説明

杭施工機および杭施工方法

【課題】 鋼管またはケーシングチューブの先端に掘削具を簡単に着脱できる掘削装置を設け、杭穴を掘り込むのに排土を極力少なくする杭施工機及び杭施工方法を提供すること。
【解決手段】 鋼管またはケーシングチューブ2と、それをチャック機構によって把持し、駆動モータの回転力を伝達して回転させるとともに、昇降シリンダの駆動力によって地盤に押し込むチュービング装置1と、地盤を掘削する掘削具と円筒形状の内壁に等間隔に設けられた複数のグリップ部材を押し付けるグリップ機構とを備え、その掘削具が下端開口部を塞ぐようにして鋼管またはケーシングチューブ2内にグリップ機構によって装着された掘削装置5とを有し、掘削装置5の掘削具によって掘削した土壌を鋼管またはケーシングチューブ2の外側に押し退けて掘り進めるようにし、一定の深度まで掘削後、掘削装置を鋼管またはケーシングチューブから取り外し、取り出せるようにした杭施工機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば軟弱な地盤上に構築物を支持するための基礎杭を施工する場合に、鉄筋かごを建て込みコンクリートを打設する場所打ち杭の杭穴を鋼管またはケーシングチューブを利用して掘り込む杭施工機及び杭施工方法に関し、特に杭穴を掘り込むのに排土を極力少なくする杭施工機及び杭施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭を設置する杭穴を地盤に掘り込む場合、これまでの工法ではオーガなどで掘削した土砂を地上に排出していた。しかし、掘り出した掘削残土は産業廃棄物として処分しなければならず、排土は、そのための労力とともに処分のための経費が必要になってきていた。そこで、従来から杭穴を無排土で掘り込むようにした施工が提案されてきており、ケーシングチューブを利用して地盤を掘削するようにした一案として下記の特許文献1が開示されている。この特許文献1には、ケーシングチューブの下端にオーガヘッドを取り付けて先進しつつ土壌を拡開・圧密する場所打ち杭施工機が記載されている。
【0003】
特許文献1の場所打ち杭施工機では、ケーシングチューブの下端に螺旋状に突条のスクリュウ翼が形成されたオーガヘッドが取り付けられ、ケーシングチューブが上端の回転駆動装置によって回転する。すると、オーガヘッドのスクリュー翼が土壌中に螺進して下向きの推進力を先じ、この推進力および装置の自重により円錐状のオーガヘッドベースが土壌内へ圧下され、土壌を拡開し圧密しつつ掘り進む。そのため、ケーシングチューブが土壌内へ垂直に進入してゆく。そして、オーガヘッドおよびケーシングチューブが土壌中に進入してゆくことで、この操作は完全に無排土で行われる。
【0004】
その後、ケーシングチューブを逆転させクレーン装置でケーシングチューブを吊り上げる。そして、拡開された杭穴内へセメントモルタルが注入され、ケーシングチューブを吊り上げた後、拡開穴内のセメントモルタル中に、鉄筋かごを挿入してセメントモルタルを固化させて、いわゆる場所打ち杭が構成される。
【特許文献1】特公平7−11233号公報(第3−4頁、図1,図2)
【特許文献2】実用新案登録2586039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1には、オーガヘッドを取り付けたケーシングチューブで一気に杭穴を掘り込むように記載されているが、掘削した土をそのまま押し退けて進むため掘削抵抗が大きくなり、回転を出力する回転駆動装置のトルクによってはある程度掘り進めると掘削抵抗が大きいため無排土で掘り進めることができなくなる。特に、基礎杭を造る場合には、安定性を良くするため軟弱な地盤範囲を通り越し、更に下に位置する硬い支持層にまで杭穴を掘り進める必要がある。従って、軟弱層では掘削抵抗が小さいため無排土でも掘り進めることができるが、支持層では抵抗が大きいため、無排土のまま掘り進めることができなくなってしまう。また、軟弱層であっても穴の深さが深くなれば抵抗が大きくなるため、支持層に達しなくても無排土のまま掘り進めることができなくなる。また、支持層より浅い位置に抵抗の大きな中間層がある場合は、その中間層を無排土で掘り進めることができなくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、係る課題を解決すべく、鋼管またはケーシングチューブの先端に掘削具を簡単に着脱できる掘削装置を設け、杭穴を掘り込むのに排土を極力少なくする杭施工機及び杭施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の杭施工機は、鋼管またはケーシングチューブと、鋼管またはケーシングチューブをチャック機構によって把持し、駆動モータの回転力を伝達して鋼管またはケーシングチューブを回転させるとともに、昇降シリンダの駆動力によって回転する該鋼管またはケーシングチューブを地盤に押し込むチュービング装置と、地盤を掘削する掘削具と円筒形状の内壁に設けられた複数のグリップ部材を押し付けるグリップ機構とを備え、その掘削具が下端開口部を塞ぐようにして前記鋼管またはケーシングチューブ内にグリップ機構によって装着された掘削装置とを有し、前記掘削装置の掘削具によって掘削した土壌を前記鋼管またはケーシングチューブの外側に押し退けて掘り進めるようにし、一定の深度まで掘削後、掘削装置を鋼管またはケーシングチューブから取り外し、取り出せるようにしたものであることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の杭施工機は、前記掘削装置のグリップ機構が、前記グリップ部材が径方向に配置されたリンクを介して連結され、そのリンクを中心部側で上下動させて径方向に移動するようにしたものであることを特徴とする。
また、本発明の杭施工機は、前記掘削装置のグリップ機構が、シリンダによって楔形のチャックブロックを上下させ、前記グリップ部材が、そのチャックブロックのテーパ面を摺動して径方向に移動するようにしたものであることを特徴とする。
また、本発明の杭施工機は、前記掘削装置が、前記グリップ部材の下方にシリンダを介して前記掘削具が取り付けられ、シリンダの伸縮によって前記掘削具の上下位置を調節するようにしたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の杭施工機は、前記掘削装置が、掘削刃を備えたボディに対して格納可能に取り付けられた推進翼を有することを特徴とする。
また、本発明の杭施工機は、前記掘削装置が、前記ボディ内に設けられたシリンダの伸縮によって、軸着された前記推進翼が揺動して拡張状態と格納状態とが切り換えられるようにしたものであることを特徴とする。
更に、本発明の杭施工機は、前記掘削装置が、前記推進翼が拡張した状態では、その外径が鋼管またはケーシングチューブの径よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
一方、本発明の杭施工方法は、掘削具を備え、グリップ機構によって円筒体内に着脱可能な掘削装置が、鋼管またはケーシングチューブの下端部に一体的に回転するように装着され、チュービング装置が、その掘削装置を備えた鋼管またはケーシングチューブを把持して回転させながら下降させることにより杭穴を掘り込む方法であって、前記掘削装置の掘削具によって掘削した土壌を前記鋼管またはケーシングチューブの外側に押し退けて無排土状態で掘り進め、掘削抵抗が大きくなり、無排土で掘り進むことができなくなった場合は、前記掘削装置を前記鋼管またはケーシングチューブから取り外し、鋼管またはケーシングチューブを所定の深さまで地盤に回転圧入させ、その鋼管またはケーシングチューブ内の土砂をバケットによって排土するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の杭施工方法は、掘削具を備え、グリップ機構によって円筒体内に着脱可能な掘削装置が、鋼管またはケーシングチューブの下端部に一体的に回転するように装着され、チュービング装置が、その掘削装置を備えた鋼管またはケーシングチューブを把持して回転させながら下降させることにより杭穴を掘り込む方法であって、前記掘削装置の掘削具によって掘削した土壌を前記鋼管またはケーシングチューブの外側に押し退けて無排土状態で掘り進めて行き、掘削抵抗が大きくなり、無排土で掘り進むことができなくなった場合は、前記掘削装置を前記鋼管またはケーシングチューブから取り外し、その後、掘削バケットを鋼管またはケーシングチューブ内に挿入して地盤を掘削してバケット内部に収納された土砂を地上に排出する際、その掘削バケットによる掘削と同時に、あるいは一定の深さまで掘削バケットで掘削した後に、前記チュービング装置によって鋼管またはケーシングチューブを地盤に回転圧入することを繰り返し、所定の深さまで鋼管またはケーシングチューブを圧入することを特徴とする。
更に、本発明の杭施工方法は、前記バケットによって排土した土砂を再び鋼管またはケーシングチューブ内に埋め戻すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
よって、本発明の杭施工機やその施工機を使用する杭施工方法によれば、掘削装置の着脱が非常に容易なため、一定の深さまでは無排土掘削を行うようにして、それ以降を排土を伴う掘削へと簡単に施工を切り換えられる。そして、一定の深さまでは無排土掘削を行うことにより、排土量を極端に減らすことが可能になり、産業廃棄物として処理しなければならない残土処理費用を大幅に削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係る杭施工機及び杭施工方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。ここで、図1は、本実施形態の杭施工機を使用した杭施工方法を示した図である。本実施形態では、杭の施工位置にチュービング装置1が設置され、そのチュービング装置1に対してケーシングチューブ2が鉛直に挿入される。チュービング装置1は、ケーシングチューブ2を把持するチャック部材が設けられ、そのチャック部材を介して把持したケーシングチューブ2に回転を与える駆動モータや、地盤に圧入させる昇降シリンダを有している。
【0014】
そのチュービング装置1に把持されたケーシングチューブ2は、下端の円周上に掘削刃3が取り付けられ、地盤を掘削しながら回転圧入できるように構成されている。そして、本実施形態の杭施工機は、図1(a)に示すように、このチュービング装置1とケーシングチューブ2、そしてチュービング装置1に把持されたケーシングチューブ2内の下端部分に装着された掘削装置5によって構成されている。掘削装置5は、ケーシングチューブ2に対して着脱が容易に行えるように構成されたものであり、杭穴の掘り込み中に取り外せるようにしたものである。
【0015】
そこで、次にケーシングチューブ2に装着する掘削装置5の構成について説明する。図3は、図1(a)に示したように、ケーシングチューブ2下端部分に位置する掘削装置5を示した図であり、右半分に非装着状態を示し、左半分に装着状態を示している。
掘削装置5は、不図示のスイベルジョイントを介してクレーンのロープに連結されたシャフト11と、そのシャフト11が上下方向にスライド可能に挿入された筒部材12と、その筒部材12の下端フランジ13に着脱可能に取付けられる掘削具であるドリル15と、周方向に等間隔に配設され、ケーシングチューブ2の内壁に押し当てられる3個のグリップ部材16とを備えている。
【0016】
シャフト11は、上部フランジ17上にウエイト22が搭載され、筒部材12との間にはスプリング21が縮設されている。そのシャフト11の上部フランジ17と各グリップ部材16との間には、ケーシングチューブ2の中心から外側へ向けて下向き傾いた下向きリンク18で連結されている。そして、筒部材12と各グリップ部材16との間には、ケーシングチューブ2の中心から外側へ向けて上向きに傾いた上下一組の上向きリンク19,20で連結されている。掘削装置5は、ケーシングチューブ2の回転力と推進力とをドリル15に伝達するための着脱機構は、主にシャフト11、筒部材12、ケーシングチューブ2の周方向に等間隔に配設された3個のグリップ部材16、各グリップ部材16、シャフト11及び筒部材12とを連結するリンク18,19,20からなり、コンパクトに且つ簡易に構成され、ケーシングチューブ2内に配置されている。
【0017】
そして、こうした掘削装置5は、吊り下げられた状態ではドリル15の重量によってスプリング21を圧縮しながら筒部材12が下降し(図3右側の状態)、下向きリンク18と上向きリンク19,20の傾きが大きくなる。そのため、グリップ部材16がケーシングチューブ2の中心方向に位置し、その外径がケーシングチューブ2の内径より小さくなって容易に同ケーシングチューブ2内を移動できるようになる。そこで、掘削装置5は、チュービング装置1に把持されたケーシングチューブ2内に吊り下げられた状態で挿入され、下端のドリル15先端が地面に当てられた位置で装着が行われる。
【0018】
掘削装置5は、ドリル15及び筒部材12に対し、シャフト11がその上に搭載されたウエイト22の重量とスプリング21の付勢力とにより下向きに押し下げられる。そのため、シャフト11が筒部材12に深く進入し、下向きリンク18と上向きリンク19,20が図面左側に示すように倒れ、グリップ部材16が外側に広がってケーシングチューブ2の内壁に押し付けられ、掘削装置5がケーシングチューブ2を内側からグリップして装着される。本実施形態の杭施工機では、掘削装置5が装着された状態でドリル15がケーシングチューブ2の下端開口部を塞ぎ、掘削した土を内部に入れることなくケーシングチューブ2の外側に押し退けるようになっている。
【0019】
こうしてケーシングチューブ2に掘削装置5が装着された杭施工機では、次のようにして場所打ち杭が施工される。先ず、チュービング装置1によって把持されたケーシングチューブ2が回転しながら下降する。すなわち、チュービング装置1では、ケーシングチューブ2をチャック部材が把持し、そのチャック部材が一体に設けられた回転体に駆動モータの回転が伝達され、更にその回転体を昇降シリンダによって下降させる。これによりケーシングチューブ2は、地盤に回転しながらワンストローク分下降することになる。従って、チュービング装置1では、こうして回転をともなう圧入が昇降シリンダのワンストローク毎に繰り返され、図1(a)に示すように地盤が掘り進められる。
【0020】
このとき掘削装置5では、ケーシングチューブ2の回転がグリップ部材16を介してドリル15に伝達される。従って、ドリル15がケーシングチューブ2の先端で回転する。チュービング装置1によってケーシングチューブ2が回転とともに地盤への圧入が行われると、地面からの反力によってドリル15及び筒部材12に働く上向きの力が増す。そのため、上向きリンク19,20が図3の左側に示すように更に水平に近づき、グリップ部材16がケーシングチューブ2により強く押し付けられてグリップ力が大きくなる。こうして、掘削抵抗に見合ったグリップ力が得られ、ケーシングチューブ2の回転力と推進力が確実にドリル15に伝達される。
【0021】
基礎杭を打設する場合、地盤は軟弱な地盤範囲を通り抜けてその下にある硬い地盤の支持層にまで到達させる必要がある。例えば、施工場所の地盤が図1(a)に示すように表層Aが所定深さまで存在し、その下に二点鎖線で示す支持層Bが存在する場合、本実施形態ではこの表層A部分を無排土で掘削することを目標とする。ただし、チュービング装置1の出力トルクに左右されるため、可能な限り無排土掘削を行い、掘削抵抗が大きくなってケーシングチューブ2をそれ以上押し下げて掘削できない状態になった場合には、図1(b)に示すようにケーシングチューブ2下端の掘削装置5を取り外し、ケーシングチューブ2だけの回転圧入に切り換える。
【0022】
ケーシングチューブ2から掘削装置5を取り外すには、連結フック23につながれた不図示のロープによって掘削装置5が引っ張り上げられる。すると、掘削装置5は、図3の右側に示すようにシャフト11が引き上げられ、ドリル15および筒部材12の荷重によってスプリング21が押し縮められる。そのため、シャフト11に対してドリル15や筒部材12は相対的に下がり、シャフト11が筒部材12から抜け出る方向に移動する。シャフト11が上昇して下向きリンク18の傾きが大きくなり、その下向きリンク18に連結されたグリップ部材16が引上げられる。それに伴いグリップ部材16と筒部材12とを連結する上向きリンク19,20の傾きも大きくなる。そして、これによりグリップ部材16はケーシングチューブ2の中心方向に移動して内壁から離れる、掘削装置5がケーシングチューブ2から容易に引き抜かれる。
【0023】
続いて、ケーシングチューブ2は、チュービング装置1から回転が与えられるとともに下降し、下端の掘削刃3によって地盤に回転圧入される。その際、図1(b)に示すように、支持層Bに回転圧入したケーシングチューブ2内には土砂が入り込んでいるため、掘削バケット50がケーシングチューブ2内に落とし込まれ、支持層Bの土砂が取り除かれる。そして、ケーシングチューブ2の回転圧入と、掘削バケット50によるケーシングチューブ2内の排土によって所定深さまで杭穴が掘り込まれる。杭によっては杭先端部を拡底バケットにより拡大して支持力を増大させる場所打ちコンクリート拡底杭とする場合もある。
【0024】
杭穴が掘り込まれると、そこには図1(c)に示すように杭穴内に鉄筋籠200が建て込まれる。その後、杭穴にコンクリート100を流し込みながらチュービング装置1によってケーシングチューブ2の抜き取りが行われる。すなわち、把持したケーシングチューブ2を逆回転させながら昇降シリンダを伸ばして引き上げる。そして、図1(d)に示すように、いわゆる場所打ち杭が造られる。
【0025】
ここで、図2は、地盤の深度に対するN値をグラフで示した図である。このN値は、その値が大きいほどその箇所の地盤が強固であることを示し、その値が小さいほどその箇所の地盤が軟弱であることを示す。こうした値は、予め行われるボーリング調査などによって確認できる。このグラフに示す結果が示された施工場所は、20m付近で急激にN値が上昇し、そこに至るまでは20を超えない範囲で推移している。そこで、この現場では、例えば地盤のN値が20以下の深度Yのところまで無排土の掘削を行うようにする。なお、こうして予めN値を計測することで、それに応じた能力のチュービング装置1が選択できる。
【0026】
以上、本実施形態の杭施工機では、掘削装置5の着脱が非常に容易なため、一定の深さまでは無排土掘削を行うようにして、それ以降をケーシングチューブ2を回転圧入させた排土を伴う掘削に簡単に切り換えられるようになった。そのため、この杭施工機およびこの杭施工機を使用した施工方法では、排土量を極端に減らすことが可能になり、産業廃棄物として処理しなければならない残土処理費用の大幅削減になった。
また、表層Aでの排土作業の削減による施工性の向上によって作業効率のアップが図られた。
また、表層Aでは掘削装置5のドリル15によって掘削された土砂はそのままケーシングチューブ2の外側に押し退けられて杭穴内周面に押し付けられるので、杭穴の壁の強度を上げて崩壊を防ぎ、その結果、杭精度の信頼性を上げることになった。
【0027】
以上、ケーシングチューブ2での施工方法について説明してきたが、ケーシングチューブ2の代わりに鋼管を用いる場合には、次のような施工方法も考えられる。図8乃至図10は、それぞれ異なる工法を示した図である。なお、掘削装置5などは簡略化して概念的に示している。
先ず、いずれの工法でも、図8〜10(a)(b)にそれぞれ示すように、ケーシングチューブ2の場合と同様、掘削装置5を先端部に装着した状態で鋼管9をチュービング装置1によって回転圧入させ無排土掘削が行われる。そして、掘削抵抗が大きくなり、無排土で掘り進むことができなくなった場合には、図8〜10(c)にそれぞれ示すように、掘削装置5を鋼管から取り出し、掘削バケット60による掘削に切り換えられる。
【0028】
そして、図示していないが、掘削した土砂を排土しながら支持層まで鋼管9を圧入した後、掘削バケット60を鋼管9から取り出し、鋼管杭とすることができる。あるいは、排土しながら支持層まで鋼管9を圧入した後、掘削バケット60を鋼管9から取り出し、鉄筋籠が挿入され、コンクリートを打設することにより、鋼管コンクリート杭とすることもできる。
【0029】
一方、図8(d)に示すように、排土しながら所定の深さまで鋼管9を圧入した後、引き続き掘削バケット60で支持層まで掘削することにより、杭下部を場所打ちコンクリート杭110とし、杭上部を鋼管杭120とした合成杭とすることができる。その際、図示するように拡底バケットにより杭先端部を拡底して鋼管コンクリート拡底杭とすることもできる。このような合成杭の場合、十分に強度を持った鋼管を用いて、鋼管部分と場所打ち杭部分との接合部の強度がとれれば、鋼管部分は中空でも杭全体としては十分な強度を持つことになる。
【0030】
また、図9(e)に示すように、鋼管9の中空部に鋼管部下部及び場所打ち杭部分を掘削した場合に発生した掘削土を埋め戻すことで、残土を出さない完全無排土での施工も可能である。
更には、図10(d)に示すように、杭上部の鋼管9部分にもコンクリート100を打設、または鉄筋籠200建て込みとコンクリート打設を行うことにより、杭下部を場所打ちコンクリート、杭上部を鋼管コンクリート、また鋼管鉄筋コンクリートとすることもできる。この場合も杭先端部を拡底して拡底杭とすることもできる。
以上、様々な実施の形態の中から、施工状況や経済状況によって最適な工法を選択することができる。
【0031】
次に、杭施工機を構成する掘削装置の他の案について説明する。図4及び図5は、ケーシングチューブ下端部分を示した図である。このケーシングチューブ2内に挿入された掘削装置6は、上段フレーム31とチャックフレーム32がチャックシリンダ33によって連結されている。上段フレーム31とチャックフレーム32とは、ケーシングチューブ2の大きさに合わせてリング形状をしており、その円周に沿って4個のチャックシリンダ33が等間隔に配置されている。チャックフレーム32には同じように等間隔に、楔形をした4個のチャック部材34が配置され、そのチャック部材34によって外側に押し出されるようにグリップ部材35が設けられている。また、この掘削装置6は、下端の掘削刃36とその上方にスクリュウ37を有し、中心に設けられたシリンダ38によってこの掘削具が伸縮するように構成されている。
【0032】
こうした掘削装置6では、図4に示すようにケーシングチューブ2内に挿入され、上端のブラケット39に引っかけられて吊設された状態でグリップが行われる。チャックシリンダ33が伸長作動してチャックフレーム32が下降し、それに吊設されたチャック部材34が押し下げられる。それにより、チャック部材34のテーパ面によってグリップ部材35が内側から外側に押し出されてケーシングチューブ2の内面に押圧される。よって、この掘削装置6はケーシングチューブ2と一体に回転可能となって、前述した掘削装置5と同様に無排土による掘削が行われる。
【0033】
その際、中心のシリンダ38を伸縮することによって、ケーシングチューブ2からスクリュウ37の出る量を調節して、地盤の特性により先端の形状を変えることができ、地盤の変化に応じた先端形状に変更できる。
そして、この掘削装置6を装着した杭施工機でも掘削刃36がケーシングチューブ2の下端開口部を塞ぎ、またシリンダ38が伸びたときもスクリュウ37端部のフランジ40がケーシングチューブ2の下端開口部を塞ぐので、掘削した土を内部に入れることなく外側に押し退けて無排土掘削を行うことができる。
【0034】
次に、杭施工機を構成する掘削装置の他の案について説明する。図6及び図7は、ケーシングチューブ下端部分を示した図である。このケーシングチューブ2内に挿入された掘削装置7は、前記掘削装置6と同様のチャック機構を備え、ケーシングチューブ2内に装着するようにしている。つまり、上段フレーム31とチャックフレーム32がチャックシリンダ33によって連結されている。上段フレーム31とチャックフレーム32とは、ケーシングチューブ2の大きさに合わせてリング形状をしており、その円周に沿って4個のチャックシリンダ33が等間隔に配置されている。チャックフレーム32には同じように等間隔に、楔形をした4個のチャック部材34が配置され、そのチャック部材34によって外側に押し出されるようにグリップ部材35が設けられている。
【0035】
また、この掘削装置7は、ロケット形をした掘削具を有し、先の尖った先端部近くに掘削刃41が設けられ、更にその上方には出し入れ可能な推進翼42が形成されている。推進翼42は掘削具のボディ43の内部で揺動可能に軸着され、その推進翼42を揺動させるための駆動手段としてボディ内にシリンダ45が内設されている。そして、シリンダ45のピストンロッドと推進翼42とが軸着した連結バー46を介して連結されている。
【0036】
こうした掘削装置7では、図6に示すようにケーシングチューブ2内に挿入され、上端のブラケット39に引っかけられて吊設された状態でグリップが行われる。チャックシリンダ33が伸長作動してチャックフレーム32が下降し、それに吊設されたチャック部材34が押し下げられる。それにより、チャック部材34のテーパ面によってグリップ部材35が内側から外側に押し出されてケーシングチューブ2の内面に押圧される。よって、この掘削装置7はケーシングチューブ2と一体に回転可能となって、前述した掘削装置5や6と同様に無排土による掘削が行われる。
【0037】
すなわち、掘削装置7が装着されたケーシングチューブ2は下端開口部が塞がれ、掘削した土を内部に入れることなくケーシングチューブ2の外側に押し退けるようにして無排土掘削が行われる。このとき、掘削具は、図6に示すようにシリンダ45のピストンロッドが伸び、連結バー46を介して推進翼42が揺動し、外側に広げられる。従って、チュービング装置1によって把持されたケーシングチューブ2が回転しながら下降する際、その先端の掘削装置7の推進翼42が掘削方向への推進力を増大させる。それと共に、推進翼42はケーシングチューブ2より径が大きいため、鋼管に接する地盤を撹拌し、鋼管と地盤との摩擦抵抗を減らすことにより、ケーシングチューブの圧入を容易にする。
【0038】
一方、掘削抵抗が大きくなって無排土掘削ができない状態になった場合には、掘削装置5を取り外し、ケーシングチューブ2だけの回転圧入に切り換えられる。その場合、ケーシングチューブ2を少しだけ逆回転させて上昇させ、その状態で図7に示すように、シリンダ45のピストンロッドを縮ませる。これにより、連結バー46を介して推進翼42が揺動し、ボディ43内に格納される。推進翼42が拡張された状態ではケーシングチューブ2より径が大きくなってしまうが、格納することで抜き取りが可能になる。
【0039】
よって、この掘削装置7を装着した杭施工機でもケーシングチューブ2の下端開口部を塞いで、掘削した土を内部に入れることなく外側に押し退けて無排土掘削を行うことができる。特に、ケーシングチューブ2よりも径の大きい推進翼42を設けているので、回転力により掘削方向への推進力を増大させて効率よく掘削を行うことができるようになった。そして、その推進翼42は格納可能なため、無排土掘削後は掘削装置7をケーシングチューブ2から抜き取ることも容易である。
【0040】
以上、本発明に係る杭施工機および杭施工方法について一実施形態を示して説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、図4及び図5に示す掘削装置6の掘削具を図3に示したドリル15にするようにしてもよい。この場合には、中心のシリンダ38を伸縮することによって、ケーシングチューブ2からスクリュウの出る量を調節して土砂の流動性を良くして押し退けやすくできる。
また、図3に示す掘削装置5のグリップ機構を図5、図6、図7に示す掘削装置のものと置き換えてもよい。また、図ではケーシングチューブを用いた例を示しているが、鋼管を用いる場合は、ケーシングチューブを鋼管に置き換えた図となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施形態の杭施工機を使用した杭施工方法を示した図である。
【図2】地盤の深度に対するN値をグラフで示した図である。
【図3】ケーシングチューブ下端部分に位置する掘削装置の第1案を示した図であり、右半分に非装着状態を示し、左半分に装着状態を示している。
【図4】ケーシングチューブ下端部分に位置する掘削装置の第2案を示した図である。
【図5】ケーシングチューブ下端部分に位置する掘削装置の第2案を示した図である。
【図6】ケーシングチューブ下端部分に位置する掘削装置の第3案を示した図である。
【図7】ケーシングチューブ下端部分に位置する掘削装置の第3案を示した図である。
【図8】実施形態の杭施工機を使用した他の杭施工方法を示した図である。
【図9】実施形態の杭施工機を使用した他の杭施工方法を示した図である。
【図10】実施形態の杭施工機を使用した他の杭施工方法を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
1 チュービング装置
2 ケーシングチューブ
3 掘削刃
5 掘削装置
15 ドリル
16 グリップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管またはケーシングチューブと、
鋼管またはケーシングチューブをチャック機構によって把持し、駆動モータの回転力を伝達して鋼管またはケーシングチューブを回転させるとともに、昇降シリンダの駆動力によって回転する該鋼管またはケーシングチューブを地盤に押し込むチュービング装置と、
地盤を掘削する掘削具と円筒形状の内壁に設けられた複数のグリップ部材を押し付けるグリップ機構とを備え、その掘削具が下端開口部を塞ぐようにして前記鋼管またはケーシングチューブ内にグリップ機構によって装着された掘削装置とを有し、
前記掘削装置の掘削具によって掘削した土壌を前記鋼管またはケーシングチューブの外側に押し退けて掘り進めるようにし、一定の深度まで掘削後、掘削装置を鋼管またはケーシングチューブから取り外し、取り出せるようにしたものであることを特徴とする杭施工機。
【請求項2】
請求項1に記載する杭施工機において、
前記掘削装置のグリップ機構は、前記グリップ部材が径方向に配置されたリンクを介して連結され、そのリンクを中心部側で上下動させて径方向に移動するようにしたものであることを特徴とする杭施工機。
【請求項3】
請求項1に記載する杭施工機において、
前記掘削装置のグリップ機構は、シリンダによって楔形のチャックブロックを上下させ、前記グリップ部材が、そのチャックブロックのテーパ面を摺動して径方向に移動するようにしたものであることを特徴とする杭施工機。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載する杭施工機において、
前記掘削装置は、前記グリップ部材の下方にシリンダを介して前記掘削具が取り付けられ、シリンダの伸縮によって前記掘削具の上下位置を調節するようにしたものであることを特徴とする杭施工機。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載する杭施工機において、
前記掘削装置は、掘削刃を備えたボディに対して格納可能に取り付けられた推進翼を有することを特徴とする杭施工機。
【請求項6】
請求項5に記載する杭施工機において、
前記掘削装置は、前記ボディ内に設けられたシリンダの伸縮によって、軸着された前記推進翼が揺動して拡張状態と格納状態とが切り換えられるようにしたものであることを特徴とする杭施工機。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載する杭施工機において、
前記掘削装置は、前記推進翼が拡張した状態では、その外径が鋼管またはケーシングチューブの径よりも大きいことを特徴とする杭施工機。
【請求項8】
掘削具を備え、グリップ機構によって円筒体内に着脱可能な掘削装置が、鋼管またはケーシングチューブの下端部に一体的に回転するように装着され、チュービング装置が、その掘削装置を備えた鋼管またはケーシングチューブを把持して回転させながら下降させることにより杭穴を掘り込む杭施工方法であって、
前記掘削装置の掘削具によって掘削した土壌を前記鋼管またはケーシングチューブの外側に押し退けて無排土状態で掘り進め、掘削抵抗が大きくなり、無排土で掘り進むことができなくなった場合は、前記掘削装置を前記鋼管またはケーシングチューブから取り外し、鋼管またはケーシングチューブを所定の深さまで地盤に回転圧入させ、その鋼管またはケーシングチューブ内の土砂をバケットによって排土するようにしたことを特徴とする杭施工方法。
【請求項9】
掘削具を備え、グリップ機構によって円筒体内に着脱可能な掘削装置が、鋼管またはケーシングチューブの下端部に一体的に回転するように装着され、チュービング装置が、その掘削装置を備えた鋼管またはケーシングチューブを把持して回転させながら下降させることにより杭穴を掘り込む杭施工方法であって、
前記掘削装置の掘削具によって掘削した土壌を前記鋼管またはケーシングチューブの外側に押し退けて無排土状態で掘り進めて行き、掘削抵抗が大きくなり、無排土で掘り進むことができなくなった場合は、前記掘削装置を前記鋼管またはケーシングチューブから取り外し、
その後、掘削バケットを鋼管またはケーシングチューブ内に挿入して地盤を掘削してバケット内部に収納された土砂を地上に排出する際、その掘削バケットによる掘削と同時に、あるいは一定の深さまで掘削バケットで掘削した後に、前記チュービング装置によって鋼管またはケーシングチューブを地盤に回転圧入することを繰り返し、所定の深さまで鋼管またはケーシングチューブを圧入することを特徴とする杭施工方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載する杭施工方法において、
前記バケットによって排土した土砂を再び鋼管またはケーシングチューブ内に埋め戻すようにしたことを特徴とする杭施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−241919(P2006−241919A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62065(P2005−62065)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(501187295)日興基礎株式会社 (3)
【出願人】(390027856)大亜ソイル株式会社 (6)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】