説明

架橋抗体

本発明は、次の要素:1つ又は複数の反応性基と;2つ以上の架橋抗体又はそのフラグメントとから本質的になる化合物であって、前記又は各反応性基がエフェクター分子の結合に適するが、抗体又はそのフラグメントのいずれとも反応しないことを特徴とする化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エフェクター分子を抗体に結合させるために用いられる化合物に関する。より具体的には、本発明は、エフェクター分子が結合できる架橋抗体を含む分子に関する。そのような分子の調製方法及びそれらを含有する医薬組成物も提供される。
【背景技術】
【0002】
抗体の結合特異性を用いて、エフェクター分子、例えば薬剤を特定の治療上の標的、例えば腫瘍細胞に送達することができる。エフェクター分子は、例えば直接結合(例えば米国特許第5,677,425号;欧州特許第0948544号を参照されたい)又はリンカーを介する結合(米国特許第5,218,128号)を含む種々の方法を用いて抗体に結合できる。
【0003】
架橋抗体は、当該技術において公知である(例えば米国特許第5,262,524号を参照されたい)。ある架橋抗体は、天然の免疫グロブリンに比べて改善された結合能力、改善されたin vivoでの血中クリアランス及び改善された組織分布を有することが証明されている。例えば、連結構造により互いに結合したFab’フラグメントを含む三価及び四価の単一特異的抗原結合性タンパク質を記載する国際公開第92/22583号を参照されたい。国際公開第92/22583号は、エフェクター分子の結合のための部位としての連結構造の使用も記載している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明は、次の要素:1つ又は複数の反応性基と;2つ以上の架橋抗体若しくはそのフラグメントとから本質的になる化合物であって、各反応性基がエフェクター分子の結合に適するが、該抗体又はそのフラグメントのいずれとも反応しないことを特徴とする化合物を提供する。
【0005】
本発明は、よって、エフェクター分子が結合し得る抗体を架橋するための新規なリンカーを提供する。有利には、リンカー分子は、エフェクター分子の部位特異的結合に適するが、リンカーに結合している抗体とは反応しない単一の反応性基を含む。さらに、反応性基は抗原結合部位から離れている。これらの特徴により、エフェクター分子は、抗体の抗原結合能力を損なわずに架橋抗体に結合することが可能になる。さらに、本発明の化合物は、従来技術の化合物より調製する効率がより高くかつ用途が広い。エフェクター分子を予め形成された架橋抗体に結合させることにより、その逆(まずリンカーをエフェクター分子に結合させ、次いで抗体を結合させる)よりも、望ましくない副反応が最小限にされ、より均質な生成物が創られる。さらに、架橋抗体はエフェクター分子の存在なしに調製されるので、より安定性の低いエフェクター分子をその後の結合のために選択できる。予め形成された架橋抗体を貯蔵することにより、異なる化合物が必要となる度に最初から化合物全体を合成する必要なしに、実質的に無制限の範囲のエフェクター分子を結合することができる。
【0006】
好ましくは、本発明の化合物は、1つ又は複数の反応性基、より好ましくは1つの反応性基を含む。
【0007】
よって、本発明は、次の要素:1つの反応性基と;2つ以上の架橋抗体若しくはそのフラグメントとから本質的になる化合物であって、該反応性基がエフェクター分子の結合に適するが、該抗体又はそのフラグメントのいずれとも反応しないことを特徴とする化合物をも提供する。
【0008】
本発明の具体的な例を、式(I)又は(II)に示す:
【化1】


(式中:
A、A及びAは独立して、抗体又はそのフラグメントの残基を表し;
L、L及びLは独立して、スペーサー基を表し;
Rは、エフェクター分子の結合に適するが、A、A及びAのいずれとも反応しない反応性基を表し;
Yは、共有結合又は−(CH−を表し;
B、B及びBは独立して、−CONH−、−NHCO−又は−CO−を表し;
V、V及びVは独立して、共有結合又は−(CH−を表し;
X、X及びXは独立して、CR又はNを表し;
W、W及びWは独立して、−(CHO−を表し;
T、T及びTは独立して、リンカー基を表し;
Qは、CO又はCONRを表し;
は、水素又はC1〜4アルキルを表し;
は、水素又はC1〜4アルキルを表し;
は、水素又はC1〜4アルキルを表し;
vは1、2、3又は4であり;
wは1、2、3又は4であり;並びに
yは1、2、3、4、5又は6である)。
【0009】
また、本発明により、エフェクター分子が結合する架橋抗体が提供される。本発明のこの態様の具体例は、式(III)及び(IV)に示される:
【化2】


(式中:
Zはエフェクター分子の残基であり;
はZの結合に起因する官能基であり;及び
その他の可変記号はそれぞれ、式(I)又は(II)に関して上記で規定されたとおりである)。
【0010】
本明細書で用いる場合、用語「C1〜4アルキル」は、直鎖状及び分枝鎖状で1〜4炭素原子を含有するアルキル基のことをいう。このような基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルである。
【0011】
本明細書で用いる場合、用語「残基」は、このような用語が当業者に周知されているように、置換反応を受けた後に残っているエフェクター分子又は抗体若しくはそのフラグメントの部分を意味すると理解される。
【0012】
残基A、A及びAは、抗体全体及びその機能的に活性なフラグメント又は誘導体の残基を含み、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化又はキメラ抗体、単一鎖抗体、Fabフラグメント、Fab’及びF(ab’)フラグメント並びに上記のいずれのもののエピトープ結合フラグメントであり得る。
【0013】
抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を含む。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子のいずれのクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgD又はIgA)又はサブクラスでもあり得る。
【0014】
モノクローナル抗体は、当該技術において知られるいずれの方法、例えばハイブリドーマ技術(Kohler及びMilstein,Nature,1975,256,495〜497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,Immunology Today,1983,4,72)及びEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら,「モノクローナル抗体とがん治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」,pp.77〜96,Alan R. Liss,Inc.,1985)により作製してよい。
【0015】
本発明において用いられる抗体は、例えばBabcook,J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93(15),7843〜7848、国際公開第92/02551号、国際公開第2004/051268号及び国際公開第2004/106377号により記載される方法により、特異的抗体の産生のために選択された単一リンパ球から作製された免疫グロブリン可変領域cDNAのクローニング及び発現による単一リンパ球抗体法を用いて作製してもよい。
【0016】
ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域とを有する非ヒト種由来の抗体分子である(例えば米国特許第5,585,089号を参照されたい)。
【0017】
キメラ抗体は、軽鎖及び重鎖の遺伝子が別の種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントで構成されるように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる抗体である。
【0018】
本発明において用いられる抗体は、当該技術において知られ、Brinkmanら,J.Immunol.Methods,1995,182,41〜50;Amesら,J.Immunol.Methods,1995,184,177〜186;Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.,1994,24,952〜958;Persicら,Gene,1997,187,9〜18;及びBurtonら,Advances in Immunology,1994,57,191〜280;国際公開第90/02809号;国際公開第91/10737号;国際公開第92/01047号;国際公開第92/18619号;国際公開第93/11236号;国際公開第95/15982号;及び国際公開第95/20401号;並びに米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,427,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号;及び同第5,969,108号により開示される方法を含む種々のファージディスプレイ法を用いて作製することもできる。単一鎖抗体の産生のための技術、例えば米国特許第4,946,778号に記載されるものを、単一鎖抗体を産生するために適合させることもできる。また、トランスジェニックマウス又はその他の哺乳動物を含むその他の生物を用いて、ヒト化抗体を発現させてよい。
【0019】
ある例において、抗体フラグメントは、天然又は修飾されたヒンジ領域を有するFab’フラグメントである。いくつかの修飾されたヒンジ領域は、例えば米国特許第5,677,425号、国際公開第9915549号及び国際公開第9825971号に既に記載され、これらは本明細書に参照として組み込まれる。
【0020】
特定の抗体フラグメントは、国際公開第2005003169号、国際公開第2005003170号及び国際公開第2005003171号に記載されるものを含む。
【0021】
好ましくは、本発明に用いられる抗体フラグメントは、単一の遊離のチオールを好ましくはヒンジ領域に含む。
【0022】
本明細書において用いられるような用語「架橋抗体」は、連結構造により連結された2、3又は4つの抗体若しくはそのフラグメントのことをいう。連結構造は、本明細書に記載されるような抗体又はそのフラグメントを一緒に連結できるいずれの分子構造であってもよい。好ましくは、本発明による分子の架橋抗体部分は、3つの抗体フラグメント、好ましくはFab’フラグメントを含む。
【0023】
本発明の分子の架橋抗体部分における抗体又はそのフラグメントのそれぞれは、通常、抗原に選択的に結合することができる。各抗体は、同じ又は異なる抗原に結合してよい。よって、本発明による分子の架橋抗体部分は、単一特異的、二重特異的、三重特異的又は四重特異的であってよい。好ましくは、本発明による分子の架橋抗体部分は単一特異的である。
【0024】
抗原は、いずれの細胞結合抗原、例えば細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞、腫瘍細胞等の細胞上の細胞表面抗原でもよく、又は可溶性抗原でもよい。抗原は、いずれの医療上適切な抗原、例えば疾患又は感染の間にアップレギュレートされる抗原、例えば受容体及び/又はそれらの対応するリガンドであってもよい。細胞表面抗原の具体例は、接着分子、例えばβ1インテグリンのようなインテグリン、例えばVLA−4、E−セレクチン、Pセレクチン又はL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、CD70、CD134、がん胎児性抗原(CEA)、MUC−1、MHCクラスI及びMHCクラスII抗原、及びVEGF、並びに適切であればそれらの受容体を含む。可溶性抗原は、インターロイキン、例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16又はIL−17、ウイルス抗原、例えば呼吸器合胞体ウイルス又はサイトメガロウイルス抗原、免疫グロブリン、例えばIgE、インターフェロン、例えばインターフェロンα、インターフェロンβ又はインターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、コロニー刺激因子、例えばG−CSF又はGM−CSF、並びに血小板由来成長因子、例えばPDGF−α及びPDGF−β、並びに適切であればそれらの受容体を含む。
【0025】
適切には、A、A及びAは同一である。
【0026】
本発明において用いられるスペーサー基は、リンカーと抗体又はそのフラグメントとの間に架橋を形成できる、当業者に周知されたいずれの部分をも適切には含む。特に、スペーサー基L、L及びLは、リンカーT、T及びTと残基A、A及びAとの間にそれぞれ架橋を形成できる、当業者に周知されたいずれの部分をも適切には含む。A、A及びAがシステイン残基を含む抗体又はそのフラグメントの残基である1つの例において、対応するスペーサー基L、L及びLは、適切にはスクシンイミドである(すなわち、マレイミド残基と、チオール結合を介するシステイン含有ポリペプチド残基A、A及びAと、マレイミド窒素原子を通してのリンカーT、T及びTとの反応生成物)。
【0027】
適切には、L、L及びLは同一である。
【0028】
リンカー基T、T及びTは、スペーサー基L、L及びLとそれぞれW、W及びWの酸素原子との間又はそれぞれX、X及びXとの間の架橋を形成することができる、当業者に周知されたいずれの部分をも適切には含む。
【0029】
T、T及びTの典型的な例は、−(CH−、−(CHNHCO(CH−、−(CHNHCO(CHNHCO(CH−、−(CHNHCO(CH(OCHCHNHCO(CH−、−(CHNHCO(CH−、
【化3】


及び
【化4】


(式中、
tは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;
nは1、2、3、4、5又は6であり;
xは2、3、4、5又は6であり;
zは1〜500であり;
pは1、2、3、4、5又は6であり;
mは1、2、3、4、5又は6であり;そして
rは2、3、4又は5である)
を含む。
【0030】
一実施形態において、Tは−(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH(OCHCHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH−を表す。
【0031】
一実施形態において、Tは−(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH(OCHCHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH−を表す。
【0032】
一実施形態において、Tは−(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH(OCHCHNHCO(CH−を表す。
別の実施形態において、Tは−(CHNHCO(CH−を表す。
適切には、T、T及びTは同一である。
【0033】
一実施形態において、XはCRを表す。別の実施形態において、XはNを表す。
一実施形態において、XはCRを表す。別の実施形態において、XはNを表す。
一実施形態において、XはCRを表す。別の実施形態において、XはNを表す。
適切には、X、X及びXは同一である。
【0034】
一実施形態において、Bは−CONH−を表す。別の実施形態において、Bは−NHCO−を表す。Bが−CONH−を表す場合、Xは典型的にはCHを表す。
一実施形態において、Bは−CONH−を表す。別の実施形態において、Bは−NHCO−を表す。Bが−CONH−を表す場合、Xは典型的にはCHを表す。
一実施形態において、Bは−CONH−を表す。別の実施形態において、Bは−NHCO−を表す。Bが−CONH−を表す場合、Xは典型的にはCHを表す。
適切には、B、B及びBは同一である。
【0035】
ある好ましい実施形態において、Vは共有結合を表す。別の実施形態において、Vは−(CH−(ここでvは上記で規定したとおりである)を表す。
ある好ましい実施形態において、Vは共有結合を表す。別の実施形態において、Vは−(CH−(ここでvは上記で規定したとおりである)を表す。
ある好ましい実施形態において、Vは共有結合を表す。別の実施形態において、Vは−(CH−(ここでvは上記で規定したとおりである)を表す。
適切には、V、V及びVは同一である。
【0036】
ある好ましい実施形態において、Rは水素である。別の実施形態において、RはC1〜4アルキル、特にメチルを表す。
ある好ましい実施形態において、Rは水素である。別の実施形態において、RはC1〜4アルキル、特にメチルを表す。
【0037】
一実施形態において、QはCOHである。別の実施形態において、QはCONHである。
【0038】
ある好ましい実施形態において、Rは水素である。別の実施形態において、RはC1〜4アルキル、特にメチルを表す。
【0039】
一実施形態において、yは1である。
別の実施形態において、yは2である。
【0040】
一実施形態において、tは2である。別の実施形態において、tは3である。さらなる実施形態において、tは4である。好ましくは、tは3である。
【0041】
一実施形態において、rは4である。
一実施形態において、mは5である。
一実施形態において、nは2である。
【0042】
典型的には、zは1〜10の範囲、又は10〜25の範囲、又は25〜50の範囲、又は50〜100の範囲、又は100〜250の範囲、又は250〜500の範囲であってもよい。zの具体的な値は、1、2、3、4、5、6、10、25、50、100、250及び500を含む。
【0043】
一実施形態において、zは4である。
一実施形態において、xは5である。
一実施形態において、pは2である。
【0044】
上記の式(III)及び(IV)の化合物における残基Zは、エフェクター分子の残基であることが適切である。エフェクター分子が、単一のエフェクター分子、又は本発明の化合物に単一残基Zとして結合できる単一部分を形成するように連結された2つ以上のそのような分子を含んでよいことが認識されよう。このような部分の例は、分枝連結構造により連結されたエフェクター分子を含む。本発明において用いられるエフェクター分子は、ヒトを含む動物の治療における医療的又は診断的な使用に適する生物活性化合物を含む。
【0045】
エフェクター分子の例は、細胞毒、又は細胞に有害な(例えば殺す)いずれの作用剤も含む細胞毒作用剤を含んでよい。その例は、コンブレスタチン(combrestatins)、ドラスタチン、エポシロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド(maytansinoids)、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステルリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン、並びにそれらの類縁体又は同族体を含む。
【0046】
エフェクター分子は、限定されないが、抗代謝剤(例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオエパクロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、並びに有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)も含む。
【0047】
その他のエフェクター分子は、キレート化された放射性核種、例えば111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192並びにタングステン188/レニウム188、又は薬剤、限定されないが例えば、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンを含んでもよい。
【0048】
その他のエフェクター分子は、本発明の化合物の半減期を延長する及び/又は免疫原性を減少させるのに用い得るタンパク質又はポリマーを含んでよい。適切なタンパク質の例は、アルブミン及びアルブミン結合タンパク質を含む。適切なポリマーの例は、いずれの合成又は天然の実質的に水溶性で、実質的に非抗原性ポリマーを含み、例えば、置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー、或いは分枝鎖又は非分枝鎖の多糖類、例えばホモ多糖又はヘテロ多糖、例えばラクトース、アミロース、デキストラン又はグリコーゲンを含む。上記の合成ポリマー上に存在してもよい具体的な任意選択の置換基は、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基を含む。合成ポリマーの具体例は、置換されていてもよい直鎖又は分枝鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に、置換されていてもよいポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)を含む。
【0049】
好ましくは、本発明において用いられるポリマーは、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール(PEG)である。一般的なPEG部分の結合については、“Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications”,1992,J.Milton Harris編,Plenum Press,New York;“Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications”,1997,J.Milton Harris及びS.Zalipsky編,American Chemical Society,Washington DC;及び“Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,1998,M.Aslam及びA.Dent,Grove Publishers,New Yorkが参照される。
【0050】
ポリマーのサイズは、所望により変動してよいが、通常、250〜100000Da、好ましくは5000〜50000Da、より好ましくは10000〜40000Da、さらにより好ましくは20000〜40000Daの範囲の平均分子量である。ポリマーのサイズは、特に、生成物の意図する使用、例えば腫瘍などの特定組織に対する局在化能又は循環半減期延長能に基づいて選択してもよい(総説として、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531〜545を参照されたい)。
【0051】
その他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド及び酵素を含む。興味対象の酵素は、限定されないが、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼを含む。興味対象のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドは、限定されないが、免疫グロブリン、毒素、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素又はジフテリア毒素、タンパク質、例えばインシュリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノゲンアクチベーター、血栓作用剤又は抗血管新生作用剤、例えばアンジオスタチン若しくはエンドスタチン、或いは生物学的応答調節物質、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)又はその他の成長因子及び免疫グロブリンを含む。
【0052】
その他のエフェクター分子には、例えば診断において有用な検出可能な物質が含まれる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、接合団、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射活性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影法用)、及び非放射活性常磁性金属イオンを含む。診断用の抗体に複合化できる金属イオンについて、一般的に、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な接合団は、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含む。適切な蛍光材料は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド及びフィコエリスリンを含む。適切な発光材料は、ルミノールを含む。適切な生物発光材料は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含む。適切な放射活性核種は、125I、131I、111In及び99Tcを含む。
【0053】
本発明において用いられる反応性基Rは、エフェクター分子の結合に適するが、リンカーに結合している抗体又はそのフラグメントのいずれとも反応しないいずれの基でもある。典型的には、Rは、残基Zと反応するが、リンカーに結合している抗体又はそのフラグメントのいずれとも反応しない基である。このような基は当該技術において公知であり、チオール、チオエステル、オキシアミン及びヒドラジドを含んでよい。
【0054】
一実施形態において、Rはチオール基−SHであり、この場合、Rは二価のチオール残基−S−である。別の実施形態において、Rはチオエステル部分、例えば式−C(O)SR10(式中、R10はアリール又はヘテロアリール基、例えばフェニル又はピリジニルを表す)の基である。別の実施形態において、Rはオキシアミン基−ONHである。別の実施形態において、Rはヒドラジド基−CONHNHである。
【0055】
Rが、Z上の特定の反応性基Zと反応するように選択されることは、当業者であれば認識されよう。好ましくは、反応性基Zは、リンカーに結合している抗体又はそのフラグメントと反応しないように選択される。さらに、反応性基Z及び反応性基Rは、これらの間の反応が、抗体若しくはそのフラグメント又はエフェクター分子の生物活性に影響しない穏やかな条件下でおこり得るように選択される。
【0056】
は、ZのRへの結合に起因する二価の官能基である。
【0057】
適切な基は当該技術において公知であり、可能なR及びZ基並びに得られる二価の官能基(R)のいくつかの例を、図1に示す。
【0058】
反応性基Z及びRとして用いるのに適する基のその他の例は、連結反応、例えばクリックケミストリー(Click Chemistry)(Kolb及びSharpless,2003,DDT,8,1128〜1137)、スタウジンガー連結(Staudinger ligations)(Wangら,2003,Bioconjugate Chemistry,14,697〜701)及びトレースレス(Traceless)スタウジンガー連結(Nilssonら,2001,Organic Letters,3,9〜12;Saxonら,2000,2,2141〜2143)において用いられる基を含む。
【0059】
本発明により、次の要素:本明細書において規定される1つ又は複数の反応性基又はその保護された誘導体と;2つ以上の抗体又はそのフラグメントの架橋に適するリンカーとから本質的になる化合物であって、各反応性基がエフェクター分子の結合に適し、それ又はその保護された誘導体が、抗体若しくはそのフラグメント又はそれらが結合するリンカー上のスペーサー基と反応しないことを特徴とする化合物も提供される。
【0060】
好ましくは、本発明のこの態様による化合物は、1つ又は2つの反応性基、より好ましくは1つの反応性基を含む。
【0061】
よって、本発明は、次の要素:本明細書において規定される1つの反応性基又はその保護された誘導体と;2つ以上の抗体又はそのフラグメントの架橋に適するリンカーとから本質的になる化合物であって、前記反応性基がエフェクター分子の結合に適し、それ又はその保護された誘導体が、抗体若しくはそのフラグメント又はそれらが結合するリンカー上のスペーサー基と反応しないことを特徴とする化合物も提供する。
【0062】
よって、別の態様において、本発明は、そのA、A及びAが残基である抗体又はそのフラグメントの結合のための有用な中間体である新規化合物を提供する。よって、本発明は、式(V)及び(VI)の化合物も提供する:
【化5】


(式中:
、L及びLは、残基A、A及びAにそれぞれ結合できるか、又はこのような基に変換され得る基を表し;
は、上記で規定する基Rに相当するか、又はL、L及びLと反応しないその保護された誘導体を表し;
その他の可変記号のそれぞれは、式(I)又は(II)の関係において上記で規定したとおりである)。
【0063】
がRの保護された誘導体である場合、反応性基Rは、Rがスペーサー基L、L及びLと反応することを妨げる別の基、「保護基」でマスクされる。このような保護された誘導体は、抗体の存在下で、反応性基Rに容易に変換され得る。このような基の例は保護されたチオール基であり、ここで、保護基は容易に除去されて、Zとの反応に遊離のチオールを提供できる。除去の条件は、抗体又はそのフラグメントの生物活性が影響されないようなものが好ましい。適切なチオール保護基は当該技術において公知であり、チオールエステル、ジスルフィド、アセチル基及びプロピオニル基を含む。
【0064】
、L及びL基は、抗体又はそのフラグメントに位置するいずれの利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えばいずれの遊離のアミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシ又はカルボキシル基を通して、対応する残基A、A又はAに結合してよい。このようなアミノ酸は、例えば抗体フラグメントに天然に存在してよいか、又は組換えDNA法を用いて抗体又はそのフラグメントに導入してもよい(例えば、米国特許第5,219,996号及び米国特許第5,677,425号を参照されたい)。本発明の好ましい態様において、2つの基は、抗体又はそのフラグメント、好ましくはヒンジに位置するシステイン残基のチオール基を通して共有結合する。共有結合は、一般的に、ジスルフィド結合又は硫黄−炭素結合であり、好ましくは後者である。チオール基が結合点として用いられるある例において、適切に活性化された基、例えばチオール選択性誘導体、例えばマレイミド及びシステイン誘導体を用いてよい。
【0065】
好ましい特徴において、L、L及びL基は同一であり、マレイミド窒素原子を通して分子の残りの部分に結合するマレイミド誘導体を表す。別の特徴において、Rはアセチル保護されたチオール基を表す。よって、上記の式(V)及び(VI)の化合物の例示的な部分集合は、式(VII)及び(VIII)の化合物により表される:
【化6】


(式中、各可変記号は上記で規定したとおりである)。
【0066】
本発明のさらなる態様によると、式(III)又は(IV)の化合物を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤との組み合わせで含む医薬組成物が提供される。
【0067】
本発明による医薬組成物は、経口、頬側、非経口、経鼻、局所、眼若しくは直腸での投与に適切な形、又は吸入若しくはガス注入による投与に適切な形をとってよい。
【0068】
経口投与のために、上記の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えばバレイショデンプン又はグリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)を用いて通常の手段により調製される錠剤、ロゼンジ又はカプセル剤の形をとってよい。錠剤は、当該技術において公知の方法により被覆してもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば溶液、シロップ又は懸濁剤の形をとってよいか、又はこれらは使用前に水又はその他の適切な媒体を用いて戻すための乾燥製品としてあってもよい。このような液体製剤は、薬学的に許容される添加剤、例えば懸濁剤、乳化剤、非水性媒体又は防腐剤を用いて通常の手段により調製してよい。製剤は、緩衝塩、香料、着色剤又は甘味料を適宜含有してよい。
【0069】
経口投与用の製剤は、活性化合物を制御放出するように適切に製剤してもよい。
【0070】
頬側投与のために、化合物は、通常の手段で製剤された錠剤又はロゼンジの形をとってよい。
【0071】
式(III)及び(IV)の化合物は、注射、例えばボーラス注射又は点滴による非経口投与用に製剤されてよい。注射用の製剤は、例えばガラスアンプル中の単位剤形又は例えばガラスバイアル中の複数用量容器内で与えられてよい。注射用の組成物は、油性又は水性の媒体中の懸濁剤、溶液又はエマルションのような形をとってよく、配合剤、例えば懸濁剤、安定剤、防腐剤及び/又は分散剤を含有してよい。或いは、活性成分は、使用前に適切な媒体、例えばパイロジェンフリーの滅菌水を用いて戻すための粉末の形であってよい。
【0072】
上記の製剤に加えて、式(III)及び(IV)の化合物は、徐放性製剤として製剤されてもよい。このような長期作用型製剤は、インプラント又は筋肉内注射により投与されてよい。
【0073】
経鼻投与又は吸入による投与のために、本発明による化合物は、適切な高圧ガス、例えばジクロロジフルオロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素若しくはその他の適切なガス又は混合ガスを用いた加圧包装又は噴霧器用のエアロゾルスプレーの体裁の形で簡便に送達してよい。
【0074】
所望により、上記の組成物は、活性成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含んでよいパック又はディスペンサーデバイスで与えられてよい。パック又はディスペンサーデバイスは、投与のための使用説明書と組み合わされてよい。
【0075】
局所投与のために、本発明による化合物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適切な軟膏剤に簡便に製剤してよい。具体的な担体は、例えば、鉱物油、液体石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス及び水を含む。或いは、本発明による化合物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適切なローション剤に製剤してよい。具体的な担体は、例えば、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステル類のワックス、セテアリルアルコール、ベンジルアルコール、2−オクチルドデカノール及び水を含む。
【0076】
眼投与のために、本発明による化合物は、防腐剤、例えば殺菌剤又は防カビ剤、例えば硝酸フェニル水銀、塩化ベンジルアルコニウム又は酢酸クロルヘキシジンを用いるか又は用いない等張pH調整滅菌生理食塩水中のマイクロイオン化懸濁剤として簡便に製剤されてよい。或いは眼投与のために、化合物は、ワセリンのような軟膏の中に製剤してよい。
【0077】
直腸投与のために、本発明による化合物は、坐剤として簡便に製剤してよい。これらは、活性成分を、室温で固体であるが直腸温度では液体であるので直腸で融解して活性成分を放出する適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製できる。このような材料は、例えばカカオ脂、蜜蝋及びポリエチレングリコールを含む。
【0078】
特定の状態の予防又は治療のために要求される本発明の化合物の量は、選択される化合物及び治療される患者の状態に応じて変動する。しかし、一般的に、一日投与量は、約10ng/kg〜1000mg/kg、典型的には100ng/kg〜100mg/kg、例えば経口又は頬側投与について約0.01mg/kg〜40mg/kg−体重、非経口投与について約10ng/kg〜50mg/kg−体重、経鼻投与又は吸入若しくはガス注入による投与について約0.05mg〜約1000mg、例えば約0.5mg〜約1000mgの範囲であり得る。
【0079】
本発明の化合物は、本明細書に示す実施例に記載されるのと同じ方法を用いて調製してよい。
【0080】
典型的には、式(III)及び(IV)の化合物は、当業者に公知の手順を用いて残基Zを式(I)又は(II)の化合物にそれぞれ結合させることを含むプロセスにより調製してよい。
【0081】
Rがチオール基−SHである式(I)及び(II)の化合物は、Rがアセチル保護されたチオール基−SCOCHである式(VII)又は(VIII)のそれぞれ対応する化合物から、従来の脱保護方法、例えば塩酸ヒドロキシルアミンを含むEDTA含有緩衝液中でのインキュベーションにより調製してよい。
【0082】
T、T及びTがそれぞれ−(CH−である式(VII)の化合物は、式(IX):
【化7】


(式中、各可変記号は上記で規定したとおりである)
の化合物をN−メトキシカルボニルマレイミドと反応させることにより調製してよい。
【0083】
反応は、塩基性条件下、例えば炭酸ナトリウム水溶液の存在下で簡便に行われる。
【0084】
T、T及びTがそれぞれ−(CHNHCO(CH−である式(VII)の化合物は、上記で規定した式(IX)の化合物を、式(X):
【化8】


(式中、nは上記で規定したとおりであり、Jは活性化されたカルボキシレート部分を表す)
の化合物と反応させることにより調製してよい。
【0085】
置換基Jについての活性化されたカルボキシレート部分の例は、酸塩化物;酸無水物;及びカルボン酸(J=−COH)がN−ヒドロキシスクシンイミド又はそのスルホスクシンイミド類縁体と反応したときに形成されるエステルを含む。
【0086】
式(IX)の化合物と式(X)の化合物との間の反応は、適切な溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド中で、典型的には有機塩基、例えばトリエチルアミンの存在下に簡便に行われる。
【0087】
T、T及びTがそれぞれ−(CHNHCO(CHNHCO(CH−である式(VII)の化合物は、上記で規定するような式(IX)の化合物を、式(XI):
【化9】


(式中、x、n及びJは、上記で規定したとおりである)
の化合物と、化合物(IX)と(X)との間の反応について上述したのと同じ条件下で反応させることにより調製してよい。
【0088】
T、T及びTがそれぞれ−(CHNHCO(CH(OCHCHNHCO(CH−である式(VII)の化合物は、上記で規定するような式(IX)の化合物を、式(XII):
【化10】


(式中、p、z、n及びJは上記で規定したとおりである)
の化合物と、化合物(IX)と(X)との間の反応について上述したのと同じ条件下で反応させることにより調製してよい。
【0089】
T、T及びTがそれぞれ−(CHNHCO(CH−である式(VIII)の化合物は、式(XIII)の化合物を式(XIV)の化合物と反応させることにより調製してよい:
【化11】


(式中、各可変記号は上記で規定したとおりである)。
【0090】
反応は、塩基性条件、例えばジメチルスルホキシド中のジイソプロピルエチルアミンの下で簡便に行われる。
【0091】
式(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)及び(XIV)の化合物が市販で入手可能でない場合、これらは、以下の実施例に記載されるものと同じ方法によるか、又は当該技術において公知の標準的な方法により調製してよい。
【0092】
本発明による化合物の調製についての上記のいずれのプロセスから生成物が混合物で得られる場合、所望の生成物は、そこから、適切な段階での従来の方法、例えばゲル浸透クロマトグラフィー;カチオン若しくはアニオン交換;分取HPLC;又はカラムクロマトグラフィーにより、例えば適切な溶媒系と組み合わせてシリカ及び/又はアルミナを利用して分離することができる。
【0093】
上記のいずれの合成の流れの間に、関係するいずれの分子の感受性又は反応性の基を保護することが必要及び/又は望まれるだろう。このことは、従来の保護基、例えばProtective Groups in Organic Chemistry,J.F.W.McOmie編,Plenum Press,1973;及びT.W. Greene及びP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons,第3版,1999に記載されるものにより達成してよい。保護基は、当該技術において知られる方法を用いて、いずれの簡便なその後の段階で除去してよい。
【0094】
以下の限定しない実施例は、本発明を説明する。
【実施例】
【0095】
中間体1
3−[2−アミノ−3−(2−シアノエトキシ)−2−(2−シアノエトキシメチル)−プロポキシ]−プロピオニトリル
【化12】


トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(24.2g、0.2mol)を、ジオキサン(25ml)と水酸化カリウム水溶液(水3ml中の1.2g KOH)との混液中に加えた。アクリロニトリル(40ml、0.61mol)を滴下した。2時間後に、溶液を冷水浴中に入れていずれの発熱反応を緩和し、RTで16時間攪拌した。溶液を希HClで中和してろ過した。油をDCEに溶解し、乾燥し(MgSO)、ろ過して濃縮した。茶色の油をクロマトグラフィー(SiO、CHCl/MeOH 1%〜4%)により精製して、表題の生成物を無色の油として得た(26.9g、0.096mol、48%)。
【化13】

【0096】
中間体2
ベンジル{2−(2−シアノエトキシ)−1,1−ビス[(2−シアノエトキシ)メチル]エチル}カルバメート
【化14】


クロロギ酸ベンジル(5ml、35.0mmol)及び飽和NaHCO水溶液(150ml)を、ジクロロメタン(150ml)中の中間体1の生成物の溶液(10g、35.7mmol)に窒素の下で加えた。得られた混合物を、RTで16時間攪拌した。層を分離した。有機層を希HCl溶液及び水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過して濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc/ヘキサン 1:4、次いで1:2)により精製して、表題の生成物を白色固体として得た(1.88g、7.66mmol、57%)。
【化15】

【0097】
中間体3
ベンジル[2−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロポキシ−1,1−ビス({3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロポキシ}メチル)エチル]カルバメート
【化16】


BH.THF(THF中に1.0M、40ml、39.78mmol)を、無水THF(40ml)中の中間体2の生成物の溶液(5g、12.05mmol)に、窒素の下で、0℃でゆっくりと加えた。得られた混合物を、0℃で30分及びRTで5時間攪拌した。BH.THF(THF中に1.0M、8ml、8mmol)とTHF(10ml)を再び加え、溶液をRTで16時間攪拌した。混合物を、氷と希HCI(2M)との混合物に発泡が停止するまで注ぎ、乾燥するまで濃縮した。ジクロロメタン(80ml)、NEt(17ml、120.5mmol)及びBocO(13.15g、60.25mmol)を順番に加えた。得られた混合物をRTで16時間攪拌し、水及び塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過して濃縮した。粗物質をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc/ヘキサン 1:3、次いで1:2)により精製して、表題の生成物を無色の粘着性の油として得た(1.71g、2.35mmol、20%)。
【化17】

【0098】
中間体4
tert−ブチル[6−アミノ−6−({3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)プロポキシ}メチル)−15,15−ジメチル−13−オキソ−4,8,14−トリオキサ−12−アザヘキサデシ−1−イル]カルバメート
【化18】


中間体3の生成物(1.77g、2.43mmol)を、エタノール(20ml)に溶解し、フラスコを3回の減圧/窒素のサイクルに供した。パラジウム炭(10%/C、259mg、0.24mmol)を加えた。フラスコを3回の減圧/水素のサイクルに供した。反応混合物を水素の軽い圧力下で、RTで16時間攪拌し、セライトのパッドを通してろ過した。ろ液を濃縮した。粗油をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc)により精製して、表題の生成物を粘着性の黄色の油として得た(1.08g、1.82mmol、75%)。
【化19】

【0099】
中間体5
S−[5,5−ビス({3−tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロポキシ}メチル)−14,14−ジメチル−3,12−ジオキソ−7,13−ジオキサ−4,11−ジアザペンタデシ−1−イル]エタンチオエート
【化20】


中間体4の生成物(469mg、1.91mmol)及びNEt(0.4ml、2.92mmol)を、ジクロロメタン(5ml)中の3−(アセチルチオ)プロピオン酸NHSエステルの溶液(1.08g、1.82mmol)に加えた。得られた混合物をRTで24時間攪拌した。生成物XX(469mg、1.91mmol)及びNEt(0.8ml、5.84mmol)を再び加え、混合物をRTで24時間攪拌した。溶液を水及び塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過して濃縮した。粗固体をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc/ヘキサン 1:4〜1:1)により精製して、表題の生成物を無色のフォームとして得た(910mg、1.26mmol、69%)。
【化21】

【0100】
中間体6
S−[3−({2−(3−アミノプロポキシ)−1,1−ビス[(3−アミノプロポキシ)メチル]エチル}アミノ)−3−オキソプロピル]エタンチオエート(TFA塩)
【化22】


トリフルオロ酢酸(8ml)を、ジクロロメタン(8ml)中の中間体5の生成物の溶液(900mg、1.24mmol)にゆっくり加えた。得られた混合物をRTで6時間攪拌して、濃縮した。粗油状物質を次の反応に用いた。
【化23】

【0101】
中間体7
3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−yl)−N−{6−[(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ]−6−オキソヘキシル}プロパンアミド
【化24】


N−マレイミドプロピオン酸NHSエステル(500mg、1.88mmol)及び6−アミノヘキサン酸(235mg、1.79mmol)をDCM(200ml)中に溶解させ、RTで16時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、DMF(30ml)を加えて蒸発させた。DCM(25ml)及びEDCI(613mg、3.2mmol)を加え、混合物をRTで4時間攪拌した。水(20ml)を加え、層を分離した。水層をDCM(3×15ml)で抽出した。有機層を水(2×40ml)及び塩水(2×40ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。粗固体をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc)により精製して、表題の生成物を白色固体として得た(400mg、1.05mmol、59%)。
【化25】

【0102】
中間体8
N−α−[S−アセチルチオプロピオニル]リジンリジンリジン(ATP−KKK−OH)
N−[Lys(Boc)]−Wangレジン(300mg)を、Fmoc−Lys(Boc)Wangレジン(0.53mMol/g置換)から、標準的なFmoc化学を用いて、Fmoc脱保護工程に20%のピペリジンDMF、並びに各カップリング工程にDMF(15mL)中の3倍過剰のFmocアミノ酸(FmocLys[Boc]OH)(0.52mMol、227mg)、TBTU(0.52mMol、163mg)、HOBT(0.52mMol、70.2mg)及びDIPEA(0.7mMol、90.3mg)を用いて調製した。DMF(2.5mL)中のN−スクシンイミジルS−アセチルチオプロピオネート(0.2mMol、50mg)を加え、反応物を2時間振とうした(ニンヒドリン陰性)。レジンをろ過し、DMF、DCMで洗浄し、ジエチルエーテルで乾燥した。ペプチドを、95%TFA/水を用いて2時間振とうすることによりレジンから切断し、レジンをろ過により除き、溶媒を蒸発により除いた。残渣を、ジエチルエーテルを用いる粉砕により単離し、分取RP−hplc(C−18 Vydac 5μm粒子径、280mm×25mmカラム;40分の勾配溶出、0〜40%アセトニトリル/水/0.1%TFA;20mL/分)により精製して表題の化合物、70mg、75%を凍結乾燥後に得た。ESMS 533[M+1];RP−hplc保持時間10.99分(C−18 Hichrome、5μm粒子径、250mm×6mmカラム、20分で10〜90%アセトニトリル/水/0.1%TFA;1mL/分)。
【0103】
(実施例1)
S−[3−({2−(3−{[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)プロパノイル]アミノ}プロポキシ)−1,1−ビス[(3−{[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)プロパノイル]アミノ}プロポキシ)メチル]エチル}アミノ)−3−オキソプロピル]エタンチオエート
【化26】


N−マレイミドプロピオン酸NHSエステル(230mg、0.87mmol)及びNEt(0.17ml、1.24mmol)を、ジメチルホルムアミド(3ml)中の中間体6の生成物の溶液(100mg、0.25mmol)に加えた。得られた混合物をRTで1.25時間攪拌した。水(3ml)及びジクロロメタン(3ml)を加え、層を分離した。水層をジクロロメタン(3×3ml)で抽出した。有機層を水(3×10ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。粗油をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc/ヘキサン 1:1、次いでEtOAc、次いでEtOAc/MeOH 20%)により精製して、表題の生成物を淡黄色の固体として得た(95mg、0.11mmol、44%)。
【化27】

【0104】
(実施例2)
S−[21−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−5,5−ビス({3−[(6−{[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−yl)プロパノイル]アミノ}ヘキサノイル)アミノ]プロポキシ}メチル)−3,12,19−トリオキソ−7−オキサ−4,11,18−トリアザヘニコス−1−イル]エタンチオエート
【化28】


中間体7の化合物(78.5mg、0.207mmol)及びNEt(0.07ml、0.483mmol)を、DMF(3ml)中の中間体6の化合物の溶液(53mg、0.069mmol)に加えた。混合物をRTで2.5時間攪拌して蒸発させた。水(3ml)及びDCMe(3ml)を加えた。水層をDCM(3×3ml)で抽出した。有機層を水(3×10ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。残渣をシリカゲルのプラグを通して(EtOAc、次いでEtOAc/MeOH1:1)、表題の生成物の第一バッチを得た。水層をDCM(3×7ml)で逆抽出した。この有機層を乾燥し(MgSO)、濃縮し、DCM(2ml)及びメタノール(1ml)で希釈し、PS−TsCl(HL)レジン(2.40mmol/g、300mg)で3時間処理し、ろ過して蒸発させて、表題の生成物の第二バッチを得た。2つのバッチを合わせて、表題の生成物を白色固体として得た(11mg、0.01mmol、13%)。
【化29】

【0105】
(実施例3)
S−[30−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−5,5−ビス[25−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−7,23−ジオキソ−2,10,13,16,19−ペンタオキサ−6−22−ジアザペンタコス−1−イル]−3,12,28−トリオキソ−7,15,18,21,24−ペンタオキサ−4,11,27−トリアザトリアコンチ−1−イル}エタンチオエート
【化30】


Mal−d−PEG−NHSエステル(Quanta Biodesign、USA)(100mg、0.194mmol)及びNEt(0.07ml、0.483mmol)を、DMF(3ml)中の中間体6の化合物の溶液(52mg、0.065mmol)に加えた。混合物をRTで2時間攪拌して蒸発させた。HCl水溶液(0.1M、8ml)及びDCM(7ml)を加えた。有機層をHCl水溶液(0.1M、3×8ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。残渣をDCM(5ml)に溶解し、HCl水溶液(0.1M、3×5ml)で洗浄した。最初の2回の洗浄の水層を合わせ、DCM(2×5ml)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥し(MgSO)、濃縮して表題の生成物を無色の油として得た(10mg、0.006mmol、9%)。
【化31】

【0106】
(実施例4)
S−{3−[(2−[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)プロポキシ]−1,1−ビス{[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)プロポキシ]メチル}エチル)アミノ]−3−オキソプロピル}エタンチオエート
【化32】


中間体6の化合物(84mg、0.11mmol)を炭酸水素ナトリウム水溶液(1M、2ml)中に溶解した。N−メトキシカルボニルマレイミド(102mg、0.66mmol)を0℃で加えた。混合物を5分間攪拌し、水(1ml)及びアセトニトリル(3ml)で希釈し、RTで30分未満攪拌した。DCM(10ml)を加えた。水層をDCM(3×6ml)で抽出した。合わせた有機層をHCl水溶液(0.1M、3×15ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。粗油をカラムクロマトグラフィー(SiO、EtOAc/ヘキサン 1:1)により精製して、表題の生成物を無色の油として得た(10mg、0.01mmol、14%)。
【化33】

【0107】
(実施例5)
N−α−[S−アセチルチオプロピオニル]−トリス−N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]リジンリジンリジン(ATP−(K−[EMC])−OH)
【化34】


中間体8の化合物(70mg、0.13mMol)、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(25mg、0.08mMol)及びDIPEA(15mg、0.12mMol)を、DMSO(2mL)に溶解し、2時間攪拌した。ここで、さらにN−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル(25mg、0.08mMol)及びDIPEA(15mg、0.12mMol)を加え、反応物をさらに1時間攪拌した。溶液を水(10mL)で希釈し、混合物をRP−hplc hplc(C−18 Vydac 5μm粒子径、280mm×25mmカラム;40分の勾配溶出、20〜60%アセトニトリル/水/0.1%TFA;20mL/分)で精製して、表題の化合物を凍結乾燥後に50mg、35%で得た。
ESMS 1112[M+1]; RP−hplc保持時間18.7分(C−18Hichrome、5μm粒子径、250mm×6mmカラム 20分で5〜85%アセトニトリル/水/0.1%TFA;1mL/分)。
【0108】
(実施例6)
実施例1〜4の化合物への抗体の複合化
50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0(2mM EDTA含有)中の10mg/mlの単一のヒンジチオールを含有する操作・作製したFab’(例えば米国特許第5,677,425号;国際公開第9825971号を参照されたい)を、最終濃度5mMまで、37℃で30分間、2−メルカプトエチルアミンで選択的に還元した。過剰の還元剤をゲル浸透により除去し、生じたチオールを4,4’−ジチオジピリジンを用いて滴定することにより、還元の結果を測定した。リンカー(DMF中に10mM)を、2つの別々の一定量の還元されたFab’(2mM EDTA含有50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に4.9mg/ml)に20分にわたって加え、最終モル比3.3:1(Fab’:リンカー)を得た。反応混合物を37℃に18時間保持した。反応の程度をHPLCゲル浸透(GF250:10%エタノール含有0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0)により監視し、架橋をSDS PAGE(非還元及び還元条件の両方での)により確かめた。
【0109】
反応は、33%のトリ−Fab’;13%のジ−Fab’及び54%のFab’となった。
得られたトリ−Fab’を、50mM酢酸ナトリウム、pH4.50中の塩化ナトリウム勾配を用いるカチオン交換(SP−Separose HP)を通して精製し、HPLC(ゲル浸透:GF250;10%エタノール含有0.2Mリン酸ナトリウムを用いて溶出)及びSDS PAGEにより特性決定した。
【0110】
(実施例7)
実施例5の化合物への抗体の複合化
50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.0(2mM EDTA含有)中の10mg/mlの単一のヒンジチオールを有する操作・作製したFab’を、最終濃度5mMまで、37℃で30分間、2−メルカプトエチルアミンで選択的に還元した。過剰の還元剤をゲル浸透により除去し、生じたチオールを4,4’−ジチオジピリジンを用いて滴定することにより、還元の結果を測定した。
【0111】
リンカー(DMF中に2mM)を、2つの別々の一定量の還元されたFab’(2mM EDTA含有50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0中に5.50mg/ml)に20分にわたって加え、最終モル比3.3:1(Fab’:リンカー)を得た。反応混合物を37℃に18時間保持した。反応の程度をHPLCゲル浸透(GF250:10%エタノール含有0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0)により監視し、架橋をSDS PAGE(非還元及び還元条件の両方での)により確かめた。反応は、HPLCゲル浸透により判断して53%のトリ−Fab’、13%のジ−Fab;及び34%のFab’となった。
【0112】
得られたトリ−Fab’分子を、カチオン交換:SP−Sepharose HPにより精製した。ジ−Fab’及びFab’を、125mM塩化ナトリウム含有50mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.50で溶出し、トリ−Fab’を、20カラム容量で125mM〜250mMの塩化ナトリウム勾配を用いる50mM酢酸ナトリウム、pH4.50で溶出した。
【0113】
(実施例8)
実施例6及び7のトリ−FabへのPEGの結合
上記のようにして調製した精製トリ−Fab’を、2mM EDTA含有0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.50に緩衝液を交換し、塩酸ヒドロキシルアミン(最終濃度50mM)と周囲温度で2時間インキュベートした。チオール基を自由にする脱保護反応の結果を、4,4’−ジチオジピリジンを用いた滴定により測定した:脱保護前混合物(pre deprotection mix)はトリ−Fab’当たり0.26チオールとなり、脱保護後混合物(post deprotection mix)はトリ−Fab’当たり1.10チオールを与えた。
【0114】
0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.50(50mM塩酸ヒドロキシルアミン及び2mM EDTA含有)中の脱保護トリ−Fab’を、3倍モル過剰のPEGのモノマレイミド誘導体(5〜49K)と室温で18時間インキュベートした。反応の程度を、HPLCゲル浸透(GF250:10%エタノール含有0.2Mリン酸ナトリウム、pH7.0)及びSDS PAGE(非還元及び還元条件の下での)により分析した。反応は、HPLCゲル浸透により判断して、>80%のPEG化された生成物を与えた。非PEG化トリ−Fab’を、反応混合物をゲル浸透S−300HR(1% PEG20Kを用いて準備)又はカチオン交換SP−Sepharose HPに供することにより除去し、得られたPEG化生成物を、以前のようにしてHPLCゲル浸透及びSDS PAGEにより特性決定した。
【0115】
(実施例9)
実施例6及び7のトリ−Fab’への蛍光色素の結合
実施例8に記載のようにして脱保護トリ−Fab’を調製した。0.1Mリン酸ナトリウム、pH7.50(50mM塩酸ヒドロキシルアミン及び2mM EDTA含有)中の脱保護トリ−Fab’を、6倍モル過剰のAlexa Fluor(登録商標)488Cマレイミド(Molecular Probes A−10254)と室温で18時間インキュベートした。過剰の試薬をゲル浸透により除去した。標識の程度を、吸収極大での適切なモル吸光係数を有するタンパク質及び色素濃度を用いて算出し、TFM分子当たり1.11色素の結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1−1】適切な基は当該技術において公知であり、可能なR及びZ基並びに得られる二価の官能基(R)のいくつかの例を、図1に示す。
【図1−2】適切な基は当該技術において公知であり、可能なR及びZ基並びに得られる二価の官能基(R)のいくつかの例を、図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の要素:1つ又は複数の反応性基と;2つ以上の架橋抗体若しくはそのフラグメントとから本質的になる化合物であって、前記又は各反応性基がエフェクター分子の結合に適するが、抗体又はそのフラグメントのいずれとも反応しないことを特徴とする化合物。
【請求項2】
単一の反応性基を含む請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
3つの架橋抗体又はそのフラグメントを含む請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
抗体又はそのフラグメントが抗体のFab’フラグメントである請求項1から3までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式(I)又は(II):
【化1】


(式中:
A、A及びAは独立して、抗体又はそのフラグメントの残基を表し;
L、L及びLは独立して、スペーサー基を表し;
Rは、エフェクター分子の結合に適するが、A、A及びAのいずれとも反応しない反応性基を表し;
Yは、共有結合又は−(CH−を表し;
B、B及びBは独立して、−CONH−、−NHCO−又は−CO−を表し;
V、V及びVは独立して、共有結合又は−(CH−を表し;
X、X及びXは独立して、CR又はNを表し;
W、W及びWは独立して、−(CHO−を表し;
T、T及びTは独立して、リンカー基を表し;
Qは、CO又はCONRを表し;
は、水素又はC1〜4アルキルを表し;
は、水素又はC1〜4アルキルを表し;
は、水素又はC1〜4アルキルを表し;
vは1、2、3又は4であり;
wは1、2、3又は4であり;並びに
yは1、2、3、4、5又は6である。)
から選択される請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
A、A及びAがそれぞれFab’フラグメントの残基である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
L、L及びLがスクシンイミドである請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項8】
Rが図1中の反応性基の一覧から選択される請求項5から7までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
T、T及びTが、−(CH−、−(CHNHCO(CH−、−(CHNHCO(CHNHCO(CH−、−(CHNHCO(CH(OCHCHNHCO(CH−、−(CHNHCO(CH−、
【化2】


又は
【化3】


(式中:
tは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり;
nは1、2、3、4、5又は6であり;
xは2、3、4、5又は6であり;
zは1〜500であり;
pは1、2、3、4、5又は6であり;
mは1、2、3、4、5又は6であり、
rは2、3、4又は5である)
から独立して選択される請求項5から8までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
式(III)又は(IV):
【化4】


(式中:
Zはエフェクター分子の残基であり;
はZの結合に起因する官能基であり;及び
その他の可変記号はそれぞれ、請求項1で規定されるとおりである)
の化合物。
【請求項11】
前記エフェクター分子がポリエチレングリコールである請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が図1中の一覧から選択される請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
次の要素:1つ又は複数の反応性基又はその保護された誘導体と、2つ以上の抗体又はそのフラグメントの架橋に適するリンカーとから本質的になる化合物であって、前記又は各反応性基がエフェクター分子の結合に適し、該反応性基又はその保護された誘導体が、抗体若しくはそのフラグメント又はそれらが結合するリンカー上のスペーサー基と反応しないことを特徴とする化合物。
【請求項14】
式(V)又は(VI):
【化5】


(式中:
、L及びLは、残基A、A及びAをそれぞれ結合できるか、又はこのような基に変換され得る基を表し;
は、請求項1で規定する基Rに相当するか、又はL、L及びLと反応しないその保護された誘導体を表し;
その他の可変記号のそれぞれは、請求項1で規定したとおりである)
から選択される請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式(VII)又は(VIII):
【化6】


(式中、各可変記号は請求項1で規定したとおりである)
を有する請求項13又は14に記載の化合物。
【請求項16】
実施例1〜5で示される請求項13、14又は15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
請求項10から12までのいずれか一項に記載の化合物を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤との組み合わせで含む医薬組成物。


【図1−1】
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【図1−2】
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【公表番号】特表2008−509885(P2008−509885A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517418(P2007−517418)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001950
【国際公開番号】WO2005/113605
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】