説明

架橋したゼラチンを基にした造形体の製造法

本発明の目的は、組織インプラントの基体として使用することができ及び個別に調節可能な分解時間を有数する、架橋したゼラチンから製造された造形体の製造法を提供することである。この方法は、(a)水性ゼラチン溶液を調製するステップ;(b)溶解したゼラチンを部分的に架橋するステップ;(c)部分的に架橋したゼラチンを含有するゼラチン溶液を用い造形体を製造するステップ;及び、(d)造形体中に含まれたゼラチンを架橋するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋したゼラチンを基にした造形体を製造する方法に関する。本発明は更に、架橋したゼラチン、特にシート材及び中空体を基にした造形体に関する。本発明は、前述のように造形体を使用し製造されるインプラントにも関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる組織インプラントは、支持体材料及び生存細胞からなる構造体であり(組織エンジニアリング)、これは損傷を受けた組織及び臓器を治療するために使用することができる。そのようなインプラントは、先行技術において公知であり、とりわけ皮膚及び軟骨の再生に使用される。
【0003】
この支持体材料は、細胞の成長及び増殖を促進するような種類でなければならない。加えて、体の成長時の力学的応力に対し細胞を保護するために、ある種の堅さが望ましい。しかし同時に、この材料は、治療される体の一部の形状に適合するのに十分な程に柔軟でなければならない。最後にこの支持体材料は、細胞が十分な程度に成長し及び細胞外マトリックスを合成した後は、体により可能な限り完全に吸収されることが可能でなければならない。
【0004】
今日まで使用された材料は、これらの多種多様な要件を所望の程度まで充たすことができない。とりわけキトサン、アルギン酸塩、アガロース及びヒアルロン酸を基にした支持体が、先行技術において説明されている。後材料の3種は、残留物の自在な吸収(residue-free resorption)に関して、部分的にかなりの欠陥を示す。
【0005】
時折使用される別の支持体材料は、コラーゲンである。しかしこれは、所望の方式で再生することができる組成及び純度では入手できない。更に動物供給源から入手されたコラーゲンは、体による拒絶反応を引き起こし得る免疫原性テロペプチドを含有することがある。
【0006】
更に前述の材料は全て、材料が崩壊された後の各々の吸収時間は個別に調節不可能であるという欠点を有する。この時間の最適な長さは、治療される組織の種類及び欠損部のサイズに応じて異なることがある。例えば軟骨欠損部の再生には、軟骨細胞の緩徐な成長のために、4週間又はそれよりも長い分解時間が望ましい。
【0007】
従って本発明の目的は、先に説明した要件に合致し、そしてこれに加えてその材料の各分解時間を特定の方式で調節することができるような材料を得る方法を提供することである。
【発明の開示】
【0008】
本目的は、本発明に従い、始めに言及した方法により実現され、この方法は以下:
a)水性ゼラチン溶液を調製するステップ;
b)溶解したゼラチンを部分的に架橋するステップ;
c)部分的に架橋したゼラチンを伴うゼラチン溶液から出発する造形体を製造するステップ;及び
d)造形体中に含まれたゼラチンを架橋するステップ
を含む。
【0009】
創傷包帯及び組織インプラントのための出発材料としての架橋したゼラチンの使用は、先行技術などにおいて既に説明されている。コラーゲンとは対照的に、ゼラチンは、限定された組成を伴う製品であり、これは非常に高い純度で製造することもできる。加えて、ゼラチンで製造された材料は、光学的に透明であるのに対し、コラーゲンで製造された製品はほとんど、乳白色で、曇った外観を有する。後者は、細胞増殖の光学顕微鏡による分析における欠点を証明し得る。
【0010】
しかし、今日公知の架橋したゼラチン材料は、長期使用に必要な安定性を示さない。例えば、欧州特許第EP 1053757号に開示されたような、最大12時間の1,5-ペンタンジオールによる架橋は、軟骨欠損部の再生に適したゼラチン材料を得るには十分ではない。創傷及び出血の治療において既に使用されている、架橋したゼラチンにより製造されたスポンジも、プロテアーゼの存在により数分以内に部分的に崩壊されるので、適していない。
【0011】
ゼラチンのより高度の架橋は、安定性の増加に関連することがわかっている。
より高濃度の架橋剤又はより長い架橋反応時間による安定性の増加は、ゼラチン溶液により制限され、架橋が非常に高度である場合は、最早加工も造形もすることができない。
【0012】
造形体の内域よりも外側から接近しやすい境界面でより高度なゼラチンの架橋が生じるので、単に造形体の製造後には、ゼラチンの架橋はいずれかの満足のいく結果は生じない。例えば以下に詳細に説明される、セル構造を持つ造形体の場合、これは、単に不充分に架橋され及び造形体の後の使用の間に非常に迅速に崩壊する内部の細孔の間に、セル壁又はウェブを生じることがある。
【0013】
驚くべきことに、ゼラチン材料の2-ステップ架橋により特徴付けられる先に説明された本発明の方法は、前述のゼラチンの利点を放棄することなく、単にそれ相応の長期寿命を有し、形状に関して安定している材料の製造を可能にするのみではない。この方法は、材料の所望の吸収時間が個別に調節されることも可能にする。
【0014】
本発明の方法で製造された造形体は、従って自立式であり、すなわちこれらは支持体要素を伴わずに操作及び使用するのに十分に安定している。このことは、できる限り均一な材料がここで使用されるので、医療用途において大きい利点である。
【0015】
起源及び品質が異なるゼラチンを、この方法の出発材料として使用することができる。本発明の態様に応じ、溶液(a)中のゼラチン濃度は、5〜45質量%、好ましくは10〜30質量%であってよい。
第一の架橋(b)後に形成された造形体(c)は、好ましくは第二の架橋(d)の前に、少なくとも部分的に乾燥され、好ましくは残留含水量が最大20質量%未満、特に15質量%もしくはそれ未満である。
第二の架橋は、架橋剤の水溶液の作用により実行することができるが、気体状の架橋剤の作用が好ましい。
【0016】
原則として、ゼラチンの化学架橋をもたらす全ての化合物を、架橋剤として使用することができる。アルデヒド、ジアルデヒド、イソシアナート、ジイソシアナート、カルボジイミド及びジハロゲン化アルキルが好ましく、同じ又は異なる化合物を、二架橋ステップに使用することができる。
特に気相における第二の架橋ステップについて、特に好ましいのは、ホルムアルデヒドの使用であり、その理由は造形体を同時にホルムアルデヒドにより滅菌することができるからである。このホルムアルデヒドの造形体に対する作用は、水蒸気大気により促進することができる。
【0017】
本発明の方法に従い製造された造形体の特性は、第二の架橋ステップ後減圧下で、引き続き熱処理を造形体に施すことにより、それらの安定性に関して更に改善することができる。この引き続きの処理は、好ましくは温度80〜160℃で実行され、その理由は観察された作用は、80℃未満では比較的不明瞭であり、ゼラチンの望ましくない変色は160℃以上で生じるからである。90〜120℃の範囲の値が、最も好ましい。
減圧は、大気圧よりも低い圧力と理解されるべきであり、できる限り低い圧力値が理想的な場合は真空が好ましい。
【0018】
引き続きの熱処理は、ふたつの異なる点で有利な作用を有する。第一に、前述の温度及び圧力の条件下で、ゼラチンの更なる脱水加熱(dehydrothermal)架橋が、異なるアミノ酸側鎖が互いに及び水と反応することにより生じ、これにより脱離される。これは、低圧により平衡から除去される脱離された水により促進される。従って、引き続きの熱処理のために、同量の架橋剤が与えられるとより高度の架橋が実現されるか、又は同等の架橋度が与えられると、架橋剤の量を減少することができる。
【0019】
引き続きの熱処理の更なる利点は、使い尽くされず、造形体中に残存する架橋剤の残存含量を、著しく減少することができることである。
例えば組織インプラントの支持体材料として使用される場合、造形体の良好な生体適合性を確実にするために、反応しなかった過剰な架橋剤は、本発明の方法において造形体から除去されることが好ましい。これは例えば、造形体の常圧における数日間の脱気、及び/又は液体媒体による洗浄により行うことができ、後者は、架橋剤の濃度、造形体のサイズなどに応じて、1日〜1週間の期間も必要である。
【0020】
先に説明された引き続きの熱処理のために、他方で使用される架橋剤の量は減量され、加えて過剰な架橋剤は、高温及び減圧により造形体から除去されるので、架橋剤の残存含量の著しい低下を、この方法の追加ステップにより約4〜10時間以内で既に実現することができる。
【0021】
従って好ましくは過剰な架橋剤を実質的には含まない本発明の造形体を、引き続きの熱処理のために、比較的短い時間の経過(expenditure)により作製することができる。
【0022】
本発明の造形体は、好ましくは架橋剤含量約0.2質量%又はそれ未満を有し、これは例えば架橋剤ホルムアルデヒドの場合、支持体材料の生体適合性のための限界値を表している。この値は、液体媒体による純粋な洗浄によっては、4〜10時間の前述の時間の長さで実現することはできない。
【0023】
驚くべきことに、減圧下での熱処理は、先に説明されたようにこれがふたつの架橋ステップ後に実行される場合、実際、本発明の造形体の改善された安定性のみを生じる。対応する温度及び圧力の条件下で使用されるゼラチンの予備的処理は、造形体の耐用年限のかなりの延長を生じないが、このゼラチンは、この場合も化学的に修飾され、これはブルーム強度、粘度及び平均分子量の増加において反映される。
【0024】
使用されるゼラチンの予備的熱処理は、造形体の引き続きの熱処理のものと同等の条件下で行われることが好ましいが、しかしこれは、別の利点をもたらし、これは用途に応じて有意義である。第一に予備的熱処理は、乾燥状態で、特に以下に説明されるフィルムの場合に、本発明の造形体のより大きい引裂強度を生じる。更に予備的熱処理を受けるゼラチンのより高い粘度のために、使用されるゼラチン溶液の濃度は低下することができ、これによりより低い密度及びより大きい柔軟性を伴う造形体が入手可能である。これは主に以下に詳細に説明される、セル構造を有する造形体にあてはまる。
【0025】
粘度8mPas又はそれ以上を有するゼラチンが、本発明の方法での使用において好ましい。この値は、60℃の6.7質量%の水性ゼラチン溶液の粘度に関連している。
【0026】
製造された材料の望ましい強度、特に引裂強度、及び安定性、及び耐用年限もしくは分解挙動は、本発明の方法により、好ましくはそれが製造される条件の特定の選択により、非常に容易に調節することができる。例えば、強度及び耐用年限の両方を、概して、架橋剤のより高い濃度又は先に詳述された引き続きの熱処理により、増加することができる。
【0027】
従って造形体は驚くべきことに、一方では生理的条件下で、特に例えば1週間よりも長く、2週間よりも長く又は4週間よりも長く安定して残存し続けるものを得、他方では、細胞の適合性及び吸収性に関する要件に合致するものを得ることができる。
【0028】
この文脈で用語「安定性」は、材料が、乾燥状態での貯蔵期間及び標準の生理的条件下で言及された期間の両方で、その当初の形状を実質的に維持し、引き続いてのみかなりの程度吸収されることと理解されるべきである。
【0029】
インプラントの製造に関して使用される場合の、この材料が受ける標準の生理的条件は、主に温度、pH値及びイオン強度により特徴付けられる。材料の時間-依存型の安定性挙動に関し様々な材料を試験及び比較するための、対応する条件は、in vitroにおけるPBS緩衝液(pH7.2、0.09質量%NaCl)中での37℃での材料のインキュベーションと定義することができる。
【0030】
同じく、主にこの材料の分解に寄与するプロテアーゼに対する造形体の抵抗は既に、例えば、ペプシンなどのプロテアーゼの添加により、又は例えば線維芽細胞のような、プロテアーゼ-産生細胞によるコロニー形成から、in vitroにおいて非常に良く推定されている。それらの定量的詳細は、以下に示した態様から選ぶことができる。
【0031】
説明された方法により実現可能なある程度非常に高度の架橋にもかかわらず、製造された造形体は、それにもかかわらず、例えば可撓性及び縫合可能性(suturability)のような、組織インプラントとしての使用に関する要件に合致するのに十分な柔軟性を有する。
【0032】
所望の柔軟性は、この製造法の過程における軟化剤の添加により調節されることが好ましい。原則として、軟化剤濃度が増加すると、より柔軟な造形体を生じるであろう。例えばグリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール及びソルバイトが、軟化剤として適当である。
【0033】
セル状材料が目的である場合、例えば任意に発泡と組合せた、成形又は押出などの様々な方法を、架橋したゼラチン溶液からの造形体の製造に使用することができる。
【0034】
本発明は更に、架橋したゼラチンから製造された造形体に関し、ここでは、生理的条件下で、造形体が、予め決められた時間、例えば少なくとも1、2又は4週間は安定であり続けるように、架橋度が選択される。このような造形体を製造する好ましい方法は、先に説明されたものがある。
【0035】
好ましい態様において、造形体は、シート材である。シート材は、例えば皮膚の再生のための組織インプラントの支持体のような、多くの用途において使用することができる。シート材は、セル状である、すなわちセル構造を有するか、又は(非-セル状の)フィルムの形であることができる。
【0036】
例えばスポンジ又は発泡体のようなセル構造は、ゼラチン液の気体、特に空気による発泡により得ることができる。好ましいセル構造は、組織インプラントに使用される場合に細胞の内側成長及び三次元組織構造の形成が可能であるような、開放細孔である。
【0037】
セル構造を伴う造形体の密度及び細孔幅は、広い範囲内で、好ましくは発泡体の強度により、調節することができる。更にこの密度は、先に説明されたように、予備的熱処理を受けるゼラチン又は高粘度を伴うゼラチンの使用により、低下し得る。
【0038】
本発明のセル構造を伴う造形体の特性も、造形体に対する力学的作用により修飾されるセル構造により影響を受け得る。力学的作用は、例えば、セル構造の細孔間のセル壁又はウェブの一部が破壊される程度までの、造形体の加圧又は圧延を含む。
造形体の密度は、この力学的作用により2〜10倍増加することが好ましい。
【0039】
乾燥状態の造形体の柔軟性は、時間に関して注目するほど影響される安定性挙動を伴うことなく、力学的作用により、増加することができる。これは、特に柔軟シート材は、組織インプラントとして使用される場合、体の状態により良く適合することができるので、利点である。
【0040】
セル構造の細孔は、好ましくは平均直径300μm未満を有する。より大きい平均細孔直径の場合、細胞がセル構造へ導入された場合に、非常に低い保持能が認められることが多い。好ましい細孔幅の下限は、ほとんどの場合、使用される細胞のサイズに準じ、及び3寸法全てにおいてセル構造へと成長する。
【0041】
濃度5〜25質量%の、好ましくは10〜20質量%のゼラチン溶液を、セル構造を伴う造形体の製造に使用することができる。一般に、より高いゼラチン濃度は、造形体のより高い破断強度を生じる。驚くべきことに、これは実質的に架橋度とは独立して作動し、これにより材料の耐用年限を調節することができる。
【0042】
好ましいセル構造を伴う造形体は、可逆的に圧縮可能である。これは、特に水和された状態で適用され、その圧縮度は、とりわけ使用されるゼラチン濃度及び細孔幅により左右される。
【0043】
用語「フィルム」は、セル構造を伴わない薄いシート材と理解される。これらは、好ましくは実質的に脱気されたゼラチン溶液の成形により製造することができる。
【0044】
好ましい態様は、柔軟なフィルムに関連し、その柔軟性は、例えば軟化剤の添加により調節することができる。本発明の方法と組合せて既に説明されている化合物を、軟化剤として使用することができる。標準の生理的条件下で、フィルムの安定性は、軟化剤の使用により実質的に影響を受けないままである。
厚さ20〜500μmのフィルムが好ましく、50〜100μmが最も好ましい。
好ましくは濃度5〜45質量%の、更に好ましくは約10〜30質量%のゼラチン溶液が、フィルム製造に使用される。
【0045】
更に好ましい本発明の態様は、フィルム及びセル構造を伴うシート材料を含む、多層材料に関連する。ふたつの層は、互いに直接結合することができ、これは例えば、フィルムが乾燥される前に、フィルムと接触させられ、任意にそれへ加圧されるようなセル構造を伴うシート材によりもたらすことができる。
【0046】
あるいは、これらの層は、互いに接着するように結合することができ、及びゼラチンを基剤にした接着剤を、接着剤として使用することが好ましいであろう。
本発明の多層シート材の場合、フィルム及びセル構造を伴うシート材は、互いに、特に表面全体を、表面と表面の接触により結合することが好ましい。
【0047】
別の好ましい態様において、造形体は、中空体の形である、特に中空の断面であることもできる。このような中空の断面は、例えばゼラチン溶液の押出により得ることができる。あるいは、先に説明したセル構造を伴う中空の断面は、同時の押出及び発泡により製造することができる。
しかし中空の断面は、先に製造されたシート材、特にフィルムから、例えば巻取りにより製造することもできる。
【0048】
好ましい態様は、シリンダー状の中空の断面、例えば小型のチューブにも関連している。これらも、とりわけ先に説明したシート材の巻取りにより製造することができる。
【0049】
本発明の造形体は、先に説明した材料に加え、任意のその他の形状又は構造を有してもよい。特に組織欠損部へ空間的に適合される造形体は、組織インプラントとして使用することができる。
【0050】
本発明は、ヒト及び動物の医療の分野における使用並びにインプラントの製造について説明された造形体の使用に更に関する。
本発明のひとつの使用は、先に説明された材料から作製された創傷用の包帯の製造に関する。これらは、創傷又は例えば手術時の内出血もしくは外出血の治療において使用することができる。この材料の吸収は、好ましくは選択された製造条件により決定される、個別に調節された時間の後に生じる。
【0051】
本発明の造形体は、哺乳類細胞、すなわちヒト細胞又は動物細胞のコロニー形成に極めて良く適していることはわかっている。造形体は、適当な栄養培地で処理することができ、並びに例えば線維芽細胞又は軟骨細胞のような細胞は、引き続きそれらの上に植え付けられる。この材料の安定性のために、これらの細胞は、in vitroにおいて数週間成長及び増殖することができる。
【0052】
本発明は更に、先に説明されたような、本発明の造形体を含有する、インプラント、特に組織インプラント、並びにそれらの上で培養された細胞に関する。
【0053】
本発明のインプラントは、組織欠損部、例えば皮膚又は軟骨の欠損部の治療に使用され、並びに植え付けられる細胞は、例えばその患者から予め採取することができる。細胞の成長相の間は、造形体は、それが形成される間に、組織を力学的応力から保護し、及び細胞による細胞外マトリックスの形成が可能になる。本発明に従い調節可能な吸収時間は、特に利点であることが証明される。4週間よりも長い吸収時間を有する本発明の持続性の材料の使用により、広い面積を覆う欠損部又は遅い細胞増殖を伴う組織型の欠損部も治療することができる。
【0054】
三次元の組織構造は、ここで造形体へ細胞増殖により発達することができるので、セル構造を伴う造形体は、インプラントにおける使用について特に好ましい。造形体の可逆的圧縮のために、細胞浮遊液は吸収され、及び細胞は、造形体内に均質に分布される。
【0055】
適用の分野に応じて、セル構造を伴うシート材は、例えば、皮膚の広範な損傷もしくは火傷の治療に使用することができる。しかしいずれか他の形状も有利であり、例えば軟骨欠損部の治療のために個別に三次元造形された本体である。
【0056】
更に好ましい本発明の態様において、インプラントは、先に説明されたような多層シート材を含む。このようなインプラントにおいて、セル構造を伴うシート材は、細胞の支持体として利用されるが、そのフィルムは追加の力学的保護を提供する。
このような構築体は、例えば非常に緩徐に成長する軟骨組織の再生のために利点がある。
【0057】
本発明は更に、神経ガイドチャネルに関連している。神経ガイドチャネルの植込みは、重篤な神経索の再生に役立つ。このチャネルは、個々の神経細胞がその中で成長するような寸法でなければならない。このことは、好ましい内径1mmにより保証される。加えて、神経細胞に栄養が供給されることが可能であるように、神経ガイドチャネルは、血管が側面からそれを貫通することができるような性質でなければならない。
【0058】
この要件に合致する神経ガイドチャネルを、本発明の方法で製造することができる。
好ましい態様において、神経ガイドチャネルは、先に説明された本発明のシート材、特にフィルムの巻取りにより製造される。
【0059】
これら及び更なる本発明の利点は、以下に示した実施例及び図面により、より詳細に説明されるであろう。
【実施例】
【0060】
実施例1:架橋したゼラチンを基にしたフィルムの製造及び特性
ブタ皮革ゼラチン(ブルーム 強度300)を、60℃の表1に記した量に従う水とグリセリンの混合物が入った4種類の異なるバッチ中に溶解した。これらの溶液を超音波により脱気した後、表1に示された量のホルムアルデヒド水溶液(1.0質量%、室温)を添加し、混合物をホモジネートし、約60℃で、厚さ1mmとなるよう、ポリエチレン基材上にドクターブレードで塗布した。
【0061】
【表1】

【0062】
30℃及び相対湿度50%で約1日乾燥した後、フィルムを、PE基材から取り外し、再度約12時間同じ条件下で乾燥した。
乾燥したフィルムは、厚さ100μm未満を有し、第二の架橋ステップのために、デシケーター中室温で、17%ホルムアルデヒド水溶液の平衡な蒸気圧に2時間曝した。バッチ1-1に従い製造されたフィルムの場合、第二の架橋ステップは、ただひとつであった。
【0063】
様々なフィルム(乾燥状態)の力学的特性を、図1に示した:フィルム1-1と比較し、フィルム1-2は、2ステップ架橋のために、破断点でのより少ない伸び率と共に、より高い引裂強度を示したが、フィルム1-3は、グリセリン濃度の増加のために、かなり大きい伸長性(柔軟性)であった。次にフィルム1-3と比べ、フィルム1-4におけるより高い架橋剤濃度のために、破断点でのより少ない伸び率と共に、若干高い強度が得られた。
【0064】
バッチ1-1及び1-2のフィルムも製造した。しかしこれらは、気相中でいかなる架橋も引き続き施さなかった(フィルム1-1'は未架橋、及び1-2'は1回架橋)。これらのフィルムの破断点曲線での伸び率は、各々、約140%/10N/nm2(1-1')及び115%/15N/nm2(1-2')で終結したが、明確さのために図1には示さなかった。
【0065】
実験室規模での製造に関連する各曲線の形状は、正確に再現することができないことは、理解されるであろう。しかし様々なフィルムの曲線の互いの関係は、特徴付けられる。
従って本実施例は、本発明の方法により、製造されたフィルムの柔軟性は、架橋度及びそれに従って変動する軟化剤の量の両方により広範にわたり適合することができることを示している。
【0066】
二回架橋したフィルムは、生理的条件下でのかなり長い時間にわたるそれらの残存の安定性により区別される。
フィルムの分解挙動は、各場合において、PBS緩衝液(pH7.2、0.09質量%NaCl)500ml中に、測定用2x3cmのフィルム片を配置することにより測定し、並びにこの緩衝液中に溶解したゼラチン濃度は、波長214nmでの撮像により決定した。架橋していないか又は1回架橋したフィルムは、15分後に完全に崩壊されたのに対し、2回架橋したフィルムは、1時間後にも依然変化はなかった。
【0067】
実施例2:架橋したゼラチンを基にしたフィルムの製造及び特性
表2に示した量に従う水/グリセリン中ブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)30質量%溶液の8個のバッチを、ゼラチンを60℃で溶解することにより作製した。これらの溶液を超音波により脱気した後、対応する量のホルムアルデヒド水溶液(1.0質量%、室温)を添加し、その結果ホルムアルデヒドの最終濃度は、各々表2に示した値に相当した。残りについては実施例1に説明したように、フィルムを混合物から製造し、乾燥し、所定の場合は架橋した(表2参照)。
【0068】
【表2】

【0069】
8種のフィルムの応力-歪特性を、図2に示した。
曲線2-1から2-8は、対応する乾燥フィルムに関連し、曲線2-2Aから2-8AはPBS緩衝液中に4時間配置した水和したフィルムに関連する(未架橋のフィルム2-1は、応力-歪特性の試験が不可能である程度に、これらの条件下で崩壊した。)。垂直マークは、各々の曲線の終点を示している。
この実施例からも、フィルムの強度及び柔軟性は、各々、異なる製造条件により広範に変動することが明らかである。
【0070】
更に、乾燥状態のフィルムは、比較的堅く(このことは加工の利点である)、場合によっては生理的条件下でのそれらの水和後、非常に柔軟となり始めることも明らかである。
乾燥状態ではほぼ同じ特性を示すフィルム2-7及び2-8は、それらの水和後、一方の場合には例えば関節部における使用に必要であるような、極めて柔軟な材料(2-7A)を、他方の場合には例えば骨領域において使用することができる、より高い引裂強度を伴うより堅い材料(2-8A)を製造する。
【0071】
実施例3:架橋したゼラチンを基にしたセル構造を伴う造形体の製造及び特徴
ブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)の12質量%溶液の5個のバッチを、ゼラチンを60℃で水に溶解し、超音波により脱気することにより作製し、並びに対応する量のホルムアルデヒド水溶液(1.0質量%、室温)を各々添加し、その結果ホルムアルデヒドを1500ppm(ゼラチンに対して)とした。対応するように作製した参照試料には、ホルムアルデヒドを添加しなかった。
【0072】
ホモジナイズした混合物を、45℃で反応時間10分間の後に、調質し(temper)、空気により機械的に発泡した。約30分間継続する発泡手法を、空気のゼラチン溶液に対し異なる関係の5個のバッチについて実行し、これにより表3の異なる湿潤密度及び細孔サイズを伴うセル構造を得た。
【0073】
温度26.5℃で示される発泡したゼラチン溶液は、測定用40x20x6cmの金型に注型し、26℃及び相対大気湿度10%で約4日間乾燥した。
スポンジ様セル構造(以後スポンジと称する)を伴う乾燥した造形体を、厚さ2mmの層に切断し、第二の架橋ステップのために、17%ホルムアルデヒド水溶液の平衡蒸気圧に、デシケーター内で室温で17時間曝した。造形体の全容積の均一な脱気を実現するために、デシケーターは、各々2〜3回排気し、及び再度通気した。
スポンジの細孔構造は、光学顕微鏡により決定し、走査型電子顕微鏡により確認することができた。
【0074】
【表3】

【0075】
スポンジの安定性を決定するために、測定用30x30x2mmの小片を秤量し、各々PBS緩衝液75ml中に配置し、及び37℃で貯蔵した。各貯蔵時間の後、小片を水中で30分間洗浄し、乾燥し、秤量した。
【0076】
図3は、スポンジ3-1から3-5及び1回架橋した参照試料の崩壊特性を示している(バーの順番は、各々、参照、3-1、3-2、3-3、3-4、3-5を示している)。
参照試料は、3日後に既に完全に崩壊しているが、本発明に従い製造されたスポンジは全て、14日後であっても、依然80%以上維持されていた。しかし、更なる分解挙動においては、かなりの差が認められ、これは材料の異なる泡密度に起因している。スポンジ3-1は21日後に及びスポンジ3-2は28日後に完全に崩壊したが、スポンジ3-4及び3-5は、35日後であっても依然実質的に維持されていた。このことは、他のパラメータが独立してセル構造材料の分解挙動に特別に影響を及ぼす可能性を提供する。
しかし、セル構造材料の特性は、出発溶液中のゼラチン濃度の変化によっても、著しく修飾することができる。
【0077】
図4は、12質量%(図A)及び18質量%(図B)のゼラチン溶液から出発し、それ以外は同一条件下で製造された、150μmの薄い断面内の2種の造形体のセル構造の顕微鏡写真を示している。より高いゼラチン濃度は、個々の細孔の間に、より広い(より厚い)セル壁又はウェブを生じ、これは対応するスポンジの増加した破断強度を反映している。
【0078】
これは、定量的に図5に図示されている。3種の曲線A、B及びCは各々、3種の異なる架橋度を伴うスポンジを表している。破断強度は、出発溶液のゼラチン濃度が10〜18質量%では一定して増加し、これは約500〜ほぼ2000Nの広い範囲をカバーしている。同時に、破壊するまでの変形は、ごくわずかな変化である。驚くべきことに、破断力及びゼラチン濃度の相関関係は、架橋度とは実質的に無関係である。
【0079】
架橋度、すなわち架橋剤の濃度の選択により、造形体の安定性は、特にタンパク質分解性の分解の観点で、他方で影響を受け得る。
第一の架橋ステップにおいて使用されるホルムアルデヒドの量(ゼラチンに対する質量%)とは無関係の、様々なセル構造材料(スポンジ)のペプシンに対する抵抗は、図6に示した。
【0080】
この分解は、そのpH値をHClにより1に調節したPBS緩衝液中、1.0質量%ペプシン溶液中で37℃で行った。ホルムアルデヒド濃度の500〜1500、最大3000ppmへの増加により、スポンジの分解時間は、5分未満から30分へ、最大75分まで増大する。この材料の乾燥密度は、ここでは架橋度とは実質的に無関係である。ここで選択された非常に徹底した分解条件は、かなり穏和な生理的条件と比較することはできず、そのためかなり長い分解時間が、後者の条件には適用されるであろう。
【0081】
実施例4:引き続き熱処理される架橋したゼラチンを基にしたセル構造を伴う造形体の製造及び特徴
ブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)の12質量%溶液を、実施例3のように作製し、超音波により脱気し、並びに対応する量のホルムアルデヒド水溶液(1.0質量%、室温)と混合し、その結果、(ゼラチンに対し)ホルムアルデヒド1500ppmを得た。
【0082】
ホモジナイズした混合物を、45℃で反応時間5分かけた後、調質し、空気により機械的に30分間発泡した。発泡したゼラチン溶液を、実施例3に説明されたように金型に注型し、乾燥し、スポンジ様セル構造(スポンジ)を伴う造形体を、湿潤密度121mg/cm3、乾燥密度18mg/cm3及び平均細孔サイズ250μmで得た。
【0083】
造形体は、第一の架橋ステップ後既に堅かった。
測定用30x30x2mmの4種の試料を、スポンジから切出し、実施例3に説明された方法のように、各々に、気相中で、10%ホルムアルデヒド水溶液の平衡蒸気圧で、第二の架橋ステップを施した。しかし実施例3とは、ホルムアルデヒドが作用した時間が異なり、この場合著しく短く、すなわち試料4-1及び4-3の場合は2時間、試料4-2及び4-4の場合は5時間であった。
【0084】
4種の試料全てを、第二の架橋ステップ後真空で脱気し、その後試料4-3及び4-4に引き続きの熱処理を施した。回転蒸発器により、問題のスポンジを、約14mbarの真空中で105℃で6時間維持した。
PBS緩衝液中の様々な試料の安定性を、実施例3に説明されたように決定した。図7は、試料4-1から4-4の崩壊挙動を示している(示したバーの配列は、各々、4-1、4-2、4-3、4-4である)。
【0085】
生理的条件下でのスポンジの耐用年限は、引き続きの熱処理により著しく延長されることが明らかになってきている。引き続き処理されない試料4-1は、14日後に既に完全に崩壊したが、引き続き熱処理された試料4-3は、この時点でも依然ほぼ50%維持された。対応する差異が、各々気相において5時間架橋された、試料4-2(引き続き熱処理されず)と4-4(引き続き熱処理された)の間にも認められた。35日後、試料4-2は完全に崩壊し、試料4-4は依然70%よりも多く維持された。
【0086】
真空下での引き続きの熱処理は、スポンジの架橋度及び安定性の増加の他に、造形体中に維持される架橋剤の残存量は効果的に低下し、これにより使用前の長時間の洗浄は避けられるか又は少なくとも短縮できるという更なる利点を有する。このことは特に、高濃度のゼラチンを基に製造される力学的に比較的堅いスポンジに当てはまる。
【0087】
この作用を測定するために、水中ブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)の18質量%溶液のふたつのバッチを、ゼラチンを60℃で溶解し、超音波により脱気することにより作製し、及び各々ホルムアルデヒド水溶液(1.0質量%、室温)の対応する量と混合し、(ゼラチンに対して)2000ppmホルムアルデヒドを作製した。
【0088】
ホモジナイズした混合物を、45℃で反応時間5分かけた後、調質し、空気により機械的に発泡した。これらふたつのバッチにおける空気のゼラチン溶液に対する異なる関係のために、表4のような異なる密度及び細孔サイズを伴うセル構造を得た。
【0089】
発泡したゼラチン溶液の注型及び乾燥は、先に説明したように行い、同様に厚さ2mmの円盤状に切断し、ホルムアルデヒドの蒸気下で、第二の架橋ステップを行った。この架橋時間は17時間であった。
【0090】
【表4】

【0091】
スポンジ内の過剰なホルムアルデヒドの含量を決定した後、試料に、105℃及び約14mbarの真空で、各々、4時間(試料4-5)及び10時間(試料4-6)の引き続きの熱処理を施した。その後遊離のホルムアルデヒドの残留含量を再度決定した。結果を、表5に示す。
【0092】
【表5】

【0093】
スポンジ4-5の場合、ホルムアルデヒド含量は既に、4時間の引き続きの熱処理の後、約30%まで低下した。かなり濃密なスポンジ4-6の場合、10時間の引き続きの処理は、約40%まで残留含量の低下を生じた。
【0094】
多くの医療用途において、約0.2質量%の残留含量は、ホルムアルデヒドの生理的上限を表している。多くの場合において、この値は、引き続きの熱処理により実現することができ、その結果スポンジの洗浄に必要な時間をかなり短縮することができることは明らかである。
【0095】
実施例5:予備的熱処理を受けたゼラチンからの造形体の製造
比較のために、実施例1〜4において造形体を製造するために使用したブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)に、実施例4の造形体の引き続きの熱処理と同様の、予備的熱処理を施した。
【0096】
ゼラチンは、約14mbarの真空、105℃で、6時間維持した。結果的に、ブルーム強度は300から310へ増加し、粘度は5.92mPasから9.04mPasへ上昇し(60℃で6.7質量%溶液で測定)、及び平均分子量は172kDaから189kDaへ増加した。
【0097】
実施例1に説明した方法のように、4種の異なるフィルムを、未処理のゼラチン及び予備的熱処理を受けたゼラチンから、各々作製した。様々なバッチの量を表6に示した。実施例1とは異なり、2.0質量%ホルムアルデヒド水溶液を、第一の架橋ステップに使用し、第二の架橋ステップを、10%ホルムアルデヒド水溶液の平衡蒸気圧で2時間実行した。
【0098】
【表6】

【0099】
乾燥状態のフィルム5-1から5-4の力学的特性を、図8に示した。予備的熱処理を受けたゼラチンから作製されたフィルム5-2及び5-4の引裂強度は、未処理のゼラチンから作製された対応するフィルム5-1及び5-3と比べ、かなり高いことは明らかである。医療用途の状況におけるこれらのフィルムの操作可能性(manageability)は、これにより改善される。あるいは、予備的熱処理を受けたゼラチンから、同等の引裂強度を有するより薄いフィルムを作製することが可能である。
【0100】
生理的条件下でのそれらの長期安定性に関する限り、前処理されたゼラチンから製造されたフィルムは、未処理のゼラチンから製造されたフィルムと同じ有利な特性を示す。
【0101】
予備的熱処理を受けたゼラチンも、実施例3のようなセル構造を有する造形体の製造に適している。この場合も、未処理のゼラチンが使用される場合と同様の長期安定性が認められる。前処理したゼラチンのより高い粘度のために(5.92mPasと比較し、この場合9.04mPas)、スポンジの製造に使用される溶液のゼラチン濃度を著しく低下することが可能である。ゼラチン溶液の粘度は、濃度につれて直線状から二次的に増加するので、予備的熱処理を受けたゼラチンの5〜8質量%溶液を、未処理のゼラチンの12質量%溶液の代わりに使用することができる。この方法で製造されたセル構造を伴う造形体は、細孔間のより薄いウェブ及びより低い密度により識別され、これにより次にスポンジの柔軟性が増加する。より低い密度は、合計で、ゼラチンのより少ない量が、組織インプラントのための支持体材料としての使用に必要であることも意味する。
【0102】
実施例6:多層シート材の製造
実施例1に説明された方法に従い、フィルムを、ブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)33g、水53.25g、グリセリン15.5g及び2.0質量%ホルムアルデヒド溶液8.25gから製造し、このドクターブレードで塗布したフィルムを、40℃で2時間維持し、その後乾燥した。
厚さ2〜3mmのスポンジを、実施例3、バッチ3-2に従い製造した。
【0103】
第二の架橋前に、ふたつのシート材を、骨ゼラチン(ブルーム強度160)から製造された溶液により互いに接着により結合した。実施例2に説明されたように、その後多層シート材を、ホルムアルデヒド蒸気の作用により架橋した。
【0104】
ここに説明された方法に代わり、フィルム及びスポンジには、各々個別に第二の架橋ステップが施され、その後結合されてもよい。
接着剤としてゼラチン溶液を使用する代わりに、2種のシート材を、ドクターブレードにより塗布されているがまだ乾燥されていないフィルムへ、部分的に加圧されている乾燥したスポンジにより結合することもできる。好ましくは表面全体を覆うシート材の結合が、両方の交互の手法により得られる。
【0105】
実施例7:軟骨細胞によるスポンジのコロニー形成
バッチ3-1から3-3及び実施例3の1回架橋した参照試料で製造したスポンジを、各々、軟骨細胞によるコロニー形成のための、厚さ2mmのシート材として使用した。哺乳類細胞の培養のための標準培地であるDMEM/10%FCS/グルタミン/ペニシリン(pen)/ストレプトマイシン(strep)を、培養培地として使用した。
【0106】
コロニー形成の前に、過剰なホルムアルデヒドを、例えば、培養培地又はエタノールによるスポンジの洗浄により、スポンジから除去しなければならない。
100万個のブタ軟骨細胞を、培養培地150μl中に浮遊し、シート材1cm2当たりに植え付けた。
1時間後に認められたスポンジ内の細胞分布を、図9に示した。
【0107】
パーセンタイルは、材料の各コロニー形成深度までに分布された全ての細胞の割合を百分率で示している。開放細孔構造のために、細胞分布は、スポンジの全体の厚さについて、実質的に均一であり、並びに参照試料Rと比べ、スポンジ3-1から3-3のより高い架橋度により損なわれなかった。
【0108】
実施例8:フィルム上の線維芽細胞の培養
バッチ2-3から2-6に従い製造したフィルムを、線維芽細胞によるコロニー形成に使用した。培養培地として、同じくDMEM/10%FCS/グルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンを使用した。
【0109】
細胞によるコロニー形成の前に、フィルムは同じく、あらゆる残留ホルムアルデヒドを除去するために、洗浄されなければならない。
ヒト包皮線維芽細胞(50万個細胞/cm2)を、フィルム上に植え付け、及び培地において37℃で6週間培養した。
【0110】
細胞生存度を、1週間に2回顕微鏡により調べた。全てのフィルム上の線維芽細胞は、少なくとも4週間生存したことがわかった。
更に、それらの細胞のプロテアーゼ産生にもかかわらず、4週間後に、フィルムはまだ崩壊していなかった。より大きい架橋度を伴うフィルム2-5及び2-6は、6週間目までも安定していた。
【0111】
図10は、14日間の培養期間後のフィルム2-5上の線維芽細胞の顕微鏡写真を示している。この材料の崩壊はまだ始まっていないので、フィルムの縁は明確に認められる。
ブタ皮革ゼラチン(ブルーム強度300)を、前記実施例の全てにおいて使用したが、他の種類及び量のゼラチンにより、同等の結果を容易に得ることができることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、本発明のフィルムの応力-歪図である。
【図2】図2は、本発明の更なるフィルムの応力-歪図である。
【図3】図3は、本発明のセル構造を伴う造形体の時間に関する分解挙動である。
【図4】図4は、本発明のセル構造を伴う造形体の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、本発明のセル構造を伴う造形体の破断力の図である。
【図6】図6は、本発明のセル構造を伴う造形体のプロテアーゼ-抵抗性である。
【図7】図7は、本発明のセル構造を伴う造形体の更なる時間に関する分解挙動である。
【図8】図8は、本発明の更なるフィルムの応力-歪図である。
【図9】図9は、本発明の造形体の軟骨細胞のセル分布である。
【図10】図10は、線維芽細胞を伴う本発明のフィルムのコロニー形成の写真表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋したゼラチンを基にした造形体の製造方法であって、以下:
a)水性ゼラチン溶液を調製するステップ;
b)溶解したゼラチンを部分的に架橋するステップ;
c)部分的に架橋したゼラチンを含有するゼラチン溶液から出発する造形体を製造するステプ;及び
d)造形体中に含まれたゼラチンを架橋するステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記造形体が、ステップd)の前に少なくとも部分的に乾燥される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記のステップd)における架橋が、水溶液中における架橋剤の作用により実行される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記のステップd)における架橋が、気相における架橋剤の作用により実行される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記のステップb)及びd)において使用される架橋剤が、同じ又は異なり、そしてアルデヒド、ジアルデヒド、イソシアナート、ジイソシアナート、カルボジイミド及びジハロゲン化アルキルから各々選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記のステップb)及び/又はd)における架橋剤が、ホルムアルデヒドである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
過剰な架橋剤が、架橋後、造形体から除去される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記造形体が、ステップd)に続けて減圧下で、引き続き熱処理を受ける、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記の引き続き熱処理が、温度80〜160℃で実行される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ステップa)が、減圧下で予備的熱処理を先に受けているゼラチンを基に実行される、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記予備的熱処理が、温度80〜160℃で実行される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ステップa)が、6.7質量%水溶液中60℃で測定された、粘度8mPas又はそれ以上を有するゼラチンを基に実行される、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記造形体が軟化剤を更に含有する、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記軟化剤が、グリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール及びソルバイトから選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14記載の方法に従って製造された、造形体。
【請求項16】
過剰な架橋剤を実質的に含有しない、請求項15記載の造形体。
【請求項17】
前記造形体が、約0.2質量%以下の過剰な架橋剤含量を有する、請求項16記載の造形体。
【請求項18】
前記架橋度が、生理的条件下で、造形体が少なくとも1週間は安定しているように選択される、架橋されたゼラチンを基にした造形体。
【請求項19】
前記架橋度が、生理的条件下で、造形体が少なくとも2週間は安定しているように選択される、請求項18記載の造形体。
【請求項20】
前記架橋度が、生理的条件下で、造形体が少なくとも4週間は安定しているように選択される、請求項18記載の造形体。
【請求項21】
前記造形体が自立式である、請求項15〜20のいずれか1項記載の造形体。
【請求項22】
前記造形体が、支持体要素を有さない、請求項15〜21のいずれか1項記載の造形体。
【請求項23】
前記造形体が、柔軟である、請求項15〜22のいずれか1項記載の造形体。
【請求項24】
前記造形体が軟化剤を更に含有する、請求項15〜23のいずれか1項記載の造形体。
【請求項25】
前記軟化剤が、グリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール及びソルバイトから選択される、請求項24記載の造形体。
【請求項26】
前記造形体がシート材である、請求項15〜25のいずれか1項記載の造形体。
【請求項27】
前記シート材がセル構造を有する、請求項26記載のシート材。
【請求項28】
前記セル構造が開放細孔である、請求項27記載のシート材。
【請求項29】
前記セル構造が、造形体上の力学的作用により修飾される、請求項27又は28記載のシート材。
【請求項30】
前記セル構造の細孔間のセル壁の一部が破壊される、請求項29記載のシート材。
【請求項31】
前記造形体の密度が、力学的作用により2〜10倍増加する、請求項29又は30記載のシート材。
【請求項32】
前記細孔が、300μm未満の平均直径を有する、請求項27〜31のいずれか1項記載のシート材。
【請求項33】
前記シート材がフィルムである、請求項26記載のシート材。
【請求項34】
前記フィルムが、20〜500μm、好ましくは50〜100μmの厚さを有する、請求項33記載のシート材。
【請求項35】
前記シート材が多層構造を有し、これが、請求項33又は34記載のフィルム及び請求項27〜32のいずれか1項記載のセル構造を伴うシート材を含む、請求項26記載のシート材。
【請求項36】
前期セル構造を伴うシート材が、フィルムに直接結合されている、請求項35記載のシート材。
【請求項37】
前記結合が、セル構造を伴うシート材にフィルムへ加圧することによりもたらされる、請求項36記載のシート材。
【請求項38】
前記セル構造を伴うシート材が、接着剤によりフィルムに結合されている、請求項35記載のシート材。
【請求項39】
前記接着剤が、ゼラチンを含有する、請求項38記載のシート材。
【請求項40】
前記造形体が、中空体である、請求項15〜25のいずれか1項記載の造形体。
【請求項41】
前記中空体が、中空の断面(hollow section)である、請求項40記載の中空体。
【請求項42】
前記の中空の断面が、中空のシリンダーである、請求項41記載の中空の断面。
【請求項43】
前記中空体が、セル構造を有する、請求項40〜42のいずれか1項記載の中空体。
【請求項44】
前記中空体が、ゼラチン溶液の押出により製造される、請求項40〜43のいずれか1項記載の中空体。
【請求項45】
前記の中空の断面が、請求項26〜39のいずれか1項記載のシート材から製造される、請求項41〜43のいずれか1項記載の中空の断面。
【請求項46】
ヒト又は動物用の医療の分野において、創傷又は内出血もしくは外出血を被覆するための吸収性材料を製造するための、請求項15〜45のいずれか1項記載の造形体の使用。
【請求項47】
In vitroにおける哺乳類細胞の培養のための支持体としての、請求項15〜42のいずれか1項記載の造形体の使用。
【請求項48】
前記哺乳類細胞が、線維芽細胞である、請求項47記載の使用。
【請求項49】
前記哺乳類細胞が、軟骨細胞である、請求項47記載の使用。
【請求項50】
請求項15〜42のいずれか1項記載の造形体、及び造形体上で培養された哺乳類細胞を含む、インプラント。
【請求項51】
ヒト又は動物の皮膚の損傷、外傷及び/又は火傷を治療するのに適した、請求項50記載のインプラント。
【請求項52】
ヒト又は動物の軟骨組織の損傷及び/又は外傷を治療するのに適した、請求項50記載のインプラント。
【請求項53】
請求項42〜45のいずれか1項記載の中空のシリンダーを含む、神経ガイドチャネル。
【請求項54】
前記中空シリンダーが、内径約1mmを有する、請求項53記載の神経ガイドチャネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−537314(P2007−537314A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512103(P2007−512103)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005174
【国際公開番号】WO2005/111121
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(502084056)ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】