説明

有効成分の供給量管理システム及び供給量管理方法

【課題】単位時間内に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の供給量を精度よく管理することができる供給量管理システムを提供する。
【解決手段】供給量管理システム1は、プラント内において、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の供給量を管理するシステムであり、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物の流量を連続的に計測する流量計測部2と、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の濃度を連続的に計測する濃度計測部3と、流量計測部2によって計測されるC4混合物の流量データ及び濃度計測部3によって計測されるC4混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出する算出部7と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素原子数が4である炭化水素混合物(以下「C4混合物」と記す場合もある)に含まれる有効成分の供給量を管理する供給量管理システム及び供給量管理方法に関する。特に、本発明は、石油精製プラント及び/又は石油化学プラント内において、C4混合物を発生する発生装置から、C4混合物に含まれる有効成分に物理的処理又は化学的処理を行う処理装置に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の供給量を管理する供給量管理システム及び供給量管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製プラントのFCC(流動接触分解)設備や石油化学プラントのナフサクラッカーからはC4混合物が発生する。C4混合物には、ブタジエンやイソブチレンが含まれている。ブタジエンは、抽出されて、スチレン・ブタジエンゴム等の合成ゴムの原料として利用されており、イソブチレンをはじめとするオレフィン類は、ガソリン等の燃料の原料として利用されている。更に、ブタジエンやイソブチレンが抽出された後に残存したC4混合物は、燃料として利用されたり、ナフサクラッカーへ回収して再利用されたりしている。
【0003】
また、近年、エチレンと残存したC4混合物に含まれるノルマルブテンとを原料として、プロピレンを製造する方法が普及しつつある。そして、コンビナートを形成する複数の企業内にある複数の石油精製プラントのFCC設備や複数の石油化学プラントのナフサクラッカーで発生するC4混合物を集積し、プロピレンに転換する技術の開発が進められている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「平成18〜21年度技術開発事業の概要」、[online]、石油コンビナート高度統合運営技術研究組合、[平成22年11月2日検索]、インターネット<URL:http://www.ring.or.jp/pj/pdf/205.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンビナートを形成するそれぞれの企業内にある複数の石油精製プラントのFCC設備や複数の石油化学プラントのナフサクラッカーで発生するC4混合物は、プロピレンへの転換に利用される有効成分とプロピレンへの転換に利用されない成分とを含んでおり、それぞれのFCC設備やそれぞれのナフサクラッカーの運転条件によって、C4混合物におけるこれら成分の組成が大きく変動する。
【0006】
そのため、コンビナートを形成するそれぞれの企業内にある複数の石油精製プラントのFCC設備や複数の石油化学プラントのナフサクラッカーで発生するC4混合物をパイプライン等によって集積し、集積されたC4混合物をプロピレンへの転換に利用しようとする場合、それぞれの企業内にあるそれぞれの設備や装置で発生するC4混合物に含まれ、プロピレンへの転換に利用される有効成分の供給量を適正に管理する必要があった。
【0007】
ところで、それぞれの企業内にあるそれぞれの設備や装置で発生するC4混合物に含まれ、プロピレンへの転換に利用される有効成分の供給量は、従来は、次のような方法によって管理されていた。即ち、まず、それぞれの設備や装置からパイプライン等によって供給されるC4混合物の一部を代表サンプルとして採取する。次に、ガスクロマトグラフィー等の分析手法を用いて、採取した代表サンプルの組成分析を行う。その後、流量計によって計測された流量データと上述した組成分析結果とから、C4混合物に含まれる有効成分量の供給量を算出する。
【0008】
しかしながら、このような従来からの有効成分の供給量の算出方法では、代表サンプルの採取やガスクロマトグラフィーによる組成分析等の操作を手動で実施するため、多大な労力が必要であった。しかも、単位時間当たりに実施できる分析回数が限定されており、特にC4混合物の組成の変動が大きい場合、上述したような分析結果を基に算出された有効成分の供給量が、実際の有効成分の供給量と大きく乖離してしまう場合もあった。
【0009】
そこで、本発明は、単位時間内に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の供給量を精度よく管理することができる供給量管理システム及び供給量管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決のため、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明によれば、上記課題を解決できることを見出し、これを完成させるに至った。すなわち、上記課題の解決のため、本発明にかかる供給量管理システムは、石油精製プラント及び/又は石油化学プラント内において、炭素原子数が4である炭化水素混合物を発生する発生装置から、炭化水素混合物に含まれる有効成分に物理的処理又は化学的処理を行う処理装置に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を管理する供給量管理システムであって、発生装置から処理装置に供給される炭化水素混合物の流量を連続的に計測する流量計測手段と、発生装置から処理装置に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度を連続的に計測する濃度計測手段と、流量計測手段によって計測される炭化水素混合物の流量データ及び濃度計測手段によって計測される炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出する算出手段と、を備えている。
【0011】
また、上記課題の解決のため、本発明に係る供給量管理方法は、石油精製プラント及び/又は石油化学プラント内において、炭素原子数が4である炭化水素混合物を発生する発生装置から、炭化水素混合物に含まれる有効成分に対して物理的処理又は化学的処理を行う処理装置に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を、供給量管理システムによって管理する供給量管理方法であって、供給量管理システムの流量計測手段が、発生装置から処理装置に供給される炭化水素混合物の流量を連続的に計測する流量計測ステップと、供給量管理システムの濃度計測手段が、発生装置から処理装置に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度を連続的に計測する濃度計測ステップと、供給量管理システムの算出手段が、流量計測ステップで計測された炭化水素混合物の流量データ及び濃度計測ステップで計測された炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出する算出ステップと、を備えている。
【0012】
本発明に係る供給量管理システム及び供給量管理方法では、発生装置から処理装置に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度が濃度計測手段によって連続的に計測され、この連続的に計測された有効成分の濃度データと炭化水素混合物の流量データとを用いて、算出手段により、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量が算出される。この場合、供給量を算出する際に用いる有効成分の濃度データが連続的に計測されるため、発生装置から処理装置に炭化水素混合物を連続的に供給する際にその炭化水素混合物に含まれる有効成分の組成が変動しても、その変動を確実に捉えることができ、算出される有効成分の供給量の値に反映させることができる。その結果、単位時間内に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を精度よく管理することができる。
【0013】
また、本発明に係る供給量管理システムは、発生装置から処理装置に供給される炭化水素混合物の温度を計測する温度計測手段と、温度計測手段によって計測される炭化水素混合物の温度データを用いて、流量計測手段によって計測される炭化水素混合物の流量データを補正する補正手段と、を更に備えていてもよい。この場合、実際に流量を計測する際の温度条件が、流量計測手段の設計条件との間で差を生じた場合であっても、温度計測手段によって得られる温度データを基に流量計測手段で計測される流量を補正し、炭化水素混合物の流量を精度よく計測することができる。その結果、このシステムによれば、炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を一層精度よく管理することができる。
【0014】
また、本発明に係る供給量管理システムでは、流量計測手段は、発生装置と処理装置との間に直列して設置される少なくとも二つの流量計から構成され、算出手段は、二つの流量計の器差が所定の範囲内の場合、二つの流量計の内、主となる一の流量計の流量データを用いて、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出し、主となる一の流量計の器差が所定の範囲内でない場合、二つの流量計の内、主でない他の流量計の流量データを用いて、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出するようにしてもよい。
【0015】
上述した構成の場合、器差が所定の範囲内である流量計を用いて計測を行うため、炭化水素混合物の流量データをより正確に計測でき、しかも、一方の流量計の器差が所定の範囲内でない場合であっても、他方の流量計を用いて計測を継続して行うことができるため、発生装置から処理装置へ供給される炭化水素混合物の流量を連続的に計測することを確実に実行することができる。なお、上述した二つの流量計は、容積式流量計又はタービン式流量計であることがより好ましい。
【0016】
また、本発明に係る供給量管理システムは、分散形制御システムを経由して通信回線によって流量計測手段及び濃度計測手段に接続され、流量計測手段によって計測される炭化水素混合物の流量データ、及び、濃度計測手段によって計測される炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを記憶する記憶手段を更に備え、算出手段は、記憶手段に記憶される炭化水素混合物の流量データ及び記憶手段に記憶される炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出するようにしてもよい。このような記憶手段を用いることにより、算出手段による有効成分の供給量の算出処理を容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る供給量管理システムでは、濃度計測手段は、炭化水素混合物に含まれる有効成分として、イソブチレン、1‐ブテン、トランス‐2‐ブテン及びシス‐2‐ブテンからなる群から選択される少なくとも一種の有効成分の濃度を計測し、算出手段は、流量データ及び当該有効成分の濃度データを用いて、発生装置から処理装置に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出するようにしてもよい。この場合、炭化水素混合物に含まれるイソブチレン、1‐ブテン、トランス‐2‐ブテン及びシス‐2‐ブテンからなる群から選択されるいずれの有効成分に対しても、その供給量を高精度に管理することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る供給量管理システム及び供給量管理方法によれば、単位時間内に供給される炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を精度よく管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】石油精製プラント等における発生装置と処理装置とを模式的に示した図である。
【図2】本実施形態における供給量管理システムのブロック図である。
【図3】本実施形態における供給量管理方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る供給量管理システムが用いられるプラント内に設置されている発生装置M1及び処理装置M2について説明する。発生装置M1は、石油精製プラントや石油化学プラント内において、炭素原子数が4の炭化水素混合物であるC4混合物を発生する装置である。発生装置M1としては、例えば、石油精製プラントのFCC(流動接触分解)設備や、石油化学プラントのナフサクラッカー等が例示される。これらの発生装置M1で発生するC4混合物には、イソブチレン、1−ブテン、トランス−2−ブテン又はシス−2−ブテンといった有効成分が含まれており、発生したC4混合物は、発生装置M1から処理装置M2にパイプラインPを通じて直接的又は間接的に供給されるようになっている。
【0022】
処理装置M2は、C4混合物に含まれる有効成分(例えば、イソブチレン、1−ブテン、トランス−2−ブテン又はシス−2−ブテンからなる群から選択される少なくとも1種の成分)に対して、物理的な処理又は化学的な処理を行う装置である。処理装置M2としては、例えば、ブテン変成装置やプロピレン転換装置等が例示される。発生装置M1と処理装置M2とは、上述したように、C4混合物を供給するためのパイプラインPによって互いに連結されており、その連結の途中に、後述する供給量管理システム1の流量計測部2、濃度計測部3及び温度計測部4が設置されている。
【0023】
続いて、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る供給量管理システム1について説明する。供給量管理システム1は、流量計測部2(流量計測手段)、濃度計測部3(濃度計測手段)、温度計測部4(温度計測手段)、分散形制御システム5、記憶部6(記憶手段)、算出部7(算出手段)、及び、出力部8を備えている。
【0024】
流量計測部2は、石油精製プラント内および/または石油化学プラント内において、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物の流量を連続的に計測する部分である。流量計測部2は、図1に示されるように、発生装置M1と処理装置M2との間に直列して設置される二つの流量計2a,2bを含んで構成される。
【0025】
これら流量計2a,2bとしては、例えば、差圧式流量計、電磁式流量計、面積式流量計、超音波式流量計、軸流タービン式流量計、容積式流量計、渦式流量計等の流量計を用い、好ましくは、取引証明用流量計として一般的に用いられている容積式流量計または軸流タービン式流量計を用いる。流量計測部2を構成する流量計2a,2bは、計測したC4混合物の流量データを分散形制御システム5に出力する。
【0026】
濃度計測部3は、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物に含まれる有効成分(イソブチレン等)の濃度を連続的に計測する部分である。濃度計測部3は、図1に示されるように、発生装置M1と処理装置M2との間に設置される。濃度計測部3としては、プロセスガスクロマトグラフが挙げられ、例えば、横河電機(株)のGC1000(商品名)、ドイツSiemens AG社のMaxum(商品名)等を用いることができる。濃度計測部3は、計測したC4混合物に含まれる各有効成分の濃度データを分散形制御システム5に出力する。
【0027】
温度計測部4は、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物の温度を計測する部分である。温度計測部4は、図1に示されるように、発生装置M1と処理装置M2との間に設置される。温度計測部4としては、熱電対、測温抵抗体、放射温度計、バイメタル式温度計等を用い、好ましくは、取引証明用流量計で測定された流量を温度によって補正するために一般的に用いられている測温抵抗体を用いる。
【0028】
分散形制御システム5は、流量計測部2によって計測されたC4混合物の流量データと、濃度計測部3によって計測されたC4混合物に含まれる有効成分の濃度データと、さらに、温度計測部4によって計測されたC4混合物の温度データを、記憶部6に収集・記憶させるシステムである。分散形制御システム5は、流量計測部2と濃度計測部3とを通信回線L1〜L3,L5で記憶部6に接続し、さらに、温度計測部4を通信回線L4,L5で記憶部6に接続する。なお、分散形制御システム5は、計測された流量データ、濃度データ、及び温度データを、計測したタイミング(時刻など)情報を用いて互いに紐付けてから、記憶部6に記憶させる。
【0029】
分散形制御システム5としては、例えば、横河電機(株)のCENTUM(商品名)、(株)山武のAdvanced−PS(商品名)、(株)東芝のCIEMAC(商品名)等を用いることができる。
【0030】
また、分散形制御システム5は、温度計測部4によって計測されるC4混合物の温度データを用いて、流量計測部2によって計測されるC4混合物の流量データを補正する補正部9(補正手段)を備えている。この補正部9により、実際に流量を計測する際の温度条件が流量計測部2の設計条件との間で差を生じた場合などに、流量計測部2によって計測されたC4混合物の流量データが補正され、補正された流量データが上述したように記憶部6に記憶される。なお、本実施形態では、補正部9は、分散形制御システム5に備えられている構成となっているが、補正部9が分散形制御システム5とは別に独立した部分からなる構成であってもよい。
【0031】
記憶部6は、分散形制御システム5を経由して通信回線L1〜L3,L5によって流量計測部2と濃度計測部3とに接続され、流量計測部2によって計測されるC4混合物の流量データと、濃度計測部3によって計測されるC4混合物に含まれる有効成分の濃度データとを収集して記憶する部分である。また、記憶部6は、分散形制御システム5を経由して通信回線L4,L5によって温度計測部4にも接続され、温度計測部4によって計測されるC4混合物の温度データを収集して記憶する。なお、記憶された温度データは、例えば、上述した補正部9が記憶部6や算出部7等に設けられた際の補正用データとして用いられる。
【0032】
記憶部6としては、米国OSI Software社のPIsystem(商品名)、(株)山武のUniformance PHD(商品名)、米国Aspen Technology社のInfoPlus(商品名)、横河電機(株)のExaquantum(商品名)等のプラントデータ収集用リアルタイムデータベースを用いることができる。
【0033】
算出部7は、流量計測部2によって計測されるC4混合物の流量データ及び濃度計測部3によって計測されるC4混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出する部分である。具体的には、算出部7は、記憶部6にアクセスし、記憶部6に収集されているC4混合物の流量データとC4混合物に含まれる有効成分の濃度データとを乗算処理等することにより、単位時間内に供給されたC4混合物に含まれる有効成分の供給量を算出する。算出部7は、算出した有効成分の供給量データを出力部8に出力する。
【0034】
なお、本実施形態では、二つの流量計2a,2bを用いているため、同一の測定タイミングに対して、C4混合物の流量データが2つ存在することになり、算出部7は、算出に用いる流量データを特定する必要がある。そこで、算出部7は、例えば、以下のような判定を行い、一方の流量データを特定する。即ち、算出部7は、二つの流量計2a,2bの器差が所定の範囲内の場合、二つの流量計2a,2bの内、主となる一の流量計2a(「正」の流量計)の流量データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出する。一方、算出部7は、主となる一の流量計2aの器差が所定の範囲内でない場合、二つの流量計2a,2bの内、主でない他の流量計2b(「副」の流量計)の流量データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出する。
【0035】
算出部7としては、前述の記憶部6と同様に、米国OSI Software社のPIsystem(商品名)、(株)山武のUniformance PHD(商品名)、米国Aspen Technology社のInfoPlus(商品名)、横河電機(株)のExaquantum(商品名)等のプラントデータ収集用リアルタイムデータベースを用いることができる。
【0036】
算出部7に、前記のプラントデータ収集用リアルタイムデータベースのみでは実現できない機能を備える必要がある場合は、算出部7に、データベースマネジメントシステム(DBMS)を付加すればよく、データベースマネジメントシステムとしては、米国Oracle Corporation社のOracle Database(商品名)、米国Microsoft社の Microsoft SQL Server(商品名)、米国IBM社のDatabase2(商品名)等が挙げられる。
【0037】
出力部8は、算出部7で算出された有効成分の供給量データを外部に出力する部分である。出力部8は、通信インターフェースを含んで構成され、この通信インターフェースは、C4混合物に含まれる有効成分の供給量データの利用形態に応じて、例えば、ユーザーインターフェース、ハードウェアインターフェース、ソフトウェアインターフェース等の中から最適なものを選択することができる。
【0038】
続いて、上述した構成を備えた供給量管理システム1における供給量管理方法について、図3を参照して説明する。
【0039】
まず、流量計測部2が、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物の流量を連続的に計測する(ステップS1、流量計測ステップ)。流量計測部2は、計測したC4混合物の流量データを分散形制御システム5に出力する。
【0040】
また、温度計測部4が、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物の温度を計測する(ステップS2)。温度計測部4は、計測したC4混合物の温度データを分散形制御システム5に出力する。
【0041】
また、濃度計測部3が、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物に含まれる有効成分(イソブチレン等)の濃度を連続的に計測する(ステップS3、濃度計測ステップ)。濃度計測部3は、計測したC4混合物に含まれる各有効成分の濃度データを分散形制御システム5に出力する。
【0042】
続いて、C4混合物の流量データ、各有効成分の濃度データ、及び、温度データが分散形制御システム5に入力されると、分散形制御システム5は、必要に応じて温度データを用いて流量データを補正し、流量データと濃度データとを記憶部6に出力する。記憶部6は、これら流量データや濃度データを記憶する。
【0043】
続いて、算出部7は、流量計測部2によって計測されたC4混合物の流量データ及び濃度計測部3によって計測されたC4混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される各有効成分の供給量を算出する(ステップS4、算出ステップ)。
【0044】
具体的には、算出部7は、記憶部6にアクセスし、記憶部6に収集されているC4混合物の流量データとC4混合物に含まれる有効成分の濃度データとを用いて、単位時間内に供給されたC4混合物に含まれる有効成分の供給量を算出する。算出部7は、算出した有効成分の供給量のデータを出力部8に出力する(ステップS5)。そして、出力部8は、算出部7で算出された有効成分の供給量のデータを外部に出力(画面表示やデータ送信等)する。
【0045】
以上、本実施形態に係る供給量管理システム1及び供給量管理方法では、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物に含まれる各有効成分の濃度が濃度計測部3によって連続的に計測され、この連続的に計測された各有効成分の濃度データとC4混合物の流量データとを用いて、算出部7により、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量が算出される。
【0046】
このように、供給量を算出する際に用いる有効成分の濃度データが連続的に計測されるため、発生装置M1から処理装置M2にC4混合物を連続的に供給する際にC4混合物に含まれる有効成分の組成が変動しても、その変動を確実に捉えることができ、算出される有効成分の供給量の値に反映させることができる。その結果、本実施形態に係る供給量管理システム1及び供給量管理方法によれば、単位時間内に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の供給量を精度よく管理することが可能となる。
【0047】
また、供給量管理システム1は、発生装置M1から処理装置M2に供給されるC4混合物の温度を計測する温度計測部4と、温度計測部4によって計測されるC4混合物の温度データを用いて、流量計測部2によって計測されるC4混合物の流量データを補正する補正部9を更に備えている。このため、実際に流量を計測する際の温度条件が、流量計測部2の設計条件との間で差を生じた場合であっても、温度計測部4によって得られる温度データを基に流量計測部2で計測される流量を補正し、C4混合物の流量を精度よく計測することができる。その結果、本実施形態に係る供給量管理システム1及び供給量管理方法によれば、C4混合物に含まれる有効成分の供給量を一層精度よく管理することができる。
【0048】
また、供給量管理システム1では、流量計測部2は、発生装置M1と処理装置M2との間に直列して設置される少なくとも二つの流量計2a,2bから構成され、算出部7は、二つの流量計2a,2bの器差が所定の範囲内の場合、二つの流量計2a,2bの内、主となる一の流量計2aの流量データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出し、主となる一の流量計2aの器差が所定の範囲内でない場合、二つの流量計2a,2bの内、主でない他の流量計2bの流量データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出するようになっている。
【0049】
このため、供給量管理システム1によれば、器差が所定の範囲内である流量計2a,2bを用いて計測を行うため、C4混合物の流量データをより正確に計測でき、しかも、一方の流量計2aの器差が所定の範囲内でない場合であっても、他方の流量計2bを用いて計測を継続して行うことができるため、発生装置M1から処理装置M2へ供給されるC4混合物の流量を連続的に計測することを確実に実行することができる。
【0050】
また、供給量管理システム1は、分散形制御システム5を経由して通信回線によって流量計測部2及び濃度計測部3に接続され、流量計測部2によって計測されるC4混合物の流量データ、及び、濃度計測部3によって計測されるC4混合物に含まれる有効成分の濃度データを記憶する記憶部6を更に備え、算出部7は、記憶部6に記憶されるC4混合物の流量データ及びそのC4混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出するようになっている。このような記憶部6を用いていることにより、算出部7による有効成分の供給量の算出処理を容易に行うことができる。
【0051】
また、供給量管理システム1では、濃度計測部3は、C4混合物に含まれる有効成分として、イソブチレン、1‐ブテン、トランス‐2‐ブテン及びシス‐2‐ブテンからなる群から選択される少なくとも一種の有効成分の濃度を計測し、算出部7は、流量データ及び当該有効成分の濃度データを用いて、発生装置M1から処理装置M2に単位時間内に供給される有効成分の供給量を算出するようになっている。このため、本実施形態に係る供給量管理システム1によれば、C4混合物に含まれるイソブチレン、1‐ブテン、トランス‐2‐ブテン及びシス‐2‐ブテンからなる群から選択されるいずれの有効成分に対しても、その供給量を高精度に管理することができる。
【0052】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、供給量管理システム1が温度計測部4と補正部9とを備え、流量計測部2で計測されたC4混合物の流量を補正部9で補正するようになっていたが、C4混合物の温度が所定の範囲内に収まる場合等には、供給量管理システム1が温度計測部4や補正部9を備えていなくても、単位時間内に供給されるC4混合物に含まれる有効成分の供給量を精度よく管理することができる。
【0053】
また、本実施形態では、流量計測部2が2つの流量計2a,2bを備える構成となっていたが、流量計測部2が1つの流量計から構成されていてもよく、また、3つ以上の流量計から構成されていてもよい。また、本実施形態では、記憶部6に各種のデータを一旦記憶しておき、記憶されたデータを用いて、有効成分の供給量を算出していたが、記憶部6を備えずに、各計測部2,3等で計測されたデータを直接、算出部7に出力し、算出部7によって、そのまま有効成分の供給量を算出するようにしてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例)
【0055】
まず、発生装置M1で発生したC4混合物を、処理装置M2に次の状態で送出した。前日の朝6:00〜当日の朝6:00までの間(24時間)で送出したC4混合物の流量は、流量計測部2の積算値で98920kg/日であった。この送出したC4混合物の温度は、一日平均で34.6℃であった。濃度計測部3であるプロセスガスクロマトグラフの分析結果は、一日平均で、トランス−2−ブテンが36.8wt%、C−2―ブテンが17.5wt%、1−ブテンが2.2wt%であった。
【0056】
測定されたデータを、分散形制御システム5等へ格納し、算出部7で算出したところ、前日の朝6:00〜当日の朝6:00までの間に送出した流量は、トランス−2−ブテンが36403kg、C−2−ブテンが17311kg、1−ブテンが2176kgという結果を得ることができた。
【符号の説明】
【0057】
1…供給量管理システム、2…流量計測部、2a,2b…流量計、3…濃度計測部、4…温度計測部、5…分散形制御システム、6…記憶部、7…算出部、8…出力部、M1…発生装置、M2…処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油精製プラント及び/又は石油化学プラント内において、炭素原子数が4である炭化水素混合物を発生する発生装置から、前記炭化水素混合物に含まれる有効成分に物理的処理又は化学的処理を行う処理装置に供給される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を管理する供給量管理システムであって、
前記発生装置から前記処理装置に供給される前記炭化水素混合物の流量を連続的に計測する流量計測手段と、
前記発生装置から前記処理装置に供給される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度を連続的に計測する濃度計測手段と、
前記流量計測手段によって計測される前記炭化水素混合物の流量データ及び前記濃度計測手段によって計測される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、前記発生装置から前記処理装置に単位時間内に供給される前記有効成分の供給量を算出する算出手段と、
を備える供給量管理システム。
【請求項2】
前記発生装置から前記処理装置に供給される前記炭化水素混合物の温度を計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段によって計測される前記炭化水素混合物の温度データを用いて、前記流量計測手段によって計測される前記炭化水素混合物の流量データを補正する補正手段と、を更に備える請求項1に記載の供給量管理システム。
【請求項3】
前記流量計測手段は、前記発生装置と前記処理装置との間に直列して設置される少なくとも二つの流量計から構成され、
前記算出手段は、前記二つの流量計の器差が所定の範囲内の場合、前記二つの流量計の内、主となる一の流量計の流量データを用いて、前記発生装置から前記処理装置に単位時間内に供給される前記有効成分の供給量を算出し、前記主となる一の流量計の器差が前記所定の範囲内でない場合、前記二つの流量計の内、主でない他の流量計の流量データを用いて、前記発生装置から前記処理装置に単位時間内に供給される前記有効成分の供給量を算出する、請求項1又は2に記載の供給量管理システム。
【請求項4】
前記二つの流量計は、容積式流量計又はタービン式流量計である、請求項3に記載の供給量管理システム。
【請求項5】
分散形制御システムを経由して通信回線によって前記流量計測手段及び前記濃度計測手段に接続され、前記流量計測手段によって計測される前記炭化水素混合物の流量データ、及び、前記濃度計測手段によって計測される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを記憶する記憶手段を更に備え、
前記算出手段は、前記記憶手段に記憶される前記炭化水素混合物の流量データ及び前記記憶手段に記憶される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、前記発生装置から前記処理装置に単位時間内に供給される前記有効成分の供給量を算出する、請求項1〜4の何れか一項に記載の供給量管理システム。
【請求項6】
前記濃度計測手段は、前記炭化水素混合物に含まれる有効成分として、イソブチレン、1−ブテン、トランス−2−ブテン及びシス−2−ブテンからなる群から選択される少なくとも一種の有効成分の濃度を計測し、
前記算出手段は、前記流量データ及び当該有効成分の濃度データを用いて、前記発生装置から前記処理装置に単位時間内に供給される前記有効成分の供給量を算出する、請求項1〜5の何れか一項に記載の供給量管理システム。
【請求項7】
石油精製プラント及び/又は石油化学プラント内において、炭素原子数が4である炭化水素混合物を発生する発生装置から、前記炭化水素混合物に含まれる有効成分に対して物理的処理又は化学的処理を行う処理装置に供給される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の供給量を、供給量管理システムによって管理する供給量管理方法であって、
前記供給量管理システムの流量計測手段が、前記発生装置から前記処理装置に供給される前記炭化水素混合物の流量を連続的に計測する流量計測ステップと、
前記供給量管理システムの濃度計測手段が、前記発生装置から前記処理装置に供給される前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度を連続的に計測する濃度計測ステップと、
前記供給量管理システムの算出手段が、前記流量計測ステップで計測された前記炭化水素混合物の流量データ及び前記濃度計測ステップで計測された前記炭化水素混合物に含まれる有効成分の濃度データを用いて、前記発生装置から前記処理装置に単位時間内に供給される前記有効成分の供給量を算出する算出ステップと、
を備える供給量管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−103747(P2012−103747A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248873(P2010−248873)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(502053100)石油コンビナート高度統合運営技術研究組合 (72)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】