【0009】
したがって、本発明は、雌性個体の月経過多に対処する方法であり、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤を該個体に投与することを含む方法を含む。
本発明は、雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤の使用を提供する。
また、本発明は、雌性個体の月経困難症に対処する方法であり、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤を該個体に投与することを含む方法を含む。
したがって、本発明は、雌性個体の月経困難症に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤の使用を提供する。
また、本発明は、雌性個体の子宮内膜症に対処する方法であり、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤を該個体に投与することを含む方法を含む。
したがって、本発明は、雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤の使用を提供する。
【0010】
雌性個体は月経過多、月経困難症および/または子宮内膜症に罹患しているかまたはその症状のリスクがある任意の個体であり得る。
閉経前又は閉経後の女性の何れにも月経過多及び/又は月経困難症のリスクがある;しかし、月経過多は女性の生殖期間の始まりから終わりまで共通してあるものであり、概して、女性の月経が初めて始まるとき及び40歳以上の女性により大きなリスクがある。
治療される患者は、このような処置により利益を得るいかなる女性であってもよい。典型的に、及び、好ましくは、治療される患者は、人間の女性である。しかしながら、本発明の方法は、雌の哺乳類、例えば以下の種の雌:ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ネコおよびイヌを治療するために用いてもよい。このように、方法は人間および獣医学の用途がある。
獣医学的治療法など、本発明の非ヒト態様には、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は治療する種に効果を有するものであることが好ましいことが理解される。
典型的に、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、PKRのPK1媒介性シグナル伝達を阻害するかまたは低下させるかまたは破壊するものである。
【0011】
本発明の一実施態様では、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤がPKRに対する効果を有するPK2を阻害しない(完全またはある程度)ことが好ましい。この実施態様では、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、PKRに対するPK2の効果をさほど減退させないか、またはPKRに対するPK2の効果を全く(または検出不可能なレベルでしか)減退させない。したがって、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、PK1自体を標的とするか、PK1とPKRとの相互作用を標的とすることが好ましい。
好ましくは、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤はPKRに対するPK1の結合を阻害するか、減退させるか破壊する。あるいはまたは加えて、前記作用剤は、PK1とPKRとの相互作用、またはPKRと関連Gタンパク質との相互作用に影響して、PK1−PKR媒介性シグナル伝達経路を阻害または破壊しうる。
好ましい実施態様では、前記作用剤は、PK1のアンタゴニストであり得る。PK1アンタゴニストは一般的に、PK1に結合する分子であり、そのレセプターに対するPK1結合を阻害、減退または破壊するもので、それによってPK1−PKR媒介性シグナル伝達経路を阻害または破壊する。一般的にレセプターまたは抗体の何れか一部がPK1に結合する「可溶性レセプター」手法である。
【0012】
「アンタゴニスト」なる用語は広義で用いられ、PK1の生物学的活性を部分的にまたは完全に遮断するか、阻止するか、抑制するか、減退させるか中和させる任意の分子を含む。好適なアンタゴニスト分子には特に、抗体または抗体断片、PK1またはPKRの断片またはアミノ酸配列変異体、ペプチドおよび小有機分子が含まれる。
他の好ましい実施態様では、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、PK1またはPKRの発現を阻害するか、減退させるか破壊する作用剤であり得る。前記作用剤は、PROK1、PKR1またはPKR2遺伝子の転写を阻害するか、減退させるか破壊するか、あるいは前記遺伝子転写物の安定性や翻訳を阻害するか、減退させるか破壊する。好適な作用剤には、小干渉RNA分子、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重形成オリゴヌクレオチドおよびリボザイムが含まれうる。
あるいは、PK1アンタゴニストは、PKRに対するPK1の結合を抑制または減退させることなくPK1に結合するが、PK1とPKRとの相互作用を破壊してPK1−PKR媒介性シグナル伝達経路を阻害または破壊する分子であり得る。これは、PK1に共有結合性の様式で結合して、結合能力には影響を及ぼさないでシグナル伝達メカニズムに影響する分子であり得る。
【0013】
好ましい一実施態様では、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤には、PKRのアンタゴニストが含まれ、それは、患者への投与に好適なPKRアンタゴニストでもよい。一般的に、レセプターアンタゴニストは特定のレセプターに対して選択的であり、好ましくはPK1自体よりもPKRと同じかより高い結合親和性を有する。アンタゴニストは天然のリガンドよりレセプターに対する親和性が高いことが好ましいが、より高い濃度で用いることが必要であるが、より親和性が低いアンタゴニストも用いることができる。好ましくは、アンタゴニストは可逆的にPKRに結合する。好ましくは、アンタゴニストは特定のレセプターに対して選択的であり、他のレセプターに影響しない;したがって、一般的にPKRアンタゴニストはPKRには結合するが、他のPKRには実質的に結合しない。
一実施態様では、PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、PKRのアンタゴニストであり得る。PKRアンタゴニストは一般的に、PKRに結合し、天然のリガンドPK1の結合と拮抗し、PK1−PKR媒介性シグナル伝達経路を阻害または破壊する分子である。
【0014】
一実施態様では、PKRに対するPK1の効果を減退させることには、PKR上のPK1結合部位を占領し、Gαqを介する正常なシグナル伝達が起こるような天然のリガンド(PK1)の結合を阻害する(完全にまたはある程度)ことが含まれる。
あるいは、前記レセプターアンタゴニストは、PKRへのPK1結合を阻害することなくPKRに結合するが、PK1とPKRとの正常な相互作用を破壊し、PK1−PKR媒介性シグナル伝達経路を阻害、減退または破壊する分子であり得る。
さらに、択一的に、PKRアンタゴニストは、PKRに結合して、PKRと関連Gタンパク質との相互作用を破壊して、PK1媒介性シグナル伝達経路を阻害または破壊する分子であり得る。
潜在的なアンタゴニストのより具体的な例には、抗PK1抗体および抗PKR抗体が含まれる。抗体には、限定するものではないが、ポリ-およびモノクローナル抗体および抗体断片、一本鎖抗体、抗イデオタイプ抗体、およびそのような抗体または断片のキメラないしヒト化型、並びにヒト抗体および抗体断片が含まれる。
【0015】
抗PK1または抗PKR抗体はポリクローナル抗体を含みうる。ポリクローナル抗体の調整方法は当業者に公知である。ポリクローナル抗体は、例えば免疫化剤と必要であればアジュバントを1回またはそれ以上注射することによって哺乳動物内で生じうる。典型的に、免疫化剤および/またはアジュバントは複数回の皮下投与または腹腔内投与によって哺乳動物に注射するであろう。免疫化剤は、PK1ポリペプチドまたはその融合タンパク質を含みうる。免疫化剤を、免疫化する哺乳動物内で免疫原性であることが知られているタンパク質とコンジュゲート(共役)させることが有用であり得る。そのような免疫原性タンパク質の例には、限定するものではないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンおよびダイズトリプシンインヒビターが含まれる。使用されうるアジュバントの例には、フロインド完全アジュバントおよびMPL―TDMアジュバント(一リン酸化リビドA、合成トレハロースジコリノマイコレート(dicorynomycolate)が含まれる。免疫化の手順は、過度の実験を要することなく技術者によって選択されうる。
あるいは、およびより好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein, Nature, 256: 495 (1975)に示されるようなハイブリドーマ法を用いて調製しうる。ハイブリドーマ法では、一般的に、マウス、ハムスターまたは他の好適な宿主動物を免疫化剤にて免疫化して、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化してもよい。
【0016】
免疫剤は、典型的にはPK1ポリペプチドないしPKRポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、或いは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化株化細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103)。不死化株化細胞は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫株化細胞が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプチリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0017】
好ましい不死化株化細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化株化細胞はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカ培養細胞系統保存期間(ATCC)より入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、モノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード解析法によって測定することができる。
【0018】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる(Goding, 1986)。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。或いは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0019】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作成することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、或いは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、或いは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体でもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。或いは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
【0020】
一価抗体の調製には、同じくインビトロ法が適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成が可能である。
好ましい実施態様では、抗体はヒト化抗体又はヒト抗体でもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖或いはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)或いは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全て或いはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全て或いはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0021】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(Winter)及び共同研究者[Jonesら, (1986);Riechmannら, (1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0022】
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:381 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作成することもできる。また、Cole等及びBoerner等の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77 (1985); Boerner等, J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合、結合特異性の一方はPK1又はPKRに対するものであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対するものであり得る。あるいは、二重特異性抗体はPK1又はPKR上の異なる2つのエピトープに結合してもよい。
【0023】
二重特異性抗体を作成する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内の一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順がWO93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作成するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0024】
WO96/27011に記載された他の方法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収される異種二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第二の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、Fab二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab’)断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab’断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab’-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再転換し、他のFab’-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0025】
大腸菌からFab’フラグメントを直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)分子の製造を記述している。各Fab’フラグメントは大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0026】
また、組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離するために様々な方法が記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab’部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の二つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的V及びVドメインと強制的に対形成させられ、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等, J.Immunol. 147:60 (1991)。
【0027】
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、二つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療のために(WO91/00360;WO92/200373;EP03089)提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作成することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4,6767,980号に開示されたものが含まれる。
【0028】
また、抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang等, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);及び米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG-誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームにコンジュゲート(抱合)され得る。また、リポソームを用いて細胞内に抗体または抗体断片を移送することができる。
【0029】
抗体断片が患者に投与される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の抑制断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは化学的に合成し、及び/又は組換えDNA技術により生産することができる。例としてMarasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7889-7893 (1993)を参照のこと。
【0030】
本発明における使用に適する抗PK1抗体には、Ferraraら (Genentech, Inc.)によって出願された米国特許第2002/0192634号に、PK1(EG−VEGF)活性を中和すると報告されている抗PK1モノクローナル抗体1C6、2A3、2A8および4H9が含まれる。抗体4H9は、10μg/ml以上の用量で投与する場合(実施例21)、10nM EG−VEGFの活性を完全に中和すると報告された。抗PK1アンタゴニスト、特に抗PK1抗体に関するUS2002/0192634のすべての開示は出典明記によりここに組み込まれる。材料第DNA60621−1516は、1998年8月4日にアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に、委託番号203091として寄託した。
PKRに対するPK1の効果を減退させる他の潜在的な作用剤は、アンチセンス核酸分子であり、例えば、アンチセンスRNAないしDNA分子は標的としたmRNAにハイブリダイズしてタンパク質翻訳を阻害することによって直接的に翻訳をブロックするように働く。PK1またはPKRに特異性を有するRNAないしDNAである好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、それらの公知なヌクレオチド配列(上記参照)に基づいて設定することができ、これは当分野の標準的な技術者の技術および能力の十分範囲内である。
【0031】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは相補的な核酸配列に特異的に結合する一本鎖核酸である。特有の標的配列に結合することによって、RNA−RNA、DNA−DNA、RNA−DNA二重鎖が形成される。これら核酸は、遺伝子のセンス鎖ないしコード鎖に相補的なので、「アンチセンス」と呼称されることが多い。
アンチセンス技術を用いて、三重鎖ヘリックス形成(以下を参照)またはアンチセンスDNAないしRNAを介する遺伝子発現を制御することができ、この何れの方法もDNAないしRNAにポリヌクレオチドが結合することに基づいている。例えば、本明細書中の成熟PK1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’コード部位を用いて、約10〜40塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設定する。個のアンチセンスオリゴヌクレオチドはインビボでmRNAにハイブリダイズし、mRNA分子のポリペプチドへの翻訳をブロックする(Okano, Neurochem., 56: 560 (1991); Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression (CRC Press: Boca Raton, Fla., USA, 1988))。また、上記のオリゴヌクレオチドは細胞に移送されると、アンチセンスRNAがインビボで発現され、ポリペプチドの産生を抑制する。アンチセンスDNAを用いる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列のおよそ−10から+10の部位由来のオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0032】
標的核酸に結合することによって、前記のオリゴヌクレオチドが標的核酸の機能を阻害することができる。その結果、例えば、転写、プロセシング、ポリA付加工程、複製、翻訳のブロックまたはRNA分解の促進などの細胞の抑制的機能の促進が起こる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは研究室で調製してからマイクロインジェクションや細胞培養培地から細胞内への取り込みなどによって細胞内に導入するか、アンチセンス遺伝子を持つプラスミドないしレトロウイルスないし他のベクターを形質移入した細胞で発現させる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ラウス肉腫ウイルス、水疱性口炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、シミアンウィルスおよびインフルエンザウイルスの細胞培養物中でのウイルスのウイルス複製や発現を阻害することが初めて明らかにされた。それ以来、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるmRNA翻訳の阻害は、ウサギ網状赤血球溶解物および小麦麦芽抽出物を含む無細胞系において、広範囲に調べられている。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるウイルス機能の阻害は、AIDS HIVレトロウイルスRNAに相補的なオリゴヌクレオチドを用いてインビトロで明らかにされた(Goodchild, J. (1988) .Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85[15]: 5507-11)。Goodchildの研究により、最も効果的なオリゴヌクレオチドはポリAシグナルに相補的なオリゴヌクレオチドであり;また、RNAの5’末端を標的としたもの、特にプライマー結合部位の隣およびプライマー結合部位のキャップ(cap)および5’非翻訳領域も効果的であることが示された。キャップ、5’非翻訳領域およびポリAシグナルはレトロウイルスRNA(R領域)の末端で反復する配列内にあり、これらに相補的なオリゴヌクレオチドはRNAに二度結合するかもしれない。
【0033】
典型的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは15〜35塩基長である。例えば、20マーのオリゴヌクレオチドは上皮成長因子レセプターmRNAの発現を阻害することが示され(Wittersら, Breast Cancer Res Treat 53:41-50 (1999))、25マーのオリゴヌクレオチドは副腎皮質刺激ホルモンの発現を90%以上減少することが示された(Frankelら, J Neurosurg 91:261-7 (1999))。しかしながら、この範囲外、例えば10、11、12、13ないし14塩基、または36、37、38、39ないし40塩基の長さのオリゴヌクレオチドを用いることが望ましいかもしれないことが理解される。
オリゴヌクレオチドは細胞内の核酸分解酵素によって分解または不活性化される。この問題に対処するために、天然に生じるホスホジエステル結合が他の結合に置き換えられる変更したヌクレオチド間結合を有するなどの修飾したオリゴヌクレオチドを用いることができる。例えば、Agrawalら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 7079-7083では、オリゴヌクレオチドアミド亜リン酸エステルおよびホスホロチオネートを用いたHIV−1組織培養の抑制増加が示された。Sarinら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 7448-7451では、オリゴヌクレオチドメチルホスホナートを用いたHIV−1の抑制増加が示された。Agrawalら (1989) Proc. Natl. Acad Sci. USA 86, 7790-7794では、ヌクレオチド配列特異的オリゴヌクレオチドホスホロチオエートを用いて初期感染細胞培養物および慢性感染細胞培養物におけるHIV−1複製の抑制が示された。Leitherら (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 3430-3434は、オリゴヌクレオチドホスホロチオエートによる組織培養物のインフルエンザウイルス複製の抑制を報告している。
【0034】
本発明で有効なオリゴヌクレオチドは、好ましくは、内在性核酸分解酵素による分解に耐えるように設定される。オリゴヌクレオチドのインビボ分解により、長さが減少したオリゴヌクレオチド分解生成物が生じる。このような分解生成物は、おそらく非特異的なハイブリダイゼーションに関与し、完全長相対物と比較して効率が低い。したがって、体内での分解に抵抗性があり、標的細胞に到達することができるオリゴヌクレオチドを用いることが望まれる。本オリゴヌクレオチドは、天然のホスホジエステル結合を一以上の内部人工ヌクレオチド間結合に置換することによって、例えば、結合内のリン酸と硫黄を置換することによってインビボでの分解に対してより抵抗性を示すようになりうる。用いられてもよい結合の実施例は、ホスホロチオネート、メチルホスホネート、スルホン、硫酸エステル、ケチル、ホスホロジチオエート、様々なホスホラミデート、リン酸エステル、架橋したホスホロチオネート、架橋したホスホラミデートが含まれる。他のヌクレオチド間結合が当分野で周知であるので、このような例は制限するものではなく例示するものである。例として、Cohen, (1990) Trends in Biotechnologyを参照のこと。
ホスホジエステルヌクレオチド間結合を置換した結合のうちの一つ以上を有するオリゴヌクレオチドの合成は当分野で周知であり、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドを生成するための合成系が含まれる。オリゴヌクレオシドメチルホスホン酸、ホスホロジチオエート、ホスホラミデート、リン酸エステル、架橋ホスホラミデートおよび架橋ホスホロチオネートの合成は、当分野において周知である。例として、AgrawalおよびGoodchild (1987) Tetrahedron Letters 28, 3539;Nielsenら(1988) Tetrahedron Letters 29, 2911;Jagerら(1988) Biochemistry 27, 7237;Uznanskiら(1987) Tetrahedron Letters 28, 3401;Bannwarth (1988) Helv. Chim. Acta. 71, 1517;CrosstickおよびVyle (1989) Tetrahedron Letters 34, 4693;Agrawalら (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1401-1405を参照し、これらに教示されることは出典明記によってここに組み込まれる:合成又は生成のための他の方法も可能である。
【0035】
オリゴヌクレオチドの5’または3’末端のヌクレオチドに類似の基を「キャッピングする」または組み込むことによって内在性の酵素による分解に対する抵抗性をつけることができる。キャッピングのための試薬はApplied BioSystems Inc, Foster City, CA.からAmino-Link IITMとして市販されている。キャッピングの方法は、Shawら (1991) Nucleic Acids Res. 19, 747-750およびAgrawalら (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88[17], 7595-7599によって記載されており、これらに教示されることは出典明記によってここに組み込まれる。
出典明記によってここに組み込まれるTangら (1993) Nucl. Acids Res. 21, 2729-2735に記載されているように、核酸分解酵素の作用に対して耐性のオリゴヌクレオチドを作製する更なる方法は、「自己安定化」させることである。自己安定化オリゴヌクレオチドはその3’末端にヘアピンループ構造を持ち、蛇毒ホスホジエステラーゼ、DNAポリメラーゼIおよび胎仔ウシ血清による分解に対して亢進した耐性を示す。オリゴヌクレオチドの自己安定化領域は相補的核酸とのハイブリダイゼーションに干渉せず、マウスでの薬物動態学的研究および安定性研究ではそれらの線形相当物と比較して自己安定化したオリゴヌクレオチドのインビボ持続性が亢進していた。
【0036】
PKレセプターに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、PK1遺伝子またはPKR遺伝子との三重鎖ヘリックス形成を亢進するオリゴヌクレオチドであり得る。
近年、オリゴヌクレオチドがDNA二重鎖へ結合する三重鎖ヘリックス形成が起こりうることが示された。オリゴヌクレオチドはDNA二重鎖ヘリックスの主要な溝(major groove)の配列を認識することができることが明らかとなった。それにより三重鎖ヘリックスが形成された。これは、主要な溝の水素結合部位の認識を介して二本鎖DNAに特異的に結合する配列特異的分子を合成することができることを示唆している。
転写を阻害するために三重鎖ヘリックスを形成する核酸分子は一本鎖であり、デオキシヌクレオチドからなる。これらオリゴヌクレオチドの塩基組成は、一般的に二本鎖のうちの一本鎖にプリンまたはピリミジンのかなりの伸展を必要とするフーグスティン塩基対の様式を介する三重鎖ヘリックスを促進するように設定する。更なる詳細についてはWO97/33551を参照のこと。
【0037】
アンチセンス方法と同じように、これは、DNAまたはRNAへのポリヌクレオチド配列の結合に基づく。この方法への使用に適するポリヌクレオチドは20〜40塩基長が好ましく、転写に関与する遺伝子の領域に対して相補的に設定する(Leeら., Nucl. Acids Res. 6: 3073 (1979);Cooneyら., Science 15241: 456 (1988);およびDervanら., Science 251: 1360 (1991))。最適には、三重鎖ヘリックス形成によって、DNAからのRNA転写が停止する。PK1に特異性を有する好適なオリゴヌクレオチドは、それらの公知のヌクレオチド配列に基づいて設定され(上記参照)、当分野の平均的な技術者の技能および能力の十分範囲内である。
PKレセプターに対するPK1の効果を減退させる作用剤はリボザイムでもよい。リボザイムはRNAの特異的切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイムは相補的標的RNA配列特異的にハイブリダイゼーションすることによって作用し、内ヌクレオチド結合分解性の切断が起こる。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位を公知の技術によって同定することができる。更なる詳細については、例としてRossi, Current Biology, 4: 469-471 (1994)、およびWO 97/33551を参照のこと。したがって、リボザイム(例としてハンマーヘッド型リボザイム(Haselhoff & Gerlach (1988) Nature 334:.585-591)に記載)を用いて、mRNA転写物を触媒的に切断してそれによってmRNAの翻訳を阻害することができる。
【0038】
PK1またはPKRに特性を有するリボザイムはそれらの公知のヌクレオチド配列(上記参照)に基づいて設定することができ、当分野の標準的な技術者の技能と能力の範囲内のものである。あるいは、PK1 mRNAを用いて、RNA分子のプールから特定のRNA分解酵素活性を有する触媒的なRNAを選択することができる。例として、Bartelら., (1993) Science 261: 1411-1418を参照のこと。
PKレセプターに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、小干渉RNA(siRNA)分子でもよい。RNA干渉(RNAi)とは、サイレンスする遺伝子に配列が相同な二本鎖(dsRNA)によって生じる動物内での配列特異的転写後遺伝子サイレンシングの工程である。典型的に、配列特異的mRNA分解のメディエーターは、インビボでより長いdsRNAからRNA分解酵素III切断によって生成される21および22ヌクレオチド小干渉RNA(siRNA)である。Elbashirら. (2001, Nature 411, 494-498)は、21ヌクレオチドsiRNA二重鎖が例えば哺乳動物細胞内で内在性および異種性の遺伝子の発現をともに特異的に抑制することを示した。哺乳動物細胞内では、より長い二本鎖(ds)RNAはPKR(dsRNA依存性タンパク質リン酸化酵素)を活性化し、全体のタンパク質合成を抑制するので、siRNAは以下に示すような2本の相補的な21マーからなるに違いないと思われる。
【0039】
PK1に選択的な二重鎖siRNA分子はPK1cDNA配列を参照することによってすぐに設定することができる(上記参照)。典型的に、まず、開始メチオニンコドンから少なくとも120ヌクレオチド下流であるAAジヌクレオチドで始まる21マー配列を選択する。これに完全に相補的なRNA配列が第一RNAオリゴヌクレオチドとなる。第二RNA配列は第一RNAのはじめの19残基に完全に相補的なもので、3’末端に付加的なUUジヌクレオチドを有するであろう。設定すると、合成RNA分子は当分野で公知の方法を用いて合成することができる。
他の潜在的なPK1アンタゴニストには、PK1の活性部位、レセプター結合部位または他の相対的な結合部位に結合して、その正常な生物学的活性をブロックする小分子が含まれる。小分子の例には、限定するものではないが、小ペプチドまたはペプチド様分子、好ましくは可溶性ペプチド、および合成非ペプチジル有機ないし無機化合物が含まれる。
したがって、ある実施態様では、PK1アンタゴニストは非常に関連したタンパク質、例えばPKRを認識するが効果を障害しないPK1ポリペプチドの変異型であり、PKRに対するPK1ポリペプチドの活性を競合的に阻害するものでよい。
【0040】
本発明の使用に適するPKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤(すなわちアンタゴニスト)を同定する方法の範囲は、WO02/00711および米国特許出願番号2002/0192634に詳述されており、出典明記によりそれら両方がここに組み込まれる。
一実施態様では、活性がポジティブフィードバックによって制御される場合、アゴニストの過剰発現はアンタゴニストとして作用しうる。
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤は、本発明の治療剤または本発明の化合物と呼称するかもしれない。
治療剤は、月経過多、月経困難症または子宮内膜症に対処するために有効な量で雌性個体に投与する。治療剤は任意の剤形および任意の好適な方法で投与しうる。
一実施態様では、本発明の使用のための治療剤は、PKRの少なくとも75%(ED75)およびより好ましくはPKRの少なくとも90%(ED90)が有効量として輸送されるために十分な量と頻度で投与する。当該分子の有効性により用量、剤形および投与方法を決定するであろう。
【0041】
本発明に用いる上述した治療剤又はその製剤は、経口および非経口(例えば皮下ないし筋肉内)注射を含む任意の従来法によって投与してもよい。治療は、一回量又は一定期間にわたる複数の用量から成ってもよい。投与される用量は、年齢、体重、投与様式、治療の継続期間および治療剤ないし作用剤の薬物動態学的および毒物的な特性を考慮して決定する。患者に有益な治療的効果を生じる用量(または、複数用量)で治療剤を投与する。一般的に、治療剤は、他の医学的徴候に用いる場合と同じか類似の用量で投与する。どんな場合でも、患者の治療に適する用量は、医師によって決定されうる。
本発明の治療剤が単独または他の前記治療剤と組み合わせて投与することができる一方で、一以上の受容可能な担体とともに医薬製剤としてそれまたはそれらを投与するのが好ましい。担体は、本発明の治療剤とともに含まれる場合には「受容可能で」あり、受容者側にとって毒性があってはならない。一般的に、担体は、無菌で、発熱因子フリーである水ないし生理食塩水である。
【0042】
製剤は、単位剤形で都合よくあってもよく、薬剤学の分野で公知の任意の方法によって調整してもよい。このような方法には、一つ以上の補助的配合剤を構成する担体とともに治療剤又は作用剤を会合させる工程を含む。概して、製剤は、均一かつ緊密に液体担体又は微粉固体担体又はその両方と活性成分(すなわち治療剤又は作用剤)とを会合させ、必要に応じて生成物を成形することによって調製する。
経口投与に適する本発明の製剤は、カプセル、カシェ剤又は錠剤(各々は予め定められた量の活性成分を含む)のような分離型の単位として;粉又は顆粒として;水性液体ないし非水溶液体の溶液ないし懸濁液として;または、水中油(oil-in-water)液体エマルジョン又は油中水(water-in-oil)形液体エマルジョンとしてもよい。また、活性成分はボーラス、舐剤またはペーストとしてもよい。
【0043】
場合によって一以上の補助的成分とともに、錠剤を圧縮又は成形して作ってもよい。圧縮錠剤は、適切な機械にて、場合によって結合剤(例えばポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑油、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えばナトリウム澱粉グリコール酸(sodium starch gycolate)、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤と混合して、粉又は顆粒などの自由流動形に活性成分を圧縮することによって調製してもよい。成形した錠剤は、不活性液体希釈液で湿らせた粉末状の合成物の混合物を適切な機械で成形することによって作製してもよい。場合によって、錠剤は、コートするか又は切り目をつけてもよく、所望の放出特性が得られるように性質を変化する際に例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて活性成分の放出を緩慢にするようにまたは制御できるように調製しうる。
口の局所投与に適する製剤には、風味をつけた基剤、通常スクロースおよびアカシア又はトラガカンタに活性成分を含むトローチ剤(lozenge);ゼラチンおよびグリセリン又はスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤に活性成分を含む錠剤(pastille);及び、適切な液体担体に活性成分を含むうがい薬(mouth-washes)が含まれる。また、舌下錠(Buccal)投与も好ましい。
【0044】
非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、緩衝液、細菌発育阻止因子および対象とする受容者の血液に等張な製剤となるような溶質を含みうる水溶性および非水溶性滅菌注射液、および沈澱防止剤および増粘剤を含みうる水溶性および非水溶性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位-用量又は複数投与用コンテナ、例えば密封されたアンプルおよびバイアルにしておいたり、使用前に滅菌液体担体、例えば注射用蒸留水を加えるだけの冷凍乾燥させた(凍結乾燥された)状態で貯蔵してもよい。即席の注射溶液および懸濁液は、既に示した種類の滅菌した粉末、顆粒および錠剤から調製してもよい。
好適な単位用量製剤は、活性成分の一日量又は単位用量、1日の標準以下の用量又はそれらの適当な分量を含んでいるものである。
特に前述の成分に加えて本発明の製剤には、問題とする製剤のタイプを考慮した当分野の従来の他の作用剤が含まれうる。例えば経口投与に適するものには風味付け作用剤が含まれる。
【0045】
治療剤にはタンパク質又はペプチドであるものもある。タンパク質およびペプチドは、注射可能な徐放性ドラッグデリバリーシステムを用いて供給してもよい。これらは、具体的には、注射の頻度を減らすように設計されている。このようなシステムの例は、組換え体ヒト成長ホルモン(rhGH)を生物分解可能なミクロスフィアにカプセル化するNutropin Depotであり、注射すると継続時間を通してゆっくりrhGHを放出する。
タンパク質およびペプチドは、受容部位に直接薬剤を放出する外科的移植装置によって投与することができる。
また、電気穿孔治療法(EPT)システムは、タンパク質およびペプチドの投与に用いることができる。パルス化された電場を細胞に供給する装置は、薬剤に対する細胞膜の透過性を増やし、その結果、細胞内ドラッグデリバリーが有意に亢進される。
【0046】
タンパク質およびペプチドは電気的取り込み法(EI)によって供給することができる。細胞表面上の直径30ミクロン以下の小粒子が電気穿孔法に用いたのと同じか類似の電気的パルスを感じるとEIが起こる。EIでは、これら粒子は角質層および皮膚のより深い層に移行する。当該粒子は薬剤ないし遺伝子に負荷したりそれらでコートするか、単に薬剤が進入しうる皮膚に孔を生じさせる「弾丸(bullet)」として作用することもできる。
タンパク質およびペプチド供給の代替的方法は温度感受性のReGel注射用システムである。体温以下では、ReGelは注射可能な液体であり、体温では、ゆっくりと浸食して公知の安全な生物分解可能なポリマーに分解するゲルをすぐに形成する。バイオポリマー分解の時間の間治療剤が供給される。
【0047】
また、タンパク質およびペプチド医薬は経口投与することができる。この工程は、タンパク質とペプチドを同時に供給するための、体内のビタミンB12の経口摂取の天然の工程をたどる。ビタミンB12摂取系とまたがることによって、タンパク質又はペプチドは腸管壁を通り抜けることができる。ビタミンB12類似体と前記薬剤との間で複合体を合成し、該複合体のビタミンB12部位の内因性因子の顕著な親和性と該複合体の薬剤部位の顕著な生物学的活性の両方が維持される。
タンパク質およびポリペプチドは「Trojanペプチド」によって細胞内に導入することができる。転移性の特性を有し、原形質膜を越えて親水性化合物を輸送することができるペネトラチン(penetratin)と呼称されるポリペプチドの種別がある。この系により細胞質および核へオリゴペプチドを直接標的とすることができ、これは非細胞型特異的で非常に効率がよい。Derossiら (1998), Trends Cell Biol 8, 84-87を参照。
【0048】
また、治療剤ないし製剤は、パッチ、ゲル、ローション、クリームまたはオイルなどで経皮的に投与してもよい。
1種類または複数種類の治療剤は経口投与するのが好ましい。
さらに、1種類または複数種類の治療剤は雌性生殖系に投与するのが好ましい。例えば、1種類または複数種類の治療剤は、ゲルまたはクリームまたは膣リングまたはタンポンを用いて適切に経膣投与する。また、治療剤は、例えば子宮内デバイスなどの当分野に公知の方法を用いた子宮内供給によって投与するのが有益であろう。
典型的に、ゲルまたはクリームは、膣投与のために調製するものである。オイルベースまたは水ベースでもよい。典型的に、1種類または複数種類の治療剤は、単回(または繰り返し)の適用で有効量が投与されるように十分な濃度でクリームまたはゲル中に存在する。
【0049】
一般的には、膣リングは膣にフィットする「ドーナツ」形に成形されたポリマーを含んでなる。1種類又は複数種類の治療剤がポリマー内に、一般的にはコアとして存在し、それはポリマーから放出され、コントロールされた仕方で膣及び/又は頸部に入る。膣リングは当業者には公知である。膣リングは使い捨てでもよく、女性生殖期間に膣内に保持される、したがって、女性生殖期間に放出され、効果を示すのに十分な量の治療剤を含んでいる。あるいは、膣リングは約3ヵ月〜1年間用いて、その一定期間、十分な量の治療剤が放出され有益な効果を示す。リングが製造されるポリマー、リングと治療剤の内容物のサイズおよび形状、並びに他のパラメータは、1周期またはしばらくの間使用するためのリングかどうかを考慮して選択するのがよいことは理解できるであろう。
一般的にはタンポンに1種類又は複数種類の治療薬をしみ込ませ、十分な量の治療薬(1種類又は複数種類)がタンポンに存在するようにする。
【0050】
一般的には子宮内デバイスは子宮内に長期間、例えば1ないし5年間置くためのものである。一般的には子宮内デバイスはプラスチック製フレーム(「T」形であることが多い)を有し、使用期間中放出するのに十分な量の治療剤(類)を含む。一般的にその薬剤は、そのデバイスの部分を構成している除放性ポリマー内に存在し、又は前記除放性ポリマーに封入される。上記デバイスの部分は、普通は除放性膜で覆われている「T」字形の長い方のアームの周囲を包む「ソーセージ」形薬剤のような形に構成されている。子宮内デバイスは当業者には公知である。
ある種の治療剤は、それらをコードする核酸分子から発現されうるタンパク質またはペプチドである。ある種の治療剤はポリヌクレオチドであり、それらをコードする核酸分子から発現されうる。本発明のポリヌクレオチド治療剤、または本発明の治療剤をコードする核酸分子など、患者に核酸分子を投与するための方法、組成物およびベクターは当業者に公知である。
【0051】
好適なデリバリーシステムには、リポソーム、ビロゾーム、ミクロスフィア又はマイクロカプセルおよびウイルス性および非ウイルス性ベクターなどの遺伝的ベクターが含まれる。
ポリヌクレオチド治療剤、または治療剤をコードする核酸分子を全身投与してもよい。あるいは、本発明の核酸分子の有効性を生体内での意図する局部に制限して、より低い用量を用いて、全身的な効果を最小にすることによって、特徴的塩基対への固有の結合特異性を亢進する。したがって、核酸分子は、所望の効果を達成するために、局所的に適用してもよい。所望の局部における本発明のポリヌクレオチド治療剤の濃度は、全身投与する場合よりもより高く、明らかに低い全量を用いても治療効果が達成されうる。本発明のポリヌクレオチド治療剤の局所濃度が高いことによって標的細胞の透過性が亢進する。
ポリヌクレオチド治療剤、または治療剤をコードする核酸分子は、薬剤の局所投与に好適な方法で局部に供給することができる。例えば、核酸分子またはベクターの溶液を部位に直接注射したり、注入ポンプを用いた注入によって供給することができる。また、核酸分子またはベクターは、移植用デバイス内に取り込ませて、特定の部位に隣接して設置してその周辺部位にそれらを放出させることもできる。
【0052】
ポリヌクレオチド治療剤又は治療剤をコードする核酸分子は、ヒドロゲル材料によって投与してもよい。ヒドロゲルは非炎症性で生物分解可能である。このような材料は、天然および合成のポリマーからできたものを含み現在多く知られている。好ましい実施形態では、前記方法に、体温の以下の液体であるが、体温又はその温度近くの保形半流動ヒドロゲルを形成するジェルであるヒドロゲルを用いる。好ましいヒドロゲルはエチレンオキシド−プロピレンオキシド繰り返し単位のポリマーである。ポリマーの特性は、ポリマーの分子量およびポリマー中のポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドの相対的な割合に依存する。好適なヒドロゲルは、約10〜約80エチレンオキシド重量%と、約20〜約90プロピレンオキシド重量%を含む。特に好適なヒドロゲルは、約70%のポリエチレンオキシドと、30%のポリプロピレンオキシドを含む。使用可能なヒドロゲルは、例えば商品名Pluronic(登録商標)でBASF Corp., Parsippany, NJより入手可能である。
【0053】
この実施態様では、ヒドロゲルは液体にまで冷却し、オリゴヌクレオチドはヒドロゲル1g当たり約1mgのポリヌクレオチドの濃度で液体に混合する。次いで、結果として生じた混合液を、例えばカテーテルや内視鏡手技を用いた外科的手術の間に噴霧又は塗布することによって治療すべき表面に適用する。ポリマーが暖まるにつれて、ゲルを形成するように凝固し、厳密なゲル組成物に応じた期間中ゲルから周辺細胞へポリヌクレオチドが拡散する。
ポリヌクレオチド治療剤、又は治療剤をコードする核酸分子は、リポソーム、マイクロカプセルおよび移植用デバイスを含む、市販の又は科学的文献に記載された他の移植組織(インプラント)によって投与することができる。例えば、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリグリコール酸およびそれらのコポリマーなどの生物分解可能な材料、コラーゲンおよびタンパク質ポリマー、又はエチレン酢酸ビニル、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアルコールおよびそれの誘導体のような生物分解性でない材料でできている移植組織は、本発明の化合物を局所に供給するために用いることができる。それらは、融解又は溶媒蒸発法や機械的に材料と混合させて重合又は凝固させるにつれて材料内に取り込まれうる。一実施態様では、本発明の化合物は、移植用デバイス(例えばデキストランコート二酸化ケイ素ビーズ、ステム又はカテーテル)のための被覆剤と混合するかその上に適用する。
【0054】
ポリヌクレオチド治療剤、又は治療剤をコードする核酸分子は、治療及び/又は予防目的で患者全身に投与してもよい。前記化合物は、任意の効果的な方法、例えば、非経口的(例えば静脈内、皮下、筋内)、または、経口、鼻又は患者の血流に入って循環させる他の方法によって投与してもよい。好ましくは全身的に投与される核酸分子又はベクターは、局所投与に加えて投与するが、局所投与をしない場合でも有用である。一般的に、この目的には成人のヒトへの投与につき約0.1〜約10グラムの範囲の用量が効果的であろう。
治療剤は、好適なポリヌクレオチド、遺伝的コンストラクト又はここに記載のようなベクターから発現させ、患者に供給してもよい。治療剤の供給のための遺伝的コンストラクトはDNAでもRNAでもよいが、DNAが好ましい。
好ましくは、遺伝的コンストラクト又はベクターはヒト細胞への供給に適する。
【0055】
動物体内の細胞に遺伝的コンストラクトを導入する手段と方法は当分野で公知である。例えば、本発明のコンストラクトは、コンストラクトが細胞のゲノム内に挿入されるための任意の簡便な方法、例えばレトロウイルスを伴う方法によって細胞内に導入してもよい。(例として、Kuriyamaら (1991) Cell Struc. and Func. 16, 503-510を参照)。細胞内にレトロウイルスを導入するために、10μg/mlのポリブレンを添加してあるレトロウイルス上清を直接注入するのがよい。直径10mm以上の組織には、レトロウイルス上清を0.1から1ml;好ましくは0.5ml注入するのが好適である。あるいは、Culverら (1992) Science 256, 1550-1552に記載のように、レトロウイルスを産生する細胞を注入する。
また、標的 (Targeted)レトロウイルスは本発明の使用に有益である;例えば、特定の結合親和性を付与する配列を予め存在するウイルスのenv遺伝子内に操作してもよい(この概要及び遺伝子治療の他の標的ベクターについては、Miller & Vile (1995) Faseb J. 9, 190-199を参照)。
【0056】
他の方法では、限られた期間、又はゲノム内に組み込まれた後長期間、組み込まれたところで発現するために細胞内にコンストラクトを単に移送することを伴う。後者のアプローチの例にはリポソームが含まれる。(Nassanderら (1992) Cancer Res. 52, 646-653)。
イムノリポソームの調整には、MPB−PE(N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル]-フォスファチジルエタノールアミン)をMartin & Papahadjopoulos (1982) J. Biol. Chem. 257, 286-288の方法に従って合成する。
移送の他の方法には、抗体-ポリリジン架橋を介した外因性DNAを持つアデノウイルス(Curiel Prog. Med. Virol. 40, 1-18を参照)及び担体としてのトランスフェリン-ポリカチオンコンジュゲート(Wagnerら (1990) Proc. Natl. Acad Sci. USA 87, 3410-3414)が含まれる。
【0057】
また、ポリヌクレオチド治療剤、又は治療剤をコードする核酸分子は、例えば以下に記載のアデノウイルス粒子内に存在するアデノウイルスによって移送してもよい。
代替方法では、細胞内にDNAマクロ分子を運ぶために、レセプター媒介性エンドサイトーシスを用いる高効率性核酸デリバリーシステムを、例えば核酸に結合するポリカチオンにイオン輸送タンパク質トランスフェリンをコンジュゲートさせることによって行う。
陽イオン性及び中性の脂質と複合体化した「裸の(naked)DNA」及びDNAは、治療すべき個体の細胞内に本発明の化合物を導入するために有用でありうることが理解されるであろう。遺伝子治療の非ウイルス性手法は、Ledley (1995) Human Gene Therapy 6, 11291144に記載されている。
また、代替的標的デリバリーシステムは公知であり、例えば、典型的にDNAをアデノウイルス又はアデノウイルス様粒子内に持つ、WO94/10323に記載の変更したアデノウイルスシステムがある。他の好適なウイルス又はウイルス様粒子には、HSV、アデノ関連ウイルス(AAV)、ワクシニア及びパルボウイルスが含まれる。したがって、更なる本発明の態様では本発明の化合物を含むウイルス又はウイルス様粒子が提供されることが理解されるであろう。
【0058】
また、本発明は、ここに記載の一以上の治療剤と、現在月経過多の治療に用いられる一以上の医薬、例えばトラネキサム酸又はメフェナム酸との組み合わせ(医薬製剤においてなど)を提供する。
本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸又はメフェナム酸とを含む月経過多に対処するためのキット・オブ・パーツを包含する。
また、本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸又はメフェナム酸とを含む組成物を包含する。
さらに、本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸又はメフェナム酸とを含む医薬の使用のための組成物を包含する。
【0059】
加えて、本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸又はメフェナム酸と、薬理学的許容性のある担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物を包含する。
本発明は雌性個体の月経過多に対処する方法であり、該方法が雌性個体にPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子(上記記載のような)と、トラネキサム酸又はメフェナム酸を投与することを含む方法を包含する。
【0060】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤とトラネキサム酸又はメフェナム酸を連続的に又は(実質的に)同時に投与することができることが理解されるであろう。それらは同じ医薬製剤又は医薬内にあってもよいし、別々に製剤化又は投与されてもよい。
本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸又はメフェナム酸との組合せを雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製への使用を包含する。
【0061】
本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製への使用であり、該個体はトラネキサム酸又はメフェナム酸を投与されている使用を包含する。たとえ雌性個体が少なくとも一作用剤又は核酸分子を含んでなる医薬を投与される前(又は投与の後)にトラネキサム酸又はメフェナム酸を投与された(又は投与される)場合でも、典型的に雌性個体は医薬として同時にトラネキサム酸又はメフェナム酸を投与される。
本発明は、トラネキサム酸又はメフェナム酸を雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製への使用であり、該個体はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を投与されている使用を包含する。たとえ雌性個体がトラネキサム酸又はメフェナム酸を含んでなる医薬を投与される前(又は投与の後)に作用剤又は核酸分子を投与された(又は投与される)場合でも、典型的に雌性個体は医薬として同時に作用剤又は核酸分子を投与される。
【0062】
また、本発明は、ここに記載の治療剤の一以上と、エストロゲンレベルを低下させる、または、エストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤との組合せを提供する。そのような組合せは子宮内膜症の治療に有用でありうる。
エストロゲンレベルを低下させる作用剤には、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト、GnRHアンタゴニスト及びエストロゲン合成インヒビターが含まれる。エストロゲンレセプターに拮抗する作用剤、すなわちエストロゲンレセプターアンタゴニストは抗エストロゲンを含む。
好適なGnRHアゴニストには、典型的に4週ごとに3.75mgを皮下(s.c.)または筋肉内(i.m.)のレベルで投与するか3か月ごとに11.25mgを皮下のレベルで投与するリュープロレリン(leuprorelin)(Wyethより提供のProstap);典型的に8時間ごとに0.5mgを皮下的にまたは1日6回、0.2mgを鼻腔内のレベルで投与するブセレリン(buserelin)(Shireより提供のSuprefact);典型的に28日ごとに3.6mg皮下的インプラントまたは12週ごとに10.8mgインプラントとして投与するゴセレリン(goserelin)(Astra Zenecaより提供のZoladex);典型的に4週ごとに3mgのレベルで投与するトリプトレリン(triptorelin)(Ipsenより提供のDe-capeptyl sr);ナファレリン(nafarelin)(Searleより提供のSynarel);デスロレリン(deslorelin)(Shireより提供のSomagard);及びヒストレリン/サプレリン(histrelin/supprelin)(Ortho Pharmaceutical Corp/Shire)が含まれる。
【0063】
好適なGnRHアンタゴニストには、テベレリクス(teverelix)(アンタレリクス(antarelix)としても知られる);アベレリクス(abarelix)(Praecis Pharmaceuticals Incより提供のプレナキス(Plenaxis));典型的に毎日0.25〜0.3mg皮下のレベルで投与するセトロレシキス(cetrorelix)(ASTA Medicaより提供のセトロチド(Cetrotide));及び典型的に毎日0.25mg皮下のレベルで投与するガニレリクス(ganirelix)(Organonより提供のオルガルトラン(Orgalutran))が含まれる。
好適な抗エストロゲンには、タモキシフェン、ファスロデクス(ICI 182,750;Astra Zeneca)、イドキシフェン(Coombesら(1995) Cancer Res 55, 1070-1074を参照)、ラロキシフェン又はEM−652(Labrie, Fら, (2001) J Steroid Biochem Mol Biol 79, 213が含まれる。
好適なエストロゲン合成インヒビターにはアロマターゼインヒビターが含まれる。当業者には周知のように、アロマターゼインヒビターの例には、ホルメスタン(4-OHアンドロステンジオン)、エクセメスタン(ステロイド性、非可逆的(タイプ1)インヒビター)、アナストロゾール(Arimidex)およびレトロキソール(非ステロイド性、可逆的(タイプ2)インヒビター)が含まれる。両方のタイプのインヒビターの使用が有用な患者もいるであろう(Harper-Wynne & Coombes (1999) Eur J Cancer 35, 744-746)。
また、骨粗鬆症、骨折又は他の筋骨格疾患のリスクに対処するために2ホスホン酸塩および/またはカルシウム補助剤を含有することが有用でありうる。
【0064】
本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一以上の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤とを含む子宮内膜症に対処するためのキット・オブ・パーツを包含する。
また、本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤とを含む組成物を包含する。
さらに、本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤とを含む医薬の使用のための組成物を包含する。
【0065】
加えて、本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤と、薬理学的許容性のある担体、賦形剤又は希釈剤を含む医薬組成物を包含する。
本発明は雌性個体の子宮内膜症に対処する方法であり、該方法が雌性個体にPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子(上記記載のような)と、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を投与することを含む方法を包含する。
【0066】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤とエストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する作用剤を連続的に又は(実質的に)同時に投与することができることが理解されるであろう。それらは同じ医薬製剤又は医薬内にあってもよいし、別々に製剤化又は投与されてもよい。
本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤との組合せを雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製への使用を包含する。
【0067】
本発明は、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製への使用であり、該個体はエストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を投与されている使用を包含する。たとえ雌性個体が前記医薬を投与される前(又は投与された後)に該作用剤を投与された(又は投与される)場合でも、典型的に雌性個体は医薬として同時にエストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する作用剤を投与される。
本発明は、エストロゲンレベルを低下させるかエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製への使用であり、該個体はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、又はPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を投与されている使用を包含する。たとえ雌性個体が前記医薬を投与される前(又は投与の後)に作用剤又は核酸分子を投与された(又は投与される)場合でも、典型的に雌性個体は医薬として同時に作用剤又は核酸分子が投与される。
【0068】
本明細書で示した文書のすべては出典明記により全体に組み込まれる。
本明細書中の既に発行された文書のリストまたは考察は、文書が最先端又は共通した一般的な知識であると認識する上で必ずしも必要でない。
本発明を以下の図及び実施例によってより詳細に記載する。
【実施例】
【0069】
実施例1:月経周期中のヒト子宮内膜におけるプロキネチシン(EG−VEGFおよびBv8)およびそのレセプターの発現と局在
概要
2つの非常に相同なGタンパク結合レセプター、PKR1およびPKR2である、プロキネチシン(PK1およびPK2、それぞれ内分泌腺血管内皮成長因子(EG−VEGF)およびBv8としても知られる)は、内分泌組織の新規の血管形成因子として同定された。しかしながら、子宮におけるそれらの発現および分布についての情報はほとんどなかった。
本研究の目的は、正常なヒト子宮内膜におけるプロキネチシンおよびそれらのレセプターの発現を示すことと、月経周期中のそれらの発現における時間的変化を調べることである。加えて、プロゲステロンによるPK1の調節を、インビトロでインキュベートした正常な子宮内膜組織において検討した。
我々は、月経周期中の子宮内膜組織におけるプロキネチシンおよびそのレセプターの発現および局在化を調査した。規則的な月経周期の女性から子宮内膜組織(n=35)を得た。Lothian Research Ethics委員会からの倫理的承認と書面でのインフォームドコンセントを得た。PK1、PK2およびそれらのレセプターの経時的発現を、リアルタイム(Taqman)量的RT−PCRによって評価した。PK1の局在化は免疫組織化学によって調べ、PK2の分布について、PKR1およびPKR2は、インサイツハイブリダイゼーションによって検討した。加えて、我々は、PK1の発現に対するプロゲステロンの効果を検討した。子宮内膜組織(n=5)は1μMプロゲステロンにて24時間インキュベートし、RNAを抽出して、量的RT−PCRに用いた。
【0070】
PK2の発現は周期によって変化しないのに対して、PK1発現は増殖期(P<0.05)と比較して月経周期の分泌期において有意に増加した。PKR1およびPKR2はともに、後期分泌期から月経期への変化の間の子宮内膜組織において有意な上方制御が示された(P<0.05)。PK1、PK2、PKR1およびPKR2は、子宮内膜の腺性上皮細胞、間質性細胞および内皮細胞と、子宮筋層の内皮細胞に局所化していた。PKR2と比較してPKR1でより大きな染色強度が観察された。
これらのデータにより、ヒト子宮内膜におけるプロキネチシンおよびそれらのレセプターの周期的調節が確認され、子宮内膜血管機能における新規の血管形成因子としての働きが示唆される。
【0071】
要旨
本研究ではプロキネチシン1(PK1又はEG−VEGF)およびプロキネチシン2(PK2又はBv8)、およびそれらのレセプター(PKR1およびPKR2)の経時的な発現を妊娠していないヒト子宮内膜において検討した。PK1の発現(量的RT−PCRによる)は、増殖期と比較して、月経周期の分泌期において有意に増加した(p<0.05)。PKR1およびPKR2発現が後期分泌期と比較して月経期で有意に上昇する一方、PK2発現は月経周期の時期に有意な変化がみられなかった。
免疫組織化学によると、PK1は、子宮内膜の腺性上皮細胞、間質性細胞および血管内皮細胞と、子宮筋層の内皮および平滑筋細胞に局所化されていた。PK1と同じ部位にPK2の弱い反応が検出された。PKR1の発現は試料によって異なるが、いくつかの組織、特に機能層の腺性上皮細胞、間質性細胞および内皮細胞と、子宮筋層の内皮細胞において強い反応が見られた。対照的に、PKR2はわずかに発現されるのみであった。1μMプロゲステロンでの子宮内膜組織の処置によって、PK1の発現は対照と比較して2.91倍上昇した(p<0.05)。これらのデータにより、ヒト子宮内膜におけるプロキネチシンおよびそれらのレセプターの局在化および周期的な調節が確認された。
【0072】
材料および方法
患者および組織採取
月経周期の種々の段階の子宮内膜生検を、生検採取前の3ヶ月間にホルモン調製を受けていない規則的な月経周期の(25−35日)女性から集めた。試料は子宮内膜吸引キュレット(ピペット、Laboratoire CCD, Paris, France)を使って、又は良性の婦人科的兆候のために子宮切除術を受けた女性から全厚(機能層及び基底-子宮筋層結合部を含む)の子宮内膜生検を採取した。採取後すぐに、組織をドライアイス中で急速に凍結し、−70℃で保存し(RNA抽出のため)、中性緩衝ホルマリン(NBF)中で固定し、ワックスに埋め込むか(免疫組織化学的分析のため)、又はRPMI1640(2mmol/l L−グルタミン、100Uペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含む)中に置き、研究室に移してインビトロ培養を行った。
生検は申告された最終月経期(LMP)に基づいて日付を付け、Noyes及び共同者の基準に従って組織検査によって確認した(Noyes等, Am. J. Obstet. Gynecol. 122: 262-263)。さらに生検時の循環エストラジオール及びプロゲステロン濃度は、申告されたLMPと月経周期段階の組織検査との両方で一致した。試料は、月経周期の時期に応じて、月経期(第1−4日目)、初期〜中期増殖期(EP−MP;第5−10日目)、後期増殖期〜黄体期(LP−Ov;第11−14日目)、初期分泌期(ES;第15−18日目)および中期〜後期分泌期(MS−LS;第19−28日目)に分類した。ロジアン・リサーチ倫理委員会(Lothian Research Ethics Committee)から倫理的承認を得て、組織の採集前に全被験者から書面によるインフォームド・コンセントを得た。
【0073】
Taqman量的RT−PCR
製造者の指示書に従って、Tri−Reagent(Sigma, Poole, UK)を用いて月経周期を通して得た子宮内膜生検(n=35)からRNAを抽出した。RNA試料を定量して、5.5mmol/l MgCl、0.5mmol/lの各デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、2.5μmol/lランダムヘキサマー、リボヌクレアーゼインヒビター(0.4U/μl)及び1.25U/μlマルチスクラブ逆転写酵素(すべてApplied Biosystems, Warrington, UKより)を用いて逆転写を行った。各逆転写反応液にRNA(400ng)を加えて、25℃で90分、48℃で45分、及び95℃で5分で試料をインキュベートした。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の反応混合液は、1×マスターミックス、リボソーム18Sフォワード及びリバースプライマー、リボソーム18Sプローブ(50nmol/l;すべてApplied Biosystems, Warrington, UKより)、PK1、PK2、PKR1およびPKR2(300nmol/l)のフォワード及びリバースプライマー、及びそれらのプローブ(200nmol/l)(すべてBiosource UK, Nivelles, Belgiumより)からなる。反応混合液(48μl)をチューブに等分割し、2μlのcDNAを加えた。分割した24μlの試料と、ポジティブ及びネガティブコントロールをPCRプレートに設置し、光学キャップでウェルを密閉した。ABI Prism7700(Applied Biosystems, Warrington, UK)を用いてPCR反応を行った。すべてのプライマー及びプローブはPRIMERエクスプレスプログラム(Applied Biosystems, Warrington, UK)によって設定した。プライマーおよびプローブの配列を表1に示す。データは、Sequence Detectorバージョン1.6.3(Applied Biosystems, Warrington, UK)を用いて製造者の指示に従って分析して処理した。結果は、すべての反応に含まれる内因性ポジティブ基準値(子宮内膜組織の単一試料から得たcDNA)との相対で表す。
【0074】
インサイツハイブリダイゼーション
PK2、PKR1およびPKR2用に特別に合成されたオリゴヌクレオチド二重フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識cDNAプローブをBiognostik(Gottingen, Germany)から入手した。月経周期全体から採取した全厚ヒト子宮生検(n=12)から切片(5μM)をゼラチン被覆スライド上に切り取った。切片のワックス除去を行い、再水和した後、プロテイナーゼK処理(50mmol/l EDTAを含む100mmol/lトリス−HCl pH7.6中20μg/ml)を37℃で15分間行い、cDNAプローブのアクセスを高めた。切片をジエチルピロカルボネート処理水中で洗浄後、あらかじめ95℃で熱処理したプローブを加えたハイブリダイゼーションバッファー25μlを用いて30℃で4時間プレハイブリを行った。その後、PKR1では6U/μl、PK2およびPKR2には12U/μlのcDNAプローブを含むハイブリダイゼーションバッファー中で30℃で終夜ハイブリダイズを行った。ハイブリダイゼーション後、1×標準的クエン酸生理食塩水(SSC)にて室温で5分間(2回)及び0.1×SSCにて39℃で15分間(2回)の洗浄を行った。TBSですすいだ後、10%(v/v)Hを含むメタノールにて内因性のペルオキシダーゼ活性を失活した。付加的増幅工程を有する標準的免疫組織化学的試薬(TSA Biotin System, NEN Life Science Products, Hounslow, UK)を使用してFITC標的プローブを検出した。切片を30分間ブロッキングバッファーにてインキュベートした。共役抗−FITC−西洋わさびペルオキシダーゼ(Roche, Diagnostics Ltd.,Lewes, UK)を1/200の希釈率でブロッキング緩衝液に加え、切片を30分間インキュベートした。洗浄後、ビオチニルチラミド増幅試薬(1/50)を各スライドに加え、15分間インキュベートした。洗浄後ストレプトアビジン−西洋わさびペルオキシダーゼ(1/100)を加え、30分間インキュベートし、プローブの局在を3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)基質で可視化した。バックグラウンドハイブリダイゼーションを評価するために同じ比率のシトシン(C)及びグアニン(G)塩基をPK2、PKR1およびPKR2プローブとして含む二重FITC標識オリゴヌクレオチドプローブで対照切片を処理した。全処理は特に記載のない限り室温で行った。
【0075】
免疫組織化学
月経周期を通して採取した子宮内膜切片(n=12)(5μm)はキシレンでワックス除去し、漸増濃度のエタノールを使用して再水和した。煮沸した0.1%クエン酸バッファー(pH3.0)中で圧力機で5分間、切片を処理することによって抗原検索を行った。室温の10%(v/v)Hを含むメタノールにより内在性のペルオキシダーゼ活性を失活した。非免疫のブタ血清(20%血清PBS)を1時間適用して、1/2000に希釈したウサギ抗ヒトプロキネチシン1(Phoenix Pharmaceuticals Inc., Belmont, CA)とともに4℃で終夜インキュベーションした。そして、色素原としてDABを用いてアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ検出システムを適用した(DAKO Ltd.,Cambridge, UK)。
【0076】
組織培養
子宮内膜生検(n=5)をはさみで微細に細かく切り刻んで、2つに分けた。組織を、加湿した5%CO恒温器中で、100IUペニシリンおよび100μgストレプトマイシンを含むL-グルタミン(Invitrogen Ltd., Paisley, UK)を添加した2mlのフェノールレッドフリーD-MEM/F-12培地にて37℃で終夜インキュベートした。次いで、組織を、1μMプロゲステロンまたは当量のエタノールの何れかが含まれる同じ培地中で24時間処理した。
【0077】
統計
適切な場合は、データをANOVA統計分析及びフィッシャーPLSD検定にかけ(Statview 4.0;Abacus Concepts Inc.,USA)、p<0.05の場合に統計的に有意であるとした。
【0078】
結果
月経周期中のPK1およびPK2およびそのレセプターの発現をリアルタイム量的RT−PCRによって調べた(図1a)。調べたすべての試料(N=35)でPK1が検出され、月経周期の増殖期(第5−14日目)と比較して分泌期(第15−28日目)で有意に発現が亢進されていた(107.35±24.07対3.29±0.98;p<0.01)。周期の月経期におけるPK1の発現(84.43±40.52)は増殖期または分泌期と有意な差はなかった。また、調べたすべての試料においてPK2の発現がみられたが(図1b)、月経周期の段階と有意差は示されなかった(月経期:5.44±2.53;増殖期:3.17±0.61;分泌期2.88±0.47)。PKR1およびPKR2の発現は月経周期の増殖期および分泌期と比較して違いはなかった(それぞれ1.38±0.16対1.21±0.19および3.08±0.52対3.45±0.62)が、分泌期と比較して月経期ではPKR1およびPKR2ともに有意に発現が高かった(3.17±2.26;16.16±12)(PKR1ではp<0.05;PKR2ではp<0.01)(図1cおよび1d)。また、PKR2に関して月経期および増殖期の間に有意差があった(p<0.01)。
月経周期を通して採取した全厚のヒト子宮内膜生検におけるPK1の免疫組織化学染色を行った(図2a−2c)。反応は可変的でありネガティブな組織もあった。機能層および基底層の腺性上皮細胞の細胞質および核周囲に発現が検出された(図2bおよび2c)。機能層の内皮細胞および間質性細胞に核周辺免疫反応が検出され、基底層の内皮細胞および間質性細胞はより弱い染色が観察された。また、子宮筋層の血管に並ぶ内皮細胞および子宮筋平滑筋細胞にも核周辺に免疫反応が示された。
【0079】
インサイツハイブリダイゼーションによりPK2発現を調べた(図2d−2f)。一般的に、発現は弱く、調べた試料すべてにはみられなかった。上皮の管腔表面に対して強く染色される主に機能層(図2f)の腺性上皮細胞の細胞質に反応が検出された。また、機能層の間質性細胞および上皮細胞にわずかに反応が表れ(図2f)、基底層にも血管染色されるものもあった。また、まれに子宮筋平滑筋細胞が弱く染色される子宮筋層の脈管構造にもPK2が発現された。
インサイツハイブリダイゼーションにより子宮内膜にPKR1の強い発現が示されたが、月経周期の後期増殖期から中期分泌期に採取した試料はとても弱いか、ネガティブなPKR1染色を示した。機能層および基底層の腺性上皮細胞並びに両層の内皮細胞の細胞質に反応が検出された(図3a−3c)。また間質性細胞も反応を示すが、機能層でより強かった(図3c)。子宮筋層の血管に顕著なPKR1発現があり、平滑筋細胞も反応を示した。PKR2はPKR1よりあまり発現されず(図3d−3f)、染色は弱く、主に機能層の腺性上皮細胞および内皮細胞の細胞質に限定していた(図3f)。
月経周期の分泌期にPK1の発現が著しく上方制御されることにより、プロゲステロンによりPK1が調節されている可能性が示唆された。ゆえに、この仮定を調べるために、子宮内膜組織試料(n=5)を1μMプロゲステロンまたは当量のエタノール存在下にて24時間インキュベートした。TaqmanRT−PCRにより対照と比較すると、プロゲステロンとともにインキュベートした組織のPK1発現は2.91(±0.75)倍の増加を示した。
【0080】
表1

【0081】
実施例2:PK1アンタゴニストを用いた月経過多の治療
月経過多に罹患した患者に、公開された米国特許出願第2002/0192634号に記載されるモノクローナル抗体4H9などの抗PK1抗体を、治療部位での活性作用剤の治療的濃度が治療期間を通じて理想的にはEC90のレベルに、好ましくはEC50以下にならないように維持される用量及び頻度で投与する。典型的には、少なくとも10μg/mlの濃度に抗体を維持する。この治療は、患者の容認性、副作用の回避及び全身的バイオアベイラビリティに応じて、経口的に、あるいはより局所的に処方される。
【0082】
実施例3:PK1アンタゴニストを用いた月経困難症の治療
月経困難症に罹患した患者に、公開された米国特許出願第2002/0192634号に記載されるモノクローナル抗体4H9などの抗PK1抗体を、治療部位での活性作用剤の治療的濃度が治療期間を通じて理想的にはEC90のレベルに、好ましくはEC50以下にならないように維持される用量及び頻度で投与する。典型的には、少なくとも10μg/mlの濃度に抗体を維持する。この治療は、患者の容認性、副作用の回避及び全身的バイオアベイラビリティに応じて、経口的に、あるいはより局所的に処方される。
【0083】
実施例4:PK1アンタゴニストを用いた子宮内膜症の治療
子宮内膜症に罹患した患者に、公開された米国特許出願第2002/0192634号に記載されるモノクローナル抗体4H9などの抗PK1抗体を、治療部位での活性作用剤の治療的濃度が治療期間を通じて理想的にはEC90のレベルに、好ましくはEC50以下にならないように維持される用量及び頻度で投与する。典型的には、少なくとも10μg/mlの濃度に抗体を維持する。この治療は、患者の容認性、副作用の回避及び全身的バイオアベイラビリティに応じて、経口的に、あるいはより局所的に処方される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】月経周期中のヒト子宮内膜におけるPKI(a)、PK2(b)、PKR1(c)及びPKR2(d)の量的RT−PCR。それぞれの記号は一つの組織試料を表す。平均を棒線で示した。
【図2】(a−c)ヒト子宮内膜組織(機能層及び基底-子宮筋層結合部)におけるPK1の免疫組織学的局在。基底層(B)及び機能層(F)の両方に腺性上皮性染色(G)がみられ、子宮筋層(M)に平滑筋細胞の反応が検出された。機能層(図2b)及び基底層(図2c)に間質性細胞の発現が検出され、組織全体に内皮細胞の反応が見られた(図2b及び2cの矢印で示す)。NEG=ネガティブコントロール;大きさの基準=100μM(図2a)及び50μM(図2b)。(d−f)ヒト子宮内膜組織(機能層及び基底-子宮筋層結合部)におけるPK2のインサイツハイブリダイゼーション。PK2は、表面皮覆組織(SE)に対して強い反応性を有する基底層(B)(図2f)及び機能層(F)(図2e)の腺性上皮細胞(G)で発現した。反応性は、主に機能層の間質性細胞および内皮細胞に検出された(図2fの矢印で示す)。
【図3】(a−c)ヒト子宮内膜組織(機能層及び基底-子宮筋層結合部)におけるPKR1のインサイツハイブリダイゼーション。腺性上皮細胞(G)および間質性細胞(図3b)の機能層(F)、および基底層(B)の腺性上皮細胞に強い染色が検出された。また、PKR1は、子宮内膜および子宮筋層(M)の全体にわたる内皮細胞(図3cの矢印で示す)および、子宮筋層平滑筋細胞に発現した。NEG=ネガティブコントロール;大きさの基準=100μM(図3a)及び50μM(図3b)。SE=表面被覆組織。(d−f)ヒト子宮内膜組織(機能層及び基底-子宮筋層結合部)におけるPKR2のインサイツハイブリダイゼーション。腺性上皮細胞(G)および内皮細胞の子宮内膜(F)の機能層において主にPKR2の弱い発現が検出された(図3fの矢印で示す)。NEG=ネガティブコントロール;大きさの基準=100μM(図3d)及び50μM(図3e)。SE=表面被覆組織。
【図4】24時間の1μMプロゲステロン処置に応答する子宮内膜組織(n=5)におけるPK1発現。結果は、PK1±SEM(*はp<0.05を意味する)の平均倍数増加として表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌性個体の月経過多、月経困難症又は子宮内膜症に対処する方法であり、プロキネチシンレセプター(PKR)に対するプロキネチシン1(PK1)の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を該個体に投与することを含む方法。
【請求項2】
個体にトラネキサム酸又はメフェナム酸を投与することを更に含む、請求項1に記載の月経過多に対処する方法。
【請求項3】
個体にエストロゲンレベルを低下させる、または、エストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を投与することを更に含む、請求項1に記載の子宮内膜症に対処する方法。
【請求項4】
雌性個体の月経過多、月経困難症または子宮内膜症に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子の使用。
【請求項5】
雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸またはメフェナム酸との組合せの使用。
【請求項6】
トラネキサム酸またはメフェナム酸を投与される雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子の使用。
【請求項7】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を投与される雌性個体の月経過多に対処するための医薬の調製における、トラネキサム酸またはメフェナム酸の使用。
【請求項8】
雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤との組合せの使用。
【請求項9】
エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を投与される雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製における、PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子の使用。
【請求項10】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤のそれぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を投与される雌性個体の子宮内膜症に対処するための医薬の調製における、エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤の使用。
【請求項11】
エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤が、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、GnRHアンタゴニスト、抗エストロゲンまたはエストロゲン合成インヒビターである、請求項3に記載の方法または請求項8ないし10の何れか一に記載の使用。
【請求項12】
GnRHアゴニストが、リュープロレリン、ブセレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ナファレリン、デスロレリン又はヒストレリン/サプレリンである、請求項11に記載の方法または使用。
【請求項13】
GnRHアンタゴニストが、テベレリクス、アバレリクス、セトロレリクス又はガニレリクスである、請求項11に記載の方法または使用。
【請求項14】
抗エストロゲンが、タモキシフェン、ファスロデクス、イドキシフェン、ラロキシフェン又はEM−652である、請求項11に記載の方法または使用。
【請求項15】
エストロゲン合成インヒビターが、アロマターゼインヒビター、例えばホルメスタン、エクセメスタン、アナストロゾール又はレトロキソールである、請求項11に記載の方法または使用。
【請求項16】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が、PKRのPK1媒介性シグナル伝達を阻害、減少または混乱させる、請求項1ないし15の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項17】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が、PKRへのPK1結合を阻害、減少または混乱させる、請求項1ないし15の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項18】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が、PK1とPKR間の相互作用またはPKRと関連Gタンパク質との相互作用に影響し、PK1-PKR媒介性シグナル伝達経路を阻害または混乱させる、請求項1ないし15の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項19】
前記作用剤がPK1のアンタゴニストである、請求項1ないし18の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項20】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が、PK1を標的とするアンチセンスRNA、PK1を標的とするリボザイム、PK1を標的とする小干渉RNA(siRNA)、PK1遺伝子と三重ヘリックスを形成する核酸分子、PKRの断片または抗PK1抗体である、請求項1ないし19の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項21】
PK1アンタゴニストが抗PK1抗体である、請求項19または20に記載の方法または使用。
【請求項22】
抗PK1抗体が、公開された米国特許出願第2002/0192634号に記載の1C6、2A3、2A8および4H9から選択される、請求項21に記載の方法または使用。
【請求項23】
PKRがプロキネチシンレセプター1(PKR1)である、請求項1ないし18の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項24】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤がPKR1のアンタゴニストである、請求項23に記載の方法または使用。
【請求項25】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が、PKR1を標的とするアンチセンスRNA、PKR1を標的とするリボザイム、PKR1を標的とするsiRNA、PKR1遺伝子と三重ヘリックスを形成する核酸分子、PK1の断片ないし配列変異体、または抗PKR1抗体である、請求項23または24の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項26】
PKRがプロキネチシンレセプター2(PKR2)である、請求項1ないし18の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項27】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤がPKR2のアンタゴニストである、請求項26に記載の方法または使用。
【請求項28】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が、PKR2を標的とするアンチセンスRNA、PKR2を標的とするリボザイム、PKR2を標的とするsiRNA、PKR2遺伝子と三重ヘリックスを形成する核酸分子、PK1の断片ないし配列変異体、または抗PKR2抗体である、請求項26または27の何れか一に記載の方法または使用。
【請求項29】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤をコードする核酸分子が、膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具経由で投与される、請求項1ないし3および11ないし28の何れか一に記載の方法。
【請求項30】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤をコードする核酸分子が、膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具経由の投与のために製剤化される、請求項4ないし28の何れか一に記載の使用。
【請求項31】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤それぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸またはメフェナム酸を含んでなる、月経過多に対処するためのキット・オブ・パーツ。
【請求項32】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤それぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を含んでなる、子宮内膜症に対処するためのキット・オブ・パーツ。
【請求項33】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤それぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、トラネキサム酸またはメフェナム酸を含んでなる組成物。
【請求項34】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤それぞれをコードする少なくとも一の核酸分子と、エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤を含んでなる組成物。
【請求項35】
医薬における使用のための、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項36】
請求項33または請求項34に記載の組成物と、薬剤的に受容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項37】
PKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤、またはPKRに対するPK1の効果を減退させる少なくとも一の作用剤それぞれをコードする少なくとも一の核酸分子を含んでなる、膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具。
【請求項38】
トラネキサム酸またはメフェナム酸をさらに含んでなる、請求項37に記載の膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具。
【請求項39】
エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤をさらに含んでなる、請求項37に記載の膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具。
【請求項40】
PKRに対するPK1の効果を減退させる作用剤が請求項16ないし28の何れか一に定義されるものである、請求項31または32に記載のキット・オブ・パーツ、または請求項33ないし35の何れか一に記載の組成物、または請求項36に記載の医薬組成物、または請求項37ないし39の何れか一に記載の膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具。
【請求項41】
エストロゲンレベルを低下させるかまたはエストロゲンレセプターに拮抗する少なくとも一の作用剤が請求項11ないし15の何れか一に定義されるものである、請求項32に記載のキット・オブ・パーツ、または請求項34または35に記載の組成物、または請求項36に記載の医薬組成物、または請求項38または39に記載の膣リングないしタンポンないし子宮内避妊器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−526903(P2007−526903A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524412(P2006−524412)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003600
【国際公開番号】WO2005/021750
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(505103976)アーダナ バイオサイエンス リミテッド (11)
【Fターム(参考)】