説明

有機半導体トランジスタ素子、その製造方法、それを用いた半導体装置及び表示素子

【課題】溶剤や樹脂に対する溶解・相溶性に優れ、高いキャリア移動度を持つ電荷輸送性材料を用い動作速度が速く製造が容易な有機半導体トランジスタ素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(I−1)又は(I−2)を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを含む有機半導体を備えた有機半導体トランジスタ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体を利用した有機半導体トランジスタ素子、これを用いた半導体装置、該有機半導体トランジスタ素子の製造方法、これを用いた表示素子、及びこれを用いた表示装置に関するものであり、より詳細には、電子ペーパーあるいはデジタルペーパー、有機EL素子、電気泳動型表示素子、液晶素子等の表示素子の駆動回路、電子タグ、スマートカード等に用いる理論回路およびメモリー素子、ガスセンサー等の分野に好適に使用できる有機半導体トランジスタ素子、これを用いた半導体装置および該有機半導体トランジスタ素子の製造方法、及びこれを用いた表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタは、液晶表示素子等の表示用スイッチング素子として幅広く用いられている。従来、薄膜トランジスタは、アモルファスや多結晶のシリコンを用いて作製されている。しかし、このようなシリコンを用いた薄膜トランジスタの作製には、スパッタリング、CVD装置、その他の真空系を用いた製造プロセスが用いられるが、大変高額である。さらには薄膜トランジスタを作製するために真空系の製造プロセスを繰り返し行い、半導体層等の各層を形成するため、薄膜トランジスタを用いた表示装置等の大型化は製造コストの大幅な増加を伴う問題点があった。
また、アモルファスや多結晶のシリコンを成膜するプロセスは非常に高い温度で行なわれ、基材として用いられる材料が限定されてしまう。従って、軽量でフレキシビリィがある樹脂基板等は使用できないという問題点があった。
【0003】
一方、近年有機EL素子等に代表される有機半導体の研究が盛んに行なわれている。それとともにシリコン材料には無い軽量性、柔軟性という特徴を有する有機材料を回路に組み込もうとする研究が報告されるようになってきた。
このような薄膜トランジスタに用いる有機物としては、低分子化合物および高分子化合物が用いられる。低分子化合物としては、ペンタセン、テトラセン等のポリアセン化合物(例えば、特許文献1〜3参照)、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物(例えば、特許文献4,5参照)が提案されている。
しかし、低分子化合物の場合、シリコンと同じ真空系を用いた製造プロセスを繰り返す必要があり、製造プロセス上の問題は依然解消されていない。
【0004】
また、高分子化合物としては、セクシチオフェン等の芳香族オリゴマー(例えば、特許文献6参照)、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)等の高分子化合物(例えば、特許文献7〜10、非特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
このような、高分子化合物は、可溶性が大きく、スピンコーティングやディプコーティングなど低コストの技術で成膜が可能であるので製造プロセスで有利であるが、キャリア移動度が低いという問題点があった。また、ポリ(p−フェニレンビニレン)においては、可溶前駆体をスピンコート後、熱処理するため、主鎖共役系高分子中に欠陥が入りやすく電気特性を著しく低下させる問題点があった。
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開平10−270712号公報
【特許文献3】特開2001−94107号公報
【特許文献4】特開平5−190877号公報
【特許文献5】特開2000−174277号公報
【特許文献6】特開平8−264805号公報
【特許文献7】特開平8−228034号公報
【特許文献8】特開平8−228035号公報
【特許文献9】特開平10−125924号公報
【特許文献10】特開平10−190001号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett., Vol.73,108(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、動作速度が速く、且つ製造が容易な有機半導体トランジスタ素子およびその製造方法、前記有機半導体トランジスタ素子を用いた半導体装置、並びに前記有機半導体トランジスタ素子を用いた表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
<1>
ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、該有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも含む有機半導体トランジスタ素子において、
前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする有機半導体トランジスタ素子である。
【化1】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化2】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0008】
<2>
前記有機半導体が、下記一般式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする<1>に記載の有機半導体トランジスタ素子である。
【化3】

(一般式(III−1)および(III−2)において、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基又はヒドロキシル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’はそれぞれ独立に置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基又はヒドロキシル基を表す。)
【0009】
<3>
ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、該有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも備え、前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有する有機半導体トランジスタ素子を、溶媒中に溶解させた前記電荷輸送性ポリエステルを少なくとも1種以上含む溶液を用いて製造する有機半導体トランジスタ素子の製造方法であって、
前記有機半導体が、前記溶液に外部刺激を付与して、前記溶液をノズルから液滴状に吐出させる方法を利用して形成されることを特徴とする有機半導体トランジスタ素子の製造方法である。
【化4】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化5】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0010】
<4>
前記外部刺激が圧力であることを特徴とする<3>に記載の有機半導体トランジスタ素子の製造方法である。
【0011】
<5>
溶媒中に溶解させた前記電荷輸送性ポリエステルを少なくとも1種以上含む溶液を用い、前記溶媒を含んだ状態の塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を乾燥させる乾燥工程とを少なくとも経ることにより前記有機半導体トランジスタ素子を製造する<3>に記載の有機半導体トランジスタ素子の製造方法であって、
前記乾燥工程が、酸素濃度が100ppm以下、且つ、水分濃度が100ppm以下の環境下で実施されることを特徴とする有機半導体トランジスタ素子の製造方法である。
【0012】
<6>
基板と、前記基板上に設けられた1個以上の有機半導体トランジスタ素子とを含み、
前記有機半導体トランジスタ素子が、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、前記有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも備え、前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする半導体装置である。
【化6】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化7】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0013】
<7>
表示を行う表示層と、該表示層の表示状態を制御するスイッチング素子とを少なくとも備え、
前記スイッチング素子が、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、前記有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも備え、前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有する有機半導体トランジスタ素子である。
【化8】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化9】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0014】
<8>
前記表示層が、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子が分散された液体を含む調光層であることを特徴とする<7>に記載の表示素子である。
【0015】
<9>
前記電荷移動性微粒子が、プラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることを特徴とする<8>に記載の表示素子である。
【発明の効果】
【0016】
以上に説明したように本発明における電荷輸送性ポリエステルは、アルキレンジオキシを有するチオフェン環をポリエステル分子の主鎖骨格に導入することによりイオン化ポテンシャルを低くコントロールする事ができ、電荷注入性を改善することができる。さらにポリエステル構造により基板との密着性が向上し、電荷注入性が改善され、かつ溶剤や樹脂に対する溶解性及び相溶性に優れている。したがって本発明は動作速度が速く且つ製造が容易な有機半導体トランジスタ素子およびその製造方法、前記有機半導体トランジスタ素子を用いた半導体装置、並びに、前記有機半導体トランジスタ素子を用いた表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
−電荷輸送性ポリエステルを用いた有機半導体トランジスタ素子−
本発明の有機半導体トランジスタ素子は、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、該有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも含む有機半導体トランジスタ素子において、前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする。
【0018】
【化10】

【0019】
Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表す。
また、Xは、下記一般式(II)で表される置換基を表す。
【0020】
【化11】

【0021】
一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。
【0022】
本発明における電荷輸送性ポリエステルは、アルキレンジオキシを有するチオフェン環をポリエステル分子の主鎖骨格に導入することによりイオン化ポテンシャルを低くコントロールする事ができ、電荷注入性を改善することができる。さらにポリエステル構造により基板との密着性が向上し、電荷注入性が改善され、かつ溶剤や樹脂に対する溶解性及び相溶性に優れている。従って、本発明の有機半導体トランジスタ素子は動作速度が速く、且つ製造が容易である。
以下、本発明を詳細に説明するにあたり、まず本発明における前記電荷輸送性ポリエステルについて詳述する。
【0023】
−電荷輸送性ポリエステル−
前記一般式(I−1)および(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表す。尚、一般式(I−1)および(I−2)中に2つ存在するArは、同一であっても異なっていても構わないが、製造容易性という観点からは同一であることが好ましい。
【0024】
ここで、一般式(I−1)および(I−2)中、Arを表す構造として選択される多核芳香族炭化水素および縮合芳香族炭化水素を構成する芳香環の数はさらに2〜10が好ましく、また縮合芳香族炭化水素においては2〜4が好ましい。尚、当該多核芳香族炭化水素および縮合芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。
即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、環同士が炭素―炭素結合によって結合している炭化水素を表す。具体的には、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。また、「縮合芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が1対の隣接して結合する炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。具体的には、ナフタレン、アントラセン、ピレン、フェナントレン、ペリレン、フルオレン等が挙げられる。
【0025】
さらに一般式(I−1)および(I−2)中において、Arを表す構造として選択される芳香族複素環は、骨格を形成する原子団中に、少なくとも1種の芳香族複素環を含む結合基を表す。ここで芳香族複素環とは、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。芳香族複素環としては、その環骨格を構成する原子数(Nr)が、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また、環骨格を構成する炭素原子以外の原子(異種原子)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、硫黄原子、窒素原子、酸素原子等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれてもよい。特に5員環構造をもつ複素環として、チオフェン、ピロール及びフラン、または、前記化合物の3位及び4位の炭素を窒素で置き換えた複素環が好ましく用いられ、6員環構造を持つ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。更に、芳香族複素環とは、芳香環に複素環が置換しているもの、複素環に芳香環が置換しているもの何れも含み、該複素環及び芳香環として上述の複素環及び芳香環が挙げられる。
これらは全てが共役系で構成されたもの、あるいは一部が共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、全てが共役系で構成されたものが好ましい。
【0026】
一般式(I−1)および(I−2)中、Arで表されるフェニル基、多核芳香族炭化水素、縮合多環芳香族炭化水素又は芳香族複素環が置換基を有する場合、この置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
置換基がアルキル基である場合は、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。置換基がアルコキシル基である場合は、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。置換基がアリール基である場合は、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。置換基がアラルキル基である場合は、炭素数7〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換基が置換アミノ基である場合は、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
【0027】
一般式(I−1)および(I−2)中、Xは、前記一般式(II)で表される2価の基を表す。
【0028】
一般式(II)中において、Xを表す構造として選択される炭素数1〜10のアルキレン基としては、特に炭素数2〜5のものが好ましく、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基、トリメチレン基等が挙げられるが、これに限定するものではない。
【0029】
一般式(II)中、Xで表されるアルキレン基に置換する置換基は、炭素数1〜10の1価の直鎖状炭化水素基が挙げられる。なお、この直鎖状炭化水素基には、その主鎖中に、−O−、−COO−、−NH−、−NH−COO−などの基が含まれていてもよい。また、末端には水酸基やスルホン酸基を有していてもよい。
【0030】
また、一般式(II)中、Arは、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素、又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表す。
ここで、上記「フェニレン基」としては、価数の違いを除いて、一般式(I−1)および(I−2)中、Arで表されるフェニル基として挙げた基と同様のものが挙げられ、また上記「多核芳香族炭化水素、縮合芳香族炭化水素、芳香族複素環」については、前述に示すとおりである。
尚、一般式(II)中に2つ存在するArは、それぞれ同一であっても異なっていても構わない。
【0031】
また、一般式(II)中、nは1〜10の整数を表し、更には、1〜3の整数がより好ましい。
【0032】
一般式(I−1)および(I−2)中、Tは、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基または炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、好ましくは炭素数が2〜6の2価の直鎖状炭化水素基及び炭素数3〜7の2価の分枝鎖状炭化水素基より選択される。これらの中でもより具体的には、以下に示す2価の炭化水素基が特に好ましい。
【0033】
【化12】

【0034】
ここで、前記一般式(I−1)で示される構造の具体例を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
【表8】

【0043】
【表9】

【0044】
【表10】

【0045】
【表11】

【0046】
【表12】

【0047】
【表13】

【0048】
【表14】

【0049】
【表15】

【0050】
【表16】

【0051】
【表17】

【0052】
【表18】

【0053】
【表19】

【0054】
【表20】

【0055】
【表21】

【0056】
【表22】

【0057】
【表23】

【0058】
【表24】

【0059】
【表25】

【0060】
【表26】

【0061】
【表27】

【0062】
【表28】

【0063】
【表29】

【0064】
【表30】

【0065】
【表31】

【0066】
【表32】

【0067】
【表33】

【0068】
【表34】

【0069】
【表35】

【0070】
また、以下に前記一般式(I−2)で示される構造の具体例を示す。
【0071】
【表36】

【0072】
【表37】

【0073】
【表38】

【0074】
【表39】

【0075】
【表40】

【0076】
【表41】

【0077】
【表42】

【0078】
【表43】

【0079】
【表44】

【0080】
【表45】

【0081】
【表46】

【0082】
【表47】

【0083】
【表48】

【0084】
【表49】

【0085】
【表50】

【0086】
【表51】

【0087】
【表52】

【0088】
【表53】

【0089】
【表54】

【0090】
【表55】

【0091】
【表56】

【0092】
【表57】

【0093】
【表58】

【0094】
【表59】

【0095】
【表60】

【0096】
【表61】

【0097】
【表62】

【0098】
【表63】

【0099】
【表64】

【0100】
【表65】

【0101】
【表66】

【0102】
【表67】

【0103】
一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し構造を有する電荷輸送性ポリエステルとしては、下記一般式(III−1)および(III−2)で示されるポリエステルが好適に使用される。
【0104】
【化13】

【0105】
一般式(III−1)及び(III−2)において、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基又はヒドロキシル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’はそれぞれ独立に置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基又はヒドロキシル基を表す。
【0106】
一般式(III−1)および(III−2)中、Aは、前記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、一般式(III−1)および(III−2)で表されるポリエステル中に存在する複数のAは、同一の構造であっても、異なった構造であってもよい。
【0107】
一般式(III−1)および(III−2)中、YおよびZは2価の炭化水素基を表し、より具体的には、Yは2価アルコール残基を、Zは2価カルボン酸残基を表す。Y及びZは、好適には下記式(IV−1)〜(IV−6)から選択される基などが挙げられる。
【0108】
【化14】

【0109】
上記式(IV−1)〜(IV−6)中、RおよびRは、それぞれ水素原子、置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルキル基、置換もしくは未置換の炭素数1〜4のアルコキシ基、置換もしくは未置換のフェニル基または置換もしくは未置換のアラルキル基、またはハロゲン原子を表し、aおよびbはそれぞれ独立に1〜5の整数を表し、cおよびeはそれぞれ独立に0または1を表し、dは0〜2の整数を表し、Vは下記(V−1)〜(V−11)で表される基を表す。
【0110】
【化15】

【0111】
上記式(V−1)、(V−10)および(V−11)中、gは1〜5の整数を、hは0〜5の整数を表す。
【0112】
一般式(III−1)および(III−2)中、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5,000の整数を表すが、好ましくは10〜1000の範囲である。
【0113】
ここで、一般式(III−1)および(III−2)中、で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を表68〜表72に示すが、本発明はこれら具体例に限定されるわけではない。尚、下記表において、「モノマー」の列の「A」の欄の番号は、表1〜67に示した前記一般式(I−1)および(I−2)で示される「構造」の欄の番号に対応した具体例を示すものである。また、「Z」の欄が「−」であるものは一般式(III−1)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示し、その他は(III−2)で示される電荷輸送性ポリエステルの具体例を示す。
以下、下記表において化合物番号を付した電荷輸送性ポリエステルの各具体例に関し、例えば、15の番号を付した具体例については「電荷輸送性ポリエステル(15)」又は「例示化合物(15)」と称す。
【0114】
【表68】

【0115】
【表69】

【0116】
【表70】

【0117】
【表71】

【0118】
【表72】

【0119】
前記電荷輸送性ポリエステルの重量平均分子量Mwは5000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜1,000,000の範囲であるのが特に好ましい。
尚、ここで、上記重量平均分子量Mwは以下の方法により測定することができる。重量平均分子量は、電荷輸送性ポリエステルの1.0質量%THF溶液を調整し、示差屈折率検出器(RI)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準サンプルとして、スチレンポリマーを用いて測定した。
また、本発明に用いられる電荷輸送性ポリエステルのガラス転移点の温度は、60℃以上が望ましい。なお、ガラス転移点はα−Alをリファレンスとし、サンプルをガラス状態になるまで昇温し、液体窒素に浸し急冷した後、測定を行い求めることができる。
【0120】
(電荷輸送性ポリエステルの合成法−)
一般式(III−1)および(III−2)で表される電荷輸送性ポリエステルは、例えば、下記構造式(VI−1)および(VI−2)で示される電荷輸送性モノマーを、例えば第4版実験化学講座28巻(日本化学会編、丸善、1992)などに記載された公知の方法で重合することにより合成することができる。
【0121】
【化16】

【0122】
一般式(VI−1)および(VI−2)中、Ar、X、T、jは前記一般式(I−1)および(I−2)におけるAr、X、T、jと同様である。A’は水酸基、ハロゲン原子、または−O−R(Rは、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアリール基または置換または未置換のアラルキル基を表す)を表す。
【0123】
ここでまず、上記一般式(VI−1)および(VI−2)で示される電荷輸送性モノマーの合成法について説明する。一般式(VI−1)および(VI−2)で示される電荷輸送性モノマーは、例えば、以下のようにモノマーを合成することができるが、これに限定するものではない。
まず、アルキレンジオキシチオフェンをDMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチル・スルホキシド)等に溶解し、0℃以下に冷却し、NBS(N−ブロモこはく酸イミド)を滴下した後、純水を加えトルエンで抽出し、2−ハロゲンアルキレンジオキシチオフェンを得る。これをマグネシウムを含むドライアイス等で冷却したTHF中にからグリニャール試薬を得た後、ジヨードベンゼン等のジハロゲン芳香族化合物を加え、室温に戻した後パラジウム触媒を溶解させ、数時間還流する。10%程度の塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチル、トルエン等で抽出する。これをNBS、NCS(N−クロロこはく酸イミド)等でハロゲン化し、Ullmannカップリング反応等でジフェニルアミンと反応させた後、塩化ニッケル、亜鉛、トリフェニルホスフィンを触媒に用いて、モノマーを得ることが出来る。反応雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下が望ましく、各工程においてシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶により精製してもよい。
【0124】
上記のようにして得られた一般式(VI−1)および(VI−2)で示される電荷輸送性モノマーを用い、公知の方法で重合することにより、前記一般式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリエステルを合成することができる。具体的には、以下のような合成法が挙げられる。
【0125】
[1]A’が水酸基の場合
A’が水酸基の場合には、HO−(Y−O)−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量(質量比)混合し、酸触媒を用いて重合する。尚、上記Yおよびmは、前記一般式(III−1)および(III−2)におけるYおよびmと同様である。
上記酸触媒としては、硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等、通常のエステル化反応に用いるものが使用でき、モノマー1質量部に対して、1/10,000〜1/10質量部、好ましくは1/1,000〜1/50質量部の範囲で用いられる。合成中に生成する水を除去するために、水と共沸可能な溶剤を用いることが好ましく、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できるが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点で反応させることが好ましい。反応終了後、溶剤を用いなかった場合には、溶解可能な溶剤に溶解させる。溶剤を用いた場合には、反応溶液をそのまま、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等のポリマーが溶解しにくい貧溶剤中に滴下し、ポリマーを析出させ、ポリマーを分離した後、水や有機溶剤で十分洗浄し、乾燥させる。更に、必要であれば適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、ポリマーを析出させる再沈殿処理を繰り返してもよい。再沈殿処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく攪拌しながら行うことが好ましい。再沈殿処理の際にポリマーを溶解させる溶剤は、ポリマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる、また、貧溶剤はポリマー1質量部に対して、1〜1,000質量部、好ましくは10〜500質量部の範囲で用いられる。
【0126】
[2]A’がハロゲンの場合
A’がハロゲンの場合には、HO−(Y−O)−Hで示される2価アルコール類をほぼ当量(質量比)混合し、ピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基性触媒を用いて重合する。尚、上記Yおよびmは、前記一般式(III−1)および(III−2)におけるYおよびmと同様である。
上記有機塩基性触媒は、モノマー1質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは2〜5質量部の範囲で用いられる。溶剤としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効であり、モノマー1質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で用いられる。反応温度は任意に設定できる。重合後、前記[1]の場合と同様に再沈殿処理し、精製することができる。また、ビスフェノール等の酸性度の高い2価のアルコール類を用いる場合には、界面重合法も用いることができる。すなわち、2価のアルコール類に水を加え、当量(質量比)の塩基を加えて、溶解させた後、激しく攪拌しながら2価のアルコール類と当量のモノマー溶液を加えることによって重合できる。この際、水は2価アルコール類1質量部に対して、1〜1,000質量部、好ましくは2〜500質量部の範囲で用いられる。モノマーを溶解させる溶剤としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、1−クロロナフタレン等が有効である。反応温度は任意に設定でき、反応を促進するために、アンモニウム塩、スルホニウム塩等の相間移動触媒を用いることが効果的である。相間移動触媒は、モノマー1質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の範囲で用いられる。
【0127】
[3]A’が−O−Rの場合
A’が−O−Rの場合には、HO−(Y−O)−Hで示される2価アルコール類を過剰に加え、硫酸、リン酸等の無機酸、チタンアルコキシド、カルシウムおよびコバルト等の酢酸塩或いは炭酸塩、亜鉛等の酸化物を触媒に用いて加熱し、エステル交換により合成できる。尚、上記Yおよびmは、前記一般式(III−1)および(III−2)におけるYおよびmと同様である。
2価アルコール類はモノマー1質量部に対して、2〜100質量部、好ましくは3〜50質量部の範囲で用いられる。触媒は、モノマー1質量部に対して、1/1,000〜1質量部、好ましくは1/100〜1/2質量部の範囲で用いられる。反応は、反応温度200〜300℃で行い、基−O−Rから基HO−(Y−O)−Hへのエステル交換終了後は基HO−(Y−O)−Hの脱離による重合反応を促進するため、減圧下で反応させることが好ましい。また、基HO−(Y−O)−Hと共沸可能な1−クロロナフタレン等の高沸点溶剤を用いて、減圧下で基HO−(Y−O)−Hを共沸で除きながら反応させることもできる。
【0128】
また、一般式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリエステルは、次のようにして合成することができる。上記[1]〜[3]のそれぞれの場合において、2価アルコール類を過剰に加えて反応させることによって下記構造式(VII−1)または(VII−2)で示される化合物を生成した後、これをモノマーとして用いて、上記[2]と同様の方法で、2価カルボン酸または2価カルボン酸ハロゲン化物等と反応させることによってポリマーを得ることができる。
【0129】
【化17】

【0130】
一般式(VII−1)および(VII−2)中、Ar、X、T、jは前記一般式(I−1)および(I−2)におけるAr、X、T、jと同様であり、Y、mは前記(III−1)および(III−2)におけるY、mと同様である。
また、前記電荷輸送性ポリエステルの末端に任意の分子を導入することを行っても良い。その場合、次のような方法が挙げられる。すなわち、A’が水酸基の場合、末端導入化合物のモノカルボン酸を仕込んで反応させ導入することができる。また、A’がハロゲンの場合、末端導入化合物のモノ酸塩化物を共重合させるか、ポリマーの重合反応後、末端導入化合物のモノ酸塩化物を仕込んで反応させ導入することができる。
なお、上記[1]〜[3]の合成法のうち、本発明の電荷輸送性ポリエステルにおいては、[1]の合成法が特に好ましい。
【0131】
−有機半導体トランンジスタ素子の構成、製造方法等−
次に上述した電荷輸送性ポリエステルを用いた本発明の有機半導体トランジスタ素子の構成について具体例を挙げて詳細に説明をする。
本発明の有機半導体トランジスタ素子は、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、該有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極と、を少なくとも含む構成を有するものである。
ここで、前記有機半導体には上記に説明した電荷輸送性ポリエステルが少なくとも1種以上含まれる。なお、本発明の有機半導体トランジスタ素子の形状は、必要に応じて、所望の形状とすることができるが、薄膜状であることが好ましい。
【0132】
以下、図を参照しつつ、本発明の有機半導体トランジスタ素子の構成についてより詳細に説明するが、これに限定されるわけではない。
図1〜図3は、本発明の有機半導体トランジスタ素子の構成の一例を示す模式断面図である。ここで、図1および2は、本発明の有機半導体トランジスタ素子が、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)構造を有している場合について示したものである。また、図3は、本発明の有機半導体トランジスタ素子が、静電誘導トランジスタ(Static Induction Transitor)構造を有している場合について示したものである。
【0133】
図1〜3中、機能が共通する部材には同一の符号が付してあり、1が基板、2がソース電極、3がドレイン電極、4が有機半導体層、5がゲート電極、6が絶縁層を表す。以下、図1〜3に示す本発明の有機半導体トランジスタ素子の構成について順に説明する。
図1に示す本発明の有機半導体トランジスタ素子は、基板1上にゲート電極5、絶縁層6がこの順に設けられ、この絶縁層6上に、ソース電極2およびドレイン電極3とが離間した位置に設けられると共に、ソース電極2およびドレイン電極3を被覆するように有機半導体層4が設けられている。
【0134】
また、図2に示す本発明の有機半導体トランジスタ素子は、基板1上にゲート電極5、絶縁層6がこの順に設けられ、この絶縁層6上に、ソース電極2、および、このソース電極2の絶縁層6と接する側と反対側の面も覆うように有機半導体層4が設けられている。さらに、ドレイン電極3が、有機半導体層4の絶縁層6が設けられた側と反対側の面上で、ソース電極2に対して基板1の平面方向に離間した位置に設けられている。
さらに、図3に示す本発明の有機半導体トランジスタ素子は、基板1上にソース電極2、有機半導体層4、ドレイン電極3がこの順に積層され、複数のゲート電極5が、有機半導体層4中に設けられる(図3に示す例では、4つのゲート電極5が、基板1の平面方向と平行且つ等間隔に配置されている)。
【0135】
なお、ゲート電極5は、紙面に対して垂直方向に、ソース電極2及びドレイン電極3の双方と平行になるように配置され、各々のゲート電極5同士も相互に平行となるように設けられている。また、図3中、ゲート電極5と、有機半導体層4とは、両者の界面に設けられた不図示の絶縁層により絶縁されている。
図1〜図3に示すような有機半導体トランジスタ素子においては、ゲート電極5に印加される電圧によってソース電極2とドレイン電極3との間に流れる電流を制御することができる。
【0136】
次に、有機半導体部分を除く、本発明の有機半導体素子や半導体装置を構成する各部材について詳細に説明する。
ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極に用いられる電極材料としては、効率よく
電荷注入することができる材料が用いられ、具体的には、金属、金属酸化物、導電性高分子等が使用される。
金属としてはマグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、タンタル、インジウ
ム、パラジウム、リチウム、カルシウムおよびこれらの合金が挙げられる。金属酸化物と
しては、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化亜
鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)等の金
属酸化膜があげられる。
【0137】
導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリ
ピロール、ポリピリジン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の
錯体等があげられる。
また、電極に用いられる材料と有機半導体(層)に用いられる上述した高分子化合物とのイオン化ポテンシャルの差が大きいと電荷注入特性が悪くなるため、ドレイン電極および/またはソース電極に用いられる材料のイオン化ポテンシャルと、有機半導体(層)に用いられる高分子化合物とのイオン化ポテンシャルの差が1.0eV以内であることが好ましく、特に0.5ev以内であることがさらに好ましい。また、このような電極−高分子化合物間のイオン化ポテンシャルの差という観点からは、電極材料としては、特にAuを用いることが好ましい。
【0138】
電極の形成方法としては、上記の電極材料を蒸着法や、スパッタ等の公知の薄膜形成方法を用いて作製した薄膜を、公知のフォトリソグラフィー法やリフトオフ法を利用して形成したり、インクジェット等によりレジストを用いて所望のパターン(電極形状)にエッチングする方法や、アルミニウムなどの電極材料を直接熱転写する方法が利用できる。また、電極材料として導電性高分子を用いる場合には、これを溶媒に溶解させ、インクジェット等によりパターニングしても良い。
【0139】
各電極間や、ゲート電極と有機半導体(層)とを絶縁する絶縁部材としては、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機物、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂等の有機絶縁高分子等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0140】
基板としては、リン等を高濃度にドープしたシリコン単結晶やガラス、ポリカーボネー
ト樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セル
ロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリススチレン樹脂、ポリビニルアセテート
樹脂、スチレンブタジエン共重合体、塩化ビニルデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂等のプラスチック基板等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0141】
なお、本発明の有機半導体トランジスタ素子を用いて、何らかの電子デバイスを作製する場合には、基板上に、1個以上の本発明の有機半導体トランジスタ素子を搭載した構成(半導体装置)として利用することができ、この半導体装置に、さらに他の素子や回路等を組み合わせることにより所望の電子デバイスを作製することができる。
特に、電子ペーパーまたはデジタルペーパーや携帯電子機器等の可撓性を求められる電子デバイス(以下、「可撓性電子デバイス」と称す)に用いられる電子回路に本発明の有機半導体トランジスタ素子を用いる場合、基板として可撓性がある基板を用いることが望ましい。特に基板として曲げ弾性率が1000MPa以上、より好ましくは5000MPa以上である基板を用いることにより可撓性がある表示素子の駆動回路や電子回路に適応させることができる。
【0142】
これは、本発明の有機半導体トランジスタ素子は、有機半導体部分が、上述したような高分子化合物を主成分として含むために十分な弾性を有しており、可撓性のある基板上に素子を形成しても、大きな変形や、変形の繰り返しに耐え、安定した性能を維持し続けることができるためである。一方、無機半導体トランジスタ素子では、半導体部分が無機材料からなるため、弾性に欠けているため、このような変形を前提とした使用は極めて困難である。さらに無機半導体トランジスタ素子を作製するプロセスは、高温を必要とするため基板にプラスチックを用いることが出来ないという不具合がある。また、有機半導体部分が低分子材料を主成分とするような有機半導体トランジスタ素子においても、高分子材料のような弾性には欠けているため、このような変形を前提とした使用は困難であるか、あるいは、信頼性に劣る。
【0143】
なお、本発明において、「可撓性電子デバイス」とは、〔1〕その使用態様が、上述し
た電子ペーパーやデジタルペーパー等のように、電源のオン/オフ状態に係わらず、平坦な状態から曲げたり、撓ませたり、屈曲させたりした状態としたり、あるいは、その逆の態様で使用することが可能であり、〔2〕その構成が、基板と、該基板上に1個以上設けられた有機半導体トランジスタ素子とを少なくとも含み、〔3〕上記〔1〕項に説明した
ような可撓性が、有機半導体トランジスタ素子が設けられた基板部分において少なくとも求められる電子デバイスを意味する。
【0144】
有機半導体部分を層状に形成する方法としては、特に液相成膜法を用いることが好ましく、例えば、スピンコート法、キャステング法、ディップ法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、インクジェット法、および各印刷手法等が用いられるが、これに限
定されるものではない。
しかしながら、塗布後のエッチングによるパターン形成が不要であるため、製造工程が簡略化でき、また、有機半導体トランジスタ素子を大面積の基板上に多数形成する上でも高い生産性を得ることができるインクジェット法を利用することが好ましい。
すなわち、インクジェットプリンターに利用されているインクジェット記録による画像形成技術を、有機半導体トランジスタ素子の有機半導体部分の形成に利用することができる。
【0145】
この場合、インクの代わりに、溶媒中に溶解させた電荷輸送性ポリエステルを少なくとも1種以上含む溶液(以下、インクジェット印刷にのみ利用する場合を「インクジェット用有機半導体溶液」と称し、インクジェット印刷に限定しない場合は単に「有機半導体溶液」と称す場合がある)を用いて、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴状の有機半導体溶液を吐出させることによって、基板上の所望の位置に所望の膜厚・形状の有機半導体を形成することができる。
【0146】
また、液滴吐出ヘッドとしても、基本的な構成や原理は、インクジェットプリンターに
用いられている記録ヘッドと同様のものが利用できる。すなわち、有機半導体溶液に圧力や熱等の外部刺激を付与することによって、インクジェット用有機半導体溶液をノズルから液滴状に吐出する方法(いわゆる圧電素子を用いたピエゾインクジェット方式、熱沸騰現象を利用した熱インクジェット方式等)が利用できる。
【0147】
しかしながら、本発明の有機半導体トランジスタ素子の製造に際しては、外部刺激は熱よりも圧力であることがより好ましい。外部刺激が熱である場合には、インクジェット用
有機半導体溶液のノズルからの吐出から、基板上へ着弾した有機半導体溶液の溶媒の揮発による塗膜の形成(固化)というインクジェット印刷プロセスにおいて、インクジェット用有機半導体溶液の粘度が熱によって大きく変化してしまうため、レベリング性やパターニング精度の制御が困難になる場合がある。これに加えて、耐熱性に劣る電荷輸送性ポリエステルが利用できなくなり、材料選択肢が狭くなってしまう場合がある。
【0148】
また、インクジェット法を利用した本発明の有機半導体トランジスタ素子の製造に用いられる装置としては、上述した液滴吐出ヘッドの他に、必要に応じて、例えば、有機半導体トランジスタ素子を形成する対象である基板等の固定あるいは搬送手段や、液滴吐出ヘッドを基板平面方向に対して走査する液滴吐出ヘッド走査手段等を有していてもよい。
なお、インクジェット用有機半導体溶液は、上述したように電荷輸送性ポリエステルと溶媒とを少なくとも含むものであればその組成や物性は特に限定されるものではないが、インクジェット用有機半導体溶液の粘度は、25℃において0.01〜1000cpsの範囲内であることが好ましく、1〜100cpsの範囲内であることが好ましい。
【0149】
なお、インクジェット用有機半導体溶液は、上述したように電荷輸送性ポリエステルと溶媒とを少なくとも含むものであればその組成や物性は特に限定されるものではないが、インクジェット用有機半導体溶液の粘度は、25℃において0.01〜1000cpsの範囲内であることが好ましく、1〜100cpsの範囲内であることが好ましい。
粘度が0.01cps未満である場合には、基板上に着弾した有機半導体溶液が、基板平面方向に広がり易く、膜厚の制御が困難となったり、パターニング精度が劣化してしまう場合がある。また、粘度が1000cpsを超える場合には、インクジェット用有機半導体溶液の粘性が高すぎるために吐出不良を起こしやすくなる場合がある。
なお、インクジェット用有機半導体溶液の粘度は、電荷輸送性ポリエステルや、必要に応じて添加されるその他の添加剤成分の含有量や、電荷輸送性ポリエステルの分子量等を制御することによって、所望の値に調整することができる。
【0150】
インクジェット用有機半導体溶液に用いられる溶媒としては、電荷輸送性ポリウレタンを溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、有機溶媒、例えば、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒等や、水、またこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
ここで、前記炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、オクタン、ヘキサデカン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ラクトン、テトラリン、クメンなどが挙げられ、前記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどが挙げられ、前記エーテル系溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテルなどが挙げられ、前記ハロゲン系溶媒としては、例えば、1,1−ジクロロエタン,1−フルオロエタン,2,2,2−トリフルオロエタン、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどが挙げられ、前記アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコールなどが挙げられる。
【0151】
なお、上述したようなインクジェット法やその他の液相成膜法を利用して有機半導体トランジスタ素子を製造する場合、有機半導体部分は、有機半導体溶液を用い、溶媒を含んだ状態の塗膜を形成する塗膜形成工程と、この塗膜を乾燥させて有機半導体からなる膜を形成する乾燥工程とを少なくとも経ることによって形成される。
ここで、乾燥工程は、酸素濃度が100ppm以下、且つ、水分濃度が100ppm以下の環境下で実施されることが好ましい。酸素濃度や水分濃度が100ppmを超えると雰囲気中に酸素分子や水分子として存在する酸素原子が、電荷輸送性ポリウレタンを劣化させてしまう場合があり、乾燥時の加熱処理温度が高いとこのような劣化がより起こりやすくなるためである。
【0152】
なお、酸素濃度は50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましい。また、水分濃度は50ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることが更に好ましい。
【0153】
さらに水分や酸素による有機半導体トランジスタ素子の劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al等の金属、MgO、SiO、TiO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、コーティング法が適用できる。
以上に説明したように本発明の有機半導体トランジスタ素子は、有機半導体部分に使用する高分子化合物の種類や、素子の構成等を適宜選択することにより、オン/オフ比を10〜10程度の範囲内で有機半導体トランジスタ素子の用途に応じて調整することができる。
【0154】
−表示素子−
次に上述した本発明の有機半導体トランジスタ素子を利用した表示素子について説明する。
本発明の表示素子は、表示を行う表示層と、該表示層の表示状態を制御するスイッチング素子とを少なくとも備えたものであり、スイッチング素子としては、本発明の有機半導体トランジスタ素子が用いられる。
ここで、「表示層」とは、この層に対して、スイッチング素子によって電界が印加された場合および/または電流が流れた場合に、表示色が一の色から他の色(同色の場合は、表示諧調が一の色濃度から他の色濃度)へと変化する機能を有する層を意味し、このような機能を有する層であれば公知の構成が利用できる。例えば、液晶分子を含む液晶層や、導電性高分子中に発光材料を分散させた層や、自発光性の導電性高分子を含む層、電荷移動性微粒子を含む調光層、電気的な酸化還元反応により金属微粒子の析出溶解が可能な溶液を含む調光層などが挙げられ、この場合、本発明の表示素子は液晶表示素子や、有機EL表示素子、電気泳動表示素子等として利用できる。
【0155】
なお、本発明の表示素子において、表示層は、少なくとも一方が可視光に対して透明な一対の基板間に設けられることが好ましい。また、表示層に対して電界を印加および/または電流を流すために、一対の基板同士が対向する面に1対の電極を設けることが好ましく、可視光に対して透明な基板表面に設けられる電極としては、可視光に対して透明な電極が用いられる。ここで、スイッチング素子は、1対の電極のいずれか一方に接続することができ、表示を阻害しない位置であれば表示素子の任意の位置に設けることができる。
以下、本発明の表示素子が電気泳動表示素子である場合について具体例を挙げて説明するが、本発明の表示素子は以下の具体例にのみ限定されるものではない。
【0156】
表示層として電荷移動性微粒子を含む調光層を備えた表示素子としては、例えば、(1)調光層中に互いに帯電特性が異なる2色の微粒子を保持したマイクロカプセルを含有させ、その微粒子のいずれか一方を電気泳動法により表示面側に移動させることにより、色や諧調などの表示の切替えを行う態様や(第1の実施態様)、(2)少なくとも分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子を調光層中に含有させ、電気泳動法により電荷移動性微粒子を分散状態または非分散状態に制御することで表示の切替えを行う態様(第2の実施態様)などが挙げられる。
以下、これらの2態様について具体的に説明する。
【0157】
[第1の実施態様]
第1の実施態様としては、対向配置された一対の基板間に配置された調光層に、互いに帯電特性が異なる2色の微粒子を保持したマイクロカプセルが含まれる構成が好ましい。このような構成の調光層には、表示の切り替えに際して一対の電極により電界が印加され、マイクロカプセル内に封入されている2色の微粒子が互いに異なる帯電特性を有することから、その一対の電極により印加された電界の強度や極性に応じて、マイクロカプセル内を移動することができる。
したがって、このような調光層を備えた表示素子では、基板の一方が表示面となり、例えば、2色の微粒子が白色微粒子及び黒色微粒子である場合、この表示面側にマイクロカプセル内の白色微粒子を選択的に移動させることで白色の表示を行い、また、表示面側にマイクロカプセル内の黒色微粒子を選択的に移動させることで黒色の表示を行うことができる。
上記で説明したような調光層には、例えば、特開2005−70567号公報や特表2004−526210号公報に記載のマイクロカプセルの製造方法や表示機構を適用することができる。
【0158】
図4は本発明の表示素子の一例を示す模式断面図であり、第1の実施態様の電気泳動表示素子の一例について示したものである。
ここで、図中、11は基板、12はゲート電極、13はソース電極、14はゲート絶縁層、15は有機半導体層、16は層間絶縁層、17はドレイン電極、18はガラス基板、19はAuワイヤ、20は有機半導体トランジスタ素子、22、23は透明電極、24はガラス基板、25は調光層、27はマイクロカプセル、28は分散媒、29Aは第1の電荷移動性微粒子、29Bは第2の電荷移動性微粒子を表す。
【0159】
図4に示される表示素子は、片面に透明電極22が設けられたガラス基板18と、このガラス基板18の透明電極22が設けられた側の面に対向配置され、ガラス基板18側の面に透明電極23が設けられたガラス基板24と、これら一対のガラス基板18、24間に設けられた調光層25と、ガラス基板18の透明電極22が設けられた面と反対側の面に配置された有機半導体トランジスタ素子20を備えている。
調光層25には、分散媒28と、この分散媒28中に分散するマイクロカプセル27とが含まれ、マイクロカプセル27中には、第1の電荷移動性微粒子29A及び第1の電荷移動性微粒子29Aとは異なる色を呈する第2の電荷移動性微粒子29Bが含まれる。
また、有機半導体トランジスタ素子20は、基板11と、この基板11の片面に、基板11側からガラス基板18側へと右記の順に積層されたゲート電極12とゲート絶縁層14と、有機半導体層15と層間絶縁層16と、有機半導体層15と層間絶縁層16との界面に、層間絶縁層16によって基板11の平面方向の導通が遮断されるように離間して配置されたソース電極13およびドレイン電極17とを有している。
この有機半導体トランジスタ素子20は、ガラス基板18の調光層25が配置された側と反対側の面に、層間絶縁層16がガラス基板18と界面をなす様に設けられており、ドレイン電極17は、Auワイヤ19によって透明電極22に接続されている。
【0160】
この表示素子では、ゲート電極12に接続された(不図示の)電源により印加される電圧によって、ソース電極13とドレイン電極17との間に流れる電流を制御し、Auワイヤ19を通じて一対の透明電極22、23間に電界を発生させる。この際、透明電極22、23間に印加される電圧を制御することによって、マイクロカプセル27中に含まれる電荷移動性微粒子29A、29Bのいずれか一方を表示面側(図4中、基板24側)に移動させることにより、各々の粒子の色の表示を行うことができる。
【0161】
[第2の実施態様]
第2の実施態様は、対向配置された一対の基板間に配置された調光層に、少なくとも分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子が含まれる構成を有する。調光層にはその他、必要に応じて絶縁性液体、高分子樹脂、高分子量顔料分散剤等を添加することができる。 また、さらに前記電荷移動性微粒子とは異なる特性を有する異性粒子が含まれていても良い。このような構成の調光層には、一対の電極により電界を印加することによって、電荷移動性微粒子を分散状態、非分散状態とすることで表示の切替えを行う。電荷移動性微粒子としては、特に分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子を用いることが好ましい。
【0162】
ここで、「分散状態で発色性を呈する」とは、前記電荷移動性微粒子が調光層中に分散されている状態で目視により観測できる色相を呈することをいう。
色相は、電荷移動性微粒子を構成する材料や、形状、粒径などを選択することにより選択することができる。本発明においては、電荷移動性微粒子として、金属コロイド粒子を用いることが好ましいが、この場合には、金属コロイド粒子に含まれる金属の種類や、金属コロイド粒子の形状や粒径(体積平均粒径)等を変化させることにより選択できる。
【0163】
この金属コロイド粒子による発色は、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れている。
また、プラズモン発色する金属コロイド粒子は、従来使用されている顔料、染料等に比較して着色力が大きく、彩度・色純度、鮮明性及び光線透過率が高く、また、調光層における媒体中の分散性が良好であり、沈降、凝集が起こりにくく、耐久性等に優れるという特徴を有するということもできる。
このような金属コロイドによる発色は、粒径が数nm〜数十nm程度の、いわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としては、粒径分布が狭いコロイドであることが有利である。
【0164】
図5は本発明の表示素子の他の例を示す模式断面図であり、第2の実施態様の電気泳動表示素子の一例について示したものである。
ここで、図中、31は基板、32はゲート電極、33はソース電極、34はゲート絶縁層、35は有機半導体層、36は層間絶縁層、37はドレイン電極、38はガラス基板、39はAuワイヤ、40は有機半導体トランジスタ素子、42、43は透明電極、44はガラス基板、45は調光層、47は電荷移動性微粒子を分散させた分散媒、48は異性粒子を表す。
【0165】
図5に示される表示素子は、片面に透明電極42が設けられたガラス基板38と、このガラス基板38の透明電極42が設けられた側の面に対向配置され、ガラス基板38側の面に透明電極43が設けられたガラス基板44と、これら一対のガラス基板38、44間に設けられた調光層45と、ガラス基板38の透明電極42が設けられた面と反対側の面に配置された有機半導体トランジスタ素子40を備えている。
調光層45には、電荷移動性微粒子を分散させた分散媒47と、電荷移動性微粒子よりも移動度が小さく、電荷移動性微粒子の呈示可能な明度範囲より低い明度の色を呈する異性粒子48とが含まれる。
また、有機半導体トランジスタ素子40は、基板31と、この基板31の片面に、基板31側からガラス基板38側へと右記の順に積層されたゲート電極32とゲート絶縁層34と、有機半導体層35と層間絶縁層36と、有機半導体層35と層間絶縁層36との界面に、層間絶縁層36によって基板31の平面方向の導通が遮断されるように離間して配置されたソース電極33およびドレイン電極37とを有している。
この有機半導体トランジスタ素子40は、ガラス基板38の調光層45が配置された側と反対側の面に、層間絶縁層36がガラス基板38と界面をなす様に設けられており、ドレイン電極37は、Auワイヤ39によって透明電極42に接続されている。
【0166】
図5に示す表示素子では、一対の透明電極42、43間に印加される電圧を制御し、電荷移動性微粒子を透明電極43側に移動させることにより、電荷移動性微粒子の呈する色を表示させ、また電荷移動性微粒子を透明電極42側に移動させることにより、異性粒子48の呈する色を表示させることができる。
【0167】
以上、図4や図5に例示した表示素子では、1つのスイッチング素子とこのスイッチング素子によって表示状態が制御される表示層とを含む構成(以下、「表示単位」と称す)を示したが、本発明の表示素子は、この表示単位を複数含むものであってもよく、例えば、この表示単位が直線状に連続して配置された構成でもよく、2次元的に連続して配置された構成でもよい。なお、この場合、各表示単位毎に別個独立して容易に制御できるように、隣接する2つの表示単位の表示層は絶縁性の隔壁で仕切られることが特に好ましい。なお、このような隔壁は、表示層が液体を含むような場合にも、当該液体が表示素子の外部に漏れないようにすることを目的として設けられる。次に、本発明の表示素子を構成する各部材についてより詳細に説明する
【0168】
−電荷移動性微粒子−
電荷移動性微粒子としては、電気泳動法に用いられるものであれば、制限なく用いることができる。中でも、着色性、安定性の観点から前述のプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることが好ましい。
以下、金属コロイド粒子を例に記載するがこれに限定されるものではない。
前記金属コロイド粒子の金属としては、貴金属又は銅等(以下、合わせて「金属」という。)が挙げられ、前記貴金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等を挙げることができる。前記金属の中でも、金、銀、白金が好ましく、金又は銀がより好ましい。
【0169】
前記金属コロイド粒子は、金属イオンを還元して金属原子、金属クラスターを経てナノ粒子に調製する化学的方法や、バルク金属を不活性ガス中で蒸発させて微粒子となった金属をコールドトラップなどで捕捉したり、ポリマー薄膜上に真空蒸着させて金属薄膜を形成した後に加熱して金属薄膜を壊し、固相状態でポリマー中に金属コロイド粒子を分散させる物理的方法が知られている。化学的方法は、特殊な装置を使わなくても良く、本発明の金属コロイド粒子調製に有利であるため、一般例を後述するが、これらに限定されるものではない。
前記金属コロイド粒子は、前記金属の化合物から形成される。該金属の化合物としては、前記金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化金酸、硝酸銀、カルボン酸銀塩、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
【0170】
前記金属コロイド粒子は、前記金属の化合物を溶媒に溶解した後、金属に還元して分散剤で保護された金属コロイド粒子の分散液として得ることができるが、この分散液から溶媒を除去して固体ゾルの形態で得ることもできる。これら以外のいずれの形態であってもよい。
前記金属の化合物を溶解する際、後述の高分子量顔料分散剤を用いることも可能である。高分子顔料分散剤を用いることにより前記分散剤で保護された安定な金属コロイド粒子として得ることができる。
【0171】
本発明の表示素子に金属コロイド粒子を用いる場合、上記した金属コロイド粒子の分散液として使用しても、また、前記の溶媒を除去した固体ゾルを溶媒に再分散させて使用することもでき、本発明においては特に限定されるものではない。
前記金属コロイド粒子の分散液として用いる場合、前記調製時の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。また、前記固体ゾルを再分散して用いる場合、固体ゾル調製時の溶媒としては、いずれの溶媒を用いることができ、特に限定されるものではない。再分散する際の溶媒としては、後述の絶縁性液体であることが好ましい。
【0172】
前記電荷移動性微粒子の体積平均粒径としては、1〜100nmであることが好ましく
、2〜50nmであることがより好ましく、5〜50nmであることが特に好ましい。
また、金属コロイド粒子は、その金属の種類や形状、体積平均粒径により、様々な色に発色させることができる。そのため、金属の種類や、形状、体積平均粒径を制御した前記電荷移動性微粒子を用いることにより、RGB発色を含む様々な色相を得ることができる。よって、発色の異なる2種類以上の電荷移動性微粒子を用いれば、カラー表示が可能な表示素子を得ることができる。
【0173】
RGB方式のR、G、Bそれぞれの色を呈するための金属コロイド粒子の体積平均粒径としては、用いる金属や、粒子の調製条件、形状等に依存するため、特に限定することができないが、例えば、金コロイド粒子の場合、体積平均粒径は大きくなるに従って、R発色、G発色、B発色を呈する傾向にある。
【0174】
電荷移動性微粒子の体積平均粒径の測定方法としては、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折、散乱光の強度分布パターンから平均粒径を測定する、レーザ回折散乱法を採用する。
例えば、日機装社製マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EXにて測定した
値を採用した。
【0175】
プラズモン発色における発色波長は、金属コロイド粒子の粒径に依存し、例えば、金属コロイド粒子がAuからなる場合には、粒径が15nm前後では赤色に、粒径が45nmでは青色に発色する。
【0176】
調光層中の全質量に対する電荷移動性微粒子の含有量(質量%)としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、調光層の厚さにより含有量を調整することが、表示素子としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、調光層が厚い場合には含有量は少なく、調光層が薄い場合には含有量を多くすることができる。一般的には、0.01〜50質量%である。
【0177】
前記金属コロイド粒子の調製は、例えば、文献「金属ナノ粒子の合成・調製、コントロール技術と応用展開」(技術情報協会出版、2004年)に記載されている一般的な調製方法にて金属コロイド粒子を調製することができる。以下に、その一例を説明するが、これに限定されるものではない。
【0178】
−固体ゾル−
以下に、前記金属コロイド粒子の調製に際して作製される金属の固体ゾルの一例について説明する。
本発明における金属の固体ゾルにおいて、着色性の観点から、上記金属コロイド粒子は、後述の高分子量顔料分散剤1kgあたり、50mmol以上含有されることが好ましい。上記金属のコロイド粒子が50mmol未満であると、着色性が不充分となる場合がある。より好ましくは、100mmol以上である。
【0179】
本発明における金属の固体ゾルにおいて、金属コロイド粒子は、体積平均粒径が1〜100nmであることが好ましい。1nm未満であると、着色力が低く、100nmを超えると、彩度が低くなる場合がある。また、本発明における金属の固体ゾルは、狭い粒度分布を示すものであることが好ましい。粒度分布が広いものであると、彩度が低くなるので好ましくない。
【0180】
本発明における金属の固体ゾルは、彩度が高く、金属コロイド粒子を高い濃度で含有しているので、着色性が良好である。また、本発明における金属の固体ゾルは、樹脂等の高分子樹脂(バインダー)との相溶性が良好であり、このような高分子樹脂(バインダー)に添加しても安定で凝集せず、充分な着色性を有している。必要に応じてその他の添加物を添加することもできる。更に、適当な溶媒に溶解して、ヒドロゾルやオルガノゾルとした形態も用いることができる。
【0181】
−固体ゾルの製造方法−
前記金属の固体ゾルの製造方法の一例を以下に述べるがこれに限定されるものではない。すなわち、金属の化合物を溶媒に溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属コロイド粒子を形成し、その後、上記溶媒を除去することにより固体ゾルとするものである。
【0182】
前記製造方法において、上記金属の化合物は、溶媒に溶解して使用される。上記溶媒としては上記金属の化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、アセトン、メタノール、エチレングリコール等の水可溶性有機溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、水及び水可溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0183】
上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合、まず、上記金属の化合物を水に溶解した後、水可溶性有機溶媒を添加して溶液とすることが好ましい。このとき、上記金属の化合物は、50mM以上となるように水に溶解されることが好ましい。50mM未満であると、金属のコロイド粒子を高い割合で含有した固体ゾルを得るこが困難となる場合がある。より好ましくは、100mM以上である。
【0184】
金属として銀を使用する場合、上記水溶液は、pH7以下であることが好ましい。pH
が7を超えると、例えば、上記銀の化合物として硝酸銀を用いる場合、銀イオンを還元する際に酸化銀等の副生成物が生成し、溶液が白濁する場合がある。上記水溶液のpHが7を超える場合には、例えば、0.1N程度の硝酸等を添加して、pHを7以下に調整することが好ましい。
【0185】
上記水可溶性有機溶媒は、上記金属の化合物を溶解する水に対して、体積比が1.0以上となるように添加することが好ましい。1.0未満であると、水不溶性の高分子量顔料分散剤が溶解しない場合がある。より好ましくは、5.0以上である。
【0186】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属の化合物の溶液に高分子量顔料分散剤を添加することも有効である。上記高分子量顔料分散剤は、上記溶媒が水及び水可溶性有機溶媒からなる混合溶媒である場合には、水不溶性のものであることが好ましい。水溶解性であると、水可溶性有機溶媒を除去して固体ゾルを得る際に、コロイド粒子を析出させるのが困難となる。上記水不溶性の高分子量顔料分散剤としては、例えば、ディスパービック161、ディスパービック166(ビックケミー社製)、ソルスパース24000、ソルスパース28000(ゼネカ社製)等を挙げることができる。
【0187】
上記高分子量顔料分散剤の添加量は、上記金属100質量部に対して20〜1000質量部が好ましい。20質量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合を生じやすくなる場合がある。より好ましくは、50〜650質量部である。
【0188】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属の化合物の溶液に上記高分子量顔料分散剤を添加した後、金属のイオンを還元する。上記還元の方法としては特に限定されず、例えば、化合物を添加して化学的に還元する方法、高圧水銀灯を用いた光照射により還元する方法等を挙げることができる。
【0189】
上記化合物としては特に限定されず、例えば、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン化合物;クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩等を使用することができる。また、本発明においては、上記還元剤のほかに、アミンを使用することができる。
【0190】
上記アミンは、上記金属の化合物の溶液にアミンを添加して攪拌、混合することによって、金属イオン等が常温付近で金属に還元される。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属の化合物を還元することができる。
【0191】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン; ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらのうち、アルカノールアミンが好ましい。
【0192】
上記アミンの添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する場合がある。より好ましくは、2〜8molである。
【0193】
また、上記還元剤として上記水素化ホウ素ナトリウムを使用する場合、常温で還元することができるので、加熱や特別な光照射装置を使用する必要がない。
上記水素化ホウ素ナトリウムの添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下することがある。より好ましくは、1.5〜10molである。
【0194】
上記還元剤としてクエン酸又はその塩を使用する場合、アルコールの存在下で加熱還流することによって金属イオン等を還元することができる。上記クエン酸又はその塩としては、クエン酸ナトリウムを使用することが好ましい。
上記クエン酸又はその塩の添加量は、上記金属の化合物1molに対して1〜50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、生成したコロイド粒子の対凝集安定性が低下する場合がある。より好ましくは、1.5〜10molである。
【0195】
本発明における金属コロイド粒子の調製においては、上記金属のイオンを還元した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させてから上記溶媒を除去する。上記溶媒として水及び水可溶性有機溶媒を使用する場合には、使用する高分子量顔料分散剤の性質に応じて以下の方法に従って上記溶媒を除去することができる。
【0196】
上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものである場合、まず、上記水可溶性有機溶媒を蒸発等により除去して、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させた後、水を除去することが好ましい。上記高分子量顔料分散剤が水不溶性のものであるので、上記水可溶性有機溶媒を除去することにより、上記高分子量顔料分散剤により保護された金属のコロイド粒子が沈殿する。
この場合において、上記水可溶性有機溶媒は、蒸発速度が水より大きいものであることが好ましい。蒸発速度が水より小さいものであると、上記高分子量顔料分散剤として水不溶性のものを使用した場合、溶媒を除去して固体ゾルとする際に、上記水可溶性有機溶媒を先に取り除くことができず、金属のコロイド粒子を沈殿させることが困難となる。
【0197】
上記高分子量顔料分散剤が溶剤型のものである場合、該高分子量顔料分散剤を溶解しない非極性有機溶媒を過剰量添加して上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子を沈殿させた後、デカンテーション等により溶媒を除去することもできる。
上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子は、上記溶媒を除去した後、上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子をイオン交換水で洗浄しても良い。上記高分子量顔料分散剤で保護された金属のコロイド粒子が過剰量の上記非極性溶媒により沈殿された場合は、上記非極性有機溶媒で洗浄することができる。
【0198】
本発明における金属の固体ゾルの製造方法において、得られる金属の固体ゾルは、コロイド平均粒径が1〜100nmであり、粒度分布が狭いので、濃色かつ彩度の高いものとなる。
本発明における金属の固体ゾルの製造方法は、上記金属の化合物を溶媒に溶解して溶液とし、上記高分子量顔料分散剤を加えた後、金属に還元し、その後、溶媒を除去するといった少ない工程で簡便に行うことができ、しかも、彩度が高く、従来の金属の固体ゾルと比較して、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属の固体ゾルを製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、20〜80℃程度の温和な条件で簡便に製造することができる。
【0199】
以上の方法によって金属コロイド粒子を調製することができるが、本発明における金属コロイド粒子は、分散状態で発色性を呈する粒子であれば、市販の金属コロイド粒子を用いることができる。
さらに、前記金属コロイド粒子は、具体的には、下記の方法(1)〜(4)を用いることにより調製できるが、これに限定されるものではない。
【0200】
−金属コロイド粒子の分散液の調製方法−
本発明における前記金属コロイド粒子の分散液の調製方法としては、水系、非極性溶媒系のいずれの形態でも調製することができる。例えば、金及び銀を用いた金属コロイド粒子の分散液は、以下の調製方法により調製することができるが、これに限定されるものではない。
【0201】
(1)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を絶縁性液体(例えば、水)に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000)を含んだ水溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、金コロイド粒子溶液を得る。
【0202】
(2)金属化合物(例えば、テトラクロロ金(III)酸・4水和物)を水に溶解後、金属(例えば、金)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000を 有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。
この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて金イオンの還元反応を開始した後、前記有機溶媒を蒸発させ、金コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、有機溶媒(例えば、エタノール)を加えて金コロイド粒子溶液を得る。
【0203】
(3)金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース20000)を含んだ水溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えばジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、濾過、濃縮を行い、水系銀コロイド粒子溶液を得る。
【0204】
(4) 金属化合物(例えば、硝酸銀(I))を水に溶解後、金属(例えば、銀)に対して1.5倍質量の高分子量顔料分散剤(例えば、ソルスパース24000)を有機溶媒(例えば、アセトン)に溶解させた溶液を混合、攪拌する。この混合液に脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミノエタノール)を加えて銀イオンの還元反応を開始した後、有機溶媒を蒸発させ、銀コロイド粒子と高分子量顔料分散剤からなる固体ゾルを得る。その後、デカンテーションにより固体ゾルを水で洗浄し、有機溶媒(例えば、トルエン)を加えて溶媒系銀コロイド粒子溶液を得る。
尚、前記金属コロイド粒子及びその溶液等については、特開平11−76800号公報
[0071]〜[0103]に記載のものを好適に用いることができる。
【0205】
−異性粒子−
調光層中には、電荷移動性微粒子とは異なる特性を有する異性粒子が備えられていても良い。異性粒子は、電荷移動性微粒子とは異なる特性を有するため、例えば、多色表示可能な表示素子とすることが可能となる。ここで、「異なる特性」とは、電荷移動性微粒子と異なる性質や態様をいい、具体的には、異なる色相(濃淡を含む)、異なる形態(異なる体積平均粒径や異なる形状等)、異なる移動性、異なる機能(例えば、移動性微粒子が色表示の機能を有し、異性粒子がスペーサの機能を有すること)等をいう。特に、異性粒子が白色の場合、当該異性粒子が観察面近傍に位置していることにより、視野角依存性がより低減される。
【0206】
表示素子のコントラストの向上を考慮すると、異性粒子の色は白色であることが好ましい。当該異性粒子が白色の場合、その濃淡は限定されず、視覚的に白色であればよい。
【0207】
また、異性粒子の体積平均粒子径(X)が、移動性微粒子の体積平均粒径(Y)よりも大きいことが好ましく、それらの比(X/Y)が、2〜50000であることが好ましく、20〜10000であることがより好ましい。異性粒子が移動性微粒子より大きいと、移動性微粒子が異性粒子同士の間隙を移動しやすくなり、移動性微粒子による色表示の応答性を向上させることができる。
【0208】
異性粒子の体積平均粒径は、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。異性粒子の体積平均粒径が0.1〜50μmの範囲であれば、当該異性粒子をスペーサーとして利用できるといった効果を発揮することもできる。
【0209】
異性粒子の材料としては、有機物や無機物など特に限定されず、使用することができる。例えば、有機物としては、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。無機物としては、酸化チタン、シリカ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0210】
調光層中の異性粒子の体積充填率は、30〜95vol%であることが好ましく、50〜90vol%であることがより好ましい。体積充填率が30〜95vol%であることで、異性粒子の色、例えば、白色を効果的に表示することができる。
【0211】
異性粒子は、電荷移動性微粒子とは異なる色相を呈する色表示用の粒子として使用することができるが、調光層の膜厚の均一化の観点から、調光セルのスペーサーとして使用することもできる。
【0212】
−絶縁性液体−
本発明の表示素子に用いられる金属コロイド粒子の分散媒としては、絶縁性液体であることが好ましい。
前記絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。
【0213】
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。該体積抵抗値としては、10Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは10Ωcm〜1019Ωcmであり、さらに好ましくは1010〜1019Ωcmである。このような体積抵抗値とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に粒子の電気泳動特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。
なお、絶縁性液体には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが好ましい。
【0214】
−高分子樹脂−
本発明における前記電荷移動性微粒子(金属コロイド粒子)は、高分子樹脂に分散されていることも好ましい。該高分子樹脂としては、高分子ゲル、ネットワークポリマー等であることも好ましい。
高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、及びアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体を挙げることができる。
これら中でも、製造安定性、電気泳動特性等の観点から、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が好ましく用いられる。これら高分子樹脂は、前記絶縁性液体と共に用いることが好ましい。
【0215】
−高分子量顔料分散剤−
上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。すなわち;
(1)顔料親和基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子
(2)主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子
(3)主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子。
【0216】
ここで、上記顔料親和基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、上記顔料親和基は、金属に対して強い親和力を示す。上記高分子量顔料分散剤は、上記顔料親和基を有することにより、金属の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
【0217】
上記櫛形構造の高分子(1)は、上記顔料親和基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである(以下、上述の構造を「櫛形構造」と称する)。
上記櫛形構造の高分子(1)において、上記顔料親和基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、上記溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいう。上記溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
【0218】
上記櫛形構造の高分子(1)としては特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に開示されている1個以上のポリ(カルボニル−炭素数3〜6のアルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−炭素数3〜6のアルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エチレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に開示されているポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に開示されている末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤等を挙げることができる。
【0219】
上記櫛形構造の高分子(1)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、25〜1500個である。
【0220】
上記櫛形構造の高分子(1)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。2未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、5〜500である。
【0221】
上記櫛形構造の高分子(1)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、4000〜500000である。
【0222】
上記主鎖中に顔料親和基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体(2)は、複数の顔料親和基が主鎖にそって配置されているものであり、上記顔料親和基は、例えば、主鎖にペンダントしているものである。本明細書中、上記顔料親和部分は、上記顔料親和基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
【0223】
上記共重合体(2)としては、例えば、特開平4−210220号公報に開示されているポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に開示されているポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に開示されている水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に開示されている付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個の炭素数1〜4のアルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなり,かつ、2500〜20000の重量平均分子量を有する両親媒性共重合体であって、主鎖は、30質量%までの非官能性構造単位と、合計で70質量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、上記官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基との比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
【0224】
上記共重合体(2)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、25〜1500個である。
【0225】
上記共重合体(2)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、4000〜500000である。
【0226】
上記主鎖の片末端に顔料親和基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(3)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
【0227】
上記直鎖状の高分子(3)としては特に限定されず、例えば、特開昭46−7294号公報に開示されている一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に開示されているAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に開示されている片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に開示されている片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に開示されている米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
【0228】
上記直鎖状の高分子(3)は、顔料親和基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではなく、3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、5〜1500個である。
【0229】
上記直鎖状の高分子(3)は、数平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではなく、1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となり、また、コロイド粒子の粒度分布が広くなり、彩度が低下することがある。より好ましくは、2000〜500000である。
【0230】
上記高分子量顔料分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。上記市販品としては、例えば、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(ゼネカ社製);ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190(ビックケミー社製);EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49(EFKAケミカル社製);ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453(EFKAケミカル社製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−158、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学社製)等を挙げることができる。
【0231】
上記高分子量顔料分散剤は、顔料親和基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの〔上記櫛形構造の高分子(1)〕;主鎖に、顔料親和基を有するもの〔上記共重合体(2)及び上記直鎖状の高分子(3)〕であるので、コロイド粒子の分散性が良好であり、金属のコロイド粒子に対する保護コロイドとして好適である。上記高分子量顔料分散剤を使用することにより、金属のコロイド粒子を高い濃度で含有する金属のコロイド粒子分散体を得ることができる。
【0232】
本発明において、上記高分子量顔料分散剤は、軟化温度が、30℃以上であることが好ましい。30℃未満であると、得られる金属の固体ゾルが貯蔵中にブロッキングしてしまう。より好ましくは、40℃以上である。
【0233】
上記高分子量顔料分散剤の含有量は、上記金属100質量部に対して20〜1000質量部が好ましい。20質量部未満であると、上記金属のコロイド粒子の分散性が不充分であり、1000質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、50〜650質量部である。
【0234】
調光層に電荷移動性微粒子を用いる場合、対向配置された少なくとも一方が可視光に対して透明な一対の基板間に配置された調光層中に、上述の電荷移動性微粒子を、移動可能に保持する構成を有することが好ましい。
基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好ましく用いられる。なお、本発明においては、一対の基板のうち、少なくとも一方が可視光に対して透明な基板(以下、「透明基板」と称す)が用いられるが、この透明基板は、少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有することが好ましい。
また、一対の基板間の距離(調光層の厚み)としては、製造される表示素子のサイズや重さ、発色性等により、適宜、決定されるが、一般的には、2〜1000μm程度である。
【0235】
本発明の表示素子が電気泳動法を利用したものである場合、調光層に対して電界が印加できるように一対の電極が設けられ、この電極により発生する電界により、電荷移動性微粒子が調光層中を電気泳動する。この一対の電極の少なくとも一方の電極は、特に、調光層の外周端部の一部に位置するように設けられることが好ましい。調光層の外周端部の一部に位置するように設けられた電極に向かい、電荷移動性微粒子が移動することで、電荷移動性微粒子の分散状態、すなわち、発色状態が解消される。
【0236】
なお、一対の電極のうち、透明基板側に設けられる電極は少なくとも50%以上の光透過率(可視光)を有する透明電極が用いられる。具体的には、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が好ましく用いられる。また、電極は、これらの材料を単独で用いて形成されていてもよいし、複数種の材料を積層したものであってもよい。
なお、電極の厚みや大きさは、表示素子によって様々なものが利用でき、特に限定されるものではない。
【0237】
本発明の表示素子が、2以上の表示単位を含む場合、各表示単位の表示色はいずれも同じであってもよいが、多様な色彩や諧調表示を可能とするためには、2以上の表示単位から構成される画素を2つ以上含む表示素子であることが特に好ましい。また、画素を構成する2以上の表示単位は互いに隣接または近接する位置に配置されることが特に好ましい。
【0238】
なお、本発明において、「表示単位」は、その構成や制御方法を工夫することにより、一の表示状態から他の表示状態まで連続的に表示状態が切り替えられるようなアナログ的表示機能を有するものであってもよいが、基本的には一の表示状態と他の表示状態との2種類の表示のみを行うデジタル的表示機能を有するものである。これに対して「画素」は、これらデジタル的表示機能を有する表示単位を2つ以上組み合わせることによって、多段階の諧調表示や、カラー表示などのような多様な表示が可能な表示機能を有するものである。
【0239】
このような機能を有する画素は、同じ色を表示する2つ以上の表示単位から構成されていてもよく、互いに異なる色を表示する2つ以上の表示単位から構成されていてもよい。
例えば、前者の場合は、画素を構成する2以上の表示単位のうち、バックグラウンド色(非通電状態および/または待機状態で表示される色)を表示する表示単位と、特定の色を表示する表示単位との比率を制御することによって多段階の諧調表示を行うことができる。また、後者の場合は、例えば、1つの画素が、赤を表示する表示単位と、緑を表示する表示単位と、青を表示する表示単位とを含むような構成とすることにより、フルカラー表示を行うことができる。
【0240】
なお、本発明の表示素子の駆動方法としては公知の駆動方法が利用できるが、表示単位が2次元的に連続して配置された構成を有する場合には、n行の走査線とm列の信号線とからなるn×mマトリクス配線の交点に本発明の有機半導体トランジスタ素子を設けられる。ここで、有機半導体トランジスタ素子のゲート電極は走査線に、ドレイン電極は信号線に、ソース電極は接地される。走査線にはアドレス信号、信号線には表示信号が供給され、ON/OFF信号乗畳されたアドレス信号で制御される有機半導体トランジスタ素子を介して、各表示単位の表示の制御を行う。
【実施例】
【0241】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これらの各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0242】
<電荷輸送性ポリエステルの合成>
(合成例1)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。これを1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70mmol)のTHF溶液を滴下した。これに、ジヨードベンゼン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱した。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し2−(5−ヨードフェニル)−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0243】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製した後、ジフェニルアミン、硫酸銅(II)五水和物、炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製した化合物を無水塩化銅と酢酸パラジウムと共に無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=4:1)にて精製し、表12の〔構造番号64〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0244】
上記モノマー1.0g、エチレングリコ−ル3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコ−ルを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、0.9gの例示化合物(20)を得た。
【0245】
(合成例2)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、これに2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70mmol)のTHF溶液を滴下した。これに、ジヨードベンゼン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱した。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し2−(5−ヨードフェニル)−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0246】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)にて精製した後、ジフェニルアミン、硫酸銅(II)五水和物及び炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製して、得られた化合物を無水塩化銅と酢酸パラジウムと共に無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=4:1)にて精製し、表13の〔構造番号71〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0247】
上記モノマー1.0g、エチレングリコール3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.0gの例示化合物(22)を得た。
【0248】
(合成例3)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。これに1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70mmol)のTHF溶液を滴下した。これに、2,7−ジヨ−ド−9,9−ジメチルフルオレン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱する。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し、2−(5−(ヨード−9,9−ジメチルフルオレン))−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0249】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製した後、ジフェニルアミン、硫酸銅(II)五水和物、炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製した化合物を無水塩化銅と酢酸パラジウムと共に無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=4:1)にて精製し、表19の〔構造番号96〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0250】
上記モノマー1.0g、エチレングリコ−ル3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコ−ルを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、0.8gの例示化合物(28)を得た。
【0251】
(合成例4)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、これに2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70mmol)のTHF溶液を滴下した。これに、ジヨードベンゼン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱した。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し2−(5−ヨードフェニル)−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0252】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製した後、ジアリールアミン、硫酸銅(II)五水和物及び炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製して、得られた化合物と2、5−ジブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェンとを無水塩化銅と酢酸パラジウムと共に無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=4:1)にて精製し、表30の〔構造番号161〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0253】
上記モノマー1.0g、エチレングリコール3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(メタノール:酢酸エチル(体積比)=4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.0gの例示化合物(44)を得た。
【0254】
(合成例5)
ジアリールアミン、2、5‘’−ジブロモ−5,2‘,5’,2‘’(トリス‐3,4,−プロピレンジオキシチオフェン)、硫酸銅(II)五水和物及び炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製し、表34の〔構造番号182〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0255】
上記モノマー1.0g、エチレングリコール3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(メタノール:酢酸エチル(体積比)=4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.0gの例示化合物(49)を得た。
【0256】
(合成例6)
ジアリールアミン、2、5−ジブロモ−プロピレンジオキシチオフェン、硫酸銅(II)五水和物及び炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製し、表36の〔構造番号191〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0257】
上記モノマー1.0g、エチレングリコール3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(メタノール:酢酸エチル(体積比)=4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.0gの例示化合物(53)を得た。
【0258】
(合成例7)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。これを1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70mmol)のTHF溶液を滴下した。これに、ジヨードベンゼン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱した。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し2−(5−ヨードフェニル)−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0259】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製した後、ジフェニルアミン、硫酸銅(II)五水和物、炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製した化合物を無水塩化銅と酢酸パラジウムと共に無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=4:1)にて精製し、表49の〔構造番号260〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0260】
上記モノマー1.0g、エチレングリコ−ル3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコ−ルを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(メタノール:酢酸エチル(体積比)=4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、0.9gの例示化合物(71)を得た。
【0261】
(合成例8)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。これを1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、2−ブロモ−3,4,−エチレンジオキシチオフェン(70mmol)THF溶液を滴下した。これに、2,7−ジヨ−ド−9,9−ジメチルフルオレン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱した。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し2−(5−(ヨ−ド−9,9−ジメチルフルオレン))−3,4−エチレンジオキシチオフェンを得た。
【0262】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製した後、ジフェニルアミン、硫酸銅(II)五水和物、炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製した化合物を無水塩化銅と酢酸パラジウムを無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)にて精製し、表54の〔構造番号287〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0263】
上記モノマー1.0g、エチレングリコール3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコールを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(メタノール:酢酸エチル(体積比)=4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、0.8gの例示化合物(75)を得た。
【0264】
(合成例9)
3,4−プロピレンジオキシチオフェン(70.3mmol)をDMF150mlに溶解し、−50℃に冷却し、NBSのDMF溶液(63.3mmol/50ml)を滴下した。これを1000mlの純水に入れ攪拌した後、トルエンを加え抽出し、2−ブロモ−3,4,−プロピレンジオキシチオフェン(70.0mmol)を得た。一方、マグネシウム(77mmol)を20mlのTHFに溶解させた後還流させ、2−ブロモ−3,4,−プロピレンジオキシチオフェン(70mmol)THF溶液を滴下した。これに、2,7−ジヨード−9,9−ジメチルフルオレン(70mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体(0.7mmol)を溶かしたTHF溶液(70ml)を滴下し、60℃で加熱した。冷却後、20%塩化アンモニウム水溶液に加えて攪拌した後、THF溶液を抽出した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製し、2−(5−(ヨ−ド−9,9−ジメチルフルオレン))−3,4−プロピレンジオキシチオフェンを得た。
【0265】
これをDMFに溶解し、NCSを加えて攪拌し、純水を加え沈殿物をろ過した。これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=9:1)にて精製した後、ジフェニルアミン、硫酸銅(II)五水和物、炭酸カリウムと共に1,2−ジクロロベンゼンに溶かし還流させ反応を終了した。その後、トルエンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=8:1)にて精製した化合物を無水塩化銅と酢酸パラジウムを無水THFに溶かし還流した。反応終了後、酢酸エチルを加え、5%EDTA水溶液、純水で洗浄した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル(体積比)=4:1)にて精製し、表57の〔構造番号305〕に示される構造に対応する両末端がカルボキシル基を有するモノマーを得た。
【0266】
上記モノマー1.0g、エチレングリコ−ル3.0g及びテトラブトキシチタン0.04gを100mlの三口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、200℃で3時間加熱攪拌した。モノマーが消費されたことを確認した後、0.5mmHgに減圧してエチレングリコ−ルを留去しながら230℃に加熱し、5時間反応を続けた。その後、室温まで冷却し、テトラヒドロフラン200mlに溶解し、不溶物を0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターにてろ過し、ろ液をメタノールと酢酸エチルの混合溶媒(メタノール:酢酸エチル(体積比)=4:1)500mlを撹拌している中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.0gの例示化合物(78)を得た。
【0267】
<実施例1>
図4に示す表示素子を構成する有機半導体トランジスタ素子20と同様の層構成を有する有機半導体トランジスタ素子を以下の手順にて作製した。
まず、基板11としてコーニング1737ガラス基板を用い、このガラス基板上にゲート電極12として厚さ150nmのCrMo膜をスパッタリング法により形成した。続いて、このゲート電極12表面にCVD法により、ゲート絶縁層14として厚さ300nmのSiO膜を形成した。その上に、例示化合物(20)を5質量%含むジクロロエタン溶液を目開き0.1μmのPTFEフィルターで濾過した有機半導体溶液を、ディップ法により厚が100nmとなるように形成し、酸素濃度5ppm、水分濃度5ppmの不活性ガス雰囲気下で130℃に乾燥処理することにより有機半導体層15を形成した。
更に、有機半導体層15の表面にAuをスパッタリング法により膜厚が150nmとなるように成膜し、フォトリソグラフィを利用してパターンニングを行い、ソース電極13およびドレイン電極17を形成した。
最後に、ソース電極13およびドレイン電極17が形成された有機半導体層15の表面に、ポリイミド前駆体(京セラケミカル製、CT4112A)をスピンコートし130℃でアニールを行い、層間絶縁層16を形成した。このようにして作製した有機半導体トランジスタ素子20のチャネル長は18μm、チャネル幅は400μmとした。
【0268】
<実施例2>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(22)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0269】
<実施例3>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(28)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0270】
<実施例4>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(44)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0271】
<実施例5>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(49)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0272】
<実施例6>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(53)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0273】
<実施例7>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(71)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0274】
<実施例8>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(75)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0275】
<実施例9>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに例示化合物(78)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0276】
<比較例1>
上記実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに下記構造式(VIII)で示される化合物を用い、ディップ法の代わりに蒸着法を利用して有機半導体薄膜を形成した他は実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0277】
【化18】

【0278】
<比較例2>
上記実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりにポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシル)−1,4−フェニレンビニレン]を用い、ディップ法の代わりに蒸着法を利用して有機半導体薄膜を形成した他は実施例1と同様に有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0279】
<比較例3>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに、下記構造式(IX)で示される化合物(重量平均分子量=64,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0280】
【化19】

【0281】
<比較例4>
実施例1で用いた例示化合物(20)の代わりに、下記構造式(X)で示される化合物(重量平均分子量=62,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして有機半導体トランジスタ素子を作製した。
【0282】
【化20】

【0283】
−評価−
実施例及び比較例で得られた有機半導体トランジスタ素子を半導体パラメーターアナライザー(アジレントテクノロジー社製、4155C)を用いて、ゲート電圧を印加した時の電流−電圧特性を測定し、キャリア移動度(線形領域)オン/オフ比を算出した。
また、実施例及び比較例で得られた有機半導体トランジスタ素子の膜質(Ra)を測定した。それぞれの実施例の化合物を5質量%含むジクロロエタン溶液を目開き0.1μmのPTFEフィルターで濾過した有機半導体溶液を、ガラス基板上にディップ法により厚さ100nmの薄膜を形成し、酸素濃度5ppm、水分濃度5ppmの不活性ガス雰囲気下で130℃に乾燥処理した。その後、キーエンス製nm形状測定顕微鏡VZ−7700にて観察し、表面粗さRaを測定した。
【0284】
以上のように作製した有機半導体トランジスタ素子のオン/オフ比を、有機化合物層の形成に用いた電荷輸送性材料のキャリア移動度と共に表73に示す。表73からわかるように、いずれの実施例に示す有機半導体トランジスタ素子もゲート電極に印加される電圧(ゲート電圧)の変化に伴い、ソース電極・有機半導体層・ドレイン電極間に流れるドレイン−ソース電流が変化するスイッチング特性を示し、良好なオン/オフ比を示していた。しかし、比較例では、有機半導体薄膜の形成に用いた電荷輸送性材料のキャリア移動度が低かったために、オン/オフ比が、実施例1〜9の素子と比べて劣っていることが分かった。また、有機半導体薄膜の形成に際し、液相成膜法が利用できない、気相成膜法を利用しなければならない場合があった。
【0285】
【表73】

【0286】
次に、有機半導体トランジスタ素子を用いて表示素子を作製して評価した結果について以下に説明する。
<実施例10>
図4に示される構成を有する表示素子を以下の手順で作製した。
まず、チタニヤ系カップリング剤(味の素製 KR−TTS)とアルミ系カップリング剤(味の素製 AL−M)で表面処理したチタニヤ粒子(石原産業製)をドデシルベンゼン(関東化学製)に分散し、さらに、アントラキノン系染料(中央合成化学製)を加え分散した。この分散液をアラビヤゴムとゼラチンを溶解した溶液に滴下し、回転速度は1300rpmで撹拌した。
次に、酢酸によって溶液のpHを3.7に調節し、その後、氷冷することによってカプセルを析出させた。さらに、ホルムアルデヒドを加え、カプセルに架橋構造を形成した。その後、一昼夜撹拌を続けた後、分級することで、粒径50〜60μmのマイクロカプセル27を作製した。作製したマイクロカプセル27と、水系エマルジョン型のバインダ材(信越化学製、「ポロン」)と、水とを混合し、水にマイクロカプセル27およびバインダ材が分散されたマイクロカプセル分散液を調製した。このとき、マイクロカプセル分散液中のバインダ材の濃度は5質量%とした。
【0287】
このようにして作製したマイクロカプセル分散液を、透明電極22付きガラス基板(厚さ0.7mm)18上にドクターブレード法によって塗布することで、60μmの厚み(マイクロカプセルの平均粒径と略同じ厚み)の調光層25を形成したのち、透明電極23を形成したガラス基板24を貼り合わせた。
この調光層が一対の基板間に設けられたセルのガラス基板18側の面に実施例1で作製した有機半導体トランジスタ素子20を貼り合わせ、透明電極22とドレイン電極17とをAuワイヤ19によって接続し表示素子を得た。
【0288】
この表示素子を電源に接続し、ゲート電極12に接続された電源からの電圧と、ソース電極13に接続された電源からの電圧の組合せを調整する事により、マイクロカプセル27を反転させることにより、白色表示と、黒色表示を任意に切り替える事が出来た。
【0289】
<実施例11>
図5に示される構成を有する表示素子を以下の手順で作製した。
まず、厚さ0.7mmのガラス基板38上に、透明電極42をスパッタリング法により50nmの厚さで成膜した後、透明電極42表面に光感光性ポリイミドワニスを塗布形成した。こうして得られた膜を、フォトリソグラフィーを利用してパターニングすることによって、ガラス基板38の透明電極42が設けられた側の面の周囲に沿って高さ50μm、幅20μmの隔壁を形成した。
その後、隔壁の上部に接着層を形成した後、白色の異性粒子48(酸化チタン、体積平均粒子径10μm)と共に、電荷移動性微粒子を分散させた分散媒47として金コロイド粒子(体積平均粒子径20nm)を含むエタノール溶液を充填した後、透明電極43を成膜した第2のガラス基板44に熱を加えながら貼り合わせて、調光層が一対の基板間に設けられたセルを作製した。
【0290】
続いて、このセルのガラス基板38が設けられた側の面に、実施例1と同様の方法で作製した有機半導体トランジスタ素子40上に貼り合わせ、透明電極42とドレイン電極37をAuワイヤ39によって接続し、表示素子を得た。
この表示素子は、通電しない状態では調光層中の金コロイド粒子が分散された状態にあり、赤色を示していたが、ゲート電極32に接続された電源からの電圧(−65V)と、ソース電極33に接続された電源からの電圧(30V)との組合せによって、金コロイド粒子は透明電極42側へ移動し、このとき、表示素子を基板44側から観察すると、白色の異性粒子の色、すなわち白色が観察された。
【0291】
<比較例5>
有機半導体トランジスタ素子として、比較例3の有機半導体トランジスタ素子を用いた以外は、実施例11と同様にして表示素子を作製した。
この表示素子は、通電しない状態では金コロイド粒子が分散された状態にあり、赤色を示していたが、ゲート電極32に接続された電源からの電圧(−65V)と、ソース電極33に接続された電源からの電圧(30V)の組合せによっても、表示素子は、赤色を示したままであり、変化が認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0292】
【図1】本発明の有機半導体トランジスタ素子の層構成の一例を示した概略構成図である。
【図2】本発明の有機半導体トランジスタ素子の層構成の一例を示した概略構成図である。
【図3】本発明の有機半導体トランジスタ素子の層構成の一例を示した概略構成図である。
【図4】本発明の表示素子の一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の表示素子の他の例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0293】
1 基板
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 有機半導体層
5 ゲート電極
6 絶縁層
11、31 基板
12、32 ゲート電極
13、33 ソース電極
14、34 ゲート絶縁層
15、35 有機半導体層
16、36 層間絶縁層
17、37 ドレイン電極
18、38 ガラス基板
20、40 有機半導体トランジスタ素子
22、42 透明電極
23、43 透明電極
24、44 ガラス基板
25、45 調光層
27 マイクロカプセル
28、47 分散媒
29A、29B 電荷移動性微粒子
19、39 Auワイヤ
47 電荷移動性微粒子を分散させた分散媒
48 異性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、該有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも含む有機半導体トランジスタ素子において、
前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする有機半導体トランジスタ素子。
【化1】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化2】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項2】
前記有機半導体が、下記一般式(III−1)および(III−2)で示される電荷輸送性ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体トランジスタ素子。
【化3】

(一般式(III−1)および(III−2)において、Aは前記一般式(I−1)及び(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、Rは置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基又はヒドロキシル基を表し、Yは2価のアルコール残基を表し、Zは2価のカルボン酸残基を表し、mは1〜5の整数を表し、pは5〜5000の整数を表す。また、B及びB’はそれぞれ独立に置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素、炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基、炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基又はヒドロキシル基を表す。)
【請求項3】
ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、該有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも備え、前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有する有機半導体トランジスタ素子を、溶媒中に溶解させた前記電荷輸送性ポリエステルを少なくとも1種以上含む溶液を用いて製造する有機半導体トランジスタ素子の製造方法であって、
前記有機半導体が、前記溶液に外部刺激を付与して、前記溶液をノズルから液滴状に吐出させる方法を利用して形成されることを特徴とする有機半導体トランジスタ素子の製造方法。
【化4】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化5】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項4】
前記外部刺激が圧力であることを特徴とする請求項3に記載の有機半導体トランジスタ素子の製造方法。
【請求項5】
溶媒中に溶解させた前記電荷輸送性ポリエステルを少なくとも1種以上含む溶液を用い、前記溶媒を含んだ状態の塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を乾燥させる乾燥工程とを少なくとも経ることにより前記有機半導体トランジスタ素子を製造する請求項3に記載の有機半導体トランジスタ素子の製造方法であって、
前記乾燥工程が、酸素濃度が100ppm以下、且つ、水分濃度が100ppm以下の環境下で実施されることを特徴とする有機半導体トランジスタ素子の製造方法。
【請求項6】
基板と、前記基板上に設けられた1個以上の有機半導体トランジスタ素子とを含み、
前記有機半導体トランジスタ素子が、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極
および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、前記有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも備え、
前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有することを特徴とする半導体装置。
【化6】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化7】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項7】
表示を行う表示層と、該表示層の表示状態を制御するスイッチング素子とを少なくとも備え、
前記スイッチング素子が、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極および前記ドレイン電極と導通可能に設けられた有機半導体と、前記有機半導体に対して絶縁され且つ電場を印加することが可能なゲート電極とを少なくとも備え、前記有機半導体が、少なくとも1種以上の下記一般式(I−1)および(I−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を部分構造として含む繰り返し単位よりなる電荷輸送性ポリエステルを1種以上含有する有機半導体トランジスタ素子であることを特徴とする表示素子。
【化8】

(前記一般式(I−1)及び(I−2)中、Arは置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の1価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環を表し、jは0または1を表し、Tは炭素数1〜6の2価の直鎖状炭化水素基又は炭素数2〜10の2価の分枝鎖状炭化水素基を表し、Xは下記一般式(II)で表される置換基を表す。)
【化9】

(一般式(II)中、Arは、置換または未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の芳香環数2〜10の2価の縮合芳香族炭化水素又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環を表し、Xは置換もしくは未置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換もしくは未置換の炭素数1〜10のポリメチレン基又は置換もしくは未置換のフェニレン基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項8】
前記表示層が、分散状態で発色性を呈する電荷移動性微粒子が分散された液体を含む調光層であることを特徴とする請求項7に記載の表示素子。
【請求項9】
前記電荷移動性微粒子が、プラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子であることを特徴とする請求項8に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−117960(P2008−117960A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300386(P2006−300386)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】