説明

検出装置及び検出システム

【課題】 複数の撮影モードに対応可能な検出装置において、駆動配線と信号配線の容量を低減して、更なる高速動作性と更なる高S/N比とを両立する。
【解決手段】 変換素子120と、第1チャネル領域と第2チャネル領域とを含む半導体層131と、第1ゲート電極134と、第2ゲート電極135と、を含むトランジスタ130と、第1ゲート電極134と接続された第1駆動配線141と、第2ゲート電極135と接続された第2駆動配線141と、第1導通電圧を第1駆動配線141に供給する第1導通電圧供給部171と、第2導通電圧を第2駆動配線142に供給するための第2導通電圧供給部172と、第2駆動配線142と第1導通電圧供給部171との間の第1の接続と、第2駆動配線142と第2導通電圧供給部172との間の第2の接続と、のいずれかを選択する選択部174と、を含む検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用画像診断装置、非破壊検査装置、放射線を用いた分析装置などに応用される検出装置及び検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜半導体製造技術は、薄膜トランジスタ(以下、TFTと記す)等のスイッチ素子と光電変換素子等の変換素子とを組み合わせた画素のアレイ(画素アレイ)を有する光検出装置や放射線検出装置等の検出装置にも利用されている。特に近年では、透視撮影や一般撮影等、複数の撮影モードに対応可能な検出装置の検討がなされている。
【0003】
一般的には、透視撮影においては、検出装置には高速動作性が主に要求され、一般撮影においては、検出装置には高S/N比が主に要求されるため、複数の撮影モードに対応可能な検出装置にあっては、高速動作性と高S/N比とを両立することが要求される。特に、TFTを用いた概略レントゲンフィルムサイズの大面積な検出装置にあっては、TFTを駆動するための駆動配線やTFTからの信号を伝送する信号配線が長くなるため、駆動配線や信号配線の配線容量が大きくなる。駆動配線や信号配線の配線容量が大きくなると、駆動配線や信号配線での信号の伝送遅延が大きくなる。そのため、TFTを用いた大面積な検出装置にあっては、高速動作性は大きな課題である。また、信号配線の配線容量が大きくなると、ノイズが大きくなり、S/N比の低下が大きくなる。更に、TFTにオフ時のリーク電流が存在し、S/N比の低下が大きくなる。そのため、TFTを用いた大面積な検出装置にあっては、高S/N比の確保も大きな課題である。それにより、複数の撮影モードに対応可能でTFTを用いた大面積な検出装置にあっては、高速動作性と高S/N比とを両立することは、大きな課題である。
【0004】
特許文献1では、変換素子が接続されるTFTの上に配置された画素を有する検出装置が開示されている。これにより、画素の開口率が向上して信号量が増大することによって、S/N比の向上を図っている。また、特許文献1では、TFTとして多結晶半導体層を用いたTFTを使用している。これにより、高速動作性の向上を図っている。更に、特許文献1では、TFTとして駆動配線に共通に接続された複数のゲート電極を有するTFT、所謂マルチゲート構造のTFTを使用している。これにより、TFTのリーク電流の抑制を図っており、S/N比の向上を図っている。
【0005】
特許文献2では、動作抵抗が異なる複数のTFTと変換素子とを備える複数の画素と、複数のTFTの少なくとも1つを選択する選択部と、選択されたTFTを介して出力する信号配線とを備える検出装置が開示されている。高速動作性が要求される撮影モードにあっては、動作抵抗が低いTFTを用いて信号を信号配線に出力する。一方、高S/N比が要求される撮影モードにあっては、動作抵抗が高い、すなわち、低リークのTFTを用いて信号を信号配線に出力する。これにより、特許文献2では、複数の撮影モードに対応可能でTFTを用いた大面積な検出装置において高速動作性と高S/N比との両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−265933号公報
【特許文献2】特開2011−023426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に述べた特許文献1の検出装置では、1つの駆動配線が1行分のマルチゲート構造のTFTに共通に接続される形態となっており、駆動配線の容量が低減されず、高速動作性に対して検討の余地があった。また、信号配線の容量も低減されておらず、ノイズを抑制できないため、高S/N比の要求に対して検討の余地があった。一方、特許文献2の検出装置では、信号配線に接続されるTFTの数が多くなり、信号配線の容量が抑制されず、ノイズを抑制できないため、高S/N比の要求に対して検討の余地があった。また、駆動配線の容量に関しては、低減されておらず、検討の余地があった。
そこで本発明では、複数の撮影モードに対応可能な検出装置において、トランジスタに接続される駆動配線と信号配線の容量を低減して、更なる高速動作性と更なる高S/N比とを両立することが可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検出装置は、放射線又は光を電荷に変換する変換素子と、前記変換素子と接続された第1領域と、信号配線と接続された第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に配置された第1チャネル領域と前記第1領域と前記第1チャネル領域との間に配置された第2チャネル領域とを含む半導体層と、前記第1チャネル領域に対応した第1ゲート電極と、前記第2チャネル領域に対応して設けられた第2ゲート電極と、を有し、前記電荷に応じた電気信号を前記信号配線に出力するトランジスタと、前記第1ゲート電極と接続された第1駆動配線と、前記第2ゲート電極と接続された第2駆動配線と、前記第1チャネル領域を導通状態とする第1導通電圧を前記第1駆動配線に供給するための第1導通電圧供給部と、前記第2チャネル領域を導通状態とする前記第2導通電圧を前記第2駆動配線に供給するための第2導通電圧供給部と、前記第2駆動配線と前記第1導通電圧供給部との間の第1の接続と、前記第2駆動配線と前記第2導通電圧供給部との間の第2の接続と、のいずれかを選択する選択部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、複数の撮影モードに対応可能な検出装置において、トランジスタに接続される駆動配線と信号配線の容量の増加を抑えることができ、更なる高速動作性と更なる高S/N比とを両立した検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる検出装置の概略的等価回路及び1画素あたりの平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる検出装置の1画素あたりの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる検出装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる検出装置の1画素あたりの平面図及び断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる検出装置の概略的等価回路及び1画素あたりの平面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態にかかる検出装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明の検出装置を用いた放射線検出システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本願明細書において放射線は、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども、含まれるものとする。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、図1(a)、図1(b)、図2(a)、図2(b)を用いて本発明の第1の実施形態に係る検出装置について説明する。図1(a)は本実施形態に係る検出装置の概略的等価回路であり、図1(b)は1画素あたりの平面図である。なお、図1(b)では、簡便化の為、変換素子120については第1電極123と第2電極127のみを示している。また、図2(a)は、図1(b)のA―A’での断面図であり、図2(b)は、図1(b)のB−B’ での断面図である。
【0013】
本発明の検出装置は、画素110が絶縁性の基板100の上に行列状に複数配置された画素アレイを含む。本実施形態では、m行n列の画素アレイである。この画素110は、放射線又は光を電荷に変換する変換素子120と、変換された電荷に応じた電気信号を出力する薄膜トランジスタ(以下、TFTと示す)130と、を含む。
【0014】
本実施形態の変換素子120は、絶縁性の基板100側からこの順に設けられた、第1電極123と、第1導電型の不純物半導体層124と、真性半導体層125と、第1導電型とは逆極性の第2導電型の不純物半導体層126と、第2電極127と、を含む。変換素子120の第1電極123には、TFT130のソース及びドレインの一方となる不純物半導体領域133が、コンタクトホール121及び136において接続電極151を介して電気的に接続される。ここで、コンタクトホール136は、TFT130の半導体層131を覆う第1絶縁層137及び第1ゲート電極134と第2ゲート電極135とを覆う第2絶縁層138に設けられたものである。また、コンタクトホール121は、接続電極151及び信号配線150を覆う第3絶縁層139及び第4絶縁層122に設けられたものである。なお、変換素子120の第1電極123に接続される不純物半導体領域133が本発明の第1領域に相当する。また、変換素子111の第2電極127には、電極配線160に電気的に接続される。変換素子120及び電極配線160を覆って、第5絶縁層128及び第6絶縁層が設けられている。なお、本実施形態では、変換素子120は光を電荷に変換する光電変換素子としてPINフォトダイオードを用いているため、放射線を電荷に変換する変換素子として使用する場合には、第6絶縁層129の上にシンチレータ(不図示)が配置される。シンチレータは、放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に波長変換するものである。電極配線160は、電源部190に接続される。TFT130のソース及びドレインの他方となる不純物半導体領域133は、コンタクトホール136において信号配線150に電気的に接続される。なお、信号配線150に接続される不純物半導体領域133が本発明の第2領域に相当する。信号配線150は、行方向に複数(n本)配置され、各々が列毎に、列方向に配列された複数のTFT130のソース及びドレインの他方に共通に接続され、読出回路部180に接続される。
【0015】
本発明のTFT130は、絶縁性の基板100上に配置された半導体層131を有する。そして、半導体層131は、2つの不純物半導体領域133の間(第1領域と第2領域の間)に複数のチャネル領域132を有する。ここでは、複数のチャネル領域132のうち信号配線150と接続される不純物半導体領域133(第2領域)と最も近く配置されるものを第1チャネル領域とする。また、第1電極123と接続される不純物半導体領域133(第1領域)と第1チャネル領域との間に配置されるものを第2チャネル領域とする。なお、本実施形態では、半導体層131として、多結晶シリコン等の多結晶半導体層を用いており、半導体層131は、不純物半導体領域133も含む。そして、本発明のTFT130は、半導体層131を覆う第1絶縁層137を介して、第1チャネル領域に対応した第1ゲート電極134と、第2チャネル領域に対応した第2ゲート電極135と、を含む。すなわち、本発明のTFT130はマルチゲート構造のTFTである。このようなマルチゲート構造のTFTを用いることにより、シングルゲート構造のTFTに比べて、TFTの見かけ上のチャネル長Lを大きくでき、また各チャネル領域にかかる電圧が低減され、オフ時のリーク電流を低減できる。また、マルチゲート構造とし、信号配線との接続を1箇所としたため、特許文献2の構成に比べて、信号配線の容量を低減でき、ノイズを抑制できる。
【0016】
本発明の検出装置の駆動配線140は、第1ゲート電極134と接続する第1駆動配線141と、第2ゲート電極135と接続する第2駆動配線142と、を含む。第1駆動配線141は、行方向の複数の画素110のTFT130の第1ゲート電極134と共通に接続され、列方向に複数(m本)配置される。第2駆動配線141は、行方向の複数の画素110のTFT130の第2ゲート電極135と共通に接続され、列方向に複数(m本)配置される。このような構成により、特許文献1の構成に比べて第1駆動配線141及び第2駆動配線142の容量が低減され、駆動配線により信号遅延に起因する高速動作性の低減を抑制できる。
【0017】
本発明の検出装置は、駆動回路部170を有する。この駆動回路部170は、第1駆動配線141を介して第1ゲート電極134に第1チャネル領域を導通状態とする第1導通電圧と、第1チャネル領域を非導通状態とする非導通電圧と、を含む第1駆動信号を供給する第1導通電圧供給部171を含む。また、駆動回路部170は、第2駆動配線142を介して第2ゲート電極135に第2チャネル領域を導通状態とする第2導通電圧を含む第2駆動信号を供給する第2導通電圧供給部172を含む。ここで、駆動回路部170は、各第2駆動配線142と対をなして設けられた複数のスイッチ173を含む選択部174を更に有している。スイッチ173は、第2駆動配線142と第1導通電圧供給部171との間の第1の接続と、第2駆動配線142と第2導通電圧供給部172との間の第2の接続と、のいずれかを選択する。制御部175は、選択部174が複数の撮影モードに応じて第1の接続と第2の接続のいずれかを選択するように、選択部174を制御するものである。
【0018】
スイッチ素子173が第2の接続を選択した場合、第1ゲート電極134に対する第1導通電圧供給部171による第1導通電圧の供給と、第2ゲート電極135に対する第2導通電圧供給部172による第2導通電圧の供給と、を異なるタイミングで行える。特に、第2導通電圧供給部172が第2導通電圧を供給している期間に、第1導通電圧供給部171が第1導通電圧の供給を開始することによって、画素から電気信号を出力する際の時定数に係るTFT130の容量が、第2チャネル領域に係る分だけ低減する。それにより、高速動作性がより向上する。また、第1チャネル領域の導通が開始される前にあっては、第2チャネル領域が導通状態であっても信号配線150の容量に付加されることがないため、信号配線150の容量は増大せず、高S/N化が達成される。ただし、第1導通電圧供給部171が非導通電圧を供給しているときに第2導通電圧供給部172が第2導通電圧を供給することで、第2チャネル領域の分だけ実質的なチャネル長が低減する。それにより、リーク電流の抑制に対しては、画素アレイ全体の電気信号を出力するために必要な時間(以下、1フレーム時間と称する)が長くなると好ましくない。そのため、1フレーム時間が0.015〜0.03秒と比較的短い動作モード、例えば透視撮影等の動画撮影モードでは、リーク電流は問題とならない。つまり、複数の撮影モードが第1撮影モードと第2撮影モードを含んでおり、第2撮影モードが第1撮影モードよりもTFT130に要求される動作速度が高い場合、第2撮影モードでは第2の接続が選択されることが望ましい。ここでは、透視撮影等の動画撮影モードが第2撮影モードに相当する。
【0019】
一方、スイッチ素子173が第1の接続を選択した場合、第1ゲート電極134と第2ゲート電極135には第1導通電圧供給部171から同じタイミングで第1導通電圧が供給されることとなる。これにより、第2の接続を選択した場合に比べ、高速動作性は劣るが、非導通電圧が供給されているときのリーク電流の抑制は向上する。そのため、特に、1フレーム時間が0.3〜1.0秒を要する比較的長い動作モード、例えば一般撮影(静止画撮影)モードに対して第1の接続を選択することは、好ましい。つまり、複数の撮影モードが第1撮影モードと第2撮影モードを含んでおり、第2撮影モードが第1撮影モードよりもTFT130に要求される動作速度が高い場合、第1撮影モードでは第1の接続が選択されることが望ましい。ここでは、一般撮影(静止画撮影)モードが第1撮影モードに相当する。
【0020】
ここで、本実施形態では、放射線を光に変換するシンチレータと、変換素子120としてその光を電荷に変換するPIN型フォトダイオードと、を含む間接型変換素子を用いたが、本発明はそれに限定されるものではない。PIN型フォトダイオードに替えてMIS型光電変換素子を用いてもよい。また、変換素子120として、放射線を直接電荷に変換する直接型変換素子を用いてもよい。また、TFT130として、トップゲート構造の多結晶シリコンTFTを用いたが、本発明はそれに限定されるものではない。非晶質シリコンTFTや酸化物半導体を用いた酸化物TFT、有機半導体を用いた有機TFTも用いることができる。ただし、より高速動作性が要求される場合には、多結晶シリコンTFT、酸化物TFT、有機TFTのいずれかがより好ましい。また、半導体層が第1チャネル領域と第2チャネル領域とを含むトランジスタを用いたが、本発明はそれに限定されるものではなく、第1チャネル領域を含む半導体層とは別に第2チャネル領域を含む半導体層を有して構成してもよい。
【0021】
次に、図3のタイミングチャートを用いて、図1(a)及び図1(b)に示す検出装置の動作を説明する。なお、ここでは第1導通電圧と第2導通電圧は同じ導通電圧値Vonと同じ非導通電圧値Voffを有するものとして説明する。
【0022】
まず、透視撮影モード(動画撮影モード)が選択された場合に、制御部175は、選択部174のスイッチ173が第2の接続を選択するように、選択部174に制御信号を供給する。これにより選択部174のスイッチ173は第2の接続を選択し、第2導通電圧供給部172から第2駆動配線142への第2導通電圧の供給が開始される。それにより各第2駆動配線142の電位Vg12,Vg22,・・・,Vgm2が第2導通電圧Vonとなり、各TFT130の第2チャネル領域が導通状態となる。以上が第1の工程である。
【0023】
次に、放射線が検出装置に所定期間照射され、各画素には照射された放射線に応じて発生した電荷に応じた電気信号が蓄積される。そして、第1導通電圧供給部171から各第1駆動配線141に第1導通電圧Vonが順次に供給される。それにより各第1駆動配線141の電位Vg11,Vg21,・・・,Vgm1が第1導通電圧Vonとなり、各TFT130の第1チャネル領域が行単位で順次に導通状態となる。それにより、画素110に蓄積された電気信号が行単位の画素110からの並列な電気信号として信号配線150を介して読出回路部180に行単位で順次に出力される。以上が第2の工程である。この第2の工程では、本実施形態においては、第2導通電圧供給部172から第2駆動配線142への第2導通電圧の供給が透視撮影モード(動画撮影モード)中維持されている。透視撮影モード(動画撮影モード)では、この第2の工程が複数回繰り返し行われる。
【0024】
次に、一般撮影モード(静止画撮影モード)が選択された場合に、制御部175は、選択部174のスイッチ173が第1の接続を選択するように、選択部174に制御信号を供給する。これにより選択部174のスイッチ173は第1の接続を選択する。それにより各第2駆動配線142の電位Vg12,Vg22,・・・,Vgm2は、第1導通電圧供給部171から供給される非導通電圧Voffとなり、各TFT130の第2チャネル領域が非導通状態となる。以上が第3の工程である。
【0025】
そして、放射線が検出装置に所定期間照射され、各画素には照射された放射線に応じて発生した電荷に応じた電気信号が蓄積される。そして、第1導通電圧供給部171から第1駆動配線141及び第2駆動配線142の一組毎に第1導通電圧Vonが順次に供給される。それによりまず1行目の第1駆動配線141の電位Vg11と第2駆動配線142の電位Vg12とが第1導通電圧Vonとなり、1行目のTFT130の第1チャネル領域及び第2チャネル領域が共に導通状態となる。それにより、1行目の画素110に蓄積された電気信号が並列な電気信号として信号配線150を介して読出回路部180に出力される。この動作が2行目、3行目と行単位で順次行われ、画素アレイ全体の電気信号が出力される。以上が第4の工程である。
【0026】
なお、本実施形態において、第1導通電圧供給部171から供給される導通電圧と、第2導通電圧供給部171から供給される導通電圧とは、同じ電圧値であるものとして説明した。しかしながら本発明はそれに限定されるものではなく、例えば各撮影モードや各導通電圧供給部で夫々異なる電圧値のものでもよく、各チャネル領域の容量値にあった電圧値の導通電圧が適宜供給されることが好ましい。
【0027】
また、本実施形態において、第2導通電圧供給部172は各スイッチ173に共通に接続され、所定の第2導通電圧を供給するものとして説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。第2導通電圧供給部172として、第1導電電圧供給部171と同様にシフトレジスタ等のように各第2駆動配線142に個別に第2導通電圧を供給できる構成であってもよい。そのような構成であっても、選択部174によって第2の接続が選択された場合、第1駆動配線141に第1導通電圧が供給される際には第2駆動配線142には既に第2導通電圧が供給されている必要がある。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、図4(a),(b)を用いて本発明の第2の実施形態に係る検出装置について説明する。図4(a)は1画素あたりの平面図であり、図4(b)は図4(a)のC−C’ での断面図である。なお、第1の実施形態で説明したものと同じものは同じ番号を付与し、詳細な説明は割愛する。本実施形態のTFT130は、第1の実施形態のTFT130と比べて以下の点で相違する。
【0029】
まず、第1ゲート電極134の幅が第2ゲート電極135の幅に比べて狭く設けられている。それにより、第1チャネル領域のチャネル長が第2チャネル領域のチャネル長に比べて短くなっている。これにより、第1ゲート電極134の容量が第2ゲート電極135の容量より小さくなっており、それにより第1駆動配線141の容量が第2駆動配線142の容量に比べて小さくなっている。そのため、選択部174によって第2の接続が選択された撮影モードにおいて、より高速動作性が向上する。また、第1チャネル領域の容量を小さくすることにより、選択部174によって第2の接続が選択された撮影モードにおいて、信号配線150の容量が低減され、S/N比がより向上する。
【0030】
次に、第1チャネル領域のチャネル幅が第2チャネル領域のチャネル幅に比べて短くなっている。これにより、第1ゲート電極134及び第1チャネル領域の容量がそれぞれより小さくなり、選択部174によって第2の接続が選択された撮影モードにおいて、高速動作性とS/N比がより向上する。
【0031】
また、第2ゲート電極135が複数設けられており(本実施形態では2本)、それにより第2チャネル領域も複数となる(本実施形態では2箇所)。このような構成により、第2チャネル領域がひとつのものに比べて、複数のうちの一つの第2チャネル領域にかかる電圧が低減され、リーク電流が低減される。そのため、選択部174によって第1の接続が選択された撮影モードにおいて、リーク電流がより低減されてS/N比がより向上する。
【0032】
更に、第1駆動配線141及び第2駆動配線142は、信号配線150と交差する領域において、配線幅が他の領域の配線幅に比べて細く(狭く)なっている。それにより、各駆動配線の容量及び信号配線150の容量がそれぞれ低減され、高速動作性とS/N比がより向上する。
【0033】
(第3の実施形態)
次に、図5(a),(b)を用いて本発明の第2の実施形態に係る検出装置について説明する。図5(a)は本実施形態に係る検出装置の概略的等価回路であり、図5(b)は1画素あたりの平面図である。なお、第2の実施形態で説明したものと同じものは同じ番号を付与し、詳細な説明は割愛する。本実施形態の検出装置は、第1の実施形態の検出装置と比べて以下の点で相違する。
【0034】
まず、画素110に比べて、画素510は、変換素子120を初期化するための初期化用の薄膜トランジスタ(TFT)520を更に含む。この初期化用のTFT520のソース及びドレインの一方となる不純物半導体領域523が、TFT130のコンタクトホール121及び526において接続電極541を介して、変換素子120の第1電極123に電気的に接続される。ここで、コンタクトホール526は、第1絶縁層137及び第2絶縁層138に設けられたものである。なお、変換素子120の第1電極123に接続される不純物半導体領域523が本発明の第3領域に相当する。初期化用のTFT520のソース及びドレインの他方となる不純物半導体領域523は、コンタクトホール526において初期化用の電源配線540に電気的に接続される。なお、初期化用の電源配線540に接続される不純物半導体領域523が本発明の第4領域に相当する。初期化用の電源配線540は、電源部190に接続される。なお、本実施形態では、電源部190は、読出回路部180が信号配線150に与える電位と同じ電位を初期化用の電源配線540に与えており、初期化用のTFT520はTFT130で出力されきれずに変換素子120に残留した電荷を出力する機能を有する。
【0035】
また、初期化用のTFT520は、絶縁性の基板100上に配置された半導体層521を有する。そして、半導体層521は、2つの不純物半導体領域523の間(第3領域と第4領域の間)に複数のチャネル領域522を有する。ここでは、複数のチャネル領域522のうち電源配線540と接続される不純物半導体領域523(第4領域)と最も近く配置されるものを第3チャネル領域とする。また、第1電極123と接続される不純物半導体領域523(第3領域)との間に配置されるものを第4チャネル領域とする。なお、本実施形態では、半導体層521として、TFT130と同様に多結晶シリコン等の多結晶半導体層を用いており、半導体層521は、不純物半導体領域523も含む。そして、初期化用のTFT520は、半導体層521を覆う第1絶縁層137を介して、第3チャネル領域に対応した第3ゲート電極524と、第4チャネル領域に対応した第4ゲート電極525と、を含む。すなわち、初期化用のTFT520はマルチゲート構造のTFTである。このようなマルチゲート構造のTFTを用いることにより、シングルゲート構造のTFTに比べて、TFTの見かけ上のチャネル長Lを大きくでき、オフ時のリーク電流を低減できる。第3ゲート電極524は初期化用の駆動配線530と接続され、初期化用の駆動配線530は、初期化用の駆動回路部550と接続される。初期化用の駆動配線530は、行方向の複数の画素110のTFT520の第3ゲート電極524と共通に接続され、列方向に複数(m本)配置される。初期化用の駆動回路部550は、初期化用の駆動配線530を介して第1ゲート電極524に第3チャネル領域を導通状態とする第3導通電圧を供給する。一方、第4ゲート電極525は第2駆動配線141と接続される。
【0036】
また、第3ゲート電極524の幅が第4ゲート電極525の幅に比べて狭く形成されている。それにより、第3チャネル領域のチャネル長が第3チャネル領域のチャネル長に比べて短くなっている。これにより、第3ゲート電極524の容量が第4ゲート電極525の容量より小さくなっており、それにより初期化用の駆動配線540の容量が第2駆動配線142の容量に比べて小さくなっている。そのため、選択部174によって第2の接続が選択された撮影モードにおいて、初期化用のTFT520の高速動作性がより向上する。
【0037】
更に、第3ゲート電極524が複数設けられており(本実施形態では2本)、それにより第3チャネル領域も複数となる(本実施形態では2箇所)。このような構成により、第3チャネル領域がひとつのものに比べて、複数のうちの一つの第3チャネル領域にかかる電圧が抑制され、リーク電流が抑制される。そのため、選択部174によって第2の接続が選択された撮影モードにおいて、初期化用のTFT520のリーク電流がより低減されてS/N比がより向上する。このリーク電流低減の効果は、初期化用電圧と読み出し時の変換素子の電圧の差が大きいほど高くなる。
【0038】
次に、図6のタイミングチャートを用いて、図5(a)及び図5(b)に示す検出装置の動作を説明する。なお、ここでは第1導通電圧と第2導通電圧と第3導通電圧は同じ導通電圧値Vonと同じ非導通電圧値Voffを有するものとして説明する。
【0039】
まず、透視撮影モード(動画撮影モード)が選択された場合に、制御部175は、選択部174のスイッチ173が第2の接続を選択するように、選択部174に制御信号を供給する。これにより選択部174のスイッチ173は第2の接続を選択し、第2導通電圧供給部172から第2駆動配線142への第2導通電圧の供給が開始される。それにより各第2駆動配線142の電位Vg12,Vg22,・・・,Vgm2が第2導通電圧Vonとなり、各TFT130の第2チャネル領域及び各TFT540の第4チャネル領域が導通状態となる。以上が第1の工程である。
【0040】
次に、放射線が検出装置に所定期間照射され、各画素には照射された放射線に応じて発生した電荷に応じた電気信号が蓄積される。そして、第1導通電圧供給部171からまず1行目の第1駆動配線141に第1導通電圧Vonが供給される。それにより1行目の第1駆動配線141の電位Vg11が第1導通電圧Vonとなり、1行目のTFT130の第1チャネル領域が行単位で導通状態となる。次に、初期化用の駆動回路部550から1行目の第3駆動配線530に第2導通電圧Vonが供給される。それにより1行目の第3駆動配線530の電位Vg13が第3導通電圧Vonとなり、1行目のTFT520の第3チャネル領域が行単位で導通状態となり、変換素子120がTFT520により初期化される。この動作を2〜m行目に対しても同様に行い、それにより、画素110に蓄積された電気信号が行単位の画素110からの並列な電気信号として信号配線150を介して読出回路部180に行単位で順次に出力される。以上が第2の工程である。この第2の工程では、本実施形態においては、第2導通電圧供給部172から第2駆動配線142への第2導通電圧の供給が透視撮影(動画撮影)モード中維持されている。透視撮影モード(動画撮影モード)では、この第2の工程が複数回繰り返し行われる。
【0041】
次に、一般撮影モード(静止画撮影モード)が選択された場合に、制御部175は、選択部174のスイッチ173が第1の接続を選択するように、選択部174に制御信号を供給する。これにより選択部174のスイッチ173は第1の接続を選択する。それにより各第2駆動配線142の電位Vg12,Vg22,・・・,Vgm2は、第1導通電圧供給部171から供給される非導通電圧Voffとなり、各TFT130の第2チャネル領域及び各TFT520の第4チャネル領域が非導通状態となる。以上が第3の工程である。
【0042】
そして、放射線が検出装置に所定期間照射され、各画素には照射された放射線に応じて発生した電荷に応じた電気信号が蓄積される。そして、第1導通電圧供給部171から第1駆動配線141及び第2駆動配線142の一組毎に第1導通電圧Vonが順次に供給される。それによりまず1行目の第1駆動配線141の電位Vg11と第2駆動配線142の電位Vg12とが第1導通電圧Vonとなり、1行目のTFT130の第1チャネル領域及び第2チャネル領域が共に導通状態となる。それにより、1行目の画素110に蓄積された電気信号が並列な電気信号として信号配線150を介して読出回路部180に出力される。この際、TFT540の第4チャネル領域も導通状態となっている。次に、1行目の第1駆動配線141の電位Vg11と第2駆動配線142の電位Vg12とが第1導通電圧Vonの間に、初期化用の駆動回路部550から1行目の第3駆動配線530に第2導通電圧Vonが供給される。それにより1行目の第3駆動配線530の電位Vg13が第3導通電圧Vonとなり、1行目のTFT520の第3チャネル領域も行単位で導通状態となり、変換素子120がTFT520により初期化される。第この動作が2行目、3行目と行単位で順次行われ、画素アレイ全体の電気信号が出力される。以上が第4の工程である。
【0043】
なお、本実施形態において、初期化用のTFT520として、トップゲート構造の多結晶シリコンTFTを用いたが、本発明はそれに限定されるものではない。非晶質シリコンTFTや酸化物半導体を用いた酸化物TFT、有機半導体を用いた有機TFTも用いることができる。ただし、TFT130と同じ構成にすることがより好ましい。
【0044】
(応用実施形態)
次に、図7を用いて、本発明の検出装置を用いた放射線検出システムを説明する。
【0045】
放射線源であるX線チューブ6050で発生したX線6060は、患者あるいは被験者6061の胸部6062を透過し、放射線検出装置6040に含まれる変換部3の各変換素子12に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応して変換部3で放射線を電荷に変換して、電気的情報を得る。この情報はデジタルデータに変換され信号処理手段となるイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室の表示手段となるディスプレイ6080で観察できる。
【0046】
また、この情報は電話回線6090等の伝送処理手段により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなど表示手段となるディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の記録手段に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。また記録手段となるフィルムプロセッサ6100により記録媒体となるフィルム6110に記録することもできる。
【符号の説明】
【0047】
100 絶縁性の基板
110 画素
120 変換素子
130 薄膜トランジスタ(TFT)
131 半導体層
132 チャネル領域
133 不純物半導体領域
134 第1ゲート電極
135 第2ゲート電極
141 第1駆動配線
142 第2駆動配線
150 信号配線
160 電極配線
170 駆動回路部
171 第1導通電圧供給部
172 第2導通電圧供給部
173 スイッチ
174 選択部
175 制御部
180 読出回路部
190 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線又は光を電荷に変換する変換素子と、
前記変換素子と接続された第1領域と、信号配線と接続された第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の間に配置された第1チャネル領域と、前記第1領域と前記第1チャネル領域との間に配置された第2チャネル領域と、前記第1チャネル領域に対応した第1ゲート電極と、前記第2チャネル領域に対応して設けられた第2ゲート電極と、を有し、前記電荷に応じた電気信号を前記信号配線に出力するトランジスタと、
前記第1ゲート電極と接続された第1駆動配線と、
前記第2ゲート電極と接続された第2駆動配線と、
前記第1チャネル領域を導通状態とする第1導通電圧を前記第1駆動配線に供給するための第1導通電圧供給部と、
前記第2チャネル領域を導通状態とする前記第2導通電圧を前記第2駆動配線に供給するための第2導通電圧供給部と、
前記第2駆動配線と前記第1導通電圧供給部との間の第1の接続と、前記第2駆動配線と前記第2導通電圧供給部との間の第2の接続と、のいずれかを選択する選択部と、
を含む検出装置。
【請求項2】
前記選択部を制御する制御部を更に有し、
前記制御部は、複数の撮影モードのうち第1撮影モードでは前記選択部が前記第2の接続を選択し、複数の撮影モードのうち前記第1撮影モードよりも前記トランジスタに要求される動作速度が高い前記第2撮影モードでは前記選択部が前記第1の接続を選択するように、前記選択部を制御することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記第2撮影モードにおいて、前記第2導通電圧供給部によって前記第2ゲート電極に第2導通電圧が供給されている状態で、前記第1導通電圧供給部が前記第1ゲート電極に前記第1導通電圧を供給する請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記第1ゲート電極の幅は、前記第2ゲート電極の幅より狭く、前記第1チャネル領域のチャネル長は前記第2チャネル領域のチャネル長に比べて短いことを特徴とする請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記第2ゲート電極が複数設けられており、前記第2チャネル領域が複数設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記変換素子と前記トランジスタとを含む画素が、基板の上に行列状に複数配置されており、
前記変換素子は前記基板の上に配置されており、
前記トランジスタは前記基板と前記変換素子との間に配置された薄膜トランジスタであり、
前記薄膜トランジスタは、前記第1チャネル領域と前記第2チャネル領域と前記第1領域と前記第2領域とを含む半導体層を含み、前記半導体層は多結晶半導体層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記画素は、前記変換素子を初期化するために変換素子及び電源配線と接続された初期化用の薄膜トランジスタを更に含み、
前記初期化用の薄膜トランジスタは、前記変換素子と接続された第3領域と前記電源配線と接続された第4領域との間に配置された第3チャネル領域と、前記第3領域と前記第3チャネル領域との間に配置された第4チャネル領域と、を含む半導体層と、前記第3チャネル領域に対応した第3ゲート電極と、前記第4チャネル領域に対応して設けられた第4ゲート電極と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記第3ゲート電極の幅は、前記第4ゲート電極の幅より狭いことを特徴とする請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記第3ゲート電極が複数設けられており、前記第3チャネル領域が複数設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の検出装置と、
前記検出装置からの信号を処理する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの信号を記録するための記録手段と、
前記信号処理手段からの信号を表示するための表示手段と、
前記信号処理手段からの信号を伝送するための伝送処理手段と、
を具備する検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−69864(P2013−69864A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207348(P2011−207348)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】