説明

染色排水処理方法

【課題】公知の凝集剤を新たな用途に使用して、処理手順を開発し、用途拡大を図る。新たな用途は含水染色汚泥を含む染色排水を被処理原水とするものであり、該凝集剤を用い、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収する処理技術を確立する。
【解決手段】公知の凝集剤は、還元能と錯体置換能を有する天然有機酸(R−COOH)、凝集作用・共沈作用に寄与するミョウバン、中和剤、及びアクリル系高分子物質からなる。これを用いて含水染色汚泥を含む染色排水(被処理原水に同じ)から、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収する染色排水処理方法は、被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌した後、凝集剤を投入して撹拌し、さらに 2.5%塩化鉄(III) 水溶液を投入し撹拌した後静置して染色汚泥を凝集沈殿させ濾過分離する各処理手順1〜4、さらに生分解処理手順(5)を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元能と錯体置換能を有する天然有機酸(R−COOH)、凝集作用・共沈作用に寄与するミョウバン、中和剤、及びアクリル系高分子物質からなる凝集剤を用いて、含水汚泥を含む汚濁排水中の浮遊懸濁物質(SS:Suspended Solid )や汚泥を凝集分離する汚濁排水処理方法に係り、詳しくは、含水染色汚泥を含む染色排水に対して前記凝集剤を用い、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収するようにした染色排水処理方法に関する。
【0002】
なお、本発明で用いる凝集剤は、含水汚泥を含む汚濁排水(ただし、含水染色汚泥を含む染色排水を除く。)に対する凝集剤「ミラグレース」(登録商標)として公知のものである。
【背景技術】
【0003】
従来より、還元能と錯体置換能を有する天然有機酸(R−COOH)、凝集作用・共沈作用を行う硫酸アルミニウム〔Al2(SO4)3 〕、及び硫酸カリウムアルミニウム〔AlK(SO4)3 〕、中和するための炭難ナトリウム(Na2CO3)、フロック粗大作用と脱水向上作用を行うポリアクリルアミド、アクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸エステルから選択される1種以上の高分子物質とからなる凝集剤が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−118675公報
【0004】
この公知の凝集剤〔ミラグレース(登録商標)に同じ。〕は、各種排水中の微粒子、改定、湖、沼、河川等の底泥のような泥状物質を凝集分離し、湖沼・海域と赤潮等の有機性懸濁物質を効率的に固液分離処理するためのものであるとの記載がある。具体的には、鍍金廃水、各種工場廃水、建設汚泥、浚渫汚泥水等に含まれる浮遊懸濁物質(SS:Suspended Solid )を凝集・分離するとともに、重金属類や溶存汚濁物質を吸着・固定し分離するために用いられものと推認される。
【0005】
ところで、染色加工の工程で排出される染色排水(染色汚泥を含む)の処理に関し、環境的な配慮が必要であることが指摘されてきた。
【0006】
染色は一般に水媒体で行われ、多量の薬剤(染料)とエネルギを使用し、その排水量は多大であり、排水処理における環境汚染の問題は今日的にも重要な技術解決課題として認識されている。
【0007】
こうしたなかで、本発明者らは、上記公知の凝集剤の正当な利用者として用途毎の性能評価を追試するなかで、あらたな利用先として染色排水への適用性を見出し、有効な処理方法の開発にとりくんできた。
【0008】
なお、上記文献公知発明の特許出願人(株式会社ワイエスデー)にあっては、特許出願に係る凝集剤の利用先として染色排水への適用は考慮又は想定しておらず、その処理効果についても認識又は予測していないということであり、当該発明の事実認定について当事者確認済である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、上記公知の凝集剤の未知の用途に関し、染色排水処理への適用とその処理技術を確立する点にある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、含水染色汚泥を含む染色排水を被処理原水として、上記公知の凝集剤を用い、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収するようにした染色排水処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するために本発明は、還元能と錯体置換能を有する天然有機酸(R−COOH)、凝集作用・共沈作用に寄与するミョウバン、中和剤、及びアクリル系高分子物質からなる凝集剤を用いて、含水汚泥を含む汚濁排水中の浮遊懸濁物質(SS:Suspended Solid )や汚泥を凝集分離する汚濁排水処理方法において、
含水染色汚泥を含む染色排水(以下、被処理原水。)に対して前記凝集剤を用い、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収するようにした染色排水処理方法であって、
被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌した後、前記凝集剤を投入して撹拌し、さらに塩化鉄水溶液を投入し撹拌した後静置して染色汚泥を凝集沈殿させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、公知の凝集剤について未知の用途、すなわち含水染色汚泥を含む染色排水を被処理原水とする新たな用途を開拓するとともに、染色排水処理に関する効率的でエコフレンドリーな処理技術を確立し、提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の最良形態は、上記構成の染色排水処理方法において、以下(1)〜(4)の処理手順を包含することを特徴としている。
【0014】
(1)被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌することにより、染色汚泥粒子を活性炭粒子に吸着し集塊化するフロック化処理手順。
【0015】
(2)前記フロック化処理後の被処理原水に前記凝集剤を投入し撹拌することにより、フロック成長を進行させる凝集化処理手順。
【0016】
(3)前記凝集化処理後の被処理原水に 2.5%塩化鉄水溶液を投入し撹拌した後、所定時間静置することにより、フロック同士の包接化を進行させ、かつ、凝集沈殿させる不溶化処理手順。
【0017】
(4)前記不溶化処理後、被処理原水を濾過して凝集沈殿物を分離回収する濾過分離処理手順。
【0018】
また、濾過分離処理後の凝集沈殿物を廃棄物として最終処理する場合が考慮される。すなわち、上記処理手順の後流処理として、当該凝集沈殿物を乾燥を含む生物学的分解処理環境に導入して減容化する生分解処理手順を包含する場合がある。
【実施例】
【0019】
本発明の一実施例である染色排水処理方法(以下、実施例処理方法。)について添付図面を参照して以下説明する。
【0020】
図1は実施例処理方法の処理手順(処理操作)を示す説明図である。
【0021】
図2は実施例処理方法の処理手順(処理操作)を示すフロー図である。ここでは、後述の生分解処理手順を含む処理フローを表示した。
【0022】
図示するように、実施例処理方法は、被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌した後、凝集剤を投入して撹拌し、さらに 2.5%塩化鉄水溶液を投入し撹拌した後静置して染色汚泥を凝集沈殿させ、濾過分離するようにしている。ここで、好適な塩化鉄水溶液は、塩化第二鉄(FeCl3)を 2.5%に希釈した水溶液〔以下、 2.5%塩化鉄(III) 水溶液〕である。
【0023】
そのプロセス(又は処理操作)は、フロック化処理手順(1)と、凝集化処理手順(2)と、不溶化処理手順(3;3イ,3ロ)と、濾過分離処理手順(4)からなる。
【0024】
フロック化処理手順(1)は、被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌することにより、染色汚泥粒子を活性炭粒子に吸着し集塊化する処理操作である。
【0025】
凝集化処理手順(2)は、フロック化処理後の被処理原水に前記凝集剤を投入し撹拌することにより、フロック成長を進行させる処理操である。
【0026】
不溶化処理手順(3)は、凝集化処理後の被処理原水に 2.5%塩化鉄(III) 水溶液を投入し撹拌した後(3イ)、所定時間静置することにより(3ロ)、フロック同士の包接化を進行させ、かつ、凝集沈殿させる処理操作である。
【0027】
濾過分離処理手順(4)は、不溶化処理後、被処理原水を濾過して凝集沈殿物を分離回収する処理操作である。
【0028】
実験的事実に基づく処理操作について以下説明しておく。なお、規模の拡縮が本発明の要旨に影響することはない。
【0029】
予め2Lの染色汚泥に水1Lと工業用活性炭50gを加え、混合した溶液を5Lのガラス製三口フラスコに投入し、5分間定速撹拌(480rpm) を行った。ついで、この混合溶液に凝集剤〔株式会社ワイエスデー製「ミラグレース」(登録商標)〕45gを投入し、5分間定速撹拌した。その後、市販の37%塩化鉄(III) 水溶液を希釈調製(1/14.8)した 2.5%塩化鉄(III) 水溶液60gを加え、さらに5分間撹拌した。撹拌終了後、10分程度静置し、混合溶液を濾過し、水溶液と凝集沈殿物を分離した。なお、水溶液は無色無臭であり、pHは8.0 であった。
【0030】
また、濾過分離処理後の凝集沈殿物を廃棄物として最終処理する場合、後流処理を包含する処理方法(又は処理系)が考慮される。すなわち、当該凝集沈殿物を乾燥を含む生物学的分解処理環境に導入して減容化する生分解処理手順(5)を構成要件として包含することが考慮される。ここで、生物学的分解処理環境は、例えば微生物を利用した生ゴミ処理装置又は発酵処理装置である〔図示省略〕。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、公知の凝集剤をこれまで未知であった染色排水処理へ適用可能に用途拡大した点、しかも染色排水に対する効率的でエコフレンドリーな処理技術を確立した点において、斯界への貢献は大であり、産業上の利用価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例処理方法の処理手順(処理操作)を示す説明図である。
【図2】実施例処理方法の処理手順(処理操作)を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フロック化処理手順
2 凝集化処理手順
3 不溶化処理手順
3イ 塩化鉄(III) 投入撹拌処理
3ロ 静置処理
4 濾過分離処理手順
5 生分解処理手順

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元能と錯体置換能を有する天然有機酸(R−COOH)、凝集作用・共沈作用に寄与するミョウバン、中和剤、及びアクリル系高分子物質からなる凝集剤を用いて、含水汚泥を含む汚濁排水中の浮遊懸濁物質(SS:Suspended Solid )や汚泥を凝集分離する汚濁排水処理方法において、
含水染色汚泥を含む染色排水(以下、被処理原水。)に対して前記凝集剤を用い、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収するようにした染色排水処理方法であって、
被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌した後、前記凝集剤を投入して撹拌し、さらに塩化鉄水溶液を投入し撹拌した後静置して染色汚泥を凝集沈殿させることを特徴とする染色排水処理方法。
【請求項2】
還元能と錯体置換能を有する天然有機酸(R−COOH)、凝集作用・共沈作用に寄与するミョウバン、中和剤、及びアクリル系高分子物質からなる凝集剤を用いて、含水汚泥を含む汚濁排水中の浮遊懸濁物質(SS:Suspended Solid )や汚泥を凝集分離する汚濁排水処理方法において、
含水染色汚泥を含む染色排水(以下、被処理原水。)に対して前記凝集剤を用い、染色汚泥を凝集沈殿物として分離回収するようにした染色排水処理方法であって、以下の処理手順を包含することを特徴とする染色排水処理方法。
(1)被処理原水に粉末活性炭を投入し撹拌することにより、染色汚泥粒子を活性炭粒子に吸着し集塊化するフロック化処理手順。
(2)前記フロック化処理後の被処理原水に前記凝集剤を投入し撹拌することにより、フロック成長を進行させる凝集化処理手順。
(3)前記凝集化処理後の被処理原水に塩化鉄水溶液を投入し撹拌した後、所定時間静置することにより、フロック同士の包接化を進行させ、かつ、凝集沈殿させる不溶化処理手順。
(4)前記不溶化処理後、被処理原水を濾過して凝集沈殿物を分離回収する濾過分離処理手順。
【請求項3】
請求項2記載の染色排水処理方法において、後流処理として、濾過分離処理後の凝集沈殿物を、乾燥を含む生物学的分解処理環境に導入して減容化する生分解処理手順を包含することを特徴する染色排水処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−110280(P2008−110280A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293449(P2006−293449)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(592250414)株式会社テックコーポレーション (24)
【Fターム(参考)】