説明

棒材接合具

【課題】鉄筋等の棒材の交差部に適用した場合に作業性が良好で、結合強度に優れる棒材接合具の提供を目的とする。
【解決手段】棒材接合具1は、開放した頂面側から底面21側に向けて切欠部24,25が90度間隔で側壁23に形成され、棒材R1,R2の交差部分をそれに収容する内側箱状体2、同様に開放した頂面側から底面31側に向けて切欠部34,35が側壁33に形成されるとともに貫通孔32が底面31に形成され、棒材R1,R2を収容した内側箱状体2に対して互いの切欠部を一致させて嵌入される外側箱状体3、この貫通孔32を挿通して他端側が内側箱状体2の底面21に係合し、底面31から突出した一端側での回転操作に伴い内側箱状体2を外側箱状体3の側壁33内面に沿って内部に引き込み、内側箱状体2の切欠部24,25を狭めて各棒材R1,R2を個別に挟持せしめる締結部材4,5からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十字状に交差させた鉄筋やパイプ等の交差部分を締結する棒材接合具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場等においては鉄筋、コンクリート型枠用セパレータ、パイプ(本発明では、中実または中空に関係なくこれらを総称して「棒材」という。)等の各種棒材を十字状に交差させて設置することが行われている。これら交差部分の締結手段としては、番線による結束、合成樹脂または金属板からなる本体の弾性変形を利用した嵌め込み形式のもの(特許文献1、2参照)、棒材の交差部分に装着した本体をネジにより締付ける形式のもの(特許文献3、4参照)などがある。これらの締結手段は、作業性や棒材の交差部分に要求される結合強度などに応じて適宜選択されている。
【特許文献1】特開2003−253815号公報
【特許文献2】特開2001−164700号公報
【特許文献3】特開2002−309716号公報
【特許文献4】実用新案登録第3117115号公報
【0003】
上記嵌め込み形式の従来技術は、棒材の交差部分に対して簡便に装着できる反面、素材の弾性に基づく把持力に依存するため、結合強度が低いという問題点があった。また、ネジにより締付ける形式の従来技術は、いずれも交差部一箇所につき複数個のネジを用いる構造であるため、締結時の作業性の点で改善の余地があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これら従来技術の問題点に鑑みなされたもので、棒材の交差部分の締結に適用した場合に作業性が良好で、かつ結合強度に優れる棒材接合具の提供をその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る棒材接合具では、開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成され、前記棒材の交差部分を該切欠部に収容する内側箱状体、この内側箱状体の外側にあって開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成されるとともに貫通孔が底面に形成され、前記棒材を収容した内側箱状体に対して互いの切欠部をほぼ一致させて同方向から嵌入される外側箱状体、この外側箱状体の貫通孔を挿通して他端側が前記内側箱状体の底面に係合し、該外側箱状体の底面から突出した一端側での回転操作に伴って前記内側箱状体を前記外側箱状体の側壁内面に摺接させながら内部に引き込むことにより、該内側箱状体の切欠部を狭めて各棒材を個別に挟持せしめる締結部材を備えるという技術手段を採用した。
【0006】
また、請求項2に係る棒材接合具では、開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成され、前記棒材の交差部分を該切欠部に収容する内側箱状体、この内側箱状体の外側にあって開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成されるとともに貫通孔が底面に形成され、前記棒材を収容した内側箱状体に対して互いの切欠部をほぼ一致させて同方向から嵌入される外側箱状体、この外側箱状体の貫通孔を挿通して他端側が前記内側箱状体の底面に係合し、該外側箱状体の底面から突出した一端側での回転操作に伴って前記内側箱状体を前記外側箱状体の側壁内面に摺接させながら内部に引き込むことにより、該内側箱状体の切欠部を狭めて頂面側に位置する棒材を挟持せしめるとともに、該内側箱状体で挟持された棒材と外側箱状体の切欠部とで底面側に位置する棒材を挟持せしめる締結部材を備えるという技術手段を採用した。なお、上記各請求項に係る発明において、内側箱状体の側壁外面を底面側に向けて幅狭となる傾斜面に形成するとともに、外側箱状体の側壁内面を底面側に向けて幅狭となる傾斜面に形成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を採用したことにより、本発明に係る棒材接合具では、次のような効果を得ることができる。
(1)1組のボルト・ナット等の締結部材の締付け操作により、棒材の交差部分を収容する内側箱状体の切欠部が狭まって各棒材を挟持するので、締結時の作業性が良好である。
(2)棒材の交差部分において、各棒材が個別に内側箱状体の切欠部で挟持されるか(請求項1)、あるいは頂面側に位置する棒材が内側箱状体の切欠部で挟持され、且つこの棒材と外側箱状体の切欠部との間で底面側に位置する棒材が挟持されるもの(請求項2)であるから、いずれの締結構造にあっても高い結合強度を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、締結状態で入れ子構造となる内側箱状体と外側箱状体は、それぞれ箱状で頂面側が開放したものであれば、直方体状に限らず円筒状などの各種形状のものが適用可能である。これら一対の箱状体は、ボルト・ナット等の締結部材の締付けに伴い、内側箱状体が外側箱状体の側壁内面に摺接しながら内部に引き込まれることにより縮小変形する関係にある。そして、交差部分における個々の棒材は、縮小変形により狭まった内側箱状体の切欠部でそれぞれ独立して挟持されるか、あるいは頂面側の棒材が内側箱状体の切欠部で挟持され、且つ底面側の棒材が前記棒材と外側箱状体の切欠部の基部側とで挟持されることになる。内側箱状体を縮小変形する具体的な方法としては、例えばそれぞれの箱状体の側壁を底面側に向けて幅狭となる傾斜面に形成すると好適であり、この場合には傾斜面同士の競合い構造に基づき、内側箱状体の切欠部を無理なく狭めることができ、締結時の作業性向上にもつながる。即ち、直方体を基本形状とする箱状体では、いずれの箱状体も棒材の受入れ側となる開放した頂面側が大きい四角錐台有底筒状となり、円筒状の箱状体では同様に円錐台有底筒状となる。なお、両方の箱状体がその全体形状として錐台状である必要はなく、例えば内側箱状体については頂面側の周縁部分のみを外側に広がる傾斜面とし、外側箱状体は直方体であってもよい。この場合には、締結部材の締付け操作に伴い、内側箱状体の傾斜した周縁部分が外側箱状体の頂面側の周縁部分に当接することにより、内側箱状体の切欠部が狭められることになる。したがって、内側箱状体を縮小変形させる手段は特に限定されるものではない。また、締結部材としては1組のボルト・ナット、あるいは内側箱状体の底面にネジ孔を設けた場合にはボルトのみでもよく、個々の構成部材の形状等については、本発明の技術思想内で種々の変更実施が可能である。
【実施例1】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の第1実施例について説明する。図1及び図2は、それぞれ本発明に係る棒材接合具を鉄筋の交差部分に適用した場合の締結前の状態を示す部分縦断正面図と部分縦断側面図である。図示の棒材接合具1は、内側箱状体2、この内側箱状体2よりも一回り大きい外側箱状体3、及びこれらをほぼ同じ軸心上で連結一体化する締結部材としてのボルト4とナット5から構成されている。
【0010】
内側箱状体2は、接合すべき棒材としての鉄筋R1、R2の交差部分に対して、その受入れ側となる頂面側が開放するとともに、底面21の中央に貫通孔22が形成され、全体として頂面側のほうが大きい略四角錐台有底筒状を呈している。そして、四つの側壁23には、それぞれ対向位置にある2面同士が同じ形状で、且つ頂面側から底面21にまで至るハ字状に開いた切欠部24,25が、各側壁23の中央に設けられている。即ち、4箇所の切欠部24,24,25,25は側壁23の周方向に沿って、ほぼ90度間隔で形成されることになる。ここで、一方の切欠部24には、底面21側に配置される一方の鉄筋R1に対応する円弧状の凹部24aが形成されている。また、他方の切欠部25には両端側が円弧でそれらを直線で結んだ形状の凹部25aが形成され、他方の鉄筋R2をその凹部25a内に受け入れられるように設定されている。さらに、底面21の各隅部には切欠26が形成されることにより、締結前の状態では外側に傾斜して開いている四つの側壁23が、締結時に内側に傾倒して縮小変形する際、互いに拘束しないように構成されている。
【0011】
外側箱状体3は、内側箱状体2と同様な略四角錐台有底筒状で、底面31の中央に貫通孔32形成されるとともに、四つの側壁33にそれぞれ対向位置にある2面同士が同じ形状の切欠部34,35が頂面側から底面21側に向けて形成されている。これらの切欠部34,35は、内側箱状体2と同様にほぼ90度間隔であるが、前記内側箱状体2における切欠部24,25とは異なり、長いほうの切欠部35でも底面31の手前までであり、底面31にまでは至らない。即ち、外側箱状体3は内側箱状体2を縮小変形させるだけの強度を確保しながら鉄筋R1、R2を収容する必要があるため、一方の切欠部34は鉄筋R1と鉄筋R2の両方を収容できる長さとし、他方の切欠部35は頂面側に配置される鉄筋R2のみを収容できる長さとしている。
【0012】
そして、これらの内側箱状体2と外側箱状体3とは、内側箱状体2の内部からそれぞれの貫通孔22、貫通孔32に挿入したボルト4と、その突出端側に螺着されたナット5により連結一体化されている。ボルト4の頭部は四角形状に形成され、ナット5を締付けたときに内側箱状体2の内部でボルト4が空転しないように設定されている。なお、ボルト4の頭部を内側箱状体2の底面21に対して溶接することも可能であり、その空転防止手段は適宜選定すればよい。
【0013】
斯かる棒材接合具1では、鉄筋R1、R2の交差部分に宛がった図1,2の状態でナット5を締付けると、図3,4に示すように、内側箱状体2がボルト4を介して外側箱状体3の傾斜した側壁33内面に摺接しながら内部に引き込まれ、各切欠部24,25の存在により円滑に縮小変形する。この縮小変形により、内側箱状体2の各切欠部24,25が狭まり、底面21に近いほうの鉄筋R1は一対の凹部24aで挟持され、頂面側に位置する鉄筋R2は一対の凹部25aでそれぞれ個別に挟持されることになり、十分な結合強度が得られる。
【実施例2】
【0014】
次に、本発明の第2実施例について説明する。なお、前記第1実施例と同一部分については、同じ符号で示し重複する説明は省略する。図5及び図6は、それぞれ第2実施例に係る棒材接合具の締結前の状態を示す部分縦断正面図と部分縦断側面図であり、図7及び図8は、それぞれ締結後の状態を示す部分縦断正面図と部分縦断側面図である。図示の棒材接合具6では、内側箱状体7の形状が第1実施例のものとは異なり、それ以外の構成部材である外側箱状体3、締結部材としてのボルト4及びナット5は同様なものが使用されている。
【0015】
上記内側箱状体7は、底面71に貫通孔72が形成されるとともに、四つの側壁73には、それぞれ対向位置にある2面同士が同じ形状で、かつ頂面側から底面71にまで至るハ字状に開いた切欠部74,75が設けられている。ここで、一方の切欠部74は前記第1実施例のような凹部24aを端面に備えず、締結状態において、内側箱状体7が外側箱状体3の内部で最大限に縮小変形した場合でも、鉄筋R1をそこで挟持しないような寸法に設定されている。なお、他方の切欠部75は前記第1実施例と同様な形状と寸法に形成されている。
【0016】
斯かる棒材接合具6では、鉄筋R1、R2の交差部分に宛がった図5,6の状態でナット5を締付けると、図7,8に示すように、内側箱状体7がボルト4を介して外側箱状体3の傾斜した側壁33内面に摺接しながら内部に引き込まれ、各切欠部74,75の存在により上記第1実施例と同様に円滑に縮小変形する。この縮小変形により、内側箱状体7の各切欠部74,75はそれぞれ狭まるが、底面71に近いほうの鉄筋R1は切欠部74の端面で挟持されることはない。これに対して、頂面側に位置する鉄筋R2は、一対の凹部75aで挟持された状態でボルト4によりさらに外側箱状体3の内部に引き込まれる結果、その内側にある鉄筋R1を外側箱状体3の切欠部34の基部との間で挟持されることになる。したがって、第1実施例のように個別に切欠部で挟持しなくとも鉄筋R1、R2の交差部分を的確に締結することができる。
【実施例3】
【0017】
図9は、本発明の第3実施例に係る棒材接合具について、締結後の状態を示す部分縦断正面図である。図示の棒材接合具8は、内側箱状体と締結部材が第1実施例とは異なる。即ち、内側箱状体9は底面91に貫通孔を備えず、締結部材は頭のない全ネジボルト41とナット5とからなるものである。全ネジボルト41は、内側箱状体9の軸心に沿ってその一端側で底面91の背面側に溶接され、外側箱状体3の貫通孔32から突出した部分にはナット5が螺着される。そして、内側箱状体9は、第1実施例と同様にナット5の回転操作により外側箱状体3の内部に引き込まれるように構成されている。
【実施例4】
【0018】
図10は、本発明の第4実施例に係る棒材接合具について、締結前の状態の要部を示す部分縦断正面図である。図示の棒材接合具10は、前記各実施例がナット5の回転操作で棒材の締結を行うのに対して、ボルト11を用いた点で異なる。この場合、内側箱状体12の底面12aにはネジ孔12bが形成され、このネジ孔12bとボルト11で締結部材を構成し、ボルト11の回転操作により内側箱状体12が外側箱状体3の内部に引き込まれるものである。なお、ネジ孔12bに代えて内側箱状体12にナットを溶接してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例に係る棒材接合具を鉄筋の交差部分に適用した場合の締結前の状態を示す部分縦断正面図である。
【図2】図1の状態の部分縦断側面図である。
【図3】第1実施例に係る棒材接合具の締結後の状態を示す部分縦断正面図である。
【図4】図3の状態の部分縦断側面図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る棒材接合具を鉄筋の交差部分に適用した場合の締結前の状態を示す部分縦断正面図である。
【図6】図5の状態の部分縦断側面図である。
【図7】第2実施例に係る棒材接合具の締結後の状態を示す部分縦断正面図である。
【図8】図7の状態の部分縦断側面図である。
【図9】第3実施例に係る棒材接合具の締結後の状態を示す部分縦断正面図である。
【図10】第4実施例に係る棒材接合具の締結前の状態で、その要部を示す部分縦断正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1,6,8,10…棒材接合具、2,7,9,12…内側箱状体、3…外側箱状体、4,41,11…ボルト、5…ナット、12a,21,71,91…底面、22,32,72…貫通孔、23,33,73…側壁、24,25,34,35,74,75…切欠部、24a,25a,75a…凹部、R1,R2…鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字状に交差する鉄筋等の棒材を交差部分で締結する棒材接合具であって、開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成され、前記棒材の交差部分を該切欠部に収容する内側箱状体、この内側箱状体の外側にあって開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成されるとともに貫通孔が底面に形成され、前記棒材を収容した内側箱状体に対して互いの切欠部をほぼ一致させて同方向から嵌入される外側箱状体、この外側箱状体の貫通孔を挿通して他端側が前記内側箱状体の底面に係合し、該外側箱状体の底面から突出した一端側での回転操作に伴って前記内側箱状体を前記外側箱状体の側壁内面に摺接させながら内部に引き込むことにより、該内側箱状体の切欠部を狭めて各棒材を個別に挟持せしめる締結部材を備えることを特徴とする棒材接合具。
【請求項2】
十字状に交差する鉄筋等の棒材を交差部分で締結する棒材接合具であって、開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成され、前記棒材の交差部分を該切欠部に収容する内側箱状体、この内側箱状体の外側にあって開放した頂面側から底面側に向けて切欠部が周方向にほぼ90度間隔で側壁に形成されるとともに貫通孔が底面に形成され、前記棒材を収容した内側箱状体に対して互いの切欠部をほぼ一致させて同方向から嵌入される外側箱状体、この外側箱状体の貫通孔を挿通して他端側が前記内側箱状体の底面に係合し、該外側箱状体の底面から突出した一端側での回転操作に伴って前記内側箱状体を前記外側箱状体の側壁内面に摺接させながら内部に引き込むことにより、該内側箱状体の切欠部を狭めて頂面側に位置する棒材を挟持せしめるとともに、該内側箱状体で挟持された棒材と外側箱状体の切欠部とで底面側に位置する棒材を挟持せしめる締結部材を備えることを特徴とする棒材接合具。
【請求項3】
前記内側箱状体の側壁外面が底面側に向けて幅狭となる傾斜面に形成されるとともに、前記外側箱状体の側壁内面が底面側に向けて幅狭となる傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の棒材接合具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−315113(P2007−315113A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147547(P2006−147547)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】