説明

有機薄膜トランジスタおよび有機薄膜トランジスタの製造方法

【課題】本発明の目的は、高移動度、熱安定性に優れた有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【解決手段】支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
一般式(1) A−(Y)n
(式中、Aは、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を表し、
Yは、−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、でそれぞれ表される連結基のうち少なくとも1つを部分構造として有する置換基を表す。nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のYは、同じでも異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタ及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来のTFT素子のデメリットを補う技術として、有機半導体材料を用いた有機TFT素子の研究開発が盛んに進められている。
【0003】
有機TFT素子は低温プロセスで製造可能であるため、軽く、割れにくい樹脂基板を用いることができ、更に、樹脂フィルムを支持体として用いたフレキシブルなディスプレイが実現できると言われている。
【0004】
有機半導体による種々の有機薄膜トランジスタが提案されており、大気圧下で印刷や塗布等のウェットプロセスで製造できる有機半導体材料を用いることで、生産性に優れ、非常に低コストのTFT素子が作製でき、これを用いて低コストのディスプレイが実現できる。また、印刷やインクジェット法により簡便な方法で作製できることが一般的に知られている。
【0005】
こうしたTFT素子を実現するために、これまで有機半導体材料の探索、特にキャリア移動度が高く、配向性のよい有機半導体薄膜を形成する有機材料、また、有機材料の配向を向上させた有機半導体薄膜の形成方法などが、高いキャリア移動度、on/off性能のよい有機薄膜トランジスタを開発する目的で検討されている。蒸着膜においては、ペンタセン誘導体等のπ共役環をもつ化合物の、有機薄膜として高いキャリア移動度を有するもつことが知られている。
【0006】
これらの中、ジアルキルベンゾチエノベンゾチオフェンは高移動度が得られることで知られている(特許文献1)。しかしながらジアルキルベンゾチエノベンゾチオフェンは、低融点であるが故に熱安定性に乏しいことが最大の難点となっている。本発明においては、ジアルキルベンゾチエノベンゾチオフェンのモノケトン体、ジケトン体等が高融点化することを利用して、高移動度、かつ、熱安定性にも優れた有機薄膜トランジスタを提供するものである。
【特許文献1】国際公開第2006/077888号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、高移動度、熱安定性に優れた有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
【0009】
1.支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0010】
一般式(1)
A−(Y)n
(式中、Aは、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を表し、
Yは、−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、でそれぞれ表される連結基のうち少なくとも1つを部分構造として有する置換基を表す。nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のYは、同じでも異なっていてもよい。)
2.前記一般式(1)が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする前記1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0011】
一般式(2)
A−(L−R)n
(式中、Aは、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を表し、Lは、前記連結基のうち少なくとも1つを表し、Rはアルキル基を表す。nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のL−Rは、同じでも異なっていてもよい。)
3.前記1に記載の一般式(1)、または前記2に記載の一般式(2)において、nが1または2であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0012】
4.前記1に記載の一般式(1)、または前記2に記載の一般式(2)において、Aが、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0013】
5.前記1に記載の一般式(1)、または前記2に記載の一般式(2)において、Aが、下記一般式(3)で表されることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、XはO、S、Se、Teを表す。)
6.前記1に記載の一般式(1)、または前記2に記載の一般式(2)において、Aが、下記一般式(4)または(5)で表されることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、XはO、S、Se、Teを表す。)
7.前記一般式(1)または(2)で表される化合物の融点が120℃以上であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0018】
8.前記融点が、150℃以上であることを特徴とする前記7に記載の有機薄膜トランジスタ。
【0019】
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高移動度で熱安定性に優れた有機薄膜トランジスタが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0022】
本発明は、支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層が、前記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0023】
先ず、有機半導体層を構成する前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0024】
一般式(1)中、Aは、π共役環をもつ化合物であり、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を表し、Yは、
−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、
で表される連結基のうち少なくとも1つを部分構造として有する置換基を表す。また、nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のYは、同じでも異なっていてもよい。
【0025】
置換基としては、前記の構造単位を部分構造としてその構造中に含んでいればその種類は問はない。例えば、アシル基、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アルキルアミド、アリールアミド等、また、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルファモイル、アリールスルファモイル、アルキルスルホンアミド、アリールスルホンアミド等の基である。また、アシル置換アルキル、アシル置換アリール、カルバモイル置換アルキル、アミド置換アルキル等、直接これらの連結基がAで表される芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環等に連結していなくともよい。
【0026】
また、Aには、Yで表される置換基以外に置換可能な基が更に置換してもよい。
【0027】
これらの−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、等で表される基を部分構造として有する基を置換することで、Aで表される芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を有する化合物の融点が上がるという効果がもたらされる。
【0028】
これにより、例えば、ジアルキルベンゾチエノベンゾチオフェン等の芳香族縮合環からなる薄膜は、高移動度が得られることが知られているが、低融点であるが故の熱安定性不足が欠点となっており、この安定性不足が解消されるものである。前記のような水素結合等の分子間の相互作用を起こしやすい連結基の導入は、分子間の凝集(或いは結晶化)エネルギーを高めるので、融解には高い温度が必要となり、前記の結晶の例えば、Aで表される芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環に、前記のような連結基を有する置換基を導入した、例えば、モノケトン体、ジケトン体化合物については、これが高融点化することで、高移動度、かつ、熱安定性にも優れた有機薄膜トランジスタを提供するものである。
【0029】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、好ましくは前記一般式(2)で表される。
【0030】
一般式(2)中、Aは、一般式(1)と同義であり、Lは、前記連結基、即ち、−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、で表される連結基のうち少なくとも1つを表し、Rはアルキル基を表す。nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のL−Rは、同じでも、異なっていてもよい。またAは、−L−R以外に置換可能な基を更に有してもよい。
【0031】
ここにおいて、Rで表されるアルキル基としては炭素原子数は1〜22のアルキル基であり、直鎖或いは分岐でもよい。
【0032】
また、前記一般式(1)または(2)において、好ましくは、nが1または2であり、また、Aは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環であることが高移動度で安定性の高い有機薄膜トランジスタを得るためには好ましい。
【0033】
また、更に好ましくは、Aは、前記一般式(3)、一般式(4)、または一般式(5)で表される縮合環構造を有するものである。
【0034】
ここにおいて、XはO、S、Se、Te等の原子を表す。XとしてはO、Sが好ましく、更にSが最も好ましい。
【0035】
これらの縮合環においても、前記の−Y、また−L−Rで表される置換基以外に更に置換可能な基が置換してもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基等の置換基が挙げられる。
【0036】
以下に一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物の具体的代表例をあげる。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
上記の化合物は、Liquid Crystals,2003,Vol.30 No.5,603−610に記載された方法に準じた方法を用いて合成することができる。
【0041】
これらの−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、で表される連結基を有する本発明の化合物は、これが置換されていない母体化合物に比べて高融点化するが、本発明の化合物においては、融点が120℃以上であることが好ましく、更に好ましいのは、前記融点が、150℃以上である。
【0042】
融点が120℃以上であれば、材料自体が安定であり、また、THTシート駆動時の素子の加熱や基板の温度上昇等を考慮しても安定な駆動特性が期待できる。
【0043】
例えば、前記高融点化置換基を有する縮合環化合物、例えば、ベンゾチエノベンゾチオフェンのモノケトン体、ジケトン体等を含有する薄膜を有機半導体層とした薄膜トランジスタにより熱安定性が高い、安定な駆動特性を得ることができる。
【0044】
これらのπ共役系をもつ芳香族環状化合物を含有する薄膜(有機半導体層)を形成する方法としては、公知の方法で形成することができ、例えば、真空蒸着、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD、レーザー蒸着、電子ビーム蒸着、電着、スピンコート、ディップコート、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、及びLB法等、またスクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレード塗布等の方法を挙げることができる。
【0045】
この中で生産性の点で、有機半導体層を塗布により形成することが好ましい。塗布法としては、有機半導体の溶液を用いて簡単、且つ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット印刷等が好まれる。
【0046】
(塗布に用いられる有機溶媒)
有機半導体液滴を作製する際に使用される有機溶媒は、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素または脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素または脂肪族炭化水素がより好ましい。
【0047】
芳香族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルナフタレン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
芳香族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジヨードベンゼン、クロロトルエン、ブロモトルエン、ヨードトルエン、ジクロロトルエン、ジブロモトルエン、ジフルオロトルエン、クロロキシレン、ブロモキシレン、ヨードキシレン、クロロエチルベンゼン、ブロモエチルベンゼン、ヨードエチルベンゼン、ジクロロエチルベンゼン、ジブロモエチルベンゼン、クロロシクロペンタジエン、クロロシクロペンタジエン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
脂肪族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルヘキサン、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン、3,3,5−トリメチルヘプタン、2,3−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン、2−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、p−メンタン、デカリン、シクロヘキシルベンゼン等の環状脂肪族炭化水素等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。本発明に用いられる脂肪族炭化水素としては環状脂肪族炭化水素が好ましい。
【0050】
脂肪族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジフルオロエタン、フルオロクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
本発明で用いられるこれらの有機溶媒は、1種類あるいは2種類以上混合して用いてもよい。また、有機溶媒は50℃〜250℃の沸点を有するものが好ましい。
【0052】
(有機半導体層の膜厚)
これら有機半導体層の膜厚としては特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は有機半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0053】
本発明の化合物を含有する薄膜を有機半導体層とする有機薄膜トランジスタ(TFT)について説明する。
【0054】
(素子構成)
図1に、本発明に係わるπ共役環をもつ芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環構造を有する化合物を含有する有機半導体薄膜を用いた、薄膜トランジスタ素子の代表的な素子構成を断面図にて図1(a)〜(f)に示す。
【0055】
図1において、有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極が、これをチャネルとして連結するよう構成されることが好ましい。
【0056】
同図(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2、ドレイン電極3を形成し、これを基材(基板)として、本発明の化合物を含有する薄膜からなる有機半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して電界効果薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、有機半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極及び支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体6上に先ず有機半導体層1を形成し、その後ソース電極2、ドレイン電極3、絶縁層5、ゲート電極4を形成したものを表す。
【0057】
同図(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2及びドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の化合物を含有する薄膜により形成された有機半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0058】
図2は、本発明の有機薄膜トランジスタ素子が複数配置される薄膜トランジスタシート20の1例の概略の等価回路図である。
【0059】
薄膜トランジスタシート20はマトリクス配置された多数の薄膜トランジスタ素子24を有する。21は各薄膜トランジスタ素子24のゲート電極のゲートバスラインであり、22は各薄膜トランジスタ素子24のソース電極のソースバスラインである。各薄膜トランジスタ素子24のドレイン電極には、出力素子26が接続され、この出力素子26は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子26として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。25は蓄積コンデンサ、27は垂直駆動回路、28は水平駆動回路である。
【0060】
本発明の有機薄膜トランジスタは、この様な、支持体上にTFT素子を2次元的に配列した薄膜トランジスタシートの作製に用いることができる。
【0061】
(電極)
本発明において、TFT素子を構成するソース電極、ドレイン電極、ゲート電極等の電極に用いられる導電性材料としては、電極として実用可能なレベルでの導電性があればよく、特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
【0062】
また、導電性材料としては、導電性ポリマーや金属微粒子などを好適に用いることができる。金属微粒子を含有する分散物としては、たとえば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を含有する分散物である。金属微粒子から電極を形成するには、前述の方法を同様に用いることができ、金属微粒子の材料としては上記の金属を用いることができる。
【0063】
(電極等の形成方法)
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0064】
ソース、ドレイン、或いはゲート電極等の電極、またゲート、或いはソースバスライン等を、エッチング又はリフトオフ等感光性樹脂等を用いた金属薄膜のパターニングなしに形成する方法として、無電解メッキ法による方法が知られている。
【0065】
無電解メッキ法による電極の形成方法に関しては、特開2004−158805号にも記載されたように、電極を設ける部分に、メッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせるメッキ触媒を含有する液体を、例えば印刷法(インクジェット印刷含む。)によって、パターニングした後に、メッキ剤を、電極を設ける部分に接触させる。そうすると、前記触媒とメッキ剤との接触により前記部分に無電解メッキが施されて、電極パターンが形成されるというものである。
【0066】
無電解メッキの触媒と、メッキ剤の適用を逆にしてもよく、またパターン形成をどちらで行ってもよいが、メッキ触媒パターンを形成し、これにメッキ剤を適用する方法が好ましい。
【0067】
印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、平版、凸版、凹版又インクジェット法による印刷などが用いられる。
【0068】
(ゲート絶縁膜)
本発明の薄膜トランジスタのゲート絶縁膜としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0069】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0070】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0071】
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマ法である。
【0072】
ゲート絶縁膜(層)が陽極酸化膜又は該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
【0073】
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウム又はタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0074】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂等を用いることもできる。
【0075】
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0076】
(基板)
基板を構成する支持体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、紙、不織布などを用いることができるが、本発明において支持体は樹脂からなることが好ましく、例えばプラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0077】
また本発明の薄膜トランジスタ素子上には素子保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物又は無機窒化物等が挙げられ、上述した大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
実施例1
《有機薄膜トランジスタ素子1〜8の作製》
図1(f)に記載の層構成を有する有機薄膜トランジスタ素子(以下、TFT素子と呼ぶ)1を作製した。
【0080】
まず、ゲート電極4としての比抵抗0.02Ω/cmのSiウエハーに厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層5とした。以下、これを基板と呼ぶ。
【0081】
基板上に、本発明化合物(9)の0.1質量%のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(厚さ20nm)を形成した。更にこの膜の表面にマスクを用いて金を蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成した。ソース及びドレイン電極は幅100μm、厚さ100nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmのトップコンタクト型TFT素子1を作製した。
【0082】
本発明化合物(9)を、表1に示す本発明の他の例示化合物に、また比較化合物に代えたほかは、TFT素子1と同様の方法で、それぞれTFT素子2〜8を作製した。
【0083】
作製したTFT素子は、それぞれ強制劣化条件において、即ち、ホットプレート上で120℃で10分間熱処理したのち、トランジスタ特性の評価を行った。
【0084】
尚、本発明の例示化合物(9)、(19)、(20)、(21)をそれぞれ用い、また、これらの化合物において、置換基であるアシル基のカルボニルをメチレン基に還元してそれぞれアルキル置換とした化合物(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)をそれぞれ比較化合物とした。また各化合物の融点は表1に同時に示した。
【0085】
【化6】

【0086】
《TFT素子の評価》
TFT素子について、半導体パラメーターアナライザー(Agilent社製4155)を用い、ドレインバイアス−40V、ゲート電圧を−50Vから+30Vまで掃引した時の電圧−電流曲線から、I−V特性の飽和領域においてキャリア移動度を求め、更にon/off比を、ゲートバイアス−50V及び0Vとしたときのドレイン電流値の比率から求め、結果を表1に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
作製したTFT素子1〜4については、pチャネルのエンハンスメント型FETの動作特性を示したが、TFT素子5〜8においては、有機薄膜は形成でき、金蒸着によりソース及びドレイン電極を形成したものの、熱処理により有機薄膜の膜破壊が起こり、トランジスタ駆動を確認できなかった。TFT素子1〜4については、0.01〜0.05(cm2/Vs)の範囲の移動度が得られ、また、各素子においてon/off比は5桁であった。
【0089】
このように、所定の置換基を有する本発明の化合物を有機半導体層に用いた有機薄膜トランジスタは、移動度が高く、on/off比も高く、トランジスタ特性に優れると共に熱安定性が高く駆動温度が高い場合でも安定な動作を示すことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】薄膜トランジスタの構成例を幾つかを示す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタシートの一例の概略の等価回路図である。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
20 薄膜トランジスタシート
21 ゲートバスライン
22 ソースバスライン
24 薄膜トランジスタ素子
25 蓄積コンデンサ
26 出力素子
27 垂直駆動回路
28 水平駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、前記有機半導体層が、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
一般式(1)
A−(Y)n
(式中、Aは、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を表し、
Yは、−CO−,−CONH−,−SO2−,−SO2NH−、でそれぞれ表される連結基のうち少なくとも1つを部分構造として有する置換基を表す。nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のYは、同じでも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)が、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
一般式(2)
A−(L−R)n
(式中、Aは、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環、または芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環を表し、Lは、前記連結基のうち少なくとも1つを表し、Rはアルキル基を表す。nは、1〜8の整数を表す。但し、複数のL−Rは、同じでも異なっていてもよい。)
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(1)、または請求項2に記載の一般式(2)において、nが1または2であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式(1)、または請求項2に記載の一般式(2)において、Aが、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が少なくとも3環以上縮合した縮合環であることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
請求項1に記載の一般式(1)、または請求項2に記載の一般式(2)において、Aが、下記一般式(3)で表されることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【化1】

(式中、XはO、S、Se、Teを表す。)
【請求項6】
請求項1に記載の一般式(1)、または請求項2に記載の一般式(2)において、Aが、下記一般式(4)または(5)で表されることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【化2】

(式中、XはO、S、Se、Teを表す。)
【請求項7】
前記一般式(1)または(2)で表される化合物の融点が120℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記融点が、150℃以上であることを特徴とする請求項7に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−54830(P2009−54830A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220804(P2007−220804)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】