説明

有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体

【課題】波長600nm以上の光を少なくとも吸収することが可能である、メソ構造を有する有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体を提供する。
【解決手段】下記式(1):


〔R〜R10のうちの少なくとも3つの基は、下記式(2):−(Z)−Si(OR3−n(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基〕で表されるペリレン系有機シラン化合物のメソ構造を有する重合体と、界面活性剤とを含有することを特徴とする有機シリカ系材料、および前記ペリレン系有機シラン化合物の重合体からなる有機シリカ系多孔体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体に関し、より詳しくは、ペリレンビスイミド骨格を有する有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体に関する。
【背景技術】
【0002】
メソ構造を有する有機シラン化合物の重合体は、発光材料や光触媒、太陽電池などへの応用が期待できる有機/無機ハイブリッド材料であり、従来から様々な有機シラン化合物の重合体が提案されている。
【0003】
例えば、国際公開第2007/034861号パンフレット(特許文献1)には、ピレン骨格、アントラセン骨格、アクリドン骨格、アクリジン骨格、クアテルフェニル骨格またはオリゴフェニレンビニレン骨格などを有する架橋型有機シランが開示されている。特許文献1に記載されているように、ピレン骨格またはアクリジン骨格を有する架橋型有機シランからなるメソ構造体は紫外線を吸収することから、紫外線応答型の光触媒への応用が期待できる。また、アントラセン骨格、アクリドン骨格またはクアテルフェニル骨格を有する架橋型有機シランからなるメソ構造体は400nm以上の可視光線を吸収することから、可視光応答型の光触媒や太陽電池への応用が期待できる。
【0004】
しかしながら、これらの架橋型有機シランからなるメソ構造体は、その吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が500nm以下であり、太陽光を効率よく利用するには、より長波長側の光を吸収するメソ構造体が必要であった。
【0005】
また、Chandraら、Chem.Mater.、2007年、第19巻、5347〜5354頁(非特許文献1)には、ビス(プロピルイミノメチル)フェノール骨格を有する有機無機ハイブリッドメソポーラスシリカが開示されており、Corneliusら、J.Mater.Chem.、2008年、第18巻、2587〜2592頁(非特許文献2)には、4,4’−ジビニルアゾベンゼン骨格を有するメソポーラスシリカ系有機無機ハイブリッド材料が開示されている。これらのメソポーラスシリカは、比較的長波長の光を吸収するものであるが、これらのメソポーラスシリカにおいても、その吸収スペクトルの長波長側の吸収端は550〜570nmであり、太陽光をより効率よく利用するには、さらに長波長側の光を吸収するメソ構造体が必要であった。
【0006】
一方、Yangら、Adv.Func.Mater.、2008年、第18巻、1〜10頁(非特許文献3)には、2つのアルコキシシリル基を有するペリレンビスイミド骨格を有する有機シラン前駆体、およびそれを縮重合させて得られる有機シリカ構造体が開示されている。しかしながら、非特許文献3に記載の有機シラン前駆体を用いても、メソ構造を有する有機シリカ構造体を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/034861号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chandraら、Chem.Mater.、2007年、第19巻、5347〜5354頁
【非特許文献2】Corneliusら、J.Mater.Chem.、2008年、第18巻、2587〜2592頁
【非特許文献3】Yangら、Adv.Func.Mater.、2008年、第18巻、1〜10頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、波長600nm以上の光を少なくとも吸収することが可能である、メソ構造を有する有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、有機シラン化合物の重合体と界面活性剤とを含有する有機シリカ系材料および前記有機シラン化合物の重合体からなる有機シリカ系多孔体において、前記有機シラン化合物として少なくとも3つのアルコキシシリル基を備えるペリレンビスイミド骨格を有する有機シラン化合物を使用することにより、前記有機シラン化合物の重合体がメソ構造を形成し、さらに、有機シリカ系材料および有機シリカ系多孔体が、波長600nm以上の光を少なくとも吸収することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の有機シリカ系材料は、下記式(1):
【0012】
【化1】

【0013】
〔式(1)中、R〜R10のうちの少なくとも3つの基は、それぞれ独立に、下記式(2):
−(Z)−Si(OR3−n (2)
(式(2)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアリル基を表し、Zは、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、エテニレン基、エチニレン基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基およびイミド基からなる群から選択される1種の基を表し、mは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。)
で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基であり、
〜Rのうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、フェノキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基およびイミド基からなる群から選択される1種の基であり、
〜R10のうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される1種の基である。〕
で表されるペリレン系有機シラン化合物のメソ構造を有する重合体と、界面活性剤とを含有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の有機シリカ系メソ多孔体は、前記式(1)で表されるペリレン系有機シラン化合物の重合体からなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体において、前記ペリレン系有機シラン化合物としては、前記式(1)中のR、R、RおよびRが前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基であるものが好ましい。
【0016】
また、本発明の有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体においては、その吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長が600nm以上であることが好ましい。
【0017】
なお、本発明のように、少なくとも3つのアルコキシシリル基を備えるペリレンビスイミド骨格を有する有機シラン化合物を用いることによって有機シラン化合物の重合体がメソ構造を形成する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、ペリレンビスイミド骨格のように大きな架橋有機基に3つ以上のシリル基(シリカ骨格形成部位)を導入すると、加水分解後の有機シラン化合物中のシラノール基の密度が増加し、このシラノール基と鋳型界面活性剤ミセルとの相互作用が強まり、ペリレンビスイミド骨格同士の相互作用が緩和されるためであると推察される。
【0018】
一方、ペリレンビスイミド骨格にシリル基が2つしか導入されていない場合においては、ペリレンビスイミド骨格同士の相互作用が強く、有機シラン化合物が凝集するため、規則的なメソ構造が形成されにくいと推察される。また、架橋有機基の大きさが大きくなると、加水分解後の有機シラン化合物中のシラノール基と鋳型界面活性剤ミセルとの相互作用が相対的に弱くなるため、規則的なメソ構造を形成しにくくなると推察される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、波長600nm以上の光を少なくとも吸収することが可能である、メソ構造を有する有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1で得た有機シリカ粉末および実施例2で得た多孔体粉末のX線回折パターンを示すグラフである。
【図2】実施例1で得た有機シリカ粉末および実施例2で得た多孔体粉末の紫外/可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】実施例3で得た有機シリカ薄膜および実施例4で得た多孔体薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図4】実施例3で得た有機シリカ薄膜および実施例4で得た多孔体薄膜の紫外/可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例5で得た有機シリカ薄膜および実施例6で得た多孔体薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図6】実施例5で得た有機シリカ薄膜および実施例6で得た多孔体薄膜の紫外/可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例7で得た有機シリカ薄膜および実施例8で得た多孔体薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図8】実施例7で得た有機シリカ薄膜および実施例8で得た多孔体薄膜の紫外/可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図9】比較例1で得た有機シリカのX線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
先ず、本発明の有機シリカ系材料について説明する。本発明の有機シリカ系材料は、下記式(1):
【0023】
【化2】

【0024】
で表されるペリレン系有機シラン化合物のメソ構造を有する重合体(以下、「Si系重合体」という。)と、界面活性剤とを含有するものである。このように、本発明の有機シリカ系材料は、ペリレンビスイミド骨格を有するSi系重合体を含有しているため、吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長が600nm以上となり、500nm以上の長波長の光を効率的に吸収することが可能となる。
【0025】
前記式(1)で表されるペリレン系有機シラン化合物において、前記式(1)中のR〜R10のうちの少なくとも3つの基は、それぞれ独立に、下記式(2):
−(Z)−Si(OR3−n (2)
で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基である。このようなアルコキシシリル基を含有する置換基を少なくとも3つ備えるペリレン系有機シラン化合物を縮合させることによってメソ構造を有するSi系重合体を形成させることが可能となる。
【0026】
前記式(2)中のRは炭素数1〜8(好ましくは1〜4)のアルキル基を表し、中でも、メチル基またはエチル基が好ましい。Rは炭素数1〜8(好ましくは1〜4)のアルキル基または炭素数2〜8(好ましくは2〜4)のアリル基を表し、前記アリル基はメチル基などの置換基を有していてもよい。
【0027】
前記式(2)中のZは、炭素数1〜12(好ましくは1〜6)のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、エテニレン基、エチニレン基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基またはイミド基を表す。前記アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。前記アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、チエニレン基などが挙げられる。これらの基のうち、Zとしては、重合反応時の化学的安定性と疎水性低減の観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、エーテル基、アミノ基が好ましい。
【0028】
前記式(2)中のmは0〜2の整数であり、mが0の場合、Zは単結合を意味する。また、mが2の場合、複数存在するZは同じであっても異なっていてもよい。例えば、異なるZの組み合わせからなる基としては、一方がエーテル基、他方がフェニル基からなるフェノキシ基などが挙げられる。前記式(2)中のnは1〜3の整数であり、縮合反応が進行しやすく、縮合後の構造が安定するという観点からnは2または3であることが好ましい。
【0029】
前記式(1)で表されるペリレン系有機シラン化合物において、前記式(1)中のR〜Rのうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12(好ましくは1〜6)のアルキル基、炭素数1〜12(好ましくは1〜6)のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、フェノキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基またはイミド基である。中でも、化学的安定性と重合物中のペリレン基の高密度化の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、フェニル基、フェノキシ基が好ましい。
【0030】
前記式(1)で表されるペリレン系有機シラン化合物において、前記式(1)中のR〜R10のうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12(好ましくは1〜6)のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基である。中でも、化合物の溶解性の向上と重合物中のペリレン基の高密度化とを両立させるという観点から、1−エチルプロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0031】
本発明においては、このようなペリレン系有機シラン化合物を1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このようなペリレン系有機シラン化合物のうち、3つ以上のアルコキシシリル基が容易に導入できるという観点から、前記式(1)中のR、R、RおよびRが前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基である有機シラン化合物、前記式(1)中のR、R、RおよびRが前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基である有機シラン化合物が好ましく、前者の有機シラン化合物がより好ましい。
【0032】
本発明に用いられるSi系重合体は、このようなペリレン系有機シラン化合物の重合体であり、メソ構造を有するものである。このようなSi系重合体の構造式は、重合されるペリレン系有機シラン化合物の種類に依存する。例えば、前記式(1)中のR、R、RおよびRが前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基である有機シラン化合物、すなわち、下記式(3):
【0033】
【化3】

【0034】
で表されるペリレン系有機シラン化合物を重合させた場合には、前記Si系重合体は、下記式(4):
【0035】
【化4】

【0036】
で表される繰り返し単位を有するものとなる。
【0037】
前記式(3)および(4)中のR、R、RおよびR〜R10は、それぞれ前記式(1)中の前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基であるR、R、RおよびR〜R10と同義である。前記式(3)および(4)中のZ、mおよびRはそれぞれ前記式(2)中のZ、mおよびRと同義である。前記式(3)中のRおよびnはそれぞれ前記式(2)中のRおよびnと同義である。前記式(4)中のiは1〜3の整数であり、jは0〜2の整数であり、1≦i+j≦3である。なお、iとjとの組み合わせは、Si系重合体中の全てのシリル基において同じである必要はない。また、Rがアリル基の場合、アリル基が加水分解により脱離するため、前記式(3)中の(3−n)の値と前記式(3−i−j)の値は必ずしも一致しない。
【0038】
前記式(3)で表されるペリレン系有機シラン化合物のうち、前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基を導入しやすいという観点から、前記式(3)中のR、R、RおよびRが水素原子であるものが好ましく、重合物の架橋度を高め、構造を安定化できるという観点から、前記式(3)中のnが2または3であるものがより好ましい。
【0039】
また、本発明においては、前記Si系重合体として、前記式(1)で表されるペリレン系有機シラン化合物とその他の有機シラン化合物との共重合体を使用することもできる。前記その他の有機シラン化合物としては、ジメトキシシラン、ジエトキシシランといったジアルコキシシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシランといったトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランといったテトラアルコキシシラン;1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エチレン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)アセチレン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、4,4’−ビス(トリエトキシシリル)ビフェニルといった有機基架橋型アルコキシシランなどの公知のアルコキシシラン化合物が挙げられる。これらのアルコキシシラン化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記ペリレン系有機シラン化合物、および必要に応じて前記他の有機シラン化合物(以下、これらを総称して「シランモノマー」という)を(共)重合させる場合、前記ペリレン系有機シラン化合物の割合は、(共)重合に使用する全シランモノマー100質量%に対して10〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。また、前記(共)重合反応の条件は特に制限されないが、水、または水と有機溶媒との混合溶媒を溶媒として使用し、酸または塩基触媒の存在下で前記シランモノマーを加水分解および縮合させることが好ましい。このとき用いられる好適な有機溶媒としてはアルコール、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられ、混合溶媒として用いる場合の有機溶媒の含有率は5〜99重量%程度が好ましい。また、前記酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸といった鉱酸などが挙げられ、酸触媒を使用する場合の溶液は、pHが6以下(より好ましくは2〜5)の酸性であることが好ましい。さらに、前記塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、塩基触媒を使用する場合の溶液は、pHが8以上(より好ましくは9〜11)の塩基性であることが好ましい。
【0041】
このような(共)重合工程における前記シランモノマーの濃度は、ケイ素濃度換算で0.0055〜0.33mol/L程度であることが好ましい。また、上記(共)重合工程における諸条件(温度、時間など)は特に制限されず、用いるシランモノマーや目的とするSi系重合体などに応じて適宜選択されるが、一般的には0〜100℃程度の温度で1〜48時間程度の時間で前記シランモノマーを加水分解および縮合させることが好ましい。
【0042】
前記ペリレン系有機シラン化合物を(共)重合させると前記式(1)中のシリル基が、通常、加水分解されてシラノール基(Si−OH)が形成され、その後の縮合反応によりシロキサン結合(Si−O−Si)が形成される。このとき、シラノール基の一部がシロキサン結合にまで変換されず、そのまま残存していたり、Siに結合したアリル基がそのまま残存していても有機シリカ系材料の光吸収性には影響しない。
【0043】
本発明の有機シリカ系材料は、前記Si系重合体の他に、界面活性剤を含有していてもよい。この界面活性剤は、前記Si系重合体と複合化することによって重合体の形態を容易に制御できるという効果を有するものである。
【0044】
このような界面活性剤は、通常、前記Si系重合体を調製する際に使用したものを除去せずにそのまま残存させたものである。また、界面活性剤の存在下で前記(共)重合を実施することにより、前記Si系重合体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径が1〜30nmのメソ細孔を備える構造(メソ構造)を有するメソ多孔体となる。
【0045】
なお、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径であり、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、メソ多孔体を液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法などの計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0046】
このようなメソ多孔体は、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。この条件を満たすメソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、メソ多孔体の比表面積については特に制限はないが、700m/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0047】
さらに、このようなメソ多孔体は、そのX線回折(XRD)パターンにおいて1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1.5〜30.5nmの間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0048】
本発明にかかるメソ構造のSi系重合体を調製する際に用いられる界面活性剤は特に制限されないが、カチオン性、アニオン性、ノニオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリエチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどの塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤、一級アルキルアミンなどが挙げられる。これらの界面活性剤は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記界面活性剤のうちのポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式C2n+1(OCHCHOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物もポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤として用いることができる。
【0050】
さらに、ポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤として、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)(PO)(EO)で表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。前記トリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)(PO)70(EO)、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社などから入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
【0051】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーもポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤として使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)(PO)NCHCHN((PO)(EO)で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0052】
本発明の有機シリカ系材料においては、前記界面活性剤のうち、細孔の秩序性が高いメソ多孔体を得ることができることから、アルキルトリメチルアンモニウム[C2p+1N(CH]の塩(好ましくはハロゲン化物塩)を用いることが好ましい。また、その場合は、アルキルトリメチルアンモニウム中のアルキル基の炭素数は8〜22であることがより好ましい。このような界面活性剤としては、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドコシルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0053】
前記界面活性剤を用いて本発明にかかるSi系重合体を製造する場合においては、前記界面活性剤を含有する溶媒中において前記式(1)で表されるペリレン系有機シラン化合物を加水分解および縮合させることにより前記Si系重合体中に前記界面活性剤が導入された多孔体前駆体(有機シリカ系材料)を得る。前記溶液中の界面活性剤の濃度は1〜20質量%であることが好ましい。前記界面活性剤の濃度が前記下限未満になると細孔の形成が不完全となりやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下しやすい傾向にある。
【0054】
本発明の有機シリカ系材料において、前記Si系重合体の含有率としては、前記有機シリカ系材料100質量%に対して、10〜80質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。Si系重合体の含有率が前記下限未満になると、Si系重合体による光の吸収量が減少する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとメソ構造の秩序が低下する傾向にある。また、前記界面活性剤の含有率としては、前記有機シリカ系材料100質量%に対して、20〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。界面活性剤の含有率が前記下限未満になるとメソ構造の秩序が低下しやすく、また、Si系重合体中の有機基の会合を十分に抑制できない傾向にあり、他方、前記上限を超えるとSi系重合体による光の吸収量が減少しやすい傾向にある。
【0055】
本発明の有機シリカ系材料の形態は特に限定されず、例えば、粒子状、薄膜状、さらにはその薄膜を所定の形状にパターニングしたパターン状などが挙げられる。また、本発明の有機シリカ系材料をFSMなどのメソポーラスシリカに担持してもよい。
【0056】
本発明の有機シリカ系材料を製造する場合、前記シランモノマーと前記界面活性剤とを混合した後、前記シランモノマーを重合させてもよい。これにより前記シランモノマーの重合体(本発明にかかるSi系重合体)の細孔内に前記界面活性剤を充填することが可能となり、有機シリカ系材料の量子収率を高く保持することができる。
【0057】
また、薄膜状の有機シリカ系材料を製造する場合には、先ず、前記界面活性剤を含む酸性溶液(例えば、塩酸、硝酸などの水溶液またはアルコール溶液)に前記シランモノマーを添加し、この溶液を攪拌して反応(部分加水分解および部分縮合反応)させてその部分重合体を含有するゾル溶液を製造する。このような前記シランモノマーの加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進させることができる。このとき、pHは6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。また、その際の反応温度は15〜25℃程度が好ましく、反応時間は30分間〜1日間程度が好ましい。
【0058】
次に、このようにして得られたゾル溶液を基板に塗布することにより薄膜状の有機シリカ系材料を作製することができる。前記ゾル溶液を基板に塗布する方法としては特に制限はなく、各種コーティング方法を適宜採用することができる。例えば、溶液キャスト法や、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いて塗布する方法、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングといった方法などが挙げられる。さらに、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、基板にパターン状の有機シリカ系材料を形成することも可能である。
【0059】
次に、得られた薄膜を25〜120℃程度で乾燥させ、前記部分重合体の重縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させることが好ましい。得られる薄膜の平均膜厚は2μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
【0060】
また、このような薄膜状の有機シリカ系材料は、特開2001−130911号公報などに記載の方法に準拠して得ることも可能である。
【0061】
次に、本発明の有機シリカ系メソ多孔体について説明する。本発明の有機シリカ系メソ多孔体は、下記式(1):
【0062】
【化5】

【0063】
で表されるペリレン系有機シラン化合物のメソ構造を有する重合体(Si系重合体)からなるものである。本発明の有機シリカ系メソ多孔体における前記式(1)中のR〜R10は前記有機シリカ系材料における前記式(1)中のR〜R10と同義である。本発明の有機シリカ系メソ多孔体は、ペリレンビスイミド骨格を有するSi系重合体を含有しているため、吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長が600nm以上となり、500nm以上の長波長の光を効率的に吸収することが可能となる。前記Si系重合体中にシラノール基の一部がそのまま残存していたり、Siに結合したアリル基がそのまま残存していても有機シリカ系メソ多孔体の光吸収性には影響しない。
【0064】
本発明の有機シリカ系メソ多孔体におけるSi系重合体の構造式は、重合されるペリレン系有機シラン化合物の種類に依存する。例えば、前記ペリレン系有機シラン化合物が下記式(3)
【0065】
【化6】

【0066】
で表されるものである場合、前記Si系重合体は、下記式(4):
【0067】
【化7】

【0068】
で表される繰り返し単位を有するものとなる。
【0069】
本発明の有機シリカ系メソ多孔体における前記式(3)および(4)中のR、R、R、R〜R10、Z、mおよびRは前記有機シリカ系材料における前記式(3)および(4)中のR、R、R、R〜R10、Z、mおよびRと同義である。前記有機シリカ系メソ多孔体における前記式(3)中のRおよびnは前記有機シリカ系材料における前記式(3)中のRおよびnと同義である。前記有機シリカ系メソ多孔体における前記式(4)中のiおよびjは前記有機シリカ系材料におけるiおよびjと同義であり、iとjとの組み合わせは、Si系重合体中の全てのシリル基において同じである必要はない。また、Rがアリル基の場合、アリル基が加水分解により脱離するため、前記式(3)中の(3−n)の値と前記式(3−i−j)の値は必ずしも一致しない。
【0070】
このような有機シリカ系メソ多孔体は、本発明の有機シリカ系材料から界面活性剤を除去することによって製造することができる。界面活性剤を除去する方法としては、例えば、(i)界面活性剤に対する溶解度が高い有機溶媒(例えば、エタノール)中に、メソ構造のSi系重合体と界面活性剤とを含有する本発明の有機シリカ系材料を浸漬して前記界面活性剤を除去する方法、(ii)メソ構造のSi系重合体と界面活性剤とを含有する本発明の有機シリカ系材料を250〜550℃で焼成して前記界面活性剤を除去する方法、(iii)メソ構造のSi系重合体と界面活性剤とを含有する本発明の有機シリカ系材料を酸性溶液(例えば、塩酸酸性アルコール溶液)に浸漬して加熱し、前記界面活性剤を水素イオンに交換するイオン交換法、(iv)メソ構造のSi系重合体と界面活性剤とを含有する本発明の有機シリカ系材料を、加熱した酸性蒸気(例えば、塩酸蒸気)に曝露した後、有機溶媒(例えば、エタノール)に浸漬して前記界面活性剤を有機溶媒中に溶出させる方法、(v)メソ構造のSi系重合体と界面活性剤とを含有する本発明の有機シリカ系材料を、加熱した塩基性蒸気(例えば、アンモニア水の蒸気)に曝露した後、有機溶媒(例えば、エタノール)に浸漬して前記界面活性剤を有機溶媒中に溶出させる方法、などを挙げることができる。これらの方法における処理条件は、使用する界面活性剤、有機溶媒、酸性蒸気、塩基性蒸気の種類などにより適宜設定することができる。
【0071】
本発明の有機シリカ系多孔体の形態は特に限定されず、例えば、粒子状、薄膜状、さらにはその薄膜を所定の形状にパターニングしたパターン状などが挙げられ、通常、使用する有機シリカ系材料の形態に依存する。また、本発明の有機シリカ系多孔体をFSMなどのメソポーラスシリカに担持してもよい。
【0072】
本発明の有機シリカ系メソ多孔体を粉末として製造した場合、これをそのまま使用してもよいし、必要に応じて成形して使用してもよい。成形する手段は特に制限されないが、押出成形、打錠成形、転動造粒、圧縮成形、CIPなどが好ましい。その形状は使用箇所、方法などに応じて決めることができ、例えば、円柱状、破砕状、球状、ハニカム状、凹凸状、波板状などが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られた有機シリカ粉末および有機シリカ薄膜のメソ多孔体の紫外/可視吸収スペクトルはJASCO社製「FP−6500 Spectrofluorometer」を用いて測定した。
【0074】
(合成例1)
<N,N’−ビス(1−エチルプロピル)−2,5,8,11−テトラキス[2−(トリメトキシシリル)エチル]ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドの合成>
先ず、容量50mLのナス型フラスコに、ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物(1.12g、3.0mmol)、イミダゾール(6.0g)および1−エチルプロピルアミン(1.75mL、15mmol)を入れた。この混合液を160℃で4時間加熱して下記反応式(I):
【0075】
【化8】

【0076】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液を室温まで冷却し、1mol/LのHCl水溶液を加えた後、未反応のアミンとイミダゾールを濾別した。得られた反応生成物を、ジクロロメタンを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した。その後、ジクロロメタンとメタノールを用いて再結晶し、赤色粉末(1.48g、収率93%)を得た。
【0077】
この赤色粉末をH−NMR測定により同定し、N,N’−ビス(1−エチルプロピル)−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドであることを確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ0.92(t,J=7.4Hz,12H)、1.90−1.98(m,4H)、2.22−2.33(m,4H)、5.04−5.11(m,2H)、8.63(d,J=8.1Hz,4H)、8.68(d,J=8.1Hz,4H)。
【0078】
次に、シュレンクフラスコに、前記N,N’−ビス(1−エチルプロピル)−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(53.0mg、0.10mmol)およびRuH(CO)(PPh(5.5mg、0.006mmol)を入れ、窒素置換を行なった。これにビニルトリメトキシシラン(0.15mL、1.0mmol)およびメシチレン(0.30mL)を添加し、165℃で加熱しながら36時間撹拌して、下記反応式(II):
【0079】
【化9】

【0080】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液をそのままテトラヒドロフランに添加して溶解させ、GPC用ポリスチレンゲル(バイオビーズ)により反応生成物を定量的に単離した。得られた反応生成物は少量のメシチレンを含んでおり、高真空でメシチレンを除去して濃赤色固体(112mg、収率100%)を得た。
【0081】
この濃赤色固体をH−NMR測定、13C−NMR測定、紫外/可視吸収スペクトル測定、蛍光スペクトル測定およびHR−MS測定により同定し、N,N’−ビス(1−エチルプロピル)−2,5,8,11−テトラキス[2−(トリメトキシシリル)エチル]ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドであることを確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ0.91(t,J=7.2Hz,12H)、1.20−1.25(m,8H)、1.87−1.95(m,4H)、2.20−2.28(m,4H)、3.57−3.63(m,8H)、3.68(s,36H)、5.06−5.11(m,2H)、8.43(s,4H)。
13C−NMR(100MHz、CDCl):δ11.04、11.55、25.26、30.53、50.83、57.29、120.14、124.46、126.82、132.08、133.19、152.19、164.34。
紫外/可視吸収スペクトル(トルエン):λmax[nm](ε[M−1cm−1])=386(8900)、456.5(15000)、486.5(38000)、522.5(56000)。
蛍光スペクトル(トルエン、λex=523nm):λem[nm]=534、576。
HR−MS(ESI−MS):m/z=1157.4188、calcd for(C547816SiCl)=1157.4122([M+Cl])。
【0082】
(合成例2)
<N,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラキス[4−(トリエトキシシリル)フェノキシ]ペリレン−3,4:9,10−テトラテトラカルボン酸ビスイミドの合成>
先ず、プロピオン酸(30mL)に、1,6,7,12−テトラクロロペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物(1.94g、3.66mmol)およびブチルアミン(1.81mL、1.34g、18.3mmol)を加え、12時間加熱還流して下記反応式(III):
【0083】
【化10】

【0084】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、エタノール(100mL)を加え、生じた赤色沈澱を吸引濾過により回収した。残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、エタノールで洗浄した後、真空乾燥して赤色固体(2.08g、収率89%)を得た。
【0085】
この赤色固体をH−NMR測定により同定し、N,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラクロロペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドであることを確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.67(s,4H)、4.22(t,J=7.4Hz,4H)、1.74(m,4H)、1.47(m,4H)、1.01(t,J=7.4Hz,6H)。
【0086】
次に、前記N,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラクロロペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(1.0g、1.56mmol)、4−ヨードフェノール(2.64g、12.0mmol)、炭酸カリウム(0.72g、5.24mmol)およびN−メチルピロリドン(NMP、16mL)を混合し、140℃で加熱しながら3時間攪拌して下記反応式(IV):
【0087】
【化11】

【0088】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液を室温まで冷却し、水(100mL)に注いだ後、1時間攪拌した。生じた沈澱を吸引濾過により回収した後、クロロホルム(50mL)に再度溶解させた。その後、メタノール(200mL)を添加して再沈澱させ、沈殿物を吸引濾過により回収し、残渣を真空乾燥して紫色固体(1.60g)を得た。
【0089】
この紫色固体をH−NMR測定により同定し、N,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラキス(4−ヨードフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドであることを確認した。その結果を以下に示す。なお、この紫色固体には、ヨウ素の一部(約10%)が水素原子に置き換わったものが含まれていた。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.15(s,4H)、7.58(d,J=8.8Hz,8H)、6.66(d,J=8.8Hz,8H)、4.11(t,J=7.6Hz,4H)、1.65(m,4H)、1.40(m,4H)、0.95(t,J=7.3Hz,6H)。
【0090】
次に、アルゴン雰囲気下で、前記N,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラキス(4−ヨードフェノキシ)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(1.0g、0.728mmol)、Rh[(cod)(CHCN)]BF(27.7mg、0.073mmol)およびテトラブチルアンモニウムヨージド(1.08g、2.91mmol)を混合し、この混合物に脱水ジメチルホルムアミド(DMF、25mL)および脱水トリエチルアミン(TEA、1.22mL)を添加して0℃に冷却した。その後、トリエトキシシラン(1.07mL、0.957g、5.82mmol)を添加して80℃で加熱しながら3時間攪拌して下記反応式(V):
【0091】
【化12】

【0092】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液を室温に冷却した後、溶媒を減圧留去し、残渣にジエチルエーテル(50mL)を加えて激しく攪拌した。この溶液をセライトおよび活性炭を用いて吸引濾過し、濾液を減圧下で濃縮・乾燥して紫色固体(0.5g)を得た。
【0093】
この紫色固体をH−NMR測定により同定し、N,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラキス[4−(トリエトキシシリル)フェノキシ]ペリレン−3,4:9,10−テトラテトラカルボン酸ビスイミドであることを確認した。その結果を以下に示す。なお、この紫色固体には、トリエトキシシリル基の一部(約15%)が水素原子に置き換わったものが含まれていた。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.22(s,4H)、7.56(d,J=8.7Hz,8H)、6.90(d,J=8.7Hz,8H)、4.12(t(br),4H)、3.87(q,J=6.8Hz,24H)、1.66(m,4H)、1.41(m,4H)、1.27(t,J=6.8Hz,36H)、0.94(t,J=7.4Hz,6H)。
【0094】
(合成例3)
<N,N’−ビス[4−(トリエトキシシリル)フェニル]−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドの合成>
先ず、アルゴン雰囲気下で、ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物(2.35g、6.0mmol)、酢酸亜鉛(0.85g)およびキノリン(45mL)を混合し、100℃で加熱しながら30分間攪拌した。この混合物に4−ヨードアニリン(6.57g、30.0mmol)を添加し、200℃で加熱しながら24時間攪拌して下記反応式(VI):
【0095】
【化13】

【0096】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液を室温まで冷却した後、エタノール(350mL)に注ぎ、生成した沈澱物を吸引濾過により回収した。残渣を5質量%炭酸カリウム水溶液(500mL)に分散させ、70℃で加熱攪拌した後、吸引濾過により回収した。この操作を2回繰り返した後、残渣をメタノール(100mL)に分散させ、70℃で加熱攪拌した後、吸引濾過により回収した。その後、残渣を真空乾燥して濃赤色固体(4.56g、収率96%)を得た。なお、この濃赤色固体は不溶性であったため、NMR測定は実施しなかったが、N,N’−ビス(4−ヨードフェニル)−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドであると考えられる。
【0097】
次に、アルゴン雰囲気下で、前記N,N’−ビス(4−ヨードフェニル)−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(0.79g、1.0mmol)およびRh[(cod)(CHCN)]BF(19.0mg、0.050mmol)を混合し、この混合物に脱水ジメチルホルムアミド(DMF、20mL)および脱水トリエチルアミン(TEA、0.84mL)を添加して0℃に冷却した。その後、トリエトキシシラン(0.74mL、0.657g、4.0mmol)を添加して80℃で加熱しながら4時間攪拌して下記反応式(VII):
【0098】
【化14】

【0099】
で表される反応を行なった。得られた反応溶液を室温に冷却した後、溶媒を減圧留去し、残渣にクロロホルム(50mL)を加えた。この溶液をセライトおよび活性炭を用いて吸引濾過した後、得られたクロロホルム溶液を分液ロートを用いて水で手早く洗浄した。分液後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。この濃縮液にヘキサン(100mL)を加えて30分間攪拌した後、遠心分離(3500rpm、5分間)を施して固体成分を回収し、真空乾燥して濃赤色固体(0.33g、収率38%)を得た。
【0100】
この濃赤色固体H−NMR測定により同定し、N,N’−ビス[4−(トリエトキシシリル)フェニル]−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドであることを確認した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.73(d,J=8.5Hz,4H)、8.63(d,J=8.5Hz,4H)、7.89(d,J=8.4Hz,4H)、7.39(d,J=8.4Hz,4H)、3.95(q,J=7.0Hz,12H)、1.30(t,J=7.0Hz,18H)。
【0101】
(実施例1)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる有機シリカ粉末の調製>
カチオン性界面活性剤(トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、50mg)、水(3mL)および6mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(0.05mL)を混合し、室温で攪拌した。この混合物に、合成例1で得たN,N’−ビス(1−エチルプロピル)−2,5,8,11−テトラキス[2−(トリメトキシシリル)エチル]ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(50mg)をテトラヒドロフラン(0.3mL)に溶解させた溶液を添加し、室温で24時間攪拌した後、さらに95℃で24時間加熱した。生成した沈澱を吸引濾過により回収し、水で洗浄した後、真空乾燥して、ペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリドからなる赤茶色の有機シリカ粉末(60mg)を得た。
【0102】
得られた粉末のX線回折パターンを図1に、紫外/可視吸収スペクトルを図2に示す。この有機シリカ粉末は、周期4.1nmのメソ構造を有するものであることが確認された。また、波長530nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は600nm以上であることも確認された。
【0103】
(実施例2)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体粉末の調製>
実施例1と同様にして調製した有機シリカ粉末を、エタノール(10mL)と濃塩酸(0.1mL)の混合溶液に分散させた。この分散液を60℃で12時間加熱した後、吸引濾過により沈澱物を回収してエタノールで洗浄し、有機シリカ粉末からトリメチルオクタデシルアンモニウムクロリドを除去した。得られた粉末を真空乾燥してペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体粉末(30mg)を得た。
【0104】
得られた多孔体粉末のX線回折パターンを図1に、紫外/可視吸収スペクトルを図2に示す。この多孔体粉末は周期3.4nmのメソ多孔構造を有するものであることが確認された。また、波長530nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は600nm以上であることも確認された。
【0105】
(実施例3)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる有機シリカ薄膜の調製>
テトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒(質量比1:1、0.5mL)、ノニオン性界面活性剤Brij76(商品名、アルドリッチ社製、化学式:C1837(OCHCH10OH、12mg)、合成例1で得たN,N’−ビス(1−エチルプロピル)−2,5,8,11−テトラキス[2−(トリメトキシシリル)エチル]ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(15mg)、水(10μL)および2mol/Lの塩酸(2μL)を混合して均一な溶液を調製し、これを室温で24時間攪拌してゾル溶液を調製した。
【0106】
得られたゾル溶液を石英基板上にスピンキャストしてペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる赤色の有機シリカ薄膜を得た。
【0107】
得られた薄膜のX線回折パターンを図3に、紫外/可視吸収スペクトルを図4に示す。この有機シリカ薄膜は、周期5.7nmのメソ構造を有するものであることが確認された。また、波長490nmおよび530nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は600nm以上であることも確認された。
【0108】
(実施例4)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体薄膜の調製>
実施例3と同様にして調製した有機シリカ薄膜を、28質量%アンモニア水の蒸気に60℃で6時間曝露した後、60℃のエタノールに6時間浸漬して有機シリカ薄膜から界面活性剤Brij76を除去した。得られた薄膜を減圧下で乾燥してペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体薄膜を得た。
【0109】
得られた多孔体薄膜のX線回折パターンを図3に、紫外/可視吸収スペクトルを図4に示す。この多孔体薄膜は周期5.7nmのメソ多孔構造を有するものであることが確認された。また、波長550nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は600nm以上であることも確認された。
【0110】
(実施例5)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる有機シリカ薄膜の調製>
ノニオン性界面活性剤Brij76の代わりにノニオン性界面活性剤界面活性剤P123(商品名、アルドリッチ社製、化学式:H(OCHCH20(OCHCH(CH))70(OCHCH20OH、12mg)を用いた以外は、実施例3と同様にしてペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる赤色の有機シリカ薄膜を得た。
【0111】
得られた薄膜のX線回折パターンを図5に、紫外/可視吸収スペクトルを図6に示す。この有機シリカ薄膜は、周期約8.5nmのメソ構造を有するものであることが確認された。また、波長490nmおよび530nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は600nm以上であることも確認された。
【0112】
(実施例6)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体薄膜の調製>
実施例3と同様にして調製した有機シリカ薄膜の代わりに、実施例5と同様にして調製した有機シリカ薄膜を用いた以外は、実施例4と同様にしてペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体薄膜を得た。
【0113】
得られた多孔体薄膜のX線回折パターンを図5に、紫外/可視吸収スペクトルを図6に示す。この多孔体薄膜は周期約8.0nmのメソ多孔構造を有するものであることが確認された。また、波長540nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は600nm以上であることも確認された。
【0114】
(実施例7)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる有機シリカ薄膜の調製>
テトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒(質量比1:1)の量を0.7mLに変更し、ノニオン性界面活性剤Brij76の量を16mgに変更し、N,N’−ビス(1−エチルプロピル)−2,5,8,11−テトラキス[2−(トリメトキシシリル)エチル]ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミドの代わりに合成例2で得たN,N’−ジブチル−1,6,7,12−テトラキス[4−(トリエトキシシリル)フェノキシ]ペリレン−3,4:9,10−テトラテトラカルボン酸ビスイミド(20mg)を用いた以外は、実施例3と同様にしてペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる紫色の有機シリカ薄膜を得た。
【0115】
得られた薄膜のX線回折パターンを図7に、紫外/可視吸収スペクトルを図8に示す。この有機シリカ薄膜は、周期5.1nmのメソ構造を有するものであることが確認された。また、波長590nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は650nm以上であることも確認された。
【0116】
(実施例8)
実施例3と同様にして調製した有機シリカ薄膜の代わりに、実施例7と同様にして調製した有機シリカ薄膜を用いた以外は、実施例4と同様にしてペリレンビスイミド骨格含有Si系多孔体薄膜を得た。
【0117】
得られた多孔体薄膜のX線回折パターンを図7に、紫外/可視吸収スペクトルを図8に示す。この多孔体薄膜は周期6.7nmのメソ多孔構造を有するものであることが確認された。また、波長590nm付近に吸収極大を持つものであり、吸収スペクトルの長波長側の吸収端は650nm以上であることも確認された。
【0118】
(比較例1)
<ペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる有機シリカの調製>
テトラヒドロフラン(1.2mL)、ノニオン性界面活性剤Brij76(10mg)合成例3で得たN,N’−ビス[4−(トリエトキシシリル)フェニル]−ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸ビスイミド(15mg)、水(6μL)および2mol/Lの塩酸(2μL)を混合して均一な溶液を調製し、これを室温で攪拌したところ、約2時間で赤色の沈澱が生成した。この沈澱を吸引濾過により回収してペリレンビスイミド骨格含有Si系重合体/界面活性剤からなる有機シリカを得た。
【0119】
得られた有機シリカのX線回折パターンを図9に示す。この有機シリカにはメソ構造の形成を示す低角領域の回折ピークは観察されなかった。
【0120】
図1〜9に示した結果から明らかなように、少なくとも3つのアルコキシシリル基を備えるペリレンビスイミド骨格を有する有機シラン化合物と界面活性剤とを用いた本発明の有機シリカ系材料(実施例1、3、5、7)およびこの有機シリカ系材料から界面活性剤を除去して得た有機シリカ系多孔体(実施例2、4、6、8)は、メソ構造を有するものであり、且つ吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長が600nm以上、すなわち、波長600nm以上の光を少なくとも吸収するものであることが確認された。
【0121】
一方、2つのアルコキシシリル基を備えるペリレンビスイミド骨格を有する有機シラン化合物と界面活性剤とを用いた場合(比較例1)においては、有機シリカ系材料にメソ構造が形成されないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明によれば、ペリレンビスイミド骨格を有する有機シリカ系メソ構造体および有機シリカ系メソ多孔体を得ることができる。特に、吸収スペクトルの長波長側の吸収端が600nm以上である有機シリカ系メソ構造体および有機シリカ系メソ多孔体を得ることができる。
【0123】
したがって、本発明の有機シリカ系材料および有機シリカ系メソ多孔体は、波長600nm以上の光を少なくとも吸収することが可能であるため、波長が500nm以上の可視光線を効率的に吸収することができ、さらにメソ構造を有することから、太陽光を利用することができる可視光応答型の光触媒や光電変換素子などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

〔式(1)中、R〜R10のうちの少なくとも3つの基は、それぞれ独立に、下記式(2):
−(Z)−Si(OR3−n (2)
(式(2)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアリル基を表し、Zは、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、エテニレン基、エチニレン基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基およびイミド基からなる群から選択される1種の基を表し、mは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。)
で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基であり、
〜Rのうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、フェノキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基およびイミド基からなる群から選択される1種の基であり、
〜R10のうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される1種の基である。〕
で表されるペリレン系有機シラン化合物のメソ構造を有する重合体と、界面活性剤とを含有することを特徴とする有機シリカ系材料。
【請求項2】
前記式(1)中のR、R、RおよびRが前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基であることを特徴とする請求項1に記載の有機シリカ系材料。
【請求項3】
吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長が600nm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機シリカ系材料。
【請求項4】
下記式(1):
【化2】

〔式(1)中、R〜R10のうちの少なくとも3つの基は、それぞれ独立に、下記式(2):
−(Z)−Si(OR3−n (2)
(式(2)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基または炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアリル基を表し、Zは、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、エテニレン基、エチニレン基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基およびイミド基からなる群から選択される1種の基を表し、mは0〜2の整数であり、nは1〜3の整数である。)
で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基であり、
〜Rのうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、フェノキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基およびイミド基からなる群から選択される1種の基であり、
〜R10のうちの前記アルコキシシリル基を含有する置換基以外の基は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基からなる群から選択される1種の基である。〕
で表されるペリレン系有機シラン化合物の重合体からなることを特徴とする有機シリカ系メソ多孔体。
【請求項5】
前記式(1)中のR、R、RおよびRが前記式(2)で表されるアルコキシシリル基を含有する置換基であることを特徴とする請求項4に記載の有機シリカ系メソ多孔体。
【請求項6】
吸収スペクトルの長波長側の吸収端の波長が600nm以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の有機シリカ系メソ多孔体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−196019(P2010−196019A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45824(P2009−45824)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構「有機シリカハイブリッド材料の合成と機能設計」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】