説明

有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ素子性能向上(高発光効率、及び低駆動電圧)に寄与する有機電界発光素子用材料を提供すること。
【解決手段】2個以上のトリアリールアミンユニットを一つのペンダント基として有し、該ペンダント基が炭素数3以上の2価の連結基を介してケイ素原子と連結し、かつ前記ペンダント基の0.1%以上10%以下が2個以上のケイ素原子と連結した構造を有するシロキサン化合物である、有機電界発光素子用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子、及び有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、OLED、有機EL素子ともいう)、有機半導体を利用したトランジスタなどの研究が活発に行われている。特に、有機電界発光素子は、薄型・軽量の固体発光デバイスであり、面光源という特徴を有することから、フラットパネルディスプレイや照明としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、励起された発光材料が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
有機EL素子は、有機層を、例えば蒸着などの乾式法又は塗布などの湿式法により成膜することで作製することができるが、生産性などの観点から湿式法が注目されている。
【0003】
N,N′-ビス(3-メチルフェニル)-N,N′-ジフェニルベンジジン(TPD)、N,N′-ビス(α-ナフチル)-N,N′-ジフェニルベンジジン(NPD)に代表される低分子アリールアミンは正孔移動度が高く、化学的に安定な材料であり、有機ELにおいて正孔注入層、及び正孔輸送層として用いられることが多い。
しかしながら、これらの低分子アリールアミンは溶媒溶解性が高いため、湿式法で成膜する際には、上層(例えば発光層)積層時にこれらの低分子アリールアミンからなる下層を溶解させ、層混合が起こり、有機EL素子の性能を低下させるという問題がある。
特に正孔注入層、又は正孔輸送層より高バンドギャップな発光層を塗布する場合、発光効率の低下が顕著になる。
下層の溶解を防ぐ為に、下層に高分子材料を用いる方法や、下層を塗布後に架橋硬膜する方法が行われている。しかしながら、アクリレートやメタクリレートなど汎用的な高分子材料では、合成時に微量混入する重合開始剤の影響などから、素子性能が低下する。また、ポリエーテルなど重合開始剤を用いない高分子材料でも膨潤することで上層材料の混入が生じてしまう。
一方、塗布後に架橋硬膜する方法でも、重合開始剤の素子への悪影響が問題となるため、スチリル化合物などによる熱重合法が検討されているが、硬膜に高い温度が必要であること、長時間を要すること、未反応のモノマーが残存することなどの問題がある。
【0004】
前記重合開始剤の問題について、重合時に重合開始剤を用いる必要がない高分子化合物としては、シロキサンポリマーがある。
シロキサンポリマーを有機電界発光素子用材料として用いたものとして、例えば特許文献1には、2個以上のアリールアミンユニットを有し、該ユニットとシロキサンポリマーの主鎖のケイ素原子が直接結合し、かつ該ユニットで架橋されたシロキサンポリマー(架橋比率100%)が記載されている。
また、特許文献2には、1個のアリールアミンユニットを1つのペンダント基として有し、該ペンダント基を主鎖とつなぐ炭素数3のリンカー(連結基)からなるシロキサンポリマーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−80167号公報
【特許文献2】国際公開第06/001874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシロキサンポリマーからなる有機層はひび割れが生じやすいなど、膜質に劣るという問題がある。
また、特許文献2に記載のシロキサンポリマーからなる有機層は、電荷輸送性が低いこと、及び上層塗布時に膨潤による層混合が起こりやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ素子性能向上(高発光効率、及び低駆動電圧)に寄与する有機電界発光素子用材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ素子性能向上に寄与する膜を提供することを目的とする。
更に、本発明は、生産性に優れ、発光効率が高く、駆動電圧が低い有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記状況を鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行なったところ、以下の知見を得た。
即ち、シロキサンポリマーにおいて、シロキサンポリマー主鎖のケイ素原子と、アリールアミンユニットの間に、炭素数3以上のリンカーを入れ、かつ電荷輸送部位として機能するアリールアミンユニットを1つのペンダント基に2つ以上含ませ、更に多官能のアリールアミンユニットの架橋比率を0.1%以上10%以下とすることで、該シロキサンポリマーから得られる膜の膜質向上と、電荷輸送性の向上を両立させることができることを見出した。
なお、アリールアミンユニットの架橋比率とは、全アリールアミンユニットに対する、架橋している(2個以上のケイ素原子と結合している)アリールアミンユニットの比率を表す。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1]
2個以上のトリアリールアミンユニットを一つのペンダント基として有し、該ペンダント基が炭素数3以上の2価の連結基を介してケイ素原子と連結し、かつ前記ペンダント基の0.1%以上10%以下が2個以上のケイ素原子と連結した構造を有するシロキサン化合物である、有機電界発光素子用材料。
[2]
前記シロキサン化合物が下記一般式(1−a)で表される構造と、下記一般式(1−b)で表される構造とを有する、上記[1]に記載の有機電界発光素子用材料。
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、R及びRは、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表し、Lは各々独立に炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは各々独立に2個以上のトリアリールアミンユニットを含むペンダント基を表す。x及びyは各シロキシ部位の数を表し、x:yは99.9:0.1〜90:10であり、x+yは10以上50以下である。*はシロキサン化合物のケイ素原子に結合する部位を表す。)
[3]
前記一般式(1−a)又は前記一般式(1−b)におけるHLが下記一般式(2)で表される、上記[1]又は[2]に記載の有機電界発光素子用材料。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。*2及び*3は一般式(1−a)又は一般式(1−b)におけるLと結合する部位、又は水素原子と結合する部位を表す。)
[4]
Ar、Ar、Ar、及びArがフェニレン基であり、Ar及びArがナフチレン基を表す、上記[3]に記載の有機電界発光素子用材料。
[5]
前記一般式(1−a)又は前記一般式(1−b)におけるLが下記一般式(3)で表される、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*4は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)における主鎖中のケイ素原子と結合する部位を表し、*5は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)におけるHLと結合する部位を表す。)
[6]
シロキサン化合物の質量平均分子量(Mw)が、10000〜300000であり、かつ数平均分子量(Mn)が5000〜300000である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
[7]
基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該陽極と該発光層との間の少なくとも一層の有機層に、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する有機電界発光素子。
[8]
上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔注入層に含有する、上記[7]に記載の有機電界発光素子。
[9]
上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔輸送層に含有する、上記[7]記載の有機電界発光素子。
[10]
上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する層を湿式法にて作製する、上記[7]〜[9]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
[11]
上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する膜。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ素子性能向上(高発光効率、及び低駆動電圧)に寄与する有機電界発光素子用材料を提供することができる。
また、本発明によれば、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こさず、膜質に優れ、かつ素子性能向上に寄与する膜を提供することができる。
更に、本発明によれば、生産性に優れ、発光効率が高く、駆動電圧が低い有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0019】
本発明の有機電界発光素子用材料は、2個以上のトリアリールアミンユニットを一つのペンダント基として有し、該ペンダント基が炭素数3以上の2価の連結基を介してケイ素原子と連結し、かつ前記ペンダント基の0.1%以上10%以下が2個以上のケイ素原子と連結した構造を有するシロキサン化合物である。
【0020】
〔シロキサン化合物〕
本発明におけるシロキサン化合物は、2個以上のトリアリールアミンユニットを一つのペンダント基として有し、該ペンダント基が炭素数3以上の2価の連結基を介してケイ素原子と連結し、かつ前記ペンダント基の0.1%以上10%以下が2個以上のケイ素原子と連結した構造を有する。
【0021】
本発明におけるシロキサン化合物が有するペンダント基は2個以上のトリアリールアミンユニットを有する。ここで、ペンダント基とは、シロキサン化合物における主鎖に含まれる基ではなく、側鎖の一部として含まれる基を表す。
【0022】
トリアリールアミンユニットとは、窒素原子に3つのアリール基が置換した構造を有する部位であり、本発明におけるシロキサン化合物が有する1つのペンダント基には、該ユニットを2個以上有する。
【0023】
本発明におけるシロキサン化合物は、下記一般式(1−a)で表される構造と下記一般式(1−b)で表される構造とを有することが好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
(一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、R及びRは、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表し、Lは各々独立に炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは各々独立に2個以上のトリアリールアミンユニットを含むペンダント基を表す。x及びyは各シロキシ部位の数を表し、x:yは99.9:0.1〜90:10であり、x+yは10以上50以下である。*はシロキサン化合物のケイ素原子に結合する部位を表す。)
【0026】
一般式(1−a)で表される構造と一般式(1−b)で表される構造とを有するシロキサン化合物(以下、シロキサン化合物(1)ともいう)は、一般式(1−a)で表される構造と一般式(1−b)で表される構造とが連続していても、連続していなくても良い。すなわち、シロキサン化合物(1)は、一般式(1−a)で表される構造と一般式(1−b)で表される構造とのランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよい。
【0027】
一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、R及びRは、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表す。
該アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
及びRはアルキル基であることが好ましい。
【0028】
一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、HLは各々独立に2個以上のトリアリールアミンユニットを含むペンダント基を表す。HLは下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0029】
【化5】

【0030】
(一般式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。*2及び*3は一般式(1−a)又は一般式(1−b)におけるLと結合する部位、又は水素原子と結合する部位を表す。)
【0031】
一般式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表す。該アリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基であり、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、トリフェニレニレン基などが挙げられ、イオン化ポテンシャルの最適化や分子間の軌道の重なりを増加させ電荷注入・輸送性を増加させるという理由から、Ar、Arは、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、Ar、Arは、フェニレン基、フルオレニレン基、アントラセニレン基が好ましい。
【0032】
一般式(2)中、Ar及びArは各々独立にアリール基を表す。該アリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、具体的にはフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられ、イオン化ポテンシャルの最適化や分子間の軌道の重なりを増加させ電荷注入・輸送性を増加させるという理由から、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。
【0033】
一般式(2)中、Ar〜Arで表されるアリーレン基又はアリール基は置換基を有してもよい。該置換基としては、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、t−ブチル基が更に好ましい。)、シリル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基により置換されたシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。)、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。)などが挙げられる。
【0034】
一般式(2)において、Ar、Ar、Ar、及びArがフェニレン基であり、Ar及びArがナフチレン基を表すことが特に好ましい。
【0035】
一般式(2)中、Zは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、シリレン基が好ましい。
が表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基などが挙げられ、好ましくは、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基である。
【0036】
が表すシクロアルキレン基としては、炭素数1〜10のシクロアルキレン基が好ましく、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキシレン基、である。
【0037】
が表すシリレン基としては、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が置換したシリレン基であり、より好ましくはジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基である。
【0038】
一般式(2)中、nは0又は1を表す。イオン化ポテンシャルを制御するために、nは0と1から適宜選択できる。
一般式(2)中、mは1以上の整数を表す。mはトリアリールアミンユニットの繰り返し数を表すものであり、mが2以上の場合、トリアリールアミンユニットどうしは、ArとZとで結合する。電荷輸送性とイオン化ポテンシャルの観点から適宜選択することができる。mは好ましくは1〜9の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは1〜3の整数である。
n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。
一般式(2)中、*2及び*3は一般式(1−a)又は一般式(1−b)におけるLと結合するか、又は水素原子と結合する部位を表す。*2が水素原子と結合する部位を表す場合、水素原子と結合したArは該水素原子とともにアリール基を形成する。*3が水素原子と結合する部位を表す場合、水素原子と結合したArは該水素原子とともにアリール基を形成する。
【0039】
一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、Lは各々独立に炭素数3以上の2価の連結基を表す。
Lに含まれる炭素数は3以上である。2価の連結基Lの炭素数が3未満の場合、立体的に混み合う為に側鎖導入率が低下する問題があり、該炭素数が3以上の場合、絶縁性部位の割合が増加する為、シロキサン化合物の電荷輸送性が低下してしまうという問題がある。これらを考慮すると、2価の連結基Lの炭素数は好ましくは3以上12以下である。
また、本発明におけるシロキサン化合物を用いることで、有機EL素子特性において駆動電圧が大幅に低下するという予想外の効果が得られた。これは、2個以上のトリアリールアミンユニットを有するペンダント基と、シロキサン主鎖のケイ素原子を、炭素数3以上のリンカーで連結することで、立体障害が緩和され、かつリンカーのフレキシビリティが増加したことで、アリールアミンユニットの重なりが増し、電荷移動度が上昇したためと推測される。
本発明におけるシロキサン化合物に含まれる絶縁性部位と電荷輸送性部位の質量比は5:95〜35:65が好ましく、10:90〜25:75がより好ましい。ここで、絶縁性部位とは電荷を流さない部位のことを指し、本発明におけるシロキサン主鎖やリンカー部位のことを指す。また、電荷輸送性部位とは電荷を流す部位のことを指し、本発明におけるトリアリールアミン部位のことを指す。
【0040】
該2価の連結基Lは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい2価の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
【0041】
Lは下記一般式(3)で表されることがより好ましい。
【0042】
【化6】

【0043】
(一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*4は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)における主鎖中のケイ素原子と結合する部位を表し、*5は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)におけるHLと結合する部位を表す。)
【0044】
一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。該アルキル基としては、側鎖導入反応率の低下抑制および化合物の結晶性を低下させるという理由から、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0045】
一般式(3)中、Tは2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、2価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びこれらを組み合わせて得られる2価の基であることがより好ましい。
Tが表すアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、オクチレン基、などが挙げられ、絶縁性部位を少なくし、かつ化合物の結晶性を低下させるという理由から、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、である。
また、該アルキレン基中には、シクロアルキレン基、又はアリーレン基を含んでもよく、該シクロアルキレン基、又はアリーレン基としては後述するTが表すシクロアルキレン基、又はアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0046】
Tが表すシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基などが挙げられ、好ましくは、シクロヘキシレン基である。
Tが表すアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられ、好ましくは、フェニレン基である。
【0047】
Tとしてはアルキレン基が好ましい。
【0048】
一般式(3)中、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表す。化合物の結晶性を低下させること、電荷トラップにつながらないこと、結合自身の安定性を向上させるという理由から、Wは酸素原子が好ましい。
一般式(3)中、Vは2価の連結基を表す。Vの具体例及び好ましい範囲は前記Tの具体例及び好ましい範囲と同様である。
一般式(3)中、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。ペンダント基の電荷耐性を低下させないという理由から、Xは−CH−が好ましい。
【0049】
一般式(3)中、pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。sが0の場合、TとVとは単結合で結合している。uが0の場合、WとXとは単結合で結合している。zが0の場合、Vは一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)におけるHLと直接結合している。
絶縁性部位を小さくすることと化合物の結晶性を低下させることを両立するという理由から、p、s、u、zは、これらの合計が1〜10になることが好ましく、1〜6であることがより好ましい。
【0050】
一般式(3)中、*4は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)における主鎖中のケイ素原子と結合する部位を表し、*5は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)におけるHLと結合する部位を表す。
【0051】
一般式(1−a)及び一般式(1−b)中、x及びyは、それぞれ一般式(1−a)で表される構造、及び一般式(1−b)で表される構造の数を表し、x:yは99.9:0.1〜90:10であり、x+yは10以上50以下である。
x/yが99.9/0.1以下であることで、上層塗布時に溶解混合又は膨潤混合を起こしにくくなるため好ましい。更に、通常は、有機電界発光素子においては、正孔輸送層とその上層とが界面混合をしたほうが電荷注入性が向上する(駆動電圧が低下する)と考えられているが、本発明では、界面混合を抑制することで、発光効率を向上させつつ、駆動電圧も低下させるという予想外の有利な効果を得ることができた。
x/yが90/10以上であることで、ひび割れなどの膜質低下が起こりにくいため好ましい。
x:yは、好ましくは99:1〜90:10であり、より好ましくは、97:3〜92:8である。
x+yは、溶媒への溶解性、化合物純度制御の容易性という理由から、好ましくは、10以上45以下であり、より好ましくは15以上40以下であり、特に好ましくは15以上35以下である。
x:yは一般式(1−a)及び一般式(1−b)の各々に対応するモノマーの仕込み比を調整することで制御することができる。
【0052】
一般式(1−b)中、*はシロキサン化合物のケイ素原子に結合する部位を表す。該ケイ素原子は、一般式(1−a)及び一般式(1−b)中に含まれる主鎖とは異なる主鎖中のケイ素原子であることが、溶媒への溶解性、溶剤による膨潤抑制という理由から好ましい。
【0053】
本発明におけるシロキサン化合物は、前記一般式(1−a)又は一般式(1−b)で表される構造以外の構造単位を含んでいてもよい。含んでもよい構造単位としては、−(SiR1112O)−単位などが挙げられる。R11及びR12はそれぞれ独立にアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
本発明のシロキサン化合物において、−(SiR1112O)−単位の含有量は、前記一般式(1−a)で表される構造及び一般式(1−b)で表される構造単位の合計数に対して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは−(SiR1112O)−単位を含まないことが好ましい。
【0054】
本発明におけるシロキサン化合物の質量平均分子量(Mw)は10000〜300000であることが好ましく、20000〜200000であることがより好ましく、50000〜150000であることが特に好ましい。本発明におけるシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)は5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましく、30000〜150000であることが特に好ましい。本発明におけるシロキサン化合物のMw及びMnはGPCにより測定でき、より詳細には、THF(テトラヒドロフラン)あるいはN−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求められる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用できる。
本発明におけるシロキサン化合物の分散度(Mw/Mn)は1〜2であることが好ましく、1〜1.75であることがより好ましい。
【0055】
〔シロキサン化合物の合成方法〕
本発明におけるシロキサン化合物は、ポリメチルハイドロシロキサン等のポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンに、2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有し、1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマー、及び2個以上のアリールアミンユニットと炭素数3以上の連結基となる部位を有し、2個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーをハイドロシリレーション反応により重合、及び架橋することで得ることができる。
【0056】
ポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは、一般的に知られた脱水縮合法により得ることができ、分子量は反応時間および反応温度を調節することで調整できる。また、末端部位はトリアルキルシラノールによりエンドキャップが可能である。こうして得られたポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは分取GPCを用いることで所望の分子量成分を分布狭く得られることができる。
【0057】
ポリアルキルハイドロシロキサン、又はポリアリールハイドロシロキサンは、アルコキシシラン、アリールオキシシランの重縮合により得ることができる。アルコキシシラン、アリールオキシシランとしては、例えば、メチルジメトキシヒドロシラン、エチルジメトキシヒドロシランフェニルジメトキシヒドロシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、絶縁部位の割合を低下し、ポリシロキサン化合物の結晶性を低下させるという理由から、アルコキシシランである。
【0058】
1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーとしては、前述のペンダント基の構造に、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を有する化合物を挙げることができ、好ましくは、前記炭素数3以上の2価の連結基となる部分にエチレン性不飽和基を有する化合物である。
1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーは下記一般式(4)で表されることが好ましい。
【0059】
【化7】

【0060】
(一般式(4)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。)
【0061】
一般式(4)中、R、T、W、V、X、p、s、u、zは前記一般式(3)におけるR、T、W、V、X、p、s、u、zと同様である。Ar、Ar、及びArは前記一般式(2)におけるAr、Ar、及びArと同様である。Ar、Ar及びArは前記一般式(2)におけるAr及びArと同様である。Z、n、mは前記一般式(2)におけるZ、n、mと同様である。
【0062】
一般式(4)で表されるモノマー化合物の具体例を以下に示すが、本発明においてはこれらに限定されない。
【0063】
【化8】

【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
一般式(4)で表されるモノマー化合物は、アリールハライドとアリールアミンのPd触媒を用いたカップリング反応を段階的におこない、非対称構造とすることにより合成することができる。ここで、重合性の反応部位は、初めの反応工程に導入しても最後の反応工程に導入しても良いが、好ましくは最後の反応工程である。
反応温度は、50〜150℃が好ましく、60〜130℃がより好ましい。
反応時間は、1時間〜3日が好ましく、2時間〜1日がより好ましい。
溶媒としては、Pdカップリング反応に利用できるものであれば何でも良いが、特にトルエン、DME(1,2−ジメトキシエタン)、THF、DMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)が好ましい。
【0069】
本発明のシロキサン化合物において、2個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーとしては、前記ペンダント基の構造に、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を2個以上有する化合物を挙げることができ、好ましくは、前記炭素数3以上の2価の連結基となる部分にエチレン性不飽和基を有する化合物である。
以下、2個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーについて説明するが、3個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーについても同様である。
2個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーとしては下記一般式(5)で表されることが好ましい。
【0070】
【化13】

【0071】
(一般式(5)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。Ar、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。)
【0072】
一般式(5)中、R、T、W、V、X、p、s、u、zは前記一般式(3)におけるR、T、W、V、X、p、s、u、zと同様である。Ar、Ar、及びArは前記一般式(2)におけるAr、Ar、及びArと同様である。Ar、Ar及びArは前記一般式(2)におけるAr、Ar及びArと同様である。Z、n、mは前記一般式(2)におけるZ、n、mと同様である。
【0073】
一般式(5)で表されるモノマー化合物は、一般式(4)と同様の反応を用いることにより合成することができる。ここで、重合性の反応部位は、最後の反応工程で2個同時に導入することが好ましい。
【0074】
本発明におけるシロキサン化合物を合成する際の各化合物の仕込み比(モル比)によって、架橋比率を制御することができ、好ましくは、前記アルコキシシランを重縮合して得られる重縮合体の一つのSi−Hに対して、1個のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーを1〜1.2倍加えることが好ましく、2個以上のケイ素原子と結合するペンダント基となるモノマーは、1個のケイ素原子と結合するペンダント基に対して、所望の架橋比率となる割合で加えることが好ましい。、
【0075】
合成における反応温度は、モノマーの分解や二重結合の内部異性化や触媒活性を高めるという理由から、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは80〜120℃である。
反応時間はモノマーの反応性によって大きく異なるが、30分〜3日が好ましく、30分〜1日がより好ましい。
反応における触媒としては、白金触媒が好適に用いられる。溶媒としては、トルエンが好適に用いられる。
また、本発明におけるシロキサン化合物の合成においては、重合開始剤は不要であり、有機電界発光素子への重合開始剤の混入による悪影響が起こらない。
【0076】
本発明において、前記シロキサン化合物は、その用途が限定されることはなく、有機電界発光素子に含まれる有機層のうちのいずれの層に含有されてもよい。前記シロキサン化合物の導入層としては、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電荷ブロック層を挙げることができ、好ましくは発光層と陽極の間の層であり、正孔注入層、又は正孔輸送層に含有されることがより好ましい。
前記シロキサン化合物は、シロキサン化合物が含有される有機層の全質量に対して70〜100質量%含まれることが好ましく、85〜100質量%含まれることがより好ましい。
【0077】
〔有機電界発光素子〕
本発明における有機電界発光素子について詳細に説明する。
本発明における有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該陽極と該発光層との間に前記有機電界発光素子用材料を含有する。
【0078】
本発明の有機電界発光素子において、発光層は有機層であり、発光層と陽極の間に更に少なくとも一層の有機層を含むが、これら以外にも更に有機層を有していてもよい。
発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明若しくは半透明であることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の構成の一例を示している。
図1に示される本発明に係る有機電界発光素子10は、支持基板2上において、陽極3と陰極9との間に発光層6が挟まれている。具体的には、陽極3と陰極9との間に正孔注入層4、正孔輸送層5、発光層6、正孔ブロック層7、及び電子輸送層8がこの順に積層されている。
【0079】
<有機層の構成>
前記有機層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機層の形状、大きさ、及び厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
有機電界発光素子の素子構成、基板、陰極及び陽極については、例えば、特開2008−270736号公報に詳述されており、該公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0081】
<基板>
本発明で使用する基板としては、有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0082】
<陽極>
陽極は、通常、有機層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0083】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0084】
基板、陽極、陰極については、特開2008−270736号公報の段落番号〔0070〕〜〔0089〕に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0085】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
【0086】
〔有機層の形成〕
本発明の有機電界発光素子において、各有機層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式成膜法、転写法、印刷法、スピンコート法、バーコート法等の溶液塗布プロセスのいずれによっても好適に形成することができる。
【0087】
有機層のいずれか一層は本発明におけるシロキサン化合物を用いた湿式法により成膜することが特に好ましい。また、他の層については乾式法又は湿式法を適宜選択して成膜することができる。湿式法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの成膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0088】
上記湿式製膜法(塗布プロセス)で用いる塗布液は通常、有機層の材料と、それを溶解又は分散するための溶剤からなる。溶剤は特に限定されず、有機層に用いる材料に応じて選択すればよい。溶剤の具体例としては、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ジメチルスルホキシド、アルコール系溶剤(メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水等が挙げられる。
本発明における前記シロキサン化合物の溶媒としては、上記のうち、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、又はエーテル系溶剤が好ましい。
なお、塗布液中の溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、塗布液の粘度も製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0089】
〔発光層〕
本発明の有機電界発光素子において、発光層は発光材料を含有するが、該発光材料としては、燐光発光性化合物を含有することが好ましい。燐光発光性化合物は、三重項励起子から発光することができる化合物であれば特に限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0090】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer−Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体又は2−フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。中でもイリジウムが特に好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、特願2000−254171号の段落番号0152〜0180にもその具体例が記載されている。
【0091】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg.Chem.,30,1685,1991、Inorg.Chem.,27,3464,1988、Inorg.Chem.,33,545,1994、Inorg.Chim.Acta,181,245,1991、J.Organomet.Chem.,335,293,1987、J.Am.Chem.Soc.,107,1431,1985等に記載の公知の手法で合成することができる。
【0092】
発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか、又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されない場合がある。
【0093】
本発明において、発光層は必要に応じてホスト化合物を含有してもよい。
【0094】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0095】
発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nmを超えると駆動電圧が上昇する場合があり、10nm未満であると発光素子が短絡する場合がある。
【0096】
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、正孔注入層、及び正孔輸送層を有してもよい。正孔注入層、及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
本発明における前記シロキサン化合物を正孔注入層、又は正孔輸送層に含有することが好ましい。
【0097】
(電子注入層、電子輸送層)
本発明の有機電界発光素子は、電子注入層、及び電子輸送層を有してもよい。電子注入層、及び電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
電子注入層、電子輸送層については、例えば、特開2008−270736、特開2007−266458に詳述されており、これらの公報に記載の事項を本発明に適用することができる。
【0098】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレート(Aluminum(III)bis(2−methyl−8−quinolinato)4−phenylphenolate(BAlqと略記する))等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(2,9−Dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline(BCPと略記する))等のフェナントロリン誘導体、トリフェニレン誘導体、カルバゾール誘導体等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0099】
(電子ブロック層)
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機層として、電子ブロック層を設けることができる。
電子ブロック層を構成する有機化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
電子ブロック層は、上述した材料の一種又は二種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0100】
〔その他の有機層〕
本発明の有機電界発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0101】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0102】
〔封止〕
また、有機電界発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0103】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0104】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0105】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0106】
(実施例1)
<シロキサン化合物1の合成>
以下のスキームに従って、シロキサン化合物1(架橋型シロキサンポリマー)を合成した。
【0107】
【化14】

【0108】
【化15】

【0109】
【化16】

【0110】
(化合物1aの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(東京化成製)(4.2g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(東京化成製)(4.4g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(1800mL)中で10分間撹拌した後に、N−フェニル−1−ナフチルアミン(東京化成製)(80g),4−4’ジブロモビフェニル(和光純薬製)(204.8g)およびナトリウム tert−ブトキシド(東京化成製)(42.1g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水および酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/30)することにより、化合物1a(147.8g)を得た。
【0111】
(化合物1bの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(4g)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(3.6g)を不活性雰囲気下、トルエン溶液(2800mL)中で10分間撹拌した後に、化合物1a(144g),1−ナフチルアミン(東京化成製)(122.4g)およびナトリウム tert−ブトキシド(39.2g)を添加した。不活性雰囲気下、100℃で6時間反応させた後、水および酢酸エチルを注加した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/20)することにより、化合物1b(122g)を得た。
【0112】
(化合物1cの合成)
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(1.34g),2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−ジメチルアミノビフェニル(東京化成製)(1.02g),化合物1b(60g)および4−ブロモアニソール(東京化成製)(24g)のTHF溶液(140mL)中に,室温、不活性雰囲気下でヘキサメチルジシラザンリチウム(1.6mol/L THF溶液)を滴下した後、温度を65℃まで上げ、2時間撹拌した。反応終了後、水および酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=2/1)することにより、化合物1c(24g)を得た。
【0113】
(化合物1dの合成)
化合物1c(16g)のジクロロメタン溶液中に、氷冷下で1M 3臭化ホウ素 in CHCl(Aldrich製)(34mL)を滴下した。その後、室温まで温度を上昇させ、1時間撹拌した。反応終了後、水および酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマト精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/3)することにより、化合物1d(15.2g)を得た。
【0114】
(化合物1e(前記モノマー(1))の合成)
化合物1d(0.6g)、5−ブロモ−1−ペンテン(東京化成製)(0.17g)および炭酸カリウム(0.54g)を、不活性雰囲気下、ジメチルアセトアミド(6.5mL)中で12時間撹拌させた。反応終了後、水および酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をトルエン溶媒中で再結晶することにより、化合物1e(0.53g)を得た。
【0115】
(シロキサン化合物1の合成)
化合物1e(0.5g)、化合物1j(0.03g)とポリ(メチルハイドロシロキサン)(35量体、Merck社製)(43mg)のトルエン溶液を、窒素雰囲気下、80度で10分間撹拌した。その反応溶液中にジクロロ(ジシクロペンタジエニル)白金(和光純薬製)を10mg添加した後、12時間撹拌した。反応溶液を減圧にて濃縮し、濃縮液をIPA(イソプロピルアルコール)溶媒中へと滴下して沈殿物を得た。その沈殿物のトルエン溶液からイソプロピルアルコール/酢酸エチル=3/2溶媒への再沈殿精製を複数回繰り返すことで過剰量の化合物1e、1fを除去した。得られたシロキサン化合物1の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物1には、前記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=47,600,Mw=85,600であった。
【0116】
<シロキサン化合物4の合成>
(化合物4aの合成)
【0117】
【化17】

【0118】
2−(4−ブロモフェニル)エチルアルコール(東京化成製)(20g)のTHF溶液(100ml)に、氷冷下で水素化ナトリウム(4.4g)を添加した後、アリルブロミド(13.2g)を添加し、反応させた。反応終了後、水および酢酸エチルを注加し、有機層を食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧にて濃縮した。濃縮残渣をカラムクロマト精製することにより、化合物4a(18g)を得た。
化合物1cの合成における4−ブロモアニソールを化合物4aに変える他は同様にして化合物4e(前記モノマー(4))及び化合物4jを合成し、シロキサン化合物1と同様にして、シロキサン化合物4を合成した。
得られたシロキサン化合物4の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物4には下記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=48300,Mw=85900であった。
【0119】
【化18】

【0120】
<シロキサン化合物7の合成>
(化合物7aの合成)
【0121】
【化19】

【0122】
1−ブロモ−4−ヨードベンゼンにTHF中でMgを作用させて、Grignard試薬を調製し、ヘプト−6−エニルアセテート、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、トリフェニルホスフィンを作用させることで、化合物7aを得た。
化合物1cの合成における4−ブロモアニソールを化合物7aに変える他は同様にして化合物7e(前記モノマー(7))及び化合物7jを合成し、シロキサン化合物1と同様にして、シロキサン化合物7を合成した。
得られたシロキサン化合物7の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物7には下記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=49400,Mw=85800であった。
【0123】
【化20】

【0124】
<シロキサン化合物11の合成>
(化合物11aの合成)
【0125】
【化21】

【0126】
1−ブロモ−3−ヨードベンゼンにTHF中でMgを作用させて、Grignard試薬を調製し、アリルアセテート(関東化学製)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、トリフェニルホスフィンを作用させることで、化合物11aを得た。
化合物1cの合成における4−ブロモアニソールを化合物11aに変える他は同様にして化合物11e(前記モノマー(11))及び化合物11jを合成し、シロキサン化合物1と同様にして、シロキサン化合物11を合成した。
得られたシロキサン化合物11の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物11には下記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=45800,Mw=84200であった。
【0127】
【化22】

【0128】
<シロキサン化合物19の合成>
(化合物19cの合成)
下記スキームに従い、化合物1eと同様にして化合物19の合成をおこなった。
【0129】
【化23】

【0130】
得られたシロキサン化合物19の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物19には下記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=47800,Mw=83600であった。
【0131】
【化24】

【0132】
<シロキサン化合物31の合成>
【0133】
【化25】

【0134】
1−ブロモ−4−(トリメチルシリル)ベンゼン(ALDRICH社製)、1−アミノナフタレン、(±)−BINAP、t−ブトキシナトリウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムのトルエン溶液を窒素雰囲気下で加熱することにより、化合物31aを合成した。
化合物1aの合成におけるN−フェニル−1−ナフチルアミンを化合物31aに変える他は、化合物1aと同様にして、化合物31bを合成した。
【0135】
【化26】

【0136】
化合物1bの合成における化合物1aを化合物31bに変える他は、化合物1bと同様にして、化合物31cを合成した。
【0137】
【化27】

【0138】
【化28】

【0139】
1−ブロモ−3−ヨードベンゼンにTHF中でMgを作用させて、Grignard試薬を調製し、ペント−4−エニルアセテート、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、トリフェニルホスフィンを作用させることで、化合物32dを得た。
化合物1cの合成における4−ブロモアニソールを化合物32dに、化合物1bを化合物31cに変える他は同様にして化合物31e(前記モノマー(31))及び化合物31jを合成し、シロキサン化合物1と同様にして、シロキサン化合物31を合成した。
得られたシロキサン化合物31の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物31には下記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=48600,Mw=88200であった。
【0140】
【化29】

【0141】
<シロキサン化合物32の合成>
(化合物32aの合成)
【0142】
【化30】

【0143】
4−t−ブチルアニリン、1−ブロモナフタレン、(±)−BINAP、t−ブトキシナトリウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムのトルエン溶液を窒素雰囲気下で加熱することにより、化合物32aを合成した。
化合物1aの合成におけるN−フェニル−1−ナフチルアミンを化合物32aに変える他は、化合物1aと同様にして、化合物32bを合成した。
【0144】
【化31】

【0145】
化合物1bの合成における化合物1aを化合物32bに変える他は、化合物1bと同様にして、化合物32cを合成した。
【0146】
【化32】

【0147】
【化33】

【0148】
1−ブロモ−3−ヨードベンゼンにTHF中でMgを作用させて、Grignard試薬を調製し、ペント−4−エニルアセテート、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、トリフェニルホスフィンを作用させることで、化合物32dを得た。
化合物1cの合成における4−ブロモアニソールを化合物32dに、化合物1bを化合物32cに変える他は同様にして化合物32e(前記モノマー(32))及び化合物32jを合成し、シロキサン化合物1と同様にして、シロキサン化合物32を合成した。
得られたシロキサン化合物32の構造は、1H−NMRにて確認した。シロキサン化合物32には下記構造単位が含まれていた。ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。また、分子量は、GPCの結果から、Mn=49300,Mw=89200であった。
【0149】
【化34】

【0150】
また、前記モノマー(38)、(47)、(48)、(51)を用いて、上記と同様にシロキサン化合物38、47、48、51をそれぞれ合成した。シロキサン化合物38、47、48、51にはそれぞれ下記構造単位が含まれていた。また、ポリマー主鎖の末端は、−OSi(CHであった。各シロキサン化合物の分子量は以下の通りである。
シロキサン化合物38:Mn=51200,Mw=88600
シロキサン化合物47:Mn=96200,Mw=171600
シロキサン化合物48:Mn=94600,Mw=168300
シロキサン化合物51:Mn=76800,Mw=136200
【0151】
【化35】

【0152】
【化36】

【0153】
【化37】

【0154】
【化38】

【0155】
(実施例2、比較例1及び2)
前記実施例1で得られたシロキサン化合物を用いて、下記のように膜を作製し、膜質を評価した(実施例2)。
<膜の作製>
作製したシロキサン化合物(2mg)のTHF/トルエン=7/3(198mg)溶液を調製し、40℃で超音波を1時間かけて溶解させた。得られた溶液を0.2μmミクロフィルター(PTFE製)にて濾過した。
石英ガラス基板(2.5cm□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この石英ガラス基板上に、作製したシロキサン化合物溶液を厚みが約40nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で10分間乾燥と150℃で60分間アニール処理することで、シロキサン化合物を成膜した。
また、比較例1として、特開2000−80167号公報に記載の化合物を、比較例2として、国際公開第06/001874号に記載の化合物を用いて膜を作製し、同様に膜質を評価した。
【0156】
【化39】

【0157】
【化40】

【0158】
<膜質評価>
得られた膜の表面を原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメント社製、Nanopics1000)で観察し、以下の基準で評価した。
○:ひび割れが確認されず、膜質良好
×:ひび割れが確認された
【0159】
結果を表1に示す。
【0160】
(実施例3、比較例3及び4)
<上層塗布実験>
前記実施例2、比較例1及び比較例2で作製した膜上に、下記のように上層を成膜し、ダイナミックシムス(D−SIMS)で分析し、上層が下層へ浸透しているかどうかを調べた。なお、浸透しているかどうかの判断は、下層をSi原子、上層をIr原子をマーカーとすることでおこなった。
Ir(ppy)(0.05質量%)と、ホスト化合物1(0.95質量%)とを、メチルエチルケトン(MEK)(99質量%)に混合し、塗布液を調製した。
【0161】
【化41】

【0162】
下層の上に、前記塗布液を厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1600rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥した。
<評価基準>
結果を表1に示す。
○:下層への浸透なし
△:一部下層に浸透
×:下層に浸透
【0163】
【表1】

【0164】
以上のことから、本発明のシロキサン化合物は、良好な膜質を与え、かつ上層塗布液の浸透を防止できることがわかる。
【0165】
(実施例4、比較例5及び6)
(有機電界発光素子の作製)
(塗布液1の調整)
Ir(ppy)(0.04質量%)、ホスト化合物(ホスト1)(0.71質量%)に、MEK(メチルエチルケトン)(99.25質量%)を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液1)を得た。
【0166】
【化42】

【0167】
(有機EL素子Aの作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚みで蒸着し成膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
このITO付ガラス基板上に、下記構造式で表されるPTPDES(ケミプロ化成製)2質量部を電子工業用シクロヘキサノン(関東化学製)98質量部に溶解し、厚みが約40nmとなるようにスピンコート(2500rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥と160℃で10分間アニール処理することで、正孔注入層を成膜した。
【0168】
【化43】

【0169】
前記正孔注入層上に、前記シロキサン化合物1(0.3質量部)をTHF/トルエン=7/3の99.7質量部に溶解し、厚みが約10nmとなるようにスピンコート(1800rpm、20秒間)した後、120℃で30分間乾燥することで、正孔輸送層を成膜した。
【0170】
前記正孔輸送層上に前記塗布液1をグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、電子輸送層として、下記構造式で表されるBAlq(ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニル−フェノラト)−アルミニウム(III))を、厚みが40nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
【0171】
【化44】

【0172】
前記電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法にて形成した。更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子Aを作製した。
【0173】
また、上記実施例4において、シロキサン化合物1を、比較化合物1(特開2000−80167に記載の化合物)、又は比較化合物2(国際公開第06/001874号に記載の化合物)に置き換えた以外は同様にして、それぞれ比較例5及び6の有機電界発光素子を作製した。
【0174】
<駆動電圧の測定>
有機電界発光素子を輝度が1000cd/mになるように直流電圧を印加して発光させる。この時の印加電圧を測定した。
<発光効率の測定>
東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流電圧を各素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定した。発光スペクトルと発光波長は浜松ホトニクス製スペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。これらを元に輝度が1000cd/mでの外部量子効率を輝度換算法により算出した。
結果は以下の通りであった。
実施例4:駆動電圧 12.4V、外部量子効率 8.2%
比較例5:駆動電圧 13.6V、外部量子効率 5.7%
比較例6:駆動電圧 13.2V、外部量子効率 7.6%
この結果から、本発明のシロキサン化合物では、駆動電圧が低下し、外部量子効率も向上していることがわかる。
【0175】
(実施例5、比較例7及び8)
(有機電界発光素子の作製)
(塗布液2の調整)
発光材料(Ir−2)(0.12質量%)、ホスト化合物(Host2)(0.88質量%)に、MEK(メチルエチルケトン)(99質量%)を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液2)を得た。
【0176】
【化45】

【0177】
(有機EL素子Bの作製)
前記実施例4と同様にITO付ガラス基板上に、PTPDESを含む正孔注入層を成膜した。
次に、前記正孔注入層上に、実施例4と同様に前記シロキサン化合物1を含む正孔輸送層を成膜した。
次に、前記正孔輸送層上に前記塗布液2をグローブボックス(露点−68度、酸素濃度10ppm)内で厚みが約30nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)し、発光層とした。
次いで、発光層上に、実施例4と同様に、電子輸送層としてBAlq、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、陰極として金属アルミニウムを成膜した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、有機電界発光素子Bを作製した。
【0178】
また、上記実施例5において、シロキサン化合物1を、比較化合物1(特開2000−80167に記載の化合物)、又は比較化合物2(国際公開第06/001874号に記載の化合物)に置き換えた以外は同様にして、それぞれ比較例7及び8の有機電界発光素子を作製した。
【0179】
得られた有機電界発光素子について、前記実施例4と同様に評価した。
結果は以下の通りである。
実施例5:駆動電圧 10.5V、外部量子効率 11.5%
比較例7:駆動電圧 12.1V、外部量子効率 8.3%
比較例8:駆動電圧 11.4V、外部量子効率 10.1%
この結果から、本発明のシロキサン化合物では、駆動電圧が低下し、外部量子効率も向上していることがわかる。
【0180】
(実施例6、比較例9及び10)
(有機電界発光素子の作製)
発光層の塗布液2の調製において、ホスト化合物をHost2からHost3に変更した以外は、実施例5、比較例7、及び比較例8と同様にして、実施例6、比較例9及び10の有機電界発光素子を作製し、同様に評価した。
【0181】
【化46】

【0182】
結果は以下の通りである。
実施例6:駆動電圧 5.9V、外部量子効率 8.4%
比較例9:駆動電圧 7.4V、外部量子効率 6.2%
比較例10:駆動電圧 6.5V、外部量子効率 5.7%
この結果から、本発明のシロキサン化合物では、駆動電圧が低下し、外部量子効率も向上していることがわかる。
【0183】
(実施例7、比較例11及び12)
(有機電界発光素子の作製)
前記実施例4と同様にITO付ガラス基板を準備した。
該ITO付ガラス基板上に、前記シロキサン化合物1(1質量部)をTHF/トルエン=7/3(99質量部)に溶解し、厚みが約40nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で10分間、150℃60分間乾燥することで、正孔注入層を成膜した。
次に、前記正孔注入層上に、NPD(0.4質量部)をキシレン(99.6質量部)に溶解し、厚みが約10nmとなるようにスピンコート(1500rpm、20秒間)した後、120℃で30分間、150℃10分間乾燥することで、正孔輸送層を成膜した。
【0184】
【化47】

【0185】
次に、前記正孔輸送層上にIr(ppy)及びCBPを質量比5:95で厚みが30nmとなるように蒸着成膜し、発光層とした。
【0186】
【化48】

【0187】
次いで、発光層上に、実施例4と同様に、電子輸送層としてBAlq、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、陰極として金属アルミニウムを成膜した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止することで、実施例7の有機電界発光素子を作製した。
【0188】
また、上記実施例7において、シロキサン化合物1を、比較化合物1(特開2000−80167に記載の化合物)、又は比較化合物2(国際公開第06/001874号に記載の化合物)に置き換えた以外は同様にして、それぞれ比較例11及び12の有機電界発光素子を作製した。
【0189】
得られた有機電界発光素子を実施例4と同様に評価した。
結果は以下の通りである。
実施例7:駆動電圧 5.9V(2.5mA/cm)、外部量子効率 8.4%
比較例11:駆動電圧 7.4V(2.5mA/cm)、外部量子効率 6.2%
比較例12:駆動電圧 6.5V(2.5mA/cm)、外部量子効率 5.7%
この結果から、本発明のシロキサン化合物をHILとして用いても、駆動電圧が低下し、外部量子効率も向上していることがわかる。
【符号の説明】
【0190】
2・・・基板
3・・・陽極
4・・・正孔注入層
5・・・正孔輸送層
6・・・発光層
7・・・正孔ブロック層
8・・・電子輸送層
9・・・陰極
10・・・有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のトリアリールアミンユニットを一つのペンダント基として有し、該ペンダント基が炭素数3以上の2価の連結基を介してケイ素原子と連結し、かつ前記ペンダント基の0.1%以上10%以下が2個以上のケイ素原子と連結した構造を有するシロキサン化合物である、有機電界発光素子用材料。
【請求項2】
前記シロキサン化合物が下記一般式(1−a)で表される構造と、下記一般式(1−b)で表される構造とを有する、請求項1に記載の有機電界発光素子用材料。
【化1】

(一般式(1−a)、及び一般式(1−b)中、R及びRは、各々独立にアルキル基、又はアリール基を表し、Lは各々独立に炭素数3以上の2価の連結基を表し、HLは各々独立に2個以上のトリアリールアミンユニットを含むペンダント基を表す。x及びyは各シロキシ部位の数を表し、x:yは99.9:0.1〜90:10であり、x+yは10以上50以下である。*はシロキサン化合物のケイ素原子に結合する部位を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1−a)又は前記一般式(1−b)におけるHLが下記一般式(2)で表される、請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用材料。
【化2】

(一般式(2)中、Ar、Ar、Ar、及びArは各々独立にアリーレン基を表し、Ar及びArは各々独立にアリール基を表す。Zは2価の連結基を表す。nは0又は1を表し、mは1以上の整数を表す。n=0かつm=1の場合、ArとArは単結合で結合しており、n=0かつmが2以上の場合、ArとAr、ArとArが単結合で結合している。*2及び*3は一般式(1−a)又は一般式(1−b)におけるLと結合する部位、又は水素原子と結合する部位を表す。)
【請求項4】
Ar、Ar、Ar、及びArがフェニレン基であり、Ar及びArがナフチレン基を表す、請求項3に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項5】
前記一般式(1−a)又は前記一般式(1−b)におけるLが下記一般式(3)で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【化3】

(一般式(3)中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Tは2価の連結基を表し、Wは酸素原子、−NH−、又は硫黄原子を表し、Vは2価の連結基を表し、Xは−CH−、酸素原子、又は−NH−を表す。pは1〜5の整数を表し、sは0又は1を表し、uは0〜5の整数を表し、zは0又は1を表す。*4は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)における主鎖中のケイ素原子と結合する部位を表し、*5は一般式(1−a)若しくは一般式(1−b)におけるHLと結合する部位を表す。)
【請求項6】
シロキサン化合物の質量平均分子量(Mw)が、10000〜300000であり、かつ数平均分子量(Mn)が5000〜300000である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料。
【請求項7】
基板上に、陽極及び陰極を含む一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、該陽極と該発光層との間の少なくとも一層の有機層に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する有機電界発光素子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔注入層に含有する、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を正孔輸送層に含有する、請求項7記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する層を湿式法にて作製する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の有機電界発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用材料を含有する膜。

【図1】
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【公開番号】特開2012−15338(P2012−15338A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150595(P2010−150595)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】