説明

植物バイオマス由来フラボノイドの抽出、精製、及び変換

植物バイオマスより、ルチン濃縮組成物を得る手法であり、それには水溶液を用いた抽出、精製が含まれる。また、ルチンを、より付加価値の高い組成物であるクエルセチン及びイソクエルシトリンが増幅された組成物へと変換するため、ナリンギナーゼなどの酵素製剤が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、フラボノイドに関する。より具体的には、植物バイオマスより得られ、酵素を用いてより付加価値の高いフラボノイドであるイソクエルシトリン及びクエルセチンに変換が可能である、ルチンを豊富に含む化合物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
植物フラボノイドは、通常はグリコシド(配糖体)として植物内に発生するが、時としてアグリコン(無糖体)として生じることがある。大部分の配糖体はO-グリコシドであり、一般的には7-位に糖が結合したモノグリコシドである。ジグリコシドは、-7,-3位に糖を持つものが一般的だが、稀に-7,-4’位に糖を持つものもある。上記以外のものや、モノ-O-グリコシドもあるが、それほど多くは存在しない。C-グリコシドは、上記のものよりさらに稀に発生するもので、その中ではC-6及びC-8グリコシドが一般的である(Harbone, 1994)。
【0003】
植物フラボノイドは、抗酸化性(Bors et al., 1990)、腫瘍形成時の細胞分裂抑止性、及びアンギオテンシン変換酵素(ACE)、プロテインキナーゼC、チロシンプロテインキナーゼ、トポイソメラーゼIIなどの広範囲に渡る酵素活性の抑制能を有している。そのため、植物フラボノイドには、癌抑止及び心臓保護薬剤としての可能性を秘めた物質であると見なされている(Manach et al., 1996; Skibola and Smith, 2000)。さらに、抗炎症性及び抗ウイルス性薬剤としての可能性についても、研究が行われている(Middleton and Kandaswami, 1993)。Backhausは、バイオフラボノイド、特にルチン、シトリン、クエルセチン、ヘスペリジン又はそれらの派生物には、肌の老化作用を助長するタンパク質切断酵素(ヒアルロニナーゼ及び/又はコラーゲナーゼなど)を不活性化する働きがあると発表している(1995a)。これらの化合物は、一般的なスキンケア及び美容整形に使用されるかもしれない。また、ルチン、クエルセチン、イソクエルシトリン、カテキン及び他の化合物についても、皮膚の老化現象を防止、改善すると報告されている(Arata, 1992)。クエルセチングルコシド、2価金属イオン、甘草(Liquorice)抽出物の混合物は、ヒトの肝臓でアルコール代謝を促進することにより中毒症を防止することが、Midoriにより報告されている(1994)。
【0004】
ルチンは、フラボノイドグリコシドであり、クエルセチンと糖(ルチノース)から成っている。ルチンの健康に有益な効果の多くは既に報告されており、その効果は、ルチンの抗炎症性、抗変異原性、抗発癌性、及びエストロゲン受容体への結合性に起因するものであると報告されている(Pisha and Pezzuto, 1994)。さらに、ルチンは毛細血管の脆弱性、脳血栓症、網膜炎、リューマチ熱に付随するの出血症状の治療にも使用されている(GRIFFITH et al., 1944; Matsubara et al., 1985; IWATA et al., 1990; Yildzogle-Ari et al., 1991)。低脂肪摂取状況下において、ルチン及びクエルセチンは腫瘍発生率を大きく低下させることが報告されている(Agullo et AL., 1994; Deschner, 1992)。Backhausは、経口投与、注射又は点滴により投与である溶液、又は座薬としてルチン及びその派生物を投与することにより、レトロウイスル(HIVなど)を非活性化できると発表している(1995b)。ルチンは、天性着色剤、酸化防止剤、ビタミン、日焼け止め化粧品(ルチンは紫外光線を吸収する)、機能性食品中の成分として使用することができる(Anonymous, 1990a, b)。
【0005】
ルチンは、ソバ(葉、花、茎、わら、外皮、穀粒)、Japanese pagoda tree(Sophora japonica)、トマト、パンジー(Viola sp., Violaceae)、タバコ、レンギョウ(forsythia)、アジサイ(hydrangea)、ソラマメ(fava d'anta)(Dimorphandra gardnerina及びDimorphandra mollis)、ユーカリノキ(eucalyptus)を含む多くの植物中に存在している(Humphreys, 1964)。ソバは、ルチンの主要供給源食物と見なされている。Kitabayashiらは、ソバの種子に含まれるルチン含有量は0.126〜0.359mg/g(乾燥重量)の範囲内であったと報告している(1995)。OomahとMazzaは、ソバの種子全体及び外皮のルチン含有量は、それぞれ0.47mg/g及び0.77mg/g(乾燥重量)であったと報告している(1996)。さらに、上記二人はソバの外皮のフラボノイド含有量は非常に高いことも報告しており、ソバの種子及び外皮におけるフラボノイド含有量の平均値は、それぞれ3.87mg/g及び13.14mg/gであった。Prochazkaは、開花時期にあるソバCzechishの葉を慎重に乾燥させたものにおいて、ルチン含有率が6%(重量パーセント)であったと報告している(1985)。1ヘクタール当たりで600〜1000kgの乾燥植物を産出できることから、ルチン含有率が4%(重量パーセント)であれば、ルチンの産出量は24〜40kg/haということになる。
【0006】
ルチンの工業的生産方法は企業秘密であるため公開はされていないが、メルク株式会社が商業目的のルチンをソラマメより抽出していることは、我々の知るところである。メルク株式会社・ドイツのHeywangとBasedowは、1,4−ジオキサンを還流させることによりソラマメ(Dinorphandra)の種苗からルチンの抽出に成功している(1992)。ルチンは、室温で結晶化され回収される。しかしながら、ジオキサンは発癌性があると見なされている。
【0007】
Huoは、ソバtartaryの種子を水で洗浄、荒粉砕、概略スクリーニングの後、これを水に浸し、空気中で乾燥、微粉砕を行い、食用アルコールに浸し、60℃以下で抽出を行い、これを濾過するルチン抽出法を発表している(中国特許第1217329号,1999)。Balandinaらは、ソバの種子を熱湯で処理し、得られた物質を結晶化させることによるルチン抽出法を発表している(1982)。
【0008】
Zhaiは、1〜10%のホウ酸を含み、塩酸を加えpH1〜6に調節された飽和石灰水に、Flos sophoraeを浸すルチンの抽出を行う方法を発表している(中国特許 CN1160048,1997)。
【0009】
MatsumotoとHamamotoは、メタノール抽出(methanolic extraction)、活性炭への吸着を行った後、1%アンモニアを含む40%エタノールを用いた溶出により脱着を行い、20%のエタノールより再結晶化を行うことにより、Sophora augustifoliaの芽からルチンを回収したと発表している(1990)。
【0010】
Liuは、Japanese Pagoda tree (SOPHORA JAPOFAICA)の芽を 微粉砕、石灰水中での流動させた後、上清を中和、冷却し、沈殿物を濾過、洗浄、乾燥させることでルチンを抽出する方法を発表している(1991)。上記方法の収量は14.2%(重量パーセント)で、最終産物は95.1%(重量パーセント)のルチンを含んでいた。
【0011】
Sloleyらは、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum) (セントジョーンズワート(St. John's wort))の葉及び花より抽出物には、マーカー化合物と見なされてきたハイペリシンだけでなく、ハイパフォリン、ハイペロサイド、ルチン、クエルセチンなどの化合物が非常に高濃度で存在することを発表した(2000)。さらに、Sloleyらはそれぞれの抽出物で化学構造の特徴が大きく異なることも発見している。しかし、活性酸素除去能にはクエルセチンが含まれることが大きく関与している。セントジョーンズワートの抽出物16種より得られたルチン及びクエルセチン含有率の平均値は、それぞれ2.0%及び0.3%(重量パーセント)であった。
【0012】
1gのルチンは、室温で水8lに溶解することができ、沸騰した熱水の場合には200mlに溶解することができる。Zirlinは、酸性ソフトドリンク中の微可溶性フラボノイドの結晶化を防止する方法を公開している(米国特許第3822475号、1974)。フラボノイドをサッカロースと混合してカラメル状になるまで(140〜185℃)熱した後、水性溶剤に溶解し、乾燥混合物を得るために水分を蒸発させる。
【0013】
クエルセチングリコシドは、α−グルコシダーゼ(E.C. 3.2.1.20)、CYCLOMALTODEXTRIN GLUCANOTRANSFERASE (E.C. 2.4.1.19)、α−アミラーゼ(E.C. 3.2.1.1)、グルコアミラーゼ(E.C. 3.2.1.3)、β−アミラーゼ(E.C.3.2.1.2)、ガラクトース転移酵素(β-ガラクトシダーゼ)を用いることで、水溶性フラボノールグルコシドへと変化させることができる。その詳細は、San-Ei Chemical Industries Ltd. 及び Hayashihara Biochemical Laboratory Inc.により公開されている(Nishimura et AL., 1992; Suzuki et AL., 1992a, b; Suzuki et AL., 1995; Suzuki et AL., 1996; Washino 1992; Yoneyama et AL., 1996)。Hayashihara Biochemical Laboratory Inc.は、従来の約5000倍にまでルチンの水溶性を高めることに成功したと発表している(Anonymous, 1990a)。
【0014】
1990年以前は、クエルセチンは変異原性及び発癌性を有していると見なされていた(Manach et AL., 1996)。しかし、動物の代謝実験により、クエルセチンは直ぐに非変異原性物質である3'-O-メチルクエルセチン代謝産物へと変換されることが示された (Morand et AL., 1998;Skibola and Smith 2000)。それどころか、クエルセチンは抗菌性、抗ウイルス性、抗酸化性、抗増殖性、抗炎症性、抗癌性作用を有することが発表されている(Crespy et AL., 1999; Skibola and Smith, 2000)。
【0015】
また、クエルセチンは様々な腫瘍細胞(Middleton and Kandaswami, 1993; Caltagirone et AL., 2000)、大腸癌細胞(Agullo et AL., 1994; Deschner, 1992) 、及び潰瘍 (Borrelli and Izzo, 2000)の活動を強く阻害することが示されている。また、クエルセチンは、癌の治療に広く用いられるエピポドフィロトキシン(epipodophylotoxins)と同様に、低濃度においてトポイソメラーゼII阻害能を有することも示された (Skibula and Smith, 2000)。
【0016】
Ishigeらは、種々のフラボノイド及び関連するポリフェノール化合物が、グルタミン酸塩に起因する酸化ストレスからネズミの海馬細胞株HT−22及び主要神経細胞を保護することを発表している(2001)。酸化ストレスに起因する神経細胞死は、脳卒中、動脈硬化、心的外傷、アルツハイマー病、パーキンソン病など、種々の病状と密接に関わっていることから、上記の発明は非常に重要なものである。Ishigeらのデータによると、特定のフラボノイド(クエルセチン、ケンペロール、及びフィセチン)の上記保護作用は非常に強いが、他のもの(ルチン、クリシン、アピゲニン)は上記作用を示さなかった。クエルセチンは、グルタチオン(GSH)代謝を変化させ、酸化ストレス環境下の培養細胞において活性酸素種(ROS)を阻害する。この作用機構は、プロテイン没食子酸塩及びメチルコーヒー酸塩(methyl caffeate)のものに類似しているが、ビタミンEのものとは異なっている。Norooziらは、酸化によるDNA損傷を防ぐには、ビタミンC及びルチンよりもクエルセチンが有効であると発表している(1998)。
【0017】
Ashidaらは、食用フラボノイド(クエルセチン及びルチン)及びフラボンは、ダイオキシンにより引き起こされるアリールヒドロカーボン受容体(AhR)の変異を抑制する働きがあると発表している(2000)。環境汚染物質の毒性の中和には、クエルセチンはルチンよりも有効である。
【0018】
抗発癌性に関しては、第1相酵素(phase I enzyme)は発癌性物質を酸化、還元、加水分解するもので、第2相酵素(phase II enzyme)は接合又は他の手段で発癌性物質に作用するものである。Valerioらは、クエルセチンは第2相酵素誘導物質であり、第N相解毒作用を活性化させることを発表した(2001)。また、第2相酵素は強酸化作用物質を除去する働きもあり、癌のリスクを低減させる手段として研究者から注目を集めている。一般的な食物中に存在する第2相酵素誘導物質を多量に使用することで、体内器官において第2相酵素の活性を高めることができる。
【0019】
Agulloらは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI 3-キナーゼ、細胞の分裂及び変成に関与する酵素)の効果的な阻害物質としてケルセチンが有効であることを発表している(1997)。また、ルテオリン、アピゲニン、ミリセチン(myricetin)も同様の作用を有している。これらPI 3-キナーゼの阻害能は、フラボノイドのこう腫瘍性に関係がある可能性もある。また、クエルセチンはリンパ球チロシンキナーゼの活性を阻害することが発表されており、臨床試験第1段階において抗腫瘍特性を有することが明らかにされた(Ferry et AL. 1996)。
【0020】
Watanabeらは、トチュウ(Eucommia ulmoides)の葉のα−グルコシダーゼの阻害活性がケルセチンに起因することを発表している(1997)。α−グルコシダーゼは、炭水化物の消化作用の反応終段階を促進する酵素であることから、摂食後の高血糖値を抑制し、また末期糖尿病性の合併症、肥満及び関連疾患を含む糖尿病の治療に、クエルセチンが有効な手段となる可能性を秘めていることが、上記発見から示唆されている。また、糖尿病患者の神経、目、腎臓障害の原因となる、ソルビトールの蓄積を引き起こす酵素は、クエルセチンにより阻害される。しかし、クエルセチンの糖尿病に対する有効効果について、ヒトでその有効性を検証する研究は行われていない(Wang, 2000)。
【0021】
Katoらは、0.5%のクエルセチンを含む食物を摂取したマウス又はラットは、血清中性脂肪が大きく減少したと発表した(1983)。高コレステロール食品を摂取したラットでも、クエルセチンを補充することにより血清及び肝臓のコレステロール値の増加を鈍化させる事ができることも示された(Basarkar, 1981)。
【0022】
Alpinia urarensis hayの葉より抽出、精製されたクエルセチン及びその配糖体は、血小板の凝集阻害活性を有することが示された。その活性は、アスピリン又は人参サポリンの血小板凝集阻害能を遥かに上回るものであった(Okuyama et al., 1996)。
【0023】
日本国特許第06248267号において、Nakayamaはクエルセチン、ケンペロール、カテキン、又はタクシフォリンを食品又は薬剤として用いることにより、糖尿病、リューマチ、虚血性疾患、機能不全及び掃気作用に起因する疾病を予防できると発表している(1994)。
【0024】
Lutterodt及びAbu Raihan は、クエルセチンには痛みの伝達を妨げる、麻薬様の抗侵害受容活性があると発表している(1993)。50mg/1kg(体重)のクエルセチンを投与することにより、2.5mg/1kg(体重)のモルヒネ硫酸塩を投与するのと同様の効果が得られるとされている。
【0025】
天然のイソクエルシトリン(クエルセチン-3-O-βグルコシド)は、インドワタ(Gossypium HERBAEEUNZ)、WALDSTEINIA FRAGARIOIDES (Michx) Tratt (Rosaceae)、SPARTIUM JUNCEUM L. (Fabaceae)、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)の花より抽出することができる(Yesilada et AL., 2000)。また、セロリの種子、ウイキョウの種子、トクサ、ムラサキツメクサ、セントジョーンズワートにもイソクエルシトリンの存在が認められる。イソクエルシトリンは、アンギオテンシン変換酵素(ACE)の阻害活性、プロスタグランジン生合成の阻害活性、抗ウイルス性活性など様々な生物化学的活性を有することが示されている(Abou-Karam and Shier, 1992)。
【0026】
哺乳類の組織では細菌酵素の様な加水分解酵素を合成することが出来ないため、フラボノイドの消化吸収には細菌酵素の役割が非常に重要である。GRIFFITHS及びBarrowは、無菌ラットの大便から、摂取されたフラボノイド配糖体が加水分解されていない状態で回収されたと発表している(1972)。糖−非糖部結合の加水分解は、回腸の抹消部及び盲腸で行われる。
【0027】
腸膜から吸収される過程で、フラボノイドは無糖体及び/又はグルコシドとして吸収され、それらの一部分はグルクロン酸化合物、硫酸塩、メトキシレートへと変換される(Manach et AL., 1998)。そのため、無反応のクエルセチンは血漿中より検出されない。吸収されたフラボノイドの小断片は、肝臓の酵素により代謝され、終産物である極性配合体(polar conjugate)は尿の中に排泄されるか、胆嚢を通り十二指腸へと運搬される。吸収されなかった巨大な断片のフラボノイドは、腸内の微生物フローラにより分解される。細菌酵素は、様々な反応を促進することができ、それには加水分解、酸素を含む複素環状構造の開裂、ジヒドロキシル化、脱炭酸化といった反応が含まれる。この反応に用いられるフラボノイドの構造により、様々なフェノール酸が生成されることになる。これらフェノール酸は吸収され配合体を形成し、肝臓においてO-メチル化された後、循環系へと運搬される(Manach et AL., 1996)。
【0028】
Crespyらは、ルチンよりもクエルセチン及びイソクエルシトリンの方が生体利用効率が高いことを示している(1999)。クエルセチン、イソクエルシトリン及びイソラムノースは小腸から吸収されるが、ルチンは盲腸の微生物相により加水分解されなければならないため、クエルセチンやイソクエルシトリン、イソラムノースよりも吸収されるのが遅いためである(Manach et AL., 1997)。また、Morandらは、イソクエルシトリンは他のクエルセチン(クエルセチン、ルチン、クエルシトリン(quercitrin))よりも吸収が良いと発表している(2000)。食事の4時間後、摂取したクエルセチンの形態に関わらず、代謝産物である3'-又は4'-メチルクエルセチンが血漿中に認められる。しかしながら、血漿中の代謝産物濃度は摂取したクエルセチンにより大きく異なり、それぞれイソクエルシトリン、クエルセチン、ルチンを摂取した場合の濃度は33.2、11.2、2.5μMであった。クエルセチン(クエルセチン 3-ラムノース)を摂取した後では、血漿中に代謝産物を検出することが出来なかった。クエルセチン(クエルセチン 3-ラムノース)が消費された後には、血漿中から代謝産物を検出することはできなかった。Geeらは、イソクエルシトリンは、無反応のクエルセチン無糖体よりも素早く小腸上皮組織を透過することを発表している(2000)。これらのデータに基づき、生体利用効率の高い順にフラボノイドを並べると、イソクエルシトリン>クエルセチン>ルチンとなる。
【0029】
ナリンギナーゼは、Pennicillium Aspergillus、Coniella diplodiella、Cochliobolus fraiyabeanus、Rhizoctoyaia solanii、Phomopsis citri、Penicillium decumbensの培養液より得ることが出来る酵素製剤である。商用ナリンギナーゼのほとんどは、Penicillium decumbensを利用して生産されている。Narikawaらは、Penicillium decumbensがルチンを分解することができるとしたが、その研究は定性的なものであったため、その分解された終産物が何であったかなどは示されなかった(1998)。
【0030】
ナリンギナーゼは、4', 5,7 - トリヒドロキシフラボンの7-(2-ラムノシド−βグルコシド)を加水分解し、すなわちナリギンをナリンゲニンへと加水分解することに用いられる。商業用途では、柑橘類の果実及びジュースの苦みを緩和することに用いられる。ナリンギナーゼは、Uyateらにより煎じ茶(tea infusion)の研究にも用いられた(1981)。煎じ茶の変異原性活動におけるナリンギナーゼ処置の効果は、酸またはヘスペリジナーゼを用いた処置に類似していた。しかしながら、Uyateらは、加水分解物を同定及び特徴づけたりしなかった。Uyateらはケンペロール、クエルセチン、ミリセチンが、ヒトの糞便に含まれる細菌により処理された煎じ茶の変異原性の本質であると結論付けていた。
【0031】
イソクエルシトリンはクエルセチン誘導物質のなかで最も利用価値が高いと思われるが、分析用にごく少量が利用できる以外では、濃縮又は精製されたイソクエルシトリンは市場に出回っていない。また、ソバの葉を処置してフラボノイドを回収し、それをイソクエルシトリンやクエルセチンのような生体利用効率が高く、効用が強化された付加価値の高いものへと生体変換させる方法は公開されていない。これまでに公開された方法は、ルチンの抽出及び精製を研究室で行う古典的な方法ばかりである。
【0032】
通常、生体系に見られるような自然に分泌されるイソクエルシトリン及びクエルセチンの濃度は、ルチンと比較して非常に低い。その希少価値及び生体利用効率の高さから、生体系より抽出されるイソクエルシトリン及びクエルセチンは非常に高価である。ルチンを、イソクエルシトリンやクエルセチンのように生体利用効率が高く、その効果が強化された付加価値の高い製品へと生体内変換させることが出来る、商業的に実行可能な技術は存在していないのが現状である。
【0033】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、ルチンからイソクエルシトリン濃縮組成物を供することであり、さらに、機能食品、栄養補助食品、天然健康製品(natural health products)、化粧品及び薬剤として商業的に利用するに十分な量の上記組成物を供することである。
【0034】
本発明のさらなる目的は、イソクエルシトリン及びクエルセチンルチンの比率が調節できるルチン由来の上記組成物を、機能食品、栄養補助食品、天然健康製品、化粧品及び薬剤として商業的に利用するに十分な量供することである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、イソクエルシトリンがクエルセチンへと変換されることを防止し、イソクエルシトリンの収量を最大とする方法を供することである。ナリンギナーゼの調整を述べる際に示されるが、本発明において上記の目的は、β-D-グルコシダーゼ活性の阻害剤を加えることにより達成される。
【0036】
本発明のさらなる目的は、特に種子を収穫した後の、畑に残されたソバの残りからルチンを抽出する方法を供することであり、これにより通常は破棄される廉価な廃棄物から付加価値の高い製品を作り出すことができる。
【0037】
まず、ルチンを含む生物資源からルチンを多く含む組成物を調製する本発明の方法をここに示す。この方法では、水溶液を用いて生物資源からフラボノイドの抽出を行い、抽出液を得る為に溶液の濾過し、抽出液を静止し沈殿物を得た後、沈殿物を回収し乾燥することにより、ルチン濃縮組成物を得るものである。
【0038】
水溶液は、抽出過程の間は30℃以上に保たれることが好ましい。水溶液は、20%(容積比)以上のアルコールを含むアルコール水溶液であることが好ましく、50%から100%(容積比)アルコールを用いることで最適な結果を得ることができる。抽出液は、もとの容積の4分の1から10分の1に濃縮され、その後に沈殿を促進させるために冷却して静止されることが好ましい。
【0039】
本発明の方法を用いることで、クロマトグラフィーなどの手段を用いることなく、比較的単純な液体化学的手法だけで70%(重量比)のルチン含有率を有する組成物を得ることができる。経済的な側面から、収穫後に畑に残されたソバの葉をルチン含有バイオマスとして用いる。収穫後のソバの葉に価値があるという話はこれまでに耳にしたことがない。収穫後の残留物を利用することは、ソバを収穫し栽培作物としての利益も得ることができるため、従来技術の開花期にあるソバを利用するものよりも優れている。従来技術においては、開花期又は早熟期にあるソバをルチン供給原として販売することが、ソバ作物より得られる利益であった。
【0040】
また、本発明では酵素反応(enzyme incubation)(以下、酵素インキュベーションと称する場合もある)に適した状態に保たれたルチン溶液を処理することにより、イソクエルシトリンが濃縮された溶液を得ることが出来る。その方法には、溶液にナリンギナーゼを含む酵素製剤を加え、酵素インキュベーションに適した状態に溶液を保ち、その後酵素インキュベーションに適さない状態へと溶液の状態を変化させ反応を止めることが含まれる。上記の状態を変化させるには、溶液のpHを下げることや温度を上げることが含まれている。インキュベーション時間を調節することにより、組成物中に含まれるイソクエルシトリンの比率を調節することができる。
【0041】
また、本発明では酵素インキュベーションに適した状態にあるルチン溶液を処理することにより、イソクエルシトリンが濃縮された溶液を得ることが出来る。その方法には、溶液にナリンギナーゼ又はα-L-ラムノシダーゼを含む酵素製剤を加え、酵素インキュベーションに適した状態に溶液を保ち、その後酵素インキュベーションに適さない状態へと溶液の状態を変化させ反応を止めることが含まれる。収量を最大限とするためには、温度は50℃〜55℃の範囲内に保つことが好ましく、65℃以上にするべきではない。インキュベーション時間を調節することにより、組成物中に含まれるイソクエルシトリンの比率を調節することができる。インキュベーション時間は1〜48時間の範囲内で任意に設定される。溶液のpHを下げ、温度を上げて酵素製剤を変成させることで反応を止めることができる。
【0042】
組成物中に含まれるイソクエルシトリンの割合は最大95%まで高めることができる。また、α-L-ラムノシダーゼとD-グルコシダーゼを含む酵素製剤の酵素インキュベーションにより、ルチンをクエルセチンへと変換することができる。インキュベーション時間を調節することで、様々な比率でイソクエルシトリン及びクエルセチンの両方が濃縮された組成物を調整することができる。
【0043】
簡便性及び経済的な見地から、商業的に利用可能であり安価なナリンギナーゼを酵素製剤として用いることができる。品質が保証されたβ-D-グルコシダーゼが、種々の商業用途に販売されている。Pefaicillium decumbens由来のナリンギナーゼはルチンより糖を分離できることが明らかとなっており、Narikawaらによる従来の発表(1998)が覆されている。
【0044】
α-L-ラムノシダーゼをルチンに加え、酵素インキュベーションを行うことにより、ルチンをイソクエルシトリンへと変換することができる。β-D-グルコシダーゼとイソクエルシトリンの酵素インキュベーションを行うことで、イソクエルシトリンをクエルセチンへと変換することができる。ナリンギナーゼはα-L-ラムノシダーゼとβ-D-グルコシダーゼの両方を含んでおり、また大量に購入することができる。
【0045】
精製された、又は高価なα-L-ラムノシダーゼ及びβ-D-グルコシダーゼを使用せずとも、効果的、経済的かつ商業的に実行可能な形態で生体変換を行うことができる。また、生体変換の状態を調節することで、種々のルチン/イソクエルシトリン/クエルセチン比率を有する組成物を得ることができる。本発明の方法は、高濃度のルチン、イソクエルシトリン、クエルセチン又はそれらの混合物を得るのに用いることができ、これら物質を既存の生物化学的精製技法を用いてさらに精製することも可能である。
【0046】
また、本発明では、ルチン溶液にナリンギナーゼ酵素製剤を加える前に、β-D-グルコシダーゼ阻害剤を加えることもできる。好適な実施例では、β-D-グルコシダーゼ阻害剤とはD-Δ-グルコノラクトンである。ナリンギナーゼのβ-D-グルコシダーゼを阻害すると、イソクエルシトリンがクエルセチンへと変換されないため、イソクエルシトリンの収量を純度約80%以上まで高めることができる。
【0047】
本発明の方法は、様々な植物バイオマス資源から高濃度のルチン、イソクエルシトリン、クエルセチン及びそれらの混合物を生産することに使用することができる。植物バイオマスには、Fargopyrum属、セントジョーンズワートの葉、イチョウ、アルファルファ、マルベリー、藻類、リンゴの皮、ナシの皮、タマネギの皮、アスパラガスの先端部、バラの果皮などが含まれるが、植物バイオマス資源はこれらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の方法により得られるイソクエルシトリン濃縮産物は、アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍性、抗ウイルス性、抗酸化性、活性酸素除去能、癌予防性、心臓保護性、プロティナーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質分解酵素阻害性を含む生理活性作用を有している。
【0049】
本発明の方法により得られるイソクエルシトリン濃縮産物の生理活性作用は、健康食品、薬剤、栄養補助食品、化粧品の添加物として有用である。これらに添加物として使用された場合、上記の生理活性作用は疾病及び健康上の問題点の治療及び予防に有用である。上記の疾病及び健康上の問題点には、脳卒中、毛細血管の脆弱性(capillary fragility)、動脈硬化、心的外傷、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、肥満及びそれに付随する疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、及び数種の癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
また、本発明は、商業的生産を可能とし、また市場の嗜好も満たすことができる、柔軟な手法及び産物を供するものである。
【0051】
前述の本発明の目的、特徴、及び優位点は、例示目的により本発明の原理を示した以下の詳細な記述により明らかとなるであろう。
〔実施形態の詳細な記述〕
本発明は、植物バイオマスから付加価値、生体利用効率が高いフラボノイドを得る方法を供するものである。前述のように、フラボノイドは多くの有益な生理活性作用を有している。フラボノイドを治療用途に用いることの問題点として、自然界に存在するものは低濃度であることが挙げられる。薬剤、栄養補助食品、又はその他の健康製品への添加物としてフラボノイドを用いるには、フラボノイドを精製する方法が必要である。
【0052】
本発明では、フラボノイドであるルチンが一般的な生物化学的手法により回収される。その後、酵素製剤であるナリンギナーゼの作用により、ルチンはイソクエルシトリン及びクエルセチンへと変換される。本発明では、食品添加物であるd-Δ-グルコノラクトンを用い、ナリンギナーゼ製剤中のβ-D-グルコシダーゼの活性を阻害することで、中間産物であるイソクエルシトリンの収量を高める精製方法も示されている。
【0053】
以下の例及び図には本発明の具体的な実施例が示されており、これにより本発明はより簡単に理解されるであろう。
【0054】
これより、詳細な記述がなされているが、ここに示される具体的な例は本発明の実施例を示す事のみを目的としたものであり、また本発明の概念と原理を簡単に理解するのに有用であるものを示してあることを強調せねばならない。そのために、図表とその記述から当該業者が実施例を実行する手法が明確になると思われる以上、また本発明の基礎を理解するに必要であると思われる以上に詳細にわたる記述を行うことを意図していない。これより示される詳細事項は、例示を目的としたものであり、また実例を議論することが目的であると強調されなければならない。
〔植物バイオマスからのルチンの抽出〕
以下の例1及び2は、水溶液(aqueous solution)への抽出、濃縮、沈殿を含む手法により、植物バイオマス中のルチンを回収することが可能であることを示すものである。抽出液を濃縮する過程は省略しても良いと思われるが、この比較的簡単で廉価な過程により、全体の作業の効率が大きく上げる事ができる。
【0055】
実施例1のように、記載される熱湯への抽出により葉に含まれるルチンの36%が回収された。
【0056】
実施例2のように、記載される50%(体積比)のメタノールを含むアルコール水溶液への抽出により、葉に含まれるルチンの65%が回収された。
【0057】
実施例3のように、クロマトグラフィーを行わずとも、単純な液体化学的手法によりルチン濃縮組成物のルチン含有率を約70%に高めることができる。
【0058】
実施例4に示されるように、使用するアルコール濃度、水溶液の温度、溶解度、抽出時間により、本発明の抽出法の効率は大きく変化する。商業用途においては、経済的な観点に基づき上記事項をそれぞれ組み合わせることができる。
【0059】
順次処理を行う方法、又は連続した搬送的な方法のどちらでも抽出を行うことができると思われる。また、抽出済みのバイオマスを新しい溶剤へと加え二回目の抽出を行うことで、抽出物の回収率をより高めることができる。
【0060】
従来技術は、フラボノイドの分析方法論、植物バイオマスに含まれるフラボノイドの含有率や濃度について論ずるものが大半であって、沈殿によりルチン濃縮分画を終産物として得る手法などはこれまでに発表されていなかった。これまでは、ルチン濃縮組成物の有用性は認められていなかった。
(実施例1ソバの葉よりの水を用いたルチンの抽出、濃縮、沈殿)
収穫及び乾燥された後のソバの葉を、2mmのスクリーンを通過するようにWileyミルで粉砕し、これを抽出に用いた。粉砕済みのソバの葉1kg(乾燥重量、ルチン含有率3.74%)を、90℃の水10l中で1時間攪拌し、抽出を行った。得られた懸濁液は濾過され、濾紙ケーキは300mlの熱湯(95℃)で2度洗浄された。洗浄により得られた濾液を先の抽出液に加え、終容量を8.6lに調節した。この水抽出により、葉に含まれるルチンの36%が回収された。減圧環境下にて濃縮を行い、抽出液を元の体積の5分の1から10分の1まで濃縮した。濃縮された抽出液を、フラボノイドが溶液から沈殿を形成する温度である4℃に調節された冷蔵庫の中で一晩静止した。沈殿物を、7000xgの遠心分離及び上清の濾過により回収した。その後、得られたペレットを凍結乾燥した。沈殿物中のルチン含有量は、等分した乾燥終産物をメタノールに溶解し、それをRP-高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて分析することで求められた。HPLCの結果、抽出水溶液(5分の1から10分の1に濃縮されたもの)に含まれるルチンの60%が沈殿物(ペレット)として回収されたことが明らかとなった。
(実施例2ソバの葉よりのアルコール水溶液によるルチンの抽出、濃縮、沈殿)
収穫及び乾燥された後のソバの葉を、2mmのスクリーンを通過するようにWileyミルで粉砕し、これを抽出に用いた。粉砕済みのソバの葉1kg(乾燥重量、ルチン含有率3.74%)を、40℃の50%(体積比)メタノール水溶液10l中で3時間攪拌し、抽出を行った。得られた懸濁液を濾過し、濾紙ケーキを40℃の50%メタノール水溶液で洗浄し、洗浄に用いた濾液を抽出液に加えた。この抽出作業により、ソバの葉に含まれるルチンの65%が回収された。図2Aは、このメタノール抽出液のルチン濃度を表したものである。減圧環境下にて濃縮を行い、抽出液を元の体積の5分の1へと濃縮した。濃縮された抽出液を、フラボノイドが溶液から沈殿を形成する温度である4℃に調節された冷蔵庫の中で一晩静止した。沈殿物を、7000xgの遠心分離及び上清の濾過により回収し、得られたペレットは凍結乾燥された。乾燥終産物を等分してメタノールに溶解し、RP−高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析を行うことで沈殿物中のルチン含有量が求められた。図2Bは、沈殿物中のルチン濃度を表したものである。フラボノイド濃縮終産物は、64%のルチンと、6.88%のタンパク質を含むことが明らかとなった。濃縮抽出液からのルチン回収率は93%から100%であることも明らかとなった。
(実施例3ソバの葉より単離されたフラボノイド濃縮中間物からのルチンの精製)
上記実施例2により得られたルチン濃縮終産物を温メタノールに溶解した。この際、ルチンの溶解を完全に行う為に磁石を用いた攪拌器を使用して激しく攪拌した。減圧濾過を行い、溶解していない物質を除去した。その後、減圧状況下、40℃で溶液を蒸散させた。残留物を熱湯(90℃)で懸濁し、その大半が溶解するまで攪拌し続けた。その後、懸濁液を冷蔵庫の中に一晩放置した。沈殿物を減圧濾過により濾別し、凍結乾燥した。精製されたルチンをメタノールに溶解し、0.45umのナイロンシリンジフィルターにより濾過したのち、RP−HPLCを用いてその純度を決定した。クロマトグラフィーを用いることなく、溶解/結晶化を繰り返す手法によりルチン含有率を約70%またはそれ以上に高めることができた。
(実施例4ソバの葉からのルチン抽出の最適化)
上記実施例2に記載されたようにソバの葉を処理した後、固体:溶媒比が1:20になるように溶媒に加え、60℃で4時間抽出を行った。用いた溶媒は、水、30%メタノール/水70%(体積比)、50%メタノール(体積比)、70%メタノール/水30%(体積比)、85%メタノール/水15%(体積比)、100%メタノールである。得られた抽出液を濾過した後、RP−HPLCを用いて分析を行った。これにより、抽出溶媒のメタノール含有率は、ソバの葉からの抽出の効率に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった(表1)。
【0061】
ソバの葉からルチンを回収する最適な抽出条件は、一連の最適化研究を通じて決定することができた。抽出溶剤のアルコール含有率だけでなく、抽出温度、抽出時間、及び固体:溶剤比率もまた大きな影響を有することが明らかとなった。表1から表3は、それらの結果を簡単にまとめたものである。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
〔ルチンのイソクエルシトリン及びクエルセチンへの変換〕
図1Aは、ルチンの分子構造を表している。α-L-ラムノシダーゼによる生体変換は、図面下側右手に記されている第1糖を取り除き、ルチンを図1Bに示されるイソクエルシトリンへと変換するものである。模式的に示すと、α-L-ラムノシダーゼは、図1Aに示される交線A−A’にそって切断を行う。
【0066】
β-D-グルコシダーゼによる反応は、図面下側右手に示されている糖を取り除き、図1Bに示されるイソクエルシトリンを図1Cに示されるクエルセチンへと変換するものである。模式的に示すと、β-D-グルコシダーゼは図1Bに示される交線B−B’にそって切断を行う。
【0067】
後述の実施例5に示されるように、上記実施例2のルチン濃縮組成物からイソクエルシトリン濃縮組成物を得ることができる。その方法には、ルチンが懸濁された溶液を酵素インキュベーションに適した条件に保つことが含まれる。また、実施例5に示される条件には、溶液の温度を80℃に上げ、pHを4に調節することも含まれている。溶液に加える酵素製剤には、α-L-ラムノシダーゼ及びβ-D-グルコシダーゼを含む食品等級のナリンギナーゼ酵素パウダーを用いる。この溶液を攪拌を行いつつ50℃に保ち、溶液を酵素インキュベーションに適した状態に保つ。
【0068】
溶液を酵素インキュベーションに適さない状態へと変化させることで、インキュベーションを停止させることができる。例5では、pHを2.5に調節したのち、攪拌を行いながら溶液を10分間80℃に保つことでインキュベーションを停止した。
【0069】
下記表4に見られるように、インキュベーション時間を調節することで、イソクエルシトリン濃縮組成物に含まれるイソクエルシトリン濃度を調節することができる。インキュベーション時間が長いとイソクエルシトリンの含有率も増加し、ルチン/イソクエルシトリン/クエルセチンの重量比は、8時間の反応後では1.71:1:0.06、16時間後では0.33:1:0.07、24時間後ではほぼ0:1:0.46であった。
【0070】
したがって、24時間のインキュベーション後には、全てのルチンがクエルセチン及びイソクエルシトリンへと変換されたことになる。しかしながら、24時間後ではイソクエルシトリンの含有量はクエルセチンの約2倍となっている。24時間より前では、例えば16時間後の場合、組成物のイソクエルシトリンの含有量はクエルセチンの約14倍、ルチンの約3倍である。
【0071】
このことから、さらにインキュベーション時間を延長すれば、より多くのイソクエルシトリンがクエルセチンへと変換されることになる。96時間の反応の後では、組成物中のルチン/イソクエルシトリン/クエルセチンの重量比はほぼ0:1:3.38と、イソクエルシトリンの約3倍量のクエルセチンが組成物に含まれている。
【0072】
このように、反応時間を調節することによりルチン、イソクエルシトリン、クエルセチンの割合を調節することが可能である。反応時間は時間単位で調整が可能であり、これにより商業用途に大量生産を行う際にも、時間幅を様々に設定することが可能である。
【0073】
また、後述の実施例6に示されるように、1日の酵素インキュベーションの後に、商業用ルチン(純度95%(重量比))を、ルチン/イソクエルシトリン/クエルセチンの重量比が0.1/1.0/0.2であるイソクエルシトリン濃縮組成物へと変換することができた。
【0074】
また、後述の実施例7に示されるように、商業用ルチンを、図3Aのルチン濃縮組成物から、図3Bのイソクエルシトリン及びクエルセチン濃縮組成物へと変換することができた。
【0075】
また、後述の実施例8に示されるように、後述の実施例7のイソクエルシトリン及びクエルセチン濃縮組成物をDeltaprep C-18クロマトグラフィーによりさらに精製し、純度95%以上のイソクエルシトリンを得ることができた。収量は75%であった。
【0076】
また、後述の実施例10に示されるように、D-Δ-グルコノラクトン又はその他の食品用促進剤を加えることにより、α-ラムノシダーゼに影響を与えることなく、ナリンギナーゼに含まれるβ-グルコシダーゼの活性を阻害することができる。D-Δ-グルコノラクトンは、豆腐の凝固剤などとして、長らく食品添加物として使用されてきたものである。本発明においては、D-Δ-グルコノラクトンを用いることにより、イソクエルシトリンの収量をさらに上げることができ、応用の幅を広げることができる。β-グルコシダーゼの選択的阻害剤を、又はナリンギナーゼよりα-ラムノシダーゼを単離してイソクエルシトリンの生産に用いることは、本発明の範囲内に含まれるものである。
【0077】
後述の実施例11に示されるように、中規模の方法によりソバの葉からイソクエルシトリン濃縮終産物を得ることが可能である。また、この終産物を非常に価値の低いバイオマスより作り出すことも可能である。
【0078】
商業的利用が可能な酵素混合物であるナリンギナーゼを、ルチンを有用かつ付加価値の高いフラボノイドであるクエルセチン及びイソクエルシトリンへと変換するのに用いられる。本発明により公開される酵素による変換は、従来技術と比較して効率が良く安価であるうえ、人体に有害な物質を使用しない。本発明により得られる生体変換産物の1つでは、ルチン/イソクエルシトリン/クエルセチンの重量比がほぼ0:22.8:7.3である。この組成はイチョウ抽出物に類似しているが、イチョウ抽出物は24.5%のフラボングルコシドと6.3%のクエルセチンを含むものである。
【0079】
種々の条件下において、処理する製品を混合することにより、様々な化学的性質を有する終産物(生産物)を調製することができる。この技術を用いることにより、様々な「特別製の栄養補助食品」を作り出しえる柔軟さを得ることができる。さらに、変換された混合物を、クロマトグラフィーやその他の技法により分画及び精製することも可能である。
【0080】
クロマトグラフィーをフラボノイドの単離に用いる方法も公開されているが、これらは分析を目的としたものである。酵素により変換されたフラボノイド(ルチン、イソクエルシトリン及びクエルセチン)を含む、5〜50lの抽出液を処理できるStack Packカラムを用いた精製方法は、これまでに知られていなかった。
【0081】
また、後述の実施例9に示されるように、本発明により公開される変換技術は、セントジョーンズワートに含まれるルチンをイソクエルシトリン及びクエルセチンへと変換することにも利用することができる。また、イチョウ、ファルファルファ、マルベリーの葉などのバイオマス、バラの実、リンゴの皮、ナシの皮、タマネギの皮、アスパラガスの先端部などのルチンを多く含む農業バイオマスも、イソクエルシトリン濃縮組成物を生産するのに用いることができる。
【0082】
クエルセチン及びイソクエルシトリンは、その希少さ、生体利用効率及び生体効果のため非常に高価である。心臓血管性疾患及び癌予防に関し、クエルセチン及びイソクエルシトリンは高い生体利用効率を有しており、フラボノイドを栄養補助食品や薬剤市場に利用することが非常に有望であると考えられる。
(実施例5:加水分解酵素を用いたルチンのイソクエルシトリン及びクエルセチンへの変換)
生体変換の条件を操作することにより、フラボノイド濃縮中間産物を、ルチン/イソクエルシトリン/クエルセチンの比率が様々である終産物へと変換することができる。
【0083】
実施例2の凍結乾燥されたルチン産物(ルチン含有率約60%)を酵素変換の実験に用いた。5gの上記ルチン産物を、500mlの水に混合した(固体:溶剤比=1:100)。混合液を80℃に熱し、pHを4に調節した。その後、混合液を50℃に保ち、食品用のナリンギナーゼ酵素パウダー(Amano Pharmaceutical Co., Ltd; Japan)を加えた。
【0084】
ナリンギナーゼ製剤は、150ユニットのβ-グルコシダーゼ、又は製造業者が定めるナリンギナーゼ活性を有する。今回は、ルチン1gあたり66mgのAmano製ナリンギナーゼを使用した。攪拌を行いながら適切の時間50℃に保ち酵素インキュベーションを行った。インキュベーション時間の後、溶液のpHを2.5に調節し、攪拌を行いながら10分間80℃に保つことでインキュベーションを停止した。10分間80℃に保った後、溶液を室温まで冷まし、pHを7に調節した。その後、噴霧乾燥、凍結乾燥、又はその他の適切な手段を用い、酵素変換された終産物の乾燥を行った。
【0085】
表4には、種々のルチン/イソクエルシトリン/クエルセチン比率を有する終産物を得るのに必要であった実験条件がまとめられている。簡便性という観点から、ここで用いられた出発原料は事前に凍結乾燥されたものである。実施例2の乾燥処理の前段階で得られた沈殿物(ペレット)は、実施例5の開始物質に適している。酵素変換を異なる段階で行ってもよい。例えば、フラボノイドを抽出する事前に行ってもよいし、水溶液に抽出した後に行ってもよいし、濃縮後に行ってもよいし、沈殿物形成後に行っても構わない。フラボノイドの含有比率(ルチン/イソクエルシトリン/クエルセチン)は、酵素反応を行うものと同様の処理を施したコントロール(酵素を加えず)においては変化しなかった。これにより、上記変換作用はナリンギナーゼの作用によるものであることが明らかとなった。
【0086】
【表4】

【0087】
(実施例6:高純度の商用ルチンのイソクエルシトリンへの変換)
Sigma Chemical Companyより購入した商用ルチン(純度95%)を用い、実施例5で示したのと同様の酵素インキュベーションを行い、ルチンからイソクエルシトリンへの変換を行った。10.90gのルチンを1000mlの水に加えた。混合液を80℃に熱し、pHを4に調節した。その後混合液を55℃に保ち、ナリンギナーゼ酵素パウダー2.42gを加えた。24時間、攪拌を行いながら55℃に保ち、酵素インキュベーションを行った。インキュベーション時間の後、溶液のpHを2.5に調節し、攪拌を行いながら10分間80℃に保ちインキュベーションを停止した。その後、溶液を室温まで冷まし、pHを7に調節した。RP−HPLCによる分析に用いるため、1.0mlを別に保存し、残りの抽出物を凍結乾燥した。HPLCによる分析の結果、商用ルチンより変換を行った終産物は、0.12:1:0.21のルチン/イソクエルシトリン/クエルセチン重量比を有することが判明した。
(実施例7:変換のスケールアップ)
Street Chemicalsより購入した商用ルチンを、実施例6に示したものと同様の酵素変換に使用した。商用ルチンに含まれるルチン及びイソクエルシトリンの濃度は、図3Aに示されている。109gのルチンを4000mlの水に加えた。混合液を80℃に熱し、pHを4に調節した。その後混合液を50℃に保ち、24.2gのナリンギナーゼ酵素パウダーを加えた。24時間、攪拌を行いながら55℃に保ち酵素インキュベーションを行った。インキュベーション時間の後、溶液のpHを2.5に調節し、攪拌を行いながら10分間80℃に保つことでインキュベーションを停止した。その後、溶液を室温まで冷まし、pHを7に調節した。溶液を4℃の冷蔵庫に一晩静止し、遠心分離により沈殿物を回収、凍結乾燥を行った。その結果、61.8gの乾燥物を得た。この終産物のクロマトグラフィーは図3Bに示されている。
(実施例8:実験規模のイソクエルシトリン及びクエルセチンの単離)
実施例7の方法で得られた固体(50gm)を、70%メタノールに溶解し、濾過を行った。得られた濾液は、Waters reversed phase Bondapak C-18, 40X310MM (15-20 125Å) columnを用い、Millennium V 2.15 softwareにより制御される486 variable wavelength UV-Vis detectorを備えたWaters Delta-Prep 4000 systemを使用した実験規模のクロマトグラフィーにかけられた。カラムよりの溶出には、メタノール:1%酢酸グラジエントが用いられ、流速は50ml/分とした。目的とする組成物は、280nmの波長により検出された。収集された分画の純度は、分析用HPLCにより求められ、その結果が例Aに示されている。イソクエルシトリンの収量は、開始物質の75%で純度は95%であった(図3C)。また、高純度のクエルセチンが、分離用HPLCの一分画より回収された。温メタノールから再結晶を行うことにより、分離用HPLC分画の純度をさらに高めることも可能である。
(実施例9:セントジョーンズワート抽出物に由来するルチンの変換)
セントジョーンズワートの藁を集めて水の中へ加え、実施例5に示されたのと同様の方法で酵素インキュベーションを行った。セントジョーンズワートがルチンを含むことは知られている。この実験の目的は、セントジョーンズワート抽出物に含まれるルチンをイソクエルシトリンへと変換することである。
【0088】
5.52gのセントジョーンズワート抽出物を、500mlの水に加えた。混合液を80℃に熱し、pHを4に調節した。その後、拡散液を55℃に保ち、ナリンギナーゼ酵素パウダー0.60gを加えた。24時間、攪拌を行いながら55℃に保ち、酵素インキュベーションを行った。インキュベーション時間の後、溶液のpHを2.5に調節し、攪拌を行いながら10分間80℃に保つことでインキュベーションを停止した。その後、溶液を室温まで冷まし、pHを7に調節した。その後、抽出物を凍結乾燥した。乾燥された終産物をメタノールに溶解し、濾過した後に、ルチンからイソクエルシトリンへの変換の程度を測定するため、RP−HPLCによる分析を行った。HPLCによる分析の結果、初段階のセントジョーンズワート抽出液のルチン/イソクエルシトリン/クエルセチン重量比は0.47:1:0.21であった。酵素による変換が行われた終産物では、ルチン/イソクエルシトリン/クエルセチンの重量比は、ほぼ0:1:0.18であった。これにより、初段階の抽出液に含まれていた全てのルチンが、イソクエルシトリン及びクエルセチンへと変換されたことが明らかとなった。
(実施例10:ナリンギナーゼ及びD-Δ-グルコノラクトンを用いた、ルチンからイソクエルシトリンへのラージスケール変換)
ICNより購入した医薬品グレードのルチン(38.15g)を、35lの脱イオン水に加えた。また、ナリンギナーゼ溶液(水100mlあたり8.47g)及びD-Δ-グルコノラクトン溶液(水100mlあたり6.23g)を調整した。D-Δ-グルコノラクトン溶液を水・ルチン混合物に加えた。混合液のpHを4.0に調節し、その後混合液を80℃に熱し2時間保温した。混合液の温度を55℃に冷まし、ナリンギナーゼ溶液を加えた。24時間、混合液の攪拌を行いながら55℃に保ちインキュベーションを行った。溶液のpHを2.5に調節し、溶液を10分間80℃に保つことでインキュベーションを停止した。混合液を室温まで冷やし、pHを7に調節した。混合液が沈殿物を形成するよう、冷蔵庫の中に一晩放置した。沈殿物を遠心分離により回収し、その後凍結乾燥した(PPT1分画)。また、上清の濃縮を行い、再度遠心分離を行った。それにより得られたペレットを凍結乾燥した(PPT2分画)。このようにして、3つの分画を得た。これらの分画のルチン、イソクエルシトリン及びクエルセチンを、HPLCを用いて分析した。その結果は下記表5に示されている。
【0089】
下記表5より、酵素変換後はルチン及びクエルセチンは殆ど含まれていないが、イソクエルシトリンが豊富であることが見て取れる。例えば、実施例10の方法により得られた3つの分画より、77.72gのイソクエルシトリンを得ることができるが、クエルセチンは0.53gしか得られなかった。大部分のイソクエルシトリン(61.8g)がPPT1分画に含まれている。変換は非常に効率的に行われており、変換されずに残ったルチンの量は0.2009gであった。このデータから、阻害剤D-Δ-グルコノラクトンを反応混合液に加えることにより、1種類のフラボノイド、すなわちイソクエルシトリンが選択的に生産されることが見て取れる。
【0090】
PPT1分画のイソクエルシトリン濃度は81.1%から88.8%の幅で変動し、その平均値は85.2%であった。本例において、純度の高い(80%以上)生体内で利用されうるフラボノイドが、クロマトグラフィーなどを行うことなく、単純な生化学的手法により生産できることが示された。上清分画(SUP)にも、101.66gあたり14.42gのイソクエルシトリン(乾燥状態)が含まれており、非常に有用であることがわかる。
【0091】
【表5】

【0092】
(実施例11:ソバの葉よりのルチンの抽出、変換、精製)
1kgのManCanの葉より、10lの70%メタノールを用いて50℃、3時間処理し抽出を行った。3時間後、混合物を濾別し、残存植物材料は熱した約4lの70%メタノールで洗浄した。洗浄に用いたものと濾別された濾液を合わせ、ロータリー・エバポレーターを用いてもとの体積の5分の1まで濃縮した。濃縮された抽出液を、沈殿物が形成されるよう冷蔵庫の中に一晩静止した。その後、混合物は攪拌され、遠心分離によりルチンが回収された。
【0093】
以前の研究に基づき、開始物質である葉1kgに含まれるルチンは、33.6gであると見積もられる。使用された酵素及び阻害剤の分量は、上記の量に基づいて算出されたものであり、また算出された値は先の実験に使用された分量の近似値となった(ナリンギナーゼ7.36g、D-Δ-グルコノラクトン6.23g、水3.5l)。
【0094】
水3.5lに沈殿したルチンを加え、さらにD-Δ-グルコノラクトン溶液をここへ加えた。混合液のpHは4であった。その後、混合液を80℃に熱し、2時間80℃に保った。その後、混合液を55℃に冷まし、ナリンギナーゼ溶液を加えた。混合液を24時間55℃に保ち、インキュベーションを行った。溶液のpHを2.5に調節し、10分間80℃に保つことでインキュベーションを停止した。混合液を室温に冷まし、pHを7に調節した。その後、混合液が沈殿を生成するよう、4℃で一晩静止した。例10に示されるように、沈殿物を遠心分離を行い回収した。
【0095】
沈殿物のペレットを、55℃のメタノールに加えて攪拌し溶解させた。この溶液を濾過し、不溶性物質を取り除いた。その後、濾液は濃縮管の内部で泡立たない程度に、可能な限り濃縮した。これに1.5lの熱湯をこれに加え、再度沈殿を生成するよう4℃で2日間静止し、その後、遠心分離を行い沈殿物を回収した。再沈殿物質を熱湯で洗浄し、さらに3度目の沈殿を行った。最終的な沈殿物を凍結乾燥し、これを終産物とした。
(関連する方法及び具体例)
ソバのフラボノイド含有量は、逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)による分析により求められた。カラムはWaters Symmetry C-18 column (3.0.x.150MM, 5 micrometer) を使用し、溶出には0.05%(体積比)トリフルオアセティック酸(TFA)を含む水:アセトニトリル・リニアグラジエントを用いた。流速は0.4ml/分とし、350nmの光ダイオードアレイ検出器(photodiode array (PDA) detector)を用いた。 フラボノイドの定量化には、ルチンの外部標準曲線(extarnal standard curve)及び購入したクエルセチンの標準値が使用された。
【0096】
バイオマス中のルチンは溶剤へと溶出させることにより抽出され、Minamiらが公開した方法に基づき(1998)HPLCにより検出された。Soxhelt 抽出器具、40mlのメタノールを用い、1gのバイオマス(100メッシュスクリーンを透過する)より70℃、60分間の条件で抽出を行った。遠心分離の後の上清は、定量測定に用いられた。
【0097】
図4に示されたように、本発明は植物バイオマスからルチン濃縮組成物を抽出、濃縮、精製する方法を供し、さらにルチン濃縮組成物をイソクエルシトリン/クエルセチン濃縮組成物へと酵素的に変換する方法A、またはイソクエルシトリン含有組成物へと変換するもう一つの方法を供するものである。本発明の方法A又は方法Bの終産物は、健康食品、栄養補助食品、薬剤、化粧品、及びその他の分野における添加物として非常に有用である。
【0098】
なお、前述の記載は発明の原理を表すことのみを目的としたものであると見なされるべきである。さらに、本発明は当該業者により様々な変更及び修正を加えることが可能である。本発明は先に示された構成や方法に限定されるものではなく、その構成及び方法に変更及び修正を加えたものも本発明の範囲に含まれるものである。
【0099】
本発明の終部分で本発明の請求が成されているが、好適な実施例とそれに伴う詳細な記述も提供されている。これらと図表により、本発明はより詳細に理解されるものであろう。なお、図表は番号などにより識別される。これらの図には下記のものが含まれる。
【0100】
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【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1A】図1Aは、ルチンの化学構造式を表す図である。
【図1B】図1Bは、イソクエルシトリンの化学構造式を表す図である。
【図1C】図1Cは、クエルセチンの化学構造式を表す図である。
【図2A】図2Aは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた解析の結果であり、ソバの葉よりのメタノール抽出物(RT:14.862=rutin, RT:20.947=quercetin)の解析結果を示す図である。
【図2B】図2Bは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた解析の結果であって、ソバの葉よりのアルコール水溶液抽出物を濃縮、冷却し得られた沈殿(RT:14.785=rutin)の解析結果を示す図である。
【図2C】図2Cは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた解析の結果であって、ナリンギナーゼを加え24時間の反応を行い、ルチンをイソクエルシトリン(RT:15.181)とクエルセチン(RT:20.372) へと変換したものの分析結果を示す図である。なお、図2A〜図2Cに関して、これらサンプルについてC-18 Symmetryカラムを用いてクロマトグラフィーが行われ、0.05%のトリフルオノアセティック酸を含む水:アセトニトリルグラジエントにより溶出が行われた。カラム処理液は、280nmで観察され、溶解物はELSDにより定量測定が行われた。
【図3A】図3Aは、ルチンサンプルのHPLC解析の結果を示した図であって、商業用ルチン(Street Chemical)(RT:14.875=rルチン, RT:15.442=イソクエルシトリン)の解析結果を示す図である。
【図3B】図3Bは、ルチンサンプルのHPLC解析の結果を示した図であって、ルチンをナリンギナーゼで処理し回収された沈殿物(RT:15.487=イソクエルシトリン, RT:20.843=クエルセチン)の解析結果を示す図である。
【図3C】図3Cは、ルチンサンプルのHPLC解析の結果を示した図であって、分離用HPLCから得られた精製済みイソクエルシトリン(RT:15.436=イソクエルシトリン)の解析結果を示す図である。なお、図3A〜図3Cに関して、これらサンプルについてC-18 Symmetryカラムを用いてクロマトグラフィーが行われ、0.05%のトリフルオノアセティック酸を含む水:アセトニトリルグラジエントにより溶出が行われた。また、カラム処理液は、280nmで観察され、溶解物はELSDにより定量測定が行われた。
【図4】図4は、本発明を実施する二つの方法を概略的に示すフローチャートである。方法Aを用いる場合、ルチンは植物バイオマスより回収され、ルチン、イソクエルシトリン、クエルセチンの混合物へと変換される。方法Bを用いる場合、イソクエルシトリンがクエルセチンへと変換されるのを防ぐためβ-D-グルコシダーゼの阻害剤が加えられる。方法Bを用いると、イソクエルシトリンの収量及び純度を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素反応に適した状態にてルチンを縣濁させた溶液を調製する工程と、
上記溶液に、ナリンギナーゼを含む酵素製剤を加える工程と、
反応過程中、上記溶液を酵素反応に適した状態に保つ工程と、
上記溶液を、酵素反応に適さない状態に変化させることにより、上記反応過程を終了させる工程と、を含み、
上記反応過程における反応時間を調節することにより、組成物中のイソクエルシトリンの割合を制御する方法により得られる、イソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項2】
さらに、上記酵素反応により、クエルセチンが濃縮された、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項3】
上記クエルセチン及びイソクエルシトリンの相対比率は、上記反応過程における反応時間を調節することにより制御される、請求項2に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項4】
上記反応過程における反応時間は、上記酵素製剤の活性により決定される、請求項2に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項5】
上記反応過程における反応時間は、1〜48時間の範囲内である、請求項2に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項6】
上記酵素反応の間の溶液の状態には、温度とpHレベルが含まれる、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項7】
上記温度は、50℃〜55℃の範囲内である、請求項6に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項8】
上記pHは、4〜8の範囲内である、請求項6に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項9】
上記溶液の状態が、酸性pHであって、かつ実質的に80℃である、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項10】
ルチン:イソクエルシトリンの重量比が、20:1以下である、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項11】
クエルセチン:イソクエルシトリンの重量比が、0.003:1以上である、請求項2に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項12】
上記方法は、上記反応過程の終了の後、さらに溶液の精製工程を含む、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項13】
上記反応過程後に行われる上記溶液の精製工程は、従来公知の生化学的精製方法を用いて行われるものである、請求項12に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物を従来公知の生化学的精製方法で処理することにより得られた、重量比で90%以上のイソクエルシトリンを含む精製イソクエルシトリン組成物。
【請求項15】
上記ルチンは、市販製品から濃縮または精製された状態で取得されたものである、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項16】
上記ルチンは、請求項53の方法により得られるものである、請求項1に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項17】
アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍、抗ウイルス性、活性酸素除去能、癌予防薬、心臓保護薬、プロテアーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質切断酵素阻害性といった生物活性的特徴を有する、請求項1の方法により得られたイソクエルシトリンを含有するイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項18】
上記組成物の生物活性的特徴が、心臓血管性疾病、糖尿病、脳卒中、毛細血管の脆弱性、動脈硬化、心的外傷、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖、タイプII疾病(type II disease)、肥満及びそれに関連する疾病、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、癌などが挙げられるがこれに限定されない疾病、健康上の問題点の治療及び緩和に用いられる、請求項17に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項19】
上記組成物が機能食品に用いられる、請求項17に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項20】
上記組成物が自然派健康製品に用いられる、請求項17に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項21】
上記組成物が栄養補助食品に用いられる、請求項17に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項22】
上記組成物が医薬に用いられる、請求項17に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項23】
上記組成物が化粧品に用いられる、請求項17に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項24】
酵素反応に適した状態にてルチンを縣濁させた溶液を調製する工程と、
上記溶液に、ナリンギナーゼを含む酵素製剤を加える工程と、
反応過程中、上記溶液を酵素反応に適した状態に保つ工程と、
上記溶液を酵素反応に適さない状態に変化させることにより、上記反応過程を終了させる工程と、を含み、
上記反応過程における反応時間を調節することにより、上記組成物中のイソクエルシトリンの割合を制御する方法により得られる、イソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項24】
上記反応過程における反応時間を調節することでイソクエルシトリンの収量を調節する、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項25】
上記反応過程における反応時間は、1〜48時間の範囲内である、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項26】
β-D-グルコシダーゼの阻害剤を溶液に加えることにより、ルチン、ケルセチン、イソクエルシトリンの比率が制御される、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項27】
上記酵素製剤が溶液に加えられる前に、上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤が溶液に加えられる、請求項26に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項28】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンの性質を有する、請求項26に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項29】
β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンである、請求項28に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項30】
上記酵素製剤は、α-L-ラムノシダーゼを含む、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項31】
上記酵素反応中の溶液の状態には、pHレベルと温度が含まれる、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項32】
上記温度は、50℃〜55℃の範囲内である、請求項31に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項33】
上記pHレベルは、4〜8の範囲内である、請求項31に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項34】
上記酵素反応中の溶液の状態には、β-D-グルコシダーゼ阻害剤を加えることが含まれる、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項35】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンの性質を有する、請求項34に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項36】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンである請求項25に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項37】
上記D-Δ-グルコノラクトンの濃度は、1mM以上である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
さらに、上記反応過程を、酵素であるα-L-ラムノシダーゼを変性させることにより終了させる工程を含む、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項39】
上記ルチンは、市販製品から濃縮または精製された形状で取得されるものである、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項40】
上記ルチンは、請求項53に記載の方法で得られるものである、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項41】
ルチン:イソクエルシトリンの重量比が20:1以下である、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項42】
クエルセチン:イソクエルシトリンの重量比が0.003:1以上である、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項43】
上記方法は、さらに、上記反応過程の終了後に、上記溶液の精製工程を含む、請求項24に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項44】
上記反応過程の終了後に行われる精製工程は、従来公知の生化学的精製方法により行われるものである、請求項43に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項45】
請求項24のイソクエルシトリン濃縮組成物を、従来公知の生化学的精製方法を行うことで得られる、重量比が少なくとも90%以上である、精製されたイソクエルシトリン組成物。
【請求項46】
アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍、抗ウイルス性、活性酸素除去能、癌予防薬、心臓保護薬、プロテアーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質切断酵素阻害性といった生物活性的特徴を有する、請求項1の方法により得られたイソクエルシトリンを含有するイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項47】
上記組成物の生物活性的特徴が、心臓血管性疾病、糖尿病、脳卒中、毛細血管の脆弱性、動脈硬化、心的外傷、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖、タイプII疾病(type II disease)、肥満及びそれに関連する疾病、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、癌などが挙げられるがこれに限定されない疾病、健康上の問題点の治療及び緩和に用いられる、請求項46に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項48】
上記組成物が機能食品に用いられる、請求項46に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項49】
上記組成物が自然派健康製品に用いられる、請求項46に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項50】
上記組成物が栄養補助食品に用いられる、請求項46に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項51】
上記組成物が医薬に用いられる、請求項46に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項52】
上記組成物が化粧品に用いられる、請求項46に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項53】
水又はアルコールを含む水溶液を用いてバイオマス中のフラボノイドを抽出する工程と、
抽出液を調製するために上記溶液を濾過する工程と、
上記抽出液を静止させ沈殿を形成させる工程と、
上記沈殿を収集及び乾燥させてルチン濃縮組成物を得る工程と、を含む、ルチンを含むバイオマスからルチン濃縮組成物を得る方法。
【請求項54】
上記フラボノイドの抽出工程は、バイオマスを断片化し水溶液中で攪拌する工程を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
さらに、上記抽出液を静止させる工程の前に、抽出液を元の体積の5分の1以下に濃縮する工程を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
上記濃縮された抽出液は、10℃以下で静止される請求項55に記載の方法。
【請求項57】
上記水溶液は水を含んでおり、温度が30℃より上の温度に保たれる、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
上記水溶液はアルコールを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
上記水溶液は20%(体積比)以上のアルコール濃度であり、残りが水である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
上記の水溶液は50〜100%(体積比)のアルコール濃度であり、残りが水である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
抽出を行う間、上記水溶液の温度は、30℃〜99℃の範囲内に保たれている、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
上記植物バイオマスは、Fargopyrum属植物由来のバイオマスを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項63】
上記バイオマスは、少なくとも、セントジョーンズワートの葉、イチョウ、アルファルファ、マルベリー、藻類、リンゴの皮、ナシの皮、タマネギの皮、アスパラガスの先端部、バラの果皮の一つを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍、抗ウイルス性、活性酸素除去能、癌予防薬、心臓保護薬、プロテアーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質切断酵素阻害性といった生物活性的特徴を有する、請求項53の方法により得られたルチンを含有するフラボノイド濃縮組成物。
【請求項65】
上記組成物の生物活性的特徴が、心臓血管性疾病、糖尿病、脳卒中、毛細血管の脆弱性、動脈硬化、心的外傷、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖、タイプII疾病(type II disease)、肥満及びそれに関連する疾病、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、癌などが挙げられるがこれに限定されない疾病、健康上の問題点の治療及び緩和に用いられる、請求項64に記載のフラボノイド濃縮組成物。
【請求項66】
上記組成物が機能食品に用いられる、請求項64に記載のフラボノイド濃縮組成物。
【請求項67】
上記組成物が自然派健康製品に用いられる、請求項64に記載のフラボノイド濃縮組成物。
【請求項68】
上記組成物が栄養補助食品に用いられる、請求項64に記載のフラボノイド濃縮組成物。
【請求項69】
上記組成物が医薬に用いられる、請求項64に記載のフラボノイド濃縮組成物。
【請求項70】
上記組成物が化粧品に用いられる、請求項64に記載のフラボノイド濃縮組成物。
【請求項71】
酵素反応に適した状態にてルチンを縣濁させた溶液を調製する工程と、
上記溶液にナリンギナーゼを含む酵素製剤を加える工程と、
反応過程中、上記溶液を酵素反応に適した状態に保つ工程と、
上記溶液を酵素反応に適さない状態に変化させることにより、上記反応過程を終了させる工程であって、上記溶液には、この段階でイソクエルシトリンが含まれている工程と、
上記反応過程における反応時間を調節することにより、上記組成物中のイソクエルシトリンの割合を制御することを特徴とする、イソクエルシトリン濃縮組成物を製造する方法。
【請求項72】
上記酵素反応の結果として、上記組成物はケルセチンをも含有する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
上記反応過程の反応時間を調節することにより、クエルセチン及びイソクエルシトリンの相対的比率を制御する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
上記反応過程における反応時間の長さは、酵素製剤の活性に応じて決定される、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
上記反応過程の反応時間は、1〜48時間の範囲内にある、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
上記酵素反応中の溶液の状態には、pHレベルと温度が含まれる、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
上記温度は、50℃〜55℃の範囲内にある、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
上記pHは、4〜8の範囲内にある、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
上記溶液の状態は、酸性pH値であって、かつ実質的に80℃である、請求項71に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項80】
ルチン:イソクエルシトリンの重量比が、20:1以下である、請求項71に記載の方法。
【請求項81】
クエルセチン:イソクエルシトリンの重量比が、0.003:1以上である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
さらに、上記反応過程の終了後に、上記溶液の精製工程を行う、請求項71に記載の方法。
【請求項83】
上記反応過程の終了後に行われる上記精製工程は、従来公知の生化学的精製方法によって行われるものである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
請求項83の方法により作られる、精製されたイソクエルシトリンである生産物。
【請求項85】
アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍、抗ウイルス性、活性酸素除去能、癌予防薬、心臓保護薬、プロテアーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質切断酵素阻害性といった生物活性的特徴を有する、請求項71の方法により得られたイソクエルシトリンを含有するイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項86】
上記組成物の生物活性的特徴は、心臓血管性疾病、糖尿病、脳卒中、毛細血管の脆弱性、動脈硬化、心的外傷、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖、タイプII疾病(type II disease)、肥満及びそれに関連する疾病、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、癌などが挙げられるがこれに限定されない疾病、健康上の問題点の治療及び緩和に用いられる、請求項85に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項87】
上記組成物が機能食品に用いられる、請求項85に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項88】
上記組成物が自然派健康製品に用いられる、請求項85に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項89】
上記組成物が栄養補助食品に用いられる、請求項85に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項90】
上記組成物が医薬に用いられる、請求項85に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項91】
上記組成物が化粧品に用いられる、請求項85に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項92】
酵素反応に適した状態にてルチンを縣濁させた溶液を調製する工程と、
上記溶液にナリンギナーゼを含む酵素製剤を加える工程と、
反応過程中、上記溶液を上記酵素反応に適した状態に保つ工程と、
上記溶液を酵素反応に適さない状態に変化させることにより、上記反応過程を終了させる工程と、
上記反応過程における反応時間を調節することにより、上記組成物中のイソクエルシトリンの割合を制御することを特徴とする、イソクエルシトリン濃縮組成物を製造する方法。
【請求項93】
上記反応過程の反応時間を調節することにより、イソクエルシトリンの収量を制御する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
上記反応過程の反応時間は、1〜48時間の範囲内にある、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
さらに、β-D-グルコシダーゼの阻害剤を溶液に加えることにより、ルチン、ケルセチン、イソクエルシトリンの相対比率を制御する工程を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
上記酵素製剤を溶液に加える前に、上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤を溶液に加える、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンの性質を有する、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンである、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
上記酵素製剤は、α-L-ラムノシダーゼを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項100】
上記酵素反応中の溶液の状態には、pHレベルと温度が含まれる、請求項92に記載の方法。
【請求項101】
上記温度は、50℃〜55℃の範囲内にある、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
上記pHレベルは、4〜8の範囲内にある、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
上記酵素反応中の溶液の状態には、β-D-グルコシダーゼ阻害剤を加えることが含まれる、請求項92に記載の方法。
【請求項104】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンの性質を有する、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
上記β-D-グルコシダーゼ阻害剤は、D-Δ-グルコノラクトンである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
上記D-Δ-グルコノラクトンの濃度は、1mMよりも大きい、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
上記反応過程は、酵素であるα-L-ラムノシダーゼを変性させることにより終了するものである、請求項92に記載の方法。
【請求項108】
ルチン:イソクエルシトリンの重量比が20:1以下である、請求項92に記載の方法。
【請求項109】
クエルセチン:イソクエルシトリンの重量比が0.003:1以上である、請求項92に記載の方法。
【請求項110】
さらに、上記反応過程の終了後に、上記溶液の精製工程を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項111】
上記反応過程の終了後に行われる精製工程は、従来公知の生化学的精製方法により行われるものである、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
請求項111の方法により作られる、精製されたイソクエルシトリンであるの生産物。
【請求項113】
アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍、抗ウイルス性、活性酸素除去能、癌予防薬、心臓保護薬、プロテアーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質切断酵素阻害性といった生物活性的特徴を有する、請求項92の方法により得られたイソクエルシトリンを含有するイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項114】
上記組成物の生物活性的特徴が、心臓血管性疾病、糖尿病、脳卒中、毛細血管の脆弱性、動脈硬化、心的外傷、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖、タイプII疾病(type II disease)、肥満及びそれに関連する疾病、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、癌などが挙げられるがこれに限定されない疾病、健康上の問題点の治療及び緩和に用いられる、請求項113に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項115】
上記組成物が機能食品に用いられる、請求項113に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項116】
上記組成物が自然派健康製品に用いられる、請求項113に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項117】
上記組成物が栄養補助食品に用いられる、請求項113に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項118】
上記組成物が医薬に用いられる、請求項113に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項119】
上記組成物が化粧品に用いられる、請求項113に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素反応に適した状態にてルチンを縣濁させた溶液を調製する工程と、
上記溶液にナリンギナーゼを含む酵素製剤を加える工程と、
反応過程中、上記溶液を酵素反応に適した状態に保つ工程と、
上記溶液を酵素反応に適さない状態に変化させることにより、上記反応過程を終了させる工程であって、上記溶液には、この段階でイソクエルシトリンが含まれている工程と、
上記反応過程における反応時間を調節することにより、上記組成物中のイソクエルシトリンの割合を制御する、イソクエルシトリン濃縮組成物を製造する方法。
【請求項2】
上記酵素反応の結果として、上記組成物中にクエルセチンをも含有させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記反応過程の反応時間を調節することにより、クエルセチン及びイソクエルシトリンの相対的比率を制御する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記反応過程における反応時間の長さは、上記酵素製剤の活性に応じて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記反応過程の反応時間は、1〜48時間の範囲内にある、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
上記酵素反応中の溶液の状態には、pHレベルと温度が含まれる、請求項1から5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
上記酵素反応中の溶液の温度は、30〜65℃の範囲内である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記pHは、4〜8の範囲内である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記反応の終了条件は、酸性pHであって、かつ実質的に80℃である、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
上記反応過程の終了後に、さらに上記溶液の精製工程を行う、請求項1から9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
上記反応過程の終了の後に行われる、上記溶液の上記精製工程は、従来公知の生化学的精製方法を用いて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
β−D−グルコシダーゼ阻害剤を上記溶液に加えることにより、ルチン、クエルセチン、イソクエルシトリンの相対比率を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記酵素製剤を上記溶液に加える前に、上記溶液に上記β−D−グルコシダーゼ阻害剤を加える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記β−D−グルコシダーゼ阻害剤は、D−Δ−グルコノラクトンの性質を有する、請求項12及び13に記載の方法。
【請求項15】
上記β−D−グルコシダーゼ阻害剤は、D−Δ−グルコノラクトンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記D−Δ−グルコノラクトンの濃度は1mM以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記酵素製剤は、α−L−ラムノシダーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
さらに、酵素α−L−ラムノシダーゼを変性させることにより、上記反応過程を終了させる工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18の何れかに記載の方法により生産される、イソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項20】
ルチン:イソクエルシトリンの重量比が20:1以下である、請求項19に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項21】
クエルセチン:イソクエルシトリンの重量比が0.003:1以上である、請求項19に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項22】
アンギオテンシン変換酵素阻害性、抗炎症性、抗腫瘍、抗ウイルス性、抗酸化性、フリーラジカル捕捉能、癌予防薬、心臓保護薬、プロテアーゼ阻害性、プロテインキナーゼC阻害性、チロシンプロテインキナーゼ阻害性、トポイソメラーゼII阻害性、タンパク質切断酵素阻害性、の少なくとも一つの生物活性的特徴を有する、イソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項23】
上記組成物の上記生物活性的特徴が、心臓血管性疾病、脳梗塞、毛細血管の脆弱性、動脈硬化、外傷性障害、酸化ストレス、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖、タイプII糖尿病、肥満、及びそれに関連する疾病、アルツハイマー病、パーキンソン病、喘息、癌、の少なくとも一つの予防に用いられる、請求項22に記載のイソクエルシトリン濃縮組成物。
【請求項24】
水又はアルコールを含む水溶液を用いてバイオマス中のフラボノイドを抽出する工程と、
抽出液を調製するために上記溶液を濾過する工程と、
上記抽出液を静止させ沈殿を形成させる工程と、
上記沈殿を収集及び乾燥させてルチン濃縮組成物を得る工程と、を含む、ルチンを含むバイオマスからルチン濃縮組成物を得る方法。
【請求項25】
上記フラボノイドの抽出工程は、バイオマスを断片化し水溶液中で攪拌する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらに、上記抽出液を静止させる工程の前に、抽出液を元の体積の5分の1以下に濃縮する工程を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
上記植物バイオマスは、Fargopyrum属植物由来のバイオマスを含む、請求項24から26の何れかに記載の方法。
【請求項28】
上記バイオマスは、セントジョーンズワートの葉、イチョウ、アルファルファ、マルベリー、藻類、リンゴの皮、ナシの皮、タマネギの皮、アスパラガスの先端部、バラの果皮、の少なくとも一つを含む、請求項24から26の何れかに記載の方法。
【請求項29】
請求項24から28の何れかに記載の方法により得られるルチンを懸濁した溶液を用いて、請求項1から18の何れかに記載の方法により生産される、イソクエルシトリン濃縮組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−502712(P2006−502712A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536743(P2004−536743)
【出願日】平成15年9月23日(2003.9.23)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001453
【国際公開番号】WO2004/027074
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505098672)
【Fターム(参考)】