説明

枚葉式洗浄処理装置、及びこれを用いた板状の製品の製造方法

【課題】 被処理物が洗浄液によって汚染されるのを防ぐことができる枚葉式洗浄処理装置、及びこれを用いた板状の製品の製造方法を提供する。
【解決手段】 ウェーハ回転台11に載置された半導体ウェーハ(被処理物)6に所定の洗浄処理を施すウェーハ洗浄槽1と、ウェーハ洗浄槽1に連設されるとともに、洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハ洗浄槽1の内部から外部に導出するためのウェーハ導入槽(導出槽)2と、ウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2との間に設けられた開口部10bを開閉するシャッター機構10とを設ける。さらに、ウェーハ導入槽2の上部に設けたFFU(付着防止機構)15を用いて開口部10bの気流を制御することで、開口部10bを通して、ウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に洗浄処理後の半導体ウェーハ6を搬出する場合に、ウェーハ洗浄槽1内部で使用された洗浄液が半導体ウェーハ6に付着するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやガラス基板などの被処理物に洗浄処理を行う枚葉式洗浄処理装置、及びこれを用いた板状の製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLSI、ULSI等の半導体集積回路は、種々の製造工程を経て半導体ウェーハ上に形成されるが、このような半導体ウェーハでは、各製造工程途中での搬送時や各工程の処理時などの際に、当該ウェーハ表面に不要な不純物が付着することがある。このように半導体ウェーハに不純物が付着すると、半導体ウェーハの製造歩留や品質の低下を招くだけでなく、当該ウェーハを用いた半導体集積回路の製品信頼性の低下をも招くことがある。それ故、半導体ウェーハを用いた半導体集積回路の製造方法では、通常、半導体ウェーハ毎に不純物を除去する洗浄工程が行われている。また、上記のような枚葉式の洗浄処理は、回転台に半導体ウェーハを載せて当該ウェーハを回転させながら、上方から洗浄液を供給することによって行われており、一般的に、回転台の周りに配置した筒状の飛散防止部材を用いることにより、回転台や回転中のウェーハによって洗浄液が回転台の周囲に飛散されるのを防いだ状態で実施されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
また、従来の枚葉式洗浄処理装置には、洗浄槽を設けて、当該洗浄槽の内部で半導体ウェーハに対する洗浄処理を行うものが提供されている(例えば、下記特許文献2参照。)。具体的にいえば、図16及び図17に示すように、この従来の枚葉式洗浄処理装置には、上記洗浄処理を行うウェーハ洗浄槽51と、このウェーハ洗浄槽51に連続的に設置されたウェーハ導入槽52とが設けられている。これらのウェーハ洗浄槽51とウェーハ導入槽52とは、シャッター機構55によって連通状態または非連通状態とされるようになっている。同様に、ウェーハ導入槽52と装置外部側とは、シャッター機構53によって連通状態または非連通状態とされるようになっている。そして、各シャッター機構53、55は、半導体ウェーハWが搬送されるときに開動作し、ウェーハ導入槽52内に設置された搬送機54によるウェーハWの搬送動作を許容する。つまり、シャッター機構53では、そのシャッター部材53aを開動作させることでウェーハ導入槽52と装置外部側との間に設けられた開口部53bを開放して、この開口部53bを通して、搬送機54がウェーハ導入槽52と装置外部側との間で半導体ウェーハWを搬送するのを可能とする。一方、シャッター機構55では、そのシャッター部材55aを開動作させることでウェーハ洗浄槽51とウェーハ導入槽52との間に設けられた開口部55bを開放して、この開口部55bを通して、搬送機54がウェーハ洗浄槽51とウェーハ導入槽52との間で半導体ウェーハWを搬送するのを可能とする。
【0004】
また、ウェーハ洗浄槽51の内部には、洗浄処理時に半導体ウェーハWを載せて回転するウェーハ回転台56、この回転台56を囲むように配置された筒状の水滴飛散ガード57、及び薬液または純水を洗浄液としてウェーハWに供給する洗浄液ノズル58が設けられている。また、このウェーハ洗浄槽51の上部及び下部には、HEPAフィルター59及び排気口62がそれぞれ設けられており、ウェーハ洗浄槽51では、図17に矢印にて示すように、ダウンフローをウェーハ洗浄槽51内に生じさせた状態で半導体ウェーハWに対する洗浄処理が行われる。
【0005】
一方、ウェーハ導入槽52の上部及び下部には、ファンフィルターユニット(FFU)60及び排気口61がそれぞれ設けられており、図17に矢印にて示すように、ダウンフローをウェーハ導入槽52内に発生させるように構成されている。
【特許文献1】特開平9−153445号公報
【特許文献2】特開平9−148399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来装置では、洗浄処理後の半導体ウェーハWをウェーハ洗浄槽51からウェーハ導入槽52を経て装置外部側に搬出する場合に、当該洗浄処理後の半導体ウェーハWがウェーハ洗浄槽51内で使用された洗浄液によって汚染されるという問題点を生じることがあった。詳細にいえば、図18に示すように、ウェーハ洗浄槽51では、洗浄処理中に、回転台56にて半導体ウェーハWを回転させつつ、当該ウェーハW表面上に洗浄液fを洗浄液ノズル58から吐出するため、回転台56の回転速度や洗浄液fの種類などによっては、洗浄液fがウェーハWの遠心力により水滴飛散ガード57を飛び越え、その水滴dがウェーハ洗浄槽51の内壁やシャッター部材55aの表面に付着することがあった。そして、図19に示すように、洗浄処理後の半導体ウェーハWをウェーハ導入槽52へ搬出するために、シャッター部材55aを開動作させると、図19に矢印aにて示すように、開口部55bを経てウェーハ導入槽52側からウェーハ洗浄槽51側に流れる気流が、ウェーハ洗浄槽51の内圧とウェーハ導入槽52の内圧との圧力差に応じて発生し、この発生した気流によって上記内壁や表面に付着した洗浄液fの水滴dが搬出中の半導体ウェーハWの方に吹き飛ばされることがあった。その結果、吹き飛ばされた洗浄液fの水滴dが洗浄処理後の半導体ウェーハWの表面に付着して、当該ウェーハWを汚染することがあった。
【0007】
上記の課題を鑑み、本発明は、被処理物が洗浄液によって汚染されるのを防ぐことができる枚葉式洗浄処理装置、及びこれを用いた板状の製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる枚葉式洗浄処理装置は、回転自在な回転台を有し、回転台に載置された被処理物に洗浄処理を施す洗浄槽と、
前記洗浄槽に連設されるとともに、洗浄槽の内部で前記洗浄処理が施された被処理物を当該洗浄槽の内部から外部に導出するための導出槽と、
前記洗浄槽と前記導出槽との間に設けられた開口部を開閉するシャッター機構と、
前記開口部を通して、前記洗浄槽から前記導出槽に前記洗浄処理後の被処理物を搬出する場合に、洗浄槽の内部で使用された洗浄液が当該被処理物に付着するのを防止する付着防止機構とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
上記のように構成された枚葉式洗浄処理装置では、上記開口部を通して、洗浄槽から導出槽に洗浄処理後の被処理物を搬出する場合に、付着防止機構が当該被処理物に洗浄槽の内部で使用された洗浄液が付着するのを防止している。これにより、被処理物が上記洗浄液によって汚染されるのを防ぐことができる。
【0010】
また、上記枚葉式洗浄処理装置において、前記導出槽の内圧が、前記洗浄槽の内圧よりも高圧に調整されてもよい。
【0011】
この場合、洗浄液を含んだ雰囲気が洗浄槽の内部から導出槽の内部に流入するのを防ぐことができ、当該雰囲気が装置外部側に漏洩するのを防止することができる。
【0012】
また、上記枚葉式洗浄処理装置において、前記付着防止機構は、前記導出槽側から前記洗浄槽側に流れる、前記開口部の気流を制御することが好ましい。
【0013】
この場合、付着防止機構が上記気流を制御することによって洗浄槽の内壁などに付着した洗浄液が吹き飛ばされるのを防ぐことができ、洗浄液が被処理物に付着するのを防止して、洗浄液による被処理物の汚染を防ぐことができる。
【0014】
また、上記枚葉式洗浄処理装置において、前記付着防止機構は、前記洗浄処理後の被処理物の表面を覆うことにより、当該被処理物を保護する保護板を備えていることが好ましい。
【0015】
この場合、防護板が被処理物の表面を覆って被処理物を保護しているので、上記洗浄液の被処理物への付着及び洗浄液による汚染をより確実に防ぐことができる。
【0016】
また、上記枚葉式洗浄処理装置において、前記付着防止機構は、前記シャッター機構に設けられ、かつ、前記洗浄槽側及び前記導出槽側から前記開口部をそれぞれ開閉する第1及び第2のシャッター部材を含んで構成されているとともに、
前記付着防止機構は、前記開口部を開く場合には、前記洗浄槽側の前記第1のシャッター部材及び前記導出槽側の前記第2のシャッター部材の順番で、各シャッター部材を開動作させ、かつ、前記開口部を閉じる場合には、前記導出槽側の前記第2のシャッター部材及び前記洗浄槽側の前記第1のシャッター部材の順番で、各シャッター部材を閉動作させてもよい。
【0017】
この場合、洗浄槽側の第1のシャッター部材の表面に付着した洗浄液が被処理物に付着するのをより確実に防止することができ、この洗浄液による被処理物の汚染を防ぐことができる。
【0018】
また、本発明にかかる板状の製品の製造方法は、被処理物を回転台に載置して洗浄処理を施す洗浄工程を含む板状の製品の製造方法であって、
前記洗浄処理を、上記枚葉式洗浄処理装置のいずれかを用いて行うことを特徴とするものである。
【0019】
上記のように構成された板状の製品の製造方法では、洗浄液による汚染が防がれた被処理物を得ることができるので、信頼性に優れた板状の製品を容易に、かつ効率よく製造することができる。尚、ここでいう製品には、被処理物から製造される製品の最終的な形態(製造物)だけでなく、その最終製品が製造される途中の中間的な形態が含まれている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被処理物が洗浄液によって汚染されるのを防ぐことができる枚葉式洗浄処理装置、及びこれを用いた板状の製品の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の枚葉式洗浄処理装置及び板状の製品の製造方法を示す好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、半導体ウェーハに洗浄処理を行う枚葉式洗浄処理装置に適用した場合を例示して説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態にかかる枚葉式洗浄処理装置の概略平面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。図1及び図2において、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置は、被処理物としての半導体ウェーハ6に所定の洗浄処理を施す密封可能なウェーハ洗浄槽1と、このウェーハ洗浄槽1に順次連設された密封可能なウェーハ導入槽2及びウェーハ搬入室3とを備えている。このウェーハ搬入室3には、装置外部側(図の左側)にウェーハロード部4が設けられており、複数の半導体ウェーハ6を収納可能なウェーハキャリヤ5を載置できるようになっている。また、このウェーハキャリヤ5は、ウェーハ搬入室3に設けられた開口部Tを通して装置外部との間で搬送されるようになっている。
【0023】
上記ウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2とは、シャッター機構10によって連通状態または非連通状態とされるようになっている。同様に、ウェーハ導入槽2とウェーハ搬入室3とは、シャッター機構8によって連通状態または非連通状態とされるようになっている。そして、各シャッター機構8、10は、半導体ウェーハ6が搬送されるときに開動作し、ウェーハ搬送室3の内部及びウェーハ導入槽2の内部にそれぞれ設置された搬送機7及び9による半導体ウェーハ6の搬送動作を許容する。つまり、シャッター機構8では、そのシャッター部材8aを開動作させることでウェーハ導入槽2とウェーハ搬送室3との間に設けられた開口部8bを開放する。このように、開口部8bが開かれると、搬送機7はウェーハキャリヤ5と搬送機9との間での半導体ウェーハ6の受渡動作を行うことが可能となり、洗浄処理前の半導体ウェーハ6は搬送機7によりウェーハ搬送室3からウェーハ導入槽2に搬入され、また洗浄処理後の半導体ウェーハ6は搬送機7によりウェーハ導入槽2からウェーハ搬送室3に搬出される。
【0024】
一方、シャッター機構10では、そのシャッター部材10aを開動作させることでウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2との間に設けられた開口部10bを開放する。このように、開口部10bが開かれると、搬送機9は搬送機7とウェーハ洗浄槽1内に回転自在に設けられたウェーハ回転台11との間での半導体ウェーハ6の受渡動作を行うことが可能となり、洗浄処理前の半導体ウェーハ6は搬送機9によりウェーハ導入槽2からウェーハ洗浄槽1に搬入され、また洗浄処理後の半導体ウェーハ6は搬送機9によりウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に搬出される。
【0025】
また、ウェーハ洗浄槽1の内部には、洗浄処理時に半導体ウェーハ6を載置して回転する上記ウェーハ回転台11と、この回転台11の周囲に取り付けられた筒状の水滴飛散ガード12と、回転台11上の半導体ウェーハ6に薬液または純水を洗浄液として供給する洗浄液ノズル13とが設けられている。また、ウェーハ回転台11は、上下方向に動作可能に構成されたものであり、水滴飛散ガード12の内部空間内に設定された洗浄位置(図2参照)と、この洗浄位置から上方に設定され水滴飛散ガード12が搬送機9の搬送動作を阻害しない受渡位置とに移動可能になっている。
【0026】
また、ウェーハ洗浄槽1では、上記回転台11上の半導体ウェーハ6の処理目的に応じた薬液を洗浄液ノズル13から吐出する薬液処理、当該ノズル13からの純水で半導体ウェーハ6上に残存する薬液を除去するリンス処理、及び回転台11上の半導体ウェーハ6をスピン乾燥させて当該ウェーハ6上の純水を除く乾燥処理からなる一連の洗浄処理が適宜行われるようになっている。また、薬液処理に用いられる薬液には、金属汚染、パーティクル除去を目的とした場合、アンモニアと過酸化水素水の混合液が用いられる。また、リソグラフィー工程でウェーハ上にパターンを形成し、ドライエッチングやイオン注入処理を行った後、不要となったレジストを除去することを目的とした場合、硫酸と過酸化水素水の混合液が用いられる。また、半導体ウェーハ表面のシリコン酸化膜を除去することを目的とした場合、フッ酸が用いられる。
【0027】
また、ウェーハ洗浄槽1の上部及び下部には、それぞれ外気導入口14及び排気口17が設けられており、図2に矢印にて示すように、外気導入口14から排気口17に向かって流れるダウンフローを発生させた状態で、上記洗浄処理が行われるようになっている。また、この洗浄槽1では、空気清浄度が所定値以下に保たれたクリーンルームの空気が外気導入口14から導入されており、パーティクルの付着が極力防がれた雰囲気下で、半導体ウェーハ6に洗浄処理を行えるよう構成されている。さらに、この洗浄槽1では、外気導入口14の開口面積は、上記ダウンフローの風速が所定値(例えば、0.15m/s)以上となるように、クリーンルームの空気圧や排気口17の開口面積などを考慮して定められており、洗浄液ノズル13から半導体ウェーハ6に吐出された薬液が水滴飛散ガード12の外周外方に飛散するのを極力防げるようになっている。また、排気口17には、薬液を除去して回収するフィルター部材が設けられており、ウェーハ洗浄槽1から排気される雰囲気に薬液が含まれるのを防ぐようになっている。
【0028】
上記ウェーハ導入槽2の上部及び下部には、それぞれファンフィルターユニット(FFU)15及び排気口16が設けられており、図2に矢印にて示すように、FFU15から排気口16に向かって流れるダウンフローを当該導入槽2内に発生させるように構成されている。また、この導入槽2では、その内圧がウェーハ洗浄槽1の内圧よりも高圧に調整されており、シャッター機構10が開動作して開口部10bが開放された場合でも、洗浄液を含んだ雰囲気が洗浄槽1の内部から当該導入槽2の内部に流入するのを防がれている。すなわち、本実施形態では、ウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2とが連通状態にされて、搬送機9が開口部10bを通して半導体ウェーハ6を搬送する場合でも、洗浄槽1内の洗浄液を含んだ雰囲気が導入槽2の内部、ひいてはウェーハ搬入室3の内部及び装置外部側に漏洩するのを防止することができる。これにより、ウェーハ洗浄槽1において、人体に非常に有害な物質や金属を腐食する物質を含む、上記のような薬液が使用されたときでも、その薬液が装置外部側に漏れ出るのを防ぐことができる。
【0029】
また、上記FFU15は、開口部10bを通して、ウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に洗浄処理後の半導体ウェーハ6を搬出する場合に、ウェーハ洗浄槽1の内部で使用された洗浄液が当該半導体ウェーハ6に付着するのを防止する付着防止機構として機能するように構成されている。つまり、このFFU15は、ウェーハ導入槽2側からウェーハ洗浄槽1側に流れる、開口部10bの気流を制御することにより、洗浄槽1の内壁やシャッター部材11の表面に洗浄液(薬液や純水)が付着しているときでも、これらの付着物が開口部10bを流れる気流によって吹き飛ばされるのを防ぐことができるように、その出力が制御されるようになっている。より具体的には、このFFU15は、上記気流の風速が所定値(例えば、2m/s)未満となるように、ウェーハ洗浄槽1の外気導入口14や排気口17の各開口面積などで規定される当該洗浄槽1の内圧(上記ダウンフローの風速)と、FFU自体のフィルター形状やウェーハ導入槽2の排気口16などで規定される当該導入槽2の内圧(上記ダウンフローの風速)とに応じて、FFU15に含まれたファン部材が制御されるようになっている。
【0030】
上記のように構成された本実施形態の動作について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
【0031】
図3のステップS1に示すように、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、搬送機7によるウェーハキャリヤ5からの半導体ウェーハ6の取出動作が行われる。次に、シャッター機構8がそのシャッター部材8aを開動作させて開口部8bを開放状態とした後、搬送機7は搬送機9への半導体ウェーハ6の受渡動作を行う。さらに、この受渡動作が完了すると、シャッター機構8はシャッター部材8aを閉動作させて開口部8bを閉じる(ステップS2)。これにより、半導体ウェーハ6は、ウェーハ導入槽2に搬送される。
【0032】
続いて、シャッター機構10がそのシャッター部材10aを開動作させて開口部10bを開放状態とする(ステップS3)。その後、搬送機9はウェーハ回転台11への半導体ウェーハ6の受渡動作を行って半導体ウェーハ6がウェーハ洗浄槽1に搬送されると(ステップS4)、シャッター機構10はシャッター部材10aを閉動作させて開口部10bを閉じる(ステップS5)。そして、ウェーハ洗浄槽1では、ウェーハ回転台11がその受渡位置から洗浄位置まで降下して洗浄処理が開始される。
【0033】
すなわち、この洗浄処理では、まずウェーハ回転台11にて半導体ウェーハ6を回転させつつ、洗浄液ノズル13から当該ウェーハ6上に薬液を吐出する薬液処理が行われる(ステップS6)。続いて、上記洗浄液ノズル13から回転中の半導体ウェーハ6に対し純水を吐出させて、当該ウェーハ6上に残存する薬液を除去するリンス処理が実施される(ステップS7)。最後に、ウェーハ回転台11を上記薬液処理及びリンス処理を行う場合よりも高速に回転させて、半導体ウェーハ6をスピン乾燥し当該ウェーハ6上の純水を除く乾燥処理が行われる(ステップS8)。
【0034】
次に、ウェーハ回転台11が洗浄位置から受渡位置まで上昇すると(ステップS9)、シャッター機構10はそのシャッター部材10aを開動作させて開口部10bを開放状態とする(ステップS10)。このとき、図4に矢印aにて図示する気流がウェーハ洗浄槽1の内圧とウェーハ導入槽2の内圧との圧力差に応じて発生するが、この気流の風速はFFU15によって所定値未満に制御されているので、同図4に示すように、たとえ洗浄液(薬液や純水)の水滴dがウェーハ洗浄槽1の内壁やシャッター部材10aの表面に付着しているときでも、これらの水滴dが当該気流によって吹き飛ばされるのが防がれている。
【0035】
続いて、搬送機9が洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハ回転台11から取り出して、ウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に搬出すると(ステップS11)、シャッター機構10はシャッター部材10aを閉動作させて開口部10bを閉じる(ステップS12)。
【0036】
次に、シャッター機構8がそのシャッター部材8aを開動作させて開口部8bを開放状態とした後、搬送機9から搬送機7への半導体ウェーハ6の受渡動作が行われる。さらに、この受渡動作が完了すると、シャッター機構8はシャッター部材8aを閉動作させて開口部8bを閉じる(ステップS13)。その後、搬送機7は、洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハキャリヤ5に戻す(ステップS14)。
【0037】
以下、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、ウェーハロード部4にセットされたウェーハキャリヤ5に収納された全ての半導体ウェーハ6に対して、上記ステップS1〜S14の動作が順次行われ、ウェーハ洗浄処理が完了される。
【0038】
以上のように構成された本実施形態では、洗浄処理後の半導体ウェーハ6が開口部10bを通して、ウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に搬送される場合に、FFU(付着防止機構)15が当該開口部10bを流れる気流の風速を所定値未満に制御することにより、ウェーハ洗浄槽1の内壁やシャッター部材10aの表面に付着した洗浄液が当該気流によって吹き飛ばされるのが防がれている。これにより、本実施形態では、上記特許文献2の従来例と異なり、洗浄処理後の半導体ウェーハ6に洗浄液が付着するのを防止することができ、当該半導体ウェーハ6が洗浄液によって汚染されるのを防ぐことができる。この結果、洗浄液の付着に起因するパターン欠陥やウォーターマークなどの製品不良が生じるのを防止することが可能となり、信頼性に優れた半導体ウェーハ6及びこれを用いた半導体製品を効率よく、かつ容易に製造することができる。
【0039】
ここで、本願発明の発明者が実施した検証試験の試験結果について、具体的に説明する。
【0040】
この検証試験では、図2に示した本実施形態の枚葉式洗浄処理装置(以下、“本実施形態品”という)と、図17に示した従来の枚葉式洗浄処理装置(以下、“従来品”という)とを用いて、下記試験を実施して、本実施形態品の効果を確認した。なお、これらの本実施形態品及び従来品では、ウェーハ洗浄槽上部の外気導入構造のみが異なり、それ以外の各部は全て同一のものを用いた。
【0041】
まず、発明者は、従来品において、開口部55bを閉じた場合に、ウェーハ洗浄槽51の内圧がウェーハ導入槽52の内圧に対し20Pa以上低いときに、開口部55bを完全に開口した場合の気流の風速が2m/s以上となり、その開口部55bの開放時にその気流による洗浄液の水滴飛散が発生することを見出した。詳細には、発明者は、通常、一定出力で動作される、ウェーハ導入槽52のFFU60の出力を変化させ、開口部55bを通る気流の風速を測定した。その測定結果を図5に◆にて示す。尚、上記FFU60の出力をパラメーターとした理由は、HEPAフィルター59では、風量の制御する機能がないためである。図5に示されるように、この従来品では、FFU60を動作させない場合でも、2m/s以上の気流が開口部55bに発生しており、これは、ウェーハ洗浄槽51内を流れる空気回路(ダウンフロー)において、HEPAフィルター59で大きな圧損が生じているためと考えられる。
【0042】
これに対して、本実施形態品では、クリーンルームの雰囲気が外気導入口18でほとんど抵抗なく、ウェーハ洗浄槽1内に導入されることから、図5に●にて示すように、FFU15の出力を変更することにより、開口部10bを通る気流の風速を大きく変化できることが確認された。さらには、本実施形態品では、FFU15の出力を70%以下にすることにより、ウェーハ洗浄槽1の内壁などの付着面に付着した洗浄液を剥離させない、2m/s未満の風速に制御できることが確かめられた。
【0043】
また、発明者は、FFU15の出力を変更するとともに、各出力において開口部10bの開閉動作を30回繰り返したときの本実施形態品での水滴飛散の発生率を調査した。その結果を示す図6より明らかなように、FFU15の出力を減少させるに従い、水滴飛散発生率が減少することが実証された。また、70%以下の出力では、水滴飛散は全く起こらないことが確かめられた。
【0044】
また、発明者は、本実施形態品及び従来品において、FFU出力を一定(60%)とし、パターンウェーハを、1000枚洗浄処理を行ったときの水滴付着発生率を調べた。その結果を示す図7より明らかなように、本実施形態品では、従来品と異なり、パターンウェーハへの水滴付着は全く生じておらず、この水滴付着に起因するパターン欠陥の発生が完全に防げることが実証された。
【0045】
尚、上記の説明では、ウェーハ導入槽2に設けたFFU15を用いて開口部10bを流れる気流の風速を所定値未満に制御する構成について説明したが、本実施形態の付着防止機構はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、ウェーハ洗浄槽1の上部にFFU18及びHEPAフィルター19を設置し、このFFU18とウェーハ導入槽2のFFU15の双方を制御することにより、開口部10bを流れる気流の風速を所定値未満にする構成でもよい。また、このようにHEPAフィルター19を使用したときでは、空気清浄度が所定値以下に保たれていないクリーンルーム以外の箇所に、処理装置が設置されたときでも、当該装置は洗浄処理を行うことができる。
【0046】
また、上記の説明では、一体的に構成されたファン部材とフィルターとを有するFFU15をウェーハ導入槽2の上部に設けた場合について説明したが、この導入槽2に導入される外気の清浄度によってはフィルターを備えていないファン部材を設け、上記気流を制御する構成でもよい。また、ウェーハ洗浄槽1やウェーハ導入槽2の排気口16、17側にファンを設けて、このファン出力を制御することで上記気流の制御を行うこともできる。
【0047】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる枚葉式洗浄処理装置の概略平面図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、付着防止機構に、洗浄処理後の半導体ウェーハの表面を覆うことにより、当該半導体ウェーハを保護する保護板を用いた点である。なお、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0048】
すなわち、図9に示すように、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、円形の水滴保護板20と、この水滴保護板20を駆動する駆動機構21とがウェーハ洗浄槽1の内部に設置されている。また、このウェーハ洗浄槽1の上部側には、第1の実施形態とは異なり、HEPAフィルター19が取り付けられており、このHEPAフィルター19を介して外気が導入されるようになっている。
【0049】
上記水滴防護板20は、半導体ウェーハ6の搬送時以外は、図9に示す待機位置に配置されている。そして、ウェーハ搬送時には、水滴防護板20は、駆動機構21にて半導体ウェーハ6の上方に移動され、このウェーハ表面を上方から覆うことができる保護位置に移動されるようになっている(図10参照。)。また、水滴防護板20と半導体ウェーハ6との離間距離は、例えば0.5〜3cmに設定されている。
【0050】
上記のように構成された本実施形態の動作について、図9〜図12を参照して具体的に説明する。
【0051】
図12のステップS15に示すように、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、搬送機7によるウェーハキャリヤ5からの半導体ウェーハ6の取出動作が行われる。次に、シャッター機構8がそのシャッター部材8aを開動作させて開口部8bを開放状態とした後、搬送機7は搬送機9への半導体ウェーハ6の受渡動作を行う。さらに、この受渡動作が完了すると、シャッター機構8はシャッター部材8aを閉動作させて開口部8bを閉じる(ステップS16)。これにより、半導体ウェーハ6は、ウェーハ導入槽2に搬送される。
【0052】
続いて、シャッター機構10がそのシャッター部材10aを開動作させて開口部10bを開放状態とする(ステップS17)。その後、搬送機9はウェーハ回転台11への半導体ウェーハ6の受渡動作を行って半導体ウェーハ6がウェーハ洗浄槽1に搬送されると(ステップS18)、シャッター機構10はシャッター部材10aを閉動作させて開口部10bを閉じる(ステップS19)。そして、ウェーハ洗浄槽1では、ウェーハ回転台11がその受渡位置から洗浄位置まで降下して洗浄処理が開始される。
【0053】
すなわち、この洗浄処理では、まずウェーハ回転台11にて半導体ウェーハ6を回転させつつ、洗浄液ノズル13から当該ウェーハ6上に薬液を吐出する薬液処理が行われる(ステップS20)。続いて、上記洗浄液ノズル13から回転中の半導体ウェーハ6に対し純水を吐出させて、当該ウェーハ6上に残存する薬液を除去するリンス処理が実施される(ステップS21)。最後に、ウェーハ回転台11を上記薬液処理及びリンス処理を行う場合よりも高速に回転させて、半導体ウェーハ6をスピン乾燥し当該ウェーハ6上の純水を除く乾燥処理が行われる(ステップS22)。
【0054】
次に、ウェーハ回転台11が洗浄位置から受渡位置まで上昇すると(ステップS23)、駆動機構21が水滴防護板20を待機位置から保護位置に移動させて当該防護板20により洗浄処理後の半導体ウェーハ6を保護する(ステップS24)。その後、シャッター機構10は、そのシャッター部材10aを開動作させて開口部10bを開放状態とする(ステップS25)。このとき、図11に矢印aにて図示する気流がウェーハ洗浄槽1の内圧とウェーハ導入槽2の内圧との圧力差に応じて発生する。そして、この気流によって、ウェーハ洗浄槽1の内壁やシャッター部材10aの表面に付着していた洗浄液(薬液や純水)の水滴dが、同図11に示すように、半導体ウェーハ6の方に吹き飛ばされてきたとしても、半導体ウェーハ6の表面は水滴防護板20で覆われているため、水滴防護板20は半導体ウェーハ6への水滴dの付着を阻止することができる。
【0055】
続いて、搬送機9が洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハ回転台11から取り出して、ウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に搬出すると(ステップS26)、シャッター機構10はシャッター部材10aを閉動作させて開口部10bを閉じる(ステップS27)。その後、駆動機構21は、水滴防護板20を保護位置から待機位置に移動させる(ステップS28)。
【0056】
次に、シャッター機構8がそのシャッター部材8aを開動作させて開口部8bを開放状態とした後、搬送機9から搬送機7への半導体ウェーハ6の受渡動作が行われる。さらに、この受渡動作が完了すると、シャッター機構8はシャッター部材8aを閉動作させて開口部8bを閉じる(ステップS29)。その後、搬送機7は、洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハキャリヤ5に戻す(ステップS30)。
【0057】
以下、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、ウェーハロード部4にセットされたウェーハキャリヤ5に収納された全ての半導体ウェーハ6に対して、上記ステップS15〜S30の動作が順次行われ、ウェーハ洗浄処理が完了される。
【0058】
以上のように構成された本実施形態では、洗浄処理後の半導体ウェーハ6がウェーハ洗浄槽1から搬出される場合に、水滴防護板20が半導体ウェーハ6の表面を覆って当該ウェーハ6を物理的に保護しているので、上記洗浄液の半導体ウェーハ6への付着及び洗浄液による汚染をより確実に防ぐことができる。この結果、上記第1の実施形態と同様に、信頼性に優れた半導体ウェーハ6及びこれを用いた半導体製品を効率よく、かつ容易に製造することができる。
【0059】
尚、上記の説明では、円形の水滴防護板20を用いた場合について説明したが、本発明の防護板は半導体ウェーハ(被処理物)6の表面を覆って被処理物を物理的に保護することができるものであれば何等限定されるものではなく、四角形などの多角形な形状を有するものでもよい。
【0060】
また、上記の説明では、ウェーハ導入槽2に搬出される直前に水滴防護板20を半導体ウェーハ6上方に移動させる場合について説明したが、例えば半導体ウェーハ6のスピン乾燥処理を行う前に、水滴防護板20をウェーハ上の保護位置に移動させて、ウェーハ洗浄槽1内の雰囲気とウェーハ6とを水滴防護板20にて遮断した状態で乾燥処理を実施してもよい。また、搬送機9による洗浄処理後の半導体ウェーハ6の搬出動作に合わせて、水滴防護板20を保護位置から開口部10bの近傍まで動かすこともできる。このように水滴防護板20を駆動させたときは、ウェーハ洗浄槽1内部に付着していた洗浄液が自然落下したときでも、その洗浄液の半導体ウェーハ6への付着を防ぐことも可能となる。
【0061】
[第3の実施形態]
図13は、本発明の第3の実施形態にかかる枚葉式洗浄処理装置の内部を説明する断面図である。図において、本実施形態と上記第2の実施形態との主な相違点は、上記開口部を開閉するシャッター機構に、ウェーハ洗浄槽側及びウェーハ導入槽側から当該開口部をそれぞれ開閉する第1及び第2のシャッター部材を設けて、これらのシャッター部材を付着防止機構に用いた点である。なお、上記第2の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0062】
すなわち、図13に示すように、本実施形態では、ウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2とは、シャッター機構30によって連通状態または非連通状態とされるようになっている。このシャッター機構30では、ウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2との間に設けられた開口部30bに対して、ウェーハ洗浄槽1側から開閉する第1のシャッター部材30aと、ウェーハ導入槽2側から開閉する第2のシャッター部材30cとが設けられている。また、これらの各シャッター部材30a、30cは、互いに独立して開閉動作されるように構成されている。
【0063】
上記のように構成された本実施形態の動作について、図13〜図15を参照して具体的に説明する。
【0064】
図14のステップS31に示すように、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、搬送機7によるウェーハキャリヤ5からの半導体ウェーハ6の取出動作が行われる。次に、シャッター機構8がそのシャッター部材8aを開動作させて開口部8bを開放状態とした後、搬送機7は搬送機9への半導体ウェーハ6の受渡動作を行う。さらに、この受渡動作が完了すると、シャッター機構8はシャッター部材8aを閉動作させて開口部8bを閉じる(ステップS32)。これにより、半導体ウェーハ6は、ウェーハ導入槽2に搬送される。
【0065】
続いて、シャッター機構30は、図15(a)も参照して、まずウェーハ洗浄槽1側のシャッター部材30aを開動作させた後(ステップS33)、ウェーハ導入槽2側のシャッター部材30cを開動作させて、開口部10bを開放状態とする(ステップS34)。その後、搬送機9が、ウェーハ回転台11への半導体ウェーハ6の受渡動作を行うことにより、半導体ウェーハ6をウェーハ洗浄槽1に搬送する(ステップS35)。
【0066】
次に、シャッター機構30は、図15(b)も参照して、まずウェーハ導入槽2側のシャッター部材30cを閉動作させた後(ステップS36)、ウェーハ洗浄槽1側のシャッター部材30aを閉動作させて、開口部30bを閉塞状態とする(ステップS37)。この順序で開口部30bを閉塞状態とすることにより、シャッター部材30aと30cとの間のスペースの圧力は、ウェーハ洗浄槽1の内圧に近い圧力に保たれる。
【0067】
続いて、ウェーハ洗浄槽1では、ウェーハ回転台11がその受渡位置から洗浄位置まで降下して洗浄処理が開始される。すなわち、この洗浄処理では、まずウェーハ回転台11にて半導体ウェーハ6を回転させつつ、洗浄液ノズル13から当該ウェーハ6上に薬液を吐出する薬液処理が行われる(ステップS38)。続いて、上記洗浄液ノズル13から回転中の半導体ウェーハ6に対し純水を吐出させて、当該ウェーハ6上に残存する薬液を除去するリンス処理が実施される(ステップS39)。最後に、ウェーハ回転台11を上記薬液処理及びリンス処理を行う場合よりも高速に回転させて、半導体ウェーハ6をスピン乾燥し当該ウェーハ6上の純水を除く乾燥処理が行われる(ステップS40)。また、この洗浄処理中において、ウェーハ洗浄槽1側のシャッター部材30aには、薬液や純水の水滴が付着することがあるが、ウェーハ導入槽2側のシャッター30cは、上記シャッター30aにより、洗浄槽1と物理的に遮られているため、薬液や水滴が付着するのが防がれている。
【0068】
次に、ウェーハ回転台11が洗浄位置から受渡位置まで上昇すると(ステップS41)、シャッター機構30は図15(a)に示した動作に従い、まずシャッター部材30aを開動作させる(ステップS42)。この開動作では、シャッター部材30cにより開口部30bは閉塞状態で維持されており、また、シャッター部材30aと30cとの間のスペースの圧力は、ウェーハ洗浄槽1の内圧に近い圧力に保たれていることから、ウェーハ洗浄槽1の内部に流入する気流は発生しない。この結果、洗浄液がウェーハ洗浄槽1の内部側に付着していたとしても、その水滴飛散の発生を防止することができる。
【0069】
続いて、シャッター機構30は、ウェーハ導入槽2側のシャッター部材30cを開動作させて(ステップS43)、開口部30bを開放状態とする。また、このシャッター部材30cの開動作のときには、シャッター部材30aは開動作を終えて半導体ウェーハ6よりも下方に移動されており、このシャッター部材30aから半導体ウェーハ6への水滴飛散を防ぐことができる。一方、シャッター部材30cでは、上述したように、洗浄処理中にシャッター部材30aによってウェーハ洗浄槽1と隔離され、洗浄液が付着されない状態であるため、当該シャッター部材30cから半導体ウェーハ6への水滴飛散は発生しない。
【0070】
次に、搬送機9が洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハ回転台11から取り出して、ウェーハ洗浄槽1からウェーハ導入槽2に搬出すると(ステップS44)、シャッター機構30は図15(b)に示した動作に従い、まずシャッター部材30cを閉動作させる(ステップS45)。その後、シャッター機構30はシャッター部材30aを閉動作させて、開口部30bを閉塞状態とする(ステップS46)。
【0071】
続いて、シャッター機構8がそのシャッター部材8aを開動作させて開口部8bを開放状態とした後、搬送機9から搬送機7への半導体ウェーハ6の受渡動作が行われる。さらに、この受渡動作が完了すると、シャッター機構8はシャッター部材8aを閉動作させて開口部8bを閉じる(ステップS47)。その後、搬送機7は、洗浄処理後の半導体ウェーハ6をウェーハキャリヤ5に戻す(ステップS48)。
【0072】
以下、本実施形態の枚葉式洗浄処理装置では、ウェーハロード部4にセットされたウェーハキャリヤ5に収納された全ての半導体ウェーハ6に対して、上記ステップS31〜S48の動作が順次行われ、ウェーハ洗浄処理が完了される。
【0073】
以上のように構成された本実施形態では、ウェーハ洗浄槽1とウェーハ導入槽2との間に設けられた開口部30bを開閉するシャッター機構30を、当該開口部30bをウェーハ洗浄槽1側及びウェーハ導入槽2側からそれぞれ開閉する第1及び第2のシャッター部材30a、30cを備えた二重シャッター構造としている。また、これらのシャッター部材30a、30c(付着防止機構)を用いて、洗浄液の半導体ウェーハ6への付着を防止しているので、洗浄液による半導体ウェーハ6の汚染を防ぐことができる。この結果、上記各実施形態と同様に、信頼性に優れた半導体ウェーハ6及びこれを用いた半導体製品を効率よく、かつ容易に製造することができる。また、上記ステップS42及びS43で説明したように、第1のシャッター部材30aの表面に付着した洗浄液が半導体ウェーハ6に付着するのをより確実に防止することを可能としているので、この洗浄液による半導体ウェーハ6の汚染を完全に防ぐことができる。
【0074】
尚、上記の説明では、被処理物としての半導体ウェーハに洗浄処理を行う枚葉式洗浄処理装置に適用した場合について説明したが、本発明は、回転台に載置された被処理物に所定の洗浄処理を施す洗浄槽と、この洗浄槽に連設されるとともに、洗浄槽の内部で洗浄処理が施された被処理物を当該洗浄槽の内部から外部に導出するための導出槽と、これら洗浄槽と導出槽との間に設けられた開口部を開閉するシャッター機構と、上記開口部を通して、洗浄槽から導出槽に洗浄処理後の被処理物を搬出する場合に、その洗浄槽の内部で使用された洗浄液が当該被処理物に付着するのを防止する付着防止機構とを設けたものであれば何等限定されない。具体的には、洗浄槽と、この洗浄槽に被処理物を導入及び導出するための導入槽及び導出槽とが、例えば直線上に配置され、洗浄処理前の被処理物と洗浄処理後の被処理物の搬送経路が異なる枚葉式洗浄処理装置にも適用することができる。また、被処理物は半導体ウェーハに限定されず、液晶表示装置やPDPに使用されるガラス基板等の板状の製品を洗浄処理してもよい。
【0075】
また、上記第1〜第3の各実施形態を適宜組み合わせて枚葉式洗浄処理装置を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる枚葉式洗浄処理装置の概略平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1に示した枚葉式洗浄処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示したウェーハ洗浄槽とウェーハ導入槽との間の開口部を開放した場合での上記枚葉式洗浄処理装置の内部を説明する断面図である。
【図5】上記ウェーハ導入槽に設けられたFFUの出力を変化させた場合での上記開口部の風速の測定結果を示すグラフである。
【図6】上記FFUの出力を変化させた場合での水滴飛散発生率の検証結果例を示すグラフである。
【図7】本実施形態品と従来品との比較結果の一例を示すグラフである。
【図8】上記枚葉式洗浄処理装置の変形例の内部を説明する断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる枚葉式洗浄処理装置の概略平面図である。
【図10】図9に示した水滴防護板により被処理物を保護した場合での上記枚葉式洗浄処理装置の概略平面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】図9に示した枚葉式洗浄処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態にかかる枚葉式洗浄処理装置の内部を説明する断面図である。
【図14】図13に示した枚葉式洗浄処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】図13に示した第1及び第2のシャッター部材の動作を説明する図であり、(a)及び(b)は図13に示した開口部をそれぞれ開放及び閉塞する場合での説明図である。
【図16】従来の枚葉式洗浄処理装置の概略平面図である。
【図17】図16のP−P線断面図である。
【図18】洗浄処理中のウェーハ洗浄槽の内部を説明する断面図である。
【図19】上記従来の枚葉式洗浄処理装置での問題点を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ウェーハ洗浄槽(洗浄槽)
2 ウェーハ導入槽(導出槽)
6 半導体ウェーハ(被処理物)
10、30 シャッター機構
10b、30b 開口部
11 ウェーハ回転台(回転台)
15 ファンフィルターユニット(付着防止機構)
20 水滴防護板(付着防止機構)
30a 第1のシャッター部材(付着防止機構)
30c 第2のシャッター部材(付着防止機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な回転台を有し、回転台に載置された被処理物に洗浄処理を施す洗浄槽と、
前記洗浄槽に連設されるとともに、洗浄槽の内部で前記洗浄処理が施された被処理物を当該洗浄槽の内部から外部に導出するための導出槽と、
前記洗浄槽と前記導出槽との間に設けられた開口部を開閉するシャッター機構と、
前記開口部を通して、前記洗浄槽から前記導出槽に前記洗浄処理後の被処理物を搬出する場合に、洗浄槽の内部で使用された洗浄液が当該被処理物に付着するのを防止する付着防止機構と
を備えたことを特徴とする枚葉式洗浄処理装置。
【請求項2】
前記導出槽の内圧が、前記洗浄槽の内圧よりも高圧に調整されている請求項1に記載の枚葉式洗浄処理装置。
【請求項3】
前記付着防止機構は、前記導出槽側から前記洗浄槽側に流れる、前記開口部の気流を制御する請求項1または2に記載の枚葉式洗浄処理装置。
【請求項4】
前記付着防止機構は、前記洗浄処理後の被処理物の表面を覆うことにより、当該被処理物を保護する保護板を備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の枚葉式洗浄処理装置。
【請求項5】
前記付着防止機構は、前記シャッター機構に設けられ、かつ、前記洗浄槽側及び前記導出槽側から前記開口部をそれぞれ開閉する第1及び第2のシャッター部材を含んで構成されているとともに、
前記付着防止機構は、前記開口部を開く場合には、前記洗浄槽側の前記第1のシャッター部材及び前記導出槽側の前記第2のシャッター部材の順番で、各シャッター部材を開動作させ、かつ、前記開口部を閉じる場合には、前記導出槽側の前記第2のシャッター部材及び前記洗浄槽側の前記第1のシャッター部材の順番で、各シャッター部材を閉動作させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の枚葉式洗浄処理装置。
【請求項6】
被処理物を回転台に載置して洗浄処理を施す洗浄工程を含む板状の製品の製造方法であって、
前記洗浄処理を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の枚葉式洗浄処理装置を用いて行うことを特徴とする製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−53167(P2007−53167A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235971(P2005−235971)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】