説明

木質板状建材の製造方法

【課題】表面に溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方が形成された木質板状建材における表面の違和感を低減し得るとともに、意匠性を向上し得る木質板状建材の製造方法を提供する。
【解決手段】高圧高温水蒸気による加熱処理を施した木材1を、湿潤状態のままでスライスしてスライス単板13を作製し、このスライス単板を、木質基材12に貼着して積層体11を作製した後、該積層体の表面11aに、溝部14及び面取り部15のうちの少なくともいずれか一方を形成し、次いで、該積層体の表面の色調を阻害しない程度の塗料で該表面に着色処理を施すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材の表面にスライス単板を積層した木質板状建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装材に用いられる板状の建材としては、合板やパーティクルボード、中密度繊維板(Medium Density Fiberboard、MDF)等の木質繊維板などの木質系材料を基材として、その表面に、天然銘木をスライス加工して作製した表面化粧板(スライス単板)を貼り合わせた積層構造の木質板状建材が使用されている。
上記のような木質板状建材の表面には、意匠性の観点等から、表面化粧材と木質基材とを積層一体化した後、切削加工により溝部(化粧溝)や面取り部が形成されたものがある。
【0003】
上記溝部の形状としては、断面略V字形状のものが一般的ではある。その他、種々の溝形状があるが、例えば、下記特許文献1では、溝部の内壁面を溝部の中心部に向かって凸湾曲形状とした溝や、溝部の内壁面に屈折点を設けて多段(多面)拡開形状とした溝を設けた木質化粧床材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3741960号公報(図2及び図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような木質板状建材の表面には、そのままでは汚れや傷が付きやすいため、また、地色のバラツキを抑えるため、耐光性を付与するためなどの理由から、塗装により着色処理が施される。
このように、着色処理が施される場合には、溝部や面取り部の形状によっては、塗料が溜まり易くなりその他の部位に比べて濃色となる場合(特に溝部)や、塗料が付着し難くその他の部位に比べて着色不足等が生じる場合(特に面取り部)、更には、表面縁部において色ムラ等が生じる場合があった。例えば、断面略V字形状の溝において、その開き角が小さく傾斜がきついものでは、着色不足等が生じる場合がある一方、開き角が大きく傾斜がゆるいものでは、表面と溝部との色調の差異が生じる結果、表面と溝縁部(表面縁部)との境界が直線状とならず、色ムラが目立つ場合があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、表面に溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方が形成された木質板状建材における表面の違和感を低減し得るとともに、意匠性を向上し得る木質板状建材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る木質板状建材の製造方法は、高圧高温水蒸気による加熱処理を施した木材を、湿潤状態のままでスライスしてスライス単板を作製し、このスライス単板を、木質基材に貼着して積層体を作製した後、該積層体の表面に、溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成し、次いで、該積層体の表面の色調を阻害しない程度の塗料で該表面に着色処理を施すようにしたことを特徴とする。
【0008】
上記構成とされた本発明では、高圧高温水蒸気による加熱処理を木材に施すことで、木材の全体が熱着色されるとともに、耐光性が向上する。この木材をスライスして得たスライス単板を、木質基材に貼着し、その積層体の表面に、溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方の表面加工を施すようにしているので、積層体の表面、及び該表面加工面(溝部の場合は、溝部内壁面、面取り部の場合は面取り面)を構成するスライス単板の切削面には、熱着色が施されているとともに、耐光性が付与されている。従って、耐光性等を付与するために高濃度の塗料を厚塗りする必要がなく、生地の色調に近い薄い着色塗装を、着色処理として上記表面加工面を含む表面の全体に亘って施すことができ、積層体表面のスライス単板が有する木質感を阻害することがない。
また、このような仕上げ塗装とすることで、上記表面加工面を構成するスライス単板の切削面が熱着色されていることと相俟って、上記表面加工面と、それ以外の表面との色調の差異(濃淡)が生じ難く、または、目立ち難く、意匠性を向上させることができる。従って、積層体表面に加工する溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方の形状を所望する種々の形状とでき、立体感のある意匠性の高い木質板状建材を製造することができる。
【0009】
さらに、このような構成によれば、表面に磨耗等が生じて塗膜の消失乃至はスライス単板自体に磨耗が生じた場合にも、スライス単板の全体が熱着色されているので、磨耗部位のスライス単板の全体が消失しない限りは、塗膜消失前後乃至は磨耗前後、及び、その部位とそれ以外の部位との違和感が生じることがなく、外観の劣化を防止できる。
さらには、高圧高温水蒸気による処理温度や処理時間などの処理条件を適宜、設定することで、木材の着色度をコントロールすることもでき、種々の木質板状建材を提供することができる。
【0010】
上述のような高圧高温水蒸気の加熱処理による熱着色、耐光性の付与は、木材組成成分の主成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンのうち、ヘミセルロースが選択的に熱分解し、変質することによって、耐光性の高い重合性着色物が木材繊維細胞組織の全体に均一に生成されることで、細胞組織の粗密により木目が強調されて熱着色されるとともに、耐光性が付与される。この際、処理木材の表面には、僅かにリグニンに含まれるフェノール類似の低分子樹脂が変質した耐光性の低い酸化着色物が副生成して析出する場合があるが、このような場合は、表面析出物を除去するようにしてもよい。
【0011】
また、高圧高温水蒸気による加熱処理を木材に施すことで、木材の均質化が促進される。このような高圧高温水蒸気の加熱処理による木材の均質化は、上記ヘミセルロースの熱分解による変質によって、減少することによりなされる。特に、ヘミセルロースは、セルロースをリグニンで固定化する上で、仲介的な役割を持ち、このヘミセルロースの変質、減少は、木材繊維細胞組織の高密度部分で影響が大きくなり、均質化が促進される。
このように均質化した木材は、木材組織の高密度部位と低密度部位との密度差の影響が小さくなることから、スライス加工性が向上し、高圧高温水蒸気による加熱処理を施していない木材と比べて、スライス加工時に生じる逆目割れが生じ難く、効率的に比較的、肉厚のスライス単板を作製することもできる。このように、スライス単板を肉厚に形成するようにすれば、上記表面加工面における木質基材の露出を効果的に低減乃至は無くすこともでき、当該木質板状建材の表面の見栄えをより向上させることができる。
【0012】
本発明においては、前記着色処理を、着色処理前の積層体表面と着色処理後の積層体表面との色差ΔEが4.0以下となるように施すようにしてもよい。
このような構成とすれば、積層体表面の木質感を損なうことなく、また、上記表面加工面とそれ以外の表面との色調の差異をより効果的に緩和でき、より意匠性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明においては、表面縁部側面と前記積層体の表面とのなす角が、下端部側面と前記積層体の表面とのなす角よりも大きくなるように、前記溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成するようにしてもよい。
このような構成とすれば、上記表面加工面において露出するスライス単板の露出度合いを木質基材の露出度合いよりも効率的に大きくでき、意匠性を向上させることができる。
また、下端部側面の積層体表面に対する傾斜度合いが、表面縁部側面の積層体表面に対する傾斜度合いよりも大きくなるので、溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方が形成された部位において効率的に立体感を表現することができる。すなわち、下端部側において奥まった印象を与えることができ、特に溝部を形成した場合には、無垢材を溝部において突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明においては、前記溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成した後、その下端部に、その形成された溝部及び面取り部の長手方向に沿って濃色線を施すようにしてもよい。
このような構成とすれば、下端部において奥まった印象を与えることができ、特に溝部を形成した場合には、無垢材を溝部において突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明においては、平面視した状態における表面縁部から下端部までの幅が、1.0mm以上、4.0mm以下となるように、前記溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成するようにしてもよい。
このような構成とすれば、溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方が形成された部位の違和感をより効果的に低減できるとともに、溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方が形成された部位において立体感を持たせることができ、より意匠性の高い木質板状建材を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る木質板状建材の製造方法によれば、上述のような構成としたことで、表面に溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方が形成された木質板状建材における表面の違和感を低減することができるとともに、意匠性の高い木質板状建材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る木質板状建材の製造方法の一実施形態について説明するための概略フローチャートである。
【図2】(a)は、同製造方法に用いられる加熱処理装置のシステム構成の一例を模式的に示す概略側面図、(b)は、同加熱処理装置で加熱処理される木材を積層した状態を模式的に示す概略斜視図、(c)は、同加熱処理装置に積層した木材を収納した状態を模式的に示す概略正面図である。
【図3】(a)〜(c)は、いずれも同製造方法を説明するための概念的な説明図である。
【図4】(a)、(b)は、いずれも同製造方法を説明するための概念的な説明図、(c)は、同製造方法により製造された木質板状建材を模式的に示す概略平面図である。
【図5】(a)〜(d)は、いずれも同製造方法において製造された木質板状建材の一変形例を説明するための概念的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態では、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法により製造した木質板状建材として、図4(c)に示すように、床材10を例示している。
床材10は、平面視して長方形状とされており、例えば、1尺(303mm)×6尺(1818mm)程度の長尺板状体とされている。
この床材10は、図4(b)に示すように、木質基材12と、その表面側のスライス単板13とを積層一体化した構造とされている。
このスライス単板13は、後記するように、高圧高温水蒸気による加熱処理が施された木材を湿潤状態のままでスライスして作製されたものである。
【0019】
まず、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法に用いられる加熱処理装置の一例の概略構成について図2に基づいて説明する。
加熱処理装置としての高圧高温水蒸気釜(以下、蒸気釜と略す。)20は、図2(a)に示すように、横長円筒形状の容器本体21の開口を開閉蓋22で閉止して構成され、この開閉蓋22は、フェルール継手やクランプ継手、ボルトナット機構等の緊締手段29により、容器本体21を気密的に封止し、かつ容器本体21に対して着脱自在または開閉自在とされている。尚、図2(c)では、開閉蓋22を取り外した状態を示している。
これら容器本体21及び開閉蓋22は、加熱処理する木材としてのフリッチ材1(図2(c)参照)への金属汚染を防止する観点からステンレス等の汚染性が少なく、かつ耐圧性のある金属材料で製されたものとしてもよい。
この容器本体21の内部には、図2(c)に示すように、容器本体21の両側部に回転自在に支持されたローラー部材21aが、開口部側から奥側に向けて複数本、設けられている。このローラー部材21aには、被処理物が載置される載置プレート8が配置され、フリッチ材1の出し入れが容易に可能となっている。
【0020】
容器本体21の下部には、高圧高温水蒸気供給源3からの高圧高温水蒸気を蒸気釜20内に供給する水蒸気供給管23と、加圧水供給源4からの加圧水を蒸気釜20内に供給する加圧水供給管24と、液化した水蒸気等を蒸気釜20内から排出するドレン管27と、排水管28とが接続されている。
また、容器本体21の上部には、加圧エアー供給源5からの加圧エアーを蒸気釜20内に供給する加圧エアー管25と、蒸気釜20内からの蒸気乃至はガスを排出する排気管26とが接続されている。
【0021】
高圧高温水蒸気供給源3としては、高圧ボイラーなどを採用するようにしてもよい。
加圧水供給源4としては、高圧水タンクや高圧ポンプなどを採用するようにしてもよい。
加圧エアー供給源5としては、エアーコンプレッサーなどを採用するようにしてもよい。
上記した各配管23,24,25,26,27,28には、それぞれの管路途中に、開閉バルブ23a,24a,25a,26a,27a,28aが設けられている。
また、ドレン管27には、管路途中の適所に、スチームトラップ27bやフィルタ等が設けられている。
尚、高圧高温水蒸気釜20の具体的構成は、図示したものに限られず、高圧高温水蒸気による木材の加熱処理が可能な構成であれば、どのようなものでもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法の一例について、図1〜図4に基づいて説明する。
<木材配置工程(ステップ100)>
まず、図2(b)に示すように、加熱処理対象としての複数(図例では、12本)のフリッチ材1,1・・・を、横方向に並べるとともに、高さ方向(厚さ方向)に桟部材6を介在させて積層したものを、図2(c)に示すように、桟部材6を介在させて載置プレート8に載置し、蒸気釜20内に配置する。
また、後記する冷却工程において加圧水を供給して水没させる際に、蒸気釜20内に配置した各フリッチ材1が浮き上がらないよう、適宜の浮き上がり防止手段7を配置する。
【0023】
この浮き上がり防止手段7としては、図例では、蒸気釜20内に配置されたフリッチ材1に見合った重し7としているが、適宜重量とされた金属製の網籠等により、浮き上がり防止手段7を構成するようにしてもよい。または、最上段のフリッチ材1(または、その上方に配された桟部材6)と、載置プレート8とを、金属製のワイヤーロープなどを巻回して固定保持するなど、フリッチ材1の浮き上がりを防止し得るものであればどのようなものでもよい。
【0024】
桟部材6としては、蒸気釜20と同様の金属材料から製されたもの、または、木質系材料からなるものとしてもよい。このような桟部材6は、加熱処理対象としての木材(本例では、フリッチ材1)のサイズに応じて、設けないようにしてもよいが、木材間に介在させることで、高圧高温水蒸気との接触表面積が拡大し、高圧高温水蒸気を木材内部に比較的、迅速に浸透させることができ、効率的な加熱処理を実行することができる。
また、本実施形態では、桟部材6を、蒸気釜20内に配置されたフリッチ材1が蒸気釜20の内壁(図例では、載置プレート8)に接触しないよう、最下段のフリッチ材1と、載置プレート8との間にも介在させるようにしている。また、浮き上がり防止手段7を図例のように、重し7とした場合には、この重し7と、最上段のフリッチ材1とが接触しないよう、これらの間にも桟部材6を介在させるようにしてもよい。
【0025】
この加熱処理対象としての木材(本例では、フリッチ材1)は、乾燥処理をしていない、生材や煮沸または蒸煮木材等の相当の水分を含んだものとすることが高圧高温水蒸気の内部への浸透性の観点から好ましく、その含水率が、30%(ドライベース)以上程度の生材としてもよい。
また、その原料樹種としては、ブナやナラ、スギ、マカバ、ビーチ、オーク、チーク、ハードメープル、チェリー、ウォールナット、ホワイトアッシュ、マホガニー、その他の種々の樹種が挙げられる。ブナ材等の散孔材は、ナラ材等の環孔材に比べて、木目を強調することが困難な樹種であるが、このような散孔材にも、高圧高温水蒸気による加熱処理を施すことで、熱着色され、木目を強調することができる。
【0026】
本実施形態では、加熱処理対象としての木材を、角柱状に加工されたフリッチ材1とし、また、本実施形態では、縦(厚さ)、横(幅)、及び長さのうちの少なくともいずれか一つが、180mm以下のものとしており、図例では、厚さが幅の半分程度で、長尺のものを示している。このように、木材を、縦(厚さ)、横(幅)、及び長さのうちの少なくともいずれか一つを、180mm以下のものとすることで、後記する加熱処理工程及び冷却工程において、木材の表面と心部との温度上昇差(温度下降差)を効率的に低減でき、木材の表面割れや強度劣化等を効率的に低減できるとともに、効率的な加熱処理及び冷却を実行することができる。
【0027】
<加熱処理工程(ステップ101)>
上記のように、蒸気釜20内に、フリッチ材1を配置した後、開閉蓋22により蒸気釜20を密閉し、上記した各バルブのうち、水蒸気供給バルブ23a、排気バルブ26a及びドレンバルブ27aを開とし、その他のバルブ24a,25a,28aを閉とし、蒸気釜20内に、高圧高温水蒸気を供給して、蒸気釜20内の空気を水蒸気に置換する。
次いで、上記状態から排気バルブ26aを閉とし、高圧高温水蒸気を供給して、例えば、1℃/分〜3℃/分程度で徐々に蒸気釜20内を、所定の処理温度となるまで昇温させる。
この加熱処理条件としての処理温度(蒸気釜20内の雰囲気温度)は、105℃以上、160℃以下(圧力範囲で、0.2kgf/cmG(約0.02MPaG)以上、5.3kgf/cmG(約0.52MPaG)以下)程度、好ましくは、150℃(3.9kgf/cmG(約0.37MPaG))以下程度としてもよい。
尚、この処理温度は、例えば、蒸気釜20の内壁に設置した適宜の温度センサー等により計測して制御するようにしてもよく、或いは、圧力計等により蒸気釜20内の圧力を計測して制御するようにしてもよい。
【0028】
上記処理温度が、上記下限温度未満であれば、木材組成成分のヘミセルロースが十分に熱分解されず、木材の均質化並びに木材への熱着色及び耐光性の付与が十分になされない傾向がある一方、上記上限温度を超えれば、加熱処理対象としての木材のサイズや処理時間によっては、ヘミセルロースの熱分解が過剰となり木材繊維細胞組織が劣化する傾向があり、木材の強度が低下する傾向がある。尚、木材のサイズを小さくし、処理時間を短くすれば、160℃を超えて、190℃以下程度の処理温度でも、木材の強度がそれほど劣化することなく、木材の均質化並びに木材への熱着色及び耐光性の付与がある程度は可能である。
この処理温度は、加熱処理対象としての木材(本例では、フリッチ材1)の着色度合いに大きく寄与し、この処理温度を上記範囲内で適宜、設定することで、木材の着色度を容易にコントロールすることができる。
【0029】
また、この蒸気釜20内における高圧高温水蒸気による加熱処理は、加熱処理対象としての木材(本例では、フリッチ材1)の表面温度(実質的には釜内の雰囲気温度)と、木材心部の温度との温度差が、10℃以内となるように加熱処理条件としての処理時間を設定するようにしてもよい。好ましくは、上記温度差が10℃以内となった後、10分以上程度の保持時間を設けるようにしてもよい。より好ましくは、木材心部の温度が、上記処理温度と同程度(105℃以上、160℃以下、好ましくは150℃以下)となるまで、または、同程度となった後に10分以上程度の保持時間を設けるようにしてもよい。
【0030】
このような処理時間とすることで、木材内部における色ムラを低減できるとともに、木材の均質化をより向上させることができ、歩留まり、生産性を向上させることができる。
上記所定の処理温度に達した後の処理時間は、木材の樹種や、サイズ、釜内温度等にもよるが、上記程度のフリッチ材1のサイズで、ブナやナラ材等の場合には、1時間〜4時間程度としてもよい。
尚、上記処理温度を設定する態様に代えて、この処理時間を適宜、設定することで、木材の着色度をコントロールするようにしてもよい。
【0031】
<木材冷却、釜内降圧工程(ステップ102)>
上記のように加熱処理工程を実行した後、木材の冷却、及び蒸気釜20内を降圧する。
この蒸気釜20の降圧処理は、木材の心部が所定温度以下となるまで冷却された後に、実行することが木材の乾燥割れ等を防ぐ観点から好ましい。
この所定温度は、100℃以下程度、好ましくは、90℃以下程度としてもよい。
本実施形態では、冷却工程の効率化及び木材の乾燥割れをより効率的に防止するために、降圧処理を実行する前に、蒸気釜20内を所定の高圧状態に維持した状態で木材を水没させて冷却するようにしている。
【0032】
すなわち、本実施形態では、上記加熱処理工程を実行した後、水蒸気供給バルブ23aを閉とし、加圧水供給バルブ24a及び加圧エアー供給バルブ25aを開として、蒸気釜20内の圧力が低下しないように高圧状態を保ちながら、蒸気釜20内のフリッチ材1を水没させて冷却する。好ましくは、この冷却の際、蒸気釜20内の圧力が上記加熱処理時における圧力以上となるように高圧状態を保ちながら実行するようにしてもよい。或いは、加熱処理時における圧力にもよるが、急激な圧力変動が生じて加熱処理後の木材の表面に乾燥割れ等が生じない程度に、加熱処理時における圧力を少し下回った程度の高圧状態を保ちながら、水没させて冷却するようにしてもよい。
【0033】
この冷却工程実行時における蒸気釜20内の所定の高圧状態は、加圧水供給バルブ24a及び加圧エアー供給バルブ25aを開として、加圧水、加圧エアーを供給しながら、圧力計等の計測値に基づいて、排気バルブ26aを開閉制御乃至は開度制御することで調整するようにしてもよい。
また、上記加圧水の供給は、蒸気釜20内における圧力変動や蒸気釜20自体の劣化(金属疲労)を抑えるために、蒸気釜20内に供給された加圧水が蒸気釜20内において飛散等しないよう、蒸気釜20内の下方から徐々に、かつ穏やかに供給することが好ましい。
さらに、冷却効率を向上させるために、この冷却工程を実行する際には、加圧水供給バルブ24a及び排水バルブ28aを開閉制御乃至は開度制御することで、蒸気釜20内の冷却用水の入れ替えを行うようにしてもよい。
【0034】
尚、上記冷却工程において、蒸気釜20内に直接、冷却用水(加圧水)を供給する態様に代えて、蒸気釜20内に、フリッチ材1を収容可能で、かつ貯水可能な容器を設置し、この容器内に加圧水を供給するようにしてもよい。この場合は、この容器の下部に水蒸気供給管23、加圧水供給管24、ドレン管27及び排水管28を接続するようにすればよい。また、この場合、ドレン管27及び排水管28をさらに蒸気釜20の下部に接続するようにしてもよい。この容器は、蒸気釜20に対して出し入れ自在とされたものとしてもよい。
このように、フリッチ材1を冷却するための加圧水が供給される容器を蒸気釜20内に設置することで、蒸気釜20の劣化を効率的に低減できる。また、この場合は、容器を上記したような汚染性の少ないステンレス製等とし、蒸気釜を耐圧性のある鉄製等としてもよい。これによれば、より効率的に蒸気釜20の劣化を低減できる。
また、上記冷却工程実行時に蒸気釜20内に導入する加圧エアーは、木材の酸化抑制の観点から窒素ガスを使用するようにしてもよい。
【0035】
さらに、上述のように冷却用水を供給して強制的に加熱処理後の木材(処理木材)を冷却する態様に代えて、上記加熱処理工程の後、水蒸気供給バルブ23aを閉とし、木材の心部が上記所定温度以下となるまで自然冷却するようにしてもよい。または、水蒸気供給バルブ23aを閉とし、蒸気釜20内を所定の高圧状態に維持した状態で、加圧エアー供給バルブ25a及び排気バルブ26aを開閉制御乃至は開度制御することで、蒸気釜20内のガスの入れ替えを行い、冷却するような態様としてもよい。
【0036】
上記冷却工程を実行した後、加圧水供給バルブ24a及び加圧エアー供給バルブ25aを閉とし、排気バルブ26a及び排水バルブ28aを開として、蒸気釜20内の圧力を大気圧に復帰させ、蒸気釜20内の冷却用水を蒸気釜20外に排出する(釜内降圧工程)。
この蒸気釜20内の圧力を大気圧に復帰させる際にも、急激な圧力変動が生じないよう、徐々に大気圧に復帰させるようにしてもよい。
尚、蒸気釜20内の降圧は、蒸気釜20内の冷却用水を蒸気釜20外に排出する前に、排気バルブ26aを開にして行うようにしてもよく、または、排気バルブ26a及び排水バルブ28aの両方を開として冷却用水を排出しながら行うようにしてもよく、さらには、冷却用水を排出した後(実質的には、冷却用水の排出により蒸気釜20内はある程度、降圧する)に、排気バルブ26aを開にして行うようにしてもよい。
【0037】
<処理木材精寸、集成工程>
上記釜内降圧工程を実行した後、処理木材としてのフリッチ材1を蒸気釜20から取り出し、精寸仕上げを行う。例えば、後記する集成工程において集成された後に、スライス単板13の大きさ(幅及び長さ)に合わせたフリッチ集成体2となるように精寸する。この際、長手方向両端面はクロスカットソー加工により精寸処理し、その他の面は、モルダー加工により精寸処理するようにしてもよい。
このようなフリッチ材1の全面の精寸処理により、上記加熱処理工程において、木材の組成成分であるリグニンに含まれるフェノール類似の低分子樹脂が変質し、副生成されてフリッチ材1の表面に析出した耐光性の低い酸化着色物が除去されるとともに、フリッチ材1の全面が平滑となる。
【0038】
上記のように各フリッチ材1を精寸処理した後、図3(a)に示すように、フリッチ材1の厚さ面を隣接するフリッチ材1に対面させるようにして集成接着し、フリッチ集成体2を作製する。
本実施形態では、長手方向にそれぞれ4つのフリッチ材1を接合し、短手方向が三列となるように集成接着しており、さらに、長手方向には、集成接着されたフリッチ材1が千鳥状にずれて配置されるように、適宜長さに切断したフリッチ材1を振り分けて集成接着するようにしている。
上記集成接着に使用される接着剤としては、湿潤状態のフリッチ材1の接着が可能な接着剤とすればよく、例えば、湿気硬化型ウレタン接着剤等を採用するようにしてもよい。
【0039】
<スライス加工工程(ステップ103)>
上記のように作製されたフリッチ集成体2を、湿潤状態のままで横突きスライサー機に導入し、所定厚さT(図4(a)参照)となるようスライス加工して、図3(a)に示すように、スライス単板13を作製する。
ここに、湿潤状態とは、上記加熱処理工程の後のスライス加工対象としてのフリッチ集成体2の含水率が所定程度以上の状態を指しており、このフリッチ集成体2の含水率は、30%以上程度とすることがスライス加工性の観点から好ましい。
【0040】
上記のように高圧高温水蒸気による加熱処理を施した木材(本例では、フリッチ集成体2)は、均質化されているので、その木材を湿潤状態のままでスライスしてスライス単板13を作製する態様とすることで、スライス加工性が向上し、高圧高温水蒸気による加熱処理を施していない木材と比べて、スライス加工時に生じる逆目割れが生じ難く、効率的に肉厚のスライス単板を作製することができる。
また、本実施形態のように、加熱処理対象としての木材をフリッチ材1とし、このフリッチ材1を集成接着したフリッチ集成体2をスライス加工してスライス単板13を作製する態様とすることで、比較的、肉厚のものでもスライス加工性が向上するので、フリッチ材1を集成接着したフリッチ集成体2をスライス加工して複数のスライスフリッチ材からなる集成されたスライス単板13を容易に作製できる。従って、後の積層工程において、複数枚の単板を個々に木質基材に並べるようにして貼着する必要がなく、製造工程の簡略化を図ることができる。
さらに、例えば、上記した加熱処理工程時における、集成される各フリッチ材1の加熱処理条件(上記処理温度や上記処理時間など)を適宜、設定し、各フリッチ材1の着色度合いを調整することで、色調の異なるフリッチ材1を作製することができる。この色調の異なるフリッチ材1を、趣向等に応じて組み合わせて集成接着し、スライスすることで、種々の柄パターン(乱貼り状、パーケット状、市松状等)のスライス単板13を作製することもできる。
【0041】
上記所定厚さT(図4(a)参照)は、一般的な突板と同様、0.15mm〜0.25mm程度としてもよいが、好ましくは、スライス加工性、コスト性、木質板状建材の意匠性及び外観劣化の低減等の観点から、0.30mm以上、2.25mm以下程度、より好ましくは、0.35mm以上、2.00mm以下程度としてもよい。
上記所定厚さが、上記下限厚さ未満であれば、耐摩耗性が低くなる傾向があるとともに、後記するように、所定形状の溝部や面取り部を形成した際に、木質基材の露出度合いが大きくなる傾向があり、意匠性が低下する傾向がある。一方、上記上限厚さを超えれば、高コストになる傾向があるとともに、スライス加工性が悪化する傾向があり、スライス単板の裏面に割れが発生する傾向がある。
上記のような所定厚さのスライス単板13とすることで、0.15mm〜0.25mm程度の厚さとされた一般的な突板と比べて、後記する溝部及び面取り部における意匠性をより向上させることができるとともに、磨耗等による木質基材の露出を効果的かつ効率的に低減できる十分な厚さとなり、外観の劣化を効率的に防止できる。
【0042】
尚、本実施形態では、加熱処理対象としての木材をフリッチ材1とし、このフリッチ材1を上記のように集成接着したフリッチ集成体2をスライス加工してスライス単板13を作製する態様について示しているが、このような態様に限られない。例えば、加熱処理対象を、所望する木質板状建材の大きさに合わせた形状の肉厚の板材とし、この板材に対して上記各工程を必要に応じて実行した後、この板材をスライス加工してスライス単板を作製するようにしてもよい。換言すれば、フリッチ材の一つを、所望する木質板状建材の大きさに応じた形状とし、上記各工程を必要に応じて実行した後、集成等することなく、このフリッチ材からスライス単板を作製するようにしてもよい。
【0043】
<積層工程(ステップ104)>
上記のように作製されたスライス単板13を、図3(b)及び図3(c)に示すように、木質基材12に貼着して積層体11を作製する。
この積層接着に使用される接着剤としては、各種水性接着剤やエマルション接着剤等としてもよく、例えば、酢酸ビニル系接着剤やゴムラテックス系エマルション接着剤としてもよい。
また、接着剤を介して木質基材12とスライス単板13とを積層した後、熱プレス機(ホットプレス機)に導入し、加熱圧締して乾燥硬化させるようにしてもよい。
尚、木質基材12とスライス単板13との間に、熱プレス時における接着剤やスライス単板等からの水蒸気の放出を促すために、紙材等を介在させて積層接着するようにしてもよい。
また、接着剤の種類に応じて、加熱圧締する態様に代えて、コールドプレスとしてもよく、自然乾燥としてもよい。
【0044】
上記した木質基材12としては、合板やLVL(単板積層材)等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料を板状に加工したものが挙げられる。または、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉・プラスチック複合材(WPC)を板状に加工したものとしてもよい。これらは、適宜、組み合わせて積層し、木質基材12を構成するようにしてもよい。例えば、合板やパーティクルボード等の表面に、比較的、表面硬度の高いMDFやWPC等を積層して木質基材12を構成するようにしてもよい。
【0045】
<表面加工工程(ステップ105)>
上記のように積層体11を作製した後、図4(a)に示すように、当該積層体11の表面11aに、所定形状の溝部14及び面取り部15を形成する。
本実施形態では、図4(c)に示すように、縦横に複数本の溝部14を形成し、四周の全周に亘って面取り部15を形成している。
【0046】
溝部14は、本実施形態では、図4(a)に示すように、積層体11の表面11aと表面縁部(開口縁14b)側面とのなす角θ1が、積層体11の表面11aと下端部(底部14a)側面とのなす角θ2よりも大きくなるように形成されている。換言すれば、溝部14の底部14a側の開き角(溝部底部側における両内壁面のなす角)よりも開口縁14b側の開き角(溝部開口側における両内壁面のなす角)が大きくなるように、開口側に向けて拡開状に形成するようにしている。また、この溝部14は、図例では、木質基材12の層内に底部14aが達するように切削加工されている。
また、本実施形態では、溝部14の両内壁面の途中部位において角部14c,14cが形成されるように、両内壁面が多面形状(図例では、各二面)に形成されており、上記開き角の関係を換言すれば、これら角部14c,14cを屈折点として、その底部側が、急勾配のテーパ形状とされる一方、その開口側が、緩勾配のテーパ形状とされている。
【0047】
これら角部14c,14cは、図例では、木質基材12の層内に位置するように形成されるとともに、積層体11の表面11aから、溝部14の最深部までの深さの略半分程度の位置となるように形成されている。このような角部14c,14cの位置や個数は、各内壁面の多面数や各部位における開き角、溝部14の開口縁14b,14b間の幅(溝幅)、溝深さなどに応じて、適宜、設計可能である。
【0048】
溝部14の上記溝幅は、製造後の木質板状建材10の施工態様にもよるが、図例のように床材10(図4(c)参照)や内壁材、天井材などの内装材として施工される場合には、意匠性の観点や手触り感等の観点から、2.0mm以上、8.0mm以下程度とすることが好ましい。つまり、図4(a)に示すように、溝部14を、底部14aを通る中心線を挟んで左右対称形状としたものでは、平面視した状態における溝部14の開口縁14bから底部14aまでの幅Wが、1.0mm以上、4.0mm以下程度とすることが好ましい。
この幅Wが、下限幅未満であれば、溝部自体が目立たず、立体感が失われ、加工性の観点からも困難となる傾向がある。一方、上限幅を超えれば、溝部が目立ち過ぎる傾向があり、外観上の違和感が生じ、また、特に、床材として施工される場合には、歩行時の違和感等が生じる傾向がある。
尚、スライス単板13の表面13aから、溝部14の底部14aまでの深さ(溝深さ)は、上記溝幅と同様、製造後の木質板状建材10が内装材として施工される場合には、上記溝幅の半分程度から上記溝幅と同程度のものとしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、複数本の溝部14を、上記のように集成接着された各フリッチ材1の接合部(継ぎ目)に沿って形成するようにしている(図3(a)及び図4(c)参照)。
上記のように、所定形状の溝部14を形成することで、溝部14の内壁面において露出するスライス単板13の露出度合いを木質基材12の露出度合いよりも効率的に大きくでき、意匠性を向上させることができる。
また、底部14a側の開き角が開口側の開き角よりも小さくなるので、溝部14において効率的に立体感を表現することができ、無垢材を溝部14において突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性を向上させることができる。
【0050】
さらに、上述のように、スライス単板13の厚さTを、肉厚のものとし、上記所定形状の溝部14を形成するようにすれば、溝部14の内壁面における木質基材12の露出を効果的に低減乃至は無くすこともでき、当該木質板状建材10の表面の見栄えをより向上させることができる。
また、各フリッチ材1の着色度合いを異ならせたものを集成してスライス単板13を作製し、その継ぎ目に沿って上記所定形状の溝部14を形成することで、溝部14の両内壁面に露出する各スライス単板13の色調が異なるものとなるので、より無垢集成材に近い外観を呈するものとできる。
これら溝部14の形成箇所や本数は、意匠性等の観点から適宜、選択可能であり、図例のように、縦横の全ての継ぎ目に沿って溝部を形成する態様に代えて、例えば、長手方向に沿う継ぎ目のみに溝部を形成するようにしてもよい。
【0051】
面取り部15は、溝部14と同様、角部15cを屈折点として多面形状に形成されており、その形状及び寸法は、底部14aを通る中心線を挟んで左右対称形状とされた溝部14の左右一方側の形状と略同寸同形状とされている。すなわち、積層体11の表面11aと表面縁部(上端縁部15b)側面とのなす角θ1が、積層体11の表面11aと下端部(下端縁部15a)側面とのなす角θ2よりも大きくなるように形成されている。換言すれば、多面形状とされた面取り部15の各面の勾配は、溝部14の内壁面の勾配と略同程度とされるとともに、平面視した状態における上端縁部15bから下端縁部15aまでの幅Wが溝部14の幅Wと略同寸法、すなわち、上記溝幅の略半分の寸法とされ、スライス単板13の表面13aから、面取り部15の下端縁部15aまでの深さが上記溝深さと略同寸法とされている。
つまり、本実施形態では、隣接する木質板状建材(図例では、床材1)同士が接合された際に、各木質板状建材に形成された面取り部によって、これら木質板状建材の端部間に、溝部14と略同寸同形状の目地溝が形成されるように面取り部15を形成している。
【0052】
尚、溝部14及び面取り部15の形状は、後記するように種々の形状のものが採用可能であるが、上記のように、溝部14を、その底部14aが木質基材12の層内に達するように形成し、かつ、木質基材12が露出するように面取り部15を形成した場合には、これら溝部14及び面取り部15の形成された部位において、スライス単板13の露出面積が、木質基材12の露出面積を上回るように、これら溝部14及び面取り部15を形成することが好ましい。また、このような場合には、木質基材12の地色がスライス単板13の地色に近いものとすることが好ましい。
また、図例では、溝部14と上記目地溝との断面形状を、略同寸同形状としたものを例示しているが、これらが互いに異なる断面形状とされたものとしてもよい。
また、図例では、溝部14及び面取り部15を、これらの形成された部位において木質基材12が露出するように形成した態様を示しているが、上述のように、本実施形態によれば、スライス単板13を比較的、肉厚のものとできるので、これら溝部14及び面取り部15の下端部14a,15aが、スライス単板13の厚み内に止まるように形成するようにしてもよい。これによれば、これらの部位において木質基材12が露出することなく、木質板状建材の意匠性をより向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように溝部14及び面取り部15を形成する際、または、その前後の工程において、積層体11の四周端部に、図4(c)に示すように、隣接する木質板状建材(図例では、床材10)と実接合される雄実部17及び雌実部18を形成するようにしている。
このような実部17,18は、隣接する木質板状建材同士を接合する接合部を構成し、図例では、雄実部17と雌実部18とを備えた本実接合構造としているが、雇い実接合や相じゃくり接合構造等の他の接合構造とされたものとしてもよく、このような実接合部を設けないようにしてもよい。
【0054】
尚、上記した溝部14及び面取り部15並びに実部17,18の加工は、トリマやルータ、テノーナー、カットソー等の適宜の木材加工工具、木材切削工具により形成するようにしてもよい。図例のように、溝部として、縦溝を長手方向の全長に亘って設け、横溝を、縦溝間に千鳥状に設ける場合には、生産性の観点から縦溝をカットソー(丸のこ)等で形成し、横溝をルータで形成するようにしてもよい。このような工具は、所望する溝部14や面取り部15の形状に応じて、適宜、選択可能である。
また、上記した溝部14及び面取り部15並びに実部17,18を形成する前に、積層体11の表面11aを、ワイドベルトサンダーにて表面仕上げ処理(表面研磨処理)するようにしてもよい。この際、使用する番手は、スライス単板13に用いる樹種にもよるが、180番手〜320番手程度のものとし、積層体11の表面11aが平滑となるよう表面研磨するようにしてもよい。また、溝部14等形成後にも、溝部14の内壁面や面取り部15を含んで表面研磨処理を施すようにしてもよい。これによれば、溝部14の開口縁14bや面取り部15の上端縁部15b等の毛羽立ちを低減できる。
【0055】
<塗装工程(ステップ106)>
上記のように表面加工処理が施された積層体11の表面(溝部14及び面取り部15を含む)11aに所定の塗装を施し、図4(b)に示すように、塗膜層16を形成する。
尚、図4(b)及び後記する図5(a)〜(c)では、各積層体の側端面にも塗膜層を形成した例を示しているが、各面取り部の下端縁部まで塗膜層を形成するものとしてもよい。
【0056】
この塗装工程では、高圧高温水蒸気による加熱処理によって、スライス単板13には、熱着色が施されているとともに、耐光性が付与されているので、耐光性等を付与するために高濃度の塗料を厚塗りする必要がない。従って、積層体11の表面11aの色調を阻害しない程度の塗料で着色処理を施すようにしている。
この着色処理は、上記のように表面加工処理が施された着色処理前の積層体11の表面11aと、塗装後の表面との色差ΔEが、4.0以下程度となるように隠蔽性の低い、低濃度の塗料を塗布し、生地着色を施すようにしてもよい。
このように、積層体11の表面11aの地色と、塗装後の木質板状建材との色差ΔEが比較的小さくなるように生地着色を施すことで、塗装後の木質板状建材の表面の木質感が阻害されることがなく、意匠性を向上させることができる。
【0057】
また、このような仕上げ塗装とすることで、溝部14の内壁面及び面取り部15の面取り面を構成するスライス単板13の切削面が熱着色されていることと相俟って、溝部14の内壁面及び面取り部15の面取り面と、これら以外の表面との色調の差異(濃淡)が生じ難く、または、目立ち難く、意匠性を向上させることができる。従って、積層体11の表面11aに加工する溝部14や面取り部15の形状を所望する種々の形状とでき、立体感のある意匠性の高い木質板状建材10を製造することができる。
【0058】
さらに、上記のような仕上げ塗装とすることで、製造後の木質板状建材10の表面に磨耗等が生じて塗膜層16の消失乃至はスライス単板13自体に磨耗が生じた場合にも、上記のように塗装前後における色差ΔEが小さく、スライス単板13の全体が熱着色されているので、磨耗部位のスライス単板13の全体が消失しない限りは、塗膜消失前後乃至は磨耗前後、及び、その部位とそれ以外の部位との違和感が生じることがなく、外観の劣化を防止できる。
【0059】
上記色差ΔEは、L表色系またはハンターLab表色系によるものとしてもよい。
また、上記低濃度の塗料は、例えば、着色成分として各種色の顔料を主成分とした水性合成樹脂着色剤を希釈剤で希釈した水性合成樹脂塗料としてもよい。このような水性合成樹脂着色剤には、適宜、粘度調整剤や界面活性剤を添加するようにしてもよい。また、この希釈剤に対する顔料の配合比率は、上述のように、積層体11の表面11aとの色差ΔEが4.0以下程度となるように、隠蔽性の低い、低濃度の塗料とすればよく、例えば、スポンジロールを用いて塗装する場合には、0.5%以上、15%以下程度としてもよい。このような塗料の希釈率は、塗布方法により、塗布性の観点から適宜、選択可能である。
また、上記のように生地着色処理を施した後、クリアー塗料を更に仕上げ塗装として施すようにしてもよい。
【0060】
尚、上記各塗料の塗布方法としては、種々の塗布方法の採用が可能であるが、ロールコーター法を用いることで、例えば、スプレー塗布に比べて、飛散等による塗料の無駄や洗浄等の必要が生じず、生産性を向上させることができる。また、同ロールコーター法を用いることで、例えば、カーテンフローコーター法に比べて、塗布量の微調整が可能であるため、濃淡等が形成され難く、塗装後の木質板状建材の意匠性をより効率的に向上させることができる。
また、上記した塗料の着色成分としての顔料または染料の割合は、塗装対象である積層体11の表面11aの地色や、塗装後の所望する色調等に応じて適宜、選択可能であり、木質感を阻害しないように、白色系の塗料を用いるようにしてもよいが、その他、半透明塗料や淡色系の塗料等としてもよい。
さらに、上記塗料としては、白色系やその他の水性ステインを、適宜、希釈したものとしてもよい。
【0061】
上記のように各工程を経て、図4(c)に示すように、木質板状建材としての床材10が製造される。
以上のように、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法によれば、表面に溝部14及び面取り部15が形成された木質板状建材10における表面の違和感を低減することができるとともに、意匠性の高い木質板状建材10を製造することができる。
また、上記のように、溝部14の両内壁面の開口縁14b側及び面取り部15の上端縁部15b側を、表面に対して緩やかな傾斜面となるものとした場合にも、上述のように、所定の着色処理を施すようにすることで、この開口縁14bや、上端縁部15bにおいて色ムラ等が生じ難く、違和感を低減することができる。さらに、溝部14の両内壁面の底部14a側及び面取り部15の下端縁部15a側を、表面に対して急な傾斜面となるものとした場合にも、上述のように、所定の着色処理を施すようにすることで、その勾配が急であることと相俟って、色調の差異が目立ち難く、違和感を低減することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法を用いて製造された木質板状建材の一変形例について図5に基づいて説明する。
尚、上記した木質板状建材10と主に異なる点は、溝部及び面取り部の形状であり、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略或いは簡略に説明する。
【0063】
<第1変形例>
図5(a)に示す第1変形例に係る木質板状建材10Aは、溝部14Aを、その両内壁面が、多面形状ではなく、いずれも平面形状とされた断面略V字形状としている。
また、この溝部14Aの開き角θ3は、両内壁面が比較的、緩やかな勾配のテーパ形状とされた鈍角とされており、例えば、100度〜120度程度とされている。
尚、面取り部15Aの形状は、上記した木質板状建材10の面取り部15と同様、隣接する木質板状建材同士が接合された際に形成される目地溝の形状が、溝部14Aと略同寸同形状となるように形成されている。以下、各変形例についても同様であるので、以下の変形例では面取り部の形状の説明を省略或いは簡略に説明する。
本変形例のように、溝部14Aの両内壁面及び面取り部15Aを、表面に対して緩やかな傾斜面となるものとした場合にも、上述のように、所定の着色処理を施すようにすることで、開口縁14bや、上端縁部15bにおいて色ムラ等が生じ難く、違和感を低減することができる。
【0064】
<第2変形例>
図5(b)に示す第2変形例に係る木質板状建材10Bは、溝部14Bを、上記第1変形例と同様、その両内壁面が、多面形状ではなく、いずれも平面形状とされた断面略V字形状としている。
また、この溝部14Bの開き角θ3は、両内壁面が比較的、急な勾配のテーパ形状とされた鋭角とされており、例えば、30度〜80度程度とされている。
このように、溝部14Bの両内壁面及び面取り部15Bを、表面に対して急な傾斜面となるものとした場合にも、溝部14B及び面取り部15Bに露出するスライス単板13の切削面には、熱着色が施されており、また、上記所定の着色処理を施すようにすることで、塗装による着色不足等が溝部14B等で生じた場合にも、それ以外の部位との色調の差異が目立ち難く、違和感を低減することができる。
【0065】
<第3変形例>
図5(c)に示す第3変形例に係る木質板状建材10Cは、溝部14Cを、開口側に向けて拡開状に形成するとともに、両内壁面が丸みを帯びた凸湾曲形状(R面形状)としている。
このものでも、上記した木質板状建材10の溝部14と同様、溝部14Cの底部14a側の開き角(溝部底部側における両内壁面の接線のなす角)よりも開口縁14b側の開き角(溝部開口側における両内壁面の接線のなす角)が大きくなるように、開口側に向けて拡開状に形成されている。すなわち、この溝部14Cは、積層体11の表面11aと開口縁14b側面の接線とのなす角が、積層体11の表面11aと底部14a側面の接線とのなす角よりも大きくなるように形成されている。
このものでも、上記した木質板状建材10の溝部14及び面取り部15と同様の効果を奏するとともに、溝部14Cの両内壁面及び面取り部15Cが丸みを帯びた形状であるので、柔らかな印象を与えるとともに、手触り感の良いものとなる。
【0066】
<第4変形例>
図5(d)に示す第4変形例に係る木質板状建材10Dは、溝部14Dを、上記第1変形例と同様、その両内壁面が、多面形状ではなく、いずれも平面形状とされた断面略V字形状としており、さらに、その底部14Daは断面略矩形状の角溝形状とされている。
この底部14Daの角溝幅は、溝部14D自体の溝幅Wにもよるが、例えば、0.3mm〜1.5mm程度の細溝状のものとしてもよい。このような角溝を底部に設けることで、奥まった印象を与えることができるとともに、溝加工時における切削工具等の損傷を防止することができる。
また、本変形例では、スライス単板13の厚さTを他例よりも肉厚のものとし、溝部14Dの底部14Daが、木質基材12の層内に達しないよう、スライス単板13の層内に止まるように形成されている。
また、この溝部14Dの開き角θ3は、図例では、略直角(80度〜100度程度)としている。
【0067】
さらに、この溝部14Dの底部14Daには、当該溝部14Dの長手方向に沿って濃色線19を施すようにしている。
この濃色線19は、上記した塗装工程の前工程或いは後工程において実行するようにしてもよく、また、その色調が、上記所定の着色処理の塗料よりも濃色のものとすればよい。
この濃色線19は、例えば、インクジェット塗装や、レーザーによる焼き処理、細幅ロールによる転写等により施すようにしてもよい。
また、この濃色線19の幅は、溝部14D自体の上記溝幅にもよるが、例えば、0.1mm〜1.0mm程度の細線状のものとしてもよい。
【0068】
本変形例のように、溝部14Dの底部14Daに、濃色線19を施すことで、溝部14Dの底部14Daにおいて、より奥まった印象を与えることができ、無垢材を溝部14Dにおいて突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性を向上させることができる。尚、角溝形状とされた底部14Daに対応する面取り部15Dの下端段部15Daにも、当該面取り部15Dの長手方向に沿って、上記同様の濃色線を施すようにしてもよい。
また、本変形例において説明した底部の角溝、及び濃色線のうちの少なくともいずれか一方を、上記した木質板状建材10の溝部14(面取り部15)、及び各変形例の各溝部、各面取り部に設けるようにしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法によれば、種々の形状の溝部及び面取り部とした場合にも、溝部及び面取り部における違和感が生じ難い。従って、溝部及び面取り部の形状を所望する種々の形状とでき、立体感のある意匠性の高い木質板状建材を製造することができる。
尚、上記した各例において示した溝形状(及び面取り形状)は、一例に過ぎず、他の形状のものとしてもよい。例えば、底部側が急勾配のテーパ形状で、開口側がR面形状のものとしたり、或いは、これを逆にして、底部側がR面形状で、開口側が緩勾配のテーパ形状としたりするなど、種々の形状とすることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法により製造される木質板状建材としては、床材として施工されるものに限られず、相互に端部が接合されて互いの面取り部によって目地溝が形成される壁材や天井材などの他の内装材としてもよい。または、その他の内装パネル材や扉材、各種造作部材、家具材等を、本実施形態に係る木質板状建材の製造方法により製造するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、木質板状建材の表面端縁部の四周の全周に亘って面取り部を形成したものを例示しているが、少なくとも一辺の表面端縁部に面取り部を形成するようにしてもよい。
さらにまた、本実施形態では、木質板状建材の表面に、溝部及び面取り部の両方を形成したものを例示しているが、これらのうちのいずれか一方のみを形成するようにしてもよい。
【0071】
次に、本発明に係る製造方法により製造された木質板状建材の実施例の一例と比較例とを以下に説明する。
各実施例及び各比較例では、木質基材を、厚さが12mmの合板とし、また、含水率が40〜62%(ドライベース)程度の生材のブナ材を所定のサイズ(厚さ50mm、幅110mm、長さ600mm)に形成した12本のフリッチ材を、処理対象としての木材とした。
【0072】
<フリッチ材処理条件>
各実施例では、上記12本のフリッチ材を上記同様に桟部材を介在させて積層し、高圧高温水蒸気による上記加熱処理を施した。この加熱処理時における処理温度は、135℃とし、昇温時間を、30分、その後の処理時間を2時間とした。
また、高圧高温水蒸気による上記加熱処理を施した後、上記のように高圧状態を保ちながら水没させて冷却した。この冷却時間は、30分とし、フリッチ材温度が90℃以下となるまで冷却した後、蒸気釜内を降圧して、フリッチ材を取り出し、精寸処理した。次いで、このフリッチ材を上記したように湿気硬化型ウレタン接着剤で集成接着し、フリッチ集成体を作製した。
一方、各比較例では、上記12本のフリッチ材を加熱処理等することなく、精寸処理して集成接着し、フリッチ集成体を作製した。
【0073】
<スライス加工条件>
上記のようにそれぞれ作製したフリッチ集成体を横突きスライサーによりスライス加工して所定厚さ(0.35mm)のスライス単板をそれぞれ作製した。
【0074】
<積層条件>
上記のようにそれぞれ作製したスライス単板を、上記木質基材の表面に、酢酸ビニル系接着剤で積層接着し、積層体を作製した。この際、塗布量を、90g/m程度とし、積層後に、熱プレス機(ホットプレス機)に導入し、加熱圧締した。この際のプレス条件は、型面温度を110℃とし、プレス圧を3kgf/cm(約0.29MPa)とし、プレス時間を60秒とした。
【0075】
<表面加工条件>
上記のようにそれぞれ作製した積層体の表面を、240番手のワイドベルトサンダーにより研磨処理した後、所定形状の溝部及び面取り部を加工形成した。
実施例1及び比較例1では、上記した第1実施形態に係る木質板状建材10において説明した多面拡開形状(図4(b)と同様)とし、上記幅Wを、1.5mmとした。
実施例2及び比較例2では、上記した第1変形例に係る木質板状建材10Aにおいて説明した緩勾配形状(図5(a)と同様)とし、上記幅Wを、1.5mmとした。
実施例3及び比較例3では、上記した第2変形例に係る木質板状建材10Bにおいて説明した急勾配形状(図5(b)と同様)とし、上記幅Wを、1.0mmとした。
実施例4及び比較例4では、上記した第3変形例に係る木質板状建材10Cにおいて説明したR面形状(図5(c)と同様)とし、上記幅Wを、1.5mmとした。
実施例5、実施例6及び比較例5では、上記した第4変形例に係る木質板状建材10Dにおいて説明した底部(下端部)に角溝(段部)を有した形状(図5(d)と同様)とし、溝幅Wを、3.0mmとした。
尚、各実施例及び各比較例における溝部及び面取り部の深さは、いずれも1.5mmとした。
【0076】
<塗装条件>
上記のように溝部及び面取り部を形成した実施例6の積層体の溝部の底部に、レーザーによって、幅が0.3mm程度の濃色線を、溝部の長手方向に沿って施した。
また、この実施例6を含み、上記のように溝部及び面取り部を形成した各実施例及び各比較例の積層体の表面に、ロールコーターにより以下の塗装仕上げを行った。
【0077】
各実施例では、生地着色処理として、水性着色剤(白色顔料(酸化チタン)72%、黒色顔料(カーボンブラック)1.2%、赤色顔料(有機)4%、黄色顔料(有機)22.8%に粘度調整剤、界面活性剤を添加したもの)を、専用希釈剤にて2%に希釈した生地着色塗料を用いた(いずれもナトコ株式会社)。
この生地着色塗料を、スポンジロールにより塗布し、リバースロールによって掻き取り、さらに、ゴムロールにより塗布し、塗布量を14〜16g/mとした。塗布後、140℃の温風乾燥機で45秒、乾燥させた。
【0078】
上記生地着色処理の後、さらに仕上げ塗装として、以下のクリアー塗装を行った。
下塗りとして、ウレタン系クリアー塗料(サンユーペイント株式会社 NYX−S−701)を、ゴムロールにて、80g/m塗布した後、送風機で乾燥させた。次いで、240番手のワイドベルトサンダーにより研磨処理し、上塗りとして、ウレタン系クリアー塗料(サンユーペイント株式会社 NYX−E−800)を、ゴムロールにて、60g/m塗布した後、送風機で乾燥させて、クリアー塗装を施した。
上記各実施例の生地着色前の積層体表面と、生地着色後の積層体表面との色差を、分光測色計(L表色系)で測定した結果、色差ΔEは、全て4.0以下であった。
【0079】
一方、各比較例では、生地着色処理として、水性着色剤(白色顔料(酸化チタン)75%、黒色顔料(カーボンブラック)1.2%、赤色顔料(有機)4%、黄色顔料(有機)19.8%に粘度調整剤、界面活性剤を添加したもの)を、専用希釈剤にて20%に希釈した生地着色塗料を用いた(いずれもナトコ株式会社)。
尚、塗布量及び塗布方法は、上記各実施形態と同様であり、クリアー塗装も同様である。
上記各比較例の生地着色前の積層体表面と、生地着色後の積層体表面との色差を、分光測色計(L表色系)で測定した結果、色差ΔEは、全て4.0を大きく上回っていた。
【0080】
上記各実施例1〜6及び比較例1〜5の木質板状建材の表面を目視観察した。
結果は、各実施例では、溝部及び面取り部と、それ以外の表面部位(平面部位)との外観上の違和感はなく、良好な結果であった。
特に、実施例1,4,5,6では、無垢材を溝部において突き合わせたような無垢集成材に近い外観を呈し、より意匠性の高いものであった。
一方、各比較例では、生地着色の色ムラが目立ち、溝部及び面取り部と、それ以外の表面部位(平面部位)との外観上の違和感が目立つ結果となった。
特に、比較例1,2,4では、溝部及び面取り部と、表面部位(平面部位)との境界が直線状とならず、色ムラが目立つ結果となった。
また、比較例1,3,4,5では、溝部の底部や、内壁面において着色不足が目立つ結果となった。
【符号の説明】
【0081】
1 フリッチ材(木材)
10,10A,10B,10C,10D 床材(木質板状建材)
11 積層体
11a 積層体の表面
12 木質基材
13 スライス単板
14,14A,14B,14C,14D 溝部
14a 溝部の底部(溝部の下端部)
14b 溝部の開口縁(溝部の表面縁部)
15,15A,15B,145,15D 面取り部
15a 面取り部の下端縁部(面取り部の下端部)
15b 面取り部の上端縁部(面取り部の表面縁部)
19 濃色線
W 溝部及び面取り部の幅
θ1 表面縁部側面と積層体表面とのなす角
θ2 下端部側面と積層体表面とのなす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧高温水蒸気による加熱処理を施した木材を、湿潤状態のままでスライスしてスライス単板を作製し、このスライス単板を、木質基材に貼着して積層体を作製した後、該積層体の表面に、溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成し、
次いで、該積層体の表面の色調を阻害しない程度の塗料で該表面に着色処理を施すようにしたことを特徴とする木質板状建材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記着色処理を、着色処理前の積層体表面と着色処理後の積層体表面との色差ΔEが4.0以下となるように施すようにしたことを特徴とする木質板状建材の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
表面縁部側面と前記積層体の表面とのなす角が、下端部側面と前記積層体の表面とのなす角よりも大きくなるように、前記溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成するようにしたことを特徴とする木質板状建材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成した後、その下端部に、その形成された溝部及び面取り部の長手方向に沿って濃色線を施すようにしたことを特徴とする木質板状建材の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
平面視した状態における表面縁部から下端部までの幅が、1.0mm以上、4.0mm以下となるように、前記溝部及び面取り部のうちの少なくともいずれか一方を形成するようにしたことを特徴とする木質板状建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94298(P2011−94298A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246138(P2009−246138)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】