説明

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 生産効率を低下することなく、付着した異物、ゴミ等への対策が取られ、発光駆動時にリーク電流のない安定した有機EL素子の製造方法及び有機EL素子の提供。
【解決手段】 基板上に、少なくとも第1電極を含む陽極層と、発光層を含む有機化合物層と、第2電極を含む陰極層とを順次形成する工程を有する製造装置を使用し、前記発光層を含む有機化合物層の少なくとも一つの層が気相堆積装置を用いて形成する有機EL素子の製造方法において、前記気相堆積装置は蒸着室と、基板保持手段と、マスク配置手段と、原料蒸発手段とを有し、前記原料蒸発手段は前記堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配設され、堆積膜を形成する時、前記原料蒸発手段と前記堆積膜形成領域との位置関係は、前記堆積膜形成領域に対して前記原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにして行うことを特徴とする有機EL素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源やディスプレイパネル等として利用される有機エレクトロ・ルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とも言う)の製造方法及びこの製造方法により作製した有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物質を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子や書き込み光源アレイとしての用途が有望視されており、活発な研究開発が進められている。有機EL素子は、基板上に形成された第1電極(陽極又は陰極)と、その上に積層された有機発光物質を含有する有機化合物層(単層部又は多層部)すなわち発光層と、この発光層上に積層された第2電極(陰極又は陽極)とを有する薄膜型の素子である。この様な有機EL素子に電圧を印加すると、有機化合物層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られることが知られている。
【0003】
この様に、有機EL素子は薄膜型の素子であるため、1個又は複数個の有機EL素子を基板上に形成した有機ELパネルをバックライト等の面光源として利用した場合には、面光源を備えた装置を容易に薄型にすることが出来る。又、画素としての有機EL素子を基板上に所定個数形成した有機ELパネルをディスプレイパネルとして用いて表示装置を構成した場合には視認性が高い、視野角依存性がないなど、液晶表示装置では得られない利点がある。有機EL素子の構成を図9で説明する。
【0004】
図9は有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【0005】
図中、1は有機EL素子を示す。有機EL素子1は、基板101上に、第1電極(陽極)102と、正孔輸送層103と、発光層104と、電子注入層105と、第2電極(陰極)106と、封止層107とをこの順番に有している。
【0006】
本図に示される有機EL素子において、第1電極(陽極)102と発光層104又は正孔輸送層103の間に正孔注入層(不図示)を設けてもよい。又、第2電極(陰極)106と発光層104又は電子注入層105との間に電子輸送層(不図示)を設けてもよい。本図に示される有機EL素子1a及び有機EL素子1bでは、陽極(第1電極)102と基板101との間にガスバリア膜(不図示)を設けることが好ましい。
【0007】
本図に示す有機EL素子の層構成は一例を示したものであるが、他の代表的な有機EL素子の層構成としては次の構成が挙げられる。
【0008】
(1)基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極/封止層
(2)基板/陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極/封止層
(3)基板/陽極/正孔輸送層(正孔注入層)/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極/封止層
(4)基板/陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極/封止層
有機EL素子の場合、通常、第1電極(陽極)102側が観察側になり、第1電極(陽極)102には、ITO(酸化スズと酸化インジウム混合物)、IZO(酸化亜鉛と酸化インジウム混合物)、ZnO、SnO2、In23等が知られている。中でも、ITO電極は、90%以上の高い光透過率と、10Ω/□以下の低いシート抵抗値が可能で、液晶ディスプレイや太陽電池などの透明電極としても用いられている。又、IZO電極は、形成時に基板を加熱せずに所定の低い抵抗値が得られ、ITO電極よりも膜表面が平滑であるという利点がある。
【0009】
有機EL素子においては、有機化合物層の厚さは全部合わせても50〜200nm程度であるため、基板に付着した3μmを超える大きな異物、ゴミ等の影響を受け易いことが知られている。この様な異物、ゴミ等が存在した場合、第1電極(陽極)と第2電極(陰極)間の距離が短くなり、素子に正方向(素子を発光させる方向)の電圧を印加した場合にその部分に集中的に電流が流れる現象が起こる。これがリーク電流であり、素子の発光中にリーク電流が発生すると、流れた電流に対する輝度(電流−輝度特性)が低下するばかりでなく、その部分の陽極と陰極がショートして、そこだけにしか電流が流れなくなって素子が発光しなくなる場合がある。又、本来有機EL素子の場合、逆方向の電圧の印加(逆バイアス)では、電流値が、有機EL素子の膜厚にもよるが、1×10-7A/cm2以下の低いレベルで安定するのに対し、リーク電流が発生すると、その部分では逆方向にも電流が流れ易くなるので、素子の逆バイアス電流が増加し、又その電流値も安定しない現象が見られるようになる。
【0010】
このリーク電流発生時に起こる逆バイアス特性の悪化は、素子の実駆動を行う回路或いは駆動上の都合で素子に逆バイアスをかける場合にも問題となる。しかしながら、第1電極(陽極)に付着する異物、ゴミ等は第1電極(陽極)の表面状態、第1電極(陽極)の作製条件、基板の洗浄、工程内の搬送、工程のクリーン度などによって、ロット毎に変化する。
【0011】
これまでに、第1電極(陽極)へ付着した異物、ゴミ等の対策が検討されてきた。例えば、第1電極(陽極)を成膜後及び第1電極(陽極)を成膜後に異物、ゴミ等の付着する可能性のある工程で処理される場合、抜き取り検査を行い、規定された大きさの異物、ゴミの付着がある場合は除去し最終工程まで不良品を持ち込まない方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、特許文献1に記載の方法では確かに異物、ゴミ等の付着した基板は除去されるが、検査工程に検査装置を導入したり、検査要員の増員が必要になり経費が増加する原因の一つなる。又、歩留まりが低下し生産効率が低下する原因の一つなる。
【0012】
第1電極(陽極)と第2電極(陰極)との間に、温度上昇に伴い高抵抗化するリーク防止層を設けることでリーク電流の発生を防止する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の方法では確かにリーク電流の発生を防止することは可能となるが、高抵抗化した部分は絶縁部分となるため、この部分が未発光となるため、発光面積が小さくなり発光効率の低下の原因の一つになる。又、リーク防止層を設けるために、工程が増え、生産工程が複雑化し、生産性低下の原因の一つにもなる。
【0013】
付着した異物、ゴミ等により発生する保護層のピンホールから、水分や酸素が有機層に到達することになり、ダークスポット或いはダークエリアと呼ばれる発光しない領域の発生を防ぐため、付着した異物、ゴミ等よりも厚い保護層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。しかしながら、特許文献3に記載の方法では確かに保護層のピンホールの発生を防止することは可能となるが、付着した異物、ゴミ等による第1電極(陽極)と第2電極(陰極)との短絡に伴うリーク電流の発生を防止することは出来ない。
【0014】
この様に特許文献1〜特許文献3に記載の方法では、何れも付着した異物、ゴミ等への対策が十分とは言えない状況となっている。この様な状況から、生産効率を低下することなく、付着した異物、ゴミ等への対策が取られ、発光駆動時においてリーク電流のない安定した有機EL素子の製造方法、有機EL素子の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2002−75660号公報
【特許文献2】特開2004−95388号公報
【特許文献3】特開2004−362912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、生産効率を低下することなく、付着した異物、ゴミ等への対策が取られ、発光駆動時においてリーク電流のない安定した有機EL素子の製造方法及びこの製造方法により作製された有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0017】
(1)基板上に、少なくとも第1電極を含む陽極層と、発光層を含む有機化合物層と、第2電極を含む陰極層とを順次形成する工程を有する製造装置を使用し、前記発光層を含む有機化合物層の少なくとも一つの層が気相堆積装置を用いて形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記気相堆積装置は減圧手段で減圧される蒸着室と、基板の基板保持手段と、前記基板に対して堆積膜形成領域を規制するマスクのマスク配置手段と、原料を蒸発させる原料蒸発手段とを有し、
前記原料蒸発手段は前記堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配設され、
前記気相堆積装置により前記堆積膜形成領域に堆積膜を形成する時、
前記原料蒸発手段と前記堆積膜形成領域との位置関係は、
前記堆積膜形成領域に対して前記原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにして行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0018】
(2)前記堆積膜を形成する時、原料蒸発手段或いは基板のどちらか一方を移動することを特徴とする前記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0019】
(3)前記堆積膜を形成する時、原料蒸発手段と堆積膜形成領域との位置関係は、該原料蒸発手段の中心と該堆積膜形成領域の最近蒸着点をO、最遠蒸着点をPとした時、該原料蒸発手段の中心と該最近蒸着点Oを結ぶ線と、該最近蒸着点Oの法線との成す角度と、該原料蒸発手段の中心と該最遠蒸着点Pを結ぶ線と、該最遠蒸着点Pの法線との成す角度とが0°より大きく、75°以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0020】
(4)前記堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域に対して少なくとも2つの位置関係にある原料蒸発手段は、該堆積膜形成領域の全ての蒸着点と各該原料蒸発手段の中心とを結ぶ線との交点での交角が45°〜180°の位置関係を有していることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0021】
(5)前記堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域に対して複数の位置関係にある原料蒸発手段と堆積膜形成領域との位置関係は、該原料蒸発手段の中心と該堆積膜形成領域の最近蒸着点をO、最遠蒸着点をPとした時、該原料蒸発手段の中心と該最近蒸着点Oを結ぶ線と、該最近蒸着点Oの法線との成す角度と、該原料蒸発手段の中心と該最遠蒸着点Pを結ぶ線と、該最遠蒸着点Pの法線との成す角度とが0°より大きく、75°以下であり、該堆積膜形成領域に対して複数の位置関係にある原料蒸発手段の内、任意の位置にある2つの該原料蒸発手段は、各該原料蒸発手段の中心と該堆積膜形成領域の任意の蒸着点とを結ぶ線との交点での交角が45°〜180°の位置関係を有していることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0022】
(6)前記基板が枚葉であることを特徴とする前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0023】
(7)前記基板が帯状プラスチックフィルムであることを特徴とする前記(1)〜(6)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0024】
(8)前記基板保持手段が、保持手段を有する平板であることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0025】
(9)前記基板保持手段が、バックアップロールであることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0026】
(10)前記基板保持手段が、2本の支持ロールと、該支持ロールの間に配設された補助板であることを特徴とする前記(1)〜(7)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【0027】
(11)前記(1)〜(10)の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により作製されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0028】
生産効率を低下することなく、付着した異物、ゴミ等への対策が取られ、発光駆動時においてリーク電流のない安定した有機EL素子の製造方法及びこの製造方法により作製された有機EL素子を提供することが出来、高品質の有機EL素子の製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施の形態を図1〜図8を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
図1は枚葉シート状基板を使用した有機EL素子の製造方法の模式図である。
【0031】
図中、2は製造装置を示す。201は枚葉シート状基板201aを工程に供給する供給部を示す。202は供給部201から供給された枚葉シート状基板201aの表面に第1電極が蒸着される前に、蒸着性をよくするために枚葉シート状基板201aの表面を清掃するための基板洗浄処理装置を示す。203は洗浄処理が終了した枚葉シート状基板201a上に第1電極を形成する第1電極形成気相堆積装置を示す。204は第1電極が形成された枚葉シート状基板201bの第1電極上に正孔輸送層を形成する正孔輸送層形成気相堆積装置を示す。205は正孔輸送層が形成された枚葉シート状基板201cの正孔輸送層上に発光層を形成する発光層形成気相堆積装置を示す。206は発光層が形成された枚葉シート状基板201dの発光層上に電子注入層を形成する電子注入層形成気相堆積装置を示す。207は電子注入層が形成された枚葉シート状基板201eの電子注入層上に第2電極を形成する第2電極形成気相堆積装置を示す。208は第2電極が形成された枚葉シート状基板201fの第2電極上に封止層を形成する封止層形成気相堆積装置を示す。封止層を形成することで有機EL素子4が出来上がる。209は有機EL素子4を回収する回収部を示す。第1電極形成気相堆積装置203〜封止層形成気相堆積装置208は何れも同じ構成を成しており、これらの構成に関しては図4〜図8で詳細に説明する。
【0032】
図2は帯状プラスチックフィルム基板を使用した有機EL素子の製造方法の模式図である。
【0033】
図中、3は製造装置を示す。301は帯状プラスチックフィルム基板5を工程に供給する供給部を示す。302は供給部301から供給された帯状プラスチックフィルム基板5の表面に第1電極が蒸着される前に、蒸着性をよくするために帯状プラスチックフィルム基板5の表面を清掃するための基板洗浄処理装置を示す。303aは第1アキュームレータ部を示す。304は洗浄処理が終了した帯状シート状基板5の表面に第1電極5aを形成する第1電極形成気相堆積装置を示す。303bは第2アキュームレータ部を示す。305は帯状プラスチックフィルム基板5の上に形成された第1電極5a上に正孔輸送層を形成する正孔輸送層形成気相堆積装置を示す。303cは第3アキュームレータ部を示す。306は帯状プラスチックフィルム基板5の上に形成された正孔輸送層5b上に発光層を形成する発光層形成気相堆積装置を示す。303dは第4アキュームレータ部を示す。307は帯状プラスチックフィルム基板5のの上に形成された発光層5c上に電子注入層を形成する電子注入層形成気相堆積装置を示す。303eは第5アキュームレータ部を示す。
【0034】
308は帯状プラスチックフィルム基板5の上に形成された電子注入層5d上に第2電極を形成する第2電極形成気相堆積装置を示す。303fは第6アキュームレータ部を示す。309は帯状プラスチックフィルム基板5の上に形成された第2電極5e上に封止層を形成する封止層形成気相堆積装置を示す。303gは第7アキュームレータ部を示す。310は封止層(不図示)が形成された帯状プラスチックフィルム基板5を巻き芯に巻き取り、ロール状として回収する回収部を示す。封止層5fが形成された帯状プラスチックフィルム基板5は、規定された大きさに断裁して枚葉シートにすることで有機EL素子が作製される。
【0035】
本図に示される製造装置3は巻き芯に巻かれたロール状帯状プラスチックフィルム基板501から帯状プラスチックフィルム基板5を供給し、第1電極、正孔輸送層、発光層、電子注入層、第2電極、封止層を順次形成し最終的にロール状に巻き取り回収する、所謂ロールツーロール方式である。第1アキュームレータ部303a〜第7アキュームレータ部303gは各気相堆積装置で発生する搬送速度の違いを補正するために配設されている。第1電極形成気相堆積装置304〜封止層形成気相堆積装置309は何れも同じ構成を成しており、図1に示す第1電極形成気相堆積装置203〜封止層形成気相堆積装置208と同じである。
【0036】
本図では、第1電極から封止層形成までを連続して行う製造装置を示したが、製造装置の設置場所、管理し易さ等を考慮し、工程を分割しても構わない。例えば、発光層までを形成した段階で一旦巻き取りロール状として保存した後、再度、発光層までが形成されたロール状の帯状プラスチックフィルム基板5を使用し、電子注入層、第2電極、封止層を順次形成し最終的にロール状に巻き取り回収する方法が挙げられる。尚、第1電極、正孔輸送層、発光層、電子注入層、第2電極、封止層等の少なくとも1つが形成された帯状プラスチックフィルム基板を保管する時は、各層の性能劣化を防止するために10-5〜10Paの減圧条件下で保管することが好ましい。
【0037】
第1図、第2図に示した基板洗浄処理装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、エキシマランプ、プラズマ洗浄装置等を使用することが好ましい。低圧水銀ランプによる基板洗浄処理の条件としては、例えば、波長184.2nmの低圧水銀ランプを、照射強度5〜20mW/cm2で、距離5〜15mmで照射し基板洗浄を行う条件が挙げられる。プラズマ洗浄装置による基板洗浄処理の条件としては、例えば、大気圧プラズマが好適に使用される。洗浄条件としてはアルゴンガスに酸素1〜5体積%含有ガスを用い、周波数100KHz〜150MHz、電圧10V〜10KV、照射距離5〜20mmで基板洗浄処理を行う条件が挙げられる。
【0038】
図1、図2に示される製造装置を使用して有機EL素子を構成する各層を作製する各工程は発光層の性能維持、異物付着に伴う故障欠陥の防止等を考慮し、露点温度−20℃以下、且つJISB 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス3〜クラス5とすることが好ましい。
【0039】
図3は図2に示す製造装置によりパッシブ型の有機EL素子を作製するまでを段階的に示す概略フロー図である。
【0040】
S1は、供給部301(図2を参照)から供給される帯状プラスチックフィルム基板5の状態を示す。帯状プラスチックフィルム基板5の表面には堆積膜形成領域を示すマーク5gが付けられた状態となっている。堆積膜形成領域の間隔は製造装置に合わせ適宜変更することは可能である。帯状プラスチックフィルム基板5は基板洗浄処理装置302(図2を参照)で表面を洗浄した後、第1電極形成気相堆積装置304(図2を参照)へ送られる。図中の矢印は帯状プラスチックフィルム基板5の搬送方向を示す。
【0041】
S2は、第1電極形成気相堆積装置304(図2を参照)で堆積膜形成領域にパターン化された状態の第1電極5aが形成された状態を示す。ストライプ状に塗り潰してある場所が第1電極を示す。第1電極形成気相堆積装置304(図2を参照)では、帯状プラスチックフィルム基板5に付けられたマーク5gを検出することで、堆積膜形成領域にマスクを介して第1電極形成用原料の蒸着が行われ、第1電極5aが形成される。第1電極5aが形成された後、正孔輸送層形成気相堆積装置305(図2を参照)へ送られる。
【0042】
S3は、第1電極5b上に正孔輸送層5bが形成された状態を示す。正孔輸送層形成気相堆積装置305(図2を参照)では、帯状プラスチックフィルム基板5に付けられたマーク5gを検出することで、第1電極5aの端部を除き、第1電極5aが形成された領域全体に、マスクを介して正孔輸送層形成用原料の蒸着が行われ、正孔輸送層5bが形成される。正孔輸送層5bが形成された後、発光層形成気相堆積装置306(図2を参照)へ送られる。
【0043】
S4は、正孔輸送層5cの上に第1電極5aのパターンに合わせ発光層が形成された状態を示す。発光層形成気相堆積装置306(図2を参照)では、帯状プラスチックフィルム基板5に付けられたマーク5gを検出することで、正孔輸送層5bの上に第1電極5aのパターンに合わせマスクを介して発光層形成用原料の蒸着が行われ、発光層5cが形成される。発光層5cが形成された後、電子注入層形成気相堆積装置307(図2を参照)へ送られる。
【0044】
S5は、発光層5cの形成領域を含み正孔輸送層5bが形成された領域に電子注入層5dが形成された状態を示す。電子注入層形成気相堆積装置307(図2を参照)では、帯状プラスチックフィルム基板5に付けられたマーク5gを検出することで、発光層5cの形成領域を含み正孔輸送層5bが形成された領域にマスクを介して、電子注入層形成用原料の蒸着が行われ、電子注入層5dが形成される。電子注入層5dが形成された後、第2電極形成気相堆積装置308(図2を参照)へ送られる。
【0045】
S6は、電子注入層5eの上に第1電極5bと直交する状態にパターン化された第2電極が形成された状態を示す。第2電極形成気相堆積装置308(図2を参照)では、帯状プラスチックフィルム基板5に付けられたマーク5gを検出することで、電子注入層5dの上に第2電極形成用原料の蒸着が行われ、第2電極5eが形成される。第2電極5eが形成された後、封止層形成気相堆積装置309(図2を参照)へ送られる。
【0046】
S7は、第2電極5eの端部を除き、第2電極5eを含め電子注入層5dの形成領域上に封止層が形成された状態を示す。封止層形成気相堆積装置309(図2を参照)では、帯状プラスチックフィルム基板5に付けられたマーク5gを検出することで、第2電極5eの端部を除き、第2電極5eを含め電子注入層5dの形成領域上に封止層形成用原料の蒸着が行われ、封止層5fが形成される。封止層5fが形成された段階でパッシブ型の有機EL素子の作製が終了する。封止層5fが形成された後、回収部310(図2を参照)で巻き芯に巻き取られロール状として保管される。
【0047】
図4は図1に示される正孔輸送層形成気相堆積装置の概略図である。図4の(a)は図1に示される正孔輸送層形成気相堆積装置の拡大概略図である。図4の(b)は正孔輸送層形成気相堆積装置を構成している各部、各手段の関係を示す概略ブロック図である。尚、図1に示す第1電極形成気相堆積装置203〜封止層形成気相堆積装置208は何れも同じ構成を成しているため正孔輸送層形成気相堆積装置204を代表として説明する。
【0048】
図中、気相堆積装置204は蒸着室204aと、基板保持手段204bと、マスク配置手段204cと、原料蒸発手段204dと、制御手段204eとを有している。尚、原料蒸発手段204dは堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に置かれている。
【0049】
204a1は蒸着室204aに配設された排気口を示し減圧手段である排気手段(不図示)に繋がっており、メインバルブ204a2を介して蒸着室204aを設定した真空度にするようになっている。蒸着室204aの真空度は、必要に応じて適宜設定することが可能となっている。204a3は蒸着室204aの真空度を測定する測定手段である真空度測定計を示す。真空度測定計としては特に限定はなく、例えば電離真空計、ピラニ真空計が挙げられる。204a4は不活性ガス導入口を示し、必要に応じてガス導入バルブ204a5を介してN2、Ar、Ne、He等の不活性ガスが雰囲気ガスとして導入される。
【0050】
基板保持手段204bは、基板保持部材204b1と、温度測定手段204b2と、温度制御機構204b3とを有し、温度制御機構204b3により温度制御が可能となっている。基板保持部材204b1に保持された基板201a(図1で示される様に基板洗浄処理装置202、第1帯電除去装置203aで処理された基板)は複数枚配置してもよく、基板保持部材204b1のいかなる位置に配置することも可能となっている。基板保持部材204b1としては、基板の平面性を保持し保持出来れば特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0051】
温度測定手段204b2は基板保持部材204b1に配置された基板201aの温度を測定し、結果を制御手段204eにフィードバックする様になっている。フィードバックされた情報に従って、基板保持部材204b1に熱媒体を循環させる温度制御機構204b3を制御することで、基板上へ原料を堆積中に、基板の温度を一定に保持すること等が可能となっている。温度測定手段204b2としては特に限定はなく、例えば熱電対、温度センサー等が挙げられる。
【0052】
204b4は基板保持部材204b1を回転させる回転手段を示す。回転手段は特に限定はなく、例えば回転モーターでもよいし、プーリーを介してベルトであってもよい。本図は回転モーターの場合を示している。又、基板保持部材204b1は回転させてもよいし、固定であってもよい。本図は回転させる場合を示している。尚、基板保持部材204b1が固定の場合は、基板保持部材204b1への成膜均一性を考慮し、原料蒸発手段204dを移動させる方式であってもよい。
【0053】
マスク配置手段204cは、マスク配置部材204c1と、温度測定手段204c4と、温度制御機構204c5とを有し、温度制御機構204c5により温度制御が可能となっている。温度測定手段204c4は基板保持部材204b1に配置された温度測定手段204b2と同じであることが好ましい。
【0054】
204c3はマスク配置部材204c1に配置されたマスクを示す。マスク配置部材204c1としては、マスク204c3の平面性を保持し配置出来れば特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等が挙げられる。マスク配置部材204c1は基板保持部材204b1に取り付けられている。
【0055】
204a6は基板201aへの原料(第1電極用原料)の堆積を制御する原料堆積制御手段の遮蔽板を示す。遮蔽板204a6はどのような形式でも構わないが、機能としては完全に閉じることで基板3への蒸気堆積を完全に防止出来る形式のものが好ましい。尚、本図に示す遮蔽板は開閉式であり、開閉を制御することが可能となっている。204a7は遮蔽板204a6の駆動手段を示す。
【0056】
温度制御機構204b3は、加熱・冷却が可能な媒体の温度制御手段(不図示)と、加熱・冷却が可能な媒体を基板保持手段204bの基板保持部材204b1及びマスク配置手段204cのマスク配置部材204c1へ循環させる循環手段(不図示)と、媒体の循環量の循環量制御手段(不図示)とを有している。温度制御機構204b3により、基板保持部材204b1、マスク配置部材204c3へ所定温度に制御された媒体を循環させることで、基板保持部材204b1に配置された基板201a、及びマスク配置部材204c1に配置されたマスク204c3を所定温度とすることが可能となっている。
【0057】
媒体としては、例えば、合成系有機熱媒体油等が挙げられる。媒体の温度制御手段としては、例えば、ヒーターとチラーの組合せ等が挙げられる。循環量制御手段としては、例えば、フローメーターとポンプの組合せ等が挙げられる。
【0058】
原料蒸発手段204dは蒸着室204aの下部に配設されており、加熱手段(不図示)を有する原料容器204d1と、原料容器204d1内の原料(第1電極用原料)204d2の温度を測定するための原料温度測定手段204d3と、原料容器204d1の加熱用の電流供給部204d4と、原料容器204d1の開口部204d5の開口率を制御する開口率制御手段の蓋204d6とを有している。原料容器204d1の形状は特に限定はなく、例えばライン型、スポット型等が挙げられ、基板の大きさにより配設する数は適宜選択することが可能ある。原料容器204d1の加熱手段としては特に限定はなく、例えばスパッタ方式、抵抗加熱方式等が挙げられる。本図では抵抗加熱方式の場合を示している。蓋204d6はどのような形でもよく、原料蒸発手段の口を全て覆う形状でなくてもよい。蓋204d6は原料204d2が設定した温度に達する迄は、安定した堆積膜面を得るために、制御可能な可動式の蓋とすることが好ましい。204d7は蓋204d6を移動させるための移動手段を示す。
【0059】
原料温度測定手段204d3の結果を制御手段204eにフィードバックし、予め制御手段204eに入力してある設定温度に対し、演算処理し設定温度を維持する様に制御することが好ましい。これらの制御と可動式の蓋204d6の制御と組合せ、設定温度に達したのに合わせ蓋を開ける様な制御も可能である。原料蒸発手段204dの配置する数は、位置は基板の大きさにより適宜変えることが可能となっている。
【0060】
正孔輸送層形成気相堆積装置204を構成している各部、各手段の関係を図4の(b)に示す概略ブロック図により説明する。基板の温度測定手段204b2より測定された基板保持手段204bに保持された基板201aの温度に関する情報は制御手段204eのCPUに入力される。制御手段204eに入力された情報はメモリーに予め入力されている設定温度と演算処理を行い、基板保持手段204bに配設された、所定の温度に調整された熱媒体を循環させる温度制御機構204b3を制御し、媒体の循環量と媒体の温度とを制御することが可能となっている。
【0061】
マスクの温度測定手段204c4により測定されたマスク配置部材204c1に保持されたマスク204c3の温度に関する情報は制御手段204eのCPUに入力される。制御手段204eに入力された情報はメモリーに予め入力されている設定温度と演算処理を行い、マスク配置部材204c1に配設された、所定の温度に調整された媒体を循環させる温度制御機構204c5を制御し、熱媒体の循環量と料熱媒体の温度とを制御することが可能となっている。この時、温度制御機構204c5による媒体の循環量と媒体の温度は、基板3の温度履歴に合わせマスク204c3の温度を制御する方式となっている。
【0062】
原料温度測定手段204d3により測定された原料容器204d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の結果を制御手段204eにフィードバックし、予め制御手段204eに入力してある設定温度に対し、演算処理し、原料容器204d1aに配設された加熱手段(不図示)の電流供給部204d4の電流調整を行うことで原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の温度を一定に制御することが可能となっている。原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の温度を指定温度に保持することで、基板201aに略一定温度の原料(正孔輸送層形成用原料)が気相堆積され安定した正孔輸送層の形成が可能となる。
【0063】
時間により換算された原料容器204d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の量に関する情報は制御手段204eのCPUに入力される。制御手段204eに入力された情報はメモリーに予め入力されている原料容器204d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の量と演算処理を行い、移動手段(付図示)204d7を稼働させ原料容器204d1の蓋204d6を移動させ開口率を変えることが可能となっている。例えば原料容器204d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の量が100%の時は開口率を100%とし、原料容器204d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の量が50%の時は50%とするようになっている。
【0064】
原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の堆積速度を略一定に保持することで、基板3に一定の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2が気相堆積され安定した正孔輸送層の形成が可能となる。
【0065】
原料温度測定手段204d3により測定された原料容器204d1a内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の温度に関する情報は制御手段204eのCPUに入力される。制御手段204eに入力された情報はメモリーに予め入力されている原料堆積開始温度と演算処理を行い、駆動手段204a7を稼働させ遮蔽板204a6の開閉を行うことで、蒸着室内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の濃度が不安定な加熱初期の基板3への気相堆積防止が可能となっている。例えば予め入力されている原料堆積開始温度と原料温度測定手段204d3により測定された原料容器204d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の温度との差が−10〜+10℃になってから少なくとも30sec経過した後、遮蔽板を開き、20℃以上になったら閉じる様にすることが好ましい。
【0066】
又、原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の温度測定結果を、基板3の温度制御機構204b3及びマスク204c3の温度制御機構204c5にフィードバックして、基板3及びマスク4の加熱開始のタイミングを決めるのに使用することも勿論可能である。
【0067】
本図に示す様な制御を行うことで、基板の温度とマスクの温度との温度差の変動を少なくすることが可能になるため、基板温度との差異に伴う、マスク近傍と堆積膜面の中心との品質差が生じることを抑え堆積膜面内品質不均一がなくなり安定品質の堆積膜面を得ることが可能となる。尚、堆積膜を形成する時の本図に示される原料蒸発手段204dと、基板3の堆積膜形成領域との位置関係に関しては図7、図8で説明する。又、本図では原料蒸発手段が堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に1台置かれている場合を示しているが、堆積膜形成領域の他方の端辺の法線の外側にも原料蒸発手段を配設することが好ましい。
【0068】
図5は図2で示される正孔輸送層形成気相堆積装置の拡大概略図である。図5の(a)は基板の保持手段にバックアップロールを用いた場合の正孔輸送層形成気相堆積装置の拡大概略図である。図5の(b)は正孔輸送層形成気相堆積装置を構成している各部、各手段の関係を示す概略ブロック図である。尚、図2に示す第1電極形成気相堆積装置304〜封止層形成気相堆積装置310は何れも同じ構成を成しているため正孔輸送層形成気相堆積装置305を代表として説明する。
【0069】
図中、正孔輸送層形成気相堆積装置305は蒸着室305aと、基板保持手段305bと、マスク配置手段305cと、原料蒸発手段305dと、制御手段305eを有している。尚、原料蒸発手段305dは堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に置かれている。305a1は蒸着室305aに配設された排気口を示し減圧手段である排気手段(不図示)に繋がっており、メインバルブ305a2を介して蒸着室305aを設定した真空度にするようになっている。蒸着室305aの真空度は、必要に応じて適宜設定することが可能となっている。305a3は蒸着室305aの真空度を測定する測定手段である真空度測定計を示す。真空度測定計としては特に限定はなく、例えば電離真空計、ピラニ真空計が挙げられる。305a4は不活性ガス導入口を示し、必要に応じてガス導入バルブ305a4を介してN2、Ar、Ne、He等の不活性ガスが雰囲気ガスとして導入される。
【0070】
基板保持手段305bは基板保持部材のバックアップロール305b1と、温度測定手段305b2と、バックアップロール305b1に内蔵されている加熱体の電流供給部とを有している。温度測定手段305b2により測定されたバックアップロール305b1の温度の測定結果は、制御手段305eにフィードバックする様になっている。フィードバックされた情報に従って、バックアップロール305b1に内蔵されている加熱体の電流供給部305b3の電流供給量を制御することで、基板上へ原料を堆積中に、基板の温度を一定に保持すること等が可能となっている。温度測定手段305b2としては非接触式が好ましく、例えば光学式温度センサーが挙げられる。
【0071】
バックアップロール305b1に保持された帯状プラスチックフィルム基板5は、図2で示される様に基板洗浄処理装置302、第1帯電除去装置303aで処理された状態となっている。バックアップロール305b1の周速度は帯状プラスチックフィルム基板5の搬送速度と同期する様に調整することが好ましい。バックアップロール305b1としては、帯状プラスチックフィルム基板5の平面性を保持し配置出来れば特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0072】
マスク配置手段305cは、マスク配置部材305c1と、温度測定手段305c2とを有し、マスク配置部材305c1に配設された加熱体(不図示)により温度制御が可能となっている。温度測定手段305c2により測定されたマスク305c3の温度の測定結果は、制御手段305eにフィードバックする様になっている。フィードバックされた情報に従って、マスク配置部材305c1に配設された加熱体(不図示)の電流供給部305c4の電流供給量を制御することで、基板上へ原料を堆積中に、マスク305c3の温度を一定に保持すること等が可能となっている。温度測定手段305c2としては特に限定はなく、例えば熱電対、温度センサー等が挙げられる。
【0073】
305c3はマスク配置部材305c1に配置されたマスクを示す。マスク305c3はバックアップロール305b1の曲率に合わせることが好ましく、マスク配置部材305c1によりバックアップロール305b1上の帯状プラスチックフィルム基板5の第1電極形成領域を覆い被せる状態で配置される。マスク配置部材305c1は蒸着室305aのフレームに取り付けられている。
【0074】
305a6は帯状プラスチックフィルム基板5への原料(正孔輸送層形成用原料)の堆積を制御する原料堆積制御手段の遮蔽板を示す。遮蔽板305a6はどのような形式でも構わないが、機能としては完全に閉じることで帯状プラスチックフィルム基板5への蒸気堆積を完全に防止出来る形式のものが好ましい。尚、本図に示す遮蔽板は開閉式であり、開閉を制御することが可能となっている。305a7は遮蔽板305a6の開閉用の駆動手段を示す。
【0075】
原料蒸発手段305dは蒸着室305aの下部に配設されており、加熱手段(不図示)を有する原料容器305d1と、原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の温度を測定するための原料温度測定手段305d3と、原料容器305d1の加熱用の電流供給部305d4と、原料容器305d1の開口部305d5の開口率を制御する開口率制御手段の蓋305d6とを有している。原料容器305d1の形状は特に限定はなく、例えばライン型、スポット型等が挙げられ、基板の大きさにより配設する数は適宜選択することが可能ある。原料容器305d1の加熱手段としては特に限定はなく、例えばスパッタ方式、抵抗加熱方式等が挙げられる。本図では抵抗加熱方式の場合を示している。蓋305d6はどのような形でもよく、原料蒸発手段の口を全て覆う形状でなくてもよい。蓋305d6は原料305d2が設定した温度に達する迄は、安定した堆積膜面を得るために、制御可能な可動式の蓋とすることが好ましい。305d7は蓋305d6を移動させるための移動手段を示す。
【0076】
原料温度測定手段305d3の結果を制御手段305eにフィードバックし、予め制御手段305eに入力してある設定温度に対し、演算処理し設定温度を維持する様に制御することが好ましい。これらの制御と可動式の蓋305d6の制御と組合せ、設定温度に達したのに合わせ蓋を開ける様な制御も可能である。原料蒸発手段305dの配置する数は、位置は基板の大きさにより適宜変えることが可能となっている。
【0077】
305a8は帯状プラスチックフィルム基板5の第1電極形成領域面に予め付けられたマーク5a(図3を参照)を検出する検出測定器を示す。検出測定器305a8の情報は制御手段305eにフィードバックし、予め制御手段305eに入力してある帯状プラスチックフィルム基板5の搬送速度に対し演算処理し、遮蔽板305a6の開閉を制御するようになっている。これにより、正孔輸送層形成領域面でない部分が通過する際は、遮蔽板305a6を閉じることで不要部分への正孔輸送層形成材料の蒸着を防止することが可能となっている。
【0078】
正孔輸送層形成気相堆積装置305を構成している各部、各手段の関係を図5の(b)に示す概略ブロック図により説明する。バックアップロール305b1の温度測定手段305b2より測定されたバックアップロール305b1の温度に関する情報は制御手段305eのCPUに入力される。制御手段305eに入力された情報はメモリーに予め入力されている設定温度と演算処理を行い、バックアップロール305b1に内蔵された加熱体(不図示)の電流供給部の電流量を制御し、バックアップロール305b1の温度を制御することが可能となっている。
【0079】
マスクの温度測定手段305c2により測定されたマスク305c3の温度に関する情報は制御手段305eのCPUに入力される。制御手段305eに入力された情報はメモリーに予め入力されている設定温度と演算処理を行い、マスク配置部材305c1に配設された加熱体(不図示)の電流供給部の電流量を制御し、マスク305c3の温度を制御することが可能となっている。
【0080】
原料温度測定手段305d3により測定された原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の結果を制御手段305eにフィードバックし、予め制御手段305eに入力してある設定温度に対し、演算処理し、原料容器305d1aに配設された加熱手段(不図示)の電流供給部305d4の電流調整を行うことで原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の温度を一定に制御することが可能となっている。原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の温度を指定温度に保持することで、帯状プラスチックフィルム基板5に略一定温度の原料(正孔輸送層形成用原料)が気相堆積され安定した第1電極の形成が可能となる。
【0081】
時間により換算された原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)204d2の量に関する情報は制御手段305eのCPUに入力される。制御手段305eに入力された情報はメモリーに予め入力されている原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の量と演算処理を行い、移動手段(付図示)305d7を稼働させ原料容器305d1の蓋305d6を移動させ開口率を変えることが可能となっている。例えば原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の量が100%の時は開口率を100%とし、原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の量が50%の時は50%とするようになっている。
【0082】
原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の堆積速度を略一定に保持することで、帯状プラスチックフィルム基板5に一定の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2が気相堆積され安定した第1電極の形成が可能となる。
【0083】
原料温度測定手段305d3により測定された原料容器305d1a内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の温度に関する情報は制御手段305eのCPUに入力される。制御手段305eに入力された情報はメモリーに予め入力されている原料堆積開始温度と演算処理を行い、駆動手段305a7を稼働させ遮蔽板305a6の開閉を行うことで、蒸着室内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の濃度が不安定な加熱初期の帯状プラスチックフィルム基板5への気相堆積防止が可能となっている。例えば予め入力されている原料堆積開始温度と原料温度測定手段305d3により測定された原料容器305d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の温度との差が−10〜+10℃になってから少なくとも30sec経過した後、遮蔽板を開き、20℃以上になったら閉じる様にすることが好ましい。
【0084】
又、原料(正孔輸送層形成用原料)305d2の温度測定結果を、バックアップロール305b1の加熱体(付図示)及びマスク配置部材305c1に配設された加熱体(不図示)の電流供給部にフィードバックして、バックアップロール305b1及びマスク305c3の加熱開始のタイミングを決めるのに使用することも勿論可能である。
【0085】
検出測定器305a8からの帯状プラスチックフィルム基板5の第1電極形成領域面に予め付けられたマーク5a(図3を参照)に関する情報は制御手段305eにフィードバックし、予め制御手段305eに入力してある帯状プラスチックフィルム基板5の搬送速度に対し演算処理し、遮蔽板305a6の開閉を制御するようになっている。これにより、堆積中に正孔輸送層形成領域面でない部分が通過する際は、遮蔽板305a6を閉じることで不要部分への正孔輸送層形成材料の蒸着を防止することが可能となっている。
【0086】
本図に示す様な制御を行うことで、基板の温度とマスクの温度との温度差の変動を少なくすることが可能になるため、基板温度との差異に伴う、マスク近傍と堆積膜面の中心との品質差が生じることを抑え堆積膜面内品質不均一がなくなり安定品質の堆積膜面を得ることが可能となる。又、正孔輸送層形成領域面でない部分への正孔輸送層形成材料の堆積を防止することが出来るため生産効率の向上が可能となる。又、本図では原料蒸発手段が堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に1台置かれている場合を示しているが、堆積膜形成領域の他方の端辺の法線の外側にも原料蒸発手段を配設することが好ましい。尚、堆積膜を形成する時の本図に示される原料蒸発手段305dと、帯状プラスチックフィルム基板5との堆積膜形成領域との位置関係に関しては図7、図8で説明する。
【0087】
図6は基板の保持手段に2本の支持ロールと補助板を用いた場合の正孔輸送層形成気相堆積装置の拡大概略図である。
【0088】
正孔輸送層形成気相堆積装置305′は蒸着室305′aと、基板保持手段305′bと、マスク配置手段305′cと、原料蒸発手段305′dとを有している。尚、原料蒸発手段305′dは堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に置かれている。305′a1は蒸着室305′aに配設された排気口を示し減圧手段である排気手段(不図示)に繋がっており、メインバルブ305′a2を介して蒸着室305′aを設定した真空度にするようになっている。蒸着室305′aの真空度は、必要に応じて適宜設定することが可能となっている。305′a3は蒸着室305′aの真空度を測定する測定手段である真空度測定計を示す。真空度測定計としては特に限定はなく、例えば電離真空計、ピラニ真空計が挙げられる。305′a4は不活性ガス導入口を示し、必要に応じてガス導入バルブ305′a4を介してN2、Ar、Ne、He等の不活性ガスが雰囲気ガスとして導入される。
【0089】
基板保持手段305′bは基板保持部材の2本の支持ロール305′b1と2本の支持ロール305′b1間の帯状プラスチックフィルム基板5の平面性を保持するための補助板305′b2と、温度測定手段305′b3と、温度制御機構(付図示)とを有し、温度制御機構(付図示)により温度制御が可能となっている。基板保持手段305′bに保持された帯状プラスチックフィルム基板5は、図2で示される様に基板洗浄処理装置302、第1帯電除去装置303aで処理された状態となっている。支持ロール305′b1の周速度は帯状プラスチックフィルム基板5の搬送速度と同期する様に調整することが好ましい。補助板305′b2としては、帯状プラスチックフィルム基板5の平面性を保持し配置出来れば特に限定はなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0090】
温度測定手段305′b3は補助板305′b2の温度を測定し、結果を制御手段(不図示)にフィードバックする様になっている。温度測定手段305′b3としては特に限定はなく、例えば熱電対、温度センサー等が挙げられる。
【0091】
マスク配置手段305′cは、マスク配置部材305′c1と、温度測定手段305′c2とを有し、温度制御機構(不図示)により温度制御が可能となっている。温度測定手段305′c2としては特に限定はなく、例えば熱電対、温度センサー等が挙げられる。
【0092】
305′c3はマスク配置部材305′c1に配置されたマスクを示す。マスク305′c3はマスク配置部材305′c1により補助板305′b2上の帯状プラスチックフィルム基板5の第1電極形成領域を覆い被せる状態で配置される。マスク配置部材305′c1は蒸着室305′aのフレームに取り付けられている。
【0093】
305′a6は帯状プラスチックフィルム基板5への原料(正孔輸送層形成用原料)の堆積を制御する原料堆積制御手段の遮蔽板を示す。遮蔽板305′a6はどのような形式でも構わないが、機能としては完全に閉じることで基板3への蒸気堆積を完全に防止出来る形式のものが好ましい。尚、本図に示す遮蔽板は開閉式であり、開閉を制御することが可能となっている。305′a7は遮蔽板305′a6の開閉用の電力源を示す。
【0094】
原料蒸発手段305′dは蒸着室305′aの下部に配設されており、加熱手段(不図示)を有する原料容器305′d1と、原料容器305′d1内の原料(正孔輸送層形成用原料)305′d2の温度を測定するための原料温度測定手段305′d3と、原料容器305′d1の加熱用の電流供給部305′d4と、原料容器305′d1の開口部305′d5の開口率を制御する開口率制御手段の蓋305′d6とを有している。原料容器305′d1の形状は特に限定はなく、例えばライン型、スポット型等が挙げられ、基板の大きさにより配設する数は適宜選択することが可能ある。原料容器305′d1の加熱手段としては特に限定はなく、例えばスパッタ方式、抵抗加熱方式等が挙げられる。本図では抵抗加熱方式の場合を示している。蓋305′d6はどのような形でもよく、原料蒸発手段の口を全て覆う形状でなくてもよい。蓋305′d6は原料305′d2が設定した温度に達する迄は、安定した堆積膜面を得るために、制御可能な可動式の蓋(付図示)とすることが好ましい。305′d7は蓋305′d6を移動させるための移動手段(付図示)への電流供給部を示す。又、本図では原料蒸発手段が堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に1台置かれている場合を示しているが、堆積膜形成領域の他方の端辺の法線の外側にも原料蒸発手段を配設することが好ましい。尚、堆積膜を形成する時の原料蒸発手段305′dと、帯状プラスチックフィルム基板5の堆積膜形成領域との位置関係に関しては図7、図8で説明する。
【0095】
図7は堆積膜を形成する時、原料蒸発手段と帯状プラスチックフィルム基板の堆積膜形成領域との位置関係を示す模式図である。
【0096】
図中、6は基板を示し、7aは堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配置された原料蒸発手段を示す。7bは堆積膜を形成する時に原料蒸発手段7aが移動して堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配置された原料蒸発手段を示す。又は、予め堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配置された原料蒸発手段であってもよい。尚、予め堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に原料蒸発手段が2台配置された場合は、これら2台の原料蒸発手段の間に必要に応じて複数の原料蒸発手段を配置しても構わない。すなわち、本発明において、堆積膜を形成する時に、堆積膜形成領域に対して少なくとも2つの位置関係になるようにするとは、本図に示すように堆積膜を形成する時に、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段7a、原料蒸発手段7bとが存在する様な関係を言う。
【0097】
Oは原料蒸発手段7aに対する堆積膜形成領域の最近蒸着点(最も近い蒸着点を言う)を示す(原料蒸発手段7bに対しては堆積膜形成領域の最遠蒸着点(最も遠い蒸着点を言う)となる)。Pは原料蒸発手段7aに対する堆積膜形成領域の最遠蒸着点(最も遠い蒸着点を言う)を示す(原料蒸発手段7bに対しては堆積膜形成領域の最近蒸着点(最も近い蒸着点を言う)となる)。
【0098】
θ1は原料蒸発手段7aの中心と、最近蒸着点Oとを結ぶ線と、最近蒸着点Oにおける法線との成す角度を示す。θ2は原料蒸発手段7aの中心と、最遠蒸着点Pとを結ぶ線と、最遠蒸着点Pにおける法線との成す角度を示す。θ3は原料蒸発手段7bの中心と、最近蒸着点Oとを結ぶ線と、最近蒸着点Oにおける法線との成す角度を示す。θ4は原料蒸発手段7bの中心と、最遠蒸着点Pとを結ぶ線と、最遠蒸着点Pにおける法線との成す角度を示す。角度θ1〜θ4は、堆積膜形成領域に存在する凸状の異物の均一被覆性、堆積膜形成材料の効率、堆積膜の均一安定形成性等を考慮し、0°より大きく、75°より小さいことが好ましい。
【0099】
堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配置された原料蒸発手段が1台の時、堆積膜形成領域に凸状の異物が存在する場合は、凸状の異物の原料蒸発手段側が蒸着により覆われ、反対側は覆われない状態になる。すなわち、堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域に凸状の異物が存在する場合、凸状の異物に対して均等に堆積膜を形成するためには、堆積膜形成領域の蒸着点と原料蒸発手段とが少なくとも2つの位置関係になるようにして行うことが挙げられる。この様に、堆積膜形成領域の蒸着点と原料蒸発手段とが少なくとも2つの位置関係にするには次の方法が挙げられる。
1)堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に原料蒸発手段を1台配置し、堆積膜を形成する時、原料蒸発手段を堆積膜形成領域の他の端辺の法線の外側に迄移動させることで、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにして行う方法。
2)堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に原料蒸発手段を1台配置し、堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域の他の端辺の法線の外側に迄基板を移動させることで、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにして行う方法。
3)予め、堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に少なくとも2台の原料蒸発手段を配置することで、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにして行う方法。
【0100】
上記1)〜3)に述べられる方法において、堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域と原料蒸発手段との関係は、堆積膜形成領域の全ての蒸着点で、原料蒸発手段に対して最近蒸着点及び最遠蒸着点と原料蒸発手段の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点及び最遠蒸着点における法線との成す角度を0°より大きく、75°以下にすることで、堆積膜形成領域に凸状の異物が存在する場合、凸状の異物に対して均等に堆積膜を形成することが可能となる。
【0101】
原料蒸発手段が堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配設された気相堆積装置を使用し、堆積膜形成領域に堆積膜を形成する時、原料蒸発手段と前記堆積膜形成領域との位置関係を、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにし、各原料蒸発手段の中心と堆積膜形成領域の最近蒸着点及び最遠蒸着点の法線との成す角度を0°より大きく、75°以下にすることで以下に示す効果が得られた。
1)電極上に存在する異物、ゴミ等に対して、異物、ゴミ等の表面を覆うように成膜することが可能となり、シャドウイング現象により成膜されない陰の部分を大幅に減少することが可能となり、リーク電流の発生を抑えることが可能となった。
2)電極上に存在する異物、ゴミ等の影響を受けることなく有機EL素子の製造が可能となり、生産効率の向上が可能となった。
3)リーク電流の発生を抑えることが可能となり、有機EL素子の発光効率の向上及び寿命が延び、産業上の利用価値を高めることが可能となった。
4)回り込みのよいとされているスピンコート法、ディップ法、塗布法等の成膜法を使用することなく、生産プロセスの簡素化が可能となった。
【0102】
図8は図7に示すように堆積膜を形成する時に、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が2つの位置関係にある場合の、各原料蒸発手段の位置関係を示す模式図である。
【0103】
図中、8は帯状プラスチックフィルム基板を示す。9は帯状プラスチックフィルム基板8の堆積膜形成領域を示す。7aは堆積膜形成領域9の端辺(片側)の法線の外側に配置された原料蒸発手段を示す。7bは原料蒸発手段7aが、気相堆積時に堆積膜形成領域9の端辺まで移動させた場合の原料蒸発手段を示す。尚、原料蒸発手段7bは予め堆積膜形成領域9の端辺(反対側)の法線の外側に配置された原料蒸発手段にも該当する。Qは堆積膜形成領域9の任意の蒸着点を示す。Rは原料蒸発手段7aの中心と蒸着点Qを結ぶ線と、原料蒸発手段7bの中心と蒸着点Qを結ぶ線との交点を示す。θ5は交点Rの交角を示す。交角θ5は、堆積膜形成領域に存在する凸状の異物の均一被覆性、堆積膜形成材料の効率、堆積膜の均一安定形成性等を考慮し、45°〜180°が好ましい。堆積膜を形成する時に、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が2つの位置関係にある場合の、各原料蒸発手段の位置関係は堆積膜形成領域の全域のいかなる蒸着点において本図に示す関係を有していることが好ましい。
【0104】
本図に示す様に、堆積膜を形成する時に、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が2つの位置関係にある場合、各原料蒸発手段の位置関係は堆積膜形成領域の全域のいかなる蒸着点で、蒸着点と各原料蒸発手段の中心とを結ぶ交点の交角を45°〜180°にすることで次に示す効果が得られた。
1)電極上に存在する異物、ゴミ等に対して、堆積膜形成領域の全域において、異物、ゴミ等の表面を覆うように成膜することが可能となり、シャドウイング現象により成膜されない陰の部分を無くすことが可能となり、リーク電流の発生を抑えることが可能となった。
2)電極上に存在する異物、ゴミ等の影響を受けることなく有機EL素子の製造が可能となり、生産効率の向上が可能となった。
3)リーク電流の発生を抑えることが可能となり、有機EL素子の発光効率の向上及び寿命が延び、産業上の利用価値を高めることが可能となった。
【0105】
更に、堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域の蒸着点と原料蒸発手段との関係が図7に示す様に0°より大きく、75°以下となる様に配設置関係にすることで以下に示す効果が得られた。
1)少ない蒸着材料にて、堆積膜形成領域の全域を、異物、ゴミ等のシャドウイング現象により成膜されない陰の部分を無くすことが可能となり、リーク電流の発生を抑えることと、蒸着材料の節約が可能となった。
2)電極上に存在する異物、ゴミ等の影響を受けることなく有機EL素子の製造が可能となり、生産効率の向上が可能となった。
3)リーク電流の発生を抑えることが可能となり、有機EL素子の発光効率の向上及び寿命が延び、産業上の利用価値を高めることが可能となった。
【0106】
以下、本発明に係わる有機EL素子を構成している基板、第1電極、正孔輸送層、発光層、電子注入層、第2電極、封止手段等に付き説明する。
【0107】
本発明に係わる基板としては、枚葉基板、帯状可撓性基板が挙げられる。枚葉基板としては、透明ガラス板、シート状透明樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。帯状可撓性基板としては、透明樹脂フィルムが挙げられ、枚葉基板と同じ樹脂フィルムが使用可能である。
【0108】
基板として透明樹脂フィルムを使用する場合、樹脂フィルムの表面にはガスバリア膜が必要に応じて形成されることが好ましい。ガスバリア膜としては無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が挙げられる。ガスバリア膜の特性としては、水蒸気透過度が0.01g/m2・day・atm以下であることが好ましい。更には、酸素透過度10-3ml/m2/day以下、水蒸気透過度10-5g/m2/day以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0109】
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることが出来る。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることが出来るが、特開2004−68143号に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
【0110】
第1電極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。この様な電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。又、IDIXO(In23・ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、或いはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、又陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0111】
第1電極と発光層又は正孔輸送層の間、正孔注入層(陽極バッファー層)を存在させてもよい。正孔注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123−166頁)に詳細に記載されている。陽極バッファー層(正孔注入層)に使用する材料の一例としては、特開2000−160328号公報に記載されている材料が挙げられる。
【0112】
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層又は複数層設けることが出来る。正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、又導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0113】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することが出来るが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0114】
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。又、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することが出来る。
【0115】
又、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような所謂p型正孔輸送材料を用いることも出来る。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
【0116】
正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。又、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号、特開2000−196140号、特開2001−102175号、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。この様なp性の高い正孔輸送層を用いることが、より低消費電力の有機EL素子を作製することが出来るため好ましい。
【0117】
本発明において、発光層とは青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を指す。発光層を積層する場合の積層順としては、特に制限はなく、又各発光層間に非発光性の中間層を有していてもよい。本発明においては、少なくとも一つの青発光層が、全発光層中最も陽極に近い位置に設けられていることが好ましい。又、発光層を4層以上設ける場合には、陽極に近い順から、例えば青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層/青色発光層/緑色発光層/赤色発光層のように青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を順に積層することが、輝度安定性を高める上で好ましい。発光層を多層にすることで白色素子の作製が可能である。
【0118】
発光層の膜厚の総和は特に制限はないが、膜の均質性、発光に必要な電圧等を考慮し、通常2nm〜5μm、好ましくは2〜200nmの範囲で選ばれる。更に10〜20nmの範囲にあるのが好ましい。膜厚を20nm以下にすると電圧面のみならず、駆動電流に対する発光色の安定性が向上する効果があり好ましい。個々の発光層の膜厚は、好ましくは2〜100nmの範囲で選ばれ、2〜20nmの範囲にあるのが更に好ましい。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はないが、3発光層中、青発光層(複数層ある場合はその総和)が最も厚いことが好ましい。
【0119】
発光層は発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある発光スペクトルの異なる少なくとも3層以上の層を含む。3層以上であれば、特に制限はない。4層より多い場合には、同一の発光スペクトルを有する層が複数層あってもよい。発光極大波長が430〜480nmにある層を青発光層、510〜550nmにある層を緑発光層、600〜640nmの範囲にある層を赤発光層と言う。又、前記の極大波長を維持する範囲において、各発光層には複数の発光性化合物を混合してもよい。例えば、青発光層に、極大波長430〜480nmの青発光性化合物と、同510〜550nmの緑発光性化合物を混合して用いてもよい。
【0120】
発光層の材料として使用する有機発光材料は、(a)電荷の注入機能、すなわち、電界印加時に陽極或いは正孔注入層から正孔を注入することが出来、陰極或いは電子注入層から電子を注入することが出来る機能、(b)輸送機能、すなわち、注入された正孔及び電子を電界の力で移動させる機能、及び(c)発光機能、すなわち、電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光に繋げる機能、の3つの機能を併せもつものであれば特に限定はない。例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤や、スチリルベンゼン系化合物を用いることが出来る。上記の蛍光増白剤の具体例としては、ベンゾオキサゾール系では、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4’−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4’−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾオリル]スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス[5−α,α−ジメチルベンジル−2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,5−ビス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル]−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾール、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等が挙げられる。ベンゾチアゾール系では、2,2’−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等が挙げられ、ベンゾイミダゾール系では、2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等が挙げられる。更に、他の有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(1971),第628〜637頁及び第640頁に列挙されている。
【0121】
又、上記のスチリルベンゼン系化合物の具体例としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等が挙げられる。
【0122】
更に、上述した蛍光増白剤及びスチリルベンゼン系化合物以外にも、例えば、12−フタロペリノン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、ナフタルイミド誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、国際公開公報WO90/13148やAppl.Phys.Lett.,vol 58,18,P1982(1991)に記載されているような高分子化合物、芳香族ジメチリディン系化合物が挙げられる。芳香族ジメチリディン系化合物の具体例としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4’−フェニレンジメチリディン、2,5−キシリレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、4,4’−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、及びこれらの誘導体が挙げられる。又、上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0123】
その他、上述した有機発光材料をホストとし、当該ホストに青色から緑色までの強い蛍光色素、例えばクマリン系或いは前記ホストと同様の蛍光色素をドープした化合物も、有機発光材料として好適である。有機発光材料として前記の化合物を用いた場合には、青色から緑色の発光(発光色はドーパントの種類によって異なる)を高効率で得ることが出来る。前記化合物の材料であるホストの具体例としては、ジスチリルアリーレン骨格の有機発光材料(特に好ましくは、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)が挙げられ、前記化合物の材料であるドーパントの具体例としては、ジフェニルアミノビニルアリレーン(特に好ましくは、例えば、N,N−ジフェニルアミノビフェニルベンゼンや4,4’−ビス[2−[4−(N,N−ジ−p−トリル)フェニル]ビニル]ビフェニル)が挙げられる。
【0124】
発光層には、発光層の発光効率を高くするために公知のホスト化合物と公知のリン光性化合物(リン光発光性化合物とも言う)を含有することが好ましい。
【0125】
ホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。ホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することが出来る。又、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることが出来る。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用も出来る。
【0126】
これらのホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、尚且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。公知のホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0127】
複数の発光層を有する場合、これら各層のホスト化合物の50質量%以上が同一の化合物であることが、有機層全体に渡って均質な膜性状を得やすいことから好ましく、更にはホスト化合物のリン光発光エネルギーが2.9eV以上であることが、ドーパントからのエネルギー移動を効率的に抑制し、高輝度を得る上で有利となることからより好ましい。リン光発光エネルギーとは、ホスト化合物を基板上に100nmの蒸着膜のフォトルミネッセンスを測定し、そのリン光発光の0−0バンドのピークエネルギーを言う。
【0128】
ホスト化合物は、有機EL素子の経時での劣化(輝度低下、膜性状の劣化)、光源としての市場ニーズ等を考慮し、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。すなわち、輝度と耐久性の両方を満足するためには、リン光発光エネルギーが2.9eV以上且つTgが90℃以上のものであることが好ましい。Tgは、更に好ましくは100℃以上である。
【0129】
リン光性化合物(リン光発光性化合物)とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物である。先に説明したホスト化合物と合わせ使用することで、より発光効率の高い有機EL素子とすることが出来る。
【0130】
本発明に係るリン光性化合物は、リン光量子収率は好ましくは0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定出来る。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定出来るが、本発明に用いられるリン光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記リン光量子収率が達成されればよい。
【0131】
リン光性化合物の発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上出来ャリアの再結合が起こりリン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、何れの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0132】
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることが出来る。リン光性化合物としては、好ましくは元素の周期表で8族−10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0133】
本発明においては、リン光性化合物のリン光発光極大波長としては特に制限されるものではなく、原理的には中心金属、配位子、配位子の置換基等を選択することで得られる発光波長を変化させることが出来る。
【0134】
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE色度座標に当て嵌めた時の色で決定される。
【0135】
本発明で言うところの白色素子とは、2℃視野角正面輝度を上記方法により測定した際に、1000cd/m2でのCIE1931 表色系における色度がX=0.33±0.07、Y=0.33±0.07の領域内にあることを言う。
【0136】
電子注入層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり広い意味で電子輸送層に含まれる。電子注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。電子注入層(陰極バッファー層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0137】
他に発光層側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることが出来、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来る。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることも出来る。
【0138】
又、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることが出来る。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることが出来る。又、ジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることが出来るし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることが出来る。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0139】
又、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることも出来る。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。この様なn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することが出来るため好ましい。
【0140】
第2電極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。この様な電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することが出来る。又、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の第1電極(陽極)又は第2電極(陰極)の何れか一方が、透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0141】
又、第2電極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、第1電極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の第2電極(陰極)を作製することが出来、これを応用することで第1電極(陽極)と第2電極(陰極)の両方が透過性を有する素子を作製することが出来る。
【0142】
封止手段としては、有機EL素子への水分や酸素の浸入による性能劣化を防止するための手段であり、例えば封止部材と、電極、支持基盤とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に問わない。具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウムおよびタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。更には、ポリマーフィルムは、酸素透過度10-3ml/m2/day以下、水蒸気透過度10-5g/m2/day以下のものであることが好ましい。封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
【0143】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化および熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系などの熱および化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0144】
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
【0145】
また、有機層を挟み支持基盤と対向する側の電極の外側に、該電極と有機層を被覆し、支持基盤と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができる。
【0146】
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相および液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体や、フッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0147】
吸湿性化合物としては例えば金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等があげられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物および過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
【0148】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。又、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
【0149】
本発明の有機EL素子は、発光層で発生した光を効率よく取り出すために以下に示す方法を併用することが好ましい。有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光の内15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことが出来ないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
【0150】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435)。基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)。素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)。基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)。基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)。基板、透明電極層や発光層の何れかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等がある。
【0151】
本発明においては、これらの方法を有機EL素子と組合せて用いることが出来るが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、或いは基板、透明電極層や発光層の何れかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることが出来る。本発明においては、これらの手段を組合せることにより、更に高輝度或いは耐久性に優れた素子を得ることが出来る。
【0152】
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。又、更に1.35以下であることが好ましい。低屈折率媒質の厚みは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。全反射を起こす界面もしくは何れかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることが出来る性質を利用して、発光層から発生した光の内、層間での全反射等により外に出ることが出来ない光を、何れかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
【0153】
回折格子を導入する位置としては前述の通り、何れかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。この時、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0154】
更に、本発明の有機EL素子は、発光層で発生した光を効率よく取り出すために、基板の光取り出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、或いは、所謂集光シートと組合せることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることが出来る。マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大き過ぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0155】
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。この様なシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることが出来る。プリズムシートの形状としては、例えば基板に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。又、発光素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることが出来る。
【実施例】
【0156】
以下、実施例を挙げて本発明の具体的な効果を示すが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0157】
実施例1
一つのドットの大きさが2mm×2mmで、7ドット×10ドットの合計70ドット(発光領域)で構成される有機EL素子を、図1に示す製造装置を使用して図3に示すフロー図に従って作製した。
【0158】
(基板の準備)
基板として厚さ1.1mm、幅40mm、長さ60mmのソーダ石灰ガラスを準備した。尚、ソーダ石灰ガラスの全面には、酸やアルカリから保護するためのシリカコートしたものを使用した。
【0159】
(第1電極の形成)
準備したガラス基板を波長184.2nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm2で、距離12mmで照射し洗浄を行った。この後、図4に示す第1電極形成気相堆積装置を使用し、5×10-4Paの真空下にてインジウムチンオキシド(ITO)を使用し、準備したガラス基板の堆積膜形成領域(第1電極形成領域)に、幅2mm、長さ50mm、間隔2mm、厚さ150nm、7列のパターン化した第1電極を形成した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。
【0160】
(正孔輸送層の形成)
第1電極が形成されたガラス基板を使用し、5×10-4Paの真空下にて正孔輸送層形成気相堆積装置で正孔輸送層形成用材料としてN,N′−ジフェニル−N,N′−m−トリル4,4′−ジアミノ−1,1′−ビフェニル(以下、TPD)を使用し、ガラス基板上に形成された第1電極の一方の端部を除き第1電極の上に、蒸着(気相堆積)した。
【0161】
尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線に対する位置を表1に示すように2台配置し、堆積膜形成を形成する時、原料蒸発容器と堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との関係は図7に示す様にした。正孔輸送層形成用材料を蒸着する時、原料蒸発手段の堆積膜形成領域の最近蒸着点と正孔輸送層形成用材料を入れた原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線との成す角度θ1(θ3)と、堆積膜形成領域の最遠蒸着点と原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最遠蒸着点における法線との成す角度θ2(θ4)を表1に示す様に変えて正孔輸送層を形成し1−1〜1−15とした。尚、正孔輸送層の厚さは50nmとした。
【0162】
【表1】

【0163】
〈有機EL素子の作製〉
正孔輸送層が形成された各ガラス基板No.1−1〜1−15を使用し、以下に示す方法で順次発光層、電子輸送層、第2電極層、封止層を積層し有機EL素子を作製し試料No.101〜115とした。
【0164】
(発光層の形成)
正孔輸送層が形成された各ガラス基板No.1−1〜1−15を使用し、正孔輸送層の上に発光層形成用材料としてAlq3を使用し、5×10-4Paの真空下にて発光層形成気相堆積装置で蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。発光層の厚さは50nmとした。
【0165】
(電子輸送層の形成)
発光層が形成されたガラス基板を使用し、発光層を含め正孔輸送層が形成された領域に、電子輸送層形成用材料としてLiFを使用し、5×10-4Paの真空下にて電子輸送層形成気相堆積装置でLiFを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。電子輸送層の厚さは0.5nmとした。
【0166】
(第2電極の形成)
電子輸送層が形成されたガラス基板を使用し、電子輸送層の上に第1電極と直交する方向で、第2電極形成用材料としてAlを使用し、5×10-4Paの真空下にて第2電極形成気相堆積装置でAlを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。尚、形成した第2電極は、幅2mm、長さ35mm、間隔2mm、厚さ150nm、10列のパターンとした。
【0167】
(封止層の形成)
第2電極が形成されたガラス基板を使用し、第2電極の端部を除き第2電極が形成された領域に、封止層形成用材料としてSiOxを使用し、5×10-4Paの真空下にて封止層形成気相堆積装置でSiOxを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。封止層の厚さは300nmとした。
【0168】
(評価)
作製した各資料No.101〜115に付き、リーク電流特性を以下に示す試験方法により試験し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0169】
リーク電流特性の試験方法
定電圧電源を用いて、逆方向の電圧(逆バイアス)を5Vを5秒間印加し、その時素子に流れる電流を測定した。70ドット(発光領域)全てにおいて測定を行い、最大電流値をリーク電流とした。
【0170】
リーク電流の評価ランク
◎:1×10−8A未満
○:1×10−8A以上、1×10−6A未満
△:1×10−6A以上、1×10−4A未満
×:1×10−4A以上
【0171】
【表2】

【0172】
本発明の有効性が確認された。
【0173】
実施例2
一つのドットの大きさが2mm×2mmで、7ドット×10ドットの合計70ドット(発光領域)で構成される有機EL素子を、図1に示す製造装置を使用して図3に示すフロー図に従って作製した。
【0174】
(基板の準備)
基板として厚さ1.1mm、幅40mm、長さ60mmのソーダ石灰ガラスを準備した。尚、ソーダ石灰ガラスの全面には、酸やアルカリから保護するためのシリカコートしたものを使用した。
【0175】
(第1電極の形成)
準備したガラス基板を波長184.2nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm2で、距離12mmで照射し板洗浄を行った後、図4に示す第1電極形成気相堆積装置で、5×10-4Paの真空下にてインジウムチンオキシド(ITO)を使用し、準備したガラス基板の堆積膜形成領域(第1電極形成領域)に、幅2mm、長さ50mm、間隔2mm、厚さ150nm、7列のパターン化した第1電極を形成した。
【0176】
尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。
【0177】
(正孔輸送層の形成)
第1電極が形成されたガラス基板を使用し、5×10-4Paの真空下にて正孔輸送層形成気相堆積装置で正孔輸送層形成用材料としてTPDを使用し、ガラス基板上に形成された第1電極の一方の端部を除き第1電極の上に、蒸着(気相堆積)した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線に対する位置を表1に示すように1台配置し、堆積膜形成を形成する時、原料蒸発容器を移動させることで原料蒸発容器と堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との関係は図7に示す様にした。正孔輸送層形成用材料を蒸着する時の堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、正孔輸送層形成用材料を入れた原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線との成す角度θ1(θ3)と、堆積膜形成領域の最遠蒸着点と原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最遠蒸着点における法線との成す角度θ2(θ4)を表3に示す様に変えて正孔輸送層を形成し2−1〜2−15とした。尚、正孔輸送層の厚さは50nmとした。
【0178】
【表3】

【0179】
〈有機EL素子の作製〉
正孔輸送層が形成された各ガラス基板No.2−1〜2−15を使用し、以下に示す方法で順次発光層、電子輸送層、第2電極層、封止層を積層し有機EL素子を作製し試料No.201〜215とした。
【0180】
(発光層の形成)
正孔輸送層が形成された各ガラス基板No.2−1〜2−15を使用し、正孔輸送層の上に第1電極のパターに合わせ、発光層形成用材料としてAlq3を使用し、5×10-4Paの真空下にて発光層形成気相堆積装置で蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。発光層の厚さは50nmとした。
【0181】
(電子輸送層の形成)
発光層が形成されたガラス基板を使用し、発光層を含め正孔輸送層が形成された領域に、電子輸送層形成用材料としてLiFを使用し、5×10-4Paの真空下にて電子輸送層形成気相堆積装置でLiFを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。電子輸送層の厚さは0.5nmとした。
【0182】
(第2電極の形成)
電子輸送層が形成されたガラス基板を使用し、電子輸送層の上に第1電極と直交する方向で、第2電極形成用材料としてAlを使用し、5×10-4Paの真空下にて第2電極形成気相堆積装置でAlを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。尚、形成した第2電極は、幅2mm、長さ35mm、間隔2mm、厚さ150nm、10列のパターンとした。
【0183】
(封止層の形成)
第2電極が形成されたガラス基板を使用し、第2電極の端部を除き第2電極が形成された領域に、封止層形成用材料としてSiOxを使用し、5×10-4Paの真空下にて封止層形成気相堆積装置でSiOxを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。封止層の厚さは300nmとした。
【0184】
(評価)
作製した各試料No.201〜215に付き、リーク電流特性を実施例1と同じ試験方法により試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表4に示す。
【0185】
【表4】

【0186】
本発明の有効性が確認された。
【0187】
実施例3
一つのドットの大きさが2mm×2mmで、7ドット×10ドットの合計70ドット(発光領域)で構成される有機EL素子を、図1に示す製造装置を使用して図3に示すフロー図に従って作製した。
【0188】
(基板の準備)
基板として厚さ1.1mm、幅40mm、長さ60mmのソーダ石灰を準備した。尚、ソーダ石灰ガラスの全面には、酸やアルカリから保護するためのシリカコートしたものを使用した。
【0189】
(第1電極の形成)
準備したガラス基板を波長184.2nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm2で、距離12mmで照射し板洗浄を行った後、図4に示す第1電極形成気相堆積装置を使用し、堆積膜を形成する時にITOを入れた原料蒸発容器を図8に示す様な位置になるように2台配置し、5×10-4Paの真空下にてインジウムチンオキシド(ITO)を使用し、準備したガラス基板の堆積膜形成領域(第1電極形成領域)に、幅2mm、長さ50mm、間隔2mm、厚さ150nm、7列のパターン化した第1電極を形成した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1台配置した。
【0190】
(正孔輸送層の形成)
第1電極が形成されたガラス基板を使用し、ガラス基板上に形成された第1電極の一方の端部を除き、堆積膜形成領域に正孔輸送層形成用材料としてTPDを使用し、5×10-4Paの真空下にて図8に示す様な位置に原料蒸発容器を2台配置した正孔輸送層形成気相堆積装置で蒸着(気相堆積)した。尚、原料蒸発容器は、1台の原料蒸発容器の中心と堆積膜形成領域(第1電極形成領域)の蒸着点とを結ぶ線と、他の1台の原料蒸発容器と堆積膜形成領域(第1電極形成領域)の蒸着点とを結ぶ線と交点の交角θ5を表5に示す様に変えて配置し、正孔輸送層を形成しNo.3−1〜3−10とした。
【0191】
又、正孔輸送層形成用材料を蒸着する時の正孔輸送層形成用材料を入れた原料蒸発容器と、堆積膜形成領域の関係は図7に示す様にした。堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線との成す角度θ1(θ3)を20°、堆積膜形成領域の最遠蒸着点と原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最遠蒸着点における法線との成す角度θ2(θ4)を50°とした。正孔輸送層の厚さは50nmとした。
【0192】
【表5】

【0193】
〈有機EL素子の作製〉
正孔輸送層が形成された各ガラス基板No.3−1〜3−9を使用し、以下に示す方法で順次発光層、電子輸送層、第2電極層、封止層を積層し有機EL素子を作製し試料No.301〜309とした。
【0194】
(発光層の形成)
正孔輸送層が形成された各ガラス基板を使用し、正孔輸送層の上に第1電極のパターに合わせ、発光層形成用材料としてAlq3を使用し、5×10-4Paの真空下にて発光層形成気相堆積装置で蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1配置した。発光層の厚さは50nmとした。
【0195】
(電子輸送層の形成)
発光層が形成されたガラス基板を使用し、発光層を含め正孔輸送層が形成された領域に、電子輸送層形成用材料としてLiFを使用し、5×10-4Paの真空下にて電子輸送層形成気相堆積装置でLiFを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1配置した。電子輸送層の厚さは0.5nmとした。
【0196】
(第2電極の形成)
電子輸送層が形成されたガラス基板を使用し、発光層の上に第1電極と直交する方向で、第2電極形成用材料としてAlを使用し、5×10-4Paの真空下にて第2電極形成気相堆積装置でAlを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1配置した。尚、形成した第2電極は、幅2mm、長さ35mm、間隔2mm、厚さ150nm、10列のパターンとした。
【0197】
(封止層の形成)
第2電極が形成されたガラス基板を使用し、第2電極の端部を除き電子輸送層が形成された領域に、封止層形成用材料としてSiOxを使用し、5×10-4Paの真空下にて封止層形成気相堆積装置でSiOxを蒸着した。尚、原料蒸発容器は堆積膜形成領域の端辺の法線の内側(堆積膜形成領域のほぼ中央)に1配置した。封止層の厚さは300nmとした。
【0198】
(評価)
作製した各試料No.301〜309に付き、リーク電流特性を実施例1と同じ試験方法により試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表6に示す。
【0199】
【表6】

【0200】
本発明の有効性が確認された。
【0201】
実施例4
一つのドットの大きさが2mm×2mmで、7ドット×10ドットの合計70ドット(発光領域)で構成される有機EL素子を、図2に示す製造装置を使用して図3に示すフロー図に従って作製した。
【0202】
(帯状支持体の準備)
予め、透明性ガスバリア層と堆積膜形成領域にマークを付けた、厚さ100μm、幅100mm、長さ30mの巻き芯に巻き取りロール状としたポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人・デユポン社製フィルム、以下、PETと略記する)を準備した。
【0203】
(透明性ガスバリア層の形成)
準備したPET上に、大気圧プラズマ放電処理法で、厚さ約90nmの透明ガスバリア層を形成した。JISk−7129Bに準拠した方法により水蒸気透過率を測定した結果、10-3g/m2/day以下であった。JISk−7126Bに準拠した方法により酸素透過率を測定した結果、10-3g/m2/day以下であった。
【0204】
(第1電極の形成)
準備したPETを波長184.2nmの低圧水銀ランプを使用し、照射強度15mW/cm2で、距離12mmで照射し洗浄を行った後、図5に示す第1電極形成気相堆積装置を使用し、ITOを入れた原料蒸発容器を堆積膜形成領域の法線より外側に配置し、5×10-4Paの真空下にてインジウムチンオキシド(ITO)を使用し、準備したPET基板の堆積膜形成領域(第1電極形成領域)に、幅2mm、長さ60mm、間隔2mm、厚さ150nm、7列のパターン化した第1電極を形成した。第1電極の形成位置はPET基板に付けられたマークを検出することで制御手段により制御した。
【0205】
尚、ITOを蒸着する時のITOを入れた原料蒸発容器と、堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線の内側に、原料蒸着容器中心と堆積膜形成領域の各蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との距離がほぼ等しく(堆積膜形成領域のほぼ中央)なるように1台配置した。
【0206】
(正孔輸送層の形成)
第1電極が形成されたPET基板を使用し、PET基板上に形成された第1電極の一方の端部を除き、堆積膜形成領域に正孔輸送層形成用材料としてTPDを使用し、5×10-4Paの真空下にて正孔輸送層形成気相堆積装置にて蒸着(気相堆積)した。尚、原料蒸発容器と堆積膜形成領域の位置関係は図7に示す様にし、PET基材を搬送移動させることで、正孔輸送層形成用材料を入れた原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)における法線との成す角度θ1と、堆積膜形成領域の最近蒸着点と原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線との成す角度θ1(θ3)と、堆積膜形成領域の最遠蒸着点と原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最遠蒸着点における法線との成す角度θ2(θ4)とを表7に示す様に変えて配置し正孔輸送層を形成しNo.4−1〜4−12とした。尚、正孔輸送層の厚さは50nmとした。
【0207】
【表7】

【0208】
〈有機EL素子の作製〉
正孔輸送層が形成された各PET基板No.4−1〜4−12を使用し、以下に示す方法で順次発光層、電子輸送層、第2電極層、封止層を積層し有機EL素子を作製し試料No.401〜412とした。
【0209】
(発光層の形成)
正孔輸送層が形成された各PET基板を使用し、正孔輸送層の上に第1電極のパターに合わせ、発光層形成用材料としてAlq3を使用し、5×10-4Paの真空下にて発光層形成気相堆積装置で蒸着した。尚、原料蒸発容器と、堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線の内側に、原料蒸着容器中心と堆積膜形成領域の各蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との距離がほぼ等しく(堆積膜形成領域のほぼ中央)なるように1台配置した。発光層の厚さは50nmとした。
【0210】
(電子輸送層の形成)
発光層が形成されたPET基板を使用し、発光層を含め正孔輸送層が形成された領域に、電子輸送層形成用材料としてLiFを使用し、5×10-4Paの真空下にて電子輸送層形成気相堆積装置でLiFを蒸着した。尚、原料蒸発容器と、堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線の内側に、原料蒸着容器中心と堆積膜形成領域の各蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との距離がほぼ等しく(堆積膜形成領域のほぼ中央)なるように1台配置した。電子輸送層の厚さは0.5nmとした。
【0211】
(第2電極の形成)
電子輸送層が形成されたPET基板を使用し、電子輸送層の上に第1電極と直交する方向で、第2電極形成用材料としてAlを使用し、5×10-4Paの真空下にて第2電極形成気相堆積装置でAlを蒸着した。尚、原料蒸発容器と、堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線の内側に、原料蒸着容器中心と堆積膜形成領域の各蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との距離がほぼ等しく(堆積膜形成領域のほぼ中央)なるように1台配置した。尚、形成した第2電極は、幅2mm、長さ50mm、間隔2mm、厚さ150nm、10列のパターンとした。
【0212】
(封止層の形成)
第2電極が形成されたPET基板を使用し、第2電極の端部を除き電子輸送層が形成された領域に、封止層形成用材料としてSiOxを使用し、堆積膜を形成する時にSiOxを入れた原料蒸発容器を図8に示す様な位置になるように2台配置し、5×10-4Paの真空下にて封止層形成気相堆積装置でSiOxを蒸着した。尚、原料蒸発容器と、堆積膜形成領域の蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との位置関係は、原料蒸発容器の中心とを結ぶ線と、最近蒸着点における法線の内側に、原料蒸着容器中心と堆積膜形成領域の各蒸着点(最近蒸着点、最遠蒸着点)との距離がほぼ等しく(堆積膜形成領域のほぼ中央)なるように1台配置した。封止層の厚さは300nmとした。
【0213】
(評価)
作製した各試料No.401〜412に付き、リーク電流特性を実施例1と同じ試験方法により試験し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表8に示す。
【0214】
【表8】

【0215】
本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】枚葉シート状基板を使用した有機EL素子の製造方法の模式図である。
【図2】帯状プラスチックフィルム基板を使用した有機EL素子の製造方法の模式図である。
【図3】図2に示す製造装置によりパッシブ型の有機EL素子を作製するまでを段階的に示す概略フロー図である。
【図4】図1に示される第1電極形成気相堆積装置の概略図である。
【図5】図2で示される第1電極形成気相堆積装置の拡大概略図である。
【図6】基板の保持手段に2本の支持ロールと補助板を用いた場合の第1電極形成気相堆積装置の拡大概略図である。
【図7】堆積膜を形成する時、原料蒸発手段と帯状プラスチックフィルム基板の堆積膜形成領域との位置関係を示す模式図である。
【図8】図7に示すように堆積膜を形成する時に、堆積膜形成領域に対して原料蒸発手段が2つの位置関係にある場合の、各原料蒸発手段の位置関係を示す模式図である。
【図9】有機EL素子の層構成の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0217】
1 有機EL素子
101、3、6 基板
102 第1電極(陽極)
103 正孔輸送層
104 発光層
105 電子注入層
106 第2電極(陰極)
107 封止層
2、3 製造装置
201、301 供給部
201a〜201f 枚葉シート状基板
202、302 基板洗浄処理装置
203、304 第1電極形成気相堆積装置
204、305、305′ 正孔輸送層形成気相堆積装置
204a、305a、305′a 蒸着室
204b、305b、305′b 基板保持手段
204c、305c、305′cマスク 配置手段
204d、305d、305′d、7a、7b 原料蒸発手段
204d1、305d1、305′d1 原料容器
204e、305e 制御手段
205、306 発光層形成気相堆積装置
206、307 電子注入層形成気相堆積装置
207、308 第2電極形成気相堆積装置
208 封止層形成気相堆積装置
209 回収部
5、8 帯状プラスチックフィルム基板
9 堆積膜形成領域
O 最近蒸着点(最遠蒸着点)
P 最遠蒸着点(最近蒸着点)
Q 蒸着点
R 交点
θ1〜θ4 角度
θ5 交角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも第1電極を含む陽極層と、発光層を含む有機化合物層と、第2電極を含む陰極層とを順次形成する工程を有する製造装置を使用し、前記発光層を含む有機化合物層の少なくとも一つの層が気相堆積装置を用いて形成する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記気相堆積装置は減圧手段で減圧される蒸着室と、基板の基板保持手段と、前記基板に対して堆積膜形成領域を規制するマスクのマスク配置手段と、原料を蒸発させる原料蒸発手段とを有し、
前記原料蒸発手段は前記堆積膜形成領域の端辺の法線の外側に配設され、
前記気相堆積装置により前記堆積膜形成領域に堆積膜を形成する時、
前記原料蒸発手段と前記堆積膜形成領域との位置関係は、
前記堆積膜形成領域に対して前記原料蒸発手段が少なくとも2つの位置関係になるようにして行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記堆積膜を形成する時、原料蒸発手段或いは基板のどちらか一方を移動することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項3】
前記堆積膜を形成する時、原料蒸発手段と堆積膜形成領域との位置関係は、該原料蒸発手段の中心と該堆積膜形成領域の最近蒸着点をO、最遠蒸着点をPとした時、該原料蒸発手段の中心と該最近蒸着点Oを結ぶ線と、該最近蒸着点Oの法線との成す角度と、該原料蒸発手段の中心と該最遠蒸着点Pを結ぶ線と、該最遠蒸着点Pの法線との成す角度とが0°より大きく、75°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域に対して少なくとも2つの位置関係にある原料蒸発手段は、
該堆積膜形成領域の全ての蒸着点と各該原料蒸発手段の中心とを結ぶ線との交点での交角が45°〜180°の位置関係を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項5】
前記堆積膜を形成する時、堆積膜形成領域に対して複数の位置関係にある原料蒸発手段と堆積膜形成領域との位置関係は、該原料蒸発手段の中心と該堆積膜形成領域の最近蒸着点をO、最遠蒸着点をPとした時、該原料蒸発手段の中心と該最近蒸着点Oを結ぶ線と、該最近蒸着点Oの法線との成す角度と、該原料蒸発手段の中心と該最遠蒸着点Pを結ぶ線と、該最遠蒸着点Pの法線との成す角度とが0°より大きく、75°以下であり、
該堆積膜形成領域に対して複数の位置関係にある原料蒸発手段の内、任意の位置にある2つの該原料蒸発手段は、各該原料蒸発手段の中心と該堆積膜形成領域の任意の蒸着点とを結ぶ線との交点での交角が45°〜180°の位置関係を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項6】
前記基板が枚葉であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項7】
前記基板が帯状プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項8】
前記基板保持手段が、保持手段を有する平板であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項9】
前記基板保持手段が、バックアップロールであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項10】
前記基板保持手段が、2本の支持ロールと、該支持ロールの間に配設された補助板であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法により作製されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−59188(P2007−59188A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242416(P2005−242416)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】