説明

有機薄膜及びその製造方法

【課題】有機半導体分野への応用展開が可能な有機薄膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるジベンゾビフェニレン類及び/又は2,3,7,8−テトラキス(トリメチルシリル)ターフェニレンなどのターフェニレン類の縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜を用いる。これらの化合物は好適な薄膜結晶性を有し、耐酸化性に優れ、塗布法で容易に薄膜作製できる。


(ここで、置換基R〜R12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体分野への応用展開が可能な有機薄膜及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。さらに有機薄膜はデバイス中のキャリアー移動を担う有機半導体活性相において必須の形態である。
【0003】
有機薄膜を作製する方法としては一般的に、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、及び有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法が知られている。塗布は印刷技術を用いても実施することができ、印刷によりデバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることができることから、塗布法は経済的に好ましいプロセスである。
【0004】
一方材料面では、ペンタセン等の結晶性材料はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた半導体デバイス特性を発現することが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、ペンタセンはその強い凝集性のため溶解性が低く、一般的には経済的な塗布法には適用することができない。また、ポリ−(3−ヘキシルチオフェン)等の自己組織化材料は溶媒に可溶であり、塗布によるデバイス作製が報告されているが、移動度が結晶性化合物より1桁低いことから(非特許文献2参照)デバイス特性が低下することは避けられない。ペンタセン等のポリアセンを溶解させ塗布法でデバイスを製造する試みも報告されているが(特許文献1参照)、元来難溶性のポリアセン類を溶解させることは容易ではなく、高温加熱条件等の特殊な条件が必要とされ、プロセス的に必ずしも有利になるとは限らない。さらにペンタセンの溶液は極めて容易に空気酸化される問題を有している。
【0005】
また、ジベンゾビフェニレン及びターフェニレンは剛直な分子長軸を有する分子であることから有機半導体材料として有望な化合物であるが、これまで有機半導体として利用された例は知られていない。ジベンゾビフェニレンはベンゼンから再結晶化することで淡黄色の板状晶となることが(非特許文献3参照)、ターフェニレンは熱トルエンから再結晶化することで赤−オレンジ色の板状晶となること(非特許文献4参照)が知られている。しかし、これらの結晶は有機薄膜製造に適した結晶形態であるかは不明であった。
【0006】
【特許文献1】WO03/016599 A1
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライドフィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「サイエンス」、(米国)、1998年、280巻、1741−1744頁
【非特許文献3】「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー」、(英国)、1959年、1670−1676頁
【非特許文献4】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー」、(米国)、1985年、107巻、5670−5687頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記の従来技術が有する問題点に鑑み、その目的は優れた半導体デバイス特性が期待できる結晶性有機化合物を用い、好適な薄膜結晶性を有し、耐酸化性に優れ、塗布法で容易に薄膜作製できる有機薄膜及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、ジベンゾビフェニレン及び/又はターフェニレン構造を有する縮合環化合物が有機半導体デバイスに適用可能な新規な有機薄膜になることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の有機薄膜は下記一般式(1)で表されるジベンゾビフェニレン類及び/又は一般式(2)で示されるターフェニレン類の縮合環化合物を構成成分とすることを特徴とする有機薄膜である。
【0011】
【化1】

【0012】
(ここで、置換基R〜R12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示す。)
【0013】
【化2】

【0014】
(ここで、置換基R13〜R22は水素原子、エチニル基、又は炭素数1〜20のトリアルキルシリル基を示す。)
一般式(1)のR〜R12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示し、一般式(2)のR13〜R22は水素原子、エチニル基、又は炭素数1〜20のトリアルキルシリル基を示す。一般式(1)のR〜R12の炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては特に限定されないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等を挙げることができ、また、ハロゲン化アルキル基の具体例としては特に限定されないが、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロヘキシル基等を挙げることができる。一般式(1)の置換基R〜R12の炭素数6〜20のアリール基の具体例としては特に限定されないが、例えばフェニル基、p−トリル基、p−ヘキシルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等を挙げることができる。
一般式(2)のR13〜R22の炭素数1〜20のトリアルキルシリル基の具体例としては特に限定されないが、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリヘキシルシリル基等を挙げることができる。
置換基R〜R12及びR13〜R22の好ましい例は水素原子である。
さらに、本発明の有機薄膜は下記一般式(3)で表されるナフトビフェニレン及び/又は一般式(4)で示されるターフェニレン類の縮合環化合物を構成成分とすることを特徴とする有機薄膜である。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
(ここで、置換基R23〜R34は水素原子、エチニル基、又は炭素数1〜20のトリアルキルシリル基を示す。m及びnは各々0又は1の整数である。但し、mが0の時はnは1であり、mが1の時はnは0である。さらにR23〜R34の少なくとも一つがエチニル基である時、mは0である。)
一般式(4)のR23〜R34の炭素数1〜20のトリアルキルシリル基の具体例としては特に限定されないが、例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリヘキシルシリル基等を挙げることができる。
一般式(4)のmは好ましくは1であり、nは好ましくは0である。
置換基R23〜R34の好ましい例は水素原子である。
【0018】
本発明に係る一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物の具体的な例としては特に限定されないが、例えば以下の化合物を挙げることができる。
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物は溶剤への溶解性、耐酸化性、薄膜結晶形成性に優れるため、該化合物を構成成分とする有機薄膜は耐酸化性に優れた有機薄膜であり、係る有機薄膜は、塗布法等により容易に製造することができる。
【0023】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜の膜厚は、製造条件により任意に変えることができる。具体的には10μm以下の膜圧であれば問題なく作製することができ、有機半導体デバイスでの良好な特性を得るために好ましい5nm〜500nmの範囲に制御することもできる。
【0024】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜を製造する場合、より均質で良好な薄膜を形成させる観点から原料に用いる一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の純度は99.5重量%以上であることが望ましい。
【0025】
本発明の有機薄膜の製造方法についてさらに詳しく述べる。
【0026】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜を製造する方法としては特に制約を受けるものはなく、例えば再結晶法、塗布法、及び真空蒸着法を用いることができる。しかし、操作の簡便性から再結晶法若しくは塗布法を用いることが好ましい。さらに大面積の有機薄膜を作製する観点からでは塗布法をより好ましく用いることができる。有機薄膜の具体的な製造について以下に述べる。
【0027】
本発明の再結晶法による一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜は、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を適当な溶媒に溶解させ、該溶液を冷却することで形成させることができる。溶媒としては特に限定されないが、例えばクロロホルム、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジクロロベンゼン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等のヘテロ原子を含んだ溶媒を好ましく用いることができる。この理由としてこれらの溶媒は一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の溶解性を向上させることができ、さらに良好な有機薄膜が形成されやすいことを挙げることができる。該有機薄膜を製造する時の雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス、及び空気であるが、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の濃度としては特に限定されないが、例えば0.01〜5重量%である。温度は−50〜200℃の間で好適に実施することができる。またこのようにして製造した結晶状の有機薄膜を適当な基板の上に張り合わせる、即ちラミネーション等により基板上に製造することもできる。
【0028】
本発明の塗布法による一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜の製造は、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を適当な溶媒に溶解させ、該溶液を基板上に塗布した後、加熱、気流、及び自然乾燥等の方法により溶媒を気化させることで実施することができる。溶媒としては特に限定はなく、例えばクロロホルム、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等を用いることができ、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の濃度としては特に限定されないが、例えば0.01〜5重量%であることが好ましい。温度は特に限定されないが、例えば0℃から200℃の間で好適に実施することができる。塗布の具体的方法としては特に限定されないがスピンコート、キャストコート、及びディップコート等の一般的に用いることができる方法を挙げることができる。さらにスクリーン印刷、インクジェット印刷等の印刷技術を用いても作製することは可能である。使用する基板の材料としては特に限定されるものではなく結晶性、非結晶性の種々の材料を用いることができる。また、絶縁性あるいは誘電性を有する材料であっても良い。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール等のプラスチック基板、ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル等の無機材料基板、金、銅、クロム、チタン等の金属基板を好適に用いることができる。またこれらの基板の表面は例えばオクタデシルトリクロロシラン等のシラン類で修飾処理したものであっても使用することができる。塗布した後の溶媒の乾燥は、常圧若しくは減圧で除去することができる。その際加熱できることは言うまでもないが、溶媒の気化速度を調節することで結晶成長を制御することができる。
【0029】
一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物を含む溶液は、用いられる一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物自体が適度の凝集性を有することから比較的に低温で溶剤へ溶解でき、且つ耐酸化性があることから、塗布法による有機薄膜の製造に好適に適用できる。即ち、雰囲気から厳密に空気を除く必要がないことから塗布工程を簡略化することができる。塗布は空気中でも実施できるが、好ましくは溶剤の乾燥を考慮して窒素気流下で行う。なお、好適な塗布性を得るために、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物の溶液の粘度は、0.1〜20ポアズの範囲にあることが好ましい。
【0030】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜を再結晶法及び塗布法により作製する場合、大気下又は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物が酸化されやすい場合は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0031】
さらに本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜を作製する方法として真空蒸着法を挙げることができる。チャンバー内に本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を入れた容器及び有機薄膜を形成させる基板を用意し、真空状態とした後、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を入れた容器を加熱することで該化合物を気化させ、基板上に移動させる。真空蒸着の減圧度としては特に限定されないが、例えば1×10−5〜100パスカルであり、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を気化させる温度としては減圧度により左右され、一概に決めることはできないが、通常80〜350℃で好適に行うことができる。
一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の耐酸化性の評価は、該化合物の溶液を所定時間、空気と接触させる方法で実施することができる。まず用いる溶剤は予め脱気しておき、溶存酸素を除去する。空気との接触時間は、0.5〜10分間が適当である。用いる溶剤は薄膜を製造する時に用いたものを使用することができる。酸化の進行は、溶液の色の変化並びにガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析による酸化物の検出により行うことができる。
【0032】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物は既存の合成プロセスを用いて合成することができる。一般式(1)で表されるジベンゾビフェニレン類は、例えば、ジャーナルオブケミカルソサイティー、パーキントランザクション1、2001年、159−165頁に記載されている方法で合成することができる。又一般式(2)で示されるターフェニレン類は、例えば、ジャーナルオブアメリカンケミカルソサイティー、1985年、107巻、5670−5687頁に記載されている方法で合成することができる。なお、これらの文献以外の方法で合成されたものであっても何ら差し支えなく使用することができる。
さらに、一般式(3)のナフトビフェニレンは、例えば、ジャーナル オブ ケミカル ソサイティー、パーキン トランザクション1、1986年、967−971頁に記載されている方法で合成することができるし、一般式(4)で表されるターフェニレン類は、例えば、ジャーナル オブ ケミカル ソサイティー、パーキン トランザクション1、1988年、961−969頁に記載されている方法で合成することができる。
【0033】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜は、電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイ及びICタグ用のトランジスタ用途に利用することができる。
【0034】
さらに本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つ縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜は、有機EL等ディスプレイ材料、有機半導体レーザー材料、有機薄膜太陽電池材料、及びフォトニック結晶材料等に利用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする有機薄膜は結晶性であることから優れた半導体特性を与えることが期待できる。従来、ペンタセンが結晶性の有機半導体薄膜材料として広範に検討されているが、ペンタセンの強い分子凝集力が災いし、基板等の他の材料との接着性が低く剥がれやすいあるいは結晶が脆く亀裂が入りやすい等の不都合が生じ易かった。しかし、本発明の一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物から成る薄膜は、結晶性でありながら適度な分子凝集力を有することから基板等の他の材料との接着性が良好でさらに結晶の柔軟性も高い。さらに、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物はペンタセンに比べ溶解度が数倍高いことから加工性も優れており、より容易に薄膜を作製することができる。さらにペンタセンは溶解性が乏しくしかもその溶液は極めて容易に空気で酸化されることから、塗布プロセスで薄膜を作製するには扱いが非常に難しい化合物であるが、一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物は溶液状態であっても容易には空気で酸化されることはない。従って、塗布プロセスもより容易に実施することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
反応用の溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。
【0038】
薄膜材料の原料の純度は窒素雰囲気下、決定した。
【0039】
液体クロマトグラフィー分析条件
装置 東ソー株式会社製 高速液体クロマトグラフ装置
カラム Inertsil ODS−3V φ4.6×150mm
(GLサイエンス製)
移動相 THF
カラム温度 40℃
流速 0.5mL/分
検出器 UV(254nm)(東ソー株式会社製UV−8020)
参考例1
原料である2,3−ジブロモナフタレンの合成は、ジャーナルオブオルガニックケミストリー、1983年、48巻、2364−2366頁に記載されている方法を用いて行った。
【0040】
(3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチルの合成)
3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチルはジャーナルオブケミカルソサイティー、パーキントランザクション1、2001年、159−165頁に記載されている方法を用いて合成した。
【0041】
窒素雰囲気下、500mLシュレンク反応容器に2,3−ジブロモナフタレン(8.31g,29.1mmol)及びテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)(200mL)を加えた。これを−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.59M,9.6mL,15.3mmol)を滴下した。冷却用バスを外し、室温で1時間撹拌した。3N塩酸を用いた処理後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン−トルエン)、白色固体3.30gを得た(収率55%)。
【0042】
(ジベンゾビフェニレンの合成)
ジベンゾビフェニレンの合成は、ジャーナルオブケミカルソサイティー、パーキントランザクション1、2001年、159−165頁に記載されている方法を用いて行った。
窒素雰囲気下、300mLシュレンク反応容器に上記で得た3,3’−ジブロモ−2,2’−ビナフチル(2.03g,4.93mmol)及びTHF(140mL)を加えた。−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.59M,6.8mL,10.8mmol)を滴下した。−78℃で2時間撹拌した後、塩化亜鉛(0.5M THF溶液、10.8mL,5.4mmol)を滴下した。−50℃で1時間撹拌した後、再度−78℃に冷却し、塩化銅(II)(1.99g,14.8mmol)を投入した。一晩かけて室温まで昇温し、3N塩酸を加えて反応を停止させた。分相し、有機相をさらに水洗した。有機相中に析出した固体を濾過し、さらにTHFで洗浄した。固体を減圧乾燥し、485mgの淡黄色固体を得た(収率39%)。この固体生成物のH NMRスペクトル(1,1,2,2−テトラクロロエタン−d、70℃)を測定し、ジベンゾビフェニレンであることを確認した。
H NMR(1,1,2,2−テトラクロロエタン−d、70℃):δ=7.57(dd,J=6.10,3.4Hz,4H),7.30(dd,J=6.0,3.4Hz,4H),7.24(s,4H).1.33のピークは重溶媒中に存在する水に由来するものである。
MS m/z 252(M,100%),126(M/2,10).
H NMRスペクトルを図1に示した。なお、該スペクトルは日本電子株式会社製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて測定した。
【0043】
実施例1 (有機薄膜の作成)
窒素雰囲気下、参考例1で得られた粗ジベンゾビフェニレン(435mg)を昇華精製し(4×10−2Torr,230〜240℃)、さらに円筒濾紙に昇華精製したジベンゾビフェニレン(350mg)を入れ、ソックスレー抽出器にセットした。THF(60mL)を用いて加熱還流させソックスレー抽出を実施した。濾液には固体が析出しており、室温まで冷却し濾過することでTHFに溶解する不純物を取り除いた。濾過後、フィルターに残った固体を減圧乾燥し、320mgの淡黄色固体を得た。液体クロマトグラフィー分析により、得られた固体のジベンゾビフェニレンの純度は99.9重量%以上であった。このようにして得られたジベンゾビフェニレン(100mg)にTHF(100mL)を加え、70℃下、6時間攪拌した。ジベンゾビフェニレンは淡黄色固体であるが、溶解すると薄紫色溶液になった。70℃での溶解度は少なくとも0.11重量%であった。加熱を終了し室温まで自然冷却した。室温付近まで冷却後、透明薄膜結晶が析出してきた。一晩室温で放置した後、結晶を濾過し少量のTHFで洗浄した。真空乾燥し、40mgの薄膜結晶を得た。薄膜結晶からなる有機薄膜の膜圧は5μmであった。
【0044】
比較例1
窒素雰囲気下、ペンタセン(東京化成工業株式会社製、10mg)にTHF(100mL)を加え、70℃下、6時間攪拌した。ペンタセンは紫色固体であるが、溶解すると赤紫色溶液になった。70℃での溶解度は0.01重量%であった。加熱を終了し室温まで自然冷却した。直ちに紫色の粉体が析出した。室温付近まで冷却後、紫色の粉状固体のみが析出していた。得られた粉状固体は有機薄膜を形成していなかった。
【0045】
実施例2
[溶液の調製]
窒素雰囲気下、実施例1と同様のソックスレー抽出精製により得た純度99.9重量%以上のジベンゾビフェニレン(20mg)をo−ジクロロベンゼン(20g)と混合し、70℃で4時間撹拌し、ジベンゾビフェニレン濃度が0.1重量%の溶液を調製した。ジベンゾビフェニレンは淡黄色固体であるが、溶解すると薄紫色溶液になった。
[薄膜の作成]
窒素雰囲気下、凹面のあるガラス基板を70℃に加熱し、この基板上に上記の溶液をスポイトを用いて塗布し常圧下で乾燥し、膜圧320nmの薄膜を作製した。該薄膜のX線回折を測定した結果、面間距離0.70nmの(002)面のピークが得られ、基板上で配列した結晶性の薄膜であることがわかった(図2を参照)。なお該X線回折測定は、以下の条件で行った。
【0046】
装置 理学電機製RAD−C
X線 CuKα線(グラファイトモノクロメーター使用)、50kV,200mA
条件 θ−2θスキャン、3≦2θ≦70°、スキャンスピード=4.8°/分、
連続スキャン 0.04°毎計測
実施例3
[溶液の調製]
窒素雰囲気下、実施例1と同様のソックスレー抽出精製により得た純度99.9重量%以上のジベンゾビフェニレン(10mg)をクロロホルム(20g)と混合し、40℃で4時間撹拌し、ジベンゾビフェニレン濃度が0.05重量%の溶液を調製した。ジベンゾビフェニレンは淡黄色固体であるが、溶解すると薄紫色溶液になった。
[薄膜の作成]
窒素雰囲気下、室温で凹面のあるガラス基板上に上記の溶液をスポイトを用いて塗布し常圧下で乾燥し、膜圧150nmの薄膜を作製した。該薄膜のX線回折を測定した結果、面間距離1.39nmの(001)面のピークが得られ、基板上で配列した結晶性の薄膜であることがわかった(図3を参照)。
比較例2
窒素雰囲気下、参考例1で得られた粗ジベンゾビフェニレン(40mg、液体クロマトグラフィー分析により、純度96.1重量%)にTHF(40mL)を加え、70℃下、6時間攪拌した。加熱を終了し室温付近まで冷却後、淡黄色微粒子固体のみが析出していた。得られた粉状固体は有機薄膜を形成していなかった。
実施例4 (有機薄膜の作成)
窒素雰囲気下、100mLシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン(34g)及び実施例1のソックスレー抽出精製により得た純度99.9重量%以上のジベンゾビフェニレンの固体(78mg)を添加した。150℃で1時間撹拌し、ジベンゾビフェニレンの薄紫色溶液を調製した。14時間を要して150℃から20℃まで冷却した。析出した透明薄膜結晶をブフナーロートを用いて濾過すると、濾板上で該結晶が凝集し、薄膜状の結晶として取り出した。減圧乾燥することで、ジベンゾビフェニレンの薄膜を得た(69mg)。
【0047】
この得られた薄膜の膜厚は9μmの薄膜であり、該薄膜のX線回折を測定した結果、面間距離1.44nmの(00n)面(n=1〜7)の回折ピークが得られ、結晶性の薄膜であることがわかった。なお該X線回折測定は、実施例2と同様の条件で行った。
【0048】
X線回折パターンを図4に示した。
実施例5 (耐酸化性評価)
窒素雰囲気下、100mLシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン(18.4g)を添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへ実施例1の再結晶精製で得られたジベンゾビフェニレンの固体(20.2mg)を添加し、120℃に加熱し溶解させると薄紫色溶液となった。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1分間、外気に接触させることで空気を導入し、さらに120℃で撹拌した。しかし、色の変化は見られず、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析で酸化に由来する新たなピークの出現はなかった。
なお、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析は以下の条件を用いて実施した。
ガスクロマトグラフィー分析
装置 島津GC14B
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30m
ガスクロマトグラフィー−マススペクトル分析
装置 パーキンエルマーオートシステムXL(MS部;ターボマスゴールド)
カラム J&Wサイエンティフィック社製、DB−1,30
比較例3
窒素雰囲気下、100mLシュレンク容器にo−ジクロロベンゼン(23.9g)を添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへペンタセン(東京化成工業株式会社製)(8.3mg)を添加し、120℃に加熱し溶解させると赤紫色溶液となった。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1分間、外気に接触させることで空気を導入し、さらに120℃で撹拌した。直ちに溶液の色が赤紫から黄に変化した。ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析から、6,13−ペンタセンキノンが生成していることがわかった。
なお、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析は、実施例5で用いた条件下で実施した。
参考例2
(ターフェニレンの合成)
タービフェニレンの合成は、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイティー、1985年、107巻、5670−5687頁に記載されている方法を用いて行った。
原料である1,2,4,5−テトラエチニルベンゼンの合成は、前述の文献に記載されている方法を用いて行った。
1,2,4,5−テトラエチニルベンゼン(115mg)、ビストリメチルシリルエチン(12mL)、トルエン(12mL)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)からなる溶液、及びシクロペンタジエニルコバルトジカルボニル(ストレム製、19μL)、ビストリメチルシリルエチン(2.5mL)、及びトルエン(2.5mL)からなる溶液をそれぞれ調製した。窒素雰囲気下、200mLシュレンク反応容器にビストリメチルシリルエチン(20mL)を加え、加熱還流させた。ここに先の2つの溶液をシリンジポンプを用いて、加熱還流下、4時間かけて同時に滴下した。なお、この間スライドプロジェクターのランプを反応器に照射し続けた。滴下終了後、さらに2時間、加熱還流と光照射を継続した。室温に冷却後、反応液をショートアルミナカラムで濾過した(溶媒:ヘキサン)。濾液をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒:ヘキサン)、2,3,7,8−テトラキス(トリメチルシリル)ターフェニレンを単離した(214mg)。
窒素雰囲気下、200mLシュレンク反応容器に、上記の2,3,7,8−テトラキス(トリメチルシリル)ターフェニレン(206mg)、THF(60mL)、及びジメチルスルホキサイド(19mL)を加えた。ここに、カリウムtert−ブトキサイド(840mg)とtert−ブチルアルコール(19mL)からなる溶液を添加した。85℃で6時間加熱した。室温に冷却後、トルエン及び水を添加し分相した。有機相を減圧濃縮した(75mg)。液体クロマトグラフィー分析により、得られた残渣のターフェニレンの純度は95.0重量%であった。この残渣のH NMRスペクトル(ベンゼン−d、30℃)を測定し、タービフェニレンであることを確認した。
H NMR(ベンゼン−d、30℃):δ=6.46(AA’,J=4.8Hz,2.9Hz,4H),6.20(BB’,J=4.6Hz,2.9Hz,4H),5.93(s,2H).
なお、該スペクトルは日本電子株式会社製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて測定した。
【0049】
H NMRスペクトルを図5に示した。
MS m/z 226(M,100%),113(M/2,19).
なお、マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)で測定した。
上記残渣をトルエンから再結晶精製し、赤色微少板状結晶のターフェニレンを得た(60mg)。液体クロマトグラフィー分析により、得られたターフェニレンの純度は99.5重量%であった。
実施例6 (有機薄膜の作成)
窒素雰囲気下、100mLシュレンク容器にトルエン(4.5g)及び参考例2で得られたターフェニレンの赤色固体(53mg)を添加した。加熱還流後、ターフェニレンの濃赤色溶液を得た。14時間を要して110℃から20℃まで冷却後、赤色薄膜結晶が生成した。濾液を除去し、さらにトルエン(1.5mL)を用いて洗浄濾過した。減圧乾燥することで、ターフェニレンの赤色薄膜を得た(46mg)。液体クロマトグラフィー分析により、得られたターフェニレンの純度は99.9重量%以上であった。
この得られた薄膜の膜厚は7μmの薄膜であり、該薄膜のX線回折を測定した結果、面間距離1.25nmの(00n)面(n=1〜6)の回折ピークが得られ、結晶性の薄膜であることがわかった。なお該X線回折測定は、実施例2と同様の条件で行った。
X線回折パターンを図6に示した。
実施例7 (耐酸化性評価)
窒素雰囲気下、100mLシュレンク容器にトルエン(18.8g)を添加し、凍結(液体窒素)−減圧−窒素置換−融解から成るサイクルを3回繰り返すことで溶存酸素を除去した。そこへ実施例6で得られたターフェニレンの固体(14.5mg)を添加し、100℃に加熱し溶解させると濃赤色溶液となった。次にこのシュレンク容器の上部の栓を開け、1分間、外気に接触させることで空気を導入し、さらに100℃で撹拌した。しかし、色の変化は見られず、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析で酸化に由来する新たなピークの出現はなかった。
なお、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析は、実施例5で用いた条件下で実施した。
参考例3
(ベンゾターフェニレンの合成)
ベンゾターフェニレンの合成は、ジャーナル オブ ケミカル ソサイティー、パーキン トランザクション1、1988年、961−969頁に記載されている方法を用いて行った。原料である1,2−ジブロモ−1,2−ジヒドロシクロブタビフェニレンの合成は、前述の文献に記載されている方法を用いて行った。
窒素雰囲気下、100mLシュレンク反応容器に1,2−ジブロモ−1,2−ジヒドロシクロブタビフェニレン(115mg)、1,2−ビス(ブロモメチル)ベンゼン(105mg)、及びTHF(15mL)を加えた。60℃に加熱後、カリウムターシャリーブトキサイド(1.0g)を一気に投入した。5分間撹拌後、生成した濃黄色懸濁液を室温まで冷却した。溶媒を濃縮後、得られた残渣は4回水で洗浄し、乾燥した。得られた固体をジクロロメタンで洗浄し、ベンゾターフェニレンのオレンジ色微粉結晶を得た(27mg)。o−ジクロロベンゼンから再結晶精製し、オレンジ色微少板状結晶のベンゾターフェニレンを得た(21mg)。液体クロマトグラフィー分析により、得られたベンゾターフェニレンの純度は99.7重量%であった。
H NMR(CDCl、21℃):δ=7.38(m,2H),7.18(m,2H),6.71(m,2H),6.67(s,2H),6.57(m,2H),6.46(s,2H).
MS m/z 276(M,100%),138(M/2,19).
なお、H NMRスペクトル及びマススペクトルは参考例2と同一の装置を用いて測定した。
実施例8 (有機薄膜の作成)
窒素雰囲気下、参考例3で得られたベンゾターフェニレン10mgをo−ジクロロベンゼン(20g)と混合し、170℃で1時間撹拌し、ベンゾターフェニレンの溶液を調製した。
空気雰囲気下、凹面のあるガラス基板を150℃に加熱し、この基板上に上記の溶液をスポイトを用いて塗布し常圧下で乾燥し、膜厚350nmの薄膜を作製した。この薄膜の成分をガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)で分析した結果、ベンゾターフェニレン以外に酸化に由来する新たなピークの出現はなかった。従って、空気中でも酸化されることなくベンゾターフェニレンの薄膜を作成できることがわかった。
なお、ガスクロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析は、実施例5で用いた条件下で実施した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】参考例1で合成したジベンゾビフェニレンのH NMRスペクトル(1,1,2,2−テトラクロロエタン−d、70℃)
【図2】実施例2の薄膜のX線回折測定
【図3】実施例3の薄膜のX線回折測定
【図4】実施例4の薄膜のX線回折測定
【図5】参考例2で合成したターフェニレンのH NMRスペクトル(ベンゼン−d、30℃)
【図6】実施例6の薄膜のX線回折測定

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は(2)で示される縮合環化合物を構成成分とすることを特徴とする有機薄膜。
【化1】

(ここで、置換基R〜R12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示す。)
【化2】

(ここで、置換基R13〜R22は水素原子、エチニル基、又は炭素数1〜20のトリアルキルシリル基を示す。)
【請求項2】
下記一般式(3)及び/又は(4)で示される縮合環化合物を構成成分とすることを特徴とする有機薄膜
【化3】

【化4】

(ここで、置換基R23〜R34は水素原子、エチニル基、又は炭素数1〜20のトリアルキルシリル基を示す。m及びnは各々0又は1の整数である。但し、mが0の時はnは1であり、mが1の時はnは0である。さらにR23〜R34の少なくとも一つがエチニル基である時、mは0である。)
【請求項3】
上記一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を構成成分とする薄膜が基板上に形成された薄膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の有機薄膜の膜厚が10μm以下であることを特徴とする有機薄膜。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の有機薄膜の膜厚が5nm〜500nmであることを特徴とする有機薄膜。
【請求項6】
上記一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の純度が99.5重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機薄膜。
【請求項7】
上記一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の溶液を基板の上に塗布により成膜することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項8】
上記一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物の純度が99.5重量%以上であるものを用いることを特徴とする請求項7に記載の有機薄膜の製造方法。
【請求項9】
上記一般式(1)〜(4)で示される縮合環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの縮合環化合物を含む溶液の濃度が0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の有機薄膜の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−156980(P2006−156980A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311838(P2005−311838)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】