説明

検査テープと分析装置

【課題】連続した担持薄片(20)上の長さ方向に互いに離間して設けられた複数の検査領域(14)を、順次正確な使用位置に配置する。
【解決手段】この発明は、可撓性担持テープ(20)と、体液中の分析物を検出するためにその上に離間して配置された複数の検査領域(14)を有する体液分析用の検査テープに関する。検査領域を迅速かつ正確に配置するために、担持テープ(20)にテープ送り中の距離を記録するための標識領域(12)を設けることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の担持テープと、体液中の分析物を検出するためにその上に離間して配置された複数の検査領域を有する体液を分析するための検査テープに関する。この発明は、また、該検査テープを分析するための分析装置に関する。
【0002】
そのような検査テープは、自動的に作動し、また、必要な分析を素人の手で簡単迅速に行うことができる携帯型装置を用いて、血液や尿などの体液に含まれる成分を検出するために使用しうる。従来技術による個別の検査片に替えて、巻取られた検査テープには、適切な検査用薬剤が塗布された複数の検査領域が連続的に配置されている。後で、たとえば光学的分析器によって検査を行うために、テープを繰り出すことによって使用位置に配置された検査領域に体液が塗られる。検査領域を測定部位または塗布部位に配置する際、摩擦、巻取りスプールに形成されたテープ・ロールの直径の増大、およびその果である速力の変化によってテープ送り経路に発生する機械的負荷モーメントの変動がその精度に対していかなる影響も与えるべきではない。この目的のために、軸に装着された位置信号発信器または軸に連結された機械要素を有する位置決め駆動装置を用いる場合、構成要素の機械的誤差、テープ・ロールの直径の変動、およびテープの滑りが、所望の目標位置からのずれを発生させうる。
【背景技術】
【0003】
この出願人による独国特許第10343896号明細書には、とりわけ使用者への情報または機器の特殊機能のための種々の機能領域を検査領域に隣接して配置した検査テープが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなことから、この発明は、先行技術をさらに改良して、一般的な製品の、特に位置決め精度という機能を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求の範囲の独立請求項に記載された特徴を組み合わせることによって達成できると提言する。この発明による有利な実施形態とさらなる発展例は、従属請求項から得られる。
【0006】
この発明は、配置される物体の上で距離測定または位置判定を直接行うことができるようにするという思想を基礎にしている。したがって、この発明では、テープ送り中の距離を記録するまたは位置を検出するための標識領域を担持テープに設けることを提案する。そのようにすることによって、テープ駆動装置から独立して配置された検査領域と付加機能部の位置を直接判定することによって、迅速かつ正確な位置決めが可能になる。これにより、検査領域の長さを小さくして、検査テープに設けられる隙間の間隔を低減することができる。また、正確な塗布と正確な位置判定ができるために、塗布する体液の量を低減することができる。テープ製造時に、切断や接着のような製造工程を正確に実行できることによる利点もある。
【0007】
標識領域の各々を、テープ全体にわたり、テープの長さ方向において連続した検査領域間に延在させるとともに、検査領域を含む部分には標識領域を設けないようにする方が有利である。しかし、標識領域をテープに沿って、たとえば裏面または縁に沿って、連続して配置することも、理論的には可能である。
【0008】
また、接触せずに標識領域の位置検出ができるように構成する方が有利である。好ましい実施形態によると、検査領域は、位置制御式テープ送り装置によって連続的に使用位置に配置される。
【0009】
別の有利な実施形態において、標識領域は、加算的に走査可能な距離計測器を形成している。この距離計は、好ましくは明るい部分と暗い部分が交互に配置されたラスター帯片によって標識領域を構成することによって簡単に形成することが可能である。さらに別の好ましい実施形態においては、交互に配置された明るい部分と暗い部分は、金属によって形成されている。これらは、電気的または磁気的に走査できる。
【0010】
また、テープ送り中にその送り方向に関する情報を取得するために、標識領域を互いに平行な二条のラスター帯片によって構成するとともに、テープの長さ方向に互いに部分的にずらして配置することによって、送り方向によって決まる位相ずれを用いて走査できるようにする方が有利である。
【0011】
標識領域を、絶対値によってコード化された、たとえばグレー・コード、によって距離計測器に構成することも想定できる。
【0012】
検査テープは、未使用テープ供給部分と使用済みテープ廃棄部分としてテープ・カセットに収容する方が有利である。
【0013】
この発明は、また、体液中の分析物を検出するための検査領域が設けられた検査テープ、検査領域を配置するためのテープ送り装置、およびテープ送り中の距離を記録するために検査テープ上に配置された標識領域を含む位置検出装置を有する分析装置に関する。
【0014】
駆動装置を最も効果的に制御できるようにするために、位置検出装置が、送りの方向と送り距離を送り中の検査テープ上で直接検出する方が有利である。
【0015】
別の好ましい実施形態においては、位置検出装置が、検査領域を走査する計測ユニットからテープ沿いに予め決められた距離だけ離間した位置に配置されている。
【0016】
自己同期して読み取るためには、位置検出装置が、検査テープの横に配置され、テープ送り中に好ましくは非接触の方法で標識領域を走査するセンサ手段を有する方が有利である。
【0017】
とりわけ好ましい実施形態においては、テープ送り装置が、位置検出装置に接続されて、検査テープを予め決められた目標位置に送るための駆動制御装置を有する。これにより、目標位置への迅速かつ正確な送りが可能になり、使用者の待ち時間も低減することができる。
【0018】
さらに、強い制動機能を働かせるために、テープ送り装置が、位置検出装置の出力信号に応じて、テープ送り方向とは逆の方向に動作することができる駆動ユニットを有する方が有利である。テープ送りは、駆動ユニットに逆電圧を短時間印加する、即ち電圧が好適なレベルになったときに電圧を逆にする、ことによって停止するまで、積極的に、そして、強力に制動される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に概略を示した例示としての実施形態に基づき、この発明についてさらに説明する。
【0020】
図1に示す分析装置は、距離標識領域12と検査領域14が設けられた検査テープ10、検査領域14を使用位置に継続して配置するためのテープ送り装置16、およびテープの瞬間位置を検出してテープ送り装置16を動作させるために標識領域12を走査する位置検出・距離記録装置18を有する。
【0021】
図1に示したように、検査テープ10は、テープの送り方向に離間して配置された複数の検査領域14を担持する連続した担持薄片20を有する。検査領域14には、塗布された体液中の成分つまり分析物を検出するための固形の試薬が配置されている。とりわけ塗布された流動性血液の血糖を検出することを想定している。
【0022】
標識領域12は、テープの送り方向の検査領域14と検査領域14のあいだにあるテープ部の担持薄片20に設けられている。例示した実施形態においては、テープに沿って互いにずれている二条の平行したラスター帯片22を備える。ラスター帯片は、互い違いの明るい透明部24と暗い部分26を有し、詳細は後述するが、互いが位相ずれを有する走査可能距離計を構成している。
【0023】
位置検出装置18は、光電子光学式のセンサ30とその入力側において情報交換を行う信号処理部28を有する。検査テープ10の横の位置に配置されたセンサ30は、それぞれ配置されたラスター帯片22を光のバリアのようにして走査して、テープ送り中に間欠的な電気的インパルスを信号処理部28の計数器に送り出す。帯片が変位しているために、計数用のインパルスは、90°の位相ずれを持って記録されるとともに、送られた距離に加えて送り方向もテープ10から直接記録される。
【0024】
テープ送り装置16は、検査テープ10の位置決め用駆動装置36を動作させるための補正要素34を備えた制御部32を有する。比較器38は、既定距離装置40と位置検出装置18の出力値の差を制御部32に入力するために用いられる。これにより、検査領域14を意図した測定位置に迅速かつ正確に配置することが可能になる。
【0025】
テープ送り中にセンサ30の横を通過する明るい透明部24と暗い部分26の移動に基づいて位置が検出または記録されるために、結果として信号端部が記録装置18によって記録される。帯片22の明るい透明部24と暗い部分26は、テープの長さ方向に一定の長さ、つまり予め決められた間隔、を有する。信号処理部28の計数器が、この信号端部の頻度を加算する。したがって、この計数値が、テープ10の移動距離に直接比例することになる。
【0026】
既定距離装置40は、比較器38に予め設定された計数値を時系列的に送り出す。比較器において、予め設定された計数値と信号処理部28から出力された計数値の差を算出する。制御部32は、この差に基づいて駆動装置を動作させることができる。
【0027】
担持薄片20は、テープの一定の送り距離だけラスター帯片22を設けることなく、たとえば白色に印刷することもできる。暗い部分26が最初に現われる前にテープ10のこの白色領域がセンサ30の横を通過した場合、この位置が絶対的な開始位置としての基準点になり、装置18に入力されるとともに、その位置から上述した加算が開始される。
【0028】
図2は、このような検査テープを組み込んだ携帯式分析装置であるカセット装置42を示す。テープ・カセット10は、未使用の検査テープ用の供給スプール46と、使用済み検査テープ用の駆動装置36付き巻取り・廃棄スプール48を有する。試料としての液体(血液)は、屈曲した先端部50の検査領域に塗布される。分析物(グルコース)は、計測ユニット52を用いて反射式測光法によって検出される。計測ユニット52は、光案内路として設計されている先端部50を介し、透明担持薄片20を通して使用位置に配置された活性を有する検査領域14に光学的に連結されている。検査領域14は、テープを適切に送ることによって継続して使用位置に配置される。このようにして、患者は、使用済み部を交換する必要なしに、自己管理のための検査を複数回実行することができる。
【0029】
測定位置である案内路先端部50に配置された検査領域14の位置は、そこから所定の大きさだけ変位、すなわち偏位して離れた位置に配置される位置検出装置18によって判定される。テープ10が送られて予め決められた件数の明るい透明部24と暗い部分26の通過が記録されたとき、活性化されている検査領域14が、位置検出装置18の偏位距離を考慮に入れた上で光学式計測ユニット52上方の目標位置に配置される。偏位した位置に配置することによって、(遮光ができないという)光学上の、また、(先端部50領域の大きさが制限されているという)機構上の重要領域の課題を解決することができる。さらに、位置検出装置18は、検査領域14を用いて検査しているあいだにもテープ10の位置を監視することができる。
【0030】
テープ送りは、可撓性担持テープ20に張力が加えられたときにだけ、即ち、図2に示した実施形態においては、巻取りスプール48を時計回りに回転させたときに行われる。しかし、受承位置に到達する前に速やかに制動するため、スプール駆動装置36には、逆方向の駆動モーメント、即ち大きい制動モーメント、が短時間掛けられる。これは、制御装置32,34によって逆電圧を制御して印加することによって達成可能であり、この場合、供給スプール46側のばねが装着されたテープ・テンショナ54が、必要な逆方向の張力をテープに確実に掛ける。距離標識領域12を利用して、位置検出装置18は、また、逆方向の過度な駆動モーメントによるテープ送り方向の逆転を検出し、行き過ぎることなく目標位置に配置されるよう遅延なく駆動装置のスイッチを遮断する。また、目標位置を通過した場合、基本的にはテープを必要な長さだけ後退させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】距離標識領域が設けられた検査テープを処理するための分析装置のブロック図である。
【図2】分析装置が組み込まれた携帯式機器の略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 テープ・カセット(検査テープ)
12 距離標識領域
14 検査領域
16 テープ送り装置
18 位置検出装置
20 担持薄片
22 ラスター帯片
24 明るい透明部
26 暗い部分
28 信号処理部
30 センサ
32 制御装置
34 制御装置(補正要素)
36 位置決め用駆動装置
38 比較器
40 既定距離装置
42 カセット装置
44 テープ・カセット
46 供給スプール
48 巻取り・廃棄スプール
50 先端部
52 計測ユニット
54 テープ・テンショナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性担持テープ(20)と、体液中の分析物を検出するためにその上に離間して配置された複数の検査領域(14)と、を有する体液を分析するための検査テープにおいて、
前記担持テープ(20)の送り中にその位置を検出するための標識領域(12)が設けられていることを特徴とする体液を分析するための検査テープ。
【請求項2】
前記標識領域(12)の各々が、テープの長さ方向において連続した前記検査領域(14)間のテープ部に延在し、前記テープ部の前記検査領域(14)を含む部分には標識領域が設けられていないことを特徴とする請求項1記載の検査テープ。
【請求項3】
前記標識領域(12)が、加算式の位置計測器を形成することを特徴とする請求項1または2記載の検査テープ。
【請求項4】
前記標識領域(12)が、非接触検出用に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の検査テープ。
【請求項5】
テープ送りを位置制御することによって、前記検査領域(14)を使用位置に継続して配置することができることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の検査テープ。
【請求項6】
前記標識領域(12)が、好ましくは交互に配置された明るい部分と暗い部分を有するラスター帯片(22)によって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の検査テープ。
【請求項7】
前記標識領域(12)が、テープの長さ方向に互いに変位して配置された二条の平行ラスター帯片(22)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の検査テープ。
【請求項8】
前記標識領域(12)が、絶対値によってコード化された距離計測器を形成することを特徴とする請求項1または2記載の検査テープ。
【請求項9】
未使用検査テープの供給部(46)と使用済み検査テープの廃棄部(48)とを有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の検査テープを格納するためのテープ・カセット(44)。
【請求項10】
体液中の分析物を検出するための検査領域(14)が設けられた検査テープ(10)、前記検査領域(14)を配置するためのテープ送り装置(16)、およびテープ送り中にテープ位置を検出するために前記検査テープ(10)の上に設けられた標識領域(12)を含む位置検出装置(18)を有する分析装置。
【請求項11】
前記位置検出装置(18)が、テープ送り中の送りの方向と送り距離を、前記検査テープ(10)上で直接検出することを特徴とする請求項10記載の分析装置。
【請求項12】
前記位置検出装置(18)が、前記検査領域(14)を走査する計測ユニット(52)からテープ沿いに予め決められた距離だけ離間して配置されていることを特徴とする請求項10または11記載の分析装置。
【請求項13】
前記位置検出装置(18)が、テープ送り中に前記標識領域(12)を好ましくは非接触走査するために、前記検査テープ(10)の横に配置されたセンサ手段(30)を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項14】
前記テープ送り装置(16)が、前記位置検出装置(18)に接続されて、前記検査テープ(10)を所要の位置に送るための駆動制御装置(32,34)を有することを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項15】
前記テープ送り装置(16)が、前記位置検出装置(18)の出力信号に応じて、テープ送り方向とは逆の方向に動作することができる駆動装置(36)を有することを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−10652(P2007−10652A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−173143(P2006−173143)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】