説明

板ガラスの加工方法及びその装置

【課題】 板ガラスに対する確実な異物除去を可能としつつ、加工テーブルに対する板ガラスの搬入及び搬出並びに加工処理を円滑に且つ損傷なく行わせる。
【解決手段】 上流側の搬入エリアE1で、加工テーブル3上に液体の噴出に伴って形成されている液体層3bにより、板ガラスGの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスGを水平姿勢で浮上させつつ加工テーブル3上に移載した後、加工テーブル3上の液体層3bを実質的に除去して板ガラスGに加工を施し、然る後、加工テーブル3上に再び液体を噴出して液体層3bを形成し、その液体層3bにより、板ガラスGの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスGを水平姿勢で浮上させつつ下流側の搬出エリアE2で加工テーブル3から搬出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの加工方法及びその装置に係り、詳しくは、板ガラスを上流側から加工テーブル上に水平姿勢で移載させ、加工テーブル上で板ガラスに加工を施した後、加工を終えた板ガラスを加工テーブル上から下流側に水平姿勢で受け渡すようにした板ガラスの加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示機器用のガラスパネルの製作に用いられる板ガラス、及び各種電子表示機能素子や薄膜を形成するための基材として用いられる板ガラス、並びに建築用の窓ガラスの基材として用いられる板ガラスは、生産性の向上等を目的として大板化が推進されているのが現状である。
【0003】
これらの板ガラスに対しては、成形処理を終えた後、所定の大きさに切断したり或いは不要部分を除去するためのスクライブ線の刻設や、端面(各辺)の研削・研磨等の所定の加工が施される。これらの加工は、板ガラスを加工テーブル(定盤)の上に載せ且つ堅固に固定支持した状態で行うのが好ましいと言えるが、この種の板ガラスは、上述のように大板化が推進されていることから、その取り扱い作業、つまり加工テーブル上への移載作業や加工テーブルからの取り出し作業等の困難化を余儀なくされている。
【0004】
このような問題に対処すべく、例えば下記の特許文献1〜4によれば、流体を利用して板ガラスを案内面或いは搬送面に非接触で支持し、加工位置や処理位置まで非接触支持状態で搬送した後に、板ガラスに所定の加工或いは処理を施すことが開示されている。
【0005】
詳述すると、特許文献1には、略垂直姿勢に立てられた板ガラスの底辺を、ベルトコンベアが支持した状態で搬送すると共に、その搬送方向に沿って略垂直姿勢の板ガラスの面に流体(気体または液体)を噴出させて非接触支持する流体ガイドを配設し、搬送方向の所定の位置で板ガラスに縦方向のスクライブ線を刻設する構成が開示されている。また、特許文献2〜4には、水平姿勢の板ガラスを、下方から噴出させた気体(空気)によって浮上させた状態で搬送する構成が開示されており、これらの中でも特許文献2,3には、気体によって浮上して搬送される板ガラスを、特定エリアで気体の噴出を停止し且つ負圧吸引により当該エリアに固定保持し、この状態で所定の加工や処理を板ガラスに施すことが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−167833号公報
【特許文献2】特開2004−182378号公報
【特許文献3】特開2004−231331号公報
【特許文献4】特開2000−62951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された板ガラスの加工設備は、流体を利用して板ガラスの面が案内面に接触しないように配慮されているものの、板ガラスの底面がベルトコンベア上に接触支持されて搬送される構成であるため、板ガラスの底面に接触傷が付くおそれがあり、搬送時の振動等が大きければ、この種の問題がより一層大きくなり、クラックの発生ひいては割れをも惹き起こす要因となる。しかも、板ガラスが大板化(例えば1辺が1500mm以上または2000mm以上に大板化)されている現状に照らせば、その重量増に起因して板ガラスの底辺に作用する荷重が大きくなり、上記の接触傷や割れ等の問題はより一層深刻なものと成り得る。
【0008】
更に、上記の板ガラスは、略垂直姿勢に非接触支持されているものの、その倒れを防止するために、流体噴出を行う流体ガイドに板ガラスの上辺が下辺よりも近づくように僅かに傾斜していることから、板ガラスをそのような姿勢に維持して搬送するためには、流体ガイドから板ガラスの面に噴出される流体圧を上部と下部とで微妙に相違させるべく微調整を行うなどの必要性が生じ得る。そのため、流体圧の制御が面倒且つ煩雑になるおそれがあるばかりでなく、板ガラスが大板(更には薄肉)であると、自重により撓みが生じるため、その流体圧の制御が困難或いは実質的に不可能となり、板ガラスが流体ガイドに接触して傷が付き、もしくは板ガラスが倒れて致命的な欠陥が生じるおそれがある。
【0009】
そして、板ガラスを僅かに傾斜した略垂直姿勢で非接触支持するための流体圧の制御は、流体が空気等の気体である場合よりも、水等の液体である場合の方が困難であると推認できる。即ち、板ガラスの面に向かって噴出した液体は、板ガラスの面を伝わって流下することから、その上部から流下した液体と中央部や下部で噴出した液体とが衝突する事態を招き、液体の噴出圧のみでは板ガラスを流体ガイドから離反させる圧力が一義的に決まらないことになる。そのため、板ガラスが大板化されて撓み等が生じ易い状態にあると、単に液体の噴出圧を板ガラスの姿勢に合致するように設定していても、板ガラスが要求通りの姿勢にはならず、結果的には、板ガラスが流体ガイドに接触し或いは倒れを生じる確率が高くなる。
【0010】
しかも、このように板ガラスを液体の噴出により非接触支持する構成を採用した場合には、板ガラスに付着している異物をその液体により洗い落とす効果を得ることができるものの、上記のように液体が板ガラスの面を伝わって流下する状態の下では、板ガラスの面の全域に対して均一な噴出圧で液体を供給できないことに起因して、板ガラスの面に付着している異物を面全域に亘って均一な条件で洗い落とすことができなくなる。そのため、例えば板ガラスの上部に対する液体の噴出供給が不足してその上部に異物が残存したり、或いは板ガラスの上部から液体と共に流下した異物がその下部で蓄積して残存する等の不具合を招くおそれがあり、板ガラスに例えば前工程での搬送時等に付着したガラス粉やその他の塵埃を的確に除去することが困難となる。
【0011】
一方、上記の特許文献2〜4に開示された板ガラスの搬送方法は、空気の噴出により板ガラスを水平姿勢で浮上させて搬送するものであることから、板ガラスの下面に前工程等で付着したガラス粉等の異物、或いは板ガラスの搬送に伴って発生した塵埃等の異物が、空気の噴出によって飛散するという事態を招く。そして、この飛散した異物は、板ガラスの上面に落下し、静電気等により除去が困難な状態となって付着残存することが多々あることから、板ガラスの品位を低下させる要因となる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、板ガラスの面に噴出される流体が板ガラスの姿勢を不当に狂わせないようにして、大型の板ガラスであっても適切に水平姿勢で浮上させ得るようにすると共に、液体による板ガラスの面全域に対する異物除去作用に不当な偏りが生じないようにして、確実な異物除去を可能としつつ、加工テーブルに対する板ガラスの搬入及び搬出並びに加工処理を円滑に且つ損傷なく行わせることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明に係る板ガラスの加工方法は、上流側の搬入エリアで、加工テーブル上に液体の噴出に伴って形成されている液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ該加工テーブル上に移載した後、前記加工テーブル上の液体層を実質的に除去して板ガラスに加工を施し、然る後、前記加工テーブル上に再び液体を噴出して液体層を形成し、該液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ下流側の搬出エリアで該加工テーブルから搬出することに特徴づけられる。
【0014】
このような方法によれば、例えば上流側の搬送コンベア等からなる搬送手段により水平姿勢で搬送されてきた板ガラスは、搬入エリアで、加工テーブル上に移載されるが、この移載は、加工テーブル上に既に噴出して形成されている液体層により、板ガラスが水平姿勢で浮上した状態で行われると共に、この移載時においては、その流体層によって板ガラスの少なくとも下面が洗浄される。この場合、加工テーブル上に液体を噴出すれば、その液体層の液面は自ずと平面状態に近づき、また全域における液体の噴出圧を均一にしても板ガラスに何ら悪影響を及ぼすことはない。したがって、この液体層の液面上に板ガラスを浮上させれば、板ガラスの姿勢が不当に狂うことによる加工テーブル面との接触を回避できると共に、大型の板ガラス(例えば2000mm×4000mm、或いはそれ以上)であっても、良好に水平姿勢で浮上することになる。しかも、板ガラスの少なくとも下面全域には、不当な偏りのない噴出圧が作用することになるので、その下面にガラス粉や塵埃等の異物が付着していても、それらは当該下面の一部に付着残留することなく適切に洗い流される。このようにして、板ガラスが加工テーブル上の所定位置に移載された後は、加工テーブル上の液体層が実質的に除去されるため、つまりテーブル面が僅かに濡れた状態であっても板ガラスを浮上させるに足る液体量よりも少量となるため、板ガラスは加工テーブルに接触した状態となり、この状態で板ガラスに加工が施される。このように、板ガラスが加工テーブルに接触しても、板ガラスの下面からは異物が除去されて洗い流されているため、板ガラスと加工テーブルとの間に異物が介在する確率が激減し、板ガラスの下面に接触傷が付くという不具合が生じ難くなる。この後は、加工テーブル上に再び液体層が形成され、この液体層の液面上に板ガラスが浮上し、搬出エリアで、例えば下流側の搬送コンベア等からなる搬送手段に水平姿勢で移載されていくことになる。この場合には、上記の加工により発生したガラス粉等の異物が板ガラスの下面に付着することも有り得るが、この板ガラスの下面は既述と同様にして液体層により洗浄されるため、当該下面にはそのような異物が付着残留しないことになり、搬送手段に移載された後においても、その異物が原因となって板ガラスの下面に傷が付く等の不具合が生じ難くなる。
【0015】
この場合、前記搬入エリアで板ガラスが前記液体層の表面を滑動すると共に、前記搬出エリアで板ガラスが前記液体層の表面を滑動するようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、搬入エリアで、板ガラスが液体層の表面(液面)を滑動して、加工テーブル上における所定の加工位置に送られることになるため、その滑動により板ガラスの下面に対する洗浄が促進され、異物の除去作用がより一層向上する。また、同様にして、搬出エリアでも、板ガラスの下面に対する洗浄が促進される。
【0017】
以上の方法においては、板ガラスに加工を施す際または加工を施した後、少なくとも加工部分に洗浄用液体を供給することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、板ガラスの上面に後述するスクライブ線を刻設したり、或いは板ガラスの端面を研削・研磨する等の加工を行う場合には、その加工を施しながら、または加工を施した後に、その加工部分や板ガラスの上面全域に洗浄用液体を供給することにより、板ガラスに付着してその除去が困難となり得るガラス粉等を洗い流すことができる。そして、この加工により発生したガラス粉等が加工テーブル上に残存していても、その後に加工テーブル上に形成される液体層によって、それらのガラス粉等を洗い流すことができるので、加工に起因する異物の除去作用が確実化される。
【0019】
更に、加工テーブル上に噴出して液体層を形成した液体は、加工テーブル上から流出した後、異物濾過フィルタを通過して、再び前記加工テーブル上に噴出して液体層を形成することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、加工テーブル上に液体層を形成するために使用した液体を、異物濾過フィルタを通過させることにより清浄な液体として再び使用できることになり、つまり同じ液体を循環して使用できるため、コスト面での有利性を確保することが可能となる。
【0021】
また、加工テーブル上に板ガラスを負圧吸引力により接触させた状態で、板ガラスに加工を施すことが好ましい。
【0022】
このようにすれば、板ガラスに加工を施す際には、負圧吸引引力によって板ガラスが加工テーブル上に確実に固定支持されることになるため、良好な加工性が得られると共に、加工作業の適切化が図られる。
【0023】
以上の方法における加工としては、板ガラスの上面に直線または湾曲線からなるスクライブ線を刻設する加工を挙げることができる。
【0024】
ここで、上記の直線からなるスクライブ線は、例えば板ガラスを2分割或いはそれ以上に複数分割する際の折割りの基準線であってもよく、或いは不要部分を除去する際の折割りの基準線であってもよい。また、上記の湾曲線からなるスクライブ線は、例えば円形や楕円形等の板ガラスを得るためにその周囲を除去する際の折割りの基準線であってもよく、或いは板ガラスのコーナー部に大きな曲率半径のR面取りを形成するためにその周囲を除去する際の折割りの基準線であってもよい。
【0025】
また、以上の方法における他の加工としては、板ガラスの上面に縦方向に沿う線と横方向に沿う線との2種を含む加工を挙げることができる。
【0026】
このようにすれば、板ガラスを90°回転させなくても、直交する2方向に沿うスクライブ線を同一姿勢の板ガラスに刻設することができ、作業能率の向上を図ることが可能となる。
【0027】
一方、上記技術的課題を解決するためになされた本発明に係る板ガラスの加工装置は、上流側の搬入エリアで、加工テーブル上に液体の噴出に伴って形成されている液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ該加工テーブル上に移載し、且つ、前記加工テーブル上における板ガラスへの加工時に、流体層を実質的に除去して該加工テーブル上に板ガラスを接触させると共に、下流側の搬出エリアで、前記加工テーブル上に再び液体を噴出して形成した液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ該加工テーブルから搬出するように構成したことに特徴づけられる。
【0028】
この板ガラスの加工装置は、特徴となる構成要素が、既に述べた基本となる板ガラスの加工方法と実質的に同一であり、したがって、この加工装置についての作用効果等に関する事項は、上記の基本となる加工方法について既に述べた事項と同一であるため、ここでは便宜上、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明に係る板ガラスの加工方法及びその装置によれば、上流側の搬入エリアにおける加工テーブル上への板ガラスの移載時に、大型の板ガラスであっても、その姿勢が不当に狂うことによる加工テーブル面との接触を回避しつつ、良好に水平姿勢で浮上させることができると共に、板ガラスの少なくとも下面全域には、不当な偏りのない噴出圧が作用することになるので、その下面にガラス粉や塵埃等の異物が付着していても、それらは板ガラスの下面の一部に付着残留することなく適切に洗い流される。更に、板ガラスに加工を施すに際して板ガラスが加工テーブルに接触しても、板ガラスの下面からは異物が除去されて洗い流されているため、板ガラスと加工テーブルとの間に異物が介在する確率が激減し、板ガラスの下面に接触傷が付くという不具合が生じ難くなる。しかも、下流側の搬出エリアでの板ガラスの搬出時に、上記の加工により発生したガラス粉等の異物が板ガラスの下面に付着していても、板ガラスの下面は液体層により洗浄され、そのような異物が付着残留しないことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0031】
図1〜図5は、本発明の実施形態に係る板ガラスの加工装置の概略構成及びその動作を例示している。先ず、図1、図2及び図3に基づいて、板ガラスの加工装置の構成を説明すると、この加工装置1は、上流側の搬入エリアE1から下流側の搬出エリアE2に向かって一直線上に延びる一対のガイドレール2を有し、このガイドレール2に加工テーブル(定盤)3がa−b方向に往復動可能に保持されている。即ち、加工テーブル3は、搬入エリアE1と搬出エリアE2との間で、a方向に往動し且つb方向に復動するように構成されている。
【0032】
加工テーブル3は、その上面に多数の噴出孔3aが形成され(図3参照)、これらの噴出孔3aから均一な噴出圧で液体(この実施形態では水)が噴出されることにより、加工テーブル3上に板ガラスGを水平姿勢で浮上させるための液体層3bが形成されるようになっている。尚、加工テーブル3上に噴出されて液体層3bを形成した液体は、一旦外部に排出され、異物濾過フィルタ(図示略)を通過した後、再び加工テーブル3の噴出孔3aから噴出されて液体層3bを形成するようになっている。また、この加工装置1は、加工テーブル3上から板ガラスGを浮上させている液体層3bが実質的に除去された段階で板ガラスGの下面に負圧吸引力を作用させる負圧吸引手段(図示略)を有している。
【0033】
更に、一対のガイドレール2には、加工時に対応する一部領域(全領域でもよい)において加工テーブル3と一体的に移動するスクライブユニット4が保持されている。このスクライブユニット4は、板ガラスGの上面に、縦方向(a−b方向)に沿うスクライブ線を刻設する一対の第1スクライブ刃4aを保持し且つ上記の領域で加工テーブル3と一体移動可能な横架部材4xと、横方向(a−b方向と直交する方向)に沿うスクライブ線を刻設する一対の第2スクライブ刃4bを保持し且つ横架部材4xに横方向にスライド可能に保持された縦架部材4yとを備えている。加えて、この加工装置1は、板ガラスGの上面にスクライブ線を刻設しながら或いは刻設した後に、そのスクライブ線に上方から洗浄用液体(この実施形態では水)を噴射供給して、スクライブ線の刻設に伴って生成されるガラス粉等の異物を洗い流す洗浄用液体供給手段(図示略)を有している。この洗浄用液体供給手段は、第1スクライブ刃4a及び第2スクライブ刃4bにそれぞれ対応するように複数設けられ、これらのスクライブ刃4a、4bとそれぞれ一体となって移動するものであってもよく、或いは加工テーブル3上に固定設置されるものであってもよい。
【0034】
また、一対のガイドレール2にはそれぞれ、横方向及び縦方向に移動可能とされ且つ搬入エリアE1と搬出エリアE2とにおいて板ガラスGの移動を案内すると共に加工テーブル3上での板ガラスGの位置決めを行うガイド部材5が保持されている。尚、この一対のガイド部材5は、図示のように1箇所に配設してもよいが、例えば、搬入エリアE1に対応する部位と、搬出エリアE2に対応する部位との2箇所に配設してもよい。
【0035】
更に、搬入エリアE1の直上流側には、板ガラスGを水平姿勢で搬送して搬入エリアE1に送り出す上流側コンベア6が配設されると共に、搬出エリアE2の直下流側には、板ガラスGを搬出エリアE2から受け取って水平姿勢で搬送する下流側コンベア7が配設されている。そして、この実施形態では、上流側コンベア6は、定位置に設置された長尺な不動コンベア6aと、該不動コンベア6aから独立して下流側に移動可能とされた短尺な可動コンベア6bとから構成され、また下流側コンベア7も、定位置に設置された長尺な不動コンベア7aと、該不動コンベア7aから独立して上流側に移動可能とされた短尺な可動コンベア7bとから構成されている。
【0036】
次に、以上の構成を備えてなる板ガラスの加工装置1の動作を、順を追って説明する。尚、この加工装置1により加工される板ガラスGは、横方向寸法が2000〜3000mm、縦方向寸法が3000〜5000mm、厚みが1.5〜3mmであって、プラズマディスプレイのパネルの製作に使用されるものである。
【0037】
先ず、図1に示すように、上流側コンベア6により搬送されてきた板ガラスGは、搬入エリアE1で、一対のガイド部材5により挟持され、案内移動されて加工テーブル3上に移載されていく。この場合、板ガラスGが搬入エリアE1に達した時点では、加工テーブル3上に液体層3bが形成されているため、板ガラスGは少なくとも下面が液体層3bによって洗浄されつつ且つ液体層3bの上に水平姿勢で浮上した状態で加工テーブル3上に移載されていく。尚、一対のガイド部材5は、板ガラスGの下流側端部における横方向の両縁を把持した状態でその移動を案内する。
【0038】
そして、図1に示す板ガラスGの加工テーブル3上への移載開始時においては、加工テーブル3がb方向に復動すると同時に、板ガラスGは上流側コンベア6(可動コンベア6a)によりa方向に搬送されることになるので、それぞれの移動速度の総和に相当する高速度で板ガラスGが液体層3bの表面を滑動しながら加工テーブル3上に移載されていく。
【0039】
このような動作が行われて加工テーブル3がb方向への復動端に達した時点またはその付近で、図2に示すように、板ガラスGは液体層3b上に浮上した状態で所定の加工位置に達し、一対のガイド部材5は搬出エリアE2に移行して待機する。この時点で、加工テーブル3上の液体層3bが実質的に除去されて、板ガラスGの下面が加工テーブル3の上面に接触し、更に負圧吸引力により板ガラスGが加工テーブル3の上面に強固に固定支持される。また、このような板ガラスGの固定支持が行われる直前または直後に、加工テーブル3はa方向に往動する。
【0040】
そして、加工テーブル3がa方向に往動している間に、図3に示すように、スクライブユニット4の縦架部材4yが横方向にスライドするが、このスクライブユニット4は加工テーブル3と同速度でa方向に移動していることから、板ガラスGの上面には、縦架部材4yに保持されている一対の第2スクライブ刃4bにより、横方向に直線上に延びる一対のスクライブ線が刻設される。このスクライブ線が刻設されている間は、洗浄用液体供給手段からスクライブ線(板ガラスGの上面全域でもよい)に向かって洗浄用液体が噴射供給される(以下のスクライブ線の刻設時においても同様)。そして、このスクライブ線が板ガラスGの横方向全長に亘って刻設された後は、加工テーブル3がa方向に継続して往動するのに対して、スクライブユニット4は停止するため、板ガラスGの上面には、横架部材4xに保持されている一対の第1スクライブ刃4aにより、縦方向に直線上に延びる一対のスクライブ線が刻設される。
【0041】
このような動作が継続して行われて、縦方向に沿うスクライブ線が板ガラスGの縦方向全長に亘って刻設された後、図4に示すように、加工テーブル3上に再び液体層3bが形成され、この液体層3bによって板ガラスGは浮上する。このような状態で、加工テーブル3が継続して僅かにa方向に往動した時点で、板ガラスGが一対のガイド部材5により既述と同様の態様で案内移動される。
【0042】
そして、図5に示すように、加工テーブル3がa方向の往動端付近に達することに伴って、板ガラスGが搬出エリアE2で液体層3bにより浮上されつつ一対のガイド部材5により加工テーブル3上から下流側コンベア7に受け取られていく。この受け取り時には、板ガラスGが液体層3bの表面を滑動しながら、先ず上流側に突出した状態にある可動コンベア7bにより受け取られ、その後に不動コンベア7aに移載されていく。
【0043】
このような動作が行われることにより、下流側コンベア7への板ガラスGの移載が完了した時点で、その板ガラスGは下流側コンベア7により下流側に搬送されると共に、加工テーブル3は液体層3bが形成されたままの状態でb方向に復動する。そして、図1に示すように、後続の板ガラスGが再び既述と同様の手順で加工テーブル3上に移載され、既述と同様の動作が繰り返し実行される。
【0044】
したがって、加工テーブル3は連続してa−b方向に往復動を繰り返すと共に、加工テーブル3のa方向への往動時に板ガラスGに対するスクライブ線の刻設作業を終了し、且つ、搬出エリアE2で板ガラスGの搬出を終えた加工テーブル3がb方向に復動して搬入エリアE1に到達すると同時に、後続の板ガラスGが上流側コンベア6により搬入エリアE1まで搬送されることになる。これにより、上流側コンベア6により搬送されてきた板ガラスGは、停止することなく連続して加工テーブル3上に移載されていくと共に、移載された後も加工テーブル3によって停止することなく連続してa方向に移動し、且つ加工テーブル3から下流側コンベア7に停止することなく連続して移載される。このように、板ガラスGが連続して移動すると共に、その移動時にスクライブ線を刻設するための加工が施される結果、作業能率が改善されて、生産性が大幅に向上する。
【0045】
しかも、搬入エリアE1で板ガラスGが加工テーブル3上に移載されていく間においては、液体層3bにより板ガラスGの少なくとも下面が洗浄されることになるため、上流側コンベア6による板ガラスGの搬送時にその下面に異物が付着していても、その異物は板ガラスGの加工テーブル3への移載時に洗い流される。そして、板ガラスGの下面が清浄になった後に、液体層3bの除去により板ガラスGの下面が加工テーブル3のテーブル面に接触するため、この両面が異物を介在させた状態で接触するという不具合が回避される。しかも、板ガラスGに対するスクライブ線の刻設後に、板ガラスGが再び液体層3bにより浮上して搬出エリアE2で下流側コンベア7に移載されていくため、スクライブ線の刻設時に発生したガラス粉等が仮に板ガラスGの下面に付着していても、そのガラス粉は板ガラスGの下流側コンベア7への移載時に液体層3bにより洗い流される。
【0046】
尚、上記実施形態では、加工テーブル3を搬入エリアE1と搬出エリアE2との間で往復動するように構成したが、これ以外に、加工テーブル3を定位置に固定設置すると共に、その加工テーブル3の直上流側及び直下流側にそれぞれ隣接しての上流側コンベア6及び下流側コンベア7を配置し、且つ、加工テーブル3と上流側コンベア6及び下流側コンベア7との間にそれぞれ搬入エリア及び搬出エリアを形成するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態は、プラズマディスプレイのパネルの製作に用いられる板ガラスGの加工装置1に本発明を適用したが、これ以外に、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のパネルの製作に用いられる板ガラスの加工装置や、各種電子表示機能素子や薄膜を形成するための基材として用いられる板ガラスの加工装置、更には建築用の窓ガラスの基材として用いられる板ガラスの加工装置についても、同様にして本発明を適用することが可能である。
【0048】
更に、上記実施形態は、板ガラスに施す加工として、スクライブ線を刻設する場合に本発明を適用したが、これ以外の加工、例えば板ガラスの端面(各辺)を研削或いは研磨する場合についても、本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る板ガラスの加工装置(上流側コンベアから板ガラスを加工テーブル上に移載している状態)を模式的に示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る板ガラスの加工装置(加工テーブル上に板ガラスが移載された直後の状態)を模式的に示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る板ガラスの加工装置(加工テーブル上で板ガラスに加工を施している状態)を模式的に示す概略斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る板ガラスの加工装置(加工テーブル上で加工を終えた板ガラスが搬送されている状態)を模式的に示す概略斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る板ガラスの加工装置(加工テーブル上から板ガラスを下流側コンベアに受け渡している状態)を模式的に示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 板ガラスの加工装置
3 加工テーブル(定盤)
3b 液体層
4 スクライブユニット
6 上流側コンベア
7 下流側コンベア
E1 搬入エリア
E2 搬出エリア
G 板ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の搬入エリアで、加工テーブル上に液体の噴出に伴って形成されている液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ該加工テーブル上に移載した後、前記加工テーブル上の液体層を実質的に除去して板ガラスに加工を施し、然る後、前記加工テーブル上に再び液体を噴出して液体層を形成し、該液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ下流側の搬出エリアで該加工テーブルから搬出することを特徴とする板ガラスの加工方法。
【請求項2】
前記搬入エリアで板ガラスが前記液体層の表面を滑動すると共に、前記搬出エリアで板ガラスが前記液体層の表面を滑動することを特徴とする請求項1に記載の板ガラスの加工方法。
【請求項3】
前記板ガラスに加工を施す際または加工を施した後、少なくとも加工部分に洗浄用液体を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の板ガラスの加工方法。
【請求項4】
前記加工テーブル上に噴出して液体層を形成した液体は、加工テーブル上から流出した後、異物濾過フィルタを通過して、再び前記加工テーブル上に噴出して液体層を形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の板ガラスの加工方法。
【請求項5】
前記加工テーブル上に板ガラスを負圧吸引力により接触させた状態で該板ガラスに加工を施すことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の板ガラスの加工方法。
【請求項6】
前記加工は、板ガラスの上面に直線または湾曲線からなるスクライブ線を刻設する加工であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の板ガラスの加工方法。
【請求項7】
前記加工は、板ガラスの上面に縦方向に沿う線と横方向に沿う線との2種を含む加工であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の板ガラスの加工方法。
【請求項8】
上流側の搬入エリアで、加工テーブル上に液体の噴出に伴って形成されている液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ該加工テーブル上に移載し、且つ、前記加工テーブル上における板ガラスへの加工時に、流体層を実質的に除去して該加工テーブル上に板ガラスを接触させると共に、下流側の搬出エリアで、前記加工テーブル上に再び液体を噴出して形成した液体層により、板ガラスの少なくとも下面を洗浄しつつ且つ板ガラスを水平姿勢で浮上させつつ該加工テーブルから搬出するように構成したことを特徴とする板ガラスの加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−99553(P2007−99553A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290428(P2005−290428)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】