説明

有機機能デバイス

【課題】有機機能素子に最適な有機機能素子構成部を基板上に安価にかつ高精度に形成することができ、微細化及び大面積化が容易であり、かつ有機機能素子構成部を取り囲む凸部の剥離による欠陥が生じ難い有機機能デバイスを提供する。
【解決手段】予め枠状の凸部2aにより囲まれた有機機能素子構成部3,4が形成されている基板2の該有機機能素子構成部3,4内に、有機材料9,13と、有機材料9,13に電気的に接続される電極7,8,12,14とを有する有機機能素子11,15が設けられており、有機材料9,13が凸部2a外の部分から分離されている、有機機能デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に有機材料を塗布し、硬化させることにより形成された部分を有する有機機能デバイスに関し、より詳細には、基板上に有機機能素子を構成する部分を囲むように凸部が設けられている構造を有する有機機能デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子構造や低分子構造を有する有機材料を用いた有機トランジスタや有機発光素子のような様々な有機機能素子や、これらを組み合わせたデバイスが開発されている。有機機能素子は、フレキシブル基板上に有機材料を塗布し、硬化させる工程を利用して形成することができる。そのため、有機機能素子は、薄型であること、軽量であること及び柔軟性を有することが求められるディスプレイや電子ペーパーへの応用が期待されている。
【0003】
有機機能素子の有機層は、通常、蒸着法、スピンコート法またはインクジェット法などにより形成されている。中でも、インクジェット法では、常温下及び常圧下で処理を行うことができるとともに、部分的な処理が可能である。そのため、大がかりな真空装置などを必要としない。従って、インクジェット法により有機層を形成する場合、連続的に処理が可能であり、大面積化への対応が容易であり、コストを低減することができる。
【0004】
このようなインクジェット法を利用した有機機能素子の形成方法の一例が、下記特許文献1や特許文献2に開示されている。インクジェット法では、ノズルから有機材料溶液の液滴を基板上の所定の領域に吐出し、硬化させる。この場合、基板面に、予め前処理を施して親水性部分及び疎水性部分を形成しておく方法、基板表面に液拡散防止のためのバンクや溝などの凹凸微細構造を形成する方法、あるいはこれらの双方を併用する方法などが用いられている。
【0005】
図6(a)及び(b)は、この種の微細凹凸構造を基板に形成する方法により得られた従来の有機機能デバイスの模式的平面図及び正面断面図である。
【0006】
有機機能デバイス101では、基板102上において、有機TFT103と、有機発光素子104とが形成されている。ここでは、基板102上に、先ずゲート電極105及び下部電極106を形成する。次に、ゲート絶縁膜107を形成する。しかる後、ソース電極108及びドレイン電極109を形成する。次に、感光性樹脂を用いて、凸部110を形成する。凸部110は、有機TFT103が形成される部分と、有機発光素子104が形成される部分を囲むように設けられる。この凸部110は、感光性樹脂を付与し、フォトリソグラフィー技術を用いて、パターニングすることにより形成されている。
【0007】
しかる後、有機TFT103が形成される領域において、有機材料をインクジェット法により吐出し、有機薄膜111を形成する。また、有機発光素子104が形成される領域では、同じくインクジェット法により有機材料を吐出し硬化させることにより有機発光層112を形成する。有機発光層112を形成した後に、上部電極113を形成する。
【0008】
上記のようにして、有機機能素子としての有機TFT103及び有機発光素子104が形成されている有機機能デバイス101が得られる。
【0009】
しかしながら、上記製造方法では、凸部110の形成にフォトリソグラフィー技術を用いているため、製造工程が煩雑になりがちであった。さらに、微細化をすすめた場合、凸部110の付着力が低下し、後工程において凸部110が剥離するおそれがあった。このような剥離が生じると、ディスプレイでは、画素の欠陥等が生じることとなる。
【0010】
なお、予め基板に所定の凸部を形成しておき、凸部が形成された基板に電極形成等を行うことにより、凸部の剥離等の問題等を解決することができると考えられる。
【0011】
例えば、下記の特許文献3には、基板上に凸部を予め設けておき、該凸部により分離されるように、ソース電極とドレイン電極とを形成し、しかる後、有機材料を付与することにより得られた有機トランジスタが開示されている。
【0012】
しかしながら、この有機トランジスタでは、上記凸部は、あくまでもソース電極とドレイン電極とを分離するためのセパレータとして設けられているものにすぎなかった。従って、特許文献3に記載の構成では、有機材料を例えばインクジェットで付与した場合、その有機材料を含む液滴の拡がりを防止することはできなかった。
【特許文献1】特開平11−24604号公報
【特許文献2】特開2005−215616号公報
【特許文献3】特開2005−64409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、従来のインクジェット法を用いた有機機能デバイス101の有機層の形成工程では、基板102上の所定の領域に有機材料を含む液滴を付着するために、親水性部分や疎水性部分を形成したり、液拡散防止のための凸部110を形成したり、これらの双方を併用しなければならなかった。そのため、製造工程が煩雑であり、大がかりな設備を利用するフォトリソグラフィー法を用いたりしなければならず、大面積化が容易であり、かつコストを低減し得るという有機層を用いた利点が大きく損なわれていた。
【0014】
また、パターンの微細化がすすむにつれ、上記凸部110と、凸部110が固着される部分の接触部分が小さくなるため、凸部110の付着力が低下しがちであった。そのため、後工程における凸部110の剥離による欠陥が生じ大きな問題となってきている。
【0015】
加えて、上記有機機能デバイス101では、有機TFT103と、有機発光素子104とが同一基板102上に形成されていたが、有機TFT103における有機薄膜111と、有機発光素子104における有機発光層112とは、通常異なる材料からなり、かつ膜厚も異なるのが普通である。従って、有機TFT103が形成される部分と、有機発光素子104が形成される部分とは、それぞれに応じて最適化する必要があるのに対し、上記製造方法では、凸部110がフォトリソグラフィーにより一様に形成されている。従って、有機TFT103や有機発光素子104に適した素子形成部分を、それぞれに最適化な形状となるように形成することが困難であった。
【0016】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、基板上に凸部で囲まれた有機機能素子構成部が設けられている有機機能デバイスであって、該有機機能素子構成部を、形成される有機機能素子に最適なように容易に形成することができ、しかも、該凸部の剥離が生じず、従って、凸部の剥離による欠陥が生じ難く、微細化及び大面積化に容易に対応することができる、しかもコストを低減することが可能とされている有機機能デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る有機機能デバイスは、一方主面上に有機機能素子構成部を囲む枠状の凸部が形成された基板と、前記枠状の凸部に囲まれた前記有機機能素子構成部内に形成された有機材料と、有機材料に電気的に接続されるように設けられた電極とを有する有機機能素子とを備え、前記有機材料が、前記枠状の凸部により凸部外の部分から分離されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る有機機能デバイスでは、一方主面上に、枠状の凸部が予め形成されている基板が用いられ、該枠状の凸部で囲まれた部分が有機機能素子構成部とされている。枠状の凸部が予め形成されているので、該凸部を後で形成する煩雑な工程を必要としない。そして、枠状の凸部で囲まれた上記有機機能素子構成部において、有機材料と電極とを有する有機機能素子が形成されており、該有機材料は、上記凸部により凸部外の部分から分離されている。従って、インクジェット法などの液滴付与方法により、有機材料を、該凸部で囲まれた有機機能素子構成部に確実に固着させることができる。
【0019】
本発明に係る有機機能素子のある特定の局面では、それぞれが上記枠状の凸部で囲まれた複数の有機機能素子構成部を有し、該複数の有機機能素子構成部が、第1の有機機能素子が構成されている少なくとも1つの第1の有機機能素子構成部と、前記第1の有機機能素子とは異なる有機機能素子である第2の有機機能素子が構成されている少なくとも1つの第2の有機機能構成部とを有する。この場合には、異なる有機機能素子に、それぞれ最適なように、各有機機能素子構成部を形成することができる。すなわち、凸部の高さや、凸部で囲まれた有機機能素子構成部の底面の高さなどを、各有機機能素子に応じた最適な形状とすることができ、1つの基板上に、複数種の有機機能素子を、それぞれ最適な形状に形成することができる。
【0020】
従って、より好ましくは、前記第1の有機機能素子構成部の形状と、前記第2の有機機能素子構成部の形状とは異なっている。
【0021】
本発明に係る有機機能素子の他の特定の局面では、複数の有機機能素子が構成されている有機機能素子構成部が設けられている。このように、本発明においては、複数の有機機能素子が構成されている有機機能素子構成部が少なくとも1つ設けられていてもよく、1つの有機機能素子構成部に、必ずしも1つの有機機能素子が配置される必要はない。
【0022】
本発明に係る有機機能デバイスにおいて構成される有機機能素子としては、特に限定されないが、例えば、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機材料を有する有機薄膜トランジスタや、下部電極、有機発光層及び上部電極を有する有機発光素子などを例示することができる。
【0023】
本発明に係る有機機能デバイスの別の特定の局面では、前記基板の一方主面上に設けられており、距離を隔てて配置された複数の走査線と、複数の走査線の延びる方向に対して交差する方向に設けられた複数の信号線とを有し、本発明に従って構成された有機薄膜トランジスタと、有機発光素子とが、前記基板の一方主面上において二次元的に配置されており、有機薄膜トランジスタが前記信号線及び走査線に接続されているので、本発明に従って、有機薄膜トランジスタや有機発光素子がそれぞれ最適なように構成されたアクティブ表示型のディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る有機機能デバイスでは、予め枠状の凸部が形成された基板の該枠状の凸部に囲まれた有機機能素子構成部に有機材料及び電極を有する有機機能素子が形成されている。従って、有機機能素子を構成する有機材料の付与や電極を形成する工程及び後の工程において、上記凸部の剥離が生じ難い。加えて、基板上に予め凸部が形成されているにすぎないため、微細化をすすめた場合であっても、製造工程が煩雑化し難く、かつ大面積化も容易である。よって、凸部を構成する材料の剥離が生じ難いため、欠陥が生じ難いだけでなく、微細化及び大面積化に容易に対応することができ、しかも安価な有機機能デバイスを提供することが可能となる。しかも、上記凸部は予め基板に形成されているので、構成される有機機能素子に応じた形状の凸部を容易にかつ安価に形成することができる。よって、有機機能素子に応じた有機機能素子構成部を確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0026】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る有機機能デバイスの模式的平面図及び模式的部分切欠正面断面図である。有機機能デバイス1は、基板2を有する。基板2の一方主面としての上面には、枠状の凸部2aが形成されている。凸部2aは、複数の有機機能素子構成部3,4を、それぞれ取り囲むように形成されている。従って、凸部2は、有機機能素子構成部3,4を囲む枠状の形状を有する。
【0027】
本実施形態では、有機機能素子構成部3の底面3aに比べて、有機機能素子構成部4の底面4aが低くされている。これは、有機機能素子構成部3に、後述するように第1の有機機能素子として有機TFTが形成され、有機機能素子構成部4に、有機TFTとは異なる第2の有機機能素子である有機発光素子が形成されるため、有機機能素子構成部3,4がそれぞれに最適な形状とされているためである。
【0028】
有機機能素子構成部3においては、底面にゲート電極5が形成されており、ゲート電極5を覆うようにゲート絶縁膜6が形成されている。そして、ゲート絶縁膜6上にソース電極7及びドレイン電極8が形成されている。ソース電極7及びドレイン電極8は、有機機能素子構成部3の内部から凸部2aの側面を経て凸部2a外に至るように延ばされている。ソース電極7及びドレイン電極8を覆うように、有機薄膜9が形成されており、それによって、有機TFT11が構成されている。
【0029】
なお、有機薄膜9を覆うように、ポリパラキシレン、SiO、SiN等からなる保護膜10が形成されている。
【0030】
有機機能素子構成部4においては、底面に下部電極12が形成されている。下部電極12は、有機TFTのドレイン電極8に電気的に接続されている。また、下部電極12上に、有機発光層13が形成されている。有機発光層13を覆うように、上部電極14が形成されている。ここで、下部電極12、有機発光層13及び上部電極14からなる有機発光素子15が形成されている。下部電極12と上部電極14とを絶縁するために絶縁膜16が形成されている。図1(b)から明らかなように、ソース電極7、及びドレイン電極8は、それぞれ、有機機能素子構成部3または有機機能素子構成部4外に延ばされている。凸部2aは、有機機能素子構成部4内に臨む傾斜された側壁2b,2cと、天面2d,2eを有する。天面2d,2eと、側面2b,2cとのなす角度が鈍角であれば、側面2b,2cと、天面2d,2eとのなす端縁における電極切れが生じ難い。同様に、有機機能素子構成部3,4の底面3a,4aと上記のように傾斜している側面2b,2cとの端縁に相当する部分における電極切れも生じ難い。従って、上記側面2b,2cは、図1(b)に示す角度A、すなわち側面2b,2cと天面2d,2eとのなす角度Aが120〜150度程度の角度を有することが望ましい。
【0031】
ところで、上記有機機能素子構成部3,4の深さ方向寸法、すなわち有機機能素子構成部3,4の底面3a,4aと、凸部2aの天面2d,2eとの間の距離は、有機TFT11では1〜2μm程度あればよく、有機発光素子15側で3〜4μm程度あればよい。そのため、本実施形態では、有機機能素子構成部3の底面3aが有機機能素子構成部4の底面4aよりも高くされている。
【0032】
本実施形態の有機機能デバイス1では、基板2において、予め上記有機機能素子構成部3,4を形成するように、凸部2a及び有機機能素子構成部3,4が形成されている。従って、上記有機TFT11や有機発光素子15を形成するための電極や有機材料の付与等の工程の前に、有機機能素子構成部3,4が、それぞれに最適な形状となるように形成されている。よって、煩雑かつ大がかりな工程を要せず、各有機機能素子構成部3,4が、それぞれの有機機能素子に最適な形状となるように形成されている。
【0033】
このような凸部2a及び有機機能素子構成部3,4を基板2に設けておく方法については特に限定されない。例えば、高分子材料からなる基板1に、ナノインプリント技術などのパターン転写法により、微細パターンを形成し、それによって、有機機能素子構成部3,4及び凸部2aを形成する方法が挙げられる。このようなナノインプリント法としては、加熱を利用した熱ナノインプリント法、光反応を利用した光ナノインプリント法、圧力を付加するナノインプリント法などを挙げることができる。
【0034】
また、射出成型法などの各種成型法などにより、予め有機機能素子構成部3,4及び凸部2aが設けられている基板2を用意してもよい。射出成型法では、金型に基板材料である合成樹脂を流し込み、加熱し、冷却することにより、上記基板2を得ることができる。
【0035】
さらに、後述の具体的な実施例のように、所望のパターンを有するモールドに高分子樹脂をコーティングし、温度を上昇させ、別の基板に該モールドをプレスし、離型することにより、パターニングされた高分子樹脂膜を上記の別の基板に転写することにより、基板2を得てもよい。
【0036】
このような様々な金型やモールドを利用した方法では、金型やモールドの作製時に、上記底面3a,4aの高さや凸部の側面2b,2cの傾斜角度等を設定することができるので、任意の形状の有機機能素子構成部3,4を容易に形成することができる。
【0037】
なお、上記光反応を利用したパターン転写法により、基板2に有機機能素子構成部3,4及び凸部2aを形成する場合には、例えば、平坦な基板上に、光反応性樹脂を塗布し、所望のパターンを有するモールドを該光反応性樹脂層に押し付けた後、例えば紫外線を照射して光反応性樹脂を硬化し、しかる後モールドを離型する方法が用いられる。また、しかる後、形成されたパターンをマスクとしてドライエッチングを行うことにより基板にパターンを転写してもよい。エッチングによりパターン転写を行う場合には、上記工程を繰り返し、それによって、所望の傾斜角度を有する側面2b,2cを形成してもよい。
【0038】
次に、図2(a)〜(d)及び図3(a),(b)を参照して、上記実施形態の有機機能デバイス1の具体的な製造方法の一例を説明する。
【0039】
先ず、図2(a)に示すように、PMMAからなる高分子樹脂製の基板2を用意する。しかる後、基板2の上面に、200℃程度の加熱下において金型21を圧接させる。金型21の下面には、前述した有機機能素子構成部3,4及び凸部2aに応じたパターン21aが形成されている。この加熱下により、パターン21a側から金型21を基板2に圧接させることにより、パターン21aが基板2の上面に転写される。転写後、金型21を基板2から分離することにより、図2(b)に示すように、凸部2a及び有機機能素子構成部3,4が形成された基板2が得られる。
【0040】
しかる後、図2(c)に示すように、基板2の上面に、メタルマスクを利用したRFスパッタリング及び蒸着法により、それぞれ、厚さ数100nmのAlからなるゲート電極5と、ITOからなる下部電極12とを形成する。
【0041】
次に、図2(d)に示すように、スパッタリング法により、厚み30nm〜150nmにSiO膜を形成した後、フォトリソグラフィー法によりパターニングすることにより、ゲート絶縁膜6及び絶縁膜16を形成する。なお、上記フォトリソグラフィーによるパターニングに際しては、下部電極12上に上記SiO膜が存在しないようにパターニングが行われる。
【0042】
次に、図3(a)に示すように、メタルマスクを用いて、Au/Cr合金をパターン蒸着し、ソース電極7及びドレイン電極8を有機機能素子構成部3において形成する。ソース電極7とドレイン電極8との間のチャネル部の距離、すなわち電極間の間隔は、数十nmとすればよい。この工程において、同時に、上記ドレイン電極8の延長部分を、有機機能素子構成部4の下部電極12に電気的に接続されるように設ける。
【0043】
しかる後、図3(b)に示すように、インクジェット法により、有機機能素子構成部3に、有機材料を吐出し、有機薄膜9を形成する。
【0044】
さらに、上記有機薄膜9の形成の後または有機薄膜9の形成の前に、有機機能素子構成部4に有機発光層13を構成する有機材料溶液をインクジェット法により付与し、有機発光層13を形成する。
【0045】
有機薄膜9及び有機発光層13は上記のようにいずれも有機材料溶液をインクジェット法により吐出することにより形成されるが、有機機能素子構成部3,4が、上記のように、凸部2aにより分離されているので、確実に有機材料溶液を有機機能素子構成部3または有機機能素子構成部4に固着させることができる。
【0046】
すなわち、有機材料の凸部2aを超えた他の有機機能素子部への移動を防止することができる。
【0047】
有機発光層13の形成に際しては、例えば導電性材料であるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)をインクジェット法により付与し、しかる後、発光層となる有機材料層をインクジェット法により形成する方法を用いることができる。その場合、発光層となる有機膜は、複数層から形成されていてもよい。
【0048】
最後に、Alからなる厚さ300nmの上部電極14と、ポリパラキシレン系樹脂からなる厚さ500〜1000nmの保護膜10を蒸着により形成する。
【0049】
なお、各電極の蒸着による形成に際しては、リフトオフ法を用いてもよい。
【0050】
上記製造方法から明らかなように、本実施形態では、有機機能素子構成部3,4及び凸部2aが形成された基板2を用意した後には、煩雑な凹凸パターンを基板上に形成するためのフォトリソグラフィー工程等を必要としない。従って、製造工程の簡略化及びコストの低減を図ることができる。
【0051】
しかも、予め基板2に各有機機能素子構成部3,4に応じた有機機能素子構成部3,4及び凸部2aを形成しておくことができる。よって有機機能素子構成部としての有機TFT11及び有機発光素子15の最適化を容易に図ることができる。また、凸部2aの後工程における剥離も生じ難いため、欠陥も生じ難い。
【0052】
上記基板2を構成する材料については、上記PMMAに限られず、ポリイミド、ポリカーボネートなどの様々な高分子樹脂を好適に用いることができる。なお、高分子樹脂を用いる場合、有機TFTや有機発光素子の形成に際しての加熱温度に耐え得る高分子樹脂を用いることが好ましい。このような高分子樹脂としては、融点や軟化点が200〜250℃以下である、上記PMMA、ポリイミド、ポリカーボネートなどを好適に用いることができる。
【0053】
また、基板2は、樹脂以外の材料、例えばガラスやセラミックスなどの適宜の絶縁性材料により構成されていてもよい。
【0054】
加えて、金属薄膜からなる基板を基板2として用いてもよく、その場合には、金属薄膜からなる基板の表面全体に絶縁層を形成しておけばよい。この絶縁層としては、ポリイミドなどの絶縁性樹脂や、SiOなどの絶縁性酸化物膜などが挙げられ、絶縁層の厚みは特に限定されないが、150〜5000nmの厚み程度とすればよい。
【0055】
なお、基板2が不透明材料からなる場合には、有機発光素子15の上方から光を取り出すように構成してもよい。その場合には、上部電極14を透明電極で構成すればよい。
【0056】
また、有機TFT11における電極材料としては、Alに限定されず、Taなどの他の金属もしくは合金を用いることができる。
【0057】
さらに、蒸着やスパッタリング等の他、印刷法により形成された導電膜によりゲート電極5などの電極を形成してもよい。
【0058】
ゲート絶縁膜6については、ゲート電極5を構成する電極材料の一部を酸化し、それによってゲート絶縁膜としてもよい。
【0059】
上記実施形態では、下部電極12が透明電極により構成されているが、この透明電極を構成する材料としては、ITOの他、IZOなどを用いてもよい。
【0060】
図4(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る有機機能デバイスの模式的平面図及び(a)のB−B線に沿う部分切欠断面図である。
【0061】
第2の実施形態の有機機能デバイス31は、基板32を有する。ここでは、基板32上において、予め枠状の凸部32a,32bが形成されており、それによって、有機機能素子構成部33,34が形成されている。本実施形態では、有機機能素子構成部33と有機機能素子構成部34が2行×2列のマトリックス状に、すなわち二次元的に配置されている。そして、行方向に延びる複数本の走査線35a,35bが形成されており、列方向に延びるように、複数本の信号線36a,36bが形成されている。また、信号線36a、36bと平行に延びる方向に、電源線37a,37bが形成されている。
【0062】
有機機能素子構成部33,34は、第1の実施形態の有機機能素子構成部3,4と同様に、枠状の凸部に囲まれて形成されている。
【0063】
本実施形態では、有機機能素子構成部33において、選択トランジスタ38と、駆動トランジスタ39とが形成されている。選択トランジスタ38は、ゲートで38a、ゲート絶縁38b、ソース電極38c、ドレイン電極38d及び有機薄膜38eを有する。駆動トランジスタ39も、同様の電極構造を有する。ここでは、選択トランジスタ38と駆動トランジスタ39は、いずれも有機薄膜トランジスタからなる。
【0064】
なお、有機薄膜38eは、選択トランジスタ38と駆動トランジスタ39で共通化される必要は必ずしもないが、本実施形態では同じ有機薄膜を用いるため、有機機能素子構成部33内に、インクジェット法により、同じ有機材料溶液を吐出するだけで、有機薄膜38eを形成することができる。なお、40は保護膜を示す。
【0065】
上記のように、1つの有機機能素子構成部33に、複数種の有機機能素子が構成されていてもよい。また、1つの有機機能素子構成部33内に、同種の複数の有機機能素子が構成されていてもよい。
【0066】
他方、有機機能素子構成部34は、第1の実施形態で示した有機発光素子が構成されている有機機能素子構成部4と同様に構成されている。そして、有機機能素子構成部34には、第1の実施形態の有機機能素子4と同様にして有機発光素子が構成されている。
【0067】
上記電源線37a,37bは、上記有機機能素子構成部34に設けられた有機発光素子に接続されており、有機発光素子に電力を与え、有機発光素子を発光するために設けられている。いま、電源線37a,37bには、駆動用電源電圧30Vが印加される。走査線35a,35bにオン状態とするための走査信号として、例えば10Vの電圧信号が印加されると、該走査線36bに接続されている選択トランジスタ38がオン状態となり、信号線36aから例えば10Vの信号電圧が駆動トランジスタ39のゲート電極に印加される。そのため駆動トランジスタ39が動作し、電源線37aから電流が供給され、有機発光素子が動作し、発光する。
【0068】
走査線35aにオフ条件の電圧信号として例えば30Vの電圧が印加されると、該走査線35aに接続されている選択トランジスタ38は動作しなくなり、信号線36aの信号電圧は影響を受けない。従って、走査線35a,35bと、信号線36a,36bとの組み合わせにより、任意の位置の有機発光素子の発光を制御することができる。
【0069】
なお、走査線35a,35bと、走査線35a,35bと交差している信号線36a,36b及び電源線37a,37b間には、絶縁膜が介在された状態で立体交差して絶縁が図られている。
【0070】
図5(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係る有機機能デバイスを示す平面図及び(a)中のC−C線に沿う断面図である。
【0071】
第3の実施形態の有機機能デバイス41では、基板42上に、複数の有機機能素子構成部43,44が設けられている。各有機機能素子構成部43,44は、枠状の凸部42aを形成することにより設けられている。
【0072】
本実施形態では、有機機能素子構成部43に、有機薄膜トランジスタ45が、有機機能素子構成部44に、有機薄膜トランジスタ46が形成されている。有機薄膜トランジスタ45,46は、それぞれ、ゲート電極45a,46a、ゲート絶縁膜45b,46b、ソース電極45c,46c、ドレイン電極45d,46d、及び有機薄膜45e,46eを有する電界効果型の有機薄膜トランジスタである。ここでは、一方の有機薄膜トランジスタ45がp型の有機薄膜半導体材料を用いて構成されており、有機薄膜トランジスタ46がn型の有機薄膜半導体材料を用いて構成されている。このように、複数の有機機能素子構成部43,44において、極性が異なる有機薄膜トランジスタをそれぞれを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る有機機能デバイスの平面図及び要部を示す部分切欠正面断面図。
【図2】(a)〜(d)は、第1の実施形態の有機機能デバイスの製造方法の各工程を説明するための部分切欠正面断面図。
【図3】(a),(b)は、第1の実施形態の有機機能デバイスの製造方法の各工程を説明するための部分切欠正面断面図。
【図4】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態に係る有機機能デバイスの模式的平面図及び(a)中のB−B線に沿う断面図。
【図5】(a)及び(b)は、本発明の第3の実施形態に係る有機機能デバイスの模式的平面図及び(a)中のC−C線に沿う断面図。
【図6】(a)及び(b)は、それぞれ、従来の有機機能デバイスの一例を説明するための模式的平面図及び要部を示す模式的正面断面図。
【符号の説明】
【0074】
1…有機機能デバイス
2…基板
2a…凸部
2b,2c…側面
2d,2e…天面
3…有機機能素子構成部
4…有機機能素子構成部
5…ゲート電極
6…ゲート絶縁膜
7…ソース電極
8…ドレイン電極
9…有機薄膜
10…保護膜
11…有機TFT
12…下部電極
13…有機発光層
14…上部電極
15…有機発光素子
16…接続電極
21…金型
21a…パターン
31…有機機能デバイス
32…基板
33…有機機能素子構成部
34…有機機能素子構成部
35a,35b…走査線
36a,36b…信号線
37a,37b…電源線
38…選択トランジスタ
38a…ゲート電極
38b…ゲート絶縁膜
38c…ソース電極
38d…ドレイン電極
38e…有機薄膜
40…保護膜
41…有機機能デバイス
42…基板
42a…凸部
43…有機機能素子構成部
44…有機機能素子構成部
45…有機薄膜トランジスタ
45a…ゲート電極
45b…ゲート絶縁膜
45c…ソース電極
45d…ドレイン電極
45e…有機薄膜
46…有機薄膜トランジスタ
46a…ゲート電極
46b…ゲート絶縁膜
46c…ソース電極
46d…ドレイン電極
46e…有機薄膜
47…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方主面上に有機機能素子構成部を囲む枠状の凸部が形成された基板と、
前記枠状の凸部に囲まれた前記有機機能素子構成部内に配置された有機材料と、前記有機材料に電気的に接続されるように設けられた電極とを有する有機機能素子とを備え、前記有機材料が、前記枠状の凸部により凸部外の部分から分離されていることを特徴とする、有機機能デバイス。
【請求項2】
それぞれが前記枠状の凸部で囲まれた複数の有機機能素子構成部を有し、該複数の有機機能素子構成部が、第1の有機機能素子が構成されている少なくとも1つの第1の有機機能素子構成部と、前記第1の有機機能素子とは異なる有機機能素子である第2の有機機能素子が構成されている少なくとも1つの第2の有機機能構成部とを有する、請求項1に記載の有機機能デバイス。
【請求項3】
前記第1の有機機能素子構成部の形状と、前記第2の有機機能素子構成部の形状とが異なっている、請求項2に記載の有機機能デバイス。
【請求項4】
複数の有機機能素子が構成されている有機機能素子構成部を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機機能デバイス。
【請求項5】
少なくとも1つの有機機能素子が、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極及び有機薄膜を有する有機薄膜トランジスタである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機機能デバイス。
【請求項6】
少なくとも1つの前記有機機能素子が、有機材料からなる発光層と、該発光層に電気的に接続されている第1,第2の電極とを有する有機発光素子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機機能デバイス。
【請求項7】
前記基板の一方主面上に設けられており、距離を隔てて配置された複数の走査線と、複数の走査線の延びる方向に対して交差する方向に設けられた複数の信号線をさらに備え、請求項5に記載の有機機能素子と、請求項6に記載の有機機能素子とが、前記基板の一方主面上において二次元的に配置されており、かつ請求項5に記載の有機機能素子が前記信号線及び走査線に接続されていることを特徴とする有機機能デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−234652(P2007−234652A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50847(P2006−50847)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】